説明

自動車の前部導風構造

【課題】高いシール信頼性を長期間に亘って保証し、ラジエータへの導風が長期間に亘って安定して行われるようにすること。
【解決手段】ラジエータ支持構造体の左右両側にフロントバンパフェイス9の空気取入開口9Aよりラジエータ15へ空気を導く導風隔壁部材23を取り付ける。導風隔壁部材23は、隔壁をなす主板部23Aと、主板部23Aの外縁に沿って設けられて主板部23Aの延在方向に交差する方向にフランジ面23Bを有するフランジ部23Aとにより構成され、フランジ面23Bにフロントバンパフェイス9との気密接続のためのラジエータ支持構造体側シール部材27を取り付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の前部導風構造に関し、特に、フロントバンパフェイスに空気取入開口が形成されている型式の自動車の前部導風構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の前部導風構造として、フロントバンパフェイスに設けられた空気取入開口より走行風が車体前部配置のラジエータに効率よく導かれるよう、ラジエータコアサポートメンバ(ラジエータ支持構造体)の左右両側に導風ガイドプレートが取り付けられ、フロントバンパフェイスの空気取入開口とラジエータとの間にエアダクトを構成したものがある(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】特開2003−306047号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の前部導風構造の導風ガイドプレートは、全体が発泡樹脂製で、単なる平板状に構成され、導風ガイドプレートの端面がフロントバンパフェイスに当接することによりフロントバンパフェイスとのシール性を得るため、導風ガイドプレートの製造誤差、組み付け誤差、変形によって良好な当接状態が得られず、シール性が不完全になる虞がある。また、導風ガイドプレートの経時変化、疲労により、導風ガイドプレート自体の耐久性、シールの長期間信頼性について保証しにくい。
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、高いシール信頼性を長期間に亘って保証し、ラジエータへの導風が長期間に亘って安定して行われるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明による自動車の前部導風構造は、車体前部にラジエータを支持するためのラジエータ支持構造体が構成され、当該ラジエータ支持構造体より車体前側にフロントバンパフェイスが設けられ、前記フロントバンパフェイスに空気取入開口が形成されている自動車の前部導風構造であって、前記ラジエータ支持構造体の左右両側に取り付けられて前記空気取入開口より前記ラジエータへ空気を導く導風隔壁部材を有し、前記導風隔壁部材は、、硬質プラスチックス、鋼板等の剛体材料製で、前記ラジエータの左右両側と前記空気取入開口の左右両側との間に延在する隔壁をなす主板部と、前記主板部の外縁に沿って設けられて当該主板部の延在方向に交差する方向にフランジ面を有するフランジ部とにより構成され、前記導風隔壁部材の前記フランジ面に前記フロントバンパフェイスとの気密接続のためのラジエータ支持構造体側シール部材が取り付けられている。
【0006】
本発明による自動車の前部導風構造は、好ましくは、前記フロントバンパフェイスに、前記ラジエータ支持構造体側シール部材と突き当たるフロントバンパフェイス側シール部材が取り付けられている。
【0007】
本発明による自動車の前部導風構造は、好ましくは、前記導風隔壁部材は前記フランジ部を前記ラジエータ支持構造体に固定接続されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明による自動車の前部導風構造によれば、導風隔壁部材は、剛体材料製であることにより丈夫であり、主板部とフランジ部とで浅底箱状(バット形状)をなしているので、形状によって剛性が高く、幅設定の自由度が高いフランジ面にラジエータ支持構造体側シール部材が取り付けられているので、当該シール部材の幅設定の自由度も高く、幅広のシール部材の使用により、導風隔壁部材の製造誤差、組み付け誤差、変形があっても、良好なシール性を容易に信頼性よく確保できる。
【0009】
このシール性は、フロントバンパフェイスに、ラジエータ支持構造体側シール部材と突き当たるフロントバンパフェイス側シール部材が取り付けられることにより、より一層、確実で、良好なものになる。
【0010】
更には、導風隔壁部材は、剛体材料製であるから、経時変化、疲労について耐力があり、導風効果の長期間信頼性を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、本発明による自動車の前部導風構造の実施形態を、図1〜図7を参照して説明する。なお、以下の説明において、車体構成メンバで、材料説明がないものは、鋼板等による金属プレス成形品である。
【0012】
図1は本発明による前部導風構造が適用される自動車の全体を示している。図1において、1はサイドフェンダを、3はエンジンフード(ボンネット)を、5はフロントグリル(フロントガーニッシュ)を、7はフロントバンパビーム(図3参照)を、9はフロントバンパフェイスを、11は前輪を、13は後輪を各々示している。
【0013】
図2、図3に示されているように、車体前部には、ラジエータ15を支持するためのラジエータ支持構造体として、フロントバルクヘッド21が設けられている。フロントバルクヘッド21は、左右のフロントサイドフレーム17の先端部に接合された左右のバルクヘッドサイドステイ21Aと、左右のフロントバルクヘッドサイドステイ21Aの上端を互いに接続するバルクヘッドアッパフレーム(図示省略)と、左右のフロントバルクヘッドサイドステイ21Aの下端を互いに接続するフロントロアクロスメンバ21Bとにより矩形枠状に形成されている。
【0014】
ラジエータ15はフロントバルクヘッド21に取り付けられている。フロントバルクヘッド21の車体前部にフロントバンパビーム7が車幅方向に水平に取り付けられている。フロントバンパフェイス9は、樹脂成形品で、フロントバルクヘッド21より車体前部にあって、フロントバンパビーム7を覆うように設けられている。フロントバンパビーム7の前部中央には車幅方向に長い空気取入開口9Aが開口形成されている。
【0015】
左右のフロントバルクヘッドサイドステイ21Aには、つまり、ラジエータ支持構造体の左右両側にはフロントバンパフェイス9の空気取入開口9Aよりラジエータ15へ空気を導くための導風隔壁部材23が、車体前方突出の横壁をなすように取り付けられている
【0016】
導風隔壁部材23は、図4、図5に示されているように、硬質プラスチックス、鋼板等の剛体材料製で、左右のフロントバルクヘッドサイドステイ21A、換言するとラジエータ15の左右両側と空気取入開口9Aの左右両側との間に延在する隔壁をなす主板部23Aと、主板部23Aの外縁に沿って設けられて当該主板部23Aの延在方向に交差(概ね直交)する方向に延在するフランジ面23Bを有するフランジ部23Cとにより構成されている。フランジ部23Cには、導風隔壁部材23をフロントバルクヘッドサイドステイ21Aにボルト25によって取り付けるためのボルト通し孔23Dが複数個形成されている。
【0017】
導風隔壁部材23のフランジ面23Bには、当該導風隔壁部材23とフロントバンパフェイス9との気密接続のためのラジエータ支持構造体側シール部材27が取り付けられている。ラジエータ支持構造体側シール部材27は、発泡樹脂やゴム状弾性体等、弾力性、可撓性を有する材料により構成され、一様な矩形断面の帯状を成しており、両面粘着テープや接着剤等によって、フランジ面23Bの3面(前面、底面、背面)に連続した形態で貼り付けられている。
【0018】
図6に示されているように、フロントバンパフェイス9の背面(裏面)には、空気取入開口9Aの左右両側の縁部に沿ってフロントバンパフェイス側シール部材29が取り付けられている。フロントバンパフェイス側シール部材29は、ラジエータ支持構造体側シール部材27と同様に、発泡樹脂やゴム状弾性体等、弾力性、可撓性を有する材料により構成され、一様な矩形断面の帯状を成しており、両面粘着テープや接着剤等によってフロントバンパフェイス9の背面に貼り付けられている。
【0019】
図7に示されているように、フロントバンパフェイス側シール部材29は、フロントバンパフェイス9の車体に対する取り付け状態で、ラジエータ支持構造体側シール部材27と突き当たって密着し、ラジエータ支持構造体側シール部材27と共に、導風隔壁部材23とフロントバンパフェイス9との間の気密シールを行う。
【0020】
導風隔壁部材23は、硬質プラスチックス、鋼板等剛体材料製であることにより丈夫であり、主板部23Aとフランジ部23Cとで浅底箱状、つまりバット形状をなしているので、当該形状によっても剛性が高く、経時変化、疲労について耐力があり、導風効果の長期間信頼性を得ることができる。
【0021】
導風隔壁部材23のフランジ面23Bは、幅設定の自由度が高くから、フランジ面23Bに取り付けられるラジエータ支持構造体側シール部材27の幅設定の自由度も高く、幅広のシール部材の使用により、導風隔壁部材23の製造誤差、組み付け誤差、変形があっても、良好なシール性を容易に信頼性よく確保できる。
【0022】
このシール性は、フロントバンパフェイス9に、ラジエータ支持構造体側シール部材27と突き当たるフロントバンパフェイス側シール部材29が取り付けられることにより、より一層、確実で、良好なものになる。
【0023】
また、導風隔壁部材23は、フランジ部23Cをもってラジエータ支持構造体であるフロントバルクヘッド21にボルト締結等によって取り付けられるので、導風隔壁部材23のラジエータ支持構造体に対する取付性も改善される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明による前部導風構造が適用される自動車の全体を示す斜視図である。
【図2】本発明による自動車の前部導風構造の一つの実施形態の要部を車幅方向内側から見た斜視図である。
【図3】本発明による自動車の前部導風構造の一つの実施形態の要部を車幅方向外側から見た斜視図である。
【図4】本発明による自動車の前部導風構造に用いられる導風隔壁部材の一つの実施形態を外側から見た斜視図である。
【図5】本発明による自動車の前部導風構造に用いられる導風隔壁部材の一つの実施形態を内側から見た斜視図である。
【図6】本発明による自動車の前部導風構造に用いられるフロントバンパフェイスの一つの実施形態の背面図である。
【図7】本発明による自動車の前部導風構造の一つの実施形態の要部の底面図である。
【符号の説明】
【0025】
1 サイドフェンダ
3 エンジンフード
5 フロントグリル
7 フロントバンパビーム
9 フロントバンパフェイス
15 ラジエータ
17 フロントサイドフレーム
21 フロントバルクヘッド
23 導風隔壁部材
27 ラジエータ支持構造体側シール部材
29 フロントバンパフェイス側シール部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体前部にラジエータを支持するためのラジエータ支持構造体が構成され、当該ラジエータ支持構造体より車体前側にフロントバンパフェイスが設けられ、前記フロントバンパフェイスに空気取入開口が形成されている自動車の前部導風構造であって、
前記ラジエータ支持構造体の左右両側に取り付けられて前記空気取入開口より前記ラジエータへ空気を導く導風隔壁部材を有し、
前記導風隔壁部材は、剛体材料製で、前記ラジエータの左右両側と前記空気取入開口の左右両側との間に延在する隔壁をなす主板部と、前記主板部の外縁に沿って設けられて当該主板部の延在方向に交差する方向にフランジ面を有するフランジ部とにより構成され、
前記導風隔壁部材の前記フランジ面に前記フロントバンパフェイスとの気密接続のためのラジエータ支持構造体側シール部材が取り付けられている自動車の前部導風構造。
【請求項2】
前記フロントバンパフェイスに、前記ラジエータ支持構造体側シール部材と突き当たるフロントバンパフェイス側シール部材が取り付けられている請求項1に記載の自動車の前部導風構造。
【請求項3】
前記導風隔壁部材は前記フランジ部を前記ラジエータ支持構造体に固定接続されている請求項1または2に記載の自動車の前部導風構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−184487(P2009−184487A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−26088(P2008−26088)
【出願日】平成20年2月6日(2008.2.6)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】