説明

薄膜形成方法及び薄膜形成装置

【課題】液滴の吐出量をリアルタイムで調整することができ、不良の発生を防ぐことができる薄膜形成方法及び薄膜形成装置を提供する。
【解決手段】インクジェットヘッド20により吐出されるインクを基板31上に着弾させて薄膜を形成する薄膜形成方法であって、基板31の重量を測定し、この基板31の重量変化に基づいてインクジェットヘッド20が吐出するインクの吐出量を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基体上に機能液の液滴を着弾させて薄膜を形成する薄膜形成方法及び薄膜形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液滴吐出ヘッドにより機能液のインク(液滴)を吐出する液滴吐出法、いわゆるインクジェット法を用いて、機能膜(薄膜)を形成することが提案されている(例えば、特許文献1,2を参照。)。このインクジェット法は、一般に、基板と液滴吐出ヘッドとを相対的に移動させながら、液滴吐出ヘッドに設けられた複数のノズルから吐出されたインクを基板上に繰り返し着弾させて薄膜を形成するものである。このインクジェット法は、微小なインクをドット状に吐出するため、インクの大きさやピッチの均一性の面で極めて精度が高く、また、スピンコート法などの従来の塗布技術に比べて、液の消費に無駄が少ない。さらに、フォトリソグラフィーなどのパターニング技術を用いずに、任意のパターンを直接形成することができる。このため、例えば、液晶装置のカラーフィルタや、有機EL装置の発光層などの薄膜形成に応用されている。
【特許文献1】特開平9−118024号公報
【特許文献2】特開平11−248927号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上述したインクジェット法を用いて基板上に機能膜を形成する場合には、通常、インクの広がりを防止するために、バンクと呼ばれる隔壁を形成し、このバンクにより区画されたドット領域内にインクをインクジェット法により塗布することが行われる。この場合、機能膜の膜厚は、液滴吐出ヘッドのノズルから吐出されるインクの吐出量に依存するため、このインクの吐出量を正確に把握し、機能膜の膜厚が均一となるようにインクの吐出量を管理する必要がある。
【0004】
しかしながら、上述した液晶装置や有機EL装置などの表示装置では、大型ディスプレイになるほど、ドットマトリックス状に配置された各ドット領域間でのインク管理が難しくなり、各ドット領域間でのインクの吐出量にばらつきが生じやすくなる。
【0005】
そこで、インクジェット法を用いた薄膜の形成方法では、液滴吐出ヘッドから吐出されるインクの重量を測定し、この測定されたインクの重量に基づいて、インクの吐出量を調整することが行われている。具体的に、例えば10枚や20枚といった単位で基板の薄膜形成を行った後に、別途に設けられた電子天秤の受け皿にインクを吐出させて、このインクの重量を測定し、測定されたインクの重量からインクの吐出量を求め、その値が規格から外れた場合には、液滴吐出ヘッドの駆動素子に印加される駆動電圧を所定の吐出量が得られるまで調整する。
【0006】
しかしながら、この薄膜形成方法では、測定と測定との間でインクの吐出不良が生じると、その間に作製された基板に不良が発生してしまう可能性があった。また、実際の描画中の欠落や、ヘッドの経時変化に対して検出する方法はなく、完成後の検査で初めて不良が発見されることが多かった。
【0007】
本発明は、このような従来の事情に鑑みて提案されたものであり、液滴の吐出量をリアルタイムで調整することができ、不良の発生を防ぐことができる薄膜形成方法及び薄膜形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的を達成するために、本発明に係る薄膜形成方法は、液滴吐出手段により吐出される機能液の液滴を基体上に着弾させて薄膜を形成する薄膜形成方法であって、基体の重量を測定し、基体の重量変化に基づいて液滴吐出手段が吐出する液滴の吐出量を制御することを特徴とする。
このような薄膜形成方法によれば、基体の重量変化から液滴吐出手段が吐出する液滴の吐出量を求めることができるため、基体上に薄膜を形成しながら、液滴の吐出量をリアルタイムで調整することができ、不良の発生を防ぐことができる。
【0009】
また、本発明に係る薄膜形成方法は、液滴が着弾される基体の重量変化を常時測定することによって、液滴吐出手段が吐出する液滴の吐出量を常時モニタリングすることができる。これにより、液滴吐出手段が吐出する液滴の吐出量のばらつきを抑えて、基体上に薄膜を均一な膜厚で形成することができる。
【0010】
また、本発明に係る薄膜形成方法は、薄膜の形成前と形成後の基体の重量変化を測定することによって、薄膜が形成される基体毎に液滴吐出手段が吐出する液滴の吐出量を管理することができる。これにより、液滴吐出手段が吐出する液滴の吐出量のばらつきを抑えて、基体上に薄膜を均一な膜厚で形成することができる。
【0011】
一方、本発明に係る薄膜形成装置は、基体上に機能液の液滴を着弾させて薄膜を形成する薄膜形成装置であって、機能液の液滴を吐出する液滴吐出手段と、基体の重量を測定する重量測定手段と、重量測定手段により測定された基体の重量変化に基づいて、液滴吐出手段が吐出する液滴の吐出量を制御する制御手段とを備えることを特徴とする。
このような薄膜形成装置によれば、重量測定手段が測定する基体の重量変化に基づいて、制御手段が液滴吐出手段を制御し、液滴吐出手段が吐出する液滴の吐出量を調整することから、基体上に薄膜を形成しながら、液滴の吐出量をリアルタイムで調整することができ、不良の発生を防ぐことができる。
【0012】
また、本発明に係る薄膜形成装置は、液滴が着弾される基体の重量を重量測定手段が常時測定することによって、液滴吐出手段が吐出する液滴の吐出量を常時モニタリングすることができる。これにより、液滴吐出手段が吐出する液滴の吐出量のばらつきを抑えて、基体上に薄膜を均一な膜厚で形成することができる。
【0013】
また、本発明に係る薄膜形成装置は、薄膜の形成前と形成後の基体の重量を重量測定手段が測定することによって、薄膜が形成される基体毎に液滴吐出手段が吐出する液滴の吐出量を管理することができる。これにより、液滴吐出手段が吐出する液滴の吐出量のばらつきを抑えて、基体上に薄膜を均一な膜厚で形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以降の説明では図面を用いて各種の構造を例示するが、これらの図面に示される構造は特徴的な部分を分かり易く示すために実際の構造に対して寸法を異ならせて示す場合がある。
【0015】
(薄膜形成装置)
先ず、本発明の実施形態に係る薄膜形成装置について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る薄膜形成装置の外観を示す斜視図である。
この薄膜形成装置は、図1に示すように、ベース9上に設置された液体吐出装置10と、ベース9の近傍に配置された基板搬送装置11と、ベース9の脇に配置されたコントロールユニット12とを主として備えている。なお、ベース9の上に設置された液滴吐出装置10は、必要に応じてカバー13により覆うことが可能となっている。
【0016】
液滴吐出装置10は、図2に示すように、機能膜を形成すべき基板31が載置されるテーブル46と、このテーブル46に載置された基板31に対して機能液のインク(液滴)を吐出する液滴吐出手段であるインクジェットヘッド(液滴吐出ヘッド)20とを主として備えている。
【0017】
このうち、テーブル46は、第1の移動機構14によりY方向に移動および位置決め可能とされ、モータ44によりθz方向に揺動および位置決め可能とされている。一方、インクジェットヘッド20は、第2の移動機構16によりX方向に移動および位置決め可能とされ、リニアモータ62によりZ方向に移動および位置決め可能とされている。またインクジェットヘッド20は、モータ64,66,68により、それぞれα,β,γ方向に揺動および位置決め可能とされている。これにより、液滴吐出装置10では、テーブル46に載置される基板31と、ヘッド20のインク吐出面20Pとの相対的な位置および姿勢を、正確にコントロールすることができるようになっている。
【0018】
なお、液滴吐出装置には、ヘッド20におけるノズルの乾燥を防止するため、液滴吐出装置10の待機時にインク吐出面20Pをキャッピングするキャッピングユニット22が設けられている。またヘッド20におけるノズルの目詰まりを取り除くため、ノズルの内部を吸引するクリーニングユニット24が設けられている。なおクリーニングユニット24は、ヘッド20におけるインク吐出面20Pの汚れを取り除くため、インク吐出面20Pのワイピングを行うこともできるようになっている。
【0019】
インクジェットヘッド20は、図3に示すように、ヘッド本体90と、ヘッド本体90の一方面に装着されたノズルプレート92と、ヘッド本体90の多方面に装着されたピエゾ素子98とを主として備えている。
【0020】
インク吐出面を構成するノズルプレート92には、液滴を吐出するための複数のノズル91が整列配置されている。またヘッド本体90には、各ノズル91と連通する複数の圧力室93が形成されている。各圧力室93はリザーバ95に接続され、リザーバ95はインク導入口96に接続されている。そしてインク21は、インク導入口96からリザーバ95を通って各圧力室93に供給されるようになっている。一方、ヘッド本体90の上端面には、可撓性を有する振動板94が装着されている。その振動板94を挟んで各圧力室93の反対側には、それぞれピエゾ素子98が設けられている。ピエゾ素子98は、PZT等の圧電材料を電極で挟持したものである。その電極は、後述する制御部70に接続されている。
【0021】
そして、制御部70からピエゾ素子98に駆動電圧が印加されると、ピエゾ素子98が膨張変形又は収縮変形する。ピエゾ素子98が収縮変形すると、圧力室93内の圧力が低下して、リザーバ95から圧力室93にインク21が流入する。またピエゾ素子98が膨張変形すると、圧力室93内の圧力が増加して、ノズル91からインク21の液滴が吐出される。なお、ピエゾ素子98に印加する駆動電圧を制御することにより、液滴の吐出条件を制御しうるようになっている。
【0022】
なお、液滴吐出方式として、ピエゾ素子の変形により圧力室内の圧力を変化させる上記ピエゾ方式の他に、インクを加熱して気泡(バブル)を発生させることにより圧力室内の圧力を変化させる方式など、公知の種々の技術を適用することができる。このうちピエゾ方式は、インクを加熱しないので材料の組成に悪影響を与えないなどの点で優れている。
【0023】
基板搬送装置11は、図1に示すように、基板31を収容する基板収容部50と、上述した液滴吐出装置10のテーブル46との間で基板31の搬送を行うロボット51を備えている。このロボット51は、設置面に置かれた基台52と、この基台52に対して昇降移動する昇降軸53と、昇降軸53を中心として回転する第1のアーム54と、第1のアーム54に対して回転する第2のアーム55と、第2のアーム55の先端下面に設けられた吸着パッド56とを有している。そして、このロボット51は、基板31を吸着パッド64に吸着させて基板31の搬送を行うことが可能となっている。
【0024】
コントロールユニット12は、図1に示すように、装置内の各部の制御を行うコンピュータ60と、各種操作を行うキーボードやマウスなどの入力装置61と、各種操作に応じた画面の表示を行うCRT(Cathode-Ray Tube)やLCD(Liquid Crystal Display)などの表示装置62とを備えて構成されている。コンピュータ60は、CPU(Central Processing Unit)や、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などを備え、ROMに格納されている制御プログラムをRAM(Random Access Memory)に展開し、その制御プログラムに従ってCPUが各部の制御を行う。また、入力部61は、各種操作に応じた信号をCPUに出力し、表示部62は、CPUから供給される信号に従って画面の表示を行う。
【0025】
ところで、コンピュータ60は、図4に示すように、基板31の重量変化に基づいて、インクジェットヘッド20が吐出するインクの吐出量を制御する制御部70を備えている。この制御部70は、基板31の重量を測定する重量測定部71と接続されており、この重量測定部71が測定した基板31の重量変化からインクジェットヘッド20が吐出するインクの吐出量を算出し、この算出結果に基づいてインクジェットヘッド20が吐出するインクの吐出量をフィードバック制御する。
【0026】
具体的に、制御部70は、図4に示すように、A/D変換器72と、DSP(Digital Signal Processor)73と、D/A変換器74とを主として備えている。このうち、A/D変換器72は、重量測定部71が測定した測定データをデジタル信号に変換する。DSP72は、A/D変換器71から測定データが供給されると、内部に記録された制御プログラムに従って、インクジェットヘッド20が吐出するインクの吐出量を算出し、この算出結果とインクの基準吐出量とを比較し、インクの吐出量が基準範囲から外れた場合には、インクの吐出量が基準範囲内となるようにインクジェットヘッド20の駆動電圧を調整する駆動信号をD/A変換器74に出力する。D/A変換器74は、DSP73から供給された駆動信号をアナログ信号に変換し、インクジェットヘッド20に出力する。
【0027】
重量測定部71は、例えば図2に示すように、テーブル46に載置された基板31の重量を測定する重量測定手段として、テーブル46の底部に配置されたロードセル71aを備えている。このロードセル71aは、インクが着弾される基板31の重量を常時測定することが可能である。
【0028】
これにより、制御部70は、ロードセル71aが基板31の重量変化を常時測定することによって、インクジェットヘッド20が吐出するインクの吐出量を常時モニタリングすることが可能である。すなわち、インクが着弾される基板31の重量変化を測定すれば、この基板31の重量の増加分をインクの総吐出量として換算することができる。このため、例えばノズルの目詰まりや、ノズル間でインク吐出量のばらつきが短期間に生じた場合でも、インクの吐出量を求めて駆動電圧を瞬時に補正することが可能である。
したがって、この薄膜形成装置では、インクジェットヘッド20が吐出するインクの吐出量のばらつきを抑えて、基板31上に機能膜を均一な膜厚で安定して形成することが可能である。
【0029】
また、本発明を適用した薄膜形成装置では、上述したロードセル71aに限らず、例えば図1に示すように、液滴吐出装置10の近傍に配置された電子天秤71bを用いて、基板31の重量を測定する構成とすることも可能である。
【0030】
この場合、機能膜の形成前と形成後の基板31の重量変化を電子天秤71bで測定することによって、基板31毎にインクジェットヘッド20が吐出するインクの吐出量を管理することができる。これにより、インクジェットヘッド20が吐出するインクの吐出量のばらつきを抑えて、基板31上に機能膜を均一な膜厚で安定して形成することができる。なお、このような電子天秤71bを備える重量測定部71は、機能膜の形成後に基板31が搬送される乾燥工程との搬送途中に設置することが好ましい。また、基板31の重量は、機能膜の形成前に予め測定しておくことが好ましい。
【0031】
以上のように、本発明を適用した薄膜形成装置では、基板31の重量変化からインクジェットヘッド20が吐出するインクの吐出量を求めることによって、基板31上に機能膜を形成しながら、インクの吐出量をリアルタイムで調整することができ、不良の発生を未然に防ぐことが可能である。
【0032】
(薄膜形成方法)
次に、本発明の実施形態に係る薄膜形成方法について説明する。
本実施形態では、電気光学装置の一つである有機EL装置を製造する場合を例に挙げて説明する。この有機EL装置は、アクティブマトリックス型の表示装置をなすものである。図5乃至図7は、EL表示素子を用いたアクティブマトリックス型の表示装置をなす有機EL装置の製造工程の手順を示す製造工程断面図である。
【0033】
先ず、図5(A)に示すように、透明の表示基板502に対して、必要に応じて、テトラエトキシシラン(tetraethoxysilane:TEOS)や酸素ガスなどを原料ガスとしてプラズマCVD(Chemical VaporDeposition)法により、厚さ寸法が約2000〜5000オングストロームのシリコン酸化膜である図示しない下地保護膜を形成する。次に、表示基板502の温度を約350℃に設定し、下地保護膜の表面にプラズマCVD法により厚さ寸法が約300〜700オングストロームの非晶質のシリコン膜である半導体膜520aを形成する。この後、半導体膜520aに対して、レーザアニールまたは固相成長法などの結晶化工程を実施し、半導体膜520aをポリシリコン膜に結晶化する。ここで、レーザアニール法では、例えばエキシマレーザでビームの長寸が約400nmのラインビームを用い、出力強度が約200mJ/cm2である。ラインビームについては、その短寸方向におけるレーザ強度のピーク値の約90%に相当する部分が各領域毎に重なるようにラインビームが走査される。
【0034】
次に、図5(B)に示すように、半導体膜520aをパターニングして島状の半導体膜520bを形成する。この半導体膜520bが設けられた表示基板502の表面に、TEOSや酸素ガスなどを原料ガスとしてプラズマCVD法により厚さ寸法が約600〜1500オングストロームのシリコン酸化膜あるいは窒化膜であるゲート絶縁膜521aを形成する。なお、半導体膜520bは、カレント薄膜トランジスタ510のチャネル領域およびソース・ドレイン領域となるものであるが、異なる断面位置においてはスイッチング薄膜トランジスタ509のチャネル領域およびソース・ドレイン領域となる図示しない半導体膜も形成されている。すなわち、図5乃至図7に示す製造工程では、二種類のスイッチング薄膜トランジスタ509及びカレント薄膜トランジスタ510が同時に形成されるが、同じ手順で形成されるため、以下の説明では、カレント薄膜トランジスタ510についてのみ説明し、スイッチング薄膜トランジスタ509については説明を省略する。
【0035】
次に、図5(C)に示すように、アルミニウム、タンタル、モリブデン、チタン、タングステンなどの金属膜である導電膜をスパッタ法により形成した後にパターニングし、ゲート電極510Aを形成する。この状態で、高温度のリンイオンを打ち込み、半導体膜520bにゲート電極510Aに対して自己整合的にソース・ドレイン領域510a,510bを形成する。なお、不純物が導入されなかった部分がチャネル領域510cとなる。
【0036】
次に、図5(D)に示すように、層間絶縁膜522を形成した後、コンタクトホール523,524を形成し、これらコンタクトホール523,524内に中継電極526,527を埋め込み形成する。
【0037】
次に、図5(E)に示すように、層間絶縁膜522上に、信号線504、共通給電線505および走査線(図5中には図示しない)を形成する。このとき、信号線504、共通給電線505および走査線の各配線は、配線として必要な厚さ寸法にとらわれることなく、十分に厚く形成する。具体的には、各配線を例えば1〜2μm程度の厚さ寸法に形成するとよい。ここで、中継電極527と各配線とは、同一工程で形成されていてもよい。
このとき、中継電極526は、後述するITO膜により形成される。
【0038】
そして、各配線の上面を覆うように層間絶縁膜530を形成し、中継電極526に対応する位置にコンタクトホール532を形成する。このコンタクトホール532内を埋めるようにITO膜を形成し、このITO膜をパターニングして、信号線504、共通給電線505および走査線に囲まれた所定位置に、ソース・ドレイン領域510aに電気的に接続する画素電極511を形成する。
【0039】
ここで、図5(E)では、信号線504および共通給電線505に挟まれた部分が、光学材料が選択的に配置される所定位置に相当するものである。そして、その所定位置とその周囲との間には、信号線504や共通給電線505によって段差535が形成される。
具体的には、所定位置の方がその周囲よりも低く、凹型の段差535が形成される。
【0040】
次に、図1に示す薄膜形成装置を用いて、上述の前処理が実施された表示基板502に、機能性液状体であるEL発光材料を吐出する。すなわち、図6(A)に示すように、前処理が実施された表示基板502の上面を上方に向けた状態で、発光素子140の下層部分に当たる正孔注入層513Aを形成するための機能性液状体としての溶媒に溶かされた溶液状の前駆体である光学材料540Aを、上述した液滴吐出装置10を用いて吐出し、段差535で囲まれた所定位置の領域内に選択的に塗布する。
【0041】
この吐出により正孔注入層513Aを形成するための光学材料540Aとしては、ポリマー前駆体がポリテトラヒドロチオフェニルフェニレンであるポリフェニレンビニレン、1,1−ビス−(4−N,N−ジトリルアミノフェニル)シクロヘキサン、トリス(8−ヒドロキシキノリノール)アルミニウムなどが用いられる。
【0042】
なお、この吐出の際、流動性を有した液状体の光学材料540Aは、流動性が高いので平面方向に広がろうとするが、塗布された位置を取り囲むように段差535が形成されているため、光学材料540Aの1回当たりの吐出量を極端に大量にしなければ、光学材料540Aは段差535を越えて所定位置の外側に広がることは防止される。
【0043】
次に、図6(B)に示すように、加熱又は光照射などにより液状の光学材料540Aの溶媒を蒸発させ、画素電極511上に固形の薄い正孔注入層513Aを形成する。この図6(A),(B)を必要回数繰り返し、最終的に、図6(C)に示すように、十分な厚さ寸法の正孔注入層513Aを形成する。
【0044】
次に、図7(A)に示すように、表示基板502の上面を上に向けた状態で、発光素子513の上層部分に有機半導体膜513Bを形成するための機能性液状体としての溶媒に溶かされた溶液状の有機蛍光材料である光学材料540Bを、上述した図1に示す薄膜形成装置を用いて吐出し、これを段差535で囲まれた所定位置である領域内に選択的に塗布する。なお、この光学材料540Bについても、上述した光学材料540Aの吐出と同様に、段差535を越えて所定位置の外側に広がることは防止される。
【0045】
この吐出により有機半導体膜513Bを形成するための光学材料540Bとしては、シアノポリフェニレンビニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリアルキルフェニレン、2,3,6,7−テトラヒドロ−11−オキソ−1H・5H・11H(1)ペンゾビラノ[6,7,8−ij]−キノリジン−10−カルボン酸、1,1−ビス−(4−N,N−ジトリルアミノフェニル)シクロヘキサン、2−13・4'−ジヒドロキシフェニル)−3,5,7−トリヒドロキシー1―ベンゾピリリウムパークロレート、トリス(8−ヒドロキシキノリノール)アルミニウム、2,3・6・7−テトラヒドロ−9−メチル−11−オキソ−1H・5H・11H(1)ベンゾピラノ[6,7,8−ij]−キノリジン、アロマティックジアミン誘導体(TDP)、オキシジアゾールダイマ(OXD)、オキシジアゾール誘導体(PBD)、ジスチルアリーレン誘導体(DSA)、キノリノール系金属錯体、ベリリウムーベンゾキノリノール錯体(Bebq)、トリフェニルアミン誘導体(MTDATA)、ジスチリル誘導体、ピラゾリンダイマ、ルブレン、キナクリドン、トリアゾール誘導体、ポリフェニレン、ポリアルキルフルオレン、ポリアルキルチオフェン、アゾメチン亜鉛錯体、ポリフイリン亜鉛錯体、ベンゾオキサゾール亜鉛錯体、フェナントロリンユウロピウム錯体などが用いられる。
【0046】
次に、図7(B)に示すように、加熱又は光照射などにより、光学材料540Bの溶媒を蒸発させ、正孔注入層513A上に、固形の薄い有機半導体膜513Bを形成する。
この図7(A),(B)を必要回数繰り返し、最終的に、図7(C)に示すように、十分な厚さ寸法の有機半導体膜513Bを形成する。正孔注入層513Aおよび有機半導体膜513Bによって、発光素子513が構成される。最後に、図7(D)に示すように、表示基板502の表面全体、若しくはストライプ状に反射電極512を形成し、表示装置501を製造する。
【0047】
以上のように、本実施形態では、上述した図1に示す薄膜形成装置を用いているので、有機EL装置の製造工程において無駄となる材料を低減することができ、低コストで高品質な有機EL装置を製造することができる。また、本実施形態によれば、上述したインクジェットヘッド20を備えた液滴吐出装置10を用いて製造するので、大画面の表示装置をなす有機EL装置(基板)について、より迅速にかつ高解像度に製造することができる。そして、液滴吐出装置10は、インクジェットヘッド20が吐出するインクの吐出量のばらつきを抑えて、均一な膜厚で安定した成膜を行うことができる。したがって、不良の発生を防ぎつつ、大画面の有機EL装置を高品質且つ低コストで製造することができる。
【0048】
なお、本実施形態の薄膜形成装置及び薄膜形成方法は、上述した有機EL装置の製造に限らず、金属配線の形成や、液晶装置のカラーフィルタの形成など、機能膜を形成する際に広く適用することが可能である。そして、何れも場合にも、機能膜を精度良く形成することができる。
【0049】
(電子機器)
次に、上記有機EL装置を備えた電子機器について説明する。
図8(a)は、携帯電話の一例を示した斜視図である。図8(a)において、符号1000は携帯電話本体を示し、符号1001は上記実施形態の有機EL装置からなる表示部を示している。図8(b)は、腕時計型電子機器の一例を示した斜視図である。図8(b)において、符号1100は時計本体を示し、符号1101は上記実施形態の有機EL装置からなる表示部を示している。図8(c)は、ワープロ、パソコンなどの携帯型情報処理装置の一例を示した斜視図である。図8(c)において、符号1200は情報処理装置、符号1202はキーボードなどの入力部、符号1204は情報処理装置本体、符号1206は上記実施形態の有機EL装置からなる表示部を示している。
【0050】
図8に示す電子機器の有機EL装置は、上記実施形態の薄膜形成装置及び薄膜形成方法を用いて製造されているので、高品質な画像を表示でき不具合が発生しないなど高性能としながら、低価格で提供することができる。
【0051】
なお、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能であり、実施形態で挙げた具体的な材料や構成などはほんの一例に過ぎず、適宜変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】薄膜形成装置を示す斜視図である。
【図2】液滴吐出装置を示す斜視図である。
【図3】インクジェットヘッドを示す断面図である。
【図4】制御部を示すブロック図である。
【図5】有機EL装置の製造工程の手順を示す断面図である。
【図6】有機EL装置の製造工程の手順を示す断面図である。
【図7】有機EL装置の製造工程の手順を示す断面図である。
【図8】電子機器を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0053】
10…液滴吐出装置、11…基板搬送装置、12…コンピュータ、20…インクジェットヘッド(液滴吐出手段)、70…制御部、71…重量測定部、71a…ロードセル(重量測定手段)、71b…電子天秤(重量測定手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液滴吐出手段により吐出される機能液の液滴を基体上に着弾させて薄膜を形成する薄膜形成方法であって、
前記基体の重量を測定し、前記基体の重量変化に基づいて前記液滴吐出手段が吐出する液滴の吐出量を制御することを特徴とする薄膜形成方法。
【請求項2】
前記液滴が着弾される前記基体の重量変化を常時測定することを特徴とする請求項1に記載の薄膜形成方法。
【請求項3】
前記薄膜の形成前と形成後の前記基体の重量変化を測定することを特徴とする請求項1に記載の薄膜形成方法。
【請求項4】
基体上に機能液の液滴を着弾させて薄膜を形成する薄膜形成装置であって、
前記機能液の液滴を吐出する液滴吐出手段と、
前記基体の重量を測定する重量測定手段と、
前記重量測定手段により測定された前記基体の重量変化に基づいて、前記液滴吐出手段が吐出する液滴の吐出量を制御する制御手段とを備えることを特徴とする薄膜形成装置。
【請求項5】
前記重量測定手段は、前記液滴が着弾される前記基体の重量変化を常時測定することを特徴とする請求項4に記載の薄膜形成装置。
【請求項6】
前記重量測定手段は、前記薄膜の形成前と形成後の前記基体の重量変化を測定することを特徴とする請求項4に記載の薄膜形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−117831(P2007−117831A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−311196(P2005−311196)
【出願日】平成17年10月26日(2005.10.26)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】