説明

蓄電装置の支持構造

【課題】 車両に搭載される蓄電装置を支持する構造において、車両が外力を受けたときに、蓄電装置が車両の構造フレームに突き当たって過度の負荷を受けてしまうのを抑制する。
【解決手段】 車両(1)に搭載される蓄電装置(5)を支持する支持構造であって、互いに接続された複数のフレームによって蓄電装置を囲むフレームユニット(20)を有している。フレームユニットは、車両に加わる外力を受けたフレームユニットの変位によって車両の構造フレーム(8)に突き当たり、構造フレームを避ける方向にフレームユニットを変位させるガイド部(22d)を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載される蓄電装置を支持する構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電池パックを車両に搭載したものがある。この電池パックは、車両の走行に用いられるエネルギを出力したり、車両の制動時に発生するエネルギを蓄えたりするために用いられている。
【0003】
ここで、電池パックを車両に搭載する位置については、様々な提案がなされている。この一例としては、車両のクロスメンバに対して、車両の後方側に位置する領域に、電池パックを配置したものがある(例えば、特許文献1参照)。具体的には、車両のラゲージルームに電池パックを配置するようにしている。
【特許文献1】特開2005−247063号公報(図1,2等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
クロスメンバに対して車両の後方側の領域に電池パックを配置した構成では、車両が後方から衝撃(外力)を受けたときに、電池パックが車両の後部と、クロスメンバとの間に挟まれた状態となってしまう。例えば、車両の後部に対して他の車両が衝突した場合には、衝突を受けた車両におけるクロスメンバと、他の車両とによって、電池パックが挟まれた状態となってしまうことがある。この状態では、電池パックに対して過度の負荷がかかってしまうおそれがある。
【0005】
ここで、車両が後方からの衝撃を受けた際に、電池パックがクロスメンバに衝突してしまうのを避けるために、クロスメンバよりも上方に電池パックを配置することが考えられる。しかしながら、クロスメンバよりも上方に電池パックを配置した場合には、電池パックによって車両の室内におけるスペースが制限されてしまう。例えば、電池パックの配置スペースを確保するために、ラゲージルームのスペースが小さくなってしまう。
【0006】
そこで、本発明の目的は、車両に搭載される蓄電装置を支持する構造において、車両が外力を受けたときに、蓄電装置が車両の構造フレームに突き当たって過度の負荷を受けてしまうのを抑制することができる支持構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願第1の発明は、車両に搭載される蓄電装置を支持する支持構造であって、互いに接続された複数のフレームによって蓄電装置を囲むフレームユニットを有している。そして、フレームユニットは、車両に加わる外力を受けたフレームユニットの変位によって車両の構造フレームに突き当たり、構造フレームを避ける方向にフレームユニットを変位させるガイド部を有する。
【0008】
ここで、フレームユニットが構造フレームに向かう方向に対して、ガイド部を傾斜させれば、構造フレームを避ける方向にフレームユニットを変位させることができる。また、構造フレームに、ガイド部の傾斜方向と同一方向に傾斜した領域を設けることができる。これにより、構造フレームを避ける方向にフレームユニットを容易に変位させることができる。
【0009】
ガイド部としては、複数のフレームのうち、蓄電装置及び構造フレームの間に位置するフレームを用いることができる。また、蓄電装置及び構造フレームは、外力が作用する方向を含む平面内に位置させることができる。具体的には、蓄電装置及び構造フレームを、同一の水平面内に位置させることにより、蓄電装置の上方に位置するスペースを有効活用することができる。
【0010】
蓄電装置は、車両の走行に用いられるエネルギを出力するために用いることができる。そして、蓄電装置は、複数の蓄電素子と、複数の蓄電素子を収容するケースとで構成することができる。また、車両の構造フレームとしては、例えば、車両の左右方向に延びるクロスメンバがある。
【0011】
本願第2の発明は、車両に搭載される蓄電装置であって、複数の蓄電素子と、複数の蓄電素子を収容するケースと、車両に加わる外力を受けたケースの変位によって車両の構造フレームに突き当たり、構造フレームを避ける方向にケースを変位させるガイド部材と、を有する。
【0012】
ここで、ケースが構造フレームに向かう方向に対して、ガイド部材を傾斜させれば、構造フレームを避ける方向にフレームユニットを変位させることができる。また、ガイド部材を、ケースの側面で構成することができる。
【発明の効果】
【0013】
本願第1の発明によれば、蓄電装置をフレームユニットで囲むことにより、蓄電装置に対して外力が直接作用するのを抑制することができる。また、ガイド部によって、構造フレームを避ける方向にフレームユニットを変位させることにより、フレームユニットや蓄電装置が構造フレームに突き当たって過度の負荷を受けるのを抑制することができる。
【0014】
本願第2の発明によれば、ガイド部材によって、構造フレームを避ける方向にケースを変位させることにより、ケース(蓄電素子を含む)が構造フレームに突き当たって過度の負荷を受けるのを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0016】
本発明の実施例1における車両について、図1及び図2を用いて説明する。ここで、図1は、車両の後方部分における内部構造を示す側面図であり、図2は、図1のA−A断面図である。図1において、X軸、Y軸及びZ軸は、互いに直交する軸である。また、X軸は、車両の進行方向、言い換えれば、車両の前後方向を示している。Y軸は、車両の左右方向を示しており、Z軸は、重力方向を示している。なお、他の図面においても同様である。
【0017】
本実施例の車両は、以下に説明するように、電池パック(蓄電装置)を備えた車両である。この車両としては、ハイブリッド自動車や電気自動車がある。ハイブリッド自動車とは、電池パックの他に、車両の走行に用いられるエネルギを出力する、内燃機関や燃料電池といった他の動力源を備えた車である。また、電気自動車は、電池パックの出力だけを用いて走行する車である。本実施例の電池パックは、放電によって車両の走行に用いられるエネルギを出力したり、車両の制動時に発生するエネルギや、車両の外部からの電力供給を受けて充電を行ったりする。
【0018】
車両1の室内には、乗員が座るためのシート2が配置されている。図1及び図2では、車室内の後方に配置されるリアシート2を示している。また、リアシート2に対して、車両の後方(図1の右側)には、ラゲージルーム(トランクルーム)3が設けられている。ここで、リアシート2が配置された空間とラゲージルーム3は、互いにつながっていてもよいし、特定の部材によって仕切られていてもよい。
【0019】
ラゲージルーム3の下方空間には、2つの電池パック4,5が配置されている。電池パック4,5は、重力方向において並んで配置されている。また、電池パック4,5は、後述するように、フレームユニットによって囲まれており、フレームユニットを介して車両1のフロアパネル6に固定されている。
【0020】
フロアパネル6は、車両1の前後方向に延びる一対のサイドメンバ7に固定されている。一対のサイドメンバ7には、車両1の左右方向に延びるクロスメンバが接続されている。ここで、サイドメンバ7及びクロスメンバは、車両1の骨格を構成する構造フレームとなる。また、フロアパネル6には、凹部6aが形成されており、凹部6aには、電池パック5が収納されている。この凹部6aは、一般的にはスペアタイヤを収容するために用いられている。
【0021】
電池パック4は、組電池4aと、組電池4aを収容するケース4bとを有している。組電池4aは、複数の単電池(蓄電素子)が電気的に直列に接続されて構成されており、ボルトといった締結部材によってケース4bに固定されている。ケース4bは、電池パック4に耐久性を持たせるために、金属で形成することができる。一方、電池パック5は、電池パック4と同様の構成であり、組電池5aと、組電池5aを収容するケース5bとを有している。
【0022】
本実施例では、電池パック4,5の大きさがそれぞれ異なっている。なお、電池パック4,5の大きさを略等しい大きさとすることもできる。また、電池パック4,5における組電池4a,5aは、車両1に搭載された機器に接続されている。この機器としては、例えば、車両1の走行用モータに接続されたDC/DCコンバータやインバータが挙げられる。ここで、組電池4a,5aは、電気的に直列に接続されていてもよいし、電気的に並列に接続されていてもよい。
【0023】
組電池4a,5aを構成する単電池としては、リチウムイオン電池やニッケル水素電池といった二次電池を用いることができる。なお、二次電池の代わりに、蓄電素子としての電気二重層キャパシタ(コンデンサ)を用いることもできる。なお、組電池4a,5aには、SMR(システムメインリレー)、サービスプラグ、組電池4a,5aの状態監視を行う電池監視ユニット、ワイヤハーネスといった機器が接続されている。
【0024】
単電池の形状としては、いかなる形状であってもよく、例えば、円筒型や角型といったものがある。また、電池パック4,5のケース4b,5bの内部に対して、組電池4a,5aの温度を調節するための気体を供給することができる。具体的には、冷却用の気体を供給することにより、組電池4a,5aの温度上昇を抑制することができる。また、加温用の気体を供給することにより、組電池4a,5aの温度低下を抑制することができる。この気体としては、例えば、車室内に存在する空気を用いることができる。
【0025】
一方、ケース4b,5bの内部に、気体ではなく、液体を収容することもできる。具体的には、絶縁性の液体を収容することができ、組電池4a,5a及びケース4b,5bの間における熱伝達を促進させることができる。絶縁性の液体としては、絶縁性を有する油や、フッ素系不活性液体を用いることができる。
【0026】
次に、電池パック4,5を囲むフレームユニットの構成について、図3を用いて説明する。図3は、フレームユニットの構成を示す外観斜視図である。このフレームユニット20は、電池パック4,5を保護するために設けられている。すなわち、フレームユニット20は、互いに接続された複数のフレームによって、電池パック4,5の周囲を覆う構造となっている。このように電池パック4,5をフレームユニット20で囲むことにより、外力が電池パック4,5に直接作用するのを阻止することができる。
【0027】
各電池パック4,5は、ボルトといった締結部材を介してフレームユニット20に固定されている。また、フレームユニット20は、複数の固定部材11,12を介して、フロアパネル6やサイドメンバ7に固定されている。
【0028】
ここで、フレームユニット20のうち、車両の前方に位置する部分には、一対の第1の固定部材11及び一対の第2の固定部材12が接続されている。第1の固定部材11は、ボルトといった締結部材によって、対応するサイドメンバ7に固定される。第2の固定部材12は、一対の第1の固定部材11の間に位置しており、ボルトといった締結部材によってフロアパネル6に固定される。
【0029】
まず、フレームユニット20のうち、電池パック4を囲む構造について説明する。
【0030】
フレーム21aは、車両1の後方側に位置しており、Y方向に延びている。フレーム21bは、フレーム21aに対して重力方向(下方向)に位置しており、Y方向に延びている。フレーム21a,21bは、Y−Z平面において、略平行に配置されている。そして、フレーム21a,フレーム21bのY方向における長さは、電池パック4のY方向における長さよりも長くなっている。
【0031】
フレーム21a,21bには、Z方向に延びる4つのフレーム21cが接続されている。フレーム21cは、電池パック4のZ方向における長さよりも長くなっている。また、4つのフレーム21cは、Y方向に関して等間隔に配置されている。なお、本実施例では、フレーム21cを4つ設けているが、これに限るものではなく、フレーム21cの数や間隔は、適宜設定することができる。すなわち、フレームユニット20の強度等を考慮して、フレーム21cの数等を設定することができる。
【0032】
フレーム21dは、車両の前方に位置しており、Y方向に延びている。フレーム21dは、他のフレームとは異なり、フレームの長手方向と直交する断面における形状が三角形状となっている。フレーム21eは、フレーム21dに対して重力方向(下方向)に位置しており、Y方向に延びている。そして、フレーム21eの両端には、第1の固定部材11が接続されている。また、フレーム21eの中央部分には、第2の固定部材12が接続されている。
【0033】
Y方向におけるフレーム21d,21eの長さは、Y方向における電池パック4の長さよりも長くなっている。また、フレーム21d,21eには、4つのフレーム21fが接続されている。フレーム21fは、Y−Z平面に対して傾斜した状態でZ方向に延びている。すなわち、フレーム21fのうち、フレーム21eと接続される端部は、フレーム21dと接続される端部よりも、車両の前方に位置している。また、4つのフレーム21fは、Y方向に関して等間隔に配置されている。
【0034】
なお、本実施例では、フレーム21fをY−Z平面に対して傾斜させているが、これに限るものではない。すなわち、フレーム21cと同様に、フレーム21fをZ方向に沿って配置することもできる。また、本実施例では、フレーム21fを4つ設けているが、これに限るものではなく、フレーム21fの数や間隔は、適宜設定することができる。すなわち、フレームユニット20の強度等を考慮して、フレーム21fの数等を設定することができる。
【0035】
一方、フレーム21a,21dには、X方向に延びる5つのフレーム21gが接続されている。そして、フレーム21a,21d,21gは、同一平面内(X−Y平面内)に位置しており、フレームユニット20の上面を構成している。ここで、フレーム21gの数や間隔は、適宜設定することができる。
【0036】
フレーム21b,21eには、X方向に延びる4つのフレーム21hが接続されている。そして、フレーム21b,21e,21hは、同一平面内(X−Y平面内)に位置しており、フレームユニット20の中間面を構成している。この中間面は、電池パック4,5の間に位置する面である。
【0037】
ここで、フレームユニット20の上面及び中間面の間隔(Z方向の長さ)は、Z方向における電池パック4の長さよりも長くなっている。また、X方向におけるフレーム21h,21gの長さは、X方向における電池パック4の長さよりも長くなっている。なお、フレーム21hの数や間隔は、適宜設定することができる。
【0038】
次に、フレームユニット20のうち、電池パック5を囲む構造について説明する。
【0039】
フレーム22aは、車両1の後方側に位置しており、Y方向に延びている。フレーム22aには、Z方向に延びる4つのフレーム22bが接続されている。Y方向におけるフレーム22aの長さは、Y方向における電池パック5の長さよりも長くなっている。
【0040】
4つのフレーム22bは、一端がフレーム22aに接続され、他端がフレーム21bに接続されている。また、フレーム22bは、Y方向に関して、フレーム21cと同じ位置に配置されている。なお、Y方向に関して、フレーム22b,21cを互いに異なる位置に配置することもできる。
【0041】
フレーム22cは、車両1の前方側に位置しており、Y方向に延びている。フレーム22cには、4つのフレーム22dが接続されている。Y方向におけるフレーム22cの長さは、Y方向における電池パック5の長さよりも長くなっている。
【0042】
ここで、フレーム22dの一端は、フレーム22cに接続されており、フレーム22dの他端は、フレーム21hに接続されている。また、各フレーム22dは、Y−Z平面に対して傾斜した状態でZ方向に延びている。すなわち、フレーム22dのうち、フレーム21hと接続される端部は、フレーム22cと接続される端部よりも、車両の前方に位置している。また、4つのフレーム22dは、Y方向に関して等間隔に配置されている。なお、フレーム22dの数や間隔は、適宜設定することができる。
【0043】
一方、フレーム22a,22cには、X方向に延びる4つのフレーム22eが接続されている。そして、フレーム22a,22c,22eは、同一平面内(X−Y平面内)に位置しており、フレームユニット20の下面を構成している。ここで、フレーム22eの数や間隔は、適宜設定することができる。また、フレームユニット20の下面及び中間面の間における距離(Z方向の長さ)は、Z方向における電池パック5の長さよりも長くなっている。
【0044】
本実施例では、フレーム21b,21e,21hによって構成されるフレームユニット20の中間面を、電池パック4の下面及び電池パック5の上面を仕切る部分として共用している。しかし、本発明は、図3に示す構成に限るものではない。例えば、各電池パック4,5を囲むフレームユニットを用意しておき、これらのフレームユニットを互いに接続することもできる。
【0045】
なお、フレームユニット20を構成するフレーム21a〜21h,22a〜22eは、金属によって形成することができ、溶接によって互いに接続することもできるし、ボルトといった締結部材を用いて互いに接続することもできる。
【0046】
次に、フレームユニット20の機能について、図4及び図5を用いて説明する。ここで、図4及び図5は、フレームユニット20の周辺の構造を示す側面図であり、車両に外力が加わる前後の状態を示している。
【0047】
図4及び図5において、電池パック5に対して車両1の前方には、クロスメンバ8が配置されている。クロスメンバ8は、Y方向に延びており、一対のサイドメンバ7(図2参照)に接続されている。そして、クロスメンバ8に対して、車両1の後方には、フレームユニット20の一部や電池パック5が位置している。言い換えれば、クロスメンバ8及び電池パック5は、同一平面内(X−Y平面内)に位置している。
【0048】
車両1の衝突によって、車両1の後部に対して、図4の矢印Fで示す外力が加わると、車両1の後部が変形することになる。例えば、図5に示すように、フレームユニット20が固定されるフロアパネル6が変形する。このように車両1の一部を変形させることにより、外力Fを吸収することができる。ここで、外力Fの大きさによっては、外力Fがフレームユニット20にも加わることになる。
【0049】
フレームユニット20に外力Fが加わると、フレームユニット20は、外力Fが作用する方向、本実施例では車両1の前方に変位することになる。ここで、クロスメンバ8及び電池パック5の間には、フレームユニット20のフレーム22dが位置しているため、フレーム22dがクロスメンバ8に突き当たる。フレーム22dは、外力Fが作用する方向(X方向)に対して傾斜しており、クロスメンバ8に突き当たることによって、X方向に作用する外力Fを、フレームユニット20を上方に変位させる力に変換する。
【0050】
これにより、フレーム22dは、クロスメンバ8に沿って移動し、電池パック5は、フレームユニット20を介してクロスメンバ8を避けるように移動する。すなわち、フレーム22dは、フレームユニット20を上方に向かって変位させる際のガイドとなる。このため、電池パック5が外力Fを受けてクロスメンバ8に衝突してしまうのを防止することができる。
【0051】
ここで、フレームユニット20は、固定部材11,12(図3参照)を介してフロアパネル6やサイドメンバ7に固定されているため、フロアパネル6やサイドメンバ7から離れてしまうのを抑制することができる。すなわち、フレームユニット20が外力Fを受けて上方向に変位するときには、固定部材11,12が変形することになる。
【0052】
本実施例では、電池パック4,5をフレームユニット20によって囲んでいるため、車両1に外力Fが加わった場合でも、外力Fが電池パック4,5に直接作用するのを抑制することができる。すなわち、外力Fは、電池パック4,5に到達する前に、フレームユニット20に到達するようになっているため、電池パック4,5に過度の負荷がかかるのを阻止することができる。
【0053】
また、本実施例では、クロスメンバ8に対して車両1の後方に位置するスペースに、電池パック5を配置することができるため、ラゲージルーム3のスペースを効率良く利用することができる。ここで、クロスメンバ8が位置する水平面(X−Y平面)よりも上方に電池パック4,5を配置した場合には、ラゲージルーム3のスペースが小さくなってしまう。一方、本実施例では、電池パック4,5の位置を低くすることができるため、電池パック4,5の上方に形成されるラゲージルーム3のスペースを広くすることができる。
【0054】
なお、本実施例では、2つの電池パック4,5を用いているが、これに限るものではない。すなわち、クロスメンバ8に対して車両1の後方に少なくとも1つの電池パックが配置されている構成であれば、本発明を適用することができる。
【0055】
また、本実施例の構成において、クロスメンバ8に、フレームユニット20のフレーム22dと向かい合う傾斜面を形成することもできる。例えば、クロスメンバ8を、図6に示すように形成することができる。図6に示す構成では、クロスメンバ8が、フレーム22dと略平行な領域を有している。この構成では、フレームユニット20のフレーム22dがクロスメンバ8に突き当たった際に、フレームユニット20を車両1の上方に向かって容易に変位させることができる。ここで、クロスメンバ8は、フレーム22dが傾斜する方向と同一方向に傾斜した領域を有していればよい。
【0056】
本実施例では、フレームユニット20のうち、クロスメンバ8に突き当たる部分を、4つのフレーム22dで構成しているがこれに限るものではない。具体的には、複数のフレーム22dに代えて、平板状形成された板部材を用いることもできる。この場合にも、フレーム22dと同様に、板部材を傾斜させておけばよい。これにより、フレームユニット20が外力Fを受けてクロスメンバ8の側に変位しても、板部材がクロスメンバ8に突き当たることによって、フレームユニット20を車両1の上方に変位させることができる。
【0057】
さらに、本実施例では、電池パック4,5をフレームユニット20によって覆う構成としているが、これに限るものではない。すなわち、フレームユニット20を省略することもできる。この場合には、フレームユニット20のフレーム22dと同等の機能を有する部材を、電池パック5に設ければよい。
【0058】
例えば、電池パック5のケース5dに対して、フレーム22dに相当する部材(フレーム)を設けておくことができる。これにより、電池パック5が外力Fを受けてクロスメンバ8の側に変位しても、ケース5bに設けられたフレームがクロスメンバ8に突き当たることにより、電池パック5を車両1の上方に向かって変位させることができる。
【0059】
また、電池パック5のケース5bのうち、クロスメンバ8と向かい合う面を、フレーム22dと同様に傾斜させておくことができる。言い換えれば、ケース5bのうち、クロスメンバ8と向かい合う面を、傾斜面で構成することができる。これにより、電池パック5が外力Fを受けてクロスメンバ8の側に変位しても、ケース5bの傾斜面がクロスメンバ8に突き当たることにより、電池パック5を車両1の上方に向かって変位させることができる。
【0060】
また、本実施例では、フレーム22dのうち、クロスメンバ8に突き当たる部分を平坦面として構成しているが、これに限るものではない。すなわち、クロスメンバ8に突き当たる部分を、曲面で構成することもできる。例えば、フレーム22dのうち、クロスメンバ8に突き当たる面を、クロスメンバ8の側に向かって凸又は凹となる曲面形状に形成することができる。すなわち、クロスメンバ8に突き当たることによって、フレームユニット20を上方に変位させるものであればよい。
【0061】
一方、本実施例では、車両の後方からの衝撃に対して、クロスメンバ8から避ける方向にフレームユニット20を変位させているが、これに限るものではない。例えば、車両の左右方向の衝撃に対して、サイドメンバ7から避ける方向にフレームユニット20を変位させるようにすることもできる。この場合には、サイドメンバ7及び電池パック5の間に、フレーム22dに相当する部材を配置しておけばよい。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】車両の後部における内部構造を示す側面図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】フレームユニットの構成を示す外観斜視図である。
【図4】車両に外力が加わる前のフレームユニットの周辺構造を示す側面図である。
【図5】車両に外力が加わった後のフレームユニットの周辺構造を示す側面図である。
【図6】フレームユニットの周辺構造を示す側面図であって、クロスメンバの変形例を示す図である。
【符号の説明】
【0063】
1:車両
2:シート(リアシート)
3:ラゲージルーム
4,5:電池パック
6:フロアパネル
8:クロスメンバ
20:フレームユニット


【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される蓄電装置を支持する支持構造であって、
互いに接続された複数のフレームによって前記蓄電装置を囲むフレームユニットを有しており、
前記フレームユニットは、前記車両に加わる外力を受けた前記フレームユニットの変位によって前記車両の構造フレームに突き当たり、前記構造フレームを避ける方向に前記フレームユニットを変位させるガイド部を有することを特徴とする支持構造。
【請求項2】
前記ガイド部は、前記フレームユニットが前記構造フレームに向かう方向に対して傾斜していることを特徴とする請求項1に記載の支持構造。
【請求項3】
前記構造フレームは、前記ガイド部の傾斜方向と同一方向に傾斜した領域を有することを特徴とする請求項2に記載の支持構造。
【請求項4】
前記ガイド部は、前記複数のフレームのうち、前記蓄電装置及び前記構造フレームの間に位置するフレームであることを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載の支持構造。
【請求項5】
前記蓄電装置及び前記構造フレームは、前記外力が作用する方向を含む平面内に位置していることを特徴とする請求項1から4のいずれか1つに記載の支持構造。
【請求項6】
前記構造フレームは、前記車両の左右方向に延びるクロスメンバであることを特徴とする請求項1から5のいずれか1つに記載の支持構造。
【請求項7】
前記蓄電装置は、複数の蓄電素子と、前記複数の蓄電素子を収容するケースとを有し、前記車両の走行に用いられるエネルギを出力することを特徴とする請求項1から6のいずれか1つに記載の支持構造。
【請求項8】
車両に搭載される蓄電装置であって、
複数の蓄電素子と、
前記複数の蓄電素子を収容するケースと、
前記車両に加わる外力を受けた前記ケースの変位によって前記車両の構造フレームに突き当たり、前記構造フレームを避ける方向に前記ケースを変位させるガイド部材と、を有することを特徴とする蓄電装置。
【請求項9】
前記ガイド部材は、前記ケースが前記構造フレームに向かう方向に対して傾斜していることを特徴とする請求項8に記載の蓄電装置。
【請求項10】
前記ガイド部材は、前記ケースの側面であることを特徴とする請求項8又は9に記載の蓄電装置。
【請求項11】
前記蓄電装置及び前記構造フレームは、前記外力が作用する方向を含む平面内に位置していることを特徴とする請求項8から10のいずれか1つに記載の蓄電装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−274666(P2009−274666A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−129754(P2008−129754)
【出願日】平成20年5月16日(2008.5.16)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】