説明

膜形成用組成物、絶縁膜および電子デバイス

【課題】高耐熱、高機械的強度、低誘電率など優れた特性を示す膜を形成することができる膜形成用組成物、その膜形成用組成物を用いて得られる絶縁膜、並びに、その絶縁膜を有する電子デバイスを提供する。
【解決手段】下記式(1)で表される化合物、および該化合物を用いて得られる重合体を含む膜形成用組成物。


(Aは有機結合基、または単結合を表す。Xは、炭素炭素三重結合を有する基を表す。nは、2〜4までの整数を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膜形成用組成物、これを用いて得られる膜および絶縁膜、さらにそれを有する電子デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子材料分野においては、高集積化、多機能化、高性能化の進行に伴い、回路抵抗や配線間のコンデンサー容量が増大し、消費電力や遅延時間の増大を招いている。中でも、遅延時間の増大は、デバイスの信号スピードの低下やクロストークの発生の大きな要因となるため、この遅延時間を減少させてデバイスの高速化を図るべく、寄生抵抗や寄生容量の低減が求められている。この寄生容量を低減するための具体策の一つとして、配線の周辺を低誘電性の層間絶縁膜で被覆することが試みられている。また、層間絶縁膜には、実装基板製造時の薄膜形成工程やチップ接続、ピン付け等の後工程に耐え得る優れた耐熱性やウェットプロセスに耐え得る耐薬品性が求められている。さらに、近年は、Al配線から低抵抗のCu配線が導入されつつあり、これに伴い、CMP(ケミカルメカニカルポリッシング)による平坦化が一般的となっており、このプロセスに耐え得る高い機械的強度が求められている。
【0003】
一般に、絶縁膜に高耐熱性、高機械的強度を付与するために芳香族化合物を導入する方法が知られているが(特許文献1)、低誘電率化が困難となるといった問題を生じていた。そこで、空孔形成剤を用いて膜を低密度化する方法が報告されていた(特許文献2、3)。しかし、この場合、例えば膜面状の悪化、吸湿などといった誘電率以外の膜性能が大きく損なわれることがあった。さらには、空孔の形成に伴い、膜の機械的強度が悪化することがあった。このように、誘電性、耐熱性、および機械的強度を十分に満足する膜材料は得られておらず、更なる改良が必要とされていた。
【0004】
【特許文献1】特開2001−106880号公報
【特許文献2】特表2005−516382号公報
【特許文献3】特表2007−505976号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、上記のような実情に鑑みて、優れた耐熱性、機械的強度、および低誘電性を示す膜を形成することができる膜形成用組成物、その膜形成用組成物を用いて得られる膜または絶縁膜、並びに、その絶縁膜を有する電子デバイスを提供することである。
【0006】
本発明者らは、鋭意検討を行った結果、上記課題が下記の<1>〜<12>の構成により達成できることを見出した。
<1> 下記式(1)で表される化合物、および/または、少なくとも1種の該化合物を用いて得られる重合体を含む膜形成用組成物。
【化1】


(式(1)中、Aは下記式(2−1)〜式(2−7)のいずれかで表される基、または単結合を表す。Xは、下記式(3)で表される基を表す。nは、2〜4までの整数を表す。Xは、同一であっても、異なっていてもよい。)
【化2】


(式(2−1)〜式(2−3)中、Zは、それぞれ独立に、−COO−、−CONH−、−C≡C−、−C=C−または単結合を表す。
式(2−1)中、Wは、−COOHを表す。mは、0〜2の整数を表す。ただし、mが1の時、Zの一方が−CONH−を表し、mが2の時、2つのZが−CONH−を表す。
式(2−4)中、Lは、−O−、−COO−、−CONH−、−C=C−、−C≡C−、−CO−、またはアルキレン基を表す。
式(2−5)中、Lは、−C≡C−C≡C−、−C≡C−、−O−、または単結合を表す。
式(2−6)中、Lは、それぞれ独立に、−C≡C−、−C=C−、または単結合を表す。)
【化3】


(式(3)中、Lは、式(4−1)で表される基、式(4−2)で表される基、または単結合を表す。Lは、式(5−1)で表される基、式(5−2)で表される基、または単結合を表す。Yは、水素原子、または式(6−1)〜式(6−4)のいずれかで表される基を表す。ただし、Lが式(4−2)で表される基または単結合の際に、Lが単結合であることはない。式(5−1)および式(5−2)中の*は、Yとの結合位置を示す。式(6−1)〜式(6−4)中の**は、Lとの結合位置を示す。)
【化4】


【化5】


<2> 前記式(1)のAが、式(2−1)で表される基である<1>に記載の膜形成用組成物。
<3> 前記式(1)のAが、式(2−2)で表される基である<1>に記載の膜形成用組成物。
<4> 前記式(1)のAが、式(2−4)で表される基である<1>に記載の膜形成用組成物。
<5> 前記式(1)のAが、式(2−5)で表される基である<1>に記載の膜形成用組成物。
<6> 前記式(1)のAが、式(2−6)で表される基である<1>に記載の膜形成用組成物。
<7> 前記式(3)のLが、式(4−1)で表される基である<1>〜<6>のいずれかに記載の膜形成用組成物。
<8> 前記式(3)のLが、式(5−1)で表される基である<1>〜<7>のいずれかに記載の膜形成用組成物。
<9> 前記式(3)のLが、式(5−2)で表される基である<1>〜<7>のいずれかに記載の膜形成用組成物。
<10> <1>〜<9>のいずれかに記載の膜形成用組成物を用いて得られる膜。
<11> 絶縁膜として使用される<10>に記載の膜。
<12> <11>に記載の絶縁膜を有する電子デバイス。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、優れた耐熱性、機械的強度、および低誘電性を示す膜を形成することができる膜形成用組成物、その膜形成用組成物を用いて得られる膜または絶縁膜、並びに、その絶縁膜を有する電子デバイスを提供することができる。
膜形成用組成物を用いて得られる膜は、特に、耐熱性に優れ、種々の用途に好適に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に、本発明に係る膜形成用組成物、および該膜形成用組成物より得られる膜について詳細に説明する。
まず、膜形成用組成物に含まれる式(1)で表される化合物、および少なくとも1種の式(1)で表される化合物を用いて得られる重合体について説明する。
【0009】
<式(1)で表される化合物>
以下に、式(1)で表される化合物について説明する。
【0010】
【化6】


(式(1)中、Aは下記式(2−1)〜式(2−7)のいずれかで表される基、または単結合を表す。Xは、下記式(3)で表される基を表す。nは、2〜4までの整数を表す。Xは、同一であっても、異なっていてもよい。)
【0011】
【化7】


(式(2−1)〜式(2−3)中、Zは、それぞれ独立に、−COO−、−CONH−、−C≡C−、−C=C−または単結合を表す。
式(2−1)中、Wは、−COOHを表す。mは、0〜2の整数を表す。ただし、mが1の時、Zの一方が−CONH−を表し、mが2の時、2つのZが−CONH−を表す。
式(2−4)中、Lは、−O−、−COO−、−CONH−、−C=C−、−C≡C−、−CO−、またはアルキレン基を表す。
式(2−5)中、Lは、−C≡C−C≡C−、−C≡C−、−O−、または単結合を表す。
式(2−6)中、Lは、それぞれ独立に、−C≡C−、−C=C−、または単結合を表す。)
【0012】
【化8】


(式(3)中、Lは、式(4−1)で表される基、式(4−2)で表される基、または単結合を表す。Lは、式(5−1)で表される基、式(5−2)で表される基、または単結合を表す。Yは、水素原子、または式(6−1)〜式(6−4)のいずれかで表される基を表す。ただし、Lが式(4−2)で表される基または単結合の際に、Lが単結合であることはない。式(5−1)および式(5−2)中の*は、Yとの結合位置を示す。式(6−1)〜式(6−4)中の**は、Lとの結合位置を示す。)
【0013】
【化9】

【0014】
【化10】

【0015】
式(1)中、Aは、式(2−1)〜式(2−7)のいずれかで表される基、または単結合を表す。なかでも、得られる膜の耐熱性、低誘電性がより優れるという点から、式(2−1)で表される基、式(2−2)で表される基、式(2−3)で表される基、式(2−4)で表される基、式(2−5)で表される基、式(2−6)で表される基が好ましく、さらに好ましくは式(2−1)で表される基、式(2−2)で表される基、式(2−5)で表される基、式(2−6)で表される基である。
【0016】
式(2−1)〜式(2−3)中、Zは、それぞれ独立に、−COO−、−CONH−、−C≡C−、−C=C−または単結合を表す。なかでも、合成が簡便でかつ低密度化が可能という点から−COO−、−CONH−、−C≡C−が好ましく、さらに好ましくは−COO−、−C≡C−である。式(2−1)〜式(2−3)中のZの結合位置は、特に制限されない。例えば、式(2−1)では、Z基がオルト位、メタ位、またはパラ位に配置される。
【0017】
式(2−1)中、Wは、−COOHを表す。Zが−CONH−の場合に、WはZとの間でイミド環を形成することができる。なお、式(2−1)中、Wの結合位置は、イミド環を形成できる位置に導入される。
【0018】
式(2−1)中、mは、0〜2の整数を表す。ただし、mが1の時、Zの一方が−CONH−を表し、mが2の時、2つのZが−CONH−を表す。なお、上述のようにWとZ(−CONH−)との間でイミド環を形成できる場合は、mは2が好ましく、それ以外は0がより好ましい。mが0の場合は、Zは上記のいずれの基でもよい。
【0019】
式(2−4)中、Lは、−O−、−COO−、−CONH−、−C=C−、−C≡C−、−CO−、またはアルキレン基(炭素数1〜5が好ましい。具体的には、メチレン基などが挙げられる)を表す。なかでも、合成が簡便でかつ低密度化が可能という点から、−O−、−COO−、−CONH−、−C≡C−、−CO−、アルキレン基が好ましく、さらに好ましくは−O−、−C≡C−である。式(2−4)中、L基と、式(1)で表される基との結合位置は、特に制限されない。
【0020】
式(2−5)中、Lは、−C≡C−C≡C−、−C≡C−、−O−、または単結合を表す。なかでも、合成が簡便でかつ低密度化が可能という点から、−C≡C−C≡C−、−C≡C−、または単結合が好ましく、さらに好ましくは−C≡C−C≡C−または−C≡C−である。
【0021】
式(2−6)中、Lは、−C≡C−、−C=C−、または単結合を表す。なかでも、合成が簡便でかつ低密度化が可能という点から、−C≡C−、単結合が好ましい。式(2−6)中、Lを含む基のベンゼン環上での結合位置は、特に制限されない。
【0022】
式(2−1)〜式(2−7)で表される基の具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0023】
【化11】

【0024】
式(2−1)〜式(2−7)で表される基の好ましい態様としては、以下の基が挙げられる。
【0025】
【化12】

【0026】
式(2−1)〜式(2−7)で表される基のより好ましい態様としては、以下の基が挙げられる。
【0027】
【化13】

【0028】
式(1)中、Xは、式(3)で表される基を表す。式(1)中、Xは同一であっても、異なっていてもよい。
【0029】
式(3)中、Lは式(4−1)で表される基、式(4−2)で表される基、または単結合を表す。なかでも、合成が簡便であるという点から、式(4−1)で表される基、または単結合が好ましい。
【0030】
式(3)中、Lは、式(5−1)で表される基、式(5−2)で表される基、または単結合を表す。なかでも、式(5−1)で表される基、式(5−2)で表される基が好ましい。式(5−1)で表される基において、L基とYを含む基とのベンゼン環上の結合配置は特に制限されず、オルト位、メタ位、パラ位のいずれでもよく、メタ位、パラ位がより好ましい。式(5−2)で表される基において、L基とYを含む基とのベンゼン環上の結合配置は、特に制限されない。
【0031】
式(3)中、Yは水素原子、または式(6−1)〜式(6−4)のいずれかで表される基を表す。なかでも、化合物の耐熱性がより優れるという点から、水素原子、式(6−1)で表される基、式(6−3)で表される基が好ましく、さらに好ましくは水素原子、式(6−1)で表される基である。
なお、Yが、式(6−1)〜式(6−4)のいずれかで表される基の場合、溶媒に対する溶解性が向上し、さらに化合物の保存安定性も向上する。
【0032】
式(3)で表される基の具体例を以下に示すが、本願はこれらに限定されない。
【0033】
【化14】

【0034】
式(3)で表される基の好ましい態様としては、以下の基が挙げられる。
【0035】
【化15】

【0036】
式(3)で表される基のより好ましい態様としては、以下の基が挙げられる。
【0037】
【化16】

【0038】
式(3)で表される基の特に好ましい態様としては、以下の基が挙げられる。
【0039】
【化17】

【0040】
式(1)で表される化合物は、置換基を有していてもよい。置換基としては、特に限定されないが、例えば、炭素数1〜10の直鎖、分岐、または環状のアルキル基(メチル基、t−ブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等)、炭素数2〜10のアルケニル基(ビニル基、プロペニル基等)、炭素数2〜10のアルキニル基(エチニル基、フェニルエチニル基、トリメチルシリルエチニル基、t−ブチルエチニル基等)、炭素数6〜20のアリール基(フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基等)などが挙げられる。
【0041】
式(1)中、nは、2〜4の整数を表し、好ましくは2または3である。
【0042】
式(1)で表される化合物の分子量は、特に制限されないが、重量平均分子量(Mw)が300以上であることが好ましい。300以上であると、揮発性が低いため膜中の濃度が低下せず、狙いの機能が十分発現する。
【0043】
以下に、式(1)で表される化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0044】
【化18】

【0045】
【化19】

【0046】
【化20】

【0047】
【化21】

【0048】
【化22】

【0049】
【化23】

【0050】
上述の式(1)で表される化合物の製造は、特にその製造ルートは限定されず、どの様な製造方法でも採用することが可能である。例えば、Tetrahedron Letters, 38, 1485 (1997)、 Organic Letters, 4, 3631 (2002)などを参照して、これらに記載される具体的条件を必要に応じ、調整することにより所望の化合物を合成することができる。また、市販品を使用してもよい。
【0051】
本発明の膜形成用組成物において、式(1)で表される化合物は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。また、後述する少なくとも1種の式(1)で表される化合物を用いて得られる重合体も、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
さらに、本発明の膜形成用組成物において、式(1)で表される化合物と少なくとも1種の式(1)で表される化合物を用いて得られる重合体を併用してもよい。
【0052】
<重合体>
次に、少なくとも1種の式(1)で表される化合物を用いて得られる重合体について説明する。該重合体を用いると、得られる膜の誘電性、耐熱性、および機械的強度がより優れたものとなる。
式(1)で表される化合物を用いて得られる重合体は、1種単独若しくは2種以上の式(1)で示される化合物のみを重合した重合体であってもよい。また、1種単独若しくは2種以上の式(1)で示される化合物と、1種単独若しくは2種以上の他の重合性化合物とを重合した共重合体であってもよい。なかでも、耐熱性、機械的強度、低誘電性がより優れる点で、式(1)で示される化合物のみを重合した重合体であることが好ましい。
【0053】
他の重合性化合物としては、式(1)で示される化合物と共重合可能であれば特に制限はなく、公知の重合性化合物を用いることができる。
【0054】
上述の重合体の重量平均分子量(Mw)は、特に制限されないが、溶媒への溶解性など取り扱いやすさの観点から、1,000〜500,000が好ましく、5,000〜200,000がより好ましく、10,000〜100,000が特に好ましい。
【0055】
式(1)で示される化合物を用いて得られる重合体の製造方法としては、特に制限はないが、加熱のみ、または、非金属の重合開始剤存在下で少なくとも1種の式(1)で表される化合物を用いて重合する工程を含む方法であることが好ましい。
【0056】
式(1)で示される化合物の重合反応は、主に、化合物に含まれる炭素−炭素三重結合によって起こる。式(1)で示される化合物の重合反応は、加熱のみ、又は、非金属の重合開始剤の存在下で行うことが好ましい。例えば、炭素−炭素三重結合を有するモノマーを、加熱のみ、又は、加熱によって炭素ラジカルや酸素ラジカル等の遊離ラジカルを発生して活性を示す重合開始剤存在下で重合することができる。
【0057】
重合開始剤としては、有機過酸化物又は有機アゾ系化合物が好ましく用いられるが、特に有機過酸化物が好ましい。
有機過酸化物としては、日本油脂株式会社より市販されているパーヘキサH等のケトンパーオキサイド類、パーヘキサTMH等のパーオキシケタール類、パーブチルH−69等のハイドロパーオキサイド類、パークミルD、パーブチルC、パーブチルD等のジアルキルパーオキサイド類、ナイパーBW等のジアシルパーオキサイド類、パーブチルZ、パーブチルL等のパーオキシエステル類、パーロイルTCP等のパーオキシジカーボネート等が好ましく用いられる。
有機アゾ系化合物としては、和光純薬工業株式会社で市販されているV−30、V−40、V−59、V−60、V−65、V−70等のアゾニトリル化合物類、VA−080、VA−085、VA−086、VF−096、VAm−110、VAm−111等のアゾアミド化合物類、VA−044、VA−061等の環状アゾアミジン化合物類、V−50、VA−057等のアゾアミジン化合物類等が好ましく用いられる。
【0058】
重合開始剤は1種のみ、又は、2種以上を混合して用いてもよい。
重合開始剤の使用量は、式(1)で示される化合物1モルに対して、好ましくは0.001〜2モル、より好ましくは0.01〜1モル、特に好ましくは0.05〜0.5モルである。
【0059】
式(1)で示される化合物の重合反応は、遷移金属触媒存在下で行うこともできる。例えば、重合可能な炭素−炭素二重結合又は炭素−炭素三重結合を有するモノマーをテトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(Pd(PPh)、酢酸パラジウム(Pd(OAc))等のPd系触媒、Ziegler−Natta触媒、ニッケルアセチルアセトネート等のNi系触媒、WCl等のW系触媒、MoCl等のMo系触媒、TaCl等のTa系触媒、NbCl等のNb系触媒、Rh系触媒、Pt系触媒等を用いて重合することが好ましい。
【0060】
遷移金属触媒は1種のみ、又は、2種以上を混合して用いてもよい。
遷移金属触媒の使用量は、式(1)で示される化合物1モルに対して、好ましくは0.001〜2モル、より好ましくは0.01〜1モル、特に好ましくは0.05〜0.5モルである。
【0061】
上述の重合反応で使用する溶媒は、原料である式(1)で表される化合物が必要な濃度で溶解可能であり、反応を阻害しないものであればどのようなものを使用してもよい。例えば、水や、メタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコール系溶剤、アルコールアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、アセトフェノンなどのケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン、メチルベンゾエートなどのエステル系溶剤、ジブチルエーテル、アニソールなどのエーテル系溶剤、トルエン、キシレン、メシチレン、1,2,4,5−テトラメチルベンゼン、ペンタメチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、1,4−ジイソプロピルベンゼン、t−ブチルベンゼン、1,4−ジ−t−ブチルベンゼン、1,3,5−トリエチルベンゼン、1,3,5−トリ−t−ブチルベンゼン、4−t−ブチル−オルトキシレン、1−メチルナフタレン、1,3,5−トリイソプロピルベンゼンなどの芳香族炭化水素系溶剤、N−メチルピロリジノン、ジメチルアセトアミドなどのアミド系溶剤、四塩化炭素、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼンなどのハロゲン系溶剤、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素系溶剤などが利用できる。これらは単独でも2種以上を混合して用いてもよい。反応液中の式(1)で表される化合物の濃度は、化合物の種類や重合開始剤などによって適宜選択される。
【0062】
重合反応の最適な条件は、使用する式(1)で表される化合物や重合方法などにより適宜最適な条件が選択される。また、酸素による重合開始剤の不活性化を抑制するために不活性ガス雰囲気下(例えば窒素、アルゴンなど)で反応させることが好ましい。
【0063】
<膜形成用組成物>
本発明に係る膜形成用組成物は、式(1)で表される化合物、または少なくとも1種の該化合物を用いて得られる重合体を含む。
【0064】
本発明の膜形成用組成物中における式(1)で表される化合物、および少なくとも1種の該化合物を用いて得られる重合体の含有量は、使用目的に応じて適宜選択される。なかでも、後述する有機溶媒を用いて塗布液として使用する場合、式(1)で表される化合物、および少なくとも1種の該化合物を用いて得られる重合体の含有量は、膜形成用組成物全体に対して、1〜20質量%が好ましく、3〜15質量%がより好ましい。
【0065】
本発明の膜形成用組成物は、有機溶媒を含んでいてもよい。有機溶媒としては特に限定はされないが、例えばメタノール、エタノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−エトキシメタノール、3−メトキシプロパノール,1−メトキシ−2−プロパノールなどのアルコール系溶媒、アセトン、アセチルアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、2−ペンタノン、3−ペンタノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸ペンチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸ブチル、プロピオン酸イソブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、乳酸メチル、乳酸エチル、γ−ブチロラクトンなどのエステル系溶媒、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、エチルプロピルエーテル、アニソール、フェネトール、ベラトロールなどのエーテル系溶媒、メシチレン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、プロピルベンゼン、t−ブチルベンゼンなどの芳香族炭化水素系溶媒、N−メチルピロリジノン、ジメチルアセトアミドなどのアミド系溶媒などが挙げられ、これらは単独でも2種以上を混合して用いてもよい。
【0066】
<膜形成用組成物の添加剤>
更に、本発明の膜形成用組成物には、得られる膜の特性(耐熱性、誘電率、機械的強度、塗布性、密着性等)を損なわない範囲で、ラジカル発生剤、コロイド状シリカ、界面活性剤、シランカップリング剤、密着剤などの添加剤を添加してもよい。
【0067】
本発明の膜形成用組成物は、コロイド状シリカを含んでいてもよい。例えば、高純度の無水ケイ酸を親水性有機溶媒若しくは水に分散した分散液であり、好ましくは平均粒径5〜30nm、より好ましくは10〜20nm、固形分濃度が5〜40重量%のものである。
【0068】
本発明の膜形成用組成物は、界面活性剤を含んでいてもよい。例えば、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤などが挙げられ、さらにシリコーン系界面活性剤、含フッ素系界面活性剤、ポリアルキレンオキシド系界面活性剤、アクリル系界面活性剤が挙げられる。本発明に用いることができる界面活性剤は、一種類でもよいし、二種類以上でもよい。界面活性剤としては、シリコーン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、含フッ素系界面活性剤、アクリル系界面活性剤が好ましく、特にシリコーン系界面活性剤が好ましい。
【0069】
本発明の膜形成用組成物中における界面活性剤の含有量は、膜形成用組成物の全量に対して、0.01質量%以上1質量%以下が好ましく、0.1質量%以上0.5質量%以下がさらに好ましい。
【0070】
本発明において、シリコーン系界面活性剤とは、少なくとも1原子のSi原子を含む界面活性剤である。本発明に使用するシリコーン系界面活性剤としては、いかなるシリコーン系界面活性剤でもよく、アルキレンオキシド及びジメチルシロキサンを含む構造であることが好ましい。下記化学式を含む構造であることがさらに好ましい。
【0071】
【化24】

【0072】
上記式中、Rは、水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を表す。xは、1〜20の整数を表す。m、nは、それぞれ独立に、2〜100の整数を表す。また、Rが複数存在する場合、それぞれ同じあっても異なっていてもよい。
【0073】
本発明に用いることができるシリコーン系界面活性剤としては、例えばBYK306、BYK307(ビックケミー社製)、SH7PA、SH21PA、SH28PA、SH30PA(東レ・ダウコーニング・シリコーン社製)、TroysolS366(トロイケミカル社製)等を挙げることができる。
【0074】
本発明に用いることができるノニオン系界面活性剤としては、いかなるノニオン系界面活性剤でもよい。例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアリールエーテル類、ポリオキシエチレンジアルキルエステル類、ソルビタン脂肪酸エステル類、脂肪酸変性ポリオキシエチレン類、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体等を挙げることができる。
【0075】
本発明に用いることができる含フッ素系界面活性剤としては、いかなる含フッ素系界面活性剤でもよい。例えば、パーフルオルオクチルポリエチレンオキシド、パーフルオルデシルポリエチレンオキシド、パーフルオルドデシルポリエチレンオキシド等が挙げられる。
【0076】
本発明に用いることができるアクリル系界面活性剤としては、いかなるアクリル系界面活性剤でもよい。例えば、(メタ)アクリル酸系共重合体等が挙げられる。
【0077】
本発明の膜形成用組成物は、シランカップリング剤を含んでいてもよい。
シランカップリング剤としては、例えば、3−グリシジロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アミノグリシジロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシジロキシプロピルメチルジメトキシシラン、1−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、2−アミノプロピルトリメトキシシラン、2−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N−エトキシカルボニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−エトキシカルボニル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−トリエトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、N−トリエトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、10−トリメトキシシリル−1,4,7−トリアザデカン、10−トリエトキシシリル−1,4,7−トリアザデカン、9−トリメトキシシリル−3,6−ジアザノニルアセテート、9−トリエトキシシリル−3,6−ジアザノニルアセテート、N−ベンジル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ベンジル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−ビス(オキシエチレン)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ビス(オキシエチレン)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。本発明に用いることができるシランカップリング剤は、一種類単独で使用してもよいし、二種類以上を併用してもよい。
【0078】
本発明の膜形成用組成物は、密着促進剤を含んでいてもよい。
密着促進剤としては、例えば、トリメトキシシリル安息香酸、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、トリメトキシビニルシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、アルミニウムモノエチルアセトアセテートジイソプロピレート、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、トリメチルクロロシラン、ジメチルビニルクロロシラン、メチルジフエニルクロロシラン、クロロメチルジメチルクロロシラン、トリメチルメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、メチルジメトキシシラン、ジメチルビニルエトキシシラン、ジフエニルジメトキシシラン、フエニルトリエトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、N,N’−ビス(トリメチルシリル)ウレア、ジメチルトリメチルシリルアミン、トリメチルシリルイミダゾール、ビニルトリクロロシラン、ベンゾトリアゾール、ベンズイミダゾール、インダゾール、イミダゾール、2−メルカプトベンズイミダゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、ウラゾール、チオウラシル、メルカプトイミダゾール、メルカプトピリミジン、1,1−ジメチルウレア、1,3−ジメチルウレア、チオ尿素化合物等を挙げることができる。官能性シランカップリング剤が密着促進剤として好ましい。
密着促進剤の使用量は、全固形分100重量部に対して、10重量部以下であることが好ましく、特に0.05〜5重量部であることがより好ましい。
【0079】
上述した本発明の膜形成用組成物の製造方法は、特に限定されない。例えば、式(1)で表される化合物、ならびに必要に応じて上記各任意成分を入れ、混合ミキサーなどのかくはん機を用いて十分にかくはんする方法を用いることができる。
【0080】
<膜形成用組成物を用いて得られる膜>
本発明の膜形成用組成物を使用して得られる膜の製造方法は、特に制限されない。例えば、膜形成用組成物をスピンコーティング法、ローラーコーティング法、ディップコーティング法、スキャン法等の任意の方法により基板に塗布した後、溶剤などを加熱処理で除去することにより形成することができる。基板に塗布する方法としては、スピンコーティング法、スキャン法によるものが好ましい。特に好ましくは、スピンコーティング法によるものである。
スピンコーティングについては、市販の装置を使用できる。例えば、クリーントラックシリーズ(東京エレクトロン(株)製)、D−スピンシリーズ(大日本スクリーン製造(株)製)、SSシリーズあるいはCSシリーズ(東京応化工業(株)製)等が好ましく使用できる。スピンコート条件としては、いずれの回転速度でもよいが、膜の面内均一性の観点より、300mmシリコン基板においては1,300rpm程度の回転速度が好ましい。
また、組成物溶液の吐出方法においては、回転する基板上に組成物溶液を吐出する動的吐出、静止した基板上へ組成物溶液を吐出する静的吐出のいずれでもよいが、膜の面内均一性の観点より、動的吐出が好ましい。また、組成物の消費量を抑制する観点より、予備的に組成物の主溶剤のみを基板上に吐出して液膜を形成した後、その上から組成物を吐出するという方法を用いることもできる。スピンコート時間については特に制限はないが、スループットの観点から180秒以内が好ましい。また、基板の搬送の観点より、基板エッジ部の膜を残存させないための処理(エッジリンス、バックリンス)をすることも好ましい。
【0081】
熱処理の方法は、特に限定されないが、一般的に使用されているホットプレート加熱、ファーネス炉を使用した加熱方法、RTP(Rapid Thermal Processor)等によるキセノンランプを使用した光照射加熱等を適用することができる。好ましくは、ホットプレート加熱、ファーネスを使用した加熱方法である。ホットプレートとしては市販の装置を好ましく使用でき、クリーントラックシリーズ(東京エレクトロン(株)製)、D−スピンシリーズ(大日本スクリーン製造(株)製)、SSシリーズあるいはCSシリーズ(東京応化工業(株)製)等が好ましく使用できる。ファーネスとしては、αシリーズ(東京エレクトロン(株)製)等が好ましく使用できる。
【0082】
本発明の膜形成用組成物は、基板上に塗布した後に加熱処理することによって硬化させることが特に好ましい。例えば、膜形成用組成物により形成した膜に残存する炭素三重結合の後加熱時の重合反応が利用できる。この後加熱処理の条件は、好ましくは100〜450℃、より好ましくは200〜420℃、特に好ましくは350℃〜400℃で、好ましくは1分〜2時間、より好ましくは10分〜1.5時間、特に好ましくは30分〜1時間の範囲である。後加熱処理は数回に分けて行ってもよい。また、この後加熱は酸素による熱酸化を防ぐために窒素雰囲気下で行うことが特に好ましい。
また、本発明では加熱処理ではなく高エネルギー線を照射することで重合体中に残存する炭素三重結合の重合反応を起こして硬化させてもよい。高エネルギー線とは、電子線、紫外線、X線などが挙げられるが、特にこれらの方法に限定されるものではない。
高エネルギー線として、電子線を使用した場合のエネルギーは、0〜50keVが好ましく、0〜30keVがより好ましく、0〜20keVが特に好ましい。電子線の総ドーズ量は、好ましくは0〜5μC/cm2、より好ましくは0〜2μC/cm2、特に好ましくは0〜1μC/cm2である。電子線を照射する際の基板温度は、0〜450℃が好ましく、0〜400℃がより好ましく、0〜350℃が特に好ましい。圧力は、好ましくは0〜133kPa、より好ましくは0〜60kPa、特に好ましくは0〜20kPaである。本発明の重合物の酸化を防止するという観点から、基板周囲の雰囲気はAr、He、窒素などの不活性雰囲気を用いることが好ましい。また、電子線との相互作用で発生するプラズマ、電磁波、化学種との反応を目的に酸素、炭化水素、アンモニアなどのガスを添加してもよい。本発明における電子線照射は複数回行ってもよく、この場合は電子線照射条件を毎回同じにする必要はなく、毎回異なる条件で行ってもよい。
高エネルギー線として紫外線を用いてもよい。紫外線を用いる際の照射波長領域は190〜400nmが好ましく、その出力は基板直上において0.1〜2,000mWcm−2が好ましい。紫外線照射時の基板温度は250〜450℃が好ましく、250〜400℃がより好ましく、250〜350℃が特に好ましい。本発明の重合物の酸化を防止するという観点から、基板周囲の雰囲気は、Ar、He、窒素などの不活性雰囲気を用いることが好ましい。また、その際の圧力は0〜133kPaが好ましい。
【0083】
本発明の膜形成用組成物より得られる膜の膜厚は、使用用途により適宜最適な厚みが選択される。なかでも、絶縁膜として使用する場合は、0.01〜10μmが好ましく、0.1〜10μmがより好ましい。
【0084】
本発明の膜形成用組成物より得られる膜の比誘電率は、使用する材料によって異なるが、絶縁膜として使用する場合、通常、測定温度25℃において、4.0以下であることが好ましく、1.5〜3.5であることがより好ましく、1.8〜3.0であることがさらに好ましい。
また、本発明の膜形成用組成物より得られる膜における比誘電率の測定方法としては、測定温度25℃で、フォーディメンジョンズ社製水銀プローバ及び横河ヒューレットパッカード社製のHP4285ALCRメーターを用いて1MHzにおける容量値から算出することが好ましい。
【0085】
本発明の膜形成用組成物より得られる膜のヤング率は、使用する材料によって異なるが、絶縁膜として使用する場合、3.0〜15.0GPaであることが好ましく、5.0〜15.0GPaであることがより好ましい。
本発明の膜形成用組成物より得られる膜におけるヤング率の測定方法としては、MTS社ナノインデンターSA2を使用して測定する。
【0086】
<用途>
本発明の膜形成用組成物、およびその組成物から得られる膜は、耐熱性が必要な様々な用途に用いることが出来る。具体的には、電子材料、繊維、プリント回路、粘着テープ、磁気記録媒体、電線、耐熱絶縁紙、塗料、注型材料、プリント配船板、成型材料半導体素子などに用いることができる。さらに得られる膜は、低密度化により、低誘電性を有しているので、後述するように層間絶縁膜として使用するのにも適している。
【0087】
本発明の膜形成用組成物を使用して得られる膜は、絶縁膜として好適に使用することができ、半導体用層間絶縁膜としてより好適に使用することができる。すなわち、本発明の膜形成用組成物を使用して得られる絶縁膜は、電子デバイスに好適に使用できる。電子デバイスとは、半導体装置や、磁気記録ヘッドなどを含めた広範な電子機器を意味する。
例えば、半導体用層間絶縁膜として使用する際、その配線構造において、配線側面にはメタルマイグレーションを防ぐためのバリア層があってもよく、また、配線や層間絶縁膜の上面底面にはCMP(化学的機械的研磨)での剥離を防ぐキャップ層、層間密着層の他、エッチングストッパー層等があってもよく、更には層間絶縁膜の層を必要に応じて他種材料で複数層に分けてもよい。
【0088】
本発明の膜形成用組成物を使用して得られる膜は、銅配線あるいはその他の目的でエッチング加工をすることができる。エッチングとしてはウエットエッチング、ドライエッチングのいずれでもよいが、ドライエッチングが好ましい。ドライエッチングは、アンモニア系プラズマ、フルオロカーボン系プラズマのいずれもが適宜使用できる。これらプラズマにはArだけでなく、酸素、あるいは窒素、水素、ヘリウム等のガスを用いることができる。また、エッチング加工後に、加工に使用したフォトレジスト等を除く目的でアッシングすることもでき、さらにはアッシング時の残渣を除くため、洗浄することもできる。
【0089】
本発明の膜形成用組成物を使用して得られる膜は、銅配線加工後に、銅めっき部を平坦化するためCMP処理を施すことができる。CMPスラリー(薬液)としては、市販のスラリー(例えば、(株)フジミインコーポレーテッド製、ロデールニッタ(株)製、JSR(株)製、日立化成工業(株)製等)を適宜使用できる。また、CMP装置としては市販の装置(アプライドマテリアル社製、(株)荏原製作所製等)を適宜使用することができる。さらにCMP後のスラリー残渣除去のため、洗浄することができる。
【0090】
本発明の膜形成用組成物を使用して得られる膜は、多様の目的に使用することが出来る。例えばLSI、システムLSI、DRAM、SDRAM、RDRAM、D−RDRAM等の半導体装置、マルチチップモジュール多層配線板等の電子部品における絶縁皮膜として好適であり、半導体用層間絶縁膜、エッチングストッパー膜、表面保護膜、バッファーコート膜の他、LSIにおけるパッシベーション膜、α線遮断膜、フレキソ印刷版のカバーレイフィルム、オーバーコート膜、フレキシブル銅張板のカバーコート、ソルダーレジスト膜、液晶配向膜等として使用することができる。
さらに、別の用途として本発明の膜に電子ドナー又はアクセプターをドープすることによって導電性を付与し、導電性膜として使用することもできる。
【実施例】
【0091】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例により制約されるものではない。
【0092】
以下のGPC測定は、Waters2695およびShodex製GPCカラムKF−805Lを使用し、カラム温度40℃で、溶出溶媒としてテトラヒドロフランを毎分1mlの流量で測定を行い、Mw、Mnは標準ポリスチレンを用いて作製した検量線を用いて計算した。
【0093】
<実施例1:化合物(A)および化合物(B)の合成>
【0094】
【化25】

【0095】
以下の反応スキームに従って、化合物(A)および(B)を合成した。
【0096】
【化26】

【0097】
<合成例1:化合物(a)の合成>
4−トリチルアニリン25重量部、アセトン400重量部および臭化水素酸162重量部を反応容器に入れて撹拌した。その容器を氷浴下で冷却しながら、水100重量部に亜硝酸ナトリウム7重量部を溶解させた溶液をゆっくりと滴下した。滴下終了後、氷浴下で30分撹拌した。その溶液に、氷浴下で臭化水素酸31.5重量部に臭化銅(I)17.4重量部を溶解させた溶液をゆっくり滴下した。滴下終了後、室温で2時間撹拌した。反応後、反応液中に析出した沈殿をろ取することにより、4−トリチルブロモベンゼン(化合物(a))25.8重量部(収率:86%)を得た。なお、H−NMR測定よりその構造を同定した。(1H-NMR(CDCl3) δ = 7.00(d, 2H), 7.10-7.30(m, 15H), 7.38(d, 2H))
【0098】
<合成例2:化合物(b)の合成>
4-トリチルブロモベンゼン(化合物(a))40重量部、[ビス(トリアセトキシ)ヨード]ベンゼン90.3重量部およびヨウ素58.4重量部、クロロホルム800重量部を反応容器に入れて6時間還流した。さらに、その反応溶液に[ビス(トリアセトキシ)ヨード]ベンゼン90.3重量部加えて12時間還流した。反応後、反応液中に析出した沈殿をろ取することにより、4-ブロモフェニル-トリス(4−ヨードフェニル)メタン(化合物(b))65重量部(収率:85%)を得た。なお、H−NMR測定よりその構造を同定した。(1H-NMR(CDCl3) δ = 6.88(d, 6H), 7.01(d, 2H), 7.38(d, 6H), 7.58(d, 2H))
【0099】
<合成例3:化合物(c)の合成>
窒素気流下、三口フラスコに化合物(b)5.1重量部、ジクロロビストリフェニルホスフィンパラジウム(II)0.6重量部、ヨウ化銅0.3重量部、テトラヒドロフラン53.3重量部、トリエチルアミン43.6重量部を加え均一になるまで撹拌し、10分間窒素バブリングを行った。それに、化合物(m)4.0重量部をテトラヒドロフラン8.9重量部に溶解させた溶液を加えた。室温で3時間撹拌後、溶媒を減圧留去した。得られた固体をカラムクロマトグラフィー(n−ヘキサン:酢酸エチル=3:1)により精製することにより、化合物(c)3.2重量部(収率:52%)を得た。なお、H−NMR測定よりその構造を同定した。(1H-NMR(CDCl3) δ =1.61(s, 18H), 7.08(d, 2H), 7.17(d, 6H), 7.25-7.49(m, 17H), 7.58(s, 3H))
【0100】
<合成例4:化合物(d)の合成>
窒素気流下、三口フラスコに化合物(c)5.0重量部、ジクロロビストリフェニルホスフィンパラジウム(II)0.4重量部、ヨウ化銅0.2重量部、テトラヒドロフラン26.7重量部、ジイソプロピルアミン14.4重量部を加え均一になるまで撹拌した。それに、トリメチルシリルアセチレン5.2重量部を加え、1時間還流した。その後、再度ジクロロビストリフェニルホスフィンパラジウム(II)0.4重量部、ヨウ化銅0.2重量部、テトラヒドロフラン8.9重量部、ジイソプロピルアミン7.2重量部を加え2時間還流し、溶媒を減圧留去した。得られた固体をカラムクロマトグラフィー(n−ヘキサン:酢酸エチル=2:1)により精製することにより、化合物(d)4.6重量部(収率:90%)を得た。なお、H−NMR測定よりその構造を同定した。(1H-NMR(CDCl3) δ = 0.24(s, 9H), 1.61(s, 18H), 7.12-7.18(m, 8H), 7.25-7.45(m, 17H), 7.58(s, 3H))
【0101】
<合成例5:化合物(e)の合成>
化合物(d)2.0重量部をテトラヒドロフラン8.9重量部に溶解させ、それに炭酸カリウムの飽和メタノール溶液を3.0重量部加えて、室温で2時間撹拌した。反応溶液に酢酸エチルを加え、蒸留水で洗浄した。溶媒を減圧留去することにより、化合物(e)1.7重量部(収率:92%)を得た。なお、H−NMR測定よりその構造を同定した。(1H-NMR(CDCl3) δ = 1.62(s, 18H), 3.08(s, 1H), 7.17-7.20(m, 8H), 7.28-7.44(m, 17H), 7.59(s, 3H))
【0102】
<合成例6:化合物(A)の合成>
化合物(e)1.2重量部をピリジン39重量部に溶解させ、それに酢酸銅(II)0.2重量部を加え、室温で2時間撹拌した。反応溶液に蒸留水500重量部を加え、2時間室温で撹拌した。析出した固体をろ取することにより、化合物(A)1.1重量部(収率:92%)を得た。なお、H−NMR測定よりその構造を同定した。(1H-NMR(CDCl3) δ = 1.61(s, 36H), 7.15-7.21(m, 16H), 7.25-7.45(m, 34H), 7.58(s, 6H))
【0103】
<合成例7:化合物(B)の合成>
窒素気流下、化合物(A)0.8重量部をトルエン26重量部に溶解させた。それに、水酸化ナトリウム0.2重量部を加え、5時間還流した。不溶物をろ別後、溶媒を減圧留去した。得られた固体を蒸留水により洗浄することにより、化合物(B)0.5重量部(収率:78%)を得た。なお、H−NMR測定よりその構造を同定した。(1H-NMR(CDCl3) δ =3.09(s, 6H), 7.18-7.21(m, 16H), 7.24-7.50(m, 34H), 7.64(s, 6H))
【0104】
<実施例2:化合物(C)および化合物(D)の合成>
【0105】
【化27】

【0106】
以下の反応スキームに従って、化合物(C)および(D)を合成した。
【0107】
【化28】

【0108】
<合成例8:化合物(f)の合成>
化合物(m)を化合物(n)に変更した以外は、上記合成例3と同様の方法を用いて、化合物(f)を合成した。なお、H−NMR測定よりその構造を同定した。(1H-NMR(CDCl3) δ =1.62(s, 18H), 7.10(d, 2H), 7.19(d, 6H), 7.38-7.55(m, 26H), 7.67(s, 3H) , 7.74(s, 3H))
【0109】
<合成例9:化合物(g)の合成>
出発物質である化合物(c)を化合物(f)に変更した以外は、上記合成例4と同様の方法を用いて、化合物(g)を合成した。なお、H−NMR測定よりその構造を同定した。(1H-NMR(CDCl3) δ =0.23(s, 9H), 1.62(s, 18H), 7.15-7.21 (m, 8H), 7.39-7.55(m, 26H), 7.67(s, 3H) , 7.72(s, 3H))
【0110】
<合成例10:化合物(h)の合成>
出発物質である化合物(d)を化合物(g)に変更した以外は、上記合成例5と同様の方法を用いて、化合物(h)を合成した。なお、H−NMR測定よりその構造を同定した。(1H-NMR(CDCl3) δ =1.62(s, 18H), 3.06(s, 1H), 7.17-7.20 (m, 8H), 7.39-7.55(m, 26H), 7.68(s, 3H) , 7.73(s, 3H))
【0111】
<合成例11:化合物(C)の合成>
出発物質である化合物(e)を化合物(h)に変更した以外は、上記合成例6と同様の方法を用いて、化合物(C)を合成した。なお、H−NMR測定よりその構造を同定した。(1H-NMR(CDCl3) δ =1.62(s, 36H), 7.18 -7.22 (m, 16H), 7.39-7.55(m, 52H), 7.67(s, 6H) , 7.73(s, 6H))
【0112】
<合成例12:化合物(D)の合成>
出発物資である化合物(A)を化合物(C)に変更した以外は、上記合成例7と同様の方法を用いて、化合物(D)を合成した。なお、H−NMR測定よりその構造を同定した。(1H-NMR(CDCl3) δ =3.09(s, 6H), 7.20-7.22 (m, 16H), 7.44-7.60(m, 52H), 7.73(s, 6H) , 7.79(s, 6H))
【0113】
<実施例3:化合物(E)および化合物(F)の合成>
【0114】
【化29】

【0115】
以下の反応スキームに従って、化合物(E)および(F)を合成した。
【0116】
【化30】

【0117】
<合成例13:化合物(E)の合成>
窒素気流下、三口フラスコにテトラキス(4-ヨードフェニル)メタン0.15重量部、ジクロロビストリフェニルホスフィンパラジウム(II)0.025重量部、ヨウ化銅0.014重量部、テトラヒドロフラン8.9重量部、トリエチルアミン7.3重量部を加え、10分間窒素バブリングを行った。そこに、化合物(e)0.8重量部を加え、室温で3時間撹拌後、溶媒を減圧留去した。得られた固体をカラムクロマトグラフィー(n−ヘキサン:酢酸エチル=1:1)により精製することにより、化合物(E)0.4重量部(収率:57%)を得た。なお、H−NMR測定よりその構造を同定した。(1H-NMR(CDCl3) δ =1.61(s, 18H), 7.15-7.21(m, 40H), 7.25-7.45(m, 76H), 7.58(s, 12H))
【0118】
<合成例14:化合物(F)の合成>
窒素気流下、化合物(E)0.5重量部とトルエン26重量部を混合し、還流して均一溶液とした。それに、水酸化ナトリウム0.5重量部を加え、5時間還流した。不溶物をろ別後、溶媒を減圧留去した。得られた固体を蒸留水により洗浄することにより、化合物(F)0.18重量部(収率:45%)を得た。なお、H−NMR測定よりその構造を同定した。(1H-NMR(CDCl3) δ =3.09(s, 12H), 7.18-7.21(m, 40H), 7.24-7.50(m, 76H), 7.64(s, 12H))
【0119】
<実施例4:化合物(G)の合成>
【0120】
【化31】

【0121】
以下の反応スキームに従って、化合物(G)を合成した。
【0122】
【化32】

【0123】
<合成例15:化合物(i)の合成>
パラローズアニリン塩酸塩10重量部、濃硫酸35.4重量部および水56重量部を反応溶液に入れて撹拌した。その容器を氷浴下で冷却しながら、水23重量部に溶解させた亜硝酸ナトリウム7重量部を溶解させた溶液をゆっくりと滴下した。滴下終了後、氷浴下で30分撹拌した。その溶液に、水31.5重量部にヨウ化カリウム56重量部を溶解させた溶液を氷浴下でゆっくり滴下した。滴下終了後、室温で5時間撹拌、80℃で30分加熱撹拌した。反応後、反応液中に析出した沈殿をろ取することにより、トリス(4-ヨードフェニル)メタノール(化合物(i))13.7重量部(収率:70%)を得た。なお、H−NMR測定よりその構造を同定した。(1H-NMR(CDCl3) δ = 6.7(d, 6H), 7.7(d, 6H))
【0124】
<合成例16:化合物(j)の合成>
トリス(4-ヨードフェニル)メタノール(化合物(i))10重量部、フェノール4.4重量部および濃硫酸2重量部を反応容器に入れ、80℃で4時間加熱撹拌した。冷却後、反応溶液に10パーセントの水酸化ナトリウム溶液を加え、2時間撹拌した。析出した沈殿をろ取することにより、トリス(4-ヨードフェニル)-4-メチルフェノール(化合物(j))8.5重量部(収率:76%)を得た。なお、H−NMR測定よりその構造を同定した。(1H-NMR(CDCl3) δ = 6.71(d, 2H), 6.88(d, 6H), 6.96(d, 2H), 7.57(d, 6H))
【0125】
<合成例17:化合物(k)の合成>
出発物質である化合物(b)を化合物(j)に変更した以外は、上記合成例3と同様の方法を用いて、化合物(k)を合成した。なお、H−NMR測定よりその構造を同定した。(1H-NMR(CDCl3) δ = 1.62(s, 18H), 6.77(d, 2H), 7.04(d, 2H), 7.19(d, 6H), 7.28-7.45(m, 15H), 7.58(s, 3H))
【0126】
<合成例18:化合物(G)の合成>
窒素気流下、三つ口フラスコに化合物(k)1.8重量部、乾燥テトラヒドロフラン4.4重量部およびトリエチルアミン0.27重量部を反応容器に入れ、均一になるまで攪拌した。その容器を氷浴下で冷却しながら、トリメソイルクロリド0.18重量部を滴下した。滴下後、室温で1時間撹拌した。反応後、反応液に酢酸エチルを加え、1N HNO水溶液および水で洗浄した。無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧留去することにより、化合物(G)1.6重量部(収率:86%)得た。なお、H−NMR測定よりその構造を同定した。(1H-NMR((CD3)2CO) δ = 1.55(s, 54H), 7.20-7.58 (m, 84H), 9.14(s, 3H))
【0127】
<実施例5:化合物(H)および化合物(I)の合成>
【0128】
【化33】

【0129】
以下の反応スキームに従って、化合物(H)および化合物(I)を合成した。
【0130】
【化34】

【0131】
<合成例19:化合物(l)の合成>
出発物資である化合物(b)の代わりに化合物(j)を、化合物(m)の代わりに化合物(p)を用いた以外は、上記合成例3と同様の方法を用いて、化合物(l)を合成した。なお、H−NMR測定よりその構造を同定した。(1H-NMR((CD3)2CO) δ = 1.61(s, 18H), 6.75(d, 2H), 6.92(d, 2H), 7.15(d, 6H), 7.32(d, 6H), 8.39(s, 1H))
【0132】
<合成例20:化合物(o)の合成>
出発物質である化合物(A)を化合物(l)に変更した以外は、上記合成例7と同様の方法を用いて、化合物(o)を合成した。なお、H−NMR測定よりその構造を同定した。(1H-NMR((CD3)2CO) δ = 3.65(s, 3H), 6.79(d, 2H), 6.99(d, 2H), 7.21(d, 6H), 7.44(d, 6H), 8.42(s, 1H))
【0133】
<合成例21:化合物(H)の合成>
出発物質である化合物(k)を化合物(l)に変更した以外は、上記合成例18と同様の方法を用いて、化合物(H)を合成した。なお、H−NMR測定よりその構造を同定した。(1H-NMR((CD3)2CO) δ = 1.53(d, 54H), 7.20(d, 18H), 7.30-7.38(d, 30H), 9.14(s, 3H))
【0134】
<合成例22:化合物(I)の合成>
出発物質である化合物(k)を化合物(o)に変更した以外は、上記合成例18と同様の方法を用いて、化合物(I)を合成した。なお、H−NMR測定よりその構造を同定した。(1H-NMR((CD3)2CO) δ = 3.67(s, 9H), 7.27(d, 18H), 7.34-7.37(m, 12H), 7.49(d, 18H), 9.14(s, 3H))
【0135】
<実施例6:重合体(1)の合成>
化合物(B)1重量部と33重量部のt−ブチルベンゼンを反応容器内に入れ、窒素気流下で攪拌しながら内温120℃に加熱し、化合物(B)を完全に溶解させた。次に、ジクミルパーオキサイド(パークミルD、日本油脂製)0.22重量部をジフェニルエーテル0.19重量部に溶解させた溶液を、反応液の内温を120℃〜130℃に保ちながら、1時間かけて反応液へ滴下した。
反応終了後、反応液を50℃まで冷却し、2−プロパノール31重量部に添加した。析出した固体を濾過して、2−プロパノールで洗浄した。得られた重合体をテトラヒドロフラン36重量部に溶解させ、メタノール32重量部へ添加し、再沈精製した。真空乾燥後、重量平均分子量約8.0万の重合体(1)を0.4重量部得た。
【0136】
<実施例7:重合体(2)の合成>
化合物(C)1重量部と33重量部のt−ブチルベンゼンを反応容器内に入れ、窒素気流下で攪拌しながら内温120℃に加熱し、化合物(C)を完全に溶解させた。次に、ジクミルパーオキサイド(パークミルD、日本油脂製)0.22重量部をジフェニルエーテル0.19重量部に溶解させた溶液を、反応液の内温を120℃〜130℃に保ちながら、1時間かけて反応液へ滴下した。
反応終了後、反応液を50℃まで冷却し、2−プロパノール31重量部に添加した。析出した固体を濾過して、2−プロパノールで洗浄した。得られた重合体をテトラヒドロフラン36重量部に溶解させ、メタノール32重量部へ添加し、再沈精製した。真空乾燥後、重量平均分子量約4.0万の重合体(2)を0.3重量部得た。
【0137】
<実施例8:重合体(3)の合成>
化合物(F)1重量部と33重量部のt−ブチルベンゼンを反応容器内に入れ、窒素気流下で攪拌しながら内温120℃に加熱し、化合物(F)を完全に溶解させた。次に、ジクミルパーオキサイド(パークミルD、日本油脂製)0.22重量部をジフェニルエーテル0.19重量部に溶解させた溶液を、反応液の内温を120℃〜130℃に保ちながら、1時間かけて反応液へ滴下した。
反応終了後、反応液を50℃まで冷却し、2−プロパノール31重量部に添加した。析出した固体を濾過して、2−プロパノールで洗浄した。得られた重合体をテトラヒドロフラン36重量部に溶解して、メタノール32重量部へ添加し、再沈精製した。真空乾燥後、重量平均分子量約9.0万の重合体(3)を0.5重量部得た。
【0138】
<実施例9:膜密度、誘電率、機械的強度、耐熱性の測定>
実施例1〜8で得た化合物(A)〜(I)、重合体(1)〜(3)をそれぞれ1.0gはかりとり、それぞれシクロヘキサノン9.0gに完全に溶解させて塗布液を調製した。なお、比較例として、テトラキス(4−エチニルフェニル)メタン1.0gを用いて、シクロヘキサノン9.0gに完全に溶解させて塗布液を調製した。
調製した各塗布液をACT8SOD(東京エレクトロン製)を用いてスピンコート法により、シリコン基板上に塗布した。得られた塗膜を、窒素気流下、ホットプレート上で250℃で60秒間加熱した後、更に窒素置換した400℃のオーブン中で60分間焼成した結果、膜厚0.5μmの膜が得られた。
得られた膜についてリガク社の薄膜構造評価用X線回折装置 ATX-Gにて膜密度の評価を行った。膜密度の値はテトラキス(4-エチニルフェニル)メタンの値を1.00として示した。また、膜の比誘電率(測定温度:25℃、以降も同様)は、フォーディメンジョンズ製水銀プローバおよび横河ヒューレットパッカード製のHP4285ALCRメーターを用いて1MHzにおける容量値から算出した。また、本発明の絶縁膜におけるヤング率の測定方法としては、MTS社ナノインデンターSA2を使用して測定した。耐熱性の評価は、空気中400℃で30秒加熱し、膜厚変化を測定することにより行った。結果を表1に示す。
【0139】
【表1】

【0140】
本発明の膜形成用組成物を用いて形成された膜は、加熱後も膜厚は殆ど変化せず、優れた耐熱性を示した。また、低密度化により低い誘電率を示すと共に、優れた機械的強度を示すことがわかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される化合物、および/または、少なくとも1種の該化合物を用いて得られる重合体を含む膜形成用組成物。
【化1】


(式(1)中、Aは下記式(2−1)〜式(2−7)のいずれかで表される基、または単結合を表す。Xは、下記式(3)で表される基を表す。nは、2〜4までの整数を表す。Xは、同一であっても、異なっていてもよい。)
【化2】


(式(2−1)〜式(2−3)中、Zは、それぞれ独立に、−COO−、−CONH−、−C≡C−、−C=C−または単結合を表す。
式(2−1)中、Wは、−COOHを表す。mは、0〜2の整数を表す。ただし、mが1の時、Zの一方が−CONH−を表し、mが2の時、2つのZが−CONH−を表す。
式(2−4)中、Lは、−O−、−COO−、−CONH−、−C=C−、−C≡C−、−CO−、またはアルキレン基を表す。
式(2−5)中、Lは、−C≡C−C≡C−、−C≡C−、−O−、または単結合を表す。
式(2−6)中、Lは、それぞれ独立に、−C≡C−、−C=C−、または単結合を表す。)
【化3】


(式(3)中、Lは、式(4−1)で表される基、式(4−2)で表される基、または単結合を表す。Lは、式(5−1)で表される基、式(5−2)で表される基、または単結合を表す。Yは、水素原子、または式(6−1)〜式(6−4)のいずれかで表される基を表す。ただし、Lが式(4−2)で表される基または単結合の際に、Lが単結合であることはない。式(5−1)および式(5−2)中の*は、Yとの結合位置を示す。式(6−1)〜式(6−4)中の**は、Lとの結合位置を示す。)
【化4】


【化5】

【請求項2】
前記式(1)のAが、式(2−1)で表される基である請求項1に記載の膜形成用組成物。
【請求項3】
前記式(1)のAが、式(2−2)で表される基である請求項1に記載の膜形成用組成物。
【請求項4】
前記式(1)のAが、式(2−4)で表される基である請求項1に記載の膜形成用組成物。
【請求項5】
前記式(1)のAが、式(2−5)で表される基である請求項1に記載の膜形成用組成物。
【請求項6】
前記式(1)のAが、式(2−6)で表される基である請求項1に記載の膜形成用組成物。
【請求項7】
前記式(3)のLが、式(4−1)で表される基である請求項1〜6のいずれかに記載の膜形成用組成物。
【請求項8】
前記式(3)のLが、式(5−1)で表される基である請求項1〜7のいずれかに記載の膜形成用組成物。
【請求項9】
前記式(3)のLが、式(5−2)で表される基である請求項1〜7のいずれかに記載の膜形成用組成物。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の膜形成用組成物を用いて得られる膜。
【請求項11】
絶縁膜として使用される請求項10に記載の膜。
【請求項12】
請求項11に記載の絶縁膜を有する電子デバイス。

【公開番号】特開2010−43177(P2010−43177A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−207791(P2008−207791)
【出願日】平成20年8月12日(2008.8.12)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】