説明

耐高温腐食合金材、遮熱コーティング材、タービン部材、及びガスタービン

【課題】耐酸化性及び延性に優れ、超高温で使用されるガスタービンに適用可能な耐高温腐食合金材、及び、これを備えた遮熱コーティング材、タービン部材、ガスタービンを提供する。
【解決手段】重量比でCo:15〜30%、Cr:10〜30%、Al:4〜15%、Y:0.1〜3%、Re:0.1〜1%を含有し、残部が実質的にNiからなることを特徴とする耐高温腐食合金材。及び、重量比でNi:20〜40%、Cr:10〜30%、Al:4〜15%、Y:0.1〜3%、Re:0.1〜5%を含有し、残部が実質的にCoからなることを特徴とする耐高温腐食合金材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐高温腐食合金材、これを備えた遮熱コーティング材、タービン部材、及びガスタービンに関し、特に優れた耐酸化性と延性とを備えた耐高温腐食合金材に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、産業用ガスタービンにおいて、遮熱コーティング材(Thermal Barrier Coating)は、動翼や静翼などのタービン部材の形状や冷却構造を変えずに耐熱合金基材の温度を低減できることから、必須の技術となっている。
【0003】
一般に、遮熱コーティング材は、耐熱合金基材上に、耐酸化性に優れたMCrAlY合金(Mは、Ni、Co、Fe、またはこれらの合金を表す)からなる金属結合層と、主としてジルコニア系セラミックスからなる低熱伝導性のセラミックス層とを順次積層させた2層構造となっている。
【0004】
遮熱コーティング材の問題の1つとして、例えば1500℃を超える高温でガスタービンを長時間使用することによって、金属結合層上に酸化スケール(Thermally Grown Oxide)が発生することが挙げられる。酸化スケールが成長すると、セラミックス層内に応力が生じて亀裂が発生し、セラミックス層の剥離に繋がる恐れがある。従って、金属結合層の耐酸化性を向上させて酸化スケールの成長速度を抑制する必要がある。
【0005】
また、タービンの発停に伴う温度変化により、タービン部材に熱応力が発生する。そのため、タービンの運転中に金属結合層に割れが発生する恐れがある。従って、金属結合層の延性を向上させることも必要である。
【0006】
CoNiCrAlY(Co−32Ni−21Cr−8Al−0.5Y)合金が金属結合層材料として多用されるが、1500℃級のガスタービンでの使用には耐えられるものの、近年開発が進んでいる1700℃級の超高温ガスタービンに適用するには耐酸化性及び延性が不十分である。そのため、超高温での使用に耐え得る合金の開発が行われている。例えば、特許文献1及び特許文献2に、耐酸化性及び延性を向上させた耐高温腐食合金材が開示されている。
【特許文献1】特開2003−183752号公報
【特許文献2】特開2003−183754号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、耐酸化性及び延性に優れ、超高温で使用されるガスタービンに適用可能な耐高温腐食合金材、及び、これを備えた遮熱コーティング材、タービン部材、ガスタービンを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の耐高温腐食合金材は、重量比でCo:15〜30%、Cr:10〜30%、Al:4〜15%、Y:0.1〜3%、Re:0.1〜1%を含有し、残部が実質的にNiからなることを特徴とする。
【0009】
以下に、本発明のNiを素地とした耐高温腐食合金材について、各成分の作用と含有量の限定理由を説明する。
Co:Coは、添加量を多くするほど耐高温腐食合金材の延性を向上させる効果を有する。本発明の耐高温腐食合金材では、15重量%以上30重量%以下の含有量とされる。15重量%未満では、延性向上の十分な効果が得られない。30重量%を超えて含有させても得られる効果は変わらない上、コスト増加を招く。
【0010】
Cr:Crは、高温で保護皮膜を形成するため、含有量を多くするほど耐高温腐食合金材の耐酸化性を向上させる効果を有する。含有量が10重量%未満では十分な耐酸化性を得ることができず、30重量%を超えると合金材が硬くなり延性が低下する。耐酸化性と延性とのバランスの点から、Cr含有量は10重量%以上30重量%以下、好ましくは15重量%以上25重量%以下とされる。
【0011】
Al:Alは、耐高温腐食合金材を遮熱コーティング材の金属結合層に用いた場合、金属結合層表面に緻密なAlスケールを形成し、金属結合層の耐酸化性を向上させ、遮熱コーティング材の耐酸化性を向上させる効果がある。本発明の耐高温腐食合金材では、含有量を4重量%以上15重量%以下、好ましくは6重量%以上12重量%以下とされる。含有量が4重量%未満では、(Ni,Co)(Cr,Al)スピネル複合酸化物が生成し、緻密なAlスケールが生成されなくなり、耐酸化性を向上させる効果が得られない。また、(Ni,Co)(Cr、Al)スピネル複合酸化物は体積が大きいため、(Ni,Co)(Cr、Al)スピネル複合酸化物が生成すると、セラミックス層に応力が発生して亀裂発生や剥離が発生しやすくなる。含有量が15重量%を超えると、Niとの金属間化合物(Ni−Al)相が形成されるので、耐高温腐食合金材が硬くなり延性が低下する。
【0012】
Y:Yは、金属結合層上に発生したAlスケールの剥離を防止する作用を有する。本発明の耐高温腐食合金材では、0.1重量%以上3重量%以下、好ましくは0.1重量%以上1重量%以下とされる。0.1重量%未満では、十分な効果が得られない。含有量が3重量%を超えると、金属結合層が脆くなり、耐熱衝撃性が低下する。
【0013】
Re:Reは、金属結合層表面に形成されるAlスケールをより緻密なものとし、耐高温腐食合金材の耐酸化性を向上させる効果がある。また、Alスケール直下に形成される酸化変質層において、CrRe化合物を形成して酸化変質層の脆化を防止して耐熱衝撃性の低下を抑制し、かつ、Alスケールの成長を阻害して、割れや剥離の発生を防止する。このため、遮熱コーティング材の寿命を延ばす効果を有する。すなわち、酸化変質層は、Alスケールの形成により、金属結合層表面近傍のAl濃度が低下し、CrやNiなどの濃度が相対的に上昇することにより形成されるが、CrやNiの濃度が濃い状態では酸化変質層内にNiCrOやCrなどの低密度で脆い化合物が生成しやすくなる。Reを含有することにより、酸化変質層においてCrRe化合物が形成されるため、酸化変質層でのCr濃度が低下するので、上記の低密度化合物の生成を防止することができる。本発明の耐高温腐食合金材では、Re含有量は0.1重量%以上1重量%以下、好ましくは0.2重量%以上1重量%以下、より好ましくは0.4重量%以上0.6重量%以下とされる。0.1重量%未満ではCrRe化合物がほとんど生成せず、1重量%を超えると耐高温腐食合金材が硬くなって延性が低下する。
【0014】
上記発明において、重量比でRu:0.1〜1%を含有することが好ましい。
【0015】
Ru:Ruは、Ni素地中に固溶し、Alの拡散速度を低下させてAlスケール及び酸化変質層の成長速度を低下させることによって、耐高温腐食合金材の耐酸化性を向上させる効果がある。Reの場合、多量添加により耐高温腐食合金材の耐酸化性及び耐熱衝撃性を向上させることができるが、CrRe化合物の形成により耐高温腐食合金材の硬さが上昇する。一方、Ruは固溶硬化であるので硬さの上昇を抑制できる。従って、ReとRuとを含有することにより、延性及び耐酸化性の両方を向上させることができる。本発明の耐高温腐食合金材では、Ruの含有量は0.1重量%以上1重量%以下とされる。含有量が0.1重量%未満ではRuの効果を得ることができない。含有量が1重量%を超えると、固溶硬化により耐高温腐食合金材の延性が低下する。
【0016】
上記発明において、前記Reの含有量と前記Ruの含有量との合計が、重量比で0.2〜1%とされることが好ましい。
【0017】
Reの含有量とRuの含有量との合計が、0.2重量%以上1重量%以下、好ましくは0.4重量%以上0.6重量%以下の範囲とすることにより、優れた延性を有し、かつ、Alスケールの成長速度が遅く耐酸化性に優れる耐高温腐食合金材となる。
【0018】
また、本発明の耐高温腐食合金材は、重量比でNi:20〜40%、Cr:10〜30%、Al:4〜15%、Y:0.1〜3%、Re:0.1〜5%を含有し、残部が実質的にCoからなることを特徴とする。
【0019】
以下に、本発明のCoを素地とした耐高温腐食合金材について、各成分の作用と含有量の限定理由を説明する。但し、上記Ni素地耐高温腐食合金材と重複する部分は説明を省略する。
Ni:Niは、高温で保護皮膜を形成するため、含有量が多くなるほど耐高温腐食合金材の延性を向上させる効果を有する。本発明の耐高温腐食合金材では、Niの含有量は20重量%以上40重量%以下とされる。20重量%未満では十分な効果が得られず、40重量%を超えて含有させても得られる効果は変わらない。
【0020】
Re:Reは、金属結合層表面に形成されるAlスケールを緻密化して耐高温腐食合金材の耐酸化性を向上させる。また、Alスケール直下の酸化変質層内に低密度で脆いCoCrOやCrなどの化合物の生成を防止して、耐熱衝撃性の低下を抑制する。本発明の耐高温腐食合金材では、含有量は0.1重量%以上5重量%以下とされる。Re含有量が5重量%を超えると、CrRe層により耐高温腐食合金材が硬くなり延性が低下する。
【0021】
上記発明において、重量比でRu:0.1〜5%を含有することが好ましい。
【0022】
Ru:Ruの含有量は、0.1重量%以上5重量%以下とされる。5重量%を超えると、固溶硬化により耐高温腐食合金材が硬くなり延性が低下する。
【0023】
上記発明において、前記Reの含有量と前記Ruの含有量との合計が、重量比で1〜5%とされることが好ましい。
【0024】
Coを素地とした耐高温腐食合金材では、Reの含有量とRuの含有量との合計が、1重量%以上5重量%以下、好ましくは2重量%以上4重量%以下の範囲とすることにより、優れた延性を有し、かつ、Alスケールの成長速度が遅く耐酸化性が向上する。
【0025】
また、本発明の遮熱コーティング材は、耐熱合金基材上に、上記のNiまたはCoを素地とした耐高温腐食合金材を用いて形成された金属結合層と、該金属結合層上に積層されたセラミックス層とが形成されたことを特徴とする。
【0026】
上述したNiまたはCoを素地とした耐高温腐食合金材を用いて形成された金属結合層は、優れた耐酸化性と延性を有するため、剥離が発生しにくく長寿命の金属結合層を構成することができる。従って、本発明に係る遮熱コーティング材は、酸化スケールの成長によるセラミックス層の亀裂発生や剥離を防止するとともに、タービン発停などの熱サイクルに伴う金属結合層の亀裂発生を防止することができるため、耐久性に優れる。
【0027】
この場合、前記金属結合層が、上記したNiまたはCoを素地とした耐高温腐食合金材の粉末を溶射することにより形成されることが好ましい。溶射法により金属結合層を形成すれば、タービンなどの大型部材に対して金属結合層を容易に形成することができる。
【0028】
本発明のタービン部材は、上記の遮熱コーティング材を備えることを特徴とする。上記遮熱コーティング材を用いることによって、セラミックス層の亀裂や剥離、及び、金属結合層の割れが発生しにくく、高温での耐久性に優れた長寿命のタービン部材を提供することができる。
【0029】
本発明のガスタービンは、上記タービン部材を備えることを特徴とする。本発明のガスタービンは、耐酸化性及び延性に優れる金属結合層を備えた遮熱コーティング材が設けられたタービン部材により構成されるため、1700℃級の高温で長時間に渡り安定に運転することが可能である。
【発明の効果】
【0030】
本発明の耐高温腐食合金材は、重量比でCo:15〜30%、Cr:10〜30%、Al:4〜15%、Y:0.1〜3%、Re:0.1〜1%を含有し、残部が実質的にNiからなる組成とされる。また、本発明の耐高温腐食合金材は、重量比でNi:20〜40%、Cr:10〜30%、Al:4〜15%、Y:0.1〜3%、Re:0.1〜5%を含有し、残部が実質的にCoからなる組成とされる。上記NiまたはCoを素地とした耐高温腐食合金材を用いて遮熱コーティング材の金属結合層を構成することにより、金属結合層の耐酸化性及び延性を向上させることができる。これにより、遮熱コーティング材のセラミックス層の剥離や金属結合層の割れなどの発生を抑制し、超高温ガスタービンに適用可能な遮熱コーティング材を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態を説明する。
図1は、本実施形態に係る遮熱コーティング材を適用したタービン部材の断面の模式図である。タービン動翼などの耐熱合金基材11上に金属結合層12が形成され、金属結合層12上にセラミックス層13が形成される。
【0032】
本実施形態に係る金属結合層12は、重量比でCo:15〜30%、Cr:10〜30%、Al:4〜15%、Y:0.1〜3%、Re:0.1〜1%を含有し、残部が実質的にNiからなる耐高温腐食合金材を用いて形成される。上記組成の耐高温腐食合金材は、更に重量比でRu:0.1〜1%を含有することができる。この場合、Reの含有量とRuの含有量との合計が重量比で0.2〜1%であることが好ましい。
【0033】
また、本実施形態に係る金属結合層12は、重量比でNi:20〜40%、Cr:10〜30%、Al:4〜15%、Y:0.1〜3%、Re:0.1〜5%を含有し、残部が実質的にCoからなる耐高温腐食合金材を用いて形成されても良い。上記組成の耐高温腐食合金材は、更に重量比でRu:0.1〜5%を含有することができる。この場合、Reの含有量とRuの含有量との合計が重量比で1〜5%であることが好ましい。
【0034】
上記NiまたはCoを素地とした耐高温腐食合金材は、耐酸化性及び延性に優れる。従って、本実施形態に係る金属結合層12は、セラミックス層の剥離や金属結合層の割れなどが発生しにくく、そのため、遮熱性及び耐熱衝撃性に優れる遮熱コーティング材となる。
【0035】
上記金属結合層12は、溶射法によって製膜される。上記NiまたはCoを素地とした耐高温腐食合金材は、AlやCr等の活性な金属元素を含むため、溶射用粉末はガスアトマイズ法を用いて製造される。製膜方法は、低圧プラズマ溶射法が好適である。
【実施例】
【0036】
以下、実施例により本実施形態の耐高温腐食合金材を詳細に説明する。
(実施例1)
厚さ5mmの合金金属基材(商標名:IN−738LC、化学組成:Ni−16Cr−8.5Co−1.75Mo−2.6W−1.75Ta−0.9Nb−3.4Ti−3.4Al(質量%))上に、表1に示す各組成の合金粉末を低圧プラズマ溶射法にて製膜し、膜厚100μmの金属結合層を形成した試料を作製した。なお、比較合金とは、従来より金属結合層として使用されているCoNiCrAlY合金とした。
【0037】
各試料の金属結合層のビッカース硬さ測定を、荷重0.1kgにて実施した。各試料を900℃1000時間の条件で熱処理した後、試料の断面を走査型電子顕微鏡で観察して金属結合層上に形成された酸化スケール層の厚さを計測し、酸化量とした。表1に、ビッカース硬さと酸化量の結果を示す。
【0038】
【表1】

【0039】
合金A及び合金A−1乃至合金A−4は、Co含有量のみを変えた結果である。合金A及び合金A−1乃至合金A−4は、比較合金よりも酸化量が少なく、耐酸化性が向上した。合金A−1(Co含有量10wt%)は、比較合金よりも硬さが大幅に大きかった。合金A−3と合金A−4とでは、硬さがほぼ同程度であり、含有量が30wt%を超えるとCoによる延性向上の効果が変わらないとの結果を得た。
【0040】
合金A及び合金A−5乃至合金A−8は、Cr含有量のみを変えた結果である。Cr含有量が多くなると耐酸化性が向上し硬さが上昇する傾向が見られた。合金A−5(Cr含有量9wt%)は、硬さが低く延性に優れるが、耐酸化性が比較合金よりも悪かった。合金A−8(Cr含有量35wt%)は、耐酸化性に優れるが、比較合金よりも大幅に硬くなった。Cr含有量が10wt%以上30wt%以下で、耐酸化性に優れ、比較合金と同程度の硬さが得られた。
【0041】
合金A及び合金A−9乃至合金A−12は、Al含有量のみを変えた結果である。Crと同様に、Al含有量が多くなると耐酸化性が向上するが、硬さが上昇した。Al含有量が4wt%以上15wt%以下で、耐酸化性に優れ、比較合金と同程度の硬さが得られた。
【0042】
合金A及び合金A−13乃至合金A−16は、Y含有量のみを変えた結果である。Y含有量が多くなると耐酸化性が向上するが、硬さが上昇した。特に、合金A−13(Y含有量5wt%)は、比較合金と比べて硬さが非常に大きくなった。Y含有量0.1wt%以上3wt%以下で、耐酸化性に優れ、比較合金と同程度の硬さが得られた。
【0043】
合金A及び合金A−17乃至合金A−20は、Re含有量のみを変えた結果である。Re含有量が多くなると耐酸化性が向上するが、硬さが上昇した。Re含有量0.1wt%以上1wt%以下で、耐酸化性に優れ、比較合金と同程度の硬さが得られた。
【0044】
合金A−21乃至合金A−25は、更にRuを含有させた結果である。Ru含有量0.1wt%以上1wt%以下で、耐酸化性に優れ、比較合金と同程度の硬さが得られた。合金A−23及び合金A−24は、Re含有量とRu含有量との合計が0.2wt%から1wt%の範囲内であり、硬さ及び耐酸化性のバランスが良好であった。
また、合金AのRe含有量と、合金A−23のRe含有量とRu含有量の合計は同じであるが、合金A−23の方が硬さが小さくなった。すなわち、Ruを含有させることにより、硬さ上昇を抑えることができた。
【0045】
本発明の範囲内の組成例である合金Bでも、耐酸化性に優れ硬さが良好な金属結合層を得ることができた。
【0046】
(実施例2)
厚さ5mmの合金金属基材(商標名:IN−738LC、化学組成:Ni−16Cr−8.5Co−1.75Mo−2.6W−1.75Ta−0.9Nb−3.4Ti−3.4Al(質量%))上に、表2に示す各組成の合金粉末を低圧プラズマ溶射法にて製膜し、膜厚100μmの金属結合層を形成した試料を作製した。なお、比較合金とは、従来より金属結合層として使用されているCoNiCrAlY合金とした。
【0047】
各試料の金属結合層のビッカース硬さ及び酸化量を、実施例1と同様にして測定した。表2に、ビッカース硬さと酸化量の結果を示す。
【0048】
【表2】

【0049】
合金C及び合金C−1乃至合金C−4は、Ni含有量のみを変えた結果である。合金C及び合金C−1乃至合金C−4は、比較合金よりも酸化量が少なく、耐酸化性が向上した。合金C−1(Ni含有量15wt%)は、比較合金よりも硬さが大幅に大きかった。合金A−3と合金A−4とでは、硬さがほぼ同程度であり、Ni含有量が40wt%を超えた場合には、Ni添加による延性向上の効果が得られなかった。
【0050】
合金C及び合金C−5乃至合金C−8は、Cr含有量のみを変えた結果である。Cr含有量が多くなると耐酸化性が向上し硬さが上昇する傾向が見られた。合金C−5(Cr含有量9wt%)は、硬さが低く延性に優れるが、耐酸化性が比較合金よりも悪かった。合金C−8(Cr含有量35wt%)は、耐酸化性に優れるが、比較合金よりも大幅に硬くなった。Cr含有量が10wt%以上30wt%以下で、耐酸化性に優れ、比較合金と同程度の硬さを有する金属結合層が得られた。
【0051】
合金C及び合金C−9乃至合金C−12は、Al含有量のみを変えた結果である。Al含有量が多くなると耐酸化性が向上するが、硬さが上昇した。Al含有量が4wt%以上15wt%以下で、耐酸化性に優れ、比較合金と同程度の硬さが得られた。
【0052】
合金C及び合金C−13乃至合金C−16は、Y含有量のみを変えた結果である。Y含有量が多くなると耐酸化性が向上するが、硬さが上昇した。Y含有量0.1wt%以上3wt%以下で、耐酸化性に優れ、比較合金と同程度の硬さが得られた。
【0053】
合金C及び合金C−17乃至合金C−20は、Re含有量のみを変えた結果である。Re含有量が多くなると耐酸化性が向上するが、硬さが上昇した。Re含有量0.1wt%以上5wt%以下で、耐酸化性に優れ、比較合金と同程度の硬さが得られた。
【0054】
合金C−21乃至合金C−25は、更にRuを含有させた結果である。Ru含有量が多くなると耐酸化性が向上し硬さが上昇する傾向が見られた。Ru含有量0.1wt%以上5wt%以下で、耐酸化性に優れ、比較合金と同程度の硬さが得られた。合金C−22及び合金C−23は、Re含有量とRu含有量との合計が1wt%から5wt%の範囲内であり、硬さ及び耐酸化性のバランスが良好であった。
【0055】
合金Dは、本発明の範囲内の組成例である。合金Dでも、耐酸化性に優れ硬さが良好な金属結合層を得ることができた。
【0056】
合金D−1乃至合金D−3は、合金Dの組成に対して、更にRuを含有させた結果である。いずれも、耐酸化性に優れ、比較合金と同程度の硬さが得られた。合金D−1は、Re含有量とRu含有量との合計が1wt%から5wt%の範囲内であり、硬さ及び耐酸化性のバランスが良好であった。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の遮熱コーティング材を適用したタービン部材の断面の模式図である。
【符号の説明】
【0058】
11 耐熱合金基材
12 金属結合層
13 セラミックス層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量比でCo:15〜30%、Cr:10〜30%、Al:4〜15%、Y:0.1〜3%、Re:0.1〜1%を含有し、残部が実質的にNiからなることを特徴とする耐高温腐食合金材。
【請求項2】
重量比でRu:0.1〜1%を含有することを特徴とする請求項1に記載の耐高温腐食合金材。
【請求項3】
前記Reの含有量と前記Ruの含有量との合計が、重量比で0.2〜1%とされたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の耐高温腐食合金材。
【請求項4】
重量比でNi:20〜40%、Cr:10〜30%、Al:4〜15%、Y:0.1〜3%、Re:0.1〜5%を含有し、残部が実質的にCoからなることを特徴とする耐高温腐食合金材。
【請求項5】
重量比でRu:0.1〜5%を含有することを特徴とする請求項4に記載の耐高温腐食合金材。
【請求項6】
前記Reの含有量と前記Ruの含有量との合計が、重量比で1〜5%とされたことを特徴とする請求項4または請求項5に記載の耐高温腐食合金材。
【請求項7】
耐熱合金基材上に、請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の耐高温腐食合金材を用いて形成された金属結合層と、該金属結合層上に積層されたセラミックス層とが形成されたことを特徴とする遮熱コーティング材。
【請求項8】
前記金属結合層が、請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の耐高温腐食合金材の粉末を溶射することにより形成されたことを特徴とする請求項7に記載の遮熱コーティング材。
【請求項9】
請求項7または請求項8に記載の遮熱コーティング材を備えることを特徴とするタービン部材。
【請求項10】
請求項9に記載のタービン部材を備えることを特徴とするガスタービン。

【図1】
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【公開番号】特開2009−242836(P2009−242836A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−88591(P2008−88591)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】