脆性材料基板の面取り方法
【課題】 凹みの小さな面取り加工面を形成することができる脆性材料基板の加工方法を提供する。
【解決手段】 基板10に対する吸収率が0.05〜0.95である波長のレーザ光源を用いて、エッジライン11近傍に入射するようにレーザ光を照射し、エッジラインから基板内部にかけて分布するレーザ光吸収領域14によって基板内部に温度分布を形成し、この温度分布により基板内部に生じた熱応力分布を利用してクラックを進展させるとともにクラックの進展方向を調整することにより、基板内部にクラックを制御することができる熱応力分布場を形成する。
【解決手段】 基板10に対する吸収率が0.05〜0.95である波長のレーザ光源を用いて、エッジライン11近傍に入射するようにレーザ光を照射し、エッジラインから基板内部にかけて分布するレーザ光吸収領域14によって基板内部に温度分布を形成し、この温度分布により基板内部に生じた熱応力分布を利用してクラックを進展させるとともにクラックの進展方向を調整することにより、基板内部にクラックを制御することができる熱応力分布場を形成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脆性材料基板の端面に形成されるエッジライン(稜線)の面取り方法に関し、さらに詳細にはエッジラインに沿って形成される面取り加工面の凹みを小さくし、より好ましくは平坦な加工面を形成する面取り方法に関する。
【0002】
ガラス基板等の脆性材料基板は、所望の寸法、形状に加工することにより各種の製品に用いられている。一般に、脆性材料基板の加工は、ダイシング、ホイールスクライブ、レーザスクライブ等の既存の加工技術により行われるが、これらの加工技術により分断された基板端面のエッジラインは非常に鋭く、わずかな衝撃が加わるだけでもチッピングやマイクロクラック等の不具合が生じる。例えば、フラットパネルディスプレイ(FPD)用のガラス基板では、エッジが欠けることにより発生した破片がFPD用基板の表面に傷を付ける原因となり、製品の歩留まりに影響を与える。
そのため、基板を分断した後に発生する基板のエッジ部分の欠け等を防止するために、エッジラインに沿って面取り加工が行われている。
【0003】
従来からの面取り加工のひとつに、多量の水を供給しつつダイヤモンド砥石により研磨するウェット研磨法がある。しかしながら、ウェット研磨法により形成される面取り加工面には、微小なクラックが連続的に残存しており、面取り加工面の強度は周囲より著しく低下することになっていた。
【0004】
そこで、エッジラインに沿ってレーザビームを照射して加熱溶融することにより面取りを行う加熱溶融法が提案されている。たとえばガラス部材全体を常温より高い温度に保持(余熱)した状態で、稜線部近傍をレーザ加熱して稜線部を軟化させて丸くすることにより面取りを行う方法が開示されている(特許文献1参照)。
【0005】
図9は、CO2レーザ光源を用いて加熱溶融により面取り加工を行う際のレーザ照射状態を示す断面図である。予め、図示しないヒータを用いてガラス基板10全体を軟化温度より低い所定温度に徐々に加熱しておき、続いて所定温度に保持されたガラス基板10の面取り加工を行おうとするエッジライン51に沿って、CO2レーザ光源50からのレーザ光を走査する。その際、レーザ出力、走査速度を調整することにより、レーザ照射されたエッジ部分が高温になって軟化するようにし、これによりレーザ照射されたエッジ部分が丸みを帯びるように加工する。
【0006】
この場合、予備加熱、加工後の冷却に時間がかかる。また、基板全体を予備加熱する必要があり、加熱できないデバイスやセンサ等の機能膜が基板上に既に形成されている場合には、この方法による面取り加工を実施できない場合もある。また、余熱が不十分であれば熱応力により割れ(クラック)が発生し、良好な面取り加工ができなくなる。さらに、加熱溶融による面取り加工では、溶融部分が変形してその一部(丸みを帯びた部分の一部)が周囲よりも膨れてしまい、基板端面の平坦度が損なわれることがある。
【0007】
一方、レーザ照射による加熱溶融以外の面取り方法として、エッジ近傍にレーザ光を照射して加熱することでガラス基板10にクラックを発生させ、レーザ光を相対的にエッジライン方向に走査することによりクラックをエッジラインに沿って成長させ、ガラス基板からエッジ近傍を分離することにより面取りを行うレーザスクライブ法が開示されている(特許文献2)。
図10は、CO2レーザ光源を用いてレーザスクライブにより面取り加工を行う際のレーザ照射状態を示す図である。ガラス基板10のエッジライン51付近にCO2レーザ光源50からのレーザ光を局所的に照射し、軟化温度より低い温度で加熱する。このとき局所的熱膨張にともなう熱応力によってクラック52が発生する。そして、エッジライン51に沿ってレーザ光を走査することにより、順次発生するクラック52がエッジライン51に沿って成長し、エッジライン51を含むエッジ近傍(角部分)が分離される。
特許文献2によれば、レーザスクライブによる面取り加工を行うことにより、ガラス基板の精度を損なうことなく、高い生産性と洗浄工程を必要としない面取り加工を施すことができるとされている。
【特許文献1】特開平2−241684号公報
【特許文献2】特開平9−225665号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、レーザ照射によってガラス基板の面取り加工を行う場合、ガラス基板が吸収可能な波長帯域のレーザ光源が用いられる。一般にガラス材は、ソーダガラス系、石英ガラス系などの種類により多少の差異はあるが、波長帯域が2μm〜10.6μm(10.6μmはCO2レーザの波長)のレーザであれば吸収可能である。しかしながら、実際には面取り加工用のレーザ光源としては、加熱溶融、レーザスクライブのいずれであっても、CO2レーザが専ら用いられていた。
【0009】
その理由は、面取り加工は、基板端面(表面)のエッジラインを加工するものであり、エッジラインに沿ってレーザを照射して加熱するときに、エッジ部分で最も吸収される波長のレーザ光を用いる方がよいと考えられていたからである。すなわちCO2レーザの波長(10.6μm)は、ガラスに対しては吸収率が高く、ガラス基板の表面近傍でほとんど吸収(表面吸収という)されてしまうことから、他のレーザ光よりも表面近傍を効率よく加熱することができ、面取り加工には適していると考えられていたからである。
【0010】
CO2レーザ以外の特殊なレーザは、研究目的では面取り加工に用いることはありうるが、実際にガラス基板の面取り加工用に特殊レーザを実用されることはなかった。例えば、主に医療用レーザとして利用されているEr:YAGレーザ(波長2.94μm)、Ho:YAGレーザ(波長2.09μm)等は、ガラス材に対しても吸収可能な波長帯域のレーザ光源であるが、これらのレーザ波長に対するガラス基板の吸収率はCO2レーザよりも小さく、その結果、ガラス基板に照射すると、基板表面から基板内部にかけて連続的に吸収(内部吸収という)されることになる。このような内部吸収を生じる波長のレーザ光源は、厚板ガラスをレーザスクライブで分断するときのように、基板表面から基板内部に向けてクラックを深く進展させて分断する際には利用される可能性がある。すなわち内部吸収を利用して厚板ガラス表面から厚板ガラス内部にかけて深く加熱し、熱応力分布を厚板ガラスの内部深くまで形成することにより、クラックを表面から内部まで深く進展させたい場合には有効である。しかしながら、面取り加工では、上述したようにレーザ光は表面近傍のみで吸収される波長の方が、面取り加工を行う部分への加熱効率がよいと考えられており、わざわざCO2レーザに置き換えて特殊レーザを利用する理由がなく、専らCO2レーザが用いられていた。さらに、上述した医療用のEr:YAGレーザ(波長2.94μm)やHo:YAGレーザ(波長2.09μm)は、出力パワーが2Wから10W程度であり、医療用のレーザをそのまま転用しても面取り加工用としては出力が不足することもあり、レーザ出力の点からもCO2レーザに置き換えて特殊レーザを利用する理由はなかった。
そして、実際にCO2レーザを光源に用いたレーザスクライブによる面取り加工によって、それなりの面取り加工が実現できていた。
【0011】
しかしながら、近年、フラットパネルディスプレイ(FPD)用ガラス基板等では、従来よりも大型のガラス基板が用いられ、ガラス基板の大型化に伴って、基板の加工品質についても、これまで以上に高い精度や信頼性が求められるようになってきている。そして、面取り加工により形成される加工面の形状についても、これまで以上に高い精度と信頼性が求められている。
【0012】
ここで、レーザスクライブによる面取り加工によって形成される加工面について説明する。図11は、CO2レーザを用いたレーザスクライブにより面取り加工を行ったときの加工断面の拡大図である。
【0013】
面取り加工により、ガラス基板10の角部分Uが分離(剥離)され、ガラス基板10のエッジライン53は角部分Uとともに消失するが、新たに面取り加工面54が形成される。
この面取り加工面54の断面形状を観察すると、ガラス基板10側に凹んだ円弧形状を有している。面取り加工面54が凹んでいる結果、ガラス基板Sの基板表面55、56との交差部分には、2つのエッジライン57、58が形成されることになる。これらエッジライン57、58は、当初のエッジライン53に比べるとエッジの鋭さは改善されているが、それでも凹みが大きくなると、鋭利なエッジが形成されてしまうことになる。
フラットパネルディスプレイ用(FPD用)ガラス基板では、エッジライン57、58の直上にTABテープが配線されることがあり、面取り加工後に、この部分に鋭利なエッジが残っているとTABテープが断線される可能性が高くなる。
そのため、面取り加工面54の凹みをできるだけ小さな形状にして、鋭利なエッジが形成されないように面取り加工することが要求されるようになっている。
【0014】
しかしながら、従来からなされているCO2レーザを用いたレーザスクライブで形成される面取り加工面54ではどうしても凹みが発生してしまう。これはエッジライン53に照射するレーザの照射方向を変化させたりしても、結果はほぼ同じであり、面取り加工面の形状を制御することが困難であった。
【0015】
そこで本発明は、第一にレーザスクライブによる面取り加工方法を改良し、レーザスクライブの際に形成される面取り加工面の凹みを小さくすることができ、より好ましくは形成される面取り加工面を平坦にすることができる面取り方法を提供することを目的とする。
また、第二に、面取り加工面の形状を平坦化するだけではなく、加工面の形状を制御することができる面取り加工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するためになされた本発明の脆性材料基板の面取り方法は、脆性材料基板のエッジラインに沿ってレーザ光を走査することにより前記エッジラインの面取り加工を行う脆性材料基板の面取り方法であって、前記脆性材料基板に対する吸収率が0.05〜0.95である波長のレーザ光源を用いて、前記エッジライン近傍に入射するようにレーザ光を照射し、エッジラインから基板内部にかけて分布するレーザ光吸収領域によって基板内部に温度分布を形成し、この温度分布により基板内部に生じた熱応力分布を利用してクラックを進展させるとともにクラックの進展方向を調整するようにしている。
【0017】
ここで、「脆性材料基板」とは、ガラス基板のほか、石英、単結晶シリコン、サファイヤ、半導体ウエハ、セラミック等の基板が含まれる。
「脆性材料基板に対する吸収率が0.05〜0.95である波長のレーザ光源」とは、機能的に説明すると、基板表面近傍のみで吸収(表面吸収)される波長のレーザ光源、および、基板がほとんど吸収しない波長のレーザ光源を除いたレーザ光源を意味するものであり、レーザ光を基板に照射したときに、基板表面近傍(エッジラインも含まれる)から基板内部にかけて、レーザ光が吸収(内部吸収)されるレーザ光吸収領域が分布するようになる波長のレーザ光源をいう。具体的には、ガラス基板の場合には、CO2レーザやCOレーザ(波長5.3μm)は、吸収率が0.95より大きいため、ここで用いる面取り加工用のレーザ光源からは除外される。脆性材料基板の種類により好ましい波長帯域が異なることになるが、ガラス基板の場合、2μm〜5μmの波長帯域のレーザ光源が好ましい。
【0018】
本発明によれば、面取り加工用のレーザ光源として、表面吸収ではなく内部吸収が生じる波長のレーザ光源を用いて、このレーザ光源からのレーザ光を、エッジライン近傍から入射するようにレーザ光を照射する。このとき基板表面から基板内部にかけてレーザ光が通過する領域がレーザ光吸収領域となり、レーザ光吸収領域内の各点は照射されたレーザ光を吸収して発熱する。すなわちレーザ光吸収領域の各点は、エッジラインから基板内部にかけて分布する熱源となって発熱し、周囲に熱を伝達するようになる。その結果、レーザ光吸収領域の形状に応じて線状、または、面状、または、立体状の熱源(すなわち点状熱源や基板表面上の熱源ではない)となって加熱されたときの温度分布が基板内部に発生するようになり、さらにこの温度分布に起因して発生した熱応力分布が得られることになる。このときの温度分布や熱応力分布は、表面吸収のみが生じる波長のレーザ光源(例えばガラス基板に対するCO2レーザ光源)を用いて加熱した場合と異なる。そして、内部吸収により発生する熱応力分布場(特に引張応力)を制御することにより、クラックを成長させるとともに、単にクラックを成長させるだけでなくクラックの進展方向を調整できるようにすることにより(具体例については後述する)、面取り加工面の形状を調整する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、表面吸収のみが生じる波長のレーザ光源を用いて加熱するのではなく、内部吸収が生じる波長のレーザ光源を用いてエッジラインから基板内部にかけて加熱し、そのときの熱応力分布を制御して、クラックを進展させるとともに進展方向を調整することにより、面取り加工面の形状を調整するようにしたので、面取り加工面の形状を熱応力分布(引張応力)の形状によって変化させることができるようになり、熱応力分布(引張応力)の形状を適切にすることで、凹みの小さな形状、さらには平坦な形状にすることができる。
【0020】
(その他の課題解決手段および効果)
上記発明において、レーザ光は前記エッジラインから基板内部に向けて斜め方向に入射されるようにするのが好ましい。
これにより、エッジラインから基板内部に斜め入射したレーザ光は基板内部でほぼすべて吸収されることになり、効率よく加熱することができる。
【0021】
上記発明において、レーザ光は前記エッジラインから基板内部に向けて直進入射され、線状のレーザ光吸収領域が形成されるようにしてもよい。
これにより、細いレーザ光吸収領域に集中して加熱することができ、熱応力分布を集中させることができるので、クラックの進展方向を調整しやすくすることができる。
【0022】
上記発明において、脆性材料基板がガラス系材料であり、レーザ光源がEr:YAGレーザ、Ho:YAGレーザ、Erファイバーレーザ、Hoファイバーレーザ、半導体レーザ、光パラメトリック発振による波長変換光源のいずれかであってもよい。
Er:YAGレーザにより波長が2.94μmのレーザ光、Ho:YAGレーザにより波長が2.09μmのレーザ光を照射することができるので、これらレーザ光源を用いて内部吸収を起こすことにより、凹みの小さな面取り加工面を得ることができる。なお、これらレーザはこれまで医療用として小さい出力パワー(10W以下)のものが専ら用いられていたが、面取り加工用では大きな出力パワー(例えば10W〜200W)のレーザ光源を用いることになる。
【0023】
上記発明において、エッジラインを挟む両側の基板面上でこのエッジライン近傍の位置に、それぞれ前記エッジラインと平行な初期亀裂ラインを形成するようにしてもよい。
これらの初期亀裂ラインをクラック進展の起点にすることにより、クラックが形成される位置を、さらに精度よく制御することができる。
【0024】
上記発明において、初期亀裂ラインの亀裂断面の形状は、亀裂先端がエッジラインに近づく方向に傾斜した斜め亀裂にしてもよい。
これにより、基板表面に形成されるクラックが斜め方向となり、面取り加工面の方向に近づくことになるので、熱応力分布場(引張応力)によるクラックの進展方向の制御をさらに精度よく行うことができる。
【0025】
ここで斜め亀裂は、刃先稜線の左右が非対称なカッターホイールを基板表面に圧接することにより形成するようにしてもよい。
また、斜め亀裂は、基板表面に対し斜め方向のレーザ照射によるアブレーション加工により形成するようにしてもよい。
非対称な刃先を有するカッターホイールを基板に垂直に押圧することにより、亀裂先端が基板表面に対し斜め方向に向いたクラックを形成することができる。また、ビーム径を細く絞った高出力レーザ(例えばYAGレーザ)を基板表面に対し斜めに照射することにより、クラックが形成されることなくアブレーション加工(ただし分断されない程度の強さ)によって斜め亀裂を形成することができる。したがって、これら加工方法により形成した斜め亀裂を起点にして、クラックの形成位置やクラックの進展方向の制御を精度よく行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。なお、本発明は、以下に説明するような実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の態様が含まれることはいうまでもない。
【0027】
図1は、本発明の第一の実施形態である脆性材料基板の面取り加工方法を示す図である。図2は、図1のA−A’断面を示す図である。ガラス基板10の面取り加工を行おうとするエッジライン11と対向する位置に、Er:YAGレーザ光源20(以後、Erレーザ光源20という)を配置し、基板のエッジライン11から基板内部に向けてレーザ光が斜めに入射するようにする。そして、レーザ光源20に対してガラス基板10を相対的に移動し、レーザ光がエッジライン11に沿って走査されるようにする。具体的には、ガラス基板10の位置を移動するためのステージ駆動機構(不図示)を作動させて走査する。あるいは、ガラス基板10の位置を固定し、レーザ光源20をロボットアームのような移動機構により移動するようにしてもよい。
【0028】
レーザ光のビーム形状については、直線状に照射し、基板内部に線状のレーザ光照射領域を形成するようにしてもよい。また、レーザ光の光路上にレンズを設けて集光することにより焦点を形成し、この焦点位置をエッジライン11の直前位置に合わせて基板10から焦点を外したり、逆に焦点位置を基板10の内部に調整したりして、面状、あるいは立体状のレーザ光照射領域を形成するようにしてもよい。本実施形態では、線状のレーザ光照射領域が基板内に形成されるように直線状に照射するものとする。
【0029】
この面取り方法によれば、Erレーザ光源20を用いて基板の加熱を行う。これにより、エッジライン11近傍の表面吸収による加熱が行われるのではなく、内部吸収による加熱を行うようにしている。
ここで、レーザ光源をCO2レーザからErレーザに置き換えたことによる相違について、従来法と比較しつつ説明する。
【0030】
図3は、図1で説明した配置によりErレーザ光源20を用いて加熱したときのガラス基板の状態を示す断面模式図であり、図3(a)はガラス基板内部の温度分布およびレーザ光吸収領域を示す図、図3(b)は熱応力分布およびクラック形状を示す図である。
図4は、図3におけるErレーザ光源に代えて、CO2レーザ光源を用いたときのガラス基板の状態を示す断面模式図であり、図4(a)は温度分布およびレーザ光吸収領域を示す図、図4(b)は熱応力分布およびクラック形状を示す図である。
【0031】
説明の便宜上、先にCO2レーザ21による加熱の場合について説明する。CO2レーザ光源21からエッジライン11に向けてCO2レーザ(波長10.6μm)が直線状に斜め入射(2つの端面10a,10bに対し約45度で入射)されると、ガラス基板10はこの波長に対しての吸収率が高いために表面吸収となり、エッジライン11上の入射点12がレーザ光吸収領域となる。よって入射点12を中心とする点状の熱源13によって、ガラス基板10内が加熱されていく。すなわち、図4(a)において実線で示すように、入射点12を中心としてほぼ同心円状の温度分布Tcが形成され、また同心円状に熱伝達されていく。そして、同心円状の温度分布Tcが形成されることにより、図4(b)において一点鎖線で示すように、基板10の内部に、エッジライン11に向いたコブ状凸部を有する波型の熱応力分布(引張応力)Fcが形成されるようになる。
【0032】
その後、加熱後の冷却が進んで基板内に発生する熱応力が十分に大きくなると、やがて基板表面から内部にクラックが発生する。
一般に、初期亀裂が形成されていない状態で基板表面にクラックが発生するときは、基板表面に対して垂直方向にクラックが入る性質がある。また、基板内に熱応力分布場が発生している状態でクラックが入ると、引張応力の集中する方向に沿ってクラックが進展し易くなる性質がある。その一方で、一旦発生したクラックは直進する性質もある。
【0033】
これらの性質から、ガラス基板10の角部分Uにおいて、クラックには、コブ状凸部を有する波型の熱応力分布Fcの形状に沿って進展しようとする力が働くとともに、基板表面から垂直に入ったクラックが、そのまま直進しようとする力も働き、これらの力が競合して働く結果、波型の応力分布Fcから外れた円弧状のクラックC’が形成されることになる。つまり、大きく波打つ形状の応力分布場(引張応力)が形成されている場合には、クラックはこの応力分布場に完全には追従することができず、直線状に進展しようとする力が勝る結果、波型の応力分布場を無視してクラックが進展するようになり、引張応力の方向に進展する力と直進しようとする力とがバランスした中間的な円弧状のクラック進展が発生するものと考えられる。
【0034】
これに対し、図3に示すErレーザ光源20を用いた場合に、エッジライン11に向けてErレーザ(波長2.94μm)が斜め入射され、直線状に進行すると、ガラス基板10はこの波長に対しての吸収率が中間的な値(0.05〜0.95)であるために内部吸収となり、エッジライン11から基板内部にかけて線状のレーザ光吸収領域が形成される。よって入射点12からの線状の熱源14によって、ガラス基板10内が加熱されていく。すなわち、図3(a)において実線で示すように、線状の熱源14を中心として、U字状(あるいはV字状)の温度分布Tdが形成され、またU字状に熱伝達されていく。そして、U字状の温度分布Tdが形成されることにより、図3(b)において一点鎖線で示すように、基板内部のコブ状凸部が小さくなってほぼ直線状の熱応力分布場(引張応力)Fdが形成されるようになる。
【0035】
すなわち、内部吸収を利用して線状に分布する熱源14にすることにより、図4(CO2レーザ照射の場合)において熱応力分布にコブ状凸部が現れていた部分が積極的に加熱され、この部分の温度分布が変化して熱応力分布が平坦化され、結果的に直線に近い熱応力分布場(引張応力)Fdが得られることになる。
【0036】
その後、加熱後の冷却が進んで基板内に発生する熱応力が十分に大きくなり、やがて基板表面から内部にクラックが発生するが、直線状の熱応力分布(引張応力場)Fdが形成されていることから、クラックはこの直線に沿って進展することができるようになる。
【0037】
すなわち、ガラス基板10の角部分Uにおいて、基板表面から垂直に入ったクラックが、直線状の熱応力分布場(引張応力)Fdに沿って進展することができるようになり、この直線状のクラックに沿って面取り加工面が連続して形成される結果、平坦な面取り加工面Cが形成されるようになる。あるいは、平坦面に至らなくても凹みの小さな面取り加工面が形成されるようになる。
【0038】
このように、Erレーザ光源20により、ガラス基板10の角部分で内部吸収を行わせることにより、熱応力分布場(引張応力)を制御することができるので、クラックが追従できるような熱応力分布場を形成することにより、面取り加工面の形状を制御することができるようになる。
【0039】
例えば、上記実施形態ではエッジライン11を挟む2つの基板表面10a,10bに対し約45度で入射させることにより、形成される面取り加工面の角度が2つの端面10a,10bに対して約45度に形成されるようにしたが、入射角度を変えることにより、いずれかの端面側に面取り加工面を傾斜させることができる。
【0040】
またレーザ光のビーム形状を直線状ではなく面状に照射してレーザ光吸収領域を面状、立体状にしてもよい。さらにレーザ光を集光して焦点を形成し、基板内部に焦点を合わせたり、あるいは基板の直前に焦点を合わせたりしてレーザ光吸収領域を立体的な形状にしてもよい。それぞれのレーザ光吸収領域の形状に対応した熱源形状となって加熱されることになり、ガラス基板11の角部分にさまざまな温度分布を形成させることになるが、クラックが追従できる熱応力分布場を形成しさえすれば、面取り加工面の形状や向きを制御することができる。
【0041】
次に、第二の実施形態について説明する。第一の実施形態では、内部吸収可能なレーザ光を照射することにより、凹みが小さい面取り加工面や平坦な面取り加工面を形成する改良を行ったが、形成される面取り加工面の位置や方向の制御性をさらに高めるために、本実施形態では初期亀裂ラインを導入するようにしている。
【0042】
図5は、本発明の他の一実施形態である脆性材料基板の面取り加工方法を示す図である。また、図6は、図5の面取り加工面に垂直なB−B’断面を示す図である。
まず、ガラス基板10の面取り加工を行おうとするエッジライン11を挟む2つの基板表面10a,10b上で、かつ、エッジライン11近傍の位置に、このエッジライン11に沿って平行に走る初期亀裂ライン15、16を形成する。
初期亀裂ライン15、16が形成される位置は、後の工程でレーザが照射されたときに、熱応力分布場(引張応力)が形成されてクラックが誘導される領域内であることが必要となる。具体的にはエッジラインから0.5mm〜3mmの位置に形成するのが好ましい。また、初期亀裂15、16の断面形状は、基板表面10a,10bに対し、亀裂先端がエッジライン11の側に近づく方向に傾斜した斜め亀裂となるようにする。
【0043】
図7は斜め亀裂の形成に用いられるカッターホイールの一例を示す図である。このカッターホイール30は、図7(a)に刃先部分を拡大して示すように、刃先稜線の周方向に沿って適宜の間隔で溝31が形成してある。隣り合う溝31の間には突起32が形成され、これにより、スクライブ性能を向上させることができる。図7(b)は溝31の断面(C−C’断面)を示す。溝31の切取面は、稜線に対し左右非対称になるように傾斜させてある。このような非対称溝を形成することで、スクライブ性能を損なうことなく、斜め亀裂を形成することができる(特許第2989602号参照)。
また、刃先稜線の左右の刃角を非対称にしたカッターホイールを用いても斜め亀裂を形成することができる(特開平9−278474号参照)。
【0044】
また、斜め亀裂を形成する他の方法として、図8に示すように、高出力レーザ(例えばYAGレーザあるいはパルスCO2レーザ)のビーム径を絞るとともに集光し、焦点が基板表面にくるようにして加熱し、ピンポイントで斜め方向にアブレーション加工する方法を用いることができる。
【0045】
これらの方法により斜め亀裂を形成した後、第一実施形態と同様に、Erレーザ光源20をエッジライン11に向け、Erレーザ(波長2.94μm)を直線状に斜め入射する。
その結果、初期亀裂ライン15、16の位置が起点となってクラックが進展し、さらにクラックの進展方向が斜め亀裂方向になり、基板内部に向けて進展するようになる。このとき基板内の熱応力分布場(引張応力)を斜め亀裂方向に近づけておくことにより、クラックを熱応力分布場(引張応力)に沿って進展させることができ、このクラックによって面取り加工面を所望の形状にすることができる。
【0046】
以上、ガラス基板についての面取り加工について説明したが、他の脆性材料基板についても、それぞれの基板材料の吸収特性に応じて、内部吸収が可能なレーザ光源を選択することにより、同様の面取り加工を実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、ガラス基板等の脆性材料基板の面取り加工に利用される。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の一実施形態である脆性材料基板の面取り加工方法を示す図。
【図2】図1のA−A’断面図。
【図3】Erレーザ光源を用いて加熱したときのガラス基板の状態を示す断面模式図。
【図4】CO2レーザ光源を用いて加熱したときのガラス基板の状態を示す断面模式図。
【図5】本発明の他の一実施形態である脆性材料基板の面取り加工方法を示す図。 本発明の他の一実施形態であるクラック形成装置の概略構成を示す図。
【図6】図5のB−B’断面。
【図7】非対称カッターホイールにより斜め亀裂を形成する状態を示す図。
【図8】レーザアブレーションにより斜め亀裂を形成する状態を示す図。
【図9】CO2レーザ光源を用いて加熱溶融により面取り加工を行う際のレーザ照射状態を示す図。
【図10】CO2レーザ光源を用いてレーザスクライブにより面取り加工を行う際のレーザ照射状態を示す図。
【図11】CO2レーザを用いたレーザスクライブにより面取り加工を行ったときの加工断面の拡大図。
【符号の説明】
【0049】
10: ガラス基板
10a,10b: 基板表面
11: エッジライン
12: レーザ光吸収領域(点状)
13: 熱源
14: レーザ光吸収領域(線状)
20: Erレーザ光源
30: 非対称カッターホイール
40: YAGレーザ
【技術分野】
【0001】
本発明は、脆性材料基板の端面に形成されるエッジライン(稜線)の面取り方法に関し、さらに詳細にはエッジラインに沿って形成される面取り加工面の凹みを小さくし、より好ましくは平坦な加工面を形成する面取り方法に関する。
【0002】
ガラス基板等の脆性材料基板は、所望の寸法、形状に加工することにより各種の製品に用いられている。一般に、脆性材料基板の加工は、ダイシング、ホイールスクライブ、レーザスクライブ等の既存の加工技術により行われるが、これらの加工技術により分断された基板端面のエッジラインは非常に鋭く、わずかな衝撃が加わるだけでもチッピングやマイクロクラック等の不具合が生じる。例えば、フラットパネルディスプレイ(FPD)用のガラス基板では、エッジが欠けることにより発生した破片がFPD用基板の表面に傷を付ける原因となり、製品の歩留まりに影響を与える。
そのため、基板を分断した後に発生する基板のエッジ部分の欠け等を防止するために、エッジラインに沿って面取り加工が行われている。
【0003】
従来からの面取り加工のひとつに、多量の水を供給しつつダイヤモンド砥石により研磨するウェット研磨法がある。しかしながら、ウェット研磨法により形成される面取り加工面には、微小なクラックが連続的に残存しており、面取り加工面の強度は周囲より著しく低下することになっていた。
【0004】
そこで、エッジラインに沿ってレーザビームを照射して加熱溶融することにより面取りを行う加熱溶融法が提案されている。たとえばガラス部材全体を常温より高い温度に保持(余熱)した状態で、稜線部近傍をレーザ加熱して稜線部を軟化させて丸くすることにより面取りを行う方法が開示されている(特許文献1参照)。
【0005】
図9は、CO2レーザ光源を用いて加熱溶融により面取り加工を行う際のレーザ照射状態を示す断面図である。予め、図示しないヒータを用いてガラス基板10全体を軟化温度より低い所定温度に徐々に加熱しておき、続いて所定温度に保持されたガラス基板10の面取り加工を行おうとするエッジライン51に沿って、CO2レーザ光源50からのレーザ光を走査する。その際、レーザ出力、走査速度を調整することにより、レーザ照射されたエッジ部分が高温になって軟化するようにし、これによりレーザ照射されたエッジ部分が丸みを帯びるように加工する。
【0006】
この場合、予備加熱、加工後の冷却に時間がかかる。また、基板全体を予備加熱する必要があり、加熱できないデバイスやセンサ等の機能膜が基板上に既に形成されている場合には、この方法による面取り加工を実施できない場合もある。また、余熱が不十分であれば熱応力により割れ(クラック)が発生し、良好な面取り加工ができなくなる。さらに、加熱溶融による面取り加工では、溶融部分が変形してその一部(丸みを帯びた部分の一部)が周囲よりも膨れてしまい、基板端面の平坦度が損なわれることがある。
【0007】
一方、レーザ照射による加熱溶融以外の面取り方法として、エッジ近傍にレーザ光を照射して加熱することでガラス基板10にクラックを発生させ、レーザ光を相対的にエッジライン方向に走査することによりクラックをエッジラインに沿って成長させ、ガラス基板からエッジ近傍を分離することにより面取りを行うレーザスクライブ法が開示されている(特許文献2)。
図10は、CO2レーザ光源を用いてレーザスクライブにより面取り加工を行う際のレーザ照射状態を示す図である。ガラス基板10のエッジライン51付近にCO2レーザ光源50からのレーザ光を局所的に照射し、軟化温度より低い温度で加熱する。このとき局所的熱膨張にともなう熱応力によってクラック52が発生する。そして、エッジライン51に沿ってレーザ光を走査することにより、順次発生するクラック52がエッジライン51に沿って成長し、エッジライン51を含むエッジ近傍(角部分)が分離される。
特許文献2によれば、レーザスクライブによる面取り加工を行うことにより、ガラス基板の精度を損なうことなく、高い生産性と洗浄工程を必要としない面取り加工を施すことができるとされている。
【特許文献1】特開平2−241684号公報
【特許文献2】特開平9−225665号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、レーザ照射によってガラス基板の面取り加工を行う場合、ガラス基板が吸収可能な波長帯域のレーザ光源が用いられる。一般にガラス材は、ソーダガラス系、石英ガラス系などの種類により多少の差異はあるが、波長帯域が2μm〜10.6μm(10.6μmはCO2レーザの波長)のレーザであれば吸収可能である。しかしながら、実際には面取り加工用のレーザ光源としては、加熱溶融、レーザスクライブのいずれであっても、CO2レーザが専ら用いられていた。
【0009】
その理由は、面取り加工は、基板端面(表面)のエッジラインを加工するものであり、エッジラインに沿ってレーザを照射して加熱するときに、エッジ部分で最も吸収される波長のレーザ光を用いる方がよいと考えられていたからである。すなわちCO2レーザの波長(10.6μm)は、ガラスに対しては吸収率が高く、ガラス基板の表面近傍でほとんど吸収(表面吸収という)されてしまうことから、他のレーザ光よりも表面近傍を効率よく加熱することができ、面取り加工には適していると考えられていたからである。
【0010】
CO2レーザ以外の特殊なレーザは、研究目的では面取り加工に用いることはありうるが、実際にガラス基板の面取り加工用に特殊レーザを実用されることはなかった。例えば、主に医療用レーザとして利用されているEr:YAGレーザ(波長2.94μm)、Ho:YAGレーザ(波長2.09μm)等は、ガラス材に対しても吸収可能な波長帯域のレーザ光源であるが、これらのレーザ波長に対するガラス基板の吸収率はCO2レーザよりも小さく、その結果、ガラス基板に照射すると、基板表面から基板内部にかけて連続的に吸収(内部吸収という)されることになる。このような内部吸収を生じる波長のレーザ光源は、厚板ガラスをレーザスクライブで分断するときのように、基板表面から基板内部に向けてクラックを深く進展させて分断する際には利用される可能性がある。すなわち内部吸収を利用して厚板ガラス表面から厚板ガラス内部にかけて深く加熱し、熱応力分布を厚板ガラスの内部深くまで形成することにより、クラックを表面から内部まで深く進展させたい場合には有効である。しかしながら、面取り加工では、上述したようにレーザ光は表面近傍のみで吸収される波長の方が、面取り加工を行う部分への加熱効率がよいと考えられており、わざわざCO2レーザに置き換えて特殊レーザを利用する理由がなく、専らCO2レーザが用いられていた。さらに、上述した医療用のEr:YAGレーザ(波長2.94μm)やHo:YAGレーザ(波長2.09μm)は、出力パワーが2Wから10W程度であり、医療用のレーザをそのまま転用しても面取り加工用としては出力が不足することもあり、レーザ出力の点からもCO2レーザに置き換えて特殊レーザを利用する理由はなかった。
そして、実際にCO2レーザを光源に用いたレーザスクライブによる面取り加工によって、それなりの面取り加工が実現できていた。
【0011】
しかしながら、近年、フラットパネルディスプレイ(FPD)用ガラス基板等では、従来よりも大型のガラス基板が用いられ、ガラス基板の大型化に伴って、基板の加工品質についても、これまで以上に高い精度や信頼性が求められるようになってきている。そして、面取り加工により形成される加工面の形状についても、これまで以上に高い精度と信頼性が求められている。
【0012】
ここで、レーザスクライブによる面取り加工によって形成される加工面について説明する。図11は、CO2レーザを用いたレーザスクライブにより面取り加工を行ったときの加工断面の拡大図である。
【0013】
面取り加工により、ガラス基板10の角部分Uが分離(剥離)され、ガラス基板10のエッジライン53は角部分Uとともに消失するが、新たに面取り加工面54が形成される。
この面取り加工面54の断面形状を観察すると、ガラス基板10側に凹んだ円弧形状を有している。面取り加工面54が凹んでいる結果、ガラス基板Sの基板表面55、56との交差部分には、2つのエッジライン57、58が形成されることになる。これらエッジライン57、58は、当初のエッジライン53に比べるとエッジの鋭さは改善されているが、それでも凹みが大きくなると、鋭利なエッジが形成されてしまうことになる。
フラットパネルディスプレイ用(FPD用)ガラス基板では、エッジライン57、58の直上にTABテープが配線されることがあり、面取り加工後に、この部分に鋭利なエッジが残っているとTABテープが断線される可能性が高くなる。
そのため、面取り加工面54の凹みをできるだけ小さな形状にして、鋭利なエッジが形成されないように面取り加工することが要求されるようになっている。
【0014】
しかしながら、従来からなされているCO2レーザを用いたレーザスクライブで形成される面取り加工面54ではどうしても凹みが発生してしまう。これはエッジライン53に照射するレーザの照射方向を変化させたりしても、結果はほぼ同じであり、面取り加工面の形状を制御することが困難であった。
【0015】
そこで本発明は、第一にレーザスクライブによる面取り加工方法を改良し、レーザスクライブの際に形成される面取り加工面の凹みを小さくすることができ、より好ましくは形成される面取り加工面を平坦にすることができる面取り方法を提供することを目的とする。
また、第二に、面取り加工面の形状を平坦化するだけではなく、加工面の形状を制御することができる面取り加工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するためになされた本発明の脆性材料基板の面取り方法は、脆性材料基板のエッジラインに沿ってレーザ光を走査することにより前記エッジラインの面取り加工を行う脆性材料基板の面取り方法であって、前記脆性材料基板に対する吸収率が0.05〜0.95である波長のレーザ光源を用いて、前記エッジライン近傍に入射するようにレーザ光を照射し、エッジラインから基板内部にかけて分布するレーザ光吸収領域によって基板内部に温度分布を形成し、この温度分布により基板内部に生じた熱応力分布を利用してクラックを進展させるとともにクラックの進展方向を調整するようにしている。
【0017】
ここで、「脆性材料基板」とは、ガラス基板のほか、石英、単結晶シリコン、サファイヤ、半導体ウエハ、セラミック等の基板が含まれる。
「脆性材料基板に対する吸収率が0.05〜0.95である波長のレーザ光源」とは、機能的に説明すると、基板表面近傍のみで吸収(表面吸収)される波長のレーザ光源、および、基板がほとんど吸収しない波長のレーザ光源を除いたレーザ光源を意味するものであり、レーザ光を基板に照射したときに、基板表面近傍(エッジラインも含まれる)から基板内部にかけて、レーザ光が吸収(内部吸収)されるレーザ光吸収領域が分布するようになる波長のレーザ光源をいう。具体的には、ガラス基板の場合には、CO2レーザやCOレーザ(波長5.3μm)は、吸収率が0.95より大きいため、ここで用いる面取り加工用のレーザ光源からは除外される。脆性材料基板の種類により好ましい波長帯域が異なることになるが、ガラス基板の場合、2μm〜5μmの波長帯域のレーザ光源が好ましい。
【0018】
本発明によれば、面取り加工用のレーザ光源として、表面吸収ではなく内部吸収が生じる波長のレーザ光源を用いて、このレーザ光源からのレーザ光を、エッジライン近傍から入射するようにレーザ光を照射する。このとき基板表面から基板内部にかけてレーザ光が通過する領域がレーザ光吸収領域となり、レーザ光吸収領域内の各点は照射されたレーザ光を吸収して発熱する。すなわちレーザ光吸収領域の各点は、エッジラインから基板内部にかけて分布する熱源となって発熱し、周囲に熱を伝達するようになる。その結果、レーザ光吸収領域の形状に応じて線状、または、面状、または、立体状の熱源(すなわち点状熱源や基板表面上の熱源ではない)となって加熱されたときの温度分布が基板内部に発生するようになり、さらにこの温度分布に起因して発生した熱応力分布が得られることになる。このときの温度分布や熱応力分布は、表面吸収のみが生じる波長のレーザ光源(例えばガラス基板に対するCO2レーザ光源)を用いて加熱した場合と異なる。そして、内部吸収により発生する熱応力分布場(特に引張応力)を制御することにより、クラックを成長させるとともに、単にクラックを成長させるだけでなくクラックの進展方向を調整できるようにすることにより(具体例については後述する)、面取り加工面の形状を調整する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、表面吸収のみが生じる波長のレーザ光源を用いて加熱するのではなく、内部吸収が生じる波長のレーザ光源を用いてエッジラインから基板内部にかけて加熱し、そのときの熱応力分布を制御して、クラックを進展させるとともに進展方向を調整することにより、面取り加工面の形状を調整するようにしたので、面取り加工面の形状を熱応力分布(引張応力)の形状によって変化させることができるようになり、熱応力分布(引張応力)の形状を適切にすることで、凹みの小さな形状、さらには平坦な形状にすることができる。
【0020】
(その他の課題解決手段および効果)
上記発明において、レーザ光は前記エッジラインから基板内部に向けて斜め方向に入射されるようにするのが好ましい。
これにより、エッジラインから基板内部に斜め入射したレーザ光は基板内部でほぼすべて吸収されることになり、効率よく加熱することができる。
【0021】
上記発明において、レーザ光は前記エッジラインから基板内部に向けて直進入射され、線状のレーザ光吸収領域が形成されるようにしてもよい。
これにより、細いレーザ光吸収領域に集中して加熱することができ、熱応力分布を集中させることができるので、クラックの進展方向を調整しやすくすることができる。
【0022】
上記発明において、脆性材料基板がガラス系材料であり、レーザ光源がEr:YAGレーザ、Ho:YAGレーザ、Erファイバーレーザ、Hoファイバーレーザ、半導体レーザ、光パラメトリック発振による波長変換光源のいずれかであってもよい。
Er:YAGレーザにより波長が2.94μmのレーザ光、Ho:YAGレーザにより波長が2.09μmのレーザ光を照射することができるので、これらレーザ光源を用いて内部吸収を起こすことにより、凹みの小さな面取り加工面を得ることができる。なお、これらレーザはこれまで医療用として小さい出力パワー(10W以下)のものが専ら用いられていたが、面取り加工用では大きな出力パワー(例えば10W〜200W)のレーザ光源を用いることになる。
【0023】
上記発明において、エッジラインを挟む両側の基板面上でこのエッジライン近傍の位置に、それぞれ前記エッジラインと平行な初期亀裂ラインを形成するようにしてもよい。
これらの初期亀裂ラインをクラック進展の起点にすることにより、クラックが形成される位置を、さらに精度よく制御することができる。
【0024】
上記発明において、初期亀裂ラインの亀裂断面の形状は、亀裂先端がエッジラインに近づく方向に傾斜した斜め亀裂にしてもよい。
これにより、基板表面に形成されるクラックが斜め方向となり、面取り加工面の方向に近づくことになるので、熱応力分布場(引張応力)によるクラックの進展方向の制御をさらに精度よく行うことができる。
【0025】
ここで斜め亀裂は、刃先稜線の左右が非対称なカッターホイールを基板表面に圧接することにより形成するようにしてもよい。
また、斜め亀裂は、基板表面に対し斜め方向のレーザ照射によるアブレーション加工により形成するようにしてもよい。
非対称な刃先を有するカッターホイールを基板に垂直に押圧することにより、亀裂先端が基板表面に対し斜め方向に向いたクラックを形成することができる。また、ビーム径を細く絞った高出力レーザ(例えばYAGレーザ)を基板表面に対し斜めに照射することにより、クラックが形成されることなくアブレーション加工(ただし分断されない程度の強さ)によって斜め亀裂を形成することができる。したがって、これら加工方法により形成した斜め亀裂を起点にして、クラックの形成位置やクラックの進展方向の制御を精度よく行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。なお、本発明は、以下に説明するような実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の態様が含まれることはいうまでもない。
【0027】
図1は、本発明の第一の実施形態である脆性材料基板の面取り加工方法を示す図である。図2は、図1のA−A’断面を示す図である。ガラス基板10の面取り加工を行おうとするエッジライン11と対向する位置に、Er:YAGレーザ光源20(以後、Erレーザ光源20という)を配置し、基板のエッジライン11から基板内部に向けてレーザ光が斜めに入射するようにする。そして、レーザ光源20に対してガラス基板10を相対的に移動し、レーザ光がエッジライン11に沿って走査されるようにする。具体的には、ガラス基板10の位置を移動するためのステージ駆動機構(不図示)を作動させて走査する。あるいは、ガラス基板10の位置を固定し、レーザ光源20をロボットアームのような移動機構により移動するようにしてもよい。
【0028】
レーザ光のビーム形状については、直線状に照射し、基板内部に線状のレーザ光照射領域を形成するようにしてもよい。また、レーザ光の光路上にレンズを設けて集光することにより焦点を形成し、この焦点位置をエッジライン11の直前位置に合わせて基板10から焦点を外したり、逆に焦点位置を基板10の内部に調整したりして、面状、あるいは立体状のレーザ光照射領域を形成するようにしてもよい。本実施形態では、線状のレーザ光照射領域が基板内に形成されるように直線状に照射するものとする。
【0029】
この面取り方法によれば、Erレーザ光源20を用いて基板の加熱を行う。これにより、エッジライン11近傍の表面吸収による加熱が行われるのではなく、内部吸収による加熱を行うようにしている。
ここで、レーザ光源をCO2レーザからErレーザに置き換えたことによる相違について、従来法と比較しつつ説明する。
【0030】
図3は、図1で説明した配置によりErレーザ光源20を用いて加熱したときのガラス基板の状態を示す断面模式図であり、図3(a)はガラス基板内部の温度分布およびレーザ光吸収領域を示す図、図3(b)は熱応力分布およびクラック形状を示す図である。
図4は、図3におけるErレーザ光源に代えて、CO2レーザ光源を用いたときのガラス基板の状態を示す断面模式図であり、図4(a)は温度分布およびレーザ光吸収領域を示す図、図4(b)は熱応力分布およびクラック形状を示す図である。
【0031】
説明の便宜上、先にCO2レーザ21による加熱の場合について説明する。CO2レーザ光源21からエッジライン11に向けてCO2レーザ(波長10.6μm)が直線状に斜め入射(2つの端面10a,10bに対し約45度で入射)されると、ガラス基板10はこの波長に対しての吸収率が高いために表面吸収となり、エッジライン11上の入射点12がレーザ光吸収領域となる。よって入射点12を中心とする点状の熱源13によって、ガラス基板10内が加熱されていく。すなわち、図4(a)において実線で示すように、入射点12を中心としてほぼ同心円状の温度分布Tcが形成され、また同心円状に熱伝達されていく。そして、同心円状の温度分布Tcが形成されることにより、図4(b)において一点鎖線で示すように、基板10の内部に、エッジライン11に向いたコブ状凸部を有する波型の熱応力分布(引張応力)Fcが形成されるようになる。
【0032】
その後、加熱後の冷却が進んで基板内に発生する熱応力が十分に大きくなると、やがて基板表面から内部にクラックが発生する。
一般に、初期亀裂が形成されていない状態で基板表面にクラックが発生するときは、基板表面に対して垂直方向にクラックが入る性質がある。また、基板内に熱応力分布場が発生している状態でクラックが入ると、引張応力の集中する方向に沿ってクラックが進展し易くなる性質がある。その一方で、一旦発生したクラックは直進する性質もある。
【0033】
これらの性質から、ガラス基板10の角部分Uにおいて、クラックには、コブ状凸部を有する波型の熱応力分布Fcの形状に沿って進展しようとする力が働くとともに、基板表面から垂直に入ったクラックが、そのまま直進しようとする力も働き、これらの力が競合して働く結果、波型の応力分布Fcから外れた円弧状のクラックC’が形成されることになる。つまり、大きく波打つ形状の応力分布場(引張応力)が形成されている場合には、クラックはこの応力分布場に完全には追従することができず、直線状に進展しようとする力が勝る結果、波型の応力分布場を無視してクラックが進展するようになり、引張応力の方向に進展する力と直進しようとする力とがバランスした中間的な円弧状のクラック進展が発生するものと考えられる。
【0034】
これに対し、図3に示すErレーザ光源20を用いた場合に、エッジライン11に向けてErレーザ(波長2.94μm)が斜め入射され、直線状に進行すると、ガラス基板10はこの波長に対しての吸収率が中間的な値(0.05〜0.95)であるために内部吸収となり、エッジライン11から基板内部にかけて線状のレーザ光吸収領域が形成される。よって入射点12からの線状の熱源14によって、ガラス基板10内が加熱されていく。すなわち、図3(a)において実線で示すように、線状の熱源14を中心として、U字状(あるいはV字状)の温度分布Tdが形成され、またU字状に熱伝達されていく。そして、U字状の温度分布Tdが形成されることにより、図3(b)において一点鎖線で示すように、基板内部のコブ状凸部が小さくなってほぼ直線状の熱応力分布場(引張応力)Fdが形成されるようになる。
【0035】
すなわち、内部吸収を利用して線状に分布する熱源14にすることにより、図4(CO2レーザ照射の場合)において熱応力分布にコブ状凸部が現れていた部分が積極的に加熱され、この部分の温度分布が変化して熱応力分布が平坦化され、結果的に直線に近い熱応力分布場(引張応力)Fdが得られることになる。
【0036】
その後、加熱後の冷却が進んで基板内に発生する熱応力が十分に大きくなり、やがて基板表面から内部にクラックが発生するが、直線状の熱応力分布(引張応力場)Fdが形成されていることから、クラックはこの直線に沿って進展することができるようになる。
【0037】
すなわち、ガラス基板10の角部分Uにおいて、基板表面から垂直に入ったクラックが、直線状の熱応力分布場(引張応力)Fdに沿って進展することができるようになり、この直線状のクラックに沿って面取り加工面が連続して形成される結果、平坦な面取り加工面Cが形成されるようになる。あるいは、平坦面に至らなくても凹みの小さな面取り加工面が形成されるようになる。
【0038】
このように、Erレーザ光源20により、ガラス基板10の角部分で内部吸収を行わせることにより、熱応力分布場(引張応力)を制御することができるので、クラックが追従できるような熱応力分布場を形成することにより、面取り加工面の形状を制御することができるようになる。
【0039】
例えば、上記実施形態ではエッジライン11を挟む2つの基板表面10a,10bに対し約45度で入射させることにより、形成される面取り加工面の角度が2つの端面10a,10bに対して約45度に形成されるようにしたが、入射角度を変えることにより、いずれかの端面側に面取り加工面を傾斜させることができる。
【0040】
またレーザ光のビーム形状を直線状ではなく面状に照射してレーザ光吸収領域を面状、立体状にしてもよい。さらにレーザ光を集光して焦点を形成し、基板内部に焦点を合わせたり、あるいは基板の直前に焦点を合わせたりしてレーザ光吸収領域を立体的な形状にしてもよい。それぞれのレーザ光吸収領域の形状に対応した熱源形状となって加熱されることになり、ガラス基板11の角部分にさまざまな温度分布を形成させることになるが、クラックが追従できる熱応力分布場を形成しさえすれば、面取り加工面の形状や向きを制御することができる。
【0041】
次に、第二の実施形態について説明する。第一の実施形態では、内部吸収可能なレーザ光を照射することにより、凹みが小さい面取り加工面や平坦な面取り加工面を形成する改良を行ったが、形成される面取り加工面の位置や方向の制御性をさらに高めるために、本実施形態では初期亀裂ラインを導入するようにしている。
【0042】
図5は、本発明の他の一実施形態である脆性材料基板の面取り加工方法を示す図である。また、図6は、図5の面取り加工面に垂直なB−B’断面を示す図である。
まず、ガラス基板10の面取り加工を行おうとするエッジライン11を挟む2つの基板表面10a,10b上で、かつ、エッジライン11近傍の位置に、このエッジライン11に沿って平行に走る初期亀裂ライン15、16を形成する。
初期亀裂ライン15、16が形成される位置は、後の工程でレーザが照射されたときに、熱応力分布場(引張応力)が形成されてクラックが誘導される領域内であることが必要となる。具体的にはエッジラインから0.5mm〜3mmの位置に形成するのが好ましい。また、初期亀裂15、16の断面形状は、基板表面10a,10bに対し、亀裂先端がエッジライン11の側に近づく方向に傾斜した斜め亀裂となるようにする。
【0043】
図7は斜め亀裂の形成に用いられるカッターホイールの一例を示す図である。このカッターホイール30は、図7(a)に刃先部分を拡大して示すように、刃先稜線の周方向に沿って適宜の間隔で溝31が形成してある。隣り合う溝31の間には突起32が形成され、これにより、スクライブ性能を向上させることができる。図7(b)は溝31の断面(C−C’断面)を示す。溝31の切取面は、稜線に対し左右非対称になるように傾斜させてある。このような非対称溝を形成することで、スクライブ性能を損なうことなく、斜め亀裂を形成することができる(特許第2989602号参照)。
また、刃先稜線の左右の刃角を非対称にしたカッターホイールを用いても斜め亀裂を形成することができる(特開平9−278474号参照)。
【0044】
また、斜め亀裂を形成する他の方法として、図8に示すように、高出力レーザ(例えばYAGレーザあるいはパルスCO2レーザ)のビーム径を絞るとともに集光し、焦点が基板表面にくるようにして加熱し、ピンポイントで斜め方向にアブレーション加工する方法を用いることができる。
【0045】
これらの方法により斜め亀裂を形成した後、第一実施形態と同様に、Erレーザ光源20をエッジライン11に向け、Erレーザ(波長2.94μm)を直線状に斜め入射する。
その結果、初期亀裂ライン15、16の位置が起点となってクラックが進展し、さらにクラックの進展方向が斜め亀裂方向になり、基板内部に向けて進展するようになる。このとき基板内の熱応力分布場(引張応力)を斜め亀裂方向に近づけておくことにより、クラックを熱応力分布場(引張応力)に沿って進展させることができ、このクラックによって面取り加工面を所望の形状にすることができる。
【0046】
以上、ガラス基板についての面取り加工について説明したが、他の脆性材料基板についても、それぞれの基板材料の吸収特性に応じて、内部吸収が可能なレーザ光源を選択することにより、同様の面取り加工を実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、ガラス基板等の脆性材料基板の面取り加工に利用される。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の一実施形態である脆性材料基板の面取り加工方法を示す図。
【図2】図1のA−A’断面図。
【図3】Erレーザ光源を用いて加熱したときのガラス基板の状態を示す断面模式図。
【図4】CO2レーザ光源を用いて加熱したときのガラス基板の状態を示す断面模式図。
【図5】本発明の他の一実施形態である脆性材料基板の面取り加工方法を示す図。 本発明の他の一実施形態であるクラック形成装置の概略構成を示す図。
【図6】図5のB−B’断面。
【図7】非対称カッターホイールにより斜め亀裂を形成する状態を示す図。
【図8】レーザアブレーションにより斜め亀裂を形成する状態を示す図。
【図9】CO2レーザ光源を用いて加熱溶融により面取り加工を行う際のレーザ照射状態を示す図。
【図10】CO2レーザ光源を用いてレーザスクライブにより面取り加工を行う際のレーザ照射状態を示す図。
【図11】CO2レーザを用いたレーザスクライブにより面取り加工を行ったときの加工断面の拡大図。
【符号の説明】
【0049】
10: ガラス基板
10a,10b: 基板表面
11: エッジライン
12: レーザ光吸収領域(点状)
13: 熱源
14: レーザ光吸収領域(線状)
20: Erレーザ光源
30: 非対称カッターホイール
40: YAGレーザ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脆性材料基板のエッジラインに沿ってレーザ光を走査することにより前記エッジラインの面取り加工を行う脆性材料基板の面取り方法であって、
前記脆性材料基板に対する吸収率が0.05〜0.95である波長のレーザ光源を用いて、前記エッジライン近傍に入射するようにレーザ光を照射し、エッジラインから基板内部にかけて分布するレーザ光吸収領域によって基板内部に温度分布を形成し、この温度分布により基板内部に生じた熱応力分布を利用してクラックを進展させるとともにクラックの進展方向を調整することを特徴とする脆性材料基板の面取り方法。
【請求項2】
前記レーザ光は前記エッジラインから基板内部に向けて斜め方向に入射される請求項1に記載の脆性材料基板の面取り方法。
【請求項3】
前記レーザ光は前記エッジラインから基板内部に向けて直進入射され、線状のレーザ光吸収領域が形成される請求項1または請求項2に記載の脆性材料基板の面取り方法。
【請求項4】
脆性材料基板がガラス系材料であり、レーザ光源がEr:YAGレーザ、Ho:YAGレーザ、Erファイバーレーザ、Hoファイバーレーザ、半導体レーザ、光パラメトリック発振による波長変換光源のいずれかである請求項1〜請求項3のいずれかに記載の脆性材料基板の面取り方法。
【請求項5】
前記エッジラインを挟む両側の基板面上でエッジライン近傍の位置に、それぞれエッジラインと平行な初期亀裂ラインが形成される請求項1〜請求項4のいずれかに記載の脆性材料基板の面取り方法。
【請求項6】
前記初期亀裂ラインの亀裂断面の形状は、亀裂先端がエッジラインに近づく方向に傾斜した斜め亀裂である請求項5に記載の脆性材料基板の面取り方法。
【請求項7】
前記斜め亀裂は、刃先稜線の左右が非対称なカッターホイールを基板表面に圧接することにより形成される請求項6に記載の脆性材料基板の面取り方法。
【請求項8】
前記斜め亀裂は、基板表面に対し斜め方向のレーザ照射によるアブレーション加工により形成される請求項6に記載の脆性材料基板の面取り方法。
【請求項1】
脆性材料基板のエッジラインに沿ってレーザ光を走査することにより前記エッジラインの面取り加工を行う脆性材料基板の面取り方法であって、
前記脆性材料基板に対する吸収率が0.05〜0.95である波長のレーザ光源を用いて、前記エッジライン近傍に入射するようにレーザ光を照射し、エッジラインから基板内部にかけて分布するレーザ光吸収領域によって基板内部に温度分布を形成し、この温度分布により基板内部に生じた熱応力分布を利用してクラックを進展させるとともにクラックの進展方向を調整することを特徴とする脆性材料基板の面取り方法。
【請求項2】
前記レーザ光は前記エッジラインから基板内部に向けて斜め方向に入射される請求項1に記載の脆性材料基板の面取り方法。
【請求項3】
前記レーザ光は前記エッジラインから基板内部に向けて直進入射され、線状のレーザ光吸収領域が形成される請求項1または請求項2に記載の脆性材料基板の面取り方法。
【請求項4】
脆性材料基板がガラス系材料であり、レーザ光源がEr:YAGレーザ、Ho:YAGレーザ、Erファイバーレーザ、Hoファイバーレーザ、半導体レーザ、光パラメトリック発振による波長変換光源のいずれかである請求項1〜請求項3のいずれかに記載の脆性材料基板の面取り方法。
【請求項5】
前記エッジラインを挟む両側の基板面上でエッジライン近傍の位置に、それぞれエッジラインと平行な初期亀裂ラインが形成される請求項1〜請求項4のいずれかに記載の脆性材料基板の面取り方法。
【請求項6】
前記初期亀裂ラインの亀裂断面の形状は、亀裂先端がエッジラインに近づく方向に傾斜した斜め亀裂である請求項5に記載の脆性材料基板の面取り方法。
【請求項7】
前記斜め亀裂は、刃先稜線の左右が非対称なカッターホイールを基板表面に圧接することにより形成される請求項6に記載の脆性材料基板の面取り方法。
【請求項8】
前記斜め亀裂は、基板表面に対し斜め方向のレーザ照射によるアブレーション加工により形成される請求項6に記載の脆性材料基板の面取り方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−66851(P2009−66851A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−236581(P2007−236581)
【出願日】平成19年9月12日(2007.9.12)
【出願人】(390000608)三星ダイヤモンド工業株式会社 (383)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年9月12日(2007.9.12)
【出願人】(390000608)三星ダイヤモンド工業株式会社 (383)
【Fターム(参考)】
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