説明

薬液制御機器の内部構造

【課題】薬液制御機器内において薬液の流路を形成する複数の部材間に薬液が浸透すること。
【解決手段】薬液制御弁10の薬液導入路20及び薬液流出路22は、バルブ26によって連通及び遮断される。すなわち、バルブ26は、通常、ピストンロッド28を介してスプリング30の弾性力が及ぼされるために閉弁されている。これに対し、シリンダ16の側面に形成されているエア導入路32から加圧エアが導入されると、ピストンロッド28がスプリング30の力に打ち勝って変位し、ひいては、バルブ26が開弁する。上記バルブ26は、ボディ14及びシリンダ16間に嵌め込まれている。バルブ26とボディ14との接触面には、薬液との接触角を増大させるための凹凸構造が備えられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬液制御機器の内部における薬液の浸透に対処するための薬液制御機器の内部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造工程においては、様々な薬液が用いられる。このため、同製造工程においては、半導体装置に薬液を供給すべく、薬液制御機器が用いられている。この薬液制御機器にあっては、内部の流路を流通する薬液の流路から外部への漏洩を防止するシール構造を備えることが望まれる。
【0003】
そこで従来は、例えば下記特許文献1に見られるように、薬液制御機器内の薬液制御弁としてのダイアフラム弁体と薬液制御機器のボディとを溶着により接合することで、ダイアフラム弁体とボディとの間をシールすることも提案されている。これにより、薬液制御機器内の流路のうち特に薬液が漏洩しやすいダイアフラム弁体とボディとの間をシールすることができる。
【特許文献1】特開2005−163877号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、半導体装置の高集積化に伴い、半導体製造工程において、高浸透性の薬液が用いられるようになってきている。高浸透性の薬液を用いた場合、薬液制御機器内の流路から薬液が漏洩しやすい。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、薬液制御機器内において薬液の流路を形成する複数の部材間への薬液の浸透を好適に抑制することのできる薬液制御機器の内部構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下、上記課題を解決するための手段、及びその作用効果について記載する。
【0007】
手段1は、薬液供給装置の内部構造において、薬液の流路を形成する複数の部材間への前記薬液の浸透を抑制すべく、該複数の部材の中の少なくとも1つの部材の表面部分であって且つ前記複数の部材の接触面を構成する表面部分に凹凸構造を備え、該凹凸構造によって前記薬液と前記表面部分との接触角を増大させたことを特徴とする。
【0008】
液体と接触する部材の表面を凹凸構造とすることで、液体との接触角を増大させることができることが知られている。上記構成では、この点に鑑み、凹凸構造によって上記表面部分と薬液との接触角を増大させることで、薬液の流路を形成する複数の部材間への薬液の浸透を好適に抑制することができる。
【0009】
手段2は、手段1記載の発明において、前記凹凸構造は、フッ素樹脂の表面にイオン照射をすることで生成されてなることを特徴とする。
【0010】
フッ素樹脂の表面にイオン照射をすることで高アスペクト比の突起が成長し、表面積が著しく増大することが知れられている。上記構成では、この点に着目し、薬液との接触角を好適に増大させることのできる凹凸構造を生成することができる。
【0011】
手段3は、薬液供給装置の内部構造において、薬液の流路を形成する複数の部材の中の少なくとも1つをフッ素樹脂にて形成するとともに、該フッ素樹脂製の部材の表面部分であって且つ該複数の部材の接触面を構成する表面部分に、イオン照射によって形成される起毛状の凹凸構造を備えることを特徴とする。
【0012】
フッ素樹脂の表面にイオン照射をすることで高アスペクト比の突起が成長し、表面積が著しく増大することが知れられている。そしてこれにより、薬液との接触角を好適に増大させることのできる凹凸構造を生成することができる。上記構成では、この点に着目し、フッ素樹脂製部材の上記表面部分と薬液との接触角を増大させる。そして、これにより、薬液の流路を形成する複数の部材間への薬液の浸透を好適に抑制することができる。
【0013】
手段4は、手段1〜3のいずれかに記載の発明において、前記凹凸構造は、その凹部に前記薬液が入り込めないように凸部間の間隔が形成されてなることを特徴とする。
【0014】
上記構成では、凹部に薬液が入り込めないために、上記接触角を特に増大させることができる。
【0015】
手段5は、薬液供給装置の内部構造において、薬液の流路を形成する複数の部材の中の少なくとも1つの部材の表面部分であって且つ前記複数の部材の接触面を構成する表面部分に凹凸構造を備えて且つ、該凹凸構造における凸部間の間隔が、液体が入り込めない間隔であって且つ気体が入り込むことが可能な間隔とされてなることを特徴とする。
【0016】
気体と液体との接触角は、通常、360°である。このため、上記表面部分に気体を取り込めるなら、薬液との接触角を増大させることができる。上記構成では、この点に着目し、気体が入り込める凹凸構造を備えることで、薬液との接触角を増大することができる。このため、薬液の流路を形成する複数の部材間への薬液の浸透を好適に抑制することができる。
【0017】
手段6は、手段5記載の発明において、前記凹凸構造は、フッ素樹脂の表面にイオン照射をすることで生成されてなることを特徴とする。
【0018】
フッ素樹脂の表面にイオン照射をすることで高アスペクト比の突起が成長し、表面積が著しく増大することが知れられている。上記構成では、この点に着目し、上記凹凸構造を生成することができる。
【0019】
手段7は、手段1〜6記載の発明において、前記薬液制御機器は、前記流路側とアクチュエータ側とを仕切って且つ前記流路の容積を可変とする仕切部材を備え、前記凹凸構造は、前記流路を形成する部材のうち前記仕切部材と接触する部材及び前記仕切部材の少なくとも1つの表面部分であって且つこれら部材の接触面を構成する表面部分に形成されてなることを特徴とする。
【0020】
上記構成では、流路を形成する部材のうち仕切部材以外の部材と仕切部材との接触面を介して、流路内の薬液が漏洩しやすい。この点、上記構成では、この部分に凹凸構造を備えることで、こうした問題を好適に回避することができる。
【0021】
手段8は、手段1〜7のいずれかに記載の発明において、前記凹凸構造は、前記薬液の流路を形成する当該薬液制御機器の内壁にも形成されてなることを特徴とする。
【0022】
薬液の流路を形成する内壁は、薬液と接触するために、劣化しやすい。この点、上記構成では、凹凸構造を備えることにより、内壁と薬液との接触面を増大させることができ、ひいては、内壁の耐劣化性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
(第1の実施形態)
以下、本発明にかかる薬液制御機器の内部構造を半導体製造工程に用いる薬液制御機器の内部構造に適用した第1の実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0024】
図1に、本実施形態にかかる薬液制御機器(薬液制御弁10)の全体構成を示す。本実施形態にかかる薬液制御弁10は、フッ素系の有機溶液や界面活性剤を含んだ水溶液等、半導体装置を製造するために用いる任意の薬液の流動を制御するために半導体製造装置に搭載されるものである。
【0025】
図示されるように、薬液制御弁10において、ベースプレート12には、ボディ14が固定されている。そして、ボディ14には、シリンダ16が接続されている。そして、図中、シリンダ16の上端は、カバー18によって覆われている。
【0026】
上記ボディ14には、薬液導入路20及び薬液流出路22が形成されている。薬液導入路20の下流端部には、バルブシート24が形成されている。そして、薬液導入路20及び薬液流出路22間は、バルブ26がバルブシート24に着座することで、遮断される。
【0027】
バルブ26には、シリンダ16の軸方向に変位可能なピストンロッド28が接続されている。このピストンロッド28は、その断面が十字架状になっており、左右両サイドに突出した突起部28aを備えている。そして、この突起部28a及び上記カバー18間には、弾性部材(ここでは、スプリング30を例示)が備えられている。スプリング30は、ピストンロッド28に対しベースプレート12側への力を及ぼすものである。このため、薬液制御弁10は、通常は閉弁状態となるノーマリークローズ式のものとなっている。
【0028】
なお、本実施形態では、上記ベースプレート12や、ボディ14、シリンダ16、カバー18、バルブ26は、いずれも樹脂製である。特に、バルブ26は、フッ素樹脂にて形成されている。具体的には、バルブ26は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)によって形成されている。
【0029】
上記シリンダ16の側面には、シリンダ16の内部のうち、上記ピストンロッド28の突起部28aの下面側に加圧エアを導入するエア導入路32が設けられている。そして、エア導入路32を介して加圧エアが供給されると、ピストンロッド28には、スプリング30と反対方向の力が加わることとなる。そして、この加圧エアによる力がスプリング30の弾性力に打ち勝つと、ピストンロッド28がカバー18側に変位する。これにより、バルブ26が開弁し、薬液導入路20と薬液流出路22とが連通状態となる。このとき、薬液導入路20側の薬液が薬液流出路22側へと流出する。このように、本実施形態にかかる薬液制御弁10は、エアオペレートバルブとなっている。
【0030】
ところで、上記薬液として浸透性の高いものを用いる場合、薬液制御弁10内の薬液の流路に充填された薬液(又は流路を流動する薬液)の漏洩が問題となる。特に、ボディ14及びバルブ26を接合することでこれら部材が接触する面(接触面)については、薬液が漏洩しやすい。そこで本実施形態では、図2にバルブ26側について例示するように、バルブ26及びボディ14の接触面FCを凹凸構造とすることで、これら部材と薬液との接触角を増大させる。接触角が増大すると表面張力が増大するため、薬液の浸透を抑制することが可能となる。すなわち、水同様、薬液をはじく構造を撥水構造と呼ぶならば、バルブ26やボディ14の接触面FCを凹凸構造とすることで撥水性を付与する。そして、接触面FCに撥水加工がなされた後にその接触面にてバルブ26及びボディ14を接合することで、これら部材間の接合部分(接触面FC)からの薬液の漏洩を抑制する。
【0031】
ここで、上記バルブ26やボディ14の撥水加工の処理手順について、図3を参照しつつ説明する。なお、図3では、バルブ26の撥水加工処理を例示するが、ボディ14についても撥水加工手法は同様である。
【0032】
この一連の処理においては、まず図3(a)に示されるように、PTFE部材を成型することで、上記バルブ26の形状に加工する。続いて、図3(b)に示されるように、例えば「数十keV」のエネルギにて、窒素イオン等のイオンを上記接触面FCに選択的に照射する。これにより、図3(c)に拡大して示すように、イオンが照射される表面に高アスペクト比の突起が成長し、起毛状の凹凸が生成されるために表面積が著しく増大する。詳しくは、イオンの衝突による衝撃によって表面が局所的に蒸発し微細な凹凸が形成され、こうして形成される凸部がイオン照射による加熱によって延伸する。
【0033】
こうして形成される凸部(突起部)の密度は、イオン照射の電流密度及び照射量によって調節することが可能である。このため、用いる薬液の浸透を十分に抑制することができる密度とするように、上記2つのパラメータを設定する。
【0034】
この際、突起部の間隔Δを、「70μm」以下とすることが望ましい。これによれば、突起部間(凹部)に水が浸入することを回避することができる。このため、突起部間には、液体の進入が避けられつつも気体の進入が許容される。そして、突起部間に気体が取り込まれることで、薬液との接触角を特に増大させることができる。すなわち、気体と液体との接触角は、通常、「360°」であるため、突起部間に気体を選択的に取り込むことで、薬液との接触角をよりいっそう増大させることができる。これにより、薬液に対する撥水性を特に高めることができる。
【0035】
ちなみに、薬液制御弁10内の薬液の流路には、通常、薬液が充填されているため、気体は存在しない。しかし、例えばバルブ26の変位による薬液の流路の容積の変化等によって、薬液に溶け込んでいる気体が蒸発するなどの現象が生じ得る。また、バルブ26をボディ14によって挟み込む工程において、突起部間に微量の気体が入り込むこともある。こうした現象などによって流路内に存在する気体を突起部間に取り込むことができる。
【0036】
以上説明した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
【0037】
(1)薬液制御弁10内において薬液の充填/流動する流路を形成する複数の部材の接触面に凹凸構造を設けることによって薬液との接触角を増大させた。これにより、薬液の流路を形成する複数の部材の間への薬液の浸透を好適に抑制することができる。
【0038】
(2)上記凹凸構造を、フッ素樹脂の表面にイオン照射をすることで生成した。これにより、薬液との接触角を好適に増大させることのできる凹凸構造を生成することができる。
【0039】
(3)突起部間の間隔Δを「70μm」以下とするなら、上記接触角を特に増大させることができる。
【0040】
(4)、バルブ26及びボディ14の接触面に凹凸構造を形成した。これにより、薬液が特に漏洩しやすい部分について、薬液の漏洩を好適に抑制することができる。
【0041】
(第2の実施形態)
以下、第2の実施形態について、第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0042】
本実施形態では、半導体製造装置に搭載される薬液供給ポンプ40に本発明を適用する。薬液供給ポンプ40は、図示しない薬液ボトルから薬液を吸入し、半導体製造装置の下流側に吐出するものである。図4(a)に、本実施形態にかかる薬液供給ポンプ40を示す。
【0043】
図示されるように、薬液供給ポンプ40は、一対のハウジング42a,42bを備えている。これら一対のハウジング42a,42b間には、ダイアフラム43が挟み込まれている。そして、これらハウジング42a及びダイアフラム43によって、ポンプ室44が区画形成されている。
【0044】
ハウジング42bには、薬液導入路46が形成されており、薬液導入路46に導入される薬液は、薬液制御弁48を介してポンプ室44に供給される。また、ハウジング42bには、薬液流出路50が形成されており、ポンプ室44の薬液は、薬液制御弁52を介して薬液流出路50へ吐出される。なお、これら薬液制御弁48,52は、先の図1に示した薬液制御弁10と同様の仕組みによって動作する部材である。
【0045】
上記ダイアフラム43及びハウジング42b間には、作動室53が区画形成されている。そして、ダイアフラム43のうち作動室53側の面にはピストンロッド54が接続されており、このピストンロッド54は、弾性部材(ここでは、スプリング56を例示)によって図中上方に力が及ぼされている。換言すれば、作動室53の容積を縮小する側に力が及ぼされている。
【0046】
一方、ハウジング42bには、エア導入路58が設けられている。そして、エア導入路58を介して作動室53に加圧エアが供給されると、ダイアフラム43には、作動室53の容積を拡大する側の力が加わる。そして、この力がピストンロッド54による逆方向の力に打ち勝つと、作動室53の容積が増大する。これにより、ポンプ室44の容積が縮小する。
【0047】
上記構成において、エア導入路58を介して作動室53のエア抜きがなされるとともに薬液制御弁48を開弁させることで、ポンプ室44の容積が拡大するとともに薬液導入路46を介してポンプ室44に薬液が吸入される。次に、薬液制御弁48を閉弁し、エア導入路58を介して作動室53に加圧エアを導入するとともに、薬液制御弁52を開弁させることで、ポンプ室44の容積が縮小するとともにポンプ室44内の薬液が薬液流出路50を介して吐出される。
【0048】
上記薬液供給ポンプ40においては、特にハウジング42aとダイアフラム43との接触面からの薬液の漏洩が問題となる。そこで本実施形態では、図4(b)に示すように、ハウジング42aとの接触面FCに凹凸構造を備える。
【0049】
以上説明した本実施形態によっても、先の第1の実施形態の効果と同様の効果を得ることができる。
【0050】
(第3の実施形態)
以下、第3の実施形態について、第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0051】
図5(a)に、本実施形態にかかる薬液供給ポンプを示す。
【0052】
図示されるように、薬液供給ポンプ70において、ポンプハウジング72内には容積可変部材としてのベローズ式仕切部材74が収容されており、このベローズ式仕切部材74によってポンプ室76と作動室78とが区画形成されている。ベローズ式仕切部材74は、互いに一体形成された3つの部材、すなわち、軸方向に伸縮自在のベローズ74aと、該ベローズ74aの一端部(図の下端部)に連結されている仕切板74bと、ベローズ74aの他端部(図の上端部)に連結されている環状の固定板74cとを備えている。ベローズ74aの伸縮により仕切板74bが移動し、ポンプ室76と作動室78との容積が各々変化する。この場合、ポンプ室76と作動室78との合計容積は、ベローズ74aの伸縮に関係なく不変であるため、例えばポンプ室76の容積増加量は作動室78の容積減少量に相当する(もちろん増減が逆の場合も同様である)。
【0053】
ポンプハウジング72には、ポンプ室76に連通する吸引ポート82と吐出ポート84とが形成されており、吸引ポート82に吸引配管86が接続され、吐出ポート84に吐出配管88が接続されている。吸引配管86には吸引側開閉弁である吸引バルブ90が設けられており、吸引バルブ90は電磁弁92の通電状態に応じて開閉される。また、吐出配管88には吐出側開閉弁である吐出バルブ94が設けられており、吐出バルブ94は電磁弁98の通電状態に応じて開閉される。
【0054】
吸引配管86は、ポンプ室76に向けて薬液を供給するための薬液供給通路を構成するものであり、図示しない薬液ボトル(薬液貯留容器)内に貯留された薬液、或いは工場の薬液配管より供給される薬液が吸引配管86を通じてポンプ室76に供給される。これにより、ポンプ室76内に薬液が充填される。また、吐出配管88は、ポンプ室76内に充填された薬液を吐出するための薬液排出通路を構成するものであり、ポンプ室76から吐出される薬液が吐出配管88を通じて薬液吐出ノズル(図示略)に供給される。薬液吐出ノズルは、下方に指向されるとともに、回転板等の上に載置された半導体ウエハの中心位置に薬液が滴下されるように配置されており、薬液吐出ノズルから半導体ウエハ上に適量の薬液が滴下されることで、ウエハ表面への薬液の塗布作業が行われるようになっている。
【0055】
同じくポンプハウジング72には、作動室78に連通する給排ポート100が形成されており、この給排ポート100に電空レギュレータ102が接続されている。電空レギュレータ102は、作動室78内の空気圧力を調整するためのものであり、内蔵された電磁式切替弁の切替操作によって、作動室78に圧縮空気を供給する圧縮空気供給状態と、同作動室78内の空気を外部に噴出する大気開放状態とが切り替えられるようになっている。
【0056】
ポンプハウジング72にはケース体104が組み付けられており、ポンプハウジング72に形成された貫通孔106にはケース体104側に突出するようにして細長円柱状のロッド108が摺動可能に挿通されている。すなわち、ロッド108は、一端が作動室78内に突出し、他端がケース体104で囲まれた内部空間に突出している。ロッド108の作動室78側の端部にはベローズ式仕切部材74の仕切板74bが結合されており、仕切板74bの移動(すなわちベローズ74aの伸縮動作)に伴いロッド108が図の上下方向に往復動する。
【0057】
また、ロッド108のケース体104側の端部にはバネ受け板110が連結されており、このバネ受け板110とポンプハウジング72の外壁面との間には圧縮コイルバネ112が介在されている。ロッド108は、圧縮コイルバネ112の弾性力により常に図の上方へ付勢されている。
【0058】
上記構成により、作動室78内に圧縮空気が導入されない状態(大気開放状態)では、圧縮コイルバネ112の弾性力によりベローズ式仕切部材74のベローズ74aが収縮状態とされ、ポンプ室76内の容積が増加する。このとき、吸引バルブ90を開弁、吐出バルブ94を閉弁させることにより、吸引配管86を通じてポンプ室76内に薬液が吸入される。また、圧縮空気供給状態では、図示しない空圧源から供給される圧縮空気が電空レギュレータ102と給排ポート100とを通じて作動室78内に導入され、作動室78内の空気圧力と圧縮コイルバネ112の弾性力とのバランスに応じてベローズ74aが伸長されてポンプ室76内の容積が減少する。このとき、吸引バルブ90を閉弁、吐出バルブ94を開弁させることにより、ポンプ室76内に充填されている薬液が吐出配管88を通じて吐出される。
【0059】
ケース体104内には、ロッド108の移動量(すなわちベローズ74aの伸縮量)を検出するための位置検出器114が設けられている。なお、ロッド108近傍には、ロッド108を往復動可能に保持するためのリニアベアリング116及び作動室78からの空気漏れを防止するための軸シール118が設けられている。
【0060】
上記薬液供給ポンプ70による薬液の吸引及び吐出の状態は、コントローラ120により制御される。
【0061】
上記構成において、ベローズ式仕切部材74は、固定板74cの端部がポンプハウジング72に嵌め込まれることで固定されている。このため、固定板74c及びポンプハウジング72が上記嵌め込みによって面接触する部分を介して、ポンプ室76内に充填される薬液が特に漏洩しやすい。このため、図5(b)に固定板74c側について例示すように、ポンプハウジング72と固定板74cとのそれぞれについてこれらの接触面FCを凹凸構造とする。
【0062】
以上説明した本実施形態によっても、先の第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0063】
(その他の実施形態)
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
【0064】
・上記各実施形態では、薬液の流路を形成する複数の部材の全てについて、それらの接触面を構成する表面部分に凹凸構造を設けたが、任意の1つのみの部材の表面部分のうち上記接触面を構成する表面部分に凹凸構造を設けてもよい。
【0065】
・凹凸構造を設ける部分は、薬液制御機器内において薬液の流路を形成する複数の部材を互い接合する際の接触面に限らない。例えば図6にバルブ26について例示するように、流路を形成する内壁自体においても、凹凸構造とすることで撥水加工を施すことにより、薬液に対する耐劣化性を向上させることができる。
【0066】
・凹凸構造の形成手法としては、上記各実施形態で例示したものに限らない。例えば薬液の接触角が鈍角となる部材の表面に適宜凹凸構造を形成することで同部材の表面積を増大させ、接触角を更に増大させてもよい。
【0067】
・半導体製造装置に搭載される薬液制御機器としては、上記各実施形態に示したものに限らない。例えば、先の図1に示した薬液制御弁10に代えて、図7(a)に示す薬液制御弁10aであってもよい。なお、図7(a)において、先の図1に示した部材と対応する部材については、便宜上同一の符号を付している。この場合であっても、バルブ26及びボディ14間を介して薬液が漏洩することを回避すべく、図7(b)に例示するように、バルブ26等の接触面FCに凹凸構造を備えることが望ましい。更に、薬液制御弁10としては、上記開弁・閉弁の2値的な動作をするいわゆるオンオフ弁に限らず、例えば下流側の薬液の圧力を調節するレギュレータであってもよい。
【0068】
・上記各実施形態では、半導体装置の製造装置に本発明を適用したが、これに限らず、例えば液晶製造装置や医療用装置に本発明を適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】第1の実施形態にかかる薬液制御弁の全体構成を示す図。
【図2】上記薬液制御弁のバルブの拡大図。
【図3】上記実施形態にかかる薬液制御弁の撥水加工処理の手順を示す断面図。
【図4】第2の実施形態にかかる薬液供給ポンプを示す図。
【図5】第3の実施形態にかかる薬液供給ポンプを示す図。
【図6】上記第1の実施形態の変形例を示す断面図。
【図7】上記第1の実施形態の変形例を示す断面図。
【符号の説明】
【0070】
10…薬液制御弁、26…バルブ(仕切部材の一実施形態)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬液制御機器の内部構造において、
薬液の流路を形成する複数の部材間への前記薬液の浸透を抑制すべく、該複数の部材の中の少なくとも1つの部材の表面部分であって且つ前記複数の部材の接触面を構成する表面部分に凹凸構造を備え、該凹凸構造によって前記薬液と前記表面部分との接触角を増大させたことを特徴とする薬液制御機器の内部構造。
【請求項2】
前記凹凸構造は、フッ素樹脂の表面にイオン照射をすることで生成されてなることを特徴とする請求項1記載の薬液制御機器の内部構造。
【請求項3】
薬液制御機器の内部構造において、
薬液の流路を形成する複数の部材の中の少なくとも1つをフッ素樹脂にて形成するとともに、該フッ素樹脂製の部材の表面部分であって且つ該複数の部材の接触面を構成する表面部分に、イオン照射によって形成される起毛状の凹凸構造を備えることを特徴とする薬液制御機器の内部構造。
【請求項4】
前記凹凸構造は、その凹部に前記薬液が入り込めないように凸部間の間隔が形成されてなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の薬液制御機器の内部構造。
【請求項5】
薬液制御機器の内部構造において、
薬液の流路を形成する複数の部材の中の少なくとも1つの部材の表面部分であって且つ前記複数の部材の接触面を構成する表面部分に凹凸構造を備えて且つ、該凹凸構造における凸部間の間隔が、液体が入り込めない間隔であって且つ気体が入り込むことが可能な間隔とされてなることを特徴とする薬液制御機器の内部構造。
【請求項6】
前記凹凸構造は、フッ素樹脂の表面にイオン照射をすることで生成されてなることを特徴とする請求項5記載の薬液制御機器の内部構造。
【請求項7】
前記薬液制御機器は、前記流路側とアクチュエータ側とを仕切って且つ前記流路の容積を可変とする仕切部材を備え、
前記凹凸構造は、前記流路を形成する部材のうち前記仕切部材と接触する部材及び前記仕切部材の少なくとも1つの表面部分であって且つこれら部材の接触面を構成する表面部分に形成されてなることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の薬液制御機器の内部構造。
【請求項8】
前記凹凸構造は、前記薬液の流路を形成する当該薬液制御機器の内壁にも形成されてなることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の薬液制御機器の内部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−101757(P2008−101757A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−286763(P2006−286763)
【出願日】平成18年10月20日(2006.10.20)
【出願人】(000106760)シーケーディ株式会社 (627)
【Fターム(参考)】