説明

薬剤と照射を受けた賦形剤の製剤の中の薬剤の酸化を最小化

本発明は益剤の酸化を防止するに適した組成物および方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は益剤(beneficial agents)の酸化を防止するに適した組成物および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
いろいろな賦形剤を益剤製剤で用いる前にそれを放射線に暴露させることで殺菌することが行われている。ある種の賦形剤はそのような照射を受けるとフリーラジカルとパーオキサイドを発生するが、そのような賦形剤にはステアリン酸および脂肪酸が含まれる。酸化に敏感な益剤、例えばアミノ酸配列、脂質、DNAおよび特定の薬剤などが存在していると、そのようなフリーラジカルおよびパーオキサイドによって前記益剤が酸化されることで前記益剤の効力が低下する可能性がある。
【0003】
例えば、ペプチドおよび蛋白質はフリーラジカルおよびパーオキサイドと接触すると幅広い範囲の望ましくない影響、例えば硫黄の酸化、カルボニルに対する有害な影響、架橋、ヒドロパーオキシ誘導体の生成、脱アミノ化、クロロアミン生成、相互交換(即ちHisとAsn、ProとHO−Pro)、付加体生成(脂質過酸化、アミノ酸酸化、グリコシド化)、凝集およびペプチド結合の開裂などを受ける。それによって活性の損失、機能の損失、異常な細胞吸収、遺伝子転写の変化または免疫原性の増大がもたらされる可能性がある。
【0004】
望ましくない反応を防止する目的で以前は抗酸化剤および他のフリーラジカル捕捉剤が添加されてきた。例えば、第一鉄イオン源を用いて薬剤の酸化を防止することが特許文献1に開示されている。益剤製剤で一般的に用いられる抗酸化剤にはビタミンE、ビタミンC、ブチル化ヒドロキシトルエンおよびブチル化ヒドロキシアニソールが含まれる。しかしながら、そのような方策は必ずしも有効であるとは限らず、あらゆるケースで、そのような製剤を製造する時の材料コストが高くなってしまう。
【0005】
ここに、薬製剤を作り出す段階にアニール段階(annealing step)を導入すると捕捉剤を用いる必要性がなくなることで当該製剤を製造する時に要する材料の数が少なくなりかつ益剤の酸化を防止するに適した新規な組成物および方法がもたらされることを見いだした。その上、本発明を用いると、捕捉剤の使用が適切でない場合でも益剤を酸化から防護することが可能になる。
【特許文献1】米国特許第6,423,351号
【発明の開示】
【0006】
要約
本発明は、益剤および賦形剤を含んで成っていて益剤の酸化を防止するに適した製剤を記述し、ここでは、前記賦形剤が照射を受けておりそしてそれにアニールを受けてさせておく。
【0007】
照射を受けた賦形剤の存在下で益剤が起こす酸化を防止する方法を記述し、この方法は、前記賦形剤を前記益剤と組み合わせる前に前記賦形剤にアニールを受けさせておくことを含んで成る。
【0008】
詳細な説明
本発明は、益剤および賦形剤を含んで成っていて益剤の酸化を防止するに適した製剤を
記述し、ここでは、前記賦形剤が照射を受けておりそしてそれにアニールを受けてさせておく。
【0009】
そのような賦形剤には、一般に、当該化合物が照射を受けた時にフリーラジカルまたはパーオキサイドの発生をもたらすであろう如何なる賦形剤も含まれる。そのような賦形剤は照射を通常の如何なる様式で受けてもよい。好適な賦形剤には、ステアリン酸、他の脂肪酸、天然の重合体、例えば多糖など、または合成重合体、例えばポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドンおよびポリビニルアルコールなどが含まれる。用語「天然の重合体」には後で修飾を受けさせた天然の重合体も含まれると理解する。前記脂肪酸には好適にはパルミチン酸、ステアリン酸およびC20−22脂肪酸が含まれる。
【0010】
アニールは、当該賦形剤をこれの融点より高い範囲の温度に加熱することを包含する。特別な理論で範囲を限定することを望むものでないが、当該賦形剤の結晶構造を乱すとフリーラジカルの崩壊が加速されると考えている。
【0011】
ステアリン酸の融点は約69.7℃である。ステアリン酸が賦形剤の時には前記賦形剤を約70℃から約250℃の範囲の温度に加熱した後に冷却する。このアニール段階は、好適には、前記賦形剤を約70℃から約150℃の範囲の温度に加熱した後に前記賦形剤を冷却することを包含する。このアニール段階は、より好適には、前記賦形剤を約90℃の温度に加熱した後に前記賦形剤を冷却することを包含する。
【0012】
前記賦形剤にアニールを真空下で受けさせてもよい。別の態様では、前記賦形剤にアニールを窒素、ヘリウムまたはアルゴン雰囲気下で受けさせる。
【0013】
前記賦形剤を室温または氷のいずれかに接触させることで前記賦形剤を冷却する。
【0014】
他の賦形剤、例えばスクロース、緩衝剤および塩などを本製剤に含有させることも可能である。
【0015】
前記益剤を蛋白質、ペプチド、脂質、DNA配列、RNA配列、薬剤またはこれらの組み合わせから成る群から選択する。
【0016】
アミノ酸残基であるシステイン、メチオニン、チロシン、トリプトファン、フェニルアラニン、バリン、ロイシン、ヒスチジン、グルタミン酸、プロリン、トレオニン、アルギニンおよびリシンは酸化を受け易いことが良く知られている。例えば、システインはジスルフィドを生じ得る。メチオニンはスルホキサイドを生じ得る。チロシン、トリプトファン、フェニルアラニンは例えばニトロチロシン、ヒドロキシトリプトファンおよびヒドロキシフェニルアラニンなどと置き換わり得る。バリンおよびロイシンはヒドロパーオキサイドを生じ得る。ヒスチジンはアスパラギンまたはアスパルテートに変化し得る。グルタミン酸はしゅう酸を生じ得る。プロリンはピロリドンを生じ得る。トレオニンは2−アミノ−3−ケト酪酸を生じ得る。アルギニンおよびリシンはクロルアミンを生じ得る。
【0017】
前記蛋白質は、好適には、ヒト成長ホルモン、リゾチーム、インターフェロンアルファ−2a、インターフェロンアルファ−2b、EPO、メチオニン−ヒト成長ホルモン、脱フェニルアラニンヒト成長ホルモン、コンセンサスインターフェロン、アルブミン、オメガ−インターフェロン、免疫グロブリン、インターロイキン、G−CSF、GM−CG、TNF熱ショック(hot shock)蛋白質およびこれらの組み合わせである。前記ペプチドは好適にはShK−Dap22(WO 9823639に開示されている如き)である。
【0018】
本発明によって利益を受け得る薬剤には、酸化を受け易いことが知られているあらゆる薬剤が含まれる。そのような薬剤はアミノ基、チオール基、アルデヒド基、ベンジル基、ヒドロキシル基または不飽和結合を含有している可能性がある。そのような薬剤は好適にはエピネフリン、テオフィリン、リスペリドン、カプトプリル、クロルプロマジン、エルゴタミン、ヒドロコルチゾン、モルヒネ、プロメタジンおよびチアミンである。
【0019】
1つの態様では、本製剤に更に送達用プラットフォーム(delivery platform)も含有させる。
【0020】
1つの態様における送達用プラットフォームは持続性薬剤である。これはゲル媒体製剤(gel vehicle formulation)、例えば2002年11月14日付けで出願した米国特許出願連続番号10/295603、公開番号2003/0180364(これの開示は全体が引用することによってあたかも再現する如く全体が本明細書に組み入れられる)に記述されている如き製剤を構成しており、ここで、前記ゲル媒体製剤は、生体内分解性で生体適合性の重合体を含有しかつ溶媒を前記重合体を可塑化させてゲルを生じさせるに有効な量で含有して成る。前記重合体をポリラクチド、ポリグリコリド、ポリ無水物、ポリアミン、ポリエステルアミド、ポリオルトエステル、ポリジオキサノン、ポリアセタール、ポリケタール、ポリカーボネート、ポリホスホエステル、ポリオキサエステル、ポリオルトカーボネート、ポリホスファゼン、スクシネート、ポリ(リンゴ酸)、ポリ(アミノ酸)、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリヒドロキシセルロース、ポリホスホエステル、キチン、キトサン、グルコン酸、およびこれらの共重合体、三元重合体および混合物から成る群から選択する。
【0021】
別の態様における送達用プラットフォームは微小粒子、即ち賦形剤と益剤の混合物を封じ込める高分子量マトリックスを構成している。前記マトリックスはポリラクチド、ポリグリコリド、ポリ無水物、ポリアミン、ポリエステルアミド、ポリオルトエステル、ポリジオキサノン、ポリアセタール、ポリケタール、ポリカーボネート、ポリホスホエステル、ポリオキサエステル、ポリオルトカーボネート、ポリホスファゼン、スクシネート、ポリ(リンゴ酸)、ポリ(アミノ酸)、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリヒドロキシセルロース、ポリホスホエステル、キチン、キトサン、グルコン酸、およびこれらの共重合体、三元重合体および混合物から成る群から選択される重合体を含んで成る。
【0022】
本発明の別の態様では、照射を受けた賦形剤の存在下で益剤が起こす酸化を防止する方法を記述し、この方法は、前記賦形剤を前記益剤と組み合わせる前に前記賦形剤にアニールを受けさせておくことを含んで成る。
【0023】
そのような賦形剤には、一般に、当該化合物が照射を受けた時にフリーラジカルまたはパーオキサイドの発生をもたらすであろう如何なる賦形剤も含まれる。そのような賦形剤は照射を通常の如何なる様式で受けてもよい。好適な賦形剤には、ステアリン酸、他の脂肪酸、天然の重合体、例えば多糖など、または合成重合体、例えばポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドンおよびポリビニルアルコールなどが含まれる。用語「天然の重合体」には後で修飾を受けさせた天然の重合体も含まれると理解する。前記脂肪酸には好適にはパルミチン酸、ステアリン酸およびC20−22脂肪酸が含まれる。
【0024】
アニールは、当該賦形剤をこれの融点より高い範囲の温度に加熱することを包含する。特別な理論で範囲を限定することを望むものでないが、当該賦形剤の結晶構造を乱すとフリーラジカルの崩壊が加速されると考えている。
【0025】
ステアリン酸の融点は約69.7℃である。ステアリン酸が賦形剤の時には前記賦形剤
を約70℃から約250℃の範囲の温度に加熱した後に冷却する。このアニール段階は、好適には、前記賦形剤を約70℃から約150℃の範囲の温度に加熱した後に前記賦形剤を冷却することを包含する。このアニール段階は、より好適には、前記賦形剤を約90℃の温度に加熱した後に前記賦形剤を冷却することを包含する。
【0026】
前記賦形剤にアニールを真空下で受けさせてもよい。別の態様では、前記賦形剤にアニールを窒素、ヘリウムまたはアルゴン雰囲気下で受けさせる。
【0027】
前記賦形剤を室温または氷のいずれかに接触させることで前記賦形剤を冷却する。
【0028】
他の賦形剤、例えばスクロース、緩衝剤および塩などを本製剤に含有させることも可能である。
【0029】
前記益剤を蛋白質、ペプチド、脂質、DNA配列、RNA配列、薬剤またはこれらの組み合わせから成る群から選択する。
【0030】
アミノ酸残基であるシステイン、メチオニン、チロシン、トリプトファン、フェニルアラニン、バリン、ロイシン、ヒスチジン、グルタミン酸、プロリン、トレオニン、アルギニンおよびリシンは酸化を受け易いことが良く知られている。例えば、システインはジスルフィドを生じ得る。メチオニンはスルホキサイドを生じ得る。チロシン、トリプトファン、フェニルアラニンは例えばニトロチロシン、ヒドロキシトリプトファンおよびヒドロキシフェニルアラニンなどと置き換わり得る。バリンおよびロイシンはヒドロパーオキサイドを生じ得る。ヒスチジンはアスパラギンまたはアスパルテートに変化し得る。グルタミン酸はしゅう酸を生じ得る。プロリンはピロリドンを生じ得る。トレオニンは2−アミノ−3−ケト酪酸を生じ得る。アルギニンおよびリシンはクロルアミンを生じ得る。
【0031】
前記蛋白質は、好適には、ヒト成長ホルモン、リゾチーム、インターフェロンアルファ−2a、インターフェロンアルファ−2b、EPO、メチオニン−ヒト成長ホルモン、脱フェニルアラニンヒト成長ホルモン、コンセンサスインターフェロン、アルブミン、オメガ−インターフェロン、免疫グロブリン、インターロイキン、G−CSF、GM−CG、TNFs熱ショック蛋白質およびこれらの組み合わせである。前記ペプチドは好適にはShK−Dap22(WO 9823639に開示されている如き)である。
【0032】
本発明によって利益を受け得る薬剤には、酸化を受け易いことが知られているあらゆる薬剤が含まれる。そのような薬剤はアミノ基、チオール基、アルデヒド基、ベンジル基、ヒドロキシル基または不飽和結合を含有している可能性がある。そのような薬剤は好適にはエピネフリン、テオフィリン、リスペリドン、カプトプリル、クロルプロマジン、エルゴタミン、ヒドロコルチゾン、モルヒネ、プロメタジンおよびチアミンである。
【0033】
1つの態様では、本製剤に更に送達用プラットフォームも含有させる。
【0034】
1つの態様における送達用プラットフォームは持続性薬剤である。これはゲル媒体製剤、例えば2002年11月14日付けで出願した米国特許出願連続番号10/295603、公開番号2003/0180364(これの開示は全体が引用することによってあたかも再現する如く全体が本明細書に組み入れられる)に記述されている如き製剤を構成しており、ここで、前記ゲル媒体製剤は、生体内分解性で生体適合性の重合体を含有しかつ溶媒を前記重合体を可塑化させてゲルを生じさせるに有効な量で含有して成る。前記重合体をポリラクチド、ポリグリコリド、ポリ無水物、ポリアミン、ポリエステルアミド、ポリオルトエステル、ポリジオキサノン、ポリアセタール、ポリケタール、ポリカーボネート、ポリホスホエステル、ポリオキサエステル、ポリオルトカーボネート、ポリホスファゼン、スクシネート、ポリ(リンゴ酸)、ポリ(アミノ酸)、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリヒドロキシセルロース、ポリホスホエステル、キチン、キトサン、グルコン酸、およびこれらの共重合体、三元重合体および混合物から成る群から選択する。
【0035】
別の態様における送達用プラットフォームは微小粒子、即ち賦形剤と益剤の混合物を封じ込めている高分子量マトリックスを構成している。前記マトリックスはポリラクチド、ポリグリコリド、ポリ無水物、ポリアミン、ポリエステルアミド、ポリオルトエステル、ポリジオキサノン、ポリアセタール、ポリケタール、ポリカーボネート、ポリホスホエステル、ポリオキサエステル、ポリオルトカーボネート、ポリホスファゼン、スクシネート、ポリ(リンゴ酸)、ポリ(アミノ酸)、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリヒドロキシセルロース、ポリホスホエステル、キチン、キトサン、グルコン酸、およびこれらの共重合体、三元重合体および混合物から成る群から選択される重合体を含んで成る。
【0036】
1つの態様では、本方法に更に前記賦形剤と前記益剤の混合物を圧縮してペレットを生じさせることも含め、かつ更に、その後に前記ペレットを粉砕して粉砕ペレットを生じさせることを含めてもよい。
【0037】
持続性薬剤送達態様における本方法に、更に、前記粉砕ペレットを生体内分解性で生体適合性の重合体を含有しかつ溶媒を前記重合体を可塑化させてゲルを生じさせるに有効な量で含有して成る粘性のあるゲル製剤に添加することを含めてもよく、ここでは、前記重合体をポリラクチド、ポリグリコリド、ポリ無水物、ポリアミン、ポリエステルアミド、ポリオルトエステル、ポリジオキサノン、ポリアセタール、ポリケタール、ポリカーボネート、ポリホスホエステル、ポリオキサエステル、ポリオルトカーボネート、ポリホスファゼン、スクシネート、ポリ(リンゴ酸)、ポリ(アミノ酸)、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリヒドロキシセルロース、ポリホスホエステル、キチン、キトサン、グルコン酸、およびこれらの共重合体、三元重合体および混合物から成る群から選択する。
【0038】
別法として、微小粒子送達態様における方法に、更に、前記粉砕ペレットを生体内分解性で生体適合性の重合体マトリックスに入れて懸濁させそして前記粉砕ペレットの粒子を封じ込めることを含めてもよく、ここで、前記マトリックスはポリラクチド、ポリグリコリド、ポリ無水物、ポリアミン、ポリエステルアミド、ポリオルトエステル、ポリジオキサノン、ポリアセタール、ポリケタール、ポリカーボネート、ポリホスホエステル、ポリオキサエステル、ポリオルトカーボネート、ポリホスファゼン、スクシネート、ポリ(リンゴ酸)、ポリ(アミノ酸)、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリヒドロキシセルロース、ポリホスホエステル、キチン、キトサン、グルコン酸、およびこれらの共重合体、三元重合体および混合物から成る群から選択した重合体を含んで成る。
【0039】
一般的には益剤を患者に公知のいずれかの方法で体重1kg当たり約0.001から約1.0ミリモルの範囲の投薬量(本明細書に示す投薬範囲および具体的投薬量のあらゆる組み合わせおよび副次的組み合わせ)で投与してもよい。投与に有用な投薬量および個々の投与様式は、本分野の技術者に容易に明らかであろうように、年齢、体重および治療問題ばかりでなく使用する個々の益剤の如き要因に応じて多様である。典型的には投与する投薬量を低いレベルにしそして診断で望ましい効果が達成される所まで高くして行く。
【0040】
以下の実施例で本発明のさらなる説明を行う。
【0041】
実施例
【実施例1】
【0042】
4種類のサンプルA、B、CおよびDの調製を実施した。
【0043】
サンプルAを凍結乾燥ヒト成長ホルモン(「hGH」)で構成させた。
【0044】
サンプルBをステアリン酸と混合したhGHで構成させた。ステアリン酸に粉砕を窒素充填ドライボックス内で受けさせた後にそれをhGHと混合した。この混合物を圧縮してペレットにした後、再び粉砕した。
【0045】
サンプルCを照射およびアニールを受けさせたステアリン酸と混合したhGHで構成させた。ステアリン酸を窒素充填容器内に密封して、それにγ照射を受けさせた。その密封したステアリン酸を70−150℃の範囲の温度で5−60分間インキュベートした後、室温になるまで冷却した。そのステアリン酸を窒素充填ドライボックス内で粉砕した後、hGHと混合した。この混合物を圧縮してペレットにした後、再び粉砕した。
【0046】
サンプルDを照射を受けさせたステアリン酸と混合したhGHで構成させた。ステアリン酸を窒素充填容器内に密封して、それにγ照射を受けさせた。そのステアリン酸を窒素充填ドライボックス内で粉砕した後、hGHと混合した。この混合物を圧縮してペレットにした後、再び粉砕した。
【0047】
hGHが起こした酸化の度合をサンプルB、CおよびDに関して第1日目に逆相HPLCで分析しそして4種類のサンプル全部に関して37日後に分析した。その結果を図1に示す。サンプルDは、ステアリン酸が照射を受けていると被酸化性化合物が有害な影響を受けることを示していた。賦形剤はこれを益剤製剤で用いる前に典型的に放射線暴露による殺菌を受けることから、サンプルBの如き製剤は実用的ではない。しかしながら、サンプルCは、本発明を用いると照射を受けたステアリン酸を用いた時でも酸化が防止させることを示していた。
【実施例2】
【0048】
ステアリン酸を窒素充填容器の中に密封して、それにγ照射を受けさせた。その密封したステアリン酸のサンプルを60℃、75℃および90℃で10分間、30分間または60分間インキュベートした後、室温になるまで冷却した。そのようなアニール段階後のパーオキサイド濃度を通常方法で測定して、その結果を表1に示す。
【0049】
照射を受けさせていないステアリン酸の対照サンプルのパーオキサイド濃度は3.25mEq/kgであった。
【0050】
ステアリン酸を窒素充填容器の中に密封しそしてそれにγ照射を受けさせた場合には、それにアニールを受けさせる前のパーオキサイド濃度は7.31mEq/kgであった。表1
時間 60℃の時の濃度 75℃の時の濃度 90℃の時の濃度
(mEq/kg) (mEq/kg) (mEq/kg)
10分間 −− 2.60 2.10
30分間 5.87 2.49 −−
60分間 6.07 −− 2.12
【実施例3】
【0051】
ステアリン酸を窒素充填容器の中に密封して、それにγ照射を受けさせた。その密封したステアリン酸のサンプルを60℃、75℃および90℃で10分間、30分間または6
0分間インキュベートした後、室温になるまで冷却した。そのようなアニール段階後の相対的フリーラジカル濃度を通常方法(窒素雰囲気、室温、20kGy)で測定して、その結果を表2に示す。照射を受けさせていないステアリン酸の対照サンプルを標準として用い、この標準を基準にした任意単位として差を報告する。
表2
時間 60℃の時の相対単位 75℃の時の相対単位 90℃の時の相対単位
10分間 −− 1.5 0
30分間 2193 0 −−
60分間 910 −− 0
【0052】
このように、表2は、ステアリン酸にアニールを75℃以上で受けさせるとフリーラジカルが消失することを示している。
【実施例4】
【0053】
3種類のサンプルA、BおよびCの調製を実施した。
【0054】
サンプルAをステアリン酸と混合した凍結乾燥リゾチーム(「リゾチーム」)で構成させた。ステアリン酸に粉砕を窒素充填ドライボックス内で受けさせた後にそれをリゾチームと混合した。この混合物を圧縮してペレットにした後、再び粉砕した。次に、これらの粒子を4℃で1週間貯蔵した。
【0055】
サンプルBを照射およびアニールを受けさせたステアリン酸と混合したリゾチームで構成させた。ステアリン酸を窒素充填容器内に密封して、それにγ照射を受けさせた。その密封したステアリン酸を70℃で60分間インキュベートした後、室温になるまで冷却した。そのステアリン酸を窒素充填ドライボックス内で粉砕した後、リゾチームと混合した。この混合物を圧縮してペレットにした後、再び粉砕した。次に、これらの粒子を4℃で1週間貯蔵した。
【0056】
サンプルCを照射を受けさせたステアリン酸と混合したリゾチームで構成させた。ステアリン酸を窒素充填容器内に密封して、それにγ照射を受けさせた。そのステアリン酸を窒素充填ドライボックス内で粉砕した後、リゾチームと混合した。この混合物を圧縮してペレットにした後、再び粉砕した。次に、これらの粒子を4℃で1週間貯蔵した。
【0057】
リゾチームが起こした酸化の度合を上述した1週間後に逆相HPLCで分析した。その結果を図2に示す。サンプルCは、ステアリン酸が照射を受けていると被酸化性化合物が有害な影響を受けることを示していた。賦形剤はこれを益剤製剤で用いる前に典型的に放射線暴露による殺菌を受けることから、サンプルAの如き製剤は実用的ではない。しかしながら、サンプルBは、本発明を用いると照射を受けたステアリン酸を用いた時でも酸化が防止させることを示していた。
【0058】
本資料に引用または記述した特許、特許出願および公開の各々の開示は引用することによって全体が本明細書に組み入れられる。
【0059】
示した範囲は各々が範囲の組み合わせおよび副次的組み合わせの全部ばかりでなくその中に入る具体的な数値の全部も包含する。
【0060】
本明細書に記述した発明に加えて本発明のいろいろな修飾形がこの上で行った説明から本分野の技術者に明らかになるであろう。そのような修飾形もまた添付請求の範囲内に入ることを意図する。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】図1は、本発明の組成物を含めた数種のサンプルが起こした酸化を比較するグラフである。
【図2】図2は、本発明の組成物を含めた数種のサンプルが起こした酸化を比較するグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の益剤、および
賦形剤、
を含んで成る、該益剤の酸化を防止するに適した製剤であって、
前記賦形剤が照射を受けておりそしてアニールを受けてさせたものである製剤。
【請求項2】
前記賦形剤がステアリン酸を含んで成る請求項1記載の製剤。
【請求項3】
前記賦形剤が脂肪酸を含んで成る請求項1記載の製剤。
【請求項4】
前記賦形剤がパルミチン酸、ステアリン酸またはC20−22脂肪酸である請求項1記載の製剤。
【請求項5】
前記賦形剤が天然の重合体を含んで成る請求項1記載の製剤。
【請求項6】
前記賦形剤が多糖を含んで成る請求項5記載の製剤。
【請求項7】
前記賦形剤が合成重合体を含んで成る請求項1記載の製剤。
【請求項8】
前記賦形剤がポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドンおよびポリビニルアルコールの群から選択される重合体を含んで成る請求項7記載の製剤。
【請求項9】
前記益剤が蛋白質、ペプチド、脂質、DNA配列、RNA配列、薬剤およびこれらの組み合わせから成る群から選択される請求項1記載の製剤。
【請求項10】
前記益剤がヒト成長ホルモン、リゾチーム、インターフェロンアルファ−2a、インターフェロンアルファ−2b、EPO、メチオニン−ヒト成長ホルモン、脱フェニルアラニンヒト成長ホルモン、コンセンサスインターフェロン、アルブミン、オメガ−インターフェロン、免疫グロブリン、インターロイキン、G−CSF、GM−CG、TNFs熱ショック蛋白質およびこれらの組み合わせから成る群から選択される蛋白質である請求項9記載の製剤。
【請求項11】
前記益剤がシステイン、メチオニン、チロシン、トリプトファン、フェニルアラニン、バリン、ロイシン、ヒスチジン、グルタミン酸、プロリン、トレオニン、アルギニンおよびリシンから成る群から選択される少なくとも1種のアミノ酸を有するペプチドである請求項9記載の製剤。
【請求項12】
前記益剤がエピネフリン、テオフィリン、リスペリドン、カプトプリル、クロルプロマジン、エルゴタミン、ヒドロコルチゾン、モルヒネ、プロメタジンおよびチアミンから成る群から選択される薬剤である請求項9記載の製剤。
【請求項13】
更に送達用プラットフォームも含んで成る請求項1記載の製剤。
【請求項14】
前記送達用プラットフォームが生体内分解性で生体適合性の重合体を含有しかつ溶媒を前記重合体を可塑化させてゲルを生じさせるに有効な量で含有して成るゲル媒体製剤を構成している請求項13記載の製剤。
【請求項15】
前記重合体がポリラクチド、ポリグリコリド、ポリ無水物、ポリアミン、ポリエステルアミド、ポリオルトエステル、ポリジオキサノン、ポリアセタール、ポリケタール、ポリ
カーボネート、ポリホスホエステル、ポリオキサエステル、ポリオルトカーボネート、ポリホスファゼン、スクシネート、ポリ(リンゴ酸)、ポリ(アミノ酸)、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリヒドロキシセルロース、ポリホスホエステル、キチン、キトサン、グルコン酸、およびこれらの共重合体、三元重合体および混合物から成る群から選択される請求項14記載の製剤。
【請求項16】
前記送達用プラットフォームが賦形剤と益剤の混合物を封入している高分子量マトリックスを構成している請求項13記載の製剤。
【請求項17】
前記マトリックスがポリラクチド、ポリグリコリド、ポリ無水物、ポリアミン、ポリエステルアミド、ポリオルトエステル、ポリジオキサノン、ポリアセタール、ポリケタール、ポリカーボネート、ポリホスホエステル、ポリオキサエステル、ポリオルトカーボネート、ポリホスファゼン、スクシネート、ポリ(リンゴ酸)、ポリ(アミノ酸)、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリヒドロキシセルロース、ポリホスホエステル、キチン、キトサン、グルコン酸、およびこれらの共重合体、三元重合体および混合物から成る群から選択される重合体を含んで成る請求項16記載の製剤。
【請求項18】
照射を受けた賦形剤の存在下で益剤が起こす酸化を防止する方法であって、前記賦形剤を前記益剤と組み合わせる前に前記賦形剤にアニールを受けさせておくことを含んで成る方法。
【請求項19】
前記アニール段階が前記賦形剤をこれの融点より高い範囲の温度に加熱した後に前記賦形剤を冷却することを含んで成る請求項18記載の方法。
【請求項20】
前記賦形剤にアニールを真空下で受けさせる請求項18記載の方法。
【請求項21】
前記賦形剤にアニールを窒素雰囲気下で受けさせる請求項18記載の方法。
【請求項22】
前記賦形剤にアニールをヘリウム雰囲気下で受けさせる請求項18記載の方法。
【請求項23】
前記賦形剤にアニールをアルゴン雰囲気下で受けさせる請求項18記載の方法。
【請求項24】
前記賦形剤を室温にさらすことで前記賦形剤を冷却する請求項18記載の方法。
【請求項25】
前記賦形剤がステアリン酸を含んで成る請求項18記載の方法。
【請求項26】
前記賦形剤が脂肪酸を含んで成る請求項18記載の方法。
【請求項27】
前記賦形剤がパルミチン酸、ステアリン酸またはC20−22脂肪酸である請求項18記載の方法。
【請求項28】
前記賦形剤が天然の重合体を含んで成る請求項18記載の方法。
【請求項29】
前記賦形剤が多糖を含んで成る請求項28記載の方法。
【請求項30】
前記賦形剤が合成重合体を含んで成る請求項18記載の方法。
【請求項31】
前記賦形剤がポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドンおよびポリビニルアルコールの群から選択した重合体を含んで成る請求項18記載の方法。
【請求項32】
前記益剤を蛋白質、ペプチド、脂質、DNA配列、RNA配列、薬剤およびこれらの組み合わせから成る群から選択する請求項18記載の方法。
【請求項33】
前記益剤がヒト成長ホルモン、リゾチーム、インターフェロンアルファ−2a、インターフェロンアルファ−2b、EPO、メチオニン−ヒト成長ホルモン、脱フェニルアラニンヒト成長ホルモン、コンセンサスインターフェロン、アルブミン、オメガ−インターフェロン、免疫グロブリン、インターロイキン、G−CSF、GM−CG、TNFs熱ショック蛋白質およびこれらの組み合わせから成る群から選択した蛋白質である請求項32記載の方法。
【請求項34】
前記益剤がシステイン、メチオニン、チロシン、トリプトファン、フェニルアラニン、バリン、ロイシン、ヒスチジン、グルタミン酸、プロリン、トレオニン、アルギニンおよびリシンから成る群から選択される少なくとも1種のアミノ酸を有するペプチドである請求項32記載の方法。
【請求項35】
前記益剤がエピネフリン、テオフィリン、リスペリドン、カプトプリル、クロルプロマジン、エルゴタミン、ヒドロコルチゾン、モルヒネ、プロメタジンおよびチアミンから成る群から選択した薬剤である請求項32記載の方法。
【請求項36】
更に前記賦形剤と前記益剤の混合物を圧縮してペレットを生じさせることも含んで成る請求項17記載の方法。
【請求項37】
更に前記ペレットを粉砕して粉砕ペレットを生じさせることも含んで成る請求項36記載の方法。
【請求項38】
更に前記粉砕ペレットを生体内分解性で生体適合性の重合体を含有しかつ溶媒を前記重合体を可塑化させてゲルを生じさせるに有効な量で含有して成る粘性のあるゲル製剤に添加することも含んで成る請求項37記載の方法。
【請求項39】
前記重合体をポリラクチド、ポリグリコリド、ポリ無水物、ポリアミン、ポリエステルアミド、ポリオルトエステル、ポリジオキサノン、ポリアセタール、ポリケタール、ポリカーボネート、ポリホスホエステル、ポリオキサエステル、ポリオルトカーボネート、ポリホスファゼン、スクシネート、ポリ(リンゴ酸)、ポリ(アミノ酸)、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリヒドロキシセルロース、ポリホスホエステル、キチン、キトサン、グルコン酸、およびこれらの共重合体、三元重合体および混合物から成る群から選択する請求項38記載の方法。
【請求項40】
更に前記粉砕ペレットを生体内分解性で生体適合性の重合体マトリックス中に懸濁させそして前記粉砕ペレットの粒子を封入することも含んで成る請求項37記載の方法。
【請求項41】
前記マトリックスがポリラクチド、ポリグリコリド、ポリ無水物、ポリアミン、ポリエステルアミド、ポリオルトエステル、ポリジオキサノン、ポリアセタール、ポリケタール、ポリカーボネート、ポリホスホエステル、ポリオキサエステル、ポリオルトカーボネート、ポリホスファゼン、スクシネート、ポリ(リンゴ酸)、ポリ(アミノ酸)、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリヒドロキシセルロース、ポリホスホエステル、キチン、キトサン、グルコン酸、およびこれらの共重合体、三元重合体および混合物から成る群から選択した重合体を含んで成る請求項40記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2007−511517(P2007−511517A)
【公表日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−539845(P2006−539845)
【出願日】平成16年11月12日(2004.11.12)
【国際出願番号】PCT/US2004/037614
【国際公開番号】WO2005/048993
【国際公開日】平成17年6月2日(2005.6.2)
【出願人】(503073787)アルザ・コーポレーシヨン (113)
【Fターム(参考)】