説明

脂肪酸デサチュラーゼおよびその用途

本発明は、新規脂肪酸デサチュラーゼファミリーメンバーをコードする単離された核酸分子を提供する。本発明はまた、デサチュラーゼ核酸分子を含有する組換え発現ベクター、該発現ベクターが導入された宿主細胞、長鎖多価不飽和脂肪酸(LCPU-FA)、例えばSDA、EPAおよびDHAの大規模製造方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
関連出願
本出願は、2006年7月11日付で出願された米国仮出願番号60/830079(その全内容を参照により本明細書に組み入れることとする)に基づく優先権を主張するものである。
【0002】
発明の背景
脂肪酸は、多数の生物学的過程において基本的な役割を果たす長鎖炭化水素側鎖基を有するカルボン酸である。脂肪酸は、天然においては、遊離形態ではほとんど見出されず、むしろ、脂質の主要成分としてのエステル化形態として存在する。すなわち、脂質/脂肪酸はエネルギー(例えば、b-酸化)の源である。また、脂質/脂肪酸は細胞膜の必須成分であり、したがって、生物学的または生化学的情報を加工処理するのに不可欠である。
【0003】
脂肪酸は、炭素単結合から形成される飽和脂肪酸、およびシス(cis)配置の1以上の炭素二重結合を含有する不飽和脂肪酸の、2つの群に分類されうる。不飽和脂肪酸は、非ヘム鉄酵素のクラスに属するターミナルデサチュラーゼにより産生される。これらの酵素のそれぞれは、2つの他のタンパク質、すなわち、シトクロムb5、およびNADH-シトクロムb5レダクターゼを含む電子伝達系の成分である。特に、そのような酵素は、脂肪酸の酸素依存的脱水素を触媒することにより、脂肪酸分子の炭素原子間の二重結合の形成を触媒する(Sperlingら, 2003)。ヒトおよび他の哺乳動物は、不飽和脂肪酸の特定の二重結合の形成に必要とされる限られた範囲のデサチュラーゼしか有さず、したがって、必須脂肪酸、例えば長鎖多価不飽和脂肪酸(LCPUFA)を合成するための限られた能力しか有さない。したがって、ヒトはその食事から幾つかの脂肪酸を摂取しなければならない。そのような必須脂肪酸には、例えばリノール酸(C18:2)、リノレン酸(C18:3)およびアラキドン酸(C20:4)が含まれる。これとは対照的に、昆虫、微生物および植物はそれより遥かに多種多様な不飽和脂肪酸およびそれらの誘導体を合成することが可能である。実際、脂肪酸の生合成は植物および微生物の主要な活動である。
【0004】
ドコサヘキサエン酸(DHA, 22:6(4,7,10,13,16,19))のような長鎖多価不飽和脂肪酸(LCPUFA)は哺乳動物における種々の組織およびオルガネラ(神経、網膜、脳および免疫細胞)の細胞膜の必須成分である。例えば、脳のリン脂質における脂肪酸の30%以上は22:6 (n-3)および20:4 (n-6)である(Crawford, M.A.ら, (1997) Am. J. Clin. Nutr. 66:1032S-1041S)。網膜においては、DHAは、光受容細胞の光感受性部分である杆体外節における全脂肪酸の60%以上を占める(Giusto, N.M.ら, (2000) Prog. Lipid Res. 39:315-391)。臨床研究は、DHAが乳児における脳の成長および発達ならびに成人における正常な脳機能の維持に必須であることを示している(Martinetz, M. (1992) J. Pediatr. 120:S129-S138)。DHAは、シグナル伝達過程、ロドプシン活性化ならびに杆体および錐体の発達に関与する光受容体機能にも有意な影響を及ぼす(Giusto, N.M.ら, (2000) Prog. Lipid Res. 39:315-391)。また、高血圧、関節炎、アテローム性動脈硬化症、うつ病、血栓症および癌のような疾患に対するDHAの幾つかの正の効果も見出された(Horrocks, L.A.およびYeo, Y.K. (1999) Pharmacol. Res. 40:211-215)。したがって、ヒトの健康のためには、食事による該脂肪酸の適当な供給が重要である。乳児、幼児および高齢者はそのような脂肪酸を効率的に合成することができないため、これらの個体においては食事からこれらの脂肪酸を適切に摂取することが特に重要である(Spector, A.A. (1999) Lipids 34:S1-S3)。
【0005】
現在、DHAの主要源は魚類および藻類からの油である。魚油はこの脂肪酸の主要かつ伝統的な入手源であるが、それは通常、それが販売される時点までに酸化される。また、魚油の供給は、特に、減少しつつある魚類個体数の観点から、非常に不安定である。さらに、藻類油源は、抽出の収率が低く高コストであるため、高価である。
【0006】
EPAおよびAAは共にΔ5必須脂肪酸である。それらは、ヒトおよび動物の食物および飼料成分の特有のクラスを構成する。EPAは、アシル鎖内に5個の二重結合を有するn-3系列に属する。EPAは海産食物中に見出され、北大西洋由来の油性魚類に豊富に存在する。AAは、4個の二重結合を有するn-6系列に属する。ω-3位の二重結合の欠如は、EPAにおいて見出されるものとは異なる特性をAAにもたらす。AAから生成されるエイコサノイドは強力な炎症特性および血小板凝集特性を有し、一方、EPA由来のエイコサノイドは抗炎症特性および抗血小板凝集特性を有する。AAは、肉、魚類および卵のような幾つかの食物から得られうるが、その濃度は低い。
【0007】
ガンマ-リノレン酸(GLA)は、哺乳動物において見出されるもう1つの必須脂肪酸である。GLAは、非常に長い鎖のn-6脂肪酸および種々の活性分子の代謝中間体である。哺乳動物においては、長鎖多価不飽和脂肪酸の形成はΔ6不飽和化により律速される。多数の生理学的および病理学的状態、例えば老化、ストレス、糖尿病、湿疹および幾つかの感染症はΔ6不飽和化段階を抑制することが示されている。また、GLAは、例えば癌または炎症のようなある種の疾患に伴う酸化および急速な細胞分裂により容易に異化される。したがって、GLAの食事補給はこれらの疾患のリスクを軽減しうる。臨床研究は、GLAの食事補給がアトピー性湿疹、月経前症候群、糖尿病、高コレステロール血症ならびに炎症および心血管障害のような幾つかの病的状態の治療に有効であることを示している。
【0008】
主要なGLA源は、メマツヨイグサ(Oenothera biennis)、ルリチシャ(Borago officinalis L.)、クロフサスグリ(Ribes nigrum)のような植物、ならびにMortierella sp.、Mucor sp.およびCyanobacteriaのような微生物からの油である。しかし、これらのGLA源の使用は、入手可能性の著しい変動および抽出過程に伴う高いコストのため、理想的ではない。
【0009】
バイオテクノロジーは特殊脂肪酸の製造のための魅力的な経路を提供しているが、現在の技術は不飽和脂肪酸の大規模製造のための効率的な手段を提供していない。したがって、例えばGLA、DHA、EPAおよびAAのような不飽和脂肪酸の、改良された効率的な製造方法が必要とされている。
【発明の概要】
【0010】
発明の要約
本発明は、少なくとも部分的には、Claviceps purpureaからの新規デサチュラーゼをコードする核酸分子の発見に基づくものである。特に、Claviceps purpurea CpDesXデサチュラーゼおよびCpDes12デサチュラーゼを同定した。これらのデサチュラーゼのそれぞれは、例えば、Δ12、Δ15およびω3位において脂肪酸を不飽和化することにより、脂肪酸に二重結合を導入しうる。例えば、Saccharomyces cerevisaeにおけるCpDesXデサチュラーゼの発現はリノール酸(LA)18:2 (9,12)、ガンマ-リノール酸(GLA)18:3 (6,9,12)、ジホモ-ガンマリノール酸(DGLA)20:3 (8,11,14)、アラキドン酸(AA)20:4 (5,8,11,14)およびエイコサジエン酸20:2 (11, 14)へのω3二重結合の導入をもたらし、それにより、これらのω6多価不飽和脂肪酸をそれらのω3対応物に変換することが判明している。また、Saccharomyces cerevisaeにおけるCpDesXデサチュラーゼの発現は16:1(9)および18:1(9)内へのΔ12二重結合の導入をもたらして、それぞれ16:2(9,12)および18:2(9,12)を形成することが判明している。また、CpDesXデサチュラーゼの発現は更に、16:2(9,12)および18:2(9,12)内へのΔ15二重結合の導入をもたらして、それぞれ16:3(9,12,15)および18:3(9,12,15)を形成する。
【0011】
本発明の核酸分子およびポリペプチドの使用は、所望の不飽和脂肪酸の産生をモジュレーション、例えば増強するための手段を提供する。例えば、微生物および植物内への、例えば種子特異的プロモーターの制御下の、これらのデサチュラーゼ核酸およびポリペプチド分子の導入は、油料種子における不飽和脂肪酸、例えばGLA 18:3 (6,9,12)、ALA 18:3 (9,12,15)、SDA 18:4 (6,9,12,15)、AA 20:4 (5,8,11,14)、EPA 20:5 (5,8,11,14,17)、DPA 22:5 (4,7,10,13,16)、DHA 22:6 (4,7,10,13,16,19)、20:4 (8,11,14,17)、16:2 (9,12)、18:2 (9,12)および16:3 (9,12,15)の産生の促進を可能にする。
【0012】
したがって、1つの態様においては、本発明は、a)クラビセプス(Claviceps)属由来の脂肪酸デサチュラーゼをコードする単離された核酸分子またはその相補体、b)配列番号1もしくは3のヌクレオチド配列を含む単離された核酸分子またはその相補体、c)配列番号2もしくは4のアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする単離された核酸分子またはその相補体、d)配列番号2もしくは4のアミノ酸配列を含むポリペプチドの天然対立遺伝子変異体をコードする単離された核酸分子またはその相補体、e)配列番号1もしくは3の全ヌクレオチド配列に対して少なくとも50%同一であるヌクレオチド配列を含む単離された核酸分子またはその相補体、f)ストリンジェントな条件下、配列番号1もしくは3のヌクレオチド配列の相補体にハイブリダイズするヌクレオチド配列を含む単離された核酸分子またはその相補体、g)配列番号1もしくは3の全ヌクレオチド配列の少なくとも15個連続したヌクレオチドの断片を含む単離された核酸分子またはその相補体(特定の実施形態においては、該核酸分子は、例えば脂肪酸のω3、Δ12またはΔ15位における、該脂肪酸への二重結合の導入を触媒する活性を有する脂肪酸デサチュラーゼタンパク質をコードする)、およびh)6×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)中、65℃で配列番号1もしくは配列番号3のヌクレオチド配列の相補体にハイブリダイズする単離された核酸分子、よりなる群から選ばれる単離された核酸分子に関する。もう1つの実施形態においては、前記の単離された核酸分子は更に、異種ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む。
【0013】
もう1つの態様においては、本発明は、本発明の核酸分子を含む、ベクター、例えば、発現ベクターに関する。特定の実施形態においては、該核酸分子は、種子特異的プロモーター、例えばコンリニン(Conlinin)1、コンリニン(Conlinin)2、ナピン(napin)およびLuFad3の制御下に配置されうる。
【0014】
もう1つの態様においては、本発明は、本発明の核酸分子を含む発現ベクターで形質転換された宿主細胞に関する。該宿主細胞は、植物細胞、例えばアマ(Linum sp.)、ナタネ(Brassica sp.)、ダイズ(GlycineおよびSoja sp.)、ヒマワリ(Helianthus sp.)、ワタ(Gossypium sp.)、トウモロコシ(Zea mays)、オリーブ(Olea sp.)、ベニバナ(Carthamus sp.)、カカオ(Theobroma cacoa)、ラッカセイ(Arachis sp.)、タイマ、ツバキ(camelina)、ハマナ、アブラヤシ、ココヤシ、ラッカセイ、ゴマ、ヒマ、レスクエレラ、ナンキンハゼ、シアナッツ、アブラギリ、カポック、ケシ、ホホバおよびエゴマを含む(これらに限定されるものではない)油料種子作物からの植物細胞でありうる。あるいは、該宿主細胞は、Candida、Cryptococcus、Lipomyces、Rhodosporidium、Yarrowia、Thraustochytrium、Pythium、SchizochytriumおよびCrythecodiniumを含む(これらに限定されるものではない)微生物細胞でありうる。
【0015】
もう1つの態様においては、本発明は、本発明の宿主細胞を適切な培地中で培養して、それによりポリペプチド、例えば脂肪酸デサチュラーゼを産生させることによる、ポリペプチドの製造方法を提供する。
【0016】
さらにもう1つの態様においては、本発明は、a)クラビセプス(Claviceps)由来の単離された脂肪酸デサチュラーゼポリペプチド、b)配列番号2もしくは4のアミノ酸配列を含む単離されたポリペプチド、c)配列番号2もしくは4のアミノ酸配列を含むポリペプチドの天然対立遺伝子変異体を含む単離されたポリペプチド、d)配列番号1もしくは3のヌクレオチド配列を含む核酸分子によりコードされるアミノ酸配列を含む単離されたポリペプチド、e)配列番号1もしくは3の全ヌクレオチド配列に対して少なくとも50%同一であるヌクレオチド配列を含む核酸分子によりコードされる単離されたポリペプチド、f)配列番号2もしくは4の全アミノ酸配列に対して少なくとも50%同一であるアミノ酸配列を含む単離されたポリペプチド、およびg)配列番号2もしくは4のアミノ酸配列を含むポリペプチドの断片(該ポリペプチド断片はその完全なポリペプチドの生物活性を維持している)を含む単離されたポリペプチド、よりなる群から選ばれる単離されたポリペプチドに関する。特定の実施形態においては、該ポリペプチドは不飽和脂肪酸の産生に関与する。もう1つの実施形態においては、該ポリペプチドは脂肪酸のω3、Δ12またはΔ15位における二重結合の形成を触媒する。もう1つの実施形態においては、該ポリペプチドは異種アミノ酸配列をも含む。
【0017】
もう1つの態様においては、本発明は、不飽和脂肪酸が産生されるように、本発明の宿主細胞を培養することによる、不飽和脂肪酸の製造方法を提供する。もう1つの態様においては、本発明は、少なくとも1つのデサチュラーゼ標的分子を含む組成物を、不飽和脂肪酸が産生される条件下、本発明の少なくとも1つのポリペプチドと接触させることによる、不飽和脂肪酸の製造方法を提供する。さらにもう1つの態様においては、本発明は、脂肪酸への二重結合の導入を触媒する活性を有するデサチュラーゼをコードする本発明の核酸分子を細胞内に導入することによる、不飽和脂肪酸を産生できる細胞の製造方法を提供する。さらにもう1つの態様においては、本発明は、不飽和脂肪酸の産生のモジュレーションが生じるように、本発明の発現ベクターで形質転換された細胞を培養することにより、不飽和脂肪酸の産生をモジュレーション、例えば増強する方法に関する。もう1つの態様においては、本発明は、本発明の発現ベクターで形質転換された細胞を培養することによる、不飽和脂肪酸の大規模製造方法に関する。ある実施形態においては、該核酸分子の発現は、GLA 18:3 (6,9,12)、ALA 18:3 (9,12,15)、SDA 18:4 (6,9,12,15)、AA 20:4 (5,8,11,14)、EPA 20:5 (5,8,11,14,17)、DPA 22:5 (4,7,10,13,16)、DHA 22:6 (4,7,10,13,16,19)、20:4 (8,11,14,17)、16:2 (9,12)、18:2 (9,12) および16:3 (9,12,15)を含む(これらに限定されるものではない)不飽和脂肪酸の産生のモジュレーションをもたらす。
【0018】
1つの実施形態においては、前記方法により産生された脂肪酸は該培養物から回収されうる。もう1つの実施形態においては、該細胞は、植物細胞、例えばアマ(Linum sp.)、ナタネ(Brassica sp.)、ダイズ(GlycineおよびSoja sp.)、ヒマワリ(Helianthus sp.)、ワタ(Gossypium sp.)、トウモロコシ(Zea mays)、オリーブ(Olea sp.)、ベニバナ(Carthamus sp.)、カカオ(Theobroma cacoa)、ラッカセイ(Arachis sp.)、タイマ、ツバキ(camelina)、ハマナ、アブラヤシ、ココヤシ、ラッカセイ、ゴマ、ヒマ、レスクエレラ、ナンキンハゼ、シアナッツ、アブラギリ、カポック、ケシ、ホホバおよびエゴマを含む(これらに限定されるものではない)油料種子植物である。特定の実施形態においては、該細胞はブラッシカ・ジュンセア(Brassica juncea)である。さらにもう1つの実施形態においては、該細胞は微生物細胞、例えばCandida、Cryptococcus、Lipomyces、Rhodosporidium、Yarrowia、Thraustochytrium、Pythium、SchizochytriumおよびCrythecodiniumである。
【0019】
さらにもう1つの態様においては、本発明は、a)配列番号1または3のヌクレオチド配列を含む核酸分子であって、脂肪酸デサチュラーゼ活性が破壊されるように、該核酸分子が、例えば点突然変異、末端切断、逆位、欠失、付加、置換および相同組換えよりなる群から選ばれる少なくとも1つの技術により破壊されている、核酸分子、b)配列番号1または3のヌクレオチド配列を有する核酸分子であって、該核酸分子が、配列番号1に記載の配列と比較して1以上の核酸改変を含み、該改変が、点突然変異、末端切断、逆位、欠失、付加および置換よりなる群から選ばれ、それによる改変核酸分子が、脂肪酸デサチュラーゼ活性を保有するポリペプチドをコードする、核酸分子、あるいはc)配列番号1のヌクレオチド配列を有する核酸分子であって、脂肪酸デサチュラーゼの発現および/または活性を改変(例えば、増強)するために、該核酸分子の調節領域が、例えば点突然変異、末端切断、逆位、欠失、付加、置換および相同組換えよりなる群から選ばれる少なくとも1つの技術により、該分子の野生型調節領域と比較して改変されている、核酸分子、を有する宿主細胞に関する。
【0020】
他の態様においては、本発明は、本明細書に記載されているベクターを含む植物、および該植物により産生された油または種子に関する。もう1つの態様においては、本発明は、動物飼料、栄養補助食品または食品として使用するための、該油および/または種子を含む組成物に関する。もう1つの態様においては、本発明は、該種子または油を含む医薬組成物に関する。さらにもう1つの態様においては、本発明は、本明細書に記載されている方法により得られた不飽和脂肪酸に関する。もう1つの態様においては、本発明は、動物飼料、栄養補助食品または食品として使用するための、本明細書に記載されている方法により製造された不飽和脂肪酸を含む組成物に関する。さらにもう1つの態様においては、本発明は、本明細書に記載されている方法により製造された不飽和脂肪酸を含む医薬組成物に関する。もう1つの態様においては、本発明は、例えば、動物飼料、栄養補助食品または医薬組成物として使用するための、本発明のポリペプチドまたは本発明のトランスジェニック細胞を含む組成物に関する。
【0021】
本発明の他の特徴および利点は以下の詳細な説明および特許請求の範囲から明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1−1】図1は、以下のとおりに、Claviceps purpurea由来のデサチュラーゼ(CpDesX)のヌクレオチドおよびアミノ酸配列を示す:オープンリーディングフレームのcDNA配列(配列番号1)(図1A)、翻訳されたアミノ酸配列(配列番号2)(図1B)および該翻訳されたアミノ酸配列と整列させたcDNA(図1C)。
【図1−2】図1は、以下のとおりに、Claviceps purpurea由来のデサチュラーゼ(CpDesX)のヌクレオチドおよびアミノ酸配列を示す:オープンリーディングフレームのcDNA配列(配列番号1)(図1A)、翻訳されたアミノ酸配列(配列番号2)(図1B)および該翻訳されたアミノ酸配列と整列させたcDNA(図1C)。
【図2−1】図2は、以下のとおりに、Claviceps purpurea由来のデサチュラーゼ(CpDes12)のヌクレオチドおよびアミノ酸配列を示す:オープンリーディングフレームのcDNA配列(配列番号3)(図2A)、翻訳されたアミノ酸配列(配列番号4)(図2B)および該翻訳されたアミノ酸配列と整列させたcDNA(図2C)。
【図2−2】図2は、以下のとおりに、Claviceps purpurea由来のデサチュラーゼ(CpDes12)のヌクレオチドおよびアミノ酸配列を示す:オープンリーディングフレームのcDNA配列(配列番号3)(図2A)、翻訳されたアミノ酸配列(配列番号4)(図2B)および該翻訳されたアミノ酸配列と整列させたcDNA(図2C)。
【図3】図3は、Claviceps purpurea由来のデサチュラーゼ(CpDesXおよびCpDes12)のアミノ酸配列と、Aspergillus nidulans(AnOdeA)およびArabidopsis D12-デサチュラーゼ(AtFAD2)を含む他の脂肪酸デサチュラーゼおよび関連酵素のアミノ酸配列とのアライメントを示す。
【図4】図4Bは、酵母の対照株(図4A)と比較された、CpDesXで形質転換された酵母の実験株における脂肪酸の発現のガスクロマトグラフィー(GC)分析である。16:2 (9,13)、16:2 (9,12)、16:3 (9,12,15)、18:2 (9,12)および18:3 (9,12,15)(ALAとして示されている)のピークは、CpDesXで形質転換された酵母株に特有の不飽和脂肪酸の存在を表す。
【図5】図5Bは、酵母の対照株(図5A)と比較された、CpDes12で形質転換された酵母の実験株における脂肪酸の発現のガスクロマトグラフィー(GC)分析である。16:2 (9,12)および18:2 (9,12)のピークは、CpDes12で形質転換された酵母株に特有の不飽和脂肪酸の存在を表す。
【図6】図6Bは、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)の対照株(図6A)と比較された、CpDesXで形質転換されたシロイヌナズナの実験株における脂肪酸の発現のガスクロマトグラフィー(GC)分析である。不飽和脂肪酸18:3 (9,12,15)を示すピークは、該実験株において、有意に多い量で存在する。
【発明を実施するための形態】
【0023】
発明の詳細な説明
本発明は、少なくとも部分的には、「デサチュラーゼ」または「デサチュラーゼ」核酸およびタンパク質分子(例えば、Claviceps purpurea (C. purpurea)由来のCpDesXおよびCpDes12)として互換的に称される脂肪酸デサチュラーゼの発見に基づく。これらの新規分子は脂肪酸デサチュラーゼファミリーのメンバーであり、多数のイネ科牧草の若い花に寄生する真菌病原体であるClaviceps purpureaのようなLCPUFA産生生物において発現される。本発明は更に、少なくとも部分的には、Claviceps purpurea脂肪酸デサチュラーゼ(例えば、CpDesXおよびCpDes12)が脂肪酸における二重結合の導入を触媒するという発見に基づく。さらに、本発明は、部分的には、Claviceps purpurea脂肪酸デサチュラーゼ(例えば、CpDesXおよびCpDes12)が脂肪酸鎖に沿った複数の位置で二重結合を導入しうるという発見に基づく。
【0024】
特定の実施形態においては、本発明は、脂肪酸のω3、Δ12またはΔ15位のいずれかにおける二重結合を触媒できるCpDesXデサチュラーゼに関する。例えば、CpDesXは、リノール酸(LA, 18:2(9,12))、ガンマ-リノール酸(GLA, 18:3(6,9,12))、ジホモ-ガンマリノール酸(DGLA, 20:3(8,11,14))、アラキドン酸(AA, 20:4(5,8,11,14))およびエイコサジエン酸(EDA, 20:2 (11,14))を包含する(これらに限定されるものではない)脂肪酸へのω3二重結合の導入を触媒し、それによりこれらω6多価不飽和脂肪酸をそれらのω3対応物に変換する。すなわち、例えば、16:1(9)および18:1(9)内にΔ12二重結合を導入して、それによりそれぞれ16:2(9,12)および18:2(9,12)を形成させ、また例えば16:2(9,12)および18:2(9,12)内にΔ15二重結合を導入して、それによりそれぞれ16:3(9,12,15)および18:3(9,12,15)を形成させる。
【0025】
単離されたClaviceps purpurea DesXデサチュラーゼ(CpDesX)cDNAのヌクレオチド配列、および該CpDesX cDNAによりコードされる推定アミノ酸配列を、それぞれ配列番号1および2として図1に示す。約1434ヌクレオチド長であるClaviceps purpurea DesX(オープンリーディングフレーム)は、約477アミノ酸残基長である約53.1kDの分子量を有するタンパク質をコードしている。
【0026】
もう1つの実施形態においては、本発明は、脂肪酸のΔ12位において二重結合を触媒できるCpDes12デサチュラーゼに関する。例えば、CpDes12は16:1(9)および18:1(9)のような脂肪酸のΔ12位における二重結合の導入を触媒し、それによりそれぞれ16:2(9,12)および18:2(9,12)を形成させる。
【0027】
Claviceps purpurea Des12デサチュラーゼ(CpDes12)cDNAのヌクレオチド配列、および該CpDes12 cDNAによりコードされる推定アミノ酸配列を、それぞれ配列番号3および4として図2に示す。約1431ヌクレオチド長であるClaviceps purpurea Des12遺伝子は、約476アミノ酸残基長である約53kDの分子量を有するタンパク質をコードしている。
【0028】
全体としては、不飽和脂肪酸の産生、すなわち、不飽和脂肪酸生合成経路における制御段階は、膜結合脂肪酸デサチュラーゼ、例えばCpDesXおよびCpDes12により触媒される。特に、そのような酵素は脂肪酸分子の炭素原子間の二重結合の形成を触媒する。本明細書中で用いる「不飽和脂肪酸生合成経路」なる語は、in vivoまたはin vitroでの該不飽和脂肪酸の合成につながる一連の化学反応を意味する。そのような経路は、不飽和脂肪酸、そして最終的には長鎖多価不飽和脂肪酸を生成する一連の不飽和化および伸長段階を含む。そのような不飽和脂肪酸としては、ガンマ-リノレン酸(GLA 18:3(6,9,12))、アルファ-リノレン酸(ALA 18:3(9,12,15))、ステアリドン酸(SDA 18:4(6,9,12,15))、アラキドン酸(AA, 20:4(5,8,11,14))、エイコサペンタエン酸(EPA 20:5(5,8,11,14,17))、ドコサペンタエン酸(DPA 22:5(4,7,10,13,16))ドコサヘキサエン酸(DHA 22:6(4,7,10,13,16,19))、20:4(8,11,14,17)、16:2(9,12)、リノール酸(LA, 18:2(9,12))および16:3 (9,12,15)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0029】
哺乳動物における種々の組織およびオルガネラ(例えば、神経、網膜、脳および免疫細胞)の細胞膜の形成、乳児における脳の成長および発達の促進、成体における正常な脳機能の維持、光受容体機能への影響、シグナル伝達過程への影響、ロドプシンの活性化ならびに杆体および錐体の発達を含む(これらに限定されるものではない)種々の細胞過程における不飽和脂肪酸の関与を考慮すると、本発明のデサチュラーゼは、ある種の障害、例えば、調節が異常な成長、増殖または分化により特徴づけられる障害の治療において使用されうる。例えば、本発明のデサチュラーゼは、例えば高血圧、糖尿病、高コレステロール血症、関節炎、アテローム性動脈硬化症、うつ病、血栓症、癌(例えば、癌腫、肉腫または白血病)、腫瘍血管新生および転移、骨格形成異常、肝障害、骨髄形成異常症候群、アトピー性湿疹、月経前症候群、ならびに造血、炎症および/または骨髄増殖障害のような疾患の治療において使用されうる。本発明の方法および組成物により治療されうる他の障害には、血管新生に関連した障害、限定的なものではないが例えば、遺伝性出血性毛細管拡張症1型、進行性骨化性線維異形成症およびクリッペル-トレノネー-ウェーバー症候群が含まれる。
【0030】
本明細書中で用いる「脂肪酸」なる語は当技術分野で認識されており、長鎖炭化水素に基づくカルボン酸を包含する。脂肪酸は、グリセリドを含む多数の脂質の成分である。最も一般的な天然脂肪酸は、偶数の炭素数(16または18)を有する飽和または不飽和でありうるモノカルボン酸である。「不飽和」脂肪酸は炭素原子間にシス(cis)二重結合を含有する。本発明に含まれる不飽和脂肪酸には、例えば、DHA、GLA、ALAおよびSDAが含まれる。「多価不飽和」脂肪酸は、しばしばメチレン介在系(-CH=CH-CH2-CH=CH-)で配置されている2個以上の二重結合を含有する。
【0031】
本明細書においては、脂肪酸は、コロンの前の数字が脂肪酸の炭素原子数を示すナンバリング方式により記載されている。不飽和脂肪酸の場合、コロンの後の数字は、存在する二重結合の数であり、それに続く括弧内の番号は二重結合の位置を示す。括弧内の各数字は、二重結合により連結されている2つの炭素原子のうちの小さい方の番号がついた炭素原子である。例えば、オレイン酸は18:1(9)として記載され、リノール酸は18:2(9,12)として記載されるが、これらは、18個の炭素、そしてそれぞれ、炭素9における1個の二重結合、ならびに炭素9および12における2個の二重結合を示す。さらに、「c」の使用はシス(cis)二重結合を示し、「t」の使用はトランス(trans)二重結合を示す。
【0032】
本発明のタンパク質および核酸分子に言及する場合の「ファミリー」なる語は、本明細書に定められている十分なアミノ酸またはヌクレオチド配列相同性を有する、共通の構造ドメインまたはモチーフを有する2以上のタンパク質または核酸分子を意味すると意図される。そのようなファミリーメンバーは天然または非天然のものであってよく、同じ又は異なる生物種に由来しうる。例えば、あるファミリーはヒト由来の第1のタンパク質だけでなくヒト起源の他の異なるタンパク質を含んでもよく、あるいは非ヒト起源のホモログ、例えばラットまたはマウスタンパク質を含んでもよい。ファミリーのメンバーは共通の機能特性をも有しうる。
【0033】
例えば、タンパク質のデサチュラーゼファミリーのメンバーは1個、2個または好ましくは約3個のヒスチジンモチーフを含みうる。本明細書中で用いる「ヒスチジンモチーフ」なる語は、少なくとも約2個のヒスチジンアミノ酸残基、好ましくは約3個のヒスチジンアミノ酸残基を有するタンパク質ドメインを含み、典型的にはミクロソームデサチュラーゼにおいて見出される。ヒスチジンモチーフの具体例には、配列番号1および配列番号3のヌクレオチド残基463-477、571-585および1171-1185によりそれぞれコードされる、配列番号2および配列番号4のアミノ酸残基155-159 (HECGH)、191-195 (HXXHH)および391-395 (HVXHH)が含まれる。
【0034】
本明細書中で互換的に用いる「デサチュラーゼ活性」、「デサチュラーゼの生物活性」または「デサチュラーゼの機能活性」は、標準的な技術によりin vivoまたはin vitroで測定した場合にデサチュラーゼ応答性細胞またはデサチュラーゼ基質に対する、デサチュラーゼタンパク質、デサチュラーゼポリペプチドまたはデサチュラーゼ核酸分子により発揮または媒介される活性を含む。1つの実施形態においては、デサチュラーゼ活性は、直接的な活性、例えば、デサチュラーゼ標的分子との結合である。もう1つの実施形態においては、デサチュラーゼの直接的な活性は、不飽和脂肪酸分子を形成する、脂肪酸分子の炭素原子間の二重結合の形成をも包含する。本発明の目的においては、該デサチュラーゼは完全飽和脂肪酸に二重結合を導入することが可能であり、あるいは既に不飽和化されている脂肪酸に追加的な二重結合を導入することが可能である。
【0035】
本明細書中で用いる「標的分子」または「結合相手」は、デサチュラーゼ媒介型機能が達成されるようにデサチュラーゼタンパク質が天然で結合または相互作用する分子、例えば不飽和脂肪酸の合成に関与する分子、例えば中間体脂肪酸(例えば、更なる二重結合の導入が望まれる不飽和脂肪酸)、または飽和脂肪酸である。特定の実施形態においては、該標的分子または結合相手はLA 18:2 (9,12)、GLA 18:3 (6,9,12)、DGLA 20:3 (8,11,14)、AA 20:4 (5,8,11,14)、エイコサジエン酸20:2 (11,14)、16:1 (9)、16:2 (9,12)、18:1 (9)および18:2 (9,12)である。
【0036】
以下の小節においては、本発明の種々の態様を更に詳しく説明する。
【0037】
I.単離された核酸分子
本発明の1つの態様は、デサチュラーゼタンパク質またはその生物学的に活性な部分をコードする単離された核酸分子に関する。もう1つの態様においては、本発明は、デサチュラーゼをコードする核酸分子(例えば、デサチュラーゼmRNA)を同定するためのハイブリダイゼーションプローブとして使用するのに十分な核酸断片、およびデサチュラーゼ核酸分子の増幅または突然変異のためのPCRプライマーとして使用するための断片に関する。本明細書中で用いる「核酸分子」なる語は、DNA分子(例えば、cDNAまたはゲノムDNA)およびRNA分子(例えば、mRNA)、ならびにヌクレオチド類似体を使用して得られたDNAまたはRNAの類似体を含むと意図される。該核酸分子は一本鎖または二本鎖でありうるが、好ましくは二本鎖DNAである。
【0038】
「単離された核酸分子」なる語は、該核酸の天然源において存在する他の核酸分子から分離された核酸分子を含む。例えば、ゲノムDNAに関しては、「単離(された)」なる語は、該ゲノムDNAが天然で結合している染色体から分離された核酸分子を含む。好ましくは、「単離」された核酸は、該核酸が由来する生物のゲノムDNAにおいて該核酸に天然で隣接している配列(すなわち、該核酸の5'および3'末端に位置する配列)を含有しない。例えば、種々の実施形態においては、単離されたデサチュラーゼ核酸分子は、該核酸が由来する細胞のゲノムDNAにおいて該核酸分子に天然で隣接している約5kb、4kb、3kb、2kb、1kb、0.5kbまたは0.1kb未満のヌクレオチド配列を含有しうる。さらに、「単離」された核酸分子、例えばcDNA分子は、組換え技術により製造された場合には他の細胞物質または培地を実質的に含有しないことが可能であり、あるいは化学合成された場合には化学的前駆体または他の化学物質を実質的に含有しないことが可能である。
【0039】
本発明の核酸分子、例えば、配列番号1もしくは3のヌクレオチド配列またはその一部分を有する核酸分子は、標準的な分子生物学的技術および本明細書に記載の配列情報を用いて単離することが可能である。配列番号1または3の核酸配列の全部または一部をハイブリダイゼーションプローブとして使用し、標準的なハイブリダイゼーションおよびクローニング技術(例えば、Sambrook, J.ら, Molecular Cloning: A Laboratory Manual. 2nd, ed., Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY, 1989に記載されているもの)を用いて、デサチュラーゼ核酸分子を単離することが可能である。
【0040】
さらに、配列番号1または3の全部または一部を含む核酸分子は、配列番号1または3の配列に基づいて設計された合成オリゴヌクレオチドプライマーを使用するポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により単離することが可能である。
【0041】
本発明の核酸は、鋳型としてのcDNA、mRNAまたはゲノムDNAおよび適当なオリゴヌクレオチドプライマーを使用して標準的なPCR増幅技術により増幅されうる。そのようにして増幅された核酸は適当なベクター内にクローニングされ、DNA配列分析により特徴づけられる。さらに、デサチュラーゼヌクレオチド配列に対応するオリゴヌクレオチドは、標準的な合成技術、例えば自動DNA合成装置を使用して製造されうる。
【0042】
さらにもう1つの実施形態においては、本発明の単離された核酸分子は、配列番号1もしくは3に示すヌクレオチド配列またはこれらのヌクレオチド配列のいずれかの一部分である核酸分子の相補体を含む。配列番号1または3に示すヌクレオチド配列に相補的な核酸分子は、それが、配列番号1または3に示すヌクレオチド配列にハイブリダイズして安定な二本鎖を形成するような、配列番号1または3に示すヌクレオチド配列に対して十分に相補的である核酸分子である。特定の実施形態においては、本発明の相補配列は、本発明の核酸分子、例えば配列番号1または3のヌクレオチド配列、配列番号2または4のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、それらの対立遺伝子変異体、および配列番号1または3のヌクレオチド配列に対して少なくとも70%の同一性を有するヌクレオチド配列の厳密な相補体である。例えば、該相補体は、本発明の核酸分子、例えば配列番号1のヌクレオチド配列の、完全長かつ完璧な相補体でありうる。
【0043】
さらにもう1つの実施形態においては、本発明の単離された核酸分子は、配列番号1または3に示すヌクレオチド配列(例えば、該ヌクレオチド配列の完全長)に対して少なくとも約50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%または60%、好ましくは少なくとも約61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%または70%、より好ましくは少なくとも約71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%または80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%または94%、より一層好ましくは少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上同一であるヌクレオチド配列またはこれらのヌクレオチド配列のいずれかの一部分もしくは相補体を含む。前記の範囲の中間の範囲値および同一性値(例えば、70〜80%同一または80〜95%同一)も本発明に含まれると意図される。例えば、前記で挙げられている値のいずれかを上限および/または下限として組合せて用いる同一性値の範囲が含まれると意図される。
【0044】
さらに、本発明の核酸分子は、配列番号1または3の核酸配列の一部分のみ、例えば、プローブもしくはプライマーとして使用されうる断片、またはデサチュラーゼタンパク質の一部分をコードする断片、例えば、デサチュラーゼタンパク質の生物学的に活性な部分のみを含みうる。該デサチュラーゼ遺伝子のクローニングから決定されたヌクレオチド配列は、他のデサチュラーゼファミリーメンバーおよび他の種からのデサチュラーゼホモログの同定および/またはクローニングに使用するために設計されたプローブおよびプライマーの作製を可能にする。該プローブ/プライマー(例えば、オリゴヌクレオチド)は、典型的には、実質的に精製されたオリゴヌクレオチドを含む。該オリゴヌクレオチドは、典型的には、配列番号1もしくは3のセンス配列の、配列番号1もしくは3のアンチセンス配列の、または配列番号1もしくは3の天然の対立遺伝子変異体もしくは突然変異体の、少なくとも約12または15個、好ましくは約20または25個、より好ましくは約30、35、40、45、50、55、60、65または75個連続したヌクレオチドに対して、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列の領域を含む。
【0045】
典型的なプローブまたはプライマーは、少なくとも(またはせいぜい)5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75もしくはそれ以上のヌクレオチド長であり、および/または本明細書に記載の単離された核酸分子中の連続したヌクレオチドを含む。また、本発明の範囲内には、本明細書に記載の単離された核酸分子の、隣接した又は連続したヌクレオチドを含むプローブまたはプライマーであって、該プローブまたはプライマー配列内に1、2、3、4、5、6、7、8、9または10塩基の相違が存在する、プローブまたはプライマーも含まれる。該デサチュラーゼヌクレオチド配列に基づくプローブは、同一または相同タンパク質をコードする転写産物またはゲノム配列を検出する(例えば、特異的に検出する)ために使用されうる。好ましい実施形態においては、該プローブは更に、それに結合した標識基を含み、例えば、該標識基は放射性同位体、蛍光化合物、酵素または酵素補因子でありうる。もう1つの実施形態においては、1組のプライマー、例えば、PCRにおける使用に適したプライマーが提供され、それを使用して、デサチュラーゼ配列の選択された領域、例えばドメイン、領域、部位または他の配列(本明細書に記載のもの)を増幅することが可能である。該プライマーは、少なくとも5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45または50塩基対長、かつ、100塩基対長未満または200塩基対長未満であるべきである。該プライマーは、本明細書に開示されている配列または天然変異体の配列と比較された場合に、同一であるか、またはせいぜい1、2、3、4、5、6、7、8、9または10塩基異なるべきである。そのようなプローブは、例えば、被験者からの細胞のサンプル中のデサチュラーゼコード化核酸のレベルを測定することにより、例えば、デサチュラーゼmRNAレベルを検出し、またはゲノムデサチュラーゼ遺伝子が突然変異もしくは欠失しているかどうかを決定することにより、デサチュラーゼタンパク質を誤発現する細胞または組織を同定するための診断試験キットの一部分として使用されうる。
【0046】
「デサチュラーゼタンパク質の生物学的に活性な部分」をコードする核酸断片は、デサチュラーゼの生物活性(該デサチュラーゼタンパク質の生物活性は本明細書に記載されている)を有するポリペプチドをコードする、配列番号1または3のヌクレオチド配列の一部分を単離し、該デサチュラーゼタンパク質のそのコード化部分を(例えば、in vitroでの組換え発現により)発現させ、該デサチュラーゼタンパク質のコード化部分の活性を評価することにより、製造されうる。典型的な実施形態においては、該核酸分子は少なくとも10、15、20、25、30、35、40、45、50、100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、1000、1250、1300、1350もしくは1400ヌクレオチド長またはそれ以上であり、デサチュラーゼ活性(本明細書に記載されている)を有するタンパク質をコードする。
【0047】
本発明は更に、遺伝暗号の縮重により、配列番号1または3に示すヌクレオチド配列とは異なるが、配列番号1または3に示すヌクレオチド配列によりコードされるものと同じデサチュラーゼタンパク質をコードする核酸分子を含む。もう1つの実施形態においては、本発明の単離された核酸分子は、配列番号2または4に示すアミノ酸配列に対して少なくとも1アミノ酸残基かつ多くとも5、10、20、50または100アミノ酸残基異なるアミノ酸配列を有するタンパク質をコードするヌクレオチド配列を有する。さらにもう1つの実施形態においては、該核酸分子はヒトデサチュラーゼのアミノ酸配列をコードする。この比較のためにアライメントが必要な場合には、それらの配列は、最大相同性が得られるようアライメントされるべきである。
【0048】
核酸変異体は、天然で生じるもの、例えば、対立遺伝子変異体(同じ遺伝子座)、ホモログ(異なる遺伝子座)およびオルソログ(異なる生物)であってもよく、あるいは非天然で生じるものであってもよい。非天然変異体は、ポリヌクレオチド、細胞または生物に適用されるものを含む突然変異誘発技術により作製されうる。該変異体はヌクレオチドの置換、欠失、逆位および挿入を含有しうる。変異はコード化領域および非コード化領域の一方または両方において生じうる。該変異は、(コード化産物において比較された場合に)保存的および非保存的アミノ酸置換の両方を生成しうる。
【0049】
対立遺伝子変異体は、例えば、デサチュラーゼタンパク質のアミノ酸配列の変化を招く、集団(例えば、ヒト集団)内のDNA配列多型から生じる。デサチュラーゼ遺伝子内のそのような遺伝的多型は、自然対立遺伝子変異により、集団内の個体間で存在しうる。本明細書中で用いる「遺伝子」および「組換え遺伝子」なる語は、デサチュラーゼタンパク質、例えば油料種子デサチュラーゼタンパク質をコードするオープンリーディングフレームを含む核酸分子を意味し、該核酸分子は更に、非コード調節配列およびイントロンを更に含みうる。
【0050】
したがって、1つの実施形態においては、本発明は、配列番号2または4のアミノ酸配列を含むポリペプチドの天然対立遺伝子変異体をコードする単離された核酸分子に関する。さらに、該核酸分子は、例えば、配列番号1または3を含む核酸分子の相補体にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズしうる。
【0051】
配列番号1または3のC. purpurea脂肪酸デサチュラーゼに加えて、デサチュラーゼタンパク質のアミノ酸配列の変化を招くDNA配列多型が集団(例えば、C. purpurea集団)内に存在しうることは当業者に理解されるであろう。該脂肪酸デサチュラーゼ遺伝子におけるそのような遺伝的多型は、自然変異により、集団内の個体間で存在しうる。そのような自然変異は、典型的には、該デサチュラーゼ遺伝子のヌクレオチド配列における1〜5%の分散をもたらしうる。CpDesXおよびCpDes12デサチュラーゼの対立遺伝子変異体には、機能性デサチュラーゼタンパク質および非機能性デサチュラーゼタンパク質の両方が含まれる。機能性対立遺伝子変異体は、例えば、(i)デサチュラーゼ基質または標的分子(例えば脂肪酸、例えば飽和脂肪酸または中間体脂肪酸)と相互作用する能力および/または(ii)デサチュラーゼ基質または標的分子において二重結合を形成する能力を維持した、デサチュラーゼタンパク質の天然アミノ酸配列変異体である。機能性対立遺伝子変異体は、典型的には、配列番号2または4の1以上のアミノ酸の保存的置換、または該タンパク質の決定的には重要でない領域内の決定的には重要でない残基の置換、欠失もしくは挿入のみを含有する。
【0052】
非機能性対立遺伝子変異体は、例えば、(i)デサチュラーゼ基質または標的分子(例えば中間体脂肪酸)と相互作用する能力および/または(ii)デサチュラーゼ基質または標的分子における炭素原子間で二重結合を形成する能力を有さない、デサチュラーゼタンパク質、例えばCpDesXおよびCpDes12の天然アミノ酸配列変異体である。非機能性対立遺伝子変異体は、典型的には、配列番号2または4のアミノ酸の非保存的置換、欠失、または挿入、または未熟(premature)末端切断、あるいは該タンパク質の決定的に重要な残基または決定的に重要な領域における置換、挿入または欠失を含有する。
【0053】
本発明は更に、オルソログ(例えば、該デサチュラーゼタンパク質のヒトオルソログ)を提供する。C. purpureaデサチュラーゼタンパク質のオルソログは、非ヒトデサチュラーゼタンパク質の、同じデサチュラーゼ基質または標的分子結合メカニズム、二重結合形成メカニズム、乳児における脳の成長および発達のモジュレーションメカニズム、成体における正常な脳機能の維持メカニズム、シグナル伝達過程に関与する光受容体機能に影響を及ぼす能力、ロドプシン活性化に影響を及ぼす能力、杆体および/もしくは錐体の発達メカニズム、ならびに/または細胞の成長および/もしくは増殖のモジュレーションメカニズムを有する、他の生物から単離されたタンパク質である。C. purpureaデサチュラーゼタンパク質のオルソログは、配列番号2または4と実質的に相同なアミノ酸配列を含むものとして容易に同定されうる。
【0054】
さらに、他のデサチュラーゼファミリーメンバーをコードし、したがって、配列番号1または3のデサチュラーゼ配列とは異なるヌクレオチド配列を有する核酸分子も、本発明の範囲内であると意図される。例えば、CpDesXまたはCpDes12のヌクレオチド配列に基づいて、別のデサチュラーゼcDNAが同定されうる。さらに、異なる種からのデサチュラーゼタンパク質をコードし、したがって、配列番号1または3のデサチュラーゼ配列とは異なるヌクレオチド配列を有する核酸分子も、本発明の範囲内であると意図される。例えば、SchizochytriumまたはCrythecodiniumデサチュラーゼcDNAは、CpDesXまたはCpDes12のヌクレオチド配列に基づいて同定されうる。
【0055】
本発明のデサチュラーゼcDNAの自然対立遺伝子変異体およびホモログに対応する核酸分子は、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下での標準的なハイブリダイゼーション技術に従い、本明細書に開示されているcDNAまたはその一部分をハイブリダイゼーションとして使用して、本明細書に開示されているデサチュラーゼ核酸に対するそれらの相同性に基づいて単離されうる。
【0056】
オルソログ、ホモログおよび対立遺伝子変異体は、当技術分野で公知の方法を用いて(例えば、本発明の単離された核酸分子に対する例えばストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でのハイブリダイゼーションにより)同定されうる。1つの実施形態においては、本発明の単離された核酸分子は少なくとも10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30ヌクレオチド長またはそれ以上であり、配列番号1または3のヌクレオチド配列を含む核酸分子にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズする。他の実施形態においては、該核酸は少なくとも50、100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、1000、1250、1300、1350もしくは1400ヌクレオチド長またはそれ以上である。
【0057】
本明細書中で用いる「ストリンジェントな条件下でハイブリダイズ(する)」なる語は、お互いに対して有意に同一または相同であるヌクレオチド配列がお互いにハイブリダイズしたままとなるハイブリダイゼーションおよび洗浄のための条件を示すと意図される。好ましくは、該条件は、お互いに対して少なくとも約70%、より好ましくは少なくとも約80%、より一層好ましくは少なくとも約85%または90%同一である配列がお互いにハイブリダイズしたままとなる条件である。そのようなストリンジェントな条件は当業者に公知であり、Current Protocols in Molecular Biology, Ausubelら編, John Wiley & Sons, Inc. (1995), 第2, 4および6節に見出されうる。他のストリンジェントな条件はMolecular Cloning: A Laboratory Manual, Sambrookら, Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, NY (1989), 第7, 9および11章に見出されうる。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の好ましい非限定的な具体例には、4×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)中、約65〜70℃でのハイブリダイゼーション(あるいは4×SSC+50%ホルムアミド中、約42〜50℃でのハイブリダイゼーション)、およびそれに続く、1×SSC中、約65〜70℃での1回以上の洗浄が含まれる。高度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の好ましい非限定的な具体例には、1×SSC中、約65〜70℃でのハイブリダイゼーション(あるいは1×SSC+50%ホルムアミド中、約42〜50℃でのハイブリダイゼーション)、およびそれに続く、0.3×SSC中、約65〜70℃での1回以上の洗浄が含まれる。低ストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件の好ましい非限定的な具体例には、4×SSC中、約50〜60℃でのハイブリダイゼーション(あるいは6×SSC+50%ホルムアミド中、約40〜45℃でのハイブリダイゼーション、あるいは6×SSC中、65℃でのハイブリダイゼーション)、およびそれに続く、2×SSC中、約50〜60℃での1回以上の洗浄が含まれる。前記の値の中間的な範囲、例えば65〜70℃または42〜50℃も、本発明に含まれると意図される。ハイブリダイゼーションおよび洗浄バッファー中のSSC(1×SSCは0.15M NaClおよび15mM クエン酸ナトリウム)の代わりに、SSPE(1×SSPEは0.15 NaCl、10mM NaH2PO4および1.25mM EDTA, pH7.4)を使用することが可能であり、ハイブリダイゼーションが完了した後、洗浄をそれぞれ15分間行う。50塩基対長未満であると予想されるハイブリッドに関するハイブリダイゼーション温度は該ハイブリッドの融解温度(Tm)より5〜10℃低いべきであり、ここで、Tmは以下の式により決定される。18塩基対長未満のハイブリッドに関しては、Tm(℃) = 2(A + T 塩基の数) + 4(G + C 塩基の数)である。18〜49塩基対長のハイブリッドに関しては、Tm(℃) = 81.5 + 16.6(log10[Na+]) + 0.41(%G+C) - (600/N)であり、ここで、Nは該ハイブリッド中の塩基数であり、[Na+]はハイブリダイゼーションバッファー中のナトリウムイオンの濃度である(1×SSCに関する[Na+] = 0.165 M)。また、膜、例えばニトロセルロースまたはナイロン膜への核酸分子の非特異的ハイブリダイゼーションを軽減するために、追加的な試薬、例えばブロッキング剤(例えば、BSAまたはサケもしくはニシン精子担体DNA)、界面活性剤(例えば、SDS)、キレート剤(例えば、EDTA)、フィコール(Ficoll)、PVPなど(これらに限定されるものではない)がハイブリダイゼーションおよび/または洗浄バッファーに添加されうる、と当業者に認識されるであろう。特にナイロン膜を使用する場合、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の追加的な好ましい非限定的な具体例として、0.25〜0.5M NaH2PO4、7% SDS中、約65℃でのハイブリダイゼーション、およびそれに続く、0.02M NaH2PO4、1% SDS中、65℃(例えば、ChurchおよびGilbert (1984) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:1991-1995を参照されたい)または0.2×SSC、1%SDSでの1回以上の洗浄が挙げられる。
【0058】
好ましくは、配列番号1または3の配列にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする本発明の単離された核酸分子は、天然核酸分子である。本明細書中で用いる「天然(天然に存在する)」核酸分子は、天然において生じる(例えば、天然タンパク質をコードする)ヌクレオチド配列を有するRNAまたはDNA分子を意味する。
【0059】
集団内に存在しうる該デサチュラーゼ配列の天然対立遺伝子変異体に加えて、さらに、突然変異により配列番号1または3のヌクレオチド配列内に変化が導入され、それにより、該デサチュラーゼタンパク質の機能的能力を改変することなくコード化デサチュラーゼタンパク質のアミノ酸配列における変化がもたらされうることは当業者は理解するであろう。例えば、「非必須」アミノ酸残基においてアミノ酸置換をもたらすヌクレオチド置換が配列番号1または3の配列内に施されうる。「非必須」アミノ酸残基は、生物活性を改変することなくCpDesXまたはCpDes12の野生型配列(例えば、配列番号2または4の配列)から改変されうる残基であり、一方、「必須」アミノ酸残基は生物活性に必要である。例えば、本発明のデサチュラーゼタンパク質の間で保存されているアミノ酸残基、例えば、ヘム結合性モチーフまたはヒスチジンモチーフ内に存在するアミノ酸残基は、改変には特に不適切であると予想される。さらに、本発明のデサチュラーゼタンパク質および該脂肪酸デサチュラーゼファミリーの他のメンバーの間で保存されている追加的なアミノ酸残基も改変には適さないと考えられる。
【0060】
したがって、本発明のもう1つの態様は、活性に必須ではないアミノ酸残基における変化を含有するデサチュラーゼタンパク質をコードする核酸分子に関する。そのようなデサチュラーゼタンパク質はアミノ酸配列においては配列番号2または4と異なるが、尚も生物活性を保有する。1つの実施形態においては、前記の単離された核酸分子は、配列番号2または4に対して、例えば配列番号2または4の全長に対して少なくとも約50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%または60%、好ましくは少なくとも約61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%または70%、より好ましくは少なくとも約71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%または94%、より一層好ましくは少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上同一であるアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む。
【0061】
配列番号2または4のタンパク質と相同なデサチュラーゼタンパク質をコードする単離された核酸分子は、コードされるタンパク質内に1以上のアミノ酸の置換、付加または欠失が導入されるよう、配列番号1または3のヌクレオチド配列内に1以上のヌクレオチドの置換、付加または欠失を導入することにより作製されうる。突然変異は、標準的な技術、例えば部位特異的突然変異誘発およびPCR媒介突然変異誘発により、配列番号1または3内に導入されうる。好ましくは、1以上の推定非必須アミノ酸残基において、保存的アミノ酸置換が施される。「保存的アミノ酸置換」は、アミノ酸残基が、類似側鎖を有するアミノ酸残基で置換されるアミノ酸置換である。類似側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは当技術分野において特徴づけられている。これらのファミリーには、塩基性側鎖を有するアミノ酸(例えば、リシン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、無荷電極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン、トリプトファン)、無極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン)、ベータ-分枝側鎖を有するアミノ酸(例えば、トレオニン、バリン、イソロイシン)および芳香族側鎖を有するアミノ酸(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)が含まれる。したがって、デサチュラーゼタンパク質内の推定非必須アミノ酸残基は、好ましくは、同じ側鎖ファミリーからの別のアミノ酸残基で置換される。あるいは、もう1つの実施形態においては、デサチュラーゼコード配列の全部または一部に沿って、例えば飽和突然変異誘発(saturation mutagenesis)により、突然変異をランダムに導入することが可能であり、得られた突然変異体をデサチュラーゼ生物活性に関してスクリーニングして、活性を保有する突然変異体を同定することが可能である。配列番号1または3の突然変異誘発の後、コードされるタンパク質を組換え発現させることが可能であり、該タンパク質の活性を決定することが可能である。
【0062】
好ましい実施形態においては、(i)デサチュラーゼ基質または標的分子(例えば、中間体脂肪酸)と相互作用する能力、および/または(ii)デサチュラーゼ基質または標的分子において炭素原子間で二重結合を形成する能力に関して、突然変異体デサチュラーゼタンパク質をアッセイすることが可能である。
【0063】
II.単離されたデサチュラーゼタンパク質
本発明の1つの態様は、単離された又は組換えデサチュラーゼタンパク質およびポリペプチド、ならびにそれらの生物学的に活性な部分に関する。1つの実施形態においては、標準的なタンパク質精製技術を用いる適当な精製法により、細胞または組織源から、天然デサチュラーゼタンパク質を単離することが可能である。もう1つの実施形態においては、組換えDNA技術により、デサチュラーゼタンパク質を製造する。組換え発現の代わりに、デサチュラーゼタンパク質またはポリペプチドは、標準的なペプチド合成技術を用いて化学的に合成することが可能である。
【0064】
「単離(された)」もしくは「精製(された)」タンパク質またはその生物学的に活性な部分は、該デサチュラーゼタンパク質が由来する細胞または組織源からの他の細胞物質または混入タンパク質を実質的に含有せず、あるいは化学合成された場合には化学的前駆体または他の化学物質を実質的に含有しない。「細胞物質を実質的に含有しない」なる表現は、デサチュラーゼタンパク質が単離され又は組換え製造される起源にあたる細胞の細胞成分から該デサチュラーゼタンパク質が分離されている、該デサチュラーゼタンパク質の調製物を包含する。1つの実施形態においては、「細胞物質を実質的に含有しない」なる語は、約80%、70%、60%、50%、40%または30%(乾燥重量に基づくもの)未満の非デサチュラーゼタンパク質(本明細書中では「混入タンパク質」とも称される)、より好ましくは約20%未満の非デサチュラーゼタンパク質、さらに好ましくは約10%未満の非デサチュラーゼタンパク質、最も好ましくは約5%未満の非デサチュラーゼタンパク質を含有するデサチュラーゼタンパク質の調製物を包含する。また、該デサチュラーゼタンパク質またはその生物学的に活性な部分が組換え製造される場合には、それは、好ましくは、培地を実質的に含有しない。すなわち、培地は、該タンパク質調製物の体積の約20%未満、より好ましくは約10%未満、最も好ましくは約5%未満に相当する。
【0065】
「化学的前駆体または他の化学物質を実質的に含有しない」なる表現は、デサチュラーゼタンパク質の合成に関与する化学的前駆体または他の化学物質から該デサチュラーゼタンパク質が分離されている、該デサチュラーゼタンパク質の調製物を包含する。1つの実施形態においては、「化学的前駆体または他の化学物質を実質的に含有しない」なる表現は、約30%(乾燥重量に基づくもの)未満の化学的前駆体または非デサチュラーゼ化学物質、より好ましくは約20%未満の科学的前駆体または非デサチュラーゼ化学物質、さらに好ましくは約10%未満の化学的前駆体または非デサチュラーゼ化学物質、最も好ましくは約5%未満の化学的前駆体または非デサチュラーゼ化学物質を含有するデサチュラーゼタンパク質の調製物を包含する。また、本発明のタンパク質は、それらの対応する天然タンパク質とは異なる及び/又は少なくとも幾つかの細胞成分を尚も伴っている形態でありうる、と理解されるべきである。例えば、該タンパク質は細胞膜と結合していてもよい。
【0066】
本明細書中で用いる、デサチュラーゼタンパク質の「生物学的に活性な部分」は、デサチュラーゼ分子と非デサチュラーゼ分子(例えば、脂肪酸のようなデサチュラーゼ基質)との間の相互作用に関与する、デサチュラーゼタンパク質の断片を含む。デサチュラーゼタンパク質の生物学的に活性な部分は、デサチュラーゼタンパク質の活性の少なくとも1つを示すのに十分なアミノ酸残基を含むデサチュラーゼアミノ酸配列、例えば配列番号2または4に示すアミノ酸配列に対して十分に相同な又はそれに由来するアミノ酸配列を含むペプチドを含む。典型的には、生物学的に活性な部分は、該デサチュラーゼタンパク質の活性の少なくとも1つ、例えば、(i)デサチュラーゼ基質または標的分子(例えば脂肪酸、例えば飽和脂肪酸、および中間体脂肪酸)と相互作用する能力および/または(ii)デサチュラーゼ基質または標的分子において炭素原子間で二重結合を形成する能力、を有するドメインまたはモチーフを含む。デサチュラーゼタンパク質の生物学的に活性な部分は、例えば10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、75、100、125、150、175、200、250、300、350、400もしくは450アミノ酸長またはそれ以上であるポリペプチドでありうる。
【0067】
1つの実施形態においては、デサチュラーゼタンパク質の生物学的に活性な部分は、デサチュラーゼ活性に関与することが知られている、デサチュラーゼ間で保存されているドメインを含む。例えば、CpDesXまたはCpDes12アミノ酸配列間で保存されている少なくとも1つのドメインまたはモチーフが、デサチュラーゼの活性を維持させるために、生物学的に活性な断片内に組み込まれうる。あるいは、図3に示す、種々の生物由来の脂肪酸デサチュラーゼの間で保存されている少なくとも1つのドメインまたはモチーフが、デサチュラーゼの活性を維持させるために、生物学的に活性な断片内に組み込まれうる。特に、デサチュラーゼは、しばしば、少なくとも1つのヒスチジンモチーフ、好ましくは、約3個のヒスチジンモチーフを含有する。例えば、生物学的に活性な部分は以下のヒスチジンモチーフを含みうる:HECGH(配列番号2または4のアミノ酸残基155-159)、HXXHH(配列番号2または4のアミノ酸残基191-195)およびHVXHH(配列番号2または4のアミノ酸残基391-395)(ここで、Xは任意の適当なアミノ酸を含みうる)。そのようなヒスチジンモチーフは、しばしば、ミクロソームデサチュラーゼにおいて見出される。さらに、該タンパク質の他の領域が欠失している、他の生物学的に活性な部分を、組換え技術により製造することが可能であり、それを天然デサチュラーゼタンパク質の機能活性の1以上に関して評価することが可能である。
【0068】
好ましい実施形態においては、デサチュラーゼタンパク質は、配列番号2または4に示すアミノ酸配列を有する。他の実施形態においては、該デサチュラーゼタンパク質は、前記小節Iで詳細に説明したとおり自然対立遺伝子変異または突然変異誘発によりアミノ酸配列においては異なるが、配列番号2または4と実質的に同一であり、配列番号2または4のタンパク質の機能活性を保有する。もう1つの実施形態においては、該デサチュラーゼタンパク質は、配列番号2または4に対して少なくとも約50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%または60%、好ましくは少なくとも約61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%または70%、より好ましくは少なくとも約71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%または80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%または94%、より一層好ましくは少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上同一であるタンパク質である。
【0069】
もう1つの実施形態においては、本発明は、配列番号1または3のヌクレオチド配列またはそれらの相補体に対して少なくとも約50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%または60%、好ましくは少なくとも約61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%または70%、より好ましくは少なくとも約71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%または94%、より一層好ましくは少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上同一であるヌクレオチド配列よりなる核酸分子によりコードされるデサチュラーゼタンパク質に関する。本発明は更に、配列番号1または3のヌクレオチド配列またはそれらの相補体を含む核酸分子の相補体にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列からなる核酸分子によりコードされるデサチュラーゼタンパク質に関する。
【0070】
2つのアミノ酸配列または2つの核酸配列の同一性(%)を決定するためには、最適な比較のために、それらの配列をアライメントさせる(例えば、最適なアライメントのために、第1および第2アミノ酸または核酸配列の一方または両方にギャップが導入されることが可能であり、比較目的には非相同配列は無視されうる)。好ましい実施形態においては、比較のためにアライメントされる参照配列の長さは、参照配列の長さの少なくとも30%、好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも50%、さらに好ましくは少なくとも60%、より一層好ましくは少なくとも70%、80%または90%である(例えば、477アミノ酸残基を有する配列番号2のCpDesXアミノ酸配列に対して第2配列をアライメントさせる場合には、少なくとも143、好ましくは少なくとも191、より好ましくは少なくとも238、さらに好ましくは少なくとも286、より一層好ましくは少なくとも334、382または429アミノ酸残基をアライメントさせる;476アミノ酸残基を有する配列番号4のCpDes12アミノ酸配列に対して第2配列をアライメントさせる場合には、少なくとも143、好ましくは少なくとも190、より好ましくは少なくとも238、さらに好ましくは少なくとも285、より一層好ましくは少なくとも333、381または428アミノ酸残基をアライメントさせる)。ついで対応アミノ酸位置またはヌクレオチド位置におけるアミノ酸残基またはヌクレオチドを比較する。第1配列における位置が、第2配列における対応位置と同じアミノ酸残基またはヌクレオチドにより占められている場合、該分子はその位置において同一である(本明細書中で用いるアミノ酸または核酸の「同一性」はアミノ酸または核酸の「相同性」と同意義である)。2つの配列の最適アライメントのために導入される必要があるギャップの数および各ギャップの長さを考慮に入れて、それらの2つの配列の間の同一性(%)は、それらの配列により共有される同一の位置の数の関数である。
【0071】
2つの配列の間の配列の比較および同一性(%)の決定は、数学的アルゴリズムを使用して達成されうる。好ましい実施形態においては、2つのアミノ酸配列の間の同一性は、GCGソフトウェアパッケージ(http://www.gcg.comにおいて入手可能)内のGAPプログラム内に組込まれているNeedlemanおよびWunsch(J. Mol. Biol. (48):444-453 (1970))アルゴリズムを使用して、Blossum 62行列またはPAM250行列ならびに16、14、12、10、8、6または4のギャップ重み(gap weight)および1、2、3、4、5または6の長さ重み(length weight)を使用して決定される。さらにもう1つの好ましい実施形態においては、2つのヌクレオチド配列の間の同一性(%)は、GCGソフトウェアパッケージ(http://www.gcg.comにおいて入手可能)内のGAPプログラムを使用して、NWSgapdna.CMP行列ならびに40、50、60、70または80のギャップ重み(gap weight)および1、2、3、4、5または6の長さ重み(length weight)を使用して決定される。GAPプログラムに関して使用されるパラメーターの好ましい非限定的な具体例には、12のギャップペナルティ、4のギャップ伸長ペナルティおよび5のフレームシフトギャップペナルティを伴うBlosum 62スコアリング行列が含まれる。
【0072】
もう1つの好ましい実施形態においては、2つのアミノ酸またはヌクレオチド配列の間の同一性(%)は、ALIGNプログラム(バージョン2.0またはバージョン2.0U)内に組込まれているMeyersおよびMiller(Comput. Appl. Biosci., 4:11-17 (1988))のアルゴリズムを使用して、PAM120重み残基表、12のギャップ長ペナルティおよび4のギャップペナルティを使用して決定される。
【0073】
本発明の核酸およびタンパク質配列は更に、例えば、他のファミリーメンバーまたは関連配列を同定するために、公開データベースに対して検索を行うための「問合せ配列」として使用されうる。そのような検索は、Altschulら. (1990) J. Mol. Biol. 215:403-10のNBLASTおよびXBLASTプログラム(バージョン2.0)を使用して行われうる。BLASTヌクレオチド検索は、本発明のデサチュラーゼ核酸分子と相同なヌクレオチド配列を得るために、NBLASTプログラム、スコア = 100、ワード長 = 12を使用して行われうる。BLASTタンパク質検索は、本発明のデサチュラーゼタンパク質分子と相同なアミノ酸配列を得るために、XBLASTプログラム、スコア = 50、ワード長 = 3を使用して行われうる。比較目的でギャップ化アライメントを得るためには、Altschulら, (1997) Nucleic Acids Res. 25(17):3389-3402に記載されているとおりに、Gapped BLASTが使用されうる。BLASTおよびGapped BLASTプログラムを使用する場合、それぞれのプログラム(例えば、XBLASTおよびNBLAST)のデフォルトパラメーターが使用されうる。http://www.ncbi.nlm.nih.govを参照されたい。
【0074】
III.不飽和脂肪酸の製造方法
本発明は、不飽和脂肪酸、例えば長鎖多価不飽和脂肪酸(LCPUFA)、ならびにGLA 18:3 (6,9,12)、ALA 18:3 (9,12,15)、SDA 18:4 (6,9,12,15)、AA 20:4 (5,8,11,14)、EPA 20:5 (5,8,11,14,17)、DPA 22:5 (4,7,10,13,16)、DHA 22:6 (4,7,10,13,16,19)、20:4 (8,11,14,17)、16:2 (9,12)、18:2 (9,12)および16:3 (9,12,15)のような不飽和脂肪酸の、新規な及び改良された製造方法を提供する。
【0075】
A.組換え細胞および細胞培養方法
本発明は更に、本明細書に記載の遺伝子産物、好ましくはCpDesXおよびCpDes12遺伝子産物をコードする核酸配列を含む組換えベクターに関する。組換えベクターなる語は、天然ベクターまたはプラスミド内に含まれる核酸配列より大きい又は少ない又はそれらと異なる核酸配列を含有するよう改変、修飾または操作されたベクター(例えば、プラスミド)を含む。1つの実施形態においては、組換えベクターは、調節配列に機能しうる形で連結された少なくとも1つの脂肪酸デサチュラーゼ酵素をコードする核酸配列を含む。「調節配列に機能しうる形で連結(された)」なる表現は、関心のあるヌクレオチド配列が、該ヌクレオチド配列の発現(例えば、強化された発現、増加した発現、構成的発現、基底発現、減衰した発現、減少した発現、または抑制された発現)、好ましくは、(例えば、該組換えベクターが細胞内に導入された場合の)該ヌクレオチド配列によりコードされる遺伝子産物の発現を可能にする様態で、該調節配列に連結されていることを意味する。典型的なベクターは、本明細書中、および例えばFrascottiら, 米国特許第5,721,137号(その内容を参照により本明細書に組み入れることとする)に更に詳細に記載されている。
【0076】
「調節配列」なる語は、他の(非調節性)核酸配列の発現に影響を及ぼす(例えば、モジュレーションする又は調節する)核酸配列を含む。1つの実施形態においては、調節配列は、該調節配列に関して観察される関心のある特定の遺伝子の場合と類似した又は同一の位置および/または配向で、ならびに天然で見出される関心のある遺伝子の場合と類似した又は同一の位置および/または配向(例えば、天然の位置および/または配向)で、組換えベクター内に含まれる。例えば、関心のある遺伝子(例えば、CpDesXまたはCpDes12遺伝子)は、天然生物における該遺伝子に付随または隣接する調節配列に機能しうる形で連結されて[例えば、「天然」CpDesXまたはCpDes12調節配列(例えば、「天然」CpDesXまたはCpDes12プロモーター)に機能しうる形で連結されて]、組換えベクター内に含まれうる。あるいは、関心のある遺伝子(例えば、CpDesXまたはCpDes12遺伝子)は、天然生物における別の(例えば、異なる)遺伝子に付随または隣接する調節配列に機能しうる形で連結されて、組換えベクター内に含まれうる。例えば、CpDesXまたはCpDes12遺伝子は、非CpDesXまたはCpDes12調節配列に機能しうる形で連結されて、ベクター内に含まれうる。あるいは、関心のある遺伝子(例えば、CpDesXまたはCpDes12遺伝子)は、別の生物からの調節配列に機能しうる形で連結されて、ベクター内に含まれうる。例えば、他の微生物からの調節配列(例えば、他の細菌調節配列、バクテリオファージ調節配列など)が、関心のある特定の遺伝子に機能しうる形で連結されうる。
【0077】
好ましい調節配列には、プロモーター、エンハンサー、終結シグナルおよび他の発現制御要素(例えば、転写mRNAにおける、例えば、転写および/または翻訳調節タンパク質の結合部位)が含まれる。そのような調節配列は、例えば、Sambrook, J., Fritsh, E. F.およびManiatis, T. Molecular Cloning: A Laboratory Manual. 2nd, ed., Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY, 1989に記載されている。調節配列には、細胞におけるヌクレオチド配列の構成的発現を導く調節配列(例えば、構成的プロモーターおよび強力構成的プロモーター)、細胞におけるヌクレオチド配列の誘導可能な発現を導く調節配列(例えば、誘導プロモーター、例えば、キシロース誘導プロモーター)、および細胞におけるヌクレオチド配列の発現を減衰または抑制する調節配列(例えば、減衰シグナルまたはリプレッサー配列)が含まれる。また、調節配列を除去し又は欠失させることにより、関心のある遺伝子の発現を調節することも、本発明の範囲内である。例えば、関心のある遺伝子の発現を増強するために、転写の負の調節に関与する配列を除去することが可能である。
【0078】
1つの実施形態においては、本発明の組換えベクターは、プロモーターまたはプロモーター配列に機能しうる形で連結された少なくとも1つの遺伝子産物(例えば、CpDesXまたはCpDes12)をコードする核酸配列を含む。
【0079】
特定の実施形態においては、所望の不飽和脂肪酸の産生を増強するために、種子特異的プロモーターが使用される。例えば、2003年8月21日付けで公開された米国特許公開番号2003-0159174(その全内容を参照により明示的に本明細書に組み入れることとする)は、例えばLinum属由来のコンリニン(Conlinin)、コンリニン2およびLuFad3を包含する特定の種子特異的プロモーターの使用を記載している。当業者は、デサチュラーゼヌクレオチド配列の発現をモジュレーション、例えば増強するために、他のプロモーター、例えばナピン(napin)のような種子特異的プロモーターが使用されうることを理解するであろう。
【0080】
さらにもう1つの実施形態においては、本発明の組換えベクターは、終結配列またはターミネーター配列(例えば、転写ターミネーター配列)を含む。「ターミネーター配列」なる語は、mRNAの転写を終結させるよう働く調節配列を含む。ターミネーター配列(または縦列転写ターミネーター)は更に、(例えば、mRNAに構造性を付加することにより)例えばヌクレアーゼに対してmRNAを安定化させるよう働きうる。
【0081】
さらにもう1つの実施形態においては、本発明の組換えベクターは抗生物質耐性配列を含む。「抗生物質耐性配列」なる語は、抗生物質に対する耐性を促進し又はそれを宿主生物に付与する配列を含む。1つの実施形態においては、該抗生物質耐性配列は、cat(クロラムフェニコール耐性)、tet(テトラサイクリン耐性)配列、erm(エリスロマイシン耐性)配列、neo(ネオマイシン耐性)配列およびspec(スペクチノマイシン耐性)配列よりなる群から選ばれる。本発明の組換えベクターは更に、相同組換え配列(例えば、宿主生物の染色体内への関心のある遺伝子の組換えを可能にするよう設計された配列)を含みうる。例えば、宿主染色体内への組換えのための相同性標的として、amyE配列が使用されうる。
【0082】
「操作された細胞」なる語は、不飽和脂肪酸が産生されるよう細胞が少なくとも1つの脂肪酸デサチュラーゼ、例えばCpDesXまたはCpDes12を含有するよう操作(例えば、遺伝的に操作)された又は改変された細胞を含む。そのような微生物の改変または操作は、生合成経路の脱調節および/または少なくとも1つの生合成酵素の過剰発現を含む(これらに限定されるものではない)、本明細書に記載されている任意の方法に従うものでありうる。「操作」された酵素(例えば、「操作」された生合成酵素)には、例えば野生型の又は天然対応酵素と比べて該酵素の少なくとも1つの上流または下流前駆体、基質または産物が変化または改変されるよう、発現または産生が変化または改変された酵素が含まれる。
【0083】
「過剰発現された」または「過剰発現」なる語は、細胞の操作前の又は操作されていない比較しうる細胞における発現レベルより高いレベルでの遺伝子産物(例えば、脂肪酸デサチュラーゼ)の発現を含む。1つの実施形態においては、該細胞は、該細胞の操作前の又は操作されていない比較しうる細胞における発現レベルより高いレベルで遺伝子産物を過剰発現するよう遺伝的に操作(例えば、遺伝的に改変操作)されうる。遺伝的操作には、(例えば、強力なプロモーター、誘導プロモーターまたは複数のプロモーターを付加することによる、あるいは発現が構成的となるよう調節配列を除去することによる)調節配列または特定の遺伝子の発現に関連した部位の改変または修飾、特定の遺伝子の染色体位置の修飾、例えばリボソーム結合部位または転写ターミネーターのような特定の遺伝子に隣接した核酸配列の改変、特定の遺伝子のコピー数の増加、特定の遺伝子の転写および/または特定の遺伝子産物の翻訳に関与するタンパク質(例えば、調節性タンパク質、サプレッサー、エンハンサー、転写アクチベーターなど)の修飾、あるいは当技術分野において常套的である、特定の遺伝子の発現を脱調節するための任意の他の通常の手段(限定的なものではないが、例えばリプレッサータンパク質の発現を遮断するための、アンチセンス核酸分子の使用を含む)が含まれうるが、これらに限定されるものではない。
【0084】
もう1つの実施形態においては、該細胞は、該細胞の操作前の又は操作されていない比較しうる細胞における発現レベルより高いレベルで遺伝子産物を過剰発現するよう、物理的または環境的に操作されうる。例えば、転写および/または翻訳が増強または増加されるよう、特定の遺伝子の転写および/または特定の遺伝子産物の翻訳を増強することが知られている又はその疑いのある物質で細胞を処理し、あるいは該物質の存在下で細胞を培養することが可能である。あるいは、転写および/または翻訳が増強または増加されるよう、特定の遺伝子の転写および/または特定の遺伝子産物の翻訳を増加させるよう選択された温度で、細胞を培養することが可能である。
【0085】
「脱調節された」または「脱調節」なる語は、生合成経路内の酵素をコードする、細胞内の少なくとも1つの遺伝子が改変または修飾されて、該細胞内の該生合成酵素のレベルまたは活性が改変または修飾されることを含む。好ましくは、生合成経路内の酵素をコードする少なくとも1つの遺伝子が変化または改変されて、その遺伝子産物が増強または増加する。「脱調節された経路」なる表現は、生合成経路内の酵素をコードする2以上の遺伝子が変化または改変されて2以上の生合成酵素のレベルまたは活性が変化または改変された生合成経路をも含みうる。細胞内の経路を「脱調節」する(例えば、ある与えられた生合成経路内の2以上の遺伝子を同時に脱調節する)能力は、「オペロン」と称される遺伝物質の連続断片上に互いに隣接して存在する遺伝子により2以上の酵素(例えば、2つ又は3つの生合成酵素)がコードされる、細胞の特定の現象から生じうる。
【0086】
「オペロン」なる語は、1以上、好ましくは少なくとも2つ構造遺伝子(例えば、酵素、例えば生合成酵素をコードする遺伝子)と結合したプロモーターおよび恐らくは調節要素を含有する遺伝子発現の共役的単位を含む。構造遺伝子の発現は、例えば、調節要素に結合する調節タンパク質により、または転写の抗終結により、共役的に調節されうる。構造遺伝子は転写されて、構造タンパク質の全部をコードする単一のmRNAを与えうる。オペロン内に含まれる遺伝子の共役的調節により、単一のプロモーターおよび/または調節要素の変化または改変は、該オペロンによりコードされる各遺伝子産物の変化または改変をもたらしうる。調節要素の変化または改変には、内因性プロモーターおよび/または調節要素の除去、遺伝子産物の発現の改変をもたらす、強力なプロモーター、誘導プロモーターもしくは複数のプロモーターの付加または調節配列の除去、オペロンの染色体位置の改変、リボソーム結合部位のような、オペロンに隣接した又はオペロン内の核酸配列の改変、オペロンのコピー数の増加、オペロンの転写および/またはオペロンの遺伝子産物の翻訳に関与するタンパク質(例えば、調節性タンパク質、サプレッサー、エンハンサー、転写アクチベーターなど)の改変、あるいは当技術分野において常套的である、遺伝子の発現を脱調節するための任意の他の通常の手段(限定的なものではないが、例えばリプレッサータンパク質の発現を遮断するための、アンチセンス核酸分子の使用を含む)が含まれうるが、これらに限定されるものではない。また、脱調節は、例えば、フィードバック耐性である又はより高い若しくはより低い特異的活性を有する酵素を与える、1以上の遺伝子のコード領域の改変を伴ってもよい。
【0087】
本発明の特に好ましい「組換え」細胞は、植物由来の遺伝子もしくは遺伝子産物または微生物由来の遺伝子もしくは遺伝子産物を過剰発現するよう遺伝的に操作されたものである。例えば「植物由来」、「微生物由来」または「由来(する)」なる語は、微生物もしくは植物、例えば油料種子植物において天然で見出される遺伝子、または植物遺伝子もしくは微生物由来の遺伝子(例えば、コードされている配列番号1または配列番号3)によりコードされる遺伝子産物(例えば、CpDesXまたはCpDes12)を含む。
【0088】
本発明の方法論は、少なくとも1つの脂肪酸デサチュラーゼを過剰発現する組換え細胞に関する。1つの実施形態においては、本発明の組換え細胞は、Claviceps purpurea脂肪酸デサチュラーゼを過剰発現するよう遺伝的に操作されている(例えば、配列番号2もしくは4のアミノ酸配列を有する又は配列番号1もしくは3の核酸配列によりコードされる少なくとも1つの脂肪酸デサチュラーゼを過剰発現するよう操作されている)。
【0089】
もう1つの実施形態においては、本発明は、脂肪酸デサチュラーゼ核酸配列(例えば、配列番号1または3に記載の脂肪酸デサチュラーゼ核酸配列)を含むベクターで形質転換された細胞(例えば、微生物細胞)に関する。
【0090】
本発明のもう1つの態様は、脂肪酸産生のモジュレーション(例えば、不飽和脂肪酸の産生の増強)が生じるように本発明(例えば、デサチュラーゼ)の核酸分子により形質転換された細胞を培養することを含む、脂肪酸の産生をモジュレーションする方法に関する。脂肪酸の産生をモジュレーションするために本発明(例えば、CpDesXまたはCpDes12)の核酸分子により形質転換された細胞を培養する方法は、本明細書中では「生物変換(biotransformation)」と称される。該生物変換方法は、本明細書に記載の組換え細胞および/またはデサチュラーゼを使用することが可能である。「生物変換方法」は、本明細書中では「生物変換(bioconversion)方法」とも称され、脂肪酸デサチュラーゼの上流のいずれかの化合物(例えば、基質、中間体または産物)または脂肪酸デサチュラーゼの下流の化合物(例えば、基質、中間体または産物)、特に不飽和脂肪酸の産生(例えば、転換または変換)をもたらす生物学的方法を含む。1つの実施形態においては、本発明は、不飽和脂肪酸が産生される条件下、少なくとも1つの脂肪酸デサチュラーゼを過剰発現する細胞を少なくとも1つの適当な基質と接触させること、および所望により、該脂肪酸を回収することを含む、不飽和脂肪酸の製造のための生物変換方法に関する。好ましい実施形態においては、本発明は、不飽和脂肪酸(例えば、DHA、SDAまたはGLA)が産生される条件下、CpDesXまたはCpDes12を過剰発現する細胞を適当な基質(例えば、中間体脂肪酸)と接触させること、および所望により該不飽和脂肪酸を回収することを含む、不飽和脂肪酸の製造のための生物変換方法に関する。不飽和脂肪酸が産生される条件には、不飽和脂肪酸の所望の産生をもたらす任意の条件が含まれうる。
【0091】
該生物変換反応において使用される細胞および/または酵素は、それらがそれらの意図される機能(例えば、所望の脂肪酸の産生)を達成するのを可能にする形態である。該細胞は全細胞であることが可能であり、あるいは、所望の最終結果を得るために必要な、該細胞の一部分のみであることが可能である。該細胞は、懸濁(例えば、適当な溶液、例えば、緩衝溶液または培地中への懸濁)、洗浄(例えば、細胞培養培地を洗い落とす)、アセトン乾燥、固定化(例えば、ポリアクリルアミドゲルもしくはk-カラゲニンでの、または合成支持体、例えばビーズ、マトリックスなどへの固定化)、固定、架橋または透過性亢進(例えば、膜および/または壁の透過性を亢進させて、化合物、例えば基質、中間体または産物が該膜または壁をより容易に通過しうるようにすること)に付されうる。細胞のタイプは、本発明の方法において使用されうる任意の細胞、例えば植物、動物または微生物細胞でありうる。
【0092】
細胞のタイプは、本発明の方法において使用されうる任意の細胞、例えば植物、動物または微生物細胞、好ましくは、植物または微生物細胞でありうる。1つの実施形態においては、該細胞は、植物細胞、例えば、アマ(Linum sp.)、ナタネ(Brassica sp.)、ダイズ(GlycineおよびSoja sp.)、ヒマワリ(Helianthus sp.)、ワタ(Gossypium sp.)、トウモロコシ(Zea mays)、オリーブ(Olea sp.)、ベニバナ(Carthamus sp.)、カカオ(Theobroma cacoa)、ラッカセイ(Arachis sp.)、タイマ、ツバキ(camelina)、ハマナ、アブラヤシ、ココヤシ、ラッカセイ、ゴマ、ヒマ、レスクエレラ、ナンキンハゼ、シアナッツ、アブラギリ、カポック、ケシ、ホホバおよびエゴマを含む(これらに限定されるものではない)油料種子植物である。特定の実施形態においては、該細胞はブラッシカ・ジュンセア(Brassica juncea)である。2003年8月21日付け公開の米国特許公開番号2003-0159174(その全内容を参照により明示的に本明細書に組み入れることとする)は、所望の最終産物の産生を最適化するための植物細胞の形質転換に関する詳細な教示を提供している。
【0093】
さらにもう1つの実施形態においては、該細胞は微生物細胞、例えばCandida、Cryptococcus、Lipomyces、Rhodosporidium、Yarrowia、Thraustochytrium、Pythium、SchizochytriumおよびCrythecodiniumである。例えばデサチュラーゼ脂肪酸の製造のための、本発明で提供する方法においては、他の微生物細胞も使用可能であることを当業者は理解するであろう。
【0094】
本発明の重要な態様は、所望の化合物(例えば、所望の不飽和脂肪酸)が産生されるよう、本明細書に記載されている組換え植物を成長させ、または本明細書に記載されている組換え微生物を培養することを含む。「培養」なる語は、本発明の生きている微生物を維持し及び/又は増殖させること(例えば、培養または株を維持し及び/又は増殖させること)を含む。1つの実施形態においては、本発明の微生物を液体培地内で培養する。もう1つの実施形態においては、本発明の微生物を固形培地または半固形培地内で培養する。好ましい実施形態においては、本発明の微生物を、該微生物の維持および/または成長に必須または有益である栄養素(例えば炭素源または炭素基質、例えば複合糖質、例えば豆類または穀類の粗びき粉、デンプン、糖、糖アルコール、炭化水素、油、脂肪、脂肪酸、有機酸およびアルコール;窒素源、例えば穀類、豆類および塊茎由来の植物性タンパク質、ペプトン、ペプチドおよびアミノ酸、動物由来のタンパク質、ペプチドおよびアミノ酸、例えば肉、乳および畜産副生物、例えばペプトン、肉エキスおよびカゼイン加水分解物;無機窒素源、例えば尿素、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硝酸アンモニウムおよびリン酸アンモニウム;リン源、例えばリン酸、そのナトリウムおよびカリウム塩;微量元素、例えばマグネシウム、鉄、マンガン、カルシウム、銅、亜鉛、ホウ素、モリブデンおよび/またはコバルト塩;ならびに成長因子、例えばアミノ酸、ビタミン、成長促進物質など)を含む培地(例えば、無菌液体培地)内で培養する。
【0095】
好ましくは、本発明の微生物を、制御されたpH下で培養する。「制御されたpH」なる語は、所望の産物(例えば、不飽和脂肪酸)の産生をもたらす任意のpHを含む。1つの実施形態においては、微生物を約7のpHで培養する。もう1つの実施形態においては、微生物を6.0〜8.5のpHで培養する。当業者に公知の多数の方法により、所望のpHが維持されうる。
【0096】
また、好ましくは、本発明の微生物を、制御された通気下で培養する。「制御された通気」なる語は、所望の産物(例えば、不飽和脂肪酸)の産生をもたらす十分な通気(例えば、酸素)を含む。1つの実施形態においては、例えば、培地に溶解している酸素の量を調節することにより、培養内の酸素レベルを制御することにより、通気を制御する。好ましくは、培養を攪拌することにより、培養の通気を制御する。攪拌は、培養容器(例えば、発酵槽)を回転または振とうすることにより、あるいは種々のポンプ装置により、プロペラまたは同様の機械的攪拌装置によりもたらされうる。通気は更に、無菌空気または酸素を培地(例えば、発酵混合物)内に通過させることによっても制御されうる。同様に好ましくは、本発明の微生物を、(例えば、消泡剤の添加により)過剰な起泡の非存在下で培養する。
【0097】
さらに、本発明の植物または微生物は、制御された温度下で培養されうる。「制御された温度」なる語は、所望の産物(例えば、不飽和脂肪酸)の産生をもたらす任意の温度を含む。1つの実施形態においては、制御された温度は15℃〜95℃の温度を含む。もう1つの実施形態においては、制御された温度は15℃〜70℃の温度を含む。好ましい温度は20℃〜55℃、より好ましくは30℃〜45℃、または30℃〜50℃である。
【0098】
微生物は、液体培地内で培養する(例えば、維持し及び/又は増殖させる)ことが可能であり、好ましくは、通常の培養方法、例えば静置培養、試験管培養、振とう培養(例えば、回転振とう培養、振とうフラスコ培養など)、通気攪拌培養または発酵により、連続的または断続的に培養する。好ましい実施形態においては、微生物を振とうフラスコ内で培養する。より好ましい実施形態においては、微生物を発酵槽(例えば、発酵法)において培養する。本発明の発酵法には、バッチ、フェド・バッチおよび連続発酵法が含まれるが、これらに限定されるものではない。「バッチ法」または「バッチ発酵」なる語は、培地、栄養素、補給添加物などの組成が発酵の開始時に設定され発酵中は改変に付されない閉じた系を意味するが、過剰な培地の酸性化および/または微生物の死を防ぐためにpHおよび酸素濃度のような因子を制御するための試みはなされうる。「フェド・バッチ法」または「フェド・バッチ」発酵なる語は、発酵が進行するにつれて1以上の基質または補給物質が添加される(例えば、段階的に増量しながら又は連続的に添加される)バッチ発酵を意味する。「連続法」または「連続発酵」なる語は、一定の発酵培地が連続的に発酵槽に添加され、等量の使用された又は「馴らし」培地が、好ましくは所望の産物(例えば、不飽和脂肪酸)の回収のために、同時に除去される系を意味する。種々のそのような方法が開発されており、当技術分野においてよく知られている。
【0099】
「所望の化合物(例えば不飽和脂肪酸、例えばDHA)が産生される条件下で培養する」なる表現は、所望の化合物の産生を達成するのに又は産生されている特定の化合物の所望の収量を得るのに適した又は十分な条件(例えば、温度、圧力、pH、持続時間など)下、植物または微生物を維持し及び/又は増殖(成長)させることを含む。例えば、所望の量の不飽和脂肪酸(例えば、DHA)を産生させるのに十分な時間にわたり、培養を継続する。好ましくは、該不飽和脂肪酸の最高産生に実質的に到達するのに十分な時間にわたり、培養を継続する。1つの実施形態においては、約12〜24時間、培養を継続する。もう1つの実施形態においては、約24〜36時間、36〜48時間、48〜72時間、72〜96時間、96〜120時間、120〜144時間、または144時間を超える時間にわたり、培養を継続する。もう1つの実施形態においては、不飽和脂肪酸の産生収量に到達するのに十分な時間にわたり、培養を継続し、例えば、少なくとも約15〜20g/Lの不飽和脂肪酸が産生されるよう、または少なくとも約20〜25g/Lの不飽和脂肪酸が産生されるよう、または少なくとも約25〜30g/Lの不飽和脂肪酸が産生されるよう、または少なくとも約30〜35g/Lの不飽和脂肪酸が産生されるよう、または少なくとも約35〜40g/Lの不飽和脂肪酸(例えば、少なくとも約37g/Lの不飽和脂肪酸)が産生されるよう、または少なくとも約40〜50g/Lの不飽和脂肪酸が産生されるよう、細胞を培養する。さらにもう1つの実施形態においては、不飽和脂肪酸の好ましい収量、例えば、前記の範囲内の収量が約24時間、約36時間、約48時間、約72時間または約96時間のうちに得られる条件下で、微生物を培養する。
【0100】
不飽和脂肪酸を製造する際には、さらに、補足的脂肪酸生合成基質の存在下で本発明の細胞を培養することが望ましいかもしれない。「補足的脂肪酸生合成基質」なる語は、細胞と接触すると又は細胞の培地に加えられると不飽和脂肪酸の生合成を強化または増加させるよう働く物質または化合物を含む。本発明の補足的脂肪酸生合成基質は濃縮溶液または懸濁液(例えば、水またはバッファーのような適当な溶媒中)の形態または固体の形態(例えば、粉末の形態)で加えられうる。さらに、本発明の補足的脂肪酸生合成基質は、単一アリコートとして、連続的または断続的に、ある与えられた時間にわたって加えられうる。
【0101】
本発明の方法は更に、所望の化合物(例えば、不飽和脂肪酸)を回収する工程を含みうる。所望の化合物を「回収する」なる語は、培地から該化合物を抽出、収穫、単離または精製することを含む。該化合物の回収は、通常の樹脂(例えば、陰イオンまたは陽イオン交換樹脂、非イオン吸着樹脂など)での処理、通常の吸着剤(例えば、活性炭、ケイ酸、セルロース、アルミナなど)での処理、pHの改変、溶媒抽出(例えば、アルコール、酢酸エチル、ヘキサンなどのような通常の溶媒を使用するもの)、透析、濾過、濃縮、結晶化、再結晶、pH調節、凍結乾燥などを含む(これらに限定されるものではない)当技術分野で公知の任意の通常の単離または精製法に従い行うことが可能である。例えば、まず、微生物を培地から除去することにより、化合物を培地から回収することが可能である。ついで培地を陽イオン交換樹脂の中または上を通過せて、望ましくない陽イオンを除去し、ついで陰イオン交換樹脂の中または上を通過させて、関心のある不飽和脂肪酸(例えば、DHA)より強い酸性を有する望ましくない無機陰イオンおよび有機酸を除去する。
【0102】
好ましくは、得られる調製物が他の成分を実質的に含有しないよう(例えば、培地成分および/または発酵副生成物を含有しないよう)、本発明の所望の化合物を「抽出」、「単離」または「精製」する。「他の成分を実質的に含有しない」なる表現は、所望の化合物が産生された培地の培地成分または発酵副生成物から該化合物が分離(例えば、精製または部分的に精製)されている、該化合物の調製物を含む。1つの実施形態においては、該調製物は、約80%(乾燥重量に基づく)の所望の化合物(例えば、約20%未満の他の培地成分または発酵副生成物)、より好ましくは約90%の所望の化合物(例えば、約10%未満の他の培地成分または発酵副生成物)、更に好ましくは約95%以上の所望の化合物(例えば、約5%未満の他の培地成分または発酵副生成物)、最も好ましくは約98〜99%の所望の化合物(例えば、約1〜2%未満の他の培地成分または発酵副生成物)を含有する。所望の化合物が、塩へと誘導体化された不飽和脂肪酸である場合には、該化合物は、好ましくは更に、該塩の形成に伴う化学的混入物を含有しない(例えば、実質的に含有しない)。所望の化合物が、アルコールへと誘導体化された不飽和脂肪酸である場合には、該化合物は、好ましくは更に、該アルコールの形成に伴う化学的混入物を含有しない(例えば、実質的に含有しない)。
【0103】
もう1つの実施形態においては、例えば植物または微生物が生物学的に非有害(例えば、安全)である場合には、所望の不飽和脂肪酸は該植物または微生物から精製されない。例えば、該植物または培養(または培養上清)の全体が産物源(例えば、粗産物)として使用されうる。1つの実施形態においては、該植物または培養(または培養上清)は、修飾を伴うことなく使用される。もう1つの実施形態においては、該植物または培養(または培養上清)は濃縮される。さらにもう1つの実施形態においては、該植物または培養(または培養上清)は粉末化、乾燥または凍結乾燥される。
【0104】
B.高収量製造方法
本発明の特に好ましい実施形態は、有意に高い収量で不飽和脂肪酸が産生される条件下、操作された植物または微生物を培養することを含む、不飽和脂肪酸、例えばDHAを製造するための高収量製造方法である。「高収量製造方法」、例えば、所望の化合物を製造するための(例えば、不飽和脂肪酸を製造するための)高収量製造方法なる語は、比較しうる製造方法で通常見られるものより上昇した又は高いレベルで所望の化合物の製造をもたらす方法を含む。好ましくは、高収量製造方法は、有意に高い収量での所望の化合物の製造をもたらす。「有意に高い収量」なる表現は、比較しうる製造方法で通常見られるものより十分に上昇した又は高い産生レベルまたは収量、例えば、所望の産物の商業的製造(例えば、商業的に実施可能なコストでの該産物の製造)に十分なレベルまで上昇した産生レベルまたは収量を含む。1つの実施形態においては、本発明は、2g/L以上のレベルで不飽和脂肪酸が産生される条件下、操作された植物または微生物を培養することを含む不飽和脂肪酸を製造するための高収量製造方法に関する。もう1つの実施形態においては、本発明は、10g/L以上のレベルで不飽和脂肪酸が産生される条件下、操作された植物または微生物を培養することを含む不飽和脂肪酸を製造するための高収量製造方法に関する。もう1つの実施形態においては、本発明は、20g/L以上のレベルで不飽和脂肪酸が産生される条件下、操作された植物または微生物を培養することを含む不飽和脂肪酸を製造するための高収量製造方法に関する。さらにもう1つの実施形態においては、本発明は、30g/L以上のレベルで不飽和脂肪酸が産生される条件下、操作された植物または微生物を培養することを含む不飽和脂肪酸を製造するための高収量製造方法に関する。さらにもう1つの実施形態においては、本発明は、40g/L以上のレベルで不飽和脂肪酸が産生される条件下、操作された植物または微生物を培養することを含む不飽和脂肪酸を製造するための高収量製造方法に関する。
【0105】
本発明は更に、十分に増加したレベルの化合物が商業的に望ましい時間内に産生される条件下、操作された植物または微生物を培養することを含む、所望の化合物を製造するための(例えば、不飽和脂肪酸を製造するための)高収量製造方法に関する。典型的な実施形態においては、本発明は、36時間のうちに15〜20g/L以上のレベルで不飽和脂肪酸が産生される条件下、操作された植物または微生物を培養することを含む、不飽和脂肪酸を製造するための高収量製造方法に関する。もう1つの実施形態においては、本発明は、48時間のうちに25〜30g/L以上のレベルで不飽和脂肪酸が産生される条件下、操作された植物または微生物を培養することを含む、不飽和脂肪酸を製造するための高収量製造方法に関する。もう1つの実施形態においては、本発明は、72時間のうちに35〜40g/L以上、例えば72時間のうちに37g/L以上のレベルで不飽和脂肪酸が産生される条件下、操作された植物または微生物を培養することを含む、不飽和脂肪酸を製造するための高収量製造方法に関する。もう1つの実施形態においては、本発明は、60時間のうちに30〜40g/L以上、例えば60時間のうちに30、35または40g/L以上のレベルで不飽和脂肪酸が産生される条件下、操作された植物または微生物を培養することを含む、不飽和脂肪酸を製造するための高収量製造方法に関する。本明細書に記載されている範囲内に含まれる及び/又は中間的な値および範囲も本発明の範囲内であると意図される。例えば、60時間のうちに産生される少なくとも31、32、33、34、35、36、37、38および39 g/Lのレベルの不飽和脂肪酸の産生は、60時間のうちに産生される30〜40g/Lの範囲内に含まれると意図される。もう1つの実施形態においては、30〜35g/Lまたは35〜40g/Lの範囲は、60時間のうちに産生される30〜40g/Lの範囲内に含まれると意図される。さらに、例えば「60時間のうちに30〜40g/L」の産生レベルを達成するために、操作された微生物を培養することは、場合によってはより一層高い収量の不飽和脂肪酸の産生を達成するために、追加的な時間(例えば、60時間を超える時間)にわたって該微生物を培養することを含むことを当業者は理解するであろう。
【0106】
IV.組成物
本発明のデサチュラーゼ核酸分子、タンパク質およびそれらの断片は、組成物中に含めることができる不飽和脂肪酸を製造するために使用されうる。本発明の組成物には、例えば、動物飼料として使用するための組成物、栄養補助剤(例えば栄養補助食品)として使用するための組成物、および投与に適した医薬組成物が含まれる。そのような医薬組成物は、典型的には、不飽和脂肪酸と製薬上許容される担体とを含む。本明細書中で用いる「製薬上許容される担体」なる語は、医薬投与に適合しうる全ての溶媒、分散媒、コーティング、抗細菌および抗真菌剤、等張化剤ならびに吸収遅延剤など含むと意図される。薬学的に活性な物質のためのそのような媒体および物質の使用は当技術分野でよく知られている。いずれかの通常の媒体または物質が該活性化合物に非適合性である場合を除き、該組成物におけるそれらの使用が想定される。補助活性化合物も該組成物中に含有されうる。
【0107】
本発明の医薬組成物は、その意図される投与経路に適合可能となるよう製剤化される。投与経路の具体例には、非経口、例えば静脈内、皮内、皮下、経口(例えば、吸入)、経皮(局所)、経粘膜および直腸投与が含まれる。非経口、皮内または皮下適用に使用される溶液剤(水剤)または懸濁剤は以下の成分を含みうる:無菌希釈剤、例えば注射用水、塩類溶液、脂肪油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたは他の合成溶媒;抗細菌剤、例えばベンジルアルコールまたはメチルパラベン;抗酸化剤、例えばアスコルビン酸または亜硫酸水素ナトリウム;キレート剤、例えばエチレンジアミン四酢酸;バッファー、例えばアセタート、シトラートまたはホスファート;および張性調節用物質、例えば塩化ナトリウムまたはデキストロース。pHは酸または塩基、例えば塩酸または水酸化ナトリウムで調節されうる。非経口製剤はアンプル、使い捨て可能なシリンジまたはガラスもしくはプラスチック製の複数用量バイアル内に封入されうる。
【0108】
注射されうる用途に適した医薬組成物には、無菌水溶液(水溶性の場合)または分散液、および無菌注射溶液または分散液の用時調製用の無菌散剤が含まれる。静脈内投与の場合、適当な担体には、生理食塩水、静菌水、Cremophor EL(商標)(BASF, Parsippany, NJ)またはリン酸緩衝食塩水(PBS)が含まれる。すべての場合において、該組成物は無菌でなければならず、容易なシリンジ適用性が存在する程度に流動性であるべきである。それは製造および貯蔵条件下で安定でなければならず、細菌および真菌のような微生物の汚染作用に対して予防されなければならない。該担体は、例えば水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコールおよび液体ポリエチレングリコールなど)およびそれらの適当な混合物を含有する溶媒または分散媒でありうる。適切な流動性は、例えば、レシチンのようなコーティングの使用により、および分散剤の場合の必要粒径の維持により、および界面活性剤の使用により維持されうる。微生物の作用の予防は、種々の抗微生物および抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなどにより達成されうる。多くの場合、等張剤、例えば糖、多価アルコール、例えばマンニトール、ソルビトール、塩化ナトリウムを該組成物中に加えるのが好ましいであろう。注射用組成物の持続的吸収は、吸収を遅延させる物質、例えばモノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを該組成物中に加えることによりもたらされうる。
【0109】
無菌注射溶液は、活性化合物(例えば、本発明の核酸およびタンパク質分子により産生されるLCPUFAまたはその断片)の必要量を、必要に応じて前記成分の1つ又は組合せと共に、適当な溶媒中に含有させ、ついで濾過滅菌することにより製造されうる。一般に、分散剤は、前記のものから選ばれる必要な他の成分および基礎分散媒を含有する無菌ビヒクル中に活性化合物を含有させることにより製造される。無菌注射溶液の製造のための無菌散剤の場合、好ましい製造方法は、有効成分および任意の追加的な所望の成分の粉末を、予め滅菌濾過されたその溶液から生成する、真空乾燥および凍結乾燥である。
【0110】
経口組成物は、一般には、不活性希釈剤または可食性担体を含む。それらはゼラチンカプセル内に封入され、または錠剤に圧縮されうる。経口治療投与の目的には、該活性化合物は賦形剤と共に含有され、錠剤、トローチ剤またはカプセル剤の形態で使用されうる。また、経口組成物は、洗口剤として使用される流体担体を使用して製造されることが可能であり、この場合、該流体担体中の該化合物は経口適用され、音を立てて洗口され、喀出または嚥下される。該組成物の一部として、製薬上許容される結合剤および/または補助物質が含有されうる。錠剤、丸剤、カプセル剤、トローチ剤などは以下の任意の成分または類似した性質の化合物を含有しうる:結合剤、例えば微晶質セルロース、ガムトラガカントまたはゼラチン;賦形剤、例えばデンプンまたはラクトース、崩壊剤、例えばアルギン酸、プリモゲル(Primogel)またはコーンスターチ;滑沢剤、例えばステアリン酸マグネシウムまたはステロート(Sterote);潤滑剤、例えばコロイド性二酸化ケイ素;甘味剤、例えばスクロースまたはサッカリン;あるいは香味剤、例えばペッパーミント、サリチル酸メチルまたはオレンジフレーバー。
【0111】
吸入による投与の場合、該化合物は、適当なプロペラント、例えば二酸化炭素のような気体を含有する加圧容器もしくは分注装置またはネブライザからエーロゾル噴霧剤の形態で送達される。
【0112】
また、全身投与は経粘膜または経皮手段によっても行われうる。経粘膜または経皮投与の場合、透過すべき関門(バリヤー)に適した透過促進剤が該製剤中で使用される。そのような透過促進剤は当技術分野で概ね公知であり、例えば、経粘膜投与の場合には、界面活性剤、胆汁酸塩およびフシジン酸誘導体を包含する。経粘膜投与は鼻腔内噴霧剤または坐剤の使用により達成されうる。経皮投与の場合には、活性化合物は、当技術分野で概ね公知である軟膏剤、ロウ膏、ゲル剤またはクリーム剤に製剤化される。
【0113】
また、該化合物は直腸送達のための坐剤(例えば、カカオ脂および他のグリセリドのような通常の坐剤基剤を使用するもの)または停留浣腸剤の形態でありうる。
【0114】
1つの実施形態においては、活性化合物が体内から迅速に消失するのを防ぐ担体、例えば、インプラントおよび微小カプセル化送達系を含むコントロールリリース製剤を使用して、活性化合物が製剤化される。生分解性生体適合性重合体、例えばエチレンビニルアセタート、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステルおよびポリ乳酸が使用されうる。そのような製剤の製造方法は当業者に明らかであろう。また、該物質はAlza CorporationおよびNova Pharmaceuticals, Inc.から商業的に入手可能である。リポソーム懸濁剤(ウイルス抗原に対するモノクローナル抗体を使用して感染細胞に標的化されるリポソームを含む)も、製薬上許容される担体として使用されうる。これらは、当業者に公知の方法により、例えば米国特許第4,522,811号に記載されているとおりに製造されうる。
【0115】
投与の容易さ及び投与の均一性のためには、単位剤形で経口または非経口組成物を製剤化することが特に有利である。本明細書中で用いる投与単位形は、治療される患者に対する単位投与として適した物理的に分離した単位を意味し、各単位は、所望の治療効果をもたらすよう計算された所定量の活性化合物、および必要な医薬担体を含有する。本発明の単位剤形の詳細は、活性化合物の特有の特性および達成すべき個々の治療効果ならびに個体の治療のためにそのような化合物を配合する当技術分野に固有の限界により定められ、直接的に左右される。
【0116】
そのような化合物の毒性および治療効力は、細胞培養または実験動物における標準的な薬学的手法により、例えば、LD50(集団の50%に致死性の用量)およびED50(集団の50%において治療的に有効な用量)を決定することにより決定されうる。毒性効果と治療効果との用量比は治療係数であり、それは比LD50/ED50として表されうる。大きな治療係数を示す化合物が好ましい。毒性副作用を示す化合物が使用されるかもしれないが、未感染細胞への潜在的な損傷を最小にし、それにより副作用を軽減するために、そのような化合物を罹患組織部位に標的化する送達系を設計するよう留意すべきである。
【0117】
細胞培養アッセイおよび動物研究から得られたデータは、ヒトでの使用のための投与量の範囲の設定において用いられうる。そのような化合物の投与量は、好ましくは、毒性をほとんど又は全く伴わないED50を含む循環濃度の範囲内である。該投与量は、使用する剤形および用いる投与経路に応じて、この範囲内の様々な値をとりうる。本発明の方法において使用する任意の化合物に関して、治療的に有効な用量は最初は細胞培養アッセイから推定されうる。用量は、細胞培養において決定されたIC50(すなわち、症状の最大抑制の半分を達成する試験化合物の濃度)を含む循環血漿中濃度範囲が得られる、動物モデルにおいて設定されうる。そのような情報は、ヒトにおける有用な用量をより正確に決定するために用いられうる。血漿中のレベルは、例えば高速液体クロマトグラフィーにより測定されうる。
【0118】
本明細書中で定められる、タンパク質またはポリペプチドの治療的有効量(すなわち、有効投与量)は、約0.001〜30mg/kg体重、好ましくは約0.01〜25mg/kg体重、より好ましくは約0.1〜20mg/kg体重、より一層好ましくは約1〜10mg/kg、2〜9mg/kg、3〜8mg/kg、4〜7mg/kg、または5〜6mg/kg体重の範囲である。患者の疾患または障害の重症度、過去の治療、全身健康状態および/または年齢ならびに存在する他の疾患を含む(これらに限定されるものではない)或る種の要因が、患者を有効に治療するために必要な投与量に影響を及ぼしうることを当業者は理解するであろう。さらに、治療的有効量のタンパク質、ポリペプチドまたは抗体での患者の治療は一回の処置を含んでもよく、あるいは好ましくは、一連の処置を含んでもよい。
【0119】
好ましい具体例においては、約1〜10週間、好ましくは2〜8週間、より好ましくは約3〜7週間、より一層好ましくは約4、5または6週間にわたって週1回、約0.1〜20mg/kg体重の範囲のLCPUFAで患者を治療する。また、治療に使用する抗体、タンパク質またはポリペプチドの有効投与量は個々の治療の経過にわたって増加または減少しうることは理解されるであろう。投与量の変化は、本明細書に記載されている診断アッセイの結果からもたらされることが可能であり、該結果から明らかとなりうる。
【0120】
該医薬組成物は、投与のための説明と共に、容器、パックまたは分注装置内に含有されうる。
【0121】
本発明は以下の実施例により更に例示されるが、これらの実施例は限定的なものと解釈されるべきではない。本出願および図面の全体にわたって引用されている全ての参考文献、特許および公開特許出願の内容を参照により本明細書に組み入れることとする。
【0122】
実施例
【実施例1】
【0123】
生物および培養条件
C. purpurea(Department of Plant Science, University of ManitobaのYu Chen博士から提供された)をC培地(MantleおよびNisbet, 1976)中で25℃で14日間成長させた。S. cerevisiae株INVSc1(Invitrogen, Carlsbad, California)およびAMY-2α [MATa, CYTb5, olel(ΔBstEII)::LEU2, trp1-1, can1-100, ura3-1, ade2-1, HIS3](MitchellおよびMartin, 1995)を、C. purpurea CpDesXおよびCpDes12デサチュラーゼの基質特異性および基質選択性を調べるため異種宿主として使用した。複合培地(YPD)または合成最小培地(SD)のいずれかで酵母細胞を28℃で増殖させた。
【実施例2】
【0124】
CpDesXおよびCpDes12デサチュラーゼcDNAのクローニング
逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)実験のために、C. purpureaの菌核形成菌糸体からの全RNAを使用して、Superscript III逆転写酵素(Invitrogen, Carlsbad, California)により一本鎖cDNAを合成した。ついで該cDNAを該PCR反応の鋳型として、2つの縮重オリゴヌクレオチドプライマー(DM34: 5'-GCICAYGARTGYGGICAYSRIGCITT-3'およびDM36: 5'-TAIGTDATIGCIACIARCCARTGRTKIACCCA-3')と共に使用した。これらのプライマーは、デルタ12デサチュラーゼおよび関連タンパク質の保存アミノ酸領域に基づいて設計した。フォワードプライマーは第1保存ヒスチジンボックス内に位置し、リバースプライマーは該ヒスチジンボックスの外側に位置し、それらは、それぞれ、アミノ酸配列AHECGH(G/Q)AFおよびWV(N/H)HWLVAITYに対応するものであった。該cDNAの全配列を得るために、Marathon cDNA Amplification Kit(BD Biosciences Clontech, Mountain View, California)を該製造業者の説明に従い使用して、5'および3'領域を別々に増幅した。該3'領域を増幅するためにプライマーDM40(5'-CCACAGTGCGCATCACAAAGGAACTGGAAAC-3')を使用し、該5'領域を増幅するためにDM38(5'-AGCCCAGCCGAAACGGTTGCCAAGATAC-3')およびDM42(5'-TGTTTGTCATCGAAAATAGGGCTGCGG-3')を使用した。ついで、非翻訳領域を含む完全な配列を、特異的プライマーDM47(5'-GCCTGGAATCGAAGCTACGTATCC-3')およびDM48(5'-GACCGTCTTTAGCTACTTCGAGACAG-3')を使用してPfx DNAポリメラーゼ(Invitrogen, Carlsbad, California)により増幅した。得られたバンドをゲル精製し、pCR4-TOPO-TAクローニングベクター(Invitrogen, Carlsbad, California)内にクローニングし、配列決定した。
【実施例3】
【0125】
S. cerevisiaeにおけるCpDesXおよびCpDes12の発現
該cDNAのコード領域を、プライマーDM49(5'-GCGAATTCAGGATGGCTGCTACCACTTCTGC-3')およびDM50(5'-GCGAATTCCTACTGAGTTCTCATCGAAATGG-3')と共にPfx DNAポリメラーゼ(Invitrogen, Carlsbad, California)を使用するPCRにより増幅し、Taq DNAポリメラーゼ処理後、pYES2.1 Topo-TA発現ベクター(Invitrogen, Carlsbad, California)内に直接クローニングした。元のcDNAと同一でありGAL1プロモーターに対してセンス配向である、pDM14のインサートの配列が確認された。
【実施例4】
【0126】
酵母の形質転換および増殖条件
S. C. EasyComp Transformation Kit(Invitrogen, Carlsbad, California)を使用して、S. cerevisiae株INVSc1またはAMY2αをその構築物で形質転換し、ウラシル欠損培地上で選択を行った。デサチュラーゼ活性を評価するために、組換え酵母細胞を、ウラシルを欠く最少培地(合成脱落(synthetic dropout))上、25mlの培養で28℃で48時間にわたり飽和状態まで増殖させた。ついで該培養物を洗浄し、それを使用して、0.1%テルジトール(Tergitol)(type Nonidet P-40)の存在下、0.25mM基質脂肪酸を補充した又は補充していない25%ガラクトースを含有する誘導培地25mlに接種した。培養物を20℃で3日間インキュベートした。空プラスミドベクターpYES2.1を含有するINVSc1またはAMY2α酵母を陰性対照として使用した。
【実施例5】
【0127】
脂肪酸分析
脂肪酸分析のために、酵母細胞を遠心分離によりペレット化し、0.1%テルジトール(tergitol)で1回および水で1回洗浄した。3N メタノールHClを用いて80℃で1時間にわたり脂肪酸をそれらのメチルエステルに変換した。1mLの水の添加の後、該サンプルを2mLのヘキサンで2回抽出した。それらのヘキサン抽出物を合わせ、N2下で乾燥させ、200μLのヘキサンに再懸濁させ、0.25μmのフィルム厚を有するDB-23カラム(30-m×0.25-mm)(J&W Scientific)を備えたHewlett-Packard 5890Aガスクロマトグラフで分析した。温度プログラムは等温の160℃で1分間、240℃までの4℃/分の勾配、およびそれに続く等温の240℃で10分間であった。
【0128】
不飽和脂肪酸産物に新たに導入された二重結合の位置を、既に記載されているように(Qiら, 2004)、4,4-ジメチルオキサゾリン(DMOX)誘導体のGC-MS分析により決定した。GC/MS分析は、0.25μmのフィルム厚を有する30-m×0.25-mm DB-23カラム(J&W Scientific)を備え、G1701DA MSD Chemstationソフトウェア(装置制御およびデータ解析用)を使用するAgilent 6890Nガスクロマトグラフに接続されたAgilent 5973質量選択的検出器を使用して行った。クロマトグラフ条件は、0.4ml/分のヘリウム流量を用いる該カラム上への分割注入(20:1)、1分間の160℃の初期温度、およびそれに続く、240℃までの4℃/分の温度勾配を含むものであった。質量選択的検出器は、2.26スキャン/秒で40〜700の有効m/z範囲を走査する標準的な電子衝撃条件(70eV)下で作動させた。
【実施例6】
【0129】
C. purpureaからのCpDesXおよびCpDes12デサチュラーゼcDNAの同定
C. purpureaは、菌糸体の色素沈着凝集塊である菌核においてリシノール酸(12OH-18:1-9)を産生できることが報告された(Morrisら, 1966)。この真菌におけるヒドロキシル脂肪酸の生合成メカニズムの研究過程で、本発明者らは、縮重RT-PCRを用いて、その組織から幾つかのΔ12デサチュラーゼ様遺伝子を同定した。植物由来のオレイン酸ヒドロキシラーゼは植物Δ12デサチュラーゼと高度な相同性を有することを過去の報告が示していたため、それらの2つのプライマーは、真菌由来のΔ12デサチュラーゼの保存領域を標的とするよう設計された。
【0130】
これらの遺伝子の1つ(CpDesX)は、477アミノ酸長および分子量53.1kDaのポリペプチドをコードしている(図1)。もう1つの遺伝子(CpDes12)は476アミノ酸長の53kDaのタンパク質をコードしている(図2)。タンパク質配列比較は、CpDesXとCpDes12がアミノ酸レベルで87%の同一性を有することを示した(図3)。両配列は、Aspergillus nidulans由来の真菌Δ12デサチュラーゼ(Calvoら, 2001)に対する配列類似性(62%の同一性)、および植物Δ12デサチュラーゼ(Arondelら, 1992)に対する配列類似性(40%のアミノ酸同一性)を有する。
【実施例7】
【0131】
酵母におけるCpDesXの機能特性解析
CpDes12およびCpDesXの機能性を決定するために、それらの2つのcDNAを、GAL1プロモーターの誘導の下、酵母内に導入した。CpDes12を含有する形質転換体は、対照酵母と比較して、16:2 (9c,12c)および18:2 (9c,12c)として同定された2つの新たな脂肪酸を産生したが、このことは、CpDes12がC. purpurea由来のΔ12デサチュラーゼであり、16:1 (9c)および18:1 (9c)の両方のΔ12位に二重結合を導入できたことを示している(図5)。同様に、該対照と比較して、CpDesXを含有する形質転換体は、対照酵母と比較して、それぞれ16:2 (9c,12t)、16:2 (9c,12c)、16:3 (9c,12c,15c)、18:2 (9c,12c)および18:3 (9c,12c,15c)として同定された5つの新たな脂肪酸を産生した(図4)。このデータは、CpDesXが、基質のΔ12、Δ15およびω3位での不飽和化を含む複数のデサチュラーゼ触媒活性を有することを示している。
【実施例8】
【0132】
酵母におけるCpDesXの基質特異性
デサチュラーゼの基質特異性および位置選択性を明白に定めるために、CpDesXを、いずれかのモノ不飽和物を合成する能力を欠いたΔ9デサチュラーゼノックアウト株である酵母突然変異体AMY2α内に導入した。18:1(9c)を供給すると、形質転換体は2つの新たな脂肪酸18:2 (9c,12c)および18:3 (9c,12c,15c)を産生した。このことは、CpDesXがΔ12およびΔ153デサチュラーゼ活性を有することを示している。いかなる特定の理論にも拘束されることは望まないが、CpDesXは、まず、供給された18:1(9c)内にΔ12二重結合を導入し、それが18:2 (9c,12c)の形成をもたらし、ついでこれが該デサチュラーゼのΔ153活性により不飽和化されて、18:3 (9c,12c,15c)の形成がもたらされると考えられる。16:1 (9t)を供給した場合には、新たな産物は検出されない。しかし、16:1 (9c)を供給した場合には、形質転換体は、16:2 (9c,12t)、16:2 (9c,12c)および16:3 (9c,12c,15c)として同定された3つの新たな脂肪酸を産生した。産生された16:2 (9c,12t)の16:2 (9c,12c)に対する比率は0.6であり、後者が優勢である。
【0133】
ω3デサチュラーゼは虫(Meesapyodsukら, 2000a)、真菌(Pereiraら, 2004)および植物(Meesapyodsukら, 2000b)から同定されている。それらのほとんどはω6多価不飽和物中にω3二重結合を導入することができる。このデサチュラーゼのω3不飽和化活性の位置特異性を明らかにするために、形質転換体に更に、LA、GLA、EDA(エイコサジエン酸)、DGLA、AAおよびDPAのような幾つかのω6多価不飽和脂肪酸を加えた。結果は、CpDesXが、DPAn-6以外の供給された全てのω6脂肪酸中にω3二重結合を導入でき、それによりそれらω6多価不飽和物をそれらのω3対応物に変換したことを示した。表1は、これらの基質に対するこのデサチュラーゼの基質選択性を示す。
【表1】

【0134】
表1に示されているとおり、CpDesXは広範な基質に作用し、その選択性はLA、ついでGLA、その後にDGLAおよびAAの順である。
【実施例9】
【0135】
植物におけるCpDesXの発現
例えば栄養補助用途のための、植物における多価不飽和脂肪酸の産生におけるCpDesXの有用性を調べるために、種子特異的洋種ナタネ(Brassica napus)ナピン貯蔵タンパク質プロモーターの制御下で、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)においてCpDesX遺伝子を発現させた。候補遺伝子を含む植物発現用バイナリーベクターを、18:2 (9c,12c)から18:3 (9c,12c,13c)を合成できないAtfad3の突然変異体であるシロイヌナズナAJ70に、イン・プランタ(in-planta)アグロバクテリウム(Agrobacterium)浸潤法により導入した。トランスジェニック成熟種子を特異な脂肪酸の産生に関してガスクロマトグラフィーにより分析した。図6に示されているとおり、CpDesX遺伝子を含有するトランスジェニック種子は相当量のリノレン酸を産生した。実際、トランスジェニック種子においては、18:3 (9c,12c,15c)は全脂肪酸産生量の33.3%を占めたが、それに対して非形質転換変異体においては、18 (9c,12c,15c)は全脂肪酸産生量の1%未満を占めるに過ぎなかった。
【0136】
均等物
当業者は、本明細書に記載されている本発明の具体的な実施形態に対する多数の均等物を認識するかまたはルーティンに過ぎない実験を用いてそれを確認できるであろう。そのような均等物は以下の特許請求の範囲に含まれることが意図される。
【0137】
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)クラビセプス(Claviceps)由来の脂肪酸デサチュラーゼをコードする単離された核酸分子またはその相補体、
b)配列番号1もしくは3のヌクレオチド配列を含む単離された核酸分子またはその相補体、
c)配列番号2もしくは4のアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする単離された核酸分子またはその相補体、
d)配列番号2もしくは4のアミノ酸配列を含むポリペプチドの天然対立遺伝子変異体をコードする単離された核酸分子またはその相補体、
e)配列番号1もしくは3の全ヌクレオチド配列に対して少なくとも50%同一であるヌクレオチド配列を含む単離された核酸分子またはその相補体、
f)ストリンジェントな条件下、配列番号1もしくは3のヌクレオチド配列の相補体にハイブリダイズするヌクレオチド配列を含む単離された核酸分子またはその相補体、および
g)配列番号1もしくは3の全ヌクレオチド配列の少なくとも15個連続したヌクレオチドの断片を含む単離された核酸分子またはその相補体、
よりなる群から選ばれる単離された核酸分子。
【請求項2】
該核酸分子が、脂肪酸における二重結合の形成を触媒する活性を有する脂肪酸デサチュラーゼタンパク質をコードする、請求項1記載の単離された核酸分子。
【請求項3】
該核酸分子が、脂肪酸のω3、Δ12またはΔ15位における二重結合の形成を触媒する活性を有する脂肪酸デサチュラーゼタンパク質をコードする、請求項1記載の単離された核酸分子。
【請求項4】
請求項1記載の核酸分子と、異種ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列とを含んでなる単離された核酸分子。
【請求項5】
請求項1記載の核酸分子を含んでなるベクター。
【請求項6】
発現ベクターである、請求項5記載のベクター。
【請求項7】
該核酸分子が種子特異的プロモーターの制御下にある、請求項5記載のベクター。
【請求項8】
種子特異的プロモーターが、コンリニン(Conlinin)1、コンリニン(Conlinin)2、ナピン(napin)およびLuFad3よりなる群から選ばれる、請求項7記載のベクター。
【請求項9】
請求項6記載の発現ベクターで形質転換された単離された宿主細胞。
【請求項10】
該細胞が植物細胞または微生物細胞である、請求項9記載の宿主細胞。
【請求項11】
植物細胞が、油料種子作物から得られた細胞である、請求項10記載の宿主細胞。
【請求項12】
油料種子作物が、アマ(Linum sp.)、ナタネ(Brassica sp.)、ダイズ(GlycineおよびSoja sp.)、ヒマワリ(Helianthus sp.)、ワタ(Gossypium sp.)、トウモロコシ(Zea mays)、オリーブ(Olea sp.)、ベニバナ(Carthamus sp.)、カカオ(Theobroma cacoa)、ラッカセイ(Arachis sp.)、タイマ、ツバキ(camelina)、ハマナ、アブラヤシ、ココヤシ、ラッカセイ、ゴマ、ヒマ、レスクエレラ、ナンキンハゼ、シアナッツ、アブラギリ、カポック、ケシ、ホホバおよびエゴマよりなる群から選ばれる、請求項11記載の宿主細胞。
【請求項13】
微生物細胞が、Candida、Cryptococcus、Lipomyces、Rhodosporidium、Yarrowia、Thraustochytrium、Pythium、SchizochytriumおよびCrythecodiniumよりなる群から選ばれる、請求項10記載の宿主細胞。
【請求項14】
請求項9記載の宿主細胞を適切な培地中で培養し、それによりポリペプチドを産生させることを含んでなる、ポリペプチドの製造方法。
【請求項15】
a)クラビセプス(Claviceps)由来の単離された脂肪酸デサチュラーゼポリペプチド、
b)配列番号2もしくは4のアミノ酸配列を含む単離されたポリペプチド、
c)配列番号2もしくは4のアミノ酸配列を含むポリペプチドの天然対立遺伝子変異体を含む単離されたポリペプチド、
d)配列番号1もしくは3のヌクレオチド配列を含む核酸分子によりコードされるアミノ酸配列を含む単離されたポリペプチド、
e)配列番号1もしくは3の全ヌクレオチド配列に対して少なくとも50%同一であるヌクレオチド配列を含む核酸分子によりコードされる単離されたポリペプチド、
f)配列番号2もしくは4の全アミノ酸配列に対して少なくとも50%同一であるアミノ酸配列を含む単離されたポリペプチド、および
g)配列番号2もしくは4のアミノ酸配列を含むポリペプチドの、該アミノ酸配列を含む該ポリペプチドの生物活性を維持している断片を含む単離されたポリペプチド、
よりなる群から選ばれる単離されたポリペプチド。
【請求項16】
該ポリペプチドが脂肪酸における二重結合の形成を触媒する、請求項15記載の単離されたポリペプチド。
【請求項17】
該ポリペプチドが、脂肪酸のω3、Δ12またはΔ15位における二重結合の形成を触媒する、請求項15記載の単離されたポリペプチド。
【請求項18】
異種アミノ酸配列を更に含む、請求項15記載の単離されたポリペプチド。
【請求項19】
不飽和脂肪酸が産生されるように請求項9記載の細胞を培養することを含んでなる、不飽和脂肪酸の製造方法。
【請求項20】
少なくとも1つのデサチュラーゼ標的分子を含む組成物を、不飽和脂肪酸が産生される条件下、請求項15記載の少なくとも1つのポリペプチドと接触させることを含んでなる、不飽和脂肪酸の製造方法。
【請求項21】
脂肪酸への二重結合の導入を触媒する活性を有するデサチュラーゼをコードする請求項1記載の核酸分子を細胞内に導入することを含んでなる、不飽和脂肪酸を産生できる細胞の製造方法。
【請求項22】
不飽和脂肪酸の産生のモジュレーションが生じるように請求項9記載の細胞を培養することを含んでなる、不飽和脂肪酸の産生をモジュレーションする方法。
【請求項23】
不飽和脂肪酸の産生が起こるように請求項9記載の細胞を培養することを含んでなる、不飽和脂肪酸の大規模製造方法。
【請求項24】
不飽和脂肪酸の産生が増強される、請求項22記載の方法。
【請求項25】
該製造方法または方法が更に、該培養物から不飽和脂肪酸を回収する工程を含む、請求項19〜23のいずれか1項記載の方法。
【請求項26】
該細胞が植物細胞または微生物細胞である、請求項19、21、22および23のいずれか1項記載の方法。
【請求項27】
植物細胞が、油料種子作物から得られた細胞である、請求項26記載の方法。
【請求項28】
油料種子作物が、アマ(Linum sp.)、ナタネ(Brassica sp.)、ダイズ(GlycineおよびSoja sp.)、ヒマワリ(Helianthus sp.)、ワタ(Gossypium sp.)、トウモロコシ(Zea mays)、オリーブ(Olea sp.)、ベニバナ(Carthamus sp.)、カカオ(Theobroma cacoa)、ラッカセイ(Arachis sp.)、タイマ、ツバキ(camelina)、ハマナ、アブラヤシ、ココヤシ、ラッカセイ、ゴマ、ヒマ、レスクエレラ、ナンキンハゼ、シアナッツ、アブラギリ、カポック、ケシ、ホホバおよびエゴマよりなる群から選ばれる、請求項27記載の方法。
【請求項29】
微生物細胞が、Candida、Cryptococcus、Lipomyces、Rhodosporidium、Yarrowia、Thraustochytrium、Pythium、SchizochytriumおよびCrythecodiniumよりなる群から選ばれる、請求項26記載の方法。
【請求項30】
該核酸分子の発現が不飽和脂肪酸の産生のモジュレーションをもたらす、請求項19、21または23記載の方法。
【請求項31】
不飽和脂肪酸が、GLA 18:3 (6,9,12)、ALA 18:3 (9,12,15)、SDA 18:4 (6,9,12,15)、AA 20:4 (5,8,11,14)、EPA 20:5 (5,8,11,14,17)、DPA 22:5 (4,7,10,13,16)、DHA 22:6 (4,7,10,13,16,19)、20:4 (8,11,14,17)、16:2 (9,12)、18:2 (9,12) および16:3 (9,12,15)よりなる群から選ばれる、請求項19〜23のいずれか1項記載の方法。
【請求項32】
該デサチュラーゼ標的分子がLA 18:2 (9,12)、GLA 18:3 (6,9,12)、DGLA 20:3 (8,11,14)、AA 20:4 (5,8,11,14)、EDA 20:2 (11,14)、16:1 (9)、16:2 (9,12)、18:1 (9)および18:2 (9,12)である、請求項20記載の方法。
【請求項33】
請求項6記載のベクターを含んでなる植物。
【請求項34】
請求項33記載の植物により生産された油。
【請求項35】
請求項33記載の植物により生産された種子。
【請求項36】
動物飼料、栄養補助食品または食品において使用される、請求項34記載の油または請求項35記載の種子を含んでなる組成物。
【請求項37】
請求項34記載の油または請求項35記載の種子を含んでなる医薬組成物。
【請求項38】
請求項14記載のポリペプチドを含んでなる組成物。
【請求項39】
請求項21記載の細胞を含んでなる組成物。
【請求項40】
動物飼料、栄養補助食品または食品において使用される、請求項38または39記載の組成物。
【請求項41】
請求項14記載のポリペプチドまたは請求項21記載の細胞を含んでなる医薬組成物。
【請求項42】
a)配列番号1または3のヌクレオチド配列を含む核酸分子であって、該核酸分子が、点突然変異、末端切断、逆位、欠失、付加、置換および相同組換えよりなる群から選ばれる少なくとも1つの技術により破壊されている、核酸分子、
b)配列番号1または3のヌクレオチド配列を含む核酸分子であって、該核酸分子が、配列番号1または3に記載の配列と比較して1以上の核酸改変を含み、該改変が、点突然変異、末端切断、逆位、欠失、付加および置換よりなる群から選ばれる、核酸分子、ならびに
c)配列番号1または3のヌクレオチド配列を含む核酸分子であって、該核酸分子の調節領域が、点突然変異、末端切断、逆位、欠失、付加、置換および相同組換えよりなる群から選ばれる少なくとも1つの技術により、該分子の野生型調節領域と比較して改変されている、核酸分子、
よりなる群から選ばれる核酸分子を含んでなる宿主細胞。

【図1−1】
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【図1−2】
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【図2−1】
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【図2−2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2009−542231(P2009−542231A)
【公表日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−518694(P2009−518694)
【出願日】平成19年7月11日(2007.7.11)
【国際出願番号】PCT/CA2007/001218
【国際公開番号】WO2008/006202
【国際公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願人】(503117885)バイオリジナル フード アンド サイエンス コーポレーション (4)
【Fターム(参考)】