説明

自動分析装置

【課題】カセット部材の上面の汚れを効率的に洗浄することが可能な自動分析装置を提供する。
【解決手段】試料及び試薬を反応容器に分注して混合液を生成し、該生成された前記混合液の成分を測定する自動分析装置において、温水を溜める恒温槽と、前記反応容器を前記恒温槽に入れた状態に保持するカセット部材と、温水を含む洗浄水により、前記カセット部材の上面を洗浄する洗浄処理部と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、試料及び試薬を反応容器に分注して混合液を生成し、該生成された前記混合液の成分を測定する自動分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の自動分析装置は、前記生成された混合液の反応を促進させるために、例えば37℃の一定温度に維持された温水を溜める恒温槽が設けられ、その温水の中に反応容器を入れて温めている。温水には添加剤(例えば、防腐剤)が入れられている。また、複数の反応容器を前記恒温槽に入れた状態に保持するカセット部材が設けられている。複数のカセット部材は、恒温槽に沿って並設されている。
【0003】
以上のように構成された自動分析装置においては、恒温槽とカセット部材との間に隙間が形成され、隣接して設けられたカセット部材同士間に隙間が形成されている。これらの隙間に接した温水は、毛細管現象により隙間を伝わって、恒温槽の外(カセット部材の上面側)に入り込む。このようにして、入り込んだ温水は、恒温槽の外で乾燥(蒸発)して、温水に入れられた前記添加剤を析出させる。析出した添加剤は汚れの要因となって、装置の外観を悪くし、場合によっては測定精度に影響を与えるので、恒温槽及びカセット部材を定期的に手作業で洗浄しているが、洗浄に手間がかかるという問題点がある。
【0004】
また、温水の蒸発量が著しくなると、温水の減少による測定不能の状態になる場合があるため、温水の蒸発量を減少させる技術がある(例えば、特許文献1)。すなわち、恒温槽に形成した凹部と、カセット部材に形成した凸部とを組み合わせることにより、ラビリンス状の溝を構成し、このラビリンス状の溝に温水の蒸気を通過させるようにして、外気に流失する蒸気量を大幅に減少させる。また、蒸気が結露して恒温槽の凹部に溜まった水が、温水を完全に外気と遮断することにより、温水の蒸発を防止する技術である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平4−40368号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載された技術では、蒸発を抑えることが可能な温水は、恒温槽内に限られ、恒温槽の外に、入り込んだ温水の蒸発を抑えることが困難となる。例えば、カセット部材同士間の隙間を通って、カセット部材の上面側に回り込んだ温水の乾燥を防止することが困難となるという問題点があった。すなわち、上記特許文献1に記載された技術を、恒温槽の外の温水の蒸発を防止するために用いることができない。
【0007】
この発明は、上記の問題を解決するものであり、カセット部材の上面の汚れを効率的に洗浄することが可能な自動分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、この発明は、恒温槽に溜める温水、及び、反応容器を洗浄するための洗浄水をカセット部材の上面の洗浄に利用することに着目した。
具体的に、この発明の第1の形態は、試料及び試薬を反応容器に分注して混合液を生成し、該生成された前記混合液の成分を測定する自動分析装置において、温水を溜める恒温槽と、前記反応容器を前記恒温槽に入れた状態に保持するカセット部材と、温水を含む洗浄水により、前記カセット部材の上面を洗浄する洗浄処理部と、を有することを特徴とする自動分析装置である。
【発明の効果】
【0009】
この発明の第1の形態によると、温水を含む洗浄水によりカセット部材の上面を洗浄したので、カセット部材を効率的に洗浄することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】この発明の第1実施形態に係る自動分析装置の内部を示す斜視図である。
【図2】自動分析装置の構成を示す図である。
【図3】反応庫内を示す平面図である。
【図4】図3のIV−IV線断面図である。
【図5】洗浄水によりカセット部材の上面を洗浄するときの断面図である。
【図6】この発明の第2実施形態に係る恒温槽を破断した断面図である。
【図7】洗浄水によりカセット部材の上面を洗浄するときの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[第1の実施形態]
この発明の第1の実施形態に係る自動分析装置の構成について図1から図5を参照して説明する。図1は、自動分析装置100の内部を示す斜視図、図2は自動分析装置100の構成を示す図、図3は反応庫5内を示す平面図、図4は図3のIV−IV線断面図、図5は、洗浄水によりカセット部材53の上面を洗浄するときの断面図である。
【0012】
図1に示す自動分析装置100は、被検試料と試薬とを分注してその混合液の反応を分析することにより、被検試料に含まれる化学成分を分析する装置である。反応容器51に血液や尿等の被検試料と試薬とを移してこれらを反応させた後、反応によって生じる色調の変化を光測定することにより検体中の被測定成分または酵素の濃度や活性を測定する。
【0013】
以下に、自動分析装置100の基本的な構成について図1から図3を参照して簡単に説明する。この自動分析装置100は、主に分析部14、データ処理部15、駆動部16、及び、制御部17を有する。
【0014】
図2及び図3に示すように、分析部14は、被検試料と試薬とを分注してその混合液の反応を分析して、測定結果データを出力する。データ処理部15は、分析部14から出力された測定結果データを演算処理して検量線データや分析データを生成し、備え付けのモニタやプリンタに出力させる。駆動部16は、モータやギア等を含み構成され、駆動力を発生して分析部14の各ユニットに伝達させることで、分析部14の各ユニットを駆動させる。制御部17は、駆動部16に指示することで、分析部14が有する各ユニットの駆動を制御する。各ユニットとしては、第1試薬庫2、第2試薬庫3、反応庫5、ディスクサンプラ6、アーム10(試料分注プローブ7、第1試薬分注プローブ8、第2試薬分注プローブ9の各アーム)、カセット部材53、ヒータ55、及び、電磁弁58を含む。駆動部16は、カセット部材53を介して反応庫5(恒温槽52内の反応容器51)を駆動するための反応容器駆動部161を含む。カセット部材53、ヒータ55、電磁弁58、反応容器駆動部161を図2に示す。また、恒温槽52、カセット部材53、ヒータ55、及び、電磁弁58の詳細については後述する。
【0015】
被検試料は、試料容器61に収納されている。試料容器61は、回転可能な円形状のディスクサンプラ6に載置される。試薬は、試薬容器4に収容されている。試薬容器4は、第1試薬庫2及び第2試薬庫3に載置される。試薬容器4には、被検試料の測定項目に対し選択的に反応する各種の第1試薬又は第1試薬と対の各種の第2試薬が収納される。第1試薬が収容された試薬容器4は、第1試薬庫2に載置され、第2試薬が収納された試薬容器4は、第2試薬庫3に載置される。第1試薬庫2及び第2試薬庫3には、回動可能な円形状の試薬ラック1が収納されている。各試薬容器4は、この試薬ラック1に環状に並んで収納されている。
【0016】
被検試料及び試薬が分注される反応容器51は、回動可能な円形状のカセット部材(反応ディスク)53に環状に並んで載置される。図3では、上方から見たときのカセット部材53を示し、図1では、カセット部材53を除外して、斜め前方から見たときの環状に並ぶ反応容器51、51、…を示す。
【0017】
被検試料及び試薬の分注は、試料分注プローブ7、第1試薬分注プローブ8、及び、第2試薬分注プローブ9により行われる。試料分注プローブ7は、ディスクサンプラ6の回動によって規定の吸引位置に搬送された試料容器61から被検試料を吸引し、カセット部材53の回動によって規定の吐出位置に搬送された反応容器51に被検試料を吐出する。第1試薬分注プローブ8は、第1試薬庫2の試薬ラック1の回動によって規定の吸引位置に搬送された試薬容器4から第1試薬を吸引し、カセット部材53の回動によって規定の吐出位置に搬送された反応容器51に第1試薬を吐出する。第2試薬分注プローブ9は、第2試薬庫3の試薬ラック1の回動によって規定の吸引位置に搬送された試薬容器4から第2試薬を吸引し、カセット部材53の回動によって規定の吐出位置に搬送された反応容器51に第2試薬を吐出する。
【0018】
反応庫5の外周には、更に攪拌ユニット11、測光ユニット12、及び、洗浄ユニット13が設けられている。被検試料及び試薬が分注された反応容器51は、カセット部材53の回動により順に攪拌ユニット11、測光ユニット12、及び、洗浄ユニット13の攪拌、測定、及び洗浄位置に搬送される。攪拌ユニット11は、1サイクル毎に、攪拌位置に停止した反応容器51内における被検試料及び試薬(第1試薬、第2試薬)の混合液を攪拌する攪拌部である。測光ユニット12は、混合液を収容した反応容器51を測光位置から測定する測定部である。測光ユニット12は、混合液の吸光度を測定した後、その測定結果データをデータ処理部15に出力する。洗浄ユニット13は、洗浄・乾燥位置に停止した反応容器51内の測定を終えた混合液を吸引すると共に、反応容器51内を洗浄・乾燥する。なお、反応容器51内を洗浄するこの洗浄ユニット13は、カセット部材53の上面を洗浄する機能を含むが、当該機能の説明については、第2の実施形態において後述する。
【0019】
以上に、第1の実施形態に係る自動分析装置100の基本的な構成を簡単に説明した。次に、カセット部材53及びヒータ55等を含む反応庫5の構成の詳細について、図2から図5を参照して説明する。
【0020】
この第1の実施形態に係る自動分析装置100は、恒温槽52内の温水によりカセット部材53の上面を洗浄する構成を有している。
【0021】
反応庫5は、温水を溜める恒温槽52と、恒温槽52内に設けられ、前記温水を所定温度に保つためのヒータ55とを有している。恒温槽52は、略溝状断面形状に形成され、両溝壁521と、両溝壁521の間に開設され、上方を向いた上方開口523とを有している。上方開口523は、前記カセット部材53の回動中心に円周形状に形成されている。カセット部材53は、反応容器51を恒温槽52に入れた状態に保持する。
【0022】
以上のような反応庫5において、温水を含む洗浄水により、カセット部材53の上面を洗浄する洗浄処理部をさらに有する。ここで、温水とは、ヒータ55によって反応容器51を所定の温度に温めるための恒温水を含み、また、所定の温度に温める前の水を含む。また、洗浄水とは、純水、アルカリ性洗剤、及び、酸性洗剤のうちの何れか1つ、並びに、これらの2以上の組合せをいう。さらに、洗浄とは、カセット部材53の上面に洗浄水を流すことによる洗浄を含む。さらに、カセット部材53とは、広く、反応容器51を恒温槽52に入れた状態に保持するための機能(保持を補助する機能を含む)を有する部材をいい、一又は複数の部品から構成される。さらに、カセット部材53の上面とは、当該上面の中でも汚れ(例えば、析出した添加剤)が生じる領域であり、反応容器51の外周部511を保持するための保持用穴534の周縁領域を含む領域をいう。
【0023】
カセット部材53は、略扇状の平面形状に形成され、円周形状に形成された前記上方開口523に沿って複数(図3では6枚)配設されている。隣接するカセット部材53同士の間には隙間が設けられている。カセット部材53は、恒温槽52の上方開口523から恒温槽52内に嵌り込むように略U字形状に形成され、低面部531及び段差壁532を有している。低面部531及び段差壁532を図3に示す。この低面部531が、カセット部材53の上面の中でも特に汚れ(析出した添加剤)が生じる領域であり、前記保持用穴534の周縁領域を含む領域である。カセット部材53が恒温槽52の両溝壁521間の上方開口523から恒温槽52内に嵌り込むことで、カセット部材53の低面部531より恒温槽52の両溝壁521の上端部522が高くなっている。
【0024】
カセット部材53の両段差壁532において、回転軸54が設けられている側の段差壁532の上端部には、溝壁521の上端部522を超える高さに形成された高面部537が連続的に設けられ、高面部537が、回転軸54と一体的に回動するブラケット541に固設されている。操作部(図示せず)からの操作情報を受けて、制御部17が反応容器駆動部161に制御信号を出力し、制御信号を受けて、反応容器駆動部161が回転軸54を回転させる。回転軸54の回転により、ブラケット541及びカセット部材53を介して、カセット部材53の保持された反応容器51が恒温槽52内を周回するように構成されている。
【0025】
また、カセット部材53の両段差壁532において、回転軸54が設けられている側とは反対側の段差壁532の上端部には、溝壁521の上端部522を超える高さに形成された凸端部533が連続的に設けられている。凸端部533は、カセット部材53の外周縁部に円周方向に所定ピッチで所定幅の切り欠き部536を複数設けることにより、形成される。凸端部533は、反応容器51を保持するための保持用穴534と対応するように設けられている。光センサによる凸端部533の検出信号(反応容器51の位置情報)が制御部17に入力されるようになっている。
【0026】
カセット部材53は、洗浄水をカセット部材53の下面側から上面側へ通すための貫通穴535を有する。貫通穴535は、カセット部材53の低面部531、又は、段差壁532のいずれに設けられていても良い。
【0027】
前記したように、洗浄処理部は制御部17を有し、操作部(図示せず)からの操作情報を受けて、制御部17は、反応容器駆動部161に制御信号を出力し、反応容器駆動部161は、回転軸54を回転させ、反応容器51を恒温槽52内に周回させる。洗浄水によりカセット部材53の低面部531を洗浄しているとき、反応容器51が恒温槽52内を周回させれば、洗浄水をカセット部材53の低面部531に対して相対的に移動させることができる。それにより、カセット部材53の低面部531の洗浄効率をさらに向上させることができる。なお、洗浄水によりカセット部材53の低面部531を洗浄している時とは、カセット部材53の低面部531の洗浄のために、洗浄水の水位をカセット部材53の低面部531へ向かって上昇させている時を含み、さらに、洗浄水の水位をカセット部材53の低面部531に上げた後の所定時間を含む。
【0028】
次に、カセット部材53の低面部531の洗浄について図4及び図5を参照して説明する。洗浄処理部は制御部17を有する。洗浄処理部によるカセット部材53の低面部531の洗浄は、前記混合液の成分測定以外の時間帯に行われる。以下に、前記混合液の成分測定について説明する。次に、洗浄水により、カセット部材53の低面部531の洗浄について説明する。なお、洗浄水の一例として温水を用いる場合を説明する。
【0029】
前記混合液の成分測定時には、操作部(図示せず)からの操作情報を受けて、制御部17は、駆動部16を制御し、電磁弁58を開閉動作させ、タンク59からの供給路を開く一方、排出路を閉じることにより、タンク59から恒温槽52に温水を供給する。制御部17が測定水位センサ56による温水の検出信号を受けて、駆動部16に制御信号を出力し、駆動部16が電磁弁58を開閉動作させることで、恒温槽52内の温水を、反応容器51の混合液の水位よりやや高い水位に満たす。それにより、成分測定の対象となる反応容器51内の混合液が温められる(図4参照)。
【0030】
これに対し、カセット部材53の低面部531の洗浄時には、操作部(図示せず)からの操作情報を受けて、制御部17は、駆動部16を制御し、電磁弁58を開閉動作させ、タンク59からの供給路を開く一方、排出路を閉じることにより、タンク59から恒温槽52に温水を供給する。制御部17が洗浄水位センサ57による温水の検出信号を受けて、駆動部16に制御信号を出力し、駆動部16が電磁弁58を開閉動作させることで、カセット部材53の低面部531より高くした恒温槽52の溝壁521の上端部522まで温水を満たして、上方開口523の高さ位置より下方にあるカセット部材53の低面部531に温水が行きわたるように温水を満たす(図5参照)。その結果、低面部531における汚れ(析出した添加剤)が温水に溶かされる。カセット部材53の低面部531の洗浄を終了後、制御部17は、駆動部16を制御し、電磁弁58を開閉動作させ、タンクからの供給路を閉じる一方、排出路を開くことにより、恒温槽52内の温水を装置の外部に排出する。また、溶かされた前記汚れも温水と共に装置の外部に排出される。
【0031】
上記カセット部材53の低面部531の洗浄時において、当該洗浄前から恒温槽52に溜められた、例えば、混合液の成分測定時の温水を測定後に恒温槽52から排出せずに、溜めておき、その温水に加えて、タンク59から恒温槽52に温水を供給するようにしても良い。
【0032】
恒温槽52内の温水をカセット部材53の低面部531に行きわたらせることで、簡単な構成により、カセット部材53の低面部531を効率的に洗浄することが可能となる。具体的には、低面部531の中でも、反応容器51の外周部511と保持用穴534の周縁との間の隙間、及び、前記隣接するカセット部材53同士間の前記隙間に生じる場合のある汚れ(析出した添加剤)を温水に溶かし、排出される温水と共に外部に排出することが可能となる。
【0033】
また、上記したように、温水によりカセット部材53の低面部531を洗浄している時、反応容器51を恒温槽52内に周回させれば、温水をカセット部材53の低面部531に対して相対的に移動させることができる。それにより、カセット部材53の低面部531の洗浄効率をさらに向上させることができる。
【0034】
なお、上記第1の実施形態では、上記測定水位センサ56及び洗浄水位センサ57の検出信号を受けて、洗浄水(温水)の水位の調整を行ったが、洗浄水(温水)の供給量が予め分かっている場合には、その供給量に応じた時間をタイマー(例えば、制御部17内に設けられたタイマー)の測定し、タイマーの測定結果を受けて、洗浄水(温水)の水位の調整を行うようにしても良い。
【0035】
さらに、前記第1の実施形態では、低面部531又は段差壁532の少なくとも一方に貫通穴535を設けることで、十分な量の洗浄水を貫通穴535に通すことができ、カセット部材53の低面部531を効率的に洗浄することが可能となる。
【0036】
前述したように、カセット部材53は、恒温槽52の溝壁521と対向するように形成された段差壁532を有し、恒温槽52の溝壁521とカセット部材53の段差壁532との間には、洗浄水を、カセット部材の下方から上方へ通すための隙間538が形成されている。この隙間538は、洗浄水をカセット部材53の下面側から上面側へ通すための隙間ともなっている。また、この隙間538を通った洗浄水は、上記段差壁532に設けられた貫通穴535、又は、隣接するカセット部材53同士間の前記隙間を通ってカセット部材53の低面部531に流れ込む。
【0037】
以上のように、隙間538を設けることで、十分な量の洗浄水を、隙間538に通すことができ、カセット部材53の低面部531を効率的に洗浄することが可能となると共に、当該隙間538の洗浄も可能となる。
【0038】
以上の第1の実施形態によると、恒温槽52内の温水によりカセット部材53の低面部531を洗浄したので、カセット部材53の低面部531を効率的に洗浄することが可能となる。
【0039】
上記第1の実施形態では、恒温槽52内の温水によりカセット部材53の低面部531を洗浄したが、温水に代えて、イオン交換水によりカセット部材53の低面部531を洗浄するようにしても良い。別のタンク59から恒温槽52内にイオン交換水を供給し、恒温槽52内のイオン交換水をカセット部材53の低面部531より高い位置まで満し、その後、前記混合液の成分測定時の水位まで、恒温槽52内のイオン交換水を排出し、恒温槽52内に添加剤(防腐剤)を添加するようにしても良い。
【0040】
また、前記第1の実施形態では、洗浄水を相対的に移動させるものとして、例えば、カセット部材53を介して、反応容器51を恒温槽52内で移動させる反応容器駆動部161を有する。カセット部材53の上面(低面部531)を洗浄するときの反応容器51の移動速度は、洗浄効果を発揮する速度であれば良く、前記混合液の成分を測定するときの反応容器51の移動速度と同じ速度に限定されない。
【0041】
さらに、洗浄水を相対的に移動させるものは、上記したものに限定されない。例えば、恒温槽52内に設けられたスクリューの回転により、恒温槽52内の温水を、カセット部材53の低面部531に対して流すようにしても良い。
【0042】
さらに、前記第1の実施形態では、ヒータ55を恒温槽52内に設けたが、タンク59側にヒータ55を設けても良い。それにより、予め定められた温度の温水を恒温槽52に供給することが可能となる。
【0043】
[第2の実施形態]
次に、この発明の第2の実施形態について図6及び図7を参照して説明する。図6は恒温槽を破断した断面図、図7は、洗浄水によりカセット部材の上面を洗浄するときの断面図である。
【0044】
第2実施形態に係る自動分析装置100は、前記第1実施形態に係る自動分析装置100と基本的な構成は同じであり、第1の実施形態が、恒温槽52内の温水によりカセット部材53の上面(低面部531)を洗浄する構成であるのに対し、第2の実施形態が、反応容器51内に吐出される洗浄水によりカセット部材53の上面を洗浄する構成である点が異なる。以下、主に異なる構成について説明し、同じ構成についての説明を省略する。
【0045】
第2実施形態においては、洗浄水を反応容器51内に吐出する反応容器洗浄用ノズル131を有する。
【0046】
図6に示すように、反応容器51の洗浄時、洗浄水を吐出すると同時に吸引をする。これに対し、図7に示すように、カセット部材53の上面を洗浄するときは、反応容器洗浄用ノズル131は、洗浄水が反応容器51から溢れ出すまで、洗浄水を吐出する。すなわち、反応容器洗浄用ノズル131が洗浄水の吐出のみを行い、吸引を中断又は中止する。それにより、洗浄水は反応容器51から溢れ出し、カセット部材53の上面を洗浄することが可能となる。溢れ出てカセット部材53の上面を洗浄した洗浄水は、貫通穴535を通り、カセット部材53の下面から反応容器51の外周部511を経て、恒温槽52内に溜まる。ここで、洗浄されるカセット部材53の上面とは、当該上面の中で特に汚れ(析出した添加剤)が生じる領域である保持用穴534の周縁領域を含む領域である。保持用穴534の周縁領域は、反応容器51の上部開口512の周縁に連続するように形成されている。以上の構成によれば、反応容器洗浄用ノズル131を用いることで、特別な洗浄手段を設けずに、カセット部材53の上面を効率的に洗浄することが可能となる。
【0047】
上記の第2実施形態では、前記第1実施形態において、カセット部材53の洗浄対象領域を洗浄するために、カセット部材53の洗浄対象領域より恒温槽52の両溝壁521の上端部522を高くするように構成したが、第2の実施形態では、そのような構成は必要なく、単に、反応容器51内に洗浄液を吐出させれば良く、部品の変更や新たな部品、ユニットなどの追加なしで、カセット部材53の洗浄対象領域を洗浄することが可能となる。
【符号の説明】
【0048】
1 試薬ラック 2 試薬庫 3 試薬庫 4 試薬容器 5 反応庫
6 ディスクサンプラ 7 試料分注プローブ 8 第1試薬分注プローブ
9 第2試薬分注プローブ 10 アーム 11 攪拌ユニット
12 測光ユニット 13 洗浄ユニット 14 分析部 15 データ処理部
16 駆動部 17 制御部 51 反応容器 52 恒温槽
53 カセット部材 54 回転軸 55 ヒータ 56 測定水位センサ
57 洗浄水位センサ 58 電磁弁 59 タンク 61 試料容器
131 反応容器洗浄用ノズル 161 反応容器駆動部
171 温度制御部 172 記憶部 173 水位制御部
511 外周部 512 上部開口
521 溝壁 522 上端部 523 上方開口 525 給排管
531 低面部 532 段差壁 533 凸端部 534 保持用穴
535 貫通穴 536 切り欠き部 537 高面部 538 隙間
541 ブラケット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料及び試薬を反応容器に分注して混合液を生成し、該生成された前記混合液の成分を測定する自動分析装置において、
温水を溜める恒温槽と、
前記反応容器を前記恒温槽に入れた状態に保持するカセット部材と、
温水を含む洗浄水により、前記カセット部材の上面を洗浄する洗浄処理部と、
を有する
ことを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
前記恒温槽は、上方へ向けて開設された上方開口を有し、
前記カセット部材の上面は、前記上方開口から前記恒温槽の内部に嵌り込むように設けられ、
前記洗浄処理部は、前記上方開口の高さ位置近傍まで前記洗浄水を満たすことにより、前記カセット部材の上面を洗浄することを特徴とする請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項3】
前記カセット部材は、前記洗浄水を前記カセット部材の下面側から上面側へ通すための貫通穴を有することを特徴とする請求項2に記載の自動分析装置。
【請求項4】
前記カセット部材の上面は、前記反応容器の外周部を保持する保持用穴の周縁領域を含み、
前記反応容器の内部に前記洗浄水を吐出する反応容器洗浄用ノズルをさらに有し、
前記洗浄処理部は、前記洗浄水が前記反応容器から前記保持用穴の前記周縁領域を含む前記カセット部材の上面に溢れ出すまで、前記反応容器洗浄用ノズルから前記洗浄水を吐出させることを特徴とする請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項5】
前記洗浄処理部は、前記洗浄水により前記カセット部材の上面を洗浄しているとき、前記洗浄水を前記カセット部材の上面に対して相対的に移動させることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の自動分析装置。
【請求項6】
前記洗浄処理部は、前記カセット部材を介して、前記反応容器を前記恒温槽内で移動させる反応容器駆動部をさらに有することを特徴とする請求項5に記載の自動分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−220887(P2011−220887A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−91423(P2010−91423)
【出願日】平成22年4月12日(2010.4.12)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】