説明

脚式移動ロボット

【課題】足首部のコンパクト化が可能な脚式移動ロボットを提供する。
【解決手段】ロボット1は、下腿リンク34に設けられ、ピッチの方向に揺動可能な揺動部材52と、下端54aが揺動部材52の前端52bに連結された前側ロッド54と、上端56aが揺動部材52の後端52cに連結され、下端56bが足首関節の揺動軸線より後方にて足平22に連結された後側ロッド56と、前側ロッド54を駆動するアクチュエータ58と備える足首関節駆動機構50を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脚式移動ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
上腿リンクと下腿リンクを連結する膝関節と、下腿リンクと足平を連結する足首関節とを有する脚体を備え、脚体を駆動して移動する脚式移動ロボットが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、大腿リンク(上腿リンク)と下腿リンクを連結する膝関節が膝Y軸(膝ピッチ軸)を有し、上腿リンクに配置された電動モータの出力がベルト及び減速機を介して膝Y軸に伝達される脚式移動ロボットが開示されている。
【0004】
この脚式移動ロボットにおいては、大腿リンクに電動モータが配置され、この電動モータの出力がベルトを介して膝Y軸と同軸に配置された中間軸に伝達される。中間軸の回転は、ベルトを介し、下腿リンクに配置された減速機に伝達される。そして、減速機で減速された出力が、ロッド機構を介して足首Y軸(足首ピッチ軸)に伝達される。ロッド機構は平行クランク機構とされており、減速機の出力軸の外側側部に固定された第1のクランクの回転が、平行リンクを介し、足首Y軸の外側側部に固定された第2のクランクに伝達される。これにより、電動モータの出力が、中間軸や平行クランク機構等を介して足首Y軸に伝達され、足首Y軸がY軸回り(ピッチ方向)に回転可能となっている。
【0005】
さらに、上腿リンクに別の電動モータが配置され、この電動モータの出力がベルトを介して膝Y軸と同軸に配置された別の中間軸に伝達される。そして、中間軸の回転は、ベルトを介し、足首Y軸と同軸に配置された受動軸に伝達される。受動軸の端部の内側端部には、ドライブベベルギヤが固定され、このドライブベベルギヤは、足首X軸(足首ロール軸)の端部に固定されたドリブンベベルギヤと噛合している。これにより、電動モータの出力が、中間軸、受動軸等を介して足首X軸に伝達され、足首X軸がX軸回り(ロール方向)に回転可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−298997号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1に開示された脚式移動ロボットにおいては、両端にロッドが連結されたクランクが足首Y軸の外側側部に固定されている。さらに、足首Y軸と同軸に配置された受動軸、この受動軸の端部の内側端部に固定されたドライブベベルギヤ、及び足首X軸の端部に固定されたドリブンベベルギヤを備えている。そのため、足首部は、大型となり、重量も大きくなる。
【0008】
脚体の末端側(足平側)の重量が大きいと、脚式移動ロボットを移動させる際に脚体に大きな慣性力が発生し、各関節を駆動させるアクチュエータを高出力なものとする必要が生じる。
【0009】
本発明は、以上の点に鑑み、足首部のコンパクト化が可能な脚式移動ロボットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上腿リンクと下腿リンクを連結する膝関節と、前記下腿リンクと足平を連結する足首関節とを有する脚体を備え、前記膝関節及び前記足首関節が第1の方向に揺動軸線を有し、前記脚体を駆動して移動する脚式移動ロボットであって、前記下腿リンクに設けられ、前記第1の方向に揺動可能な揺動部材と、一端が前記揺動部材の前端に連結された前側ロッドと、一端が前記揺動部材の後端に連結され、他端が前記足首関節の揺動軸線より後方にて前記足平に連結された後側ロッドと、前記前側ロッドを駆動するアクチュエータと、を備えた足首関節駆動機構を有することを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、足首関節駆動機構によって足平を下腿リンクに対して第1の方向に揺動させることが可能となる。そして、足首関節は、後側ロッドの他端が連結された連結部を備えていればよい。そのため、上記特許文献1のように足首関節軸の外側側部にクランクを固定する必要がなく、足首部をコンパクト且つ軽量にすることが可能となる。そして、これに伴い、脚式移動ロボットを移動させる際に脚体に発生する慣性力が減少し、足首関節を駆動させるために必要なアクチュエータの出力を低減することが可能となる。
【0012】
また、本発明において、前記アクチュエータを前記揺動部材より重力方向において上方に設けることが好ましい。
【0013】
この場合、重量物であるアクチュエータを脚体の足平から離れた位置に設けることができ、脚式移動ロボットを移動させる際に脚体に発生する慣性力がさらに減少し、足首関節を駆動させる際に必要なアクチュエータの出力をさらに低減することが可能となる。
【0014】
また、本発明において、前記揺動部材の揺動中心は、側面視において、前記膝関節の揺動軸線と前記足首関節の揺動軸線とを結ぶ線より前方に位置することが好ましい。
【0015】
この場合、揺動部材の後方への突出を抑制することが可能となり、後側ロッドと上腿リンクとが干渉するおそれが減少し、膝関節の屈曲角度を十分に確保することができる。
【0016】
また、本発明において、前記足首関節が前記第1の方向と異なる第2の方向に揺動軸線を有し、各前記脚体が前記足首関節駆動機構をそれぞれ2つ備え、各前記後側ロッドが前記足平に異なる位置にて連結されることが好ましい。
【0017】
この場合、各脚体の2つの足首関節駆動機構のそれぞれのアクチュエータを独立して動作させることにより、各脚体の足平を下腿リンクに対して第2の方向にも揺動させることが可能となる。
【0018】
また、本発明において、前記アクチュエータは、前記膝関節と同位置もしくは重力方向において上方に前記第1の方向に回転可能に設けられ、端部が前記前側ロッドの他端と連結された回転板と、前記上腿リンクに設けられ、前記回転板を回転駆動する駆動源とを備えることが好ましい。
【0019】
この場合、アクチュエータを簡易に構成することが可能となる。また、重量物である駆動源を脚体の足平から離れた上腿リンクに設けるので、脚式移動ロボットを移動させる際に脚体に発生する慣性力が減少し、足首関節を駆動させる際に必要な駆動源の出力を低減することが可能となる。
【0020】
また、本発明において、前記下腿リンクに固定され、前記下腿リンクの後部を覆う第1カバーと、前記足平に固定され、前記足首関節の後部を覆う第2カバーと、前記足平の後部に連結されるとともに前記下腿リンクに摺動可能に設けられ、前記後側ロッドの後部を覆う第3カバーとを備えることが好ましい。
【0021】
この場合、下腿リンクに対する足平の揺動に伴う下腿リンクに対する後側ロッドの相対移動に拘わらず、常に第3カバーが後側ロッドの後部を覆う。そのため、第1カバーと第2カバーとの間に隙間が生じても、その隙間を第3カバーが覆うので、埃や水滴等の浸入を確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態に係る2足移動ロボットの概略構成を示す斜視図。
【図2】脚体の下部を示す側面図。
【図3】脚体の下部を示す正面図。
【図4】図2における足平の傾斜が異なる状態を示し、(a)は足平が前上がりの状態を、(b)は足平が水平の状態、(c)は足平が前下がりの状態をそれぞれ示す。
【図5】脚体の下部をカバーと共に示す側面図。
【図6】図5における足平の傾斜が異なる状態を示し、(a)は足平が前上がりの状態を、(b)は足平が水平の状態、(c)は足平が前下がりの状態をそれぞれ示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、脚式移動ロボットとして2足移動ロボットを例にとって、本発明の実施形態に係る2足移動ロボット1(以下、単にロボット1という)について説明する。
【0024】
図1に示すように、ロボット1は、左右一対の脚体2R,2Lと、両脚体2R,2Lの基端部(上端部)に連結された上体4とを備えており、接床する脚体2R,2Lによって上体4が床面の上方に支持される。
【0025】
両脚体2R,2Lは同一構造であり、それぞれ6個の関節を備える。その6個の関節は上体4側から順に、股の回旋用(上体4に対するヨー方向の回転用)の股関節10R,10Lと、股のロール方向(X軸まわり)の回転用の股関節12R,12Lと、股のピッチ方向(Y軸まわり)の回転用の股関節14R,14Lと、膝部のピッチ方向の回転用の膝関節16R,16Lと、足首部のピッチ方向の回転用の足首関節18R,18Lと、足首部のロール方向の回転用の足首関節20R,20Lとから構成されている。
【0026】
なお、本実施形態の説明では、符号R,Lはそれぞれ右側脚体2R、左側脚体2Lに対応するものであることを意味する。また、X軸方向、Y軸方向は、水平面上で互いに直交する2軸方向であり、X軸方向はロボット1の前後方向(ロール軸方向)、Y軸方向はロボット1の左右方向(ピッチ軸方向)に相当する。また、Z軸方向は鉛直方向(重力方向)であり、ロボット1の上下方向(ヨー軸方向)に相当する。上下方向は重力方向における上下方向を意味する。
【0027】
各脚体2R(L)の股関節10R(L),12R(L),14R(L)によって3自由度の股関節が構成され、膝関節16R(L)によって1自由度の膝関節が構成され、足首関節18R(L),20R(L)によって2自由度の足首関節が構成されている。
【0028】
そして、股関節10R(L),12R(L),14R(L)と膝関節16R(L)とは上腿リンク32R(L)で連結され、膝関節16R(L)と足首関節18R(L),20R(L)とは下腿リンク34R(L)で連結されている。また、各脚体2R(L)の足首関節18R(L),20R(L)の下部に、各脚体2R(L)の先端部(下端部)を構成する足平22R(L)が取着されている。また、各脚体2R(L)の上端部(基端部)が、股関節10R(L),12R(L),14R(L)を介して上体4に連結されている。
【0029】
各脚体2R(L)の上記構成により、各脚体2R(L)の足平22R(L)は、上体4に対して6自由度を有する。そして、ロボット1の移動に際して両脚体2R,2Lを合わせて6×2=12個の関節をそれぞれ適宜な角度に駆動することで、両足平22R,22Lの所望の運動を行うことができる。これにより、ロボット1は歩行動作や走行動作等、3次元空間を移動する運動を行うことが可能となっている。
【0030】
なお、図示は省略するが、本実施形態では、上体4の上部の両側部には左右一対の腕体が取り付けられるとともに、上体4の上端部には頭部が搭載される。そして、各腕体は、それに備える複数の関節(肩関節、肘関節、手首関節など)によって、該腕体を上体4に対して前後に振る等の運動を行うことが可能となっている。ただし、これらの腕体及び頭部はなくてもよい。
【0031】
各脚体2R(L)の足首関節18R(L),20R(L)と足平22R(L)との間には6軸力センサ36R(L)が介装されている。この6軸力センサ36R(L)は、床から足平22R(L)を介して各脚体2R(L)に伝達される床反力の3軸方向の並進力成分及び3軸まわりのモーメント成分を検出し、その検出信号を図示しない制御ユニットに出力する。
【0032】
次に、脚体2R(L)の足首関節18(L),20R(L)の駆動機構について説明する。脚体2R,2Lは、左右対称であり、ここでは、脚体2Rに設けられた足首関節18R,20Rの駆動機構について説明するが、以下、符号Rは適宜省略する。なお、他の関節の駆動機構は、例えば本願出願人が特開平3−184782号などにて提案した公知の構成のものなど、任意の構成であってよい。
【0033】
図2及び図3に示すように、下腿リンク34と足平22とは、足首ピッチ軸42を揺動中心としてピッチ方向に揺動可能に、且つ足首ロール軸44を揺動中心としてロール方向に揺動可能に連結されている。また、上腿リンク32と下腿リンク34とは、膝ピッチ軸46を相対揺動中心としてヨー方向に揺動可能に連結されている。なお、ピッチ方向が本発明における第1の方向を意味し、ロール方向が本発明における第1の方向と異なる第2の方向を意味する。
【0034】
脚体2は、足首関節18,20を駆動する足首関節駆動機構50r,50lを備えている。足首関節駆動機構50rは脚体2の右側に、足首関節駆動機構50lは脚体2の左側にそれぞれ設けられている。これにより、ロボット1は、合計4つの足首関節駆動機構50Rr,50Rl,50Lr,50Llを備えている。
【0035】
なお、本実施形態の説明では、符号r,lはそれぞれ脚体2R(L)の右側、左側に対応するものであることを意味する。足首関節駆動機構50r,50lは、左右対称であり、ここでは、足首関節駆動機構50rについて説明するが、以下、符号rは適宜省略する。
【0036】
足首関節駆動機構50は、揺動部材52、前側ロッド54、後側ロッド56及びアクチュエータ58を備えており、揺動部材52、前側ロッド54及び後側ロッド56がZ型リンクを構成している。
【0037】
揺動部材52は、ピッチ方向に揺動可能に下腿リンク34に設けられている。ここでは、揺動部材52は、ピッチ軸方向の軸線52a回りに揺動可能に、下腿リンク34の上下方向中間部に軸支されている。そして、軸線52aは、脚体2の側面視において、足首ピッチ軸42の軸線と膝ピッチ軸46の軸線とを結ぶ線分Lより前方に位置している。
【0038】
前側ロッド54は、その下端(一端)54aが揺動部材52の前端52bに連結されている。ここでは、前側ロッド54は、揺動部材52に対して少なくともピッチ方向に揺動可能に連結されている。
【0039】
後側ロッド56は、その上端(一端)56aが揺動部材52の後端52cに連結され、その下端(他端)56bが足首ピッチ軸42より後方にて足平22に連結されている。ここでは、後側ロッド56の上端は、揺動部材52に図示しない球面ベアリングを介して全方向に揺動可能に連結されている。そして、後側ロッド56の下端は、足平22に球面ベアリング60を介して全方向に揺動可能に連結されている。
【0040】
具体的には、足平22の後部に設けられた連結部62に、球面ベアリング60を介して後側ロッド56の下端56bが連結されている。足平22の略中央上部に足首ロール軸44がロール軸方向に回転可能に軸支されており、この足首ロール軸44の中央部に足首ピッチ軸42がピッチ軸方向に回転可能に挿通されている。そして、連結部62は、足首ピッチ軸42及び足首ロール軸44から離間されており、後側ロッド56と下腿リンク34との干渉が防止されている。
【0041】
アクチュエータ58は、前側ロッド54を駆動し、ここでは、揺動部材52より上方に設けられている。具体的には、アクチュエータ58は、膝ピッチ軸46と同軸にピッチ方向に回転可能に設けられ、端部64aが前側ロッド54の上端(他端)54bと連結された回転板64と、上腿リンク32に設けられ、回転板64を回転駆動する駆動源である電動モータ66とを備えている。電動モータ66の出力がベルト68を介して不図示の減速機構から伝達され、回転板64が膝ピッチ軸46回りに回転する。端部64aは回転板64の回転中心、すなわち膝ピッチ軸46の軸心より前方に形成されている。左右の電動モータ66r,66lは、独立して駆動制御が可能であり、前記制御ユニットからの入力に応じて動作する。
【0042】
次に、足首関節18,20の揺動動作について説明する。
【0043】
電動モータ66の出力は、ベルト68及び減速機構70を介して回転板64に伝達され、回転板64が回転する。回転板64の回転に応じて、前側ロッド54を介して揺動部材52が揺動し、後側ロッド56を介して足平22が揺動する。
【0044】
具体的には、回転板64が時計回りに回転すると、前側ロッド54が上方に移動し、これにより、揺動部材52が時計回りに揺動し、後側ロッド56が下方に移動し、連結部62の位置が、足首ピッチ軸42と足首ロール軸44との交点Oに対して下方に移動する。一方、回転板64が反時計回りに回転すると、前側ロッド54が下方に移動し、これにより、揺動部材52が反時計回りに揺動し、後側ロッド56が上方に移動し、連結部62の位置が、足首ピッチ軸42と足首ロール軸44との交点Oに対して上方に移動する。
【0045】
これにより、左右の回転板64r,64lがともに時計回りに回転すると、連結部62r,62lが交点Oに対して下方に移動し、図4(a)に示すように、前上がり(つま先上がり)に傾斜するように足平22が下腿リンク34に対してピッチ方向に揺動する。一方、左右の回転板64r,64lがともに反時計回りに回転すると、連結部62r,62lが交点Oに対して上方に移動し、図4(c)に示すように、前下がり(つま先下がり)に傾斜するように足平22が下腿リンク34に対してピッチ方向に揺動する。
【0046】
そして、右側の回転板64rが時計回りに、左側の回転板64lが反時計回りにそれぞれ回転すると、交点Oに対して右側の連結部62rが下方に、左側の連結部62lが上方に移動し、右側が左側より下がるように足平22が下腿リンク34に対してロール方向に揺動する。右側の回転板64rが反時計回りに、左側の回転板64lが時計回りにそれぞれ回転すると、交点Oに対して右側の連結部62rが上方に、左側の連結部62lが下方に移動し、右側が左側より高くなるように足平22が下腿リンク34に対してロール方向に揺動する。
【0047】
このように、左右の電動モータ66r,66lを適宜駆動制御することにより、足平22を下腿リンク34に対してピッチ方向及びロール方向に揺動する。
【0048】
以上説明したように、本実施形態に係るロボット1は、その足首関節が、足平22の上部に軸支された足首ロール軸44、この足首ロール軸44に挿通された足首ピッチ軸42及び左右の後側ロッド56r,56lとそれぞれ連結される左右の連結部62r,62lから構成されており、簡素に構成されている。そのため、上記特許文献1に開示された脚式移動ロボットの足首部と比較して、足首部をコンパクト化、軽量化することが可能となる。そして、これに伴い、ロボット1を移動させる際に脚体2に発生する慣性力が減少し、足首関節18,20を駆動させる電動モータ66の定格出力を低減させることが可能となる。
【0049】
なお、交点Oより前方にて足平22に連結部を設け、この連結部と回転板64の端部64aとを直接連結する1本のロッドを設けることが想定される。しかし、この場合、足平22の前上がり角度を十分に確保できないおそれがある。人間などの足首関節は、前上がり角度が後上がり角度(前下がり角度)よりも相当程度大きくなるように構成されており、特に、蹴り足時に足平22の前上がり角度が大きくなる。一方、本実施形態に係るロボット1は、交点Oより後方にて足平22に連結部62を設けているので、十分に大きな前上がり角度を確保することが可能である。なお、後上がり角度は制限を受け得るが、人間類似の移動形態である限り、問題は生じない。
【0050】
また、回転板64の後側の端部と連結部62とを直接連結する1本のロッドを設けることが想定される。しかし、この場合、このロッドと上腿リンク32とが干渉して、膝関節16の屈曲角度を十分に確保できないおそれがある。一方、本実施形態に係るロボット1は、回転板64の前方の端部64aに前側ロッド54を連結しているので、前側ロッド54と上腿リンク32とが干渉するおそれがなく、膝関節16の屈曲角度を十分に確保することができる。
【0051】
また、回転板64の端部64aと連結部62とを直接連結する1本のロッドを設けることが想定される。しかし、この場合、足平22を揺動させるために必要な電動モータ66の出力が増大し、高定格出力の電動モータ66が必要となる。一方、本実施形態に係るロボット1は、電動モータ66の出力を回転板64から揺動部材52を介して連結部62に伝達しているので、回転板64の位置及びリンク長、前側ロッド54及び後側ロッド56のリンク長などを適切に設定することにより、低定格出力の電動モータ66を用いることが可能となる。
【0052】
さらに、揺動部材52の軸線52aは、脚体2の側面視において、足首ピッチ軸42の軸線と膝ピッチ軸46の軸線とを結ぶ線分Lより前方に位置している。これにより、揺動部材52の後端部52cの後方への突出を抑制することが可能となり、後側ロッド56と上腿リンク32との干渉するおそれが減少し、膝関節16の屈曲角度を十分に確保することができる。また、揺動部材52の初期角度及び連結部62の初期角度の設定により、足首関節駆動機構50r,50lを高剛性化し、不所望の撓みが生じず、安定した駆動力が足平22に伝達されるように構成することが容易となる。
【0053】
ところで、脚体2は、精密部品から構成されており、埃や水滴などの付着を防止する必要があり、カバーで覆われている。以下、脚体2の下腿リンク34及び足首関節18,20を覆うカバーについて説明する。なお、上腿リンク32や膝関節16等をカバーは従来公知の任意のカバーとすればよい。
【0054】
脚体2は、下腿リンク34の前部を覆う前方カバー72、下腿リンク34の後部を覆う後方カバー74、足首関節18,20の少なくとも後部を覆う足首カバー76、及び後側ロッド56の後部を覆う後側ロッドカバー78を備えている。さらに、足平22は、足平カバー80により全体が覆われている。なお、後方カバー74が本発明における第1カバーを意味し、足首カバー76が本発明における第2カバーを意味し、後側ロッドカバー78が本発明における第3カバーを意味する。
【0055】
前方カバー72は、取付部72a,72bで下腿リンク34に固定されており、前側ロッド54と干渉することなく、下腿リンク34の前部を覆うように構成されている。
【0056】
後方カバー74は、取付部74aで下腿リンク34に固定されており、後側ロッド56及び上腿リンク32の図示しないカバーと干渉することなく、下腿リンク34の後部を覆うように構成されている。後方カバー74は、その側部にて前方カバー72と連結されている。
【0057】
足首カバー76は、図示しない取付部で足平22に固定されており、連結部62の後方を含む足首関節18,20の周囲を覆うように構成されている。足首カバー76は、足平22に固定されているので、足平22の揺動に拘わらず、常に連結部62の後方を覆うことになる。なお、足首カバー76の前側部分は、足平22の揺動に拘わらず、前方カバー72の下端との間に隙間がないように、詳細は図示しないが、スライディング・シャッターとして構成されている。
【0058】
後側ロッドカバー78は、足平22の後部に連結されるとともに、下腿リンク34に設けられた案内機構82に案内されて摺動し、後側ロッド56の後部を覆うように構成されている。
【0059】
具体的には、後側ロッドカバー78の上下方向略中間部内面に形成された連結部78aにL字状の連結棒84の一端がロール方向に回転可能に連結されており、この連結棒84の他端が、連結部62の近傍にて足平22の後部に形成された突起部86にピッチ方向に回転可能に連結されている。そして、案内機構82は、下腿リンク34の上下方向略中間部にボルトを用いて固定され、後下がりに傾斜して延びる長穴88aが形成されたガイド部材88と、この長穴88aに摺動可能に設けられ、後側ロッドカバー78の上方に延出された延出部78bの先端に設けられたピン90とから構成されている。
【0060】
これにより、後側ロッドカバー78は、後方カバー74と足首カバー76との前後方向の中間に位置し、下腿リンク34に対する足平22の揺動に拘わらず、後方カバー74及び足首カバー76と干渉しないように構成されている。
【0061】
後側ロッドカバー78は、後側ロッド56の移動に伴い移動し、後側ロッドカバー78の連結部78aと後側ロッド56の下端56bとの距離変化、特に上下方向の距離変化は小さなものとなる。そのため、後側ロッドカバー78は、下腿リンク34に対する後側ロッド56の相対移動に拘わらず、常に後側ロッド56の下側後部を覆っており、足平22が前上がりに傾斜して、後方カバー74と足首カバー76との間に隙間が生じても、後側ロッドカバー78はその隙間を覆う。
【0062】
以上説明したように、本実施形態に係るロボット1は、後側ロッドカバー78を備えているので、図6(a)に示すように、足平22が前上がりに大きく傾斜した場合であっても、後側ロッドカバー78によって、後側ロッド56の下部後方を覆うことができる。また、足平22の揺動に拘わらず、後側ロッドカバー78と後方カバー74及び足首カバー76との間に生じる隙間が常に小さいものとなる。
【0063】
なお、後側ロッド56を設けない場合、後側ロッド56の下部後方を常にカバーで覆うためには、後方カバー及び足首カバーが大型化し、足首部のスリム化を図ることが困難になる。また、後方カバーと足首カバーとの間に必然的に大きな隙間が生じ、その隙間から埃や水滴等が浸入するおそれがある。
【0064】
なお、以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、実施形態では、アクチュエータ58が電動モータ66により回転駆動され、端部64aが前側ロッド54の上端54bに連結された回転板64を備える場合について説明したが、これに限定されない。例えば、ボールねじ機構を用いて前側ロッド54を直動駆動させてもよい。
【0065】
さらに、同一方向(実施形態ではピッチ方向)に膝部及び足首部の回転させる膝関節16R(L)及び足首関節18R(L)を有するものであれば、各関節の構成や関節の配置は、実施形態に限定されない。例えば、足首部をロール方向に回転させる足首関節20R(L)を備えないものであってもよい。この場合、足首関節駆動機構を各脚体2R(L)にそれぞれ1つずつ設ければよい。
【0066】
さらに、足首関節18R(L),20R(L)は足首部の回転方向が異なるものであれば、その回転方向は実施形態に限定されない。例えば、足首関節18R(L),20R(L)の足首部の回転方向が互いに直交しないものであってよい。
【0067】
さらに、2足移動ロボットに限定されない。例えば、獣や昆虫等を模した4足移動ロボットや6足移動ロボット等であってもよい。
【符号の説明】
【0068】
1…2足移動ロボット(脚式移動ロボット)、 2R,2L…脚体、 16R,16L…膝関節、 18R,18L,20R,20L…足首関節、 22R,22L…足平、 34R,34L…下腿リンク、 42…足首ピッチ軸、 44…足首ロール軸、 46…膝ピッチ軸、 50…足首関節駆動機構、 52…揺動部材、 52a…揺動部材の軸線、 52b…揺動部材の前端、 52c…揺動部材の後端、 54…前側ロッド、 54a…前側ロッドの下端(一端)、 54b…前側ロッドの上端(他端)、 56…後側ロッド、 56a…後側ロッドの上端(一端)、56b…後側ロッドの下端(他端)、 58…アクチュエータ、 62…連結部、 64…回転板、 66…電動モータ(駆動源)、 74…後方カバー(第1カバー)、 76…足首カバー(第2カバー)、 78…後側ロッドカバー(第3カバー)、 82…案内機構。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上腿リンクと下腿リンクを連結する膝関節と、前記下腿リンクと足平を連結する足首関節とを有する脚体を備え、前記膝関節及び前記足首関節が第1の方向に揺動軸線を有し、前記脚体を駆動して移動する脚式移動ロボットであって、
前記下腿リンクに設けられ、前記第1の方向に揺動可能な揺動部材と、
一端が前記揺動部材の前端に連結された前側ロッドと、
一端が前記揺動部材の後端に連結され、他端が前記足首関節の揺動軸線より後方にて前記足平に連結された後側ロッドと、
前記前側ロッドを駆動するアクチュエータとを備えた足首関節駆動機構を有することを特徴とする脚式移動ロボット。
【請求項2】
前記アクチュエータを前記揺動部材より重力方向において上方に設けることを特徴とする請求項1に記載の脚式移動ロボット。
【請求項3】
前記揺動部材の揺動中心は、側面視において、前記膝関節の揺動軸線と前記足首関節の揺動軸線とを結ぶ線より前方に位置することを特徴とする請求項1又は2に記載の脚式移動ロボット。
【請求項4】
前記足首関節が前記第1の方向と異なる第2の方向に揺動軸線を有し、
各前記脚体が前記足首関節駆動機構をそれぞれ2つ備え、各前記後側ロッドが前記足平に異なる位置にて連結されることを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の脚式移動ロボット。
【請求項5】
前記アクチュエータは、
前記膝関節と同位置もしくは重力方向において上方に前記第1の方向に回転可能に設けられ、端部が前記前側ロッドの他端と連結された回転板と、
前記上腿リンクに設けられ、前記回転板を回転駆動する駆動源とを備えることを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の脚式移動ロボット。
【請求項6】
前記下腿リンクに固定され、前記下腿リンクの後部を覆う第1カバーと、
前記足平に固定され、前記足首関節の後部を覆う第2カバーと、
前記足平の後部に連結されるとともに前記下腿リンクに摺動可能に設けられ、前記後側ロッドの後部を覆う第3カバーとを備えることを特徴とする請求項1から5の何れか1項に記載の脚式移動ロボット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−224752(P2011−224752A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−98819(P2010−98819)
【出願日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】