説明

膜形成用組成物

【課題】電子デバイスなどに用いられる誘電率、機械強度等の膜特性が良好であり、かつEBR形状が良好な絶縁膜形成用組成物に関し、更には前記絶縁膜形成用組成物を用いて得られる絶縁膜およびそれを有する電子デバイスを提供することを目的とする。
【解決手段】以下の成分(A)、(B)及び(C)を含有することを特徴とする膜形成用組成物により、上記課題が解決される。
(A)かご型構造基を有する化合物。
(B)Siを含む界面活性剤。
(C)少なくとも一つの下記の構造を有する有機溶媒。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は膜形成用組成物に関し、更に詳しくは電子デバイスなどに用いられる誘電率、機械強度、耐熱性等の膜特性が良好であり、かつEBR処理を行った際に膜周縁部のEBR形状が良好な膜形成用組成物に関し、更には該組成物を用いて得られる絶縁膜を有する電子デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子材料分野においては、高集積化、多機能化、高性能化の進行に伴い、回路抵抗や配線間のコンデンサー容量が増大し、消費電力や遅延時間の増大を招いている。中でも、遅延時間の増大は、デバイスの信号スピードの低下やクロストークの発生の大きな要因となるため、この遅延時間を減少させてデバイスの高速化を図るべく、寄生抵抗や寄生容量の低減が求められている。この寄生容量を低減するための具体策の一つとして、配線の周辺を低誘電性の層間絶縁膜で被覆することが試みられている。また、層間絶縁膜には、実装基板製造時の薄膜形成工程やチップ接続、ピン付け等の後工程に耐え得る優れた耐熱性やウェットプロセスに耐え得る耐薬品性が求められている。更に、近年は、Al配線から低抵抗のCu配線が導入されつつあり、これに伴い、CMP(ケミカルメカニカルポリッシング)による平坦化が一般的となっており、このプロセスに耐え得る高い機械的強度が求められている。
【0003】
リジッドなカゴ構造の飽和炭化水素であるアダマンタンやジアマンタンを分子内に導入したポリマーが開示されている(特許文献1)。アダマンタンやジアマンタンはダイヤモンドイド構造を有し、高い耐熱性と低い誘電率を示す点で好ましいユニットである。しかしながら、これらのポリマーは溶剤への溶解性が低く、薄膜形成が困難であったり、カゴ構造を連結する基の影響で誘電率が高くなることが課題であり、改良が要求されている。
【0004】
一方、これらの化合物の塗布液から絶縁膜等の薄膜を形成する際、膜周縁部にビードが形成されたり、あるいは基板裏面に膜形成用組成物が回り込むことがあり、このようなビードや裏面の組成物を除去するために、膜形成用組成物を塗布後、EBR(エッジビードリムービング)処理と呼ばれる、処理溶剤による膜の周縁部の除去処理を行うことが一般的である。このEBR処理は、通常、基板を回転させながら、塗布された膜形成用組成物上に処理溶剤を添加して行う方法がとられるが、このような処理を行うと、形成された膜の周縁部の垂直断面が角状の、いわゆるハンプ(こぶ)と呼ばれる形状となって、膜が不均一となったり(図1参照)、膜周縁部にいわゆるブツとよばれる気泡のような形状ができるという問題がある。
これらのEBR処理後の膜周縁部の形状(EBR形状とも呼ぶ)によっては、均一化するために更なる処理が必要であったり、また、他の層形状にも影響が出るため、最終的には電子デバイスの歩留まりが悪くなるという問題が生じる。
【0005】
かご型構造基を有するポリマーとSi含有界面活性剤を用いることにより、塗布膜の基板への密着性が改良されることが報告されている(特許文献2)。
しかし、膜形成用組成物において有効にEBR形状を改良する方法は現在まで報告されていない。
【0006】
【特許文献1】特開2000−100808号
【特許文献2】特開2006−257279号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記問題点を解決するための膜形成用組成物を提供することを目的とする。更に詳しくは、電子デバイスなどに用いられる誘電率、機械強度等の膜特性が良好であり、かつEBR形状が良好な絶縁膜形成用組成物に関し、更には前記絶縁膜形成用組成物を用いて得られる絶縁膜およびそれを有する電子デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、下記の構成の膜形成用組成物を用いて膜を形成することにより、ハンプ率が低く、周縁部にブツが無い、EBR形状が良好な膜を形成できることを見出した。
(1)以下の成分(A)、(B)及び(C)を含有することを特徴とする膜形成用組成物。
(A)かご型構造基を有する化合物。
(B)Siを含む界面活性剤。
(C)少なくとも一つの下記の構造を有する有機溶媒。

(2)成分(C)が下記の一般式(i)で表される上記(1)に記載の膜形成用組成物。
式(i)

式中、nは3以上であり、Rは未置換又は不活性に置換された飽和炭化水素基、又は未置換又は不活性に置換された芳香族基である。
(3)成分(C)が2−ヘプタノンである、上記(1)又は(2)に記載の膜形成用組成物。
(4)成分(B)が膜形成組成物の全質量に対して1000ppm以上含まれる、(1)〜(3)のいずれか一に記載の膜形成用組成物。
(5)かご型構造基を有する化合物が、かご型構造基を有するモノマーの重合体であることを特徴とする、上記(1)〜(4)のいずれか一に記載の膜形成用組成物。
(6)かご型構造基を有するモノマーが、重合可能な炭素−炭素二重結合または炭素−炭素三重結合を有することを特徴とする、上記(5)に記載の膜形成用組成物。
(7)かご型構造が、アダマンタン、ビアダマンタン、ジアマンタン、トリアマンタン、及びテトラマンタンからなる群より選択されることを特徴とする、上記(1)〜(6)のいずれか一に記載の膜形成用組成物。
(8)かご型構造基を有するモノマーが、下記式(I)〜(VI)からなる化合物群より選択されることを特徴とする、上記(5)に記載の膜形成用組成物。

式(I)〜(VI)中、
1〜X8は水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数2〜10のアルキニル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数0〜20のシリル基、炭素数2〜10のアシル基、炭素数2〜10のアルコキシカルボニル基、または炭素数1〜20のカルバモイル基等を表す。
1〜Y8はハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基または炭素数0〜20のシリル基を表す。
1、m5はそれぞれ独立に1〜16の整数を表し、n1、n5は0〜15の整数を表す。
2、m3、m6、m7はそれぞれ独立に1〜15の整数を表し、n2、n3、n6、n7は0〜14の整数を表す。
4、m8はそれぞれ独立に1〜20の整数を表し、n4、n8は0〜19の整数を表す。
(9)かご型構造基を有する化合物がかご型構造基を有するモノマーを遷移金属触媒存在下またはラジカル開始剤存在下で重合して得られる重合体であることを特徴とする、上記(1)〜(8)のいずれか一に記載の膜形成用組成物。
(10)上記(1)〜(9)のいずれか一に記載の膜形成用組成物を用いて形成された絶縁膜。
(11)上記(1)〜(9)のいずれか一に記載の膜形成用組成物を用いて形成された絶縁膜を有する電子デバイス。
【発明の効果】
【0009】
本発明の膜形成用組成物により、誘電率、機械強度等の膜特性が良好であり、かつハンプ率が著しく低く、また膜周縁部にブツがない、EBR形状が良好な絶縁膜を形成することができる。また、前記絶縁膜形成用組成物を用いて得られる絶縁膜は、CMPプロセスにおける剥がれが殆ど無く、また、高い歩留まりで電子デバイスを作成することができるという顕著な効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の膜形成用組成物は、以下の成分(A)、(B)及び(C)を含有することを特徴とする。
(A)かご型構造基を有する化合物。
(B)Siを含む界面活性剤。
(C)少なくとも一つの下記の構造を有する有機溶媒。

以下、各成分、本発明の膜形成用組成物及び前記膜形成用組成物を用いて得られる絶縁膜及び電子デバイスについて詳細に説明する。
【0011】
(A)かご型構造基を有する化合物
本明細書において、「かご型構造基」の「かご型構造」とは、共有結合した原子で形成された複数の環によって容積が定まり、容積内に位置する点は環を通過せずには容積から離れることができないような分子を指す。例えば、アダマンタン構造はかご型構造と考えられる。対照的にノルボルナン(ビシクロ[2,2,1]ヘプタン)などの単一架橋を有する環状構造は、単一架橋した環状化合物の環が容積を定めないことから、かご型構造とは考えられない。
【0012】
本発明においてかご型構造は飽和、不飽和結合のいずれを含んでいても良く、酸素、窒素、硫黄等のヘテロ原子を含んでも良いが、低誘電率の見地から飽和炭化水素が好ましい。
【0013】
本発明のかご型構造は、好ましくはアダマンタン、ビアダマンタン、ジアマンタン、トリアマンタン、テトラマンタン、ドデカヘドランであり、より好ましくはアダマンタン、ビアダマンタン、ジアマンタンであり、低誘電率である点で特にビアダマンタン、ジアマンタンが好ましい。
【0014】
本発明におけるかご型構造は1つ以上の置換基を有していても良く、置換基の例としては、ハロゲン原子(フッ素原子、クロル原子、臭素原子、または沃素原子)、炭素数1〜10の直鎖、分岐、環状のアルキル基(メチル、t−ブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル等)、炭素数2〜10のアルケニル基(ビニル、プロペニル等)、炭素数2〜10のアルキニル基(エチニル、フェニルエチニル等)、炭素数6〜20のアリール基(フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル等)、炭素数2〜10のアシル基(ベンゾイル等)、炭素数2〜10のアルコキシカルボニル基(メトキシカルボニル等)、炭素数1〜10のカルバモイル基(N,N−ジエチルカルバモイル等)、炭素数6〜20のアリールオキシ基(フェノキシ等)、炭素数6〜20のアリールスルホニル基(フェニルスルホニル等)、ニトロ基、シアノ基、シリル基(トリエトキシシリル、メチルジエトキシシリル、トリビニルシリル等)等である。
【0015】
本発明における「かご型構造基」は、上記かご型構造の分子から少なくとも一つの水素原子あるいは置換基を除去して誘導される、一価以上の基を意味する。
本発明におけるかご型構造基は2〜4価であることが好ましい。このとき、かご型構造基に結合する基は1価以上の置換基でも2価以上の連結基でも良い。かご型構造基は好ましくは、2または3価であり、特に好ましくは2価である。
【0016】
本発明のかご型構造基を有する化合物とは、かご型構造基を有するモノマーの重合体であることが好ましい。ここでモノマーとは、互いに重合して2量体以上の重合体になるものを指す。この重合体は、ホモポリマーでもコポリマーでも良い。
【0017】
モノマーの重合反応はモノマーに置換した重合性基によって起こる。ここで重合性基とは、モノマーを重合せしめる反応性の置換基を指す。該重合反応としてはどのような重合反応でも良いが、例えばラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合、開環重合、重縮合、重付加、付加縮合、遷移金属触媒重合等が挙げられる。
【0018】
本発明のモノマーの重合反応は非金属の重合開始剤の存在下で行うことが好ましい。例えば、重合可能な炭素−炭素二重結合または炭素−炭素三重結合を有するモノマーを、加熱によって炭素ラジカルや酸素ラジカル等の遊離ラジカルを発生して活性を示す重合開始剤存在下で重合することが出来る。
【0019】
重合開始剤としては有機過酸化物または有機アゾ系化合物が好ましく用いられるが特に有機過酸化物が好ましい。
【0020】
有機過酸化物としては、日本油脂株式会社より市販されているパーヘキサH等のケトンパーオキサイド類、パーヘキサTMH等のパーオキシケタール類、パーブチルH−69等のハイドロパーオキサイド類、パークミルD、パーブチルC、パーブチルD等のジアルキルパーオキサイド類、ナイパーBW等のジアシルパーオキサイド類、パーブチルZ、パーブチルL等のパーオキシエステル類、パーロイルTCP等のパーオキシジカーボネート等が好ましく用いられる。
【0021】
有機アゾ系化合物としては和光純薬工業株式会社で市販されているV−30、V−40、V−59、V−60、V−65、V−70等のアゾニトリル化合物類、VA−080、VA−085、VA−086、VF−096、VAm−110、VAm−111等のアゾアミド化合物類、VA−044、VA−061等の環状アゾアミジン化合物類、V−50、VA−057等のアゾアミジン化合物類等が好ましく用いられる。
【0022】
本発明の重合開始剤は1種のみ、または2種以上を混合して用いてもよい。
本発明の重合開始剤の使用量はモノマー1モルに対して、好ましくは0.001〜2モル、より好ましくは0.01〜1モル、特に好ましくは0.05〜0.5モルである。
【0023】
本発明のモノマーの重合反応は遷移金属触媒存在下で行うことも好ましい。例えば、重合可能な炭素−炭素二重結合または炭素−炭素三重結合を有するモノマーを例えばPd(PPh34、Pd(OAc)2等のPd系触媒、Ziegler−Natta触媒、ニッケルアセチルアセトネート等のNi系触媒、WCl6等のW系触媒、MoCl5等のMo系触媒、TaCl5等のTa系触媒、NbCl5等のNb系触媒、Rh系触媒、Pt系触媒等を用いて重合することが好ましい。
【0024】
本発明の遷移金属触媒は1種のみ、または2種以上を混合して用いてもよい。
本発明の遷移金属触媒の使用量はモノマー1モルに対して、好ましくは0.001〜2モル、より好ましくは0.01〜1モル、特に好ましくは0.05〜0.5モルである。
【0025】
本発明におけるかご型構造基はポリマー中にペンダント基として置換していて良く、ポリマー主鎖の一部となっていても良いが、ポリマー主鎖の一部となっている形態がより好ましい。ここで、ポリマー主鎖の一部になっている形態とは、本ポリマーからかご化合物を除去するとポリマー鎖が切断されることを意味する。この形態においては、かご型構造は直接単結合するかまたは適当な2価の連結基によって連結される。連結基の例としては例えば、−C(R11)(R12)−、−C(R13)=C(R14)−、−C≡C−、アリーレン基、−CO−、−O−、−SO2−、−N(R15)−、−Si(R16)(R17)−またはこれらを組み合わせた基が挙げられる。ここで、R11〜R17はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基またはアリール基を表す。これらの連結基は置換基で置換されていてもよく、例えば前述の置換基が好ましい例として挙げられる。
この中でより好ましい連結基は、−C(R11)(R12)−、−CH=CH−、−C≡C−、アリーレン基、−O−、−Si(R16)(R17)−またはこれらを組み合わせた基であり、特に好ましいものは、低誘電率である見地から−C(R11)(R12)−、−CH=CH−である。
【0026】
本発明のかご型構造基を有する化合物とは、低分子化合物であっても高分子化合物(たとえばポリマー)であっても良いが、好ましいものはポリマーである。かご型構造を有する化合物がポリマーである場合、その質量平均分子量は好ましくは1000〜500000、より好ましくは5000〜200000、特に好ましくは10000〜100000である。かご型構造を有するポリマーは分子量分布を有する樹脂組成物として絶縁膜形成用塗布液に含まれていても良い。かご型構造を有する化合物が低分子化合物である場合、その分子量は好ましくは150〜3000、より好ましくは200〜2000、特に好ましくは220〜1000である。
【0027】
本発明のかご型構造基を有する化合物は、重合可能な炭素−炭素二重結合または炭素−炭素三重結合を有するモノマーの重合体であることが好ましい。
更に、下記式(I)〜(VI)で表される化合物の重合体であることがより好ましい。
【0028】

上記式(I)〜(VI)中の各記号は以下の意味を表す。
1〜X8は水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数2〜10のアルキニル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数0〜20のシリル基、炭素数2〜10のアシル基、炭素数2〜10のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜20のカルバモイル基等を表す。このうち、好ましくは水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数0〜20のシリル基、炭素数2〜10のアシル基、炭素数2〜10のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜20のカルバモイル基であり、より好ましくは水素原子、炭素数6〜20のアリール基であり、特に好ましくは水素原子である。
【0029】
1〜Y8はハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素等)、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基または炭素数0〜20のシリル基を表す。より好ましくは置換基を有していても良い炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基であり、特に好ましくはアルキル基(メチル基等)である。
1〜X8、Y1〜Y8は更に別の置換基で置換されていてもよい。
【0030】
1、m5はそれぞれ独立に1〜16の整数を表し、好ましくは1〜4であり、より好ましくは1〜3であり、特に好ましくは2である。
1、n5は0〜15の整数を表し、好ましくは0〜4であり、より好ましくは0または1であり、特に好ましくは0である。
2、m3、m6、m7はそれぞれ独立に1〜15の整数を表し、好ましくは1〜4であり、より好ましくは1〜3であり、特に好ましくは2である。
2、n3、n6、n7は0〜14の整数を表し、好ましくは0〜4であり、より好ましくは0または1であり、特に好ましくは0である。
4、m8はそれぞれ独立に1〜20の整数を表し、好ましくは1〜4であり、より好ましくは1〜3であり、特に好ましくは2である。
4、n8は0〜19の整数を表し、好ましくは0〜4であり、より好ましくは0または1であり、特に好ましくは0である。
【0031】
本発明のかご型構造を有するモノマーは好ましくは上記式(II)、(III)、(V)、(VI)であり、より好ましくは上記式(II)、(III)であり、特に好ましくは上記式(III)で表される化合物である。
【0032】
本発明のかご型構造を有する化合物は2つ以上を併用しても良く、また、本発明のかご型構造を有するモノマーを2種以上共重合しても良い。
【0033】
本発明のかご型構造を有する化合物としては、例えば特開平11−322929号、特開2003−12802号、特開2004−18593号記載のポリベンゾオキサゾール、特開2001−2899号に記載のキノリン樹脂、特表2003−530464号、特表2004−535497号、特表2004−504424号、特表2004−504455号、特表2005−501131号、特表2005−516382号、特表2005−514479号、特表2005−522528号、特開2000−100808号、米国特許6509415号に記載のポリアリール樹脂、特開平11−214382号、特開2001−332542号、特開2003−252982号、特開2003−292878号、特開2004−2787号、特開2004−67877号、特開2004−59444号に記載のポリアダマンタン、特開2003−252992号、特開2004−26850号に記載のポリイミド等が挙げられる。
【0034】
以下に本発明で使用できるカゴ構造を有するモノマーの具体例を記載するが、本発明はこれらに限定はされない。
【0035】











【0036】
重合反応で使用する溶媒は、原料モノマーが必要な濃度で溶解可能であり、かつ得られる重合体から形成する膜の特性に悪影響を与えないものであればどのようなものを使用しても良い。例えば水やメタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール系溶剤、アルコールアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、アセトフェノン等のケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン、メチルベンゾエート等のエステル系溶剤、ジブチルエーテル、アニソール等のエーテル系溶剤、トルエン、キシレン、メシチレン、1,2,4,5−テトラメチルベンゼン、ペンタメチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、1,4−ジイソプロピルベンゼン、t−ブチルベンゼン、1,4−ジ−t−ブチルベンゼン、1,3,5−トリエチルベンゼン、1,3,5−トリ−t−ブチルベンゼン、4−t−ブチル−オルトキシレン、1−メチルナフタレン、1,3,5−トリイソプロピルベンゼン等の芳香族炭化水素系溶剤、N−メチルピロリジノン、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶剤、四塩化炭素、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼン等のハロゲン系溶剤、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶剤などが利用できる。これらの中でより好ましい溶剤はアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、アセトフェノン、酢酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン、アニソール、テトラヒドロフラン、トルエン、キシレン、メシチレン、1,2,4,5−テトラメチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、t−ブチルベンゼン、1,4−ジ−t−ブチルベンゼン、1,3,5−トリ−t−ブチルベンゼン、4−t−ブチル−オルトキシレン、1−メチルナフタレン、1,3,5−トリイソプロピルベンゼン、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼンであり、より好ましくはテトラヒドロフラン、γ−ブチロラクトン、アニソール、トルエン、キシレン、メシチレン、イソプロピルベンゼン、t−ブチルベンゼン、1,3,5−トリ−t−ブチルベンゼン、1−メチルナフタレン、1,3,5−トリイソプロピルベンゼン、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼンであり、特に好ましくはγ−ブチロラクトン、アニソール、メシチレン、t−ブチルベンゼン、1,3,5−トリイソプロピルベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼンである。これらは単独でも2種以上を混合して用いてもよい。
反応液中のモノマーの濃度は好ましくは1〜50重量%、より好ましくは5〜30重量%、特に好ましくは10〜20重量%である。
【0037】
本発明における重合反応の最適な条件は、重合開始剤、モノマー、溶媒の種類、濃度等によって異なるが、好ましくは内温0℃〜200℃、より好ましくは50℃〜170℃、特に好ましくは100℃〜150℃で、好ましくは1〜50時間、より好ましくは2〜20時間、特に好ましくは3〜10時間の範囲である。
また、酸素による重合開始剤の不活性化を抑制するために不活性ガス雰囲気下(例えば窒素、アルゴン等)で反応させることが好ましい。反応時の酸素濃度は好ましくは100ppm以下、より好ましくは50ppm以下、特に好ましくは20ppm以下である。
重合して得られるポリマーの質量平均分子量の好ましい範囲は1000〜500000、より好ましくは5000〜300000、特に好ましくは10000〜200000である。
【0038】
本発明のカゴ構造基を有する化合物は、例えば市販のジアマンタンを原料として、臭化アルミニウム触媒存在下または非存在下で臭素と反応させて臭素原子を所望の位置に導入、続けて臭化アルミニウム、塩化アルミニウム、塩化鉄等のルイス酸の存在下で臭化ビニルとフリーデルクラフツ反応させて2,2−ジブロモエチル基を導入、続けて強塩基で脱HBr化してエチニル基に変換することで合成することができる。具体的にはMacromolecules., 1991年 24巻 5266〜5268頁、1995年 28巻 5554〜5560、Journal of Organic Chemistry., 39, 2995−3003(1974)等に記載された方法に準じて合成することが出来る。
また、末端アセチレン基の水素原子をブチルリチウム等でアニオン化して、これにハロゲン化アルキルやハロゲン化シリルを反応させることによって、アルキル基やシリル基を導入することが出来る。
本発明の重合体は単独で使用しても2種以上を混合して使用してもよい。
【0039】
(B)Siを含む界面活性剤。
本発明の膜形成用組成物に用いる界面活性剤は、少なくとも1原子のSi原子を含む界面活性剤(以下、シリコン系界面活性剤とも呼ぶ)である。
本発明に使用するシリコン系界面活性剤としては、いかなるシリコン系界面活性剤でもよいが、アルキレンオキシド及びジメチルシロキサンを含む構造であることが好ましい。下記化学式を含む構造であることが更に好ましい。







【0040】

【0041】
式中Rは水素原子または炭素原子数1〜5のアルキル基であり、xは1〜20の整数であり、m、nはそれぞれ独立に2〜100の整数である。複数のRは互いに同じでも異なっていてもよい。
【0042】
本発明に使用するシリコン系界面活性剤としては、例えばBYK306、BYK307(ビックケミー社製)、SH7PA、SH21PA、SH28PA、SH30PA(東レ・ダウコーニング・シリコーン社製)、TroysolS366(トロイケミカル社製)等を挙げることができる。
【0043】
成分(B)が膜形成組成物の全質量に対して1000ppm以上であることが好ましい。より好ましくは1000ppm以上で、10000ppm以下であり、最も好ましくは1000ppm以上で、5000ppm以下である。これは、塗布液中の界面活性剤中の濃度がミセル限界濃度近傍にないと界面活性剤の効果が小さく、一方、濃度が高すぎると界面活性剤の残留による膜質の変化が懸念されるからである。
【0044】
本発明の膜形成用組成物には、上記Siを含む界面活性剤の他に、更に他の界面活性剤を使用してもよい。例えば、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、より詳細には、含フッ素系界面活性剤、ポリアルキレンオキシド系界面活性剤、アクリル系界面活性剤等が挙げられる。これらの界面活性剤は、一種類でも良いし、二種類以上用いても良い。
【0045】
本発明に使用するノニオン系界面活性剤としては、いかなるノニオン系界面活性剤でもよい。例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアリールエーテル類、ポリオキシエチレンジアルキルエステル類、ソルビタン脂肪酸エステル類、脂肪酸変性ポリオキシエチレン類、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体等を挙げることができる。
【0046】
本発明に使用する含フッ素系界面活性剤としては、いかなる含フッ素系界面活性剤でもよい。例えば、パーフルオルオクチルポリエチレンオキシド、パーフルオルデシルポリエチレンオキシド、パーフルオルドデシルポリエチレンオキシド等が挙げられる。
【0047】
本発明に使用するアクリル系界面活性剤としては、いかなるアクリル系界面活性剤でもよい。例えば、(メタ)アクリル酸系共重合体等が挙げられる。
【0048】
(C)有機溶媒
本発明の膜形成用組成物には下記式で表されるアルキル鎖構造を有する有機溶媒を含む。

nは好ましくは6以下であり、更に好ましくは5以下である。
【0049】
(C)上記式で表される構造を有する有機溶媒として更に好ましくは、下記の一般式(i)で表される有機溶媒が挙げられる。
式(i)

nは3以上であり、好ましくは6以下であり、更に好ましくは5以下である。最も好ましくは3である。
Rは、未置換又は不活性に置換された飽和炭化水素基、又は未置換又は不活性に置換された芳香族基である。
【0050】
Rの定義における“不活性に置換された”とは、置換に用いられた基が炭素−炭素二重結合、炭素−炭素三重結合等の不飽和基を有さず、反応性が低いことを意味する。
【0051】
式(i)の飽和炭化水素基としては、炭素数1〜10の直鎖、分岐鎖、あるいは環式アルキル基が挙げられ、より好ましくは炭素数1〜5の直鎖、分岐鎖、あるいは環式アルキル基が挙げられる。式(i)の飽和炭化水素基の具体例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec-ブチル、t-ブチル基が挙げられる。
【0052】
式(i)の芳香族基としては、炭素数6〜12の芳香族基が挙げられる。式(i)の芳香族基の具体例としては、フェニル基が挙げられる。
【0053】
成分(C)として好ましい溶媒の具体例としては、2−ヘキサノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、2−オクタノン、3−オクタノン、4−オクタノン、n−ブチルフェニルケトン等が挙げられる。
成分(C)として最も好ましくは、2−ヘプタノンが挙げられる。
本発明の膜形成用組成物を用いることにより、良好なEBR形状を達成でき、またハンプ率を顕著に下げることができる。
従来用いられてきたシクロヘキサノンのような環状構造を有する溶媒に対して、本発明の膜組成物に用いられる炭素数4以上の直鎖アルキル鎖を有する溶媒は、ある一定の方向からの立体障害が小さく、その結果溶媒中のポリマー及び界面活性剤と相互作用して、膜形成組成物の表面張力が大きく低下したからだと考えられる。
【0054】
本発明の膜形成用組成物の固形分濃度は、好ましくは1〜10質量%であり、より好ましくは1〜7質量%であり、特に好ましくは1〜5質量%である。
【0055】
[ハンプ率]
本明細書において、「ハンプ率」とは、基板表面から測定した最も厚い部分の膜厚から平均膜厚を差し引いた値(ハンプ高さとも呼ぶ、h)の平均膜厚(a)に対する割合(%)を意味する(図1参照)。
ハンプ率は小さければ小さいほど好ましいが、特に25%以下であることがCMPプロセス時の膜剥がれ防止の観点から好ましい。より好ましくは15%以下であり、最も好ましくは10%以下である。
ハンプ率の測定のための膜厚の測定は、例えば、触針式膜厚測定器等の公知の膜厚測定機器により行うことができる。
【0056】
本発明の膜形成用組成物には不純物としての金属含量が充分に少ないことが好ましい。膜形成用組成物の金属濃度はICP−MS法にて高感度に測定可能であり、その場合の遷移金属以外の金属含有量は好ましくは30ppm以下、より好ましくは3ppm以下、特に好ましくは300ppb以下である。また、遷移金属に関しては酸化を促進する触媒能が高く、プリベーク、熱硬化プロセスにおいて酸化反応によって本発明で得られた膜の誘電率を上げてしまうという観点から、含有量がより少ないほうがよく、好ましくは10ppm以下、より好ましくは1ppm以下、特に好ましくは100ppb以下である。
【0057】
膜形成用組成物の金属濃度は本発明の膜形成用組成物を用いて得た膜に対して全反射蛍光X線測定を行うことによっても評価できる。X線源としてW線を用いた場合、金属元素としてK、Ca、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Pdが観測可能であり、それぞれ100×1010cm-2以下が好ましく、より好ましくは50×1010cm-2以下、特に好ましくは10×1010cm-2以下である。また、ハロゲンであるBrも観測可能であり、残存量は10000×1010cm-2以下が好ましく、より好ましくは1000×1010cm-2以下、特に好ましくは400×1010cm-2以下である。また、ハロゲンとしてClも観測可能であるが、CVD装置、エッチング装置等へダメージを与えるという観点から残存量は100×1010cm-2以下が好ましく、より好ましくは50×1010cm-2以下、特に好ましくは10×1010cm-2以下である。
【0058】
(D)その他の添加剤
更に、本発明の膜形成用組成物には、得られる絶縁膜の特性(耐熱性、誘電率、機械強度、塗布性、密着性等)を損なわない範囲で、ラジカル発生剤、コロイド状シリカ、シランカップリング剤、密着剤などの添加剤を添加してもよい。
【0059】
本発明の膜形成用組成物には、いかなるコロイド状シリカを使用してもよい。例えば、高純度の無水ケイ酸を親水性有機溶媒もしくは水に分散した分散液であり、通常、平均粒径5〜30nm、好ましくは10〜20nm、固形分濃度が5〜40重量%程度のものである。
【0060】
本発明の膜形成用組成物には、いかなるシランカップリング剤を使用してもよいが、例えば、3−グリシジロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アミノグリシジロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシジロキシプロピルメチルジメトキシシラン、1−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、2−アミノプロピルトリメトキシシラン、2−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N−エトキシカルボニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−エトキシカルボニル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−トリエトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、N−トリエトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、10−トリメトキシシリル−1,4,7−トリアザデカン、10−トリエトキシシリル−1,4,7−トリアザデカン、9−トリメトキシシリル−3,6−ジアザノニルアセテート、9−トリエトキシシリル−3,6−ジアザノニルアセテート、N−ベンジル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ベンジル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−ビス(オキシエチレン)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ビス(オキシエチレン)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。本発明で使用するシランカップリング剤は、一種類でも良いし、二種類以上でも良い。
【0061】
本発明の膜形成用組成物には、いかなる密着促進剤を使用してもよいが、例えば、トリメトキシシリル安息香酸、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、トリメトキシビニルシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、アルミニウムモノエチルアセトアセテートジイソプロピレート、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、トリメチルクロロシラン、ジメチルビニルクロロシラン、メチルジフエニルクロロシラン、クロロメチルジメチルクロロシラン、トリメチルメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、メチルジメトキシシラン、ジメチルビニルエトキシシラン、ジフエニルジメトキシシラン、フエニルトリエトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、N,N’−ビス(トリメチルシリル)ウレア、ジメチルトリメチルシリルアミン、トリメチルシリルイミダゾール、ビニルトリクロロシラン、ベンゾトリアゾール、ベンズイミダゾール、インダゾール、イミダゾール、2−メルカプトベンズイミダゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、ウラゾール、チオウラシル、メルカプトイミダゾール、メルカプトピリミジン、1,1−ジメチルウレア、1,3−ジメチルウレア、チオ尿素化合物等を挙げることができる。官能性シランカップリング剤が密着促進剤として好ましい。密着促進剤の好ましい使用量は、全固形分100重量部に対して10重量部以下、特に0.05〜5重量部であることが好ましい。
【0062】
本発明の膜形成用組成物には、膜の機械強度の許す範囲内で、空孔形成因子を使用して、膜を多孔質化し、低誘電率化を図ることができる。
空孔形成剤となる添加剤としての空孔形成因子としては特に限定はされないが、非金属化合物が好適に用いられ、膜形成用塗布液で使用される溶剤との溶解性、本発明重合体との相溶性を同時に満たすことが必要である。またこの空孔形成剤の沸点若しくは分解温度は、好ましくは100〜500℃、より好ましくは200〜450℃、特に好ましくは250〜400℃である。分子量としては、200〜50000であることが好ましく、より好ましくは300〜10000、特に好ましくは400〜5000である。添加量は膜を形成する重合体に対して、質量%で好ましくは0.5〜75%、より好ましくは0.5〜30%、特に好ましくは1%〜20%である。また、空孔形成因子として、重合体の中に分解性基を含んでいても良く、その分解温度は好ましくは100〜500℃、より好ましくは200〜450℃、特に好ましくは250〜400℃であると良い。分解性基の含有率は膜を形成する重合体に対して、モル%で0.5〜75%、より好ましくは0.5〜30%、特に好ましくは1〜20%である。
【0063】
本発明の膜形成用組成物を使用して得られる膜は、膜形成用組成物をスピンコーティング法、ローラーコーティング法、ディップコーティング法、スキャン法等の任意の方法により基板に塗布した後、溶剤を加熱処理で除去することにより形成することができる。基板に塗布する方法としては,スピンコーティング法,スキャン法によるものが好ましい。特に好ましくは,スピンコーティング法によるものである。
【0064】
スピンコーティングについては,市販の装置を使用できる。例えば,クリーントラックシリーズ(東京エレクトロン製),D−スピンシリーズ(大日本スクリーン製),SSシリーズあるいはCSシリーズ(東京応化工業製)等が好ましく使用できる。スピンコート条件としては,いずれの回転速度でもよいが,膜の面内均一性の観点より,300mmシリコン基板においては1300rpm程度の回転速度が好ましい。また組成物溶液の吐出方法においては,回転する基板上に組成物溶液を吐出する動的吐出,静止した基板上へ組成物溶液を吐出する静的吐出のいずれでもよいが,膜の面内均一性の観点より,動的吐出が好ましい。また,組成物の消費量を抑制する観点より,予備的に組成物の主溶剤のみを基板上に吐出して液膜を形成した後,その上から組成物を吐出するという方法を用いることもできる。スピンコート時間については特に制限はないが,スループットの観点から180秒以内が好ましい。熱処理の方法は、特に限定されないが、一般的に使用されているホットプレート加熱、ファーネス炉を使用した加熱方法、RTP(Rapid Thermal Processor)等によるキセノンランプを使用した光照射加熱等を適用することができる。好ましくは,ホットプレート加熱,ファーネスを使用した加熱方法である。ホットプレートとしては市販の装置を好ましく使用でき,クリーントラックシリーズ(東京エレクトロン製),D−スピンシリーズ(大日本スクリーン製),SSシリーズあるいはCSシリーズ(東京応化工業製)等が好ましく使用できる。ファーネスとしては,αシリーズ(東京エレクトロン製)等が好ましく使用できる。
【0065】
本発明の膜形成用組成物は、特にスピンコーティング等により膜形成した後に続いてEBR処理を行った場合、膜周縁部のEBR形状を良好に保つという顕著な効果を奏する組成物である。従って、EBR処理を含む膜形成プロセスに用いる場合に特に効果を奏する。
従って、本発明の1つの実施態様は、本発明の膜形成用組成物からなる膜を基板上に設けた後、EBR処理を行うことを特徴とする、膜形成方法である。本発明の膜形成用組成物は、このような膜形成方法において有効に用いることができる。
EBR処理は、膜形成組成物を上述したようなスピンコーティング等の方法により膜形成した後、続いて、基板を所定の回転数(例えば300〜2000rpm程度)で回転させながら、処理溶剤を基板表面の塗膜周縁部(例えば、周縁端部から3mm内側の位置)に所定時間(例えば3〜15秒間)吐出することにより行う。このとき、基板裏面にも溶剤を吐出して裏面も併せて洗浄するプロセスを組み合わせることが好ましい。
上記処理に用いる処理溶剤としては、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン等が挙げられる。特にシクロヘキサノンをEBR処理溶剤として使用する場合、本発明の膜形成用組成物を用いる膜形成方法は有効である。
【0066】
本発明の重合体は基板上に塗布した後に加熱処理することによって硬化させることが特に好ましい。例えば重合体中に残存する炭素三重結合の後加熱時の重合反応が利用できる。この後加熱処理の条件は、好ましくは100〜450℃、より好ましくは200〜420℃、特に好ましくは350℃〜400℃で、好ましくは1分〜2時間、より好ましくは10分〜1.5時間、特に好ましくは30分〜1時間の範囲である。後加熱処理は数回に分けて行っても良い。また、この後加熱は酸素による熱酸化を防ぐために窒素雰囲気下で行うことが特に好ましい。
また、本発明では加熱処理ではなく高エネルギー線を照射することで重合体中に残存する炭素三重結合の重合反応を起こして硬化させても良い。高エネルギー線とは、電子線、紫外線、X線などが挙げられるが、特にこれらの方法に限定されるものではない。
【0067】
高エネルギー線として、電子線を使用した場合のエネルギーは0〜50keVが好ましく、より好ましくは0〜30keV、特に好ましくは0〜20keVである。電子線の総ドーズ量は好ましくは0〜5μC/cm2、より好ましくは0〜2μC/cm2、特に好ましくは0〜1μC/cm2である。電子線を照射する際の基板温度は0〜450℃が好ましく、より好ましくは0〜400℃、特に好ましくは0〜350℃である。圧力は好ましくは0〜133kPa、より好ましくは0〜60kPa、特に好ましくは0〜20kPaである。本発明の重合物の酸化を防止するという観点から、基板周囲の雰囲気はAr、He、窒素などの不活性雰囲気を用いることが好ましい。また、電子線との相互作用で発生するプラズマ、電磁波、化学種との反応を目的に酸素、炭化水素、アンモニアなどのガスを添加してもよい。本発明における電子線照射は複数回行ってもよく、この場合は電子線照射条件を毎回同じにする必要はなく、毎回異なる条件で行ってもよい。
【0068】
高エネルギー線として紫外線を用いてもよい。紫外線を用いる際の照射波長領域は190〜400nmが好ましく、その出力は基板直上において0.1〜2000mWcm-2が好ましい。紫外線照射時の基板温度は250〜450℃が好ましく、より好ましくは250〜400℃、特に好ましくは250〜350℃である。本発明の重合物の酸化を防止するという観点から、基板周囲の雰囲気はAr、He、窒素などの不活性雰囲気を用いることが好ましい。また、その際の圧力は0〜133kPaが好ましい。
【0069】
本発明の膜形成用組成物を使用して得られる膜は、半導体用層間絶縁膜として使用する際、その配線構造において、配線側面にはメタルマイグレーションを防ぐためのバリア層があっても良く、また、配線や層間絶縁膜の上面底面にはCMPでの剥離を防ぐキャップ層、層間密着層の他、エッチングストッパー層等があってもよく、更には層間絶縁膜の層を必要に応じて他種材料で複数層に分けても良い。
【0070】
本発明の膜形成用組成物を使用して得られる膜は,銅配線あるいはその他の目的でエッチング加工をすることができる。エッチングとしてはウェットエッチング,ドライエッチングのいずれでもよいが,ドライエッチングが好ましい。ドライエッチングは,アンモニア系プラズマ,フルオロカーボン系プラズマのいずれもが適宜使用できる。これらプラズマにはArだけでなく,酸素,あるいは窒素,水素,ヘリウム等のガスを用いることができる。また,エッチング加工後に,加工に使用したフォトレジスト等を除く目的でアッシングすることもでき,更にはアッシング時の残渣を除くため,洗浄することもできる。
【0071】
本発明の膜形成用組成物を使用して得られる膜は,銅配線加工後に,銅めっき部を平坦化するためCMP(化学的機械的研磨)をすることができる。CMPスラリー(薬液)としては,市販のスラリー(例えば,フジミ製,ロデールニッタ製,JSR製,日立化成製等)を適宜使用できる。また,CMP装置としては市販の装置(アプライドマテリアル社製,荏原製作所製等)を適宜使用することができる。更にCMP後のスラリー残渣除去のため,洗浄することができる。
【0072】
本発明の膜形成用組成物を使用して得られる膜は、多様の目的に使用することが出来る。例えばLSI、システムLSI、DRAM、SDRAM、RDRAM、D−RDRAM等の半導体装置、マルチチップモジュール多層配線板等の電子部品における絶縁皮膜として好適であり、半導体用層間絶縁膜、エッチングストッパー膜、表面保護膜、バッファーコート膜の他、LSIにおけるパッシベーション膜、α線遮断膜、フレキソ印刷版のカバーレイフィルム、オーバーコート膜、フレキシブル銅張板のカバーコート、ソルダーレジスト膜、液晶配向膜等として使用することが出来る。
更に、別の用途として本発明の膜に電子ドナーまたはアクセプターをドープすることによって導電性を付与し、導電性膜として使用することも出来る。
【実施例】
【0073】
<合成例1>
Macromolecules.,5266(1991)に記載の合成法に従って、4,9−ジエチニルジアマンタンを合成した。次に、4,9−ジエチニルジアマンタン2gとジクミルパーオキサイド(パークミルD、日本油脂製)0.22g、t−ブチルベンゼン10mlを窒素気流下で内温150℃で7時間攪拌、重合した。反応液を室温にした後、イソプロピルアルコール60mlに添加、析出した固体を濾過して、イソプロピルアルコールで十分に洗浄した。質量平均分子量約1.5万の重合体(A)を0.8g得た。
【0074】
<実施例1>
重合体(A)を2−ヘプタノンに対して3wt%になるように混合し、室温24時間の攪拌操作を行なって塗布液を作成した。肉眼による観察では固形分の残留は全く見られなかった。この塗付液にトロイケミカル製社製界面活性剤トロイゾルS366を添加し、塗付液に対して1000ppmの濃度になるように調整した。東京エレクトロン製ACT8SOD内のSCTユニット(SOD用スピンコートユニット)内を温度23℃、湿度45%にセットし、この塗布液をPTFE製0.1μmフィルターをセットした窒素加圧(0.05MPa)ラインにセットし、シリコンウェハー上にスピンコートし、連続してシクロヘキサノンをEBR溶媒として用い、500rpm5秒間のEBRプロセスを実施した。この塗膜をACT8SOD内のホットプレート(LHP)で110℃60秒間加熱し、連続して低酸素濃度ホットプレート(DLB)内で200℃60秒間の加熱を行なったところ膜厚約100nmのブツのない均一な膜が得られた。この膜についてKLAテンコール製P−15にてEBR形状を評価したところ約18%のハンプ率であった。また、光学顕微鏡にてエッジ部分を膜上方から倍率500倍にて観察したところ、周縁部にはブツが全く認められなかった(図2)。
【0075】
<実施例2>
トロイゾルS366をビックケミー社BYK307に変更し、添加濃度を1000ppmにした点以外は実施例1と同様に評価したところ、約10%のハンプ率であった。
【0076】
<比較例1>
トロイゾルS366を添加しない点以外は実施例1と同様に評価したところ、EBR形状を良好に測定できなかった。光学顕微鏡にてエッジ部分を膜上方から倍率500倍にて観察したところ、周縁部にブツが確認された(図3)。
【0077】
<比較例2>
2−ヘプタノンをシクロヘキサノンに変更した以外は実施例1と同様に評価したところ、ハンプ率は約42%であった。
【0078】
<比較例3>
トロイゾルS366を、Si原子を含まない界面活性剤である日信化学工業株式会社製サーフィノール420に変更した点以外は実施例1と同様に評価したところ、EBR形状を良好に測定できなかった。光学顕微鏡にてエッジ部分を膜上方から倍率500倍にて観察したところ、周縁部に図3と同様なブツが確認された。
【0079】
<比較例4>
トロイゾルS366を、Si原子を含まない界面活性剤である日信化学工業株式会社製サーフィノール440に変更した点以外は実施例1と同様に評価したところ、EBR形状を良好に測定できなかった。光学顕微鏡にてエッジ部分を膜上方から倍率500倍にて観察したところ、周縁部に図3と同様なブツが確認された。
【0080】
<比較例5>
トロイゾルS366を、Si原子を含まない界面活性剤である日信化学工業株式会社製オルフィンYに変更した点以外は実施例1と同様に評価したところ、EBR形状を良好に測定できなかった。光学顕微鏡にてエッジ部分を膜上方から倍率500倍にて観察したところ、周縁部に図3と同様なブツが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】膜周縁部の断面部を表す模式図である。
【図2】実施例1の膜周縁部を上方から、倍率500倍で撮影した写真である。
【図3】比較例1の膜周縁部を上方から、倍率500倍で撮影した写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の成分(A)、(B)及び(C)を含有することを特徴とする膜形成用組成物。
(A)かご型構造基を有する化合物。
(B)Siを含む界面活性剤。
(C)少なくとも一つの下記の構造を有する有機溶媒。

【請求項2】
成分(C)が下記の一般式(i)で表される、請求項1に記載の膜形成用組成物。
式(i)

式中、nは3以上であり、Rは未置換又は不活性に置換された飽和炭化水素基、又は未置換又は不活性に置換された芳香族基である。
【請求項3】
成分(C)が2−ヘプタノンである、請求項1又は2に記載の膜形成用組成物。
【請求項4】
成分(B)が膜形成組成物の全質量に対して1000ppm以上含まれる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の膜形成用組成物。
【請求項5】
かご型構造基を有する化合物が、かご型構造基を有するモノマーの重合体であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の膜形成用組成物。
【請求項6】
かご型構造基を有するモノマーが、重合可能な炭素−炭素二重結合または炭素−炭素三重結合を有することを特徴とする、請求項5に記載の膜形成用組成物。
【請求項7】
かご型構造が、アダマンタン、ビアダマンタン、ジアマンタン、トリアマンタン、及びテトラマンタンからなる群より選択されることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の膜形成用組成物。
【請求項8】
かご型構造基を有するモノマーが、下記式(I)〜(VI)からなる化合物群より選択されることを特徴とする、請求項5に記載の膜形成用組成物。

式(I)〜(VI)中、
1〜X8は水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数2〜10のアルキニル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数0〜20のシリル基、炭素数2〜10のアシル基、炭素数2〜10のアルコキシカルボニル基、または炭素数1〜20のカルバモイル基等を表す。
1〜Y8はハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基または炭素数0〜20のシリル基を表す。
1、m5はそれぞれ独立に1〜16の整数を表し、n1、n5は0〜15の整数を表す。
2、m3、m6、m7はそれぞれ独立に1〜15の整数を表し、n2、n3、n6、n7は0〜14の整数を表す。
4、m8はそれぞれ独立に1〜20の整数を表し、n4、n8は0〜19の整数を表す。
【請求項9】
かご型構造基を有する化合物がかご型構造基を有するモノマーを遷移金属触媒存在下またはラジカル開始剤存在下で重合して得られる重合体であることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の膜形成用組成物。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の膜形成用組成物を用いて形成された絶縁膜。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の膜形成用組成物を用いて形成された絶縁膜を有する電子デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−214470(P2008−214470A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−52967(P2007−52967)
【出願日】平成19年3月2日(2007.3.2)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】