説明

薄膜半導体デバイスおよび薄膜半導体デバイスの製法

金属半導体電界効果トランジスタの形態の薄膜半導体は、紙シート材料の基材10および基材上の層に蒸着された多くの薄膜活性無機層を含む。活性層は、オフセット印刷プロセスを用いて印刷される。第1の活性層は、紙基材上に直接印刷されるコロイド銀インクのソース12.1およびドレイン12.2伝導体を含む。第2の活性層は、第1の層上に印刷されるコロイドナノ結晶シリコンインクの固有の半導体層14である。第3の活性層は、第2の層上に印刷されて、ゲート電極を形成するコロイド銀の金属伝導体16を含む。本発明は、光電池のような他の薄膜半導体および半導体の製法にまで拡大される。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
発明の分野
本発明は、薄膜半導体デバイスに関する。
また、薄膜半導体デバイスの製法にも関する。
【0002】
発明の背景
現在生産されているあるいは商業的開発下にある半導体デバイスは、3つのカテゴリー:単結晶シリコン、バルク多結晶シリコンまたは薄膜半導体に分類することができる。最初の2つは、生産するのに高価であり、市場の高級品に向けられている。ほとんどの研究および開発は、コストを無視して、そのようなデバイスの効率および長期間安定性を改善することに向けられている。
【0003】
他方で、薄膜半導体は、一般的に、絶対的な効率およびコンパクトさが必須でないより低いコストの適用に意図される。比較的高い生産コストおよび基材の高い材料コストのため、長期間安定性は、未だに、現存する薄膜半導体にとって望ましい目標である。
【0004】
ほとんどの商業用薄膜半導体デバイスは、水素化アモルファスシリコン(a−Si:H)に基づき、これは、様々な化学蒸着(CVD)プロセスによって蒸着されたナノ結晶または微結晶相も含有し得る。2つの主な技術は、グロー放電CVDとしても知られるプラズマ助長CVD(PECVD)およびホットワイヤCVD(HWCVD)としても知られる触媒CVD(cat-CVD)である。光起電力半導体デバイスの場合、全てのCVD蒸着薄膜半導体およびa−Si:Hは、特に、作業の最初の数年間にわたり最も有意である光誘導劣化(「Staebler-Wronksi効果」と呼ばれる)に悩まされる。結果的に、全ての商業用光起電力半導体デバイスは、オーバーエンジニアされ、そうすることで、それらは規格とおりに劣化し、結果的に、レギュレーターと適合させて、出力電位を一定に維持する。商業用半導体系太陽電池において、基材は、典型的には、その機械的安定性および重量のため、半導体デバイスのサイズを制限するガラスである。また、ガラスは、強固でもろいというさらなる欠点を有する。
【0005】
全ての商業用薄膜トランジスタ(TFT)は、CVD蒸着半導体フィルムに基づき、フォトリソグラフィ、マスクおよび化学エッチングの大量使用を含む。高密度トランジスタアレイにおいて、異なる半導体層の垂直スタッキング配列が使用される。ゲート電極用を含めた様々な半導体層を蒸着させるための蒸着技術は、半導系太陽電池用と同じであり、通常の基材はガラスである。
【0006】
安価な半導体デバイスの生産を制限する主な要因は、生産における真空蒸着プロセスの使用である。そのような真空蒸着プロセスは、比較的高価であり、それ自体、半導体デバイスを生産するコストを有意に増加させる。さらに、CVDプロセスを用いて蒸着された半導体層は比較的強固であり、それ自体、柔軟性のある基材と上手く組み合わされない。
【0007】
発明の概要
本発明の第1の態様によると、
基材;および
基材上の層に蒸着された無機材料の薄膜活性層を含み、ここに少なくとも1つの活性層は、基材または基礎をなす活性層に印刷されたことを特徴とする薄膜半導体デバイスが提供される。
【0008】
本明細書における「活性層」へのいずれの言及も、半導体層、絶縁層および金属コンタクトへの言及を含むと解釈されなければならない。
【0009】
活性層は、オフセット印刷、木版印刷、活版印刷およびコロイドインクを用いるスクリーン印刷よりなる群から選択される転写印刷プロセスを用いて印刷されてもよい。
【0010】
基材は、セルロースを含む材料のものであってもよい。より具体的には、基材は、紙シート材料のものであってもよい。
【0011】
半導体デバイスは、溶媒/結合剤担体組成物中に懸濁された無機半導体材料粉末を含むコロイドインクを含む活性層を含んでもよい。
【0012】
活性層の各々は、基礎をなす活性層および基材の一方に印刷されてもよい。
【0013】
半導体デバイスは、光起電力電池の形態であってもよい。
【0014】
半導体デバイスは、電界効果トランジスタの形態であってもよい。
【0015】
本発明の第2の態様によると、無機材料の多数の薄膜活性層を蒸着することを特徴とし、ここに少なくとも1つの活性層が、基材および基礎をなす活性層の一方に印刷されることを特徴とする薄膜半導体デバイスの製法が提供される。
【0016】
該1つの活性層は、オフセット印刷、木版印刷、活版印刷およびコロイドインクを用いるスクリーン印刷よりなる群から選択される転写印刷プロセスを用いて印刷されてもよい。
【0017】
該方法は、各活性層を、基材および基礎をなす活性層の一方に印刷することを含んでもよい。
【0018】
該方法は、活性層を、溶媒/結合剤担体組成物中に懸濁された無機半導体材料粉末を含むコロイドインクの形態で、基材および基礎を成す活性層の一方に印刷することを含んでもよい。
【0019】
本明細書における活性層を表面に「印刷」することへのいずれの言及も、活性層を表面に、スプレーする、ブラッシュするまたはスピンコートするといったコーティング方法、つまりコーティング材料の化学的または物理的相変化が蒸着の間起こらない方法を含むように、十分に広範に解釈されなければならない。
【0020】
本発明のさらなる特徴は、以後、本発明の非限定的実施例を通して、添付の線図に関連して、添付の線図に示されるように記載される。
【実施例】
【0021】
図1は、紙シートの基材10上に支持された3つの薄膜半導体層よりなるトップゲートMS-FETを示す。出願人は、80g/mの密度を有するMondi Rotarimウッドフリーオフィスペーパーのような無地のオフィスペーパーが、目的に適当であることを見い出した。第1の活性層は、例えば、Dopont Luxprint5000のようなコロイド銀の2つの間隔を設けた金属伝導体を含み、これは、電界効果トランジスタのソース12.1およびドレイン12.2を含む。ソースおよびドレインを形成する金属伝導体は、オフセット印刷プロセスを用いて、紙基材10に、直接印刷される。ソースおよびドレインコンタクトは、300ないし400ミクロンの層厚みを有する。
【0022】
第2の半導体層は、オフセット印刷プロセスを用いて第1の層に印刷されるコロイドナノ結晶性シリコン(nc−Si)の固有半導体層14である。半導体層14を形成するコロイドnc−Si材料は、溶媒−結合剤担体中の30mm直径の固有のシリコン粉末を用いて製造される。出願人は、例えば、炭化ケイ素、硫化カドミウムといった他の半導体ナノ粉末を、他の適用のために使用することができることを見い出した。例えば、ドープされた半導体層は、ドープされたナノシリコン材料で、固有のナノシリコン粉末を置き換えることによって製造することができる。半導体層14を形成するのに使用されるnc−Siインク中の成分物質の相対的濃度は、印刷プロセスにおいて必要なインクの粘度によって決定される。この実施例において、溶媒−結合剤担体は、ポリスチレン結合剤および溶媒としてのクロロホルムの混合物である。使用可能な他のポリマー結合剤は、エーテルおよび商業用ラッカーシンナーのような様々な溶媒中の酢酸酪酸セルロース(CAB)のようなバイオポリマーを含む。半導体層14は、ポリスチレン結合剤およびオフセット印刷プロセスが使用される時、1−2ミクロンのオーダーの厚みを有する。
【0023】
第3の活性層は、オフセット印刷プロセスを使用して、ゲート電極を形成するために第2の層に印刷される、例えばDopont Luxprint5000のようなコロイド銀材料の金属伝導体16の形態である。典型的には、第3の層は、300および400ミクロンの間の厚みを有する。
【0024】
トップゲートMS-FETは、トップおよびボトムコンタクトが相互に対して直角に延びる「交差」幾何学を有し、従って、インターコネクトに直接接続することができる。それ自体、これによって、もし異なる層が接続されるならば、インターコネクトも、同時にまたは続いてのいずれかで印刷されることが可能になり、製造プロセスがより簡潔かつ安価になる。
【0025】
出願人は、オフセット印刷が、半導体デバイスの商業用生産において、様々な半導体層を印刷するのに使用されるだろうと予想する。しかしながら、出願人は、木版印刷、スクリーン印刷、活版印刷、凸版印刷、スタンプ印刷、グラビア印刷およびコロイドインクを基材/活性層にスプレー、ブラッシュまたはスピンコートすることによる「印刷」といった様々な他の印刷技術も使用可能であると考える。さらに、出願人は、実施例1記載のMS-FETと同様の半導体デバイスのアレイが、標準的な三色印刷ランにおいて製造可能であると予想する。ドープされた半導体層を含むより複雑なヘテロ構造は、印刷プロセスにおいて「色」の数を拡大することによって製造できる。
【0026】
図面の図5を参照して、本発明に従い出願人によって製造されたプロトタイプトップゲートMS-FETの電流−電圧特徴が示される。テストされたプロトタイプMS-FETは、実施例1記載のトップゲートMS-FETと同等であり、違いは、様々な活性層が、オフセット印刷プロセスで印刷される代わりに、木版印刷されたことだけであった。
【0027】
実施例2:
図2は、紙シートの基材10上に支持される3つの薄膜半導体層を含むボトムゲートMS-FETを示す。ボトムゲートMS-FETは、図1記載のトップゲートMS-FETと同一であり、違いは、半導体層が、反転されて、ボトムゲート電界効果トランジスタを形成することだけであった。これによって、他の活性成分が、トランジスタのソースおよびドレインに直接的に接続し、より早くスイッチすることが可能になる。同じ参照数字が、図1記載のトップゲートMS-FETのものと同一であるボトムゲートMS-FETの特徴を指定するために使用される。この実施例において、実施例1のトップゲートMS-FETにおいて使用される同一の印刷プロセスおよび材料を、様々な半導体層に対して使用する。
【0028】
図面の図6を参照して、本発明に従い出願人によって製造されたプロトタイプボトムゲートMS-FETの電流−電圧特徴が示される。テストされたプロトタイプMS-FETは、実施例2記載のボトムゲートMS-FETと同等であり、違いは、様々な活性層が、オフセット印刷プロセスで印刷される代わりに、木版印刷されたことだけであった。
【0029】
実施例3:
図面の図3を参照して、2つの電極の間に挟まれた固有半導体24(層2)を含む光電池40の形態の薄膜半導体が示される。より具体的には、光電池は、例えば、Mondi Rotatrimウッドフリー紙のような無地の白色オフィスペーパーのペーパー基材20の主な表面に印刷されるコロイド銀の金属ベースコンタクト22の形態の第1の活性層を含む。固有半導体の形態の第2の活性層は、第1の層に適用される。第2の層は、例えば、第1の層に印刷されるコロイドnc−Siを含む。トップコンタクトを形成する第3の活性層は、例えば、Dupont Luxprint7162E透明伝導材料のようなコロイドインジウムスズ酸化物(ITO)の透明のp型伝導体26であり、これは第2の層に印刷される。任意である第4の層は、透明なラッカーのような誘電材料の透明な保護コーティング28の形態であり、これは第3の層に印刷される。
【0030】
第1および第2の層は、トップゲートMS-FETについて、実施例1に記載されるのと同一の様式で製造される。第3の層は、オフセット印刷プロセスを用いて適用されるが、しかしながら、出願人は、プロトタイプ半導体構造において、木版印刷およびブラッシュ技術を用いて第3の層を上手く適用した。
【0031】
実施例4:
この実施例は、紙基材20上に蒸着された3つの層を含む光電池の構築を示す。該電池は、連続して接続された3つの光電池40を含む。第1の層は、例えば、紙基材10上に印刷されたコロイド銀の印刷された金属ベースコンタクト50の形態である。第2の層は、例えば、第1の層上に印刷されたコロイドnc−Si層を含むn−i−p配列において、単一の固有半導体層または半導体構造を含む。光電池は、第2の層上に印刷された例えばコロイドITOの透明なトップコンタクト54を含む第3の層を含む。個々の電池は、隣接ストリップのトップおよびボトムコンタクトを重ねることによって、紙基材10を横切ってストリップとして設けられ、電池は自動的に一緒に直列にて連結されることが認識されるだろう。
【0032】
そうすると、2つの外部接続のみが必要である:ベースコンタクトに1つ、そしてトップコンタクトに1つ。様々な半導体層が、3または4色オフセットまたは活版印刷プロセスにおいて適用される。
【0033】
開回路電圧は、ストリップの数と電池emfとの積である。ストリップの幅Wは、各電池の面積、従って、一定の電流密度では、生じる電流を決定する。それ自体、ストリップの長さLは、直列した電池の数、すなわち電池にわたる電圧を決定する。
【0034】
出願人は、紙が、安価で、頑丈で柔軟な基材のための全ての必要条件を満たすことを見い出した。紙は吸湿性であるため、出願人は、耐水性の蓋を提供して、紙基材を水の侵入による劣化から保護する必要があるだろうと予想する。太陽電池における使用の場合、透明でなければならないニスで、あるいはデバイスをガラスキャビネットに維持することによって達成することができると、出願人は予想する。
【0035】
出願人は、数年間使用した後、入れ替えることができる低コスト太陽電池デバイスが、本発明に従い製造可能であると予想する。そのような低コスト太陽電池は、細流充電器のような使い捨て製品および周辺光を使用する携帯電話およびポータブルコンピューターのための電力供給に使用することも可能である。出願人は、そのような低コスト太陽電池デバイスにおいて、電気接続は、ワニクリップまたはネジによってのいずれかで、紙基材に直接行うことができると予想する。さらに、出願人は、外部電気接続を除く全太陽電池構造は、構造上に印刷されることも可能である透明なニスによって保護され得ると予想する。外部環境からのさらなる保護のために、太陽電池は、ガラスキャビネット内に取り付けられるべきである。
【0036】
さらに、出願人は、紙シート基材を用いるTFTアレイは、多くの適用に関して、コスト、柔軟性および強固さに関して現在のTFTアレイを超える利点を有するだろうと予想する。将来の開発において、TFTアレイを次のディスプレイ技術:結晶ポリマー、エレクトロルミネセントフォスフォルおよびe−インクのいずれかとで同一紙基材上で統合して、統合中解像度ディスプレイを製造することが可能になるだろうと予想される。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】図1は、本発明の第1の実施例記載のトップゲート金属半導体電界効果トランジスタ(MS-FET)の様々な層の配置を示す断面図および平面図を示す。
【図2】図2は、本発明の第2の実施例記載のボトムゲートMS-FETの様々な層の配置を示す断面図および平面図を示す。
【図3】図3は、本発明の第3の実施例記載の光電池の様々な層の配置を示す断面図および平面図を示す。
【図4】図4は、本発明の第4の実施例記載の光電池の配置を示す平面図および断面図を示す。
【図5】(原文に記載なし)
【図6】(原文に記載なし)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材;および
基材上の層に蒸着された無機材料の多数の薄膜活性層を含み、ここに少なくとも1つの活性層は、基材および基礎をなす活性層の一方に印刷されたことを特徴とする薄膜半導体デバイス。
【請求項2】
該活性層が、オフセット印刷、木版印刷、スタンプ印刷、凸版印刷、グラビア印刷、活版印刷およびコロイドインクを用いるスクリーン印刷よりなる群から選択される転写印刷プロセスを用いて印刷される前記請求項のいずれか1記載の半導体デバイス。
【請求項3】
該基材が、セルロースを含む材料のものである請求項1記載の半導体デバイス。
【請求項4】
該基材が、紙シート材料のものである請求項3記載の半導体デバイス。
【請求項5】
各活性層が、基礎をなす活性層および基材の一方に印刷される前記請求項のいずれか1記載の半導体デバイス。
【請求項6】
光電池の形態である前記請求項のいずれか1記載の半導体デバイス。
【請求項7】
電界効果トランジスタの形態である前記請求項のいずれか1記載の半導体デバイス。
【請求項8】
溶媒/結合剤担体組成物中に懸濁された無機半導体材料粉末を含むコロイドインクを含む活性層を含む前記請求項のいずれか1記載の半導体デバイス。
【請求項9】
基材に無機材料の多数の薄膜活性層を蒸着することを含み、ここに少なくとも1つの活性層が、基材および基礎をなす活性層の一方に印刷されることを特徴とする薄膜半導体デバイスの製法。
【請求項10】
該1つの活性層が、オフセット印刷、木版印刷、スタンプ印刷、凸版印刷、グラビア印刷、活版印刷およびコロイドインクを用いるスクリーン印刷よりなる群から選択される転写印刷プロセスを用いて印刷される請求項9記載の方法。
【請求項11】
活性層を、溶媒/結合剤担体組成物中に懸濁された無機半導体材料粉末を含むコロイドインクの形態で、基材および基礎をなす活性層の一方に印刷することを特徴とする請求項9または請求項10記載の方法。
【請求項12】
各活性層が、基材および基礎をなす活性層の一方に印刷される請求項8または請求項9記載の方法。
【請求項13】
実質的に明細書記載の新規な薄膜半導体デバイス。
【請求項14】
実質的に、添付の線図に関連して明細書中に記載されるとおりであり、添付の線図に示されるとおりの薄膜半導体デバイス。
【請求項15】
実質的に明細書記載の新規な方法。
【請求項16】
実質的に、添付の線図に関連して明細書中に記載されるとおりであり、添付の線図に示されるとおりの方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2006−516819(P2006−516819A)
【公表日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−502374(P2006−502374)
【出願日】平成16年1月30日(2004.1.30)
【国際出願番号】PCT/IB2004/000221
【国際公開番号】WO2004/068536
【国際公開日】平成16年8月12日(2004.8.12)
【出願人】(504425406)ユニバーシティ・オブ・ケープ・タウン (9)
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITY OF CAPE TOWN
【Fターム(参考)】