説明

自然に生成しないプロスタグランジンを使用した脱毛症治療用組成物及びその治療方法

【課題】ヒト及び動物において発毛を促進し、望ましくない重大な副作用を引き起こさない適切なプロスタグランジン類縁体を選択して提供する。
【解決手段】哺乳動物における脱毛症を治療する方法は、プロスタグランジンF類縁体を含有する組成物を使用する。組成物は皮膚に局所的に適用することができる。組成物は、脱毛を抑制し、脱毛を改善して、発毛を促進することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、哺乳動物における脱毛症を治療するための組成物及び方法に関する。更に詳細には、本発明は、脱毛を抑制するか、改善するか、又はその両方を行って、発毛を促進するための組成物及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
脱毛症は一般的な問題であり、例えば、自然に生じたり、又はガンなどの症状を緩和することを目的としたある種の治療薬を使用することにより化学的に促進されるものである。このような脱毛症は、部分的又は全体的な脱毛を引き起こす毛髪の再生不良を伴うことが多い。
頭皮における発毛は連続して起こるものではなく、むしろ発育と休止の期間を交互に繰り返す活性サイクルにより起こるものである。このサイクルは主に、成長期、退行期、及び休止期という3つの段階に分けられる。 成長期はサイクルの発育段階であり、毛嚢が真皮に深く浸透し、細胞が分化して急速に増殖し、毛髪を形成することを特徴とする。次の段階は退行期であり、これは細胞分裂が停止し、この間に毛嚢が真皮において退行し、発毛が停止することを特徴とする推移段階である。次の段階の休止期は休止段階として特徴づけられ、この間に退行した毛嚢は真皮乳頭細胞を固く包み込んだ毛根を有する。休止期には、毛根中で急速に細胞が増殖し、真皮乳頭が膨張し、基底膜成分が同化して、新たな成長期が始まる。発毛が停止すると、休止期及び成長期の毛嚢はほとんどが使用されないため、全体的又は部分的な脱毛症が生じる。
【0003】
毛髪の発育を促進又は延長するなど、毛髪を再生させる試みが行われてきた。現在では、男性型脱毛症の治療のために、米国食品医薬品局に承認された2種類の医薬品がある。これは、局所用ミノキシジル(ROGAINE(登録商標)として Pharmacia & Upjohn から市販されている)及び経口用フィナステライド(PROPECIA(登録商標)として Merck & Co., Inc.から市販されている)である。しかし、安全性の問題及び有効性が限られていることなどの要因から、有効な発毛誘発物質の探索が引き続き行われている。
【0004】
甲状腺ホルモンであるチロキシン(「T4」)は、ヒトの皮膚においてセレンタンパク質の一種である脱ヨウ素酵素Iによりサイロニン(「T3」)に変化する。セレンが欠乏すると、脱ヨウ素酵素Iの活性が低下するため、T3の濃度が低下する。このT3濃度の低下が脱毛症に大きく関係している。このことと一致して、T4を投与すると、副作用として発毛が報告されている。例えば、Berman の「Peripheral Effects of L-Thyroxine on Hair Growth and Coloration in Cattle」(Journal of Endocrinology、20巻、282〜292頁、1960年)[非特許文献1]及び Gunaratnam の「The Effects of Thyroxine on Hair Growth in the Dog」(J. Small Anim. Pract.、27巻、17〜29頁、1986年)[非特許文献2]を参照のこと。更に、T3及びT4は、脱毛症の治療に関連した複数の特許出版物の主題となっている。例えば、Fischer らの独国特許第1,617,477号(1970年1月8日公開)[特許文献1]、Mortimer の英国特許第2,138,286号(1984年10月24日公開)[特許文献2]、及び Lindenbaum のWO96/25943号(Life Medical Sciences, Inc.、1996年8月29日公開)[特許文献3]を参照のこと。
【0005】
しかし、残念ながら、これらの甲状腺ホルモンは重大な心臓毒性を誘発することがあるため、脱毛症を治療するためにT3又はT4、又はその両方を投与することは、多くの場合に実用的ではない。例えば、Walker らの米国特許第5,284,971号(Syntex、1994年2月8日発行)[特許文献4]及び Emmett らの米国特許第5,061,798号(Smith Kline & French Laboratories、1991年10月29日発行)[特許文献5]を参照のこと。
別のアプローチでは、プロスタグランジンによって発毛を促進することを提唱している。それは、プロスタグランジンは、毛髪を伸ばし、毛髪の色を変えるという甲状腺ホルモンと類似の利点を有する可能性があるためである。自然に生成するプロスタグランジン(例えば、PGA2、PGB2、PGE1、PGF2α、及びPGI2)は、C−20の不飽和脂肪酸である。人体で自然に生成するプロスタグランジンF類縁体のPGF2αは、脂環式環のC9及びC11位にヒドロキシル基、C5及びC6間にシス二重結合、及びC13及びC14間にトランス二重結合を有することを特徴とする。PGF2αは次の式を有する。
【0006】
【化1】

【0007】
自然に生成するプロスタグランジンFの類縁体は、当該技術分野において既知である。例えば、米国特許第4,024,179号(Bindra 及び Johnson、1977年5月17日発行)[特許文献6]、独国特許第DT−002,460,990号(Beck、Lerch、Seeger、及び Teufel、1976年7月1日公開)[特許文献7]、米国特許第4,128,720号(Hayashi、Kori、及び Miyake、1978年12月5日発行)[特許文献8]、米国特許第4,011,262号(Hess、Johnson、Bindra、及び Schaaf、1977年3月8日発行)[特許文献9]、米国特許第3,776,938号(Bergstrom 及び Sjovall、1973年12月4日発行)[特許文献10]、P. W. Collins 及び S. W. Djuric の「Synthesis of Therapeutically Useful Prostaglandin and Prostacyclin Analogs」(Chem. Rev.、93巻、1533〜1564頁、1993年)[非特許文献3]、G. L. Bundy 及び F. H. Lincoln の「Synthesis of 17-Phenyl-18,19,20-Trinorprostaglandins: I. The PG1 Series」(Prostaglandin、9巻1号、1〜4頁、1975年)[非特許文献4]、W. Bartman、G. Beck、U. Lerch、H. Teufel、及び B. Scholkens の「Luteolytic Prostaglandin: Synthesis and Biological Activity」(Prostaglandin、17巻2号、301〜311頁、1979年)[非特許文献5]、C. Ii日本特許第290811ljebris、G. Selen、B. Resul、J. Sternschantz、及び U. Hacksell の「Derivatives of 17-Phenyl-18, 19,20-trinorprostaglandin F2α. Isopropyl Ester: Potential Antiglaucoma Agents」(Journal of Medicinal Chemistry、38巻2号、289〜304頁、1995年)[非特許文献6]を参照のこと。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】独国特許第1,617,477号明細書
【特許文献2】英国特許第2,138,286号明細書
【特許文献3】国際公開第96/25943号
【特許文献4】米国特許第5,284,971号明細書
【特許文献5】米国特許第5,061,798号明細書
【特許文献6】米国特許第4,024,179号明細書
【特許文献7】独国特許第2,460,990号明細書
【特許文献8】米国特許第4,128,720号明細書
【特許文献9】米国特許第4,011,262号明細書
【特許文献10】米国特許第3,776,938号明細書
【特許文献11】米国特許第3,382,247号明細書
【特許文献12】米国特許第5,756,092号明細書
【特許文献13】米国特許第5,772,990号明細書
【特許文献14】米国特許第5,760,043号明細書
【特許文献15】米国特許第5,466,694号明細書
【特許文献16】米国特許第5,438,058号明細書
【特許文献17】米国特許第4,973,474号明細書
【特許文献18】米国特許第5,516,779号明細書
【特許文献19】米国特許第5,480,913号明細書
【特許文献20】米国特許第5,411,981号明細書
【特許文献21】米国特許第5,565,467号明細書
【特許文献22】米国特許第4,910,226号明細書
【特許文献23】欧州特許第0,680,745号明細書
【特許文献24】米国特許第5,756,092号明細書
【特許文献25】欧州特許第0,770,399号明細書
【特許文献26】国際公開第94/06434号
【特許文献27】仏国特許第2,268,523号明細書
【特許文献28】国際公開第98/33497号
【特許文献29】国際公開第95/11003号
【特許文献30】特開平09−100091号公報
【特許文献31】特開平08−134242号公報
【特許文献32】米国特許第5,529,769号明細書
【特許文献33】米国特許第5,468,888号明細書
【特許文献34】米国特許第5,631,282号明細書
【特許文献35】米国特許第5,679,705号明細書
【特許文献36】特開平10−017431号公報
【特許文献37】国際公開第95/35103号
【特許文献38】特開平09−067253号公報
【特許文献39】国際公開第92/09262号
【特許文献40】特開昭62−093215号公報
【特許文献41】特開平08−193094号公報
【特許文献42】欧州特許第0,558,509号明細書
【特許文献43】国際公開第97/01346号
【特許文献44】米国特許第5,015,470号明細書
【特許文献45】米国特許第5,300,284号明細書
【特許文献46】米国特許第5,185,325号明細書
【特許文献47】米国特許第5,550,158号明細書
【特許文献48】特開平09−157139号公報
【特許文献49】欧州特許公開第0277455号明細書
【特許文献50】国際公開第97/05887号
【特許文献51】国際公開第92/16186号
【特許文献52】特開昭62−093215号公報
【特許文献53】米国特許第4,987,150号明細書
【特許文献54】日本特許第290811号明細書
【特許文献55】特開平05−286835号公報
【特許文献56】仏国特許第2,723,313号明細書
【特許文献57】米国特許第5,015,470号明細書
【特許文献58】米国特許第5,559,092号明細書
【特許文献59】米国特許第5,536,751号明細書
【特許文献60】米国特許第5,714,515号明細書
【特許文献61】欧州特許第0,319,991号明細書
【特許文献62】欧州特許第0,357,630号明細書
【特許文献63】欧州特許第0,573,253号明細書
【特許文献64】特開昭61−260010号公報
【特許文献65】米国特許第5,772,990号明細書
【特許文献66】米国特許第5,053, 410号明細書
【特許文献67】米国特許第4,761,401号明細書
【特許文献68】米国特許第4,911,928号明細書
【特許文献69】米国特許第5,834,014号明細書
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】「Peripheral Effects of L-Thyroxine on Hair Growth and Coloration in Cattle」(Journal of Endocrinology、20巻、282〜292頁、1960年)
【非特許文献2】「The Effects of Thyroxine on Hair Growth in the Dog」(J. Small Anim. Pract.、27巻、17〜29頁、1986年)
【非特許文献3】「Synthesis of Therapeutically Useful Prostaglandin and Prostacyclin Analogs」(Chem. Rev.、93巻、1533〜1564頁、1993年)
【非特許文献4】「Synthesis of 17-Phenyl-18,19,20-Trinorprostaglandins: I. The PG1 Series」(Prostaglandin、9巻1号、1〜4頁、1975年)
【非特許文献5】「Luteolytic Prostaglandin: Synthesis and Biological Activity」(Prostaglandin、17巻2号、301〜311頁、1979年)
【非特許文献6】「Derivatives of 17-Phenyl-18, 19,20-trinorprostaglandin F2α. Isopropyl Ester: Potential Antiglaucoma Agents」(Journal of Medicinal Chemistry、38巻2号、289〜304頁、1995年)
【非特許文献7】「Br J. Pharm.」(116、2298、1995年)
【非特許文献8】「The Chemistry of Carbanions: A Convenient Precursor for the Generation of Lithium Organocuprates」(J. Org. Chem.、40巻、1975年、1460〜69頁)
【非特許文献9】「Zinc and Copper Carbenoids as Efficient and Selective a'/d' Multicoupling Reagents」(J. Amer. Chem. Soc.、111巻、1989年、6474〜76頁)
【非特許文献10】「Boranes in Organic Chemistry」(H. C. Brown、コーネル大学出版、ニューヨーク州イサカ、1972年、321〜325頁)
【非特許文献11】「Tetrahedron」(1986年、45515)
【非特許文献12】「Protecting Groups in Organic Synthesis」(Wiley Interscience、ニューヨーク、224〜276頁)
【非特許文献13】「Protecting Groups in Organic Synthesis」(Wiley Interscience、ニューヨーク、224〜276頁)
【非特許文献14】「The Chemistry of Carbanions: A Convenient Precursor for the Generation of Lithium Organocuprates」(J. Org. Chem.、40巻、1460〜69頁、1975年)
【非特許文献15】「Zinc and Copper Carbenoids as Efficient and Selective a'/d' Multicoupling Reagents」(J. Amer. Chem. Soc.、111巻、6474〜76頁、1989年)
【非特許文献16】「CRC Handbook of Eicosanoids: Prostaglandins and Related Lipids」I巻(Chemical and Biochemical Aspects、パートB、Anthony L. Willis 編集、CRC Press、Boca Raton、表4、80〜97頁、1987年)
【非特許文献17】「Remington's Pharmaceutical Sciences」(Mack Publishing Company、ペンシルベニア州イーストン、1990年)
【非特許文献18】「Effects of Some Novel Inhibitors of C17, 20−Lyase and 5α−Reductase in vitro and in vivo and Their Potential Role in the Treatment of Prostate Cancer」
【非特許文献19】「Modern Pharmaceutics」第9及び10節(Banker及びRhodes著、1979年)
【非特許文献20】「Pharmaceutical Dosage Forms: Tablets」(Liebermanら、1981年)
【非特許文献21】「Introduction to Pharmaceutical Dosage Forms」、第2版、(Ansel、1976年)
【非特許文献22】「C.T.F.A. Cosmetic Ingredient Handbook」(587〜592頁、1992年)
【非特許文献23】「Remington's Pharmaceutical Sciences」(第15版、335〜337頁、1975年)
【非特許文献24】「McCutcheon's Volume 1, Emulsifiers & Detergents」(北米版、236〜239頁、1994年)
【非特許文献25】「Influence of Liposomal Composition on Topical Delivery of Encapsulated Cyclosporin A: I. An in vitro Study Using Hairless Mouse Skin」(S.T.P. Pharma Sciences、3巻、404〜407頁、1993年)
【非特許文献26】「New Type of Lipid Vesicle: Novasome(登録商標)」(Liposome Technology、1巻、141〜156頁、1993年)
【非特許文献27】「Hydrogel-based Iontotherapeutic Delivery Devices for Transdermal Delivery of Peptide/Protein Drugs」(Pharm. Res.、10巻(5)、697〜702頁、1993年)
【非特許文献28】「Theoretical Model of Iontophoresis Utilized in Transdermal Drug Delivery」(Pharmaceutical Acta Helvetiae、70巻、279〜287頁、1995年)
【非特許文献29】「Modern Iontophoresis for Local Drug Delivery」(Int. J. Pharm.、123巻、159〜171頁、1995年)
【非特許文献30】「Iontophoretic Delivery of a Series of Tripeptides Across the Skin in vitro」(Pharm. Res.、8巻、1121〜1127頁、1991年)
【非特許文献31】「Quantification and Localization of Fentanyl and TRH Delivered by Iontophoresis in the Skin」(Int. J. Pharm.、120巻、221〜8頁、1995年)
【非特許文献32】「An Updated Review of its Antiviral Activity, Pharmacokinetic Properties and Therapeutic Efficacy」(Drugs、37巻、233〜309頁、1989年)
【非特許文献33】「Acyclovir Biovailability in Human Skin」(J. Invest. Dermatol.、98巻(6)、856〜63頁、1992年)
【非特許文献34】「Drug Reservoir Composition and Transport of Salmon Calcitonin in Transdermal Iontophoresis」(Pharm. Res.、14巻(1)、63〜66頁、1997年)
【非特許文献35】「Reverse Iontophoresis - Parameters Determining Electroosmotic Flow: I. pH and Ionic Strength」(J. Control. Release、38巻、159〜165頁、1996年)
【非特許文献36】「Reverse Iontophoresis - Parameters Determining Electroosmotic Flow: II. Electrode Chamber Formulation」(J. Control. Release、42巻、29〜36頁、1996年)
【非特許文献37】「Reverse Iontophoresis: Noninvasive Glucose Monitoring in vivo in Humans」(Pharm. Res.、12巻(12)、1869〜1873頁、1995年)
【非特許文献38】「Human Calcitonin Delivery in Rats by Iontophoresis」(J. Pharm. Pharmacol.、46巻、725〜730頁、1994年)
【非特許文献39】「Iontophoresis Enhances the Transport of Acyclovir through Nude Mouse Skin by Electrorepulsion and Electroosmosis」(Pharm. Res.、12巻(11)、1623〜1627頁、1995年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
一般に、プロスタグランジンは広範囲の生物活性を有する。例えば、PGE2は、(a)細胞増殖の調節特性、(b)サイトカイン合成の調節特性、(c)免疫反応の調節特性、及び(d)血管拡張の誘導特性を有する。血管拡張は、ミノキシジルが与える発毛の利点の機構の1つであると考えられている。また、文献のインビトロ試験結果においても、プロスタグランジンのある種の抗炎症特性が示されている。Tanaka, H. の「Br J. Pharm.」(116、2298、1995年)[非特許文献7]を参照のこと。
しかし、プロスタグランジンを使用して発毛を促進するというこれまでの試みは成功していない。種類の異なるプロスタグランジン類縁体では、二相性効果を有する様々な濃度で多種多様な受容体と結合することができる。更に、自然に生成するプロスタグランジンを投与すると、炎症、表皮刺激、平滑筋収縮、痛み、及び気管支収縮などの副作用を引き起こすことがある。従って、本発明の目的は、毛髪を育成するためにプロスタグランジン類縁体を使用する方法を提供し、ヒト及び動物において発毛を促進する組成物を提供することである。本発明の更なる目的は、発毛を促進すると考えられ、望ましくない重大な副作用を引き起こさない適切なプロスタグランジン類縁体を選択して提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、脱毛症を治療するための組成物及び方法に関する。この方法には、毛髪に選択的な受容体(FP受容体など)と強力に相互作用する特定のプロスタグランジン類縁体を含有する組成物を投与することが含まれる。プロスタグランジン類縁体の選択は重要である。それは、プロスタグランジン類縁体はFP受容体を選択的に活性化する必要があり、FP受容体を活性化することによる効果を無効にすると考えられるその他の受容体は活性化してはならないためである。組成物は、成分(A)プロスタグランジン類縁体、成分(B)担体、及び任意成分(C)活性増強剤を含有する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、哺乳動物における脱毛症を治療するために、プロスタグランジンF類縁体(「PGF」)を使用する組成物及び方法に関する。「脱毛症の治療」には、脱毛を抑制するか、脱毛を改善するか、あるいはその両方を行って、発毛を促進することが含まれる。
本開示全般にわたり、出版物及び特許を参照する。本明細書において引用した米国特許は、すべて参照として本明細書に組み込まれている。
本明細書において用いられる全ての比率は、特に明記しない限り重量に基づく。
【0013】
用語の定義と用法 以下に本明細書において使用する用語の定義を記載する。
「活性化」とは、受容体との結合及び受容体の信号導入を意味する。
「アシル基」とは、窒素原子をアシル化してアミド若しくはカルバミン酸塩を形成したり、アルコールをアシル化して炭酸塩を形成したり、又は酸素原子をアシル化してエステル基を形成するのに好適な一価の基を意味する。好ましいアシル基には、ベンゾイル、アセチル、第三級ブチルアセチル、パラフェニルベンゾイル、及びトリフルオロアセチルが含まれる。更に好ましいアシル基には、アセチル及びベンゾイルが含まれる。最も好ましいアシル基はアセチルである。
「芳香族基」とは、単環式環状構造又は縮合二環式環状構造を有する一価の基を意味する。単環式芳香族基は、環に5〜10個、好ましくは5〜7個、更に好ましくは5〜6個の炭素原子を有する。二環式芳香族基は、環に8〜12個、好ましくは9又は10個の炭素原子を有する。芳香族基は非置換型である。最も好ましい芳香族基はフェニルである。二環式芳香族基には、構造内の環の1つが芳香族である環構造が含まれる。好ましい二環式芳香族基は、構造内の環が2つとも芳香族である環構造である。好ましい芳香族環には、ナフチル及びフェニルが含まれる。最も好ましい芳香族環はフェニルである。
【0014】
「炭素環式基」とは、一価の飽和又は不飽和炭化水素環を意味する。炭素環式基は単環式である。炭素環式基は、環に4〜10個、好ましくは4〜7個、更に好ましくは5〜6個の炭素原子を有する。炭素環式基は非置換型である。好ましい炭素環式基には、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、シクロヘプチル、及びシクロオクチルが含まれる。更に好ましい炭素環式基には、シクロヘキシル、シクロヘプチル、及びシクロオクチルが含まれる。最も好ましい炭素環式基はシクロヘプチルである。炭素環式基は芳香族ではない。
「FP作用物質」とは、FP受容体を活性化する化合物を意味する。
「FP受容体」とは、既知のヒトFP受容体、その接合変異型、及び既知のヒトFP受容体と類似の結合特性及び活性特性を有する記述されていない受容体を意味する。「FP」とは、受容体が、自然に生成するすべてのプロスタグランジンのPGF2αに最も高い親和性を有する種類に属することを意味する。FPは既知のタンパク質を表す。
【0015】
「ハロゲン原子」とは、F、Cl、Br、又はIを意味する。ハロゲン原子は、好ましくは、F、Cl、又はBrであり、更に好ましくは、Cl又はFであり、最も好ましくはFである。
「ハロゲン化複素基」とは、少なくとも1つの置換基がハロゲン原子である置換型複素基又は置換型複素環式基を意味する。ハロゲン化複素基は、直鎖状、分枝状、又は環状構造を有することができる。好ましいハロゲン化複素基は、1〜12個、更に好ましくは1〜6個、最も好ましくは1〜3個の炭素原子を有する。好ましいハロゲン原子置換基はCl及びFである。
「ハロゲン化炭化水素基」とは、少なくとも1つの置換基がハロゲン原子である一価の置換型炭化水素基又は置換型炭素環式基を意味する。ハロゲン化炭化水素基は、直鎖状、分枝状、又は環状構造を有することができる。好ましいハロゲン化炭化水素基は、1〜12個、更に好ましくは1〜6個、最も好ましくは1〜3個の炭素原子を有する。好ましいハロゲン原子置換基はCl及びFである。最も好ましいハロゲン化炭化水素基はトリフルオロメチルである。
【0016】
「複素芳香族基」とは、環に炭素原子及び1〜4個のへテロ原子を有する芳香族環を意味する。複素芳香族基は、単環式環又は縮合二環式環である。単環式複素芳香族基は、環に5〜10個、好ましくは5〜7個、更に好ましくは5〜6個の構成原子(つまり、炭素原子及びへテロ原子)を有する。二環式複素芳香族基は、環に8〜12個、好ましくは9又は10個の構成原子を有する。複素芳香族基は非置換型である。二環式複素芳香族基には、1つの環だけが芳香族である環構造が含まれる。好ましい二環式複素芳香族基は、環が2つとも芳香族である環構造である。好ましい単環式複素芳香族基には、チエニル、チアゾリル、プリニル、ピリミジル、ピリジル、及びフラニルが含まれる。更に好ましい単環式複素芳香族基には、チエニル、フラニル、及びピリジルが含まれる。最も好ましい単環式複素芳香族基はチエニルである。好ましい二環式複素芳香族環には、ベンゾチアゾリル、ベンゾチオフェニル、キノリニル、キノキサリニル、ベンゾフラニル、ベンズイミダゾリル、ベンゾキサゾリル、インドリル、及びアントラニリルが含まれる。更に好ましい二環式複素芳香族環には、ベンゾチアゾリル、ベンゾチオフェニル、及びベンゾキサゾリルが含まれる。
【0017】
「へテロ原子」とは、複素環式基の環又は複素基の鎖に存在する炭素原子以外の原子を意味する。へテロ原子は、窒素、イオウ、及び酸素原子から成る群から選択されることが好ましい。1つ以上のヘテロ原子を含有する官能基は、異なるヘテロ原子を含有することができる。
「複素環式基」とは、環に炭素原子及び1〜4個のへテロ原子を有する飽和又は不飽和環状構造を意味する。環上でへテロ原子同士は隣接しない。また、環上でヘテロ原子と結合している炭素原子は、ヒドロキシル、アミノ、又はチオール基と結合しない。複素環式基は芳香族ではない。複素環式基は単環式である。複素環式基は、環に4〜10個、好ましくは4〜7個、更に好ましくは5〜6個の構成原子(つまり、炭素原子及び少なくとも1個のへテロ原子の両方を含む)を有する。複素環式基は非置換型である。好ましい複素環式基には、ピペラジル、モルホリニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、及びピペリジルが含まれる。
【0018】
「複素基」とは、1〜18個の構成原子(つまり、炭素原子及び少なくとも1個のへテロ原子の両方を含む)を有する飽和又は不飽和鎖を意味する。へテロ原子同士は隣接しない。鎖は、好ましくは1〜12個、更に好ましくは1〜6個の構成原子を有する。「低分子複素基」とは、1〜6個、好ましくは1〜3個の構成原子を有する複素基を意味する。鎖は直鎖状であっても分枝状であってもよい。好ましい分枝状複素基は、1つ又は2つの分枝を有し、好ましくは1つの分枝を有する。好ましい複素基は飽和されているものである。不飽和複素基は、1つ以上の二重結合又は1つ以上の三重結合、又はその両方を有する。好ましい不飽和複素基は、1つ若しくは2つの二重結合、又は1つの三重結合を有する。更に好ましくは、不飽和複素基は1つの二重結合を有する。複素基は非置換型である。
【0019】
「一価の炭化水素基」とは、炭素原子1〜18個、好ましくは1〜12個を有する鎖を意味する。「一価の低分子炭化水素基」とは、炭素原子1〜6個、好ましくは1〜3個を有する一価の炭化水素基を意味する。一価の炭化水素基は、直鎖又は分枝鎖構造を有することができる。好ましい一価の炭化水素基は、1つ又は2つの分枝を有し、好ましくは1つの分枝を有する。好ましい一価の炭化水素基は飽和されているものである。一価の不飽和炭化水素基は、1つ以上の二重結合、1つ以上の三重結合、又はこれらの組み合せを有する。好ましい一価の不飽和炭化水素基は、1つ若しくは2つの二重結合、又は1つの三重結合を有する。更に好ましい一価の不飽和炭化水素基は、1つの二重結合を有する。
「薬剤として許容できる」とは、ヒト又はヒト以外の哺乳動物に使用するのに好適であることを意味する。
「プロスタグランジン」とは、ホルモン的性質又は調節的性質の多様で強力な生物活性を有する脂肪酸誘導体を意味する。
「保護基」とは、ヒドロキシル部分の活性水素を置換することにより、ヒドロキシル部分における望ましくない副反応を防ぐ基である。有機合成において保護基を使用することは、当該技術分野において周知である。保護基の例は、「Protecting Groups in Organic Synthesis」(Greene, T. W. 及び Wuts, P. G. M.、第2版、Wiley & Sons, Inc.、1991年)の第2章に記載されている。好ましい保護基には、シリルエーテル、アルコキシメチルエーテル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロフラニル、エステル、及び置換型又は非置換型ベンジルエーテルが含まれる。
【0020】
「安全及び有効な量」とは、治療する患者の症状が明らかに好転するように十分に高い量であるが、深刻な副作用を起こさないように十分に低い量(利点とリスクのバランスが取れた量)のプロスタグランジンの量を意味する。
「選択的」とは、特定の受容体をその他の受容体より優先して結合又は活性化することを意味し、受容体は結合試験又は活性試験に基づいて評価することができる。
「被験者」とは、毛髪又は体毛を有する生きた脊椎動物を意味し、例えば、治療を必要とする哺乳動物(ヒトが好ましい)が挙げられる。
「置換型芳香族基」とは、環上の炭素原子に結合した水素原子の1〜4個が別の置換基で置換されている芳香族基を意味する。好ましい置換基には、ハロゲン原子、シアノ基、一価の炭化水素基、一価の置換型炭化水素基、複素基、置換型複素基、芳香族基、置換型芳香族基、又はこれらのいずれかの組み合せが含まれる。更に好ましい置換基には、ハロゲン原子、一価のハロゲン化炭化水素基、フェニル基、及びフェノキシ基が含まれる。好ましい置換型芳香族基にはナフチルが含まれる。置換基は、環のオルト、メタ、若しくはパラの位置、又はこれらのいずれかの組み合せにおいて置換することができる。環の好ましい置換形は、オルト又はメタである。最も好ましい置換形はオルトである。
【0021】
「置換型炭素環式基」とは、環上の炭素原子に結合した水素原子の1〜4個が別の置換基で置換されている炭素環式基を意味する。好ましい置換基には、ハロゲン原子、シアノ基、一価の炭化水素基、一価の複素基、一価の置換型炭化水素基、置換型複素基、芳香族基、置換型芳香族基、又はこれらのいずれかの組み合せが含まれる。更に好ましい置換基には、ハロゲン原子、一価のハロゲン化炭化水素基、フェニル基、及びフェノキシ基が含まれる。
「置換型複素芳香族基」とは、環上の炭素原子に結合した水素原子の1〜4個が別の置換基で置換されている複素芳香族基を意味する。置換基には、ハロゲン原子、アシル基、シアノ基、一価の炭化水素基、一価の置換型炭化水素基、複素基、置換型複素基、芳香族基、置換型芳香族基、複素芳香族基、置換型複素芳香族基、及びこれらのいずれかの組み合せが含まれる。好ましい置換基には、ハロゲン原子、シアノ基、一価の炭化水素基、一価の置換型炭化水素基、複素基、置換型複素基、フェニル基、フェノキシ基、又はこれらのいずれかの組み合せが含まれる。更に好ましい置換基には、ハロゲン原子、ハロゲン化炭化水素基、一価の炭化水素基、ハロゲン化複素基、及びフェニル基が含まれる。
【0022】
「置換型複素環式基」とは、環上の炭素原子に結合した水素原子の1〜4個が別の置換基で置換されている複素環式基を意味する。好ましい置換基には、ハロゲン原子、シアノ基、一価の炭化水素基、一価の置換型炭化水素基、複素基、置換型複素基、芳香族基、置換型芳香族基、又はこれらのいずれかの組み合せが含まれる。更に好ましい置換基には、ハロゲン原子、ハロゲン化炭化水素基、フェニル基、フェノキシ基、又はこれらのいずれかの組み合せが含まれる。置換型複素環式基は芳香族ではない。
「置換型複素基」とは、鎖上の炭素原子に結合した水素原子の1〜4個が別の置換基で置換されている複素基を意味する。好ましい置換型複素基は、1、2、又は3置換型である。好ましい置換基には、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、カルボキシル基、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ、クロロフェノキシ、トリルオキシ、メトキシフェノキシ、ベンジルオキシ、アルキルオキシカルボニルフェノキシ、及びアシルオキシフェノキシ)、アシルオキシ基(例えば、プロピニルオキシ、ベンゾイルオキシ、及びアセトキシ)、芳香族基(例えば、フェニル及びトリル)、置換型芳香族基(例えば、アルコキシフェニル、アルコキシカルボニルフェニル、及びハロフェニル)、複素環式基、複素芳香族基、置換型複素環式基、及びアミノ基(例えば、アミノ、炭素原子1〜3個を有するモノ−及びジ−アルキルアミノ、メチルフェニルアミノ、メチルベンジルアミノ、炭素原子1〜3個を有するアルカニルアミド基、カーバムアミド、ウレイド、及びグアニジノ)が含まれる。
【0023】
「一価の置換型炭化水素基」とは、鎖上の炭素原子に結合した水素原子の1〜4個が別の置換基で置換されている一価の炭化水素基を意味する。好ましい一価の置換型炭化水素基は、1、2、又は3置換型である。好ましい置換基には、ハロゲン原子、一価の低分子炭化水素基、ヒドロキシ基、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ、クロロフェノキシ、トリルオキシ、メトキシフェノキシ、ベンジルオキシ、アルキルオキシカルボニルフェノキシ、及びアシルオキシフェノキシ)、アシルオキシ基(例えば、プロピニルオキシ、ベンゾイルオキシ、及びアセトキシ)、カルボキシル基、単環式芳香族基、単環式複素芳香族基、単環式炭素環式基、単環式複素環式基、及びアミノ基(例えば、アミノ、炭素原子1〜3個を有するモノ−及びジ−アルカニルアミノ、メチルフェニルアミノ、メチルベンジルアミノ、炭素原子1〜3個を有するアルカニルアミド基、カーバムアミド、ウレイド、及びグアニジノ)が含まれる。
【0024】
本発明に使用するプロスタグランジン 本発明は、脱毛症を治療するためにプロスタグランジンF類縁体(PGF)を使用することに関する。好適なPGFは、次の構造から成る群から選択される構造を有することができる。
【0025】
【化2】

【0026】
PGFは、上記の構造の薬剤として許容できる塩及び水和物、上記の構造の生加水分解性アミド、エステル、及びイミド、並びに上記の構造の光学異性体、ジアステレオマー、及びエナンチオマーから成る群から選択することもできる。その結果、立体化学を定義しないすべての立体中心(C11、C12、及びC15)においては、2つのエピマーが想定される。本発明の化合物のこのような立体中心すべてにおいて、好ましい立体化学は、自然に生成するPGF2αに類似しているものである。2つ以上のPGFを組み合せて使用することもできる。
1はC(O)OH、C(O)NHOH、C(O)OR3、CH2OH、S(O)23、C(O)NHR3、C(O)NHS(O)24、テトラゾール、カチオン塩部分、炭素原子2〜13個を有する薬剤として許容できるアミン又はエステル、及び炭素原子2〜13個を有する生物代謝可能なアミン又はエステルから成る群から選択される。好ましくは、R1はCO2H、C(O)NHOH、CO23、C(O)NHS(O)24、及びテトラゾールから成る群から選択される。更に好ましくは、R1はCO2H及びCO23から成る群から選択される。
【0027】
2は水素原子、低分子複素基、及び一価の低分子炭化水素基から成る群から選択される。好ましくは、R2は水素原子である。
3は一価の炭化水素基、複素基、炭素環式基、複素環式基、芳香族基、複素芳香族基、一価の置換型炭化水素基、置換型複素基、置換型炭素環式基、置換型複素環式基、置換型芳香族基、及び置換型複素芳香族基から成る群から選択される。好ましくは、R3はメチル、エチル、及びイソプロピルから成る群から選択される。
4は一価の炭化水素基、複素基、炭素環式基、複素環式基、芳香族基、複素芳香族基、一価の置換型炭化水素基、置換型複素基、置換型炭素環式基、置換型複素環式基、置換型芳香族基、及び置換型複素芳香族基から成る群から選択される。好ましくは、R4はフェニル基である。
【0028】
Xは二価である。Xは−C≡C−、共有結合、 −CH=C=CH−、−CH=CH−、−CH=N−、−C(O)−、−C(O)Y−、−(CH2n−(nは2〜4である)、 −CH2NH−、−CH2S−、及び−CH2O−から成る群から選択される。
YはO、S、及びNHから成る群から選択される。
Zは炭素環式基、複素環式基、芳香族基、複素芳香族基、置換型炭素環式基、置換型複素環式基、置換型芳香族基、及び置換型複素芳香族基から成る群から選択される。
好ましくは、Xが共有結合であるとき、Zは芳香族基、複素芳香族基、置換型芳香族基、及び置換型複素芳香族基から成る群から選択される。更に好ましくは、Xが共有結合であるとき、Zはニ環式複素芳香族基である。
好ましくは、Xが−C≡C−であるとき、Zは単環式芳香族基である。更に好ましくは、Xが−C≡C−であるとき、Zはフラニル、チエニル、及びフェニルから成る群から選択される。
上記の2番目の構造において破線で示した結合は、任意に二重結合又は三重結合であってもよいことを示している。例えば、この構造においてR1がC(O)OHであるとき、
【0029】
【化3】

【0030】
C2〜C3位の結合は、単結合又は二重結合であってもよい。C5〜C6位の結合は、単結合、二重結合、又は三重結合であってもよい。C13〜C14位の結合は、単結合、二重結合、又は三重結合であってもよい。
成分(A)として好適な次の構造を有するPGFの例を、以下の表1及び2に示す。
【0031】
【化4】

【0032】
【表1】

【0033】
【表2】

【0034】
【表3】

【0035】
【表4】

【0036】
【表5】

【0037】
【表6】

【0038】
【表7】

【0039】
【表8】

【0040】
【表9】

【0041】
【表10】

【0042】
上記の表においてMeはメチル基を表す。
表1のPGFは、従来の有機合成を用いて調製することができる。好ましい合成は、反応スキーム1、2、及び3を使用して行う。スキーム1は、Xが−CH=CH−(式I)又は−CH=C=CH−(式II)であるPGFを生成するための一般的な反応スキームを示す。スキーム2は、Xが−C(O)−(式III)又は−C(O)Y−(式IV)であるPGFを生成するための一般的な反応スキームを示す。スキーム3は、Xが−CH=N−(式V)であるPGFを生成するための一般的な反応スキームを示す。
【0043】
【化5】

【0044】
スキーム1において、R1及びZは上記に定義したとおりである。スキーム1の出発物質として示したメチル7(3−(R)−ヒドロキシ−5−オキソ−1−シクロペント−1−イル)ヘプタノエート(S1a)は、(Sumitomo Chemical 又は Cayman Chemical などから)市販されている。
スキーム1において、メチル7−(3−(R)−ヒドロキシ−5−オキソ−1−シクロペント−1−イル)ヘプタノエート(S1a)は、溶剤中のシリル化剤及び塩基と反応する。これにより、シリル化が進行すると考えられる。好ましいシリル化剤には、第三級−ブチルジメチルシリルクロライド及び第三級−ブチルジメチルシリルトリフルオロメタンスルホネートが含まれる。最も好ましいシリル化剤は、第三級−ブチルジメチルシリルトリフルオロメタンスルホネートである。好ましい塩基には、トリエチルアミン、トリメチルアミン、及び2,6−ルチジンが含まれる。更に好ましい塩基には、トリエチルアミン、及び2,6−ルチジンが含まれる。最も好ましい塩基は2,6−ルチジンである。好ましい溶剤にはハロゲン化炭化水素溶剤が挙げられる。この中には最も好ましい溶剤であるジクロロメタンが含まれる。反応は、好ましくは−100〜100℃、更に好ましくは−80〜80℃、最も好ましくは−70〜23℃の温度で進行させる。
【0045】
得られたシリル化化合物は、当該技術分野における一般技術者に既知の方法で単離する。このような方法には、抽出、溶剤蒸発、蒸留、及び結晶化が含まれる。単離後、シリルエーテルを真空下で蒸留して精製することが好ましい。
次に、シリル化化合物を、適当なアルケニル臭化物のグリニャール形成により生じた銅酸化物と反応させる。このアルケニル臭化物は、例えば、H.O. House らの「The Chemistry of Carbanions: A Convenient Precursor for the Generation of Lithium Organocuprates」(J. Org. Chem.、40巻、1975年、1460〜69頁)[非特許文献8]及び P. Knochel らの「Zinc and Copper Carbenoids as Efficient and Selective a'/d' Multicoupling Reagents」(J. Amer. Chem. Soc.、111巻、1989年、6474〜76頁)[非特許文献9]に開示されている。好ましいアルケニル臭化物には、4−ブロモ−1−ブテン、4−ブロモ−1−ブチン、4−ブロモ−2−メチル−1−ブテン、及び4−ブロモ−2−エチル−1−ブテンが含まれる。最も好ましいアルケニル臭化物は、4−ブロモ−1−ブテンである。好ましい溶剤にはエーテル溶剤が挙げられ、中でもジエチルエーテル及びテトラヒドロフランが好ましい。最も好ましい溶剤はテトラヒドロフランである。グリニャール試薬は、好ましくは100〜23℃、更に好ましくは85〜30℃、最も好ましくは75〜65℃の温度で形成する。反応時間は、好ましくは1〜6時間、更に好ましくは2〜5時間、最も好ましくは3〜4時間である。
【0046】
グリニャール試薬を一旦形成すると、アルケニルマグネシウム類から銅酸化物が生じる。銅酸化物を形成するための温度範囲は、−100〜0℃である。好ましい温度範囲は、−80〜−20℃である。更に好ましい温度範囲は、−75〜−50℃である。好ましい反応時間は30分〜6時間、更に好ましくは45分〜3時間である。最も好ましい反応時間は1〜1.5時間である。
形成されたアルケンは、当該技術分野における一般技術者に既知の方法で単離する。このような方法には、抽出、溶剤蒸発、蒸留、及び結晶化が含まれる。アルケンは、溶離液として10%EtOAc/ヘキサンを用いたシリカゲル(Merck、230〜400メッシュ)による紫外線クロマトグラフィーにより精製することが好ましい。(EtOAcは酢酸エチルを表す。)
次に、アルケンを水素化還元剤及び極性プロトン性溶剤と反応させて、C−9アルコールを得る。好ましい還元剤には、水素化アルミニウムリチウム、水素化ホウ素ナトリウム、及びL−セレクトライドが含まれる。更に好ましい還元剤には、水素化ホウ素ナトリウム及びL−セレクトライドが含まれる。最も好ましい還元剤は水素化ホウ素ナトリウムである。好ましい溶剤には、メタノール、エタノール、及びブタノールが含まれる。最も好ましい溶剤はメタノールである。還元は、−100〜23℃の温度で行う。好ましい温度範囲は、−60〜0℃である。最も好ましい温度範囲は−45〜−20℃である。
【0047】
得られたアルコールは、当該技術分野における一般技術者に既知の方法で単離する。このような方法には、抽出、溶剤蒸発、蒸留、及び結晶化が含まれる。アルコールは、溶離液として20%EtOAc/ヘキサンを用いたシリカゲル(Merck、230〜400メッシュ)による紫外線クロマトグラフィーにより精製することが好ましい。
得られたアルコールは、本明細書において上述したように保護することができる。この場合、好ましいシリル化剤には、第三級−ブチルジメチルシリルクロライド及び第三級−ブチルジメチルシリルトリフルオロメタンスルホネートが含まれる。最も好ましいシリル化剤は、第三級−ブチルジメチルシリルトリフルオロメタンスルホネートである。好ましい塩基には、トリエチルアミン、トリメチルアミン、及び2,6−ルチジンが含まれる。
更に好ましい塩基には、トリエチルアミン、及び2,6−ルチジンが含まれる。最も好ましい塩基は2,6−ルチジンである。好ましい溶剤にはハロゲン化炭化水素溶剤が挙げられる。この中には最も好ましい溶剤であるジクロロメタンが含まれる。反応は、好ましくは−100〜100℃、更に好ましくは−80〜80℃、最も好ましくは−70〜23℃の温度で進行させる。
【0048】
得られたシリル化化合物のS1bは、当該技術分野における一般技術者に既知の方法で単離する。このような方法には、抽出、溶剤蒸発、蒸留、及び結晶化が含まれる。単離後、シリルエーテルを真空下で蒸留して精製し、化合物S1bを得ることが好ましい。
次に、保護したアルコールを、オスミウム類及び過ヨウ素酸ナトリウムが共に溶解した溶液で処理する。好ましいオスミウム類には、四酸化オスミウム及びオスミウム酸カリウムが含まれる。好ましい溶剤システムには、酢酸:水(1:1)の混合液及び水:酢酸:THF(1:1:2)の混合液が含まれる。(THFはテトラヒドロフランを表す。)この処理により、アルデヒド(S1c)が得られる。
化合物S1cは、当該技術分野における一般技術者に既知の方法で単離する。このような方法には、抽出、溶剤蒸発、蒸留、及び結晶化が含まれる。S1cは、溶離液として20%EtOAc/ヘキサンを用いたシリカゲル(Merck、230〜400メッシュ)による紫外線クロマトグラフィーにより精製することが好ましい。
【0049】
S1cとして示した主要な中間体アルデヒドは、多様な不飽和アルケニル陰イオン求核試薬と反応して、C−9及びC−11を保護した13,14−ジヒドロ−プロスタグランジンF1α誘導体を生成することができる。
得られた化合物は単離することができるが、一般に当該技術分野における一般技術者に既知の技術を用いて脱保護し、任意にC−1位を処理して、R1に望ましい酸誘導体を付加する。例えば、メチルエステルをアミン又はヒドロキシルアミンと縮合して、それぞれアミド又はヒドロキサム酸化合物を生成する。C−1位をこのような方法のいずれかで処理した後、最終的な13,14−ジヒドロ−15−置換型−15−ペンタノルプロスタグランジンF1α誘導体(式I)として化合物を単離する。
【0050】
式IIとして示した化合物は、式Iとして示した化合物と同様の方法で、適当なアレン陰イオンを置換して、中間体S1cから直接生成することができる。アレン求核試薬と反応させるとき、反応は、好ましくは−80〜0℃、更に好ましくは−80〜−20℃、最も好ましくは−80〜−40℃で行う。この反応に好ましい塩基には、n−ブチルリチウム、s−ブチルリチウム、及びt−ブチルリチウムが含まれる。最も好ましい塩基はn−ブチルリチウムである。この反応に好ましい溶剤はエーテル溶剤である。好ましい溶剤には、ジエチルエーテル及びテトラヒドロフランが含まれる。最も好ましい溶剤はテトラヒドロフランである。複素環式求核試薬と反応させるとき、好ましい溶剤はエーテル溶剤が挙げられる。更に好ましいエーテル溶剤には、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、及びテトラヒドロフランが含まれる。最も好ましいエーテル溶剤はテトラヒドロフランである。単離後、当該技術分野における一般技術者に既知の技術を用いて、同様にC−1位の処理及び/又は官能基の脱保護を行う。
【0051】
【化6】

【0052】
スキーム2において、R1、Y、及びZは上記に定義したとおりである。(スキーム1からの)保護したアルコールS1bを、エーテル溶剤中のヒドロホウ素化試薬で処理し、次に、ホウ素試薬を好適な酸化剤で酸化して除去し、S2a型の化合物を生成する。好ましいヒドロホウ素化試薬には、モノクロロボラン−ジメチルスルフィド、ジボラン、ボラン−テトラヒドロフラン、及びボラン−ジメチルスルフィドが含まれる。最も好ましいヒドロホウ素化試薬は、ボラン−ジメチルスルフィドである。好ましいエーテル溶剤には、THF及びジエチルエーテルが含まれる。最も好ましい溶剤はTHFである。反応は、約1〜約24時間、約−20〜約+30℃の温度で行う。好ましい温度範囲は約0〜約+20℃である。この反応によるヒドロホウ素化生成物は、次に、アルカリ性過酸化水素を用いて酸化し、アルコールにすることができる(「Boranes in Organic Chemistry」(H. C. Brown、コーネル大学出版、ニューヨーク州イサカ、1972年、321〜325頁)[非特許文献10]を参照のこと)。その後、この化合物は、当該技術分野における一般技術者に既知の方法を用いて、アルデヒド(W=H)又は酸(W=OH)に酸化することができる。あるいは、ヒドロホウ素化生成物は、クロム酸又はCr(VI)塩で処理して、直接アルデヒド又は酸に酸化することができる。このような塩には、クロロクロム酸ピリジニウム(PCC)及び重クロム酸塩が含まれる。Brown, H. C. の文献、及び Kulkarni、Rao、及び Patil の「Tetrahedron」(1986年、45515)[非特許文献11]を参照のこと。好ましい方法は、ヒドロホウ素化生成物をジクロロメタン中のPCCで室温で処理することである。これらの処理により、S2a型の化合物が生成する。
【0053】
化合物S2aは、当該技術分野における一般技術者に既知の方法で単離する。このような方法には、抽出、溶剤蒸発、蒸留、及び結晶化が含まれる。S2aは、溶離液として20%EtOAc/ヘキサンを用いたシリカゲル(Merck、230〜400メッシュ)による紫外線クロマトグラフィーにより精製することが好ましい。ただし、WがOHの場合には、溶離液に酢酸0.1%を加える。
S2aとして示した主要な中間体アルデヒドは、多様な不飽和炭素求核試薬と反応して、C−9及びC−11を保護した13,14−ジヒドロ−16−テトラノルプロスタグランジンF1α誘導体(式III)を生成することができる。
芳香族及び複素芳香族求核試薬と反応させるとき、反応は、好ましくは−80〜0℃、更に好ましくは−80〜−20℃、最も好ましくは−80〜−40℃で行う。
【0054】
この反応に好ましい塩基には、n−ブチルリチウム、s−ブチルリチウム、リチウムジイソプロピルアミド、及びt−ブチルリチウムが含まれる。最も好ましい塩基はn−ブチルリチウムである。この反応に好ましい溶剤はエーテル溶剤である。好ましい溶剤には、ジエチルエーテル及びテトラヒドロフランが含まれる。最も好ましい溶剤はテトラヒドロフランである。複素環式求核試薬と反応させるとき、好ましい溶剤はエーテル溶剤が挙げられる。更に好ましいエーテル溶剤には、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、及びテトラヒドロフランが含まれる。最も好ましいエーテル溶剤はテトラヒドロフランである。
【0055】
得られたアルコールは単離することができるが、一般に単離せずにそのまま酸化する。ベンジルアルコールをベンジルケトンに酸化することは、当該技術分野において周知である。この反応を生じる好ましい試薬には、KMnO4、MnO2、クロム酸、Jones 試薬、Collins 試薬、及びPCCが含まれる。最も好ましい方法は、ジクロロメタン中でPCCと約4時間室温で酸化することである。ケトンは、溶剤として20%ヘキサン/酢酸エチルを使用したカラムクロマトグラフィーにより単離する。次に、標準的な条件を使用してエステルを除去する。Greene 及び Wuts の「Protecting Groups in Organic Synthesis」(Wiley Interscience、ニューヨーク、224〜276頁)[非特許文献12]を参照のこと。その後、遊離酸を強窒素塩基の2.1当量で処理し、酸及び隣接するベンジルケトンから共にプロトンを除去する。このような塩基にはLDAが挙げられる。このエノラートを過酸化剤と反応させる。この過酸化剤は、化合物を酸化してα−ヒドロキシケトンを生じる効果を有する。このような試薬には、メタ−クロロペルオキシ安息香酸、ジメチルジオキシラン、Davis 試薬、及び過酢酸が含まれる。租生成物は単離してもよく、又は残存する保護基を除去してもよい。この時点で、C−1位の酸を処理してもよい。例えば、当該技術分野における一般技術者に既知の方法を使用して、再エステル化したり、アミド、ヒドロキサム酸、又はスルホンアミドを形成して、式IIIの化合物を生成することができる。
【0056】
式IVとして示した化合物は、中間体S2bから生成することができる。この場合、遊離酸は、ジシクロヘキシルカルボジイミド(「DCC」)などのカップリング剤を使用したり、又はシュウ酸クロライドなどで酸を活性化することにより、多様なアルコール及びアミンと容易に縮合する。次に、Greene 及び Wuts の「Protecting Groups in Organic Synthesis」(Wiley Interscience、ニューヨーク、224〜276頁)[非特許文献13]に記述されているように、メチルエステルを選択的に除去し、上記のケトン中間体で記述した同じ技術を用いて、エステルエノラートを酸化する。同様に、上述したように残存する保護基を除去し、C−1に望ましい処理を行い、式IVの化合物を生成する。
【0057】
【化7】

【0058】
スキーム3において、R1及びZは上記に定義したとおりである。(スキーム1からの)アルケンS1bをオスミウム塩及び任意の触媒再酸化剤で処理し、ジオールを生成する。任意の触媒再酸化剤は、N−メチルモルホリンN−オキシド(「NMO」)が好ましい。このジオールは抽出により単離し、シリカゲルクロマトグラフィーにより精製する。次に、ジオールをαヒドロキシアルデヒドに選択的に酸化する。これには数種類の方法がある。例えば、DMSO−シュウ酸クロライドなどの選択的酸化剤を使用することができる。(「DMSO」はジメチルスルホキシドを表す。)あるいは、一級アルコールを選択的に保護し、次に、二級アルコールを保護した後、一級アルコールの保護を除いて、上記のスキーム2で記述したように、アルコールを酸化することができる。しかし、好ましい方法は、o−ブロモ−ベンジルブロミド保護基を付加することである。この保護基は、トリブチル水素化スズ及び類似の試薬で酸化することにより、除去することができる。この技術により、QがHであるS3a型の化合物が生成する。この工程に続いて、アルデヒドをアミンと縮合し、S3b型のイミンを形成する。上記のスキーム1及び2で記述したように、適切に保護基を除去し、C−1を処理して、式Vの化合物を生成する。
【0059】
【表11】

【0060】
【表12】

【0061】
【表13】

【0062】
【表14】

【0063】
【表15】

【0064】
【表16】

【0065】
【表17】

【0066】
【表18】

【0067】
【表19】

【0068】
表2のPGFは、従来の有機合成により調製することができる。好ましい合成は反応スキーム4である。
【0069】
【化8】

【0070】
スキーム4において、R1、R2、X、及びZは上記で定義したとおりである。スキーム4の出発物質として示したメチル7(3−(R)−ヒドロキシ−5−オキソ−1−シクロペント−1−イル)ヘプタノエート(S4a)は、(Sumitomo Chemical 又は Cayman Chemical などから)市販されている。
【0071】
メチル7(3−(R)−ヒドロキシ−5−オキソ−1−シクロペント−1−イル)ヘプタノエート(S4a)のC11アルコールを、好適な保護基で保護する。最も好ましい保護基はシリル基である。上記のスキーム4において、メチル7−(3−(R)−ヒドロキシ−5−オキソ−1−シクロペント−1−イル)ヘプタノエート(S4a)は、溶剤中のシリル化剤及び塩基と反応する。これにより、シリル化が進行すると考えられる。好ましいシリル化剤には、第三級−ブチルジメチルシリルクロライド及び第三級−ブチルジメチルシリルトリフルオロメタンスルホネートが含まれる。最も好ましいシリル化剤は、第三級−ブチルジメチルシリルトリフルオロメタンスルホネートである。好ましい塩基には、トリエチルアミン、トリメチルアミン、及び2,6−ルチジンが含まれる。更に好ましい塩基には、トリエチルアミン、及び2,6−ルチジンが含まれる。最も好ましい塩基は2,6−ルチジンである。好ましい溶剤にはハロゲン化炭化水素溶剤が挙げられる。この中には最も好ましい溶剤であるジクロロメタンが含まれる。反応は、好ましくは−100〜100℃、更に好ましくは−80〜80℃、最も好ましくは−70〜23℃の温度で進行させる。
得られたシリル化化合物は、当該技術分野における一般技術者に既知の方法で単離する。このような方法には、抽出、溶剤蒸発、蒸留、及び結晶化が含まれる。単離後、シリルエーテルを真空下で蒸留して精製することが好ましい。
【0072】
次に、シリル化化合物を、適当なアルケニル臭化物のグリニャール形成により生じた銅酸化物と反応させる。このアルケニル臭化物は、例えば、H.O. House らの「The Chemistry of Carbanions: A Convenient Precursor for the Generation of Lithium Organocuprates」(J. Org. Chem.、40巻、1460〜69頁、1975年)[非特許文献14]及び P. Knochel らの「Zinc and Copper Carbenoids as Efficient and Selective a'/d' Multicoupling Reagents」(J. Amer. Chem. Soc.、111巻、6474〜76頁、1989年)[非特許文献15]に開示されている。好ましいアルケニル臭化物には、4−ブロモ−1−ブテン、4−ブロモ−1−ブチン、4−ブロモ−2−メチル−1−ブテン、及び4−ブロモ−2−エチル−1−ブテンが含まれる。最も好ましいアルケニル臭化物は、4−ブロモ−1−ブテンである。好ましい溶剤にはエーテル溶剤が挙げられ、中でもジエチルエーテル及びテトラヒドロフランが好ましい。最も好ましい溶剤はテトラヒドロフランである。グリニャール試薬は100〜23℃、更に好ましくは85〜30℃、最も好ましくは75〜65℃の温度で形成される。反応時間は、好ましくは1〜6時間、更に好ましくは2〜5時間、最も好ましくは3〜4時間である。
【0073】
グリニャール試薬を一旦形成すると、アルケニルマグネシウム類から銅酸化物が生じる。銅酸化物を形成するための温度範囲は、−100〜0℃である。好ましい温度範囲は−80〜−20℃、更に好ましくは−75〜−50℃である。好ましい反応時間は30分〜6時間、更に好ましくは45分〜3時間、最も好ましくは1〜1.5時間である。
形成されたアルケンは、当該技術分野における一般技術者に既知の方法で単離する。このような方法には、抽出、溶剤蒸発、蒸留、及び結晶化が含まれるが、これらに限定されない。アルケンは、溶離液として10%EtOAc/ヘキサンを用いたシリカゲル(Merck、230〜400メッシュ)による紫外線クロマトグラフィーにより精製することが好ましい。次に、アルケンを水素化還元剤及び極性プロトン性溶剤と反応させて、C−9アルコールを得る。好ましい還元剤には、水素化アルミニウムリチウム、水素化ホウ素ナトリウム、及びL−セレクトライドが含まれる。更に好ましい還元剤には、水素化ホウ素ナトリウム及びL−セレクトライドが含まれる。最も好ましい還元剤は水素化ホウ素ナトリウムである。好ましい溶剤には、メタノール、エタノール、及びブタノールが含まれる。最も好ましい溶剤はメタノールである。還元は、−100〜23℃の温度で行う。好ましい温度範囲は、−60〜0℃である。最も好ましい温度範囲は−45〜−20℃である。
【0074】
得られたアルコールは、当該技術分野における一般技術者に既知の方法で単離する。このような方法には、抽出、溶剤蒸発、蒸留、及び結晶化が含まれるが、これらに限定されない。アルコールは、溶離液として20%EtOAc/ヘキサンを用いたシリカゲル(Merck、230〜400メッシュ)による紫外線クロマトグラフィーにより精製することが好ましい。
得られたアルコールは、本明細書において上述したように保護することができる。この場合、好ましいシリル化剤には、第三級−ブチルジメチルシリルクロライド及び第三級−ブチルジメチルシリルトリフルオロメタンスルホネートが含まれる。最も好ましいシリル化剤は、第三級−ブチルジメチルシリルトリフルオロメタンスルホネートである。好ましい塩基には、トリエチルアミン、トリメチルアミン、及び2,6−ルチジンが含まれる。更に好ましい塩基には、トリエチルアミン、及び2,6−ルチジンが含まれる。最も好ましい塩基は2,6−ルチジンである。好ましい溶剤にはハロゲン化炭化水素溶剤が挙げられる。この中には最も好ましい溶剤であるジクロロメタンが含まれる。反応は、好ましくは−100〜100℃、更に好ましくは−80〜80℃、最も好ましくは−70〜23℃の温度で進行させる。
【0075】
得られたシリル化化合物は、当該技術分野における一般技術者に既知の方法で単離する。このような方法には、抽出、溶剤蒸発、蒸留、及び結晶化が含まれるが、これらに限定されない。単離後、シリルエーテルを真空下で蒸留して精製することが好ましい。
次に、保護したアルコールを、オスミウム類及び過ヨウ素酸ナトリウムが共に溶解した溶液で処理する。好ましいオスミウム類には、四酸化オスミウム及びオスミウム酸カリウムが含まれる。好ましい溶剤システムには、酢酸:水(1:1)の混合液及び水:酢酸:THF(1:1:2)の混合液が含まれる。この処理により、アルデヒド(S4b)が得られる。
化合物S4bは、当該技術分野における一般技術者に既知の方法で単離する。このような方法には、抽出、溶剤蒸発、蒸留、及び結晶化が含まれるが、これらに限定されない。S4bは、溶離液として20%EtOAc/ヘキサンを用いたシリカゲル(Merck、230〜400メッシュ)による紫外線クロマトグラフィーにより精製することが好ましい。
【0076】
S4bとして示した主要な中間体アルデヒドは、多様な不飽和炭素求核試薬と反応して、C−9及びC−11を保護した13,14−ジヒドロ−16−テトラノルプロスタグランジンF1α誘導体(S4c)を生成することができる。
アルキン求核試薬と反応させるとき、反応は、好ましくは−80〜0℃、更に好ましくは−80〜−20℃、最も好ましくは−80〜−40℃で行う。この反応に好ましい塩基には、n−ブチルリチウム、s−ブチルリチウム、t−ブチルリチウム、及びリチウムジイソプロピルアミド(「LDA」)が含まれる。この反応に好ましい溶剤はエーテル溶剤である。好ましい溶剤には、ジエチルエーテル及びテトラヒドロフランが含まれる。最も好ましい溶剤はテトラヒドロフランである。複素環式求核試薬と反応させるとき、好ましい溶剤はエーテル溶剤が挙げられる。更に好ましいエーテル溶剤には、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、及びテトラヒドロフランが含まれる。最も好ましいエーテル溶剤はテトラヒドロフランである。
【0077】
得られた化合物(S4c)は、次に、当該技術分野における一般技術者に既知の技術を用いて脱保護し、単離して、13,14−ジヒドロ−15−置換型−15−ペンタノルプロスタグランジンF1α誘導体(式VI)を生成することができる。
式VIIとして示した化合物は、当該技術分野における一般技術者に既知の方法により、C−9及びC−11を保護した13,14−ジヒドロ−16−テトラノルプロスタグランジンF1α誘導体(S4c)から直接生成することができる。例えば、S4cのメチルエステルをアミン又はヒドロキシルアミンと縮合して、式VIIとして示した化合物を生成する。これらの化合物は、当該技術分野における一般技術者に既知の方法で単離する。このような方法には、抽出、溶剤蒸発、蒸留、及び結晶化が含まれる。
成分(A)として好適な次式を有するPGFの例には、
【0078】
【化9】

【0079】
クロプロステノール(エストラメイト)、フルプロステノール(イクイメイト)(fluprostenol (equimate))、チアプロスト(tiaprost)、アルファプロストール(alfaprostol)、デルプロステネート(delprostenate)、フロキシプロスト(froxiprost)、9−α、11−α、15−α−トリヒドロキシ−16−(3−クロロフェノキシ)−ω−テトラノル−プロスタ−4−シス−13−トランス−ジエン酸、ラタノプロスト及びその類縁体、13,14−ジヒドロ−16−((3−トリフルオロメチル)フェノキシ)−16−テトラノルプロスタグランジンF1α、17−((3−トリフルオロメチル)フェニル)−17−トリノルプロスタグランジンF2α及びその類縁体、13,14−ジヒドロ−18−チエニル−18−ジノルプロスタグランジンF1α及びその類縁体が含まれる。これに加えて、PGFは、「CRC Handbook of Eicosanoids: Prostaglandins and Related Lipids」I巻(Chemical and Biochemical Aspects、パートB、Anthony L. Willis 編集、CRC Press、Boca Raton、表4、80〜97頁、1987年)[非特許文献16]及びその参照文献にも開示されている。
更に、本発明の好ましいPGFは、PGF:興奮性プロスタグランジン受容体が1:10、好ましくは1:20以上、更に好ましくは1:50以上で、FP受容体として選択性を有する。
【0080】
本発明の組成物 本発明は更に、脱毛症を治療するための組成物に関する。「脱毛症の治療」とは、脱毛を抑制するか、脱毛を改善するか、又はその両方を行って、発毛を促進することを意味する。組成物は、成分(A)上述したPGF、及び成分(B)担体を含有する。組成物は更に、成分(C)1つ以上の任意の活性増強剤を含有することができる。
組成物は、脱毛症を治療又は予防するために投与する医薬品又は化粧品組成物であることができる。これには基本的な医薬品製剤の技術を使用する。この技術には、例えば、「Remington's Pharmaceutical Sciences」(Mack Publishing Company、ペンシルベニア州イーストン、1990年)[非特許文献17]に開示されているものがある。
【0081】
組成物は更に、成分(B)担体を含有する。「担体」とは、哺乳動物に処方するのに好適な、1つ以上の適合性のある物質を意味する。担体には、固体又は液体の希釈物質、ハイドロトープ、表皮活性剤、及びカプセル封入物質が含まれる。「適合性のある」とは、通常の使用状態において、組成物の効果を実質的に減らすと考えられる相互作用を起こさず、組成物の成分がPGF及び他の成分と混じり合うことができることを意味する。担体は、治療する哺乳動物に処方するのに好適となるように、十分に純度の高いもの、及び十分に毒性の低いものでなくてはならない。担体は不活性であってもよく、又は医薬品としての有用性、化粧品としての有用性、若しくはその両方を有していてもよい。
成分(B)の担体は、(A)PGFが投与されると考えられる経路及び組成物の形態に基づいて選択する。組成物は、例えば、組織吸収投与(経口、直腸、鼻腔、舌下、口腔、非経口など)又は局所投与(部分的経皮投与、点眼、リポソームデリバリーシステム、イオン導入など)に好適な多様な形態を取ることができる。発毛を希望する部分に直接局所投与することが好ましい。
【0082】
組織吸収投与用の担体は、典型的に(a)希釈物質、(b)潤滑剤、(c)結合剤、(d)崩壊剤、(e)着色剤、(f)香料、(g)甘味剤、(h)酸化防止剤、(j)防腐剤、(k)流動促進剤、(m)溶剤、(n)懸濁剤、(o)界面活性剤、これらの組み合せ、及びその他の成分から成る群から選択される1つ以上の成分を含有する。
成分(a)は希釈物質である。好適な希釈物質には、糖(グルコース、ラクトース、ブドウ糖、スクロースなど)、多価アルコール(プロピレングリコールなど)、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、グリセリン、マンニトール、ソルビトール、及びマルトデキストリンが含まれる。
成分(b)は潤滑剤である。好適な潤滑剤の例には、固体の潤滑剤(シリカ、タルク、ステアリン酸並びにそのマグネシウム塩及びカルシウム塩、硫酸カルシウムなど)及び液体の潤滑剤(ポリエチレングリコール、植物油など)が挙げられる。植物油には、ピーナッツオイル、綿実油、ゴマ油、オリーブオイル、コーン油、及びカカオ油などがある。
【0083】
成分(c)は結合剤である。好適な結合剤には、ポリビニルピロリドン、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、デンプン(コーンスターチ、ポテトスターチなど)、ゼラチン、トラガカント、セルロース及びその誘導体(カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、メチルセルロース、微結晶セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなど)、カルボマー、プロビドン、アカシア、グアーゴム、キサンタンゴムが含まれる。
成分(d)は崩壊剤である。好適な崩壊剤には、寒天、アルギン酸及びそのナトリウム塩、発泡性混合物、クロスカルメロース、クロスポビドン、カルボキシメチルデンプンナトリウム、グリコール酸ナトリウムデンプン、粘土、及びイオン交換樹脂が含まれる。
成分(e)は、FD&C色素のような着色剤である。
成分(f)は、メンソール、ペパーミント、及び果実フレーバのような香料である。
成分(g)は、サッカリン及びアスパルテームのような甘味剤である。
成分(h)は、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、及びビタミンE酸化防止剤である。
【0084】
成分(j)は防腐剤(例えば、フェノール、パラヒドロキシ安息香酸のアルキルエステル、安息香酸及びそれらの塩、ホウ酸及びそれらの塩、ソルビン酸及びそれらの塩、クロロブタノール、ベンジルアルコール、チメロサール、酢酸フェニル水銀及び硝酸フェニル水銀、ニトロメルソール、塩化ベンザルコニウム、塩化セチルピリジニウム、メチルパラベン、及びプロピルパラベン)である。特に好ましい防腐剤は、安息香酸の塩、塩化セチルピリジニウム、メチルパラベン、プロピルパラベン、及び安息香酸ナトリウムである。
成分(k)は、シリコーンジオキシドのような流動促進剤である。
成分(m)は溶剤(例えば、水、等張(生理)食塩水、オレイン酸エチル、アルコール(エタノールなど)、グリセリン、グリコール(ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、及び緩衝液(リン酸塩、酢酸カリウム、ホウ酸、炭素、リン酸、コハク酸、リンゴ酸、歯石酸、クエン酸、酢酸、安息香酸、乳酸、グリセリン酸、グルコン酸、グルタル酸、グルタミン酸など))である。
成分(n)懸濁剤である。好適な懸濁剤には、FMC Corporation(ペンシルベニア州フィラデルフィア)から市販されている AVICEL(登録商標)RC−591、及びアルギン酸ナトリウムが含まれる。
成分(o)は界面活性剤(例えば、レシチン、ポリソルベート80、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンモノアルキルエーテル、スクロースモノエステル、ラノリンエステル、及びラノリンエーテル)である。好適な界面活性剤は当該技術分野において既知であり、例えば、Atlas Powder Company(デラウェア州ウィルミングトン)から TWEENS(登録商標)として市販されている。
【0085】
非経口投与用の組成物は、典型的に(A)0.1〜10%のPGF及び(B)90〜99.9%の担体を含有する。担体には(a)希釈物質及び(m)溶剤が含まれる。成分(a)はプロピレングリコール、成分(m)はエタノール又はオレイン酸エチルであることが好ましい。
経口投与用の組成物は、多様な剤形を有することができる。例えば、固体の形態には、錠剤、カプセル剤、粒剤、及び混合散剤が含まれる。これらの経口剤形は、(A)PGFの安全及び有効な量を含有し、通常少なくとも5%、好ましくは25〜50%を含有する。経口剤組成物は更に、50〜95%、好ましくは50〜75%の(B)担体を含有する。
【0086】
錠剤は、圧縮錠、湿製錠剤、腸溶錠、糖衣錠、フィルムコート錠、又は多重圧縮錠であることができる。錠剤は、典型的に(A)PGF及び(B)担体を含有し、担体には(a)希釈物質、(b)潤滑剤、(c)結合剤、(d)崩壊剤、(e)着色剤、(f)香料、(g)甘味剤、(k)流動促進剤、及びこれらの組み合せから成る群から選択される成分が含まれる。好ましい希釈物質には、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、マンニトール、ラクトース、及びセルロースが含まれる。好ましい結合剤には、デンプン、ゼラチン、及びスクロースが含まれる。好ましい崩壊剤には、アルギン酸及びクロスカルメロースが含まれる。好ましい潤滑剤には、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、及びタルクが含まれる。好ましい着色剤にはFD&C色素が含まれる。着色剤は外観のために添加することができる。咀しゃく錠は、(g)甘味剤(アスパルテーム、サッカリンなど)又は(f)香料(メンソール、ペパーミント、果実フレーバなど)を含有することが好ましい。
【0087】
カプセル剤(持効性薬剤及び持続放出性製剤を含む)は、典型的に、ゼラチンから構成されるカプセル中に(A)PGF及び(B)担体を含有し、担体には、1つ以上の上記に示した(a)希釈物質が含まれる。粒剤は、典型的に(A)PGFを含有し、流動特性を向上するために、更に(k)流動促進剤(シリコーンジオキシドなど)を含有することが好ましい。
経口組成物の担体成分の選択は、第二に、味、費用、貯蔵性などを考慮するが、これらは本発明の目的にとって重要ではない。当該技術分野における技術者は、必要以上の実験を行わなくても、適切な成分を選択して最適化することができる。
固体の組成物は、従来の方法によりコーティングすることもできる。典型的には、組成物はpH又は時間に依存するコーティングを有し、その結果、望ましい作用が拡大するように、(A)PGFを多様な時間で消化管内に放出する。コーティングは典型的に、酢酸フタル酸セルロース、ポリ酢酸フタル酸ビニル、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロース、アクリル樹脂(例えば、Rohm & Haas G.M.B.H.(ドイツ、ダルムシュタット)から市販されている EUDRAGIT(登録商標)コーティングなど)、ろう、セラック、ポリビニルピロリドン、及びその他の市販されているフィルムコーティング調製品(例えば、Crompton & Knowles Corp.(ニュージャージー州マーワ−)が製造している Dri-Klear 又は Colorcon, Inc.(ペンシルベニア州ウエストポイント)が製造している OPADRY(登録商標)など)から成る群から選択される1つ以上の成分を含有する。
【0088】
経口投与用の組成物は、液体の形態を取ることもできる。例えば、好適な液体の形態には、水溶液、乳濁液、懸濁液、非発泡性の粒剤から調製する溶液、非発泡性の粒剤から調製する懸濁液、発泡性の粒剤から調製する発泡性製剤、エリキシル剤、チンキ剤、シロップ剤などが含まれる。液状経口投与組成物は、典型的に(A)PGF及び(B)担体を含有し、担体には、(a)希釈物質、(e)着色剤、(f)香料、(g)甘味剤、(j)防腐剤、(m)溶剤、(n)懸濁剤、及び(o)界面活性剤から成る群から選択される成分が含まれる。経口液状組成物は、(e)着色剤、(f)香料、及び(g)甘味剤から成る群から選択される1つ以上の成分を含有することが好ましい。
主題化合物を全身に送達するのに有用な、その他の組成物としては、舌下、バッカル、及び鼻腔用の形態が挙げられる。このような組成物は、典型的に1つ以上の可溶性充填物質を含有する。この充填物質には、(a)希釈物質(スクロース、ソルビトール、マンニトールなど)、及び(c)結合剤(アカシア、微結晶セルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなど)が挙げられる。このような組成物は、更に(b)潤滑剤、(e)着色剤、(f)香料、(g)甘味剤、(h)酸化防止剤、及び(k)流動促進剤を含有することができる。
【0089】
組成物は、更に、成分(C)任意の活性増強剤を含有することができる。成分(C)は、(i)発毛刺激剤(PGFとは異なるもの)及び(ii)浸透増強剤から成る群から選択されることが好ましい。
成分(i)は任意の発毛刺激剤である。成分(i)の例には、血管拡張剤、抗アンドロゲン剤、シクロスポリン、シクロスポリン類縁体、抗菌剤、抗炎症剤、甲状腺ホルモン、甲状腺ホルモン誘導体、甲状腺ホルモン類縁体、非選択性プロスタグランジン作用物質又は拮抗物質、レチノイド、トリテルペン、これらの組み合せ、及びその他の成分が挙げられる。「非選択性プロスタグランジン」作用物質及び拮抗物質は、FP受容体を選択的に活性化せず、その他の受容体を活性化することができるという点で、成分(A)とは異なっている。
血管拡張剤(カリウムチャンネル作用物質など)は、任意の発毛刺激剤として組成物に使用することができる。このカリウムチャンネル作用物質には、ミノキシジル及びミノキシジル誘導体(アミンキシル、及び米国特許第3,382,247号[特許文献11]、米国特許第5,756,092号[特許文献12]、米国特許第5,772,990号[特許文献13]、米国特許第5,760,043号[特許文献14]、米国特許第5,466,694号[特許文献15]、米国特許第5,438,058号[特許文献16]、米国特許第4,973,474号[特許文献17]に記述されているものを含む)、クロマカリン、及びジアゾキシドが含まれる。
【0090】
好適な抗アンドロゲン剤の例には、5−α−還元酵素阻害物質が挙げられる。この阻害物質には、例えば、フィナステライド、米国特許第5,516,779号[特許文献18]に記述されているもの、Nane らの Cancer Research 58「Effects of Some Novel Inhibitors of C17, 20−Lyase and 5α−Reductase in vitro and in vivo and Their Potential Role in the Treatment of Prostate Cancer」[非特許文献18]に記載されているもの、酢酸シプロテロン、アゼライン酸及びその誘導体、米国特許第5,480,913号[特許文献19]に記載されている化合物、フルタミド、並びに米国特許第5,411,981号[特許文献20]、米国特許第5,565,467号[特許文献21]、及び米国特許第4,910,226号[特許文献22]に記載されている化合物が含まれる。
抗菌剤には、硫化セレン、ケトコナゾール、トリクロカルバン、トリクロサン、ジンクピリチオン、イトラコナゾール、アジア酸、ヒノキチオール、ムピロシン及び欧州特許第0,680,745号[特許文献23]に記述されているもの、塩酸クリナシシン、過酸化ベンゾイル、過酸化ベンジル、及びミノサイクリンが含まれる。
【0091】
好適な抗炎症剤の例には、糖質コルチコイド(ヒドロコルチゾン、フランカルボン酸モメタゾン、プレドニゾロンなど)、非ステロイド系抗炎症剤(シクロオキシゲナーゼ又はリポキシゲナーゼ阻害物質(例えば、米国特許第5,756,092号[特許文献24]に記述されているもの)、及びベンジダミンなど)、サリチル酸、及び欧州特許第0,770,399号(1997年5月2日公開[特許文献25])、WO94/06434号(1994年3月31日公開)[特許文献26]、及び仏国特許第2,268,523号(1975年11月21日公開)[特許文献27]に記述されている化合物が含まれる。
3,5,3'−トリヨードサイロニンは、好適な甲状腺ホルモンの例である。
好適な非選択性プロスタグランジン作用物質及び拮抗物質の例には、WO98/33497号(Johnstone、1998年8月6日公開)[特許文献28]、WO95/11003号(Stjernschantz、1995年4月27日公開)[特許文献29]、日本特許第97−100091号(Ueno)[特許文献30]、及び日本特許第96−134242号(Nakamura)[特許文献31]に記述されている化合物が挙げられる。
好適なレチノイドには、イソトレチノイン、アシトレチン、及びタザロテンが含まれる。
【0092】
その他の任意の成分(i)発毛刺激剤には、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、フェノール、エストラジオール、マレイン酸クロルフェニラミン、クロロフィリン誘導体、コレステロール、サリチル酸、システイン、メチオニン、赤トウガラシチンキ剤、ベンジルニコチネート、D,L−メンソール、ペパーミントオイル、パントテン酸カルシウム、パンテノール、ヒマシ油、プレドニゾロン、レゾルシノール、タンパク質キナ−ゼCの化学活性化剤、グリコサミノグリカン鎖細胞接種阻害物質、グリコシダーゼ活性の阻害物質、グリコサミノグリカナーゼ阻害物質、ピログルタミン酸のエステル、ヘキソサッカリン酸又はアシル化ヘキソサッカリン酸、アリール−置換型エチレン、N−アシル化アミノ酸、フラビノイド、アスコマイシン誘導体及び類縁体、ヒスタミン拮抗物質(塩酸ジフェンヒドラミンなど)、トリテルペン(オレアノール酸、ウルソール酸、及び米国特許第5,529,769号[特許文献32]、米国特許第5,468,888号[特許文献33]、米国特許第5,631,282号[特許文献34]、米国特許第5,679,705号[特許文献35]、日本特許第10017431号[特許文献36]、WO95/35103号[特許文献37]、日本特許第09067253号[特許文献38]、WO92/09262号[特許文献39]、日本特許第62093215号[特許文献40]、及び日本特許第08193094号[特許文献41]に記述されているものなど)、サポニン(欧州特許第0,558,509号(Bonte ら、1993年9月8日公開)[特許文献42]及びWO97/01346号(Bonte ら、1997年1月16日公開)[特許文献43]に記述されているものなど)、プロテオグリカナーゼ又はグリコサミノグリカナーゼ阻害物質(米国特許第5,015,470号[特許文献44]、米国特許第5,300,284号[特許文献45]、及び米国特許第5,185,325号[特許文献46]に記述されているものなど)、エストロゲン作用物質及び拮抗物質、プソイドテリン、サイトカイン及び発育因子促進物質、類縁体又は阻害物質(インターロイキン1阻害物質、インターロイキン−6阻害物質、インターロイキン−10促進物質、腫瘍壊死因子阻害物質など)、ビタミン(ビタミンD類縁体及び副甲状腺ホルモン拮抗物質、ビタミンB12類縁体及びパンテノールなど)、インターフェロン作用物質及び拮抗物質、ヒドロキシ酸(米国特許第5,550,158号[特許文献47]に記述されているものなど)、ベンゾフェノン、ヒダントイン抗痙攣剤(フェニトインなど)、及びこれらの組み合せが含まれる。
【0093】
その他追加の発毛刺激剤は、日本特許第09−157,139号(Tsuji ら、1997年6月17日公開)[特許文献48]、欧州特許第0277455A1号(Mirabeau、1988年8月10日公開)[特許文献49]、WO97/05887号(Cabo Soler ら、1997年2月20日公開)[特許文献50]、WO92/16186号(Bonte ら、1992年3月13日公開)[特許文献51]、日本特許第62−93215号(Okazaki ら、1987年4月28日公開)[特許文献52]、米国特許第4,987,150号(Kurono ら、1991年1月22日発行)[特許文献53]、日本特許第290811号(Ohba ら、1992年10月15日公開)[特許文献54]、日本特許第05−286,835号(Tanaka ら、1993年11月2日公開)[特許文献55]、仏国特許第2,723,313号(Greff、1994年8月2日公開)[特許文献56]、米国特許第5,015,470号(Gibson、1991年5月14日発行)[特許文献57]、米国特許第5,559,092号(1996年9月24日発行)[特許文献58]、米国特許第5,536,751号(1996年7月16日発行)[特許文献59]、米国特許第5,714,515号(1998年2月3日発行)[特許文献60]、欧州特許第0,319,991号(1989年6月14日公開)[特許文献61]、欧州特許第0,357,630号(1988年10月6日公開)[特許文献62]、欧州特許第0,573,253号(1993年12月8日公開)[特許文献63]、日本特許第61−260010号(1986年11月18日公開)[特許文献64]、米国特許第5,772,990号(1998年6月30日発行)[特許文献65]、米国特許第5,053, 410号(1991年10月1日発行)[特許文献66]、及び米国特許第4,761,401号(1988年8月2日発行)[特許文献67]に記述されている。
【0094】
最も好ましい活性増強剤はミノキシジル及びフィナステライドであり、最も好ましいのはミノキシジルである。
【0095】
成分(ii)は、すべての組織吸収投与用の組成物に添加が可能な浸透増強剤である。成分(ii)の量は、組成物中に存在する場合、典型的に1〜5%である。浸透増強剤の例には、2−メチルプロペン−2−オル、プロパン−2−オル、エチル−2−ヒドロキシプロパノエート、ヘキサン−2,5−ジオール、ポリオキシエチレン(2)エチルエーテル、ジ(2−ヒドロキシプロピル)エーテル、ペンタン−2,4−ジオール、アセトン、ポリオキシエチレン(2)メチルエーテル、2−ヒドロキシプロピオン酸、2−ヒドロキシオクタン酸、プロパン−1−オル、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、ブタン−1,4−ジオール、プロピレングリコールジペラルゴネート、ポリオキシプロピレン15ステアリルエーテル、オクチルアルコール、オレイルアルコールのポリオキシエチレンエステル、オレイルアルコール、ラウリルアルコール、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ジカプリル、アジピン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジブチル、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジメチル、セバシン酸ジオクチル、セバシン酸ジブチル、アゼライン酸ジオクチル、セバシン酸ジベンジル、フタル酸ジブチル、アゼライン酸ジブチル、ミリスチン酸エチル、アゼライン酸ジメチル、ミリスチン酸ブチル、コハク酸ジブチル、フタル酸ジデシル、オレイン酸デシル、カプロン酸エチル、サリチル酸エチル、パルミチン酸イソプロピル、ラウリン酸エチル、2−エチル−ヘキシルペラルゴネート、イソステアリン酸イソプロピル、ラウリン酸ブチル、安息鉱酸ベンジル、安息鉱酸ブチル、ラウリン酸ヘキシル、カプリン酸エチル、カプリル酸エチル、ステアリン酸ブチル、サリチル酸ベンジル、2−ヒドロキシプロパン酸、2−ヒドロキシオクタン酸、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、2−ピロリドン、1−メチル−2−ピロリドン、5−メチル−2−ピロリドン、1,5−ジメチル−2−ピロリドン、1−エチル−2−ピロリドン、ホスフィンオキシド、糖エステル、テトラヒドロフルフラールアルコール、尿素、ジエチル−m−トルアミド、1−ドデシルアザシロヘプタン−2−オン、オメガ−3脂肪酸及び魚油、及びこれらの組み合せが含まれる。
【0096】
本発明の好ましい実施例では、PGFを局所的に投与する。皮膚に部分的に適用することができる局所適用組成物は、溶液、オイル、クリーム、軟膏、ジェル、ローション、シャンプー、リーブオン型及びリンスアウト型ヘアコンディショナー、乳液、洗浄剤、加湿剤、スプレー、皮膚貼付剤などを含むいずれの形態であってもよい。局所適用組成物は、成分(A)上述したPGF及び成分(B)担体を含有する。局所適用組成物の担体は、PGFが皮膚に浸透して毛嚢環境に到達するのを補助するものが好ましい。局所適用組成物は更に、成分(C)上述した1つ以上の任意の活性増強剤を含有することが好ましい。
局所適用組成物中の各成分の正確な量は、様々な要因によって決まる。成分(A)の量は、選択したPGFのIC50による。「IC50」とは、阻害濃度の第50百部位数を意味する。局所適用組成物に添加する成分(A)の量は次式に従う。
【0097】
IC50×10-2≧成分(A)の(%)≧IC50×10-3 式中、IC50はナノモルの単位で表す。例えば、PGFのIC50が1ナノモルの場合、成分(A)の量は0.001〜0.01%であると考えられる。PGFのIC50が10ナノモルの場合、成分(A)の量は0.01〜0.1%であると考えられる。PGFのIC50が100ナノモルの場合、成分(A)の量は0.1〜1.0%であると考えられる。PGFのIC50が1000ナノモルの場合、成分(A)の量は1.0〜10%、好ましくは1.0〜5%であると考えられる。成分(A)の量が上記に規定した範囲に入らない場合(つまり、上記の値より高いか低い場合)、治療効果が下がることがある。IC50は、以下の参照例1の方法に従って計算することができる。当該技術分野における技術者は、過剰な実験を行わなくても、IC50を計算することができる。
【0098】
局所適用組成物は更に、1〜20%の成分(C)を含有し、成分(A)、(B)、及び(C)が合わせて100%の量となるように成分(B)の十分な量を含有することが好ましい。PGFと共に使用する(B)担体の量は、PGFの1回投与量につき、組成物の投与量が実用的な量となるような十分な量である。本発明の方法において有用な剤形を製造するための技術及び組成物は、以下の参考文献:「Modern Pharmaceutics」第9及び10節(Banker及びRhodes著、1979年)[非特許文献19];「Pharmaceutical Dosage Forms: Tablets」(Liebermanら、1981年)[非特許文献20];及び、「Introduction to Pharmaceutical Dosage Forms」、第2版、(Ansel、1976年)[非特許文献21]に記載されている。
成分(B)担体は、単一成分のみを含有しても、2つ以上の成分の組み合せを含有していてもよい。局所適用組成物中の成分(B)は、局所用の担体である。好ましい局所用担体は、水、アルコール、アロエベラゲル、アラントイン、グリセリン、ビタミンA及びE油、鉱油、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール−2ミリスチルプロピオネート、ジメチルイソソルビド、及びこれらの組み合せなどから成る群から選択される1つ以上の成分を含有する。更に好ましい担体には、プロピレングリコール、ジメチルイソソルビド、及び水が含まれる。
【0099】
局所用担体は、上記に示した好ましい局所用担体成分に加えて、あるいはこれらの成分の代わりに、(q)皮膚軟化剤、(r)噴射剤、(s)溶剤、(t)保湿剤、(u)増粘剤、(v)粉剤、及び(w)香剤から成る群から選択される1つ以上の成分を含有することができる。当該技術分野における技術者は、過剰な実験を行わなくても、局所適用組成物の担体成分を最適化することができる。
成分(q)は皮膚軟化剤である。局所適用組成物中の成分(q)の量は、典型的に5〜95%である。好適な皮膚軟化剤には、ステアリルアルコール、グリセリルモノリシノレエート、グリセリルモノステアレート、プロパン−1,2−ジオール、ブタン−1,3−ジオール、ミンク油、セチルアルコール、イソステアリン酸イソプロピル、ステアリン酸、パルミチン酸イソブチル、ステアリン酸イソセチル、オレイルアルコール、ラウリン酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、オレイン酸デシル、オクタデカン−2−オル、イソセチルアルコール、パルミチン酸セチル、セバシン酸ジ−n−ブチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ポリエチレングリコール、トリエチレングリコール、ラノリン、ゴマ油、ココヤシ油、落花生油、ヒマシ油、アセチル化ラノリンアルコール、ワセリン、鉱油、ミリスチン酸ブチル、イソステアリン酸、パルミチン酸、リノール酸イソプロピル、乳酸ラウリル、乳酸ミリスチル、オレイン酸デシル、ミリスチン酸ミリスチル、ポリジメチルシロキサン、及びこれらの組み合せが含まれる。好ましい皮膚軟化剤には、ステアリルアルコール及びポリジメチルシロキサンが含まれる。
【0100】
成分(r)は噴射剤である。局所適用組成物中の成分(r)の量は、典型的に5〜95%である。好適な噴射剤には、プロパン、ブタン、イソブタン、ジメチルエーテル、二酸化炭素、笑気、及びこれらの組み合せが含まれる。
成分(s)は溶剤である。局所適用組成物中の成分(s)の量は、典型的に5〜95%である。好適な溶剤には、水、エチルアルコール、メチレンクロライド、イソプロパノール、ヒマシ油、エチレングリコール、モノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、及びこれらの組み合せが含まれる。好ましい溶剤にはエチルアルコールが含まれる。
成分(t)は保湿剤である。局所適用組成物中の成分(t)の量は、典型的に5〜95%である。好適な保湿剤には、グリセリン、ソルビトール、2−ピロリドン−5−カルボン酸ナトリウム、可溶性コラーゲン、フタル酸ジブチル、ゼラチン、及びこれらの組み合せが含まれる。好ましい保湿剤にはグリセリンが含まれる。
【0101】
成分(u)は増粘剤である。局所適用組成物中の成分(u)の量は、典型的に0〜95%である。
成分(v)は粉剤である。局所適用組成物中の成分(v)の量は、典型的に0〜95%である。好適な粉剤には、チョーク、タルク、フラー土、カオリン、デンプン、歯肉、コロイド状シリコンジオキシド、ポリアクリル酸ナトリウム、テトラアルキルアンモニウムスメクタイト、トリアキルアリールアンモニウムスメクタイト、化学修飾ケイ酸アルミニウムマグネシウム、有機修飾モンモリロナイト(質)粘土、水和ケイ酸アルミニウム、燻蒸シリカ、カルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチレングリコール、モノステアレート、及びこれらの組み合せが含まれる。
【0102】
成分(w)は香剤である。局所適用組成物中の成分(w)の量は、典型的に0.001〜0.5%、好ましくは0.001〜0.1%である。
成分(C)任意の活性増強剤は、上述したとおりである。(i)発毛刺激剤及び(ii)浸透増強剤のいずれも、局所適用組成物に添加することができる。好ましくは、局所適用組成物は、0.01〜15%の成分(i)任意の発毛刺激剤を含有する。局所適用組成物は、更に好ましくは0.1〜10%、最も好ましくは0.5〜5%の成分(i)を含有する。好ましくは、局所適用組成物は、1〜5%の成分(ii)を含有する。
本発明の別の実施例では、従来の方法により、点眼投与の局所適用医薬組成物を調製する。点眼投与用の局所適用医薬組成物は、典型的に(A)PGF、(B)担体(精製水など)を含有し、(y)糖(デキストラン、特にデキストラン70など)、(z)セルロース又はその誘導体、(aa)塩、(bb)EDTA二ナトリウム(エデト酸二ナトリウム)、(cc)pH調整添加物から成る群から選択される1つ以上の成分を含有する。
【0103】
点眼投与用の局所適用医薬組成物に使用するのに好適な(z)セルロース誘導体の例には、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、メチルセルロース、及びヒドロキシプロピルメチルセルロースが含まれる。好ましいのはヒドロキシプロピルメチルセルロースである。
点眼投与用の局所適用医薬組成物に使用するのに好適な(aa)塩の例には、塩化ナトリウム、塩化カリウム、及びこれらの組み合せが含まれる。
(cc)pH調整添加物の例には、点眼投与用の局所適用医薬組成物のpHを7.2〜7.5に調整するのに十分な量のHCl又はNaOHが含まれる。
【0104】
本発明は更に、毛髪を黒化及び増量し、白髪を食い止めるための方法に関する。この方法には、毛髪、毛髪部位の皮膚、又はその両方に、脱毛症治療用の局所適用組成物を適用することが含まれる。例えば、局所適用組成物は、頭皮又は睫毛における育毛のために適用することができる。局所適用組成物は、例えば、上述したように調製した化粧品組成物であることができる。睫毛に適用することができる組成物の例には、マスカラが挙げられる。PGFは、当該技術分野において既知のマスカラ組成物に添加することができる。これには例えば、米国特許第5,874,072号に記述されているマスカラがある。この特許は参照として本明細書に組み込まれている。マスカラは、更に(dd)非水溶性物質、(ee)水溶性フィルム形成ポリマー、(ff)ろう、(o)界面活性剤、(gg)色素、及び(s)溶剤を含有する。
成分(dd)は非水溶性物質であり、アクリレートコポリマー、スチレン/アクリレート/メタクリレートコポリマー、アクリルラテックス、スチレン/アクリルエステルコポリマーラテックス、ポリビニルアセテートラテックス、ビニルアセテート/エチレンコポリマーラテックス、スチレン/ブタジエンコポリマーラテックス、ポリウレタンラテックス、ブタジエン/アクリロニトリルコポリマーラテックス、スチレン/アクリレート/アクリロニトリルコポリマーラテックス、及びこれらの混合物から成る群から選択される。
このとき、アクリレートコポリマー及びスチレン/アクリレート/メタクリレートコポリマーは、更に、アンモニア、プロピレングリコール、防腐剤及び界面活性剤を含有する。
【0105】
成分(ee)は水溶性フィルム形成ポリマーである。成分(ee)は、ビニルアルコール/ポリ(アルキレンオキシ)アクリレート、ビニルアルコール/ビニルアセテート/ポリ(アルキレンオキシ)アクリレート、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、アクリレート/オクチル−アクリルアミドコポリマー、及びこれらの混合物から成る群から選択される。
成分(ff)はろうである。「ろう」とは、低温で融解する高分子量の有機混合物又は化合物であり、室温では固体であって、グリセリドを含有しない以外は一般に油脂と類似である組成物を意味する。一部は炭化水素であり、その他は脂肪酸のエステル及びアルコールである。本発明において有用なろうは、動物ろう、植物ろう、地ろう、多様な天然ろうの分留物、合成ろう、石油ろう、エチレンポリマー、炭化水素類(Fischer−Tropsch ワックスなど)、シリコーンワックス、及びこれらの混合物から成る群から選択される。このとき、ろうは55〜100℃の融点を有する。
【0106】
成分(o)は界面活性剤であり、上述したとおりである。マスカラにおける成分(o)は、3〜15のHLBを有する界面活性剤であることが好ましい。好適な界面活性剤には、「C.T.F.A. Cosmetic Ingredient Handbook」(587〜592頁、1992年)[非特許文献22]、「Remington's Pharmaceutical Sciences」(第15版、335〜337頁、1975年)[非特許文献23]、及び「McCutcheon's Volume 1, Emulsifiers & Detergents」(北米版、236〜239頁、1994年)[非特許文献24]に開示されているものが含まれる。
成分(gg)は色素である。好適な色素には、無機色素、有機レーキ色素、真珠光沢色素、及びこれらの混合物が含まれる。本発明において有用な無機色素には、ルチル又はアナターゼ二酸化チタン(参照番号CI77,891として Color Index に記載されている)、黒色、黄色、赤色及び茶色酸化鉄(参照番号CI77,499、77,492、及び77,491として記載されている)、マンガンバイオレット(CI77,742)、ウルトラマリンブルー(CI77,007)、酸化クロム(CI77,288)、抱水クロム(CI77,289)、及び鉄青色(CI77,510)、及びこれらの混合物から成る群から選択されるものが含まれる。
【0107】
本発明において有用な有機色素及びレーキには、D&C(医薬品及び化粧品用)赤色No.19(CI45,170)、D&C赤色No.9(CI15,585)、D&C赤色No.21(CI45,380)、D&C橙色No.4(CI15,510)、D&C橙色No.5(CI45,370)、D&C赤色No.27(CI45,410)、D&C赤色No.13(CI15,630)、D&C赤色No.7(CI15,850)、D&C赤色No.6(CI15,850)、D&C黄色No.5(CI19,140)、D&C赤色No.36(CI12,085)、D&C橙色No.10(CI45,425)、D&C黄色No.6(CI15,985)、D&C赤色No.30(CI73,360)、D&C赤色No.3(CI45,430)、及びコチニールカルミン(CI75,570)に基づく染料又はレーキ、及びこれらの混合物から成る群から選択されるものが含まれる。
【0108】
本発明において有用な真珠光沢色素には、白色真珠光沢色素(酸化チタンで表面加工を施した雲母など)、オキシ塩化ビスマス、有色真珠光沢色素(酸化鉄を有するチタン雲母、鉄青色を有するチタン雲母、酸化クロムなど)、上述した種類の有機色素を有するチタン雲母、並びにオキシ塩酸ビスマスに基づくもの、及びこれらの混合物から成る群から選択されるものが含まれる。
成分(s)は上記に記述した溶剤であり、水が好ましい。
マスカラに添加する(A)PGFの量は、局所適用組成物で上述したとおりである。
また、PGFは、リポソームデリバリーシステムの形態で投与することもできる。これには例えば、小単一膜小胞、大単一膜小胞、及び多重膜小胞が挙げられる。リポソームは、コレステロール、ステアリルアミン又はホスファチジルコリン類等の、多様なリン脂質から形成することができる。本化合物の局所デリバリーにとって好ましい製剤は、Dowton らの「Influence of Liposomal Composition on Topical Delivery of Encapsulated Cyclosporin A: I. An in vitro Study Using Hairless Mouse Skin」(S.T.P. Pharma Sciences、3巻、404〜407頁、1993年)[非特許文献25]、Wallach 及び Philippot の「New Type of Lipid Vesicle: Novasome(登録商標)」(Liposome Technology、1巻、141〜156頁、1993年)[非特許文献26]、Wallach の米国特許第4,911,928号(Micro−Pak, Inc.、1990年3月27日発行)[特許文献68]、及び Weiner らの米国特許第5,834,014号(ミシガン大学及び Micro−Pak, Inc.、1998年11月10日発行)[特許文献69]に記述されているようなリポソームを使用する(Weiner らの特許に関しては、ミノキシジルの代わりに、あるいはミノキシジルに加えて、本明細書に記述した化合物を適用する)。
【0109】
PGFはイオン導入により投与することもできる。例えば、インターネットサイト www.unipr.it/arpa/dipfarm/erasmus/erasm14.html、Banga らの「Hydrogel-based Iontotherapeutic Delivery Devices for Transdermal Delivery of Peptide/Protein Drugs」(Pharm. Res.、10巻(5)、697〜702頁、1993年)[非特許文献27]、Ferry の「Theoretical Model of Iontophoresis Utilized in Transdermal Drug Delivery」(Pharmaceutical Acta Helvetiae、70巻、279〜287頁、1995年)[非特許文献28]、Gangarosa らの「Modern Iontophoresis for Local Drug Delivery」(Int. J. Pharm.、123巻、159〜171頁、1995年)[非特許文献29]、Green らの「Iontophoretic Delivery of a Series of Tripeptides Across the Skin in vitro」(Pharm. Res.、8巻、1121〜1127頁、1991年)[非特許文献30]、Jadoul らの「Quantification and Localization of Fentanyl and TRH Delivered by Iontophoresis in the Skin」(Int. J. Pharm.、120巻、221〜8頁、1995年)[非特許文献31]、O'Brien らの「An Updated Review of its Antiviral Activity, Pharmacokinetic Properties and Therapeutic Efficacy」(Drugs、37巻、233〜309頁、1989年)[非特許文献32]、Parry らの「Acyclovir Biovailability in Human Skin」(J. Invest. Dermatol.、98巻(6)、856〜63頁、1992年)[非特許文献33]、Santi らの「Drug Reservoir Composition and Transport of Salmon Calcitonin in Transdermal Iontophoresis」(Pharm. Res.、14巻(1)、63〜66頁、1997年)[非特許文献34]、Santi らの「Reverse Iontophoresis - Parameters Determining Electroosmotic Flow: I. pH and Ionic Strength」(J. Control. Release、38巻、159〜165頁、1996年)[非特許文献35]、Santi らの「Reverse Iontophoresis - Parameters Determining Electroosmotic Flow: II. Electrode Chamber Formulation」(J. Control. Release、42巻、29〜36頁、1996年)[非特許文献36]、Rao らの「Reverse Iontophoresis: Noninvasive Glucose Monitoring in vivo in Humans」(Pharm. Res.、12巻(12)、1869〜1873頁、1995年)[非特許文献37]、Thysman らの「Human Calcitonin Delivery in Rats by Iontophoresis」(J. Pharm. Pharmacol.、46巻、725〜730頁、1994年)[非特許文献38]、及び Volpato らの「Iontophoresis Enhances the Transport of Acyclovir through Nude Mouse Skin by Electrorepulsion and Electroosmosis」(Pharm. Res.、12巻(11)、1623〜1627頁、1995年)[非特許文献39]を参照のこと。
【0110】
PGFはキットに入れることができる。このキットは、PGF、上述した組織吸収組成物又は局所適用組成物、又はその両方、及びこのキットを使用することにより哺乳動物(特にヒト)における脱毛症の治療が提供されるという情報、説明、又はその両方が含まれる。この情報及び説明は、文章の形態、絵の形態、又はその両方の形態などであってもよい。これに加えて又はこれとは別に、キットは、プロスタグランジン、組成物、又はその両方、及びプロスタグランジン又は投与方法に関する情報、説明、又はその両方を含むことができ、好ましくは、哺乳動物における脱毛症治療の利点を含むことが好ましい。
【0111】
本発明の方法 本発明は更に、哺乳動物における脱毛症の治療方法に関する。この方法には、脱毛症の哺乳動物(ヒトが好ましい)に上述したPGFを投与することが含まれる。例えば、男性型脱毛症及び女性型脱毛症を含め、脱毛症であると診断された哺乳動物は、本発明の方法により治療することができる。(A)PGF及び(B)担体を含有する組織吸収組成物又は局所適用組成物を、哺乳動物に投与することが好ましい。組成物が(A)PGF、(B)担体、及び(C)任意の活性増強剤を含有する局所適用組成物であるとき、更に好ましい。
投与するPGFの用量は投与方法によって決まる。組織吸収投与(例えば、経口、直腸、鼻腔、舌下、口腔、又は非経口投与)では、典型的に、1日当たり0.5〜300mg、好ましくは0.5〜100mg、更に好ましくは0.1〜10mgの上述したPGFを投与する。これらの用量範囲は単に代表的なものであり、1日投与量は様々な要因により調整することができる。治療期間と同様に、投与するPGFの具体的な用量、及び治療が局所適用であるか組織吸収であるかということは、相互依存的である。また、用量及び治療の投与計画も、使用する具体的なPGF、治療の徴候、化合物の有効性、患者の個人的特性(例えば、患者の体重、年齢、性別、症状など)、治療投与計画の尊守、及び治療の何らかの副作用の有無及び程度などの要因によって決まると考えられる。
【0112】
局所適用投与(例えば、部分的経皮投与、点眼、リポソームデリバリーシステム、又はイオン導入)では、局所適用組成物は典型的に1日1回投与を行う。局所適用組成物は、比較的短期間(つまり、数週間程度)、毎日投与する。一般に、6〜12週間あれば十分である。 局所適用組成物は、リーブオン組成物であることが好ましい。一般に、局所適用組成物は、投与後、少なくとも数時間は除去するべきではない。
発明者らは、脱毛症治療の利点に加えて、組成物中のPGF及び本発明の方法が毛髪を黒化及び増量もするということ、並びに白髪を食い止める可能性もあるということを意外にも見出した。本発明は更に、毛髪を黒化及び増量するための方法に関する。この方法には、成育する毛髪及びその根元の皮膚に、脱毛症治療用の局所適用組成物を適用することが含まれる。本発明の好ましい実施例では、局所適用組成物(例えば、上述したマスカラ組成物)を睫毛に適用する。
【実施例】
【0113】
以下の実施例は、本発明を当該技術分野における技術者に説明することを意図しており、請求項に規定した本発明の範囲を限定するものと解釈すべきではない。
【0114】
参照例1−放射リガンド結合測定法
PGFのIC50は、放射リガンド結合測定法を使用して、PGF2αに関して測定することができる。対照として、PGF2αのIC50自体が、1.0ナノモル以上、5.0ナノモル以下でなければならない。
【0115】
この測定法では、COS−7細胞に LipofectAMINE 試薬を使用してhFP組み替えプラスミドを一時的にトランスフェクトする。48時間後、トランスフェクトした細胞を Hank の緩衝塩類溶液(CaCl2、MgCl2、MgSO4、又はフェノールレッドを含まないHBSS)で洗浄する。細胞をバーセネート液を用いて分離し、HBSSを加える。混合物を200gで10分間、4℃で遠心分離し、細胞を沈殿させる。沈殿をリン酸緩衝生理食塩水−EDTA緩衝液(PBS、1ミリモルのEDTA、pH7.4、4℃)で再度懸濁する。窒素キャビテーション(Parr 型4639)により、細胞を800psiで15分間、4℃で破壊する。混合物を1000gで10分間、4℃で遠心分離する。上澄み液を100,000gで60分間、4℃で遠心分離する。沈殿は、Pierce BCAタンパク質測定キットを使用して測定したタンパク質濃度に基づき、1mgタンパク質/mLとなるように、TME緩衝液(50ミリモルのトリス、10ミリモルのMgCl2、1ミリモルのEDTA、pH6.0、4℃)で再度懸濁する。ホモジネートを Kinematica POLYTRON(登録商標)(KINEMATICA AG、Luzernerstrasse147A CH−6014 Littau(スイス)から入手可能)を使用して10秒間混合する。次に、測定に使用するために解凍するときまで、膜試料を−80℃で保存する。
【0116】
受容体競合結合測定法は96穴形式で展開する。各穴には、100gのhFP膜、5ミリモルの(3H)PGF2、及び総量で200Lの多様な競合化合物が含まれる。プレートを23℃で1時間インキュベートする。インキュベートは、Packard Filtermate 196ハーベスターを使用して、TME緩衝液で前もって湿らせた Packard UNIFILTER(登録商標)GF/Bフィルター(Packard Instrument Co., Inc.(イリノイ州ダウナーズグローブ)から市販されている)で急速に濾過して終了する。このフィルターをTME緩衝液で4回洗浄する。高効率液体シンチレーション混合液の Packard Microscint 20をフィルタープレート穴に添加し、プレートを室温で3時間放置した後、計測する。プレートを Packard TOPCOUNT(登録商標)Microplate Scintillation Counter(Packard Instrument Co., Inc.から市販されている)で読み取る。
【0117】
参照例2−休止期移行測定法
休止期移行測定法を使用して、PGFの育毛潜在能力について試験を行う。休止期移行測定法は、発毛サイクルの休止段階(「休止期」)にあるマウスを、発毛サイクルの発育段階(「成長期」)に移行させるPGFの潜在能力を測定するものである。
理論により限定することを意図するものではないが、発毛周期には3つの主要な相:成長期、退行期、及び休止期がある。C3Hマウス(ハーラン・スプレーグ・ドーリー社(Harlan Sprague Dawley、Inc.)、インディアナ州、インディアナポリス)の休止期は比較的長く、発毛が同時に進行するのは約40〜約75日齢であると考えられている。75日齢以降は、体毛成長はもはや同期しないと考えられている。この中で、毛の色が濃い(茶色又は黒色の)約40日齢のマウスを発毛実験に使用する。体毛(毛)の成長と同時にメラニンが形成されるため、発毛誘発物質の局所適用が評価できる。本明細書において休止期移行測定法を使用して、メラニン形成を測定することにより、PGFの発毛潜在能力を選別する。
【0118】
44日齢のC3Hマウスを、溶媒対照グループ、陽性対照グループ、及び試験PGFグループの3つのグループに分けて使用し、試験PGFグループに本発明の方法に使用するPGFを投与する。試験期間は24日間であり、そのうち治療を15日間行う(治療を行う日は月〜金曜日である)。1日目は、処置の初日である。典型的な試験設計を以下の表3に示す。典型的な投薬濃度を表3に記載しているが、このような濃度が変更可能であることは熟練技術者には容易に理解されると考えられる。
【0119】
【表20】

【0120】
*T3は3,5,3’−トリヨードサイロニンである。
**溶媒は60%のエタノール、20%のプロピレングリコール、及び20%のジメチルイソソルビド(米国ミズーリ州セントルイス、Sigma Chemical Co.社から市販)である。
マウスの背中下部(尾基部から肋骨下部まで)を、月曜から金曜まで局所処置する。ピペッター及びチップを用いて、各マウスの背中に400μLを適用する。400μLを適用する際には、皮膚まで到達するように、マウスの体毛を動かしながらゆっくり適用する。
各処置をマウスの局所に適用する間、各動物の適用領域における皮膚の色を視覚的に0〜4に等級付けする。マウスが休止期から成長期に移行するにつれて、皮膚の色は青みを帯びた黒色になっていくと考えられる。表4に示すように、等級0〜4は、皮膚が白色から青みを帯びた黒色に推移するにつれて次の視覚的観察を表す。
【0121】
【表21】

【0122】
実施例1
次の構造を有する13,14−ジヒドロ−15−(2−ベンザチオゾリル)ペンタノルプロスタグランジンF1αについて、
【0123】
【化10】

【0124】
参照例1の方法に従って試験を行った。13,14−ジヒドロ−15−(2−ベンザチオゾリル)ペンタノルプロスタグランジンF1αは毛髪を育成し、45ナノモルのIC50を示した。
【0125】
比較例1
次の構造を有するラタノプロストについて、
【0126】
【化11】

【0127】
参照例1の方法に従って試験を行った。ラタノプロストは0.01%及び0.1%において活性を示した。26日後の動物スコアの平均を表した等級を、表5に示す。
ただし、ラタノプロストは選択的ではない。ラタノプロストはFP受容体を活性化することによる効果を無効にはしないが、EP1受容体を活性化してしまう。その結果、痛みを引き起こす副作用をもたらす。
【0128】
実施例2
次の構造を有するフルプロステノール(fluprostenol)メチルエステルについて、
【0129】
【化12】

【0130】
参照例1の方法に従って試験を行った。フルプロステノール(fluprostenol)は0.01%及び0.1%において毛髪を育成した。26日後の動物スコアの平均を表した等級を、表5に示す。
【0131】
【表22】

【0132】
比較例2
T3化合物の0.01%を含有する組成物を調製し、参照例1の方法に従って試験を行った。T3化合物は毛髪を育成した。
【0133】
実施例3
次の成分を含有する局所投与用組成物を調製する。
【0134】
【表23】

【0135】
組成物中のPGFは以下のとおりである。
【0136】
【表24】

【0137】
男性型脱毛症のヒト男性被験者を本発明の方法により治療する。具体的には、上記組成物のうちの1つを6週間毎日被験者に局所投与し、発毛を誘発する。
【0138】
実施例4
局所投与組成物は、Dowton らの「Influence of Liposomal Composition on Topical Delivery of Encapsulated Cyclosporin A: I. An in vitro Study Using Hairless Mouse Skin」(S.T.P. Pharma Sciences、3巻、404〜407頁、1993年)の方法に従って、シクロスポリンAの代わりにPGFを使用し、非イオン性リポソーム製剤用の NOVASOME(登録商標)1(Micro−Pak, Inc.(デラウェア州ウィルミントン)から市販されている)を使用して調製する。
男性型脱毛症のヒト男性被験者を上記組成物により毎日治療する。具体的には、6週間、上記の組成物を局所的に被験者に投与する。
【0139】
実施例5
次の成分を含有するシャンプーを調製する。
【0140】
【表25】

【0141】
19ナノモルのIC50を有するPGFは、実施例3−1と同一のものである。
45ナノモルのIC50を有するPGFは、実施例3−3と同一のものである。
男性型脱毛症のヒト被験者を本発明の方法により治療する。具体的には、被験者は上述したシャンプーを12週間、毎日使用する。
【0142】
実施例6 マスカラ組成物を調製する。この組成物は次の成分を含有する。
【0143】
【表26】

【0144】
PGFは、実施例3−1で使用したものと同一である。
ヒト女性被験者が毎日組成物を適用する。具体的には、上記組成物を6週間被験者に局所適用し、睫毛を黒化及び増量する。
【0145】
実施例7
錠剤の形態の医薬組成物を、従来の方法(例えば、混合及び直接圧縮)により調製し、以下のように処方する。
【0146】
【表27】

【0147】
PGFは、実施例3−3で使用したものと同一である。
上記組成物を被験者に1日1回、6〜12週間経口投与し、発毛を促進する。
【0148】
実施例8
液体の形態の医薬組成物を、従来の方法により調製し、以下のように処方する。
【0149】
【表28】

【0150】
PGFは、実施例3−3で使用したものと同一である。
上記組成物の1.0mlを1日1回、6〜12週間、脱毛部分に皮下投与し、発毛を促進する。
【0151】
実施例9
局所用医薬組成物を、従来の方法により調製し、以下のように処方する。
【0152】
【表29】

【0153】
PGFは、実施例3−3で使用したものと同一である。
上記組成物を被験者に1日1回、6〜12週間、点眼投与し、睫毛の発毛を促進する。
【0154】
本発明の効果 本明細書における組成物及び方法は、発毛及び外観に関する美容上の利点を、治療を希望する被験者に提供する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)次の構造から成る群から選択される構造を有するプロスタグランジンF類縁体、
【化1】


上記構造の薬剤として許容できる塩及び水和物、上記構造の生物加水分解性アミド、エステル、及びイミド、上記構造の光学異性体、ジアステレオマー、及びエナンチオマー、並びにこれらの組み合せから成る群から選択される有効成分、
式中、
1はC(O)OH、C(O)NHOH、C(O)OR3、CH2OH、S(O)23、C(O)NHR3、C(O)NHS(O)24、テトラゾール、カチオン塩部分、炭素原子2〜13個を有する薬剤として許容できるアミン又はエステル、及び炭素原子2〜13個を有する生物代謝可能なアミン又はエステルから成る群から選択され、
2は水素原子、低級複素基、及び一価の低級炭化水素基から成る群から選択され、
3は一価の炭化水素基、複素基、炭素環式基、複素環式基、芳香族基、複素芳香族基、一価の置換炭化水素基、置換複素基、置換炭素環式基、置換複素環式基、置換芳香族基、及び置換複素芳香族基から成る群から選択され、
4は一価の炭化水素基、複素基、炭素環式基、複素環式基、芳香族基、複素芳香族基、一価の置換炭化水素基、置換複素基、置換炭素環式基、置換複素環式基、置換芳香族基、及び置換複素芳香族基から成る群から選択され、
Xは−C≡C−、共有結合、−CH=C=CH−、−CH=CH−、−CH=N−、−C(O)−、−C(O)Y−、−(CH2n−(nは2〜4である)、−CH2NH−、−CH2S−、及び−CH2O−から成る群から選択され、
Yは酸素原子、イオウ原子、及びNHから成る群から選択され、
Zは炭素環式基、複素環式基、芳香族基、複素芳香族基、置換炭素環式基、置換複素環式基、置換芳香族基、及び置換複素芳香族基から成る群から選択される、および
(B)担体、
を特徴とする脱毛症治療用組成物。
【請求項2】
1が、CO2H、C(O)NHOH、CO23、C(O)NHS(O)24、及びテトラゾールから成る群から選択される、ことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
2が水素原子である、ことを特徴とする請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
Xが共有結合であり、Zが、芳香族環、複素芳香族環、置換芳香族環、及び置換複素芳香族環から成る群から選択される、ことを特徴とする請求項1、2、または3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
Xが−C≡C−であり、Zが単環式芳香族環である、ことを特徴とする請求項1、2、または3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
成分(A)を、次の量で添加し、
IC50×10-2≧成分(A)の%≧IC50×10-3
式中、成分(A)のIC50は、ナノモルの単位で表される、ことを特徴とする請求項1、2、3、4、または5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
前記組成物が更に成分(C)活性増強剤を含有する、ことを特徴とする請求項1、2、3、4、5、または6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
成分(C)を1〜20%の量で前記組成物に添加し、成分(A)、(B)、及び(C)が合わせて100%の量となるように成分(B)の十分な量を添加する、ことを特徴とする請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
成分(B)が、(q)皮膚軟化剤、(r)噴射剤、(s)溶剤、(t)保湿剤、(u)増粘剤、(v)粉剤、(w)香剤、水、アルコール、アロエベラゲル、アラントイン、グリセリン、ビタミンA及びE油、鉱油、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール−2ミリスチルプロピオネート、ジメチルイソソルビド、及びこれらの組み合せから成る群から選択される成分を含有する、ことを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7、または8のいずれか1項に記載の組成物。

【公開番号】特開2012−46546(P2012−46546A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−262344(P2011−262344)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【分割の表示】特願2001−572061(P2001−572061)の分割
【原出願日】平成13年3月30日(2001.3.30)
【出願人】(304028151)デューク ユニバーシティ (5)
【Fターム(参考)】