説明

薄膜塗工装置に設ける乾燥装置

【課題】上下二層構造としなければならない乾燥装置の構築を容易にして、飛躍的なコストダウンが図れるなど画期的な両面薄膜塗工装置に設ける乾燥装置を提供すること。
【解決手段】移動可能なブロック体6の上下に上側乾燥室形成部7Aと下側乾燥室形成部7Bとを設けて、各ブロック体6を移動して次々と側方に隣り合わせて各出入口部8が連通するように横列状態に連結することで、所定長の上側乾燥室5Aと下側乾燥室5Bとを上下に継合形成した両面薄膜塗工装置に設ける乾燥装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばスリット状の先端吐出孔から塗工液を吐出するノズル部に対して、フィルム状の被塗工体を搬送して表面に薄膜を塗工形成するように構成した薄膜塗工装置に設ける乾燥装置であって、塗工を終えたフィルム状の被塗工体を、熱風が送り込まれる乾燥室を搬送通過させて塗工膜を乾燥する乾燥装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液供給部から供給された塗工液をスリット状の先端吐出孔から吐出するノズル部を有し、このノズル部の先端吐出孔から塗工液を吐出しながら、このノズル部と対向するフィルム状の被塗工体をこのノズル部に対して搬送させることで、このフィルム状の被塗工体に塗工液を薄膜状に塗工するように構成した薄膜塗工装置においては、その搬送下流側に乾燥装置を設けて塗工を終えたフィルム状の被塗工体の塗工膜を乾燥する。
【0003】
このフィルム塗工の量産性を向上するには、この乾燥装置の搬送長(乾燥長)を長くしたり乾燥機能自体を高めたりして、乾燥能力を高めて搬送スピードを上げることが望ましい。
【0004】
特に、フィルム状の被塗工体の両面に塗工する場合、一旦被塗工体の片面に塗工後この塗工膜を乾燥し、更に反対面にも塗工した後この反対面の塗工膜も乾燥するため、各乾燥装置の搬送長や乾燥機能の向上による乾燥能力の向上が量産性に一層大きな影響を与える。
【0005】
例えば、アルミ製又は銅製などの金属製フィルムを被塗工体とし、この表面にコバルト酸リチウムなどの正極活性物質又はグラファイトなどの負極活性物質にバインダー(NNPなどの溶媒)などを混合しこれを塗工液として、100μmオーダーの薄膜を塗工形成するリチウムイオン電池形成材を作製する場合、塗工はスピーディーに均一に行えても、この塗工後の乾燥をスピーディーに行えなければ量産性は向上されない。
【0006】
従って、できるだけ乾燥機能を高めるとしても量産性向上のために搬送スピードを上げようとすればそれだけ乾燥装置は長く大型となり、更に両面塗工にあってはこの長く大型な乾燥室を横に連ねるスペースがない場合には省スペース化のため二階建て構成とし折り返し乾燥させる構成とせざるを得なく、いずれにしても量産性を上げるには大型化し非常にコスト高になる。
【0007】
特に前述のようなリチウムイオン電池形成材を作製する場合、量産性の向上が強く望まれており、片面塗工・乾燥・反対面塗工・乾燥の工程を一連にしてスピーディーに行いたいことから、搬送長(乾燥長)を長く取る必要があるために、前述のように工場内に折り返し乾燥させる二階建ての乾燥装置を構築しなければならない。
【0008】
即ち、乾燥長を長く確保し乾燥能力を高め搬送スピードを上げて量産性を高めるためには、例えば熱風乾燥を行う片面乾燥室を下側乾燥室として構築し、省スペース化や工場スペースの限界からその上部に更に枠組みをして反対面乾燥室を上部乾燥室として構築して二階建ての大規模な乾燥装置を工場内に構築し、片側に設けた薄膜塗工装置によって片面に塗工を終えたフィルム状の被塗工体を前記下側乾燥室に搬送通過させて熱風乾燥し、次いでこの下側乾燥室を通り抜けたフィルム状の被塗工体を反対側に設けた薄膜塗工装置で反対面にも塗工し、このフィルム状の被塗工体を折り返し搬送(方向転換)して反対側から今度は上側乾燥室に搬送通過させてこの反対面の塗工膜も熱風乾燥して通り抜けたこのフィルム状の被塗工体を巻き取るように構成している。
【0009】
この上下の乾燥室は、前述のようにいずれも十分に長く確保して乾燥能力を高める必要があり、これを省スペース化や工場内でのスペースの制約から二階建てにして構築しなければならないため、各工場では大がかりな建築作業を要し、そのためこの両面塗工のスピードアップ・量産化には非常にコストがかかってしまう問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、このような問題を解決すべく乾燥装置の乾燥能力を高めて搬送スピードを高めフィルム塗工の量産性を向上させることができると共に、省スペース化などのために上下二層構造としなければならないこの乾燥装置の構築を容易にして、飛躍的なコストダウンが図れるなど画期的な薄膜塗工装置に設ける乾燥装置を提供することを目的としている。
【0011】
特に本発明においては、量産性を高め、省スペース化が図れるこれまでの二階建て構成の乾燥装置、特に両面塗工の場合の片面乾燥室と反対面乾燥室とをこれまで通り上下層構造として、省スペース化が図れながら、十分な搬送長(乾燥長)を確保して乾燥能力を高めることのできる乾燥装置を、予め上下に上側乾燥室形成部と下側乾燥室形成部とを設けたブロック体を次々と隣り合わせ連結することで構成でき、従来のように下側乾燥室を構築した上に更に上側乾燥室を構築するような大掛かりな建築作業を工場内で行う必要もなく、容易にこの上下二層構成の乾燥装置を連結製作でき、飛躍的にコストダウンを図れる画期的な薄膜塗工装置に設ける乾燥装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0013】
ノズル部1の先端吐出孔2から塗工液を吐出しながら、このノズル部1と対向するフィルム状の被塗工体4をこのノズル部1に対して搬送させることで前記フィルム状の被塗工体4に塗工液を薄膜状に塗工するように構成した薄膜塗工装置に設ける乾燥装置であって、前記塗工を終えたフィルム状の被塗工体4を搬送通過させる乾燥室を上下複数段設けて、この上側乾燥室5Aと下側乾燥室5Bとの一方の乾燥室を搬送通過させた後、方向転換して他方の乾燥室を搬送通過させて前記フィルム状の被塗工体4に塗工した塗工膜3を乾燥するように構成した乾燥装置において、移動可能なブロック体6の上下に、このブロック体6を次々と側方に隣り合わせて複数横列状態に連結することで所定長の前記上側乾燥室5Aと前記下側乾燥室5Bとが上下に並設形成される上側乾燥室形成部7Aと下側乾燥室形成部7Bとを設け、この上側乾燥室形成部7A若しくは下側乾燥室形成部7Bと連通し前記フィルム状の被塗工体4が搬送通過する出口若しくは入口となる出入口部8を前記各ブロック体6の両側上下に夫々設け、前記各ブロック体6を移動して次々と側方に隣り合わせて前記各出入口部8が連通するように横列状態に連結した構成としたことを特徴とする薄膜塗工装置に設ける乾燥装置に係るものである。
【0014】
また、前記各ブロック体6の底部にキャスタ9を設けて床面上を移動自在に設け、この各ブロック体6を次々と前記上下の各出入口部8が対向配設するように隣り合わせ連結して、上下に所定長の前記上側乾燥室5Aと前記下側乾燥室5Bとを継合並設形成したことを特徴とする請求項1記載の薄膜塗工装置に設ける乾燥装置に係るものである。
【0015】
また、各ブロック体6は、移動接地固定可能な大きさの枠組み構成体10に、熱風を導入する熱風導入部11とこの熱風を排出する熱風排出部12とを設けた前記上側乾燥室形成部7A及び下側乾燥室形成部7Bを上下に水平並設形成し、この上側乾燥室形成部7Aと下側乾燥室形成部7Bの左右両端部に前記被塗工体4が搬送通過する前記出入口部8を設けた構成とし、この各ブロック体6の上下の出入口部8が夫々突き合わせ連通するように各ブロック体6を次々と隣り合わせ配設し、この各ブロック体6の連結部分に熱風が漏れないシール部7を施して、前記上側乾燥室5Aと前記下側乾燥室5Bとをこの各ブロック体6の連結により上下に所定長継合並設形成したことを特徴とする請求項1,2のいずれか1項に記載の薄膜塗工装置に設ける乾燥装置に係るものである。
【0016】
また、前記上側乾燥室5Aと前記下側乾燥室5Bの一方の乾燥室を、前記フィルム状の被塗工体4の片面に塗工した塗工膜3を乾燥する片面乾燥室とし、他方の乾燥室を、この乾燥を終えた前記フィルム状の被塗工体4の反対面に更に塗工し、この塗工を終えた前記フィルム状の被塗工体4の反対面の塗工膜3を乾燥する反対面乾燥室とし、この両面を乾燥する上下二層の乾燥室となる前記上側乾燥室5Aと前記下側乾燥室5Bとを、前記ブロック体6を複数横列状態に連結することで上下に継合並設形成した構成としたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の薄膜塗工装置に設ける乾燥装置に係るものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明は上述のように構成したから、乾燥装置の乾燥能力を高めて搬送スピードを高めフィルム塗工の量産性を向上させることができると共に、省スペース化などのために上下二層構造としなければならないこの乾燥装置の構築を容易にして、飛躍的なコストダウンが図れるなど画期的な薄膜塗工装置に設ける乾燥装置となる。
【0018】
即ち、省スペース化が図れながら、十分な搬送長(乾燥長)を確保して乾燥能力を高めることのできる乾燥装置を、予め上下に上側乾燥室形成部と下側乾燥室形成部とを設けたブロック体を次々と隣り合わせ連結することで構成でき、従来のように下側乾燥室を構築した上に更に上側乾燥室を構築するような大掛かりな建築作業を工場内で行う必要もなく、容易にこの上下二層構成の乾燥装置を連結製作でき、飛躍的にコストダウンを図れ、これにより一層量産性に優れた本装置を容易に実現できる極めて実用性に優れた画期的な薄膜塗工装置に設ける乾燥装置となる。
【0019】
また、請求項2,3記載の発明においては、更に本発明を一層簡易な構成で容易に実現できる一層実用性に優れた画期的な薄膜塗工装置に設ける乾燥装置となる。
【0020】
また、請求項4記載の発明において、前記作用・効果を発揮し、片面塗工・乾燥・反対面塗工・乾燥の工程を行う両面塗膜塗工装置を容易に実現でき、飛躍的なコストダウンが図れる極めて優れた両面薄膜塗工装置に設ける乾燥装置となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本実施例の概略構成説明図である。
【図2】本実施例の一部の概略構成説明断面図である。
【図3】本実施例の要部の説明斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
好適と考える本発明の実施形態を、図面に基づいて本発明の作用を示して簡単に説明する。
【0023】
薄膜塗工装置によって塗工を終えたフィルム状の被塗工体4は、上下の乾燥室(上側乾燥室5A及び下側乾燥室5B)を折り返し搬送通過することでこの被塗工体4表面に塗工形成された塗工膜3が乾燥される。
【0024】
即ち、各乾燥室に設けた熱風導入部11から送り込まれた熱風で前記被塗工体4の塗工膜3を熱風乾燥しこの熱風を前記熱風排出部12から前記乾燥室外へ排出させる。
【0025】
例えばこの塗工膜3から、暴爆性を有したりそのまま無造作に乾燥室外へ排出できない性質の気化ガスが生じるとしても、これを熱風排出部12から熱風と共に常に排出しながら熱風乾燥することで気化ガスが乾燥室内で危険濃度となることを阻止している。
【0026】
また、この熱風による表面乾燥に加えて内部から加熱乾燥するIRヒータなどのヒータ部13を更に設けても良い。
【0027】
このように乾燥室での乾燥機能を高めることで搬送スピードを上げることができるが、この機能アップだけでは十分でないため、乾燥能力を更に向上させるためには、搬送長(乾燥長)を長く確保して乾燥能力を更に向上し搬送スピードを高めて量産性を図ることが望ましく、そのため前述のように乾燥室は横長となり、更に省スペース化のために二階建てにする必要があり、また前述のように両面塗工においては各塗工面の乾燥に夫々十分な長さの乾燥室が必要となるため一層長大な乾燥装置とする必要があることから、やはり省スペース化や工場のスペース制約などによって二階建てとする必要がある。
【0028】
従来、このような二階建ての乾燥装置は、下側乾燥室を構築した後その上に更に枠組みを設けて上側乾燥室を積層状態に構築しなければならず、工場内で大掛かりな建築作業を要する。
【0029】
しかし本発明は、移動可能な小型のブロック体6、即ち、床面に沿って押動スライド自在なあるいは容易に吊り上げ搬送自在な大きさとしたブロック体6を予め製作し、これを必要に応じて現場(工場内)で継合連結して所望の乾燥長にできるように構成としている。
【0030】
即ち、この移動可能な大きさに設定した各ブロック体6の上下に、上側乾燥室形成部7Aと下側乾燥室形成部7Bとを設け、このブロック体6を次々と側方に隣り合わせて複数横列状態に連結することで所望長、即ち量産性向上のため搬送スピードを高めることのできる乾燥長の前記上側乾燥室5Aと前記下側乾燥室5Bとが上下に継合並設形成される構成としている。
【0031】
更に説明すると、前記フィルム状の被塗工体4が搬送通過する出口若しくは入口となる出入口部8を前記各ブロック体6の両側上下に夫々設け、前記各ブロック体6を移動して次々と側方に隣り合わせて前記各出入口部8が連通するように横列状態に連結し、上下に前記所望長の前記上側乾燥室5Aと前記下側乾燥室5Bとが継合並設形成される構成としている。
【0032】
従って、従来のように下側乾燥室を構築した上に更に上側乾燥室を構築するような大掛かりな建築作業を工場内で行う必要もなく、予め量産した移動可能な継合パーツであるブロック体6を工場内に運び入れて次々と連結させていくことで、容易にこの上下二層構成で上下の乾燥室共に所望長の乾燥装置を連結製作でき、飛躍的にコストダウンを図れ、これにより一層量産性に優れた本装置を容易に実現できる画期的な薄膜塗工装置に設ける乾燥装置となる。
【実施例】
【0033】
本発明の具体的な実施例について図面に基づいて説明する。
【0034】
本実施例は、巻取ロール17から引き出したフィルム状の被塗工体4を塗工用のノズル部1と対向する支持ロール15などを介して引き出し搬送し、このノズル部1の先端吐出孔2から塗工液を吐出させて、この支持ロール15で支承されている被塗工体4の片面にこの塗工液を塗工した後、乾燥装置の下側乾燥室5Bを水平搬送通過させて乾燥し、更にこの通り抜けたフィルム状の被塗工体4にそのまま連続して同様の薄膜塗工装置によって反対面にも塗工した後に、折り返し搬送(方向転換)して乾燥装置の上側乾燥室5Aを更に水平搬送通過させて乾燥し前記回収ロール18に巻き取る両面薄膜塗工装置に設ける前記乾燥装置に本発明を適用したものである。
【0035】
即ち、本実施例のこの乾燥装置は上下二層構成とし、ノズル部1の先端吐出孔2から塗工液を吐出しながら、このノズル部1と対向するフィルム状の被塗工体4をこのノズル部1に対して搬送させることで前記フィルム状の被塗工体4に塗工液を薄膜状に塗工するように構成した薄膜塗工装置を左右に設け、夫々の薄膜塗工装置により片面及び反対面に塗工を終えたフィルム状の被塗工体4を遂次搬送通過させる乾燥室を上下複数段設けた構成としている。
【0036】
具体的には本実施例では一方側に設けた薄膜塗工装置で片面に塗工したフィルム状の被塗工体4を引き取り搬送通過させて乾燥させる片面乾燥室と、反対側に設けた反対面に塗工する薄膜塗工装置で反対面にも更に塗工した被塗工体4を引き取り搬送通過させて乾燥する反対面乾燥室とを上下に設けた乾燥装置であり、この上側乾燥室5Aと下側乾燥室5Bとの一方を前記片面乾燥室として搬送通過させた後、方向転換して他方の乾燥室を反対面乾燥室として搬送通過させて前記フィルム状の被塗工体4の両面に塗工した塗工膜3を連続して遂次乾燥するように構成している。
【0037】
そして本実施例では、移動可能な小型のブロック体6、即ち、床面に沿って押動スライド自在なあるいは容易に吊り上げ搬送自在な大きさとした乾燥装置形成用パーツとしてのブロック体6を予め製作し、これを必要に応じて現場(工場内)で継合連結して所望の乾燥長とできるように構成としている。
【0038】
即ち、この移動可能な大きさに設定した各ブロック体6の上下に、上側乾燥室形成部7Aと下側乾燥室形成部7Bとを設け、このブロック体6を次々と側方に隣り合わせて複数横列状態に連結することで所望長、即ち量産性向上のため搬送スピードを高めることのできる乾燥長の前記上側乾燥室5Aと前記下側乾燥室5Bとが上下に継合並設形成される構成としている。
【0039】
また、この上側乾燥室形成部7A,下側乾燥室形成部7Bと夫々連通し前記フィルム状の被塗工体4が搬送通過する出口若しくは入口となる出入口部8を前記各ブロック体6の両側上下に夫々設け、この各ブロック体6の上下の出入口部8が夫々突き合わせ連通するように各ブロック体6を次々と隣り合わせ配設し、この各ブロック体6の連結部分に熱風が漏れないシール部7を施して、前記上側乾燥室5Aと前記下側乾燥室5Bとがこの各ブロック体6の連結により上下に所定長継合並設形成される構成としている。
【0040】
例えば各ブロック体6の側面を突き合わせて各出入口部8が突き合わせ配設され、これを係合止めさせたり、パッキン部を押圧させつつ係止ロックさせるなどして連結固定する構成としてもよいが、単にこの突き合わせ状態(合わせ目)をテープなどで巻き付けてシールし連結する構成としてもよい。後述する実施例では出入口部8を囲むようにシール部7としてのパッキン部7を突出状態に設け、このパッキン部7を押圧して各ブロック体6を突き合わせテープなどを巻き付けて更にシール固定した構成としている。
【0041】
また本実施例では、前記各ブロック体6の底部にキャスタ9を設けて床面上を容易にスライド移動自在に設け、この各ブロック体6を次々と押動して隣り合わせるだけで各出入口部8が対向配設(突き合わせ連通)するように構成し、これにシール部を施すが、例えば前述のようにシール部7として出入口部8の周囲の側面を突出したパッキン部7を押圧してこの突き合わせ連結部分をテープで巻回してシールすると共に止着することで連結し、この連結により上下に各ブロック体6の各上側乾燥室形成部7A,下側乾燥室形成部7Bによって所定長の前記上側乾燥室5Aと前記下側乾燥室5Bとが継合並設形成する構成としている。
【0042】
また本実施例の各ブロック体6は、設置する各工場に運搬容易な大きさに設定した枠組み構成体10に、熱風を導入する熱風導入部11とこの熱風を排出する熱風排出部12とを設けた前記上側乾燥室形成部7A及び下側乾燥室形成部7Bを上下に水平並設形成し、この上側乾燥室形成部7Aと下側乾燥室形成部7Bの左右両端部に前記被塗工体4が搬送通過する前記出入口部8を設けた構成とし、工場搬入後は下部のキャスタ9によって床面に沿ってスライド移動してこの各ブロック体6の上下の出入口部8が夫々突き合わせ連通するように各ブロック体6を次々と隣り合わせ配設し、この各ブロック体6の連結部分に熱風が漏れない前記シール部7を施して連結している。
【0043】
また、連結後は接地脚部19を伸長して接地させ固定保持するように構成している。
【0044】
また本実施例では、前述のように各ブロック体6の上側乾燥室形成部7A及び下側乾燥室7Bに熱風を送出する熱風導入部11とこの熱風を排出する熱風排出部12とを設けて、この熱風導入部11から送り込まれた熱風で塗工膜3の表面を加熱乾燥し、この熱風乾燥する熱風をこの塗工膜3から生じる気化ガスと共に熱風排出部12から乾燥室外へ排出されるように構成している。
【0045】
そして本実施例ではこの熱風乾燥と併用させて、輻射熱で塗工膜3の内部を加熱乾燥させて乾燥機能を高める乾燥用ヒータ部13をフィルム状の被塗工体4に対向状態に近接配設するが、この乾燥用ヒータ部13は、プレート体とせずに、前記熱風が通過する通風間隙を介して複数のヒータ棒状部14が前記被塗工体4の面方向に並設した構成として、フィルム状の被塗工体4にフィルム振動が生じる場合に接触してしまう位置までは近づけないものの、前述した熱風乾燥や気化ガスによる暴爆のおそれなどを考慮しつつできるだけ近接して、輻射熱による乾燥を併用して乾燥能力の一層の向上を図っている。
【0046】
また、更に具体的に説明すると、本実施例では、例えば、アルミ製又は銅製などの金属製フィルムを被塗工体4とし、この表面にコバルト酸リチウムなどの正極活性物質又はグラファイトなどの負極活性物質にバインダー(NNPなどの溶媒)などを混合しこれを塗工液として、100μmオーダーの薄膜を両面に塗工形成するリチウムイオン電池形成材を作製する薄膜塗工装置で、この片面毎塗工する各薄膜塗工装置の搬送下流側に夫々設けられることになる上側乾燥室5Aと下側乾燥室5Bを上下二段に配した乾燥装置である。
【0047】
また本実施例では、各乾燥室5A,5Bを各ブロック体6により複数ブロックに分けて夫々が出入口部8で連設した構成とし、各ブロック乾燥室毎に搬送上流側に搬送方向に向かって熱風を送出する熱風導入部11と、これと対向するように反対側に熱風排出部12とを一対若しくは複数対設けた構成とし、この各ブロック乾燥室の下側に設けた支承ローラ20に支承させてフィルム状の被塗工体4を乾燥室内を搬送通過するように引き取り搬送する構成とし、この乾燥室の上方で熱風導入部11から熱風排出部12へと熱風が送風されこの被塗工体4の上面に塗工形成された塗工膜3を熱風乾燥し、更にこの被塗工体4と近接対向状態にして被塗工体4の面方向に並設状態に配設する多数の前記ヒータ棒状部14から成る前記乾燥用ヒータ部13をこの被塗工体4の上方に配設し、このヒータ棒状部14間の前記通風間隙を介して熱風が行き来しその下方の被塗工体4の塗工膜3に送風されるように構成している。
【0048】
また、図示していないが、このヒータ棒状部14に熱風導風部を突設するなどして前記通風間隙を介して、前記熱風導入部11から送り込まれる熱風を前記被塗工体4の塗工膜3に向けて導風するように構成して、乾燥用ヒータ部13を近づけて効率を高めても、確実に熱風を塗工膜3に送り込み熱風乾燥を維持しつつ気化ガスを停留させることもなく熱風と共に排出するように構成している。
【0049】
また、前記ヒータ棒状部14は、電熱線などの熱源を内装するか、高温水蒸気やオイルなど高温媒体を流通させ、この熱により表面の(セラミック)から赤外線を発する赤外線ヒータ(IRヒータ)としている。
【0050】
具体的には、本実施例では高温水蒸気を流通させるパイプをセラミックで形成若しくはセラミックを被覆し、このヒータ棒状部14を端部で折り返して被塗工体4の所定範囲をこの折り返される多数の並設したヒータ棒状部14で覆い、この連通する各ヒータ棒状部14に高温水蒸気を流通させて表面から発せられる赤外線による輻射熱によって塗工膜3を内部からも加熱乾燥する折り返し棒状部並設形のIRヒータで構成している。
【0051】
言い換えると、プレート状のIRヒータでなく、高温水蒸気を通して表面から赤外線を発する左右で折り返し反転する連通した多数のヒータ棒状部14が並設したタイプのIRヒータとし、この各ヒータ棒状部14の長さ方向が前記被塗工体4の搬送方向と直交する方向にしてこの被塗工体4の搬送方向に並設状態となるようにして、被塗工体4の上方に対向状態に近接配設した構成としている。
【0052】
また、本実施例では、熱風導入・導出ダクトを連結する前記熱風導入部11と前記熱風排出部12及び前記IRヒータなどの前記高温媒体の導入・導出管と連結する前記乾燥用ヒータ部13を、各ブロック体6の各上側乾燥室形成部7A,下側乾燥室形成部7Bを開閉する開閉蓋16に設けた構成としている。
【0053】
従って、この開閉蓋16を開けることで、この開閉蓋16と共にこの開閉蓋16に設けた熱風導入部11,熱風排出部12,ヒータ部13が移動し、下方の各支承ローラ20が露出し、この支承ローラ20の交換やこの上側乾燥室形成部7A,下側乾燥室形成部7Bの掃除が容易に行えると共に、このメンテナンス後に再びこの各支承ローラ20上をフィルム状の被塗工体4を通す通紙作業が容易に行えることとなる。
【0054】
尚、本発明は、実施例に限られるものではなく、各構成要件の具体的構成は適宜設計し得るものである。
【符号の説明】
【0055】
1 ノズル部
2 先端吐出部
3 塗工膜
4 被塗工体
5A 上側乾燥室
5B 下側乾燥室
6 ブロック体
7 シール部
7A 上側乾燥室形成部
7B 下側乾燥室形成部
8 出入口部
9 キャスタ
10 枠組み構成体
11 熱風導入部
12 熱風排出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズル部の先端吐出孔から塗工液を吐出しながら、このノズル部と対向するフィルム状の被塗工体をこのノズル部に対して搬送させることで前記フィルム状の被塗工体に塗工液を薄膜状に塗工するように構成した薄膜塗工装置に設ける乾燥装置であって、前記塗工を終えたフィルム状の被塗工体を搬送通過させる乾燥室を上下複数段設けて、この上側乾燥室と下側乾燥室との一方の乾燥室を搬送通過させた後、方向転換して他方の乾燥室を搬送通過させて前記フィルム状の被塗工体に塗工した塗工膜を乾燥するように構成した乾燥装置において、移動可能なブロック体の上下に、このブロック体を次々と側方に隣り合わせて複数横列状態に連結することで所定長の前記上側乾燥室と前記下側乾燥室とが上下に並設形成される上側乾燥室形成部と下側乾燥室形成部とを設け、この上側乾燥室形成部若しくは下側乾燥室形成部と連通し前記フィルム状の被塗工体が搬送通過する出口若しくは入口となる出入口部を前記各ブロック体の両側上下に夫々設け、前記各ブロック体を移動して次々と側方に隣り合わせて前記各出入口部が連通するように横列状態に連結した構成としたことを特徴とする薄膜塗工装置に設ける乾燥装置。
【請求項2】
前記各ブロック体の底部にキャスタを設けて床面上を移動自在に設け、この各ブロック体を次々と前記上下の各出入口部が対向配設するように隣り合わせ連結して、上下に所定長の前記上側乾燥室と前記下側乾燥室とを継合並設形成したことを特徴とする請求項1記載の薄膜塗工装置に設ける乾燥装置。
【請求項3】
各ブロック体は、移動接地固定可能な大きさの枠組み構成体に、熱風を導入する熱風導入部とこの熱風を排出する熱風排出部とを設けた前記上側乾燥室形成部及び下側乾燥室形成部を上下に水平並設形成し、この上側乾燥室形成部と下側乾燥室形成部の左右両端部に前記被塗工体が搬送通過する前記出入口部を設けた構成とし、この各ブロック体の上下の出入口部が夫々突き合わせ連通するように各ブロック体を次々と隣り合わせ配設し、この各ブロック体の連結部分に熱風が漏れないシール部を施して、前記上側乾燥室と前記下側乾燥室とをこの各ブロック体の連結により上下に所定長継合並設形成したことを特徴とする請求項1,2のいずれか1項に記載の薄膜塗工装置に設ける乾燥装置。
【請求項4】
前記上側乾燥室と前記下側乾燥室の一方の乾燥室を、前記フィルム状の被塗工体の片面に塗工した塗工膜を乾燥する片面乾燥室とし、他方の乾燥室を、この乾燥を終えた前記フィルム状の被塗工体の反対面に更に塗工し、この塗工を終えた前記フィルム状の被塗工体の反対面の塗工膜を乾燥する反対面乾燥室とし、この両面を乾燥する上下二層の乾燥室となる前記上側乾燥室と前記下側乾燥室とを、前記ブロック体を複数横列状態に連結することで上下に継合並設形成した構成としたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の薄膜塗工装置に設ける乾燥装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−37163(P2012−37163A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−178909(P2010−178909)
【出願日】平成22年8月9日(2010.8.9)
【出願人】(592037077)クリーン・テクノロジー株式会社 (22)
【Fターム(参考)】