説明

蓄冷機能付きエバポレータ

【課題】蓄冷材に効率良く冷熱を蓄えることのできる蓄冷機能付きエバポレータを提供する。
【解決手段】蓄冷機能付きエバポレータは、冷媒流通路15および蓄冷材封入路16を有し、かつ互いに間隔をおくとともに幅方向を通風方向に向けて配置された複数の扁平中空管4と、扁平中空管4の冷媒流通路15が通じさせられる冷媒用ヘッダ部7と、扁平中空管4の蓄冷材封入路16が通じさせられる蓄冷材用ヘッダ部8とを備えている。蓄冷材封入路16を、冷媒流通路15の風下側に並んで設ける。扁平中空体4の蓄冷材封入路16に蓄冷材を封入する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、停車時に圧縮機の駆動源であるエンジンを一時的に停止させる車両のカーエアコンに用いられる蓄冷機能付きエバポレータに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境保護や自動車の燃費向上などを目的として、信号待ちなどの停車時にエンジンを自動的に停止させる自動車が提案されている。
【0003】
ところで、圧縮機、圧縮機から吐出された冷媒を冷却する冷媒冷却器、冷媒冷却器を通過した冷媒を減圧する減圧器、および減圧された冷媒を蒸発させるエバポレータを備えた通常のカーエアコンにおいては、エンジンを停止させると、エンジンを駆動源とする圧縮機が停止するので、エバポレータに冷媒が供給されなくなり、冷房能力が急激に低下するという問題がある。
【0004】
そこで、このような問題を解決したカーエアコンとして、圧縮機、圧縮機から吐出された冷媒を冷却するコンデンサ、コンデンサを通過した冷媒を減圧する減圧器、およびケース内の通風路に配置され、かつ減圧された冷媒を蒸発させるエバポレータと、エバポレータの通風方向下流側においてケース内の通風路に配置され、かつ蓄冷材が封入された蓄冷器とを備えており、エバポレータが、互いに間隔をおいて並列状に配置された複数の冷媒流通管および隣り合う冷媒流通管どうしの間に配置されたフィンとを有し、蓄冷器が、互いに間隔をおいて並列状に配置された複数の蓄冷材封入管および隣り合う蓄冷材封入管どうしの間に配置されたフィンとを有しているものが知られている(特許文献1参照)。
【0005】
特許文献1記載のカーエアコンによれば、圧縮機が作動している場合には、圧縮機、コンデンサおよび膨張弁を通過した冷媒がエバポレータに入り、エバポレータの冷媒流通管を流れる間に、隣り合う冷媒流通管どうしの間の通風間隙を通過する空気と熱交換をし、冷媒は気相となって流出する。このとき、エバポレータを通過した冷却風により蓄冷器の蓄冷材封入管内に存在する蓄冷材が冷却され、その結果蓄冷材が凝固して冷熱が蓄えられる。また、圧縮機が停止した場合には、蓄冷器の蓄冷材封入管内の蓄冷材の有する冷熱が、エバポレータおよび蓄冷器を通過する風に伝えられる。したがって、エバポレータを通過した風の温度が上昇したとしても、当該風は蓄冷器により冷却されるので、冷房能力の急激な低下が防止される。
【0006】
しかしながら、特許文献1記載のカーエアコンの場合、蓄冷器の蓄冷材に冷熱を蓄える場合には、エバポレータの冷媒流通管を流れる冷媒の有する冷熱は、伝熱性の低い空気を介して蓄冷器の蓄冷材封入管内の蓄冷材に伝えられるだけであるので、蓄冷器の蓄冷材の冷却速度が低くなり、蓄冷材に冷熱を効率良く蓄えることができないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−337537号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この発明の目的は、上記問題を解決し、蓄冷材に効率良く冷熱を蓄えることのできる蓄冷機能付きエバポレータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記目的を達成するために以下の態様からなる。
【0010】
1)冷媒流通路および蓄冷材封入路を有し、かつ互いに間隔をおくとともに幅方向を通風方向に向けて配置された複数の扁平中空体と、扁平中空体の冷媒流通路が通じさせられる冷媒用ヘッダ部と、扁平中空体の蓄冷材封入路が通じさせられる蓄冷材用ヘッダ部とを備えており、扁平中空体の蓄冷材封入路に蓄冷材が封入されている蓄冷機能付きエバポレータ。
【0011】
2)蓄冷材封入路が、冷媒流通路の風下側に並んで設けられている上記1)記載の蓄冷機能付きエバポレータ。
【0012】
3)隣り合う扁平中空体どうしの間の通風間隙に、冷媒流通路および蓄冷材封入路に共有されるフィンが配置されている上記1)または2)記載の蓄冷機能付きエバポレータ。
【0013】
4)冷媒用ヘッダ部および蓄冷材用ヘッダ部を有する2つのタンクが間隔をおいて配置されており、両タンク間に複数の扁平中空体が配置されるとともに、全扁平中空体の両端部が両タンクに接合され、全扁平中空体の冷媒流通路が両タンクの冷媒用ヘッダ部に通じるとともに、蓄冷材封入路が両タンクの蓄冷材用ヘッダ部に通じている上記1)〜3)のうちのいずれかに記載の蓄冷機能付きエバポレータ。
【0014】
5)隣り合う扁平中空体どうしが、長さ方向のいずれか一端において、U字状の連結管部により交互に接続されることによって全体に蛇行状となされ、連結管部に、隣り合う扁平中空体の冷媒流通路どうしを通じさせる第1の連通路および蓄冷材封入路どうしを通じさせる第2の連通路が設けられており、並び方向の両端に位置する扁平中空体における連結管部とは反対側の端部が、それぞれ冷媒用ヘッダ部および蓄冷材用ヘッダ部を有するタンクに接合され、並び方向の両端に位置する扁平中空体の冷媒流通路が両タンクの冷媒用ヘッダ部に通じるとともに、蓄冷材封入路が両タンクの蓄冷材用ヘッダ部に通じている上記1)〜3)のうちのいずれかに記載の蓄冷機能付きエバポレータ。
【0015】
6)扁平中空体が、積層状に接合された2枚の金属板からなり、冷媒流通路および蓄冷材封入路が、扁平中空体を構成する2枚の金属板のうちの少なくともいずれか一方の金属板を外方に膨出させることにより設けられ、扁平中空体に、冷媒用ヘッダ部を形成する2つの冷媒用ヘッダ形成部と、蓄冷材用ヘッダ部を形成する2つの蓄冷材用ヘッダ形成部とが、扁平中空体を構成する2枚の金属板のうちの少なくともいずれか一方の金属板を外方に膨出させることにより設けられている上記1)〜3)のうちのいずれかに記載の蓄冷機能付きエバポレータ。
【発明の効果】
【0016】
上記1)〜6)の蓄冷機能付きエバポレータによれば、冷媒流通路および蓄冷材封入路を有し、かつ互いに間隔をおくとともに幅方向を通風方向に向けて配置された複数の扁平中空体と、扁平中空体の冷媒流通路が通じさせられる冷媒用ヘッダ部と、扁平中空体の蓄冷材封入路が通じさせられる蓄冷材用ヘッダ部とを備えており、扁平中空体の蓄冷材封入路に蓄冷材が封入されているので、蓄冷材封入路内の蓄冷材に冷熱を蓄える場合には、冷媒流通路を流れる冷媒の有する冷熱は、扁平中空体の壁を介して効率良く蓄冷材封入路内の蓄冷材に伝えられる。したがって、蓄冷材封入路内の蓄冷材の冷却速度が高くなり、蓄冷材に冷熱を効率良く蓄えることが可能になる。
【0017】
上記2)の蓄冷機能付きエバポレータによれば、空気が隣り合う扁平中空体間の通風間隙を通過する際に、蓄冷材封入路には高温の空気は直接当たらない。したがって、蓄冷材封入路内の蓄冷材が高温の空気により加熱されることが防止され、蓄冷効率の低下を防止することが可能になる。そして、蓄冷効率の低下を防止することが可能になるので、蓄冷材封入路内に封入される蓄冷材の量を低減することが可能になり、軽量化を図ることができる。
【0018】
上記3)の蓄冷機能付きエバポレータによれば、蓄冷材に冷熱を蓄える場合には、隣り合う扁平中空体の冷媒流通路が設けられている部分間を通過した冷却風の有する冷熱が、フィンを介して蓄冷材封入路内に存在する蓄冷材に伝えられる。したがって、蓄冷材封入路内の蓄冷材の冷却速度が高くなり、蓄冷材に冷熱を効率良く蓄えることが可能になる。また、エンジンが停止して圧縮機が停止した際に、蓄冷材封入路内の蓄冷材の有する冷熱が、蓄冷材封入路からフィンを介して隣り合う扁平中空体どうしの間の通風間隙を通過する空気に伝えられるので、放冷性能が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】この発明の実施形態1の蓄冷機能付きエバポレータの全体構成を一部を切り欠いて示す斜視図である。
【図2】図1のA−A線拡大断面図である。
【図3】図2のB−B線断面図である。
【図4】図1に示す蓄冷機能付きエバポレータに用いられている扁平中空管の一端部を示す斜視図である。
【図5】この発明の実施形態2の蓄冷機能付きエバポレータの全体構成を示す斜視図である。
【図6】図5のC−C線拡大断面図である。
【図7】この発明の実施形態3の蓄冷機能付きエバポレータの全体構成を示す斜視図である。
【図8】図7のD−D線拡大断面図である。
【図9】図7に示す蓄冷機能付きエバポレータに用いられている扁平中空体を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、この発明の実施形態を、図面を参照して説明する。なお、全図面を通じて同一部分および同一物には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0021】
以下の説明において、通風方向下流側(図1、図5および図7に矢印Xで示す方向)を前、これと反対側を後といい、図1、図5および図7の上下、左右を上下、左右というものとする。また、以下の説明において、「アルミニウム」という用語には、純アルミニウムの他にアルミニウム合金を含むものとする。
【0022】
実施形態1
この実施形態は、図1〜図4に示すものである。
【0023】
図1は実施形態1の蓄冷機能付きエバポレータの全体構成を示し、図2〜図4はその要部の構成を示す。
【0024】
図1において、蓄冷機能付きエバポレータ(1)は、上下方向に間隔をおいて配置された左右方向にのびるアルミニウム製第1タンク(2)およびアルミニウム製第2タンク(3)と、両タンク(2)(3)間に、幅方向を前後方向(通風方向)に向けるとともに左右方向に間隔をおいて配置された複数の垂直状アルミニウム押出形材製扁平中空管(4)(扁平中空体)と、隣り合う扁平中空管(4)間および左右両端の扁平中空管(4)の外側に配置されて扁平中空管(4)にろう付されたアルミニウム製コルゲートフィン(5)と、左右両端のコルゲートフィン(5)の外側に配置されてコルゲートフィン(5)にろう付されたアルミニウム製サイドプレート(6)とを備えている。
【0025】
図1〜図3に示すように、第1タンク(2)には、後側(風上側)に位置する冷媒用ヘッダ部(7)と、前側(風下側)に位置する蓄冷材用ヘッダ部(8)とが、第1タンク(2)内を左右方向にのびる垂直板状の仕切部材(9)により前後2つの部分に区画することによって設けられている。冷媒用ヘッダ部(7)の右端部には冷媒入口(11)が形成されている。冷媒用ヘッダ部(7)の下壁には、前後方向に長い第1長穴(12)が左右方向に間隔をおいて複数形成されている。蓄冷材用ヘッダ部(8)の下壁には、前後方向に長い第2長穴(13)が左右方向に間隔をおいて複数形成されている。第1長穴(12)と第2長穴(13)は左右方向に関して同一位置に形成されている。なお、蓄冷材用ヘッダ部(8)の第2長穴(13)の長さは、冷媒用入口ヘッダ部(7)の第1長穴(12)よりも短くなっている。冷媒用ヘッダ部(7)の横断面積は、蓄冷材用ヘッダ部(8)の横断面積よりも大きくなっている。
【0026】
第2タンク(3)は、第1タンク(2)とほぼ同様な構成であるとともに、第1タンク(2)とは上下逆向きに配置されたものであり、同一部分には同一符号を付す。
【0027】
第2タンク(3)の第1タンク(2)との相違点は、後側の冷媒用ヘッダ部(7)の右端部に、冷媒入口(11)に代えて、冷媒出口(14)が形成されていることである。
【0028】
図2〜図4に示すように、扁平中空管(4)には、幅方向に並んで設けられた複数の冷媒流通路(15)と、幅方向に並んで設けられた複数の蓄冷材封入路(16)とが、蓄冷材封入路(16)が冷媒流通路(15)の風下側(前側)に並ぶように設けられている。蓄冷材封入路(16)の横断面積は、冷媒流通路(15)の横断面積よりも大きくなっている。前端の冷媒流通路(15)と、後端の蓄冷材封入路(16)との間の仕切壁(17)は、第1および第2タンク(2)(3)の仕切部材(9)よりも厚肉となっている。扁平中空管(4)の厚肉仕切壁(17)には、その両端から仕切部材(9)嵌入用の切り欠き(18)が形成されており、扁平中空管(4)の両端部における切り欠き(18)よりも後側の部分が、第1および第2タンク(2)(3)の冷媒用ヘッダ部(7)の第1長穴(12)内に挿入されるとともに、切り欠き(18)よりも前側の部分が、第1および第2タンク(2)(3)の蓄冷材用ヘッダ部(8)の第2長穴(13)内に挿入され、さらに第1および第2タンク(2)(3)の仕切部材(9)が切り欠き(18)内に嵌められた状態で、扁平中空管(4)の上下両端部が第1および第2タンク(2)(3)にろう付されている。そして、全扁平中空管(4)の冷媒流通路(15)が第1および第2タンク(2)(3)の冷媒用ヘッダ部(7)内に通じるとともに、蓄冷材封入路(16)が第1および第2タンク(2)(3)の蓄冷材用ヘッダ部(8)内に通じている。
【0029】
扁平中空管(4)の蓄冷材封入路(16)内には、水系、パラフィン系などの凝固点が3〜10℃程度に調整された蓄冷材(図示略)が、全蓄冷材封入路(16)内を上端部まで満たすように封入されている。蓄冷材の封入は、第1タンク(2)の蓄冷材用ヘッダ部(8)および第2タンク(3)の蓄冷材用ヘッダ部(8)のうちのいずれか一方に注入口(図示略)を形成するとともに同他方の空気抜き口(図示略)を形成しておき、注入口から所定量の蓄冷材を注入した後、注入口および空気抜き口を密閉することにより行われる。
【0030】
コルゲートフィン(5)は、隣り合う扁平中空管(4)どうしの間の通風間隙に、冷媒流通路(15)および蓄冷材封入路(16)に共有されるように配置されている。
【0031】
上述した蓄冷機能付きエバポレータ(1)は、圧縮機、冷媒冷却器としてのコンデンサ、気液分離器、および減圧器としての膨張弁とともにフロン系冷媒を使用する冷凍サイクルを構成し、カーエアコンとして、停車時に圧縮機の駆動源であるエンジンを一時的に停止させる車両、たとえば自動車に搭載される。そして、圧縮機が作動している場合には、圧縮機、コンデンサおよび膨張弁を通過した低圧の気液混相の2相冷媒が、冷媒入口(11)から第1タンク(2)の冷媒用ヘッダ部(7)内に流入する。第1タンク(2)の冷媒用ヘッダ部(7)内に流入した冷媒は、扁平中空管(4)の冷媒流通路(15)を通って下方に流れ、第2タンク(3)の冷媒用ヘッダ部(7)内に入り、冷媒出口(14)を通って排出される。そして、気液混相の2相冷媒は、扁平中空管(4)の冷媒流通路(15)を流れる間に、隣り合う扁平中空管(4)どうしの間の通風間隙を図1に矢印Xで示す方向に流れる空気と熱交換をし、気相となって流出する。
【0032】
このとき、冷媒流通路(15)内を流れる冷媒が有する冷熱が、扁平中空管(4)の周壁を介して蓄冷材封入路(16)内の蓄冷材に伝えられる。しかも、隣り合う扁平中空管(4)間の通風間隙における冷媒流通路(15)が設けられている部分を通過した冷却風の有する冷熱が、コルゲートフィン(5)を介して蓄冷材封入路(16)内に存在する蓄冷材に伝えられる。その結果、蓄冷材に冷熱が蓄えられる。
【0033】
圧縮機が停止した場合には、扁平中空管(4)の蓄冷材封入路(16)内の蓄冷材の有する冷熱が、コルゲートフィン(5)を介して隣り合う扁平中空管(4)どうしの間の通風間隙を通過する風に伝えられる。したがって、圧縮機が停止した場合においても、冷房能力の急激な低下が防止される。
【0034】
実施形態2
この実施形態は、図5および図6に示すものである。
【0035】
図5は実施形態2の蓄冷機能付きエバポレータの全体構成を示し、図6はその要部の構成を示す。
【0036】
図5および図6において、蓄冷機能付きエバポレータ(20)は、左右方向に間隔をおいて配置されたアルミニウム製第1タンク(21)およびアルミニウム製第2タンク(22)と、両タンク(21)(22)間に配置されたアルミニウム押出形材製蛇行状中空管(23)とを備えている。
【0037】
第1および第2タンク(21)(22)は後端が開口するとともに前端が閉鎖した円筒状である。第1タンク(21)には、後側(風上側)に位置する冷媒用ヘッダ部(24)と、前側(風下側)に位置する蓄冷材用ヘッダ部(25)とが、第1タンク(21)内を垂直板状の仕切部材(26)により前後2つの部分に区画することによって設けられている。第1タンク(21)の後端部には、第1タンク(21)を構成する円筒状体の後端開口からなる冷媒入口(27)が形成されている。冷媒用ヘッダ部(24)の周壁の下部には、前後方向に長い1つの第1長穴(28)が形成されている。蓄冷材用ヘッダ部(25)の周壁の下部には、前後方向に長い1つの第2長穴(29)が形成されている。なお、蓄冷材用ヘッダ部(25)の第2長穴(29)の長さは、冷媒用ヘッダ部(24)の第1長穴(28)よりも短くなっている。冷媒用ヘッダ部(24)の前後方向の長さは、蓄冷材用ヘッダ部(25)の前後方向の長さよりも長くなっている。
【0038】
第2タンク(22)は、第1タンク(21)とほぼ同様な構成であり、同一部分には同一符号を付す。
【0039】
第2タンク(22)の第1タンク(21)との相違点は、冷媒用ヘッダ部(24)の後端部に、冷媒入口(27)に代えて、冷媒出口(31)が形成されていることである。
【0040】
蛇行状中空管(23)は、幅方向を前後方向(通風方向)に向けるとともに左右方向に間隔をおいて配置された複数の垂直状扁平管部(32)(扁平中空体)と、隣り合う扁平管部(32)どうしを、長さ方向のいずれか一端において交互に一体に連結するU字状の連結管部(33)とよりなる。扁平管部(32)には、幅方向に並んで設けられた複数の冷媒流通路(34)と、幅方向に並んで設けられた複数の蓄冷材封入路(35)とが、蓄冷材封入路(35)が冷媒流通路(34)の風下側(前側)に並ぶように設けられている。蓄冷材封入路(35)の横断面積は、冷媒流通路(34)の横断面積よりも大きくなっている。前端の冷媒流通路(34)と、後端の蓄冷材封入路(35)との間の仕切壁(36)は、第1および第2タンク(21)(22)の仕切部材(26)よりも厚肉となっている。図示は省略したが、連結管部(33)には、隣り合う扁平管部(32)の各冷媒流通路(34)どうしを通じさせる第1連通路と、同じく各蓄冷材封入路(35)どうしを通じさせる第2連通路とが設けられている。すなわち、蛇行状中空管(23)は、幅方向に並んで設けられた複数の冷媒流通路(34)と、幅方向に並んで設けられた複数の蓄冷材封入路(35)とを有する長尺の扁平状アルミニウム押出管を蛇行状に曲げることにより形成されている。
【0041】
並び方向の両端(左右両端)に位置する厚肉仕切壁(36)には、連結管部(33)とは反対側の端部、ここでは上端部から仕切部材(26)嵌入用の切り欠き(37)が形成されており、左右両端の扁平管部(32)の上端部における切り欠き(37)よりも後側の部分が、第1および第2タンク(21)(22)の冷媒用ヘッダ部(24)の第1長穴(28)内に挿入されるとともに、切り欠き(37)よりも前側の部分が、第1および第2タンク(21)(22)の蓄冷材用ヘッダ部(25)の第2長穴(29)内に挿入され、さらに第1および第2タンク(21)(22)の仕切部材(26)が切り欠き(37)内に嵌められた状態で、蛇行状中空管(23)の両端部が第1および第2タンク(21)(22)ろう付されている。そして、左右両端に位置する扁平管部(32)の冷媒流通路(34)が第1および第2タンク(21)(22)の冷媒用ヘッダ部(24)内に通じるとともに、蓄冷材封入路(35)が第1および第2タンク(21)(22)の蓄冷材用ヘッダ部(25)内に通じている。
【0042】
蛇行状中空管(23)の隣り合う扁平管部(32)間および左右両端の扁平管部(32)の外側にはアルミニウム製コルゲートフィン(38)が配置されて扁平管部(32)にろう付され、左右両端のコルゲートフィン(38)の外側にはアルミニウム製サイドプレート(39)が配置されてコルゲートフィン(38)にろう付されている。
【0043】
扁平管部(32)の蓄冷材封入路(35)内には、水系、パラフィン系などの凝固点が3〜10℃程度に調整された蓄冷材(図示略)が、全蓄冷材封入路(35)内を上端部まで満たすように封入されている。蓄冷材の封入は、第1タンク(21)の蓄冷材用ヘッダ部(25)および第2タンク(22)の蓄冷材用ヘッダ部(25)のうちのいずれか一方に注入口(図示略)を形成するとともに同他方の空気抜き口(図示略)を形成しておき、注入口から所定量の蓄冷材を注入した後、注入口および空気抜き口を密閉することにより行われる。
【0044】
上述した蓄冷機能付きエバポレータは、圧縮機、冷媒冷却器としてのコンデンサ、気液分離器、および減圧器としての膨張弁とともにフロン系冷媒を使用する冷凍サイクルを構成し、カーエアコンとして、停車時に圧縮機の駆動源であるエンジンを一時的に停止させる車両、たとえば自動車に搭載される。そして、圧縮機が作動している場合には、圧縮機、コンデンサおよび膨張弁を通過した低圧の気液混相の2相冷媒が、冷媒入口(27)から第1タンク(21)の冷媒用ヘッダ部(24)内に流入する。第1タンク(21)の冷媒用ヘッダ部(24)内に流入した冷媒は、蛇行状中空管(23)の冷媒流通路(34)を通って流れて第2タンク(22)の冷媒用ヘッダ部(24)内に入り、冷媒出口(31)を通って排出される。そして、気液混相の2相冷媒は、扁平管部(32)の冷媒流通路(34)を流れる間に、隣り合う扁平管部(32)間の通風間隙を図5に矢印Xで示す方向に流れる空気と熱交換をし、気相となって流出する。
【0045】
このとき、冷媒流通路(34)内を流れる冷媒が有する冷熱が、蛇行状中空管(23)の周壁を介して蓄冷材封入路(35)内の蓄冷材に伝えられる。しかも、隣り合う扁平管部(32)間の通風間隙における冷媒流通路(34)が設けられている部分を通過した冷却風の有する冷熱が、を通過した冷却風の有する冷熱が、コルゲートフィン(38)を介して蓄冷材封入路(35)内に存在する蓄冷材に伝えられる。その結果、蓄冷材に冷熱が蓄えられる。
【0046】
圧縮機が停止した場合には、扁平管部(32)の蓄冷材封入路(35)内の蓄冷材の有する冷熱が、コルゲートフィン(38)を介して隣り合う扁平管部(32)どうしの間の通風間隙を通過する風に伝えられる。したがって、圧縮機が停止した場合においても、冷房能力の急激な低下が防止される。
【0047】
実施形態3
この実施形態は、図7〜図9に示すものである。
【0048】
図7は実施形態3の蓄冷機能付きエバポレータの全体構成を示し、図8および図9はその要部の構成を示す。
【0049】
図7および図8において、蓄冷機能付きエバポレータ(40)は、幅方向を前後方向(通風方向)に向けて左右方向に積層状に並べられるとともに相互に接合された縦長方形の複数の扁平中空体(41)からなり、上下方向に間隔をおいて設けられかつ後側(風上側)に位置する1対の冷媒用ヘッダ部(42)と、上下方向に間隔をおいて設けられかつ前側(風下側)に位置する1対の蓄冷材用ヘッダ部(43)と、両冷媒用ヘッダ部(42)間に設けられかつ両冷媒用ヘッダ部(42)に通じさせられた冷媒流通路(44)と、両蓄冷材用ヘッダ部(43)間に設けられかつ両蓄冷材用ヘッダ部(43)に通じさせられた蓄冷材封入路(45)と、隣り合う扁平中空体(41)間の通風間隙に、冷媒流通路(44)および蓄冷材封入路(45)に共有されるように配置されて扁平中空体(41)にろう付されたアルミニウム製コルゲート状アウターフィン(46)とを備えている。上側の冷媒用ヘッダ部(42)の右端部に冷媒入口(47)が形成され、下側の冷媒用ヘッダ部(42)の右端部に冷媒出口(48)が形成されている。冷媒用ヘッダ部(42)の横断面積は、蓄冷材用ヘッダ部(43)の横断面積よりも大きくなっている。また、冷媒流通路(44)の横断面積は、蓄冷材封入路(45)の横断面積よりも大きくなっている。
【0050】
図9に示すように、扁平中空体(41)は、周縁部どうしが互いにろう付された2枚の縦長方形状アルミニウム板(50)よりなる。すべてのアルミニウム板(50)は両面にろう材層を有するアルミニウムブレージングシートからなり、左右両方から見た外形は同一となっている。扁平中空体(41)を構成する2枚のアルミニウム板(50)間には、上下方向にのびる扁平管状の冷媒流通路(44)と、冷媒流通路(44)の前側に位置しかつ上下方向にのびる扁平管状の蓄冷材封入路(45)と、冷媒流通路(44)の上下両端部にそれぞれ連なる膨出状冷媒用ヘッダ形成部(51)と、蓄冷材封入路(45)の上下両端部にそれぞれ連なる膨出状蓄冷材用ヘッダ形成部(52)とが設けられている。扁平中空体(41)の冷媒流通路(44)および蓄冷材封入路(45)の左右方向の高さは等しくなっている。扁平中空体(41)の冷媒流通路(44)内および蓄冷材封入路(45)内には、それぞれアルミニウム製コルゲート状インナーフィン(53)(54)が配置されており、両アルミニウム板(50)にろう付されている。また、扁平中空体(41)の冷媒用ヘッダ形成部(51)および蓄冷材用ヘッダ形成部(52)の左右方向の高さは等しく、かつ冷媒流通路(44)および蓄冷材封入路(45)の左右方向の高さよりも高くなっており、隣接する扁平中空体(41)の両ヘッダ形成部(51)(52)どうしが相互にろう付されている。したがって、隣り合う扁平中空体(41)間の冷媒流通路(44)および蓄冷材封入路(45)に対応する部分が通風間隙となっている。
【0051】
大部分の扁平中空体(41)を構成する右側のアルミニウム板(50)は、上下方向にのびるとともに右方に膨出し、かつ冷媒流通路(44)を形成する第1膨出部(55)と、第1膨出部(55)の上下両端に連なって右方に膨出するとともに第1膨出部(55)よりも膨出高さが高く、かつ冷媒用ヘッダ形成部(51)を形成する第2膨出部(56)と、上下方向にのびるとともに右方に膨出し、かつ蓄冷材封入路(45)を形成する第3膨出部(57)と、第3膨出部(57)の上下両端に連なって右方に膨出するとともに第3膨出部(57)よりも膨出高さが高く、かつ蓄冷材用ヘッダ形成部(52)を形成する第4膨出部(58)とを備えている。第2および第4膨出部(56)(58)の頂壁にはそれぞれ貫通穴(59)(61)が形成されている。大部分の扁平中空体(41)を構成する左側のアルミニウム板(50)は、左側アルミニウム板(50)を左右逆向きにするとともに上下逆向きにしたものであり、同一部分には同一符号を付す。なお、左端の扁平中空体(41)の左側アルミニウム板(50)の第2および第4膨出部(56)(58)の頂壁には貫通穴は形成されておらず、右端の扁平中空体(41)の上下の第2膨出部(56)の頂壁には、貫通穴の代わりに冷媒入口(47)および冷媒出口(48)に通じる冷媒流通穴(図示略)が形成されている。そして、2枚のアルミニウム板(50)を、インナーフィン(53)(54)を介して第1〜第4膨出部(55)(56)(57)(58)の開口どうしが対向するように組み合わせてろう付することにより、扁平中空体(41)が形成されている。
【0052】
隣接する2つの扁平中空体(41)の各ヘッダ形成部(51)(52)どうしは、扁平中空体(41)の第2および第4膨出部(56)(58)の貫通穴(59)(61)どうしが通じるように相互にろう付されており、これにより隣り合う扁平中空体(41)の各ヘッダ形成部(51)(52)どうしが連通状に接合されている。そして、すべての扁平中空体(41)のヘッダ形成部(51)(52)により冷媒用ヘッダ部(42)および蓄冷材用ヘッダ部(43)が形成されており、上側の冷媒入口(47)から冷媒用ヘッダ部(42)内に流入した冷媒が、すべての扁平中空体(41)の冷媒流通路(44)を通って下側の冷媒用ヘッダ部(42)内に入り、冷媒出口(48)から流出するようになされている。
【0053】
扁平中空体(41)の蓄冷材封入路(45)内には、水系、パラフィン系などの凝固点が3〜10℃程度に調整された蓄冷材(図示略)が、全蓄冷材封入路(45)内を上端部まで満たすように封入されている。蓄冷材の封入は、上下両蓄冷材用ヘッダ部(43)のうちのいずれか一方に注入口(図示略)を形成するとともに同他方の空気抜き口(図示略)を形成しておき、注入口から所定量の蓄冷材を注入した後、注入口および空気抜き口を密閉することにより行われる。
【0054】
上述した蓄冷機能付きエバポレータは、圧縮機、冷媒冷却器としてのコンデンサ、気液分離器、および減圧器としての膨張弁とともにフロン系冷媒を使用する冷凍サイクルを構成し、カーエアコンとして、停車時に圧縮機の駆動源であるエンジンを一時的に停止させる車両、たとえば自動車に搭載される。そして、圧縮機が作動している場合には、圧縮機、コンデンサおよび膨張弁を通過した低圧の気液混相の2相冷媒が、冷媒入口(47)から上側の冷媒用ヘッダ部(42)内に流入し、扁平中空体(41)の冷媒流通路(44)を通って下方に流れ、下側の冷媒用ヘッダ部(42)内に入り、冷媒出口(48)を通って排出される。そして、気液混相の2相冷媒は、扁平中空体(41)の冷媒流通路(44)を流れる間に、通風間隙を図7および図8に矢印Xで示す方向に流れる空気と熱交換をし、気相となって流出する。
【0055】
このとき、冷媒流通路(44)内を流れる冷媒が有する冷熱が、扁平中空体(41)を形成するアルミニウム板(50)を介して蓄冷材封入路(45)内の蓄冷材に伝えられる。しかも、隣り合う扁平中空体(41)間の通風間隙における冷媒流通路(44)が設けられている部分を通過した冷却風の有する冷熱が、どうしの間の通風間隙を通過した冷却風の有する冷熱が、アウターフィン(46)を介して蓄冷材封入路(45)内に存在する蓄冷材に伝えられる。その結果、蓄冷材に冷熱が蓄えられる。
【0056】
圧縮機が停止した場合には、扁平中空体(41)の蓄冷材封入路(45)内の蓄冷材の有する冷熱が、アウターフィン(46)を介して隣り合う扁平中空体(41)どうしの間の通風間隙を通過する風に伝えられる。したがって、圧縮機が停止した場合においても、冷房能力の急激な低下が防止される。
【産業上の利用可能性】
【0057】
この発明による蓄冷機能付きエバポレータは、停車時に圧縮機の駆動源であるエンジンを一時的に停止させる車両のカーエアコンを構成する冷凍サイクルに好適に用いられる。
【符号の説明】
【0058】
(1)(20)(40):蓄冷機能付きエバポレータ
(2)(21):第1タンク
(3)(22):第2タンク
(4):扁平中空管(扁平中空体)
(5)(38):コルゲートフィン
(15)(34)(44):冷媒流通路
(16)(35)(45):蓄冷材封入路
(32):扁平管部(扁平中空体)
(33):連結管部
(41):扁平中空体
(46):コルゲート状アウターフィン
(50):アルミニウム板(金属板)
(51):冷媒用ヘッダ形成部
(52):蓄冷材用ヘッダ形成部
(55)(56)(57)(58):膨出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒流通路および蓄冷材封入路を有し、かつ互いに間隔をおくとともに幅方向を通風方向に向けて配置された複数の扁平中空体と、扁平中空体の冷媒流通路が通じさせられる冷媒用ヘッダ部と、扁平中空体の蓄冷材封入路が通じさせられる蓄冷材用ヘッダ部とを備えており、扁平中空体の蓄冷材封入路に蓄冷材が封入されている蓄冷機能付きエバポレータ。
【請求項2】
蓄冷材封入路が、冷媒流通路の風下側に並んで設けられている請求項1記載の蓄冷機能付きエバポレータ。
【請求項3】
隣り合う扁平中空体どうしの間の通風間隙に、冷媒流通路および蓄冷材封入路に共有されるフィンが配置されている請求項1または2記載の蓄冷機能付きエバポレータ。
【請求項4】
冷媒用ヘッダ部および蓄冷材用ヘッダ部を有する2つのタンクが間隔をおいて配置されており、両タンク間に複数の扁平中空体が配置されるとともに、全扁平中空体の両端部が両タンクに接合され、全扁平中空体の冷媒流通路が両タンクの冷媒用ヘッダ部に通じるとともに、蓄冷材封入路が両タンクの蓄冷材用ヘッダ部に通じている請求項1〜3のうちのいずれかに記載の蓄冷機能付きエバポレータ。
【請求項5】
隣り合う扁平中空体どうしが、長さ方向のいずれか一端において、U字状の連結管部により交互に接続されることによって全体に蛇行状となされ、連結管部に、隣り合う扁平中空体の冷媒流通路どうしを通じさせる第1の連通路および蓄冷材封入路どうしを通じさせる第2の連通路が設けられており、並び方向の両端に位置する扁平中空体における連結管部とは反対側の端部が、それぞれ冷媒用ヘッダ部および蓄冷材用ヘッダ部を有するタンクに接合され、並び方向の両端に位置する扁平中空体の冷媒流通路が両タンクの冷媒用ヘッダ部に通じるとともに、蓄冷材封入路が両タンクの蓄冷材用ヘッダ部に通じている請求項1〜3のうちのいずれかに記載の蓄冷機能付きエバポレータ。
【請求項6】
扁平中空体が、積層状に接合された2枚の金属板からなり、冷媒流通路および蓄冷材封入路が、扁平中空体を構成する2枚の金属板のうちの少なくともいずれか一方の金属板を外方に膨出させることにより設けられ、扁平中空体に、冷媒用ヘッダ部を形成する2つの冷媒用ヘッダ形成部と、蓄冷材用ヘッダ部を形成する2つの蓄冷材用ヘッダ形成部とが、扁平中空体を構成する2枚の金属板のうちの少なくともいずれか一方の金属板を外方に膨出させることにより設けられている請求項1〜3のうちのいずれかに記載の蓄冷機能付きエバポレータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−133126(P2011−133126A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−290640(P2009−290640)
【出願日】平成21年12月22日(2009.12.22)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】