説明

船舶

【課題】複数の船舶推進装置間の信号の送受信を行うための通信回線が外部に露出することなく、かかる制御系の信頼性を確保できる船舶を提供する。
【解決手段】船体側に操船を行うリモコン装置12が配設され、リモコン装置12にて制御されて推進力を発生させる船外機11が船体の船尾側に複数設けられ、リモコン装置12のリモコン本体16に、各船外機11の制御を行う複数の第1リモコン側ECU17が配設され、各第1リモコン側ECU17が、リモコン本体16内に収容されたECU間通信回線28で接続され、ECU間通信回線28を介して各第1リモコン側ECU17間の情報の伝達が行えるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、船体に複数の推進力を発生させる船舶推進装置が設けられた船舶、特に、これら船舶推進装置間の情報の授受が行える船舶に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来からこの種の船舶としては、十分な推進力と操船安定性の確保のために、2基以上の船外機を備えたものがある(特許文献1参照)。
【0003】
すなわち、図7に示すように、船体1の船尾に2基の船外機2,2が配置され、これら両船外機2,2のスロットルバルブ3,3が、ケーブル、リンク等からなる伝達機構4,4によりリモコンレバー5に連結されている。また、各船外機2,2は、上記スロットルバルブ3,3に装着されたスロットル開度センサ5,5からのスロットル開度(負荷)検出値、及びクランク角センサ(図示せず)からのエンジン回転数検出値に応じて、点火時期、燃料噴射時期、燃料噴射等の制御を行うエンジン側ECU6,6が設けられている。
【0004】
これら船外機2,2は、操船者がリモコンレバー5を回動操作してスロットル開度を変化させると、エンジン側ECU6,6がそれぞれのスロットルバルブ3,3の開度に応じて燃料噴射量、点火時期等を制御し、エンジン回転数を調整するようにしている。
【0005】
ところで、リモコンレバー21と各船外機2,2のスロットルバルブ3,3とを連結する機械的な伝達機構4,4には、制作誤差や調整誤差があり、又、経年変化もあることから、リモコンレバー21の操作量が同一でも、各スロットルバルブ3,3開度には、差が生じ、その結果、両船外機2,2のエンジン回転数に差が生じる場合がある。
【0006】
かかる場合には、両船外機2,2の推進力に差が生じ、舵を直進位置に設定していても、操船者の意図する方向とずれた方向に船体1が進行してしまう虞があった。
【0007】
そこで、この特許文献1では、エンジン側ECU6,6同士を、コネクタ7を介して通信回線8により接続し、この通信回線8により、各ECU6,6間でスロットル開度、エンジン回転数等各種の検出値(運転情報)が相互に送受信され、又、上記何れか一方の船外機2,2に設けられた大気温度センサ、大気圧センサによる検出値は他方の船外機2にも供給されるように構成されている。
【0008】
そして、エンジン側ECU6,6では、両船外機2,2のエンジン回転数信号を通信回線8を介して送受信しており、定常航行時において、両エンジンの回転数の差が所定値以上の場合には、この差を目標値内に保持するように、エンジン側ECU6,6にて、両船外機2,2のエンジン回転数が制御されるようになっている。
【特許文献1】特開平08−200110号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、このような従来のものにあっては、両船外機2,2に設けられたエンジン側ECU6,6を通信回線8で連結するようにしているため、この通信回線8が両船外機2,2の間に跨って配策され、両船外機2,2間で露出するようになっていることから、損傷し易いと共に、コネクタ7も露出することにより、不用意に外れたりする虞があり、信頼性が今ひとつ良好ではなかった。
【0010】
そこで、この発明は、複数の船舶推進装置間の信号の送受信を行うための通信回線が外部に露出することなく、制御系の信頼性を確保できる船舶を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
かかる課題を達成するために、請求項1に記載の発明は、船体側に操船を行うリモコン装置が配設され、該リモコン装置にて制御されて推進力を発生させる船舶推進装置が前記船体の船尾側に複数設けられ、前記リモコン装置のリモコン本体に、前記各船舶推進装置の制御を行う複数の第1リモコン側ECUが配設され、該各第1リモコン側ECUが、前記リモコン本体内に収容されたECU間通信回線で接続され、該ECU間通信回線を介して前記各第1リモコン側ECU間の情報の伝達が行えるように構成した船舶としたことを特徴とする。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の構成に加え、前記船舶推進装置が2基設けられ、該各船舶推進装置に各々接続される前記第1リモコン側ECUが2つ配設されたことを特徴とする。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の構成に加え、前記船舶推進装置が3基以上設けられ、前記リモコン装置のリモコン本体に、前記第1リモコン側ECUが前記3基以上の船舶推進装置の内の2基に対応して2つ配設され、前記リモコン本体の外部に、拡張ユニットが配設され、該拡張ユニットに、前記3基以上の船舶推進装置の内の前記2基以外の前記船舶推進装置に接続される第2リモコン側ECUが1又は複数配設され、該第2リモコン側ECUが前記第1リモコン側ECUに、前記ECU間通信回線で接続され、前記各リモコン側ECU間の情報の伝達が行えるように構成したことを特徴とする。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3の何れか一つに記載の構成に加え、前記情報は、前記各船舶推進装置のエンジン回転数の情報であり、該エンジン回転数の情報が前記各リモコン側ECU間で送受信されることにより、前記各船舶推進装置のエンジン回転数差が目標値内に収まるように制御されることを特徴とする。
【0015】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4の何れか一つに記載の構成に加え、前記各リモコン側ECUの内の一つに、前記船舶推進装置に対する指令信号を送る指令部が接続され、前記ECU間通信回線を介して、前記指令信号が他のリモコン側ECUに伝達されて、前記各船舶推進装置に入力されるようにしたことを特徴とする。
【0016】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の構成に加え、前記指令部は、前記船舶推進装置の始動を行うスイッチであることを特徴とする。
【0017】
請求項7に記載の発明は、請求項1乃至6の何れか一つに記載の構成に加え、前記各リモコン側ECUの内の一つに、表示/操作部が接続され、該表示部は操船席の表示機能等を有し、前記操作部は操船席の切替機能等を有し、前記ECU間通信回線を介して、該表示/操作信号が前記他のリモコン側ECUに伝達されるように構成されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
上記請求項1に記載の発明によれば、各船舶推進装置毎に第1リモコン側ECUが設けられ、この第1リモコン側ECUが船舶推進装置と電気的に接続されて、船舶推進装置が制御されるようになっているため、前述の従来例のような機械的な伝達機構等を用いる必要がないことから製作誤差、調整誤差及び経年変化等が生じず、各船舶推進装置のエンジン回転数差の発生を抑制できる。
【0019】
また、それら第1リモコン側ECU間を連結するECU間通信回線をリモコン本体内に収容することにより、そのECU間通信回線が外部に露出することなく、損傷し難いと共に、不用意に外れたりすることなく、顧客がECU間通信回線の接続作業を行うことがないため、信頼性を向上させることができる。
【0020】
さらに、ECU間通信回線を介して各第1リモコン側ECU間の情報の伝達が行えるように構成したため、各船舶推進装置の独立性を維持した上で、共通して制御できる。
【0021】
請求項3に記載の発明によれば、拡張ユニットをリモコン本体に配置することにより、リモコン本体側を変更することなく、拡張ユニット側を交換するだけで、船舶推進装置の基数を増やしても容易に対応することができる。
【0022】
請求項4に記載の発明によれば、情報は、各船舶推進装置のエンジン回転数の情報であり、エンジン回転数の情報が各リモコン側ECU間で送受信されることにより、各船舶推進装置のエンジン回転数差が目標値内に収まるように制御されたため、船体が不用意に旋回することがない。
【0023】
請求項5に記載の発明によれば、各リモコン側ECUの内の一つに、船舶推進装置に対する指令信号を送る指令部が接続され、ECU間通信回線を介して、指令信号が他のリモコン側ECUに伝達されて、各船舶推進装置に入力されるようにしたため、一箇所の指令部の操作をするだけで、全ての船舶推進装置を制御できる。
【0024】
請求項6に記載の発明によれば、指令部を、船舶推進装置の始動を行うスイッチとすることにより、全ての船舶推進装置を同時に始動させることができる。
【0025】
請求項7に記載の発明によれば、各リモコン側ECUの内の一つに、表示/操作部が接続され、表示部は操船席の表示機能等を有し、操作部は操船席の切替機能等を有し、ECU間通信回線を介して、表示/操作信号が他のリモコン側ECUに伝達されるように構成されたため、一箇所の表示/操作部により、複数の第1リモコン側ECUの表示/操作を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、この発明の実施の形態について説明する。
[発明の実施の形態1]
【0027】
図1乃至図4には、この発明の実施の形態1を示す。
【0028】
まず構成を説明すると、この実施の形態の船舶は、船体10の船尾に「船舶推進装置」としての船外機11が2基、取り付けられ、これら船外機11が船体10の中央部分の操船席に配置されたリモコン装置12により制御されて操船されるようになっている。
【0029】
この操船席には、図1及び2に示すように、リモコン装置12,キースイッチ装置13及びハンドル装置14が配設されている。
【0030】
そのリモコン装置12は、図2に示すように、リモコン本体16内に、2基の船外機11に対応する2つの第1リモコン側ECU17が内蔵されると共に、各第1リモコン側ECU17に対応して、スロットル、シフト操作を行うリモコンレバー18が2箇所設けられ、これらリモコンレバー18の位置を検出する位置センサ19が2箇所設けられ、これら位置センサ19が各第1リモコン側ECU17にそれぞれ2本の信号回路bを介して接続されている。また、それら各第1リモコン側ECU17には、それぞれPTT(パワートリム&チルト)スイッチ20及び操舵システムのモード変更を行う表示/操作部21が信号回路bを介して接続されている。
【0031】
また、そのリモコン装置12の両第1リモコン側ECU17には、前記キースイッチ装置13が接続されている。このキースイッチ装置13には、各第1リモコン側ECU17に対応して、始動スイッチ24及びメイン/停止スイッチ25が設けられると共に、一方の第1リモコン側ECU17に対応して1押し始動スイッチ29が設けられ、これら始動スイッチ24,メイン/停止スイッチ25及び1押し始動スイッチ29が、それぞれ各第1リモコン側ECU17に信号回路bを介して接続されている。
【0032】
また、ハンドル装置14には、図示省略のハンドル側ECUが内蔵されると共に、操舵を行うハンドル27が設けられ、このハンドル位置が位置センサにより検出されるようになっており、この位置センサが信号回路を介してハンドル側ECUに接続されている。
【0033】
さらに、このハンドル装置14のハンドル側ECUが、前記リモコン装置12の第1リモコン側ECU17に信号線としてのDBWCANケーブルを介して接続されている。ここで、DBWとは、Drive-By-Wire、機械的な接続で行っていたものを電気的接続で行う操縦装置を言い、又、CANとは、Controller Area Networkの略である。
【0034】
さらにまた、それら一対の第1リモコン側ECU17がリモコン本体16に内蔵されたECU間通信回線28を介して連結され、このECU間通信回線28にて、両第1リモコン側ECU17間の情報の伝達が行えるように構成されている。この情報としては、エンジン回転数、スロットル開度等の各種情報がある。
【0035】
一方、各第1リモコン側ECU17は、それぞれ各船外機11に設けられた図示省略の各エンジン側ECUに電源ケーブルf及びDBWCANケーブルeを介して接続されると共に、これら船外機11に計3個のバッテリ31が接続されている。これらバッテリ31は、電源ケーブルfを介して第1リモコン側ECU17に接続されている。
【0036】
それら各エンジン側ECUでは、スロットル開度センサからのスロットル開度、クランク角センサからのエンジン回転数、及び他の各センサからの検出値に基づいて、燃料噴射量、噴射時期、及び点火時期を始めとするエンジン運転状態を適宜制御するように構成されている。
【0037】
また、これら各エンジン側ECUからこれに対応した第1リモコン側ECU17にDBWCANケーブルeを介して、スロットル開度、エンジン回転数等各種の検出値(運転情報)が送信され、両第1リモコン側ECU17間では、それら運転情報がECU間通信回線28を介して相互に送受信されるようになっている。
【0038】
そして、両第1リモコン側ECU17からの制御信号により、両船外機11のエンジン側ECUが制御されて、両船外機11のエンジン回転数差が目標値内に収まるように燃料噴射量、噴射時期、及び点火時期等が制御されるように構成されている。
【0039】
次に、作用について説明する。
【0040】
まず、操船者が操船する場合には、船外機11を作動させるべく、始動スイッチ24を操作すると、この信号が第1リモコン側ECU17に入力され、この第1リモコン側ECU17からDBWCANケーブルeを介して船外機11のエンジン側ECUに入力され、図示省略の始動系,点火系,燃料噴射系等が制御されると共に、スロットルモータを介してスロットルバルブが開かれて、エンジンが駆動される。
【0041】
船外機11が駆動した状態で、リモコンレバー18が操作されると、位置センサ19からの信号が第1リモコン側ECU17に入力され、これら第1リモコン側ECU17からエンジン側ECUに、リモコンレバー18の位置信号が送信される。そして、このエンジン側ECUでは、そのリモコンレバー18の位置に基づき、スロットルモータにてスロットルバルブの回動が制御されてエンジンにより所望の推進力が得られ、所望の船速が得られるようにしている。
【0042】
この際には、各エンジン側ECUには、各センサで検出されたスロットル開度、エンジン回転数等が入力され、これら検出値が各第1リモコン側ECU17に入力される。そして、これら各船外機11の各検出値が、ECU通信ケーブル28を介して各第1リモコン側ECU17間で相互に送受信される。
【0043】
この第1リモコン側ECU17間では、スロットル開度、エンジン回転数等各種の検出値(運転情報)に基づき、両船外機11のエンジン回転数が異なる場合には、エンジン回転数差が目標値内に収まるように、船外機11に制御信号を出力する。
【0044】
そして、両第1リモコン側ECU17からの制御信号により、両船外機11のエンジン側ECUが制御されて、両船外機11のエンジン回転数が同じになるように燃料噴射量、噴射時期、及び点火時期等が制御される。
【0045】
定常航行時においては、両船外機11のエンジン回転数の差が所定値以上の場合に、回転数の高い側の船外機11の少なくとも1つの気筒の運転を休止することにより、両船外機11のエンジン回転数の差を目標値内に保持するようにしている。この気筒休止においては、休止を行う気筒の数、休止の頻度を適宜制御する。
【0046】
具体的な制御は、例えば図3に示すフローチャートのように行う。
【0047】
すなわち、まず、スロットルバルブ開度が所定時間以上一定であるか否か、つまり定常航行状態であるか否かが判断され(ステップS1)、定常航行状態であると判断されると、両船外機11の回転数差が所定値N(例えば100rpm)以上であるか判断される(ステップS2)。
【0048】
回転数差が所定置N以上であると判断された場合には、回転数の高い方の船外機11のエンジンの1つの気筒について気筒休止運転が開始され(ステップS3)、その後、この気筒が完全な休止状態となるまでは、エンジン回転数差が目標値N以内となるまで、この気筒の停止頻度が増加される(ステップS4〜S7)。
【0049】
そして、両船外機11の回転数差が目標値以内に収まった場合には、スロットル開度が所定開度以上変化するまでは、その気筒休止状態を維持し、スロットル開度が変化した場合には、休止気筒の休止頻度が徐々に減少され、0に設定された後に処理が終了する(ステップS8,S9)。
【0050】
なお、上記ステップS1においてスロットル開度が所定時間以上一定でない場合や、上記ステップS2において上記回転数差が所定値N以上でない場合は、上記気筒休止制御は行われずに処理が終了する。
【0051】
一方、リモコンレバー18が前進位置、中立位置、後進位置にあるのが検知されて、この信号に基づき、エンジン側ECUにより、シフトモータが制御されて、シフト機構が駆動され、推進方向等が決定される。
【0052】
また、操舵を行う場合には、ハンドル27を所定の方向に回動させると、このハンドル角が位置センサで検知されて、この信号がハンドル側ECUを介してステアリング側ECUに入力される。このステアリング側ECUにより、ステアリングモータが制御され、ステアリング機構により、船外機11が所定の方向を向くように駆動される。
【0053】
このようなものにあっては、各船外機11毎に第1リモコン側ECU17が設けられ、この第1リモコン側ECU17がエンジン側ECUと電気的に接続されて、船外機11が制御されるようになっているため、前述の従来例のような機械的な伝達機構4等を用いる必要がないことから製作誤差、調整誤差及び経年変化等が生じず、両船外機11のエンジン回転数差の発生を抑制できる。
【0054】
また、それら第1リモコン側ECU17間を連結するECU間通信回線28をリモコン本体16内に収容することにより、そのECU間通信回線28が外部に露出することなく、損傷し難いと共に、不用意に外れたりすることなく、信頼性を向上させることができる。
【0055】
さらに、顧客がECU間通信回線28の接続作業を行うことがないため、信頼性の低下を解消できる。顧客がECU間通信回線28の接続作業を行う場合には、接続位置を誤ったりする虞がある。
【0056】
また、ECU間通信回路28は作動型の通信方式(CAN等)を使用しているため、両第1リモコン側ECU17間の電気的な絶縁を図ることができ、信頼性を向上させることができる。
【0057】
さらに、「指令部」としての1押し始動スイッチ26を何れか一つの第1リモコン側ECU17と接続し、この一つの1押し始動スイッチ26を操作することにより、一方の第1リモコン側ECU17からECU間通信回線28を介して他方の第1リモコン側ECU17に操作信号(指令信号)を送信し、両第1リモコン側ECU17からの信号をそれぞれエンジン側ECUに送信することで、両船外機11を同時に始動させることができる。
【0058】
勿論、各始動スイッチ24、メイン/停止スイッチ25等で各船外機11を独自に始動/停止させることもできる。
【0059】
さらにまた、表示/操作部21は、一方の第1リモコン側ECU17とのみ接続され、ECU間通信回線28にて、他方の第1リモコン側ECU17と接続されているため、一箇所の表示/操作部21により、複数の第1リモコン側ECU17の表示/操作を行うことができる。その表示部は、フリースロットル、操船ステーション、故障診断などの機能を有し、操作部はフリースロットル切替、操船席切替などの機能を有する。
【0060】
また、バッテリ31を3つ用意し、その内の1つを2基の船外機11で共用して、1基の船外機11に対して2つのバッテリ31を接続するようにしているため、1つのバッテリ31が放電した場合でも、他のバッテリ31により、電源を確保することができる。
【0061】
また、この実施の形態では、以下のようにして推定船速を演算することができる。すなわち、図4に示すフローチャートのように、まず、左側の船外機11の左エンジン回転数データを受信し(ステップS10)、受信した場合には、左エンジン回転数の移動平均値を演算する(ステップS11)。
【0062】
次いで、右側の船外機11の右エンジン回転数データを受信し(ステップS12)、受信した場合には、右エンジン回転数の移動平均値を演算する(ステップS13)。
【0063】
その後、左右エンジン回転数移動平均値の平均に係数kを掛けて推定船速を演算する(ステップS14)。
【0064】
これによれば、左右の船外機11のエンジン回転数に多少の差があっても、おおよその船速が演算できて、この推定船速値に応じて、例えばステアリングの重さを変えることができる。船速が速いときには、ステアリングの重さを重くして簡単に切れないようにし、船速が遅いときには、ステアリングの重さを軽くして簡単に切れるようにすることができる。
【0065】
してみれば、ステアリング速度感応切れ角制御などを行う際に、複数の船外機11のエンジンの回転数が異なっても、操船者の感覚と合う制御を行うことができる。
[発明の実施の形態2]
【0066】
図5には、この発明の実施の形態2を示す。
【0067】
この実施の形態2は、船外機11が3基設けられており、リモコン装置12のリモコン本体16の外部に、拡張ユニット34が配設され、この拡張ユニット34に、3基の船外機11の内の2基以外の、中央に配設された船外機11に対応した第2リモコン側ECU35が配設されている。
【0068】
そして、この第2リモコン側ECU35と、前記両第1リモコン側ECU17とがECU間通信回線28で接続されている。
【0069】
この第2リモコン側ECU35は、中央に配設された船外機11のエンジン側ECUに、電源ケーブルf及びDBWCANケーブルeを介して接続されている。
【0070】
また、この第2リモコン側ECU35には、キースイッチ装置13に新たに設けられた始動スイッチ24及びメイン/停止スイッチ25が接続されていると共に、前記左右一対の位置センサ19が接続されている。
【0071】
この場合には、中央に配設された船外機11のシフト・スロットル目標値は、左右一対の位置センサ19、及び第2リモコン側ECU35により決定される。例えば、両位置センサ19から異なるシフト情報・スロットル情報が第2リモコン側ECU35に入力された場合には、この第2リモコン側ECU35により、中間位置に制御されるように構成されている。
【0072】
してみれば、左右のリモコンレバー18の位置センサ19から任意に、中央の船外機11のエンジンのシフト・スロットル制御が可能になり操縦性が向上する。
【0073】
また、2基掛けが最適システムになるように、中央の船外機11の第2リモコン側ECU35は、リモコン本体16とは別体(3基掛けユニット)として、拡張ユニット34をリモコン本体16の外側に配置することにより、リモコン本体16側を変更することなく、拡張ユニット34側を交換するだけで、船外機11の基数を増やしても容易に対応することができる。
【0074】
他の構成及び作用は実施の形態1と同様であるので説明を省略する。
[発明の実施の形態3]
【0075】
図6には、この発明の実施の形態3を示す。
【0076】
この実施の形態3は、船外機11が4基設けられており、リモコン装置12のリモコン本体16の外部に、拡張ユニット34が配設され、この拡張ユニット34に、4基の船外機11の内の2基以外の、中央に配設された2基の船外機11に対応した2つの第2リモコン側ECU35が配設されている。
【0077】
そして、これら2つの第2リモコン側ECU35と、前記2つの第1リモコン側ECU17とがECU間通信回線28で接続されている。
【0078】
これら2つの第2リモコン側ECU35は、それぞれ、中央に配設された2基の船外機11のエンジン側ECUに、電源ケーブルf及びDBWCANケーブルeを介して接続されている。
【0079】
また、これら2つの第2リモコン側ECU35には、それぞれキースイッチ装置13に新たに設けられた始動スイッチ24及びメイン/停止スイッチ25が接続されている。
【0080】
さらに、2つの第2リモコン側ECU35の一方には、左右一対の位置センサ19の一方が接続され、2つの第2リモコン側ECU35の他方には、左右一対の位置センサ19の他方が接続されている。
【0081】
これによれば、拡張ユニット34をリモコン本体16の外側に配置することにより、リモコン本体16側を変更することなく、拡張ユニット34を交換するだけで、船外機11の基数を増やしても容易に対応することができる。
【0082】
他の構成及び作用は実施の形態1と同様であるので説明を省略する。
【0083】
なお、上記実施の形態では、「船舶推進装置」として船外機13が用いられているが、これに限らず、船内外機等でも良いことは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】この発明の実施の形態1に係る船舶の斜視図である。
【図2】同実施の形態に係る船舶のリモコン装置、キースイッチ装置及び船外機の接続状態を示すブロック図である。
【図3】同実施の形態に係る船舶の2基の船外機のエンジン回転数を等しくする場合のフローチャート図である。
【図4】同実施の形態に係る船舶の推定船速を求める場合のフローチャート図である。
【図5】この発明の実施の形態2に係る船舶の図2に相当するブロック図である。
【図6】この発明の実施の形態3に係る船舶の図2に相当するブロック図である。
【図7】従来例を示す船舶の概略平面図である。
【符号の説明】
【0085】
10 船体
11 船外機(船舶推進装置)
12 リモコン装置
13 キースイッチ装置
16 リモコン本体
17 第1リモコン側ECU
18 リモコンレバー
19 位置センサ
21 表示/操作部
24 始動スイッチ
25 メイン/停止スイッチ
26 1押し始動スイッチ(指令部)
28 ECU間通信回線
31 バッテリ
34 拡張ユニット
35 第2リモコン側ECU

【特許請求の範囲】
【請求項1】
船体側に操船を行うリモコン装置が配設され、該リモコン装置にて制御されて推進力を発生させる船舶推進装置が前記船体の船尾側に複数設けられ、
前記リモコン装置のリモコン本体に、前記各船舶推進装置の制御を行う複数の第1リモコン側ECUが配設され、該各第1リモコン側ECUが、前記リモコン本体内に収容されたECU間通信回線で接続され、該ECU間通信回線を介して前記各第1リモコン側ECU間の情報の伝達が行えるように構成したことを特徴とする船舶。
【請求項2】
前記船舶推進装置が2基設けられ、該各船舶推進装置に各々接続される前記第1リモコン側ECUが2つ配設されたことを特徴とする請求項1に記載の船舶。
【請求項3】
前記船舶推進装置が3基以上設けられ、
前記リモコン装置のリモコン本体に、前記第1リモコン側ECUが前記3基以上の船舶推進装置の内の2基に対応して2つ配設され、前記リモコン本体の外部に、拡張ユニットが配設され、該拡張ユニットに、前記3基以上の船舶推進装置の内の前記2基以外の前記船舶推進装置に接続される第2リモコン側ECUが1又は複数配設され、該第2リモコン側ECUが前記第1リモコン側ECUに、前記ECU間通信回線で接続され、前記各リモコン側ECU間の情報の伝達が行えるように構成したことを特徴とする請求項1に記載の船舶。
【請求項4】
前記情報は、前記各船舶推進装置のエンジン回転数の情報であり、該エンジン回転数の情報が前記各リモコン側ECU間で送受信されることにより、前記各船舶推進装置のエンジン回転数差が目標値内に収まるように制御されることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一つに記載の船舶。
【請求項5】
前記各リモコン側ECUの内の一つに、前記船舶推進装置に対する指令信号を送る指令部が接続され、前記ECU間通信回線を介して、前記指令信号が他のリモコン側ECUに伝達されて、前記各船舶推進装置に入力されるようにしたことを特徴とする請求項1乃至4の何れか一つに記載の船舶。
【請求項6】
前記指令部は、前記船舶推進装置の始動を行うスイッチであることを特徴とする請求項5に記載の船舶。
【請求項7】
前記各リモコン側ECUの内の一つに、表示/操作部が接続され、該表示部は操船席の表示機能等を有し、前記操作部は操船席の切替機能等を有し、
前記ECU間通信回線を介して、該表示/操作信号が前記他のリモコン側ECUに伝達されるように構成されたことを特徴とする請求項1乃至6の何れか一つに記載の船舶。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2007−99175(P2007−99175A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−294353(P2005−294353)
【出願日】平成17年10月7日(2005.10.7)
【出願人】(000176213)ヤマハマリン株式会社 (256)
【Fターム(参考)】