説明

蓋体

【課題】内面反射型の光路変更部材において、製品の歩留まりを向上させる。
【解決手段】光ファイバの先端部5aに組み立てられ、先端部5aの光軸に対し傾斜した光軸をもつ光入出端6が設けられた基板2に対面して設置される光路変更部材に用いられる蓋体52。光ファイバの先端面5bおよび光入出端6のうちの一方から光路変更部材内に入射した光を他方に向けて内面反射させる反射面56を含む反射面形成凹部54を有する前記光路変更部材について、その反射面形成凹部54を塞ぐ蓋体52。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバの先端部に組み立てられる光路変更部材に用いられる蓋体であって、光入出端が設けられた基板に、前記光ファイバと前記光入出端が光接続されるように設置される光路変更部材に用いられる蓋体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、発光素子(半導体レーザ等)、受光素子(フォトダイオード等)などの光素子を搭載した基板に、この基板に沿って配線された光ファイバの先端部に組み立てた光コネクタを、前記光素子に光接続されるように固定する方式が広く用いられてきている(例えば、特許文献1を参照)。
この種の光コネクタには、光ファイバと光素子とを光接続するため光路を変更する構造が設けられている。
光路方向を変更する構造としては、特許文献2に記載されたものがある。特許文献2には、透明材料からなり、傾斜面を有する光結合素子の端面に光ファイバを接続して、光ファイバからこの素子に入射した光を傾斜面で内面反射させることにより光路方向を変更する構造が記載されている。
この光結合素子の端部には光軸整合のための一体成形されたレンズが形成され、このレンズに相当する位置に光ファイバが接続されるため、接続損失を小さくするには高精度成形と精密な位置決めが必要となる。
【特許文献1】国際公開第2004/097480号パンフレット
【特許文献2】特開2005−31556号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献2に記載された光路偏光構造では、光結合素子の端面に光ファイバの端面を接続するため、この接続部分の位置決めとレンズの精密な形成が難しく、製品の歩留まりが悪化しやすかった。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、内面反射型の光路変更部材において、部材本体内における光ファイバの位置決め精度が向上して安定した光接続特性を得ることができ、その結果、製品の歩留まりを向上させ得る光路変更部材用の蓋体の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、光ファイバの先端部に組み立てられ、前記先端部の光軸に対し傾斜した光軸をもつ光入出端が設けられた基板に対面して設置される光路変更部材であって、前記光ファイバ先端および前記光入出端のうちの一方から前記光路変更部材内に入射した光を他方に向けて内面反射させる反射面を含む反射面形成凹部を有する前記光路変更部材について、その反射面形成凹部を塞ぐ蓋体を提供する。
本発明の蓋体は、その内部に配置した前記光ファイバの先端を突き当てる面を含む先端配置凹部をさらに有する前記光路変更部材について、その先端配置凹部をさらに塞ぐことが好ましい。
本発明の蓋体は、その内部に配置した前記光ファイバの先端部を充填した接着剤で接着固定する先端配置凹部をさらに有する前記光路変更部材について、その先端配置凹部をさらに塞ぐことが好ましい。
本発明の蓋体は、板状であり、その下面により前記反射面形成凹部および前記先端配置凹部を塞ぐことが好ましい。
本発明の蓋体は、前記反射面形成凹部を略密閉することが好ましい。
本発明の蓋体は、前記反射面形成凹部および前記先端配置凹部を略密閉することが好ましい。
【発明の効果】
【0005】
本発明の光路変更部材では、部材本体に、光ファイバ挿通孔が開口する先端配置空間が形成され、この先端配置空間に突き出た光ファイバの先端部が接着剤で固定される。
組み立て時には、部材本体に形成された両端開口の光ファイバ挿通孔に光ファイバを挿入する。光ファイバの挿入量は、光ファイバが突き当たる先端配置空間の内壁の位置で規定される。光ファイバの配列ピッチ方向の位置は、前記光ファイバ挿通孔のピッチ精度で決定される。
有底で閉塞した光ファイバ挿通孔は高精度成形が困難で成形不良が発生しやすいが、本発明における両端開口の光ファイバ挿通孔は高精度成形が容易である。
また、光ファイバ挿通孔内に光ファイバを接着固定する場合も、有底型の光ファイバ挿通孔への光ファイバ接着固定は難しく不良発生率が高いが、両端が開口した光ファイバ挿通孔への光ファイバ接着固定は容易であるため、本発明では製品歩留まり低下が起こりにくい。
そして、光ファイバの先端部を接着剤で埋め込むことによりで先端配置空間に固定できるため、安定した光接続が可能である。
さらに、先端配置空間では接着剤中の気泡が放出されやすいため、残留気泡による光接続への悪影響を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】本発明に係る蓋体の一実施形態を用いた光路変更部材の一例を示す断面図である。
【図2】図1に示す光路変更部材の要部を拡大した断面図である。
【図3】図1に示す光路変更部材を示す図であり、(a)は平面図、(b)は前面図、(c)は側面図である。
【図4】図1に示す光路変更部材および部材ホルダを示す斜視図である。
【図5】図1に示す光路変更部材および部材ホルダを示す斜視図である。
【図6】光路変更部材の要部を拡大した断面図である。
【図7】光路変更部材の他の例を示す断面図である。
【図8】図7に示す光路変更部材の要部を拡大した断面図である。
【図9】図7に示す光路変更部材を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
図1は、本発明に係る蓋体の一実施形態を用いた光路変更部材4を示す断面図である。図2は、光路変更部材4の要部を拡大した断面図である。図3は、光路変更部材4を示す図であって(a)は平面図、(b)は前面図、(c)は側面図である。図4および図5は、光路変更部材4および部材ホルダ3の斜視図である。
図4に示すように、光路変更部材4は、光ファイバ5の先端部5aに組み立てられており、回路基板1上の光電変換モジュール2に、部材ホルダ3によって固定される。
【0008】
光電変換モジュール2は、光入出端6を搭載(あるいは内蔵)したモジュールである。
光入出端6としては、半導体レーザ(例えばレーザダイオード:LD)等の発光素子、あるいは、フォトダイオード(PD)等の受光素子がある。
光電変換モジュール2の光入出端6の光軸方向は回路基板1に対してほぼ垂直となっている(図1を参照)。なお、光入出端6の光軸方向は、回路基板1に対して90°以外の角度で傾斜していてもよい。
光電変換モジュール2は、回路基板1上の駆動回路からの制御信号に基づいて、発光素子(光入出端6)を駆動する機能、および/または、受光素子(光入出端6)の受光信号に応じた電気信号を回路基板1上の処理回路に伝達する機能を有する。
図示例では、光電変換モジュール2は直方体状に形成され、上面は、光路変更部材4が装着される接合面2aとなっている。
【0009】
図1および図2には、光電変換モジュール2の光入出端6が、接合面2aに形成された構成を例示している。接合面2aは、回路基板1に沿った方向に延在している。
なお、特に図示はしないが、光電変換モジュールが搭載される回路基板には、光電変換回路、制御処理部、光信号処理回路、光素子駆動回路、その他、回路基板上の電子部品の駆動制御等を行う種々の回路が構成されている。
光路変更部材4の底面は、光電変換モジュール2の接合面2aに対面する装着面4aとなっている。
【0010】
光路変更部材4は、光ファイバ5の先端部5aに組み立てられる。先端部5aは、例えば多心光ファイバテープ心線である光ファイバ5の先端に口出しされた単心の光ファイバ心線または光ファイバ素線である。図示例では、先端部5aは、光ファイバテープ心線である光ファイバ5から口出しされ、光路変更部材4に挿入固定された部分であり、光路変更部材4の装着面4aに沿って並んで配列されている。
なお、光ファイバ5としては、多心光ファイバテープ心線に限定されず、例えば、単心の光ファイバ心線等、各種構成が採用可能である。
以下の説明において、光ファイバ5の先端部5aの先端方向(図1における左方)を前方といい、その逆方向(図1における右方)を後方ということがある。ここでいう前後方向は、光ファイバ5の先端部5aの光軸方向である。また、装着面4a側を下といい、反対の面側(上面4b側)を上ということがある。
【0011】
図1に示すように、光路変更部材4は、透明材料からなる部材本体41と、この部材本体41の上面に形成された凹部51を塞ぐ蓋体52と、ブーツ53とを備えている。
部材本体41を構成する材料は、例えばポリカーボネイト、変性ポリオレフィン、エポキシ系樹脂などが好ましい。部材本体41の構成材料の屈折率は、例えば1を越える値である。
【0012】
図1〜図3に示すように、部材本体41の上面に形成された凹部51は平面視矩形状に形成されており、その底面51aには、反射面形成凹部54(反射面形成空間)と、先端配置凹部55(先端配置空間)とが形成されている。
反射面形成凹部54は、前後方向に対しほぼ垂直な方向に沿う溝状に形成されており、図示例では、その断面形状は深さ方向に徐々に幅が狭くなる略台形状となっている。
【0013】
図1および図2に示すように、反射面形成凹部54の内面のうち後面は、反射面56となっている。
反射面56は、光ファイバ5の光軸方向(図1における左右方向)および光入出端6の光軸方向(図1における上下方向)に対し傾斜して形成されている。図示例では、凹部54が深くなるにつれて前方に傾斜して形成されている。
反射面56は、部材本体41の構成材料と空気(反射面形成凹部54)との屈折率差に基づいて、部材本体41内における内面反射により、光ファイバ5の先端部5aと光入出端6とを光接続させる。反射面56における反射効率は高いほど好ましい。
ただし、反射面形成凹部には、構成材料との間の適切な屈折率差を満足させる他の気体を封入してもよい。
【0014】
図示例において、反射面56は、光路変更部材4を光電変換モジュール2上に固定したときに、光入出端6の上方に位置し、光入出端6の発光面または受光面と対面している。
反射面56は、端面5bから出射して部材本体41内に入射した光を、部材本体41内で内面反射させて光入出端6に向けるか、または光入出端6から出射して部材本体41内に入射した光を内面反射させて光ファイバ5の端面5bに向ける。
【0015】
これによって、先端部5aと光入出端6とは、光路7により光接続される(図2を参照)。
光路7のうち、反射面56と光入出端6の間の部分は、光入出端6の光軸方向に一致しており、先端部5aの光軸方向に対し傾斜している。
図示例では、先端部5aの光軸方向は、回路基板1および光電変換モジュール2の延在方向と平行であり、反射面56と光入出端6の間の部分の光路7は、先端部5aの光軸方向に対し直交している。
【0016】
反射面56は、入射方向から見て、湾曲した断面形状を有する凹面をなすように形成することができる。すなわち、反射面形成凹部54から見ると凸面をなすように形成することができる。
反射面56の曲率は、光ファイバ5の端面5bおよび光入出端6が反射光の集光点に位置するように設計するのが好ましい。これによって、入射光の方向にずれが生じた場合でも光接続は維持される。
この構成によれば、例えば、図2に符号7aで示すように、先端部5aからの出射光の方向が水平より上方にずれた場合においても、反射光は光入出端6に向かう。
なお、反射面56の傾斜角度は、光ファイバ5の先端部5aと光入出端6とを光接続できる角度であればよく、図示例には限定されない。
【0017】
先端配置凹部55は、反射面形成凹部54よりも後方に形成され、前後方向に対しほぼ垂直な方向に沿う溝状に形成されている。図示例では、先端配置凹部55の断面形状は略矩形状となっている。
先端配置凹部55の内面のうち前面は、光ファイバ5(または光入出端6)からの光が入射(または出射)する入出射面55aとなっている。入出射面55aは、前後方向(光ファイバ5の光軸方向)に対しほぼ垂直とするのが好ましい。先端配置凹部55は、成形加工時において入出射面55aを平滑に(すなわち表面粗さを小さく)形成するのが容易である。
【0018】
部材本体41には、先端配置凹部55の後面に開口する光ファイバ挿通孔57が前後方向に沿って形成されている。光ファイバ挿通孔57の後端は部材本体41の後部で開口している。
光ファイバ挿通孔57は、光ファイバ5の数と同じ数を図1における紙面に垂直な方向に配列して形成することができる。
光ファイバ挿通孔57には先端部5aが挿通し、端面5b(先端面)が先端配置凹部55内に配置される。図示例では、端面5bは先端部5aの光軸方向に垂直とされ、入出射面55aに近接または当接して対面している。
【0019】
先端配置凹部55には、接着剤59が充填され、この接着剤59によって光ファイバ5の先端部5aが先端配置凹部55に固定される。接着剤59は、先端部5aと光ファイバ挿通孔57の内面とを接着することもできる。
接着剤59は光透過性であることが好ましく、特に、屈折率が光ファイバのコアと光学的に等しいことが好ましい。
端面5bと入出射面55aとの間に隙間がある場合には、この隙間に充填された接着剤59は屈折率整合剤としての機能を発揮するため、光損失を抑えることができる。
【0020】
凹部51は蓋体52によって塞がれており、これによって反射面形成凹部54および先端配置凹部55は略密閉されている。蓋体52は開閉可能としてもよい。
反射面形成凹部54は略密閉空間内にあり、外気に触れることがないため、反射面56に塵埃などの汚れが付着するのを防止できる。従って、反射効率が低下するのを防止できる。
【0021】
部材本体41の下面41b(装着面4a)には、レンズ形成凹部58が形成されており、レンズ形成凹部58の上面(天面58a)にはレンズ手段60が形成されている。レンズ手段60は、光入出端6に対面する位置に、部材本体41に対して一体的に形成することができる。
レンズ手段60は、反射面56からの反射光を集光して光入出端6に向けるか、または光入出端6からの出射光を集光して反射面56に向けるものである。
天面58aからのレンズ手段60の突出寸法は、レンズ形成凹部58の深さ寸法より小さくするのが好ましい。
なお、レンズ手段60は部材本体41に対し別体であってもよい。
【0022】
図3に示すように、部材本体41はブロック状に形成され、両側部41a、41aには、外側方に突出する突出部43、43が形成されている。図示例では、突出部43は図3(a)における上下方向に突出している。
図示例の突出部43は、略直方体状とされ、部材本体41の前後方向の略中央部に形成されている。突出部43の前端面43aおよび後端面43bは、前後方向に対しほぼ垂直になっている。
【0023】
部材本体41の側部41aのうち突出部43の前後の部分には、それぞれ前部押さえ用傾斜面44aおよび後部押さえ用傾斜面44bが形成されている。
押さえ用傾斜面44a、44bは、部材ホルダ3の弾性保持部32によって押さえつけられる部分であり、装着面4aに近づく方向(すなわち下方)に行くに従って外側方に傾斜している。
【0024】
図示例では、押さえ用傾斜面44a、44bは、側部41aの前部および後部の上部に形成されており、押さえ用傾斜面44a、44bより下の部分は、ガイド用傾斜面45a、45bとなっている。ガイド用傾斜面45a、45bは、装着面4aに近づく方向(すなわち下方)に行くに従って内側方に傾斜している。
ガイド用傾斜面45a、45bは、光路変更部材4を部材ホルダ3に装着する際に、一対の弾性保持部32、32を外側方に押し広げることができるように形成することができる。
部材本体41は、インジェクションモールド等の汎用の樹脂成型法で製造できる。
【0025】
図4に示すように、部材ホルダ3は、光ファイバ5の先端部5aに組み立てられた光路変更部材4を、光電変換モジュール2上にて位置決め保持し、光電変換モジュール2に対して位置ずれしないように押さえ込む機能を果たす。
部材ホルダ3は、光路変更部材4が載置される平面視矩形の平板状の基部31と、基部31の両側縁31a、31aから立ち上がる一対の弾性保持部32、32と、基部31の縁部から下方に延出する保持板33とを備えている。
基部31には、開口部31cが形成されている。開口部31cは光電変換モジュール2の光入出端6に相当する位置を含むように形成されている。
【0026】
弾性保持部32、32は、光路変更部材4を両側から押さえ込むことによって着脱可能に保持するものであって、これら一対の弾性保持部32間は、光路変更部材4が保持される部材保持空間35となっている。
弾性保持部32は、それぞれ2つの弾性片34、34からなる。すなわち、弾性保持部32、32は、合計4つの弾性片34によって構成される。
弾性片34は、光路変更部材4を光電変換モジュール2に押さえ込んで保持するものであって、基部31の側縁31aから立ち上がるように形成された一定幅の舌片状の板状とされ、部材保持空間35に対し接近および離間する方向に弾性的に曲げ変形できるようになっている。
【0027】
1つの弾性保持部32を構成する2つの弾性片34、34は、前後方向に間隔をおいて形成されている。これら弾性片34、34の距離は、突出部43の前後方向距離とほぼ等しいかまたは若干大きくされており、弾性片34、34間は、光路変更部材4の突出部43が嵌合する嵌合部37となっている。
前方側の弾性片34の前後方向の位置は、光入出端6の前後方向の位置よりも前方であることが好ましい。後方側の弾性片34の前後方向の位置は、光入出端6の前後方向の位置よりも後方であることが好ましい。
これによって、光接続位置を囲むように光路変更部材4の全体を押さえつけることができ、光路変更部材4に均一な押圧力を加え、光ファイバ5と光入出端6の光接続の精度を高めることができる。
部材ホルダ3は、金属や合成樹脂などで構成できる。例えば金属板を折り曲げ成形して形成することができる。
【0028】
次に、光路変更部材4を部材ホルダ3に装着する操作について説明する。
図4に示すように、装着面4aを光電変換モジュール2に向けた姿勢で、光路変更部材4を部材ホルダ3に向けて移動させると、ガイド用傾斜面45a、45bがそれぞれ弾性片34に当接する。
光路変更部材4は、4本の弾性片34に当接するため、その姿勢が水平に維持されつつ装着される。
【0029】
光路変更部材4に下方への力を加えると、ガイド用傾斜面45a、45bの傾斜面に従って、弾性片34が外側方に押し広げられる。
押さえ用傾斜面44a、44bとガイド用傾斜面45a、45bの境界部分が部材当接部36を通過すると、弾性片34の弾性によって部材当接部36が押さえ用傾斜面44a、44bに当接する。
図5に示すように、装着面4aが基部31近くに達した状態では、弾性片34の部材当接部36が、両側の押さえ用傾斜面44a、44bを押さえつけた状態で光路変更部材4が部材保持空間35内に収められる。
部材当接部36は前後方向にわたって押さえ用傾斜面44a、44bに当接するため、弾性片が光路変更部材に点接触する場合に比べ、光路変更部材4は安定に保持される。
【0030】
光路変更部材4の突出部43は、弾性片34、34の隙間である嵌合部37に嵌合する。
弾性片34、34の側縁が突出部43の前端面43aおよび後端面43bに当接することによって、前後方向の位置ずれが阻止され、光路変更部材4は正確に位置決めされる。
さらに、光路変更部材4の両側部41aの前部および後部においてそれぞれ弾性片34に押さえ込まれるため、光路変更部材4は安定的に光電変換モジュール2上に保持される。
光路変更部材4が部材ホルダ3に保持された状態では、先端部5aと光入出端6とが光接続可能となっている。
【0031】
次に、光路変更部材4の組み立てについて説明する。
図1および図2に示すように、蓋体52を部材本体41から外した状態で、光ファイバ5の先端部5aを後方から光ファイバ挿通孔57に挿入し、先端配置凹部55内に突き出た状態として端面5bを入出射面55aに当接または近接させる。
光ファイバ5の挿入量は、先端部5aが突き当たる先端配置凹部55の入出射面55aの位置で規定される。先端部5aの配列ピッチ方向(図1における紙面に垂直な方向)の位置は、光ファイバ挿通孔57のピッチ精度で決定される。
先端配置凹部55に未硬化の状態の接着剤59を充填した後、蓋体52によって凹部51を塞ぐとともに、接着剤59を硬化させることによって、図1〜図3に示す光路変更部材4を得る。
【0032】
透明材料からなる部材本体に光を通過させるタイプの光路変更部材としては、部材本体に形成した、閉塞した(すなわち有底の)挿通孔に光ファイバを接着固定し、この挿通孔内の光ファイバから光を部材本体に入射させるものがある(特願2005−317731等)。
光ファイバ(例えば光ファイバ裸線)をしっかりと固定するためには、光ファイバに応じた径の挿通孔を十分な深さで形成する必要があるが、径が小さくかつ深い挿通孔を精度良く形成するのは容易ではないため成形不良が起こりやすく、製品の歩留まりが低くなりやすい。
これに対し、光路変更部材4では、先端部5aは光ファイバ挿通孔57を経て先端配置凹部55に接着剤59で固定される。両端開口の光ファイバ挿通孔57は高精度に成形するのが容易である。また、固定部位である先端配置凹部55には厳密な寸法精度が要求されない。このため、成形不良による歩留まり低下は起こりにくい。
また、光ファイバ挿通孔内に光ファイバを接着固定する場合も、有底型の光ファイバ挿通孔への光ファイバ接着固定は困難であり不良発生率が高いが、両側が開口した光ファイバ挿通孔57への光ファイバ接着固定は容易である。このため、光路変更部材4では製品歩留まり低下が起こりにくい。
また、光ファイバ5の先端部5aを接着剤59で先端配置凹部55に固定できるため、安定した光接続が可能である。
さらに、先端配置凹部55では、未硬化状態の接着剤から気泡が放出されやすい。このため、残留気泡による光接続への悪影響を防ぐことができる。
【0033】
図6は、反射面の他の例を示すもので、図示例の反射面66は、傾斜角度が異なる複数の略平坦な傾斜面66a〜66cからなる。傾斜面66a〜66cは入射方向から見て全体として凹状をなしている。
傾斜面66a〜66cの傾斜角度は、光ファイバ5の端面5bおよび光入出端6が反射光の集光点に位置するように設計するのが好ましい。すなわち、いずれの傾斜面66a〜66cも、端面5bと光入出端6のうち一方からの光が反射して他方に向かうように傾斜角度が設定される。これによって、入射光の方向にずれが生じた場合でも光接続は維持される。
【0034】
図7〜図9は、光路変更部材の他の例を示すもので、図7はこの光路変更部材74を示す断面図である。図8は光路変更部材74の要部を拡大した断面図である。図9は光路変更部材74を示す斜視図である。
光路変更部材74は、部材本体41の下面41b(装着面4a)(基板側の面)に、レンズ手段60を囲む環状凸部71が形成されている点で、図1に示す光路変更部材4と異なる。
図示例では、レンズ手段60は光ファイバテープ心線である光ファイバ5を構成する光ファイバと同じ数が図7および図8における紙面に垂直な方向に配列して形成されている(図9参照)。レンズ手段60は光入出端6に対面する位置に形成されている。
【0035】
図9に示すように、環状凸部71は、下面41bから下方に突出して形成され、平面視矩形の枠状に形成されている。環状凸部71の断面形状は特に限定されないが、図8に示す例では環状凸部71の内面71aは下面41bに垂直とされている。外面71bは、下面41bに垂直な基部71cと、突出方向に向けて外径が徐々に小さくなるように湾曲した先端部71dを有する。
環状凸部71の内部空間の天面71eにはレンズ手段60が形成されている。図示例では天面71eの高さ位置は、部材本体41の下面41bより低い位置とされている。レンズ手段60は天面71eから下方に突出して形成されている。
【0036】
環状凸部71は、レンズ手段60より突出して形成されている。すなわち、環状凸部71の突出方向(図7および図8における下方)の寸法(天面71eからの突出寸法)は、レンズ手段60の天面71eからの突出方向の寸法より大きくされている。
なお、環状凸部71の平面視形状は図示例に限らず、円形、楕円形、多角形(三角形、四角形等)などとすることができる。環状凸部71の断面形状も図示例に限らず、半円状、多角形状などとすることができる。
また、本発明において「レンズ手段を囲む凸部」は、環状に限らず、不連続的に形成された凸部であってもよい。例えば、複数の凸部がレンズ手段を囲んで配列された構成も可能である。
【0037】
光路変更部材74では、環状凸部71の突出寸法がレンズ手段60の突出寸法より大きくされているので、光電変換モジュール2上に設置する際に、光電変換モジュール2などに衝突すること等によりレンズ手段60が損傷を受けるのを防ぐことができる。
【0038】
本発明において、「基板」は、光入出端である光素子が実装される実装対象物全般を指すものであり、図示例では回路基板1と光モジュール2に相当する。
なお、反射面を構成する凹部は、図示例のような密閉空間内に形成されていなくてもよい。反射面の他の実施例として、凹部を形成せず部材本体の端部を切り欠くようにして形成することもできる(この場合、蓋52は使用しない)。この場合でも反射面56は、適宜手段にて塵埃などの汚れが付着するのを防止することにより反射効率の低下を防止することが好ましい。
同様に、先端配置空間も密閉空間内に形成されていなくてもよい。
【符号の説明】
【0039】
1・・・回路基板、2・・・光電変換モジュール、4・・・光路変更部材、4a・・・装着面、5・・・光ファイバ、5a・・・先端部、5b・・・先端面、6・・・光入出端、41・・・部材本体、41b・・・部材本体の下面(基板側の面)、52・・・蓋体、54・・・反射面形成凹部(反射面形成空間)、55・・・先端配置凹部(先端配置空間)、56、66・・・反射面、59・・・接着剤、60・・・レンズ手段、66a〜66c・・・傾斜面、71・・・環状凸部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバ(5)の先端部(5a)に組み立てられ、前記先端部の光軸に対し傾斜した光軸をもつ光入出端(6)が設けられた基板(1、2)に対面して設置される光路変更部材であって、前記光ファイバ先端および前記光入出端のうちの一方から前記光路変更部材内に入射した光を他方に向けて内面反射させる反射面(56)を含む反射面形成凹部(54)を有する前記光路変更部材について、その反射面形成凹部を塞ぐ蓋体(52)。
【請求項2】
その内部に配置した前記光ファイバの先端を突き当てる面(55a)を含む先端配置凹部(55)をさらに有する前記光路変更部材について、その先端配置凹部をさらに塞ぐ請求項1に記載の蓋体。
【請求項3】
その内部に配置した前記光ファイバの先端部を充填した接着剤で接着固定する先端配置凹部(55)をさらに有する前記光路変更部材について、その先端配置凹部をさらに塞ぐ請求項1に記載の蓋体。
【請求項4】
板状であり、その下面により前記反射面形成凹部および前記先端配置凹部を塞ぐ請求項2または3に記載の蓋体。
【請求項5】
前記反射面形成凹部を略密閉する請求項1乃至4のいずれか1項に記載の蓋体。
【請求項6】
前記反射面形成凹部および前記先端配置凹部を略密閉する請求項2乃至4のいずれか1項に記載の蓋体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−73652(P2012−73652A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−289442(P2011−289442)
【出願日】平成23年12月28日(2011.12.28)
【分割の表示】特願2007−327670(P2007−327670)の分割
【原出願日】平成19年12月19日(2007.12.19)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】