説明

自動車用のドア閉鎖システム

本発明は、自動車用のドア閉鎖システムであって、アクチュエータ(4)を介して開放又は閉鎖操作可能なロック要素(6)と、アクチュエータ(4)をコントロールするための制御ユニット(2)とを備えたドア閉鎖システムに関する。本発明に従い、少なくとも1つのロック要素(6)にはロックポジションを検知するためのポジション監視手段(8)が付設されている。更に各ポジション監視手段(8)は、正常なロック状態が存在するかどうかをチェックするための点検手段と、ロック要素(6)の目標状態と実際状態が比較可能であるように作用接続されていて、それによりこれらの状態が一致しない場合には応答信号(R2)が生成可能である。従って、閉鎖過程が行なわれた後、車両の全てのドア及びリッドの正常なロックが簡単にチェックされ得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部に記載した、自動車(原動機付き車両;モータビークル)用のドア閉鎖システムに関する。
【背景技術】
【0002】
セントラルロック機能を備えた自動車用のドア閉鎖システム並びにセントラルロック機能を伴わない自動車用のドア閉鎖システムが知られている。閉鎖過程後に車両の全てのドア及びリッドが実際にも正常にロックされているかをチェックするためには、利用者がドアにおけるロックピンのポジションを信用し且つトランクルームリッドのロックを手動で検査するか、又は全てのドア及びリッドを車両の回りを巡回して手動で検査しなければならない。特に所謂電子キーを用いるシステムの場合、利用者による手動のチェックは問題となる。この種のシステムは自動で機能し、利用者(或いはキー)が車両に対して予め設定された距離にいると直ちに自動で開放過程を開始し、その結果、車両は完全自動でロック解除されるか、又はロック解除過程が準備され、利用者が開放ハンドグリップを操作すると直ちに車両が自動でロック解除される(特許文献1)。その逆に、キーが車両に対して予め設定された間隔範囲を離れると直ちに車両は自動でロックされる。従って利用者によるロックポジションの手動のチェックは、極めて手間をかけてのみ、即ち利用者が車両キーを携行していない場合にだけ、可能である。
【0003】
更に特許文献2から自動車用のドア施錠機構が知られていて、このドア施錠機構ではロック要素の開放位置が監視される。そのためにスイッチが設けられていて、このスイッチはロック要素の開放ポジションを検知し、この開放ポジションに達すると直ちに信号を発生し、この信号は、ロック要素の駆動モータ用の供給電流を遮断するために制御ユニットにより使用される。このようにして、駆動モータがブロック状態に作動して不必要に負荷されることが防止される。
【0004】
【特許文献1】DE19942485A1
【特許文献2】DE10155836A1
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の基礎を成す課題は、特に快適性と安全性に関して改善された、自動車用のドア閉鎖システムを創作することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の課題は、本発明に従い、請求項1に記載した全ての構成要件により解決される。この種のドア閉鎖システムは、ロック要素を開放或いは閉鎖するための電気駆動装置又は液圧駆動装置などの形式のアクチュエータと、アクチュエータをコントロールするための制御ユニット(例えば、別個のドア制御装置又は中央のモータ制御装置)と、ロック要素をポジション監視するためのポジション監視手段(例えば、光電子遮断柵、接近センサ、又はリミットスイッチ)とを含んでいる。更にこのシステムは、正常なロック状態が存在するかどうかをチェックするための点検手段を含んでいる。それにより、ロック要素の目標状態及び実際状態が、これらの状態が一致しない場合には応答信号が生成されるように比較される。この応答信号は、ホーンやヘッドライトなどのような信号発生器を直接的にコントロールするために使用されるか、又は信号発生器用のコントロール信号を発生させるための中間信号として用いられる。
【0007】
好ましくは、点検手段はドア制御装置又は中央制御装置の一部分として形成されている。これらの点検手段には、閉鎖命令及び開放命令であってこれらの命令を介してロック要素の対応する目標状態が定義されるという命令も、ポジション監視手段を介して検知されたロック状態であってこのロック状態を介してロック要素の各々の実際状態が定義されているというロック状態も提供される。これらの点検手段は、本発明に従い、これらの点検手段が、実際状態と目標状態のずれに基づき、正常でないロック状態(ロック命令が行なわれたにも拘らずロックされていない)を検知し、応答信号を生成するように形成されている。応答信号を生成するためには、例えば、車両の光源(ヘッドライト、方向指示器(フラッシャ)、テールランプ、車内照明具など)又は音源(ホーン)が適切な方式で所定の信号パターンによりコントロールされ得る。
【0008】
ポジション監視は様々な形式で行われ得る。第1の可能な実施形態では、センサを介してポジション監視を実現することが意図されていて、この際、それらのセンサはロック手段の実際のポジションを検知する。本発明の第2の可能な実施形態では、制御装置内部のデータを評価することによりポジション監視を実現することが意図されている。そのためには、例えば、アクチュエータをコントロールする制御装置の、或いは対応する別個に形成された点検手段又は制御装置内に組み込まれている点検手段の、制御装置内部の自己診断が援用され得る。特に、電気モータとして形成されているアクチュエータのスタート電流及び/又は作動電流及び/又はブロック電流の典型的な電流経過の評価が行われる。それによりロック要素又はアクチュエータの実際のポジションは検知されない。つまり、枠付け条件のチェックに基づき、ロック要素の目下のポジションが推測される。また、ポジション監視及び機能監視は、特にセンサ監視とソフトウェア監視の組み合わせによっても行われ得る。
【0009】
本発明の他の構成では、正常でないと検知されたロック状態が、自動車の搭載電子装置内及び/又は自動車キー内にも保存される。このようにして利用者は、一方では、例えばボードコンピュータ上で、どのロック要素が正常でなく閉じられたか、従って場合により故障しているかをいつでも呼び出すことができる。他方において利用者は、たとえこの利用者が車両から既に離れてしまっていても、自分のキーの照会に基づき、自分の車両が実際に(正常に)ロックされたかどうかをいつでもチェックすることができる。そのためにキーは、例えば所定のボタンを押すことにより照会され得て、情報が例えば発光ダイオードの点灯(緑:正常にロックされた、赤:正常にはロックされなかった)により表示され得る。
【0010】
本発明に従うドア閉鎖システムは、好ましくは中央ロック機能を有するシステムにおいて使用される。
【0011】
本発明に従い形成されたドア閉鎖システムにより、利用者は、ロックが完全に行なわれた後、或いはロック過程が完了した後、車両が実際にも正常に閉じられて保護されているか否かの応答を得る。例えば、ロック手段を駆動するための電気モータの形式のアクチュエータが故障しているため、又は単に挟まって動かないため、閉鎖過程が起動されたにも拘らず車両が正常にはロックされていない場合、光信号及び/又は警笛信号のような適切な措置によりこの状況が指摘される。キーにおける振動信号も応答信号として想定可能である。このことは、行なわれた光警告又は音警告にも拘らず自分の車両が正常にロックされたと利用者が思っている場合に特に有利である。この振動信号は、有利には、閉鎖命令が行われた後に(例えばボタン押圧による)確認により利用者の側でこの振動信号が抑制されない場合には常にある程度の時間遅延をもって起動され得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に、図面に基づき、本発明を詳細に説明する。
【実施例1】
【0013】
図1に概要として描かれている配線図は、車両ドア及び/又はトランクルームカバー及び/又はスライディングルーフ及び/又は別のリッドをロックするための電気モータの形式のアクチュエータ4をコントロールするための制御ユニット2を示している。アクチュエータ4を用い、ロック要素6が開閉操作可能である。各ロック要素6にはポジション監視手段8が付設されている。これらのポジション監視手段8は、リミットスイッチなどの形式のセンサとして、又は制御装置内部のデータを評価するためのソフトウェア手段8bとして、又はセンサとソフトウェア手段の組み合わせの形式をもって形成され得る。ポジション監視手段8は制御ユニット2と接続されていて、それにより制御ユニット2には常に少なくとも各ロック要素6のロックポジションが伝達される。検知されたロックポジションは、特に正常でないロックポジションが検知された場合、対応するロック要素6に対する対応関係と共に記憶手段2a内に保存可能である。これらの記憶手段2aは、例えば制御ユニット2又は中央制御装置の構成部分であり得る。
【0014】
更に、少なくとも1つのロック要素6の正常でないロック状態を信号化するために制御ユニット2に連結されている信号発生器10が設けられている。キー12を介し、ロック過程を起動するために閉鎖信号Sが発生可能である。閉鎖過程は、図示されているように遠隔信号を介し、又は手動でも行なわれ得る。制御ユニット2とアクチュエータ4とポジション監視手段8を備えたシステムは、好ましくは各ロック要素6に付設されている。この際、個々の制御ユニット2(ドア制御装置)は、バスシステムを介し、他の制御装置、特に中央制御装置と接続されている。選択的にそれらの制御ユニット2は省略され得て、中央制御装置内の対応する機能で置換され得る。
【0015】
図2には、図1に従う配線図に付属する、閉鎖過程のための時間グラフが示されている。閉鎖過程の開始により、時点t1において、期間td1の間、閉鎖信号Sが発生される。好ましくは、実質的にそれと同時に、それにより読取信号Lが、期間td2の間、制御ユニット2内で生成される。時点t3における読取信号Lの下降エッジ(立下り)のときに各ロック要素6のロックポジションが照会される。そのためにロック要素6の個々のロック信号VEが読み込まれる。
【0016】
全てのロック要素6が正常にロックしている場合、各ポジション監視手段8は対応する信号VE1(ここではハイ(high))を提供する。この場合、制御ユニット2は信号R1(ここではロー(low))を提供し、この信号は利用者にとって知覚可能な応答信号を起動するものではない。1つの又は複数のロック要素6のロックが正常でない場合、正常にロックされていないロック要素6の各ポジション監視手段8はこの状態に対応するロック信号VE2(ここではロー(low))を提供する。ロック信号VE2に基づき、照会の時点(ここでは読取信号Lの下降エッジ)において応答信号R2が生成される。ロック状態の前述の照会は単に例として理解されるべきである。つまり追加的な読取信号Lは省略され得て、閉鎖信号Sの下降エッジのときに照会を行ってもよい。また、照会を閉鎖信号Sに全く依存しないで実現することも想定可能である。この場合には、別個の検査信号を用いるだけで、目下存在しているロック要素6のロック状態が照会され、この状態が、最後に出された(保存された)命令(閉鎖命令−ロック・アクティブ/開放命令−ロック・インアクティブ)と一致するかがチェックされる。
【0017】
図3には、電気モータの形式のアクチュエータ4をコントロールするための、時間に関する様々な電流経過が描かれている。
【0018】
第1の電流経過I1(t)は、アクチュエータ4によりコントロールされるロック要素6の正確で誤りのない閉鎖過程時における、アクチュータ4のためのコントロール電流を示している。この際、誤りのない閉鎖過程時に生成された、アクチュエータ4のためのコントロール電流の電流経過は、実質的に3つの段階に分割される。第1段階には、モータの運転開始時、短期の間、増加されたスタート電流が存在し、このスタート電流は、その後、モータの通常稼動時に調節される作動電流に適応する。第2段階には、モータの運転段階中、全時間に渡り、調節された作動電流が存在する。第3段階においてモータはその終端位置に達したが変わらずに電流供給され、その結果、モータは、強く増加された負荷(即ちモータがブロック状態に作動すること)に基づき、強く増加された電流を引き入れる。この電流経過は極めて特徴的であり、従って簡単に監視され得る。この経過における対応的なずれは、誤りの存在を直接的に推測させる。制御手段は、好ましくは、検知された電流経過に基づき、存在する誤りの種類が推測され得るように形成されている。
【0019】
2番目、3番目、4番目の電流経過は、各々、正確でない閉鎖過程時の電流経過を示している。
【0020】
第2の電流経過I2(t)は、次のような閉鎖過程を具現化している、即ち、この閉鎖過程では、例えば、モータにより駆動すべきロック要素6がブロックされていて、それによりモータコントロールの始めから運動され得ず、従ってモータが始めからブロック状態に作動し、明らかに増加されたブロック電流を全コントロール時間に渡って引き込んでいる。
【0021】
第3の電流経過I3(t)では、モータが、故障に基づき、ロック要素6から機械的に連結解除されている。従ってモータは負荷を伴わずに作動し、全コントロール時間に渡って明らかに減少された電流を引き込んでいる。更にモータはコントロール時間の終わりごろにおいてもブロック状態には作動せず、その結果、コントロール時間の終わりごろにおける特徴的な電流上昇は見られない。
【0022】
最後のグラフは、モータが電気的に解放されている場合の電流経過I4(t)と、モータが電気的に短絡されている場合の電流経過I4’(t)を示している。
【0023】
誤りのある全ての電流経過は、ロック要素6の正確な閉鎖過程のための電流経過とは明らかに区別され、その結果、前もって定義された時点に電流値を単純に照会することより、誤りのある閉鎖過程の存在及び存在する誤りの種類が推測され得る。特に、スタート電流(段階I)及びブロック電流(段階III)の頂点におけるコントロール電流のための電流値の照会により、並びに好ましくは段階IIの中央領域における作動電流の照会により、正確な又は正確でない閉鎖過程の存在に関して情報提供され、正確でない閉鎖過程が存在する場合には、存在する誤りの種類に関して情報提供が行われる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の可能な実施形態を示す概要図である。
【図2】本発明に従うドア閉鎖システムの閉鎖過程のための時間グラフを示す図である。
【図3】例として、ロック要素の正確な及び正確でない閉鎖過程のための、アクチュエータのコントロール時の様々な電流経過を示す図である。
【符号の説明】
【0025】
2 制御ユニット
2a 記憶手段
4 アクチュエータ(電気モータ)
6 ロック要素
8 ポジション監視手段
10 信号発生器
12 キー
12a 記憶手段
12b 表示手段
S 閉鎖信号
VE ロック信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車用のドア閉鎖システムであって、
− アクチュエータ(4)を介して開放又は閉鎖操作可能なロック要素(6)と、
− アクチュエータ(4)をコントロールするための制御ユニット(2)と
を備えたドア閉鎖システムにおいて、
− 少なくとも1つのロック要素(6)には、この少なくとも1つのロック要素(6)のロックポジションを検知するためのポジション監視手段(8)が付設されていて、
− 各ポジション監視手段(8)が、正常なロック状態が存在するかどうかをチェックするための点検手段と、ロック要素(6)の目標状態と実際状態が比較可能であるように協働し、これらの状態が一致しない場合には応答信号(R2)が生成可能であること
を特徴とするドア閉鎖システム。
【請求項2】
各ポジション監視手段(8)がセンサとして形成されていることを特徴とする、請求項1に記載のドア閉鎖システム。
【請求項3】
各ポジション監視手段(8)が、制御装置内部のデータを評価するためのソフトウェアの形式で実施されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載のドア閉鎖システム。
【請求項4】
ポジション監視手段(8)が、コントロールすべき各アクチュエータ(4)のための電流経過の評価、特にスタート電流の電流経過及び/又は作動電流の電流経過及び/又はブロック電流の電流経過の評価を保証するように、ポジション監視手段(8)が形成されていることを特徴とする、請求項3に記載のドア閉鎖システム。
【請求項5】
全てのロック手段(6)のロック状態を保存するための記憶手段(2a)が設けられていることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載のドア閉鎖システム。
【請求項6】
少なくとも最後のロック状態を保存及び表示するための記憶手段(12a)及び表示手段(12b)を備えたキー(12)が設けられていることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載のドア閉鎖システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−503538(P2007−503538A)
【公表日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−524278(P2006−524278)
【出願日】平成16年8月13日(2004.8.13)
【国際出願番号】PCT/EP2004/009095
【国際公開番号】WO2005/021903
【国際公開日】平成17年3月10日(2005.3.10)
【出願人】(391009671)バイエリッシェ モートーレン ウエルケ アクチエンゲゼルシャフト (194)
【氏名又は名称原語表記】BAYERISCHE MOTOREN WERKE AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】