説明

脂肪族ポリエステル組成物およびその製造方法

【課題】非相溶性高分子ブレンドの新規な溶融混練物並びに樹脂成形物およびそれらの製造方法の提供。
【解決手段】特定割合の非相溶性高分子ブレンドに相容化剤を添加して高分子間界面において反応を誘起するとともに、その反応を高せん断場により促進・効率化させるため、内部帰還型スクリュー搭載の微量型高せん断成形加工機を用いて、スクリューの回転数が400rpmから1200rpmで、該ブレンドを溶融混練する際に、内部帰還型スクリューの回転数、一定回転数下での混練時間など、高せん断成形加工条件を整えることにより、均一かつ微視的な分散構造を有し、かつ機械的性質に優れた新規な溶融混練物を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部帰還型スクリュー搭載の微量型高せん断成形加工機を用いて、非相溶性高分子ブレンドに相容化剤を添加して溶融混練することにより、一方の高分子成分をマトリクスとし、このマトリクスに他方の高分子成分を、その分散相サイズを微細に制御して分散し、微視的分散構造を有する新規な溶融混練物及びその製造方法、新規な溶融混練物から得られる新規な成形体に関する。
【0002】
さらに詳しくは、本発明は、例えば、溶融混練物の内部構造においてミクロンオーダーの相分離したドメインが観察されないほど相容化が進み、均一かつ微視的な分散構造が形成されたことにより弾性率が低密度ポリエチレンの2倍以上、即ち300 MPa以上であり、かつ破断伸びが低密度ポリエチレンの1/3以上、もしくはポリ乳酸の50倍以上、即ち200%以上である機械的性質を備えた樹脂成形物およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0003】
従来、広く産業界で汎用樹脂として使われてきているポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系樹脂において、材料としての化石資源の依存度を低減化するため、ポリ乳酸(PLLA)等のバイオマス由来の脂肪族ポリエステル系樹脂をブレンドし、エコマテリアル化を図る試みが活発化している。しかしながら、このような試みも上記樹脂同士が非相溶なため、ブレンドしても相分離して微細な構造を形成できず、優れた機械的性能を付与できないでいた。
【0004】
従来、通常の混練押出し機(スクリュー回転数300rpm程度)を用いて非相溶性高分子ブレンド系の単純機械的混合を行った場合、一方の高分子成分の分散相サイズにおける理論的・実験的限界は、350ナノメーター(nm)であると報告されている(非特許文献1参照)。
【0005】
従って、所望の高分子ブレンド物の性能や機能を相乗効果として発現させるために、従来、ブレンド成分の一方もしくは両方と親和性もしくは接着性のある相容化剤を用いて混練を行っていた。例えば、特許文献1の発明は、(A)ポリ乳酸系樹脂、(B)ポリオレフィン系樹脂および(C)相容化剤を配合している。相容化剤には、エチレン/酢酸ビニル共重合体、エチレン/(メタ)アクリル酸エステル共重合体、酸無水物基、カルボキシル基、アミノ基、イミノ基、アルコキシシリル基、シラノール基、シリルエーテル基、ヒドロキシル基またはエポキシ基を含有するポリオレフィン系樹脂、酸無水物基、カルボキシル基、アミノ基、イミノ基、アルコキシシリル基、シラノール基、シリルエーテル基、ヒドロキシル基またはエポキシ基を含有するアクリル系樹脂またはスチレン系樹脂、アイオノマー樹脂を用いる。(C)相容化剤を配合することにより、(A)ポリ乳酸系樹脂と(B)ポリオレフィン系樹脂の親和性が向上し、相構造を制御しやすくし、材料特性を向上させる点では(C)相容化剤として、2種以上を併用配合することが好ましい。本発明において、樹脂組成物を製造する際の溶融混練温度は、170〜250℃が好ましく、175℃〜230℃がさらに好ましく、180〜220℃が特に好ましいとし、具体的には、30mm径の二軸押出機(日本製鋼所製TEX−30α)を用い、シリンダー温度200℃、回転数200rpmの条件で溶融混練を行う。射出成形機(住友重機械工業製SG75H−MIV)を用い、シリンダー温度200℃、金型温度30℃で射出成形を行っている。
【0006】
しかしながら、その発明においては低せん断下での溶融混練であり、相容化剤を添加しても界面での反応が効率良く進まないために、相容化の度合いが不十分であり、機械的特性において幾分改善されていても、格段に改善されているわけではなく、それらの性能や機能を極限まで高めることはできなかった。
【0007】
また、30年前に発見されたリアクティブプロセシング技術はブレンド成分間に存在する官能基間で反応を起こすことにより界面張力を低下させて、分散相サイズを小さくする方法であり(非特許文献1参照)、高分子ブレンド系の分散相サイズをサブミクロンメーター〜数十ナノメーターレベルにまで低減化することに成功している。この場合には、二成分間に反応性基が存在することが必要であり、この反応性基が存在しない場合や適切な反応性基を選択できない場合には、リアクティブプロセシング技術は成立しない結果や、不十分な結果に終わることとなる。
【0008】
非相溶性高分子ブレンド系にあってその機能性に注目してより高度な性能、機能の相乗効果の発現を目指してブレンド化を図る場合は、分子レベルに近いサイズで分散相を制御する必要となる。従来技術の改良によりナノ分散高分子ブレンド物を作製する方法ではこれの要求には対応することができないことがわかる。
【0009】
以上の通りであり、相容化剤等添加する従来の方法で得られる生成物及びリアクティブプロセシング法により得られる反応生成物等の場合には均一性を維持することが困難な状況にあり、従来の発想を替えた手段を開発し、機能性材料である光学材料や電子・電気材料では、できるだけ均一な状態を保って連続的、純粋な微細構造であることが必須とされる。
【0010】
以上のことを背景にして、非相溶性高分子にあって、一方の高分子成分をマトリクスとし、他方の高分子成分を分散させ、その分散相サイズが微細に制御された微視的分散構造を有する高分子ブレンドの押出し物を得る発明、これを成形加工したフィルムやシート状物などを製造する発明が必要とされている。
【0011】
本発明者らは、成形加工などを目的にして、1000rpm以上のスクリュー回転が可能(最高出力3000rpm)な内部帰還型スクリュー搭載の微量型高せん断成形加工機の製作に成功し、すでに特許出願を行っている(特許文献1参照)。この微量型高せん断成形加工機は、「微量型高せん断成形加工機HSE3000mini」という名称ですでに市販されている。この発明に用いられている高せん断成形加工技術を用いて非相溶性高分子にあって、一方の高分子成分をマトリクスとし、他方の高分子成分を分散させ、その分散相サイズが微細に制御された微視的分散構造を有する高分子ブレンド物に対して如何にして適合させて発明を完成させることはできないかということに努力を傾注した。
【0012】
【特許文献1】特開2008−38142号公報
【特許文献2】特開2005−313608号公報
【非特許文献1】U.Sundararaj and C.W.Macosko, Macromolecules, 28,2647,(1995)
【非特許文献2】F.Ide and A.Hasegawa, J.Appl.Polym.Sci., 18,963(1974)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の課題は、上記従来生じていた問題点を解決することを目的とするものであり、非相溶性高分子にあって、一方の高分子成分をマトリクスとし、他方の高分子成分を分散させ、その分散相サイズが微細に制御された微視的分散構造を有する新規な溶融混練状の高分子ブレンド物、及びその溶融混練方法並びにその成形加工物及び成形加工方法を提供することである。
押出し物(フィルムやシート状を含む)を製造する溶融混練方法、および該押出し物を実現することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、以下の点を新たに見出して上記課題を解決した。
非相溶性高分子ブレンド系に対して、相容化剤を添加して非相溶性高分子界面での反応を積極的に誘起するだけでなく、少なくとも2種類の非相溶性のブレンドされた樹脂を、シリンダーと、スクリューと、試料投入部と、加熱部とを備えた溶融混練部に該試料投入部から投入する投入した後、スクリューの回転数;400rpmから1200rpm、せん断速度;600から1800sec−1の条件下に前記非相溶性のブレンドされた樹脂の溶融混練を行うことにより、今回新たに非相溶性高分子にあって、一方の高分子成分をマトリクスとし、他方の高分子成分を分散させ、その分散相サイズが微細に制御された微視的分散構造を有する新規な溶融混練状の高分子ブレンド物を得ることができた。この高分子ブレンド物を用いてその成形加工物及び成形加工方法を得ることが可能となった。
【0015】
具体的には以下の通りである。
(1)少なくとも2種類の非相溶性のブレンドされた樹脂を、シリンダーと、スクリューと、試料投入部と、加熱部とを備えた溶融混練部に該試料投入部から投入する投入工程と、前記スクリューの回転数;400rpmから1200rpm、せん断速度;600から1800sec−1の条件下で前記非相溶性のブレンドされた樹脂の溶融混練を行う溶融混練工程とを備える溶融混練方法。
(2)少なくとも2種類の非相溶性のブレンドされた樹脂をシリンダーと、スクリューと、試料投入部と、加熱部とを備えた溶融混練部に該試料投入部から投入する投入工程と、前記スクリューの回転数;400rpmから1200rpm、せん断速度;600から1800sec−1の条件下で、前記溶融混練した前記樹脂をスクリューの後端から先端に送り前記スクリューの先端の間隙に閉じ込めた後、該間隙から前記スクリューの後端に戻す循環を1分間から10分間行って前記非相溶性のブレンドされた樹脂の溶融混練を行う溶融混練工程と、を備える溶融混練方法。
(3)少なくとも2種類の非相溶性のブレンドされた樹脂をシリンダーと、スクリューと、試料投入部と、加熱部と、シールとを備えた溶融混練部に該試料投入部から投入する投入工程と、前記スクリューの先端面と該先端面に対向したシール面との間隔;0から5mm、スクリューの孔内径;1mmから5mm、好ましくは1mmから3mm、スクリューの回転数;400rpmから1200rpm、せん断速度;600から1800sec−1、加熱温度;室温もしくは非晶性樹脂の場合にはガラス転移点より高い温度を目安に結晶性樹脂の場合にはその融点より高い温度を目安にした条件下で、かつ前記溶融混練した前記樹脂をスクリューの後端から先端に送り前記スクリューの先端の間隙に閉じ込めた後、該間隙から前記スクリューの後端に戻す循環を1分間から10分間行って前記非相溶性のブレンドされた樹脂の溶融混練を行う溶融混練工程と、
を備える溶融混練方法。
【0016】
前記非相溶性のブレンドされた樹脂は、脂肪族ポリエステル系樹脂;10−50重量%、及びポリオレフィン系樹脂;90−50重量%であることが好ましく、さらには、相容化剤としてエポキシ基含有樹脂;1−20重量%が含まれることが好ましい。
【0017】
前記脂肪族ポリエステル系樹脂は、ポリ乳酸(PLLA)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、PBSにコハク酸を共重合したコポリマー(PBSA)又はポリ(ε-カプロラクトン)(PCL)或いはポリブチレンアジペートーブチレンテレフタレート共重合体(PBAT)から選ばれる生分解性の脂肪族ポリエステルやその共重合体であることであることが好ましい。
【0018】
前記ポリオレフィン系樹脂は、低密度ならびに高密度ポリエチレン(PE)あるいは超高分子量ポリエチレン、ポリプロピレン(PP)、エチレン・酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)、環状オレフィン系重合樹脂、エチレンとメタクリル酸とのランダム共重合樹脂(EMAA)であることが好ましい。
【0019】
前記エポキシ基含有樹脂は、エポキシ基を有し、オレフィン系化合物の構造を含有することを特徴とする共重合体であり、例えば(a)エチレン単位を60−99重量%、(b)不飽和カルボン酸グリシジルエステル単位および/または不報和グリシジルエーテル単位を0.1〜30重量、(c)エチレン系不飽和エステル化合物を0〜40重量%からなるエポキシ基含有エチレン共重合体であることが好ましい。
【0020】
溶融混練した樹脂を押出し物として成形して押し出してもよい。
【0021】
本発明は上記課題を解決するために、以上の溶融混練方法により製造されたことを特徴とする押出し物を提供する。
【0022】
前記押出し物は、ロッド、フィルム、シート、ファイバーのいずれか1つである。
【0023】
前記押出し物は、マトリックス樹脂中に分散相が均一に分散されている構成とすることが好ましい。
【0024】
前記樹脂成形物は、弾性率が低密度ポリエチレンの2倍以上、即ち300 MPa以上であり、かつ破断伸びがポリエチレンの1/3以上、もしくはポリ乳酸の50倍以上、即ち200%以上である機械的性質を備えている材料である。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、従来、静置場では相互に溶け合わない非相溶性ブレンド系でも、相容化剤を添加し、内部帰還型スクリュー搭載の微量型高せん断成形加工機を用いて、スクリューの回転数が400rpmから1200rpm、1分から10分の溶融混練を行うことにより、上記構造すなわち微細な分散相を有し、機械的性質に優れた溶融混練された高分子ブレンド押出し物を得ることができる。
【0026】
即ち、本発明により、非相溶性ブレンド系の材料でも、一方の高分子成分をマトリクスとした場合、他方の高分子成分の分散相サイズを微細に制御した微視的分散構造、あるいは両方の高分子成分が微視的に相互に連続的に繋がった構造(共連続構造)等を有し、かつ機械的性質に優れた高分子ブレンド押出し物(フィルムやシート状を含む)を得ることができる。
【0027】
このような構造を有する材料においては、ブレンド成分の一方が他方に微視的に混合していることから、従来、相分離して分散相サイズが大きい(数ミクロンメーター以上)海・島構造(いわゆる「アイランド構造」)になっている材料に比べ、ブレンドを構成する高分子本来の性質が相乗的に発揮され得るので、極めて高性能、高機能な付加価値の高い材料を得ることができる。
【0028】
また、本発明に係る製造方法は、内部帰還型スクリュー搭載の微量型高せん断成形加工機を用いて溶融混練を行うだけの簡便な方法であり、連続的かつ純粋な微細構造を必要とする光学材料や電子・電気材料には最適な方法を提供することができる。
【0029】
後記する実施例ではポリ乳酸(PLLA)/低密度ポリエチレン(LDPE)/エチレン-グリシジルメタクリレート-メチルアクリレート共重合体(E-GMA-MA)系の例だけを示したが、
脂肪族ポリエステル系樹脂としては、ポリ乳酸(PLLA)以外にポリグリコール酸(PGA)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、PBSにコハク酸を共重合したコポリマー(PBSA)又はポリ(ε-カプロラクトン)(PCL)或いはポリブチレンアジペートーブチレンテレフタレート共重合体(PBAT)から選ばれる生分解性の脂肪族ポリエステルやその共重合体を用いても同様な結果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
本発明に係る溶融混練方法、該溶融混練方法で製造された押出し物を実施するための最良の形態を、実施例に基づいて図面を参照して、以下に説明する。
【0031】
本発明では、内部帰還型スクリュー搭載の微量型高せん断成形加工機を用いて、スクリューの回転数が400rpmから1200rpmで、スクリューを回転し、非相溶性高分子ブレンドと相容化剤である樹脂とを添加して溶融混練することにより、一方の高分子成分をマトリクスとし、他方の高分子成分の分散相サイズを微視的に制御した高分子ブレンド押出し物を製造する。なお、本発明において製造する「押出し物」は、単なる混練した状態の押出し物「混練物」という。)でもよいし、成形してシート状のような形状とした押出し物「成形物」という。)としてもよい。
【0032】
非相溶性高分子ブレンドとして、ポリ乳酸(PLLA);10−50重量%、及び低密度ポリエチレン(LDPE);90−50重量%、さらには相容化剤としてエチレン-グリシジルメタクリレート-メチルアクリレート共重合体(E-GMA-MA);1−20重量%が含まれる系により高分子ブレンド押出し物を製造する場合について説明する。
【0033】
PLLAとLDPE、さらにE-GMA-MAの混合物を混練させるには、予め混合物を粒状物の状態で混合させるドライブレンドによる方法を用いることができる。ドライブレンドは、PLLAを真空中80℃で24時間乾燥し、LDPEとE-GMA-MAは真空中45℃で24時間乾燥後に行った。
【0034】
ところで、PLLAとLDPEは、非相溶性であり、それらのブレンド物を得るには、通常、両者を融点近傍の170〜200℃で二軸の溶融混練機等を用いて混合する。
【0035】
両者を融点近傍の170〜200℃で二軸の溶融混練機にあっては、それらの押出し物の内部構造は一方の成分をマトリクスとした場合、他方の成分の分散相サイズが数ミクロン〜数十ミクロンメーターレベルにまで粗大化した、いわゆる相分離した構造となってしまうため、得られる溶融混練物の特性として良好な機械的性能を発揮させることはできない結果となる。
【0036】
このような問題を解決するために、本発明者らは鋭意、研究開発した結果、PLLAとLDPE、さらにはE-GMA-MAが添加された系からなるブレンドを、通常の二軸スクリュー型混練機の代わりに内部帰還型スクリュー搭載の微量型高せん断成形加工機を用い、両者を、スクリューの回転数は400rpmから1200rpm、せん断速度は600から1800sec−1、加熱温度は室温もしくは非晶性樹脂の場合にはガラス転移点より高い温度を目安に結晶性樹脂の場合にはその融点より高い温度を目安にした条件下で、溶融混練することにより、従来得られたことがない新規な、LDPEマトリクス相に均一かつ密に微細なPLLA相が分散しているブレンド押出し物を得ることができる。これは画期的な知見であった。
内部帰還型スクリュー搭載の微量型高せん断成形加工機を用いる場合にあっても、PLLAとLDPE、さらにはE-GMA-MAが添加された系などの溶融混練しようとする対象物を高せん断成形加工機に供給する前に十分にブレンドすることが必要となる。これは非溶性の樹脂を予めそれぞれの重量組成に調整した上ドライブレンドして、偏在することをなくして、できるだけ均一な状態とするということを意味している。本発明の場合には装置の規模は工業化を行うほどの大型の装置を用いていないが、実際に工業化を行う規模で行う場合には用いる非相溶樹脂の量も多くなる。この場合には非溶性の樹脂を予めそれぞれの重量組成に調整した上ドライブレンドして、偏在することをなくして供給するが必要となる。本実施例ではドライブレンドを採用しているが、より高度なブレンド方法を採用することも必要となる。
【0037】
本発明者らにより作製した内部帰還型スクリュー搭載の微量型高せん断成形加工機を、図1に示す。この微量型高せん断成形加工機自体は、前述の特許文献2で紹介した微量型高せん断成形加工機とほぼ同じであるから、ここでは簡単に説明するが、このような微量型高せん断成形加工を使用し、それを以下のような手順で調整した上で使用する。
【0038】
図1において、微量型高せん断成形加工機10は、溶融混練部12と成形部14とを備える。成形部14は、押出成形部又は射出成形部を有する。溶融混練部12は、材料投入部16と、シリンダー18と、シリンダー18内に装着されたフィードバック型スクリュー20と、シリンダー18に軸受け22を介して接続されたシャフト24と、を備えている。シリンダー18は、シリンダー18内の樹脂を溶融するためのヒーター26を備えている。
【0039】
シリンダー18は、成形部14との間をシールするためのシール部材28をシリンダー18のシャフト24の対向端に備える。シリンダー18は、図2および図3に示すように、スクリュー20の最先端面29と、該最先端面29に対向したシール部材28のシール面(以下、「シール面28」という。)との間隔(ギャップ)32を調整するための調整手段と、をスクリュー後部側に備える。この間隔32は、約0.5から約5mmの範囲内に調整する。
【0040】
成形部14である押出成形部は、押出部ヒーター35とフィルム作成用Tダイ34を備えている。Tダイ34は、Tダイ先端ヒーター36と、Tダイ後端ヒーター38と、を備えている。押し出されたフィルムは、両端のヒーター36、38の間の排出口40を通る。熱電対42が押出成形部及びTダイ先端ヒーター36に装着されており、温度測定を行なう。測定結果は、制御装置(図示せず)に送られて前記溶融混練部12の温度及びTダイの温度を調整する。
【0041】
スクリュー20は、内径約1mmから約5mm、好ましくは約2mmから約3mmの孔44を有し、スクリューの回転数は、400rpmから1200rpmであり、せん断速度は、600から1800sec−1である。シリンダー18内の温度は、被溶融混練樹脂により異なるが、室温もしくは非晶性樹脂の場合にはガラス転移点より高い温度を目安に結晶性樹脂の場合にはその融点より高い温度を目安にした条件下に設定される。
【0042】
スクリュー20は、少なくとも2種類の非相溶性のブレンドされた樹脂をスクリュー20内部で十分に溶融混錬される構造を備えている。
【0043】
図3は、フィードバック型スクリュー20における樹脂の内部帰還型構造46を示す。内部帰還型構造46は、スクリュー後段48から投入された混合樹脂をスクリュー20によりスクリュー前段50に送りながら十分に混練し、混練された樹脂をスクリュー20の最先端面29と該先端面に対向したシール面28との間隔32に閉じ込め、さらに混練された樹脂をスクリュー20のほぼ中心部に長手方向に設けられた孔44内に入れ、そして再びスクリュー20の後段に戻す。
【0044】
内部帰還型構造46における混練時間は、内部帰還型構造46を循環する時間により任意に変化できる。混練の度合いは、スクリュー20の先端面と該先端面に対向したシール面28との間隔32及びスクリュー20の孔44の内径を可変することにより調整される。
【0045】
かくして、混練の度合いは、間隔32を狭くするほど、及びスクリュー20の孔44の内径を小さくするほど高くなるが、樹脂の粘度等を考慮して間隔32とスクリュー20の孔44の内径を最適化する必要がある。シリンダー18内の樹脂の混合時間は、1〜10分である。
【0046】
このようにして、本発明によれば、非相溶性のブレンド樹脂に対して相溶化剤を添加してブレンド間の界面で反応を誘起するだけでなく、その反応を効率化するために、高せん断場を付与して溶融混練することができる。そして、溶融混練により、一方の高分子成分をマトリックスとした場合、他方の高分子成分の分散相サイズを微細に制御した高分子ブレンド押出し物が作成される。
【0047】
上記内部帰還型スクリュー搭載の微量型高せん断成形加工機を用いる場合、成形加工条件としては、上記の特定温度の設定だけでなく、当該成形加工機におけるスクリュー回転数と混練時間の設定が重要である。
【0048】
本発明では、スクリュー回転数として100〜3000rpm、混練時間として0.5分〜60分の間で設定可能であるが、回転数ならびに混練時間として、それぞれ400〜1200rpm、1〜10分に設定することにより最適な結果を得ることができた。
【0049】
本発明に係る製造方法は、前記の特定の温度条件下で、スクリュー回転数と混練時間を最適数値条件にして高せん断成形を行ったところに特徴がある。このように、特定の条件を組み合わせて初めて良好な結果が得られる。仮に温度設定あるいは上記スクリュー回転数等の設定条件の一方でも、前記条件をはずれる場合には満足する結果を得ることができない。
【0050】
上記内部帰還型スクリュー搭載の微量型高せん断成形加工機10を用いる場合、ブレンド物が充填されているシリンダー18における、スクリュー20の先端面29と該先端面に対向したシール面との間隔32及びスクリュー20の孔44の内径を可変することにより、せん断流動場の強さもしくは混練の度合いを調整することができる。
【0051】
通常、間隔32は、1ミリから5ミリの間で任意の値を0.5ミリ間隔で設定可能であり、スクリュー20の孔44の内径も同様に1φから5φの間で任意の値を0.5φ間隔で設定可能であるが、間隔32およびスクリュー20の孔44の内径を、それぞれ1ミリ、2.5φに設定することにより最適な結果を得ることができた。
【0052】
本発明は、前記の特定の温度下に、スクリューの先端面と該先端面に対向したシール面との間隔(ギャップ)及びスクリューの孔の内径を最適数値にして高せん断成形を行ったところに特徴があり、特定の条件を組み合わせて初めて良好な結果が得られるのであって、仮に、温度設定あるいは上記ギャップ等の設定条件の一方でも、前記条件をはずれる場合には満足する結果を得ることができない。
【0053】
本発明の方法について記載すると以下の通りである。
(1)少なくとも2種類の非相溶性のブレンドされた樹脂を、シリンダーと、スクリューと、試料投入部と、加熱部とを備えた溶融混練部に該試料投入部から投入する投入工程と、前記スクリューの回転数;400rpmから1200rpm、せん断速度;600から1800sec−1の条件下で前記非相溶性のブレンドされた樹脂の溶融混練を行う溶融混練工程とを備える溶融混練方法。
【0054】
(2)少なくとも2種類の非相溶性のブレンドされた樹脂をシリンダーと、スクリューと、試料投入部と、加熱部とを備えた溶融混練部に該試料投入部から投入する投入工程と、前記スクリューの回転数;400rpmから1200rpm、せん断速度;600から1800sec−1の条件下で、前記溶融混練した前記樹脂をスクリューの後端から先端に送り前記スクリューの先端の間隙に閉じ込めた後、該間隙から前記スクリューの後端に戻す循環を1分間から10分間行って前記非相溶性のブレンドされた樹脂の溶融混練を行う溶融混練工程とを備える溶融混練方法。
【0055】
(3)少なくとも2種類の非相溶性のブレンドされた樹脂をシリンダーと、スクリューと、試料投入部と、加熱部と、シールとを備えた溶融混練部に該試料投入部から投入する投入工程と、前記スクリューの先端面と該先端面に対向したシール面との間隔;0から5mm、スクリューの孔内径;1mmから5mm、好ましくは1mmから3mm、スクリューの回転数;400rpmから1200rpm、せん断速度;600から1800sec−1、加熱温度;室温もしくは非晶性樹脂の場合にはガラス転移点より高い温度を目安に結晶性樹脂の場合にはその融点より高い温度を目安にした条件下で、かつ前記溶融混練した前記樹脂をスクリューの後端から先端に送り前記スクリューの先端の間隙に閉じ込めた後、該間隙から前記スクリューの後端に戻す循環を1分間から10分間行って前記非相溶性のブレンドされた樹脂の溶融混練を行う溶融混練工程と、を備える溶融混練方法。
【0056】
本発明で得られる溶融混練物及びそれから得ることが樹脂成形物は、その内部構造においてミクロンオーダーの相分離したドメインが観察されないほど相容化が進み、均一かつ微視的分散構造が形成されている。以下の実施例で示す図4にその態様を示している。図4のSEM写真の結果からも分かるように、スクリュー回転数600rpm(高せん断)で溶融混練したもの(写真4)ではPLLAドメインが全く観察されず、反応が完全に進み、均一かつ微視的な構造を形成したことに起因している。
この物質が示す特性値は、表5にLDPE/PLLA/E-GMA-MA系の応力−歪曲線から得られた、弾性率、引張り強度、破断伸びの結果を示した。比較のため、LDPE単体、ならびにPLLA単体のデータも合わせて示した。また図5には応力−ひずみ曲線を示した。
樹脂成形物は弾性率が低密度ポリエチレンの2倍以上、即ち300 MPa以上であり、かつ破断伸びがポリエチレンの1/3以上、もしくはポリ乳酸の50倍以上、即ち200%以上である機械的性質を備えていることを確認した。
【0057】
以下に一実施例により本発明の内容を更に詳細に説明する。
具体的には、溶融混練方法、該溶融混練方法で製造された押出し物を実施するためものである。本発明の内容は以下の実施例により限定されるものではない。
特許請求の範囲記載の技術的事項の範囲内で、いろいろな具体例がある。これらが実施例として本発明に含まれることは言うまでもない。
【実施例1】
【0058】
本発明について、非相溶性高分子ブレンドとして、ポリ乳酸(PLLA)及び低密度ポリエチレン(LDPE)、さらに相容化剤としてエチレン-グリシジルメタクリレート-メチルアクリレート共重合体(E-GMA-MA)が含まれる系により高分子ブレンド押出し物を製造する実施例を説明する。この実施例では、原料のポリ乳酸は重量平均分子量(Mw)が1.7×10 g/molでD-体含有量が1.2%のものを用いた。
【0059】
また、低密度ポリエチレンはプライムポリマー(株)製のLDPEを用いた。
【0060】
また、E-GMA-MA は住友化学(株)製のBF7Lを用いた。
【0061】
PLLAは真空下80℃で24時間乾燥し、LDPEとE-GMA-MAは真空下45℃で24時間乾燥した後、室温でPLLA10〜50重量%とLDPEの90〜50重量%、さらにこれらブレンド物100重量%に対してE-GMA-MA1〜20重量%の割合でドライブレンドした。このドライブレンド物の約5gを微量型高せん断成形加工機((株)井元製作所製HSE3000mini)に投入し、ギャップ(図3における間隔32)ならびに内部帰還型スクリューの孔の内径(図3における孔44の内径)を、それぞれ1ミリ、2.5φに設定し、170〜190℃に加熱溶融し、スクリュー回転数を100〜1200rpmとして2〜8分間混練し、T−ダイから押出し、冷却水槽を通すことにより冷却固化した。
【0062】
この際、せん断発熱を低減化するため、シリンダーを冷却する冷却手段を用いて、樹脂温度が200℃を超えないように温度制御した。このようなプロセスにより、表面状態の良好な押出し物を得ることができた。
【0063】
LDPE/PLLA系ならびにLDPE/PLLA/E-GMA-MA系の内部構造を観察するため、液体窒素温度にて試料を破断し、その断面を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察した。SEMはPhilips 社製のXL-20を用いて、加速電圧10 kVにて観察した。
【0064】
図4にはLDPE/PLLA系ならびにLDPE/PLLA/E-GMA-MA系をそれぞれスクリュー回転数300rpm(低せん断)もしくは600rpm(高せん断)で8分間溶融混練した試料のSEM写真を示した。
【0065】
図4からも明らかなように、LDPE/PLLA系即ちLDPE/PLLA/E-GMA-MA=75/25/0の組成のものは、スクリュー回転数に依らず数μm〜数十μmサイズのPLLA相(ドメイン)が観察され、相容化していない状態、即ち相分離した構造となっていることが分かった(写真1および2)。これに対して、相容化剤を5重量%添加したLDPE/PLLA/E-GMA-MA=75/25/5の系では、スクリュー回転数300rpm(低せん断)で溶融混練したもの(写真3)はPLLAドメインサイズが少し小さくなったが、まだ数μmレベルのPLLAドメインが明瞭に観察され、反応が不完全であることが容易に分かる。これに対して、LDPE/PLLA/E-GMA-MA=75/25/5の系で、スクリュー回転数600rpm(高せん断)で溶融混練したもの(写真4)はPLLAドメインが全く観察されず、反応が完全に進み、均一な構造を形成したことが分かった。
【0066】
単体ならびにPLLA単体、さらにはブレンド物の応力−ひずみ曲線測定は、ダンベル型試料を作製し、ASTM D412-80試験法に準拠した方法で引っ張り試験機Tensilon UMT-300(Orientec Co.)を用いて、クロスヘッドスピード10mm/min、温度25℃、湿度50%で行った。
【0067】
図5には、LDPE/PLLAの応力−ひずみ曲線(S−Sカーブ)を示した。ここに、曲線1はLDPE/PLLA/E-GMA-MA=75/25/0(300 rpm、8分)、曲線2はLDPE/PLLA/E-GMA-MA=75/25/0(600 rpm、8分)、曲線3はLDPE/PLLA/E-GMA-MA=75/25/5(300 rpm、8分)、曲線4はLDPE/PLLA/E-GMA-MA=75/25/5(600 rpm、8分)を示す。さらに、比較のために、曲線5にはLDPE単体のデータを示した。
【0068】
図5の応力−ひずみ曲線における曲線5のデータからも明らかなように、LDPE単体は弾性率が非常に小さい反面、破断伸びが非常に優れているのが特徴である。
【0069】
そこで、このLDPEに弾性率が極めて高いPLLAをブレンドするため、LDPE/PLLA=75/25を300 rpm と600 rpmのスクリュー回転数で8分間、上記温度にて溶融混練したのが、それぞれ曲線1と曲線2である。これらの試料ではPLLAのブレンドにより弾性率は向上したが、LDPE本来の優れた破断伸びが完全に損なわれた結果となっている。即ち、相容化剤のE-GMA-MAが添加されていないと、機械的性能が改善されないことがこの図からも明らかである。また、このことは構造との関連から考察すると、図4の写真1と2からも分かるように数十μmレベルの相分離したPLLAの大きなドメインが存在するため、構造の不均一性が顕著となり、破断伸びが非常に優れているLDPE本来の優れた破断伸びが完全に損なわれた結果を良く反映している。
【0070】
そこで、さらに相容化剤のE-GMA-MAを添加して、同様の成形加工条件で作製したブレンド物がそれぞれ曲線3(LDPE/PLLA/E-GMA-MA=75/25/5:300rpm−8min)と曲線4(LDPE/PLLA/E-GMA-MA=75/25/5:600rpm−8min)である。図からも明らかなように、LDPE/PLLA=75/25ブレンドに対し、相容化剤のE-GMA-MAを5重量%添加した場合、スクリュー回転数300 rpm(低せん断)の試料(曲線3)では、幾分破断伸びは改善されたことが分かる。これは、図4の構造観察において、PLLAドメインが数μmレベルに小さくなってきた結果だと考えられる。これに対して、スクリュー回転数600rpmで8分間混練の高せん断成形加工条件にて作製した曲線4で示される試料は図からも明らかなように著しく機械的性能が向上した。これは、図4のSEM写真の結果からも分かるように、スクリュー回転数600rpm(高せん断)で溶融混練したもの(写真4)ではPLLAドメインが全く観察されず、反応が完全に進み、均一かつ微視的な構造を形成したことに起因している。
【0071】
これら図5の応力−ひずみ曲線から評価された各種機械的性能、具体的には弾性率、引張強度、破断伸びの数値をまとめて表1に示した。この表では、比較のためにPLLAの数値も合わせて示した。表1の最下段に示された組成の試料と成形加工条件によるものが太字で示されているように、機械的性能において著しい改善が見られた。
【0072】
以下にLDPE/PLLA/E-GMA-MA系の応力−歪曲線から得られた、弾性率、引張り強度、破断伸びの結果を示した。比較のため、LDPE単体、ならびにPLLA単体のデータも合わせて示した。
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0073】
従来の成形加工機(スクリュー回転数300rpm程度)を用いて非相溶性高分子ブレンドを溶融混練しただけではブレンド押出し物の内部構造は相分離した構造、すなわち一方の高分子成分をマトリクスとした場合、他方の高分子成分の分散相サイズが数十ミクロンメーターレベルになって、ブレンドによる相乗効果は損なわれてしまい、所望の性能・機能を発揮させることはできなかった。
【0074】
また、相容化剤を添加してブレンド界面において反応を誘起しても、その反応効率が低い場合、もしくは主反応以外の副反応等を誘発することにより、反応が制御できなくなる障害が指摘されていた。
【0075】
これに対して、本発明は、上記のとおり、非相溶性高分子ブレンド系に対して、相容化剤を添加して高分子界面での反応を誘起するだけでなく、内部帰還型スクリュー搭載の微量型高せん断成形加工機を使用して溶融混練することにより、反応場と高せん断場とを同時に与えることにより、一方の高分子成分をマトリクスとし、他方の高分子成分を分散させ、その分散相サイズを微細に制御した微視的分散構造を有する新規な溶融混練物及びその製造方法、新規な溶融混練物から得られる新規な成形体を実現することができる。
【0076】
従って、本発明は、従来の相分離して分散相サイズが大きい(数ミクロンメーター以上)海・島構造になっている材料に比べ、ブレンドを構成する高分子本来の性質が相乗的に発揮され得るので、極めて高性能、高機能な付加価値の高い材料である連続的かつ純粋な微細構造を必要とする光学材料や電子・電気材料を創出することが可能となり、連続的かつ純粋な微細構造を必要とする各種用途の材料としてきわめて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明に係る製造方法に使用する内部帰還型スクリュー搭載の微量型高せん断成形加工機における材料混練部を示す図である。
【図2】図1の要部(スクリュー先端部)を示す図である。
【図3】図2の要部(スクリュー先端部)の拡大図である。
【図4】LDPE/PLLA系ならびにLDPE/PLLA/E-GMA-MA系をそれぞれスクリュー回転数300rpm(低せん断)もしくは600rpm(高せん断)で8分間溶融混練した試料のSEM写真である。
【図5】LDPE/PLLA/E-GMA-MA系の応力−歪曲線(S−Sカーブ)を示す図である。ここに、1はLDPE/PLLA/E-GMA-MA=75/25/0(300 rpm)、2はLDPE/PLLA/E-GMA-MA=75/25/0(600 rpm)、3はLDPE/PLLA/E-GMA-MA=75/25/5(300 rpm)、4はLDPE/PLLA/E-GMA-MA=75/25/5(600 rpm)を示す。さらに、比較のために、5にはLDPE単体のデータを示した。
【符号の説明】
【0078】
10 微量型高せん断成形加工機
12 溶融混練部
14 成形部
16 材料投入部
18 シリンダー
20 フィードバック型スクリュー
18 シリンダー
22 軸受け
24 シャフト
26 ヒーター
28 シール部材(シール面)
29 スクリューの最先端面
32 スクリューの最先端面との間隔(ギャップ)
35 押出部ヒーター
36 Tダイ先端ヒーター
38 Tダイ後端ヒーター
40 排出口
42 熱電対
44 スクリューの孔
46 内部帰還型構造
48 スクリュー後段
50 スクリュー前段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2種類の非相溶性のブレンドされた樹脂を、シリンダーと、スクリューと、試料投入部と、加熱部とを備えた溶融混練部に該試料投入部から投入する投入工程と、前記スクリューの回転数;400rpmから1200rpm、せん断速度;600から1800sec−1の条件下で前記非相溶性のブレンドされた樹脂の溶融混練を行う溶融混練工程とを備える溶融混練方法。
【請求項2】
少なくとも2種類の非相溶性のブレンドされた樹脂をシリンダーと、スクリューと、試料投入部と、加熱部とを備えた溶融混練部に該試料投入部から投入する投入工程と、前記スクリューの回転数;400rpmから1200rpm、せん断速度;600から1800sec−1の条件下で、前記溶融混練した前記樹脂をスクリューの後端から先端に送り前記スクリューの先端の間隙に閉じ込めた後、該間隙から前記スクリューの後端に戻す循環を1分間から10分間行って前記非相溶性のブレンドされた樹脂の溶融混練を行う溶融混練工程と、を備える溶融混練方法。
【請求項3】
少なくとも2種類の非相溶性のブレンドされた樹脂をシリンダーと、スクリューと、試料投入部と、加熱部と、シールとを備えた溶融混練部に該試料投入部から投入する投入工程と、前記スクリューの先端面と該先端面に対向したシール面との間隔;0から5mm、スクリューの孔内径;1mmから5mm、好ましくは1mmから3mm、スクリューの回転数;400rpmから1200rpm、せん断速度;600から1800sec−1、加熱温度;室温もしくは非晶性樹脂の場合にはガラス転移点より高い温度を目安に結晶性樹脂の場合にはその融点より高い温度を目安にした条件下で、かつ前記溶融混練した前記樹脂をスクリューの後端から先端に送り前記スクリューの先端の間隙に閉じ込めた後、該間隙から前記スクリューの後端に戻す循環を1分間から10分間行って前記非相溶性のブレンドされた樹脂の溶融混練を行う溶融混練工程と、を備える溶融混練方法。
【請求項4】
前記非相溶性のブレンドされた樹脂は、脂肪族ポリエステル系樹脂、及びポリオレフィン系樹脂との組み合わせを主成分とし、かつ第3成分として少量のエポキシ基含有樹脂が含まれることを特徴とする請求項1、2又は3のいずれか1項記載の溶融混練方法。
【請求項5】
前記非相溶性のブレンドされた樹脂は、脂肪族ポリエステル系樹脂;10−50重量%、及びポリオレフィン系樹脂;90−50重量%、エポキシ基含有樹脂;1−20重量%が含まれることを特徴とする請求項1、2又は3のいずれか1項記載の溶融混練方法。
【請求項6】
前記脂肪族ポリエステル系樹脂は、ポリ乳酸(PLLA)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、PBSにコハク酸を共重合したコポリマー(PBSA)又はポリ(ε-カプロラクトン)(PCL)或いはポリブチレンアジペートーブチレンテレフタレート共重合体(PBAT)から選ばれる生分解性の脂肪族ポリエステルやその共重合体であることを特徴とする請求項5記載の溶融混練方法。
【請求項7】
前記ポリオレフィン系樹脂は、低密度ならびに高密度ポリエチレン(PE)あるいは超高分子量ポリエチレン、ポリプロピレン(PP)、エチレン・酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)、環状オレフィン系重合樹脂、エチレンとメタクリル酸とのランダム共重合樹脂(EMAA)であることを特徴とする請求項5記載の溶融混練方法。
【請求項8】
前記エポキシ基含有樹脂は、エポキシ基を有し、オレフィン系化合物の構造を含有することを特徴とする共重合体であり、例えば(a)エチレン単位を60−99重量%、(b)不飽和カルボン酸グリシジルエステル単位および/または不報和グリシジルエーテル単位を0.1〜30重量、(c)エチレン系不飽和エステル化合物を0〜40重量%からなるエポキシ基含有エチレン共重合体であることを特徴とする請求項5記載の溶融混練方法。
【請求項9】
前記エポキシ基含有樹脂は、エチレン-グリシジルメタクリレート-メチルアクリレート共重合体(E-GMA-MA:GMA含有量0.1から30重量%)であることを特徴とする請求項5記載の溶融混練方法。
【請求項10】
前記非相溶性のブレンドされた樹脂は、ポリ乳酸(PLLA);10−50重量%、及び低密度ポリエチレン(LDPE);90−50重量%、エチレン-グリシジルメタクリレート-メチルアクリレート共重合体(E-GMA-MA);1−20重量%が含まれることを特徴とする請求項1、2又は3のいずれか1項記載の溶融混練方法。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項記載の溶融混練方法により作成された溶融混練物。
【請求項12】
前記溶融混練物はその内部構造においてミクロンオーダーの相分離したドメインが観察されないほど相容化が進み、均一かつ微視的分散構造が形成されている請求項11記載の溶融混練物。
【請求項13】
請求項1〜10のいずれか1項記載の溶融混練方法により得られる溶融混練物を成形する成形加工する成形加工方法。
【請求項14】
請求項13記載の成形加工方法により成形された樹脂成形物。
【請求項15】
前記樹脂成形物は、ロッド、フィルム、シート、及びファイバーの形状のいずれか1つであることを特徴とする請求項14記載の樹脂成形物。
【請求項16】
その内部構造においてミクロンオーダーの相分離したドメインが観察されないほど相容化が進み、均一かつ微視的分散構造が形成された樹脂成形物。
【請求項17】
弾性率が低密度ポリエチレンの2倍以上、即ち300 MPa以上であり、かつ破断伸びがポリエチレンの1/3以上、もしくはポリ乳酸の50倍以上、即ち200%以上である機械的性質を備えた樹脂成形物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−58329(P2010−58329A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−224934(P2008−224934)
【出願日】平成20年9月2日(2008.9.2)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】