説明

羽根車の成形型および羽根車の成形方法

【課題】導入路を囲む羽根が湾曲し、かつ導入路が外周側(高さH01)、中心側(H02>H01)で傾斜して形成される羽根車を、支障なく樹脂で一体成形する。
【解決手段】導入路を成形する多数の単位金型30は放射求心に移動し、成形の第1位置、後退の第2位置をとる。単位金型30は第1単位金型31と第2単位金型41とからなり、先端32a、43aを重ねてA状態として(先端高さH=H02 )は羽根車を成形する(a)。成形が完了したならば、第2単位金型41のみをG方向に回転して、第2単位金型41が収容部35に後退したB状態をとり(先端高さH<H01)、第1単位金型31に取り付けた操作具75の第1係止突起79を第2単位金型の係止溝71に係止してB状態を維持する(b)。この状態で、成形した羽根車から単位金型30を放射状に抜いて、第2位置をとることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ポンプなどで流体を移送する際に使用する羽根車であって、樹脂で一体成形する場合における成形型および羽根車の成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
円板に挟まれた放射状の羽根が湾曲して形成され、羽根の間に導入路が形成され、かつ導入路‘(羽根)の内周側が広く(高く)、外周側が狭い(低い)構造の羽根車(例えば、図1)の場合、樹脂で一体成形することが困難であり、一般には、金属や樹脂で組み立てて製造していた。例えば、特許文献1、2の技術を使っても、成形金型の構造が複雑化し、現実に製造することは困難であった。
【0003】
そこで、発明者は、2つのスライドコアを使用することにより、首尾良く金型が抜ける発明を提案した(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7‐16884号公報
【特許文献2】特開平9−250492号公報
【特許文献3】特開2010−264687
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明は、特許文献3の発明を改良したもので、さらにより確実に成形できるようにしたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこでこの発明では、ストッパーや連結部材などを設けることにより、特殊構造の羽根車の製造をより確実にした。
【0007】
すなわち、成形型の発明は、中心から放射状に配置した多数の羽根を、前記中心を合わせた第1円板と第2円板とで挟んだ構造の羽根車を、樹脂で一体成形するための金型であって、以下のように構成したことを特徴とする羽根車の成形型である。
(1) 成形される羽根車は以下のような構成とする。
(a) 前記羽根は一回転方向に凸となるように湾曲して形成され、
(b) 前記一つの羽根の放射状側の端と円板の中心とを結ぶ直線上に、隣接する羽根が交差する。
(c) 前記羽根は、外周側の端縁は高さH01で形成され、内周側に向けて徐々に高さを大きくして、中心側の端縁は高さH02(>H01)で形成される。
(d) 前記羽根の高さに応じて前記第1円板と第2円板の間隙は外周側でH01、内周側でH02、で形成される。
(2) 前記成形型は、成形予定の隣接する羽根の間隙に挿入できる成形部を有する単位金型と、隣接する前記単位金型を連結する連結部材とを含む構成とする。前記単位金型は、求心側の第1位置と放射側の第2位置をとることができ、前記連結部材はこの各単位金型の移動を案内する。
かつ、前記第1位置で、前記単位金型は前記成形部を成形予定の隣接する2枚の羽根の間の間隙に嵌挿し、間隙に面する前記両羽根の側壁及び第1円板、第2円板の羽根側の面を成形する。かつ前記第2位置で、前記単位金型は、前記間隙から放射状に後退して、前記間隙から離れることができる。
(3) 前記単位金型は、第1単位金型と第2単位金型とからなり、前記第1単位金型の成形部の下面が前記第1円板を成形でき、前記第2単位金型の成形部の上面が前記第2円板を成形でき、前記第1単位金型の成形部の側面と第2単位金型の成形部の側面とが協働して、羽根の側壁を成形できる。
(4) 前記第1単位金型の成形部は、上面側に、前記第2単位金型の成形部を収容する収容凹部が形成され、前記収容凹部の縁と第1単位金型の成形部の外周縁との間に傾斜面が形成さる。前記収容凹部の底の形状は第2単位金型の成形部の下面の形状と略同一する。
(5) 前記第1単位金型と前記第2単位金型とは相対的にA状態とB状態とを取ることができ、
前記A状態は、第1単位金型の成形部の先端側と第2単位金型の成形部の先端側が重なる成形状態であり、
前記B状態は、第2単位金型の成形部が第1単位金型側に沈みながら相対的に後退して、第2単位金型の成形部が第1金型の収容凹部に収容される後退状態である。
(6) 前記第1単位金型が第1位置のときにA状態とB状態を取り、第2位置のときにB状態を取れる。
(7) 前記第1単位金型と前記第2単位金型との間に、前記B状態を保持するストッパーを、係脱可能に形成する。
【0008】
また、前記において、以下のように構成したことを特徴とする羽根車の成形型である。
(1) 成形型は、成形型基台に対して、等間隔環状に単位金型を配置し、前記各単位金型を中心から半径方向に、放射状及びに求心状に移動可能とする。
(2) 前記成形型基台で、前記隣接する単位金型の間に求心状に第1連結杆を配置する。
(3) 前記第1連結杆の放射側の端部を前記金型基台に回転自在に取り付ける。
(4) 前記隣接する各単位金型に、第2連結杆の一端部を、夫々回転自在に取り付けし、前記各第2連結杆の他端部を、前記第1連結杆の中間部に、回転自在でかつ前記第1連結杆の軸方向に移動可能に取り付ける。
【0009】
また、前記において、以下のように構成したことを特徴とする羽根車の成形型である。
(1) 第1単位金型の基部に円弧状の案内内面を形成し、第2単位金型の基部に円弧状の案内外面を形成する。
(2) 前記案内内面と案内外面とが互いに摺動して、前記第1単位金型と第2単位金型とは回動して、A状態及びB状態をとることができる。
(3) 前記第2単位金型の案内外面の近傍に、前記案内内面側に付勢して出没するストッパー突起を取り付ける。
(4) 前記第1単位金型の案内内面に前記ストッパー突起を受ける切り欠きを形成する。
(5) 前記ストッパー及びストッパー突起は、第1位置の前記A状態で「解除状態」にあり、成形完了後に、前記B状態に変化させて「係止状態」としてB状態を維持して、成形した羽根車から前記第1単位成形型及び第2単位成形型を放射状に抜くことができるように制御されている。
【0010】
さらに、成形方法の発明は、中心から放射状に配置した多数の羽根を、前記中心を合わせた第1円板と第2円板とで挟んだ構造の羽根車を、樹脂で一体成形するための金型であって、以下のように構成したことを特徴とする羽根車の成形方法である。
(1) 成形される羽根車は以下のような構成とする。
(a) 前記羽根は一回転方向に凸となるように湾曲して形成され
(b) 前記一つの羽根の放射状側の端と円板の中心とを結ぶ直線上に、隣接する羽根が交差する。
(c) 前記羽根は、外周側の端縁は高さH01で形成され、内周側に向けて徐々に高さを大きくして、中心側の端縁は高さH02(>H01)で形成される。
(d) 前記羽根の高さに応じて前記第1円板と第2円板の間隙は外周側でH01、内周側でH02、で形成される。
(2) 成形型は、成形予定の隣接する羽根の間隙に挿入できる成形部を有する単位金型を環状に配置し、前記隣接する単位金型を連結部材で連結して構成する。
かつ、前記単位金型は、第1単位金型と第2単位金型とからなり、前記第1単位金型の成形部の下面が前記第1円板を成形でき、前記第2単位金型の成形部の上面が前記第2円板を成形でき、前記第1単位金型の成形部の側面と第2単位金型の成形部の側面とが共同して、羽根の側壁を成形できる。
かつ、前記第1単位金型の成形部は、上面側に、前記第2単位金型の成形部を収容する収容凹部が形成され、収容凹部の縁と第1単位金型の成形部の外周縁との間に傾斜面が形成さる。前記収容凹部の底の形状は第2単位金型の成形部の下面の形状と略同一する。
かつ、前記単位金型は、求心側の第1位置と放射側の第2位置をとることができ、
前記第1単位金型と前記第2単位金型とは相対的にA状態とB状態とを取ることができ、前記A状態は、前記第1単位金型の成形部の先端側と前記第2単位金型の成形部の先端側が重なる成形状態であり、
前記B状態は、前記第2単位金型の成形部が、前記第1単位金型側に沈みながら相対的に後退して、前記第2単位金型の成形部が第1金型の収容凹部に収容される後退状態である。
(3) まず、前記単位金型は第2位置で、前記第1単位金型と前記第2単位金型とはストッパーによりB状態を維持した状態にある。
(4) 続いて、前記各単位金型を前記連結部材で一斉に第1位置に向けて移動する。
(5) 続いて、前記第1単位金型と前記第2単位金型とのストッパーを解除して、B状態からA状態に変更するとともに第1位置に位置する。
第1位置のA状態で、前記単位金型は成形予定の隣接する2枚の羽根の間の間隙位置にあり、成形型に樹脂を注入して、間隙に面する前記両羽根の側壁及び第1円板、第2円板の羽根側の面を成形する。
(6) 次ぎに、第1位置で、前記第2単位金型を移動させて、前記第1単位金型と前記第2金型とをB状態として、前記単位金型の成形部の高さをH01以下とし、ストッパーでB状態を維持する。
(7) 続いて、B状態を維持したままま、前記各単位金型を前記連結部材で一斉に、放射状に移動して、成形した前記羽根車の間隙から抜き出し、第2位置として、成形した前記羽根車を前記成形型から取り出す。
【発明の効果】
【0011】
第1単位金型の上面側に第2単位金型を重ねてA状態として成形し、第2単位金型を相対的に後退させて第2金型を第1単位金型の収容凹部に収容して高さを低めてB状態として、B状態を保持するストッパーを設けたので、B状態を保持して確実に単位金型を第1位置(成形位置)から第2位置(退却位置)に移動させて、成形した羽根車から単位金型を抜き出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1はこの発明の実施例で成形される羽根車で、(a)は正面図、(b)は平面図、(c)はA−A断面図である。
【図2】図2は成形型の全体斜視図で、第1位置を表す。
【図3】図3は成形型の正面図で、第1位置を表す。
【図4】図4は成形型の正面図で、第2位置を表す。
【図5】図5(a)(b)は、単位金型の斜視図で、成形状態(A状態)を表す。
【図6】図6は、単位金型を説明する概念図(基部を縦断面として成形部を外観とした図)で、(a)は成形状態(A状態)、(b)は後退状態(B状態)を表す。
【図7】図7は、単位金型の拡大正面図で、(a)は成形状態(A状態)、(b)は後退状態(B状態)置を表す。
【図8】図8は、単位金型の作動を表す正面図で、(a)は第1位置・成形状態(A状態)、(b)は後退状態(B状態)で第1位置から第2位置に向かう途中、(c)は第2位置・後退状態(B状態)、(d)は後退状態(B状態)で第2位置から第1位置に向かう途中、(e)は第1位置・成形状態(A状態)、を夫々表す。
【図9】図9は、他の実施態様の単位金型の作動を表す正面図で、(a)は第1位置・成形状態(A状態)、(b)は後退状態(B状態)で第1位置から第2位置に向かう途中、(c)は後退状態(B状態)で第2位置、(d)は後退状態(B状態)で第2位置から第1位置に向かう途中、(e)は第1位置・成形状態(A状態)、を夫々表す。
【図10】図10は、他の実施態様の単位金型の拡大正面図で、(a)は成形状態(A状態)、(b)は後退状態(B状態)を表す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
1.成形される羽根車1の構成
【0014】
(1) 中心10から斜めで放射状に配置した多数の羽根3、3を、中心10を合わせた第1円板(円形)11と第2円板(円形)15とで挟んで樹脂製で一体成形の羽根車1を構成する。
第1円板11と第2円板15とは同一外径で、第1円板11及び第2円板15の外周縁12、17と、羽根3、3の外周縁4aは一致している。また、第1円板11は同心で小円の開口13が形成されている。また第2円板15は同心で大円の開口18が形成され、開口18の周縁17(第2円板15の内周縁17)と羽根3の中心10側の縁とは略一致している。
第1円板11で、羽根3側の面を内面11a、他側を外面11bとする。同様に、第2円板15で、羽根3側の面を内面15a、他側を外面15bとする。
【0015】
(2) また、各羽根3は一回転方向に凸となるように湾曲して形成され(凸側7、凹側7a)、羽根車1の中心10(両円板11、15の中心10、羽根3の中心10)と一つの羽根3Aの外周縁4aとを結ぶ直線Y上に、一つの羽根3Aの凹側7a(凸側7に反対する側)に隣接する羽根3Bの中間部と、羽根3Cの内周縁4付近が交差する形状である(図1(c))。
また、換言すれば、湾曲した1つの羽根3Bの外周縁4aと内周縁4とを結ぶ直線Y(羽根3Bの弦)上に、凹側7aに隣りあう羽根3Cの内周縁4付近が交差する形状である(図1(c))。
また、羽根3は、外周縁4aは高さH01で形成され、内周縁4に向けて徐々に高さを大きくして、内周縁4(中心10側の端縁)は高さH02で形成される(図1(a))。この場合、第1円板11は平面で形成され、第2円板15は、羽根3、3の上面に沿って外周縁16側が低く、内周縁17側が高く傾斜して形成されている(図1(a))。
【0016】
(3) 隣接する羽根3と羽根3の間は、羽根車1を使用した際に流体の導入路(間隙)20が形成される。したがって、導入路20は、隣りあう羽根3、3の湾曲に応じて湾曲して形成される。導入路20は、隣接する羽根3、3の側壁6、6(一方の凸側7、他方の凹側7a)、第1円板11の内面11a、第2円板15の内面15aで囲まれる。
【0017】
(4) また、この実施態様では、7枚の羽根3、3が円周方向に等間隔に配列された構成となっている(図1(c))。
【0018】
(5) また、前記において、開口(小径)13はモーター類の回転シャフトが連結され、開口(大径)18は導入路20から取り入れた空気の吹き出し口(又は導入路20に空気を送る空気の取り入れ口)である。
【0019】
2.成形型60の構成
【0020】
(1) 成形型60は、ハウジング(成形型基台)61に、
(a)成形予定の羽根車1の道入路20の位置に配置して、導入路20を構成する「隣接する羽根3、3の側壁6、6、第1円板11の内面11a、第2円板15の内面11b」を成形するための単位金型30、30と、
(b)第1円板11の外面11b及び開口13、第2円板15の外面15b及び開口18、などを成形するその他の各金型と、
(c)各金型を操作する駆動部と、
を配置して構成する(図2〜図4)。また、図中62は成形型60に樹脂を供給するヘッダーである。
なお、単位金型30は、成形予定の羽根車1の各導入路20、20の放射側に位置する「第1円板11の外周縁12、第2円板15の外周縁16」の当該部分も成形する。したがって、全部の単位金型30、30が協働して「第1円板11の外周縁12、第2円板15の外周縁16」を成形する。
また、成形予定の羽根車1の中心10が位置する成形型60の位置を、成形型60の中心63とする。
【0021】
(2) 単位金型30は、等間隔環状に配置され、夫々同時に中心63に向けて移動して(直線運動と曲線運動とを伴う)羽根車1を成形し、曲線運動(回転運動)を伴い放射状に中心63から離れるように移動して、成形した羽根車1の導入路20から抜き出て後退できるように、駆動制御されている。
また、総ての単位金型30、30が同時に作動するように案内する連結部材22が、隣接する単位金型30、30の間に配置されている。連結部材22は、1つの第1連結杆23と2つの第2連結杆24、24とから構成する(図3、図4、図2)。
第1連結杆23は、隣接する単位金型30、30の間で、中心63に対して半径方向に求心状に配置される。第1連結杆24の基端部24aをハウジング61に回転自在に取り付ける。第2連結杆24は一端部を単位金型30に回転自在に取り付け(図示していない)、両側の第2連結杆24、24の他端部24bを夫々第1連結杆23の中間部に、軸方向に摺動自在で、かつ回転自在に取り付ける(図3、図4)。
【0022】
(3) 各単位金型30は、
(a)中心63(成形予定の羽根車1の中心10)に向かって突き出して、導入路20を成形する「第1位置」
(b)中心63(成形予定の羽根車1の中心10)側から放射側に後退して、成形部34、42が成形予定の導入路20から待避する「第2位置」
をとることができる。後述する連結部材22はこの各単位金型30の第1位置、第2位置間の移動を案内する。
【0023】
(4) また、各単位金型30は、単位金型基部28と第1単位金型31と第2単位金型41とからなる。第1単位金型31は成形部32と基部38からなり、第2単位金型41は成形部42と基部48とからなり、基部38、48は、両金型31、41の相対位置を操作し、かつ単位金型30を全体として移動させる駆動部(図示していない)に連結される。
「第1位置」において、第1単位金型31の成形部32と第2単位金型41の成形部42とが重なった状態で、隣りあう単位金型30、30の成形部32、42で導入路20を成形する。すなわち、成形部32、42は「成形予定の羽根車1の湾曲した導入路20の凸側面7」の形状に合わせてた側面(凹形状)32c、42c、「成形予定の羽根車1の湾曲した導入路20の凹側面7a」の形状に合わせた側面(凸形状)32b、42bを有する。
【0024】
(5) また、第1単位金型31の成形部32の下面34が第1円板11の内面11aを成形する。また、第2単位金型41の上面43が、第2円板15の内面15aを成形する。また、第1位置で、第1単位金型31の成形部32の側面(凸形状)32bと第2単位金型41の側面(凸形状)42bとが協働して、羽根3、3の側壁6の凸側7を成形する。この第1単位金型11と第2単位金型15の相対位置を成形状態(A状態)とする。成形状態(A状態)で第1単位金型31の成形部32の先端32aと第2単位金型41の成形部42の先端42aとは略一致する。
第1単位金型31の基部38には、凹円弧状の案内内面39を形成し、案内内面39に第2単位金型41の基部48の凸円弧状の案内外面49が当接して、互いに円弧状に摺動して、成形状態(A状態)と後退状態(B状態)の相対移動を案内する。また、第1単位金型31の基部42に凹円弧状の案内外面39aを形成し、案内外面39aは単位金型基部28の凹円弧状の案内内面29に沿って摺動回転できるようになっている。したがって、単位金型基部28の案内内面29と第1単位金型31の案内外面39aとは同一曲率で、第1単位金型31の案内内面39と第2単位金型41の案内外面49とは同一曲率の円弧で形成されている。なお、第1単位金型31の案内内面39と案内外面39aも同一曲率で形成することが望ましいが必須ではない。
また、成形状態(A状態では)第1単位金型31の上に(図1のH方向に)、第2谷金型41が重なって、単位金型30は最も高い(図1のH方向で)状態となる(図6(a))。後退状態(B状態)で、第1単位金型31の収容凹部35に第2単位金型41(成形部42)が沈み込み、単位金型30は最も低い状態となる。
【0025】
(6) 第2単位金型41の基部48で、案内外面49の近傍に、第1単位金型31の案内内面39側に付勢され、かつ案内内面39に対して離接する(出没する)ストッパー突起51を取り付ける。ストッパー突起51は、回転軸51aの周りに回転できる棒材の先端に形成されて(回転量は少量)、出没移動するように形成されている(図7)。また、ストッパー突起51の近傍で、ストッパー突起51の回転軸51aの反対側にストッパー突起51と同じくらいの高さで案内ピン51bが配置され、案内ピン51bは第2単位金型41の基部48に固定されている。
また、第1単位金型31の案内内面39に、案内内面39側に押圧突出したストッパー突起51を受ける切り欠き52を形成する(図7(a)(b))。また、切り欠き52に連続して、「切り欠き52より成形部31の先端31a側」の反対側(第2単位金型41がB状態の際に位置する側。30b側)に、ストッパー突起51の移動を案内できる傾斜面53を形成する。円弧状の案内内面39に対して、切り欠き52により「切り欠き52より成形部31の先端31a側」(30a側)の縁に段差を形成し、切り欠き52で「切り欠き52より成形部31の先端31a側」の反対側は傾斜面53を介して徐々に案内内面39に連続するように形成されている。したがって、切り欠き52及び傾斜面53により、ストッパー突起51(第1単位金型30)の矢示F方向の移動を規制して、ストッパー突起51の矢示G方向の移動は許容できる(図7(b))。ここで、図中F方向は図中左周り方向であり、成形予定の羽根車1で外周から中心10に向けて羽根3が屈曲する方向である。また、矢示G方向は(F方向とは反対の方向であり)図中右周り方向であり、成形予定の羽根車1で中心10から放射状に羽根3が回転する方向である。
また、切り欠き52の近傍で、切り欠き52より成形部31の先端31a側に、ストッパー操作部54を配置する(図7(a)(b))。ストッパー操作部54はストッパー突起51を押圧して、ストッパー突起51と切り欠き52(段差部分)との係止を解除して、第1単位金型31が矢示F方向に回転する際に、第2単位金型41の矢視F方向への回転を許容させることができる。
ストッパー操作部54は、基部から短腕55a、長腕55bの2つの腕が鋭角状態で伸びた略L字状の操作具55で、短腕55aの先端に位置する。操作具55は基部が回転軸55cで単位金型基部28の案内内面29の近傍に取り付けられている。操作具55の長腕55bの先端は係止爪55dを有し、係止爪55dはA状態で、第1単位金型31の基部38の端縁に係止される(図7(a)(b))。また、操作具55は長腕55bを成形部32の先端側に押圧するばね55eにより付勢され、A状態で、ストッパー操作具54が、中心63側への求心方向(矢示J方向。第2単位金型41の成形部42側)に付勢され、係止爪55dが第2単位金型31の基部38の縁に係止する(図7(a))。
なお、単位金型30で、B状態(第2単位金型31が第1単位金型31の収容部に収容される状態)からA状態(第2単位金型41が第1単位金型31の収容部35から出て重なった状態)に第2単位金型41が移動する側(直進方向I、Gと略直交する方向で)を一側30aとする。また、単位金型30で、A状態からB状態に向けて第2単位金型41が後退して収容される側(直進方向I、Gと略直交する方向で)を他側30bとする(図7(a)(b))。
【0026】
(7) 第1位置で、第1単位金型31の案内内面39に沿って、第2単位金型41の案内外面49が矢示G方向に回動して、第2単位金型41の成形部42が成形状態(A状態)から後退状態(B状態)に向けて変化する際、後退状態(B状態)に至った際に、付勢したストッパー突起51が切り欠き52に係止して、第2単位金型41の相対的な回動は停止される(第2単位金型41のみの回転が規制される)。この位置でさらに第2単位金型を回転させれば、第1単位金型31も同時に回転できる(=第1単位金型31を回転させれば、第2単位金型41も回転する)。したがって、第1位置で、成形状態(A状態)から後退状態(B状態)に変化させ、続けて第1位置から第2位置への変化も連続して、支障なく変化させることができる。
また、第2位置から第1位置へ変化させる際にも、第1単位金型31と第2成形金型41とが後退状態(B状態)を保ちながら一体に放射方向(J方向)に移動し、その後、第2単位金型41のみを第1単位金型31に対して回動させるように作動させる際に、ストッパー突起51がストッパー操作部54に押圧され、ストッパー突起51と切り欠き52との係止を解除して、第2単位金型41のみが回動して、成形状態(A状態)をとることができる(図7(a))。
【0027】
(8) 第1単位金型31は、上面側に、相対的に後退した第2単位金型31の成形部32を収容する収容凹部35が形成され、収容凹部35の底部の縁36と第1単位金型31の成形部32の上面の外周縁33aとの間に傾斜面が形成される。また、前記収容凹部35の底の形状は第2単位金型41の成形部42の下面44の形状と略同一する。
したがって、成形状態(A状態)で、第2単位金型41の成形部42の下面44は、第1単位金型31の成形部32の上面の外周縁部33aに、乗った状態で、第2単位金型41の成形部42の下面44の下方には収容凹部35が位置する。したがって、第2単位金型41の成形部42の下面44で、周縁部以外の部分は浮いた状態となっている。
【0028】
(9) 第1単位金型31の成形部32は、高さH11で形成される。第2単位金型41の成形部42の先端部の羽根3の内周縁4(高さH02)を成形する位置45の高さは、高さH21で形成され、成形状態(A状態)で、第1単位金型31の成形部32と第2単位金型41の成形部42が重なり、両先端32a、42aが上下に重なった状態で、
11+H21=H02
となっている。また、第2単位金型41の成形部42の上面43は、第2円板15の内面15aを成形するので、基端側が低く、先端42aに向けて徐々に高さが高くなり、位置45で高さH21となり、位置45から先端42a側はフラットで、高さH21で形成されている(図6(a))。
また、後退状態(B状態)で、第2単位金型41の成形部42は、第1単位金型31の成形部32に対して相対的に後退して(放射側に移動して)、第1単位金型31の成形部32の上面33の傾斜面に沿って下がって、収容凹部35内に収容される(図6(b))。この状態で、第2単位金型41の成形部42の先端側のみが第1単位金型31の成形部32の上面33より若干上方に突出する。この状態で、重なった両成形部32、42の最大高さはHである(図6(b))。この際、成形予定の羽根車1の羽根3の外周縁4aの高さ(「導入路20の外周縁の高さ」=「第1円板11の内面11aと第2円板15の内面15aの距離」)H01(図1(a))、と比較すると、
H<H01
となっており、後退状態(B状態)をとれば、第1単位金型31の成形部32と第2単位金型の成形部42は、成形された羽根車1の導入路20から支障なく、放射状に抜くことができる。
【0029】
(10) また、第1単位金型31の成形部32の基端(基部38の先端)に円弧状凹面37を有し、第1円板11の外周面を成形する。また、各第2単位金型41の成形部42の基端(基部48の先端)に円弧状凹面47を有し、総ての第2単位金型41の円弧状凹面47、47により円形を形成して、第2円板15の外周面を成形する(図6)。
【0030】
(11) 図中57は、以上のような単位金型30の変化を制御する単位金型駆動部である(図5)。
【0031】
3.成形型60の作動(羽根車1の成形方法)
【0032】
(1) 第1単位金型31と第2単位金型41とが相対的に成形状態(A状態)で、ハウジング61の中心63(成形予定の羽根車1の中心10)側に位置して、第1位置となり、この位置と状態で、ヘッダー62から樹脂を注入して、羽根車1を成形する(図8(a)、図2、図3、図6(a)、図7(a))。この状態で、第1単位金型31の成形部32の先端32aと第2単位金型41の成形部42の先端42aとが一致している。
また、この状態でストッパー突起51は、ストッパー操作部54よりも中心63側(矢示F側、矢示J側)に位置し、かつ案内内面39に当接している。また、ストッパー操作部54はストッパー突起51の回転軸51a付近(中心63の反対側、矢示G側、矢示I側)に位置し、案内内面39(案内外面49)より中心63側(矢示F側、矢示J側) に突出した位置で付勢されている。
【0033】
(2) 羽根車1の成形が完了したならば、第1位置で、第1単位金型31は静止状態で(すなわち第1単位金型31は第1位置にある)、ストッパーは解除されているので、先ず第2単位金型41のみを矢示G方向に回転させると、途中でストッパー突起51とストッパー操作部とが当接し、ストッパー突起51はばねに抗して中心63側(矢示F側、矢示J側)に移動する。また、ストッパー操作部54は、ばね54eに抗して放射側(矢示G方向、矢示I側)に移動して続いて案内ピン51bに弾性当接する。同時に操作具55の係止爪55dと基部38の端縁との係止も解除される。この際、ストッパー突起51は、ストッパー操作部54を乗り換えて、切り欠き52に係止して、後退状態(B状態)となる(図8(b)、図7(b)、図6(b))。
【0034】
(3) 続いて、後退状態(B状態)を維持したまま(ストッパー突起51が切り欠き52に係止した状態で)、第1単位金型31と第2単位金型41とが一体となって、第2単位金型41と一緒に、単位金型基部28の案内内面29に沿って第1単位金型31の案内外面49aが摺動しながら、矢示G方向に回転する。
【0035】
続いて、後退状態(B状態)を維持したまま(ストッパー突起51が切り欠き52に係止した状態で)、第1単位金型31及び第2単位金型41をI方向(図8。放射方向)に移動させれば、単位金型30は高さH(<H01)の状態で、成形した羽根車1の導入路20の外周20a(高さH01車)を抜ける高さとなるので、導入路20から抜けて、第2位置を取ることができる(図8(c))。この位置と状態で、単位金型30は先端32aを含めて、成形した羽根車1の導入路20(羽根3、3の間)から抜けるので、成形した羽根車1を傷つけることなく、羽根車1を取り出すことができる(図4)。
この際、傾斜面53があるので、ストッパー突起51は切り欠き52の係止を逃れて、第2単位金型41がより矢示G方向(図8)に移動することができるが、矢示F方向(図8)に戻った場合であっても、ストッパー突起51は再び、切り欠き52に係止して後退状態(B状態)を維持できる。
【0036】
(4) 続いて、再度、成形する際には、第1単位金型31及び第2単位金型41は、ストッパー突起51が切り欠き52に係止して後退状態(B状態)を維持したまま、単位金型30の全体(第1単位金型31と第2単位金型41の両方を同時に)を矢示J方向(図8。求心方向)に移動させ「同時に又は続いて」案内内面29と案内外面39aが摺動しながら回動して、中心63(成形予定の羽根車1の中心10)に向かい、成形位置である第1位置に向かって移動できる(図8(d))。したがって、第2単位金型41のみ回転して先行して、F方向(図7)に移動することはない。
【0037】
(5) 第1単位金型31及び第2単位金型41が第1位置に至る途中で、ストッパー突起51がストッパー操作部54に当接し、ストッパー突起51は、ストッパー操作部54に押圧されて矢示J方向に移動して、段差を乗り越えて切り欠き52との係止を解除される(図8(d))。ほぼ同時に又は前後して、操作具55の係止爪55dが第1単位金型31の基部38の縁に係止するので、単位金型基部28に対して第1単位金型31の回転が規制される。
この状態で、収容凹部35から抜け出した第2単位金型41のみを矢示F方向(図7)に回動させれば、まず、第1単位金物31が第1位置に至り(図8(d))、追って、第2単位金物41が第1位置に至る(図8(e))。
第1単位金型31と第2成形金型41は、両方が第1位置に至った状態で、成形部32の先端32aと成形部42の先端42aが互いに上下に重なるように移動して、成形状態(A状態)をとることができる(図8(e)、図7(a)、図2、図3)。この場合、第1単位金型31が第1位置の僅か手前で一旦静止し、続いて第2成形金型41を回転させてB状態を形成し、その後、一体となった第1単位金型31と第2単位金型41とを回動して第1位置に配置するように制御することもできる。
他の必要な金型も第1位置・A状態に至り(図示していない)、同様に、ヘッダー62から樹脂を注入して羽根車1を成形する。
【0038】
(6) 以上の単位金型30の回転しつつ放射方向(I方向)、求心方向(J方向)に移動する場合には、隣接する単位金型30、30が連結部材22により連結されているので、一斉に移動できる。特に、放射方向に移動させて、単位金型30を成形した羽根車1から抜くとき(図8(b)→図8(c))に有効である。
【0039】
3.他の実施態様
【0040】
この実施態様を図9、10に基づき説明する。この実施態様は、第1単位金型31と第2単位金型41とを、相対移動可能とするか一体移動とするかの切り替えを、前記実施態様ではストッパー突起51、切り欠き52、ストッパー制御部54などで行ったが、この実施態様では異なる機構で制御した実施態様である。主に、前記実施態様よりも小径の羽根車を成形する際に適する。なお、ストッパー機構以外については、前記実施態様と同様に構成して、成形型60を構成する(図3、図4参照)。
【0041】
(1)ストッパーの構成
【0042】
(a) 単位金型30で、B状態(第2単位金型31が第1単位金型31の収容部に収容される状態)からA状態(第2単位金型41が第1単位金型31の収容部35から出て重なった状態)に第2単位金型41が移動する側(直進方向I、Gと略直交する方向で)を一側30aとする。また、単位金型30で、A状態からB状態に向けて第2単位金型41が後退して収容される側(直進方向I、Gと略直交する方向で)を他側30bとする(図10)。
また、第2単位金型41の基部48の中央付近で、案内外面49の近傍に、V字状の係止溝71を形成する。また、案内外面49の他側30bに、係止溝71の近傍から、係止溝71と同じ深さだけ凹となった操作条72を形成する。操作条72で係止溝71側の縁に徐々に案内外面49に向かう傾斜面73を形成する(図10)。
【0043】
(b) 単位金型基部28の案内内面29で、一側30a側に、案内内面29から溝状に凹となる案内斜面82を形成する。案内斜面82で、一側30a側の縁は案内内面29と一致して、該部が係止縁83を構成する。また、案内斜面82は、係止縁83(一側30a)から他側30b側に向けて、中心放射方向に深くなるように徐々に深くなるように(放射側に)傾斜して、他側30b側の縁が段差部84を形成する(図10)。
【0044】
(c) 第1単位金型の基部38で、中央付近で案内内面39の近傍に、操作具75の中央部を回転軸78で取り付ける。操作具75は、中央部から略直径対称に第1腕76、第2腕77が連設された構造で、第1腕76の先端にV字状の第1係止突起を形成し、第2腕の先端部が放射方向に屈曲され、先端に第2係止突起を形成する。
操作具75は、第1係止突起79が第2単位金型41の案内外面49側に向けて押圧され、第2係止突起80が単位金型基部28の案内内面29側に向けて押圧されるようにばね81で矢示K方向に付勢されている(図10)。
【0045】
(d) 案内外面49に向けて押圧された第1係止突起79は、第1単位金型31と第2単位金型41の相対的な回転に際して、操作条72に沿って摺動して移動でき、ばね81に抗して斜面73を乗り越えて、係止溝71に嵌合係止する。第1係止突起79が係止溝71に嵌合係止した状態で、第1単位金型31と第2単位金型41とは相対的な回転が規制される(図10)。
【0046】
(e) 案内内面29に向けて押圧された第2係止突起80は、第1単位金型31と単位金型基部28との相対的な回転に際して、案内斜面82に沿って摺動して移動でき、第2係止突起80が案内斜面82の係止縁83に係止した状態で、単位金型基部28に対して、第1単位金型31が矢示G方向に回動することを規制できる。また、第2係止突起80が案内斜面82の段差部84に当接係止した状態で、単位金型基部28に対して、第1単位金型31が矢示G方向に回動することを規制できる(図10)。
【0047】
(2) 成形型60の作動
【0048】
(a) 第1の実施態様と同様に、第1単位金型31と第2単位金型41とが相対的に成形状態(A状態)で、ハウジング61の中心63(成形予定の羽根車1の中心10)側に位置して、第1位置となり、この位置と状態で、ヘッダー62から樹脂を注入して、羽根車1を成形する(図9(a)、図10(a))。この状態で、第1単位金型31の成形部32の先端32aと第2単位金型41の成形部42の先端42aとが一致している(高さH=H11+H21=H01+H02/図6参考、図1参考)。
また、この状態で操作具75の第1係止突起79は、案内外面39の操作条72に沿って移動可能であり、第2係止突起80は、単位金型基部28の係止縁83に係止して、単位金型基部28に対して、第1単位金型31の矢示G方向への回転が規制されている。
【0049】
(b) 羽根車1の成形が完了したならば、第1位置で、第1単位金型31は静止状態で(すなわち第1単位金型31は第1位置にある)、ストッパーは解除されているので、先ず第2単位金型41のみを矢示G方向に回転させると、第2単位金型の操作条72の傾斜面73に当たって操作具75の第1係止突起79は、傾斜面73に沿って移動して、操作具75は矢示L方向に回転する。操作具75の矢示L方向への回転によって、第2係止突起80と係止縁83の係止が外れ、係止突起80はばね81の付勢により操作条72内に位置する(図9(b))。
【0050】
(c) この状態で、第2係止突起80と係止縁83の係止が外れるので、単位金型基部28に対して、第1単位金型31も矢示G方向に回動する。従って、単位金型基部28に対して、第1単位金型31と第2単位金型41のいずれも矢示G方向に回動するが、この際、第1単位金型31と第2単位金型41は一体となっていないので、自由に回動する。
【0051】
(d) 第1単位金型31の矢示G方向の回転にしたがって、操作具75の第2係止突起80が案内斜面84の段差部83に当接し、この段階で、単位金型基部28に対して第1単位金型31の矢示G方向の回動が規制され、第1単位金型31の回動が停止する。
【0052】
(e) 操作具75の第2係止突起80が案内斜面84の段差部83に当接すると同時に、操作具75の第1係止突起79が第2単位金型41の係止溝71に嵌合して、第2単位金型41と第1単位金型31との相対回動運動も規制される(図9(c))。なお、第2係止突起80が案内斜面82に入った以降で段差部84に当接するまでの間の任意のタイミングで、操作具75の第1係止突起79が係止溝71に嵌合するように設定することでもできる。
この状態で、第2単位金型41の成形部42は、第1単位金型31の収容凹部35に収容されてB状態となる。B状態となった段階で、第1第2単位金型の成形部の最大高さHは「H<H01」となるので、これ以降に、成形した羽根車1の導入路20の外周20a(高さH01車)を抜ける高さとなるので、導入路20から抜くことができる(図6参照、図1参照)。
【0053】
(f) 操作具75の第1係止突起79が係止溝71に嵌合係止し、第2係止突起80が案内斜面の段差部に当接した時点で、第1単位金型31、第2単位金型41及び単位金型基部28とが一体となって、以降は矢示I方向に(中心63から放射状に)移動して(後退して)、第2位置となる。この状態で、第1第2単位金型31、41は、成形した羽根車1の導入路20から抜けるので、羽根車1を傷つけることなく容易に取り出すことができる(図4参照)。
【0054】
(g) 続いて、再度成形する場合には、第1単位金型31、第2単位金型41及び単位金型基部28とが一体となったB状態を維持して、矢示J方向(中心63側に向けて)移動させる。
【0055】
(h) 続いて、所定位置で、第1単位金型31の案内外面49aを単位金型基部28の案内内面29周りに摺動させて、矢示F方向に回転させる(図9(d))。この際、操作具75の第1係止突起79が係止溝71に嵌合係止した状態であるので、第2単位金型41は第1単位金型31と一体に回動する。この際、操作具75の第2係止突起80は案内斜面に沿って矢示F方向に移動しつつ係止縁83に向いつつ、傾斜分だけ回転軸78周りに操作具75は回動する。
【0056】
(i) 操作具75の第2係止突起80が係止縁83に至った状態で、回動した操作具75で、第1係止突起79が係止溝71から外れ、第2単位金型41が第1単位金型31との一体移動が解除され、第1単位金型31の回動が停止して第2単位金型41のみが矢示F方向に回動する。第2単位金型41は収容凹部35から抜けだし、矢示F方向に回動しながら上昇して成形位置(第1位置)に向かう。
【0057】
(j) 第1単位金型31と第2成形金型41は、両方が第1位置に至った状態で、成形部32の先端32aと成形部42の先端42aが互いに上下に重なるように移動して、成形状態(A状態)をとることができる(図9(e)、図10(a))。この場合、第1単位金型31が第1位置の僅か手前で一旦静止し、続いて第2成形金型41を回転させてB状態を形成し、その後、一体となった第1単位金型31と第2単位金型41とを回動して第1位置に配置するように制御することもできる。
他の必要な金型も第1位置・A状態に至り、同様に、ヘッダー62から樹脂を注入して羽根車1を成形する(図3参照)。
【符号の説明】
【0058】
1 羽根車
3、3A、3B 羽根車の羽根
4 羽根の内周縁
4a 羽根の外周縁
5 羽根の下面
5a 羽根の上面
6 羽根の側壁
7 羽根の凸側
7a 羽根の凹側
10 羽根車の中心(成形型の中心)
11 羽根車の第1円板
11a 第1円板の内面
11b 第1円板の外面
12 第1円板の外周縁
13 開口
15 羽根車の第2円板
15a 第2円板の内面
15b 第2円板の外面
16 第2円板の外周縁
17 第2円板の内周縁
18 第2円板の開口
20 羽根車の導入路
22 連結部材
23 第1連結杆(連結部材)
23a 第1連結杆の一端部
24 第2連結杆(連結部材)
24b 第2連結杆の他端部
28 単位金型基部
29 案内内面(単位金型基部)
30 単位金型
31 単位金型の第1単位金型
32 第1単位金型の成形部
32a 第1単位金型の成形部の先端
32b、32c 第1単位金型の成形部の側面
33 第1単位金型の成形部の上面
33a 第1単位金型の成形部の上面の縁
34 第1単位金型の成形部の下面
35 第1単位金型の成形部の凹部
36 第1単位金型の成形部の凹部の底
37 第1単位金型の成形部の円弧状凹面(円板成形部)
38 第1単位金型の基部
39 第1単位金型の基部の案内内面
39a 基部の案内外面
41 単位金型の第2単位金型
42 第2単位金型の成形部
42a 第2単位金型の成形部の先端
42b 第2単位金型の成形部の側面
43 第2単位金型の成形部の上面
44 第2単位金型の成形部の下面
45 第2単位金型の成形部の最高高さ位置
47 第2単位金型の成形部の円弧状凹面(円板成形部)
48 第2単位金型の基部
49 第2単位金型の基部の案内外面
51 ストッパー突起(ストッパー)
51a ストッパー突起の回転軸
51b ストッパー突起の案内ピン
52 ストッパー切り欠き(ストッパー)
53 ストッパー案内(ストッパー)
54 ストッパー操作部(ストッパー)
55 操作具
55a 操作具の短い腕
55b 操作具の長い腕
55c 操作具の回転軸
55d 操作具の係止爪
55e 操作具のばね
57 単位金型駆動部
60 成形型
61 成形型のハウジング(基台)
62 成形型のヘッダー
63 成形型の中心
71 係止溝(案内外面49。ストッパー)
72 係止条(案内外面49。ストッパー)
73 係止条の傾斜面
75 操作具(ストッパー)
76 操作具の第1腕
77 操作具の第2腕
78 操作具の回転軸
79 第1腕の第1係止突起
80 第2腕の第2係止突起
81 操作具のばね
82 案内斜面(案内内面29。ストッパー)
83 案内斜面の係止縁
84 案内斜面の段差部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心から放射状に配置した多数の羽根を、前記中心を合わせた第1円板と第2円板とで挟んだ構造の羽根車を、樹脂で一体成形するための金型であって、以下のように構成したことを特徴とする羽根車の成形型。
(1) 成形される羽根車は以下のような構成とする。
(a) 前記羽根は一回転方向に凸となるように湾曲して形成され、
(b) 前記一つの羽根の放射状側の端と円板の中心とを結ぶ直線上に、隣接する羽根が交差する。
(c) 前記羽根は、外周側の端縁は高さH01で形成され、内周側に向けて徐々に高さを大きくして、中心側の端縁は高さH02(>H01)で形成される。
(d) 前記羽根の高さに応じて前記第1円板と第2円板の間隙は外周側でH01、内周側でH02、で形成される。
(2) 前記成形型は、成形予定の隣接する羽根の間隙に挿入できる成形部を有する単位金型と、隣接する前記単位金型を連結する連結部材とを含む構成とする。前記単位金型は、求心側の第1位置と放射側の第2位置をとることができ、前記連結部材はこの各単位金型の移動を案内する。
かつ、前記第1位置で、前記単位金型は前記成形部を成形予定の隣接する2枚の羽根の間の間隙に嵌挿し、間隙に面する前記両羽根の側壁及び第1円板、第2円板の羽根側の面を成形する。かつ前記第2位置で、前記単位金型は、前記間隙から放射状に後退して、前記間隙から離れることができる。
(3) 前記単位金型は、第1単位金型と第2単位金型とからなり、前記第1単位金型の成形部の下面が前記第1円板を成形でき、前記第2単位金型の成形部の上面が前記第2円板を成形でき、前記第1単位金型の成形部の側面と第2単位金型の成形部の側面とが協働して、羽根の側壁を成形できる。
(4) 前記第1単位金型の成形部は、上面側に、前記第2単位金型の成形部を収容する収容凹部が形成され、前記収容凹部の縁と第1単位金型の成形部の外周縁との間に傾斜面が形成さる。前記収容凹部の底の形状は第2単位金型の成形部の下面の形状と略同一する。
(5) 前記第1単位金型と前記第2単位金型とは相対的にA状態とB状態とを取ることができ、
前記A状態は、第1単位金型の成形部の先端側と第2単位金型の成形部の先端側が重なる成形状態であり、
前記B状態は、第2単位金型の成形部が第1単位金型側に沈みながら相対的に後退して、第2単位金型の成形部が第1金型の収容凹部に収容される後退状態である。
(6) 前記第1単位金型が第1位置のときにA状態とB状態を取り、第2位置のときにB状態を取れる。
(7) 前記第1単位金型と前記第2単位金型との間に、前記B状態を保持するストッパーを、係脱可能に形成する。
【請求項2】
以下のように構成したことを特徴とする請求項1記載の羽根車の成形型。
(1) 成形型は、成形型基台に対して、等間隔環状に単位金型を配置し、前記各単位金型を中心から半径方向に、放射状及びに求心状に移動可能とする。
(2) 前記成形型基台で、前記隣接する単位金型の間に求心状に第1連結杆を配置する。
(3) 前記第1連結杆の放射側の端部を前記金型基台に回転自在に取り付ける。
(4) 前記隣接する各単位金型に、第2連結杆の一端部を、夫々回転自在に取り付けし、前記各第2連結杆の他端部を、前記第1連結杆の中間部に、回転自在でかつ前記第1連結杆の軸方向に移動可能に取り付ける。
【請求項3】
以下のように構成したことを特徴とする請求項1記載の羽根車の成形型。
(1) 第1単位金型の基部に円弧状の案内内面を形成し、第2単位金型の基部に円弧状の案内外面を形成する。
(2) 前記案内内面と案内外面とが互いに摺動して、前記第1単位金型と第2単位金型とは回動して、A状態及びB状態をとることができる。
(3) 前記第2単位金型の案内外面の近傍に、前記案内内面側に付勢して出没するストッパー突起を取り付ける。
(4) 前記第1単位金型の案内内面に前記ストッパー突起を受ける切り欠きを形成する。
(5) 前記ストッパー及びストッパー突起は、第1位置の前記A状態で「解除状態」にあり、成形完了後に、前記B状態に変化させて「係止状態」としてB状態を維持して、成形した羽根車から前記第1単位成形型及び第2単位成形型を放射状に抜くことができるように制御されている。
【請求項4】
中心から放射状に配置した多数の羽根を、前記中心を合わせた第1円板と第2円板とで挟んだ構造の羽根車を、樹脂で一体成形するための金型であって、以下のように構成したことを特徴とする羽根車の成形方法。
(1) 成形される羽根車は以下のような構成とする。
(a) 前記羽根は一回転方向に凸となるように湾曲して形成され
(b) 前記一つの羽根の放射状側の端と円板の中心とを結ぶ直線上に、隣接する羽根が交差する。
(c) 前記羽根は、外周側の端縁は高さH01で形成され、内周側に向けて徐々に高さを大きくして、中心側の端縁は高さH02(>H01)で形成される。
(d) 前記羽根の高さに応じて前記第1円板と第2円板の間隙は外周側でH01、内周側でH02、で形成される。
(2) 成形型は、成形予定の隣接する羽根の間隙に挿入できる成形部を有する単位金型を環状に配置し、前記隣接する単位金型を連結部材で連結して構成する。
かつ、前記単位金型は、第1単位金型と第2単位金型とからなり、前記第1単位金型の成形部の下面が前記第1円板を成形でき、前記第2単位金型の成形部の上面が前記第2円板を成形でき、前記第1単位金型の成形部の側面と第2単位金型の成形部の側面とが共同して、羽根の側壁を成形できる。
かつ、前記第1単位金型の成形部は、上面側に、前記第2単位金型の成形部を収容する収容凹部が形成され、収容凹部の縁と第1単位金型の成形部の外周縁との間に傾斜面が形成さる。前記収容凹部の底の形状は第2単位金型の成形部の下面の形状と略同一する。
かつ、前記単位金型は、求心側の第1位置と放射側の第2位置をとることができ、
前記第1単位金型と前記第2単位金型とは相対的にA状態とB状態とを取ることができ、前記A状態は、前記第1単位金型の成形部の先端側と前記第2単位金型の成形部の先端側が重なる成形状態であり、
前記B状態は、前記第2単位金型の成形部が、前記第1単位金型側に沈みながら相対的に後退して、前記第2単位金型の成形部が第1金型の収容凹部に収容される後退状態である。
(3) まず、前記単位金型は第2位置で、前記第1単位金型と前記第2単位金型とはストッパーによりB状態を維持した状態にある。
(4) 続いて、前記各単位金型を前記連結部材で一斉に第1位置に向けて移動する。
(5) 続いて、前記第1単位金型と前記第2単位金型とのストッパーを解除して、B状態からA状態に変更するとともに第1位置に位置する。
第1位置のA状態で、前記単位金型は成形予定の隣接する2枚の羽根の間の間隙位置にあり、成形型に樹脂を注入して、間隙に面する前記両羽根の側壁及び第1円板、第2円板の羽根側の面を成形する。
(6) 次ぎに、第1位置で、前記第2単位金型を移動させて、前記第1単位金型と前記第2金型とをB状態として、前記単位金型の成形部の高さをH01以下とし、ストッパーでB状態を維持する。
(7) 続いて、B状態を維持したままま、前記各単位金型を前記連結部材で一斉に、放射状に移動して、成形した前記羽根車の間隙から抜き出し、第2位置として、成形した前記羽根車を前記成形型から取り出す。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2012−148562(P2012−148562A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−290407(P2011−290407)
【出願日】平成23年12月29日(2011.12.29)
【出願人】(504448586)松田金型工業株式会社 (4)
【Fターム(参考)】