説明

自動変速機の制御装置

【課題】どのような状況においても確実に発進変速段を形成し、安定して発進することが可能な自動変速機を提供する。
【解決手段】発進時、自動変速機の作動油の油温Tが、ワンウェイクラッチに滑りが生じる虞のある所定の温度Tよりも低いため、使用判断手段がワンウェイクラッチを用いて発進変速段を初期形成しないと判断すると(S1〜S3)、コースト時に係止するブレーキを係止して発進変速段を形成する(S4〜S7)。発進変速段が形成されると、ブレーキを徐々に解放する移行制御を実行し、その後、クイックドレーン制御に移行して、ブレーキの油圧サーボの油圧を急速に排出して、次の変速までに確実にブレーキを解放する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車輌等に搭載される自動変速機に係り、詳しくは、円滑な発進が可能な自動変速機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ワンウェイクラッチと第2ブレーキとを並設し、発進時、第1クラッチを係合させかつ、ワンウェイクラッチが第3キャリアの回転数に応じて自動係合することにより前進1速段を形成すると共に、コースト(エンジンブレーキ)時には、上記ワンウェイクラッチの代わりに並設された第2ブレーキを係止させる自動変速機が案出されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−121843号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1のような自動変速機は、前進1速段を第1クラッチ及びワンウェイクラッチによって形成しているため、係止する第3キャリアが一方向に回転しようとするとワンウェイクラッチが自動的に係合する。
【0005】
しかし、極低温で油の粘性が高く、ワンウェイクラッチのローラとレースとの間の油膜が切れにくくなっている場合など、ワンウェイクラッチが何らかの理由で滑りやすい状態において、発進時、特に急発進の場合などワンウェイクラッチに掛かるトルクが急激に上昇する際に、そのトルクに負けてワンウェイクラッチが滑り始めて第3キャリアが係止できなくなってしまう虞がある。
【0006】
通常の廉価なワンウェイクラッチは、アウターレースとインナーレースとの間に単なる円筒状のローラが入り込んで、これらアウターレース及びインナーレースの相対回転を停止させており、上記ワンウェイクラッチの滑りを防止する方法としては、このローラを、両端側に行くほど大きくなる逆クラウニングローラ(鼓型ローラ)などのインナーレースとの間に高い摩擦力が働く形状のローラに変更し、面圧を上げると共に油膜を切れやすくしたりすることがある。
【0007】
しかしながら、上述したようにワンウェイクラッチの構造を改良して滑りを防止すると、ワンウェイクラッチ自体が高価なものになりコストダウンの妨げになってしまうと共、その形状も大きくなってコンパクト化の妨げにもなっていた。
【0008】
そこで本発明は、廉価なワンウェイクラッチを使用しつつ、どのような場合にあっても確実に発進時の変速段を形成可能な自動変速機の制御装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る発明は、複数の摩擦係合要素(C−1,C−2,C−3,B−1,B−2)と、駆動源(2)に接続される入力軸(8)と、駆動車輪に接続される出力軸と、発進変速段を形成するワンウェイクラッチ(F−1)と、を有し、前記複数の摩擦係合要素(C−1,C−2,C−3,B−1,B−2)の係合状態及び前記ワンウェイクラッチ(F−1)の係止に基づき前記入力軸(8)と前記出力軸との間の伝達経路を変更して複数の変速段を形成すると共に、前記複数の摩擦係合要素(C−1,C−2,C−3,B−1,B−2)のうちの1つが、発進変速段のコースト時に係止されるブレーキ(B−2)からなる自動変速機(3)の制御装置(1)において、
所定条件に基づいて、前記ワンウェイクラッチ(F−1)を使用して発進変速段を初期形成できるか否かを判断する使用判断手段(77)を有し、
非走行レンジ(例えばNレンジ)から前進走行レンジへ(例えばDレンジ)と移行した際に、該使用判断手段(77)により前記ワンウェイクラッチ(F−1)を用いて発進変速段を初期形成できないと判断した場合、前記ブレーキ(B−2)を係止して発進変速段を形成する初期形成回避手段を備えた、
ことを特徴とする自動変速機(3)の制御装置(1)にある。
【0010】
請求項2に係る発明は、前記ブレーキ(B−2)を係止して発進変速段を形成した後、前記初期形成回避手段(76)は、前記ブレーキ(B−2)の油圧サーボ(45)の油圧(PB2)を徐々に低下させる移行制御を実行すると共に、
前記移行制御よりも前記油圧(PB2)を速く低下させるクイックドレーン制御を実行し得るドレーン制御手段(79)を有してなる、
請求項1記載の自動変速機(3)の制御装置(1)にある。
【0011】
請求項3に係る発明は、前記ドレーン制御手段(79)は、アクセル開度および車速に基づいて設定される、発進変速段から次の変速段への変速条件(X)よりも、所定量だけ低負荷側の条件(Y)に基づき、前記移行制御から前記クイックドレーン制御への切換えを判定する切換え判定手段(79b)を備えてなる、
請求項2記載の自動変速機(3)の制御装置(1)にある。
【0012】
請求項4に係る発明は、前記所定条件は、前記自動変速機(3)の作動油の所定油温(T)であり、
該所定油温(T)は、前記ワンウェイクラッチ(F−1)が滑りを起こし得る油温に設定されてなる、
請求項1乃至3の何れか1項記載の自動変速機(3)の制御装置(1)にある。
【0013】
請求項5に係る発明は、複数の摩擦係合要素(C−1,C−2,C−3,B−1,B−2)と、少なくともこれら複数の摩擦係合要素(C−1,C−2,C−3,B−1,B−2)よりも1つは少なく、前記摩擦係合要素(C−1,C−2,C−3,B−1,B−2)の油圧サーボ(41,42,43,44,45)に作動油圧を供給し得る複数の係合圧制御ソレノイドバルブ(SLC1,SLC2,SLC3,SLB1)とを備え、前記複数の摩擦係合要素(C−1,C−2,C−3,B−1,B−2)の係合状態に基づき入力軸(8)と出力軸との間の伝達経路を変更して複数の変速段を形成する自動変速機(3)の油圧制御装置(6)において、
前記係合圧制御ソレノイドバルブ(SLC1,SLC2,SLC3,SLB1)のうちの1つからの作動油圧(PSLC2)を、第1の摩擦係合要素(B−2)の油圧サーボ(45)に供給する第1の位置(図5右半位置)と、第2の摩擦係合要素(C−2)の油圧サーボ(42)に供給する第2の位置(図5左半位置)とに切換えられる振分け切換えバルブ(23)と、
前記振分け切換えバルブ(23)を、前記第1の位置と前記第2の位置とに切換える信号油圧(PS1)を出力し得る第1信号ソレノイドバルブ(S1)と、を備え、
前記振分け切換えバルブ(23)は、前記第1の位置から前記第2の位置に切換えられた際に、前記第1の摩擦係合要素(B−2)の油圧サーボ(45)の油圧(PB2)を排出するドレーンポート(EXq)を有してなる、
ことを特徴とする自動変速機(3)の油圧制御装置(6)にある。
【0014】
請求項6に係る発明は、前記第1の摩擦係合要素(B−2)の油圧サーボ(45)と前記振分け切換えバルブ(23)との間に介在し、前進走行レンジ(例えばDレンジ)の際に前記係合圧制御ソレノイドバルブ(SLC2)からの前進時作動油圧(PSLC2)が供給され得る第1入力ポート(24e)と、後進走行レンジ(Rレンジ)の際にマニュアルバルブから後進時作動油圧(PREV)が供給される第2入力ポート(24d)と、前記前進時作動油圧(PSLC2)又は前記後進時作動油圧(PREV)を、前記第1の摩擦係合要素(B−2)の油圧サーボ(45)に供給する出力ポート(24f)とを有し、該第1の摩擦係合要素(B−2)の油圧サーボ(45)に、前記前進時作動油圧(PSLC2)を供給し得る第3の位置(図5左半位置)と、前記後進時作動油圧(PREV)を供給し得る第4の位置(図5右半位置)とに切換えられる前後進切換えバルブ(24)と、
前記前後進切換えバルブ(24)を、前記第3の位置と前記第4の位置とに切換える信号油圧(PS2)を出力し得る第2信号ソレノイドバルブ(S2)と、を備え、
前記前後進切換えバルブ(24)は、前進レンジ時に、前記第3の位置から前記第4の位置に切換えられた際に、前記第1の摩擦係合要素(B−2)の油圧サーボ(45)の油圧(PB2)を、マニュアルバルブのドレーンポートから排出されるように構成されてなる、
請求項5記載の自動変速機(3)の油圧制御装置(6)にある。
【0015】
なお、上記カッコ内の符号は、図面と対照するためのものであるが、これは、発明の理解を容易にするための便宜的なものであり、特許請求の範囲の構成に何等影響を及ぼすものではない。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に係る本発明によると、ワンウェイクラッチがすべりを起こす可能性があると判断された場合、エンジントルクの上昇に伴ってワンウェイクラッチの伝達トルクも上昇を始める係合初期は、該ワンウェイクラッチに代わってコースト時に係止されるブレーキを係止して発進変速段を形成することにより、ワンウェイクラッチが滑りを起しやすい係合初期において、ワンウェイクラッチのトルク負担を低減し、確実に発進変速段を形成して、常に安定して発進をすることができる。また、廉価なワンウェイクラッチを使用してもワンウェイクラッチが滑ることがないため、コストダウンを図ることが出来ると同時に、自動変速機の構成をコンパクトなものにすることができる。
【0017】
請求項2に係る本発明によると、移行制御を実行することによって、ワンウェイクラッチの伝達トルクが徐々に増加し、確実にワンウェイクラッチを係合させることができる。また、移行制御よりも速く油圧を低下させるクイックドレーン制御を実行することによって、ブレーキの油圧サーボの油圧を素早く排出し、次の変速段への準備を早い段階で行うことが出来る。
【0018】
請求項3に係る発明によると、発進変速段から次の変速段への変速条件よりも、所定量だけ低負荷側の条件に基づき移行制御からクイックドレーン制御へと切換えることによって、ワンウェイクラッチの伝達トルクを急激に増大をさせることなく、確実にワンウェイクラッチを係合させることが出来ると共に、次の変速段へと移行する前に確実にブレーキを解放することができる。それにより、発進変速段がワンウェイクラッチと、摩擦係合要素とによって達成され、係合側摩擦係合を新たに掴むだけで次の変速段へと移行することができる。
【0019】
請求項4に係る発明によると、自動変速機の作動油温が、油の粘性が高まることに起因してワンウェイクラッチが滑りを起し得る油温よりも低い場合、ワンウェイクラッチによらずにブレーキを係止させて発進変速段を初期形成することによって、極低温時においても確実に発進変速段を達成することができる。
【0020】
請求項5に係る発明によると、係合圧制御ソレノイドバルブからの作動油圧を、第1の摩擦係合要素の油圧サーボに供給する第1の位置と、第2の摩擦係合要素の油圧サーボに供給する第2の位置とに切換えられる振分け切換えバルブを備え、第1の位置から第2の位置に切換えられた際に、第1の摩擦係合要素の油圧サーボの油圧を排出する振分け切換えバルブのドレーンポートを介して、油圧を排出することによって、専用の新たなバルブを必要とせずに、係合圧制御ソレノイドバルブのドレーンポートを使用する場合よりも速く、油圧サーボの油圧を排出することができる。
【0021】
請求項6に係る発明によると、第1の摩擦係合要素の油圧サーボと、振分け切換えバルブとの間に前後進切換えバルブを介在させ、前進レンジ時に前後進切換えバルブを、第1の摩擦係合要素の油圧サーボに、前進時作動油圧を供給し得る第3の位置から、後進時作動油圧を供給し得る第4の位置へと切換えることによって、第1の摩擦係合要素の油圧サーボの油圧を、係合圧制御ソレノイドバルブを経由して排出よりも、マニュアルバルブのドレーンポートからより速く排出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る自動変速機の制御装置を示すブロック図。
【図2】本発明に係る自動変速機を示すスケルトン図。
【図3】本自動変速機の係合表。
【図4】本自動変速機の速度線図。
【図5】本発明に係る自動変速機の油圧制御装置を示す回路図。
【図6】本発明に係る極低温時の発進制御を示すフローチャート。
【図7】(a)通常の発進時の変化を示すタイムグラフ図、(b)極低温時における発進の際の変化を示すタイムグラフ図。
【図8】移行制御からクイックドレーン制御の移行条件を示す変速マップ図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る実施の形態を図1乃至図8に沿って説明する。
【0024】
[自動変速機の概略構成]
まず、本発明を適用し得る自動変速機3の概略構成について図2に沿って説明する。図2に示すように、例えばFFタイプ(フロントエンジン、フロントドライブ)の車輌に用いて好適な自動変速機3は、エンジン(不図示)に接続し得る自動変速機の入力軸8を有しており、該入力軸8の軸方向を中心としてトルクコンバータ4と、自動変速機構5とを備えている。
【0025】
上記トルクコンバータ4は、自動変速機3の入力軸8に接続されたポンプインペラ4aと、作動流体を介して該ポンプインペラ4aの回転が伝達されるタービンランナ4bとを有しており、該タービンランナ4bは、上記入力軸8と同軸上に配設された上記自動変速機構5の入力軸10に接続されている。また、該トルクコンバータ4には、ロックアップクラッチ7が備えられており、該ロックアップクラッチ7が係合されると、上記自動変速機3の入力軸8の回転が自動変速機構5の入力軸10に直接伝達される。
【0026】
上記自動変速機構5には、入力軸10上において、プラネタリギヤSPと、プラネタリギヤユニットPUとが備えられている。上記プラネタリギヤSPは、サンギヤS1、キャリヤCR1、及びリングギヤR1を備えており、該キャリヤCR1に、サンギヤS1及びリングギヤR1に噛合するピニオンP1を有している、いわゆるシングルピニオンプラネタリギヤである。
【0027】
また、該プラネタリギヤユニットPUは、4つの回転要素としてサンギヤS2、サンギヤS3、キャリヤCR2、及びリングギヤR2を有し、該キャリヤCR2に、サンギヤS2及びリングギヤR2に噛合するロングピニオンPLと、サンギヤS3に噛合するショートピニオンPSとを互いに噛合する形で有している、いわゆるラビニヨ型プラネタリギヤである。
【0028】
上記プラネタリギヤSPのサンギヤS1は、ミッションケース9に一体的に固定されている不図示のボス部に接続されて回転が固定されている。また、上記リングギヤR1は、上記入力軸10の回転と同回転(以下「入力回転」という。)になっている。更に上記キャリヤCR1は、該固定されたサンギヤS1と該入力回転するリングギヤR1とにより、入力回転が減速された減速回転になると共に、クラッチC−1及びクラッチC−3に接続されている。
【0029】
上記プラネタリギヤユニットPUのサンギヤS2は、バンドブレーキからなるブレーキB−1に接続されてミッションケース9に対して固定自在となっていると共に、上記クラッチC−3に接続され、該クラッチC−3を介して上記キャリヤCR1の減速回転が入力自在となっている。また、上記サンギヤS3は、クラッチC−1に接続されており、上記キャリヤCR1の減速回転が入力自在となっている。
【0030】
更に、上記キャリヤCR2は、入力軸10の回転が入力されるクラッチC−2に接続され、該クラッチC−2を介して入力回転が入力自在となっており、また、ワンウェイクラッチF−1及びブレーキB−2に接続されて、該ワンウェイクラッチF−1を介してミッションケース9に対して一方向の回転が規制されると共に、該ブレーキB−2を介して回転が固定自在となっている。そして、上記リングギヤR2は、カウンタギヤ11に接続されており、該カウンタギヤ11は、不図示のカウンタシャフト、ディファレンシャル装置を介して駆動車輪に接続されている。
【0031】
[自動変速機における各変速段の動作]
つづいて、上記構成に基づき、自動変速機構5の作用について図2、図3及び図4に沿って説明する。なお、図4に示す速度線図において、縦軸方向はそれぞれの回転要素(各ギヤ)の回転数を示しており、横軸方向はそれら回転要素のギヤ比に対応して示している。また、該速度線図のプラネタリギヤSPの部分において、縦軸は、図4中左方側から順に、サンギヤS1、キャリヤCR1、リングギヤR1に対応している。更に、該速度線図のプラネタリギヤユニットPUの部分において、縦軸は、図4中右方側から順に、サンギヤS3、リングギヤR2、キャリヤCR2、サンギヤS2に対応している。
【0032】
例えばD(ドライブ)レンジであって、前進1速段(1ST)では、図3に示すように、クラッチC−1及びワンウェイクラッチF−1が係合される。すると、図2及び図4に示すように、固定されたサンギヤS1と入力回転であるリングギヤR1によって減速回転するキャリヤCR1の回転が、クラッチC−1を介してサンギヤS3に入力される。また、キャリヤCR2の回転が一方向(正転回転方向)に規制されて、つまりキャリヤCR2の逆転回転が防止されて固定された状態になる。すると、サンギヤS3に入力された減速回転が、固定されたキャリヤCR2を介してリングギヤR2に出力され、前進1速段としての正転回転がカウンタギヤ11から出力される。
【0033】
なお、エンジンブレーキ時(コースト時)には、ブレーキB−2を係止してキャリヤCR2を固定し、該キャリヤCR2の正転回転を防止する形で、上記前進1速段の状態を維持する。また、該前進1速段では、ワンウェイクラッチF−1によりキャリヤCR2の逆転回転を防止し、かつ正転回転を可能にするので、例えば非走行レンジから走行レンジに切換えた際の前進1速段の達成を、ワンウェイクラッチF−1の自動係合により滑らかに行うことができる。
【0034】
前進2速段(2ND)では、図3に示すように、クラッチC−1が係合され、ブレーキB−1が係止される。すると、図2及び図4に示すように、固定されたサンギヤS1と入力回転であるリングギヤR1によって減速回転するキャリヤCR1の回転が、クラッチC−1を介してサンギヤS3に入力される。また、ブレーキB−1の係止によりサンギヤS2の回転が固定される。すると、キャリヤCR2がサンギヤS3よりも低回転の減速回転となり、該サンギヤS3に入力された減速回転が該キャリヤCR2を介してリングギヤR2に出力され、前進2速段としての正転回転がカウンタギヤ11から出力される。
【0035】
前進3速段(3RD)では、図3に示すように、クラッチC−1及びクラッチC−3が係合される。すると、図2及び図4に示すように、固定されたサンギヤS1と入力回転であるリングギヤR1によって減速回転するキャリヤCR1の回転が、クラッチC−1を介してサンギヤS3に入力される。また、クラッチC−3の係合によりキャリヤCR1の減速回転がサンギヤS2に入力される。つまり、サンギヤS2及びサンギヤS3にキャリヤCR1の減速回転が入力されるため、プラネタリギヤユニットPUが減速回転の直結状態となり、そのまま減速回転がリングギヤR2に出力され、前進3速段としての正転回転がカウンタギヤ11から出力される。
【0036】
前進4速段(4TH)では、図3に示すように、クラッチC−1及びクラッチC−2が係合される。すると、図2及び図4に示すように、固定されたサンギヤS1と入力回転であるリングギヤR1によって減速回転するキャリヤCR1の回転が、クラッチC−1を介してサンギヤS3に入力される。また、クラッチC−2に係合によりキャリヤCR2に入力回転が入力される。すると、該サンギヤS3に入力された減速回転とキャリヤCR2に入力された入力回転とにより、上記前進3速段より高い減速回転となってリングギヤR2に出力され、前進4速段としての正転回転がカウンタギヤ11から出力される。
【0037】
前進5速段(5TH)では、図3に示すように、クラッチC−2及びクラッチC−3が係合される。すると、図2及び図4に示すように、固定されたサンギヤS1と入力回転であるリングギヤR1によって減速回転するキャリヤCR1の回転が、クラッチC−3を介してサンギヤS2に入力される。また、クラッチC−2の係合によりキャリヤCR2に入力回転が入力される。すると、該サンギヤS2に入力された減速回転とキャリヤCR2に入力された入力回転とにより、入力回転より僅かに高い増速回転となってリングギヤR2に出力され、前進5速段としての正転回転がカウンタギヤ11から出力される。
【0038】
前進6速段(6TH)では、図3に示すように、クラッチC−2が係合され、ブレーキB−1が係止される。すると、図2及び図4に示すように、クラッチC−2の係合によりキャリヤCR2に入力回転が入力される。また、ブレーキB−1の係止によりサンギヤS2の回転が固定される。すると、固定されたサンギヤS2によりキャリヤCR2の入力回転が上記前進5速段より高い増速回転となってリングギヤR2に出力され、前進6速段としての正転回転がカウンタギヤ11から出力される。
【0039】
後進1速段(REV)では、図3に示すように、クラッチC−3が係合され、ブレーキB−2が係止される。すると、図2及び図4に示すように、固定されたサンギヤS1と入力回転であるリングギヤR1によって減速回転するキャリヤCR1の回転が、クラッチC−3を介してサンギヤS2に入力される。また、ブレーキB−2の係止によりキャリヤCR2の回転が固定される。すると、サンギヤS2に入力された減速回転が、固定されたキャリヤCR2を介してリングギヤR2に出力され、後進1速段としての逆転回転がカウンタギヤ11から出力される。
【0040】
なお、例えばP(パーキング)レンジ及びN(ニュートラル)レンジでは、クラッチC−1、クラッチC−2、及びクラッチC−3、が解放される。すると、キャリヤCR1とサンギヤS2及びサンギヤS3との間、即ちプラネタリギヤSPとプラネタリギヤユニットPUとの間が切断状態となり、かつ、入力軸10とキャリヤCR2との間が切断状態となる。これにより、入力軸10とプラネタリギヤユニットPUとの間の動力伝達が切断状態となり、つまり入力軸10とカウンタギヤ11との動力伝達が切断状態となる。
【0041】
[油圧制御装置の概略構成]
つづいて、本発明に係る自動変速機の油圧制御装置6について説明する。まず、油圧制御装置6における図示を省略した、ライン圧、セカンダリ圧、モジュレータ圧、レンジ圧等の生成部分について、大まかに説明する。なお、これらライン圧、セカンダリ圧、モジュレータ圧、レンジ圧の生成部分は、一般的な自動変速機の油圧制御装置と同様なものであり、周知のものであるので、簡単に説明する。
【0042】
本油圧制御装置6は、例えば図示を省略したオイルポンプ、マニュアルシフトバルブ、プライマリレギュレータバルブ、セカンダリレギュレータバルブ、ソレノイドモジュレータバルブ及びリニアソレノイドバルブSLT等を備えており、例えばエンジンが始動されると、上記トルクコンバータ4のポンプインペラ4aに回転駆動連結されたオイルポンプがエンジンの回転に連動して駆動されることにより、不図示のオイルパンからストレーナを介してオイルを吸上げる形で油圧を発生させる。
【0043】
上記オイルポンプにより発生された油圧は、スロットル開度に応じて調圧出力されるリニアソレノイドバルブSLTの信号圧PSLTに基づき、プライマリレギュレータバルブによって排出調整されつつライン圧Pに調圧される。このライン圧Pは、マニュアルシフトバルブ(レンジ切換えバルブ)、ソレノイドモジュレータバルブ、及び詳しくは後述するリニアソレノイドバルブSLC3等に供給される。このうちのソレノイドモジュレータバルブに供給されたライン圧Pは、該バルブによって略々一定圧となるモジュレータ圧PMODに調圧され、このモジュレータ圧PMODは、上記リニアソレノイドバルブSLTや、詳しくは後述するソレノイドバルブS1,S2等の元圧として供給される。
【0044】
なお、上記プライマリレギュレータバルブから排出された圧は、例えばセカンダリレギュレータバルブにより更に排出調整されつつセカンダリ圧PSECに調圧され、このセカンダリ圧PSECが、例えば潤滑油路やオイルクーラ等に供給されると共にトルクコンバータ4にも供給され、かつロックアップクラッチ7の制御にも用いられる。
【0045】
一方、マニュアルシフトバルブ(不図示)は、運転席(不図示)に設けられたシフトレバーに機械的(或いは電気的)に駆動されるスプールを有しており、該スプールの位置がシフトレバーにより選択されたシフトレンジ(例えばP,R,N,D)に応じて切換えられることにより、上記入力されたライン圧Pの出力状態や非出力状態(ドレーン)を設定する。
【0046】
詳細には、シフトレバーの操作に基づきDレンジにされると、該スプールの位置に基づき上記ライン圧Pが入力される入力ポートと前進レンジ圧出力ポートとが連通し、該前進レンジ圧出力ポートよりライン圧Pが前進レンジ圧(Dレンジ圧)Pとして出力される。シフトレバーの操作に基づきR(リバース)レンジにされると、該スプールの位置に基づき上記入力ポートと後進レンジ圧出力ポートとが連通し、該後進レンジ圧出力ポートよりライン圧Pが後進レンジ圧(Rレンジ圧)PREVとして出力される。また、シフトレバーの操作に基づきPレンジ及びNレンジにされた際は、上記入力ポートと前進レンジ圧出力ポート及び後進レンジ圧出力ポートとの間がスプールによって遮断されると共に、それら前進レンジ圧出力ポート及び後進レンジ圧出力ポートがドレーンポートに連通され、つまりDレンジ圧P及びRレンジ圧PREVがドレーン(排出)された非出力状態となる。
【0047】
[油圧制御装置における変速制御部分の詳細な構成]
ついで、本発明に係る油圧制御装置6における主に変速制御を行う部分について図5に沿って説明する。なお、本実施の形態においては、スプール位置を説明するため、図5中に示す右半分の位置を「右半位置」、左半分の位置を「左半位置」という。
【0048】
本油圧制御装置6は、上述のクラッチC−1の油圧サーボ41、クラッチC−2の油圧サーボ42、クラッチC−3の油圧サーボ43、ブレーキB−1の油圧サーボ44、ブレーキB−2の油圧サーボ45の、計5つの油圧サーボのそれぞれに係合圧として調圧した出力圧を直接的に供給するための4本のリニアソレノイドバルブ(係合圧制御ソレノイドバルブ)SLC1,SLC2,SLC3,SLB1を備えており、また、リンプホーム機能を達成すると共に、リニアソレノイドバルブSLC2の出力圧をクラッチC−2の油圧サーボ42又はブレーキB−2の油圧サーボ45に切換える部分として、ソレノイドバルブ(第1信号ソレノイドバルブ)S1、ソレノイドバルブ(第2信号ソレノイドバルブ)S2、第1クラッチアプライリレーバルブ21、第2クラッチアプライリレーバルブ22、C−2リレーバルブ(振分け切換えバルブ)23、B−2リレーバルブ(前後進切換えバルブ)24等を備えて構成されている。
【0049】
図5に示す油路a1、油路a2、油路a4、油路a5には、上述したマニュアルシフトバルブの前進レンジ圧出力ポート(不図示)が接続されて前進レンジ圧Pが入力し得るように構成されており、また、油路lには、該マニュアルシフトバルブの後進レンジ圧出力ポート(不図示)が接続されて後進レンジ圧PREVを入力し得るように構成されている。また、油路dには、プライマリレギュレータバルブ(不図示)からのライン圧Pが入力されており、さらに油路g1には、モジュレータバルブ(不図示)からのモジュレータ圧PMODが入力されて構成されている。
【0050】
このうちの油路a2は、詳しくは後述する第1クラッチアプライリレーバルブ21の入力ポート21cに接続されていると共に、チェックバルブ50とオリフィス60とが配設されている。また、該油路a1は、油路a3を介してアキュムレータ30に接続されていると共に、上記リニアソレノイドバルブSLC1に接続されている。該アキュムレータ30は、ケース30cと、該ケース30cの内部に配設されたピストン30bと、該ピストン30bを付勢するスプリング30sと、該ケース30c及びピストン30bの間に形成された油室30aとを有して構成されている。
【0051】
上記リニアソレノイドバルブSLC1は、非通電時に非出力状態となるノーマルクローズタイプからなり、油路a1を介して上記前進レンジ圧Pを入力する入力ポートSLC1aと、該前進レンジ圧Pを調圧して油圧サーボ41に制御圧PSLC1を係合圧PC1として出力する出力ポートSLC1bとを有している。即ち、該リニアソレノイドバルブSLC1は、非通電時に入力ポートSLC1aと出力ポートSLC1bとを遮断して非出力状態となり、制御部ECU70からの指令値に基づく通電時には、入力ポートSLC1aと出力ポートSLC1bとの連通する量(開口量)を該指令値に応じて大きくし、つまり指令値に応じた係合圧PC1を出力し得るように構成されている。そして、該リニアソレノイドバルブSLC1の出力ポートSLC1bは、油路b1を介して後述の第2クラッチアプライリレーバルブ22の入力ポート22iに接続されている。
【0052】
一方、リニアソレノイドバルブSLC2は、非通電時に出力状態となるノーマルオープンタイプからなり、油路a4などを介して上記前進レンジ圧Pを入力する入力ポートSLC2aと、該前進レンジ圧Pを調圧して油圧サーボ42に制御圧(前進時作動油圧)PSLC2を係合圧PC2(又は係合圧PB2)として出力する出力ポートSLC2bとを有している。即ち、該リニアソレノイドバルブSLC2は、非通電時に入力ポートSLC2aと出力ポートSLC2bとを連通した出力状態となり、制御部70からの指令値に基づく通電時には、入力ポートSLC2aと出力ポートSLC2bとの連通する量を該指令値に応じて小さくし(即ち開口量を絞り)、つまり指令値に応じた係合圧PC2(又はPB2)を出力し得るように構成されている。そして、該リニアソレノイドバルブSLC2の出力ポートSLC2bは、油路c1を介して後述の第2クラッチアプライリレーバルブ22の入力ポート22eに接続されている。
【0053】
リニアソレノイドバルブSLC3は、非通電時に出力状態となるノーマルオープンタイプからなり、油路dなどを介して上記ライン圧Pを入力する入力ポートSLC3aと、該ライン圧Pを調圧して油圧サーボ43に制御圧PSLC3を係合圧PC3として出力する出力ポートSLC3bとを有している。即ち、該リニアソレノイドバルブSLC3は、非通電時に入力ポートSLC3aと出力ポートSLC3bとを連通した出力状態となり、制御部70からの指令値に基づく通電時には、入力ポートSLC3aと出力ポートSLC3bとの連通する量を該指令値に応じて小さくし(即ち開口量を絞り)、つまり指令値に応じた係合圧PC3を出力し得るように構成されている。そして、該リニアソレノイドバルブSLC3の出力ポートSLC3bは、油路e1を介してクラッチC−3の油圧サーボ43に接続されている。また、該油路e1には、チェックバルブ53とオリフィス63とが配設されていると共に、油路e2を介してC−3ダンパ33の油室33aが接続されている。なお、該C−3ダンパ33は、上述したアキュムレータ30と同様の構成であって、一般的なダンパ装置であるので、その詳細説明は省略する。
【0054】
リニアソレノイドバルブSLB1は、非通電時に非出力状態となるノーマルクローズタイプからなり、油路a5などを介して上記前進レンジ圧Pを入力する入力ポートSLB1aと、該前進レンジ圧Pを調圧して油圧サーボ44に制御圧PSLB1を係合圧PB1として出力する出力ポートSLB1bとを有している。即ち、該リニアソレノイドバルブSLB1は、非通電時に入力ポートSLB1aと出力ポートSLB1bとを遮断して非出力状態となり、制御部70からの指令値に基づく通電時には、入力ポートSLB1aと出力ポートSLB1bとの連通する量(開口量)を該指令値に応じて大きくし、つまり指令値に応じた係合圧PB1を出力し得るように構成されている。そして、該リニアソレノイドバルブSLB1の出力ポートSLB1bは、油路f1を介してブレーキB−1の油圧サーボ44に接続されている。また、該油路f1には、チェックバルブ54とオリフィス64とが配設されていると共に、油路f2を介してB−1ダンパ34の油室34aが接続されている。
【0055】
ソレノイドバルブS1は、非通電時に出力状態となるノーマルオープンタイプからなり、油路g1,g2を介して上記モジュレータ圧PMODを入力する入力ポートS1aと、非通電時(即ちOFF時)に該モジュレータ圧PMODを略々そのまま信号圧PS1として出力する出力ポートS1bとを有している。該出力ポートS1bは、油路h1を介してB−2リレーバルブ24の入力ポート24cに接続されている。
【0056】
ソレノイドバルブS2は、非通電時に非出力状態となるノーマルクローズタイプからなり、油路g1,g3を介して上記モジュレータ圧PMODを入力する入力ポートS2aと、通電時(即ちON時)に該モジュレータ圧PMODを略々そのまま信号圧PS2として出力する出力ポートS2bとを有している。該出力ポートS2bは、油路iを介してB−2リレーバルブの油室24aに接続されている。
【0057】
第1クラッチアプライリレーバルブ21は、図中上方側が小径で下方側が大径となるように各ランド部が形成されたスプール21pと、該スプール21pを図中下方に付勢するスプリング(第1付勢手段)21sとを有していると共に、該スプール21pの図中上方に油室21aと、スプール21pの図中下方に油室21eとを有しており、さらに、出力ポート21bと、入力ポート21cと、出力ポート21dと、ドレーンポートEXとを有して構成されている。
【0058】
該第1クラッチアプライリレーバルブ21は、スプール21pがクラッチC−1の係合圧PC1(制御圧PSLC1)及びスプリング21sによって右半位置(低速段側位置)にされた際に、入力ポート21cと出力ポート21bとが連通されると共に、入力ポート21cと出力ポート21dとが遮断されて該出力ポート21dとドレーンポートEXとが連通され、クラッチC−2の係合圧PC2(制御圧PSLC2)及び信号圧PS1に基づき左半位置(高速段側位置)にされた際には、入力ポート21cと出力ポート21dとが連通されると共に、入力ポート21cと出力ポート21bとが遮断されて該出力ポート21bとドレーンポートEXとが連通されるように構成されている。
【0059】
上記入力ポート21cには、油路a2を介して前進レンジ圧Pが入力されている。スプール21pが右半位置の際に該入力ポート21cに連通する出力ポート21bは、油路k1を介して第2クラッチアプライリレーバルブ22の入力ポート22dに接続されていると共に、油路k2を介して油室21aに接続されている。また、スプール21pが左半位置の際に該入力ポート21cに連通する出力ポート21dは、油路jを介して第2クラッチアプライリレーバルブ22の入力ポート22gに接続されている。そして、上記油室21eは、油路c5、C−2リレーバルブ23を介して、クラッチC−2の油圧サーボ42に接続されており、つまり正常時には第2クラッチアプライリレーバルブ22を介して、リニアソレノイドバルブSLC2の出力ポートSLC2bに接続されている。
【0060】
一方、第2クラッチアプライリレーバルブ22は、スプール22pと、該スプール22pを図中上方に付勢するスプリング22sとを有していると共に、該スプール22pの図中上方に油室(第2油室)22aと、該スプール22pの図中下方に油室22hとを有しており、さらに、入力ポート22bと、出力ポート22cと、入力ポート22dと、入力ポート22eと、出力ポート22fと、入力ポート22gとを有して構成されている。
【0061】
該第2クラッチアプライリレーバルブ22は、スプール22pが左半位置(正常時位置)にされた際に、入力ポート22bと出力ポート22cとが連通され、かつ入力ポート22eと出力ポート22fとが連通されると共に、入力ポート22dと入力ポート22gとがそれぞれ遮断され、右半位置(故障時位置)にされた際には、入力ポート22dと出力ポート22cとが連通され、かつ入力ポート22gと出力ポート22fとが連通されると共に、入力ポート22bと出力ポート22cとが遮断されるように構成されている。
【0062】
該第2クラッチアプライリレーバルブ22の油室22aは、油路h3を介して上記ソレノイドバルブS1の出力ポートS1bに接続されている。また、上記油室22hは、油路b1に接続された油路b3を介して上記リニアソレノイドバルブSLC1の出力ポートSLC1bに接続されている。
【0063】
該第2クラッチアプライリレーバルブ22の入力ポート22bは、油路b1を介して上記リニアソレノイドバルブSLC1の出力ポートSLC1bに接続されており、スプール22pが左半位置の際に該入力ポート22bに連通し、かつスプール22pが右半位置の際に該入力ポート22dに連通する出力ポート22cは、油路b2を介してクラッチC−1の油圧サーボ41に接続されている。一方、入力ポート22eは、油路c1を介して上記リニアソレノイドバルブSLC2の出力ポートSLC2bに接続されており、スプール22pが左半位置の際に該入力ポート22eに連通し、かつスプール22pが右半位置の際に該入力ポート22gに連通する出力ポート22fは、油路c2、C−2リレーバルブ23、油路c3を介してクラッチC−2の油圧サーボ42に接続されている。該油路c2には、チェックバルブ52とオリフィス62とが配設されていると共に、油路c4を介してC2−B2ダンパ32の油室32aが接続されている。
【0064】
C−2リレーバルブ23は、スプール23pと、該スプール23pを図中上方に付勢するスプリング23sとを有していると共に、該スプール23pの図中上方に油室23aを有しており、さらに、入力ポート23bと、出力ポート23cと、出力ポート23dと、出力ポート23eと、ドレーンポートEXq,EXとを有して構成されている。
【0065】
該C−2リレーバルブ23は、スプール23pが左半位置にされた際に、入力ポート23bと出力ポート23c及び出力ポート23eとが連通され、かつ出力ポート23dとドレーンポートEXqとが連通され、右半位置にされた際には、入力ポート23bと出力ポート23dとが連通され、かつ出力ポート23c及び出力ポート23eとドレーンポートEXqとが連通されるように構成されている。
【0066】
上記油室23aは、油路h2を介して後述するB−2リレーバルブ24の出力ポート24bに接続されている。入力ポート23bは、油路c2を介して上記第2クラッチアプライリレーバルブ22の出力ポート22fに接続されており、該入力ポート23bにスプール23pが左半位置の際に連通する出力ポート23eが油路c3を介してクラッチC−2の油圧サーボ42に接続されている。また、同様に該入力ポート23bにスプール23pが左半位置の際に連通する出力ポート23cは、油路c5を介して上記第1クラッチアプライリレーバルブ21の油室21eに接続されており、また、該油路c5には、チェックバルブ55とオリフィス65とが配設されている。そして、該入力ポート23bにスプール23pが右半位置の際に連通する出力ポート23dは、油路mを介してB−2リレーバルブ24の入力ポート24eに接続されている。
【0067】
B−2リレーバルブ24は、スプール24pと、該スプール24pを図中上方に付勢するスプリング24sとを有していると共に、該スプール24pの図中上方に油室24aを有しており、出力ポート24bと、入力ポート24cと、入力ポート(第2入力ポート)24dと、入力ポート(第1入力ポート)24eと、出力ポート24fと、ドレーンポートEXとを有して構成されている。
【0068】
該B−2リレーバルブ24は、スプール24pが左半位置にされた際に、入力ポート24dと出力ポート24fとが連通され、かつ出力ポート24bとドレーンポートEXとが連通されると共に、入力ポート24cが遮断され、右半位置にされた際には、入力ポート24cと出力ポート24bとが連通され、かつ入力ポート24eと出力ポート24fとが連通されると共に、入力ポート24d、ドレーンポートEXとが遮断されるように構成されている。
【0069】
上記油室24aは、油路iを介して上記ソレノイドバルブS2の出力ポートS2bに接続されている。上記入力ポート24dは、油路lを介して後進レンジ圧(後進時作動油圧)PREVが出力されるマニュアルシフトバルブの後進レンジ圧出力ポート(不図示)に接続されており、また、上記入力ポート24eは、油路mを介して上記C−2リレーバルブ23の出力ポート23dに接続されており、該入力ポート24dにスプール24pが左半位置の際に連通し、該入力ポート24eにスプール24pが右半位置の際に連通する上記出力ポート24fは、油路nを介してブレーキB−2の油圧サーボ45に接続され、つまり該ブレーキB−2の油圧サーボ45は、マニュアルシフトバルブの後進レンジ圧出力ポート(不図示)、又はリニアソレノイドバルブSLC2の出力ポートSLC2bに接続されている。また、上述のように入力ポート24cは、油路h1を介してソレノイドバルブS1の出力ポートS1bに接続されており、該入力ポート24cにスプール24pが右半位置の際に連通する出力ポート24bは、油路h2を介して上記C−2リレーバルブ23の油室23aに接続されている。
【0070】
[油圧制御装置の動作]
次に、本実施の形態に係る油圧制御装置6の作用について説明する。
【0071】
例えば運転手によりイグニッションがONされると、本油圧制御装置6の油圧制御が開始される。まず、シフトレバーの選択位置が、例えばPレンジ又はNレンジである際は、不図示の制御部の電気指令によってノーマルオープンタイプであるリニアソレノイドバルブSLC2、リニアソレノイドバルブSLC3、及びソレノイドバルブS1に通電され、それぞれの入力ポートと出力ポートとを遮断する。ついで、例えばエンジンが始動されると、エンジン回転に基づくオイルポンプ(不図示)の回転により油圧が発生し、該油圧は、上述のようにプライマリレギュレータバルブやソレノイドモジュレータバルブによって、ライン圧Pやモジュレータ圧PMODにそれぞれ調圧出力され、不図示のマニュアルシフトバルブの入力ポートと油路dを介してリニアソレノイドバルブSLC3の入力ポートSLC3aとにライン圧Pが入力されると共に、油路g1,g2,g3を介してソレノイドバルブS1,S2の入力ポートS1a,S2aにモジュレータ圧PMODが入力される。
【0072】
続いて、例えば運転手によりシフトレバーがNレンジ位置からDレンジ位置にされ、制御部により前進1速段〜前進3速段が判断されると、マニュアルシフトバルブの前進レンジ圧出力ポートから油路a1〜a5に前進レンジ圧Pが出力されており、油路a2より前進レンジ圧Pが第1クラッチアプライリレーバルブ21の入力ポート21cに入力される。すると、該第1クラッチアプライリレーバルブ21は、前進1速段〜前進3速段において(図2参照)リニアソレノイドバルブSLC2から制御圧PSLC2が出力されない(油室21eに入力されない)ため、スプリング21sの付勢力により右半位置にされ、出力ポート21bから油路k1に前進レンジ圧Pを第1予備油圧PDC1として出力するが、ソレノイドバルブS1がONされて信号圧PS1が出力されていないために、スプリング22sの付勢力により左半位置にされている第2クラッチアプライリレーバルブ22にあって、入力ポート22dにおいて遮断された状態となる。また、この際、油路k2を介して第1予備油圧PDC1(前進レンジ圧P)が油室21aに入力され、スプール21pは左半位置に安定的に保持された状態となる。なお、油路j内の油圧(第2予備油圧PDC2)は、出力ポート21dとドレーンポートEXとが連通された状態となるため、ドレーンされる。
【0073】
そして、上述のようにリニアソレノイドバルブSLC1から第2クラッチアプライリレーバルブ22の入力ポート22bに入力された制御圧PSLC1は、出力ポート22cから油路b2を介して油圧サーボ41に係合圧PC1として出力され、上記クラッチC−1が係合される。これにより、上記ワンウェイクラッチF−1の係止と相俟って、前進1速段が達成される。
【0074】
また、上記油路b2には、チェックバルブ51及びオリフィス61が配設されており、係合圧PC1(制御圧PSLC1)を油圧サーボ41に供給する際はチェックバルブ51を閉じて、該オリフィス61だけを介して緩やかに油圧を供給し、かつ油圧サーボ41から係合圧PC1を排出する際はチェックバルブ51を開いて供給する場合に比して急速に排出するようになっている。さらに、油路b2に供給された係合圧PC1は、油路b3を介してC−1ダンパ31の油室31aに入力され、該C−1ダンパ31によって、油圧サーボ41に給排される係合圧PC1の脈動の防止、サージ圧(急激な変動圧)の吸収などが行われる。
【0075】
[前進1速段のエンジンブレーキにおける動作]
また、例えば制御部により前進1速段のエンジンブレーキが判断されると、該制御部70からの電気指令により、ソレノイドバルブS2がONされ、かつソレノイドバルブS1がOFFされ、さらに、リニアソレノイドバルブSLC2が調圧制御される。該ソレノイドバルブS2がONされると、油路g1,g3を介して入力ポートS2aに入力されているモジュレータ圧PMODが、信号圧PS2として出力ポートS2bより出力されて、油路iを介してB−2リレーバルブ24の油室24aに入力され、スプール24pがスプリング24sの付勢力に反して図中下方に切換えられ、該B−2リレーバルブ24が右半位置にされる。
【0076】
また、ソレノイドバルブS1がOFFされると、油路g1,g2を介して入力ポートS1aに入力されているモジュレータ圧PMODが、信号圧PS1として出力ポートS1bより出力されて、油路h1を介してB−2リレーバルブ24の入力ポート24cに入力され、さらに、右半位置にされたB−2リレーバルブ24の出力ポート24bから油路h2を介してC−2リレーバルブ23の油室23aに入力される。すると、該C−2リレーバルブ23は、油室23aに入力された信号圧PS1によりスプール23pがスプリング23sの付勢力に反して図中下方に切換えられ、右半位置にされる。
【0077】
そして、リニアソレノイドバルブSLC2が調圧制御され、制御圧PSLC2が出力ポートSLC2bから出力されると、該制御圧PSLC2は、油路c1を介して左半位置にロックされた第2クラッチアプライリレーバルブ22の入力ポート22eに入力され、係合圧PB2として出力ポート22fより油路c2に出力される。
【0078】
該油路c2に出力された係合圧PB2は、右半位置にされているC−2リレーバルブ23の入力ポート23bに入力され、出力ポート23dより出力される。さらに、該係合圧PB2は、油路mを介して右半位置にされているB−2リレーバルブ24の入力ポート24eに入力され、出力ポート24fから出力されて、油路nを介して油圧サーボ45に入力され、上記ブレーキB−2が係止される。これにより、上記クラッチC−1の係合と相俟って、前進1速段のエンジンブレーキが達成される。
【0079】
なお、上記油路c2には、チェックバルブ52及びオリフィス62が配設されており、係合圧PB2をブレーキB−2の油圧サーボ45に供給する際はチェックバルブ52を閉じて、該オリフィス62だけを介して緩やかに油圧を供給し、かつ後述する排出時にあっては、チェックバルブ52を開いて油路c2内の油圧を急速に排出するようになっている。さらに、油路c2に供給された係合圧PB2は、油路c4を介してC2−B2ダンパ32の油室32aに入力され、該C2−B2ダンパ32によって、油圧サーボ45に給排される係合圧PB2の脈動の防止、サージ圧(急激な変動圧)の吸収などが行われる。
【0080】
また、例えば制御部により前進1速段の正駆動が判断され、つまりエンジンブレーキ状態の解除が判断されると、ソレノイドバルブS1がOFFされ、さらに、リニアソレノイドバルブSLC2がON(通電)される形で閉じられて、係合圧PB2としての制御圧PSLC2が0にされてドレーンされる。また、ブレーキB−2の油圧サーボ45の係合圧PB2は、途中でソレノイドバルブS1がONされてC−2リレーバルブ23が左半位置に切換えられることにより、入力ポート24e、油路m、を介してドレーンポートEXqより排出され、リニアソレノイドバルブSLC2を介してドレーンするよりも速くドレーンが行われる。そのため、ブレーキB−2は素速く解放される。なお、油路c1,c2内の油圧は、リニアソレノイドバルブSLC2のドレーンポートEXより排出される。
【0081】
また、ブレーキB−2の油圧サーボ45の係合圧PB2は、ソレノイドバルブS2をOFFにし、スプリング24sの付勢力によってB−2リレーバルブ24を左半位置に切換え、入力ポート24dと出力ポート24fとを連通することによって、油路n、lを介して、マニュアルバルブのドレーンポートより排出することもできる。このとき、前進走行レンジにあるため、油路lには後進レンジ圧PREVは出力されておらず、マニュアルバルブのドレーンポートより油圧を排出することができる。
【0082】
[前進2速段における動作]
ついで、例えば上記前進1速段の状態から制御部により前進2速段が判断されると、該制御部70からの電気指令により、上記前進1速段の際と同様に(エンジンブレーキ時は除く)、ソレノイドバルブS1がONされ、かつソレノイドバルブS2もONされた状態で、上記リニアソレノイドバルブSLC1の調圧状態が維持されつつ、リニアソレノイドバルブSLB1の調圧制御が行われる。
【0083】
即ち、リニアソレノイドバルブSLB1が調圧制御されると、制御圧PSLB1が係合圧PB1として出力ポートSLB1bから出力されて、油路f1を介して油圧サーボ44に入力され、ブレーキB−1が係止される。これにより、上記クラッチC−1の係合と相俟って、前進2速段が達成される。
【0084】
また、上記油路f1には、チェックバルブ54及びオリフィス64が配設されており、係合圧PB1をブレーキB−1の油圧サーボ44に供給する際はチェックバルブ54を閉じて、該オリフィス64だけを介して緩やかに油圧を供給し、かつ該油圧サーボ44から係合圧PB1を排出する際はチェックバルブ54を開いて供給する場合に比して急速に油圧を排出するようになっている。さらに、油路f1に供給された係合圧PB1は、油路f2を介してB−1ダンパ34の油室34aに入力され、該B−1ダンパ34によって、油圧サーボ44に給排される係合圧PB1の脈動の防止、サージ圧(急激な変動圧)の吸収などが行われる。
【0085】
[前進3速段における動作]
続いて、例えば上記前進2速段の状態から制御部70により前進3速段が判断されると、該制御部からの電気指令により、同様にソレノイドバルブS1がONされ、かつソレノイドバルブS2がONされた状態で、上記リニアソレノイドバルブSLC1の調圧状態が維持されつつ、リニアソレノイドバルブSLB1がOFFされる形で閉じられると共に、リニアソレノイドバルブSLC3の調圧制御が行われる。
【0086】
即ち、まず、リニアソレノイドバルブSLB1の調圧制御によりブレーキB−1の解放制御が行われ、つまりブレーキB−1の油圧サーボ44の係合圧PB1(制御圧PSLB1)が油路f1を介してリニアソレノイドバルブSLB1のドレーンポートEXより排出制御され、該ブレーキB−1が解放される。また、一方のリニアソレノイドバルブSLC3は、ON(通電)されて制御圧PSLC3が0圧となるように閉じられていた状態から調圧制御が行われ、制御圧PSLC3が係合圧PC3として出力ポートSLC3bから出力されて、油路e1を介して油圧サーボ43に入力され、クラッチC−3が係合される。これにより、上記クラッチC−1の係合と相俟って、前進3速段が達成される。
【0087】
また、上記油路e1には、チェックバルブ53及びオリフィス63が配設されており、係合圧PC3をクラッチC−3の油圧サーボ43に供給する際はチェックバルブ53を閉じて、該オリフィス63だけを介して緩やかに油圧を供給し、かつ該油圧サーボ43から係合圧PC3を排出する際はチェックバルブ53を開いて供給する場合に比して急速に油圧を排出するようになっている。さらに、油路e1に供給された係合圧PC3は、油路e2を介してC−3ダンパ33の油室33aに入力され、該C−3ダンパ33によって、油圧サーボ43に給排される係合圧PC3の脈動の防止、サージ圧(急激な変動圧)の吸収などが行われる。
【0088】
次に、例えば制御部により前進4速段〜前進6速段が判断されると、クラッチC−2の係合が判断され、リニアソレノイドバルブSLC2の調圧制御が行われて、該リニアソレノイドバルブSLC2から制御圧PSLC2が出力される。すると、該制御圧PSLC2は、油路c1、第2クラッチアプライリレーバルブ22、油路c2、C−2リレーバルブ23(図5参照)、油路c5を介して、第1クラッチアプライリレーバルブ21の油室21eに入力される。それにより、該第1クラッチアプライリレーバルブ21のスプール21pは、小径の受圧面積からなる油室21aの第1予備油圧PDC1(前進レンジ圧P)及びスプリング21sの付勢力に対し、大径の受圧面積からなる油室21eの制御圧PSLC2が打勝って、左半位置に切換えられる。そのため、出力ポート21dから油路jに前進レンジ圧Pを第2予備油圧PDC2として出力するが、上述したようにスプリング22sの付勢力により左半位置にされている第2クラッチアプライリレーバルブ22にあって、入力ポート22gにおいて遮断された状態となる。なお、油路k1,k2、油室21a内の油圧(第1予備油圧PDC1)は、出力ポート21bとドレーンポートEXとが連通される状態となるため、ドレーンされる。
【0089】
[前進4速段における動作]
次に、例えば上記前進3速段の状態から制御部70により前進4速段が判断されると、該制御部70からの電気指令により、ソレノイドバルブS1がONされ、かつソレノイドバルブS2がOFFされた状態で、上記リニアソレノイドバルブSLC1の調圧状態が維持されつつ、リニアソレノイドバルブSLC3がOFFされる形で閉じられると共に、リニアソレノイドバルブSLC2の調圧制御が行われる。
【0090】
即ち、まず、リニアソレノイドバルブSLC3の調圧制御によりクラッチC−3の解放制御が行われ、つまりクラッチC−3の油圧サーボ43の係合圧PC3(制御圧PSLC3)が油路e1を介してリニアソレノイドバルブSLC3のドレーンポートEXより排出制御され、該クラッチC−3が解放される。また、一方のリニアソレノイドバルブSLC2は、ON(通電)されて制御圧PSLC2が0圧となるように閉じられていた状態から調圧制御が行われ、上述したようにC−2リレーバルブ23の出力ポート23eから出力された係合圧PC2は、油路c3を介して油圧サーボ42に入力され、クラッチC−2が係合される。これにより、上記クラッチC−1の係合と相俟って、前進4速段が達成される。
【0091】
また、油路c2には、チェックバルブ52及びオリフィス62が配設されており、上記前進1速段のエンジンブレーキ時と同様に、係合圧PC2をクラッチC−2の油圧サーボ42に供給する際はチェックバルブ52を閉じて、該オリフィス62だけを介して緩やかに油圧を供給し、かつ該油圧サーボ42から係合圧PC2を排出する際はチェックバルブ52を開いて供給する場合に比して急速に油圧を排出するようになっている。さらに、油路c2に供給された係合圧PC2は、油路c4を介してC2−B2ダンパ32の油室32aに入力され、該C2−B2ダンパ32によって、油圧サーボ42に給排される係合圧PC2の脈動の防止、サージ圧(急激な変動圧)の吸収などが行われる。
【0092】
[前進5速段における動作]
次に、例えば上記前進4速段の状態から制御部により前進5速段が判断されると、該制御部70からの電気指令により、同様にソレノイドバルブS1がONされ、かつソレノイドバルブS2がOFFされた状態で、上記リニアソレノイドバルブSLC2の調圧状態が維持されつつ、リニアソレノイドバルブSLC1がOFFされる形で閉じられると共に、リニアソレノイドバルブSLC3の調圧制御が行われる。
【0093】
即ち、まず、リニアソレノイドバルブSLC1の調圧制御によりクラッチC−1の解放制御が行われ、つまりクラッチC−1の油圧サーボ41の係合圧PC1(制御圧PSLC1)が油路b1,b2を介してリニアソレノイドバルブSLC1のドレーンポートEXより排出制御され、該クラッチC−1が解放される。また、一方のリニアソレノイドバルブSLC3は、上記前進3速段の際と同様に、ON(通電)されて制御圧PSLC3が0圧となるように閉じられていた状態から調圧制御が行われ、制御圧PSLC3が係合圧PC3として出力ポートSLC3bから出力されて、油路e1を介して油圧サーボ43に入力され、クラッチC−3が係合される。これにより、上記クラッチC−2の係合と相俟って、前進5速段が達成される。
【0094】
[前進6速段における動作]
そして、例えば上記前進5速段の状態から制御部70により前進6速段が判断されると、該制御部70からの電気指令により、同様にソレノイドバルブS1がONされ、かつソレノイドバルブS2がOFFされた状態で、上記リニアソレノイドバルブSLC2の調圧状態が維持されつつ、リニアソレノイドバルブSLC3がON(通電)される形で閉じられると共に、リニアソレノイドバルブSLB1の調圧制御が行われる。
【0095】
即ち、まず、リニアソレノイドバルブSLC3の調圧制御によりクラッチC−3の解放制御が行われ、つまりクラッチC−3の油圧サーボ43の係合圧PC3(制御圧PSLC3)が油路e1を介してリニアソレノイドバルブSLC3のドレーンポートEXより排出制御され、該クラッチC−3が解放される。また、一方のリニアソレノイドバルブSLB1は、上記前進2速段の際と同様に、OFFされて制御圧PSLB1が0圧となるように閉じられていた状態からON(通電)されて調圧制御が行われ、制御圧PSLB1が係合圧PB1として出力ポートSLB1bから出力されて、油路f1を介して油圧サーボ44に入力され、ブレーキB−1が係合される。これにより、上記クラッチC−2の係合と相俟って、前進6速段が達成される。
【0096】
[D−N時における動作]
その後、例えば運転手が車輌を減速していき、車速に応じてダウンシフトされて前進1速段の状態で停車した後、シフトレバーをDレンジ位置からNレンジ位置にすると、上記マニュアルシフトバルブの前進レンジ圧出力ポートが入力ポートとの間が遮断されると共にドレーンポートに連通され、つまり前進レンジ圧Pがドレーンされる。
【0097】
また同時に、シフトレバーセンサ84によりシフトレバーがNレンジ位置であることが検出され、制御部70により該シフトレバー位置に基づきNレンジが判定されると、まず、リニアソレノイドバルブSLC2及びリニアソレノイドバルブSLC3がON(通電)されると共に、リニアソレノイドバルブSLB1がOFFされ、これらの制御圧PSLC2,PSLC3,PSLB1が0圧(非出力状態)にドレーンされて、つまり各油圧サーボ42,43,44,45の油圧がドレーンされて、クラッチC−2、クラッチC−3、ブレーキB−1、ブレーキB−2が解放される。なお、ソレノイドバルブS1はON(通電)された状態で維持され、ソレノイドバルブS2もOFFされた状態に維持されて、つまり両ソレノイドバルブS1,S2から信号圧PS1,PS2は出力されない。
【0098】
一方、リニアソレノイドバルブSLC1は、例えばクラッチC−1が急解放されると解放ショックが生じるため、徐々に制御圧PSLC1を減圧していくように調圧制御を行いつつ、最終的に制御圧PSLC1を0圧(非出力状態)にドレーンすることで、クラッチC−1を緩やかに解放する。そして、このクラッチC−1も解放されると、自動変速機3は全てのクラッチ・ブレーキが解放されて、ニュートラル状態とされる。
【0099】
このリニアソレノイドバルブSLC1による解放制御の間は、該リニアソレノイドバルブSLC1の入力ポートSLC1aに油路a3などを介して接続されているアキュムレータ30が、オリフィス60よりもリニアソレノイドバルブSLC1側の油路a1,a3に対して、Dレンジの間に蓄圧した油圧を放出して圧力維持を行うので、該リニアソレノイドバルブSLC1によるクラッチC−1の緩やかな解放制御を可能にしており、これにより、前進1速段の状態からのD−Nシフト操作時において解放ショックが生じることが防止される。
【0100】
[後進1速段における動作]
また、例えば運転手のシフトレバーの操作によってシフトレバーがRレンジ位置にされると、上記マニュアルシフトバルブの後進レンジ圧出力ポートから後進レンジ圧PREVが出力され、該後進レンジ圧PREVは、油路lなどを介してB−2リレーバルブ24の入力ポート24dに入力される。
【0101】
また同時に、シフトレバーセンサ84によりシフトレバーがRレンジ位置であることが検出され、制御部により該シフトレバー位置としてRレンジが判定されても、ソレノイドバルブS1はON(通電)された状態で維持されると共に、ソレノイドバルブS2もOFFされた状態に維持されて、ソレノイドバルブS1,S2から信号圧PS,PS2は出力されず、上記B−2リレーバルブ24はスプリング24sの付勢力によって左半位置に維持される。そのため、入力ポート24dに入力された後進レンジ圧PREVは、出力ポート24f、油路nを介してブレーキB−2の油圧サーボ45に供給され、ブレーキB−2が係合される。
【0102】
さらに、制御部70によりリニアソレノイドバルブSLC3が徐々に制御圧PSLC3を出力するように調圧制御され、係合圧PC3が出力ポートSLC3bから油路e1を介して油圧サーボ43に入力されることによりクラッチC−3が緩やかに係合される。そして、クラッチC−3の係合と、上記ブレーキB−2の係止とが相俟って、後進1速段が達成される。
【0103】
なお、RレンジよりNレンジに切換えられた際は、上記Nレンジの状態と同様にされ、ブレーキB−2の油圧サーボ45の係合圧PB2は、油路n、B−2リレーバルブ24、油路l、マニュアルシフトバルブを介してドレーンされる。また、クラッチC−3の油圧サーボ43の係合圧PC3は、リニアソレノイドバルブSLC3よりドレーンされる。
【0104】
一方、例えば運転手によりシフトレバーがRレンジ位置に操作された際に、車速が前進方向に所定速度以上であることを検出すると、制御部によりソレノイドバルブS2がONされ、かつリニアソレノイドバルブSLC3のON(通電状態)が維持され、つまりRレンジ圧PREVがブレーキB−2の油圧サーボ45に供給されないようにB−2リレーバルブ24により遮断すると共に、クラッチC−3の油圧サーボ43に係合圧PC3(制御圧PSLC3)を供給せず、これによって後進1速段の達成を防止する、いわゆるリバースインヒビット機能が行われる。
【0105】
[ソレノイド・オールオフフェール時における動作]
続いて、本油圧制御装置6におけるソレノイド・オールオフフェール時における動作を説明する。例えば制御部のダウン、ショート、断線等に起因してオールオフフェールを生じた場合、リニアソレノイドバルブSLC1、リニアソレノイドバルブSLB1、及びソレノイドバルブS2は、ノーマルクローズタイプであるため油圧の出力をせず、リニアソレノイドバルブSLC2、リニアソレノイドバルブSLC3、及びソレノイドバルブS1は、ノーマルオープンタイプであるため、それぞれの油圧を出力する。
【0106】
正常時の前進1速段から前進3速段での走行時において、上記第1クラッチアプライリレーバルブ21は、上述のように油室21aに入力された第1予備油圧PDC1によってスプール21pが右半位置にロックされており、このため出力ポート21bより出力した第1予備油圧PDC1は、油路k1を介して、第2クラッチアプライリレーバルブ22の入力ポート22dに入力され、左半位置(正常時位置)にされた第2クラッチアプライリレーバルブ22により遮断された状態とされている。
【0107】
この状態からオールオフフェールとなると、第2クラッチアプライリレーバルブ22は、ソレノイドバルブS1から出力された信号圧PS1が油路h3を介して油室22aに入力されることにより右半位置(故障時位置)に切換えられ、該入力ポート22dに入力された第1予備油圧PDC1は、出力ポート22cより出力され、油路b2を介して油圧サーボ41に入力されて、クラッチC−1が係合される。また、ノーマルオープンであるリニアソレノイドバルブSLC2から出力されたPSLC2は、右半位置に切換えられた第2クラッチアプライリレーバルブ22の入力ポート22dによって遮断される。一方、ノーマルオープンであるリニアソレノイドバルブSLC3は、入力ポートSLC3aに入力されたライン圧Pが略々そのまま係合圧PC3として、出力ポートSLC3bより出力され、油路e1を介して油圧サーボ43に入力されて、クラッチC−3が係合される。これにより、たとえノーマルオープンであるリニアソレノイドバルブSLC2がフェールを起こしたとしても、クラッチC−2に油圧が供給されることなく、上記クラッチC−1と上記クラッチC−3とが係合されて前進3速段が達成され(図3参照)、つまり前進1速段から前進3速段での走行時にオールオフフェールとなった際は、前進3速段による走行状態が確保される。
【0108】
また、正常時の前進4速段から前進6速段での走行時において、上述のようにクラッチC−2の制御圧PSLC2(係合圧PC2)が油路c1、第2クラッチアプライリレーバルブ22、油路c2、C−2リレーバルブ23、油路c5を介して第1クラッチアプライリレーバルブ21の油室21eに入力されており、スプール21pが左半位置にロックされているため、出力ポート21dより出力した第2予備油圧PDC2は、油路jを介して、第2クラッチアプライリレーバルブ22の入力ポート22gに入力され、左半位置にされた第2クラッチアプライリレーバルブ22により遮断された状態とされている。
【0109】
この状態からオールオフフェールとなると、第2クラッチアプライリレーバルブ22は、ソレノイドバルブS1から出力された信号圧PS1が油路h3を介して油室22aに入力されることにより右半位置に切換えられ、該入力ポート22gに入力された第2予備油圧PDC2は、出力ポート22fより出力され、油路c2、C−2リレーバルブ23(図4参照)、油路c3を介して油圧サーボ42に入力されて、クラッチC−2が係合される。また、ノーマルオープンであるリニアソレノイドバルブSLC2から出力されたPSLC2(係合圧PC2)は、右半位置に切換えられた第2クラッチアプライリレーバルブ22の入力ポート22eによって遮断されるが、上記油路c2に出力された第2予備油圧PDC2が油路c5にも出力され、第1クラッチアプライリレーバルブ21の油室21eに入力されるので、該第1クラッチアプライリレーバルブ21は、引き続き左半位置にロックされる。そして、ノーマルオープンであるリニアソレノイドバルブSLC3は、入力ポートSLC3aに入力されたライン圧Pが略々そのまま係合圧PC3として、出力ポートSLC3bより出力され、油路e1を介して油圧サーボ43に入力されて、クラッチC−3が係合される。これにより、上記クラッチC−2と上記クラッチC−3とが係合されて前進5速段が達成され(図3参照)、つまり前進4速段から前進6速段での走行時にオールオフフェールとなった際は、前進5速段による走行状態が確保される。
【0110】
また、上記前進4速段から前進6速段での正常走行時にオールオフフェールとなった場合において、車輌を停止させ、一旦、シフトレバーをNレンジ位置にすると、不図示のマニュアルシフトバルブは、前進レンジ圧Pを出力停止すると共にドレーンし、特にノーマルオープンであるリニアソレノイドバルブSLC2と第1クラッチアプライリレーバルブ21の入力ポート21cとに対する前進レンジ圧Pがドレーンされる。すると、油路j,c2,c5を介して入力されていた油室21eへの第2予備油圧PDC2がドレーンされ、該第2予備油圧PDC2によるロックが解除されて、スプリング21sの付勢力によってスプール21pが右半位置に切換えられる。なお、ノーマルオープンであるソレノイドバルブS1からは信号圧PS1が引き続き出力されるため、第2クラッチアプライリレーバルブ22は、引き続き油室22aに入力される信号圧PS1によって右半位置のままとなる。
【0111】
なお、このオールオフフェール時におけるNレンジの状態では、ライン圧Pを元圧とし、かつノーマルオープンであるリニアソレノイドバルブSLC3から略々ライン圧Pと同圧の制御圧PSLC3(係合圧PC3)が出力されるので、クラッチC−3は係合状態にある。また、クラッチC−3が係合されていても、クラッチC−1,C−2及びブレーキB−1,B−2は解放状態にあり、サンギヤS2に減速回転が入力されても、サンギヤS3及びキャリヤCR2が空転されるため、入力軸10とカウンタギヤ11との間は略々ニュートラル状態である(図2参照)。
【0112】
そして、例えば運転手により再びシフトレバーがDレンジ位置にされると、マニュアルシフトバルブから前進レンジ圧Pが出力され、該前進レンジ圧Pは、右半位置に切換えられた第1クラッチアプライリレーバルブ21の入力ポート21cに入力されると共に、出力ポート21bから第1予備油圧PDC1として油路k1に出力され、右半位置にある第2クラッチアプライリレーバルブ22の入力ポート22d、出力ポート22c、油路b2を介してクラッチC−1の油圧サーボ41に入力されて該クラッチC−1が係合し、つまり上記前進1速段から前進3速段での走行時におけるオールオフフェール時と同様の状態となり、前進3速段が確保される。これにより、オールオフフェール後にあって一旦車輌を停車した後でも車輌の再発進が可能となり、リンプホーム機能が確保される。
【0113】
[自動変速機の制御装置の構成]
つづいて、本発明に係る自動変速機の制御装置1について、主に図1に沿って説明する。
【0114】
図1に示すように、本自動変速機の制御装置1は、制御部(ECU)70を有しており、該制御部70は、アクセル開度センサ81、入力軸回転数センサ83、出力軸回転数(車速)センサ82、レンジ信号を出力するシフトレバーセンサ84及び自動変速機3内のオイルの温度を検出する油温センサ85などが接続されていると共に、上述した油圧制御装置6の各リニアソレノイドバルブSLC1,SLC2,SLC3,SLB1,S1,S2などに接続されている。また、該制御部70には、エンジン2からエンジン回転数信号とエンジントルク信号が送られる。
【0115】
そして、該制御部70には、正常時油圧設定手段72を有する油圧指令手段71、入力トルク検出手段73、トルク分担判定手段74、変速判定手段75、及び変速マップmapが備えられている。さらに、制御部70には、初期形成回避手段76が備えており、該初期形成回避手段76は使用判断手段77及びドレーン制御手段79を有している。
【0116】
上記変速判定手段75は、アクセル開度センサ81により検出されるアクセル開度と、出力軸回転数センサ82により検出される車速とに基づき変速マップmapを参照しつつ、上述の前進1速段〜前進6速段を判定する。即ち、変速マップmapには、アクセル開度と車速とに対応したアップシフト変速線及びダウンシフト変速線(変速点)が記録されており、その時点のアクセル開度及び車速がそれら変速線を越えると、変速判定手段75が変速を判断する。そして、該変速判定手段75が判定した変速段(現在の変速段)は、油圧指令手段71及びトルク分担判定手段74に出力される。
【0117】
一方、入力トルク検出手段73は、エンジン2からのエンジントルク信号を入力することで、エンジントルクを計測し、現在自動変速機構5の入力軸10に入力されている入力トルクを検出する。また、上記トルク分担判定手段74は、上記変速判定手段75により判定された変速段に基づき、自動変速機構5において係合されているクラッチやブレーキ(図3参照)におけるトルク分担、即ち各ギヤ比に基づきクラッチやブレーキにおいて必要とされる上記入力トルクに対する比率を判定(算出)する。
【0118】
ついで、正常時油圧設定手段72は、上記トルク分担判定手段74により判定された、変速段に応じて係合中のクラッチやブレーキにおけるトルク分担に安全率を掛け、さらに、その安全率を掛けたトルク分担の値と入力トルク検出手段73により検出された入力トルクとを掛けて係合中のクラッチやブレーキのトルク容量(伝達トルク)を算出し、各クラッチやブレーキの摩擦板の枚数、面積、油圧サーボの受圧面積などから、それら係合中のクラッチやブレーキの油圧サーボに供給する係合圧(制御圧)を算出する。
【0119】
そして、油圧指令手段71は、上記正常時油圧設定手段72により設定された係合圧に基づき、係合中のクラッチやブレーキの油圧サーボに、その係合圧が供給されるように、上記リニアソレノイドバルブSLC1,SLC2,SLC3,SLB1に電気指令を与え、つまり正常時における走行中は、入力トルクに安全率を加味したトルク容量となるようにクラッチやブレーキが係合され、特にエンジン2のエンジントルクが変動したり、道路状況などにより駆動車輪からトルク変動を受けたりしたとしても、クラッチやブレーキに滑りが生じないように係合される。
【0120】
[極低温時の自動変速機の発進制御]
つづいて、自動変速機の変速制御、特に極低温時の発進制御について図6及び図7に基づいて詳しく説明をする。図7(a)に示すように、シフトレバーセンサ84からの信号によって制御部70が、シフトレンジがNレンジ(非走行レンジ)からDレンジ(前進走行レンジ)へと移行したことを検知すると、変速判定手段75によってN―D変速の開始が判断される。
【0121】
通常状態においてN−D変速の開始が判断されると、リニアソレノイドバルブSLC1は、クラッチC−1の油圧サーボ41に係合圧Pc1を出力してクラッチC−1を係合させると共に、エンジン(キャリヤCR2)回転数の上昇に応じて、ワンウェイクラッチF−1が最適なタイミングで自動係合して前進1速段が形成される。
【0122】
この時、ワンウェイクラッチF−1には、エンジントルクに対応して伝達トルクが生じ、発進時のエンジントルクが上昇するのに伴って、ワンウェイクラッチF−1に掛かる伝達トルクも上昇する(図7(a)A部参照)。また、エンジントルクが一定になるとワンウェイクラッチF−1に掛かるトルクも一定に安定する(図7(a)B部参照)。
【0123】
なお、上述したN−D変速の開始から、エンジントルク及ワンウェイクラッチF−1に掛かる伝達トルクが上昇し始め、これらエンジントルク及びワンウェイクラッチF−1に掛かる伝達トルクが一定になる時点までの間における、前進1速段(発進変速段)を達成する変速制御を前進1速段の初期形成という。
【0124】
一方、図6に示すように、使用判断手段77は、油温センサ85からの信号に基づいて自動変速機の作動油の油温を検知しており(S1)、シフトレバーセンサ84からの信号により、非走行レンジから走行レンジへと移行したことを検知すると(S2)、予め設定されている温度Tよりも油温センサ85が検出した作動油の油温Tが低いか(T<T)どうかによって、ワンウェイクラッチF−1を用いて最低変速段である前進1速段(発進変速段)を初期形成を出来るか否かを判断する(S3)。なお、温度Tは、低温のためワンウェイクラッチF−1のオイルの粘性が高まり、レースとローラとの間の油膜が切れないため、該ワンウェイクラッチF−1にトルクを与えると滑りを起こし得る程度の温度に設定される。
【0125】
油温Tが設定温度Tよりも低く(T<T)、使用判断手段77がワンウェイクラッチF−1を使用して発進時の初期係合を出来ないと判断すると、初期形成回避手段76は上述したソレノイドバルブS1をOFFにすると共に、ソレノイドバルブS2をONにして、油圧回路c1,c2,m,nを連通させる。これにより、油路がリニアソレノイドバルブSLC2の出力ポートSLC2bと、ブレーキB−2の油圧サーボ45とを連通する油路に切換わる(S4)。
【0126】
油路が切換わると、初期形成回避手段76は油圧指令手段71を介して、リニアソレノイドバルブSLC2に指令電流を印加し、油圧サーボ45に係合圧PB2を出力してブレーキB2を係止させる(S5)。
【0127】
リニアソレノイドバルブSLC2によって、ブレーキB−2の油圧サーボ45に係合圧PB2が出力されると、初期形成回避手段76は油圧指令手段71を介して、リニアソレノイドバルブSLC1に指令電流を印加し、油圧サーボ41に係合圧PB1を出力してクラッチC―1を係止させる(S6)。その後、初期形成回避手段76は、入力軸回転数センサ83からの信号に基づいて、前進1速段が形成されているかを判断する(S7)。
【0128】
図7(b)に示すように、発進時の初期係合をワンウェイクラッチF−1の代わりに、ブレーキB2によって行い、該ブレーキB−2とクラッチC−1によって前進1速段を形成すると、エンジントルクが上昇する発進初期(図7(b)のD部)においても、ブレーキB−2によってワンウェイクラッチF−1は固定され、該ワンウェイクラッチF−1にはトルクがほとんど掛かっていない(図7(b)のC部参照)。
【0129】
また、前進1速段が成立すると、ドレーン制御手段79は、移行制御実行手段79aによってリニアソレノイドバルブSLC2に指令電流を印加して、そのドレーンポートEXから、油圧サーボ45の油圧を徐々に排出し始め、ワンウェイクラッチの伝達トルクを徐々に増加させる(移行制御)(S8)。
【0130】
図8に示すように、車速が増して、変速マップmap上において前進1速段から前進2速段への変速線Xよりも所定値ΔVだけ、低車速側に設けられた切換線Y(低負荷側の条件)を越えたと切換判定手段79bが判定すると(S9)、クイックドレーン制御実行手段79cは油圧指令手段71を介して、ソレノイドバルブS1をONにし、ソレノイドバルブS2をONにする。それにより、クラッチB−2の油圧サーボ45の油圧を、ソレノイドバルブのSLC2のドレーンポートEXから排出する移行制御から、油路n,m介してC―2リレーバルブ23のクイックドレーン用のドレーンポートEXqより、上記移行制御よりも速く油圧を排出するクイックドレーン制御へと切換えられる(S10)。
【0131】
そして、初期形成回避用タイマ設定手段87によって設定されたドレーンタイマtが経過するまでクイックドレーン制御によって油圧サーボ45の油圧をドレーンすると共に(S11,S12)、ドレーンタイマtが終了すると、初期形成回避手段76はソレノイドバルブS2をOFFしてクイックドレーン制御を終了する(S13,14)。
【0132】
また、油温Tが設定温度Tよりも高い場合(T>T)(S3)、使用判断手段77はワンウェイクラッチF−1を使用して、前進1速段を初期形成すると判断し、通常の制御どおり、油圧指令手段71からリニアソレノイドバルブSLC1に指令電流が印加されて、クラッチC1が係合される(S15)と共に、ワンウェイクラッチF−1が自動係合し、前進1速段が形成される。
【0133】
なお、使用判断手段77は、油温センサ85によって作動油の油温を確認する度に、ワンウェイクラッチF−1によって発進変速段を初期形成するかどうかを判断しても当然よく、例えば、使用判断手段77は、車速センサ、ブレーキセンサ及びアクセル開度センサ81などからの検出信号によって、車輌の非走行状態と、走行状態と、を検知し、車輌が非走行状態から走行状態へと移行する度に、上記油温センサ85によって作動油の油温を確認すると共に、この時の油温Tが設定温度Tよりも低い(T<T)場合には、上述した極低温時の発進制御を行うようにしても良い。
【0134】
より具体的には、信号待ちなどにより車輌が停止したことを検知すると共に、この停止した状態(非走行状態)から再度車輌が動き出す(走行状態に移行する)度に、上記使用判断手段77により作動油の油温Tを確認し、この油温Tが設定油温Tよりも高い場合(T>T)には、ワンウェイクラッチF−1により発進変速段(例えば前進1速段)を形成し、低い場合(T<T)には、ブレーキB−2によって発進変速段を初期形成するようにしてもよい。
【0135】
また、車輌が非走行状態から走行状態へと移行する度に、上記油温センサ85によって作動油の油温を確認する様に構成した場合には検知タイマを設け、使用判断手段77は、非走行レンジ(たとえばNレンジ)から走行レンジ(例えばDレンジ)へと移行してから、作動油が設定温度以上になるのに十分な時間を経過した後は、上述した作動油の油温を確認する制御をしないようにしたり、エンジンを始動させてから、最初に非走行レンジから走行レンジへと移行させた際の作動油の油温Tが、設定油温Tよりも高い場合には、次にエンジンを停止させるまで上記油温の確認を行わないようにしたり、しても良い。
【0136】
更に、非走行レンジ(たとえばNレンジ)から走行レンジ(例えばDレンジ)へと移行した際に、油温Tが設定温度Tよりも低い(T<T)場合、検知タイマ時間内(作動油が設定温度以上になるのに十分な時間を経過する前)は、車輌が非走行状態から走行状態に移行しても、上記油温に基づいてワンウェイクラッチF−1もしくは、ブレーキB−2によって発進変速段の初期形成するかを判断せず、常にブレーキB−2によって発進変速段を初期形成するように、使用判断手段77を構成しても良い。
【0137】
また、使用判断手段77は、油温の他に、アクセル開度の変化量などに基づいて、ワンウェイクラッチF−1により発進変速段を初期形成するか、ブレーキB−2によって発進変速段を初期形成するかを判断しても良いと共に、これら油温とアクセル開度との組み合わせに基づいて判断してもよい。
【0138】
更に、上述した設定油温(第1の設定油温)Tの他に、この設定された油温Tよりも所定温度高い第2の設定油温Tを設け、アクセル開度の変化量が大きい場合、つまり、車輌の停止状態から急発進した場合には、作動油の油温Tが第1の設定油温Tよりも高くとも、第2の設定油温Tよりも低い場合には(T<T<T)、より大きなトルクがワンウェイクラッチF−1に掛かるため、ブレーキB−2によって発進変速段を初期形成するように構成してもよい。なお、第2の設定油温Tは、通常発進時ではワンェイクラッチF−1に滑りが生じる可能性は少ないが、急発進時にはワンェイクラッチF−1が滑る可能性のある温度に設定される。
【0139】
また、操縦者が切換線Yを越えずに車輌の運転を続けた場合、変速用タイマ設定手段86によって設定される変速タイマが終了した時点で、クイックドレーン制御を強制的に終了するようにしてもよい。
【0140】
更に、クイックドレーン制御は、上述したように前進1速段から前進2速段の変速線Xよりも所定値ΔVだけ低車速側に設定された切換線Yを越えたタイミングで、B2通常ドレーンから切換えられるが、この切換線Yは、エンジントルクの上昇が終わり(図7D部)、安定を始めるE時点よりも後でかつ、エンジンのトルク変動が安定するのに十分な時間が経過した時点に設定される。
【0141】
また、切換線Yは、アクセル開度をパラメータとして、変速線Xよりも所定値だけ低スロットル側に設定してもよい。また、変速線Xは、アクセル開度や車速だけでなく、エンジンの回転数及びトルク、駆動車輪と走行面との間の摩擦力などの条件を総合して設定されても良く、切換線Yは、このような車輌の変速に係るどのような値をパラメータとして選択しても良い。
【0142】
つまり、切換線Yは、これらのパラメータの内、エンジントルクが安定すると判定される値(所定値)だけ、変速線Xよりも車輌に掛かる走行負荷の少ない低負荷側に設定される。
【0143】
また、本実施の形態では、前進1速段から前進2速段へと変速する場合を1例として説明したが、上記制御は当然に前進1速段から前進3速段などの他の変速段へと飛び変速する際にも使用することができる。
【0144】
更に、ブレーキB−2の油圧サーボ45の油圧は、上記リニアソレノイドバルブSLC2のドレーンポートEX、C―2リレーバルブ23のクイックドレーン用のドレーンポートEXq以外にも、油路n、B−2リレーバルブ24、油路lを介してマニュアルシフトバルブのドレーンポートからドレーンすることも可能であり、オイルのドレーン速度がそれぞれ相違するこれらのドレーン方法を組合わせて、適宜ブレーキB−2の油圧サーボ45の油圧を排出してもよい。
【0145】
つづいて、本実施の形態に係る自動変速機の作用について説明をする。自動変速機3の作動油の油温Tが所定油温Tよりも低く(T<T)、使用判断手段77がワンウェイクラッチF−1を用いて前進1速段を初期形成しないことを判断すると、初期形成回避手段76が油圧指令手段71を介して、ソレノイドバルブS2をONさせると共に、ソレノイドバルブS1もONさせ、さらに、リニアソレノイドバルブSLC2が調圧制御される。該ソレノイドバルブS2がONされると、油路g1,g3を介して入力ポートS2aに入力されているモジュレータ圧PMODが、信号圧PS2として出力ポートS2bより出力されて、油路iを介してB−2リレーバルブ24の油室24aに入力され、スプール24pがスプリング24sの付勢力に反して図中下方に切換えられ、該B−2リレーバルブ24が右半位置にされる。
【0146】
また、ソレノイドバルブS1がOFFされると、油路g1,g2を介して入力ポートS1aに入力されているモジュレータ圧PMODが、信号圧PS1として出力ポートS1bより出力されて、油路h1を介してB−2リレーバルブ24の入力ポート24cとに入力され、さらに、右半位置にされたB−2リレーバルブ24の出力ポート24bから油路h2を介してC−2リレーバルブ23の油室23aにも入力される。すると、該C−2リレーバルブ23は、油室23aに入力された信号圧PS1によりスプール23pがスプリング23sの付勢力に反して図中下方に切換えられ、右半位置にされる。
【0147】
そして、リニアソレノイドバルブSLC2が調圧制御され、制御圧PSLC2が出力ポートSLC2bから出力されると、該制御圧PSLC2は、油路c1を介して左半位置にロックされた第2クラッチアプライリレーバルブ22の入力ポート22eに入力され、係合圧PB2として出力ポート22fより油路c2に出力される。
【0148】
該油路c2に出力された係合圧PB2は、右半位置にされているC−2リレーバルブ23の入力ポート23bに入力され、出力ポート23dより出力される。さらに、該係合圧PB2は、油路mを介して右半位置にされているB−2リレーバルブ24の入力ポート24eに入力され、出力ポート24fから出力されて、油路nを介して油圧サーボ45に入力され、上記ブレーキB−2が係止される。これにより、上記クラッチC−1の係合と相俟って、前進1速段が達成される。
【0149】
また、入力軸回転数センサ83からの信号に基づいて、初期形成回避手段76が前進1速段が形成されていることを確認すると、リニアソレノイドバルブSLC2がON(通電)される形で閉じられて、該リニアソレノイドバルブSLC2のドレーンポートEXからブレーキB−2の油圧サーボ45の係合圧PB2としての制御圧PSLC2が排出されてゆく(移行制御)。
【0150】
そして、切換判定手段79bによって車速が切換線Yを越えたことが判定されると、ソレノイドバルブS1がONされる形で閉じられ、ブレーキB−2の油圧サーボ45の係合圧PB2は、C−2リレーバルブ23が左半位置に切換えられるため、入力ポート24e、油路mを介してクイックドレーン用のドレーンポートEXq(クイックドレーン油路n,24f,24e,m,23d,EXq)より急速に排出され、該ブレーキB−2が素速く解放される。なお、油路c1,c2内の油圧は、リニアソレノイドバルブSLC2のドレーンポートEXより排出される。
【0151】
ブレーキB−2の油圧サーボ45の係合圧PB2が排出されると共に、ブレーキB−2のドレーンタイマtが経過すると、ソレノイドバルブS2をOFFして、クイックドレーン制御を終了する。
【0152】
なお、ブレーキB−2の油圧サーボ45の係合圧PB2は、ソレノイドバルブS2をOFFにして、B−2リレーバルブ24を左半位置に切換え、油路lを介してマニュアルバルブ(不図示)のドレーンポートから排出してもよい。
【0153】
これらブレーキB−2の油圧サーボ45における係合圧PB2の排出方法は、クイックドレーン用のドレーンポートEXqにより排出するのが最も速く、マニュアルバルブのドレーンポート、リニアソレノイドバルブSLC2のドレーンポートEXからの油圧排出速度は、油圧排出速度が可変するリニアソレノイドバルブSLC2のドレーンポートEXの排出速度次第で、マニュアルバルブのドレーンポート、リニアソレノイドバルブSLC2のドレーンポートEXの順もしくは、リニアソレノイドバルブSLC2のドレーンポートEX、マニュアルバルブのドレーンポートの順で油圧の排出速度が遅くなったりする。
【0154】
上記のように自動変速機3の制御装置1を構成したことにより、自動変速機3の作動油の油温Tが、ワンウェイクラッチF−1が滑りを起こす虞がある所定油温Tよりも低い場合、ワンウェイクラッチF−1に代わってコースト時に係止されるブレーキB−2を係止して前進1速段を初期形成することにより、どのような状況下でも確実に変速段を形成して発進することができる。
【0155】
特に、ワンウェイクラッチF−1に急激に大きな伝達トルクが生じる、前進1速段の初期形成時は、ブレーキB−2を係止して前進1速段を形成し、ワンウェイクラッチF−1に掛かる伝達トルクが安定してから(トルク負荷が減少してから)ワンウェイクラッチF−1を係合させるため、該ワンウェイクラッチF−1が滑りやすい低油温時(T<T)でも確実にワンウェイクラッチF−1を係合することができる。また、例えばブレーキB−1(係合側摩擦係合要素)を新たに係止するだけで、次の変速段に移行することができる。
【0156】
更に、廉価なワンウェイクラッチを使用しても、該ワンウェイクラッチが滑りを生じる虞がないため、コストダウンを図ることが出来ると同時に、自動変速機の構成をコンパクトなものにすることができる。
【0157】
また、ブレーキB−2の油圧サーボの係合圧PB2を、それぞれ油圧の排出速度が相違するC−2リレーバルブ23のクイックドレーンポートEXq、マニュアルバルブのドレーンポート、リニアソレノイドバルブSLC2のドレーンポートEXの3箇所から排出することができ、専用の新たなバルブを必要としないで、油圧の排出速度を調節することができる。
【0158】
更に、切換え線Yを越えた際に、ブレーキB−2の油圧サーボの係合圧PB2を、上記リニアソレノイドバルブSLC2のドレーンポートEXにより排出する移行制御から、C−2リレーバルブ23のクイックドレーンポートEXqにより排出するクイックドレーン制御へと切換えることによって、ワンウェイクラッチF−1の伝達トルクを急激に増大をさせることなく、確実にワンウェイクラッチF−1を係合させることが出来ると共に、次の変速段へと移行する前に確実にブレーキB−2を解放して摩擦係合要素が同時係合することを防止することができる。
【0159】
なお、以上説明した実施の形態においては、発進変速段として前進1速段について説明したが、ワンウェイクラッチF−1を使用した前進2速段、前進3速段などの他の変速段であっても本願発明は、適用することができる。また、本自動変速機の油圧制御装置6を前進6速段及び後進1速段を達成する自動変速機3に適用した場合を一例として説明したが、勿論これに限るものではなく、例えば前進8速段を達成する自動変速機に適用してもよく、特に有段変速を行う自動変速機であれば、どのような自動変速機にあっても本発明を適用することができる。加えて本発明に係る自動変速機は、駆動源として回転電気や、エンジン及び回転電気の両方を備えた車輌に用いる駆動装置にも利用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0160】
本発明に係る自動変速機は、電気自動車及びハイブリット車を含む乗用車、トラック等の車輌に用いることが可能であり、ワンウェイクラッチを使用して変速段を形成するものに用いて好適であって、特に通常の廉価なワンウィクラッチを使用する自動変速機において、どのような状況下であっても円滑な発進が要求されるものに適している。
【符号の説明】
【0161】
1 制御装置
2 駆動源
3 自動変速機
8 入力軸
23 振分け切換えバルブ
24 前後進切換えバルブ
24e 第1入力ポート
24d 第2入力ポート
24f 出力ポート
41,42,43,44,45 油圧サーボ
76 初期形成回避手段
77 使用判断手段
79 ドレーン制御手段
79b 切換判定手段
SLC2 前進時作動油圧
REV 後進時作動油圧
B2 係合圧(油圧)
S1 信号圧
C−1,C−3,B−1,B−2 摩擦係合要素
C−2 摩擦係合要素(第2の摩擦係合要素)
F−1 ワンウェイクラッチ
B−2 ブレーキ(第1の摩擦係合要素)
X 1−2変速線
Y 切換線
所定油温
SLC1,SLC2,SLC3,SLB1 係合圧制御ソレノイドバルブ
S1 第1信号ソレノイドバルブ(ソレノイドバルブ)
S2 第2信号ソレノイドバルブ(ソレノイドバルブ)
EXq ドレーンポート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の摩擦係合要素と、駆動源に接続される入力軸と、駆動車輪に接続される出力軸と、発進変速段を形成するワンウェイクラッチと、を有し、前記複数の摩擦係合要素の係合状態及び前記ワンウェイクラッチの係止に基づき前記入力軸と前記出力軸との間の伝達経路を変更して複数の変速段を形成すると共に、前記複数の摩擦係合要素のうちの1つが、発進変速段のコースト時に係止されるブレーキからなる自動変速機の制御装置において、
所定条件に基づいて、前記ワンウェイクラッチを使用して発進変速段を初期形成できるか否かを判断する使用判断手段を有し、
非走行レンジから前進走行レンジへと移行した際に、該使用判断手段により前記ワンウェイクラッチを用いて発進変速段を初期形成できないと判断した場合、前記ブレーキを係止して発進変速段を形成する初期形成回避手段を備えた、
ことを特徴とする自動変速機の制御装置。
【請求項2】
前記初期形成回避手段は、前記ブレーキを係止して発進変速段を形成した後、前記ブレーキの油圧サーボの油圧を徐々に低下させる移行制御を実行すると共に、
前記移行制御よりも前記油圧を速く低下させるクイックドレーン制御を実行し得るドレーン制御手段を有してなる、
請求項1記載の自動変速機の制御装置。
【請求項3】
前記ドレーン制御手段は、アクセル開度および車速に基づいて設定される、発進変速段から次の変速段への変速条件よりも、所定量だけ低負荷側の条件に基づき、前記移行制御から前記クイックドレーン制御への切換えを判定する切換え判定手段を備えてなる、
請求項2記載の自動変速機の制御装置。
【請求項4】
前記所定条件は、前記自動変速機の作動油の所定油温であり、
該所定油温は、前記ワンウェイクラッチが滑りを起こし得る油温に設定されてなる、
請求項1乃至3の何れか1項記載の自動変速機の制御装置。
【請求項5】
複数の摩擦係合要素と、少なくともこれら複数の摩擦係合要素よりも1つは少なく、前記摩擦係合要素の油圧サーボに作動油圧を供給し得る複数の係合圧制御ソレノイドバルブとを備え、前記複数の摩擦係合要素の係合状態に基づき入力軸と出力軸との間の伝達経路を変更して複数の変速段を形成する自動変速機の油圧制御装置において、
前記係合圧制御ソレノイドバルブのうちの1つからの作動油圧を、第1の摩擦係合要素の油圧サーボに供給する第1の位置と、第2の摩擦係合要素の油圧サーボに供給する第2の位置とに切換えられる振分け切換えバルブと、
前記振分け切換えバルブを、前記第1の位置と前記第2の位置とに切換える信号油圧を出力し得る第1信号ソレノイドバルブと、を備え、
前記振分け切換えバルブは、前記第1の位置から前記第2の位置に切換えられた際に、前記第1の摩擦係合要素の油圧サーボの油圧を排出するドレーンポートを有してなる、
ことを特徴とする自動変速機の油圧制御装置。
【請求項6】
前記第1の摩擦係合要素の油圧サーボと前記振分け切換えバルブとの間に介在し、前進走行レンジの際に前記係合圧制御ソレノイドバルブからの前進時作動油圧が供給され得る第1入力ポートと、後進走行レンジの際にマニュアルバルブから後進時作動油圧が供給される第2入力ポートと、前記前進時作動油圧又は前記後進時作動油圧を、前記第1の摩擦係合要素の油圧サーボに供給する出力ポートとを有し、該第1の摩擦係合要素の油圧サーボに、前記前進時作動油圧を供給し得る第3の位置と、前記後進時作動油圧を供給し得る第4の位置とに切換えられる前後進切換えバルブと、
前記前後進切換えバルブを、前記第3の位置と前記第4の位置とに切換える信号油圧を出力し得る第2信号ソレノイドバルブと、を備え、
前記前後進切換えバルブは、前進レンジ時に、前記第3の位置から前記第4の位置に切換えられた際に、前記第1の摩擦係合要素の油圧サーボの油圧を、マニュアルバルブのドレーンポートから排出されるように構成されてなる、
請求項5記載の自動変速機の油圧制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−107037(P2010−107037A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−228738(P2009−228738)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】