説明

自動二輪車用ブレーキ装置

【課題】走行環境変化に対応した前後配分にすることができるブレーキ装置を提供することを課題とする。
【解決手段】第2モード第1区間の始点から第2モード第2区間の終点までの間の途中の点Pmで、操作量に対する前輪の制動力の増加率を、変化させる。点Pmまでの操作量の増加率は、曲線の傾きα1で表すことができる。点Pm以降の操作量の増加率は、曲線の傾きα2とする。好ましくは、α1<α2に設定する。
【効果】途中までの増加率より、途中以降の増加率を大きく設定することで、操作量に車体発生源速度を一次比例させることができる。操作量に車体発生源速度を一次比例させると、制動の初期(操作量が小さいとき)においては姿勢制御優先で前後輪の制動力の変化量を小さくすることができ、制動の後半(操作量が大きいとき)においては制動作用が優先される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動二輪車用ブレーキ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
バイワイヤ方式のブレーキ装置(BBW:ブレーキ・バイ・ワイヤ)が実用に供されている。このブレーキ装置(BBW)では、ブレーキ操作量を検出し、この検出値に基づいて液圧モジュレータで液圧を発生させ、この液圧によって制動力を発生させる。
【0003】
上記ブレーキ装置(BBW)により、ABS(アンチロック・ブレーキ・システム)機能を発揮させることができる。
【0004】
さらには、上記ブレーキ装置(BBW)により、ABS機能の他、前後のブレーキ操作子の一方側を操作することで、前後のブレーキ装置を連動させるシステムが知られている(例えば、特許文献1(図1、図3)参照。)。
【0005】
前後のブレーキ装置を連動させるシステムは、CBS(コンバインド・ブレーキ・システム)と呼ばれ、特許文献1の図1に示されるモード切換えスイッチ32を切り換えることで、CBS機能が選択され、特許文献1の図3に示されるように、前輪制動力と後輪制動力とが一定の相関に基づいて制御される。
【0006】
このように、従来のCBS機能では、一義的にその制動力の前後配分が決められている。しかし、運転者からすると、公道走行とサーキット走行などのような走行環境変化や、乾いた路面と濡れた路面のような路面状況変化に対応させて、例えば、路面のμが高くタイヤに高い制動力が期待できる場合などでの直進時における前後配分や、旋回時などの車体コントロールを重視した配分と、路面μが低い場合の前後配分ではそれぞれ異なるため、走行環境に応じて前後配分を変化させたい要求があるなどして、諸環境に応じた制動力の前後配分の変化に対応させるには更なる改良の余地がある。
【0007】
前輪のブレーキ操作により後輪も連動して制動力を発生させる場合、基本的には理想的な車体減速度に則した減速度で車両を減速させるべきところではあるものの、車体としては制動により主に後輪より前輪側の荷重が大きくなる傾向にあり、後輪側は前輪側のサスペンションの沈み込みにより後輪側荷重が減るため前後連動の制動を行う場合は、後輪側の制動力を早めに増加から減少に切り替える場合がある。
その場合、前輪側の制動力が増加するにも拘わらず、後輪側の制動力が増加から減少へ転じてしまうと、車体としての減速度の上昇度合い(傾き又は変化率)が変化してしまい、減速度のリニアリティ(直線性)が薄れる傾向となり、前輪のブレーキ操作による車体減速度の調整が難しくなる場合がある。よって、その対策が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−175993公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、走行環境変化に対応した前後配分にすることができるブレーキ装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に係る発明は、電子制御ユニットにより、前後輪のブレーキ操作手段に加えられる操作量を検出し、これらの検出値に基づき前後輪用の液圧モジュレータで液圧を発生させ、これらの液圧によって前後輪のブレーキ装置に制動力を発生させるバイワイヤ方式の自動二輪車用ブレーキ制御装置において、
前記電子制御ユニットは、
前後輪のブレーキ装置に対して、
前輪のブレーキ操作手段が操作された場合、この前輪のブレーキ操作手段の操作量に応じて前輪のブレーキ装置に前輪の制動力を発生させ、操作されない後輪のブレーキ装置に前記前輪のブレーキ操作手段の操作量に連動する後輪の制動力を発生させ、
前記前輪のブレーキ操作手段の操作量がゼロから第1所定値までの第1区間では、前記前輪の制動力を漸増させ、前記後輪の制動力を後輪のブレーキ操作に拘わらず漸増させ、
前記前輪のブレーキ操作手段の操作量が前記第1所定値からこの第1所定値より大きな第2所定値までの第2区間では、前記前輪の制動力を漸増させ、前記後輪の制動力を前記第1区間での最大値に保持し、
前記第1区間の始点から前記第2区間の終点までの間で、前記操作量に対する前記前輪の制動力の増加率を、増減させて車両の減速度を前輪のブレーキの制動力の増加に対して略直線的になるように増減させる制御を実施することを特徴とする。
【0011】
請求項2に係る発明は、前輪のブレーキ操作手段の操作量が前記第2所定値を超える第3区間では、前記前輪の制動力を漸増させ、前記後輪の制動力を前記操作量の増加に対応して制動力を漸減させることを特徴とする。
【0012】
請求項3に係る発明は、操作量に対する前記前輪の制動力の増加率は、前記第1区間の始点から前記第2区間の終点までの途中までの増加率より、前記途中以降の増加率を大きく設定することを特徴とする。
【0013】
請求項4に係る発明では、ブレーキ制御装置には、運転者の操作により制動力の複数の制御モードを切り替え可能とするモード切替手段が備えられ、
前記制御モードには複数のモードが設けられており、
前記第1制御モードでは、前輪のブレーキ操作手段が操作された場合、前輪のブレーキ操作手段の操作量に応じて前輪のブレーキ装置に制動力を発生させ、操作されない後輪のブレーキ装置に前記前輪のブレーキ操作手段の操作量に連動する制動力を後輪に発生させ、
前記前輪のブレーキ操作手段の操作量がゼロから第1モード第1所定値までの第1モード第1区間では、前記後輪に発生する制動力は、前記操作量の増加に対応して漸増し、
前記前輪のブレーキ操作手段の操作量が前記第1モード第1所定値からこの第1モード第1所定値より大きな第1モード第2所定値までの第1モード第2区間では、前記後輪に発生する制動力は、前記操作量の増加に拘わらず前記第1モード第1区間での最大値で保持され、
前記前輪のブレーキ操作手段の操作量が前記第1モード第2所定値を超える第1モード第3区間では、前記後輪に発生する制動力は、前記操作量の増加に対応して制動力を漸減させるモードであり、
前記第2制御モードでは、前記第1制御モードと同様に、前輪のブレーキ操作手段が操作された場合、前輪のブレーキ操作手段の操作量に応じて前輪のブレーキ装置に制動力を発生させ、操作されない後輪のブレーキ装置に前記前輪のブレーキ操作手段の操作量に連動する制動力を後輪に発生させ、
前記前輪のブレーキ操作手段の操作量がゼロから第2モード第1所定値までの第2モード第1区間では、前記後輪に発生する制動力は、前記操作量の増加に対応して漸増すると共に前記第1モード第1区間での後輪に発生する制動力より小さく設定され、
前記前輪のブレーキ操作手段の操作量が前記第2モード第1所定値からこの第2モード第1所定値より大きな第2モード第2所定値までの第2モード第2区間では、後輪に発生する制動力は、前記操作量の増加に拘わらず前記第2モード第1区間での最大値で保持され、且つ、前記第1モード第2区間での後輪に発生する制動力より小さくし、
前輪のブレーキ操作手段の操作量が前記第2モード第2所定値を超える第2モード第3区間では、前記後輪に発生する制動力は、前記操作量の増加に対応して制動力を漸減し、且つ、この制動力が最小となるポイントでの前記操作量は、前記第1制御モードでの操作量より大きく設定し、
前記第2モード第1区間の始点から前記第2モード第2区間の終点までの間の途中で、前記操作量に対する前記前輪の制動力の増加率を、変化させるモードであり、
その選択された制御モードに応じて、前記電子制御ユニットは前後輪のブレーキ装置に制動力を発生させることを特徴とする。
【0014】
請求項5に係る発明では、モード切替手段は、ハンドルに設けられたスイッチであることを特徴とする。
【0015】
請求項6に係る発明では、第1制御モード及び前記第2制御モードは、前記後輪のブレーキ操作手段が操作された場合、この後輪のブレーキ操作手段の操作量に応じて後輪のブレーキ装置に制動力を発生させ、操作されない前輪のブレーキ装置に前記後輪のブレーキ操作手段の操作量に連動する制動力を発生させ、
後輪の制動力は前輪の制動力より大きく設定され、
前輪の制動が開始される前記後輪のブレーキ操作手段の操作量は、前記第1制御モードでの操作量より前記第2制御モードでの操作量が大きく設定されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に係る発明では、第1区間の始点から前記第2区間の終点までの間で、操作量に対する前輪の制動力の増加率を、増減させて車両の減速度を前輪のブレーキの制動力の増加に対して略直線的になるように増減させる制御を実施する。
操作量に対する前輪の制動力の増加率を、変化させると、操作量に対する車体発生源速度を変化させることができる。すなわち、操作量に車体発生源速度を一次比例させることや、操作量に対する車体発生源速度を一次比例を超えて(例えば2次関数的に)増加させることや、操作量に対する車体発生源速度を一次比例を下回るように(例えば1/2次関数的に)減少させることが、任意に選択可能となる。
【0017】
請求項2に係る発明によれば、第3区間では、前輪の制動力を漸増させ、後輪の制動力を前記操作量の増加に対応して制動力を漸減させる。
前輪制動が重視されるため、自動二輪車により適合した制動制御が実施される。
【0018】
請求項3に係る発明によれば、途中までの増加率より、途中以降の増加率を大きく設定することで、操作量に車体発生源速度を一次比例させることができる。
操作量に車体発生源速度を一次比例させると、制動の初期(操作量が小さいとき)においては姿勢制御優先で前後輪の制動力の変化量を小さくすることができ、制動の後半(操作量が大きいとき)においては制動作用が優先される。
【0019】
請求項4に係る発明によれば、第1制御モードと第2制御モードを任意に切り替えることができ、走行環境変化に対応した制動力前後配分が提供される。
加えて、第2制御モードでは、第2モード第1区間の始点から第2モード第2区間の終点までの間の途中で、操作量に対する前輪の制動力の増加率を、変化させるため、操作量に車体発生源速度を一次比例させることが可能となる。
操作量に車体発生源速度を一次比例させると、制動の初期(操作量が小さいとき)においては姿勢制御優先で前後輪の制動力の変化量を小さくすることができ、制動の後半(操作量が大きいとき)においては制動作用が優先される。
【0020】
そして、第1区間(制動の初期区間)において、第1制御モードに対して第2制御モードは、前輪のブレーキ操作手段により発生する後輪の制動力が抑えられる。第2制御モードは、例えば、コーナリング中に制動する意思よりも旋回性の姿勢コントロール重視を行いたい意思の場合に有効なモードとして使用することができる。
第2区間において、第1制御モードに対して第2制御モードは、不要に後輪の制動力を増加させるより、前輪の制動力で姿勢をコントロールすることができる。
第3区間において、例えば、できるだけ短時間で減速を行いたい場合は、前輪の制動力と後輪の制動力の両方の制動力を発生させる。
第1制御モードに対して第2制御モードは、両方の制動力を維持しやすい。第2制御モードであれば、運転者は、前輪のブレーキ操作手段と後輪のブレーキ操作手段の両方を操作する必要はなく、前輪のブレーキ操作手段のみで済ませることができる。すなわち、第1制御モードより第2制御モードの方が、理想の前後制動配分を自動的に行わせることができ、運転者は前輪のブレーキ操作に集中することができるといえる。
【0021】
請求項5に係る発明では、モード切替手段はハンドルに設ける。モード切替手段はグリップを握ったままで切替操作が可能となり、使い勝手がよくなる。
【0022】
請求項6に係る発明では、後輪の制動力は前輪の制動力より大きく設定され、前輪の制動が開始されるまでの後輪のブレーキ操作手段の操作量は、第1制御モードでの操作量より第2制御モードでの操作量が大きく設定される。
前輪のブレーキ操作手段がブレーキレバーで、後輪のブレーキ操作手段がブレーキペダルであれば、手で操作するブレーキレバーより、足で操作するブレーキペダルの方が、操作が難しいと言われている。本発明によれば、手操作よりもコントロールが難しい足操作での減速を確実に行わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係る自動二輪車の右側面図(概念図)である。
【図2】自動二輪車の平面図(概念図)である。
【図3】モード切替手段の配置を説明する図である。
【図4】液圧モジュレータの斜視図である。
【図5】本発明に係る自動二輪車のブレーキ制御装置の回路図である。
【図6】第1制御モードに係るマップ図である。
【図7】第1制御モードによる操作量と車体発生減速度の相関図である。
【図8】第2制御モードに係るマップ図である。
【図9】第2制御モードによる操作量と車体発生減速度の相関図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
【実施例】
【0025】
本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、自動二輪車10は、前輪11f(fは前を示す添え字。以下同じ)にパルサーリング13fを付属し、このパルサーリング13fのパルスを数えることで前輪11fの回転速度を検出する前輪速度センサー14fを車体15に備えており、常に前輪速度を検出することができる。
【0026】
さらに、自動二輪車10は、後輪11r(rは後を示す添え字。以下同じ)にブレーキディスク12r及びパルサーリング13rを付属し、このパルサーリング13rのパルスを数えることで後輪11rの回転速度を検出する後輪速度センサー14rを車体15に備えおり、常に後輪速度を検出することができる。
【0027】
そして、自動二輪車10は、車体15に設けた燃料タンク16の下方位置にて車体15に前輪用の液圧モジュレータ21f及び前輪用のバルブユニット22fを備え、車体15に設けたシート17の下方位置にて後輪用の液圧モジュレータ21r及び後輪用のバルブユニット22rを備え、シート17後方に電子制御ユニット47を備える。
【0028】
図2に示すように、ブレーキレバーに代表される前輪のブレーキ操作手段19fの操作量又はブレーキペダルに代表される後輪のブレーキ操作手段19rの操作量に応じて作動する前輪用のブレーキ装置20fで前輪11fが制動され、後輪のブレーキ装置20rで後輪11rが制動される。
【0029】
前輪用のブレーキ装置20fは、例えば、前輪用の液圧モジュレータ21f(構造は後述する。)、前輪用のバルブユニット22f、ブレーキキャリパー23f及びブレーキディスク24fからなる。
後輪のブレーキ装置20rは、例えば、後輪用の液圧モジュレータ21r、後輪用のバルブユニット22r、ブレーキキャリパー23r及びブレーキディスク24rからなる。
【0030】
前輪のブレーキ操作手段19fの近傍にてハンドル25に、モード切替手段26が設けられている。
このモード切替手段26は、図3に示すように、右グリップ27より車体中心側に、上位のキルスイッチ28と下位のスタータスイッチ29との間に配置される。モード切替手段26は、左右に移動させることで第1制御モードと第2制御モードを切り替える切替スイッチが好適である。切替スイッチは、繰り返し押すことで第1制御モードと第2制御モードを切り替えるが切り替わるプッシュ−プッシュスイッチでも良い。
【0031】
なお、モード切替手段26は、ハンドル25に設ける他、メータ周りやコンビネーションスイッチ周りに設けることもできる。ただし、右グリップ27を握ったままで切替操作が可能であるため、本例のように、モード切替手段26はハンドル25に設けることが推奨される。
【0032】
前輪用の液圧モジュレータ21fの好適例を、図4に基づいて説明する。
図4に示すように、前輪用の液圧モジュレータ21fは、制御モータ31と、この制御モータ31のモータ軸32で駆動される駆動ギヤ33と、この駆動ギヤ33より大径で駆動ギヤ33で駆動される従動ギヤ34と、この従動ギヤ34にねじ結合し回転はしないが軸方向へ移動するボールねじ35と、このボールねじ35で押されるモジュレータピストン36と、このモジュレータピストン36を押し戻すスプリング37と、駆動ギヤ33、従動ギヤ34及びモジュレータピストン36を一括して収納するケース38とからなる。
【0033】
制御モータ31を駆動源としてモジュレータピストン36を前進させると、ブレーキ液が圧縮され液圧が発生する。この液圧はポート39を介して前輪用のバルブユニット(図2、符号22f)へ送られる。制御モータ31を逆転させてモジュレータピストン36を後退させると、ブレーキ液が減圧される。
後輪用の液圧モジュレータ(図2、符号21r)は、前輪用の液圧モジュレータ21fと同一構造であるため説明を省略する。
【0034】
前輪用のバルブユニット22fと後輪用のバルブユニット22rの構成を、図5に基づいて説明する。
図5は自動二輪車のブレーキ制御装置40を説明するコンバインABS制御図であり、ブレーキ制御装置40の要部である前輪用のバルブユニット22fは、常閉型の第1電磁バルブ41fと、常開型の第2電磁バルブ42fと、常閉型の第3電磁バルブ43fと、第1圧力センサ44fと、第2圧力センサ45fと、第3圧力センサ46fとを主たる構成要素とする。
後輪用のバルブユニット22rも同様であるため、要素の符号にrを付して、説明を省略する。
【0035】
前後輪のブレーキ装置20f、20rを連動させるCBS(コンバインド・ブレーキ・システム)の作動を説明する。
CBSは、前後輪のブレーキ操作手段19f、19rの前輪が操作されたときに、前後輪のブレーキ装置20f、20rに制動作用を発揮させるシステムである。
【0036】
前輪のブレーキ操作手段19fが操作される例を説明する。
この場合は、前輪用の第1電磁バルブ41f及び第2電磁バルブ42fが開けられ、第3電磁バルブ43fが閉じられ、後の第2電磁バルブ42rが開けられ、第3電磁バルブ43rが閉じられる。
【0037】
前輪のブレーキ操作手段19fが操作されると、液圧が発生し、この液圧が第2圧力センサ45fで検出される。検出値に基づいて、電子制御ユニット47は、前輪用の第3圧力センサ46fの目標値(圧力)と後の第3圧力センサ46rの目標値(圧力)を決定し、前輪用の液圧モジュレータ21f及び後輪用の液圧モジュレータ21rが目標値(圧力)を発生するように、前後輪用の液圧モジュレータ21f、21rを作動させ、前後輪のブレーキ装置20f、20rで前輪11f及び後輪11rを制動する。
【0038】
後輪のブレーキ操作手段19rが操作された場合も電子制御ユニット47は、前輪用の第3圧力センサ46fの目標値(圧力)と後の第3圧力センサ46rの目標値(圧力)を決定し、前輪用の液圧モジュレータ21f及び後輪用の液圧モジュレータ21rが目標値(圧力)を発生するように、前後輪用の液圧モジュレータ21f、21rを作動させ、前後輪のブレーキ装置20f、20rで前輪11f及び後輪11rを制動する。
【0039】
そして、本発明では、モード切替手段26を手動で切り替えることにより、多様の目標値(制御モード)が設定可能となり、多様の制動形態を造り出すことができる。
制御モードには複数(この例では2つ)のモードが設けられており、第1制御モード、第2制御モード共に、前輪のブレーキ操作手段の19fが操作された場合、この前輪のブレーキ操作手段19fの操作量に応じて前輪のブレーキ装置20fで前輪の制動力を発生させ、操作されない後輪のブレーキ装置20rで前輪のブレーキ操作手段19fの操作量に連動する後輪の制動力を発生させる、又は、後輪のブレーキ操作手段の19rが操作された場合、この後輪のブレーキ操作手段19rの操作量に応じて後輪のブレーキ装置20rで後輪の制動力を発生させ、操作されない前輪のブレーキ装置20fで後輪のブレーキ操作手段19rの操作量に連動する前輪の制動力を発生させることを前提とする。
【0040】
モード切替手段26により、第1制御モードが選択されると、図6に示すマップ1が電子制御ユニット47内で選択され、モード切替手段26により、第2制御モードが選択されると、図8に示すマップ2が電子制御ユニット47内で選択される。
【0041】
図6に示すように、マップ1は、マップ1aとマップ1bとからなる。
マップ1aは、横軸が前輪のブレーキ操作手段の操作量を表し、縦軸が前後輪のブレーキ装置の制動力を表し、ほぼ一次関数的な曲線(前輪に発生する制動力と表記。)が、前輪のブレーキ装置に提供される制動力曲線であり、ほぼ台形の曲線(後輪に発生する制動力と表記。)が後輪のブレーキ装置に提供される制動力曲線である。
すなわち、モード切替手段26で第1制御モードが選択された状態で、前輪のブレーキ操作手段が操作された場合には、マップ1aが選択される。
【0042】
なお、横軸の前輪のブレーキ操作手段の操作量は、第2圧力センサ(図5、符号45f又は45r)による検出値から定めることができる。また、縦軸の前後輪のブレーキ装置の制動力は電子制御ユニット(図5、符号47)が第3圧力センサ(図5、符号46f又は46r)及び液圧モジュレータ(図5、符号21f又は21r)に与える目標液圧から換算される。
【0043】
マップ1a中、ほぼ台形の曲線に注目すると、前輪のブレーキ操作手段の操作量がゼロから第1モード第1所定値までの第1モード第1区間では、後輪に発生する制動力は、操作量の増加に対応して漸増する。
前輪のブレーキ操作手段の操作量が第1モード第1所定値からこの第1モード第1所定値より大きな第1モード第2所定値までの第1モード第2区間では、後輪に発生する制動力は、操作量の増加に拘わらず第1モード第1区間での最大値F1で保持される。
前輪のブレーキ操作手段の操作量が第1モード第2所定値を超える第1モード第3区間では、後輪に発生する制動力は、操作量の増加に対応して、例えばゼロまで漸減する場合を図に示す。
【0044】
マップ1aによれば、前輪のブレーキ操作手段が操作されると、前輪の制動力と後輪の制動力とで車体が減速される。
マップ1aに基づいて、車体に発生する減速度を、図7(a)に示す。
図7(a)に示すように、補助直線aよりも、減速度曲線が上に凸になる。
すなわち、操作量が小さい領域(一般に軽入力領域)で、補助直線aより減速度曲線が上方へ離れているため、運転者が軽くブレーキ操作を行うだけで、車体に大きな減速度が発生し、効果的に車体を減速させることができる。
【0045】
加えて、図6のマップ1aから明らかなように、軽入力領域では前輪の制動と後の制動とを効かせることができるため、車体がピッチングする心配は殆ど無い。結果、効きの良いブレーキ装置にありがちな車体がギクシャクしてしまう欠点を克服しつつ、公道走行時に効果的に車体を減速させることができる。
【0046】
図6のマップ1bは、横軸が後輪のブレーキ操作手段の操作量を表し、縦軸が前後輪のブレーキ装置の制動力を表し、ほぼ一次関数的な曲線(後輪に発生する制動力と表記。)が、後輪のブレーキ装置に提供される制動力曲線であり、ほぼ折れ線曲線(前輪に発生する制動力と表記。)が前輪のブレーキ装置に提供される制動力曲線である。
すなわち、モード切替手段26で第1制御モードが選択された状態で、後輪のブレーキ操作手段が操作された場合には、マップ1bが選択される。
【0047】
マップ1bによれば、後輪のブレーキ操作手段が操作されると、前輪の制動力と後輪の制動力とで車体が減速される。
マップ1bに基づいて、車体に発生する減速度を、図7(b)に示す。
図7(b)に示すように、操作入力の中入力以降では、補助直線bよりも、減速度曲線が上に急激に離れていく。
公道走行時に後輪のブレーキ操作手段を操作だけで、中入力以降での十分な減速が得られる。したがって、緊急時に、前輪のブレーキ操作手段が操作できない場合にあっても後輪のブレーキ操作手段のみで十分な制動性能が得られる。
【0048】
また、図8に示すように、マップ2は、マップ2aとマップ2bとからなる。
マップ2aは、横軸が前輪のブレーキ操作手段の操作量を表し、縦軸が前後輪のブレーキ装置の制動力を表し、中折れ状の曲線(前輪に発生する制動力と表記。)が、前輪のブレーキ装置に提供される制動力曲線であり、ほぼ台形の曲線(後輪に発生する制動力と表記。)が後輪のブレーキ装置に提供される制動力曲線である。
すなわち、モード切替手段26で第2制御モードが選択された状態で、前輪のブレーキ操作手段が操作された場合には、マップ2aが選択される。
【0049】
マップ2a中、ほぼ台形の曲線に注目すると、前輪のブレーキ操作手段の操作量がゼロから第2モード第1所定値までの第2モード第1区間では、後輪に発生する制動力は、操作量の増加に対応して漸増する。
前輪のブレーキ操作手段の操作量が第2モード第1所定値からこの第2モード第1所定値より大きな第2モード第2所定値までの第2モード第2区間では、後輪に発生する制動力は、操作量の増加に拘わらず第2モード第1区間での最大値F2で保持される。
前輪のブレーキ操作手段の操作量が第2モード第2所定値を超える第2モード第3区間では、後輪に発生する制動力は、操作量の増加に対応して、例えばゼロまで漸減する場合を図に示す。
【0050】
ここで、第2モード第1区間の始点から第2モード第2区間の終点までの間の途中の点Pm(この例では第2モード第2所定値)で、操作量に対する前輪の制動力の増加率を、変化させることが重要になる。
途中の点Pmは、第2モード第1区間の始点から第2モード第2区間の終点までの間にある点であれば、位置は任意であり、点の数も1つに限定するものではない。
【0051】
点Pmまでの制動力の増加率は、曲線の傾きα1で表すことができる。点Pm以降の制動力の増加率は、曲線の傾きα2とする。好ましくは、α1<α2に設定する。この結果、前輪の制動力は、変曲点(点Pm)で下へ折れた曲線となる。α1<α2に設定することでの利点を次に説明する。
【0052】
図7(a)に示す曲線は上へ凸、すなわち湾曲しているため、横軸の操作量に縦軸の減速度が一次比例しない。操作量と減速度が一次比例することが望まれることがある。
この場合には、図8のマップ2aで説明したように、前輪の制動力曲線を下へ凸にする。すると、(前輪の制動力+後輪の制動力)が小さくなり、結果、図7(a)に示す曲線が補助直線aに近づく。
【0053】
図8のマップ2aによって、得られる車体発生減速度を、図9(a)に示す。
図9(a)に示すように、操作量と減速度がほぼ一次比例している。
図7(a)に比べて、図9(a)は入力(操作量)に対して減速度の変化が穏やかであるため、コーナリング中での微妙は車体姿勢制御、すなわち前後の加重調整が良好となる。公道走行よりは、微妙な車体姿勢制御が要求されるレース走行に好適であると言える。
【0054】
なお、第1区間の始点から第2区間の終点までの間の途中で、操作量に対する前輪の制動力の増加率を、変化させることにより、α1<α2(図8のマップ2a)や、α1=α2(図6のマップ1aに相当)の他、α1>α2とすることも可能である。α1>α2であれば、軽入力での操作により、より大きな車体発生減速度を得ることができる。
【0055】
図8のマップ2bは、横軸が後輪のブレーキ操作手段の操作量を表し、縦軸が前後輪のブレーキ装置の制動力を表し、ほぼ一次関数的な曲線(後輪に発生する制動力と表記。)が、後輪のブレーキ装置に提供される制動力曲線であり、下方の曲線(前輪に発生する制動力と表記。)が前輪のブレーキ装置に提供される制動力曲線である。
すなわち、モード切替手段26で第2制御モードが選択された状態で、後輪のブレーキ操作手段が操作された場合には、マップ2bが選択される。
【0056】
ここで、下方の曲線(前輪の制動力)の始点M4を、図6のマップ1bに示す始点M3より、操作量大側へ移動したことが重要となる。この理由を次に述べる。
図7(b)では、減速度曲線が湾曲しているが、操作量に減速度が一次比例することが望まれる場合がある。
始点M4を移動したため、(前輪の制動力+後輪の制動力)が小さくなり、図7(b)の減速度曲線が補助直線bに近づく。
【0057】
図8のマップ2bによって、得られる車体発生減速度を、図9(b)に示す。
図9(b)に示すように、操作量と減速度が中入力まで良好に一次比例している。
図7(b)に比べて、図9(b)は入力(操作量)に対して減速度の変化が穏やかであるため、微妙は車体姿勢制御が良好となる。公道走行よりは、微妙な車体姿勢制御が要求されるレース走行に好適であると言える。
【0058】
さらに、図6と図8とを比較する。
マップ1aに比較してマップ2aは次の点で、差異がある。
制動力F1より制動力F2が小さい。すなわち、第2モード第1区間での後輪に発生する制動力は、第1モード第1区間での後輪に発生する制動力より小さく設定されている。
【0059】
また、第1モード第1区間より第2モード第1区間が長く、第1モード第2区間より第2モード第2区間が長く、第1モード第3区間より第2モード第3区間が長く設定されている。
【0060】
第1区間(制動の初期区間)において、第1制御モードに対して第2制御モードは、前輪のブレーキ操作手段により発生する後輪に発生する制動力が抑えられる。第2制御モードは、例えば、コーナリング中に制動する意思よりも旋回性の姿勢コントロール重視を行いたい意思の場合に有効なモードとして使用することができる。
【0061】
また、第2区間では後輪に発生する制動力が一定に保たれる。そして、マップ2bに示す第2モード第2区間における後輪に発生する制動力F2は、マップ2aに示す第1モード第2区間における後輪に発生する制動力F1より小さく設定されている。
第1制御モードに対して第2制御モードは、後輪に発生する制動力で姿勢をコントロールする場合に有効なモードである。
【0062】
また、マップ1aの第1モード第3区間において、後輪に発生する制動力が、例えばゼロまで漸減される。このゼロに到達したときの横軸(前輪のブレーキ操作手段の操作量)をM1とする。
同様に、マップ2aの第2モード第3区間において、後輪に発生する制動力が、例えばゼロまで漸減される。このゼロに到達したときの横軸(前輪のブレーキ操作手段の操作量)をM2とする。
参照のため、さらにマップ1aのM1をマップ2aに転記する。
本発明ではM1<M2とした。
【0063】
すなわち、第2制御モード(マップ2a)は、第1制御モード(マップ1a)と同様に、前輪のブレーキ操作手段の操作量が第2モード第2所定値を超える第2モード第3区間では、後輪に発生する制動力は、操作量の増加に対応して、例えばゼロまで漸減する場合を図に示し、且つ、この制動力ゼロでの操作量M2は、第1制御モードでの操作量M1より大きく設定されている。
【0064】
例えば、できるだけ短時間で減速を行いたい場合は、前輪に発生する制動力と後輪に発生する制動力の両方の制動力を効果的に発生させることが望まれる。
第1制御モードに対して第2制御モードでは、例えば、フルブレーキング時などに、両方の制動力を最大限に発生させ易い。また、第2制御モードであれば、運転者は、前輪のブレーキ操作手段と後輪のブレーキ操作手段の両方を操作する必要はなく、前輪のブレーキ操作手段のみで済ませることができる。すなわち、第2制御モードの方が、フルブレーキング時においては、理想の前後制動配分を自動的に行わせることができ、運転者は前輪のブレーキ操作に集中することができるといえる。
【0065】
以上に説明した前輪のブレーキ操作手段は、自動二輪車に備えられるフロントブレーキが好適であり、後輪のブレーキ操作手段はブレーキペダルが好適である。
【0066】
図6のマップ1aにおいて、前輪のブレーキ操作手段が操作されると、特に、第1モード第3区間において前輪で発生する制動力が増大する。図7のマップ2aも同様である。
制動力が強くなるに従い、前輪の接地荷重(グリップ力)が増大し、後輪は接地荷重が減少する二輪車特有の特性に適合した制御が実施される。
【0067】
次に、図6のマップ1bと図8のマップ2bに注目する。
図6のマップ1bは、第1制御モードに係り、マップ1bに示すように、後輪のブレーキ操作手段が操作された場合、この後輪のブレーキ操作手段の操作量に応じて後輪のブレーキ装置に制動力を発生させ、操作されない前輪用のブレーキ装置に後輪のブレーキ操作手段の操作量に連動する制動力を発生させる制御がなされる。そして、後輪で発生する制動力は前輪で発生する制動力より大きく設定されている。
前輪で発生する制動力は、原点からM3だけ離れた点から発生するように設定される。
【0068】
図8のマップ2bは、第2制御モードに係り、マップ2bに示すように、後輪のブレーキ操作手段が操作された場合、この後輪のブレーキ操作手段の操作量に応じて後輪のブレーキ装置に制動力を発生させ、操作されない前輪用のブレーキ装置に後輪のブレーキ操作手段の操作量に連動する制動力を発生させる制御がなされる。そして、後輪で発生する制動力は前輪で発生する制動力より大きく設定されている。
【0069】
前輪で発生する制動力は、原点からM4だけ離れた点から発生するように設定される。
参照のため、さらにマップ1bのM3をマップ2bに転記する。
本発明ではM3<M4とした。
すなわち、前輪の制動が開始されるまでの後輪のブレーキ操作手段の操作量M3、M4は、第1制御モードでの操作量M3より第2制御モードでの操作量M4が大きく設定されている。
【0070】
マップ1bに示す第1制御モードでは、第2制御モードよりも早めに前輪で発生する制動力が発生されるので、制動操作の早い段階からでも連動ブレーキが作動し、確実に減速できる。
前輪のブレーキ操作手段がブレーキレバーで、後輪のブレーキ操作手段がブレーキペダルであれば、手で操作するブレーキレバーより、足で操作するブレーキペダルの方が、繊細な操作が必要であると言われている。マップ1bによれば、繊細な操作が必要であると言われている足操作での減速を確実に行わせることができる。
【0071】
逆に、第2制御モードでは、マップ2bに示すように、制動操作の早い段階では前輪で発生する制動力が未発生であるため、この段階では制動よりも、姿勢コントロールに主眼をおいた制御が実施される。
【0072】
このように、本発明によれば、第1制御モード(マップ1)と第2制御モード(マップ2)を任意に切替えることで、走行環境変化自動二輪車の制動制御が可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明は、自動二輪車の制動制御に好適である。
【符号の説明】
【0074】
10…自動二輪車、19f…前輪のブレーキ操作手段、19r…後輪のブレーキ操作手段、20f…前輪のブレーキ装置、20r…後輪のブレーキ装置、21f…前の液圧モジュレータ、21r…後の液圧モジュレータ、25…ハンドル、26…モード切替手段、40…ブレーキ制御装置、47…電子制御ユニット。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子制御ユニット(47)により、前後輪のブレーキ操作手段(19f、19r)に加えられる操作量を検出し、これらの検出値に基づき前後輪用の液圧モジュレータ(21f、21r)で液圧を発生させ、これらの液圧によって前後輪のブレーキ装置(20f、20r)に制動力を発生させるバイワイヤ方式の自動二輪車(10)用ブレーキ制御装置(40)において、
前記電子制御ユニット(47)は、
前後輪のブレーキ装置(20f、20r)に対して、
前輪のブレーキ操作手段(19f)が操作された場合、この前輪のブレーキ操作手段(19f)の操作量に応じて前輪のブレーキ装置(20f)に前輪の制動力を発生させ、操作されない後輪のブレーキ装置(20r)に前記前輪のブレーキ操作手段(19f)の操作量に連動する後輪の制動力を発生させ、
前記前輪のブレーキ操作手段(19f)の操作量がゼロから第1所定値までの第1区間では、前記前輪の制動力を漸増させ、前記後輪の制動力を後輪のブレーキ操作に拘わらず漸増させ、
前記前輪のブレーキ操作手段(19f)の操作量が前記第1所定値からこの第1所定値より大きな第2所定値までの第2区間では、前記前輪の制動力を漸増させ、前記後輪の制動力を前記第1区間での最大値に保持し、
前記第1区間の始点から前記第2区間の終点までの間で、前記操作量に対する前記前輪の制動力の増加率を、増減させて車両の減速度を前輪のブレーキの制動力の増加に対して略直線的になるように増減させる制御を実施することを特徴とする自動二輪車用ブレーキ制御装置。
【請求項2】
前記前輪のブレーキ操作手段(19f)の操作量が前記第2所定値を超える第3区間では、前記前輪の制動力を漸増させ、前記後輪の制動力を前記操作量の増加に対応して制動力を漸減させることを特徴とする請求項1記載の自動二輪車用ブレーキ制御装置。
【請求項3】
前記操作量に対する前記前輪の制動力の増加率は、前記第1区間の始点から前記第2区間の終点までの途中までの増加率より、前記途中以降の増加率を大きく設定することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の自動二輪車用ブレーキ制御装置。
【請求項4】
前記ブレーキ制御装置(40)には、運転者の操作により制動力の複数の制御モードを切り替え可能とするモード切替手段(26)が備えられ、
前記制御モードには複数のモードが設けられており、
前記第1制御モードでは、前輪のブレーキ操作手段(19f)が操作された場合、前輪のブレーキ操作手段(19f)の操作量に応じて前輪のブレーキ装置(20f)に制動力を発生させ、操作されない後輪のブレーキ装置(20r)に前記前輪のブレーキ操作手段(19f)の操作量に連動する制動力を後輪に発生させ、
前記前輪のブレーキ操作手段(19f)の操作量がゼロから第1モード第1所定値までの第1モード第1区間では、前記後輪に発生する制動力は、前記操作量の増加に対応して漸増し、
前記前輪のブレーキ操作手段(19f)の操作量が前記第1モード第1所定値からこの第1モード第1所定値より大きな第1モード第2所定値までの第1モード第2区間では、前記後輪に発生する制動力は、前記操作量の増加に拘わらず前記第1モード第1区間での最大値で保持され、
前記前輪のブレーキ操作手段(19f)の操作量が前記第1モード第2所定値を超える第1モード第3区間では、前記後輪に発生する制動力は、前記操作量の増加に対応して制動力を漸減させるモードであり、
前記第2制御モードでは、前記第1制御モードと同様に、前輪のブレーキ操作手段(19f)が操作された場合、前輪のブレーキ操作手段(19f)の操作量に応じて前輪のブレーキ装置(20f)に制動力を発生させ、操作されない後輪のブレーキ装置(20r)に前記前輪のブレーキ操作手段(19f)の操作量に連動する制動力を後輪に発生させ、
前記前輪のブレーキ操作手段(19f)の操作量がゼロから第2モード第1所定値までの第2モード第1区間では、前記後輪に発生する制動力は、前記操作量の増加に対応して漸増すると共に前記第1モード第1区間での後輪に発生する制動力より小さく設定され、
前記前輪のブレーキ操作手段(19f)の操作量が前記第2モード第1所定値からこの第2モード第1所定値より大きな第2モード第2所定値までの第2モード第2区間では、後輪に発生する制動力は、前記操作量の増加に拘わらず前記第2モード第1区間での最大値で保持され、且つ、前記第1モード第2区間での後輪に発生する制動力より小さくし、
前輪のブレーキ操作手段の操作量が前記第2モード第2所定値を超える第2モード第3区間では、前記後輪に発生する制動力は、前記操作量の増加に対応して制動力を漸減し、且つ、この制動力が最小となるポイントでの前記操作量は、前記第1制御モードでの操作量より大きく設定し、
前記第2モード第1区間の始点から前記第2モード第2区間の終点までの間の途中で、前記操作量に対する前記前輪の制動力の増加率を、変化させるモードであり、
その選択された制御モードに応じて、前記電子制御ユニット(47)は前後輪のブレーキ装置(20f、20r)に制動力を発生させることを特徴とする請求項1記載の自動二輪車用ブレーキ制御装置。
【請求項5】
前記モード切替手段(26)は、ハンドル(25)に設けられたスイッチであることを特徴とする請求項4記載用自動二輪車のブレーキ制御装置。
【請求項6】
前記第1制御モード及び前記第2制御モードは、前記後輪のブレーキ操作手段(19r)が操作された場合、この後輪のブレーキ操作手段(19r)の操作量に応じて後輪のブレーキ装置(20r)に制動力を発生させ、操作されない前輪のブレーキ装置(20f)に前記後輪のブレーキ操作手段(19r)の操作量に連動する制動力を発生させ、
後輪の制動力は前輪の制動力より大きく設定され、
前輪の制動が開始される前記後輪のブレーキ操作手段(19r)の操作量は、前記第1制御モードでの操作量より前記第2制御モードでの操作量が大きく設定されていることを特徴とする請求項4記載の自動二輪車用ブレーキ制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−166666(P2012−166666A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−28688(P2011−28688)
【出願日】平成23年2月14日(2011.2.14)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】