説明

表示処理装置、表示処理方法及びコンピュータプログラム

【課題】適切な方法によるスクロール速度の改善を導くことを可能とした表示処理装置、表示処理方法及びコンピュータプログラムを提供する。
【解決手段】液晶ディスプレイ15に対して車両周辺の地図画像61を表示する(S2)とともに、地図画像61をスクロール表示させる操作を受け付けた場合には、地図画像61をスクロール表示する(S4)一方、スクロール速度の理論値と実測値をそれぞれ取得し(S5、S6)、スクロール速度の理論値に対する実測値の割合を算出し(S7)、算出された割合が第2割合未満である場合に、ナビゲーション装置1で実施されている機能の内、スクロール速度が理論値に対して低下する原因となっている機能の機能名を案内する(S14)ように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像のスクロール表示を行う表示処理装置、表示処理方法及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車載用のナビゲーション装置、PDA(Personal Digital Assistant)や携帯電話機などの携帯情報機器、携帯型音楽プレイヤ、携帯型ゲーム装置、パーソナルコンピュータ等のディスプレイを備える表示処理装置においては、液晶ディスプレイに対して地図画像、アイコン、ウィンドウ等の様々な画像を表示する。一方で、上記表示処理装置はユーザの操作を受け付ける手段としてキーボード、コントローラ、タッチパネル等についても備えている。そして、上記表示処理装置では、ユーザから受け付けた操作に基づいて、ディスプレイに表示された画像を選択したり、選択された画像をスクロール表示する機能を有する。
【0003】
また、上記表示処理装置では画像の表示に関する機能以外にも様々な機能を実施する。例えば、ナビゲーション装置を例に挙げて説明すると、VICSセンタとの通信機能、経路探索機能、走行案内機能、音楽再生機能等がある。そして、これらの機能を実施する為に表示処理装置は、演算装置(CPUやGPU等)によって数値計算や情報処理、機器制御などを行う。しかしながら、上記演算装置の処理性能は予め決まっており、同時に複数の機能を実施しようとすると、処理を一部省略する、あるいは処理完了時刻が遅れる所謂処理落ちが発生する場合がある。
【0004】
ここで、上記表示処理装置の一つであるナビゲーション装置は、車両の現在位置周辺の地図画像を表示する機能や、ユーザの操作に基づいて表示された地図画像をスクロール表示する機能を備える。しかし、上記処理落ちが発生することによって、ナビゲーション装置で地図画像をスクロール表示する際のスクロール速度が遅くなると、車両の適切な走行の案内を行うことができない問題があった。そこで、例えば特開2000−241176号公報には、スクロール速度が遅くならないようにスクロール表示を行う際のデータ描画量を調整する技術について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−241176号公報(第3頁、図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載された技術のように、スクロール速度を保つためにスクロール表示を行う際のデータの描画量を少なくすると、スクロール表示中にユーザが地図画像の内容を正しく認識することができない虞がある。即ち、スクロール速度を保つために、ナビゲーション装置側で一方的に一部の機能(例えば、特定対象の描画)を行わないように制御すると、ユーザの意図しない機能が停止される(例えば、特定対象が地図画面上から削除されてしまう)ことがある。更に、従来の技術ではスクロール速度の低下の原因となっている機能をユーザが把握することもできなかった。
【0007】
本発明は前記従来における問題点を解消するためになされたものであり、画像のスクロール速度が低下している場合に、その低下の低下する原因となっている機能をユーザに把握させるとともに、適切な方法によるスクロール速度の改善を導くことを可能とした表示処理装置、表示処理方法及びコンピュータプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため本願の請求項1に係る表示処理装置(1)は、各種プログラムを実行することによって複数種類の機能を実施可能に処理する表示処理装置において、画像(61)を表示する表示装置(15)と、ユーザの操作を受け付ける操作受付手段(36)と、前記操作受付手段により受け付けた前記ユーザの操作に基づいて、前記表示装置に表示された前記画像を前記表示装置においてスクロール表示するスクロール表示手段(37)と、前記スクロール表示手段による前記画像のスクロール速度の前記ユーザの操作に対応したスクロール速度理論値を取得するスクロール速度理論値取得手段(38)と、前記スクロール表示手段による前記画像のスクロール速度の実測値をスクロール速度実測値として取得するスクロール速度実測値取得手段(39)と、前記スクロール速度理論値と前記スクロール速度実測値を比較する速度比較手段(40)と、前記速度比較手段による比較結果に基づいて、前記表示処理装置で実施されている機能名を案内する案内手段(41)と、を有することを特徴とする。
尚、「スクロール速度理論値」とは、設計段階において予め想定されたスクロール速度の値であり、表示処理装置のプロセッサの処理性能に余裕がある場合においてスクロール表示処理を行う場合に実現される。
【0009】
また、請求項2に係る表示処理装置(1)は、請求項1に記載の表示処理装置であって、前記速度比較手段(40)は、前記スクロール速度理論値に対する前記スクロール速度実測値の割合を算出し、前記案内手段(41)は、前記割合算出手段によって算出された前記割合が所定値未満の場合に前記機能名を案内することを特徴とする。
【0010】
また、請求項3に係る表示処理装置(1)は、請求項1又は請求項2に記載の表示処理装置であって、前記表示装置(15)の表示領域の前面に配置されたタッチパネル(14)を有し、前記表示装置の表示領域は、複数の領域から構成されるとともに、各領域に対して前記スクロール速度理論値がそれぞれ対応付けられ、前記操作受付手段(36)は、前記タッチパネルにおけるユーザの操作を受け付け、前記スクロール速度理論値取得手段(38)は、前記タッチパネルに対してユーザがタッチした座標を含む前記領域に対応付けられた前記スクロール速度理論値を取得することを特徴とする。
【0011】
また、請求項4に係る表示処理装置(1)は、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の表示処理装置であって、前記表示処理装置で実施される前記機能毎に、該機能が実施された場合における前記表示処理装置の処理負担値を取得する処理負担値取得手段(42)を有し、前記案内手段(41)は、前記処理負担値取得手段により取得した前記機能毎の処理負担値に基づいて、前記表示処理装置で実施されている前記機能を停止した場合の前記スクロール速度の改善度を、前記表示処理装置で実施されている前記機能毎に案内することを特徴とする。
【0012】
また、請求項5に係る表示処理装置(1)は、請求項4に記載の表示処理装置であって、前記表示装置(15)に前記画像(61)として地図画像を所定の縮尺で表示する地図画像表示手段(43)と、前記表示装置に表示されている前記地図画像の縮尺を取得する縮尺取得手段(44)と、を有し、前記処理負担値取得手段(42)は、前記表示処理装置で実施される前記機能毎に、前記縮尺取得手段で取得した前記縮尺により前記地図画像を前記表示装置に表示した状態で該機能が実施された場合における前記表示処理装置の処理負担値を取得することを特徴とする。
【0013】
また、請求項6に係る表示処理装置(1)は、請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の表示処理装置であって、前記案内手段(41)は、前記表示処理装置(15)で実施されている前記機能の内、該機能を停止した場合の前記スクロール速度の改善度が高い順に所定数の前記機能名を、前記表示装置に対してリスト表示することを特徴とする。
【0014】
また、請求項7に係る表示処理装置(1)は、請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の表示処理装置であって、前記案内手段(41)によって案内された前記機能名を選択する機能選択手段(45)と、前記機能選択手段によって選択された前記機能名に対応する機能を前記表示処理装置において停止する機能停止手段(46)と、を有することを特徴とする。
【0015】
また、請求項8に係る表示処理装置(1)は、請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の表示処理装置であって、前記操作受付手段(36)において前記スクロール表示手段(37)による前記画像のスクロール速度を改善する為の操作を受け付けたか否か判定する操作判定手段(47)を有し、前記案内手段(41)は、前記操作判定手段によって前記画像のスクロール速度を改善する為の操作を受け付けたと判定された場合に前記機能名を案内することを特徴とする。
【0016】
また、請求項9に係る表示処理方法は、各種プログラムを実行することによって複数種類の機能を実施可能に処理する表示処理装置(1)の表示処理方法であって、ユーザの操作を受け付ける操作受付ステップと、前記操作受付ステップにより受け付けた前記ユーザの操作に基づいて、画像(61)を表示する表示装置(15)に表示された前記画像を前記表示装置においてスクロール表示するスクロール表示ステップと、前記スクロール表示ステップによる前記画像のスクロール速度の前記ユーザの操作に対応したスクロール速度理論値を取得するスクロール速度理論値取得ステップと、前記スクロール表示ステップによる前記画像のスクロール速度の実測値をスクロール速度実測値として取得するスクロール速度実測値取得ステップと、前記スクロール速度理論値と前記スクロール速度実測値を比較する速度比較ステップと、前記速度比較ステップの比較結果に基づいて、前記表示処理装置で実施されている機能名を案内する案内ステップと、を有することを特徴とする。
【0017】
更に、請求項10に係るコンピュータプログラムは、各種プログラムをプロセッサに実行することによって複数種類の機能を実施可能に処理する表示処理装置(1)に搭載され、ユーザの操作を受け付ける操作受付機能と、前記操作受付ステップにより受け付けた前記ユーザの操作に基づいて、画像(61)を表示する表示装置(15)に表示された前記画像を前記表示装置においてスクロール表示するスクロール表示機能と、前記スクロール表示機能による前記画像のスクロール速度の前記ユーザの操作に対応したスクロール速度理論値を取得するスクロール速度理論値取得機能と、前記スクロール表示機能による前記画像のスクロール速度の実測値をスクロール速度実測値として取得するスクロール速度実測値取得機能と、前記スクロール速度理論値と前記スクロール速度実測値を比較する速度比較機能と、前記速度比較機能による比較結果に基づいて、前記表示処理装置で実施されている機能名を案内する案内機能と、をプロセッサに実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
前記構成を有する請求項1に記載の表示処理装置によれば、画像のスクロール表示を行う場合に、スクロール速度が理論値に対して低下する原因となっている機能の機能名を、ユーザがスクロール速度の改善を要望する状況で案内することが可能となる。その結果、適切な方法によるスクロール速度の改善を導くことが可能となる。
【0019】
また、請求項2に記載の表示処理装置によれば、ユーザがスクロール速度の改善を要望する状況を適切に把握することが可能となる。
【0020】
また、請求項3に記載の表示処理装置によれば、タッチパネルを用いた操作の操作内容に基づいて画像のスクロール表示におけるスクロール方向や速度が選択されるので、ユーザの意図を反映した自由度の高い画像のスクロール表示を行うことが可能となる。また、受け付けたタッチパネルの操作に基づいて、ユーザの操作に対応したスクロール速度の理論値を適切に特定することが可能となる。
【0021】
また、請求項4に記載の表示処理装置によれば、機能名を案内する際には、表示処理装置で実施されている機能を停止した場合のスクロール速度の改善度についても機能毎に案内するので、案内された機能毎に該機能を停止した場合にスクロール速度がどの程度改善されるのかをユーザに把握させることが可能となる。
【0022】
また、請求項5に記載の表示処理装置によれば、ナビゲーション装置1で表示される地図の縮尺を考慮して機能を停止した場合の改善度を算出するので、改善度のより正確な値を算出することが可能となる。
【0023】
また、請求項6に記載の表示処理装置によれば、表示処理装置で実施されている機能が多数ある場合であっても、スクロール速度を改善する為に有効な情報となる機能名をユーザに理解し易く案内することが可能となる。また、案内される情報量を制限できるので、不要な案内によって画像の視認を妨げる虞が無い。
【0024】
また、請求項7に記載の表示処理装置によれば、案内された機能名の内、ユーザにより選択された機能名に対応する機能が停止されるので、機能の停止に基づいて表示処理装置の処理負担を軽減させ、画像のスクロール速度を向上させることが可能となる。
【0025】
また、請求項8に記載の表示処理装置によれば、ユーザがスクロール速度の改善を要望する状況を、ユーザから受け付けた操作に基づいてより正確に特定することができる。従って、ユーザがスクロール速度の改善を要望する状況で、より確実にスクロール速度が理論値に対して低下する原因となっている機能の機能名を案内することが可能となる。
【0026】
また、請求項9に記載の表示処理方法によれば、表示処理装置において画像のスクロール表示を行う場合に、スクロール速度が理論値に対して低下する原因となっている機能の機能名を、ユーザがスクロール速度の改善を要望する状況で案内することが可能となる。その結果、適切な方法によるスクロール速度の改善を導くことが可能となる。
【0027】
更に、請求項10に記載のコンピュータプログラムによれば、表示処理装置において画像のスクロール表示を行う場合に、スクロール速度が理論値に対して低下する原因となる機能の機能名を、ユーザがスクロール速度の改善を要望する状況で案内させることが可能となる。その結果、適切な方法によるスクロール速度の改善を導くことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本実施形態に係るナビゲーション装置を示したブロック図である。
【図2】地図の縮尺が1/1万と1/8万に対応する処理負担規定テーブルをそれぞれ示した図である。
【図3】ナビゲーションECUの構成を示した図である。
【図4】車両の走行中において液晶ディスプレイに表示される走行案内画面の一例を示した図である。
【図5】ワンタッチスクロール処理を行う場合の地図画像のスクロール表示態様を説明した図である。
【図6】連続スクロール処理を行う場合の地図画像のスクロール表示態様を説明した図である。
【図7】本実施形態に係るスクロール表示処理プログラムのフローチャートである。
【図8】1/1万の縮尺でスクロール速度を低下させる要因となっている機能の機能名が表示された走行案内画面の一例を示した図である。
【図9】1/8万の縮尺でスクロール速度を低下させる要因となっている機能の機能名が表示された走行案内画面の一例を示した図である。
【図10】ナビゲーション装置で実施されている一部の機能が停止された後の走行案内画面の一例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明に係る表示処理装置をナビゲーション装置に具体化した一実施形態に基づき図面を参照しつつ詳細に説明する。先ず、本実施形態に係るナビゲーション装置1の概略構成について図1を用いて説明する。図1は本実施形態に係るナビゲーション装置1を示したブロック図である。
【0030】
図1に示すように本実施形態に係るナビゲーション装置1は、ナビゲーション装置1が搭載された車両の現在位置を検出する現在位置検出部11と、各種のデータが記録されたデータ記録部12と、入力された情報に基づいて、各種の演算処理を行うナビゲーションECU13と、ユーザからの操作を受け付けるタッチパネル14と、ユーザに対して車両周辺の地図や施設検索画面等を表示する液晶ディスプレイ15と、経路案内に関する音声ガイダンスを出力するスピーカ16と、記憶媒体であるDVDを読み取るDVDドライブ17と、プローブセンタやVICS(登録商標:Vehicle Information and Communication System)センタ等の情報センタとの間で通信を行う通信モジュール18と、から構成されている。
【0031】
以下に、ナビゲーション装置1を構成する各構成要素について順に説明する。
現在位置検出部11は、GPS21、車速センサ22、ステアリングセンサ23、ジャイロセンサ24等からなり、現在の車両の位置、方位、車両の走行速度、現在時刻等を検出することが可能となっている。ここで、特に車速センサ22は、車両の移動距離や車速を検出する為のセンサであり、車両の駆動輪の回転に応じてパルスを発生させ、パルス信号をナビゲーションECU13に出力する。そして、ナビゲーションECU13は発生するパルスを計数することにより駆動輪の回転速度や移動距離を算出する。尚、上記5種類のセンサをナビゲーション装置1が全て備える必要はなく、これらの内の1又は複数種類のセンサのみをナビゲーション装置1が備える構成としても良い。
【0032】
また、データ記録部12は、外部記憶装置及び記録媒体としてのハードディスク(図示せず)と、ハードディスクに記録された地図情報DB31や処理負担規定テーブル32や所定のプログラム等を読み出すとともにハードディスクに所定のデータを書き込む為のドライバである記録ヘッド(図示せず)とを備えている。尚、データ記録部12をハードディスクの代わりにメモリーカードやCDやDVD等の光ディスクにより構成しても良い。また、データ記録部12にはVICSセンタから取得したVICS情報や過去の道路の渋滞に関する統計データについても記憶される。
【0033】
ここで、地図情報DB31は、例えば、道路(リンク)に関するリンクデータ、ノード点に関するノードデータ、施設等の地点に関する地点データ、地図を表示するための地図表示データ、各交差点に関する交差点データ、経路を探索するための探索データ、地点を検索するための検索データ等が記憶された記憶手段である。
【0034】
また、処理負担規定テーブル32は、ナビゲーション装置1で実施される機能毎に、プロセッサ(CPU、GPU等)の処理負担値を示したデーブルである。尚、処理負担値は、例えばMIPS値によって特定される。MIPS値は、コンピュータの処理能力を表す単位であり、コンピュータが1秒間に何百万回命令を実行できるかを示す値である。また、処理負担規定テーブル32は、液晶ディスプレイ15に表示される地図の縮尺(1/1250〜1/2048万までの16段階)毎の処理負担値(即ち、縮尺毎に該縮尺で地図画像61を液晶ディスプレイ15に表示した状態で各機能が実施された場合におけるプロセッサの処理負担値)を示す。
【0035】
例えば、図2は表示される地図の縮尺が1/1万と1/8万に対応する処理負担規定テーブル32をそれぞれ示した図である。図2に示すように機能毎の処理負担値は地図画像の表示縮尺毎に予め決まっており、例えば1/1万の地図を表示した状態においては、施設等の地点(駐車場、ガソリンスタンド、レストラン、コンビニエンスストア等)に関するPOI(地点を示すマークや名称等)を地図画像上に表示する「POI表示機能」の処理負担は200(MIPS)であり、VICS情報を地図画像上に表示する「VICS表示機能」の処理負担は150(MIPS)であり、過去の統計データに基づく渋滞予測を地図画像上に表示する「統計データ表示機能」の処理負担は300(MIPS)である。一方、1/8万の地図を表示した状態においては、「POI表示機能」の処理負担は100(MIPS)であり、「VICS表示機能」の処理負担は300(MIPS)であり、「統計データ表示機能」の処理負担は600(MIPS)である。尚、上記のように液晶ディスプレイ15に表示される地図の縮尺によって処理負担が変化するのは、縮尺によって表示対象となる地図データのエリアやリンクが異なる為である。例えば、縮尺が小さくなると、表示対象となるエリアが広くなり、VICS情報が表示される対象となる主要道路も多くなる。従って、「VICS情報機能」の処理負担は大きくなる。同じく、縮尺が小さくなると、表示対象となるエリアが広くなり、過去の統計データに基づく渋滞予測を表示する対象となる道路も多くなる。従って、「統計データ表示機能」の処理負担についても大きくなる。一方、縮尺が小さくなると、表示対象となる地図データのエリアが広くなるが、表示対象となるPOIは一部の主要なPOIを除いて非表示となる(間引かれる)こととなる。従って、「POI表示機能」の処理負担は小さくなる。
そして、後述のようにナビゲーションECU13は、処理負担規定テーブル32を用いてスクロール速度の改善の為の案内を行う。
【0036】
一方、ナビゲーションECU(エレクトロニック・コントロール・ユニット)13は、ナビゲーション装置1の全体の制御を行う電子制御ユニットであり、演算装置及び制御装置としてのCPU51、並びにCPU51が各種の演算処理を行うにあたってワーキングメモリとして使用されるとともに、経路が探索されたときの経路データ等が記憶されるRAM52、制御用のプログラムのほか、後述のスクロール表示処理プログラム(図7参照)等が記録されたROM53、ROM53から読み出したプログラムを記憶するフラッシュメモリ54等の内部記憶装置を備えている。また、ナビゲーション装置1は、プロセッサとしてCPU51に加え、CPU51と一体又は別体に設けられ、画像処理に関する各種処理を主に実行するGPU(図示せず)についても備える。尚、ナビゲーションECU13は、図3に示す処理アルゴリズムとしての各種手段を構成する。例えば、案内経路設定手段35は、出発地から目的地までの案内経路を設定する。操作受付手段36は、ユーザの操作を受け付け、スクロール表示手段37は、受け付けたユーザの操作に基づいて、液晶ディスプレイ15に表示された画像(例えば地図画像)を液晶ディスプレイ15においてスクロール表示する。スクロール速度理論値取得手段38は、スクロール表示手段37による画像のスクロール速度のユーザの操作に対応したスクロール速度理論値を取得し、スクロール速度実測値取得手段39は、スクロール表示手段37による画像のスクロール速度の実測値をスクロール速度実測値として取得する。速度比較手段40は、スクロール速度理論値とスクロール速度実測値を比較し、案内手段41は、速度比較手段40による比較結果に基づいて、ナビゲーション装置1で実施されている機能名を案内する。処理負担値取得手段42は、ナビゲーション装置1で実施される機能毎に、該機能が実施された場合におけるナビゲーション装置1の処理負担値を取得し、地図画像表示手段43は、液晶ディスプレイ15に画像として地図画像を所定の縮尺で表示し、縮尺取得手段44は、液晶ディスプレイ15に表示されている地図画像の縮尺を取得する。また、機能選択手段45は、案内手段41によって案内された機能名を選択し、機能停止手段46は、機能選択手段45によって選択された機能名に対応する機能をナビゲーション装置1において停止する。また、操作判定手段47は、スクロール表示手段37による画像のスクロール速度を改善する為の操作を受け付けたか否か判定する。
【0037】
タッチパネル14は、液晶ディスプレイ15の表示領域の前面に配置され、地図画像のスクロール表示を行う場合や表示領域に配置されたボタンを選択する場合等に操作される。そして、ナビゲーションECU13は、タッチパネル14の操作によりタッチパネル14から出力される検出信号に基づき、タッチパネル14にユーザがタッチしていない状態からタッチした状態へと移行する“タッチオン”や、タッチパネル14にユーザがタッチした状態からタッチしていない状態へと移行する“タッチオフ”を検出する。また、ユーザがタッチした地点の座標である“タッチ座標”や“タッチ座標の変位”についても検出する。そして、ナビゲーションECU13は、検出したタッチ操作やタッチ座標等に対応する各種の動作を実行すべく制御を行う。
【0038】
また、液晶ディスプレイ15には、道路を含む地図画像、交通情報、操作案内、操作メニュー、キーの案内、出発地から目的地までの走行予定経路、走行予定経路に沿った案内情報、ニュース、天気予報、時刻、メール、テレビ番組等が表示される。また、地点検索を行った場合に検索された地点に関する情報を表示する際にも用いられる。ここで、図4は車両の走行中において液晶ディスプレイ15に表示される走行案内画面60の一例を示した図である。
【0039】
図4に示すように液晶ディスプレイ15に表示される走行案内画面60には、車両の現在位置周辺の地図画像61と、地図上にマッチングされた車両の現在位置を示す自車位置マーク62と、地図の表示エリアの中央位置を特定する中央カーソル63と、ナビゲーション装置1で所定機能を実行させる為に選択される為の各種ボタン64〜68とが表示される。また、地図画像61には、施設等の地点(駐車場、ガソリンスタンド、レストラン、コンビニエンスストア等)に関するPOI70、VICSセンタから取得したVICS情報に基づく渋滞度を示すVICS渋滞マーク71、過去の統計データに基づく渋滞予測を示す統計渋滞マーク72が表示される。尚、POI70は、駐車場、ガソリンスタンド、レストラン、コンビニエンスストア等の地点を示すマークから形成され、該地点が位置する座標に表示される。また、VICS渋滞マーク71は、VICS情報により特定された各道路区間の渋滞度を“渋滞”、“混雑”、“空き”のいずれかに特定するマークである。また、統計渋滞マーク72は、過去の統計データにより予測される各道路区間の渋滞度を“渋滞”、“混雑”、“空き”のいずれかに特定するマークである。尚、VICS渋滞マーク71は主に主要道路に表示され、統計渋滞マーク72は主にVICS情報の対象外となる道路に表示される。尚、図4では1/1万の縮尺で地図を表示した場合の走行案内画面60を示している。そして、ユーザは走行案内画面60を参照することによって、現在の車両周辺の地点情報や道路形状(案内経路が設定されている場合には案内経路を含む)や渋滞状況等を把握することが可能となる。また、詳細ボタン64をタッチオンして選択すると、地図の縮尺をより大きい縮尺(例えば1/5000の縮尺)に変更することが可能である。また、表示変更ボタン65をタッチオンして選択すると、地図画像61の表示態様(鳥瞰図、平面図、ノーズアップ、ノースアップ等)を変更することが可能である。また、目的地セットボタン66をタッチオンして選択すると、中央カーソル63の示す地点を目的地に設定することが可能である。また、地点登録ボタン67をタッチオンして選択すると、中央カーソル63の示す地点を登録地点としてナビゲーション装置1に登録することが可能である。また、広域ボタン68をタッチオンして選択すると、地図の縮尺をより小さい縮尺(例えば1/2万の縮尺)に変更することが可能である。
【0040】
また、走行案内画面60が表示されている場合に、ユーザが走行案内画面60に表示されているエリア外の施設や道路形状を把握することを希望する場合がある。その場合には、地図の縮尺をより小さな縮尺に変更することも可能であるが、地図画像をスクロール表示することも可能である。ここで、地図画像のスクロール表示を行わせる処理には、地図画像を選択して所定方向にドラッグする操作を受け付けた場合に、受け付けたドラッグ操作に応じて地図画像をスクロールさせる処理以外に、ワンタッチスクロール処理や連続スクロール処理が存在する。
【0041】
先ず、ワンタッチスクロール処理について説明する。ワンタッチスクロール処理は、ユーザが液晶ディスプレイ15の地図画像61の表示領域のいずれかの箇所を所定時間(例えば1sec)未満の間のみタッチ状態となったことをCPU51が検出した場合に実行される。そして、CPU51は、先ず図5に示すようにユーザがタッチした地点Xの座標を取得する。次に、取得した地点Xの座標が地図画像61の表示エリアの中央位置となるように地図画像61を矢印72方向に所定距離だけスクロールする。その結果、ユーザがタッチした地点Xを表示エリアの中央位置とした地図画像61が液晶ディスプレイ15に新たに表示される。
【0042】
次に、連続スクロール処理について説明する。連続スクロール処理は、ユーザが液晶ディスプレイ15の地図画像61の表示領域のいずれかの箇所を所定時間(例えば1sec)以上継続してタッチ状態にあることをCPU51が検出した場合に実行される。そして、連続スクロール処理は、液晶ディスプレイ15の表示画面においてユーザのタッチした座標によってスクロール方向(8方向のいずれか)とスクロール速度(低速、高速のいずれか)が決定される。ここで、図6に示すように第1実施形態では、液晶ディスプレイ15の表示領域は、16個のエリア75〜90に区分される。そして、エリア75、76にユーザがタッチしたことを検出した場合には、地図を矢印95方向へスクロールする。同様に、エリア77、78にユーザがタッチしたことを検出した場合には、地図を矢印96方向へスクロールする。エリア79、80にユーザがタッチしたことを検出した場合には、地図を矢印97方向へスクロールする。エリア81、82にユーザがタッチしたことを検出した場合には、地図を矢印98方向へスクロールする。エリア83、84にユーザがタッチしたことを検出した場合には、地図を矢印99方向へスクロールする。エリア85、86にユーザがタッチしたことを検出した場合には、地図を矢印100方向へスクロールする。エリア87、88にユーザがタッチしたことを検出した場合には、地図を矢印101方向へスクロールする。エリア89、90にユーザがタッチしたことを検出した場合には、地図を矢印102方向へスクロールする。また、中心に近いエリア75、77、79、81、83、85、87、89にタッチしたことを検出した場合より外側のエリア76、78、80、82、84、86、88、90にタッチしたことを検出した場合の方が、より高速のスクロール速度の理論値(以下、スクロール速度理論値という)が設定されている。尚、スクロール速度理論値は、設計段階において予め想定されたスクロール速度の値であり、プロセッサの処理性能に余裕がある場合においてスクロール表示処理を行う場合に実現される。そして、スクロール表示処理の種類毎(特に連続スクロール操作に基づくスクロール表示ではタッチされるエリア毎、ドラッグスクロール操作に基づくスクロール表示ではドラッグ速度毎)のスクロール速度理論値が、RAM52等に記憶されている。
【0043】
また、スピーカ16は、ナビゲーションECU13からの指示に基づいて案内経路に沿った走行を案内する音声ガイダンスや、交通情報の案内を出力する。また、施設検索を行った場合に検索された施設に関する情報を出力する際にも用いられる。
【0044】
また、DVDドライブ17は、DVDやCD等の記録媒体に記録されたデータを読み取り可能なドライブである。そして、読み取ったデータに基づいて音楽や映像の再生、地図情報DB31の更新等が行われる。
【0045】
また、通信モジュール18は、交通情報センタ、例えば、VICSセンタやプローブセンタ等から送信された渋滞情報、規制情報、交通事故情報等の各情報から成る交通情報を受信する為の通信装置であり、例えば携帯電話機やDCMが該当する。
【0046】
続いて、前記構成を有するナビゲーション装置1においてナビゲーションECU13が実行するスクロール表示処理プログラムについて図7に基づき説明する。図7は本実施形態に係るスクロール表示処理プログラムのフローチャートである。ここで、スクロール表示処理プログラムは、車両のACCがオンされた後に実行され、ユーザから受け付けた操作に基づいて走行案内画面60に表示された地図画像61をスクロール表示するとともに、スクロール速度が一定基準未満となった場合にはナビゲーション装置1で実施されている機能名を案内するプログラムである。尚、以下の図7にフローチャートで示されるプログラムは、ナビゲーション装置1が備えているRAM52やROM53に記憶されており、CPU51やGPU(以下、CPU51等と称する)により実行される。
【0047】
先ず、スクロール表示処理プログラムではステップ(以下、Sと略記する)1において、CPU51等は車両に関する情報を取得する。尚、前記S1で取得される車両情報としては、例えば現在位置検出部11によって検出される車両の現在位置、方位等がある。
【0048】
次に、S2においてCPU51等は、液晶ディスプレイ15に対して走行案内画面60(図4)を表示する。尚、走行案内画面60には、前記したように車両の現在位置周辺の地図画像61に加えて、地図画像61に重畳してPOI70、VICS渋滞マーク71、統計渋滞マーク72についても表示される。具体的に前記S2においてCPU51等は、前記S1で取得した車両の現在位置、方位とナビゲーション装置1で設定されている地図の縮尺とに基づいて、表示対象となるエリアの地図データを地図情報DB31から読み出し、読み出した地図データに基づく地図画像61を液晶ディスプレイ15に対して描画する。同様に、表示対象となるエリア内に含まれる地点データを地図情報DB31から読み出して、読み出した地点データに基づいてPOI70を描画する(POI表示機能)。また、表示対象となるエリア内に含まれるVICS情報をデータ記録部12から読み出して、読み出したVICS情報に基づいてVICS渋滞マーク71を描画する(VICS表示機能)。また、表示対象となるエリア内に含まれる道路の過去の渋滞に関する統計データをデータ記録部12から読み出して、読み出した統計データに基づいて統計渋滞マーク72を描画する(統計データ表示機能)。
【0049】
続いて、S3においてCPU51等は、タッチパネル14から送信される検出信号に基づいて、液晶ディスプレイ15に表示された地図画像61をスクロール表示させる為のスクロール操作を受け付けたか否かを判定する。具体的にCPU51等は、タッチパネル14をタッチした地点の座標であるタッチ座標やタッチ座標の変位に基づいて判定する。尚、地図画像61をスクロール表示させる為のスクロール操作としては、前記したように地図画像61をドラッグする操作(以下、ドラッグスクロール操作という)や、液晶ディスプレイ15の地図画像61の表示領域のいずれかの箇所を所定時間(例えば1sec)未満の間のみタッチ状態とする操作(以下、ワンタッチスクロール操作という)、液晶ディスプレイ15の地図画像61の表示領域のいずれかの箇所を所定時間以上継続してタッチ状態とする操作(以下、連続スクロール操作という)等がある。
【0050】
そして、液晶ディスプレイ15に表示された地図画像61をスクロール表示させる為のスクロール操作を受け付けたと判定された場合(S3:YES)には、S4へと移行する。それに対して、液晶ディスプレイ15に表示された地図画像61をスクロール表示させる為のスクロール操作を受け付けていないと判定された場合(S3:NO)には、地図画像61のスクロール表示を行うことなく当該スクロール表示処理プログラムを終了する。
【0051】
S4においてCPU51等は、受け付けたユーザのスクロール操作に基づいて、液晶ディスプレイ15に表示された地図画像61を所定方向に所定速度でスクロール表示する。例えば、スクロール操作としてドラッグスクロール操作を受け付けた場合には、ドラッグ中のタッチ座標の変位と変位量に基づく速度と方位で地図画像61をスクロール表示する。また、スクロール操作としてワンタッチスクロール操作を受け付けた場合には、タッチ座標に基づく方位へ予め設定された速度で地図画像61をスクロール表示する(図5参照)。また、スクロール操作として連続スクロール操作を受け付けた場合には、タッチ座標の属するエリアに対応づけられた方位と速度で地図画像61をスクロール表示する(図6参照)。尚、地図画像61のスクロール表示は、受け付けたスクロール操作に対応するスクロール速度の理論値で基本的にスクロールされる。但し、ナビゲーション装置1においてスクロール表示以外に複数の機能が実施されることによって、プロセッサの処理性能が要求に対して不足する状態となっていると、処理を一部省略する、あるいは処理完了時刻が遅れる所謂処理落ちが発生する場合がある。その結果、スクロール速度の実測値が理論値よりも遅くなる場合がある。
【0052】
続いて、S5においてCPU51等は、現在ナビゲーション装置1で実施されている地図画像61のスクロール表示について、スクロール速度の理論値(スクロール速度理論値)を取得する。尚、スクロール速度理論値は、スクロール表示処理の種類毎(特に連続スクロール操作に基づくスクロール表示ではタッチされるエリア毎、ドラッグスクロール操作に基づくスクロール表示ではドラッグ速度毎)の値がRAM52に記憶されている。
【0053】
その後、S6においてCPU51等は、現在ナビゲーション装置1で実施されている地図画像61のスクロール表示について、スクロール速度の実測値(スクロール速度実測値)を取得する。
【0054】
次に、S7においてCPU51等は、前記S5で取得したスクロール速度理論値と前記S6で取得したスクロール速度実測値とを比較する。本実施形態においては、スクロール速度理論値に対するスクロール速度実測値の割合(以下、スクロール速度割合という)を算出する。
【0055】
続いて、S8においてCPU51等は、前記S7で算出されたスクロール速度割合が、所定の第1所定値未満であるか否か判定する。尚、第1所定値は例えば70%とする。
【0056】
そして、スクロール速度割合が第1所定値未満であると判定された場合(S8:YES)には、S9へと移行する。それに対して、スクロール速度割合が第1所定値以上であると判定された場合(S8:NO)には、スクロール速度を改善するユーザの要望は無いと推定し、スクロール速度の改善を導く案内を行うことなく当該スクロール表示処理プログラムを終了する。
【0057】
S9においてCPU51等は、前記S7で算出されたスクロール速度割合が、所定の第2所定値未満であるか否か判定する。尚、第2所定値は例えば40%とする。
【0058】
そして、スクロール速度割合が第2所定値未満であると判定された場合(S9:YES)には、スクロール速度を改善するユーザの要望があると推定し、S11へと移行する。それに対して、スクロール速度割合が第2所定値以上であると判定された場合(S9:NO)には、S10へと移行する。尚、上記S7〜S9が比較手段に相当する。
【0059】
S10においてCPU51等は、現在ナビゲーション装置1で実施されている地図画像61のスクロール表示について、地図画像61のスクロール速度を改善する為の操作を受け付けたか否か判定する。ここで、地図画像61のスクロール速度を改善する為の操作とは、例えば、スクロール操作を行う際に、所定量以上の弱から強への圧力変化を伴う操作や、連続スクロール操作中においてタッチされる領域を中心に近いエリア75、77、79、81、83、85、87、89(図6参照)から外側のエリア76、78、80、82、84、86、88、90へと変更する操作等が該当する。尚、同じエリアであってもより外側にタッチ座標が移行したことを検出した場合にも、地図画像61のスクロール速度を改善する為の操作を受け付けたと判定しても良い。また、スクロール速度の調整ボタンをナビゲーション装置1が備える場合には、スクロール速度をより速くするボタン操作がなされた場合にも、地図画像61のスクロール速度を改善する為の操作を受け付けたと判定しても良い。このような操作がユーザによって行われる場合は、ユーザがスクロール速度を改善したい要望があると推定される。
【0060】
従って、地図画像61のスクロール速度を改善する為の操作を受け付けたと判定された場合(S10:YES)には、スクロール速度を改善するユーザの要望があると推定し、S11へと移行する。それに対して、地図画像61のスクロール速度を改善する為の操作を受け付けていないと判定された場合(S10:NO)には、スクロール速度を改善するユーザの要望は無いと推定し、スクロール速度の改善を導く案内を行うことなく当該スクロール表示処理プログラムを終了する。
【0061】
S11においてCPU51等は、現在ナビゲーション装置1で設定されている地図の縮尺を取得する。尚、CPU51等は液晶ディスプレイ15において地図画像61を表示する場合に、現在設定されている地図の縮尺で地図画像61を表示する(S2)。また、地図の縮尺は詳細ボタン64や広域ボタン68(図4参照)を操作することにより変更可能に構成され、現在設定されている地図の縮尺はRAM52等に記憶されている。
【0062】
次に、S12においてCPU51等は、処理負担規定テーブル32(図2)を参照し、前記S11で取得した地図の縮尺に応じたプロセッサ(CPU51、GPU等)の処理負担値を、ナビゲーション装置1で実施される機能毎に取得する。即ち、前記S12でCPU51等は、ナビゲーション装置1で設定された縮尺により地図画像61を液晶ディスプレイ15に表示した状態で、各機能が実施された場合におけるプロセッサの処理負担値を取得する。
【0063】
続いて、S13においてCPU51は、前記S12で取得した処理負担値に基づいて、現在ナビゲーション装置1で実施されている各機能について、該機能を停止した場合のスクロール速度の改善度を算出する。
【0064】
その後、S14においてCPU51は、前記S13で算出された各機能の改善度に基づいて、現在ナビゲーション装置1で実施されている各機能の内、該機能を停止した場合のスクロール速度の改善度が高い順に所定数(例えば3個)の機能名を、液晶ディスプレイ15にリスト表示する。また、機能名とともにスクロール速度の改善度についても表示する。
【0065】
ここで、図8は地図の縮尺が1/1万に設定された状態で、前記S14において機能名及び改善度が表示された走行案内画面60を示した図である。図8に示すように、走行案内画面60には、ウィンドウ110が新たに表示される。そして、ウィンドウ110には、改善度が高い順に所定数(図8では3個)の機能名とスクロール速度の改善度(図8に示す例では特にスクロール速度の改善率)が表示される。その結果、ユーザはウィンドウ110の表示内容を参照することによって、ナビゲーション装置1で現在実施されている機能の内、スクロール速度が低下する原因となっている機能と、その機能を停止した場合にスクロール速度がどの程度改善されるのかを把握することが可能となる。尚、地図の縮尺が1/1万の場合において、ナビゲーション装置1で“POI表示機能”、“VICS表示機能”、“統計データ表示機能”がそれぞれ実施されている場合には、各機能の処理負担は図2に示すように“VICS表示機能”、“POI表示機能”、“統計データ表示機能”の順に高くなる。従って、“統計データ表示機能”、“POI表示機能”、“VICS表示機能”の順に機能名がウィンドウ110に表示されることとなる。
また、ウィンドウ110には、表示された各機能名に隣接して機能停止ボタン111について表示される。そして、ユーザは機能停止ボタン111を操作することによって、後述のようにウィンドウ110に機能名が表示された機能を選択的に停止することが可能となる。
【0066】
一方、図9は地図の縮尺が1/8万に設定された状態で、前記S14において機能名及び改善度が表示された走行案内画面60を示した図である。図2に示すように地図の縮尺が1/8万に設定された場合には、地図の縮尺が1/1万に設定された場合よりも地図データの表示エリアが広がり、VICS渋滞マーク71や統計渋滞マーク72の描画量も増加する。一方、POI70については一部の主要なPOI70を除いて非表示となるのでPOI70の描画量は減少する。そして、地図の縮尺が1/8万の場合において、ナビゲーション装置1で“POI表示機能”、“VICS表示機能”、“統計データ表示機能”がそれぞれ実施されている場合には、各機能の処理負担は図2に示すように“POI表示機能”、“VICS表示機能”、“統計データ表示機能”の順に高くなる。従って、“統計データ表示機能”、“VICS表示機能”、“POI表示機能”の順に機能名がウィンドウ110に表示されることとなる。
【0067】
その後、S15においてCPU51等は、タッチパネル14から送信される検出信号に基づいて、前記S14で機能名が表示された機能を停止させる操作を受け付けたか否かを判定する。具体的には、液晶ディスプレイ15に機能名に隣接して新たに表示された機能停止ボタン111(図8)が押下されたか否かに基づいて判定する。
【0068】
そして、前記S14で機能名が表示された機能を停止させる操作を受け付けたと判定された場合(S15:YES)、即ち、液晶ディスプレイ15に表示された機能停止ボタン111が押下されたと判定された場合には、S16へと移行する。それに対して、前記S14で機能名が表示された機能を停止させる操作を受け付けていないと判定された場合(S15:NO)には、当該スクロール表示処理プログラムを終了する。
【0069】
S16においてCPU51等は、押下された機能停止ボタン111に対応する機能を停止させる。その結果、プロセッサの処理負担は軽減し、地図画像61のスクロール速度が上昇する。尚、選択された機能を停止させる期間は、所定期間(例えば10秒)でも良いし、機能の再開がユーザによって選択されるまでの期間としても良い。また、ACCがオフされるまで停止させることとしても良い。
【0070】
ここで、図10は、図8における走行案内画面60において、前記S16において機能の停止が選択された後の走行案内画面60を示した図である。尚、図10に示す例では、特に過去の統計データに基づく渋滞予測を表示する「統計データ表示機能」を停止することが選択された場合を示す。そして、図10に示すように、「統計データ表示機能」がユーザの選択に基づいて停止されると、統計データに基づく予測渋滞度を示していた統計渋滞マーク72が消去される。その結果、渋滞度の演算処理や統計渋滞マーク72の描画処理に関するプロセッサの負担が軽減されることとなり、地図画像61のスクロール速度が上昇する。
【0071】
以上詳細に説明した通り、本実施形態に係るナビゲーション装置1、ナビゲーション装置1による表示処理方法及びナビゲーション装置1で実行されるコンピュータプログラムでは、液晶ディスプレイ15に対して車両周辺の地図画像61を表示する(S2)とともに、地図画像61をスクロール表示させる操作を受け付けた場合には、地図画像61をスクロール表示する(S4)一方、スクロール速度の理論値と実測値をそれぞれ取得し(S5、S6)、スクロール速度の理論値に対する実測値の割合を算出し(S7)、算出された割合が第2割合未満である場合に、ナビゲーション装置1で実施されている機能の内、スクロール速度が理論値に対して低下する原因となっている機能の機能名を案内する(S14)ので、地図画像61のスクロール表示を行う場合に、スクロール速度が理論値に対して低下する原因となっている機能の機能名を、ユーザがスクロール速度の改善を要望する状況で案内することが可能となる。その結果、適切な方法によるスクロール速度の改善を導くことが可能となる。
また、地図画像61のスクロール表示中のスクロール速度の実測値が理論値に対して大きく低下している状況で、スクロール速度が低下する原因となる機能の機能名を案内するので、ユーザがスクロール速度の改善を要望する状況を適切に把握することが可能となる。また、ユーザが案内を不要としている状況で機能名の案内が行われることがないので、不要な案内によって地図画像61の視認を妨げる虞が無い。
また、タッチパネル14を用いた操作の操作内容に基づいて地図画像61のスクロール表示におけるスクロール方向や速度が選択されるので、ユーザの意図を反映した自由度の高い地図画像61のスクロール表示を行うことが可能となる。また、受け付けたタッチパネル14の操作に基づいて、ユーザの操作に対応したスクロール速度の理論値を適切に特定することが可能となる。
また、機能名を案内する際には、ナビゲーション装置1で実施されている機能を停止した場合のスクロール速度の改善度についても機能毎に案内するので、案内された機能毎に該機能を停止した場合にスクロール速度がどの程度改善されるのかをユーザに把握させることが可能となる。
また、ナビゲーション装置1で表示される地図の縮尺を考慮して機能を停止した場合の改善度を算出するので、改善度のより正確な値を算出することが可能となる。
また、ナビゲーション装置1で実施されている機能の内、該機能を停止した場合のスクロール速度の改善度が高い順に所定数の機能名をリスト表示するので、ナビゲーション装置1で実施されている機能が多数ある場合であっても、スクロール速度を改善する為に有効な情報となる機能名をユーザに理解し易く案内することが可能となる。また、案内される情報量を制限できるので、不要な案内によって画像の視認を妨げる虞が無い。
また、案内された機能名の内、ユーザにより選択された機能名に対応する機能が停止される(S16)ので、機能の停止に基づいてナビゲーション装置1の処理負担を軽減させ、地図画像61のスクロール速度を向上させることが可能となる。
また、スクロール速度の理論値に対する実測値の割合が第2割合以上であっても、地図画像61のスクロール速度を改善する為の操作を受け付けたと判定された場合には機能名を案内するので、ユーザがスクロール速度の改善を要望する状況を、ユーザから受け付けた操作に基づいてより正確に特定することができる。従って、ユーザがスクロール速度の改善を要望する状況で、より確実にスクロール速度が理論値に対して低下する原因となっている機能の機能名を案内することが可能となる。
【0072】
尚、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることは勿論である。
例えば、本実施形態では処理負担規定テーブル32(図2)において機能毎のプロセッサの処理負担値を規定し、処理負担規定テーブル32に規定された機能毎のプロセッサの処理負担値を用いてスクロール速度の改善度を算出する(S13)構成としているが、プロセッサ以外のハード資源の負担値に基づいてスクロール速度の改善度を算出する構成としても良い。例えば、機能毎のワークメモリの使用量を用いても良い。また、機能毎のプロセッサの処理負担値は、予めテーブルとして記憶するのではなく、CPUが現在の使用状況から算出する構成としても良い。
【0073】
また、本実施形態ではスクロール表示を行った場合に、スクロール速度が理論値に対して低下する原因となっている機能を案内する構成としているが、スクロール表示以外の処理を行う際に適用しても良い。例えば、スクロール表示以外の処理を行っている状況で、該処理のパラメータが低下する原因となっている機能を案内する構成としても良い。
【0074】
また、本実施形態ではナビゲーション装置1が実施する機能として、POI表示機能、VICS表示機能、統計データ表示機能を例に挙げて説明したが、上記機能以外の機能の機能名を案内したり、選択的に停止させることも可能である。例えば、通信処理、オーディオの再生処理、案内経路に沿った走行案内処理等がある。
【0075】
また、本実施形態では、第1割合を70%とし、第2割合を40%としているが、第1割合>第2割合を満たす範囲であれば、他の値を用いても良い。また、S9及びS10の判定処理については省略しても良い。
【0076】
また、本実施形態では、スクロール速度理論値に対するスクロール速度実測値の割合が所定値未満である場合に、ナビゲーション装置1で実施されている機能名の案内を行うように構成されているが、スクロール速度理論値とスクロール速度実測値の差分が所定値以上である場合に、ナビゲーション装置1で実施されている機能名の案内を行うように構成しても良い。
【0077】
また、本実施形態ではスクロール速度の改善度を案内する場合に、改善率(%)を具体的な数値で案内しているが、他の案内態様を用いても良い。例えば、「大・中・小」の3段階で改善度を案内しても良い。
【0078】
また、S15及びS16の処理を行わずに、スクロール速度が理論値に対して低下する原因となっている機能を案内するまでの構成としても良い。
【0079】
また、本願発明はナビゲーション装置以外に、画像をスクロール表示させる機能を備える装置に対して適用することが可能である。例えば、携帯電話機等の携帯端末、パーソナルコンピュータ、携帯型音楽プレイヤ等に適用することも可能である。また、ユーザの操作を受け付ける手段としては、タッチパネル以外の手段を用いても良い。例えば、キーボードやマウス等を用いても良い。
【符号の説明】
【0080】
1 ナビゲーション装置
13 ナビゲーションECU
14 タッチパネル
15 液晶ディスプレイ
32 処理負担規定テーブル
51 CPU
52 RAM
53 ROM
60 走行案内画面
61 地図画像
70 POI
71 VICS渋滞マーク
72 統計渋滞マーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各種プログラムを実行することによって複数種類の機能を実施可能に処理する表示処理装置において、
画像を表示する表示装置と、
ユーザの操作を受け付ける操作受付手段と、
前記操作受付手段により受け付けた前記ユーザの操作に基づいて、前記表示装置に表示された前記画像を前記表示装置においてスクロール表示するスクロール表示手段と、
前記スクロール表示手段による前記画像のスクロール速度の前記ユーザの操作に対応したスクロール速度理論値を取得するスクロール速度理論値取得手段と、
前記スクロール表示手段による前記画像のスクロール速度の実測値をスクロール速度実測値として取得するスクロール速度実測値取得手段と、
前記スクロール速度理論値と前記スクロール速度実測値を比較する速度比較手段と、
前記速度比較手段による比較結果に基づいて、前記表示処理装置で実施されている機能名を案内する案内手段と、を有することを特徴とする表示処理装置。
【請求項2】
前記速度比較手段は、前記スクロール速度理論値に対する前記スクロール速度実測値の割合を算出し、
前記案内手段は、前記割合算出手段によって算出された前記割合が所定値未満の場合に前記機能名を案内することを特徴とする請求項1に記載の表示処理装置。
【請求項3】
前記表示装置の表示領域の前面に配置されたタッチパネルを有し、
前記表示装置の表示領域は、複数の領域から構成されるとともに、各領域に対して前記スクロール速度理論値がそれぞれ対応付けられ、
前記操作受付手段は、前記タッチパネルにおけるユーザの操作を受け付け、
前記スクロール速度理論値取得手段は、前記タッチパネルに対してユーザがタッチした座標を含む前記領域に対応付けられた前記スクロール速度理論値を取得することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の表示処理装置。
【請求項4】
前記表示処理装置で実施される前記機能毎に、該機能が実施された場合における前記表示処理装置の処理負担値を取得する処理負担値取得手段を有し、
前記案内手段は、前記処理負担値取得手段により取得した前記機能毎の処理負担値に基づいて、前記表示処理装置で実施されている前記機能を停止した場合の前記スクロール速度の改善度を、前記表示処理装置で実施されている前記機能毎に案内することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の表示処理装置。
【請求項5】
前記表示装置に前記画像として地図画像を所定の縮尺で表示する地図画像表示手段と、
前記表示装置に表示されている前記地図画像の縮尺を取得する縮尺取得手段と、を有し、
前記処理負担値取得手段は、前記表示処理装置で実施される前記機能毎に、前記縮尺取得手段で取得した前記縮尺により前記地図画像を前記表示装置に表示した状態で該機能が実施された場合における前記表示処理装置の処理負担値を取得することを特徴とする請求項4に記載の表示処理装置。
【請求項6】
前記案内手段は、前記表示処理装置で実施されている前記機能の内、該機能を停止した場合の前記スクロール速度の改善度が高い順に所定数の前記機能名を、前記表示装置に対してリスト表示することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の表示処理装置。
【請求項7】
前記案内手段によって案内された前記機能名を選択する機能選択手段と、
前記機能選択手段によって選択された前記機能名に対応する機能を前記表示処理装置において停止する機能停止手段と、を有することを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の表示処理装置。
【請求項8】
前記操作受付手段において前記スクロール表示手段による前記画像のスクロール速度を改善する為の操作を受け付けたか否か判定する操作判定手段を有し、
前記案内手段は、前記操作判定手段によって前記画像のスクロール速度を改善する為の操作を受け付けたと判定された場合に前記機能名を案内することを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の表示処理装置。
【請求項9】
各種プログラムを実行することによって複数種類の機能を実施可能に処理する表示処理装置の表示処理方法であって、
ユーザの操作を受け付ける操作受付ステップと、
前記操作受付ステップにより受け付けた前記ユーザの操作に基づいて、画像を表示する表示装置に表示された前記画像を前記表示装置においてスクロール表示するスクロール表示ステップと、
前記スクロール表示ステップによる前記画像のスクロール速度の前記ユーザの操作に対応したスクロール速度理論値を取得するスクロール速度理論値取得ステップと、
前記スクロール表示ステップによる前記画像のスクロール速度の実測値をスクロール速度実測値として取得するスクロール速度実測値取得ステップと、
前記スクロール速度理論値と前記スクロール速度実測値を比較する速度比較ステップと、
前記速度比較ステップの比較結果に基づいて、前記表示処理装置で実施されている機能名を案内する案内ステップと、を有することを特徴とする表示処理方法。
【請求項10】
各種プログラムをプロセッサに実行することによって複数種類の機能を実施可能に処理する表示処理装置に搭載され、
ユーザの操作を受け付ける操作受付機能と、
前記操作受付ステップにより受け付けた前記ユーザの操作に基づいて、画像を表示する表示装置に表示された前記画像を前記表示装置においてスクロール表示するスクロール表示機能と、
前記スクロール表示機能による前記画像のスクロール速度の前記ユーザの操作に対応したスクロール速度理論値を取得するスクロール速度理論値取得機能と、
前記スクロール表示機能による前記画像のスクロール速度の実測値をスクロール速度実測値として取得するスクロール速度実測値取得機能と、
前記スクロール速度理論値と前記スクロール速度実測値を比較する速度比較機能と、
前記速度比較機能による比較結果に基づいて、前記表示処理装置で実施されている機能名を案内する案内機能と、
をプロセッサに実行させることを特徴とするコンピュータプログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2012−68909(P2012−68909A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−213380(P2010−213380)
【出願日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】