説明

自動二輪車

【課題】車体の左右の重量配分の適正化が容易となり、また、ブレーキ配管の自由度を増すことが可能な自動二輪車を提供する。
【解決手段】前輪ディスクブレーキ及び後輪ディスクブレーキの制動力を制御するモジュレータ42と、前輪ディスクブレーキ、後輪ディスクブレーキにモジュレータ42を接続する配管91〜96,103〜105と、スイングアーム36と、スイングアーム36及び車体フレーム側のそれぞれに渡されるとともにスイングアーム36の後端部で支持された後輪37の前方に配置されるリヤクッションユニット41とを備える自動二輪車において、リヤクッションユニット41が、車幅方向の中央を通って前後に延びる車体中心線190上に配置されるとともに、モジュレータ42が、リヤクッションユニット41の後方で且つ車体中心線190上に配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動二輪車の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の自動二輪車として、前後輪のロックを制御して滑りを抑えるABSユニットと、後輪から受ける衝撃を緩和するために車体フレーム、スイングアーム間に渡されたリヤクッションユニットとを備えるものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
特許文献1の図4によれば、リヤクッションユニット38は、車体中心線91上に配置され、ABSユニット64は、リヤクッションユニット38に対して車幅方向にオフセットして配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−192980公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
比較的重量物であるABSユニット64が車幅方向にオフセットして配置されると、自動二輪車の左右の重量配分の適正化が困難である。
また、自動二輪車の車体でABSユニット64がオフセットされた側に沿って制動装置へ配管しないと、配管長が長くなるため、配管の自由度の向上が望まれる。
【0006】
本発明の目的は、車体の左右の重量配分の適正化が容易となり、また、ブレーキ配管の自由度を増すことが可能な自動二輪車を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、前輪、後輪をそれぞれ制動する制動装置と、これらの制動装置の制動力を制御するABSユニットと、これらの制動装置及びABSユニットのそれぞれを接続する配管と、車体フレームにスイング自在に支持されるスイングアームと、このスイングアーム及び車体フレームのそれぞれに渡されるとともにスイングアームの後端部で支持された後輪の前方に配置されるリヤクッションユニットとを備える自動二輪車において、リヤクッションユニットが、車幅方向の中央を通って前後に延びる車体中心線上に配置されるとともに、ABSユニットが、リヤクッションユニットの後方で且つ車体中心線上に配置されることを特徴とする。
【0008】
請求項2に係る発明は、リヤクッションユニットの下端が、連結部材を介してスイングアームに連結されるとともに、リヤクッションユニットの軸線が上下方向に延びていることを特徴とする。
【0009】
請求項3に係る発明は、スイングアームが、後輪の左右を前後に延びる一対のアーム部と、これらのアーム部材間を後輪の前方で連結するスイングアームクロスメンバとで構成され、ABSユニットが、スイングアームクロスメンバの上方に配置されることを特徴とする。
【0010】
請求項4に係る発明は、車体フレームが、シートを支持するために車体中央部から後方に延びる左右一対のシートレールと、これらのシートレールを左右に連結するとともにリヤクッションユニットの上端部を支持するクッションユニットクロスメンバとを備え、ABSユニットが、クッションユニットクロスメンバと左右のシートレールとに固定されることを特徴とする。
【0011】
請求項5に係る発明は、後輪側の制動装置が、後輪に取付けられたブレーキディスクと、このブレーキディスクを挟んで制動するブレーキキャリパと、このブレーキキャリパにブレーキ液圧を供給するマスタシリンダとで構成されるとともに、車両側面視にてマスタシリンダとABSユニットとがオーバーラップして配置されることを特徴とする。
【0012】
請求項6に係る発明は、前輪及び後輪が、連動ブレーキ制御ユニットにて制動力が分配され、連動ブレーキ制御ユニットが、車幅方向でリヤクッションユニットと車体フレームとの間に配置されることを特徴とする。
【0013】
請求項7に係る発明は、ABSユニットが、その外形が直方体に近い形状に形成されるとともに、前輪及び後輪のそれぞれの制動装置に備える操作部材側からブレーキ液圧が入力される入力用配管がABSユニットの背面に接続され、ABSユニットでの制御ブレーキ液圧が出力される出力用配管がABSユニットの上面に接続されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る発明では、リヤクッションユニットが、車幅方向の中央を通って前後に延びる車体中心線上に配置されるとともに、ABSユニットが、リヤクッションユニットの後方で且つ車体中心線上に配置されるので、比較的重量物であるリヤクッションユニットとABSユニットとを車体中心線上に配置したことで、左右の重量配分を適正化させることができ、自動二輪車の運動性能を向上させることができる。
【0015】
また、車体中心線上に配置されたABSユニットから車体の側部に沿って各制動装置へ接続されるブレーキ配管の配管自由度が増し、配管長を短縮できるため、軽量化及び液損低減によるブレーキ操作時のフィーリングを向上させることができる。
【0016】
請求項2に係る発明では、リヤクッションユニットの下端が、連結部材を介してスイングアームに連結されるとともに、リヤクッションユニットの軸線が上下方向に延びているので、リヤクッションユニットを連結部材を介してスイングアームに連結し、リヤクッションユニットの軸線を上下方向に延ばすことで、車体前後方向の中央部にリヤクッションユニットを配置した場合に、リヤクッションユニットの後方に近接してABSユニットを配置することができ、マスの集中化が図りやすく、運動性能の向上と自動二輪車のコンパクト化を図ることができる。
【0017】
請求項3に係る発明では、スイングアームが、後輪の左右を前後に延びる一対のアーム部と、これらのアーム部材間を後輪の前方で連結するスイングアームクロスメンバとで構成され、ABSユニットが、スイングアームクロスメンバの上方に配置されるので、ABSユニットの車体下方側の保護をスイングアームクロスメンバで行うことができ、保護を行う部材の点数を削減することができ、また、強度を向上させる必要がなく、軽量にABSユニットを保護することができる。
【0018】
請求項4に係る発明では、車体フレームが、シートを支持するために車体中央部から後方に延びる左右一対のシートレールと、これらのシートレールを左右に連結するとともにリヤクッションユニットの上端部を支持するクッションユニットクロスメンバとを備え、ABSユニットが、クッションユニットクロスメンバと左右のシートレールとに固定されるので、ABSユニットをクッションユニットクロスメンバ、左右のシートレールというように三方の部材に固定することにより、ABSユニット用の締結部材をコンパクト化して軽量化を図りながら、ABSユニットを強固に固定して振動を低減することができる。
【0019】
請求項5に係る発明では、後輪側の制動装置が、後輪に取付けられたブレーキディスクと、このブレーキディスクを挟んで制動するブレーキキャリパと、このブレーキキャリパにブレーキ液圧を供給するマスタシリンダとで構成されるとともに、車両側面視にてマスタシリンダとABSユニットとがオーバーラップして配置されるので、ABSユニットと後輪用マスタシリンダとを車幅方向に近接させて配置することができ、ABSユニットと後輪用マスタシリンダとの配管長を短縮できるため、液損が低減し、制動時のダイレクトな操作感を得ることができる。
【0020】
請求項6に係る発明では、前輪及び後輪が、連動ブレーキ制御ユニットにて制動力が分配され、連動ブレーキ制御ユニットが、車幅方向でリヤクッションユニットと車体フレームとの間に配置されるので、デッドスペースを有効活用してABSユニットに近接させて連動ブレーキ制御ユニットを配置できるため、ABSユニットと連動ブレーキ制御ユニットとの間の配管長が短縮でき、液損の低減、軽量化が図れるとともに、制動時のダイレクトな操作感を得ることができ、また、リヤクッションユニット、ABSユニット及び連動ブレーキ制御ユニットを近接させてマスの集中化を図ることができる。
【0021】
請求項7に係る発明では、ABSユニットが、その外形が直方体に近い形状に形成されるとともに、前輪及び後輪のそれぞれの制動装置に備える操作部材側からブレーキ液圧が入力される入力用配管がABSユニットの背面に接続され、ABSユニットでの制御ブレーキ液圧が出力される出力用配管がABSユニットの上面に接続されるので、配管接続部をABSユニットの上面及び後面に設けることで、入力用配管及び出力用配管と、ABSユニットの下方に配置されるスイングアームとの干渉を回避してABSユニットの配置自由度を増すことができるとともに、ABSユニットの上面に接続された出力用配管が車体側部に沿って配置しやすくなり、出力用配管を短縮でき、液損の低減、軽量化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る自動二輪車の要部側面図である。
【図2】本発明に係る自動二輪車のブレーキ装置の回路図である。
【図3】本発明に係るABSユニット、リヤクッションユニット及びその周囲を示す要部側面図である。
【図4】本発明に係るABSユニット、リヤクッションユニット及びその周囲を示す斜視図である。
【図5】本発明に係るABSユニットの取付構造を示す斜視図である。
【図6】本発明に係るABSユニット、リヤクッションユニット及びその周囲を示す要部平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、説明中の左、右、前、後は車両に乗車した運転者を基準にした向きを示している。また、図面は符号の向きに見るものとする。
【実施例】
【0024】
本発明の実施例を説明する。図中の矢印(FRONT)は車両前方を表している。
図1に示すように、自動二輪車10は、車体フレーム11がヘッドパイプから後方斜め下方に延びる左右一対のメインフレーム13,14(手前側の符号14のみ図示)と、これらのメインフレーム13,14の後端に取付けられた左右一対のピボットプレート16,17(手前側の符号17のみ図示)と、メインフレーム13,14及びピボットプレート16,17に取付けられた左右一対のシートレール18,19(手前側の符号19のみ図示)と、ヘッドパイプからメインフレーム13,14の下方を後方斜め下方に延びる左右一対のダウンフレーム21,22(手前側の符号22のみ図示)と、左右のシートレール18,19間に渡されたクッションユニットクロスメンバとしてのアッパクロスメンバ23とから主に構成されている。
【0025】
メインフレーム13,14とダウンフレーム21,22との間には、複数の補強パイプ25が複数の三角形を形成するように渡されている。従って、車体フレーム11が軽量になるとともに、剛性を向上させることができる。
【0026】
シートレール18,19は、それぞれアッパレール27及びロアレール28とから構成され、これらのアッパレール27、ロアレール28間に複数の補強パイプ31が渡されている。
【0027】
また、自動二輪車10は、ピボットプレート16,17及びダウンフレーム21,22に取付けられたエンジン33と、ピボットプレート16,17にピボット軸34を介して上下スイング自在に取付けられたスイングアーム36と、このスイングアーム36の後端部に取付けられた後輪37と、ピボットプレート16,17及びスイングアーム36のそれぞれに渡された連結部材としてのリンク機構38と、アッパクロスメンバ23及びリンク機構38のそれぞれに渡されたリヤクッションユニット41と、このリヤクッションユニット41の後方に配置されるとともにシートレール18,19及びアッパクロスメンバ23に取付けられてABS(アンチロックブレーキシステム)の一部を構成するABSユニットとしてのモジュレータ42と、後輪37を制動する制動装置としての後輪ディスクブレーキ43とを備える。
モジュレータ42、後輪ディスクブレーキ43を含むブレーキ装置を次図で説明する。
【0028】
図中の符号51〜53は車体フレーム11にエンジン33を取付けるエンジン支持部材、54はピボットプレート16,17に取付けられた第1ステップブラケット、56は第1ステップブラケット54に取付けられた運転者用ステップ、57は操作部材としての後輪用のブレーキペダル、58はシートレール18,19に取付けられた第2ステップブラケット、61は第2ステップブラケット58に取付けられた同乗者用ステップ、62は後輪37の上方を覆うリヤフェンダである。
【0029】
図2に示すように、ブレーキ装置80は、バーハンドルに取付けられた操作部材としてのブレーキレバー81と、このブレーキレバー81の操作によってブレーキ液圧を発生させるレバー側マスタシリンダ82と、前述のブレーキペダル57と、このブレーキペダル57の操作によりブレーキ液圧を発生させるマスタシリンダとしてのペダル側マスタシリンダ84と、これらのレバー側マスタシリンダ82、ペダル側マスタシリンダ84にそれぞれ入力用配管としての配管86,87で接続されたモジュレータ42と、このモジュレータ42に出力用配管としての配管91〜96で接続された制動装置としての前輪ディスクブレーキ101,101と、モジュレータ42に配管103〜105で接続された後輪ディスクブレーキ43と、出力用配管としての配管103の途中にブレーキ液圧を調整するために設けられた連動ブレーキ制御ユニットを構成するプレッシャコントロールバルブ106(以下では単に「PCV106」と記す。)と、一方の前輪ディスクブレーキ101及びモジュレータ42のそれぞれを接続する出力用配管としての配管107の途中に、ブレーキペダル57を操作したときに後輪ディスクブレーキ43を作動させるブレーキ液の液圧を前輪ディスクブレーキ101へも分配するとともに前輪ディスクブレーキ101側へのブレーキ液圧の供給を後輪ディスクブレーキ43側より遅らせるために設けられたディレイバルブ(DV)108と、前輪111の回転速度(即ち、車輪速度である。)を検出する前輪車輪速センサ113と、後輪37の回転速度を検出する後輪車輪速センサ116と、上記の前輪車輪側センサ113、後輪車輪速センサ116からの信号に基づいてモジュレータ42を制御する制御装置118とからなる。
【0030】
モジュレータ42は、前輪111及び後輪37のブレーキ液圧を制御することで前輪111及び後輪37がロックするのを防止する制動力制御装置であり、電動モータ、この電動モータで駆動されるポンプ、このポンプに接続される複数のブレーキ液通路、これらのブレーキ液通路の途中に設けられた複数のソレノイドバルブ等を備える。
【0031】
前輪ディスクブレーキ101は、前輪111に取付けられたブレーキディスク121と、このブレーキディスク121を挟んで制動させるブレーキキャリパ122とからなり、ブレーキキャリパ122内にそれぞれ上記ブレーキディスク121をパッドを介して押し付けるピストンが移動自在に挿入されたシリンダ122a,122b,122cを備える。
【0032】
後輪ディスクブレーキ43は、後輪37に取付けられたブレーキディスク124と、このブレーキディスク124を挟んで制動させるブレーキキャリパ125とからなり、ブレーキキャリパ125内にそれぞれ上記ブレーキディスク124をパッドを介して押し付けるピストンが移動自在に挿入されたシリンダ125a,125bを備える。
【0033】
上記のPCV106及びディレイバルブ108とは、連動ブレーキ制御ユニットとしての前後輪連動ブレーキ装置127を構成し、この前後輪連動ブレーキ装置127によって、ブレーキペダル57を操作したときに、後輪ディスクブレーキ43の作動に連動させて一方の前輪ディスクブレーキ101を作動させることが可能である。
【0034】
上記のモジュレータ42、前輪車輪速センサ113、後輪車輪速センサ116及び制御装置118は、ABS128を構成している。なお、符号131〜133は前輪車輪速センサ113、後輪車輪速センサ116、モジュレータ42と、制御装置118とをそれぞれ接続する導線である。
【0035】
図3に示すように、リヤクッションユニット41は、上端部41aがアッパクロスメンバ23にボルト141でスイング自在に取付けられ、下端部41bがリンク機構38に連結ピン142でスイング自在に連結されて、上下に延びるように配置される、詳しくは、上端部41aが下端部41bよりもやや前方に位置するように配置されている。なお、符号144はリヤクッションユニット41の軸線であり、上下に延びている。
【0036】
リンク機構38は、一端がピボットプレート16,17の後部に設けられたリンク取付部16a,17aに連結ピン146で連結された第1リンク38Aと、この第1リンク38Aの他端に中間部が連結ピン143で連結されるとともに一端がスイングアーム36の下部に設けられた下部ブラケット36aに連結ピン147で連結され且つ他端がリヤクッションユニット41の下端部41bに連結ピン142で連結された第2リンク38Bとからなる。
【0037】
モジュレータ42は、支持ブラケット151を介してシートレール18,19及びアッパクロスメンバ23に取付けられ、リヤクッションユニット41の上部の後方に接近するように配置されている。
【0038】
また、モジュレータ42の下部の両側方は、左右一対の第1ステップブラケット54,54(手前側の符号54のみ図示)で覆われているため、モジュレータ42を車体両側方からの飛び石等から保護することができる。
【0039】
PCV106は、支持ブラケット151の前部に支持ステー152を介して取付けられ、モジュレータ42の前方であって、車幅方向で右側のピボットプレート17とリヤクッションユニット41との間に配置されている。
【0040】
ペダル側マスタシリンダ84は、スイングアーム36及びモジュレータ42の外側方に配置され、ペダル側マスタシリンダ84の一部の外側方が第1ステップブラケット54で覆われている。従って、第1ステップブラケット54でペダル側マスタシリンダ84を保護することができる。
図中の符号154はブレーキ用配管を接続するジョイントであり、支持ブラケット151の側部に取付けられている。
【0041】
図4に示すように、スイングアーム36は、ピボットプレート16,17(図3参照)側にピボット軸34を介して支持される筒部161と、この筒部161から後方に延びる左右一対のアーム部162,163と、これらのアーム部162,163間を車幅方向に延びて連結するスイングアームクロスメンバとしての連結部164とからなり、筒部161、アーム部162,163及び連結部164で囲まれる空間166に上下に貫通するようにリヤクッションユニット41が配置されている。
【0042】
スイングアーム36の連結部164の上方にはモジュレータ42が配置され、ほぼ直方体に形成されたモジュレータ42の背面42f(図5参照)に後方に突出するように設けられた左右一対の後方凸部42a,42bのうち、左側の後方凸部42aに、レバー側マスタシリンダ82(図2参照)から延びる配管86が接続され、右側の後方凸部42bに、ペダル側マスタシリンダ84(図2参照)から延びる配管87が接続されている。
【0043】
また、モジュレータ42の上面42dには、前輪ディスクブレーキ101(図2参照)へ延びる配管91,107と、PCV106を介して後輪ディスクブレーキ43(図2参照)へ延びる配管103とが接続されている。
【0044】
上記図4及び図6で示すように、モジュレータ42の下方がスイングアーム36の連結部164で覆われることで、連結部164によってモジュレータ42やモジュレータ42に接続された配管86,87、これらの配管86,87の接続部を下方から飛び跳ねた石等から保護することができる。
【0045】
図5に示すように、モジュレータ42に支持ブラケット151が取付けられ、また、モジュレータ42の周囲(詳しくは、モジュレータ42の下方、前方、後方、左方及び右方)を覆うように支持ブラケット151に樹脂製の保護カバー168が取付けられている。
モジュレータ42は、背面42fに、後方凸部42a,42bと電動モータ169とが突出している。
【0046】
支持ブラケット151は、平面視コ字形状の上部コ字部材171と、この上部コ字部材171の前部に取付けられた前側締結部172と、上部コ字部材171の左端部に取付けられた左側締結部173と、上部コ字部材171の右端部に取付けられた右側締結部174と、この右側締結部174の中間部に前方へ延びるように取付けられた前方延出部材176と、右側締結部174における前方延出部176の上方に取付けられた小ブラケット片177とからなる。
【0047】
上部コ字部材171は、その前部171aと一端部171bと小ブラケット片177とに保護カバー168がそれぞれビス181で取付けられている。
前側締結部172は、アッパクロスメンバ23(図3参照)にマウントラバー182を介してボルト183で取付けられ、左側締結部173は左側のシートレール16(図6参照)に、右側締結部174は右側のシートレール17(図6参照)にそれぞれマウントラバー182を介してボルト183(一方のボルト183のみ示す。)で取付けられる。
【0048】
右側締結部174は、上下に延びるとともに下部が屈曲してモジュレータ42の下面に取付けられている。なお、符号185はモジュレータ42の側面に右側締結部174を取付けるボルトである。
【0049】
前方延出部材176は、ジョイント154(図4参照)を取付けるボルトを通すボルト挿通穴176aと、ジョイント154の回り止めとなる2つの突起176b,176cとを備える。
支持ステー152は、縦に延びる前側締結部172に取付けられ、PCV106(図4参照)を取付けるためのボルトを通す2つのボルト挿通穴152aを備える。
【0050】
図6に示すように、PCV106は、リヤクッションユニット41と左側のピボットプレート16との間に配置されている。
また、ペダル側マスタシリンダ84の側方は第1ステップブラケット54によって覆われている。
【0051】
自動二輪車10(図1参照)の車幅方向の中央を通って前後に延びる中心線を車体中心線190とすると、リヤクッションユニット41及びモジュレータ42は、この車体中心線190上に配置されている。
【0052】
詳しくは、リヤクッションユニット41の軸線144(図3参照)は、平面視で車体中心線190と重なり、また、モジュレータ42の車幅方向の中心を通って前後に延びるモジュレータ中心線191は、車体中心線190に対して右方に距離δ1だけオフセットし、モジュレータ42に備える電動モータ169の回転軸の軸線192は、モジュレータ中心線191に対して更に右方に距離δ2だけオフセットしている。
【0053】
このように、比較的重量物である両部材、リヤクッションユニット41とモジュレータ42とを車体中心線190上に配置することで、自動二輪車10の左右のバランスを向上させることができ、自動二輪車10の旋回等の運動性能を高めることができる。
【0054】
また、これらのリヤクッションユニット41とモジュレータ42は、車幅方向の中央に配置され、前後に近接し、更に車両前後方向の中心(例えば、前輪車軸と後輪車軸とを結ぶ線分の中央)に近い位置に設けられたピボットプレート16,17、エンジン33などに近接しているため、自動二輪車10の中心にマスを集中させることができ、このことからも運動性能を高めることができる。
【0055】
また、上記の軸線192は、モジュレータ42の上面42dの左右幅の中心を通るため、上面42dに接続される配管91,107,103が車体中心線190に対して近接しているか又は右側にオフセットしているため、モジュレータ42から配管91,107,103を車体の右端に沿って前後に延びるように容易に配置することができ、配管の長さを短縮することができる。従って、配管91,107,103の軽量化が図れ、また、配管91,107,103の圧力損失の低減により、ブレーキペダル57(図2参照)及びブレーキレバー81(図2参照)の操作フィーリング(ダイレクト感)を向上させることができる。
【0056】
以上の図1、図2、図6に示したように、前輪111、後輪37をそれぞれ制動する制動装置としての前輪ディスクブレーキ101及び後輪ディスクブレーキ43と、これらの前輪ディスクブレーキ101及び後輪ディスクブレーキ43の制動力を制御するABSユニットとしてのモジュレータ42と、これらの前輪ディスクブレーキ101、後輪ディスクブレーキ43にモジュレータ42を接続する配管91〜96,103〜105と、車体フレーム11にスイング自在に支持されるスイングアーム36と、このスイングアーム36及び車体フレーム11のそれぞれに渡されるとともにスイングアーム36の後端部で支持された後輪37の前方に配置されるリヤクッションユニット41とを備える自動二輪車10において、リヤクッションユニット41が、車幅方向の中央を通って前後に延びる車体中心線190上に配置されるとともに、モジュレータ42が、リヤクッションユニット41の後方で且つ車体中心線190上に配置されることを特徴とする。
【0057】
上記構成により、比較的重量物であるリヤクッションユニット41とモジュレータ42とを車体中心線190上に配置したことで、自動二輪車10の左右の重量配分を適正化させることができ、自動二輪車10の運動性能を向上させることができる。
【0058】
また、車体中心線190上に配置されたモジュレータ42から車体の側部に沿って前輪ディスクブレーキ101、後輪ディスクブレーキ43へ接続される配管91〜96,103〜105の配管自由度が増し、配管長を短縮できるため、軽量化及び液損低減によるブレーキ操作時のフィーリングを向上させることができる。
【0059】
以上の図1、図3に示すように、リヤクッションユニット41の下端が、連結部材としてのリンク機構38を介してスイングアーム36に連結されるとともに、リヤクッションユニット41の軸線144が上下方向に延びているので、リヤクッションユニット41をリンク機構38を介してスイングアーム36に連結し、リヤクッションユニット41の軸線144を上下方向に延ばすことで、車体前後方向の中央部又はその近傍にリヤクッションユニット41を配置した場合に、リヤクッションユニット41の後方に近接してモジュレータ42を配置することができ、マスの集中化が図りやすく、運動性能の向上と自動二輪車10のコンパクト化を図ることができる。
【0060】
以上の図6に示したように、スイングアーム36が、後輪37の左右を前後に延びる一対のアーム部162,163と、これらのアーム部162,163間を後輪37の前方で連結するスイングアームクロスメンバとしての連結部164とで構成され、モジュレータ42が、連結部164の上方に配置されるので、モジュレータ42の車体下方側の保護を連結部164で行うことができ、保護を行う部材の点数を削減することができ、また、保護カバー168の強度を向上させる必要がなく、軽量にモジュレータ42を保護することができる。
【0061】
以上の図1、図6に示したように、車体フレーム11が、シートを支持するために車体中央部から後方に延びる左右一対のシートレール18,19と、これらのシートレール18,19を左右に連結するとともにリヤクッションユニット41の上端部を支持するクッションユニットクロスメンバとしてのアッパクロスメンバ23とを備え、モジュレータ42が、アッパクロスメンバ23と左右のシートレール18,19とに固定されるので、モジュレータ42をアッパクロスメンバ23、左右のシートレール18,19というように三方の部材に固定することにより、モジュレータ42用の締結部材をコンパクト化して軽量化を図りながら、モジュレータ42を強固に固定して振動を低減することができる。
【0062】
以上の図1〜図3に示したように、後輪37側の後輪ディスクブレーキ43が、後輪37に取付けられたブレーキディスク124と、このブレーキディスク124を挟んで制動するブレーキキャリパ125と、このブレーキキャリパ125にブレーキ液圧を供給するマスタシリンダとしてのペダル側マスタシリンダ84とで構成されるとともに、車両側面視にてペダル側マスタシリンダ84とモジュレータ42とがオーバーラップして配置されるので、モジュレータ42とペダル側マスタシリンダ84とを車幅方向に近接させて配置することができ、モジュレータ42とペダル側マスタシリンダ84との配管長を短縮できるため、液損が低減し、制動時のダイレクトな操作感を得ることができる。
【0063】
以上の図2、図3に示したように、前輪111及び後輪37が、連動ブレーキ制御ユニットとしての前後輪連動ブレーキ装置127にて制動力が分配され、前後輪連動ブレーキ装置127、詳しくは前後輪連動ブレーキ装置127を構成するPCV106が、車幅方向でリヤクッションユニット41と車体フレーム11の右側のピボットプレート17との間に配置されるので、車体のデッドスペースを有効活用してモジュレータ42に近接させて前後輪連動ブレーキ装置127を配置できるため、モジュレータ42と前後輪連動ブレーキ装置127との間の配管長が短縮でき、液損の低減、軽量化が図れるとともに、制動時のダイレクトな操作感を得ることができ、また、リヤクッションユニット41、モジュレータ42及び前後輪連動ブレーキ装置127を近接させてマスの集中化を図ることができる。
【0064】
以上の図3〜図5に示したように、モジュレータ42は、その外形が直方体に近い形状に形成されるとともに、前輪111及び後輪37のそれぞれの前輪ディスクブレーキ101、後輪ディスクブレーキ43に備える操作部材としてのブレーキレバー81側、ブレーキペダル57側からブレーキ液圧が入力される入力用配管としての配管86,87がモジュレータ42の背面42fに接続され、モジュレータ42での制御ブレーキ液圧が出力される出力用配管としての配管91,103,107がモジュレータ42の上面42dに接続されるので、配管接続部をモジュレータ42の上面42d及び背面42fに設けることで、配管86,87及び配管91,103,107と、モジュレータ42の下方に配置されるスイングアーム36との干渉を回避してモジュレータ42の配置自由度を増すことができるとともに、モジュレータ42の上面42dに接続された配管91,103,107が車体側部に沿って配置しやすくなり、配管91,103,107を短縮でき、液損の低減、軽量化を図ることができる。
【0065】
尚、本実施例では、図6に示したように、モジュレータ42を車体中心線190上に配置したが、更に、モジュレータ42の重心を車体中心線190上に配置してもよい。このように、比較的重量物であるモジュレータ42の重心が車幅方向中央に配置されることで、より一層車体の左右バランスを向上させることが可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、ABS及び前後輪連動ブレーキ装置を備える自動二輪車に好適である。
【符号の説明】
【0067】
10…自動二輪車、11…車体フレーム、18,19…シートレール、23…クッションユニットクロスメンバ(アッパクロスメンバ)、36スイングアーム、37…後輪、38…連結部材(リンク機構)、41…リヤクッションユニット、42…ABSユニット(モジュレータ)、42d…上面、42f…背面、43,101…制動装置(後輪ディスクブレーキ、前輪ディスクブレーキ)、57,81…操作部材(ブレーキペダル、ブレーキレバー)、84…マスタシリンダ(ペダル側マスタシリンダ)、86,87…入力用配管(配管)、91〜96…配管、91,103.107…出力用配管(配管)、103〜105…配管、111…前輪、124…ブレーキディスク、125…ブレーキキャリパ、127…連動ブレーキ制御ユニット(前後輪連動ブレーキ装置)、144…軸線、162,163…アーム部、164…スイングアームクロスメンバ(連結部)、190…車体中心線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前輪、後輪をそれぞれ制動する制動装置と、これらの制動装置の制動力を制御するABSユニットと、これらの制動装置及びABSユニットのそれぞれを接続する配管と、車体フレームにスイング自在に支持されるスイングアームと、このスイングアーム及び前記車体フレームのそれぞれに渡されるとともに前記スイングアームの後端部で支持された前記後輪の前方に配置されるリヤクッションユニットとを備える自動二輪車において、
前記リヤクッションユニットは、車幅方向の中央を通って前後に延びる車体中心線上に配置されるとともに、前記ABSユニットは、前記リヤクッションユニットの後方で且つ前記車体中心線上に配置されることを特徴とする自動二輪車。
【請求項2】
前記リヤクッションユニットの下端が、連結部材を介して前記スイングアームに連結されるとともに、リヤクッションユニットの軸線が上下方向に延びていることを特徴とする請求項1記載の自動二輪車。
【請求項3】
前記スイングアームは、前記後輪の左右を前後に延びる一対のアーム部と、これらのアーム部材間を前記後輪の前方で連結するスイングアームクロスメンバとで構成され、
前記ABSユニットは、前記スイングアームクロスメンバの上方に配置されることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の自動二輪車。
【請求項4】
前記車体フレームは、シートを支持するために車体中央部から後方に延びる左右一対のシートレールと、これらのシートレールを左右に連結するとともに前記リヤクッションユニットの上端部を支持するクッションユニットクロスメンバとを備え、
前記ABSユニットは、前記クッションユニットクロスメンバと前記左右のシートレールとに固定されることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項記載の自動二輪車。
【請求項5】
前記後輪側の制動装置は、後輪に取付けられたブレーキディスクと、このブレーキディスクを挟んで制動するブレーキキャリパと、このブレーキキャリパにブレーキ液圧を供給するマスタシリンダとで構成されるとともに、車両側面視にて前記マスタシリンダと前記ABSユニットとがオーバーラップして配置されることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項記載の自動二輪車。
【請求項6】
前記前輪及び前記後輪は、連動ブレーキ制御ユニットにて制動力が分配され、前記連動ブレーキ制御ユニットが、車幅方向で前記リヤクッションユニットと前記車体フレームとの間に配置されることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項記載の自動二輪車。
【請求項7】
前記ABSユニットは、その外形が直方体に近い形状に形成されるとともに、前記前輪及び前記後輪のそれぞれの前記制動装置に備える操作部材側からブレーキ液圧が入力される入力用配管がABSユニットの背面に接続され、前記ABSユニットでの制御ブレーキ液圧が出力される出力用配管がABSユニットの上面に接続されることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1項記載の自動二輪車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−37355(P2011−37355A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−185674(P2009−185674)
【出願日】平成21年8月10日(2009.8.10)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】