説明

衛星航法/推測航法統合測位装置

【課題】慣性航法を行っているときでも、外部センサの検出値の補正が適正であるか否かを判定できるようにして、著しく劣化した測位結果が出力されるのを防止する。
【解決手段】航法装置100は、GPS受信機11、移動体の前後方向であるX軸方向と、移動体の左右方向であるY軸方向の少なくとも2軸の加速度を検出する加速度センサ12と、X軸方向及びY軸方向に対してそれぞれ直交するZ軸回りの方位方向の角速度を検出する少なくとも1軸の角速度センサ13を含み、CPU等からなる統合演算部30のセンサ検出値の適正補正判定部22は、X軸方向の加速度検出値を積分した値(速度)と、方位方向の角速度検出値の積とを求め、この値とY軸方向の加速度検出値との誤差を求め、この誤差が所定のしきい値を超えるか否かを判定することによって加速度センサおよび角速度センサの補正が適切であるか否かを判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、航法衛星からの測位信号を受信して得られる観測量と、加速度センサ等の外部センサより得られる観測量とを統合して測位を行う衛星航法/推測航法統合測位装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
非自立システムである例えばGPS測位装置より得られる観測量を基にした衛星航法演算と、加速度センサや角速度センサ等の外部センサの検出値を基にした慣性航法演算とを統合して移動体の位置・速度・方位等の航法データを求める衛星航法/推測航法統合測位装置が従来用いられている(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特許第3380404号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このような衛星航法/推測航法統合測位装置においては、外部センサの検出値の精度が問題となる。
安価な加速度センサと角速度センサを用いた衛星航法/推測航法統合測位装置では、これらの外部センサの補正が適正に行われていないと、航法衛星からの測位信号の中断等が生じた際、外部センサからの検出値の低精度の影響によって測位精度は著しく劣化する。
【0004】
ところが、航法衛星からの測位信号の中断時においては外部センサの補正が適正に行われているか否かを判定する手段がなく、外部センサの検出値を用いた慣性航法演算を継続し、その結果を出力し続けるしかなかった。
【0005】
そこで、この発明の目的は、航法衛星からの測位信号を受信できずに慣性航法を行っているときでも、外部センサの検出値の補正が適正であるか否かを判定できるようにして、誤った測位演算の継続または誤った航法データの出力を停止して上述の問題を解消した衛星航法/推測航法統合測位装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、この発明の衛星航法/推測航法統合測位装置は次のように構成する。
【0007】
(1) 航法衛星の測位信号と外部センサの検出値とを基に移動体の航法データを求めるとともに、前記外部センサの検出値に対する補正値を求めて、前記外部センサの検出値にフィードバックする統合測位演算手段を備えた衛星航法/推測航法統合測位装置において、
前記外部センサは少なくとも加速度を検出する加速度センサと角速度を検出する角速度センサを含み、
前記加速度センサの検出値と前記角速度センサの検出値の誤差を求め、当該誤差が所定のしきい値を超えるか否かを判定するセンサ検出値の適正補正判定手段を備える。
【0008】
(2)航法衛星の測位信号と外部センサの検出値とを基に移動体の航法データ(位置・速度等)を求めるとともに、前記外部センサの検出値に対する補正値を求めて、前記外部センサの検出値にフィードバックする統合測位演算手段を備えた衛星航法/推測航法統合測位装置において、
前記外部センサには、移動体の前後方向であるX軸方向と、前記移動体の左右方向であるY軸方向の少なくとも2軸の加速度を検出する加速度センサと、前記X軸方向及び前記Y軸方向に対して直交するZ軸回りの方位方向(旋回方向)の角速度を検出する少なくとも1軸の角速度センサを含み、
前記X軸方向の加速度を検出する加速度センサの検出値を積分したX軸方向(円弧の接線方向)の速度と、前記角速度センサの検出値との積(=遠心力)を求めるとともに、Y軸方向の加速度を検出する加速度センサの検出値と前記積(遠心力)との差を求め、当該差が所定のしきい値を超えるか否かを判定することによって前記加速度センサおよび角速度センサの検出値の補正が適切であるか否かを判定する手段を備える。
【0009】
すなわちここで、
Vx:前進方向の速度
ωz:方位方向の角速度
ay:遠心力
とすると、
ay=Vx・ωz …(1)
の関係を、ある許容誤差または許容差の範囲内で満たすか否かを判定することによって加速度センサおよび角速度センサの補正が適正であるか否かを判定する。
【0010】
これにより、航法衛星からの測位信号が中断された状態でも外部センサの補正が適正に行われているか否かを判定できる。そのため、適正な補正がなされていない外部センサの検出値を用いた慣性航法演算が継続される問題や、適正な補正がなされていない外部センサの検出値を用いた著しく劣化した航法データが出力される、という問題が回避できる。
【0011】
(3)前記統合測位演算手段は、前記補正が適正であると判定されたとき、前記加速度センサ及び前記角速度センサの検出値を用いた測位演算を継続し、または測位演算の結果を出力し、前記補正が不適正と判定されたとき、前記外部センサの検出値を用いた測位演算を停止し、または測位演算を停止する直前の測位結果等、前記外部センサの検出値を用いた測位演算の結果以外の値を出力するものとする。
【0012】
この構成により、著しく精度の劣化した航法データが出力されるのを防止でき、異常な航法データがユーザーに提供されるのを防止することができる。
【0013】
(4)前記適正補正判定手段は、前記X軸方向の速度と前記方位方向の角速度の絶対値がそれぞれ所定のしきい値を超えるときに前記判定を行うものとする。
【0014】
これにより、無用な判定が防止できるとともに判定精度を高めることができる。
【0015】
(5)前記適正補正判定手段は、前記X軸方向の速度と前記方位方向の角速度との積の絶対値が前記Y軸方向の加速度の絶対値を含む比較値を超えるか否かによって前記判定を行うこととする。
【0016】
これにより、簡単な演算によって各センサのうちいずれかの検出値の補正が不適正であるか否かを的確に判定できる。
【0017】
(6)前記適正補正判定手段は、前記X軸方向の速度と前記方位方向の角速度との積が前記Y軸方向の加速度と同符号であるか否かによって前記判定を行う、
これにより、X軸方向の加速度センサの検出値、方位方向の角速度センサの検出値、またはY軸方向の加速度センサの検出値のいずれかの補正が不適正であるか否かを的確に判定できる。
【発明の効果】
【0018】
この発明によれば、航法衛星からの測位信号が中断された状態でも外部センサの補正が適正に行われているか否かを判定できる。そのため、適正な補正がなされていない外部センサの検出値を用いた慣性航法演算が継続される問題や、適正な補正がなされていない外部センサの検出値を用いた著しく劣化した航法データが出力される、という問題が回避できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
《第1の実施形態》
本発明の衛星航法/推測航法統合測位装置(以下、単に「航法装置」という。)の構成を図1に示す。この図1に示すように、航法装置100は、GPS受信機11と、加速度センサ12と、振動ジャイロからなる角速度センサ13と、CPU等からなる統合演算部30と、を備えていて、移動体に搭載される。
【0020】
GPS受信機11は航法衛星であるGPS衛星から送信される測位信号を受信し、GPS測位信号を出力する。
【0021】
加速度センサ12は、移動体の前後方向であるX軸方向と、前記移動体の左右方向であるY軸方向の少なくとも2軸の加速度を検出する。角速度センサ13は、X軸方向及びY軸方向に対してそれぞれ直交するZ軸回りの方位方向(旋回方向)の角速度を検出する。この加速度センサ12及び角速度センサ13が本発明に係る「外部センサ」に相当する。
【0022】
統合演算部30は、演算処理内容をブロック化すれば、追尾処理部20、GPS/INS演算部21、及びセンサ検出値の適正補正判定部22で表すことができる。
【0023】
追尾処理部20は、GPS受信機11からのGPS測位信号を入力し、各GPS衛星からの信号を受信して得られるベースバンドのGPS測位信号の位相を追尾するとともに擬似距離、ドップラー周波数観測量、各衛星の位置・速度などを求める。
【0024】
GPS/INS演算部21は、擬似距離及びドップラー周波数観測量、各衛星の位置・速度等に基づいて受信点の位置・速度を求める。また、擬似距離、ドップラー周波数周波数観測量、及び角速度センサ13と加速度センサ12の検出信号を基にGPS/INS統合演算を行う。このGPS/INS演算部21が本発明に係る「統合測位演算手段」に相当する。
【0025】
GPS/INS演算部21は、GPS測位信号が得られているとき、GPS/INS統合測位演算を行って、ユーザー装置に対して位置・速度・方位等の航法データを測位結果として出力する。また、このGPS/INSの統合演算を行うとともに、加速度センサ12及び角速度センサ13の検出値の補正を行う。すなわち、慣性航法演算の結果がGPS演算の結果に一致するように、加速度センサ12及び角速度センサ13の検出値に対する補正値を求め、これらを加速度センサ12及び角速度センサ13の検出値にフィードバックする。
【0026】
GPS/INS演算部21は、GPS測位信号が得られていないとき、加速度センサ12及び角速度センサ13の検出値を基にして慣性航法演算を行って、ユーザー装置に対して位置・速度・方位等の航法データを測位結果として出力する。
【0027】
センサ検出値の適正補正判定部22は、後述する方法により加速度センサ12及び角速度センサ13の検出値の補正が適正であるか否かを判定する。
【0028】
図2は、図1に示した航法装置の統合演算部30における、センサ検出値の補正が適正であるか否かの判定およびその判定結果に伴う処理内容を示すフローチャートである。
【0029】
まず、GPS/INS演算を行う(S1)。GPS測位信号が得られているときには、前述したとおり、衛星航法と慣性航法の統合演算を行う。また、GPS測位信号が得られていないときには慣性航法演算のみを行う。
【0030】
続いて、センサ検出値の補正が適正か否かの判定を行う(S2)。この判定ではGPS測位信号が得られているか否かに依らずに判定を行っているが、GPS測位信号が得られている場合にはセンサ検出値の補正が適正であると見なし、GPS測位信号が得られていない場合に限りセンサ検出値の補正が適正かの判定を行ってもよい。
【0031】
補正が適正と判定すれば、ステップS1で求めたGPS/INS演算の結果を更新するとともにユーザーへ通知する(S3)。また補正が適正でないと判定した場合には測位結果を更新せず、測位演算を停止する直前の測位結果をユーザーへ通知する(S4)。
【0032】
上記補正が適正と判定したとき、「GPS/INS演算の結果を更新する」という処理に代えて、「測位状態を表すステータスを有効にする」という処理を行い、補正が適正でないと判定したとき、上記「GPS/INS演算結果を更新しない」という処理に代えて、「測位状態を表すステータスを無効とする」という処理を行うようにしてもよい。
【0033】
図3は、図2に示したセンサ検出値の補正が適正かの判定処理の具体例を示すフローチャートである。図3において、Vxは移動体の前進方向(X軸方向)の加速度を検出する加速度センサ12の検出値を補正し積分した速度、ωzは方位方向の角速度を検出する角速度センサ13の検出値を補正した角速度、ayは移動体の左右方向(Y軸方向)の加速度を検出する加速度センサ12の検出値を補正した遠心力である。
【0034】
まず移動体(車両)の前進方向の速度Vxの絶対値が所定のしきい値th1を超えていて、且つ方位方向(旋回方向)の角速度ωzの絶対値が所定のしきい値th2を超えているか否かを判定する(S11)。
【0035】
また、速度Vxと角速度ωzの積の絶対値が所定の比較値1を超えているか否かを判定する。または、速度Vxと角速度ωzの積が遠心力ayと同符号であるか否かを判定する。この方法としては、速度Vxと角速度ωzと遠心力ayの3つの積が所定の比較値2より小さいか否かを判定することによって判定する(S12)。
【0036】
上記ステップS11とS12の判定条件を連続して満たす場合に、その連続回数をカウントする(S13→S14)。
【0037】
上記連続回数がしきい値th3に達した時には、それ以上のカウントアップは行わない(S13→S16)。また上記連続回数がしきい値th3に達するまでにステップS11,S12での判定条件を満たさなかったなら、その連続回数を0にクリアする(S15)。
【0038】
その後、上記連続回数がしきい値th3に達していれば、センサ検出値の補正が適正でないものと判定する(S16→S17)。また連続回数がth3未満である間はセンサ検出値の補正が適正であるものと判定する(S18)。
図3に示した判定処理は例えば1秒に1回の頻度で繰り返し実行する。
【0039】
上記各しきい値と比較値の具体的な設定値は次のとおりである。
しきい値th1:0.5 [m/s]
しきい値th2:5.0 [°/s]
しきい値th3:5(回)
比較値1:3×|ay| + 3×(ayの観測雑音)
比較値2:−1×th1×th2×(3×(ayの観測雑音))
上記しきい値及び比較値の設定方法は次のとおりである。
しきい値th1には、前進時には超えると見なせる速度を設定する。歩行者を想定すれば50cm/s程度、車両を想定すれば5km/h程度であるので、0.5m/s(=50cm/s)〜18m/s(=5km/h)の範囲で設定すればよい。
【0040】
しきい値th2は、旋回時には超えると見なせる角速度を設定する。歩行者および車両を想定すれば1°/s〜10°/s程度に設定すればよい。
【0041】
このしきい値th1,th2を用いた判定処理(図3におけるステップS11)を実行する手段が、請求項1に記載の「センサ検出値の適正補正判定手段」に相当する。
【0042】
しきい値th3を用いて判定を行うのは、センサ検出値に突発的に大きな雑音が生じたときでも、それをセンサ補正の不適正と誤判定しないようにするためである。数回ならばセンサ雑音が突発的に大きいこともあり得ると想定して、しきい値th3は数回(2〜10回)程度に設定すればよい。
【0043】
比較値1は、(1)式の右辺(Vx・ωz)の値の大きさが、(1)式の左辺ayの値の大きさと比較して補正が適正に行われているか否かの判定に用いるので、ay(遠心力)の大きさを“(1+加速度センサの感度誤差%のカタログ仕様値×0.01)倍”〜“3倍程度(安価な加速度センサ程、遠心力の検出精度が低いために大きな倍率)”した値と停止時に超えないと見なせる値(停止時に通常とり得る観測雑音の3倍〜6倍程度)の加算値に設定すればよい。
【0044】
遠心力ayの停止時に通常とり得る観測雑音は、加速度センサのカタログ仕様値でも良いし、停止時における遠心力ayの標準偏差として予め計測した値でもよい。
【0045】
比較値2は、(1)式の右辺(Vx・ωz)の値と左辺ayの値とを掛けた値の符号がマイナスで、絶対値が停止時には超えないと見なせる値より大きいか否かの判定に用いるので、停止時に超えないと見なせる速度(=しきい値th1)と停止時に超えないと見なせる角速度(=しきい値th2)と停止時に超えないと見なせる遠心力(=ayの停止時に通常取り得る観測雑音の3倍〜6倍程度)を掛けた大きさとなる値の負の値に設定すればよい。
【0046】
なお、図3のステップS11の条件を満たさなかったときには、以降の判定処理をスキップするようにしてもよい。すなわち、移動体が停止しているときや直進しているときには、X軸方向の加速度センサの検出値および角速度センサの検出値のいずれもが小さいので的確な判定が行えない可能性がある。その場合にはセンサ検出値の補正が適正か否かの判定を行わないようにしてもよい。
【0047】
《第2の実施形態》
図4は、第2の実施形態に係る航法装置の統合演算部における、センサ検出値の補正が適正かの判定およびその判定結果に伴う処理内容を示すフローチャートである。第2の実施形態に係る航法装置のハードウェアの構成は図1、センサ検出値の補正が適正かの判定内容については図3に示したものと同様であり、ここでは説明を省略する。
【0048】
図4に示す処理内容は次のとおりである。
まず、GPS/INS演算を行う。前述したとおり、必要なGPS測位信号が得られているときには、衛星航法と慣性航法の航法演算を行い、GPS測位信号が得られないときには、慣性航法演算のみを行う(S21)。
【0049】
そして、必要なGPS測位信号が得られて、GPS演算結果による有効または無効のステータスのうち、有効なステータスが得られたかを判定する(S22)。
【0050】
続いてGPS/INS演算結果の信頼性判定を行う(S22)。具体的には、前回までに求めたGPS/INS演算結果とGPS演算結果との差が所定値より小さい場合に、GPS/INS演算結果の信頼性を「有り」と判定し、所定値より大きい場合はGPS/INS演算結果の信頼性を「無し」と判定する(S23)。そしてGPS/INS演算結果の信頼性を「有り」と判定した場合、初期状態のGPS/INS演算結果の信頼性「無し」から「有り」に変更し、GPS/INS演算結果の信頼性を「無し」と判定した場合には、初期状態のGPS/INS演算結果の信頼性「無し」を維持する(S24)。ここでこの判定に用いる所定値には、GPS演算結果の誤差と同等以上に設定する。
【0051】
その後、センサ検出値の補正が適正であるか否かの判定を行う(S25)。このセンサ検出値の補正が適正であるか否かの判定は図2に示したステップS2(図3の処理)と同様であり、ここでの説明は省略する。
センサ検出値が適正に補正されていないと判定した場合、GPS/INS演算結果の信頼性を「無し」に変更する(S26)。
【0052】
そして、GPS/INS演算結果の信頼性の判定を行う(S27)。具体的にはステップS23と同様の処理を行い、その結果、GPS/INS演算結果の信頼性を「有り」と判定した場合、GPS/INS演算結果を用いて測位結果を更新する(S28)。
【0053】
GPS/INS演算結果の信頼性を「無し」と判定した場合、GPS演算結果で有効なステータスが得られているか否かを判定する(S29)。そしてGPS測位結果で有効なステータスが得られている場合は、GPS演算結果を用いて測位結果を更新する(S30)。
【0054】
しかし、GPS/INS演算結果の信頼性を「無し」と判定し、GPS演算結果で無効なステータスが得られている場合には測位結果を更新しない(S31)。
【0055】
上記GPS/INS演算結果の信頼性を「有り」と判定したとき、「GPS/INS演算の結果を更新する」という処理に代えて、「測位状態を表すステータスを有効にする」処理を行い、GPS/INS演算結果の信頼性を「無し」と判定したとき、「GPS/INS演算結果を更新しない」という処理に代えて、「測位状態を表すステータスを無効にする」という処理を行ってもよい。
【0056】
図2・図3に示した第1の実施形態の処理では、移動体の直進時や停車時には図3のステップS11で常にNOとなり、連続回数が0(零)にクリアされて、センサ検出値が適正に補正されていると判定されるので、測位結果が更新されてしまう。これに対して、図4に示した第2の実施形態では、GPS中断時にセンサ検出値の補正が適正に行われていないと判断された場合には、GPS測位が再開するまでは測位結果が更新されない。そのため、精度の劣化した測位結果の出力を防ぐことができる。
【0057】
また、図2・図3に示した第1の実施形態の処理では、センサ検出値の補正が適正に行われていないと判定された場合にはGPS演算結果が有効であっても測位結果を更新しないが、図4に示した第2の実施形態では、GPS演算結果が有効になればGPS測位演算により測位結果が速やかに更新される。
【0058】
補正されたセンサ検出値(加速度,角速度)はGPS/INS演算結果の微分値に相当するものであるため、妥当性のない値の積分値は信頼できない。そのため、センサ検出値の補正が適正に行われていないと判定された場合にはGPS/INS演算結果は信頼できない。しかし、センサ検出値の補正が適正である、ということはGPS/INS演算結果の微分値が信頼できることにしかならないので、センサ検出値の補正が適正に行われていると判定された場合であっても、GPS/INS演算結果が信頼できるとは必ずしも限らない。そこで、図4のステップ(S25→S26)のように、センサ検出値の補正が適正に行われていないと判定された場合には、GPS/INS演算結果の信頼性を「なし」に変更する。
【0059】
なお、以上に示した例では衛星航法測位のためにGPSを用いる例を示したが、別の衛星航法測位システムを利用する場合にも同様に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の実施形態に係る衛星航法/推測航法統合測位装置の構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示した航法装置の統合演算部30における、センサ検出値の適正補正の判定およびその判定結果に伴う処理内容を示すフローチャートである。
【図3】図2に示したステップS2でのセンサ検出値の適正補正の判定処理の具体的な内容の例を示すフローチャートである。
【図4】第2の実施形態に係る航法装置の統合演算部における、センサ検出値の適正補正の判定およびその判定結果に伴う処理内容を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0061】
11…GPS受信機
12…加速度センサ
13…角速度センサ
20…追尾処理部
21…GPS/INS演算部
22…センサ検出値の適正補正判定部
30…統合演算部
100…航法装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
航法衛星の測位信号と外部センサの検出値とを基に移動体の航法データを求めるとともに、前記外部センサの検出値に対する補正値を求めて、前記外部センサの検出値にフィードバックする統合測位演算手段を備えた衛星航法/推測航法統合測位装置において、
前記外部センサは少なくとも加速度を検出する加速度センサと角速度を検出する角速度センサを含み、
前記加速度センサの検出値と前記角速度センサの検出値の誤差を求め、当該誤差が所定のしきい値を超えるか否かを判定するセンサ検出値の適正補正判定手段を備えた衛星航法/推測航法統合測位装置。
【請求項2】
航法衛星の測位信号と外部センサの検出値とを基に移動体の航法データを求めるとともに、前記外部センサの検出値に対する補正値を求めて、前記外部センサの検出値にフィードバックする統合測位演算手段を備えた衛星航法/推測航法統合測位装置において、
前記外部センサは少なくとも加速度を検出する加速度センサと角速度を検出する角速度センサを含み、
前記加速度センサは、移動体の前後方向であるX軸方向と、前記移動体の左右方向であるY軸方向の少なくとも2軸の加速度を検出する加速度センサであり、前記角速度センサは、前記X軸方向及び前記Y軸方向に対して直交するZ軸回りの方位方向の角速度を検出する少なくとも1軸の角速度センサであり、
前記X軸方向の加速度を検出する加速度センサの検出値を積分したX軸方向の速度と、前記角速度センサの検出値との積を求めるとともに、Y軸方向の加速度を検出する加速度センサの検出値と前記積との差を求め、当該差が所定のしきい値を超えるか否かを判定することによって前記加速度センサおよび角速度センサの検出値が適切であるか否かを判定するセンサ検出値の適正補正判定手段を備えた衛星航法/推測航法統合測位装置。
【請求項3】
前記統合測位演算手段は、前記検出値が適正であると判定されたとき、前記加速度センサ及び前記角速度センサの検出値を用いた測位演算を継続し、または測位演算の結果を出力し、前記検出値が不適正と判定されたとき、前記外部センサの検出値を用いた測位演算を停止し、または測位演算を停止する直前の測位結果等、前記外部センサの検出値を用いた測位演算の結果以外の値を出力するものである、請求項1または2に記載の衛星航法/推測航法統合測位装置。
【請求項4】
前記適正補正判定手段は、前記X軸方向の速度と前記方位方向の角速度の絶対値がそれぞれ所定のしきい値を超えるときに前記判定を行う、請求項1〜3のいずれかに記載の衛星航法/推測航法統合測位装置。
【請求項5】
前記適正補正判定手段は、前記X軸方向の速度と前記方位方向の角速度との積の絶対値が前記Y軸方向の加速度の絶対値を含む比較値を超えるか否かによって前記判定を行う、請求項1〜4のいずれかに記載の衛星航法/推測航法統合測位装置。
【請求項6】
前記適正補正判定手段は、前記X軸方向の速度と前記方位方向の角速度との積が前記Y軸方向の加速度と同符号であるか否かによって前記判定を行う、請求項1〜5のいずれかに記載の衛星航法/推測航法統合測位装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−210296(P2009−210296A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−51145(P2008−51145)
【出願日】平成20年2月29日(2008.2.29)
【出願人】(000166247)古野電気株式会社 (441)
【Fターム(参考)】