説明

自己クリーニング照明装置

本発明は、光源と、少なくともこの光源が発する放射線の一部分が通過するのを可能にする壁であって、その2つの面のうちの少なくとも一方の一部を光触媒活性層により覆われた壁とを含む、自己クリーニング照明装置に関する。本発明は、一番弱い照明条件下で、当該層の光触媒活性が、有機の汚れを分解して当該層に付着しない容易に除去できる粒子にするのに、及び/又はこの層に親水性を付与するのに、十分高いことを特徴とする。本発明はまた、上述の装置を製造する方法、この装置に提供される半透明の壁、そして当該装置をトンネルの照明、公共の照明、空港滑走路の照明、屋内の照明のために、あるいは輸送用車両のヘッドランプ又は指示灯用に利用することにも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大気汚染、特に有機汚染に暴露される種類の照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ヨーロッパ特許第0887104号明細書には、照明装置用の半透明保護カバー上のTiO2コーティングの一般原則が記載されている。TiO2は、特にアナターゼ型に結晶化している場合、光触媒活性、すなわち紫外線放射下でラジカル酸化反応を触媒する能力を示す。炭化水素残分、例えば自動車の排気ガス由来のものを、このようにして、元の炭化水素より付着性が低く脂肪性の低いより小さな粒子に分解することができる。
【0003】
更に、TiO2は親水性を有する。TiO2上に付着すると、水は、上述の分解生成物を最適に分布、溶解し、次いで流体力学的効果により除去することの可能な膜の形態になる。
【0004】
従って、例えばヨーロッパ特許第850204号明細書から知られているとおり、自己クリーニング効果を生み出すために、TiO2のラジカル酸化触媒作用と親水性の間には相乗効果があり、塗布される基材がガラスである場合これがまさに鍵であるが、その理由は最良の光学透明性がこのようにして永久に維持されるからである。
【0005】
ヨーロッパ特許第887104号明細書は、幅広い系統のTiO2調製プロセスに言及している。それは、チタンアルコキシド溶液による、板ガラスの従来の強化処理である650〜800℃での30秒から5分間の熱処理についてより詳細に言及している。
【0006】
そのようなプロセスの目的は、トンネルランプ保護のため半透明カバーへ塗布するために、主にアナターゼ型に結晶化したTiO2を製造することである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
発明者らは、この分野の用途も研究し、トンネルランプの自己クリーニングコーティングの有効性が、特にトンネル内の位置(トンネルの端からの距離)に依存し、且つ特に光源がUVA成分(315〜400nmの波長)を持つことも持たないこともあるという事実のため光源の種類に依存することに気付いた。アナターゼ型に結晶化したTiO2を活性化できるのは基本的にこれらの波長である。
【0008】
トンネルの一端の近くでは、残存UVAの量が光触媒作用によりTiO2を活性化するのに十分であることができる。更に、ランプ自体の照明源がUVA成分を有することがあり、TiO2を活性化するのに十分であるその一部は、その表面がトンネルの雰囲気と接触している限り、半透明カバーを通して伝わることができる。これは蛍光タイプのランプの場合である。
【0009】
しかし、トンネルの両端からの距離が遠い場合、及び例えばナトリウムランプの場合などランプの発する光がUVA成分をほとんど又は全く持たない場合、TiO2を生成させる上記のプロセスは、この生成プロセスにおいて明らかにされていない特定の操作条件が可能にするのでない限り、望ましく且つ有用な自己クリーニング効果が観察されるに十分高い光触媒活性をもつ生成物を生み出さない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この問題を解決するため、本発明の対象とするのは、光源及び前記光源の発する放射線の少なくとも一部分が通過する壁を含んでなる照明装置であり、前記壁の2つの面の少なくとも片方の少なくとも一部分上に光触媒活性層がコーティングされている照明装置であって、最低照明(illumination)条件下で前記層の光触媒活性が、有機の汚れを分解して、それを前記層に付着せずそれから容易に除去可能な粒子にし、及び/又は前記層に親水性を与えるのに十分高いことを特徴とする照明装置である。
【0011】
「最低照明条件」という表現は、ここでは、光触媒活性層が、照明装置の外部の雰囲気からも、UVA成分をほとんど又は全く持たない光源からも、UVAを受け取らないこと言う。
【0012】
従って、発明者らは、可視光又はUVBなどのUVA以外の波長での低照度のもとですら、脂肪質で付着性のある炭化水素蒸気を、空気力学的効果(非常に少ない通風)又は流体力学的効果(液体のしぶき)により除去することができる微細な非付着性のホコリの粒子に分解する性質を有するほど光触媒活性の高い層を、特に周囲雰囲気と接触する表面に設けたランプを作製した。
【0013】
この非常に高い光触媒活性は、著しい親水性によっても明らかである。本発明を説明する文脈中に見られる、湿潤性とも呼ばれるこの性質は、存在する汚れが、低脂肪性であり、前記活性層によりコーティングされていないランプ上に存在する汚れのラジカル分解に由来する生成物からなるという事実の結果でもある。
【0014】
照明系の壁はどのような標準的な形態もとるが、材料及び利用される製造プロセスに応じて、実質的に平面であったり、大きく又は小さく曲がっていたり、鋭い角さえ有する。
【0015】
最低光触媒活性基準によると、最もよく知られる光触媒TiO2層により示されるものをはるかに超え、本発明による層はTiO2を含むことが好ましく、その光触媒活性は、365nmを中心とする波長で50W/m2パワーの放射下で、曇りの測定により求められTiO2の量に関して表される、前記層上に付着したパルミチン酸の消失速度が少なくとも10nm・h-1・μg-1・cm2である。
【0016】
本発明の第1の主な実施形態において、前記照明装置のコーティングされた壁は基本的にガラスでできており、特に、50×50mmの面積が少なくとも40の破片に割れる(自動車用強化ガラスの基準R43)、特に60を超える破片に割れるような強化ガラスからできている。このように選択すると、発せられる光の透過が最大になり、万一ガラスが割れた場合の公衆の安全も保証される。この安全上の側面は、ガラスが少数の破片に割れ、そうすると知られているとおり、それらの破片の端がより鋭くなることにより台なしにされる。
【0017】
この第1の実施形態では、例えば光源により加熱された場合起こりやすい、アルカリ金属(特にナトリウム)がガラス中をその表面へ移動する問題を考慮しなければならない。ヨーロッパ特許第850204号明細書で扱われているとおり、アルカリ金属はTiO2コーティングの光触媒活性に影響を与える。これを改善する第1の手段は、本発明によれば、前記光触媒活性層に向いているその表面の少なくとも1領域において、前記ガラス壁のアルカリ金属酸化物及びアルカリ土類金属酸化物の全含量が15重量%を超えないとともに、酸化ナトリウム含量が10重量%を超えない点にある。
【0018】
このように脱アルカリされたソーダ石灰シリケートガラスは、国際公開第94/07806号パンフレット及び国際公開第94/07807号パンフレットに記載されているとおり、種々の技術、特にコロナ放電などの電気的技術を利用する処理により得られる。
【0019】
本発明の第2の主な実施形態において、前記壁は基本的に、透明なプラスチック又は組み合わせた数種のプラスチックでできている。好適なそのようなプラスチックは、例えば、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリビニルブチラール、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、アイオノマー樹脂、例えばポリアミンにより中和されているエチレン/(メタ)アクリル酸コポリマーなど、シクロオレフィンコポリマー、例えばエチレン/ノルボルネン又はエチレン/シクロペンタジエンコポリマーなど、ポリカーボネート/ポリエステルコポリマー、エチレン/酢酸ビニルコポリマー、及び類似のコポリマーであり、それらはそれ自体でもブレンドであってもよい。
【0020】
もちろん、約650℃又はそれ以上の光触媒層の作製温度は、これらのプラスチック上への被着とは相容れない。逆に言うと、本発明による非常に活性の高い層は、例えば250℃を超えない、より穏やかな温度で、あるいは周囲温度でさえも、製造可能である。従って、プラスチックに何らかの影響を与えることなく、プラスチックをそれによりコーティングすることが可能である。
【0021】
上述の2つの主な実施形態のそれぞれにおいては、特にケイ素を基にした層を、前記壁と前記光触媒活性層の間に挿入することが有利である。この中間層は、
・壁がガラス製である場合、アルカリ金属のガラスからの拡散を防止するバリア層であり、上述の問題に対する第2の解決法を構成し、すなわち、溶融スズの浴により支持されるフロートガラスの帯上への熱CVDにより、マグネトロンスパッタリングなどの真空技術により、又はゾルゲル法などにより製造される、シリカ、及びオキシ炭化ケイ素又はオキシ窒化ケイ素などの誘導体、すなわちxが2より小さいSiOxからできている中間層であり、そして
・壁がプラスチック製である場合、この場合には必須である耐引掻層、すなわちプラズマ化学気相成長(PE−CVD)、電子線蒸着、マグネトロンスパッタリング、イオン化学気相成長(ion−enhanced CVD)、イオンビームCVDなどによるSiOCH(N)中間層である。
【0022】
知られているとおり、耐汚れ効果は、所定の光触媒活性組成物の活性層の厚さと相関関係があるため、この厚さは100と1000nmの間であるのが有利であり、TiO2層の表面密度は1と100μg/cm2の間、好ましくは2と65μg/cm2の間である。
【0023】
ラジカル酸化反応を触媒する能力と親水性との相乗効果から十分に利益を得るために、本発明による照明装置は、活性層に液体を噴霧する手段を含むのが有利であり、これは、例えば光触媒層のない状態で、一部の自動車のヘッドライトに既に設けられているものである。
【0024】
好ましくは、照明装置の半透明壁は、少なくとも前記光源とは反対の面に、光触媒活性層がコーティングされている。本発明の背景状況で優先的に解決するように意図される最も重要なもの(大気汚染)は、照明装置の外表面の汚染の問題である。
【0025】
しかし、密閉されていないエンクロージャ中に光源が保護されている場合、この光源に向いている前記壁の面は、ある種の有機汚染の影響を受けやすくなることがある。従って、その面を光触媒活性層によりコーティングすることは除外されない。この場合、当該層を活性化できる光源からの放射線の比率は反対面の層よりもはるかに高く、比較的大きな比率の放射線が壁を透過しない。
【0026】
優れた結果は、特にTiO2粒子よりも小さい寸法の粒子形態の、Fe、Nb、Ta、Pt、Rh、Ag、Pd、Sn、Cd、W、Ce、Zr、Cu、Ru、Mo、Al、Bi、V、Co及び/又はNi、任意にそれらの酸化物及び/又は塩をドープされ、それと完全に混合され又は混ぜ合わされているTiO2を含んでなる活性層で得られる。
【0027】
ドーピングは、吸収帯の増加及び/又は電荷キャリア数の増加及び/又は光触媒反応の効率及び反応速度の上昇により、酸化チタンによる光触媒効果を増大する。
【0028】
ドーパントは、凝集してナノ粒子になっている酸化チタン微結晶間に挿入されている、すなわちその中に組み込まれている小粒子からなってもよく、TiO2ナノ粒子の外表面上に分布している小粒子であってもよく、又は光触媒活性層をコーティングする薄層であってもよい。
【0029】
本発明の対象は、上述の照明装置を製造する方法でもあり、この方法では、前記光触媒活性層を、ゾルゲル法、化学気相成長(CVD)又は大気圧プラズマ化学気相成長(APPECVD)、又は真空又は減圧下での、特に磁場陰極スパッタリング(又はマグネトロンスパッタリング)により形成する。
【0030】
ゾルゲル法は、複雑な形状の壁上への付着に特に好適である。
【0031】
高い光触媒活性の層を製造する一つの好ましい方法によると、これは、以下のもの、すなわち、
・当該層のメソ多孔性構造を構成する本質的に無機質の物質の少なくとも1種の前駆体及び少なくとも1種の有機構造剤(structuring agent)を含んでなる液体組成物の調製、
・有機構造剤周囲での前駆体の析出及び前駆体から得られる分子の成長、
・直径が0.5と100nmの間である、随意的にドープされた酸化チタンの基本微結晶又はナノ粒子の前記液体組成物への添加、
・塗布すべき表面への当該組成物の塗布、及び
・有機構造剤を除去し、酸化チタン微結晶をその完全性を本質的に維持しながらメソ多孔性構造に取り入れ、そしてそれらのいくつかがナノ粒子としてその中で凝集するのを可能にすること、
を含むゾルゲル法によりメソ多孔性構造として形成される。
【0032】
ガラスの通常の強化を保つため、この方法を実施するときは温度は250℃を超えないことが好ましい。従って、構造剤の除去工程は、250℃への2時間の加熱又は周囲温度でのUVA照射とすることができる。
【0033】
本発明のこのほかの対象は、
・上述の照明装置向けのガラス又はプラスチックを基礎材料とする壁、及び
・トンネルの照明、公共の照明又は空港滑走路の照明、あるいは陸上、水上又は空中の輸送機関、特に自動車用のヘッドライド又はシグナルライトへの、そしてまた屋内照明への、上記照明装置の利用、
である。
【0034】
本発明を以下の実施例により説明する。
【実施例】
【0035】
まだフロートガラスの帯の形態にあるガラス上に、便宜上SiOCとして示す(コーティング中の実際の酸素及び炭素含量は測定せずに)オキシ炭化ケイ素を基礎材料とする副層を付着した。この副層はSi前駆体を使用してCVDにより付着し、詳細には、ガラスがまだ約550〜600℃の温度であるうちに、窒素で希釈したSiH4/エチレン混合物を使用し、フロート室中で、板ガラス製造ラインのフロートガラスの帯の上方に横向きに配置したノズルを利用して付着した。得られたコーティングは、厚さが約50nm、屈折率が約1.55であった。このようにして得られたアルカリバリアのSiOCの副層を設けたフロートガラスの試料を、トンネルランプカバーの寸法に切断した。これらの試料を洗浄し、すすぎ洗いし、乾燥し、そして45分間のオゾン/UV処理を施した。
【0036】
曲げ/強化処理を施すガラスでは、フロート室中でのCVDによるSiOCの副層に代えて、実質的に冷たい状態又は250℃を超えない温度における曲げ強化ガラス上でのその後のゾルゲル法によるSiO2層を用い、強化の利益を維持することが可能であった。
【0037】
この層は、実際にはアルカリ金属拡散バリア機能においてCVDによるSiOC層と同等であった。
【0038】
メソ多孔性構造のコーティングを副層上に形成した。
【0039】
第1工程において、22.3mlのテトラエトキシシラン、22.1mlの無水エタノール、及び脱塩水中のHCl 9ml(pH1.25)を、フラスコ中で溶液が透明になるまで混合し、次いでフラスコを60℃の水浴中に1時間置くことにより、液体処理組成物を得た。
【0040】
第2工程において、上記で得られたゾルに、Pluronic PE6800の商標でBASFにより販売されているポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンブロックコポリマー(分子量8000)の溶液を、PE6800/Siモル比が0.01になるような比率で加えた。これは、3.78gのPE6800、50mlのエタノール及び25mlのゾルを混合して得られた。
【0041】
アナターゼ型に結晶化した約50nmの大きさのTiO2ナノ粒子を、こうして得られた液体組成物に、試料上への被着の直前に加えた。被着は、試料あたり3mlの初期量でスピンコートすることにより実施した。(他の同等の被着技術は、ディップコーティング、スプレーコーティング、薄層コーティング、ロールコーティング、フローコーティングなどである。)
【0042】
次いで、試料を250℃で2時間加熱した。
【0043】
このように形成したコーティングの細孔は4〜5nmの大きさであった。
【0044】
Ti/Si原子比は、メソ多孔性コーティングのSIMS分析により、最初の液体組成物のそれと正確に同じであると確認された。SIMS分析により、ナノ粒子がコーティングの3次元に均一に分布していることも確認された。
【0045】
nmで表すコーティングの厚さtは、SIMSプロファイル及びSEM顕微鏡写真から測定した。
【0046】
μg/cm2で表すTiO2の量は、蛍光X線により測定した。
【0047】
光触媒活性は以下の方法で測定した。
1.約15cm2のコーティングで試験を実施した。
2.試料の重さを量り、基材の厚さ、光透過率TL及び曇り度Td(この2つは両方とも%で表す)を測定した。
3.パルミチン酸溶液(クロロホルム1リットルにつき8グラムの酸)を、垂直な基材上に、ガラス/スプレー距離20cmで、3〜4回連続に行き来させてスプレーすることにより被着させた。
4.被着したパルミチン酸のナノメートルで表す厚さを測定するため、パルミチン酸被着後の試料の重さを量った。
5.被着後の光透過率TL及び曇り度Tdを測定した。
6.約50W/m2の強度のUVAのもとでの照射時間の関数としての曇り度の変化を測定した。
7.曇り度が50%低下した時間をグラフから求めた(この時間をT1/2(消失)と呼ぶ)。そして、
8.コーティングの光触媒活性を、
v(nm/h)=(パルミチン酸厚さ(nm))/(2×T1/2(消失)(h))
のように定義されるパルミチン酸の消失速度v(nm/h)として求めた。
【0048】
コーティング中のTiO2の量に対する光触媒活性の値も測定した。最後に、光学的性質、すなわち光反射率RL及び曇り度Td(%)を測定した。
【0049】
Ti/Si比は1に等しかった。
【0050】
以下の結果が得られた。
t=454nm
TiO2=33.3μg/cm2
v=620nm/h
v/TiO2=18nm・h-1・μg-1・cm2
L=9.7%
d=0.3%
【0051】
実際的にUVAを放射しない2つのナトリウムトンネルランプ、及び2つの蛍光ランプに、実施例により処理したガラスカバーを備え付けた。
【0052】
上述のタイプのそれぞれの2つのランプに、未処理のフロートガラスカバーを備え付けた。
【0053】
処理したガラスカバー及び未処理のガラスカバーを備えたそれぞれのタイプのランプを、一方はトンネルの入口領域に、他方は外部雰囲気からUVAを事実上全く又はほとんど受け取らないトンネルの中央領域に、84日間別々に配置した。
【0054】
処理したガラスを取り除く際には、トンネル内に存在しないUVAに曝されないよう注意をはらった。
【0055】
ランプは常に稼働していたわけでなく、トンネルに100%の時間照明がついていることは稀で、平均で1日当たり9時間30分であった。
【0056】
処理したガラスは設置の時完全に濡れていた。
【0057】
カバーを以下の方法で調べた。
・汚染についての目視観察。
・面積5cm2の表面に被着したホコリの布での除去。これは汚れの状態を明らかにし、「イージークリーン」機能の評価を可能にした。
・2、3滴の脱イオン水をガラス表面に被着することによる親水性の評価。
【0058】
結果を以下の表に示す。
【0059】
【表1】

【0060】
【表2】

【0061】
入口領域での挙動の違いは以下により説明可能である。
・トンネルに入りそしてTiO2層をより効果的にするUVAが存在すること、及び
・中央領域よりも汚染の閉じ込めが少ないこと。
【0062】
中央領域では、処理したものでもガラスの汚染が見られ、親水性は処理したガラスの場合に維持されている。しかし、蛍光ランプを含む処理した照明器具(UVAの放射、従って層の活性化)の場合、汚染は、表面から非常に容易に除去できる乾燥した汚れの形態で存在する。未処理のガラスでは、付着性の高い脂肪性の汚染が観察された。
【0063】
従って、発明者らは、最低照度及び最高汚染条件下できれいな状態のままである及び/又は清掃するのが容易なランプを提供した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源及び前記光源が発する放射線の少なくとも一部分を通過させる壁を含んでなる照明装置であり、前記壁の2つの面の少なくとも片方の少なくとも一部分上に光触媒活性層がコーティングされている照明装置であって、最低照明条件下で前記層の光触媒活性が、有機の汚れを分解して、それを前記層に付着せずそれから容易に除去可能な粒子にし、及び/又は前記層に親水性を与えるのに十分高いことを特徴とする照明装置。
【請求項2】
前記層がTiO2を含むこと、そしてその光触媒活性が、365nmを中心とする波長で50W/m2パワーの放射下で、曇り度測定により求められTiO2の量に対して表される、前記層上に付着したパルミチン酸の消失速度を少なくとも10nm・h-1・μg-1・cm2とすることを特徴とする、請求項1に記載の照明装置。
【請求項3】
前記壁が基本的にガラス製であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の照明装置。
【請求項4】
前記壁のガラスが、50×50mmの面積が少なくとも40の破片に割れるように強化されていることを特徴とする、請求項3に記載の照明装置。
【請求項5】
前記壁のガラスが、50×50mmの面積が60を超える破片に割れるように強化されていることを特徴とする、請求項4に記載の照明装置。
【請求項6】
表面が前記光触媒活性層に向いている少なくとも一つの領域において、前記ガラスの壁のアルカリ金属酸化物及びアルカリ土類金属酸化物の全含量が15重量%を超えないとともに、酸化ナトリウム含量が10重量%を超えないことを特徴とする、請求項3に記載の照明装置。
【請求項7】
前記壁が基本的に、透明プラスチック又は組み合わせた数種のプラスチックでできていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の照明装置。
【請求項8】
特にケイ素を基礎材料とする、ガラスからのアルカリ金属の拡散を防ぐバリア層又は耐引掻層が、前記壁と前記光触媒活性層の間に挿入されていることを特徴とする、請求項3又は7に記載の照明装置。
【請求項9】
前記光触媒活性層が100と1000nmの間の厚さを持ち、1〜100μg/cm2、好ましくは2〜65μg/cm2のTiO2を含むことを特徴とする、請求項1から8までの1つに記載の照明装置。
【請求項10】
前記光触媒活性層上に液体を噴霧する手段を含むことを特徴とする、請求項1から9までの1つに記載の照明装置。
【請求項11】
前記壁が、少なくとも前記光源とは反対の面に、前記光触媒活性層をコーティングされていることを特徴とする、請求項1から10までの1つに記載の照明装置。
【請求項12】
前記層が、特にTiO2粒子よりも小さい寸法の粒子形態の、Fe、Nb、Ta、Pt、Rh、Ag、Pd、Sn、Cd、W、Ce、Zr、Cu、Ru、Mo、Al、Bi、V、Co及び/又はNi、随意的にそれらの酸化物及び/又は塩をドープされ、それと完全に混合され又は混ぜ合わされているTiO2を含むことを特徴とする、請求項1から11までの1つに記載の照明装置。
【請求項13】
請求項1から12までの1つに記載の照明装置を製造するための方法であって、前記光触媒活性層を、ゾルゲル法により、化学気相成長(CVD)又は大気圧プラズマ化学気相成長(APPECVD)により、あるいは真空又は減圧下での、特に磁場陰極スパッタリング(又はマグネトロンスパッタリング)により形成する、請求項1から12までの1つに記載の照明装置の製造方法。
【請求項14】
前記光触媒活性層を、
・前記層のメソ多孔性構造を構成する本質的に無機質の物質の少なくとも1種の前駆体及び少なくとも1種の有機構造剤を含んでなる液体組成物の調製、
・有機構造剤周囲での前駆体の析出及び前駆体から得られる分子の成長、
・直径が0.5と100nmの間である随意的にドープされた酸化チタンの基本微結晶又はナノ粒子の前記液体組成物への添加、
・塗布すべき表面への当該組成物の塗布、及び
・有機構造剤を除去し、酸化チタン微結晶をその完全性を本質的に維持しながらメソ多孔性構造に取り入れ、そしてそれらのいくつかがナノ粒子としてその中で凝集するのを可能にすること、
を含むゾルゲル法により、メソ多孔性構造として形成する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
特にガラスの通常の強化を維持するように、250℃を超えない温度で実施される、請求項13又は14に記載の方法。
【請求項16】
トンネルの照明、公共の照明又は空港滑走路の照明への、あるいは陸上、水上又は空中における輸送機関、特に自動車向けの、ヘッドライド又はシグナルライトへの、そしてまた屋内照明への、請求項1から12までの1つに記載の照明装置の利用。

【公表番号】特表2007−523740(P2007−523740A)
【公表日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−548361(P2006−548361)
【出願日】平成17年1月7日(2005.1.7)
【国際出願番号】PCT/FR2005/050009
【国際公開番号】WO2005/070540
【国際公開日】平成17年8月4日(2005.8.4)
【出願人】(500374146)サン−ゴバン グラス フランス (388)
【Fターム(参考)】