説明

自動変速機の変速制御装置

【課題】具備した変速機構に特有の固定ギヤを利用して計測したトルク値に基づき、トルクリダクション等のトルク変更が目標通りに適正に行われたか否かを判定し得るようにした自動変速機の変速制御装置を提供する。
【解決手段】歪みゲージ24及びトルク値算出手段16が、反力に基づきサンギヤに作用するトルク値を検出し、入力相当値算出手段42が、検出されたトルク値に基づく入力トルク相当値を算出し、トルクリダクション指令手段13が、エンジン2に対してトルク変更を行う指令を出力し、トルク変更判定手段43が、算出された入力トルク相当値に基づき、エンジンが指令に沿って適正にトルク変更されているか否かを判定する。このため、自動変速機構5に特有のサンギヤを利用して計測したトルク値に基づき、エンジンに対するトルク変更が目標通りに適正に行われたか否かを的確に判定することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車輌に搭載される自動変速機の変速制御装置に係り、特に、エンジン等の駆動源に対して行ったトルク変更の良否を的確に判定し得る自動変速機の変速制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、車輌等に搭載される自動変速機、特に有段式の自動変速機にあっては、摩擦係合要素(クラッチやブレーキ)同士の掴み換えによる変速が行われており、該掴み換えによる変速は、それら摩擦係合要素の油圧サーボに供給する油圧を、入力軸の回転数やエンジン出力に応じて演算される油圧指令値に基づきリニアソレノイドバルブ等を用いて油圧制御することによって変速制御されている。
【0003】
このような自動変速機の変速制御装置において、自動変速機における製品誤差や経時変化を補うために、上記油圧指令値を補正するための学習値(補正値)を設け、前回の変速状況に基づき該学習値を演算・記録し、該学習値を次回の変速制御の油圧指令値に反映させる、いわゆる学習制御を行うように構成したものが存在する(特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2004−293593号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような学習制御を行う自動変速機では、変速中のエンジン回転のフィードバック制御(FB制御)や、クラッチ及びブレーキ等の摩擦係合要素への係合油圧に係る学習制御を、回転変化加速度(回転加速度変化)の大きさや変速時間だけを用いて判定するものがあるが、実際の変速において回転変化加速度の大きさや変速時間は、ブレーキやクラッチ等の摩擦係合要素を係合させる係合油圧のみで決まるものではなく、その時のエンジン出力によっても左右される。
【0006】
例えば、変速中にトルクリダクション(点火遅角)を行う場合、たまたまトルクリダクション量が多くなると、変速中の回転変化加速度が多めになり、変速時間は短くなるが、トルクリダクションによる変速ショックの緩和状況がたとえ良かったとしても、結果として回転変化加速度が多めになったことから、FB制御によって油圧を上昇させ、次回の変速制御における係合油圧を低減させるように学習補正を機能させる。
【0007】
回転変化加速度は係合トルクとエンジン側のトルクリダクションとで決定されるが、トルクリダクション開始の契機となるイナーシャ相の検出は回転変化の発生に基づいて行われるため、正確な検出は困難であり、従って、イナーシャ相を可及的に正確に検出してトルクリダクションの開始タイミングを的確にすることが、より良い学習制御を実現して次回の変速制御での変速ショックを緩和するのに不可欠である。
【0008】
そこで本発明は、例えばトルクリダクションが適切でなかった場合には係合油圧に係る次回の学習補正を行わないようにするなどのため、具備した変速機構に特有の固定ギヤを利用して計測したトルク値に基づき、トルクリダクション等のトルク変更が目標通りに適正に行われたか否かを判定し得るようにした自動変速機の変速制御装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る本発明は(例えば図1ないし図8参照)、駆動源(2)の回転を入力軸(10)に入力しかつ駆動車輪に出力部材を(11)連結する有段の変速機構(5)と、これら入力軸(10)と出力部材(11)との間で動力伝達経路を変更する複数の係合要素と、これら係合要素を断・接作動する油圧サーボ(例えば29,30)と、該油圧サーボの作動を制御して前記複数の係合要素の内の第1の係合要素(例えばB−1)を係合すると共に第2の係合要素(例えばF−1)を解放することにより所定変速段(例えば2速段)に変速する変速制御手段(17)と、を備え、かつ前記変速機構(5)が、変速機ケース(9)に対して固定されて前記入力軸(10)の回転に対する反力を生じる固定ギヤ(S1)を有してなる自動変速機の変速制御装置(1)において、
前記反力に基づき前記固定ギヤ(S1)に作用するトルク値を検出する固定ギヤトルク検出手段(16,24)と、
前記検出されたトルク値に基づく入力トルク相当値を算出する入力相当値算出手段(42)と、
前記駆動源(2)に対してトルク変更を行う指令を出力するトルク変更指令手段(13)と、
前記算出された入力トルク相当値に基づき、前記駆動源(2)が前記トルク変更指令手段(13)の前記指令に沿って適正にトルク変更されているか否かを判定するトルク変更判定手段(43)と、を備える、
ことを特徴とする自動変速機の変速制御装置(1)にある。
【0010】
なお、本発明において、上記「係合要素の解放」とは、摩擦係合の解放によるものだけでなく、ワンウェイクラッチのように回転要素の回転方向が反転することで係止状態が解除される場合をも含む広い概念である。
【0011】
請求項2に係る本発明は(例えば図1参照)、前記変速制御手段(17)による前記第1の係合要素(例えばB−1)の係合状況を学習し得る学習制御手段(28)を備え、
該学習制御手段(28)は、前記トルク変更判定手段(43)により前記駆動源(2)が適正にトルク変更されていないと判定された際には、学習補正しない、
請求項1記載の自動変速機の変速制御装置(1)にある。
【0012】
請求項3に係る本発明は(例えば図1参照)、前記固定ギヤトルク検出手段(16,24)により検出されるトルク値の変化に基づき、イナーシャ相の開始(略々tの時点)を検出するイナーシャ相検出手段(15)を備え、
前記トルク変更指令手段は、前記イナーシャ相検出手段(15)によりイナーシャ相の開始が検出された際に、前記トルク変更としてのトルク低減を行う指令を出力するトルク低減指令手段(13)である、
請求項1又は2記載の自動変速機の変速制御装置(1)にある。
【0013】
請求項4に係る本発明は(例えば図1、図2参照)、前記固定ギヤトルク検出手段は、
前記入力軸(10)側から作用するトルクに起因する前記固定ギヤ(S1)と前記変速機ケース(9)との歪みを検出する歪み検出センサ(24)と、
該歪み検出センサ(24)による検出結果に基づき、前記固定ギヤ(S1)に作用したトルク値を算出するトルク値算出手段(16)と、からなる、
請求項1ないし3のいずれか1項記載の自動変速機の変速制御装置(1)にある。
【0014】
請求項5に係る本発明は(例えば図2参照)、前記変速機構(5)は、
前記入力軸(10)の回転を減速した減速回転を出力し得る減速プラネタリギヤ(SP)と、
前記変速機構(5)の出力軸に接続された出力要素(R2)を含む4つの回転要素(S2,S3,CR2,R2)を有するプラネタリギヤユニット(PU)と、
該プラネタリギヤユニット(PU)の2つの回転要素(S2,S3)のそれぞれに前記減速プラネタリギヤ(SP)からの回転を入力自在にする2つの減速クラッチ(C−3,C−1)と、
前記プラネタリギヤユニット(PU)の1つの回転要素(CR2)に前記入力軸(10)の回転を入力自在にする入力クラッチ(C−2)と、を有して、前進5速段又は6速段を達成してなり、
前記固定ギヤ(S1)は、前記減速プラネタリギヤ(SP)の常時回転が固定されたギヤである、
請求項1ないし4のいずれか1項記載の自動変速機の変速制御装置(1)にある。
【0015】
請求項6に係る本発明は(例えば図2参照)、前記減速プラネタリギヤ(SP)は、前記変速機ケース(9)に固定されたサンギヤ(S1)と、前記減速回転を出力するリングギヤ(R1)と、前記入力軸(10)の回転を入力するキャリヤ(CR1)と、からなり、
前記固定ギヤは前記サンギヤ(S1)である、
請求項5記載の自動変速機の変速制御装置(1)にある。
【0016】
なお、上記カッコ内の符号は、図面と対照するためのものであるが、これは発明の理解を容易にするための便宜的なものであり、特許請求の範囲の記載に何等影響を及ぼすものではない。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に係る本発明によると、固定ギヤトルク検出手段が、反力に基づき固定ギヤに作用するトルク値を検出し、入力相当値算出手段が、検出されたトルク値に基づく入力トルク相当値を算出し、トルク変更指令手段が、駆動源に対してトルク変更を行う指令を出力し、トルク変更判定手段が、算出された入力トルク相当値に基づき、駆動源がトルク変更指令手段の指令に沿って適正にトルク変更されているか否かを判定するので、自動変速機に備えた変速機構に特有の固定ギヤを利用して計測したトルク値に基づき、駆動源に対するトルク変更が目標通りに適正に行われたか否かを判定することができる。例えば、係合要素に対する係合側油圧を上昇させて係合側がトルク容量を持ち始めると、入力側のイナーシャ変化により入力トルクとして固定ギヤトルク検出手段の検出が可能になるが、変速中に入力トルク相当値の高さを制御の指標とすることで、回転変化加速度が予想通りにならない場合に、トルク変更量に問題があったか否か、及び該トルク変更量に問題がない場合には係合側油圧に問題があったということ、を直ちに判定することができる。
【0018】
請求項2に係る本発明によると、変速制御手段による第1の係合要素の係合状況を学習し得る学習制御手段が、駆動源が適正にトルク変更されていないと判定された際には学習補正しない。本発明では、トルク変更が目標通りに適正に行われたか否かを判定し、例えばトルク変更としてのトルクリダクションが不正確で遅角が効かなかったり効き過ぎたりしていた場合に、今回の学習値を次回の変速制御に反映させないようにすることができる。
【0019】
請求項3に係る本発明によると、イナーシャ相検出手段が、固定ギヤトルク検出手段により検出されるトルク値の変化に基づき、イナーシャ相の開始を検出し、トルク変更指令手段が、イナーシャ相の開始が検出された際に、トルク変更としてのトルク低減を行う指令を出力するトルク低減指令手段であるので、固定ギヤに作用するトルク値の変化を検出することで、迅速且つ正確にイナーシャ相の開始を検出でき、的確なタイミングでトルク変更を行うことができるようになる。
【0020】
請求項4に係る本発明によると、固定ギヤトルク検出手段が、入力軸側から作用するトルクに起因する固定ギヤと変速機ケースとの歪みを検出する歪み検出センサと、該歪み検出センサによる検出結果に基づき、固定ギヤに作用したトルク値を算出するトルク値算出手段とからなるので、例えば、簡単な構造で比較的廉価な歪みゲージを歪み検出センサとして使用することができ、該歪みゲージを固定ギヤの一部に直接貼り付ける等で固定ギヤと変速機ケースとの歪みを容易に検出する構造が得られることで、例えばイナーシャ相の検出に用いるトルク値の検出を、極めてシンプルな構造にて実現することができる。
【0021】
請求項5に係る本発明によると、変速機構は、入力軸の回転を減速した減速回転を出力し得る減速プラネタリギヤと、変速機構の出力軸に接続された出力要素を含む4つの回転要素を有するプラネタリギヤユニットと、該プラネタリギヤユニットの2つの回転要素のそれぞれに減速プラネタリギヤからの回転を入力自在にする2つの減速クラッチと、プラネタリギヤユニットの1つの回転要素に入力軸の回転を入力自在にする入力クラッチと、を有して、前進5速段又は6速段を達成してなり、固定ギヤが、減速プラネタリギヤの常時回転が固定されたギヤであるので、変速機ケースに固定されている固定ギヤを有して前進5速段又は6速段を達成するギヤトレーンを有する変速機構を備える際に、固定ギヤに歪み検出センサ等を取り付けるだけの比較的簡単な構成により、例えばイナーシャ相を早く且つ正確に検出して入力トルク変化を直接的に正確に検出することができ、該検出結果を、例えば学習制御での誤学習防止に活用することができる。
【0022】
請求項6に係る本発明によると、減速プラネタリギヤが、変速機ケースに固定されたサンギヤと、減速回転を出力するリングギヤと、入力軸の回転を入力するキャリヤとからなり、固定ギヤがサンギヤであるので、変速機ケースに固定されているサンギヤを有するギヤトレーンを有する変速機構を備える際に、サンギヤに歪み検出センサ等を取り付けるだけの比較的簡単な構成により、入力トルクを早く且つ正確に検出して、例えば学習制御に活用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明に係る実施の形態を図1ないし図8に沿って説明する。
【0024】
まず、本発明を適用し得る自動変速機3の概略構成について図2に沿って説明する。同図に示すように、例えばFF(フロントエンジン・フロントドライブ)タイプの車輌に用いて好適な自動変速機3は、駆動源であるエンジン2(図1参照)に接続し得る該自動変速機3の入力軸8を有しており、該入力軸8の軸方向を中心としてトルクコンバータ4、及び自動変速機構(変速機構)5を備えている。なお、符号9は、自動変速機構5を収容する変速機ケースを示している。
【0025】
本自動変速機3は、自動変速機構5における複数の動力伝達経路を各係合状態により達成する摩擦係合要素(係合要素)であるクラッチC−1,C−2,C−3及びブレーキB−1,B−2を有し、それら係合要素同士の掴み換えにより前進6速段の変速を達成する有段式の自動変速機である。なお、前進6速段の変速に限らず、前進5速段の変速を行う自動変速機にも本発明を適用し得ることは勿論である。
【0026】
上記トルクコンバータ4は、自動変速機3の入力軸8に接続されたポンプインペラ4aと、作動流体を介して該ポンプインペラ4aの回転が伝達されるタービンランナ4bとを有しており、該タービンランナ4bは、上記入力軸8と同軸上に配設された上記自動変速機構5の入力軸10に接続されている。また、該トルクコンバータ4には、ロックアップクラッチ7が備えられており、該ロックアップクラッチ7が油圧制御装置6(図1参照)の油圧制御によって係合されると、上記自動変速機3の入力軸8の回転が自動変速機構5の入力軸10に直接伝達される。なお、上記油圧制御装置6は、油圧サーボ(不図示)を自動変速機構5に対応して多数備えると共に、これら油圧サーボへの油圧を切換えるシフトバルブも多数備えている。
【0027】
上記自動変速機構5には、入力軸10上において、プラネタリギヤSPと、プラネタリギヤユニットPUとが備えられている。上記プラネタリギヤSPは、サンギヤ(固定ギヤ)S1、キャリヤCR1、及びリングギヤR1を備えており、該キャリヤCR1に、サンギヤS1及びリングギヤR1に噛合するピニオンP1を有している、いわゆるシングルピニオンプラネタリギヤである。上記サンギヤS1は、プラネタリギヤSPの常時回転が固定されたギヤである。なお、上記プラネタリギヤSPは、入力軸10の回転を減速した減速回転を出力し得る減速プラネタリギヤを構成している。
【0028】
また、該プラネタリギヤユニットPUは、4つの回転要素としてサンギヤS2、サンギヤS3、キャリヤCR2及びリングギヤR2を有し、該キャリヤCR2に、サンギヤS2及びリングギヤR2に噛合するロングピニオンPLと、サンギヤS3に噛合するショートピニオンPSとを互いに噛合する形で有している、いわゆるラビニヨ型プラネタリギヤである。なお、上記クラッチC−3,C−1は、プラネタリギヤユニットPUの2つの回転要素であるサンギヤS2,S3のそれぞれにプラネタリギヤSPからの回転を入力自在にする2つの減速クラッチを構成する。また、上記クラッチC−2は、プラネタリギヤユニットPUの1つの回転要素であるキャリヤCR2に入力軸10の回転を入力自在にする入力クラッチを構成している。上記リングギヤR2は、自動変速機構5の出力軸(不図示)に接続された出力要素である。
【0029】
上記プラネタリギヤSPのサンギヤS1は、図2及び図5に示すように、変速機ケース9に対して固定され、入力軸10の回転に対する反力が生じる固定ギヤ、つまり、変速機ケース9に一体的に固定されているボス部20に接続(スプライン結合)されて回転が常時固定された固定ギヤを構成している。該サンギヤS1の変速機ケース9(つまりボス部20)に接続される軸部26には、入力軸10側から作用するトルクに応じたサンギヤS1(つまり軸部26)の歪みを検出する歪みゲージ24が、接着剤等により直接固定されている。該歪みゲージ24は、入力軸10側から作用するトルクに起因するサンギヤS1と変速機ケース9との歪みを検出する歪み検出センサを構成する。
【0030】
軸部26に固定された歪みゲージ24は、該軸部26における反対側の部分にも同様に固定されており、当該軸部26の外周面に固定された2個により歪みを検出する。該歪みゲージ24は、電気接続ケーブル27を介して制御部12に接続されている。なお、歪みゲージ24は、2個に限らず、上記軸部26の外周面における3箇所或いは4箇所に等角度間隔で固定されていても、同様に機能し得ることは勿論である。
【0031】
また、図2に示すように、上記リングギヤR1は、上記入力軸10の回転と同回転(以下、「入力回転」という。)になっている。更に上記キャリヤCR1は、上記固定されたサンギヤS1と該入力回転するリングギヤR1とにより、入力回転が減速された減速回転になると共に、クラッチC−1及びクラッチC−3に接続されている。
【0032】
上記プラネタリギヤユニットPUのサンギヤS2は、ブレーキ(係合要素)B−1に接続されて変速機ケース9に対して固定自在となっていると共に、上記クラッチC−3に接続され、該クラッチC−3を介して上記キャリヤCR1の減速回転が入力自在となっている。また、上記サンギヤS3は、クラッチC−1に接続されており、上記キャリヤCR1の減速回転が入力自在となっている。
【0033】
更に、上記キャリヤCR2は、入力軸10の回転が入力されるクラッチC−2に接続され、該クラッチC−2を介して入力回転が入力自在となっており、また、ワンウェイクラッチ(係合要素)F−1及びブレーキB−2に接続されて、該ワンウェイクラッチF−1を介して変速機ケース9に対して一方向の回転が規制されると共に、該ブレーキB−2を介して回転が固定自在となっている。そして、上記リングギヤR2は、カウンタギヤ11に接続されており、該カウンタギヤ11は、不図示のカウンタシャフト、ディファレンシャル装置を介して不図示の駆動車輪に接続されている。
【0034】
つづいて、上記構成に基づき、自動変速機構5の作用について図2、図3及び図4に沿って説明する。なお、図4に示す速度線図において、縦軸方向はそれぞれの回転要素(各ギヤ)の回転数を示しており、横軸方向はそれら回転要素のギヤ比に対応して示している。また、該速度線図のプラネタリギヤSPの部分において、縦軸は、図4中左方側から順に、サンギヤS1、キャリヤCR1、リングギヤR1に対応している。更に、該速度線図のプラネタリギヤユニットPUの部分において、縦軸は、図4中右方側から順に、サンギヤS3、リングギヤR2、キャリヤCR2、サンギヤS2に対応している。
【0035】
例えばD(ドライブ)レンジにおける前進1速段(1ST)では、図3に示すように、クラッチC−1及びワンウェイクラッチF−1が係合される。すると、図2及び図4に示すように、固定されたサンギヤS1と入力回転であるリングギヤR1によって減速回転するキャリヤCR1の回転が、クラッチC−1を介してサンギヤS3に入力される。また、キャリヤCR2の回転が一方向(正転回転方向)に規制されて、つまりキャリヤCR2の逆転回転が防止されて固定された状態になる。すると、サンギヤS3に入力された減速回転が、固定されたキャリヤCR2を介してリングギヤR2に出力され、前進1速段としての正転回転がカウンタギヤ11から出力される。
【0036】
なお、エンジンブレーキ時(コースト時)には、ブレーキB−2を係止してキャリヤCR2を固定し、該キャリヤCR2の正転回転を防止する形で、上記前進1速段の状態を維持する。また、該前進1速段では、ワンウェイクラッチF−1によりキャリヤCR2の逆転回転を防止し、かつ正転回転を可能にするので、例えば非走行レンジから走行レンジに切換えた際の前進1速段の達成を、ワンウェイクラッチF−1の自動係合により滑らかに行うことができる。
【0037】
前進2速段(2ND)では、図3に示すように、クラッチC−1が係合され、ブレーキB−1が係止される。すると、図2及び図4に示すように、固定されたサンギヤS1と入力回転であるリングギヤR1によって減速回転するキャリヤCR1の回転が、クラッチC−1を介してサンギヤS3に入力される。また、ブレーキB−1の係止によりサンギヤS2の回転が固定される。すると、キャリヤCR2がサンギヤS3よりも低回転の減速回転となり、該サンギヤS3に入力された減速回転が該キャリヤCR2を介してリングギヤR2に出力され、前進2速段としての正転回転がカウンタギヤ11から出力される。
【0038】
なお、この前進2速段の状態からニュートラル制御によってクラッチC−1が解放(スリップ状態に)された場合は、キャリヤCR2の逆転回転を阻止するワンウェイクラッチF−1によって、リングギヤR2の正転回転が許容されると共に逆転回転が阻止され、車輌の後退(駆動車輪の逆転回転)が防止される、いわゆるヒルホールドの状態となる。
【0039】
前進3速段(3RD)では、図3に示すように、クラッチC−1及びクラッチC−3が係合される。すると、図2及び図4に示すように、固定されたサンギヤS1と入力回転であるリングギヤR1によって減速回転するキャリヤCR1の回転が、クラッチC−1を介してサンギヤS3に入力される。また、クラッチC−3の係合によりキャリヤCR1の減速回転がサンギヤS2に入力される。つまり、サンギヤS2及びサンギヤS3にキャリヤCR1の減速回転が入力されるため、プラネタリギヤユニットPUが減速回転の直結状態となり、そのまま減速回転がリングギヤR2に出力され、前進3速段としての正転回転がカウンタギヤ11から出力される。
【0040】
前進4速段(4TH)では、図3に示すように、クラッチC−1及びクラッチC−2が係合される。すると、図2及び図4に示すように、固定されたサンギヤS1と入力回転であるリングギヤR1によって減速回転するキャリヤCR1の回転が、クラッチC−1を介してサンギヤS3に入力される。また、クラッチC−2の係合によりキャリヤCR2に入力回転が入力される。すると、該サンギヤS3に入力された減速回転とキャリヤCR2に入力された入力回転とにより、上記前進3速段より高い減速回転となってリングギヤR2に出力され、前進4速段としての正転回転がカウンタギヤ11から出力される。
【0041】
前進5速段(5TH)では、図3に示すように、クラッチC−2及びクラッチC−3が係合される。すると、図2及び図4に示すように、固定されたサンギヤS1と入力回転であるリングギヤR1によって減速回転するキャリヤCR1の回転が、クラッチC−3を介してサンギヤS2に入力される。また、クラッチC−2の係合によりキャリヤCR2に入力回転が入力される。すると、該サンギヤS2に入力された減速回転とキャリヤCR2に入力された入力回転とにより、入力回転より僅かに高い増速回転となってリングギヤR2に出力され、前進5速段としての正転回転がカウンタギヤ11から出力される。
【0042】
前進6速段(6TH)では、図3に示すように、クラッチC−2が係合され、ブレーキB−1が係止される。すると、図2及び図4に示すように、クラッチC−2の係合によりキャリヤCR2に入力回転が入力される。また、ブレーキB−1の係止によりサンギヤS2の回転が固定される。すると、固定されたサンギヤS2によりキャリヤCR2の入力回転が上記前進5速段より高い増速回転となってリングギヤR2に出力され、前進6速段としての正転回転がカウンタギヤ11から出力される。
【0043】
後進1速段(REV)では、図3に示すように、クラッチC−3が係合され、ブレーキB−2が係止される。すると、図2及び図4に示すように、固定されたサンギヤS1と入力回転であるリングギヤR1によって減速回転するキャリヤCR1の回転が、クラッチC−3を介してサンギヤS2に入力される。また、ブレーキB−2の係止によりキャリヤCR2の回転が固定される。すると、サンギヤS2に入力された減速回転が、固定されたキャリヤCR2を介してリングギヤR2に出力され、後進1速段としての逆転回転がカウンタギヤ11から出力される。
【0044】
なお、例えばP(パーキング)レンジ及びN(ニュートラル)レンジでは、クラッチC−1、クラッチC−2、及びクラッチC−3、が解放される。すると、キャリヤCR1とサンギヤS2及びサンギヤS3との間、即ちプラネタリギヤSPとプラネタリギヤユニットPUとの間が切断状態となり、かつ、入力軸10とキャリヤCR2との間が切断状態となる。これにより、入力軸10とプラネタリギヤユニットPUとの間の動力伝達が切断状態となり、つまり入力軸10とカウンタギヤ11との動力伝達が切断状態となる。
【0045】
ついで、図6を参照して、油圧制御装置6における油圧回路の概略について説明する。該油圧回路は、2個のリニアソレノイドバルブSLS及びSLUを有すると共に、自動変速機構のプラネタリギヤユニットの伝達経路を切換えて、例えば前進6速、後進1速の変速段を達成する複数の摩擦係合要素を断・接作動する複数の油圧サーボ29,30を有している。また、リニアソレノイドバルブSLS及びSLUの入力ポートa,aにはソレノイドモジュレータ圧が供給されており、これらリニアソレノイドバルブの出力ポートb,bからの制御油圧がそれぞれプレッシャコントロールバルブ31,32の制御油室31a,32aに供給されている。プレッシャコントロールバルブ31,32は、ライン圧がそれぞれ入力ポート31b,32bに供給されており、上記制御油圧にて調圧された出力ポート31c,32cからの調圧が、それぞれシフトバルブ33,34を介して適宜各油圧サーボ29,30に供給される。
【0046】
なお、本油圧回路は、基本概念を示すためのものであって、各油圧サーボ29,30及びシフトバルブ33,34は、象徴的に示すものであり、実際には、自動変速機構5に対応して油圧サーボは多数備えられており、これら油圧サーボへの油圧を切換えるシフトバルブも多数備えている。また、油圧サーボ30に示すように油圧サーボは、シリンダ35にオイルシール36により油密状に嵌合するピストン37を有しており、該ピストン37は、油圧室38に作用するプレッシャコントロールバルブ32からの調圧油圧に基づき、戻しスプリング39に抗して移動し、外側摩擦プレート40及び内側摩擦材41を接触する。該摩擦プレート及び摩擦材は、クラッチで示してあるが、ブレーキにも同様に対応することは勿論である。
【0047】
つづいて、本発明に係る自動変速機の変速制御装置1について、図1を参照して説明する。なお、図1は、本実施の形態における自動変速機の変速制御装置1に係る電気制御系等を示すブロック図である。
【0048】
本自動変速機の変速制御装置1は、図1に示すように、エンジン(E/G)2からの信号、自動変速機3(自動変速機構5)の入力軸回転数センサ22及び出力軸回転数(車速)センサ23からの信号、歪みゲージ24からの信号、アクセル開度センサ25からの信号を入力する制御部(ECU)12を備えている。入力軸回転数センサ22は入力軸10の回転数を検出し、また、出力軸回転数センサ23はカウンタギヤ11の後流側に設けられた不図示の出力軸の回転数を検出する。
【0049】
上記制御部12は、トルクリダクション指令手段(トルク変更指令手段、トルク低減指令手段)13を有するトルク制御手段14、イナーシャ相検出手段15、トルク値算出手段16、入力相当値算出手段42、変速制御手段17、変速マップ18、トルク変更判定手段43、エンジン回転数検出手段19、及び学習制御手段28を有している。なお、上記トルク値算出手段16及び歪みゲージ24により、反力に基づきサンギヤS1に作用するトルク値を検出する固定ギヤトルク検出手段が構成されている。
【0050】
上記トルクリダクション指令手段13は、イナーシャ相にてエンジン2に対してトルクリダクション(トルク変更、トルク低減)を行う指令を出力するもので、イナーシャ相検出手段15によりイナーシャ相の開始(図8の略々tの時点)が検出された際に上記指令を出力する。即ち、トルクリダクション指令手段13は、イナーシャ相検出手段15によりイナーシャ相の開始が検出された時点で、変速ショックを緩和する(即ち、変速を行う際のクラッチやブレーキに作用するエンジン2のイナーシャトルクを低減する)ように、エンジン2に対するトルクリダクションを行うための上記指令を出力する。具体的には、変速中のイナーシャ相において、エンジン2に対してトルクリダクション指令を行って、エンジントルクを減少することでエンジン回転数の上昇を抑えると共に、エンジンイナーシャトルクの発生分を、エンジントルクの減少により低減する。またトルク制御手段14は、トルクリダクション指令手段13によってトルクリダクションを実行する以外のトルク制御を実行する。
【0051】
上記トルク値算出手段16は、歪みゲージ24による検出結果に基づき、サンギヤS1に作用したトルク値を算出する。即ち、トルク値算出手段16は、歪みゲージ24に電気信号を印加し、サンギヤS1の歪みに起因して該歪みゲージ24から出力される電気信号を受信するように、該歪みゲージ24に電気的に接続される。そして、該トルク値算出手段16は、歪みゲージ24による検出結果に基づき、サンギヤS1に作用したトルク値を算出する。つまり、トルク値算出手段16は、歪みゲージ24からの出力信号を増幅する不図示の増幅器を有しており、該増幅器で増幅された歪みゲージ24の出力電圧に基づいてサンギヤS1に作用するトルク値を算出(検出)する。
【0052】
上記イナーシャ相検出手段15は、歪みゲージ24及びトルク値算出手段16により検出されるトルク値の変化に基づき、自動変速機構5にて回転変化が始まるイナーシャ相の開始点(図8の略々tの時点)を検出する。即ち、イナーシャ相検出手段15は、トルク値算出手段16により算出されたトルク値に基づき、自動変速機構5での回転変化が始まるイナーシャ相の開始点を検出する(つまり、開始を検出する)。該イナーシャ相検出手段15は、予め設定された閾値を有しており、トルク値算出手段16により算出されたトルク値が閾値を超えたか否かを判断することで、トルク値が閾値を越えた場合にイナーシャ相が開始されたと判定する。当該閾値としては、図8の時点tから外乱と区別し得る程度のトルク値が設定される。
【0053】
上記入力相当値算出手段42は、歪みゲージ24及びトルク値算出手段16により検出されたトルク値に基づく入力トルク相当値を算出する。即ち、該入力相当値算出手段42は、1速段(1ST)〜3速段(3RD)にあってはサンギヤ分担トルク(図8の(f)参照)を例えば1.7985倍することで入力トルク(図8の(e)参照)を算出し、4速段(4TH)にあってはサンギヤ分担トルクを例えば6.25倍することで入力トルクを算出し、5速段(5TH)にあってはサンギヤ分担トルクを例えば-6.76倍することで入力トルクを算出する。しかし、6速段(6TH)では、入力軸10の回転がプラネタリギヤSPを経由せずにプラネタリギヤユニットPUのみを経由してカウンタギヤ11に伝達されるため、上記トルク値に基づく入力トルク相当値の算出は不可能(0)である。
【0054】
上記変速制御手段17は、油圧制御装置6に備えられた不図示のソレノイドバルブに電気的指令を行うことで、摩擦係合要素であるクラッチC−1,C−2,C−3やブレーキB−1,B−2の各油圧サーボに供給する油圧を制御し、自動変速機構5における摩擦係合要素であるクラッチやブレーキ同士の掴み換え変速を行う。即ち、該変速制御手段17は、パワーオンアップシフト変速においては、例えば出力軸回転数センサ23により検出される自動変速機構5の出力軸(不図示)の回転数より算出される車速と、アクセル開度センサ25により検出されるアクセル開度とに基づき変速マップ18を参照し、アクセル開度が所定開度以上の場合にあってアップシフト変速点を判断した際に、油圧制御装置6のソレノイドバルブ(不図示)に指令することで、自動変速機構5において摩擦係合要素同士の掴み換えを行わせ、これによりパワーオンアップシフト変速を行う。変速制御手段17は、このような変速制御を、歪みゲージ24及びトルク値算出手段16により検出されたトルク値に基づく入力トルク相当値(図8の(e)参照)に基づき、所定のスイープ勾配(図8の(g)参照)となるように各油圧サーボに供給する油圧を制御する。
【0055】
トルク変更判定手段43は、入力相当値算出手段42により算出された入力トルク相当値(図8の(e)参照)に基づき、エンジン2がトルクリダクション指令手段13の指令に沿って適正にトルクリダクション(トルク変更、トルク低減)されているか否かを判定する。該判定は、トルクリダクション指令手段13からトルクを例えば30[Nm]低減するように指令が出力された際に、入力トルク相当値が予め設定された許容範囲(例えば±5[Nm])内にある場合は、トルクリダクションが適正に行われたと判定し、入力トルク相当値が許容範囲(例えば±5[Nm])から外れている場合は、トルクリダクションが適正に行われなかったと判定する。
【0056】
上記制御部12には、エンジントルク信号を含む信号がエンジン2から送られており、上記エンジン回転数検出手段19は、エンジン2からの信号に基づき、エンジン2の回転数(以下、エンジン回転数という)を検出する。
【0057】
本実施の形態では、イナーシャ相中にピークトルク、回転変化加速度、変速時間を見ることで、今回の変速制御に対して、トルクリダクション量と係合側油圧のうち何れが悪かったのかという原因を特定し、最適な修正量(補正量)を計算することができる。つまり、上記学習制御手段28が、変速制御手段17による摩擦係合要素(係合要素)の係合状態と、トルクリダクション指令手段13によるエンジン2へのトルクリダクションによるエンジントルク(駆動源トルク)の低減状態とに基づき、変速における学習を行う。
【0058】
即ち、該学習制御手段28は、変速制御手段17による例えばブレーキB−1(1−2変速では第1の係合要素に対応)の係合状況を学習し得るものであり、上記トルク変更判定手段43によりエンジン2が適正にトルク変更されていないと判定された際には、その際の(つまり、今回の(現在の)変速制御における)学習値を学習補正せず次回の変速制御に反映させないように制御する。そして、該学習制御手段28は、上記トルク変更判定手段43によりエンジン2が適正にトルク変更されていると判定された際には、その際の学習値を学習補正して次回の変速制御に反映させるように制御する。
【0059】
これはつまり、入力トルク相当値は適切であるが回転変化加速度(回転加速度変化)が大きい場合には、トルクリダクション指令手段13によるトルクリダクションが効き過ぎて不適切ということでありその際の学習値は学習補正せず、またトルクリダクション量に問題が無くて入力トルク相当値が予想より大きい場合には、変速制御手段17による係合側油圧が上昇し過ぎていると判断してその際の学習値を学習補正する、ということに基づいている。
【0060】
ここで、変速初期の入力トルク相当値が一定値を超えるまで変速制御手段17による油圧上昇が行われると、学習制御手段28は、変速初期の入力トルク相当値が一定値を超える油圧を学習すると共に、変速中の入力トルク相当値が或る特定範囲内(例えば±15%以内)になるように計算した油圧指令値を学習値として、次回の変速制御のために学習補正する。
【0061】
また、上記学習制御手段28は、入力トルク相当値の平均値と予定入力トルク相当値との比較(以下、比較Aという)、及び、実変速時間と予定変速時間との比較(以下、比較Bという)を行い、これら比較A及び比較Bの各比較結果に基づき、油圧とエンジントルクリダクション量の双方の学習を行って、次回の変速制御での変速ショックができるだけ良好になるように協調した学習制御を実行するように構成されている。
【0062】
例えば従来の変速制御においては(但し、係合開始時間、ピストンストローク状態などが良好の場合)、比較Bの結果が小さい(即ち、変速時間が短い)場合に油圧を低減するように制御し、比較Bの結果が丁度良い(適切な変速時間)場合に油圧を変化させないように制御し、比較Bの結果が大きい(即ち、変速時間が長い)場合に油圧を上昇させるように制御していた。
【0063】
これに対し、本実施の形態における変速制御では(但し、係合開始時間、ピストンストローク状態などが良好で、比較Aの結果が良好の場合)、比較Bの結果が小さい(即ち、変速時間が短い)場合にトルクリダクションを低減するように制御し、比較Bの結果が丁度良い(適切な変速時間)場合にトルクリダクションを変化させないように制御し、比較Bの結果が大きい(即ち、変速時間が長い)場合にトルクリダクションを増大させるように制御する。また、本変速制御においては(但し、係合開始時間、ピストンストローク状態などが良好で、比較Bの結果が良好の場合)、比較Aの結果が小さい(即ち、変速ショックが良すぎる)場合に油圧を上昇させるように制御し、比較Aの結果が丁度良い(適切な変速ショック)場合に油圧を変化させないように制御し、比較Aの結果が大きい(即ち、変速ショックが悪い)場合に油圧を低減するように制御する。
【0064】
そして、学習制御手段28において、総合判断としては下記のように算出される。すなわち、比較Aの補正量をトルクで考え(TA:油圧側の補正量)、Bの補正量をトルクで考える(TB:エンジントルク側の補正量)のであるが、TA及びTBの双方を同時に修正すると、互いの制御が重なって、次回の変速制御での変速時間が予想通りの学習とはならない。
【0065】
例えば、変速ショックが良すぎて補正量TAを+20[Nm]とし、同時に変速時間が長いと判定されて補正量TBを−30[Nm]とする場合、係合トルクを20[Nm]加算するように油圧を上昇させると、結果的には次回の変速時間も20[Nm]分短くなるので、実際のエンジントルク側の次回の変速制御での補正量は、−30[Nm]+20[Nm]=−10[Nm]としなければ、変速時間が予定よりも短くなってしまう。つまり、係合トルク側(油圧側の補正量)を優先することとし、学習の修正量において、係合油圧は、補正量TAから計算されることとなり、エンジン2のトルクリダクション修正量において、補正値はTB−TAとなる。なお、これとは逆に、学習の修正量において、係合油圧を、補正量TBから計算し、油圧側の修正量において、補正値をTA−TBとすることも可能である。
【0066】
ついで、本自動変速機の変速制御装置1の制御について、図1、及び図7のフローチャート、図8のタイムチャートを参照して説明する。なお、図7は本自動変速機の変速制御装置の作用を説明するためのフローチャート、図8は本自動変速機の変速制御装置の作用を説明するためのタイムチャートである。
【0067】
なお、図8において、(a)は自動変速機構5の入力軸10の入力回転数の変化を示し、(b)はカウンタギヤ11の後流側の出力軸(不図示)の回転数(出力回転数)の変化を示し、(c)は該出力軸の出力トルクを示し、(d)はエンジントルク相当(イナーシャ無し)の変化を示し、(e)は(f)のサンギヤ分担トルクを入力相当値算出手段42が1.7985倍して算出した入力トルク相当の変化を示し、(f)はサンギヤS1の分担トルクの変化を示し、(g)は係合させるべき例えばブレーキB−1に対応する油圧サーボへの係合油圧の変化を示している。
【0068】
本変速制御装置1による制御では、例えば不図示のイグニッションがONされ、エンジン2がONしている状態で制御が開始され、変速制御手段17により自動変速機構5においてパワーオンアップシフト変速中であることを検出するまで待機する。そして、運転者によるアクセルペダル操作による例えば1速段での走行中に、変速制御手段17が、出力軸回転数センサ23により検出される自動変速機構5の出力軸の回転数から算出される車速と、アクセル開度センサ25により検出されるアクセル開度とに基づき変速マップ18を参照し、アクセル開度が所定開度以上の場合にあってアップシフト変速点と判断すると(ステップS1:YES)、例えば1→2変速のパワーオンアップシフト変速を行う。
【0069】
すなわち、運転者によりアクセルが踏み込まれてアクセル開度が上昇し、変速マップ18における1速段の領域から2速段の領域となる変速点を越えると、該時点から所定時間経過した図8の時点tにおいて、変速制御手段17により1−2変速判断がなされる。すると、時点tから変速制御手段17において変速指令(フラグ)が2速段となり、1−2変速制御が開始される。
【0070】
そして、所定シフトバルブの操作等の前処理のための所定時間経過後、係合側油圧及び解放側油圧の変速制御が開始される。なお、該変速制御にあっては、運転者はアクセルペダルを略々一定な操作を保持し、変速中、エンジンから車輪側へ動力伝達されるパワーオン状態でアップシフト制御される。
【0071】
1−2変速制御では、後述のように、係合側油圧が一旦上昇してブレーキB−1の油圧サーボにおけるガタ詰め動作が行われた後、該ブレーキB−1が徐々に係合され、これに伴い、回転が反転することによりワンウェイクラッチF−1が次第に解除(解放)される。
【0072】
変速制御手段17は、タイマ経過又は回転変化の検出判定に従いトルク相制御を開始する(S2)。該トルク相制御では、係合側のブレーキB−1が担持するトルクが増大し、ギヤ比はアップシフト前(1速段)の状態にあってトルク分担のみが変化することになる。
【0073】
引き続き、変速制御手段17により油圧制御装置6に電子制御指令する形で初期制御が行われ、自動変速機構5における実際の変速を行うイナーシャ相制御が開始されて、ブレーキB−1のスリップに伴うエンジン回転数の上昇に応じて入力回転数が上昇され、自動変速機構5が徐々に2速段に切り換えられていき、つまり変速進行率が増加していく。ブレーキB−1の係合圧は、一旦上昇して油圧サーボ(不図示)におけるガタ詰め動作を行うと、ブレーキB−1が徐々に係合してトルク相が時点tから開始され、これに伴いワンウェイクラッチF−1の係合が解除される。そのため、自動変速機構5の出力トルクは、時点tから時点tの間において次第に下降し、トルク分担がブレーキB−1側に移行する。
【0074】
そして、イナーシャ相検出手段15が、時点tの直後において、トルク値算出手段16により算出されたトルク値に基づき、自動変速機構5での回転変化が始まるイナーシャ相の開始点を正確に検出する。つまり、該イナーシャ相検出手段15は、トルク値算出手段16及び歪みゲージ24により検出されたトルク値の変化が閾値を越えた際に、イナーシャ相の開始点(時点tの僅かに後側)として検出する。
【0075】
すなわち、図2において、1速段では、入力軸10の回転がリングギヤR1から、ピニオンP1を介してサンギヤS1の反力を受けるキャリアCR1に伝達され、更に該キャリアCR1からクラッチC−1を介してサンギヤS3に伝達され、ワンウェイクラッチF−1によって係止されるキャリアCR2に支持されたショートピニオンPS及びロングピニオンPLを介してリングギヤR2に伝達され、該リングギヤR2からカウンタギヤ11を介して出力軸に伝達されている。この状態において、トルク分担がブレーキB−1に移行してイナーシャ相が開始すると、入力軸10の回転が、上記と同様にリングギヤR1からキャリアCR1に伝達されるが、ブレーキB−1の係合でサンギヤS2が係止され、かつキャリアCR2がワンウェイクラッチF−1から解放される状態にて、キャリアCR1から、サンギヤS3、ショートピニオンPS、ロングピニオンPLを介してリングギヤR2に伝達され、該リングギヤR2からカウンタギヤ11を介して出力軸に伝達されることになる。この時点で、ピニオンP1からの反力を受けるサンギヤS1は軸部26に歪みを生じるため、該歪みが歪みゲージ24によって検出される。
【0076】
これにより、トルク値算出手段16が、サンギヤS1の歪みに起因して歪みゲージ24から出力される電気信号を受信し、サンギヤS1に作用したトルク値を算出し、イナーシャ相検出手段15が、トルク値算出手段16にて算出されたトルク値を閾値と比較し、トルク値が閾値を越えた際にイナーシャ相が開始されたと判定する。すると、トルク制御手段14が、イナーシャトルク開始(つまり、イナーシャ相開始)が検出された状態で、同時に、エンジントルクが、予め設定された規定値以内であるか否かを判断(規定値を越える場合は例えば1→2→3変速のような飛び変速となるため)する。
【0077】
その結果、イナーシャトルク開始が検出され、かつエンジントルク変化量が規定値以内であると判断した場合(S3:YES)は、ステップS4に進み、イナーシャ勾配(即ち、図8の(g)における係合油圧のスイープアップ勾配)を決定し(目標入力トルクになるまで油圧を上昇させる)、それに合わせたトルクリダクションを、トルクリダクション指令手段13の指令で開始する。これにより、エンジントルクが図8の(d)における時点tから低減され、出力トルクがイナーシャ相にて低減されて図8の(c)に示すようになり、エンジン2のイナーシャトルクが大きく生じる現象が回避されて、変速ショックが有効に抑止される。
【0078】
一方、ステップS3において、例えば5速段から6速段に変速する際のように歪みゲージ24によるトルク検出ができない場合は、ステップS5に進み、従来通りに回転変化を検出してイナーシャ相を判断して、ステップS4に進み、トルクリダクションを開始することになる。
【0079】
引き続き、変速制御手段17は、ブレーキB−1の油圧を変速進行率に応じてフィードバック制御しつつ上昇させ、該ブレーキB−1を更に係合させていく。そして、時点tにおいてイナーシャ相が終了する付近で終期制御に移行し、ブレーキB−1の油圧を急上昇させ、更に、ブレーキB−1の油圧を例えばライン圧をそのまま入力するように切り換えるなどして油圧を上昇させ、該ブレーキB−1の係合を完全な状態にして、1−2変速制御を完了させる。なお、初期油圧の学習や、イナーシャ相中の大きさもフィードバック制御(FB制御)によって調整し得る(図8の丸Aで囲んだ部分、丸Bで囲んだ部分を参照)。
【0080】
そして、ステップS6において、学習制御手段28による学習制御が実行される。ここで、学習制御手段28は、トルク変更判定手段43によりエンジン2が適正にトルク変更されていると判定されれば、今回の(現在の)変速制御における学習値を学習補正して次回の変速制御に反映させるように制御するが、トルク変更判定手段43によりエンジン2が適正にトルク変更されていないと判定された場合には、今回の(現在の)学習値を学習補正せず、次回の変速制御に反映させないように制御する。
【0081】
ついで、ステップS7において、完了制御が実行される。即ち、該完了制御では、解放側油圧制御における完了制御の残り時間と同じ時間がタイマに設定され、そして係合側油圧は、予め設定されている所定勾配からなる油圧によりスイープアップし、上記設定された所定時間が経過するまで、上記スイープアップが続けられ、該時間が経過した時点で完了制御は終了し、1−2変速が完了する。
【0082】
以上の本実施の形態によれば、歪みゲージ24及びトルク値算出手段16が、反力に基づきサンギヤS1に作用するトルク値を検出し、入力相当値算出手段42が、検出されたトルク値に基づく入力トルク相当値を算出し、トルクリダクション指令手段13が、エンジン2に対してトルク変更を行う指令を出力し、トルク変更判定手段43が、算出された入力トルク相当値に基づき、エンジン2が上記指令に沿って適正にトルク変更されているか否かを判定する。このため、自動変速機構5に特有のサンギヤS1を利用して計測したトルク値に基づき、エンジン2に対するトルク変更が目標通りに適正に行われたか否かを的確に判定することができる。例えば、ブレーキB−1等の係合要素に対する係合側油圧を上昇させて係合側がトルク容量を持ち始めると、入力側のイナーシャ変化により入力トルクとして歪みゲージ24及びトルク値算出手段16による検出が可能になるが、変速中に入力トルク相当値の高さを制御の指標とすることで、回転変化加速度が予想通りにならない場合に、トルクリダクション量に問題があったか否か、及び該トルクリダクション量に問題がない場合には係合側油圧に問題があったということ、を直ちに判断することができる。
【0083】
また、本実施の形態によると、変速制御手段17によるブレーキB−1等の係合状況を学習し得る学習制御手段28が、エンジン2が適正にトルク変更されていないと判定された際にはその際の学習値を学習補正せず次回の変速制御に反映させない。従来は係合油圧制御を主に行って変速制御していたが、本実施の形態では、トルク変更が目標通りに適正に行われたか否かを判定し、トルクリダクションが不正確で遅角が効かなかったり効き過ぎたりしていた場合に、今回の学習値を次回の変速制御に反映させないようにすることができる。
【0084】
更に、本実施の形態によると、イナーシャ相検出手段15が、歪みゲージ24及びトルク値算出手段16により検出されるトルク値の変化に基づき、自動変速機構5にて回転変化が始まるイナーシャ相の開始を検出し、トルクリダクション指令手段13が、イナーシャ相の開始が検出された際に、トルクリダクションを行う指令を出力するので、サンギヤS1に作用するトルク値の変化を検出することで、迅速且つ正確にイナーシャ相の開始を検出でき、的確なタイミングでトルク変更を行うことができる。
【0085】
また、本実施の形態では、固定ギヤトルク検出手段が、入力軸10側から作用するトルクに起因するサンギヤS1と変速機ケース9との歪みを検出する歪みゲージ24と、該歪みゲージ24による検出結果に基づき、サンギヤS1に作用したトルク値を算出するトルク値算出手段16とからなる。このため、例えば、簡単な構造で比較的廉価な歪みゲージ24を歪み検出センサとして使用することができ、該歪みゲージ24をサンギヤS1の一部に直接貼り付ける等でサンギヤS1と変速機ケース9との歪みを容易に検出する構造が得られることで、トルクリダクション等のトルク低減の開始の契機となるイナーシャ相の検出に用いるトルク値の検出を、極めてシンプルな構造にて実現できる。
【0086】
ところで、入力軸回転数の変化の開始から上記イナーシャ相の開始と判断する場合、外乱によって誤ってイナーシャ相の開始を判断してしまうことを防止するために、判断するための、回転変化時の回転数変化の差や回転加速度変化量に、所定の差を設けた技術が存在するが、この技術においては、所定の差となるまではイナーシャ相の開始と判断されないことから、イナーシャ相の開始判断が遅れ、その結果、リダクションの開始も遅れる、という課題があった。しかし、本実施の形態では、上記固定ギヤトルク検出手段によりイナーシャ相検出に用いるトルク値を可及的に正確に検出できるので、当該課題を解決することができる。
【0087】
また、本実施の形態では、自動変速機構5は、入力軸10の回転を減速した減速回転を出力し得るプラネタリギヤSPと、自動変速機構5の出力軸(不図示)に接続されたリングギヤR2を含む4つの回転要素(S2,S3,CR2,R2)を有するプラネタリギヤユニットPUと、該プラネタリギヤユニットPUの2つの回転要素(S3,S2)のそれぞれにプラネタリギヤSPからの回転を入力自在にする2つのクラッチC−1,C−3と、プラネタリギヤユニットPUの1つの回転要素(キャリヤCR2)に入力軸10の回転を入力自在にするクラッチC−2とを有して、前進6速段を達成する。更に、サンギヤS1が、プラネタリギヤSPの常時回転が固定されたギヤであるので、変速機ケース9に固定されているサンギヤS1を有して前進6速段を達成するギヤトレーンを有する自動変速機構5を備える際に、サンギヤS1に歪み検出センサ等を取り付けるだけの比較的簡単な構成により、イナーシャ相を早く且つ正確に検出して変速制御に活用することができ、該検出結果を、学習制御での誤学習防止に活用することができる。なお、前進6速段の変速に限らず、変速を行う自動変速機に本発明は適用し得る。
【0088】
更に、プラネタリギヤSPが、変速機ケース9に固定されたサンギヤS1と、減速回転を出力するリングギヤR1と、入力軸10の回転を入力するキャリヤCR1とからなり、サンギヤS1を固定ギヤとしているので、変速機ケース9に固定されているサンギヤS1を有するギヤトレーンを有する自動変速機構5にて、サンギヤS1に歪みゲージ24を取り付けるだけの比較的簡単な構成により、入力トルクを早く且つ正確に検出して学習制御に活用することができる。
【0089】
なお、以上説明した実施の形態では、学習制御手段28により係合側油圧を学習補正するように学習制御したが、これに限らず、例えば、トルクリダクションしたエンジントルクの学習補正に適用することも可能である。その場合、トルクリダクション指令手段13からの指令によりトルクリダクション量が例えば100[Nm]から50[Nm]に低減された場合、学習制御手段28は、この値(学習値)を学習補正して次回の変速制御に反映させることになる。
【0090】
また、以上の実施の形態では、1→2変速時の制御について説明したが、これに限らず、2→3変速時、3→4変速時、4→5変速時においても前述と同様に制御し得ることは勿論である。また、以上の実施の形態では、自動変速機3として、FFタイプの車輌に用いて好適な前進6速及び後進1速を達成するものを例に挙げて説明したが、これに限らず、FRタイプ(フロントエンジン・リアドライブ)やその他のタイプの車輌に用いて好適な自動変速機であっても、変速機ケースに対して常時固定されるギヤ(例えばサンギヤ)を有するプラネタリギヤを備えたタイプであれば本発明を適用することが可能である。
【0091】
また、以上の実施の形態では、パワーオンアップシフト変速の場合を例に挙げて説明したが、これに限らず、イナーシャ相におけるトルクはマイナス側に生じるがパワーオンダウンシフト変速の場合においても、本発明を同様に適用できることは勿論である。更に、トルク相にてエンジン2のトルクアップを行い、トルク相で低下するトルクによる変速ショックを該トルクアップで相殺しつつ、続いてイナーシャ相で起きるトルク増加による変速ショックを、イナーシャ相検出のタイミングで開始するトルクリダクションで的確に抑制できるようにした例に、本発明を適用することも可能である。
【0092】
なお、以上の実施の形態では、「トルク低減」についてトルクリダクションを例に挙げて説明したが、これに限らず、トルク低減としてトルクリミテーションを実施するように構成しても良いことは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】本発明に係る自動変速機の変速制御装置に係る電気制御系等を示すブロック図。
【図2】本発明を適用し得る自動変速機構を示すスケルトン図。
【図3】本自動変速機構の係合表。
【図4】本自動変速機構の速度線図。
【図5】本自動変速機構内のプラネタリギヤに備えた常時固定状態のサンギヤ、及び該サンギヤに固定された歪みゲージを示す図。
【図6】油圧制御装置における油圧回路の概略を示す概略図。
【図7】本自動変速機の変速制御装置の作用を説明するためのフローチャート。
【図8】本自動変速機の変速制御装置の作用を説明するためのタイムチャート。
【符号の説明】
【0094】
1 自動変速機の変速制御装置
2 駆動源(エンジン)
3 自動変速機
5 変速機構(自動変速機構)
9 変速機ケース
10 入力軸
11 出力部材(カウンタギヤ)
13 トルク変更指令手段、トルク低減指令手段(トルクリダクション指令手段)
15 イナーシャ相検出手段
16 固定ギヤトルク検出手段(トルク値算出手段)
17 変速制御手段
24 固定ギヤトルク検出手段、歪み検出センサ(歪みゲージ)
28 学習制御手段
29,30 油圧サーボ
42 入力相当値算出手段
43 トルク変更判定手段
B−1 第1の係合要素(ブレーキ)
C−1,C−3 減速クラッチ(クラッチ)
C−2 入力クラッチ(クラッチ)
CR1 キャリヤ
F−1 第2の係合要素(ワンウェイクラッチ)
PU プラネタリギヤユニット
R1 リングギヤ
R2 回転要素、出力要素(リングギヤ)
S1 固定ギヤ(サンギヤ)
S2,S3,CR2 回転要素(サンギヤ、サンギヤ、キャリヤ)
SP 減速プラネタリギヤ(プラネタリギヤ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源の回転を入力軸に入力しかつ駆動車輪に出力部材を連結する有段の変速機構と、これら入力軸と出力部材との間で動力伝達経路を変更する複数の係合要素と、これら係合要素を断・接作動する油圧サーボと、該油圧サーボの作動を制御して前記複数の係合要素の内の第1の係合要素を係合すると共に第2の係合要素を解放することにより所定変速段に変速する変速制御手段と、を備え、かつ前記変速機構が、変速機ケースに対して固定されて前記入力軸の回転に対する反力を生じる固定ギヤを有してなる自動変速機の変速制御装置において、
前記反力に基づき前記固定ギヤに作用するトルク値を検出する固定ギヤトルク検出手段と、
前記検出されたトルク値に基づく入力トルク相当値を算出する入力相当値算出手段と、
前記駆動源に対してトルク変更を行う指令を出力するトルク変更指令手段と、
前記算出された入力トルク相当値に基づき、前記駆動源が前記トルク変更指令手段の前記指令に沿って適正にトルク変更されているか否かを判定するトルク変更判定手段と、を備える、
ことを特徴とする自動変速機の変速制御装置。
【請求項2】
前記変速制御手段による前記第1の係合要素の係合状況を学習し得る学習制御手段を備え、
該学習制御手段は、前記トルク変更判定手段により前記駆動源が適正にトルク変更されていないと判定された際には、学習補正しない、
請求項1記載の自動変速機の変速制御装置。
【請求項3】
前記固定ギヤトルク検出手段により検出されるトルク値の変化に基づき、イナーシャ相の開始を検出するイナーシャ相検出手段を備え、
前記トルク変更指令手段は、前記イナーシャ相検出手段によりイナーシャ相の開始が検出された際に、前記トルク変更としてのトルク低減を行う指令を出力するトルク低減指令手段である、
請求項1又は2記載の自動変速機の変速制御装置。
【請求項4】
前記固定ギヤトルク検出手段は、
前記入力軸側から作用するトルクに起因する前記固定ギヤと前記変速機ケースとの歪みを検出する歪み検出センサと、
該歪み検出センサによる検出結果に基づき、前記固定ギヤに作用したトルク値を算出するトルク値算出手段と、からなる、
請求項1ないし3のいずれか1項記載の自動変速機の変速制御装置。
【請求項5】
前記変速機構は、
前記入力軸の回転を減速した減速回転を出力し得る減速プラネタリギヤと、
前記変速機構の出力軸に接続された出力要素を含む4つの回転要素を有するプラネタリギヤユニットと、
該プラネタリギヤユニットの2つの回転要素のそれぞれに前記減速プラネタリギヤからの回転を入力自在にする2つの減速クラッチと、
前記プラネタリギヤユニットの1つの回転要素に前記入力軸の回転を入力自在にする入力クラッチと、を有して、前進5速段又は6速段を達成してなり、
前記固定ギヤは、前記減速プラネタリギヤの常時回転が固定されたギヤである、
請求項1ないし4のいずれか1項記載の自動変速機の変速制御装置。
【請求項6】
前記減速プラネタリギヤは、前記変速機ケースに固定されたサンギヤと、前記減速回転を出力するリングギヤと、前記入力軸の回転を入力するキャリヤと、からなり、
前記固定ギヤは前記サンギヤである、
請求項5記載の自動変速機の変速制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−236262(P2009−236262A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−85342(P2008−85342)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】