説明

自動車の自動的縦制御方法および装置

間隔センサを有する、自動車の自動的な縦制御装置および方法が提案され、間隔センサは少なくとも、前を走行する車両に対する自己の、追従する車両の間隔および/または追従する車両に関する相対速度を測定する。測定値から、検出された、前を走行する車両が停止したかが定められるので、追従する車両は前を走行する車両の後方のある距離に停止される。前を走行する車両が再び始動したことが認識された場合には、追従する車両の運転者は始動操作装置を操作しなければならず、その場合に始動操作装置はブレーキペダルである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも、前方を走行する車両に対する自己の、追従する車両の間隔および/または追従する車両に関する相対速度を測定する間隔センサを有する、自動車の自動的縦制御装置および方法に関する。測定値から、検出された前を走行する車両が停止されたか、が定められるので、追従する車両は前を走行する車両の後方のある距離内に自立的に停止される。前を走行する車両が再び走り始めたことが認識された場合には、追従する車両の運転者は始動操作装置を操作しなければならず、その場合に始動操作装置はブレーキペダルである。
【背景技術】
【0002】
1996年2月26−29、デトロイトのSAEインターナショナル コングレス&エクスポジションで公開された、ヴィナー、ヴィッテ、ウーラーおよびリヒテンベルク(Winner, Witte, Uhler und Lichtenberg)の、タイトル「アダプティブクルーズコントロールシステムアスペクトと開発傾向(Adaptive Cruise Control System Aspects and Development Trends)」が記されたSAEペーパー961010から、適応的な間隔および速度制御器が知られており、それはレーダー放射を用いて前方を走行する車両の間隔と相対速度を測定し、それに従って車両が前方を走行する車両の後方に予め定められた間隔で自動的に従うように、車両の駆動装置および減速装置を駆動する。このシステムの使用限界は、速度によって制限されるので、この種の適応的な間隔および速度制御器は、時速約40キロメートルの最小速度までしか使用できない。さらに、この種のシステムのさらなる発展として、ストップ−アンド−ゴーAccシステムが開発され、それは渋滞追従アシスタントとして、車両を自立的に静止状態まで制動し、前方を走行する交通が再び始動した場合に車両を自動的に加速することもできる。この種のシステムは、運転者支援アシスタントシステムとして設計されているので、始動のためには運転者の操作が必要である。というのは、人または物体が自己の車両のすぐ前の位置にあって、間隔センサによっては検出できないことが、排除されなければならないからである。この種の渋滞追従アシスタントが、前方を走行する交通が再び始動したことを認識した場合には、自己の、追従する車両の運転者は、操作によって始動許可を出力することを要請される。この種の始動許可は、たとえばステアリングホィールあるいは車両のダッシュボードに設けられた付加的な操作ボタンによって設けることができ、あるいはアクセルペダルの短い操作によって行うことができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の核心は、停止および再始動機能を備えた車両を自動的に縦制御するための渋滞追従アシスタントを有する車両のために、運転者が直感的に操作可能であって、周囲のために、エラー条件においても確実かつ危険でない、始動操作装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の核心は、停止および再始動機能を備えた車両を自動的に縦制御するための渋滞追従アシスタントを有する車両のために、運転者が直感的に操作可能であって、周囲のために、エラー条件においても確実かつ危険でない、始動操作装置を提供することである。本発明によれば、これは、独立請求項の特徴によって解決される。ブレーキペダルの操作による始動許可は、車両周囲に関して、アクセルペダルを短く踏むよりもずっと安全である。というのは、アクセルペダルを強く踏みすぎることは、運転者操作される上位制御として評価されて、車両は運転者が予測するよりもずっと強く加速され、それが周囲の衝突の危険をもたらす可能性があるからである。アクセルペダルをうっかりと蹴ることも、自己の車両を意図せずに移動させてしまう可能性がある。というのは、それによって静止状態からの始動許可が与えられてしまうからである。好ましい展開と形態が、従属請求項から明らかにされる。
【0005】
好ましくは、運転者がブレーキペダルを非作動位置から変位させた場合に、追従する車両が自立的に始動する。
【0006】
運転者がブレーキペダルを再び離した場合に、追従する車両が自立的に始動すると、さらに効果的である。
【0007】
特に好ましくは、予め定められた最小ペダル距離phiminを上回った場合に、追従する車両が自立的に始動する。
【0008】
好ましくは、ブレーキペダルへの予め定められた最小ペダル力を上回った場合に、追従する車両が自立的に再び始動する。
【0009】
さらに、ブレーキペダルが予め定められた最小操作時間よりも長く操作された場合に、追従する車両が自立的に始動すると、特に効果的である。
【0010】
特に重要なのは、本発明に基づく方法を、自動車の渋滞アシスタントまたは適応的な間隔ないし速度制御の制御装置のために設けられている、制御部材の形式で実現することである。その場合に、制御部材上にはプログラムが記憶されており、そのプログラムは計算装置上、特にマイクロプロセッサまたは信号プロセッサ上で遂行可能であって、本発明に基づく方法を実施するのに適している。従ってこの場合には、本発明は制御部材上に格納されているプログラムによって実現されるので、プログラムを有するこの制御部材は、プログラムを実施するのに適した方法と同様に、本発明を表す。制御部材として、特に電気的なメモリ媒体、たとえばリードオンリーメモリ、を使用することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の他の特徴、適用可能性および利点は、図面の図に示す、本発明の実施例についての以下の説明から明らかにされる。その場合に記載され、あるいは図示されているすべての特徴は、それ自体または任意の組み合わせにおいて、特許請求項におけるその要約あるいはその帰属に関係なく、かつ明細書ないし図面におけるその表現ないし表示に関係なく、本発明の対象を形成する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を用いて本発明の実施例を説明する。
【0013】
図1には、縦制御装置1が示されており、同装置は交通が渋滞した場合に制御すべき車両を静止状態まで制動し、前方を走行する、停止されていた交通が再び走行したことが認識された後に、制御すべき車両を再び自立的に移動させることができる。そのために縦制御装置1は、入力回路2を有しており、その入力回路を用いて縦制御装置1に入力信号を供給することができる。この入力信号は、特に、間隔センサ技術3に由来し、それはセンサ検出領域の内部で前方を走行する車両または物体を認識し、かつその間隔d、追従する車両長手軸に関する自己の相対速度vrelおよび延長された車両長手軸に関する認識された対象のアジマス角を求める。そのために1つまたは複数のセンサを、車両の前側に取り付けることができる。このセンサ技術は、たとえばレーダーセンサ技術、超音波センサ技術、ビデオセンサ技術、レーザーセンサ技術および/またはこれらのセンサ種類の組み合わせとすることができる。間隔センサ技術3によって求められた変量である間隔、相対速度およびアジマス角は、縦制御装置1の入力回路2へ供給される。さらに、操作装置4が設けられており、その操作装置によって縦制御装置1に制御信号を供給することができる。すなわち、縦制御装置1は、操作装置4によってオンオフすることができ、かつ所定の駆動パラメータおよび調節を行い、かつ変化させることができるので、車両の運転者は、縦制御装置1を自らの必要に応じて調節することができる。さらに入力信号として、速度信号Vが設けられており、その速度信号は車両の速度を求める速度センサ5によって発生される。自己の車両速度Vの認識によって、間隔センサ3によって認識された、前方を走行する物体の測定された相対速度vrelを絶対速度に換算することができるので、前を走行する車両の絶対速度も定めることができる。
【0014】
さらに、ブレーキペダルセンサ6が設けられており、そのブレーキペダルセンサはブレーキペダルの操作とブレーキペダルの操作の強度を記録して、入力信号の形式で縦制御装置1の入力回路2へ供給する。入力回路2によって縦制御装置1へ供給される入力量は、データ交換装置7によって計算装置8へ供給される。計算装置8は、たとえば、マイクロプロセッサまたは信号プロセッサであって、その上で本発明に基づく方法がプログラムの形式で遂行される。計算装置8は、縦制御装置1へ供給された入力量から、遂行されるプログラムに従って出力量を求め、その出力量がデータ交換装置7によって出力回路9へ供給される。出力回路9によって、縦制御装置1の出力量が後段に配置されている操作部材へ出力される。入力量に従って、計算装置8上で遂行される縦制御方法により、自己の車両が加速されるべきであることが検出された場合には、出力回路9を介して出力量が駆動装置のパワーを定める操作部材10へ出力される。混合気を圧縮する内燃機関の場合には、このパワーを定める操作部材10は、たとえば電気的に操作される絞り弁とすることができる。空気を圧縮する内燃機関の場合には、パワーを定める操作部材が噴射装置の燃料配量装置として形成されることが可能である。さらに、パワーを定める操作部材10は、駆動目的のために電動機を制御する制御回路であってもよい。車両が速すぎて、減速しなければならないことが検出された場合には、出力回路9を介して操作量が車両の減速装置11へ出力される。この操作量は、たとえばブレーキ制御装置11へ供給され、ブレーキ制御装置はそれに基づいて、車両のブレーキ装置を駆動するブレーキ圧またはブレーキ力を発生させるので、車両が減速される。さらに、出力回路9が始動要請信号を始動要請装置12へ出力することが可能である。
【0015】
止まっている先行の車両により自己の車両が静止状態まで制動されたことが認識され、さらに、先行する車両が再び始動し、自己の車両を加速してよいことが認識された場合には、自己の車両が加速される前に、運転者は、始動操作を操作することを要請される。それによって、場合によっては間隔センサ技術3によって検出できない、人または物体が自己の車両のすぐ前に存在しないことが保証される。車両の運転者は、変わらず車両運転の責任を保持しており、停止および始動機能を有する縦制御装置は単にアシスタント機能を引き受けるだけなので、運転者の始動操作が必要であって、それにより運転者はシステムに、運転者(彼)が交通事象をコントロール下においており、かつ車両の始動が可能であることを伝えることができる。始動操作を出力する、運転者に対する要請は、始動要請装置12によって発生される。この始動要請装置は、たとえば運転者の視野内の、点灯するコントロールランプあるいは車両のコンビネーションメータ内の明文表示とすることができ、そのコンビネーションメータ上に記号またはテキストが出力される。さらに、この始動要請装置12は、音響システムであってもよく、同システムは警告トーンまたは音声出力によって運転者に始動操作を要請する。同様に、始動要請が、光学的要請と音響的要請の組み合わせであることが可能である。渋滞追従アシスタントが能動化されており、自己の車両が停止した先行の車両によって同様に静止状態にあって、先行の車両が再び始動した場合に、始動要請装置12が能動化されて、運転者がブレーキペダルセンサ6を用いて始動操作を出力するまで待機される。ブレーキペダルセンサ6によって検出される始動操作は、たとえばブレーキペダルの操作であってもよく、あるいはブレーキペダルを離して、再び非作動位置へ戻ることであってもよい。さらに、ブレーキペダルをうっかりと軽く踏んだことが始動操作として評価されないようにするために、ブレーキペダルを、ブレーキペダルの最小ペダル距離が移動される大きさだけ変位させなければならないようにすることも可能である。それによってうっかりとした操作に対するシステムの安全性が向上する。さらに、ブレーキペダル6が予め定められた最小操作時間の間非作動位置から変位されていなければならず、あるいはこの最小操作時間の間、予め定められた最小ペダル距離よりも多く変位されなければならないようにすることも可能である。
【0016】
図2には、この方法のフローチャートが示されている。これは、ステップ13のスタートで開始され、それに続いてステップ14で、停止機能を有する縦制御(渋滞追従アシスタント)がオンにされているという条件が満たされていなければならない。満たされていない場合には、シーケンスはステップ15へ分岐して、そこで方法が終了される。ステップ14に従って停止機能を有する縦制御が満たされている場合には、方法はステップ16へ進んで、前方を走行する車両が停止したかどうかを調べる。これは、間隔センサ技術3によって速度センサ5の自己の車両速度Vを取り込んで定められる。前方を走行する車両が停止しておらず、まだ移動している場合には、ステップ16は否定へ分岐して、ステップ14において続行される。ステップ16において、前方を走行する車両が停止したことが検出された場合には、ステップ17において自己の車両が先行の停止した車両の後方に間隔dzielを有して停止される。これは、操作信号によって行われ、その操作信号が減速手段を制御して、その減速手段が車両の減速装置11に干渉し、その場合にこの操作信号は間隔センサ技術3の検出された測定量、操作装置4によって設定することのできる、入力された目標間隔および速度センサ5の自己の速度Vに従って計算装置8によって計算される。先行する車両が静止状態に留まる間、ステップ18は否定へ分岐して、ステップ18において続行されるので、待機ループが生じる。先行する車両が再び始動したことが認識された場合には、方法はステップ19へ分岐して、そこで縦制御装置1によって始動要請装置12による始動要請が運転者へ出力される。ブレーキペダルが操作されない間、ステップ20は否定へ分岐するので、ここでも待機ループが発生し、その中で始動要請はアクティブであり続け、縦制御装置は運転者のブレーキペダル操作を待機する。ステップ20において、ブレーキペダルにより始動操作が付与されたことが認識された場合に、方法はステップ21で続行されて、そこで縦制御が再び開始されて、前を走行する車両に対する間隔Dと自己の車両に対する前を走行する車両の相対速度Vrelに従って、目標速度に制御される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に基づく装置の実施形態を概略的に示すブロック図である。
【図2】本発明に基づく方法の実施形態を示すフローチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
間隔センサ(3)を有する、自動車の自動的な縦制御装置であって、前記間隔センサが少なくとも、前方を走行する車両に対する自己の、追従する車両の間隔(d)および/または後続の車両に関する相対速度(vrel)を求め、少なくとも1つの求められた値(d、vrel)から検出された、前方を走行する車両が停止されたかどうかが定められ、追従する車両が前を走行する車両の後方の間隔(dziel)に停止され、かつ前方を走行する車両が再び始動したことが認識された場合に、追従する車両の運転者は始動操作装置(6)を操作しなければならない、前記自動車の自動的な縦制御装置において、
始動操作装置(6)が、ブレーキペダルであることを特徴とする、自動車の自動的な縦制御装置。
【請求項2】
運転者がブレーキペダル(6)を非作動位置から変位させた場合に、追従する車両が自立的に始動することを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
運転者がブレーキペダル(6)を再び離した場合に、追従する車両が自立的に始動することを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項4】
予め定められた最小ペダル距離(phimin)を上回った場合に、追従する車両が自立的に始動することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
予め定められた最小ペダル力を上回った場合に、追従する車両が自立的に始動することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
ブレーキペダル(6)が、予め定められた最小操作時間(tmin)より長く操作された場合に、追従する車両が自立的に始動することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
自動車の自動的な縦制御方法であって、少なくとも前方を走行する車両に対する自己の、追従する車両の間隔(d)および/または追従する車両に対する相対速度(vrel)を求める、間隔センサ(3)によって、少なくとも1つの求められた値(d、vrel)から、検出された、前方を走行する車両が停止したか、が定められ、追従する車両が前方を走行する車両の後方の距離(dziel)に停止され(17)、かつ前方を走行する車両が再び始動したことが認識された場合に(18)、追従する車両の運転者は始動操作装置(6、20)を操作しなければならない、前記自動車の自動的な縦制御方法において、
始動操作装置(6)が、ブレーキペダル操作(20)であることを特徴とする、自動車の自動的な縦制御方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2007−533539(P2007−533539A)
【公表日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−508880(P2007−508880)
【出願日】平成17年2月9日(2005.2.9)
【国際出願番号】PCT/EP2005/050572
【国際公開番号】WO2005/102764
【国際公開日】平成17年11月3日(2005.11.3)
【出願人】(501125231)ローベルト ボッシュ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (329)
【Fターム(参考)】