脚式移動ロボット
【課題】姿勢安定制御や基本姿勢の維持などの観点から機体の各部位毎の質量分布を最適化する。
【解決手段】脚部における質量分布として、股関節ピッチ軸12と膝ピッチ軸14の間の部位の重心は、基本立ち姿勢と抱き上げ(直立状態)姿勢間で、股関節ピッチ軸と重力加速度ベクトルで構成される平面上に設定されている。これによって、直立状態において基本立ち上げ姿勢と抱き上げ状態を経る間における安定な姿勢遷移を実現することができる。
【解決手段】脚部における質量分布として、股関節ピッチ軸12と膝ピッチ軸14の間の部位の重心は、基本立ち姿勢と抱き上げ(直立状態)姿勢間で、股関節ピッチ軸と重力加速度ベクトルで構成される平面上に設定されている。これによって、直立状態において基本立ち上げ姿勢と抱き上げ状態を経る間における安定な姿勢遷移を実現することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多軸の関節自由度を備えたロボットに係り、特に、可動脚を備えて直立するタイプの脚式移動ロボットに関する。
【0002】
さらに詳しくは、本発明は、姿勢安定制御や基本姿勢の維持などの観点から機体が最適に設計された脚式移動ロボットに係り、特に、姿勢安定制御や基本姿勢の維持などの観点から機体の各部位毎の質量分布が最適化された脚式移動ロボットに関する。
【背景技術】
【0003】
電気的若しくは磁気的な作用を用いて人間の動作に似せた運動を行う機械装置のことを「ロボット」という。ロボットの語源は、スラブ語の“ROBOTA(奴隷機械)”に由来すると言われている。わが国では、ロボットが普及し始めたのは1960年代末からであるが、その多くは、工場における生産作業の自動化・無人化などを目的としたマニピュレータや搬送ロボットなどの産業用ロボット(industrial robot)であった。
【0004】
最近では、イヌやネコのように4足歩行の動物の身体メカニズムやその動作を模したペット型ロボット、あるいは、ヒトのような2足直立歩行を行う動物の身体メカニズムや動作をモデルにしてデザインされた「人間形」若しくは「人間型」と呼ばれるロボット(humanoid robot)など、脚式移動ロボットに関する研究開発が進展し、実用化への期待も高まってきている。
【0005】
脚式移動ロボットは、多数の関節自由度を備え、関節の動きをアクチュエータ・モータで実現し、各関節アクチュエータをフレームで連結することによって構成される。このようなアクチュエータ・モータとしては、取扱いが容易で、小型・高トルクで、しかも応答性に優れたサーボ・モータが利用される。特に、ACサーボ・モータは、ブラシがなく、メンテナンス・フリーであることから、自ら行動計画を立案して自由歩行を行う脚式ロボットの関節アクチュエータなどに適用することができる。
【0006】
通常のロボット構成では、1つの関節自由度を1つのアクチュエータ・モータで実現する。一方、犬や猫、熊などの4足歩行の動物、あるいは人間のように2足歩行の動物の動作メカニズムに近似したリアリステッィクな脚式ロボットを構成するためには、可能な限り生体に近似した関節自由度を供えていることが好ましい。
【0007】
ロボットの機体上には、関節アクチュエータ、駆動電源としてのバッテリ、制御回路基板などさまざまな重量物が存在する。
【0008】
ロボットの機構設計を行なう上で、機体の質量分布を充分に考慮しないと、姿勢安定制御や消費電力の点で不利となる。例えば、基本的な姿勢である直立状態やその他の静的な姿勢において余計な負荷がかかるような質量分布をとっていると、次の姿勢遷移まで待機しているだけの期間であっても、常に姿勢安定制御を実行しなければならず、計算機への負荷は過大である。また、基本姿勢においても、常に姿勢維持のために関節軸アクチュエータがトルクを発生しなければならなくなり、消費電力の浪費になる。
【0009】
特に、2足直立歩行の脚式ロボットの場合、基本的な立ち姿勢においても常に姿勢安定制御を行なうとともに、姿勢維持するために膝関節アクチュエータのトルクを生成しなければならず、計算機負荷と装置駆動電力を消耗する。さらに質量分布のバランスがとれていない場合には、姿勢安定制御は複雑さを増すとともにアクチュエータの駆動電力はさらに増大してしまう。
【0010】
また、多くの場合、脚式移動ロボットの姿勢安定制御には、足底接地点と路面の形成する支持多角形の辺上あるいはその内側にモーメントがゼロとなる点を探索するというZMP安定度判別規範を用いる。このような場合、ロボットの機体に印加される各モーメントの釣合い関係を記述したZMP方程式を導出して、このZMP方程式上で現れるモーメント・エラーを打ち消すように機体の目標軌道を修正する。
【0011】
ところが、上肢や下肢、頭部など、機体の各部位について質量分布が最適化されていないと、単に特定の部位だけを動作させただけでもモーメントが生成して、機体全体に作用を及ぼし、ZMP釣合い方程式に余分な項を作ってしまうことになる。この結果、姿勢安定制御を複雑にしてしまい、計算機コストの増大を招来してしまう。
【0012】
従来のロボット設計では、駆動系の配置が重視してなされており、質量分布の最適化は充分なされていなかった。例えば、アクチュエータ・モータ、伝達用ベルト、高減速器の順で関節軸に駆動力が付加されるという構成が一般に採用されている。この場合、アクチュエータ・モータの他に、高減速比を得るための高減速器も重量物となる。したがって、多数の関節からなる脚式移動ロボットにおいては、バランスよく重量物を配置することはますます困難となる。
【0013】
質量の大きな第1の電動モータを脚部側に取り付けることを避けて慣性質量を防止するとともに、軸線に比較的近接して配置し垂直軸回りの慣性モーメントを低減する脚式歩行ロボットについて提案がなされている(例えば、特許文献1を参照のこと)。しかしながら、機体全体の重心をどこに設置するかも、ZMPを安定度判別規範に用いることも、第1の電動モータの取り付け位置によってZMP方程式の項数がどう増減するかについて開示されていない。
【0014】
また、重力に起因する膝関節を曲げるモーメントの発生が発生しないように、起立したロボット全体の重心Gから下ろした鉛直線が膝関節の回転軸と交わるように構成したロボットの関節装置について提案がなされている(例えば、特許文献2を参照のこと)。しかしながら、「ロボット全体の重心Gから下ろした鉛直線が膝関節の回転軸aと交わる」とは、機体の重心のZ方向が膝関節の回転軸と交わるものであって、基体の重心のX方向の位置が股関節の回転軸に設定されることとも、Z方向の位置が股関節ロール軸と体幹ロール軸の間に設定されることとも相違する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開平3−184782号公報
【特許文献2】特開2002−36153号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は上述したような技術的課題を鑑みたものであり、その主な目的は、機体の質量分布が最適化された、優れた脚式移動ロボットを提供することにある。
【0017】
本発明のさらなる目的は、機体の姿勢安定制御の観点から機体の各部位毎の質量分布が最適化された、優れた脚式移動ロボットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、上記課題を参酌してなされたものであり、可動脚を備えて直立するタイプの脚式移動ロボットであって、
機体本体部と、前記機体本体部に対して所定の関節軸回りの自由度を以って取り付けられた機体末端部とを備え、
前記機体末端部の重心は前記関節軸上に設定されている、
ことを特徴とする脚式移動ロボットである。
【0019】
このように前記機体末端部の重心は前記関節軸上に設定することによって、前記機体末端部の関節回りの回転運動による関節軸回りのモーメントの発生量を軽減することにより、機体全体のZMP姿勢安定制御が前記機体末端部の運動からの影響を受けないようにすることができる。この結果、ZMP釣合い方程式に余分な項を作ることがなくなり、姿勢安定制御が簡単化される。
【0020】
また、本発明に係る脚式移動ロボットは、股関節ピッチ軸及び股関節ロール軸回りの自由度を以って前記機体胴体部に取り付けられた左右の可動脚をさらに備えていてもよい。このような場合、機体全体の重心が前記股関節ピッチ軸上で左右の前記股関節ロール軸の略中点上に設定することにより、主として安定な起動、起き上がり動作を確保することができる。
【0021】
また、本発明に係る脚式移動ロボットは、前記機体胴体部において体幹ロール軸回りの自由度を備えていてもよい。このような場合、直立状態、基本立ち姿勢、並びに基本歩行姿勢において(対応路面が傾斜している場合を含む)、機体全体の重心を前記股関節ロール軸と前記体幹ロール軸の間に設定することにより、主として安定な起動、起き上がり動作を確保することができる。
【0022】
また、本発明に係る脚式移動ロボットは、頭ロール軸回りの自由度を以って前記機体胴体部に取り付けられた頭部をさらに備えていてもよい。このような場合、前記頭部の重心を前記頭ロール軸上に設定することにより、直立状態において基本立ち上げ姿勢と抱き上げ状態を経る間における安定な姿勢遷移を実現することができる。また、首ロール運動によるロール軸モーメントの発生量を軽減することにより、機体全体のZMP姿勢安定制御が首ロール運動からの影響を受けないようにすることができる。
【0023】
また、頭部が頭ヨー軸回りの自由度を以って前記機体胴体部に取り付けられている場合には、前記頭部の重心を前記頭ヨー軸上に設定することにより、首関節ヨー軸回りのモーメントの発生量を軽減して、機体全体のZMP姿勢安定制御が該ピッチ軸運動からの影響を受けないようにすることができる。
【0024】
また、頭部が頭ピッチ軸及び首ピッチ軸回りの自由度を以って前記機体胴体部に取り付けられている場合には、直立状態、基本立ち姿勢、並びに基本歩行姿勢において(対応路面が傾斜している場合を含む)、前記頭部の重心を前記頭ピッチ軸と重力加速度ベクトルで構成される平面上に設定することにより、直立状態において基本立ち上げ姿勢と抱き上げ状態を経る間における安定な姿勢遷移を実現することができる。
【0025】
また、直立状態、基本立ち姿勢、並びに基本歩行姿勢において(対応路面が傾斜している場合を含む)、前記頭部ピッチ軸及び前記ピッチ軸間の部位の重心を前記頭ピッチ軸と重力加速度ベクトルで構成される平面上に設定することにより、直立状態において基本立ち上げ姿勢と抱き上げ状態を経る間における安定な姿勢遷移を実現することができる。
【0026】
また、頭部が頭ピッチ軸及び頭ロール軸回りの自由度を以って前記機体胴体部に取り付けられている場合には、前記頭ピッチ軸及び前記頭ロール軸間の部位の重心を前記頭ピッチ軸上に設定することにより、前記頭ピッチ軸回りの運動による前記頭ピッチ軸回りのモーメントの発生を軽減して、機体全体のZMP姿勢安定制御が該ピッチ軸運動からの影響を受けないようにすることができる。
【0027】
また、頭部が頭ヨー軸及び頭ピッチ軸回りの自由度を以って前記機体胴体部に取り付けられている場合には、前記頭ヨー軸及び前記頭ピッチ軸間の部位の重心を前記頭ヨー軸上に設定することにより、頭ヨー軸回りの運動によるヨー軸モーメントの発生を軽減して、機体全体のZMP姿勢安定制御が該ヨー軸運動からの影響を受けないようにすることができる。
【0028】
また、頭部が首ピッチ軸及び頭ヨー軸回りの自由度を以って前記機体胴体部に取り付けられている場合には、前記首ピッチ軸及び前記頭ヨー軸間の部位の重心は前記首ピッチ軸上に設定することにより、前記首ピッチ軸回りの運動による前記首ピッチ軸回りのモーメントの発生を軽減することにより、機体全体のZMP姿勢安定制御が該ピッチ軸運動からの影響を受けないようにすることができる。
【0029】
また、本発明に係る脚式移動ロボットは、前記機体胴体部には腕部が取り付けられているとともに、前記腕部の略末端には手首ヨー軸回りの自由度を以って手部が取り付けられていてもよい。このような場合、前記手部の重心を前記手首ヨー軸上に設定することにより、手首ヨー軸回りの運動時において、該ヨー軸回りのモーメントの発生を軽減して、機体全体のZMP姿勢安定制御が該ピッチ軸運動からの影響を受けないようにすることができる。
【0030】
また、本発明に係る脚式移動ロボットは、股関節ピッチ軸及び膝ピッチ軸回りの自由度を備えた脚部が前記機体胴体部に取り付けられていてもよい。このような場合、基本立ち姿勢と抱き上げ(直立状態)姿勢間における前記股関節ピッチ軸と前記ピッチ軸間の部位の重心を前記股関節ピッチ軸と重力加速度ベクトルで構成される平面上に設定することにより、直立状態において基本立ち上げ姿勢と抱き上げ状態を経る間における安定な姿勢遷移を実現することができる。
【0031】
また、前記脚部はさらに股関節ロール軸回りの自由度を備えていてもよい。このような場合、前記股関節ロール軸と前記股関節ピッチ軸間の部位の重心を前記股関節ロール軸上に設定することにより、股関節ロール軸回りの運動時において、該ヨー軸回りのモーメントの発生を軽減して、機体全体のZMP姿勢安定制御が該ピッチ軸運動からの影響を受けないようにすることができる。
【0032】
また、前記脚部の略下端には足首ピッチ軸回りの自由度を以って足部が取り付けられていてもよい。このような場合、基本立ち姿勢と抱き上げ(直立状態)姿勢間における前記膝ピッチ軸と前記足首ピッチ軸間の部位の重心を前記膝関節ピッチ軸と重力加速度ベクトルで構成される平面上に設定することにより、直立状態において基本立ち上げ姿勢と抱き上げ状態を経る間における安定な姿勢遷移を実現することができる。
【0033】
また、前記足部はさらに足首ロール軸回りの自由度を備えていてもよい。このような場合、基本立ち姿勢と抱き上げ(直立状態)姿勢間における前記股関節ロール軸と前記足首ロール軸間の部位の重心を前記股関節ロール軸と重力加速度ベクトルで構成される平面上に設定することにより、直立状態において基本立ち上げ姿勢と抱き上げ状態を経る間における安定な姿勢遷移を実現することができる。
【0034】
また、前記足首ピッチ軸と前記足首ロール軸間の部位の重心を前記足首ピッチ軸上に設定することにより、足首ピッチ軸回りの運動時において、該ピッチ軸回りのモーメントの発生を軽減して、機体全体のZMP姿勢安定制御が該ピッチ軸運動からの影響を受けないようにすることができる。
【0035】
また、基本立ち姿勢と抱き上げ(直立状態)姿勢間における前記足首ロール軸より末端の部位の重心を前記足首ロール軸と重力加速度ベクトルで構成される平面上に設定することにより、直立状態において基本立ち上げ姿勢と抱き上げ状態を経る間における安定な姿勢遷移を実現することができる。
【0036】
また、前記足首ロール軸より末端の部位の重心を前記足首ロール軸上に設定することにより、足首ロール軸回りの運動時において該ロール軸回りのモーメントの発生を軽減して、機体全体のZMP姿勢安定制御が該ピッチ軸運動からの影響を受けないようにすることができる。
【0037】
また、基本立ち姿勢と抱き上げ(直立状態)姿勢間における前記足首ピッチ軸より末端の部位の重心を前記足首ピッチ軸と重力加速度ベクトルで構成される平面上に設定することにより、直立状態において基本立ち上げ姿勢と抱き上げ状態を経る間における安定な姿勢遷移を実現することができる。
【0038】
また、前記足首ピッチ軸より末端の部位の重心を前記足首ピッチ軸上に設定することにより、足首ピッチ軸回りの運動時における該ピッチ軸回りのモーメントの発生を軽減して、機体全体のZMP姿勢安定制御が該ピッチ軸運動からの影響を受けないようにすることができる。
【発明の効果】
【0039】
本発明によれば、機体の姿勢安定制御の観点から機体の各部位毎の質量分布が最適化された、優れた脚式移動ロボットを提供することができる。
【0040】
本発明のさらに他の目的、特徴や利点は、後述する本発明の実施形態や添付する図面に基づくより詳細な説明によって明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の実施に供される脚式移動ロボットが直立している様子を前方から眺望した様子を示した図である。
【図2】本発明の実施に供される脚式移動ロボットが直立している様子を後方から眺望した様子を示した図である。
【図3】脚式移動ロボットが具備する関節自由度構成を模式的に示した図である。
【図4】脚式移動ロボット100の制御システム構成を模式的に示した図である。
【図5】本実施形態に係る脚式移動ロボットの運動系が持つ基本状態遷移を示した図である。
【図6】脚式移動ロボット100の基本仰向け姿勢を示した図である。
【図7】脚式移動ロボット100の基本うつ伏せ姿勢を示した図である。
【図8】脚式移動ロボット100の基本立ち姿勢を示した図である。
【図9】脚式移動ロボット100の基本歩行姿勢を示した図である。
【図10】脚式移動ロボット100の機体重心の位置を示した図である。
【図11A】脚式移動ロボット100が基本仰向け姿勢から起き上がり動作を行なっている様子を示した図である。
【図11B】脚式移動ロボット100が基本仰向け姿勢から起き上がり動作を行なっている様子を示した図である。
【図11C】脚式移動ロボット100が基本仰向け姿勢から起き上がり動作を行なっている様子を示した図である。
【図11D】脚式移動ロボット100が基本仰向け姿勢から起き上がり動作を行なっている様子を示した図である。
【図11E】脚式移動ロボット100が基本仰向け姿勢から起き上がり動作を行なっている様子を示した図である。
【図11F】脚式移動ロボット100が基本仰向け姿勢から起き上がり動作を行なっている様子を示した図である。
【図12A】脚式移動ロボット100が基本仰向け姿勢から起き上がり動作を行なっている様子を示した図である。
【図12B】脚式移動ロボット100が基本仰向け姿勢から起き上がり動作を行なっている様子を示した図である。
【図12C】脚式移動ロボット100が基本仰向け姿勢から起き上がり動作を行なっている様子を示した図である。
【図12D】脚式移動ロボット100が基本仰向け姿勢から起き上がり動作を行なっている様子を示した図である。
【図12E】脚式移動ロボット100が基本仰向け姿勢から起き上がり動作を行なっている様子を示した図である。
【図12F】脚式移動ロボット100が基本仰向け姿勢から起き上がり動作を行なっている様子を示した図である。
【図13A】脚式移動ロボット100が基本仰向け姿勢から起き上がり動作を行なっている様子を示した図である。
【図13B】脚式移動ロボット100が基本仰向け姿勢から起き上がり動作を行なっている様子を示した図である。
【図13C】脚式移動ロボット100が基本仰向け姿勢から起き上がり動作を行なっている様子を示した図である。
【図13D】脚式移動ロボット100が基本仰向け姿勢から起き上がり動作を行なっている様子を示した図である。
【図13E】脚式移動ロボット100が基本仰向け姿勢から起き上がり動作を行なっている様子を示した図である。
【図13F】脚式移動ロボット100が基本仰向け姿勢から起き上がり動作を行なっている様子を示した図である。
【図14A】脚式移動ロボット100が基本うつ伏せ姿勢から起き上がり動作を行なっている様子を示した図である。
【図14B】脚式移動ロボット100が基本うつ伏せ姿勢から起き上がり動作を行なっている様子を示した図である。
【図14C】脚式移動ロボット100が基本うつ伏せ姿勢から起き上がり動作を行なっている様子を示した図である。
【図14D】脚式移動ロボット100が基本うつ伏せ姿勢から起き上がり動作を行なっている様子を示した図である。
【図14E】脚式移動ロボット100が基本うつ伏せ姿勢から起き上がり動作を行なっている様子を示した図である。
【図14F】脚式移動ロボット100が基本うつ伏せ姿勢から起き上がり動作を行なっている様子を示した図である。
【図14G】脚式移動ロボット100が基本うつ伏せ姿勢から起き上がり動作を行なっている様子を示した図である。
【図15A】脚式移動ロボット100が基本うつ伏せ姿勢から起き上がり動作を行なっている様子を示した図である。
【図15B】脚式移動ロボット100が基本うつ伏せ姿勢から起き上がり動作を行なっている様子を示した図である。
【図15C】脚式移動ロボット100が基本うつ伏せ姿勢から起き上がり動作を行なっている様子を示した図である。
【図15D】脚式移動ロボット100が基本うつ伏せ姿勢から起き上がり動作を行なっている様子を示した図である。
【図15E】脚式移動ロボット100が基本うつ伏せ姿勢から起き上がり動作を行なっている様子を示した図である。
【図15F】脚式移動ロボット100が基本うつ伏せ姿勢から起き上がり動作を行なっている様子を示した図である。
【図16A】脚式移動ロボット100が基本うつ伏せ姿勢から起き上がり動作を行なっている様子を示した図である。
【図16B】脚式移動ロボット100が基本うつ伏せ姿勢から起き上がり動作を行なっている様子を示した図である。
【図16C】脚式移動ロボット100が基本うつ伏せ姿勢から起き上がり動作を行なっている様子を示した図である。
【図16D】脚式移動ロボット100が基本うつ伏せ姿勢から起き上がり動作を行なっている様子を示した図である。
【図16E】脚式移動ロボット100が基本うつ伏せ姿勢から起き上がり動作を行なっている様子を示した図である。
【図16F】脚式移動ロボット100が基本うつ伏せ姿勢から起き上がり動作を行なっている様子を示した図である。
【図17】首関節ロール軸3より上の部位における重心の所在を示した図である。
【図18】首関節ヨー軸1よりも上の部位における重心の所在を示した図である。
【図19】第1の首関節ピッチ軸2Aよりも上の部位における重心の所在を示した図である。
【図20】第1の首関節ピッチ軸2Aと第2の首関節ピッチ軸2Bの間の部位における重心の所在を示した図である。
【図21】第2の首関節ピッチ軸2Bと首関節ロール軸3の間の部位における重心の所在を示した図である。
【図22】首関節ヨー軸1から第2の首関節ピッチ軸2Bの間の部位における重心の所在を示した図である。
【図23】第1の首関節ピッチ軸2Aと首関節ヨー軸1の間の部位における重心の所在を示した図である。
【図24A】第1の首関節ピッチ軸2A回りに頭部が運動する様子を示した図である。
【図24B】第1の首関節ピッチ軸2A回りに頭部が運動する様子を示した図である。
【図24C】第1の首関節ピッチ軸2A回りに頭部が運動する様子を示した図である。
【図25】表2に示したような質量分布に従ってモータやフレーム、電子回路基板が配置されたロボット頭部の内部構成を示した図である。
【図26】図25からフレームのみを抽出して描いた図である。
【図27】図25から首関節ヨー軸1、第1の首関節ピッチ軸2A、第2の首関節(頭)ピッチ軸2B、及び首関節ロール軸3の各関節軸駆動用モータのみを抽出して描いた図である。
【図28】手首ヨー軸8よりも先端の部位における重心の所在を示した図である。
【図29】上腕ヨー軸6と手首ヨー軸の間の部位における重心の所在を示した図である。
【図30】肩ロール軸5より先端の部位における重心の所在を示した図である。
【図31】肘ピッチ軸7より先端の部位における重心の所在を示した図である。
【図32】肩ピッチ軸4と肘ピッチ軸7の間の部位における重心の所在を示した図である。
【図33】肘ピッチ軸7と手首ヨー軸8の間の部位における重心の所在を示した図である。
【図34】上腕ヨー軸6と肘ピッチ軸7の間の部位における重心の所在を示した図である。
【図35】肩ロール軸5と上腕ヨー軸6の間の部位における重心の所在を示した図である。
【図36】肩ピッチ軸4と肩ロール軸5の間の部位における重心の所在を示した図である。
【図37】表3に示したような質量分布に従ってモータやフレームが配置された腕部の内部構成を示した図である。
【図38】図37から腕部のフレームのみ(手先を含む)を抽出して描いた図である。
【図39】図37から肩関節ロール軸5、上腕ヨー軸6、肘ピッチ軸7、手首関節ヨー軸8の各関節軸駆動用モータ、並びに手先を抽出して描いた図である。
【図40】体幹ピッチ軸9と第1の首関節ピッチ軸2Aの間の部位における重心の所在を示した図である。
【図41】体幹ピッチ軸9と第1の首関節ピッチ軸2Aの間の部位における重心の所在を示した図である。
【図42】体幹ロール軸10と体幹ピッチ軸9の間の部位における重心の所在を示した図である。
【図43】股関節ピッチ軸12と膝ピッチ軸14の間の部位における重心の所在を示した図である。
【図44】股関節ロール軸13と股関節ピッチ軸12の間の部位における重心の所在を示した図である。
【図45】膝関節ピッチ軸14と足首ピッチ軸15の間の部位における重心の所在を示した図である。
【図46】股関節ロール軸13と足首関節ロール軸16の間の部位における重心の所在を示した図である。
【図47】足首ピッチ軸15と足首ロール軸16の間の部位における重心の所在を示した図である。
【図48】足首ロール軸16より先端の部位における重心の所在を示した図である。
【図49】足首ロール軸16より先端の部位における重心の所在を示した図である。
【図50】足首ピッチ軸15より先端の部位における重心の所在を示した図である。
【図51】足首ピッチ軸15より先端の部位における重心の所在を示した図である。
【図52】表5に示したような質量分布に従ってモータやフレームが配置された脚部の内部構成を示した図である。
【図53】図52から脚部のフレームのみを抽出して描いた図である。
【図54】図52から股関節ピッチ軸12、股関節ロール軸13、膝ピッチ軸14、足首ピッチ軸15、足首ロール軸16の各関節軸駆動用モータを抽出して描いた図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳解する。
【0043】
A.脚式移動ロボットの機械的構成
図1及び図2には本発明の実施に供される「人間形」又は「人間型」の脚式移動ロボット100が直立している様子を前方及び後方の各々から眺望した様子を示している。図示の通り、脚式移動ロボット100は、胴体部と、頭部と、左右の上肢部と、脚式移動を行う左右2足の下肢部とで構成され、例えば胴体に内蔵されている制御部(図示しない)により機体の動作を統括的にコントロールするようになっている。
【0044】
左右各々の下肢は、大腿部と、膝関節と、脛部と、足首と、足平とで構成され、股関節によって体幹部の略最下端にて連結されている。また、左右各々の上肢は、上腕と、肘関節と、前腕とで構成され、肩関節によって体幹部の上方の左右各側縁にて連結されている。また、頭部は、首関節によって体幹部の略最上端中央に連結されている。
【0045】
制御部は、この脚式移動ロボット100を構成する各関節アクチュエータの駆動制御や各センサ(後述)などからの外部入力を処理するコントローラ(主制御部)や、電源回路その他の周辺機器類を搭載した筐体である。制御部は、その他、遠隔操作用の通信インターフェースや通信装置を含んでいてもよい。
【0046】
このように構成された脚式移動ロボット100は、制御部による全身協調的な動作制御により、2足歩行を実現することができる。かかる2足歩行は、一般に、以下に示す各動作期間に分割される歩行周期を繰り返すことによって行われる。すなわち、
【0047】
(1)右脚を持ち上げた、左脚による単脚支持期
(2)右足が接地した両脚支持期
(3)左脚を持ち上げた、右脚による単脚支持期
(4)左足が接地した両脚支持期
【0048】
脚式移動ロボット100における歩行制御は、あらかじめ下肢の目標軌道を計画し、上記の各期間において計画軌道の修正を行うことによって実現される。すなわち、両脚支持期では、下肢軌道の修正を停止して、計画軌道に対する総修正量を用いて腰の高さを一定値で修正する。また、単脚支持期では、修正を受けた脚の足首と腰との相対位置関係を計画軌道に復帰させるように修正軌道を生成する。
【0049】
歩行動作の軌道修正を始めとして、機体の姿勢安定制御には、一般に、ZMP(Zero Moment Point)に対する偏差を小さくするための位置、速度、及び加速度が連続となるように、5次多項式を用いた補間計算により行う。ZMPを歩行の安定度判別の規範として用いている。ZMPによる安定度判別規範は、歩行系から路面には重力と慣性力、並びにこれらのモーメントが路面から歩行系への反作用としての床反力並びに床反力モーメントとバランスするという「ダランベールの原理」に基づく。力学的推論の帰結として、足底接地点と路面の形成する支持多角形(すなわちZMP安定領域)の辺上あるいはその内側にピッチ軸及びロール軸モーメントがゼロとなる点、すなわちZMPが存在する。
【0050】
図3には、この脚式移動ロボット100が具備する関節自由度構成を模式的に示している。同図に示すように、脚式移動ロボット100は、2本の腕部と頭部1を含む上肢と、移動動作を実現する2本の脚部からなる下肢と、上肢と下肢とを連結する体幹部とで構成された、複数の肢を備えた構造体である。
【0051】
頭部を支持する首関節(Neck)は、首関節ヨー軸1と、第1及び第2の首関節ピッチ軸2A及び2Bと、首関節ロール軸3という3自由度を有している。
【0052】
また、各腕部は、その自由度として、肩(Shoulder)における肩関節ピッチ軸4と、肩関節ロール軸5と、上腕ヨー軸6、肘(Elbow)における肘関節ピッチ軸7と、手首(Wrist)における手首関節ヨー軸8と、手部とで構成される。手部は、実際には、複数本の指を含む多関節・多自由度構造体である。
【0053】
また、体幹部(Trunk)は、体幹ピッチ軸9と、体幹ロール軸10という2自由度を有する。
【0054】
また、下肢を構成する各々の脚部は、股関節(Hip)における股関節ヨー軸11と、股関節ピッチ軸12と、股関節ロール軸13と、膝(Knee)における膝関節ピッチ軸14と、足首(Ankle)における足首関節ピッチ軸15と、足首関節ロール軸16と、足部とで構成される。
【0055】
但し、エンターティンメント向けの脚式移動ロボット100が上述したすべての自由度を装備しなければならない訳でも、あるいはこれに限定される訳でもない。設計・製作上の制約条件や要求仕様などに応じて、自由度すなわち関節数を適宜増減することができることは言うまでもない。
【0056】
上述したような脚式移動ロボット100が持つ各自由度は、実際にはアクチュエータを用いて実装される。外観上で余分な膨らみを排してヒトの自然体形状に近似させること、2足歩行という不安定構造体に対して姿勢制御を行うことなどの要請から、アクチュエータは小型且つ軽量であることが好ましい。本実施形態では、ギア直結型で且つサーボ制御系をワンチップ化してモータ・ユニットに内蔵したタイプの小型ACサーボ・アクチュエータを搭載することとした(この種のACサーボ・アクチュエータに関しては、例えば本出願人に既に譲渡されている特開2000−299970号公報に開示されている)。本実施形態では、直結ギアとして低減速ギアを採用することにより、人間との物理的インタラクションを重視するタイプのロボット100に求められている駆動系自身の受動的特性を得ている。また、低減速器は高減速器に比し軽量であることから、質量分布の調整・管理が容易になるという利点もある。
【0057】
B.脚式移動ロボットの制御システム構成
図4には、脚式移動ロボット100の制御システム構成を模式的に示している。同図に示すように、脚式移動ロボット100は、ヒトの四肢を表現した各機構ユニット30,40,50R/L,60R/Lと、各機構ユニット間の協調動作を実現するための適応制御を行う制御ユニット80とで構成される(但し、R及びLの各々は、右及び左の各々を示す接尾辞である。以下同様)。
【0058】
脚式移動ロボット100全体の動作は、制御ユニット80によって統括的に制御される。制御ユニット80は、CPU(Central Processing Unit)やメモリ等の主要回路コンポーネント(図示しない)で構成される主制御部81と、電源回路やロボット100の各構成要素とのデータやコマンドの授受を行うインターフェース(いずれも図示しない)などを含んだ周辺回路82とで構成される。
【0059】
本発明を実現する上で、この制御ユニット80の設置場所は特に限定されない。図4では体幹部ユニット40に搭載されているが、頭部ユニット30に搭載してもよい。あるいは、脚式移動ロボット100外に制御ユニット80を配備して、脚式移動ロボット100の機体とは有線若しくは無線で交信するようにしてもよい。
【0060】
図3に示した脚式移動ロボット100内の各関節自由度は、それぞれに対応するアクチュエータによって実現される。すなわち、頭部ユニット30には、首関節ヨー軸1、第1及び第2の首関節ピッチ軸2A及び2B、首関節ロール軸3の各々を表現する首関節ヨー軸アクチュエータA1、第1の首関節ピッチ軸アクチュエータA2A、第2の首関節ピッチ軸アクチュエータA2B、首関節ロール軸アクチュエータA3が配設されている。
【0061】
また、体幹部ユニット40には、体幹ピッチ軸9、体幹ロール軸10の各々を表現する体幹ピッチ軸アクチュエータA9、体幹ロール軸アクチュエータA10が配備されている。
【0062】
また、腕部ユニット50R/Lは、上腕ユニット51R/Lと、肘関節ユニット52R/Lと、前腕ユニット53R/Lに細分化されるが、肩関節ピッチ軸4、肩関節ロール軸5、上腕ヨー軸6、肘関節ピッチ軸7、手首関節ヨー軸8の各々を表現する肩関節ピッチ軸アクチュエータA4、肩関節ロール軸アクチュエータA5、上腕ヨー軸アクチュエータA6、肘関節ピッチ軸アクチュエータA7、手首関節ヨー軸アクチュエータA8が配備されている。
【0063】
また、脚部ユニット60R/Lは、大腿部ユニット61R/Lと、膝ユニット62R/Lと、脛部ユニット63R/Lに細分化されるが、股関節ヨー軸11、股関節ピッチ軸12、股関節ロール軸13、膝関節ピッチ軸14、足首関節ピッチ軸15、足首関節ロール軸16の各々を表現する股関節ヨー軸アクチュエータA11、股関節ピッチ軸アクチュエータA12、股関節ロール軸アクチュエータA13、膝関節ピッチ軸アクチュエータA14、足首関節ピッチ軸アクチュエータA15、足首関節ロール軸アクチュエータA16が配備されている。
【0064】
各関節に用いられるアクチュエータA1,A2,A3…は、より好ましくは、ギア直結型で且つサーボ制御系をワンチップ化してモータ・ユニット内に搭載したタイプの小型ACサーボ・アクチュエータ(前述)で構成することができる。
【0065】
頭部ユニット30、体幹部ユニット40、腕部ユニット50、各脚部ユニット60など各機構ユニットに対して、アクチュエータ駆動制御用の副制御部35,45,55,65が配備されている。
【0066】
機体の体幹部40には、加速度センサ95と姿勢センサ96が配設されている。加速度センサ95は、X,Y,Z各軸方向に配置する。機体の腰部に加速度センサ95を配設することによって、質量操作量が大きな部位である腰部を制御目標点として設定して、その位置における姿勢や加速度を直接計測して、ZMPに基づく姿勢安定制御を行なうことができる。
【0067】
また、各脚部60R,Lには、接地確認センサ91及び92と、加速度センサ93,94がそれぞれ配設されている。接地確認センサ91及び92は、例えば足底に圧力センサを装着することにより構成され、床反力の有無により足底が着床したか否かを検出することができる。また、加速度センサ93,94は、少なくともX及びYの各軸方向に配置する。左右の足部に加速度センサ93,94を配設することにより、ZMP位置に最も近い足部で直接ZMP方程式を組み立てることができる。
【0068】
質量操作量が大きな部位である腰部にのみ加速度センサを配置した場合、腰部のみが制御目標点に設定され、足部の状態は、この制御目標点の計算結果を基に相対的に算出しなければならず、足部と路面との間では以下の条件を満たすことが、前提となってしまう。
【0069】
(1)路面はどんな力やトルクが作用しても動くことがない。
(2)路面での並進に対する摩擦係数は充分に大きく、滑りが生じない。
【0070】
これに対し、本実施形態では、上述したように、路面との接触部位である足部にZMPと力を直接する反力センサ・システム(床反力センサなど)を配備するとともに、制御に用いるローカル座標とその座標を直接的に計測するための加速度センサを配設する。この結果、ZMP位置に最も近い足部で直接ZMP方程式を組み立てることができ、上述したような前提条件に依存しない、より厳密な姿勢安定制御を高速で実現することができる。したがって、力やトルクが作用すると路面が動いてしまう砂利上や毛足の長い絨毯上や、並進の摩擦係数が充分に確保できずに滑りが生じ易い住居のタイルなどであっても、機体の安定歩行(運動)を保証することができる。
【0071】
主制御部80は、各センサ91〜93の出力に応答して制御目標をダイナミックに補正することができる。より具体的には、副制御部35、45、55、65の各々に対して適応的な制御を行い、脚式移動ロボット100の上肢、体幹、及び下肢が協調して駆動する全身運動パターンを実現する。
【0072】
ロボット100の機体上での全身運動は、足部運動、ZMP軌道、体幹運動、上肢運動、腰部高さなどを設定するとともに、これらの設定内容に従った動作を指示するコマンドを各副制御部35、45、55、65に転送する。そして、各々の副制御部35、45、…では、主制御部81からの受信コマンドを解釈して、各アクチュエータA1、A2、A3、…に対して駆動制御信号を出力する。ここで言う「ZMP」とは、歩行中の床反力によるモーメントがゼロとなる床面上の点のことであり、また、「ZMP軌道」とは、例えばロボット100の歩行動作期間中にZMPが動く軌跡を意味する(前述)。
【0073】
C.脚式移動ロボットの運動系基本状態遷移
本実施形態に係る脚式移動ロボットの制御システムは、複数の基本姿勢を定義する。各々の基本姿勢は、機体の安定性や、消費エネルギ、次の状態への遷移を考慮して定義されており、基本姿勢間の遷移という形態により機体運動を効率的に制御することができる。
【0074】
図5には、本実施形態に係る脚式移動ロボットの運動系が持つ基本状態遷移を示している。同図に示すように、脚式移動ロボットは、基本仰向け姿勢、基本立ち姿勢、基本歩行姿勢、基本座り姿勢、基本うつ伏せ姿勢がそれぞれ仰向け時、立脚時、歩行準備時、着席時、及びうつ伏せ時における機体の安定性や、消費エネルギ、次の状態への遷移を考慮して定義されている。
【0075】
これら基本姿勢は、機体の動作制御プログラムのプラットフォームに位置付けられる。また、脚式移動ロボットは、立ち姿勢などにおいて、歩行や跳躍、ダンスなど全身動作を利用した各種のパフォーマンスを行なうが、その装置制御プログラムは、プラットフォーム上で動作するアプリケーションとして位置付けられる。これらアプリケーション・プログラムは、外部記憶から随時ロードされ、主制御部81によって実行される。
【0076】
図6には、脚式移動ロボット100の基本仰向け姿勢を示している。本実施形態では、機体への電源投入時には基本仰向け姿勢をとり、転倒などの心配がなく機械運動的に最も安定した状態からの起動を行うことができる。また、脚式移動ロボットは、起動時だけでなくシステム動作の終了時も基本仰向け姿勢に復帰するようになっている。したがって、機械運動学的に機体が最も安定した状態で作業を開始するとともに、最も安定した状態で作業を終了することから、脚式移動ロボットの動作オペレーションは自己完結的となる。
【0077】
勿論、機体の転倒時においても、床上での所定のモーションを経て一旦基本仰向け姿勢に戻った後に、規定の立ち上がり動作を実行することにより、基本立ち姿勢を介して、作業中断時の元の姿勢を回復することができる。
【0078】
また、本実施形態に係る脚式移動ロボットは、床上での基本姿勢として、基本仰向け姿勢の他に、図7に示したような基本うつ伏せ姿勢を備えている。この基本うつ伏せ姿勢は、基本仰向け姿勢と同様に、機械運動学的に機体が最も安定した状態であり、電源が遮断された脱力状態においても姿勢安定性を維持することができる。例えば、脚式作業において不測の外力などにより機体が転倒した場合、仰向け又はうつ伏せのいずれの状態で落下するか不明なので、本実施形態では、このように2通りの床上基本姿勢を規定している。
【0079】
基本仰向け姿勢と基本うつ伏せ姿勢の間は、各種の床上姿勢を経て可逆的に遷移することができる。逆に言えば、これら基本仰向け姿勢と基本うつ伏せ姿勢を基準にして各種の床上姿勢へ円滑に状態遷移することができる。
【0080】
基本仰向け姿勢は、機械運動学的には最も安定した基本姿勢であるが、脚式作業を考慮した場合、円滑な状態遷移を行うことはできない。そこで、図8に示すような基本立ち姿勢が定義されている。基本立ち姿勢を定義することで、その後の脚式作業へ滞りなく移行することができる。
【0081】
基本立ち姿勢は、立ち状態で最も安定した状態であり、姿勢安定制御のための計算機負荷や消費電力が最小又は極小となるような姿勢であり、膝を伸展させることにより直立状態を保つためのモータ・トルクを最小限に抑えている。この基本立ち姿勢から各種の立ち姿勢へ円滑に状態遷移して、たとえば上肢を利用したダンス・パフォーマンスなどを実演することができる。
【0082】
他方、基本立ち姿勢は、姿勢安定性に優れているがこのまま歩行など脚式作業に移行するためには最適化されていない。そこで、本実施形態に係る脚式移動ロボットは、立脚状態の他の基本姿勢として、図9に示すような基本歩行姿勢を定義している。
【0083】
基本立ち姿勢において、股関節、膝関節、並びに足首関節の各ピッチ軸12、14、15を駆動して、機体の重心位置を少し落とす格好にすることによって、基本歩行姿勢に遷移する。基本歩行姿勢では、通常の歩行動作を始めとして各種の脚式動作への遷移を円滑に行なうことができる。但し、膝を屈曲させた分だけ、この姿勢を維持するためのトルクが余分に必要とならことから、基本歩行姿勢は、基本立ち姿勢に比し消費電力は増大する。
【0084】
基本立ち姿勢は、機体のZMP位置はZMP安定領域の中心付近にあり、膝の曲げ角が小さくエネルギ消費量が低い姿勢である。これに対し、基本歩行姿勢では、ZMP位置が安定領域の中心付近にあるが、高い路面適応性、高い外力適応性を確保するために膝の曲げ角を比較的大きくとっている。
【0085】
また、本実施形態に係る脚式移動ロボットでは、さらに基本座り姿勢が定義されている。この基本座り姿勢(図示しない)では、所定の椅子に腰掛けたときに、姿勢安定制御のための計算機負荷や消費電力が最小又は極小となるような姿勢である。前述した、基本仰向け姿勢、基本うつ伏せ姿勢、並びに基本立ち姿勢からは、可逆的に基本姿勢へ遷移することができる。また、基本座り姿勢並びに基本立ち姿勢からは、各種の座り姿勢へと円滑に移行することができ、座り姿勢で例えば状態のみを用いた各種のパフォーマンスを実演することができる。
【0086】
D.機体の質量分布
ロボットの機構設計を行なう上で、機体の質量分布を充分に考慮しないと、姿勢安定制御や消費電力の点で不利となる。例えば、基本的な姿勢である直立状態やその他の静的な姿勢において余計な負荷がかかるような質量分布をとっていると、姿勢安定制御が困難となり、消費電力の増大にもなる。
【0087】
また、上肢や下肢、頭部など、機体の各部位について質量分布が最適化されていないと、単に特定の部位だけを動作させただけでもモーメントが生成して、機体全体に作用を及ぼし、ZMP釣合い方程式に余分な項を作ってしまうことになる。この結果、姿勢安定制御を複雑にしてしまい、計算機コストの増大を招来してしまう。
【0088】
そこで、本実施形態に係る脚式移動ロボット100においては、基本姿勢間の円滑な移行や、各部位の動作時におけるモーメントの発生などを考慮して、機体全体、並びに各部位についての質量分布を最適化している。
【0089】
D−1.機体全体の質量分布
機体全体の重心は、直立状態、基本立ち姿勢、並びに基本歩行姿勢において(対応路面が傾斜している場合を含む)、X軸座標は股関節ピッチ軸12に、Y軸座標は左右の股関節ロール軸13の中点に、Z軸座標は股関節ロール軸13と体幹ロール軸10の間に設定している(図10を参照のこと)。
【0090】
【表1】
【0091】
このような機体全体の重心位置の配置は、主として安定な起動、起き上がり動作を確保するためである。
【0092】
図11〜図13には、脚式移動ロボット100が基本仰向け姿勢から起き上がり動作を行なっている様子を示している。また、図14〜図16には、脚式移動ロボット100が基本うつ伏せ姿勢から起き上がり動作を行なっている様子を示している。
【0093】
脚式移動ロボット100は、外力モーメントが最小となる動作パターンよりなる起き上がり動作を行なう。これは、図示の通りZMP支持多角形が最小となるような姿勢を時系列的に組み合わせることによって実現する。
【0094】
また、図示の起き上がり動作は、体幹部を姿勢安定制御の目標位置にして動作シーケンスが組まれている。したがって、表1に示すような位置の機体重心を設定することにより、安定な起動と起き上がり動作を確保することができる。
【0095】
D−2.頭部の質量分布
頭部における質量分布を以下に示す。
【0096】
【表2】
【0097】
首関節ロール軸3より上の部位の重心は、首関節ロール軸3上に設定している(図17を参照のこと)。これによって、直立状態において基本立ち上げ姿勢と抱き上げ状態を経る間における安定な姿勢遷移を実現することができる。また、首ロール運動によるロール軸モーメントの発生量を軽減することにより、機体全体のZMP姿勢安定制御が首ロール運動からの影響を受けないようにすることができる。
【0098】
また、首関節ヨー軸1より上の部位の重心は、首関節ヨー軸1上に設定している(図18を参照のこと)。これによって、首関節ヨー軸回りのモーメントの発生量を軽減することにより、機体全体のZMP姿勢安定制御が該ピッチ軸運動からの影響を受けないようにすることができる。
【0099】
また、第1の首関節ピッチ軸2Aよりも上の部位の重心は、直立状態、基本立ち姿勢、並びに基本歩行姿勢において(対応路面が傾斜している場合を含む)、頭関節ピッチ軸2Bと重力加速度ベクトルで構成される平面上に設定している(図19を参照のこと)。これによって、直立状態において基本立ち上げ姿勢と抱き上げ状態を経る間における安定な姿勢遷移を実現することができる。
【0100】
また、第1の首関節ピッチ軸2Aと第2の首関節ピッチ軸2B間の部位の重心は、直立状態、基本立ち姿勢、又は基本歩行姿勢において(対応路面が傾斜している場合を含む)、頭関節ピッチ軸2Bと重力加速度ベクトルで構成される平面上に設定している(図20を参照のこと)。これによって、直立状態において基本立ち上げ姿勢と抱き上げ状態を経る間における安定な姿勢遷移を実現することができる。
【0101】
また、第2の首関節ピッチ軸2Bと首関節ロール軸3間の部位の重心は、首関節ピッチ軸2B上に設定している(図21を参照のこと)。これによって、第2の首関節ピッチ軸2B回りの運動時において、該ピッチ軸回りのモーメントの発生を軽減することにより、機体全体のZMP姿勢安定制御が該ピッチ軸運動からの影響を受けないようにすることができる。
【0102】
また、首関節ヨー軸1から第2の首関節ピッチ軸2B間の部位の重心は、該首関節ピッチ軸2B上に設定している(図22を参照のこと)。これによって、首関節ヨー軸1回りの運動によるヨー軸モーメントの発生を軽減することにより、機体全体のZMP姿勢安定制御が該ヨー軸運動からの影響を受けないようにすることができる。
【0103】
また、第1の首関節ピッチ軸2Aと首関節ヨー軸1間の部位の重心は、該首関節ピッチ軸2A上に設定している(図23を参照のこと)。これによって、第1の首関節ピッチ軸2A回りに頭部が運動するときに(図24を参照のこと)、該ピッチ軸回りのモーメントの発生を軽減することにより、機体全体のZMP姿勢安定制御が該ピッチ軸運動からの影響を受けないようにすることができる。
【0104】
図25には、表2に示したような質量分布に従ってモータやフレーム、電子回路基板などの各重量物が好適に配置されたロボット頭部の内部構成を図解している。
【0105】
また、図26には、図25からフレームのみを抽出して描いている。また、図27には、図25から首関節ヨー軸1、第1の首関節ピッチ軸2A、第2の首関節(頭)ピッチ軸2B、及び首関節ロール軸3の各関節軸駆動用モータのみを抽出して描いている。これらの部品が配置される位置関係は、表2に示した質量分布に従って決定されている点に充分留意されたい。
【0106】
D−3.腕部の質量分布
腕部における質量分布を以下に示す。
【0107】
【表3】
【0108】
手首ヨー軸8よりも先端の部位の重心は、手首ヨー軸8上に設定している(図28を参照のこと)。これによって、手首ヨー軸8回りの運動時において、該ヨー軸回りのモーメントの発生を軽減することにより、機体全体のZMP姿勢安定制御が該ピッチ軸運動からの影響を受けないようにすることができる。
【0109】
また、上腕ヨー軸6と手首ヨー軸間の部位の重心は、上腕ヨー軸6上に設定している(図29を参照のこと)。これによって、上腕ヨー軸6回りの運動時において、該ヨー軸回りのモーメントの発生を軽減することにより、機体全体のZMP姿勢安定制御が該ピッチ軸運動からの影響を受けないようにすることができる。
【0110】
また、肩ロール軸5より先端の部位の重心は、直立状態、基本立ち姿勢、又は基本歩行姿勢において(対応路面が傾斜している場合を含む)、肩ロール軸5と重力加速度ベクトルで構成される平面上に設定している(図30を参照のこと)。これによって、直立状態において基本立ち上げ姿勢と抱き上げ状態を経る間における安定な姿勢遷移を実現することができる。
【0111】
また、肘ピッチ軸7より先端の部位の重心は、直立状態、基本立ち姿勢、又は基本歩行姿勢において(対応路面が傾斜している場合を含む)、肘ピッチ軸7と重力加速度ベクトルで構成される平面上に設定している(図31を参照のこと)。これによって、直立状態において基本立ち上げ姿勢と抱き上げ状態を経る間における安定な姿勢遷移を実現することができる。
【0112】
また、肩ピッチ軸4と肘ピッチ軸7の間の部位の重心は、直立状態、基本立ち姿勢、又は基本歩行姿勢において(対応路面が傾斜している場合を含む)、肩ピッチ軸4と重力加速度ベクトルで構成される平面上に設定している(図32を参照のこと)。これによって、直立状態において基本立ち上げ姿勢と抱き上げ状態を経る間における安定な姿勢遷移を実現することができる。
【0113】
また、肘ピッチ軸7と手首ヨー軸8の間の部位の重心は、肘ピッチ軸7上に設定している(図33を参照のこと)。これによって、肘ピッチ軸7回りの運動時において、該ピッチ軸回りのモーメントの発生を軽減することにより、機体全体のZMP姿勢安定制御が該ピッチ軸運動からの影響を受けないようにすることができる。
【0114】
また、上腕ヨー軸6と肘ピッチ軸7の間の部位の重心は、上腕ヨー軸6上に設定している(図34を参照のこと)。これによって、上腕ヨー軸6回りの運動時において、該ヨー軸回りのモーメントの発生を軽減することにより、機体全体のZMP姿勢安定制御が該ピッチ軸運動からの影響を受けないようにすることができる。
【0115】
また、肩ロール軸5と上腕ヨー軸6の間の部位の重心は、直立状態、基本立ち姿勢、又は基本歩行姿勢において(対応路面が傾斜している場合を含む)、肩ロール軸5と重力加速度ベクトルで構成される平面上に設定している(図35を参照のこと)。これによって、直立状態において基本立ち上げ姿勢と抱き上げ状態を経る間における安定な姿勢遷移を実現することができる。
【0116】
また、肩ピッチ軸4と肩ロール軸5の間の部位の重心は、肩ピッチ軸4上に設定している(図36を参照のこと)。これによって、肩ピッチ軸4回りの運動時において、該ピッチ軸回りのモーメントの発生を軽減することにより、機体全体のZMP姿勢安定制御が該ピッチ軸運動からの影響を受けないようにすることができる。
【0117】
図37には、表3に示したような質量分布に従ってモータやフレームが配置された腕部の内部構成を図解している。
【0118】
また、図38には、図37から腕部のフレームのみ(手先を含む)を抽出して描いている。また、図39には、図37から肩関節ロール軸5、上腕ヨー軸6、肘ピッチ軸7、手首関節ヨー軸8の各関節軸駆動用モータ、並びに手先を抽出して描いている。これらの部品が配置される位置関係は、表3に示した質量分布に従って決定されている点に充分留意されたい。
【0119】
D−4.胴体部の質量分布
胴体部における質量分布を以下に示す。
【0120】
【表4】
【0121】
体幹ピッチ軸9と第1の首関節ピッチ軸2Aの間の部位の重心は、取っ手と重力加速度ベクトルで構成される平面上に設定している(図40を参照のこと)。これによって、直立状態において基本立ち上げ姿勢と抱き上げ状態を経る間における安定な姿勢遷移を実現することができる。
【0122】
また、体幹ピッチ軸9と第1の首関節ピッチ軸2Aの間の部位の重心は、直立状態、基本立ち姿勢、又は基本歩行姿勢において(対応路面が傾斜している場合を含む)、第1の首関節ピッチ軸2Aと重力加速度ベクトルで構成される平面上に設定している(図41を参照のこと)。これによって、X方向における外乱適応と移動機能の股関節と体幹ピッチ軸可動角度を最大限に活用することが可能となる。
【0123】
また、体幹ロール軸10と体幹ピッチ軸9の間の部位の重心は、体幹ロール軸10上に設定している(図42を参照のこと)。これによって、体幹ロール軸10回りの運動時において、該ロール軸回りのモーメントの発生を軽減することにより、機体全体のZMP姿勢安定制御が該ピッチ軸運動からの影響を受けないようにすることができる。
【0124】
D−5.脚部の質量分布
脚部における質量分布を以下に示す。
【0125】
【表5】
【0126】
股関節ピッチ軸12と膝ピッチ軸14の間の部位の重心は、基本立ち姿勢と抱き上げ(直立状態)姿勢間で、股関節ピッチ軸と重力加速度ベクトルで構成される平面上に設定されている(図43を参照のこと)。これによって、直立状態において基本立ち上げ姿勢と抱き上げ状態を経る間における安定な姿勢遷移を実現することができる。
【0127】
また、股関節ロール軸13と股関節ピッチ軸12の間の部位の重心は、股関節ロール軸13上に設定されている(図44を参照のこと)。これによって、股関節ロール軸13回りの運動時において、該ヨー軸回りのモーメントの発生を軽減することにより、機体全体のZMP姿勢安定制御が該ピッチ軸運動からの影響を受けないようにすることができる。
【0128】
また、膝関節ピッチ軸14と足首ピッチ軸15の間の部位の重心は、基本立ち姿勢と抱き上げ(直立状態)姿勢間で、膝関節ピッチ軸14と重力加速度ベクトルで構成される平面上に設定している(図45を参照のこと)。これによって、直立状態において基本立ち上げ姿勢と抱き上げ状態を経る間における安定な姿勢遷移を実現することができる。
【0129】
また、股関節ロール軸13と足首関節ロール軸16の間の部位の重心は、基本立ち姿勢と抱き上げ(直立状態)姿勢間で、股関節ロール軸13と重力加速度ベクトルで構成される平面上に設定している(図46を参照のこと)。これによって、直立状態において基本立ち上げ姿勢と抱き上げ状態を経る間における安定な姿勢遷移を実現することができる。
【0130】
また、足首ピッチ軸15と足首ロール軸16の間の部位の重心は、足首ピッチ軸15上に設定している(図47を参照のこと)。これによって、足首ピッチ軸15回りの運動時において、該ピッチ軸回りのモーメントの発生を軽減することにより、機体全体のZMP姿勢安定制御が該ピッチ軸運動からの影響を受けないようにすることができる。
【0131】
また、足首ロール軸16より先端の部位の重心は、基本立ち姿勢と抱き上げ(直立状態)姿勢間で、足首ロール軸16と重力加速度ベクトルで構成される平面上に設定している(図48を参照のこと)。これによって、直立状態において基本立ち上げ姿勢と抱き上げ状態を経る間における安定な姿勢遷移を実現することができる。
【0132】
また、足首ロール軸16より先端の部位の重心は、足首ロール軸16上に設定している(図49を参照のこと)。これによって、足首ロール軸16回りの運動時において、該ロール軸回りのモーメントの発生を軽減することにより、機体全体のZMP姿勢安定制御が該ピッチ軸運動からの影響を受けないようにすることができる。
【0133】
また、足首ピッチ軸15より先端の部位の重心は、基本立ち姿勢と抱き上げ(直立状態)姿勢間で、足首ピッチ軸15と重力加速度ベクトルで構成される平面上に設定している(図50を参照のこと)。これによって、直立状態において基本立ち上げ姿勢と抱き上げ状態を経る間における安定な姿勢遷移を実現することができる。
【0134】
また、足首ピッチ軸15より先端の部位の重心は、足首ピッチ軸15上に設定している(図51を参照のこと)。これによって、足首ピッチ軸15回りの運動時において、該ピッチ軸回りのモーメントの発生を軽減することにより、機体全体のZMP姿勢安定制御が該ピッチ軸運動からの影響を受けないようにすることができる。
【0135】
図52には、表5に示したような質量分布に従ってモータやフレームが配置された脚部の内部構成を図解している。
【0136】
また、図53には、図52から脚部のフレームのみを抽出して描いている。また、図54には、図52から股関節ピッチ軸12、股関節ロール軸13、膝ピッチ軸14、足首ピッチ軸15、足首ロール軸16の各関節軸駆動用モータを抽出して描いている。これらの部品が配置される位置関係は、表5に示した質量分布に従って決定されている点に充分留意されたい。
【産業上の利用可能性】
【0137】
以上、特定の実施例を参照しながら、本発明について詳解してきた。しかしながら、本発明の要旨を逸脱しない範囲で当業者が該実施例の修正や代用を成し得ることは自明である。
【0138】
本発明の要旨は、必ずしも「ロボット」と称される製品には限定されない。すなわち、電気的若しくは磁気的な作用を用いて人間の動作に似せた運動を行う機械装置であるならば、例えば玩具等のような他の産業分野に属する製品であっても、同様に本発明を適用することができる。
【0139】
要するに、例示という形態で本発明を開示してきたのであり、本明細書の記載内容を限定的に解釈するべきではない。本発明の要旨を判断するためには、特許請求の範囲の記載を参酌すべきである。
【符号の説明】
【0140】
1…首関節ヨー軸
2A…第1の首関節ピッチ軸、2B…第2の首関節(頭)ピッチ軸
3…首関節ロール軸、4…肩関節ピッチ軸、5…肩関節ロール軸
6…上腕ヨー軸、7…肘関節ピッチ軸、8…手首関節ヨー軸
9…体幹ピッチ軸、10…体幹ロール軸、11…股関節ヨー軸
12…股関節ピッチ軸、13…股関節ロール軸、14…膝関節ピッチ軸
15…足首関節ピッチ軸、16…足首関節ロール軸
30…頭部ユニット、40…体幹部ユニット
50…腕部ユニット、51…上腕ユニット
52…肘関節ユニット、53…前腕ユニット
60…脚部ユニット、61…大腿部ユニット
62…膝関節ユニット、63…脛部ユニット
80…制御ユニット、81…主制御部、82…周辺回路
91、92…接地確認センサ
93、94…加速度センサ
95…姿勢センサ、96…加速度センサ、100…脚式移動ロボット
【技術分野】
【0001】
本発明は、多軸の関節自由度を備えたロボットに係り、特に、可動脚を備えて直立するタイプの脚式移動ロボットに関する。
【0002】
さらに詳しくは、本発明は、姿勢安定制御や基本姿勢の維持などの観点から機体が最適に設計された脚式移動ロボットに係り、特に、姿勢安定制御や基本姿勢の維持などの観点から機体の各部位毎の質量分布が最適化された脚式移動ロボットに関する。
【背景技術】
【0003】
電気的若しくは磁気的な作用を用いて人間の動作に似せた運動を行う機械装置のことを「ロボット」という。ロボットの語源は、スラブ語の“ROBOTA(奴隷機械)”に由来すると言われている。わが国では、ロボットが普及し始めたのは1960年代末からであるが、その多くは、工場における生産作業の自動化・無人化などを目的としたマニピュレータや搬送ロボットなどの産業用ロボット(industrial robot)であった。
【0004】
最近では、イヌやネコのように4足歩行の動物の身体メカニズムやその動作を模したペット型ロボット、あるいは、ヒトのような2足直立歩行を行う動物の身体メカニズムや動作をモデルにしてデザインされた「人間形」若しくは「人間型」と呼ばれるロボット(humanoid robot)など、脚式移動ロボットに関する研究開発が進展し、実用化への期待も高まってきている。
【0005】
脚式移動ロボットは、多数の関節自由度を備え、関節の動きをアクチュエータ・モータで実現し、各関節アクチュエータをフレームで連結することによって構成される。このようなアクチュエータ・モータとしては、取扱いが容易で、小型・高トルクで、しかも応答性に優れたサーボ・モータが利用される。特に、ACサーボ・モータは、ブラシがなく、メンテナンス・フリーであることから、自ら行動計画を立案して自由歩行を行う脚式ロボットの関節アクチュエータなどに適用することができる。
【0006】
通常のロボット構成では、1つの関節自由度を1つのアクチュエータ・モータで実現する。一方、犬や猫、熊などの4足歩行の動物、あるいは人間のように2足歩行の動物の動作メカニズムに近似したリアリステッィクな脚式ロボットを構成するためには、可能な限り生体に近似した関節自由度を供えていることが好ましい。
【0007】
ロボットの機体上には、関節アクチュエータ、駆動電源としてのバッテリ、制御回路基板などさまざまな重量物が存在する。
【0008】
ロボットの機構設計を行なう上で、機体の質量分布を充分に考慮しないと、姿勢安定制御や消費電力の点で不利となる。例えば、基本的な姿勢である直立状態やその他の静的な姿勢において余計な負荷がかかるような質量分布をとっていると、次の姿勢遷移まで待機しているだけの期間であっても、常に姿勢安定制御を実行しなければならず、計算機への負荷は過大である。また、基本姿勢においても、常に姿勢維持のために関節軸アクチュエータがトルクを発生しなければならなくなり、消費電力の浪費になる。
【0009】
特に、2足直立歩行の脚式ロボットの場合、基本的な立ち姿勢においても常に姿勢安定制御を行なうとともに、姿勢維持するために膝関節アクチュエータのトルクを生成しなければならず、計算機負荷と装置駆動電力を消耗する。さらに質量分布のバランスがとれていない場合には、姿勢安定制御は複雑さを増すとともにアクチュエータの駆動電力はさらに増大してしまう。
【0010】
また、多くの場合、脚式移動ロボットの姿勢安定制御には、足底接地点と路面の形成する支持多角形の辺上あるいはその内側にモーメントがゼロとなる点を探索するというZMP安定度判別規範を用いる。このような場合、ロボットの機体に印加される各モーメントの釣合い関係を記述したZMP方程式を導出して、このZMP方程式上で現れるモーメント・エラーを打ち消すように機体の目標軌道を修正する。
【0011】
ところが、上肢や下肢、頭部など、機体の各部位について質量分布が最適化されていないと、単に特定の部位だけを動作させただけでもモーメントが生成して、機体全体に作用を及ぼし、ZMP釣合い方程式に余分な項を作ってしまうことになる。この結果、姿勢安定制御を複雑にしてしまい、計算機コストの増大を招来してしまう。
【0012】
従来のロボット設計では、駆動系の配置が重視してなされており、質量分布の最適化は充分なされていなかった。例えば、アクチュエータ・モータ、伝達用ベルト、高減速器の順で関節軸に駆動力が付加されるという構成が一般に採用されている。この場合、アクチュエータ・モータの他に、高減速比を得るための高減速器も重量物となる。したがって、多数の関節からなる脚式移動ロボットにおいては、バランスよく重量物を配置することはますます困難となる。
【0013】
質量の大きな第1の電動モータを脚部側に取り付けることを避けて慣性質量を防止するとともに、軸線に比較的近接して配置し垂直軸回りの慣性モーメントを低減する脚式歩行ロボットについて提案がなされている(例えば、特許文献1を参照のこと)。しかしながら、機体全体の重心をどこに設置するかも、ZMPを安定度判別規範に用いることも、第1の電動モータの取り付け位置によってZMP方程式の項数がどう増減するかについて開示されていない。
【0014】
また、重力に起因する膝関節を曲げるモーメントの発生が発生しないように、起立したロボット全体の重心Gから下ろした鉛直線が膝関節の回転軸と交わるように構成したロボットの関節装置について提案がなされている(例えば、特許文献2を参照のこと)。しかしながら、「ロボット全体の重心Gから下ろした鉛直線が膝関節の回転軸aと交わる」とは、機体の重心のZ方向が膝関節の回転軸と交わるものであって、基体の重心のX方向の位置が股関節の回転軸に設定されることとも、Z方向の位置が股関節ロール軸と体幹ロール軸の間に設定されることとも相違する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開平3−184782号公報
【特許文献2】特開2002−36153号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は上述したような技術的課題を鑑みたものであり、その主な目的は、機体の質量分布が最適化された、優れた脚式移動ロボットを提供することにある。
【0017】
本発明のさらなる目的は、機体の姿勢安定制御の観点から機体の各部位毎の質量分布が最適化された、優れた脚式移動ロボットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、上記課題を参酌してなされたものであり、可動脚を備えて直立するタイプの脚式移動ロボットであって、
機体本体部と、前記機体本体部に対して所定の関節軸回りの自由度を以って取り付けられた機体末端部とを備え、
前記機体末端部の重心は前記関節軸上に設定されている、
ことを特徴とする脚式移動ロボットである。
【0019】
このように前記機体末端部の重心は前記関節軸上に設定することによって、前記機体末端部の関節回りの回転運動による関節軸回りのモーメントの発生量を軽減することにより、機体全体のZMP姿勢安定制御が前記機体末端部の運動からの影響を受けないようにすることができる。この結果、ZMP釣合い方程式に余分な項を作ることがなくなり、姿勢安定制御が簡単化される。
【0020】
また、本発明に係る脚式移動ロボットは、股関節ピッチ軸及び股関節ロール軸回りの自由度を以って前記機体胴体部に取り付けられた左右の可動脚をさらに備えていてもよい。このような場合、機体全体の重心が前記股関節ピッチ軸上で左右の前記股関節ロール軸の略中点上に設定することにより、主として安定な起動、起き上がり動作を確保することができる。
【0021】
また、本発明に係る脚式移動ロボットは、前記機体胴体部において体幹ロール軸回りの自由度を備えていてもよい。このような場合、直立状態、基本立ち姿勢、並びに基本歩行姿勢において(対応路面が傾斜している場合を含む)、機体全体の重心を前記股関節ロール軸と前記体幹ロール軸の間に設定することにより、主として安定な起動、起き上がり動作を確保することができる。
【0022】
また、本発明に係る脚式移動ロボットは、頭ロール軸回りの自由度を以って前記機体胴体部に取り付けられた頭部をさらに備えていてもよい。このような場合、前記頭部の重心を前記頭ロール軸上に設定することにより、直立状態において基本立ち上げ姿勢と抱き上げ状態を経る間における安定な姿勢遷移を実現することができる。また、首ロール運動によるロール軸モーメントの発生量を軽減することにより、機体全体のZMP姿勢安定制御が首ロール運動からの影響を受けないようにすることができる。
【0023】
また、頭部が頭ヨー軸回りの自由度を以って前記機体胴体部に取り付けられている場合には、前記頭部の重心を前記頭ヨー軸上に設定することにより、首関節ヨー軸回りのモーメントの発生量を軽減して、機体全体のZMP姿勢安定制御が該ピッチ軸運動からの影響を受けないようにすることができる。
【0024】
また、頭部が頭ピッチ軸及び首ピッチ軸回りの自由度を以って前記機体胴体部に取り付けられている場合には、直立状態、基本立ち姿勢、並びに基本歩行姿勢において(対応路面が傾斜している場合を含む)、前記頭部の重心を前記頭ピッチ軸と重力加速度ベクトルで構成される平面上に設定することにより、直立状態において基本立ち上げ姿勢と抱き上げ状態を経る間における安定な姿勢遷移を実現することができる。
【0025】
また、直立状態、基本立ち姿勢、並びに基本歩行姿勢において(対応路面が傾斜している場合を含む)、前記頭部ピッチ軸及び前記ピッチ軸間の部位の重心を前記頭ピッチ軸と重力加速度ベクトルで構成される平面上に設定することにより、直立状態において基本立ち上げ姿勢と抱き上げ状態を経る間における安定な姿勢遷移を実現することができる。
【0026】
また、頭部が頭ピッチ軸及び頭ロール軸回りの自由度を以って前記機体胴体部に取り付けられている場合には、前記頭ピッチ軸及び前記頭ロール軸間の部位の重心を前記頭ピッチ軸上に設定することにより、前記頭ピッチ軸回りの運動による前記頭ピッチ軸回りのモーメントの発生を軽減して、機体全体のZMP姿勢安定制御が該ピッチ軸運動からの影響を受けないようにすることができる。
【0027】
また、頭部が頭ヨー軸及び頭ピッチ軸回りの自由度を以って前記機体胴体部に取り付けられている場合には、前記頭ヨー軸及び前記頭ピッチ軸間の部位の重心を前記頭ヨー軸上に設定することにより、頭ヨー軸回りの運動によるヨー軸モーメントの発生を軽減して、機体全体のZMP姿勢安定制御が該ヨー軸運動からの影響を受けないようにすることができる。
【0028】
また、頭部が首ピッチ軸及び頭ヨー軸回りの自由度を以って前記機体胴体部に取り付けられている場合には、前記首ピッチ軸及び前記頭ヨー軸間の部位の重心は前記首ピッチ軸上に設定することにより、前記首ピッチ軸回りの運動による前記首ピッチ軸回りのモーメントの発生を軽減することにより、機体全体のZMP姿勢安定制御が該ピッチ軸運動からの影響を受けないようにすることができる。
【0029】
また、本発明に係る脚式移動ロボットは、前記機体胴体部には腕部が取り付けられているとともに、前記腕部の略末端には手首ヨー軸回りの自由度を以って手部が取り付けられていてもよい。このような場合、前記手部の重心を前記手首ヨー軸上に設定することにより、手首ヨー軸回りの運動時において、該ヨー軸回りのモーメントの発生を軽減して、機体全体のZMP姿勢安定制御が該ピッチ軸運動からの影響を受けないようにすることができる。
【0030】
また、本発明に係る脚式移動ロボットは、股関節ピッチ軸及び膝ピッチ軸回りの自由度を備えた脚部が前記機体胴体部に取り付けられていてもよい。このような場合、基本立ち姿勢と抱き上げ(直立状態)姿勢間における前記股関節ピッチ軸と前記ピッチ軸間の部位の重心を前記股関節ピッチ軸と重力加速度ベクトルで構成される平面上に設定することにより、直立状態において基本立ち上げ姿勢と抱き上げ状態を経る間における安定な姿勢遷移を実現することができる。
【0031】
また、前記脚部はさらに股関節ロール軸回りの自由度を備えていてもよい。このような場合、前記股関節ロール軸と前記股関節ピッチ軸間の部位の重心を前記股関節ロール軸上に設定することにより、股関節ロール軸回りの運動時において、該ヨー軸回りのモーメントの発生を軽減して、機体全体のZMP姿勢安定制御が該ピッチ軸運動からの影響を受けないようにすることができる。
【0032】
また、前記脚部の略下端には足首ピッチ軸回りの自由度を以って足部が取り付けられていてもよい。このような場合、基本立ち姿勢と抱き上げ(直立状態)姿勢間における前記膝ピッチ軸と前記足首ピッチ軸間の部位の重心を前記膝関節ピッチ軸と重力加速度ベクトルで構成される平面上に設定することにより、直立状態において基本立ち上げ姿勢と抱き上げ状態を経る間における安定な姿勢遷移を実現することができる。
【0033】
また、前記足部はさらに足首ロール軸回りの自由度を備えていてもよい。このような場合、基本立ち姿勢と抱き上げ(直立状態)姿勢間における前記股関節ロール軸と前記足首ロール軸間の部位の重心を前記股関節ロール軸と重力加速度ベクトルで構成される平面上に設定することにより、直立状態において基本立ち上げ姿勢と抱き上げ状態を経る間における安定な姿勢遷移を実現することができる。
【0034】
また、前記足首ピッチ軸と前記足首ロール軸間の部位の重心を前記足首ピッチ軸上に設定することにより、足首ピッチ軸回りの運動時において、該ピッチ軸回りのモーメントの発生を軽減して、機体全体のZMP姿勢安定制御が該ピッチ軸運動からの影響を受けないようにすることができる。
【0035】
また、基本立ち姿勢と抱き上げ(直立状態)姿勢間における前記足首ロール軸より末端の部位の重心を前記足首ロール軸と重力加速度ベクトルで構成される平面上に設定することにより、直立状態において基本立ち上げ姿勢と抱き上げ状態を経る間における安定な姿勢遷移を実現することができる。
【0036】
また、前記足首ロール軸より末端の部位の重心を前記足首ロール軸上に設定することにより、足首ロール軸回りの運動時において該ロール軸回りのモーメントの発生を軽減して、機体全体のZMP姿勢安定制御が該ピッチ軸運動からの影響を受けないようにすることができる。
【0037】
また、基本立ち姿勢と抱き上げ(直立状態)姿勢間における前記足首ピッチ軸より末端の部位の重心を前記足首ピッチ軸と重力加速度ベクトルで構成される平面上に設定することにより、直立状態において基本立ち上げ姿勢と抱き上げ状態を経る間における安定な姿勢遷移を実現することができる。
【0038】
また、前記足首ピッチ軸より末端の部位の重心を前記足首ピッチ軸上に設定することにより、足首ピッチ軸回りの運動時における該ピッチ軸回りのモーメントの発生を軽減して、機体全体のZMP姿勢安定制御が該ピッチ軸運動からの影響を受けないようにすることができる。
【発明の効果】
【0039】
本発明によれば、機体の姿勢安定制御の観点から機体の各部位毎の質量分布が最適化された、優れた脚式移動ロボットを提供することができる。
【0040】
本発明のさらに他の目的、特徴や利点は、後述する本発明の実施形態や添付する図面に基づくより詳細な説明によって明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の実施に供される脚式移動ロボットが直立している様子を前方から眺望した様子を示した図である。
【図2】本発明の実施に供される脚式移動ロボットが直立している様子を後方から眺望した様子を示した図である。
【図3】脚式移動ロボットが具備する関節自由度構成を模式的に示した図である。
【図4】脚式移動ロボット100の制御システム構成を模式的に示した図である。
【図5】本実施形態に係る脚式移動ロボットの運動系が持つ基本状態遷移を示した図である。
【図6】脚式移動ロボット100の基本仰向け姿勢を示した図である。
【図7】脚式移動ロボット100の基本うつ伏せ姿勢を示した図である。
【図8】脚式移動ロボット100の基本立ち姿勢を示した図である。
【図9】脚式移動ロボット100の基本歩行姿勢を示した図である。
【図10】脚式移動ロボット100の機体重心の位置を示した図である。
【図11A】脚式移動ロボット100が基本仰向け姿勢から起き上がり動作を行なっている様子を示した図である。
【図11B】脚式移動ロボット100が基本仰向け姿勢から起き上がり動作を行なっている様子を示した図である。
【図11C】脚式移動ロボット100が基本仰向け姿勢から起き上がり動作を行なっている様子を示した図である。
【図11D】脚式移動ロボット100が基本仰向け姿勢から起き上がり動作を行なっている様子を示した図である。
【図11E】脚式移動ロボット100が基本仰向け姿勢から起き上がり動作を行なっている様子を示した図である。
【図11F】脚式移動ロボット100が基本仰向け姿勢から起き上がり動作を行なっている様子を示した図である。
【図12A】脚式移動ロボット100が基本仰向け姿勢から起き上がり動作を行なっている様子を示した図である。
【図12B】脚式移動ロボット100が基本仰向け姿勢から起き上がり動作を行なっている様子を示した図である。
【図12C】脚式移動ロボット100が基本仰向け姿勢から起き上がり動作を行なっている様子を示した図である。
【図12D】脚式移動ロボット100が基本仰向け姿勢から起き上がり動作を行なっている様子を示した図である。
【図12E】脚式移動ロボット100が基本仰向け姿勢から起き上がり動作を行なっている様子を示した図である。
【図12F】脚式移動ロボット100が基本仰向け姿勢から起き上がり動作を行なっている様子を示した図である。
【図13A】脚式移動ロボット100が基本仰向け姿勢から起き上がり動作を行なっている様子を示した図である。
【図13B】脚式移動ロボット100が基本仰向け姿勢から起き上がり動作を行なっている様子を示した図である。
【図13C】脚式移動ロボット100が基本仰向け姿勢から起き上がり動作を行なっている様子を示した図である。
【図13D】脚式移動ロボット100が基本仰向け姿勢から起き上がり動作を行なっている様子を示した図である。
【図13E】脚式移動ロボット100が基本仰向け姿勢から起き上がり動作を行なっている様子を示した図である。
【図13F】脚式移動ロボット100が基本仰向け姿勢から起き上がり動作を行なっている様子を示した図である。
【図14A】脚式移動ロボット100が基本うつ伏せ姿勢から起き上がり動作を行なっている様子を示した図である。
【図14B】脚式移動ロボット100が基本うつ伏せ姿勢から起き上がり動作を行なっている様子を示した図である。
【図14C】脚式移動ロボット100が基本うつ伏せ姿勢から起き上がり動作を行なっている様子を示した図である。
【図14D】脚式移動ロボット100が基本うつ伏せ姿勢から起き上がり動作を行なっている様子を示した図である。
【図14E】脚式移動ロボット100が基本うつ伏せ姿勢から起き上がり動作を行なっている様子を示した図である。
【図14F】脚式移動ロボット100が基本うつ伏せ姿勢から起き上がり動作を行なっている様子を示した図である。
【図14G】脚式移動ロボット100が基本うつ伏せ姿勢から起き上がり動作を行なっている様子を示した図である。
【図15A】脚式移動ロボット100が基本うつ伏せ姿勢から起き上がり動作を行なっている様子を示した図である。
【図15B】脚式移動ロボット100が基本うつ伏せ姿勢から起き上がり動作を行なっている様子を示した図である。
【図15C】脚式移動ロボット100が基本うつ伏せ姿勢から起き上がり動作を行なっている様子を示した図である。
【図15D】脚式移動ロボット100が基本うつ伏せ姿勢から起き上がり動作を行なっている様子を示した図である。
【図15E】脚式移動ロボット100が基本うつ伏せ姿勢から起き上がり動作を行なっている様子を示した図である。
【図15F】脚式移動ロボット100が基本うつ伏せ姿勢から起き上がり動作を行なっている様子を示した図である。
【図16A】脚式移動ロボット100が基本うつ伏せ姿勢から起き上がり動作を行なっている様子を示した図である。
【図16B】脚式移動ロボット100が基本うつ伏せ姿勢から起き上がり動作を行なっている様子を示した図である。
【図16C】脚式移動ロボット100が基本うつ伏せ姿勢から起き上がり動作を行なっている様子を示した図である。
【図16D】脚式移動ロボット100が基本うつ伏せ姿勢から起き上がり動作を行なっている様子を示した図である。
【図16E】脚式移動ロボット100が基本うつ伏せ姿勢から起き上がり動作を行なっている様子を示した図である。
【図16F】脚式移動ロボット100が基本うつ伏せ姿勢から起き上がり動作を行なっている様子を示した図である。
【図17】首関節ロール軸3より上の部位における重心の所在を示した図である。
【図18】首関節ヨー軸1よりも上の部位における重心の所在を示した図である。
【図19】第1の首関節ピッチ軸2Aよりも上の部位における重心の所在を示した図である。
【図20】第1の首関節ピッチ軸2Aと第2の首関節ピッチ軸2Bの間の部位における重心の所在を示した図である。
【図21】第2の首関節ピッチ軸2Bと首関節ロール軸3の間の部位における重心の所在を示した図である。
【図22】首関節ヨー軸1から第2の首関節ピッチ軸2Bの間の部位における重心の所在を示した図である。
【図23】第1の首関節ピッチ軸2Aと首関節ヨー軸1の間の部位における重心の所在を示した図である。
【図24A】第1の首関節ピッチ軸2A回りに頭部が運動する様子を示した図である。
【図24B】第1の首関節ピッチ軸2A回りに頭部が運動する様子を示した図である。
【図24C】第1の首関節ピッチ軸2A回りに頭部が運動する様子を示した図である。
【図25】表2に示したような質量分布に従ってモータやフレーム、電子回路基板が配置されたロボット頭部の内部構成を示した図である。
【図26】図25からフレームのみを抽出して描いた図である。
【図27】図25から首関節ヨー軸1、第1の首関節ピッチ軸2A、第2の首関節(頭)ピッチ軸2B、及び首関節ロール軸3の各関節軸駆動用モータのみを抽出して描いた図である。
【図28】手首ヨー軸8よりも先端の部位における重心の所在を示した図である。
【図29】上腕ヨー軸6と手首ヨー軸の間の部位における重心の所在を示した図である。
【図30】肩ロール軸5より先端の部位における重心の所在を示した図である。
【図31】肘ピッチ軸7より先端の部位における重心の所在を示した図である。
【図32】肩ピッチ軸4と肘ピッチ軸7の間の部位における重心の所在を示した図である。
【図33】肘ピッチ軸7と手首ヨー軸8の間の部位における重心の所在を示した図である。
【図34】上腕ヨー軸6と肘ピッチ軸7の間の部位における重心の所在を示した図である。
【図35】肩ロール軸5と上腕ヨー軸6の間の部位における重心の所在を示した図である。
【図36】肩ピッチ軸4と肩ロール軸5の間の部位における重心の所在を示した図である。
【図37】表3に示したような質量分布に従ってモータやフレームが配置された腕部の内部構成を示した図である。
【図38】図37から腕部のフレームのみ(手先を含む)を抽出して描いた図である。
【図39】図37から肩関節ロール軸5、上腕ヨー軸6、肘ピッチ軸7、手首関節ヨー軸8の各関節軸駆動用モータ、並びに手先を抽出して描いた図である。
【図40】体幹ピッチ軸9と第1の首関節ピッチ軸2Aの間の部位における重心の所在を示した図である。
【図41】体幹ピッチ軸9と第1の首関節ピッチ軸2Aの間の部位における重心の所在を示した図である。
【図42】体幹ロール軸10と体幹ピッチ軸9の間の部位における重心の所在を示した図である。
【図43】股関節ピッチ軸12と膝ピッチ軸14の間の部位における重心の所在を示した図である。
【図44】股関節ロール軸13と股関節ピッチ軸12の間の部位における重心の所在を示した図である。
【図45】膝関節ピッチ軸14と足首ピッチ軸15の間の部位における重心の所在を示した図である。
【図46】股関節ロール軸13と足首関節ロール軸16の間の部位における重心の所在を示した図である。
【図47】足首ピッチ軸15と足首ロール軸16の間の部位における重心の所在を示した図である。
【図48】足首ロール軸16より先端の部位における重心の所在を示した図である。
【図49】足首ロール軸16より先端の部位における重心の所在を示した図である。
【図50】足首ピッチ軸15より先端の部位における重心の所在を示した図である。
【図51】足首ピッチ軸15より先端の部位における重心の所在を示した図である。
【図52】表5に示したような質量分布に従ってモータやフレームが配置された脚部の内部構成を示した図である。
【図53】図52から脚部のフレームのみを抽出して描いた図である。
【図54】図52から股関節ピッチ軸12、股関節ロール軸13、膝ピッチ軸14、足首ピッチ軸15、足首ロール軸16の各関節軸駆動用モータを抽出して描いた図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳解する。
【0043】
A.脚式移動ロボットの機械的構成
図1及び図2には本発明の実施に供される「人間形」又は「人間型」の脚式移動ロボット100が直立している様子を前方及び後方の各々から眺望した様子を示している。図示の通り、脚式移動ロボット100は、胴体部と、頭部と、左右の上肢部と、脚式移動を行う左右2足の下肢部とで構成され、例えば胴体に内蔵されている制御部(図示しない)により機体の動作を統括的にコントロールするようになっている。
【0044】
左右各々の下肢は、大腿部と、膝関節と、脛部と、足首と、足平とで構成され、股関節によって体幹部の略最下端にて連結されている。また、左右各々の上肢は、上腕と、肘関節と、前腕とで構成され、肩関節によって体幹部の上方の左右各側縁にて連結されている。また、頭部は、首関節によって体幹部の略最上端中央に連結されている。
【0045】
制御部は、この脚式移動ロボット100を構成する各関節アクチュエータの駆動制御や各センサ(後述)などからの外部入力を処理するコントローラ(主制御部)や、電源回路その他の周辺機器類を搭載した筐体である。制御部は、その他、遠隔操作用の通信インターフェースや通信装置を含んでいてもよい。
【0046】
このように構成された脚式移動ロボット100は、制御部による全身協調的な動作制御により、2足歩行を実現することができる。かかる2足歩行は、一般に、以下に示す各動作期間に分割される歩行周期を繰り返すことによって行われる。すなわち、
【0047】
(1)右脚を持ち上げた、左脚による単脚支持期
(2)右足が接地した両脚支持期
(3)左脚を持ち上げた、右脚による単脚支持期
(4)左足が接地した両脚支持期
【0048】
脚式移動ロボット100における歩行制御は、あらかじめ下肢の目標軌道を計画し、上記の各期間において計画軌道の修正を行うことによって実現される。すなわち、両脚支持期では、下肢軌道の修正を停止して、計画軌道に対する総修正量を用いて腰の高さを一定値で修正する。また、単脚支持期では、修正を受けた脚の足首と腰との相対位置関係を計画軌道に復帰させるように修正軌道を生成する。
【0049】
歩行動作の軌道修正を始めとして、機体の姿勢安定制御には、一般に、ZMP(Zero Moment Point)に対する偏差を小さくするための位置、速度、及び加速度が連続となるように、5次多項式を用いた補間計算により行う。ZMPを歩行の安定度判別の規範として用いている。ZMPによる安定度判別規範は、歩行系から路面には重力と慣性力、並びにこれらのモーメントが路面から歩行系への反作用としての床反力並びに床反力モーメントとバランスするという「ダランベールの原理」に基づく。力学的推論の帰結として、足底接地点と路面の形成する支持多角形(すなわちZMP安定領域)の辺上あるいはその内側にピッチ軸及びロール軸モーメントがゼロとなる点、すなわちZMPが存在する。
【0050】
図3には、この脚式移動ロボット100が具備する関節自由度構成を模式的に示している。同図に示すように、脚式移動ロボット100は、2本の腕部と頭部1を含む上肢と、移動動作を実現する2本の脚部からなる下肢と、上肢と下肢とを連結する体幹部とで構成された、複数の肢を備えた構造体である。
【0051】
頭部を支持する首関節(Neck)は、首関節ヨー軸1と、第1及び第2の首関節ピッチ軸2A及び2Bと、首関節ロール軸3という3自由度を有している。
【0052】
また、各腕部は、その自由度として、肩(Shoulder)における肩関節ピッチ軸4と、肩関節ロール軸5と、上腕ヨー軸6、肘(Elbow)における肘関節ピッチ軸7と、手首(Wrist)における手首関節ヨー軸8と、手部とで構成される。手部は、実際には、複数本の指を含む多関節・多自由度構造体である。
【0053】
また、体幹部(Trunk)は、体幹ピッチ軸9と、体幹ロール軸10という2自由度を有する。
【0054】
また、下肢を構成する各々の脚部は、股関節(Hip)における股関節ヨー軸11と、股関節ピッチ軸12と、股関節ロール軸13と、膝(Knee)における膝関節ピッチ軸14と、足首(Ankle)における足首関節ピッチ軸15と、足首関節ロール軸16と、足部とで構成される。
【0055】
但し、エンターティンメント向けの脚式移動ロボット100が上述したすべての自由度を装備しなければならない訳でも、あるいはこれに限定される訳でもない。設計・製作上の制約条件や要求仕様などに応じて、自由度すなわち関節数を適宜増減することができることは言うまでもない。
【0056】
上述したような脚式移動ロボット100が持つ各自由度は、実際にはアクチュエータを用いて実装される。外観上で余分な膨らみを排してヒトの自然体形状に近似させること、2足歩行という不安定構造体に対して姿勢制御を行うことなどの要請から、アクチュエータは小型且つ軽量であることが好ましい。本実施形態では、ギア直結型で且つサーボ制御系をワンチップ化してモータ・ユニットに内蔵したタイプの小型ACサーボ・アクチュエータを搭載することとした(この種のACサーボ・アクチュエータに関しては、例えば本出願人に既に譲渡されている特開2000−299970号公報に開示されている)。本実施形態では、直結ギアとして低減速ギアを採用することにより、人間との物理的インタラクションを重視するタイプのロボット100に求められている駆動系自身の受動的特性を得ている。また、低減速器は高減速器に比し軽量であることから、質量分布の調整・管理が容易になるという利点もある。
【0057】
B.脚式移動ロボットの制御システム構成
図4には、脚式移動ロボット100の制御システム構成を模式的に示している。同図に示すように、脚式移動ロボット100は、ヒトの四肢を表現した各機構ユニット30,40,50R/L,60R/Lと、各機構ユニット間の協調動作を実現するための適応制御を行う制御ユニット80とで構成される(但し、R及びLの各々は、右及び左の各々を示す接尾辞である。以下同様)。
【0058】
脚式移動ロボット100全体の動作は、制御ユニット80によって統括的に制御される。制御ユニット80は、CPU(Central Processing Unit)やメモリ等の主要回路コンポーネント(図示しない)で構成される主制御部81と、電源回路やロボット100の各構成要素とのデータやコマンドの授受を行うインターフェース(いずれも図示しない)などを含んだ周辺回路82とで構成される。
【0059】
本発明を実現する上で、この制御ユニット80の設置場所は特に限定されない。図4では体幹部ユニット40に搭載されているが、頭部ユニット30に搭載してもよい。あるいは、脚式移動ロボット100外に制御ユニット80を配備して、脚式移動ロボット100の機体とは有線若しくは無線で交信するようにしてもよい。
【0060】
図3に示した脚式移動ロボット100内の各関節自由度は、それぞれに対応するアクチュエータによって実現される。すなわち、頭部ユニット30には、首関節ヨー軸1、第1及び第2の首関節ピッチ軸2A及び2B、首関節ロール軸3の各々を表現する首関節ヨー軸アクチュエータA1、第1の首関節ピッチ軸アクチュエータA2A、第2の首関節ピッチ軸アクチュエータA2B、首関節ロール軸アクチュエータA3が配設されている。
【0061】
また、体幹部ユニット40には、体幹ピッチ軸9、体幹ロール軸10の各々を表現する体幹ピッチ軸アクチュエータA9、体幹ロール軸アクチュエータA10が配備されている。
【0062】
また、腕部ユニット50R/Lは、上腕ユニット51R/Lと、肘関節ユニット52R/Lと、前腕ユニット53R/Lに細分化されるが、肩関節ピッチ軸4、肩関節ロール軸5、上腕ヨー軸6、肘関節ピッチ軸7、手首関節ヨー軸8の各々を表現する肩関節ピッチ軸アクチュエータA4、肩関節ロール軸アクチュエータA5、上腕ヨー軸アクチュエータA6、肘関節ピッチ軸アクチュエータA7、手首関節ヨー軸アクチュエータA8が配備されている。
【0063】
また、脚部ユニット60R/Lは、大腿部ユニット61R/Lと、膝ユニット62R/Lと、脛部ユニット63R/Lに細分化されるが、股関節ヨー軸11、股関節ピッチ軸12、股関節ロール軸13、膝関節ピッチ軸14、足首関節ピッチ軸15、足首関節ロール軸16の各々を表現する股関節ヨー軸アクチュエータA11、股関節ピッチ軸アクチュエータA12、股関節ロール軸アクチュエータA13、膝関節ピッチ軸アクチュエータA14、足首関節ピッチ軸アクチュエータA15、足首関節ロール軸アクチュエータA16が配備されている。
【0064】
各関節に用いられるアクチュエータA1,A2,A3…は、より好ましくは、ギア直結型で且つサーボ制御系をワンチップ化してモータ・ユニット内に搭載したタイプの小型ACサーボ・アクチュエータ(前述)で構成することができる。
【0065】
頭部ユニット30、体幹部ユニット40、腕部ユニット50、各脚部ユニット60など各機構ユニットに対して、アクチュエータ駆動制御用の副制御部35,45,55,65が配備されている。
【0066】
機体の体幹部40には、加速度センサ95と姿勢センサ96が配設されている。加速度センサ95は、X,Y,Z各軸方向に配置する。機体の腰部に加速度センサ95を配設することによって、質量操作量が大きな部位である腰部を制御目標点として設定して、その位置における姿勢や加速度を直接計測して、ZMPに基づく姿勢安定制御を行なうことができる。
【0067】
また、各脚部60R,Lには、接地確認センサ91及び92と、加速度センサ93,94がそれぞれ配設されている。接地確認センサ91及び92は、例えば足底に圧力センサを装着することにより構成され、床反力の有無により足底が着床したか否かを検出することができる。また、加速度センサ93,94は、少なくともX及びYの各軸方向に配置する。左右の足部に加速度センサ93,94を配設することにより、ZMP位置に最も近い足部で直接ZMP方程式を組み立てることができる。
【0068】
質量操作量が大きな部位である腰部にのみ加速度センサを配置した場合、腰部のみが制御目標点に設定され、足部の状態は、この制御目標点の計算結果を基に相対的に算出しなければならず、足部と路面との間では以下の条件を満たすことが、前提となってしまう。
【0069】
(1)路面はどんな力やトルクが作用しても動くことがない。
(2)路面での並進に対する摩擦係数は充分に大きく、滑りが生じない。
【0070】
これに対し、本実施形態では、上述したように、路面との接触部位である足部にZMPと力を直接する反力センサ・システム(床反力センサなど)を配備するとともに、制御に用いるローカル座標とその座標を直接的に計測するための加速度センサを配設する。この結果、ZMP位置に最も近い足部で直接ZMP方程式を組み立てることができ、上述したような前提条件に依存しない、より厳密な姿勢安定制御を高速で実現することができる。したがって、力やトルクが作用すると路面が動いてしまう砂利上や毛足の長い絨毯上や、並進の摩擦係数が充分に確保できずに滑りが生じ易い住居のタイルなどであっても、機体の安定歩行(運動)を保証することができる。
【0071】
主制御部80は、各センサ91〜93の出力に応答して制御目標をダイナミックに補正することができる。より具体的には、副制御部35、45、55、65の各々に対して適応的な制御を行い、脚式移動ロボット100の上肢、体幹、及び下肢が協調して駆動する全身運動パターンを実現する。
【0072】
ロボット100の機体上での全身運動は、足部運動、ZMP軌道、体幹運動、上肢運動、腰部高さなどを設定するとともに、これらの設定内容に従った動作を指示するコマンドを各副制御部35、45、55、65に転送する。そして、各々の副制御部35、45、…では、主制御部81からの受信コマンドを解釈して、各アクチュエータA1、A2、A3、…に対して駆動制御信号を出力する。ここで言う「ZMP」とは、歩行中の床反力によるモーメントがゼロとなる床面上の点のことであり、また、「ZMP軌道」とは、例えばロボット100の歩行動作期間中にZMPが動く軌跡を意味する(前述)。
【0073】
C.脚式移動ロボットの運動系基本状態遷移
本実施形態に係る脚式移動ロボットの制御システムは、複数の基本姿勢を定義する。各々の基本姿勢は、機体の安定性や、消費エネルギ、次の状態への遷移を考慮して定義されており、基本姿勢間の遷移という形態により機体運動を効率的に制御することができる。
【0074】
図5には、本実施形態に係る脚式移動ロボットの運動系が持つ基本状態遷移を示している。同図に示すように、脚式移動ロボットは、基本仰向け姿勢、基本立ち姿勢、基本歩行姿勢、基本座り姿勢、基本うつ伏せ姿勢がそれぞれ仰向け時、立脚時、歩行準備時、着席時、及びうつ伏せ時における機体の安定性や、消費エネルギ、次の状態への遷移を考慮して定義されている。
【0075】
これら基本姿勢は、機体の動作制御プログラムのプラットフォームに位置付けられる。また、脚式移動ロボットは、立ち姿勢などにおいて、歩行や跳躍、ダンスなど全身動作を利用した各種のパフォーマンスを行なうが、その装置制御プログラムは、プラットフォーム上で動作するアプリケーションとして位置付けられる。これらアプリケーション・プログラムは、外部記憶から随時ロードされ、主制御部81によって実行される。
【0076】
図6には、脚式移動ロボット100の基本仰向け姿勢を示している。本実施形態では、機体への電源投入時には基本仰向け姿勢をとり、転倒などの心配がなく機械運動的に最も安定した状態からの起動を行うことができる。また、脚式移動ロボットは、起動時だけでなくシステム動作の終了時も基本仰向け姿勢に復帰するようになっている。したがって、機械運動学的に機体が最も安定した状態で作業を開始するとともに、最も安定した状態で作業を終了することから、脚式移動ロボットの動作オペレーションは自己完結的となる。
【0077】
勿論、機体の転倒時においても、床上での所定のモーションを経て一旦基本仰向け姿勢に戻った後に、規定の立ち上がり動作を実行することにより、基本立ち姿勢を介して、作業中断時の元の姿勢を回復することができる。
【0078】
また、本実施形態に係る脚式移動ロボットは、床上での基本姿勢として、基本仰向け姿勢の他に、図7に示したような基本うつ伏せ姿勢を備えている。この基本うつ伏せ姿勢は、基本仰向け姿勢と同様に、機械運動学的に機体が最も安定した状態であり、電源が遮断された脱力状態においても姿勢安定性を維持することができる。例えば、脚式作業において不測の外力などにより機体が転倒した場合、仰向け又はうつ伏せのいずれの状態で落下するか不明なので、本実施形態では、このように2通りの床上基本姿勢を規定している。
【0079】
基本仰向け姿勢と基本うつ伏せ姿勢の間は、各種の床上姿勢を経て可逆的に遷移することができる。逆に言えば、これら基本仰向け姿勢と基本うつ伏せ姿勢を基準にして各種の床上姿勢へ円滑に状態遷移することができる。
【0080】
基本仰向け姿勢は、機械運動学的には最も安定した基本姿勢であるが、脚式作業を考慮した場合、円滑な状態遷移を行うことはできない。そこで、図8に示すような基本立ち姿勢が定義されている。基本立ち姿勢を定義することで、その後の脚式作業へ滞りなく移行することができる。
【0081】
基本立ち姿勢は、立ち状態で最も安定した状態であり、姿勢安定制御のための計算機負荷や消費電力が最小又は極小となるような姿勢であり、膝を伸展させることにより直立状態を保つためのモータ・トルクを最小限に抑えている。この基本立ち姿勢から各種の立ち姿勢へ円滑に状態遷移して、たとえば上肢を利用したダンス・パフォーマンスなどを実演することができる。
【0082】
他方、基本立ち姿勢は、姿勢安定性に優れているがこのまま歩行など脚式作業に移行するためには最適化されていない。そこで、本実施形態に係る脚式移動ロボットは、立脚状態の他の基本姿勢として、図9に示すような基本歩行姿勢を定義している。
【0083】
基本立ち姿勢において、股関節、膝関節、並びに足首関節の各ピッチ軸12、14、15を駆動して、機体の重心位置を少し落とす格好にすることによって、基本歩行姿勢に遷移する。基本歩行姿勢では、通常の歩行動作を始めとして各種の脚式動作への遷移を円滑に行なうことができる。但し、膝を屈曲させた分だけ、この姿勢を維持するためのトルクが余分に必要とならことから、基本歩行姿勢は、基本立ち姿勢に比し消費電力は増大する。
【0084】
基本立ち姿勢は、機体のZMP位置はZMP安定領域の中心付近にあり、膝の曲げ角が小さくエネルギ消費量が低い姿勢である。これに対し、基本歩行姿勢では、ZMP位置が安定領域の中心付近にあるが、高い路面適応性、高い外力適応性を確保するために膝の曲げ角を比較的大きくとっている。
【0085】
また、本実施形態に係る脚式移動ロボットでは、さらに基本座り姿勢が定義されている。この基本座り姿勢(図示しない)では、所定の椅子に腰掛けたときに、姿勢安定制御のための計算機負荷や消費電力が最小又は極小となるような姿勢である。前述した、基本仰向け姿勢、基本うつ伏せ姿勢、並びに基本立ち姿勢からは、可逆的に基本姿勢へ遷移することができる。また、基本座り姿勢並びに基本立ち姿勢からは、各種の座り姿勢へと円滑に移行することができ、座り姿勢で例えば状態のみを用いた各種のパフォーマンスを実演することができる。
【0086】
D.機体の質量分布
ロボットの機構設計を行なう上で、機体の質量分布を充分に考慮しないと、姿勢安定制御や消費電力の点で不利となる。例えば、基本的な姿勢である直立状態やその他の静的な姿勢において余計な負荷がかかるような質量分布をとっていると、姿勢安定制御が困難となり、消費電力の増大にもなる。
【0087】
また、上肢や下肢、頭部など、機体の各部位について質量分布が最適化されていないと、単に特定の部位だけを動作させただけでもモーメントが生成して、機体全体に作用を及ぼし、ZMP釣合い方程式に余分な項を作ってしまうことになる。この結果、姿勢安定制御を複雑にしてしまい、計算機コストの増大を招来してしまう。
【0088】
そこで、本実施形態に係る脚式移動ロボット100においては、基本姿勢間の円滑な移行や、各部位の動作時におけるモーメントの発生などを考慮して、機体全体、並びに各部位についての質量分布を最適化している。
【0089】
D−1.機体全体の質量分布
機体全体の重心は、直立状態、基本立ち姿勢、並びに基本歩行姿勢において(対応路面が傾斜している場合を含む)、X軸座標は股関節ピッチ軸12に、Y軸座標は左右の股関節ロール軸13の中点に、Z軸座標は股関節ロール軸13と体幹ロール軸10の間に設定している(図10を参照のこと)。
【0090】
【表1】
【0091】
このような機体全体の重心位置の配置は、主として安定な起動、起き上がり動作を確保するためである。
【0092】
図11〜図13には、脚式移動ロボット100が基本仰向け姿勢から起き上がり動作を行なっている様子を示している。また、図14〜図16には、脚式移動ロボット100が基本うつ伏せ姿勢から起き上がり動作を行なっている様子を示している。
【0093】
脚式移動ロボット100は、外力モーメントが最小となる動作パターンよりなる起き上がり動作を行なう。これは、図示の通りZMP支持多角形が最小となるような姿勢を時系列的に組み合わせることによって実現する。
【0094】
また、図示の起き上がり動作は、体幹部を姿勢安定制御の目標位置にして動作シーケンスが組まれている。したがって、表1に示すような位置の機体重心を設定することにより、安定な起動と起き上がり動作を確保することができる。
【0095】
D−2.頭部の質量分布
頭部における質量分布を以下に示す。
【0096】
【表2】
【0097】
首関節ロール軸3より上の部位の重心は、首関節ロール軸3上に設定している(図17を参照のこと)。これによって、直立状態において基本立ち上げ姿勢と抱き上げ状態を経る間における安定な姿勢遷移を実現することができる。また、首ロール運動によるロール軸モーメントの発生量を軽減することにより、機体全体のZMP姿勢安定制御が首ロール運動からの影響を受けないようにすることができる。
【0098】
また、首関節ヨー軸1より上の部位の重心は、首関節ヨー軸1上に設定している(図18を参照のこと)。これによって、首関節ヨー軸回りのモーメントの発生量を軽減することにより、機体全体のZMP姿勢安定制御が該ピッチ軸運動からの影響を受けないようにすることができる。
【0099】
また、第1の首関節ピッチ軸2Aよりも上の部位の重心は、直立状態、基本立ち姿勢、並びに基本歩行姿勢において(対応路面が傾斜している場合を含む)、頭関節ピッチ軸2Bと重力加速度ベクトルで構成される平面上に設定している(図19を参照のこと)。これによって、直立状態において基本立ち上げ姿勢と抱き上げ状態を経る間における安定な姿勢遷移を実現することができる。
【0100】
また、第1の首関節ピッチ軸2Aと第2の首関節ピッチ軸2B間の部位の重心は、直立状態、基本立ち姿勢、又は基本歩行姿勢において(対応路面が傾斜している場合を含む)、頭関節ピッチ軸2Bと重力加速度ベクトルで構成される平面上に設定している(図20を参照のこと)。これによって、直立状態において基本立ち上げ姿勢と抱き上げ状態を経る間における安定な姿勢遷移を実現することができる。
【0101】
また、第2の首関節ピッチ軸2Bと首関節ロール軸3間の部位の重心は、首関節ピッチ軸2B上に設定している(図21を参照のこと)。これによって、第2の首関節ピッチ軸2B回りの運動時において、該ピッチ軸回りのモーメントの発生を軽減することにより、機体全体のZMP姿勢安定制御が該ピッチ軸運動からの影響を受けないようにすることができる。
【0102】
また、首関節ヨー軸1から第2の首関節ピッチ軸2B間の部位の重心は、該首関節ピッチ軸2B上に設定している(図22を参照のこと)。これによって、首関節ヨー軸1回りの運動によるヨー軸モーメントの発生を軽減することにより、機体全体のZMP姿勢安定制御が該ヨー軸運動からの影響を受けないようにすることができる。
【0103】
また、第1の首関節ピッチ軸2Aと首関節ヨー軸1間の部位の重心は、該首関節ピッチ軸2A上に設定している(図23を参照のこと)。これによって、第1の首関節ピッチ軸2A回りに頭部が運動するときに(図24を参照のこと)、該ピッチ軸回りのモーメントの発生を軽減することにより、機体全体のZMP姿勢安定制御が該ピッチ軸運動からの影響を受けないようにすることができる。
【0104】
図25には、表2に示したような質量分布に従ってモータやフレーム、電子回路基板などの各重量物が好適に配置されたロボット頭部の内部構成を図解している。
【0105】
また、図26には、図25からフレームのみを抽出して描いている。また、図27には、図25から首関節ヨー軸1、第1の首関節ピッチ軸2A、第2の首関節(頭)ピッチ軸2B、及び首関節ロール軸3の各関節軸駆動用モータのみを抽出して描いている。これらの部品が配置される位置関係は、表2に示した質量分布に従って決定されている点に充分留意されたい。
【0106】
D−3.腕部の質量分布
腕部における質量分布を以下に示す。
【0107】
【表3】
【0108】
手首ヨー軸8よりも先端の部位の重心は、手首ヨー軸8上に設定している(図28を参照のこと)。これによって、手首ヨー軸8回りの運動時において、該ヨー軸回りのモーメントの発生を軽減することにより、機体全体のZMP姿勢安定制御が該ピッチ軸運動からの影響を受けないようにすることができる。
【0109】
また、上腕ヨー軸6と手首ヨー軸間の部位の重心は、上腕ヨー軸6上に設定している(図29を参照のこと)。これによって、上腕ヨー軸6回りの運動時において、該ヨー軸回りのモーメントの発生を軽減することにより、機体全体のZMP姿勢安定制御が該ピッチ軸運動からの影響を受けないようにすることができる。
【0110】
また、肩ロール軸5より先端の部位の重心は、直立状態、基本立ち姿勢、又は基本歩行姿勢において(対応路面が傾斜している場合を含む)、肩ロール軸5と重力加速度ベクトルで構成される平面上に設定している(図30を参照のこと)。これによって、直立状態において基本立ち上げ姿勢と抱き上げ状態を経る間における安定な姿勢遷移を実現することができる。
【0111】
また、肘ピッチ軸7より先端の部位の重心は、直立状態、基本立ち姿勢、又は基本歩行姿勢において(対応路面が傾斜している場合を含む)、肘ピッチ軸7と重力加速度ベクトルで構成される平面上に設定している(図31を参照のこと)。これによって、直立状態において基本立ち上げ姿勢と抱き上げ状態を経る間における安定な姿勢遷移を実現することができる。
【0112】
また、肩ピッチ軸4と肘ピッチ軸7の間の部位の重心は、直立状態、基本立ち姿勢、又は基本歩行姿勢において(対応路面が傾斜している場合を含む)、肩ピッチ軸4と重力加速度ベクトルで構成される平面上に設定している(図32を参照のこと)。これによって、直立状態において基本立ち上げ姿勢と抱き上げ状態を経る間における安定な姿勢遷移を実現することができる。
【0113】
また、肘ピッチ軸7と手首ヨー軸8の間の部位の重心は、肘ピッチ軸7上に設定している(図33を参照のこと)。これによって、肘ピッチ軸7回りの運動時において、該ピッチ軸回りのモーメントの発生を軽減することにより、機体全体のZMP姿勢安定制御が該ピッチ軸運動からの影響を受けないようにすることができる。
【0114】
また、上腕ヨー軸6と肘ピッチ軸7の間の部位の重心は、上腕ヨー軸6上に設定している(図34を参照のこと)。これによって、上腕ヨー軸6回りの運動時において、該ヨー軸回りのモーメントの発生を軽減することにより、機体全体のZMP姿勢安定制御が該ピッチ軸運動からの影響を受けないようにすることができる。
【0115】
また、肩ロール軸5と上腕ヨー軸6の間の部位の重心は、直立状態、基本立ち姿勢、又は基本歩行姿勢において(対応路面が傾斜している場合を含む)、肩ロール軸5と重力加速度ベクトルで構成される平面上に設定している(図35を参照のこと)。これによって、直立状態において基本立ち上げ姿勢と抱き上げ状態を経る間における安定な姿勢遷移を実現することができる。
【0116】
また、肩ピッチ軸4と肩ロール軸5の間の部位の重心は、肩ピッチ軸4上に設定している(図36を参照のこと)。これによって、肩ピッチ軸4回りの運動時において、該ピッチ軸回りのモーメントの発生を軽減することにより、機体全体のZMP姿勢安定制御が該ピッチ軸運動からの影響を受けないようにすることができる。
【0117】
図37には、表3に示したような質量分布に従ってモータやフレームが配置された腕部の内部構成を図解している。
【0118】
また、図38には、図37から腕部のフレームのみ(手先を含む)を抽出して描いている。また、図39には、図37から肩関節ロール軸5、上腕ヨー軸6、肘ピッチ軸7、手首関節ヨー軸8の各関節軸駆動用モータ、並びに手先を抽出して描いている。これらの部品が配置される位置関係は、表3に示した質量分布に従って決定されている点に充分留意されたい。
【0119】
D−4.胴体部の質量分布
胴体部における質量分布を以下に示す。
【0120】
【表4】
【0121】
体幹ピッチ軸9と第1の首関節ピッチ軸2Aの間の部位の重心は、取っ手と重力加速度ベクトルで構成される平面上に設定している(図40を参照のこと)。これによって、直立状態において基本立ち上げ姿勢と抱き上げ状態を経る間における安定な姿勢遷移を実現することができる。
【0122】
また、体幹ピッチ軸9と第1の首関節ピッチ軸2Aの間の部位の重心は、直立状態、基本立ち姿勢、又は基本歩行姿勢において(対応路面が傾斜している場合を含む)、第1の首関節ピッチ軸2Aと重力加速度ベクトルで構成される平面上に設定している(図41を参照のこと)。これによって、X方向における外乱適応と移動機能の股関節と体幹ピッチ軸可動角度を最大限に活用することが可能となる。
【0123】
また、体幹ロール軸10と体幹ピッチ軸9の間の部位の重心は、体幹ロール軸10上に設定している(図42を参照のこと)。これによって、体幹ロール軸10回りの運動時において、該ロール軸回りのモーメントの発生を軽減することにより、機体全体のZMP姿勢安定制御が該ピッチ軸運動からの影響を受けないようにすることができる。
【0124】
D−5.脚部の質量分布
脚部における質量分布を以下に示す。
【0125】
【表5】
【0126】
股関節ピッチ軸12と膝ピッチ軸14の間の部位の重心は、基本立ち姿勢と抱き上げ(直立状態)姿勢間で、股関節ピッチ軸と重力加速度ベクトルで構成される平面上に設定されている(図43を参照のこと)。これによって、直立状態において基本立ち上げ姿勢と抱き上げ状態を経る間における安定な姿勢遷移を実現することができる。
【0127】
また、股関節ロール軸13と股関節ピッチ軸12の間の部位の重心は、股関節ロール軸13上に設定されている(図44を参照のこと)。これによって、股関節ロール軸13回りの運動時において、該ヨー軸回りのモーメントの発生を軽減することにより、機体全体のZMP姿勢安定制御が該ピッチ軸運動からの影響を受けないようにすることができる。
【0128】
また、膝関節ピッチ軸14と足首ピッチ軸15の間の部位の重心は、基本立ち姿勢と抱き上げ(直立状態)姿勢間で、膝関節ピッチ軸14と重力加速度ベクトルで構成される平面上に設定している(図45を参照のこと)。これによって、直立状態において基本立ち上げ姿勢と抱き上げ状態を経る間における安定な姿勢遷移を実現することができる。
【0129】
また、股関節ロール軸13と足首関節ロール軸16の間の部位の重心は、基本立ち姿勢と抱き上げ(直立状態)姿勢間で、股関節ロール軸13と重力加速度ベクトルで構成される平面上に設定している(図46を参照のこと)。これによって、直立状態において基本立ち上げ姿勢と抱き上げ状態を経る間における安定な姿勢遷移を実現することができる。
【0130】
また、足首ピッチ軸15と足首ロール軸16の間の部位の重心は、足首ピッチ軸15上に設定している(図47を参照のこと)。これによって、足首ピッチ軸15回りの運動時において、該ピッチ軸回りのモーメントの発生を軽減することにより、機体全体のZMP姿勢安定制御が該ピッチ軸運動からの影響を受けないようにすることができる。
【0131】
また、足首ロール軸16より先端の部位の重心は、基本立ち姿勢と抱き上げ(直立状態)姿勢間で、足首ロール軸16と重力加速度ベクトルで構成される平面上に設定している(図48を参照のこと)。これによって、直立状態において基本立ち上げ姿勢と抱き上げ状態を経る間における安定な姿勢遷移を実現することができる。
【0132】
また、足首ロール軸16より先端の部位の重心は、足首ロール軸16上に設定している(図49を参照のこと)。これによって、足首ロール軸16回りの運動時において、該ロール軸回りのモーメントの発生を軽減することにより、機体全体のZMP姿勢安定制御が該ピッチ軸運動からの影響を受けないようにすることができる。
【0133】
また、足首ピッチ軸15より先端の部位の重心は、基本立ち姿勢と抱き上げ(直立状態)姿勢間で、足首ピッチ軸15と重力加速度ベクトルで構成される平面上に設定している(図50を参照のこと)。これによって、直立状態において基本立ち上げ姿勢と抱き上げ状態を経る間における安定な姿勢遷移を実現することができる。
【0134】
また、足首ピッチ軸15より先端の部位の重心は、足首ピッチ軸15上に設定している(図51を参照のこと)。これによって、足首ピッチ軸15回りの運動時において、該ピッチ軸回りのモーメントの発生を軽減することにより、機体全体のZMP姿勢安定制御が該ピッチ軸運動からの影響を受けないようにすることができる。
【0135】
図52には、表5に示したような質量分布に従ってモータやフレームが配置された脚部の内部構成を図解している。
【0136】
また、図53には、図52から脚部のフレームのみを抽出して描いている。また、図54には、図52から股関節ピッチ軸12、股関節ロール軸13、膝ピッチ軸14、足首ピッチ軸15、足首ロール軸16の各関節軸駆動用モータを抽出して描いている。これらの部品が配置される位置関係は、表5に示した質量分布に従って決定されている点に充分留意されたい。
【産業上の利用可能性】
【0137】
以上、特定の実施例を参照しながら、本発明について詳解してきた。しかしながら、本発明の要旨を逸脱しない範囲で当業者が該実施例の修正や代用を成し得ることは自明である。
【0138】
本発明の要旨は、必ずしも「ロボット」と称される製品には限定されない。すなわち、電気的若しくは磁気的な作用を用いて人間の動作に似せた運動を行う機械装置であるならば、例えば玩具等のような他の産業分野に属する製品であっても、同様に本発明を適用することができる。
【0139】
要するに、例示という形態で本発明を開示してきたのであり、本明細書の記載内容を限定的に解釈するべきではない。本発明の要旨を判断するためには、特許請求の範囲の記載を参酌すべきである。
【符号の説明】
【0140】
1…首関節ヨー軸
2A…第1の首関節ピッチ軸、2B…第2の首関節(頭)ピッチ軸
3…首関節ロール軸、4…肩関節ピッチ軸、5…肩関節ロール軸
6…上腕ヨー軸、7…肘関節ピッチ軸、8…手首関節ヨー軸
9…体幹ピッチ軸、10…体幹ロール軸、11…股関節ヨー軸
12…股関節ピッチ軸、13…股関節ロール軸、14…膝関節ピッチ軸
15…足首関節ピッチ軸、16…足首関節ロール軸
30…頭部ユニット、40…体幹部ユニット
50…腕部ユニット、51…上腕ユニット
52…肘関節ユニット、53…前腕ユニット
60…脚部ユニット、61…大腿部ユニット
62…膝関節ユニット、63…脛部ユニット
80…制御ユニット、81…主制御部、82…周辺回路
91、92…接地確認センサ
93、94…加速度センサ
95…姿勢センサ、96…加速度センサ、100…脚式移動ロボット
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体胴体部と、
前記機体胴体部に取り付けられ、股関節ピッチ軸及び膝関節ピッチ軸回りの自由度をそれぞれ備えた左右の可動脚と、
前記機体に印加される各モーメントの釣合い関係を記述したZMP方程式を導出し、該ZMP方程式上で現れるモーメント・エラーを打ち消すように前記機体の目標軌道を修正することによって、前記可動脚の足底接地点と路面の形成する支持多角形の辺上あるいはその内側にピッチ軸及びロール軸モーメントがゼロなるZMPを存在させて前記機体の姿勢安定制御を行なう姿勢安定制御手段と、
直立状態、基本立ち姿勢、又は直立状態と基本立ち姿勢間で、前記股関節ピッチ軸と重力加速度ベクトルで構成される平面上に設定することによって前記ZMP方程式の項数を削減した、前記股関節ピッチ軸と前記膝ピッチ軸間の部位の重心と、
を具備することを特徴とする脚式移動ロボット。
【請求項2】
前記脚部はさらに股関節ロール軸回りの自由度を備え、
前記股関節ロール軸と前記股関節ピッチ軸間部位の重心は前記股関節ロール軸上に設定されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の脚式移動ロボット。
【請求項3】
前記脚部の略下端には足首ピッチ軸回りの自由度を以って足部が取り付けられており、
前記膝ピッチ軸と前記足首ピッチ軸間の部位の重心は前記膝関節ピッチ軸と重力加速度ベクトルで構成される平面上に設定されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の脚式移動ロボット。
【請求項4】
前記足部はさらに足首ロール軸回りの自由度を備え、
前記股関節ロール軸と前記足首ロール軸間の部位の重心は前記股関節ロール軸と重力加速度ベクトルで構成される平面上に設定されている、
ことを特徴とする請求項3に記載の脚式移動ロボット。
【請求項5】
前記足首ピッチ軸と前記足首ロール軸間の部位の重心は前記足首ピッチ軸上に設定されている、
ことを特徴とする請求項4に記載の脚式移動ロボット。
【請求項6】
前記足首ロール軸より末端の部位の重心は前記足首ロール軸と重力加速度ベクトルで構成される平面上に設定されている、
ことを特徴とする請求項4に記載の脚式移動ロボット。
【請求項7】
前記足首ロール軸より末端の部位の重心は前記足首ロール軸上に設定されている、
ことを特徴とする請求項4に記載の脚式移動ロボット。
【請求項8】
前記足首ピッチ軸より末端の部位の重心は前記足首ピッチ軸と重力加速度ベクトルで構成される平面上に設定されている、
ことを特徴とする請求項3に記載の脚式移動ロボット。
【請求項9】
前記足首ピッチ軸より末端の部位の重心は前記足首ピッチ軸上に設定されている、
ことを特徴とする請求項3に記載の脚式移動ロボット。
【請求項1】
機体胴体部と、
前記機体胴体部に取り付けられ、股関節ピッチ軸及び膝関節ピッチ軸回りの自由度をそれぞれ備えた左右の可動脚と、
前記機体に印加される各モーメントの釣合い関係を記述したZMP方程式を導出し、該ZMP方程式上で現れるモーメント・エラーを打ち消すように前記機体の目標軌道を修正することによって、前記可動脚の足底接地点と路面の形成する支持多角形の辺上あるいはその内側にピッチ軸及びロール軸モーメントがゼロなるZMPを存在させて前記機体の姿勢安定制御を行なう姿勢安定制御手段と、
直立状態、基本立ち姿勢、又は直立状態と基本立ち姿勢間で、前記股関節ピッチ軸と重力加速度ベクトルで構成される平面上に設定することによって前記ZMP方程式の項数を削減した、前記股関節ピッチ軸と前記膝ピッチ軸間の部位の重心と、
を具備することを特徴とする脚式移動ロボット。
【請求項2】
前記脚部はさらに股関節ロール軸回りの自由度を備え、
前記股関節ロール軸と前記股関節ピッチ軸間部位の重心は前記股関節ロール軸上に設定されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の脚式移動ロボット。
【請求項3】
前記脚部の略下端には足首ピッチ軸回りの自由度を以って足部が取り付けられており、
前記膝ピッチ軸と前記足首ピッチ軸間の部位の重心は前記膝関節ピッチ軸と重力加速度ベクトルで構成される平面上に設定されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の脚式移動ロボット。
【請求項4】
前記足部はさらに足首ロール軸回りの自由度を備え、
前記股関節ロール軸と前記足首ロール軸間の部位の重心は前記股関節ロール軸と重力加速度ベクトルで構成される平面上に設定されている、
ことを特徴とする請求項3に記載の脚式移動ロボット。
【請求項5】
前記足首ピッチ軸と前記足首ロール軸間の部位の重心は前記足首ピッチ軸上に設定されている、
ことを特徴とする請求項4に記載の脚式移動ロボット。
【請求項6】
前記足首ロール軸より末端の部位の重心は前記足首ロール軸と重力加速度ベクトルで構成される平面上に設定されている、
ことを特徴とする請求項4に記載の脚式移動ロボット。
【請求項7】
前記足首ロール軸より末端の部位の重心は前記足首ロール軸上に設定されている、
ことを特徴とする請求項4に記載の脚式移動ロボット。
【請求項8】
前記足首ピッチ軸より末端の部位の重心は前記足首ピッチ軸と重力加速度ベクトルで構成される平面上に設定されている、
ことを特徴とする請求項3に記載の脚式移動ロボット。
【請求項9】
前記足首ピッチ軸より末端の部位の重心は前記足首ピッチ軸上に設定されている、
ことを特徴とする請求項3に記載の脚式移動ロボット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図11D】
【図11E】
【図11F】
【図12A】
【図12B】
【図12C】
【図12D】
【図12E】
【図12F】
【図13A】
【図13B】
【図13C】
【図13D】
【図13E】
【図13F】
【図14A】
【図14B】
【図14C】
【図14D】
【図14E】
【図14F】
【図14G】
【図15A】
【図15B】
【図15C】
【図15D】
【図15E】
【図15F】
【図16A】
【図16B】
【図16C】
【図16D】
【図16E】
【図16F】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24A】
【図24B】
【図24C】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46】
【図47】
【図48】
【図49】
【図50】
【図51】
【図52】
【図53】
【図54】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図11D】
【図11E】
【図11F】
【図12A】
【図12B】
【図12C】
【図12D】
【図12E】
【図12F】
【図13A】
【図13B】
【図13C】
【図13D】
【図13E】
【図13F】
【図14A】
【図14B】
【図14C】
【図14D】
【図14E】
【図14F】
【図14G】
【図15A】
【図15B】
【図15C】
【図15D】
【図15E】
【図15F】
【図16A】
【図16B】
【図16C】
【図16D】
【図16E】
【図16F】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24A】
【図24B】
【図24C】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46】
【図47】
【図48】
【図49】
【図50】
【図51】
【図52】
【図53】
【図54】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【公開番号】特開2009−83099(P2009−83099A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−7603(P2009−7603)
【出願日】平成21年1月16日(2009.1.16)
【分割の表示】特願2002−73497(P2002−73497)の分割
【原出願日】平成14年3月18日(2002.3.18)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【出願人】(599133381)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年1月16日(2009.1.16)
【分割の表示】特願2002−73497(P2002−73497)の分割
【原出願日】平成14年3月18日(2002.3.18)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【出願人】(599133381)
【Fターム(参考)】
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