説明

薄膜の加工方法、圧電振動子の周波数調整方法、及び電子デバイス

【課題】レーザーに対する加工閾値が低い薄膜をパッケージ内面に効率的に形成することが可能な生産性の高い薄膜の加工方法、圧電振動子の周波数調整方法、及び電子デバイスを提供する。
【解決手段】予め圧電振動子3の周波数を目標値よりも低周波側に設定した上で、圧電振動子3の表面にある周波数調整用の薄膜11に蓋部材2の外面側からレーザー5を照射して飛散させ、圧電振動子3の質量を減少させることで、周波数を高周波側へと変化させる。この時、飛散した薄膜11の粒子11aは、蓋部材2の表面に付着して新たに薄膜12を形成する。先の周波数調整により周波数が目標値を上回ってしまった場合には、蓋部材2の表面に形成された薄膜12に蓋部材2の外面側からレーザー5を照射して飛散させ、飛散した粒子12aを圧電振動子2の表面に再度付着させて圧電振動子3の質量を増加させることで、周波数を低周波側へと変化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄膜の加工方法、圧電振動子の周波数調整方法、及び電子デバイスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
内部が密閉空間とされた電子部品パッケージの内部に圧電振動子を収納してなる所謂パッケージ型の圧電デバイスにおいて、予め電子部品パッケージの内面に薄膜を形成しておき、その薄膜に電子部品パッケージの外部からレーザーを照射して飛散させ、飛散した粒子を圧電振動子の表面に付着させることで圧電振動子の周波数を変化させる技術が知られている。このような技術としては、例えば、以下に示すものが挙げられる。
【0003】
図13は、圧電デバイスを示す上面図及び断面図、図14は、従来の圧電振動子の周波数調整方法を示す断面図である。尚、上面図では、最上部の部材を透かして見た状態としてある(本明細書においては以降同様とする)。ここに示す圧電デバイスは、上部が開放された箱型のベース基板1に平板状の蓋部材2が接合されることで形成された電子部品パッケージの内部に平板状の圧電振動子3が収納された所謂パッケージ型の圧電デバイスで、圧電振動子3と対向する蓋部材2の表面に金属等からなる薄膜4が形成されている。
【0004】
この圧電デバイスにおいて、圧電振動子3の周波数を調整する際には、予め圧電振動子3の周波数を目標値よりも高周波側に設定した上で、蓋部材2を透過する波長帯域のレーザー5を、蓋部材2の外面側から蓋部材2の内面にある薄膜4に焦点を合わせるように照射して薄膜4を飛散させ、飛散した薄膜4の粒子4aを圧電振動子3の表面に付着させて圧電振動子3の質量を増加させることで周波数を減少させる。(例えば、特許文献1、2参照)
【0005】
図15は、圧電デバイスを示す上面図及び断面図、図16は、従来の圧電振動子の周波数調整方法を示す断面図である。ここに示す圧電デバイスは、上部が開放された箱型のベース基板1に平板状の蓋部材2が接合されることで形成された電子部品パッケージの内部に平板状の圧電振動子3が収納された所謂パッケージ型の圧電デバイスで、圧電振動子3と対向するベース基板1の表面に金属等からなる薄膜6が形成されている。
【0006】
この圧電デバイスにおいて、圧電振動子3の周波数を調整する際には、予め圧電振動子3の周波数を目標値よりも高周波側に設定した上で、蓋部材2を透過する波長帯域のレーザー5を、蓋部材2の外面側からベース基板1の内面にある薄膜6に焦点を合わせるように照射して薄膜6を飛散させ、飛散した薄膜6の粒子6aを圧電振動子3の表面に付着させて圧電振動子3の質量を増加させることで周波数を減少させる。(例えば、特許文献3参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平2−179013号公報
【特許文献2】特開平5−29863号公報
【特許文献3】特許第3843779号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の薄膜の加工方法では、薄膜がパッケージの表面に直接形成されているため、薄膜に焦点を結ぶようにレーザーを照射した際には、薄膜に密接するパッケージの表層がレーザーの高密度領域に晒されてダメージを受ける虞がある。この対策の一つとして、薄膜の材料、厚さ、粒子密度等を適宜調整することで、薄膜のレーザーに対する加工閾値を低下させて薄膜をレーザーにより加工され易くし、その分、レーザーの出力を下げてパッケージへのダメージを軽減することが考えられるが、そのためには、予め薄膜のみを特殊な材料や成膜条件で個別に形成しておかなければならず、生産性が低下するという問題がある。
【0009】
本発明は、以上の問題点に鑑みて成されたものであり、レーザーに対する加工閾値が低い薄膜をパッケージ内面に効率的に形成することが可能な生産性の高い薄膜の加工方法、圧電振動子の周波数調整方法、及び電子デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
内部が密閉空間とされた電子部品パッケージに外部からレーザーを照射して透過させ、透過した当該レーザーを前記電子部品パッケージ内部の所定領域に照射して当該所定領域に存在する部材の少なくとも一部を粒子として飛散させる工程と、飛散した当該粒子を前記電子部品パッケージの内面に付着させて薄膜を形成する工程と、前記電子部品パッケージに外部からレーザーを照射して透過させ、透過した当該レーザーを前記薄膜に照射して前記薄膜を加工する工程と、を有する薄膜の加工方法とする。
【0011】
電子部品パッケージに外部からレーザーを照射して透過させ、透過した当該レーザーを前記電子部品パッケージ内部の所定領域に照射して当該所定領域に存在する部材の少なくとも一部を粒子として飛散させる工程と、飛散した当該粒子を前記電子部品パッケージの内面に付着させて薄膜を形成する工程と、前記電子部品パッケージに外部からレーザーを照射して透過させ、透過した当該レーザーを前記薄膜に照射して前記薄膜を粒子として飛散させる工程と、飛散した当該粒子を前記電子部品パッケージの内部に収納された圧電振動子に付着させて当該圧電振動子の周波数を調整する工程と、を有する圧電振動子の周波数調整方法とする。
【0012】
前記所定領域に存在する前記部材は、前記圧電振動子の表面に形成された周波数調整用の薄膜である圧電振動子の周波数調整方法とする。
【0013】
前記所定領域に存在する前記部材は、前記圧電振動子の母材である圧電振動子の周波数調整方法とする。
【0014】
前記所定領域に存在する前記部材は、前記電子部品パッケージの内面に形成された薄膜である圧電振動子の周波数調整方法とする。
【0015】
前記所定領域に存在する前記部材は、前記電子部品パッケージの母材である圧電振動子の周波数調整方法とする。
【0016】
前記薄膜が形成される前記電子部品パッケージの内面は、前記圧電振動子側に傾く傾斜面とされている圧電振動子の周波数調整方法とする。
【0017】
内部が密閉空間とされた電子部品パッケージの内部に電子部品が収納された電子デバイスであって、前記電子部品パッケージ内部の所定領域に存在する部材の少なくとも一部が前記電子部品パッケージを透過したレーザーにより粒子として飛散され、飛散した当該粒子が前記電子部品パッケージの内面に付着して薄膜を形成し、当該薄膜が前記電子部品パッケージを透過したレーザーにより加工されている電子デバイスとする。
【0018】
前記電子部品は、圧電振動子であり、前記電子部品パッケージの内面に形成された前記薄膜が前記電子部品パッケージを透過したレーザーにより粒子として飛散され、飛散した当該粒子が前記圧電振動子に付着することで前記圧電振動子の周波数が変化している電子デバイスとする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、レーザーに対する加工閾値が低い薄膜を電子部品パッケージの内面に効率的に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】圧電デバイスを示す上面図及び断面図
【図2】本発明の圧電振動子の周波数調整方法を示す断面図(実施例1)
【図3】圧電デバイスを示す上面図及び断面図
【図4】本発明の圧電振動子の周波数調整方法を示す断面図(実施例2)
【図5】圧電デバイスを示す上面図及び断面図
【図6】本発明の圧電振動子の周波数調整方法を示す断面図(実施例3)
【図7】圧電デバイスを示す上面図及び断面図
【図8】本発明の圧電振動子の周波数調整方法を示す断面図(実施例4)
【図9】圧電デバイスを示す上面図及び断面図
【図10】本発明の圧電振動子の周波数調整方法を示す断面図(実施例5)
【図11】圧電デバイスを示す上面図及び断面図
【図12】本発明の圧電振動子の周波数調整方法を示す断面図(実施例6)
【図13】圧電デバイスを示す上面図及び断面図
【図14】従来の圧電振動子の周波数調整方法を示す断面図
【図15】圧電デバイスを示す上面図及び断面図
【図16】従来の圧電振動子の周波数調整方法を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、具体的な実施例を挙げて本発明について説明をする。
【実施例1】
【0022】
図1は、圧電振動子を示す上面図及び断面図、図2は、本発明の圧電振動子の周波数調整方法を示す断面図である。ここに示す圧電デバイスは、上部が開放された箱型のベース基板1に平板状の蓋部材2が接合されることで形成された電子部品パッケージの内部に平板状の圧電振動子3が収納された所謂パッケージ型の圧電デバイスである。
【0023】
圧電振動子3は、ベース基板1の内底面上に導電性接着剤等を介して実装され、ベース基板1の内部に形成された貫通配線7やベース基板1の表面に敷設された配線パターン等を介して、ベース基板1の外底面に設けられた外部接続端子8に電気的に接続されている。
【0024】
圧電振動子3の表面には、圧電振動子3を励振駆動させるための励振電極や圧電振動子3をベース基板1に実装するための実装用端子が設けられ、更に、蓋部材2と対向する領域の一部に金属等から成る周波数調整用の薄膜11が設けられている。
【0025】
以上の圧電デバイスにおいて、圧電振動子3の周波数を調整する際には、予め製作段階で圧電振動子3の周波数を目標値よりも低周波側に設定した上で、図2中上図に示すように、蓋部材2を透過する波長帯域のレーザー5を、蓋部材2の外面側から圧電振動子3の表面にある周波数調整用の薄膜11に焦点を結ぶように照射し、レーザーのアブレーション作用により薄膜11を粒子11aとして飛散させる。
【0026】
薄膜11が飛散すると、圧電振動子3の質量が減少して周波数が高周波側へと変化し、それと同時に、飛散した薄膜11の粒子11aが圧電振動子3と対向する蓋部材2の表面に付着して新たに薄膜12を形成する。この薄膜12は、一般的に厚さや粒子密度が小さく、レーザーに対する加工閾値が低いものであるが、それらのパラメーターは、レーザー5の照射条件を適宜調整することで変更が可能である。
【0027】
ここで、以上の周波数調整により周波数が目標値となればよいが、過剰な調整により周波数が目標値を上回ってしまった場合には、図2中下図に示すように、蓋部材2を透過する波長帯域のレーザー5を、蓋部材2の外面側から蓋部材2の内面にある薄膜12に焦点を結ぶように照射し、レーザーのアブレーション作用により薄膜12を粒子12aとして飛散させる。飛散した粒子12aは、圧電振動子3の表面に付着し、圧電振動子3の質量が増加することで周波数が低周波側へと変化する。
【0028】
この時、蓋部材2の内面にある薄膜12は、レーザーに対する加工閾値が低いことから、使用するレーザー5は低出力のもので十分であり、レーザー5の出力を低下させた分、薄膜12に密接する蓋部材2の表層が高強度のレーザーに晒されなくなるため、レーザー5による蓋部材2へのダメージを軽減することができる。
【0029】
以上の周波数調整により周波数が再度目標値を下回ってしまった場合には、周波数の高周波側への調整(アップコンバージョン)と低周波側への調整(ダウンコンバージョン)を、周波数が目標値になるまで同様に繰り返す。
【0030】
この実施例では、圧電振動子3の表面にある周波数調整用の薄膜11を除去して圧電振動子3の周波数を調整する工程の中で、蓋部材2の表面に薄膜12が同時に形成されるため、蓋部材2の表面に薄膜12を形成する工程を実質的に省略することができる。また、薄膜12の材料源は、圧電振動子3の表面に予め設けられている周波数調整用の薄膜11であるため、蓋部材2の表面に薄膜12を形成するために新たに材料を必要とすることはない。
【0031】
尚、周波数調整用の薄膜11は、圧電振動子3のベース基板1と対向する側の表面に形成されていてもよく、この場合、レーザー5により飛散された薄膜11の粒子11aは、圧電振動子3と対向するベース基板1の表面(内底面)に付着して薄膜12を形成し、周波数を低周波側へ調整する際には、その薄膜12をレーザー5により飛散させて圧電振動子3の表面に再度付着させることとなる。
【実施例2】
【0032】
図3は、圧電振動子を示す上面図及び断面図、図4は、本発明の圧電振動子の周波数調整方法を示す断面図である。ここに示す圧電デバイスは、実施例1で示した圧電デバイスと同様であり、圧電振動子3の表面には、周波数調整用の薄膜11が形成されている。
【0033】
以上の圧電デバイスにおいて、圧電振動子3の周波数を調整する際には、予め製作段階で圧電振動子3の周波数を目標値よりも低周波側に設定した上で、図4中上図に示すように、蓋部材2を透過する波長帯域のレーザー5を、蓋部材2の外面側から圧電振動子3の表面にある周波数調整用の薄膜11に焦点を結ぶように照射し、レーザーのアブレーション作用により薄膜11を粒子11aとして飛散させる。
【0034】
薄膜11が飛散すると、圧電振動子3の質量が減少して周波数が高周波側へと変化し、それと同時に、飛散した薄膜11の粒子11aが圧電振動子3と対向する蓋部材2の表面に付着して新たに薄膜12を形成する。
【0035】
ここで、以上の周波数調整により周波数が目標値を上回ってしまった場合には、図4中下図に示すように、ベース基板1を透過する波長帯域のレーザー5を、ベース基板1の外面側から蓋部材2の内面にある薄膜12に焦点を結ぶように照射し、レーザーのアブレーション作用により薄膜12を粒子12aとして飛散させる。飛散した粒子12aは、圧電振動子3の表面に付着し、圧電振動子3の質量が増加することで周波数が低周波側へと変化する。
【実施例3】
【0036】
図5は、圧電振動子を示す上面図及び断面図、図6は、本発明の圧電振動子の周波数調整方法を示す断面図である。ここに示す圧電デバイスは、実施例1で示した圧電デバイスの変形例であり、相違点として、圧電振動子3の表面には、周波数調整用の薄膜11が形成されておらず、蓋部材2と対向する一部の領域において圧電振動子3の母材(圧電材料)が露出している。
【0037】
以上の圧電デバイスにおいて、圧電振動子3の周波数を調整する際には、予め製作段階で圧電振動子3の周波数を目標値よりも低周波側に設定した上で、図6中上図に示すように、蓋部材2を透過する波長帯域のレーザー5を、蓋部材2の外面側から圧電振動子3の母材の表層に焦点を結ぶように照射し、レーザーのアブレーション作用により母材の一部を粒子3aとして飛散させる。母材の一部が飛散すると、圧電振動子3の質量が減少して周波数が高周波側へと変化し、それと同時に、飛散した粒子3aが圧電振動子3と対向する蓋部材2の表面に付着して新たに薄膜12を形成する。
【0038】
ここで、以上の周波数調整により周波数が目標値を上回ってしまった場合には、図6中下図に示すように、蓋部材2を透過する波長帯域のレーザー5を、蓋部材2の外面側から蓋部材2の内面にある薄膜12に焦点を結ぶように照射し、レーザーのアブレーション作用により薄膜12を粒子12aとして飛散させる。飛散した粒子12aは、圧電振動子3の表面に付着し、圧電振動子3の質量が増加することで周波数が低周波側へと変化する。
【0039】
この実施例では、圧電振動子3の母材を飛散させて圧電振動子3の周波数を調整する工程の中で蓋部材2の表面に薄膜12が同時に形成されるため、蓋部材2の表面に薄膜12を形成する工程を実質的に省略することができる。また、薄膜12の材料源は、圧電振動子3の母材自体であるため、蓋部材2の表面に薄膜12を形成するために新たに材料を必要とすることはない。
【0040】
尚、レーザー5により飛散させる圧電振動子3の母材の一部は、ベース基板1と対向する側の母材の表層であってもよく、この場合、レーザー5により飛散された母材の粒子3aは、圧電振動子3と対向するベース基板1の表面(内底面)に付着して薄膜12を形成し、周波数を低周波側へ調整する際には、その薄膜12をレーザー5により飛散させて圧電振動子3の表面に再度付着させることとなる。
【実施例4】
【0041】
図7は、圧電振動子を示す上面図及び断面図、図8は、本発明の圧電振動子の周波数調整方法を示す断面図である。ここに示す圧電デバイスは、実施例1で示した圧電デバイスと同様の基本構成を備え、相違点として、圧電振動子3の表面には、周波数調整用の薄膜11が形成されておらず、更に、圧電振動子3の先端側に位置するベース基板1の内面に段差部1aが一体的に設けられ、その段差部の上面に金属等からなる薄膜13が形成されている。
【0042】
以上の圧電デバイスにおいて、圧電振動子3の周波数を調整する際には、予め製作段階で圧電振動子3の周波数を目標値よりも高周波側に設定した上で、図8中上図に示すように、蓋部材2を透過する波長帯域のレーザー5を、蓋部材2の外面側からベース基板1の段差部1a上にある薄膜13に焦点を結ぶように照射し、レーザーのアブレーション作用により薄膜13を粒子13aとして飛散させる。飛散した粒子13aは、段差部1aと対向する蓋部材2の表面に付着して新たに薄膜12を形成する。
【0043】
次に、図8中下図に示すように、蓋部材2を透過する波長帯域のレーザー5を、蓋部材2の外面側から蓋部材2の内面にある薄膜12に焦点を結ぶように照射し、レーザーのアブレーション作用により薄膜12を粒子12aとして飛散させる。飛散した粒子12aは、圧電振動子3の表面に付着し、圧電振動子3の質量が増加することで周波数が低周波側へと変化する。
【0044】
この実施例では、蓋部材2の表面に薄膜12を形成するために、予めベース基板1の表面に飛散用の薄膜13を設けておかなければならないが、この薄膜13は、ベース基板1に配線パターン等を形成する際に、それらと同一材料及び同一条件で同時に形成することが可能であり、また、特に支障が無いのであれば、ベース基板1上に予め存在する配線パターン等の一部をそのまま飛散用の薄膜13として利用してもよく、生産性が低下することはない。
【0045】
また、この実施例では、飛散用の薄膜13を飛散させる際に、レーザー5をベース基板1の表層付近に集光させることになるため、レーザー5によりベース基板1にダメージが発生する虞があるが、薄膜13を形成する箇所に段差部1aを設けるなどしてベース基板1の強度を高めておけばよい。
【0046】
また、段差部1aは、飛散した薄膜13の粒子13aが蓋部材2の表面に届く範囲内であれば、圧電振動子3周辺のどの領域に設けてもよく、その高さも、粒子13aの飛散範囲を考慮した上で適宜設定すればよい。
【実施例5】
【0047】
図9は、圧電振動子を示す上面図及び断面図、図10は、本発明の圧電振動子の周波数調整方法を示す断面図である。ここに示す圧電デバイスは、実施例4で示した圧電デバイスの変形例であり、相違点として、ベース基板1の内面に設けられた段差部1aの上面が圧電振動子3側に傾く傾斜面とされ、その傾斜面上に飛散用の薄膜13が形成されている。
【0048】
以上の圧電デバイスにおいて、圧電振動子3の周波数を調整する際には、予め製作段階で圧電振動子3の周波数を目標値よりも高周波側に設定した上で、図10中上図に示すように、蓋部材2を透過する波長帯域のレーザー5を、蓋部材2の外面側からベース基板1の段差部1a(傾斜面)上にある薄膜13に焦点を結ぶように照射し、レーザーのアブレーション作用により薄膜13を粒子13aとして飛散させる。飛散した粒子13aは、段差部1aの傾斜の影響を受けて、段差部1aの真上より圧電振動子3寄りの蓋部材2の表面に付着して新たに薄膜12を形成する。
【0049】
次に、図10中下図に示すように、蓋部材2を透過する波長帯域のレーザー5を、蓋部材2の外面側から蓋部材2の内面にある薄膜12に焦点を結ぶように照射し、レーザーのアブレーション作用により薄膜12を粒子12aとして飛散させる。飛散した粒子12aは、圧電振動子3の表面に付着し、圧電振動子3の質量が増加することで周波数が低周波側へと変化する。
【0050】
この実施例では、飛散用の薄膜13を形成する面を傾斜させることで、薄膜13の粒子13aを飛散させる方向を制御することができるため、設計の自由度が増す。尚、傾斜面の傾斜方向や傾斜角度は、飛散した粒子13aを付着させたい領域に応じて適宜設定すればよい。
【実施例6】
【0051】
図11は、圧電振動子を示す上面図及び断面図、図12は、本発明の圧電振動子の周波数調整方法を示す断面図である。ここに示す圧電デバイスは、実施例4で示した圧電デバイスの変形例であり、相違点として、ベース基板1の内面に設けられた段差部1a上には、飛散用の薄膜13が形成されておらず、ベース基板1の母材がそのまま露出している。
【0052】
以上の圧電デバイスにおいて、圧電振動子3の周波数を調整する際には、予め製作段階で圧電振動子3の周波数を目標値よりも高周波側に設定した上で、図12中上図に示すように、蓋部材2を透過する波長帯域のレーザー5を、蓋部材2の外面側からベース基板1の段差部1aの表層に焦点を結ぶように照射し、レーザーのアブレーション作用により段差部1aの表層を粒子1bとして飛散させる。飛散した粒子1bは、段差部1aと対向する蓋部材2の表面に付着して新たに薄膜12を形成する。
【0053】
次に、図12中下図に示すように、蓋部材2を透過する波長帯域のレーザー5を、蓋部材2の外面側から蓋部材2の内面にある薄膜12に焦点を結ぶように照射し、レーザーのアブレーション作用により薄膜12を粒子12aとして飛散させる。飛散した粒子12aは、圧電振動子3の表面に付着し、圧電振動子3の質量が増加することで周波数が低周波側へと変化する。
【0054】
この実施例では、薄膜12の材料源は、ベース基板1の母材自体であるため、蓋部材2の表面に薄膜12を形成するために新たに材料を必要とすることはない。
必要はない。
【0055】
尚、段差部1aの上面は、実施例5と同様に圧電振動子3側に傾く傾斜面とすることも可能である。
【0056】
以上、いくつかの実施例を挙げて本発明について説明したが、それらの実施例は、適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0057】
また、電子部品パッケージは、箱型のベース基板に平板状の蓋部材を接合したものに限らず、例えば、平板状のベース基板に箱型の蓋部材を接合したものであってもよい。
【0058】
また、電子部品パッケージの内面に薄膜を形成するためにレーザーにより一次的に飛散させる部材は、本発明の趣旨を逸脱し内範囲で、電子部品パッケージの内部空間に存在するあらゆる部材が対象となる。
【0059】
また、本発明は、圧電デバイスのみならず、電子部品パッケージの内面に形成された薄膜を外部からレーザーにより加工(除去、改質、溶融等)することが求められる、圧電振動子以外の電子部品を収納したその他の電子デバイスにも適用することが可能である。
【符号の説明】
【0060】
1 ベース基板
1a 段差部
1b 粒子
2 蓋部材
3 圧電振動子
4 薄膜
4a 粒子
5 レーザー
6 薄膜
6a 粒子
7 貫通配線
8 外部接続端子
11 薄膜
11a 粒子
12 薄膜
12a 粒子
13 薄膜
13a 粒子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部が密閉空間とされた電子部品パッケージに外部からレーザーを照射して透過させ、透過した当該レーザーを前記電子部品パッケージ内部の所定領域に照射して当該所定領域に存在する部材の少なくとも一部を粒子として飛散させる工程と、
飛散した当該粒子を前記電子部品パッケージの内面に付着させて薄膜を形成する工程と、
前記電子部品パッケージに外部からレーザーを照射して透過させ、透過した当該レーザーを前記薄膜に照射して前記薄膜を加工する工程と、
を有することを特徴とする薄膜の加工方法。
【請求項2】
前記電子部品パッケージに外部からレーザーを照射して透過させ、透過した当該レーザーを前記電子部品パッケージ内部の所定領域に照射して当該所定領域に存在する部材の少なくとも一部を粒子として飛散させる工程と、
飛散した当該粒子を前記電子部品パッケージの内面に付着させて薄膜を形成する工程と、
前記電子部品パッケージに外部からレーザーを照射して透過させ、透過した当該レーザーを前記薄膜に照射して前記薄膜を粒子として飛散させる工程と、
飛散した当該粒子を前記電子部品パッケージの内部に収納された圧電振動子に付着させて当該圧電振動子の周波数を調整する工程と、
を有することを特徴とする圧電振動子の周波数調整方法。
【請求項3】
前記所定領域に存在する前記部材は、前記圧電振動子の表面に形成された周波数調整用の薄膜であることを特徴とする請求項2に記載の圧電振動子の周波数調整方法。
【請求項4】
前記所定領域に存在する前記部材は、前記圧電振動子の母材であることを特徴とする請求項2に記載の圧電振動子の周波数調整方法。
【請求項5】
前記所定領域に存在する前記部材は、前記電子部品パッケージの内面に形成された薄膜であることを特徴とする請求項2に記載の圧電振動子の周波数調整方法。
【請求項6】
前記所定領域に存在する前記部材は、前記電子部品パッケージの母材であることを特徴とする請求項2に記載の圧電振動子の周波数調整方法。
【請求項7】
前記薄膜が形成される前記電子部品パッケージの内面は、前記圧電振動子側に傾く傾斜面とされていることを特徴とする請求項5又は6に記載の圧電振動子の周波数調整方法。
【請求項8】
内部が密閉空間とされた電子部品パッケージの内部に電子部品が収納された電子デバイスであって、
前記電子部品パッケージ内部の所定領域に存在する部材の少なくとも一部が前記電子部品パッケージを透過したレーザーにより粒子として飛散され、飛散した当該粒子が前記電子部品パッケージの内面に付着して薄膜を形成し、当該薄膜が前記電子部品パッケージを透過したレーザーにより加工されていることを特徴とする電子デバイス。
【請求項9】
前記電子部品は、圧電振動子であり、前記電子部品パッケージの内面に形成された前記薄膜が前記電子部品パッケージを透過したレーザーにより粒子として飛散され、飛散した当該粒子が前記圧電振動子に付着することで前記圧電振動子の周波数が変化していることを特徴とする請求項8に記載の電子デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−231233(P2012−231233A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−97168(P2011−97168)
【出願日】平成23年4月25日(2011.4.25)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成23年度 独立行政法人科学技術振興機構 研究成果最適展開支援事業 本格研究開発 ハイリスク挑戦タイプ 委託研究 産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000166948)シチズンファインテックミヨタ株式会社 (438)
【出願人】(304021288)国立大学法人長岡技術科学大学 (458)
【Fターム(参考)】