説明

表示素子の製造方法、表示素子の製造装置、及び表示素子

【課題】高精度な駆動回路又は薄膜トランジスタを可撓性の基板に形成する表示素子用の製造装置を提供する。
【解決手段】表示素子の製造装置(100)は、可撓性の基板(FB)を第1方向に搬送する搬送部(RL)と、可撓性の基板に基準マークを形成するマーク形成部(10)と、可撓性の基板に隔壁を形成する隔壁形成部(10)と、基準マークに基づいて隔壁に対して所定の位置に導電部材を塗布する塗布部(20)と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子、液晶表示素子又は電界放出ディスプレイ(FED:フィールドエミッション・ディスプレイ)などフラットパネル表示素子に関する。またこの表示素子の製造方法及び製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示素子などの表示素子は、小型、薄型、低消費電力、及び軽量という特徴を有するため、現在、各種の電子機器に広く用いられている。これら表示素子を駆動する駆動回路又は薄膜トランジスタは、一般にステッパと呼ばれる露光装置を用いて製造されている。
【0003】
しかし、特に液晶表示素子は大型化が進み、第8世代以降になると製造コスト、装置輸送制限など、今までのスケール・アップ延長線上の技術では対応できないところまで達しており、多くの難問を抱えている。また、製造コスト低減のために、基板サイズ拡大による高効率化に加えて装置コストの低減、ランニング・コストの低減、大型パネルの歩留まり向上が大きな課題になっている。
【0004】
また、さらには有機ELや電界放出ディスプレイなどが市場に出始めており、これら次世代の表示素子の製造に関しても装置コストの低減、ランニング・コストの低減が大きな課題になっている。
【0005】
特許文献1は、液晶表示素子の装置コストの低減、ランニング・コストの低減の対策として、ロール形式で液晶表示素子を製造する方法を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3698749号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の開示する実施例は、容易に製造できるパッシブ型の液晶セルの製造方法を開示しており、現在使用されている高精度の駆動回路又は薄膜トランジスタを有する表示装置を製造するものではない。また、高精度な駆動回路又は薄膜トランジスタを形成するには、位置決めが非常に重要となる。
そこで、高精度な駆動回路又は薄膜トランジスタを可撓性の基板に形成する表示素子用の製造装置、製造方法及び、量産性の高い表示素子を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の表示素子の製造方法は、第1方向に送り出される可撓性の基板に基準マークを形成するマーク形成工程と、可撓性の基板に隔壁を形成する隔壁形成工程と、基準マークに基づいて、塗布装置により隔壁に対して所定の位置に導電部材を塗布して電極を形成する電極形成工程と、を有する。
この製造方法により、基準マークと隔壁とを可撓性の基板に設けるとともに導電部材の塗布で電極を形成することができる。従って高精度で安価に薄膜トランジスタなどを形成することができる。
【0009】
本発明の表示素子の製造装置は、可撓性の基板を第1方向に搬送する搬送部と、可撓性の基板に基準マークを形成するマーク形成部と、可撓性の基板に隔壁を形成する隔壁形成部と、基準マークに基づいて、隔壁に対して所定の位置に導電部材を塗布する塗布部と、を有する。
この製造装置により、基準マークと隔壁とを可撓性の基板に形成するとともに、基準マークに基づいて高精度に導電部材を塗布することができる。
【0010】
本発明の表示素子は、可撓性の基板と、可撓性の基板を押圧して形成された隔壁と、隔壁間に塗布されて形成された電極と、を有する。
可撓性の基板を押圧して形成された隔壁間に塗布された電極を有する表示素子は、高精度に且つ安価に大量に製造される。
【発明の効果】
【0011】
本発明の表示素子の製造方法、製造装置又は表示素子は、装置コストの低減、ランニング・コストの低減及び表示素子自体の価格の低減が大という利点がある。また隔壁が形成されているため高精度に表示素子が形成されるという利点もある。
完成したパネルはロールのままでの状態で運搬可能となり、輸送コストの大幅な削減も可能となる。特に、多面取りパネルや大型パネルになればなるほど効果は大きい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】(a)は有機EL素子50の上面図である。 (b)及び(c)は、(a)のb−b断面図及びc−c断面図である。
【図2】可撓性の基板に、画素電極及び発光層など有する有機EL素子を製造する製造装置100の構成を示した概略図である。
【図3】(a−1)は、インプリントローラ10でシート基板FBが押圧され、隔壁が形状された状態を示した上面図である。 (a−2)は、ゲートバスラインGBLの断面図である。 (b−1)は、ゲート電極Gを形成した上面図である。 (b−2)は、メタルインクをゲートバスラインGBL用の隔壁に入れた状態を示した断面図である。 (b−3)中の1から9までの番号は塗布する順番を示す。 (b−4)に示すようにメタルインクは薄膜となる。
【図4】(a)は、絶縁層用の液滴塗布装置20Iにより絶縁層Iを形成した状態である。 (b)は、ソースバスラインSBLを形成した図である。 (c)は、ソース電極Sとドレイン電極Dとの間隔を切断装置30で切断した状態を示す図である。 (d)は、有機半導体液滴塗布装置20OSが、ソース電極Sとドレイン電極Dとの間に、有機半導体インクを塗布した状態を示す図である。
【図5】別の構成の電界効果型トランジスタを示した断面図である。 (a)は、ボトムゲート型の電界効果型トランジスタ。 (b)は、トップゲート型の電界効果型トランジスタ。
【図6】(a)は、有機EL素子用の製造装置100の電極形成工程92の上面図である。 (b)はアライメントマークAMの周辺拡大図である。
【図7】有機EL素子50の製造工程の概略フローチャートである。
【図8】ローラRRの動作フローチャートである。
【図9】シート基板に、画素電極及び発光層など有する有機EL素子を製造する製造装置110の構成を示した概略図で、図2の製造装置100の別例である。
【図10】印刷ローラ40によるY軸方向の位置合わせのための機構を説明した図である。(a)は、空圧又は油圧制御方式でローラ中央部が膨らんだりへこんだりする印刷ローラ40pである。(b)は、熱変形制御方式でローラ全体部が拡大したり縮小したりする印刷ローラ40qである。(c)は、曲げ変形制御方式でローラ全体部が曲がる印刷ローラ40rである。
【図11】液晶の供給兼カラーフィルタの貼り合わせ装置120を示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本実施形態で説明する表示素子の製造装置は、有機EL素子、液晶表示素子又は電界放出ディスプレイに適用できる装置である。最初に、有機EL素子の構造を説明し、実施例1及び実施例2において有機EL素子の製造装置及び製造方法について説明し、実施例3において液晶製造装置について説明する。
【0014】
<電界効果型トランジスタの有機EL素子50>
図1(a)は、有機EL素子50の拡大上面図であり、図1(b)及び(c)は、(a)のb−b断面図及びc−c断面図である。有機EL素子50は、シート基板FBにゲート電極G、ゲート絶縁層Iが形成され、さらにソース電極S、ドレイン電極D及び画素電極Pが形成された後、有機半導体層OSが形成されたボトムコンタクト型である。
【0015】
(b)に示すようにゲート電極Gがシート基板FB上に形成されている。そのゲート電極Gの上に絶縁層Iが形成されている。絶縁層Iの上にソースバスラインSBLのソース電極Sが形成されるとともに、画素電極Pと接続したドレイン電極Dが形成される。ソース電極Sとドレイン電極Dとの間には有機半導体層OSが形成される。これで電界効果型トランジスタが完成することになる。また、画素電極Pの上には、(b)及び(c)に示すように、発光層IRが形成され、その発光層IRには透明電極ITOが形成される。
【0016】
図1(b)及び(c)から理解されるように、シート基板FBには隔壁BA(バンク層)が形状されている。そして(c)に示すようにソースバスラインSBLが隔壁BA間に形成されている。このように、隔壁BAが存在することによりソースバスラインSBLが高精度に形成されるとともに、画素電極P及び発光層IRも正確に形成されている。なお、(b)及び(c)では描かれていないがゲートバスラインGBLもソースバスラインSBLと同様に隔壁BA間に形成されている。このような有機EL素子50を量産的に製造する製造装置を以下に説明する。
【0017】
<<実施例1:有機EL素子の製造装置>>
図2は、帯状に伸びた可撓性のシート基板FB(以下、シート基板という。)に、図1で示した画素電極P及び発光層IRなど有する有機EL素子50を製造する製造装置100の構成を示した概略図である。
【0018】
本実施例の有機EL素子50の製造装置100は、薄膜トランジスタ(TFT)、画素電極Pが形成されたシート基板FBを形成する。さらに、そのシート基板FB上の画素電極P上に発光層IRを含む1以上の有機化合物層(発光素子層)を精度良く形成するために、画素電極Pの境界領域に隔壁BAを容易に精度良く形成する。
【0019】
有機EL素子用の製造装置100は、ロール状に巻かれたシート基板FBを送り出すための供給ロールRLを備えている。供給ロールRLが所定速度の回転を行うことで、シート基板FBが搬送方向であるX軸方向に送られる。また、有機EL素子用の製造装置100は、複数個所にローラRRを備えており、このローラRRが回転することによっても、シート基板FBがX軸方向に送られる。ローラRRはシート基板FBを両面から挟み込むゴムローラであってもよいし、シート基板FBがパーフォレーションを有するものであればラチェット付きのローラRRであってもよい。これらのローラRRのうちの一部のローラRRは搬送方向と直交するY軸方向に移動可能である。
【0020】
有機EL素子用の製造装置100は、その最終工程で、シート基板FBを所定の大きさに切断する不図示の切断装置を備えても良い。また、他の工程で処理するために、シート基板FBをロール状に巻き取る不図示の巻取ロールを備えてもよい。切断装置は、供給ロールRL及びローラRRと同期するように所定速度でシート基板FBを切断し。巻取ロールは、供給ロールRL及びローラRRと同期するように所定速度でシート基板FBを巻き取る。
【0021】
<隔壁形成工程91>
供給ロールRLから送り出されたシート基板FBは、最初にシート基板FBに隔壁BAを形成する隔壁形成工程91に入る。隔壁形成工程91では、インプリントローラ10でシート基板FBを押圧するとともに、押圧した隔壁BAが形状を保つように熱転写ローラ15でシート基板FBをガラス転移点以上に熱する。このため、インプリントローラ10のローラ表面に形成された型形状がシート基板FBに転写される。
【0022】
インプリントローラ10のローラ表面は鏡面仕上げされており、そのローラ表面にSiC、Taなどの材料で構成された微細インプリント用モールド11が取り付けられている。微細インプリント用モールド11は、薄膜トランジスタの配線用のスタンパーなどを形成している。また、シート基板FBの幅方向であるY軸方向の両側にアライメントマークAMを形成するため、微細インプリント用モールド11は、アライメントマークAM用のスタンパーを形成している。
【0023】
<電極形成工程92>
シート基板FBは、さらにX軸方向に進むと電極形成工程92に入る。電極形成工程92では、有機半導体を用いた薄膜トランジスタを形成する。この有機半導体を用いて薄膜トランジスタを構成すれば、印刷技術や液滴塗布法技術を活用して薄膜トランジスタを形成できる。また、有機半導体を用いた薄膜トランジスタの内、図1で示したような電界効果型トランジスタ(FET)が特に好ましい。
【0024】
電極形成工程92では、ゲート用液滴塗布装置20G、絶縁層用の液滴塗布装置20I液滴塗布装置20などを使用する。以下、用途ごとに、ソース用及びドレイン用並びに画素電極用の液滴塗布装置20SD、有機半導体液滴塗布装置20OS、ITO電極用の液滴塗布装置20ITなどを使用するが、すべてインクジェット方式又はディスペンサー方式を採用することができるので、これらをまとめて液滴塗布装置20と表現することもある。
【0025】
インクジェット方式としては、帯電制御方式、加圧振動方式、電気機械変換式、電気熱変換方式、静電吸引方式などが挙げられる。液滴塗布法は、材料の使用に無駄が少なく、しかも所望の位置に所望の量の材料を的確に配置できる。なお、液滴塗布法により塗布されるメタルインクなどの液滴の一滴の量は、例えば1〜300ナノグラムである。
【0026】
まず、ゲート用液滴塗布装置20Gは、メタルインクを、ゲートバスラインGBLの隔壁BA内に塗布する。そして、熱処理装置BKで熱風又は遠赤外線などの放射熱などによりメタルインクを乾燥又は焼成(ベーキング)させる。これらの処理で、ゲート電極Gが形成される。なおメタルインクは、粒子径が約5nmほどの導電体が室温の溶媒中で安定して分散をする液体であり、導電体として、カーボン、銀(Ag)又は金(Au)などが使われる。
【0027】
次に、絶縁層用の液滴塗布装置20Iは、ポリイミド系樹脂又はウレタン系樹脂の電気絶縁性インクをスイッチング部に塗布する。そして、熱処理装置BKで熱風又は遠赤外線などの放射熱などにより電気絶縁性インクを乾燥し硬化させる。これらの処理で、ゲート絶縁層Iが形成される。
【0028】
次に、ソース用及びドレイン用並びに画素電極用の液滴塗布装置20SDは、メタルインクを、ソースバスラインSBLの隔壁BA内及び画素電極Pの隔壁BA内に塗布する。そして、熱処理装置BKでメタルインクを乾燥又は焼成(ベーキング)させる。これらの処理で、ソース電極S、ドレイン電極D及び画素電極Pが接続された状態の電極が形成される。
【0029】
次に、互いにつながったソース電極Sとドレイン電極Dとを、切断装置30で切断する。切断装置30としては、切断する金属膜に対し、吸収する波長のレーザーが好ましく、波長変換レーザーで、YAGなどの2,3,4倍高調波がよい。またパルス型レーザーを用いることで熱拡散を防止し、切断部以外の損傷を低減することができる。材料がアルミの場合、760nm波長のフェムト秒レーザーが好ましい。チタンサファイアレーザーを使ったフェムト秒レーザー照射部は、レーザー光LLを10KHzから40KHzのパルスで照射する。レーザー光LLの光路に配置されるガルバノミラー31が回転することにより、レーザー光LLの照射位置が変化する。
【0030】
切断装置30は、フェムト秒レーザーを使用するため、サブミクロンオーダの加工が可能であり、電界効果型トランジスタの性能を決めるソース電極Sとドレイン電極Dと間隔(チャンネル長)を正確に切断する。ソース電極Sとドレイン電極Dと間隔は、3μm程度から30μm程度である。この切断処理により、ソース電極Sとドレイン電極Dとが分離された電極が形成される。
【0031】
レーザー光LLはフェムト秒レーザー以外に、炭酸ガスレーザー又はグリーンレ−ザーなどを使用することも可能である。また、レーザー以外にもダイシングソーなどで機械的に切断してもよい。
【0032】
次に、有機半導体液滴塗布装置20OSは、ソース電極Sとドレイン電極Dとのチャンネル長の間のスイッチング部に有機半導体インクを塗布する。そして、熱処理装置BKで熱風又は遠赤外線などの放射熱などにより有機半導体インクを乾燥又は焼成させる。これらの処理で、有機半導体層OSが形成される。
【0033】
なお、有機半導体インクを形成する化合物は、単結晶材料でもアモルファス材料でもよく、低分子でも高分子でもよい。特に好ましいものとしては、ペンタセンやトリフェニレン、アントラセン等に代表される縮環系芳香族炭化水素化合物の単結晶又はπ共役系高分子が挙げられる。
【0034】
以上のようにして、いわゆるフォトリソグラフィ工程を使用しなくても、印刷技術や液滴塗布法技術を活用して薄膜トランジスタ等を形成できる。印刷技術のみや液滴塗布法技術のみでは、インクのにじみや広がりのため精度よく薄膜トランジスタ等ができないが、隔壁形成工程91により、隔壁BAが形成されているためインクのにじみや広がりを防ぐことができる。また薄膜トランジスタの性能を決めるソース電極Sとドレイン電極Dとの間隔は、レーザー加工又は機械加工により形成することができる。
【0035】
<発光層形成工程93>
有機EL素子用の製造装置100は、画素電極P上に有機EL素子の発光層IRの形成工程を引き続き行う。発光層形成工程93でも、発光層用の液滴塗布装置20(赤色発光層用の液滴塗布装置20Re、緑色発光層用の液滴塗布装置20Gr、青色発光層用の液滴塗布装置20BL)を使用する。
【0036】
発光層IRは、ホスト化合物とリン光性化合物(リン光発光性化合物ともいう)が含有される。ホスト化合物とは、発光層IRに含有される化合物である。リン光性化合物は、励起三重項からの発光が観測される化合物であり、室温においてリン光発光する。
【0037】
赤色発光層用の液滴塗布装置20Reは、R溶液を画素電極P上に塗布し、乾燥後の厚み100nmになるように成膜を行う。R溶液は、ホスト材のポリビニルカルバゾール(PVK)に赤ドーパント材を1、2−ジクロロエタン中に溶解した溶液とする。
続いて、緑色発光層用の液滴塗布装置20Grは、G溶液を画素電極P上に塗布する。G溶液は、ホスト材PVKに緑ドーパント材を1、2−ジクロロエタン中に溶解した溶液とする。
【0038】
さらに、青色発光層用の液滴塗布装置20BLは、B溶液を画素電極P上に塗布する。B溶液は、ホスト材PVKに青ドーパント材を1、2−ジクロロエタン中に溶解した溶液とする。
その後、熱処理装置BKで熱風又は遠赤外線などの放射熱などにより発光層溶液を乾燥し硬化させる。
【0039】
次に、絶縁層用の液滴塗布装置20Iは、ポリイミド系樹脂又はウレタン系樹脂の電気絶縁性インクを、後述する透明電極ITOとショートしないように、ゲートバスラインGBL又はソースバスラインSBLの一部に塗布する。そして、熱処理装置BKで熱風又は遠赤外線などの放射熱などにより電気絶縁性インクを乾燥し硬化させる。
【0040】
その後、ITO電極用の液滴塗布装置20ITは、赤色、緑色及び青色発光層の上にITO(Indium Tin Oxide インジウムスズ酸化物)インクを塗布する。ITOインクは、酸化インジウム(In23)に数%の酸化スズ(SnO2)を添加した化合物であり、その電極は透明である。また、IDIXO(In23−ZnO)等非晶質で透明電極膜層を作製可能な材料を用いてもよい。透明導電膜は、透過率が90%以上であることが好ましい。そして、熱処理装置BKで熱風又は遠赤外線などの放射熱などによりITOインクを乾燥し硬化させる。
【0041】
なお、隔壁形成工程91から発光層形成工程93までを連続して製造しているが、シート基板FBは、隔壁形成工程91から電極形成工程92で一旦終了して巻き取りロールで巻き取りしても良い。一旦巻き取りを行う場合は、形成された電極の保護のため、巻き取り時にクッション層となる合紙等と同時に巻き取ることが好ましい。
【0042】
図2で説明した有機EL素子用の製造装置100は、図1の有機EL素子50を製造することができるが、有機EL素子にさらに正孔輸送層及び電子輸送層を設けられる場合がある。これらの層も印刷技術や液滴塗布法技術を活用し、これらを設けるための工程を製造装置100に追加すればよい。
【0043】
<製造工程における有機EL素子50の状態>
図3(a−1)は、隔壁形成工程91、すなわちインプリントローラ10でシート基板FBが押圧され、隔壁BAが形状された状態を示した上面図である。(a−2)は(a−1)の隔壁BA間のゲートバスラインGBLの断面図である。但し、図示したこのゲートバスラインGBLはメタルインクが塗布されていない。なお、図3(a−2)において、隔壁BA内の断面形状は、V字形状であってもU字形状であってもよく、また矩形形状のものであってもよい。但し、微細インプリント用モールド11がシート基板FBを押圧した後、シート基板FBが剥離しやすいように、V字形状又はU字形状が好ましい。
【0044】
隔壁BAの間に形成される幅W(μm)は、ゲートバスラインGBLの必要線幅になるが、図2に示したゲート用液滴塗布装置20Gから塗布される液滴直径d(μm)は、W/2からW/4程度が好ましい。
【0045】
図3(b−1)は、電極形成工程92のうちゲート電極Gを形成したシート基板FBの上面図である。(b−2)は、メタルインクをゲートバスラインGBL用の隔壁BA内に入れた状態を示した断面図である。ゲート電極Gが直線状になるように、図3(b−3)の平面図に示すように塗布の順番を制御する。図3(b−3)中の1から9までの番号は塗布する順番を示す。メタルインク同士の液体張力で直線状になるような液滴の塗布の順序となる。基本的に、最後に真ん中に塗布するようにメタルインクを塗布する。
【0046】
そして、熱処理装置BKでメタルインクを乾燥又は焼成させると、図3(b−4)の断面図に示すようにメタルインクは薄膜(図では誇張して描いてある)となる。隔壁BAを設けることにより、液滴塗布装置20によりメタルインクを塗布してさらに熱処理装置BKでメタルインクを乾燥又は焼成させた際、メタルインクがゲートバスラインGBLから溢れ出ない。
【0047】
図4(a)は、電極形成工程92のうち絶縁層用の液滴塗布装置20Iにより絶縁層Iを形成した状態を示す平面図である。図では、理解しやすいように絶縁層Iは隔壁BAを越えて円形状に描いてあるが、隔壁BAを越える必要はなく、ソースバスラインSBLが通るゲート電極G上に電気絶縁性インクを塗布すればよい。
【0048】
図4(b)は、電極形成工程92のうちソースバスラインSBLを形成した状態を示す平面図である。図4(b)中の1から9までの番号は、ソース用及びドレイン用並びに画素電極用の液滴塗布装置20SDが塗布する順番を示す。
図4(c)は、電極形成工程92のうちソース電極Sとドレイン電極Dとの間隔を切断装置30で切断した状態を示す平面図である。
【0049】
図4(d)は、有機半導体液滴塗布装置20OSが、ソース電極Sとドレイン電極Dとの間に有機半導体インクを塗布し、有機半導体層OSが形成された状態を示す平面図である。これで電界効果型トランジスタが完成することになる。
【0050】
その後、発光層IR及び透明電極ITOを各液滴塗布装置20及びで塗布することにより、図1で示した有機EL素子50が完成する。隔壁BAが存在することにより、赤色、緑色及び青色発光層IRを熱処理装置BKで熱処理することなく続けて塗布する場合であっても、隣接する画素領域へ溶液が溢れることにより、混色が生じることがない。
【0051】
<別の電界効果型トランジスタ>
図5は、別の構成の電界効果型トランジスタを示した断面図である。
図1に示した電界効果型トランジスタ以外にも、図5(a)に示す電界効果型トランジスタとしてボトムゲート型を製造することも可能である。この電界効果型トランジスタは、シート基板FB上にゲート電極G、ゲート絶縁層I、有機半導体層OSを形成した後、ソース電極S、ドレイン電極Dを形成したものである。
【0052】
図5(b)は、トップゲート型の電界効果型トランジスタであり、シート基板FB上にソース電極S及びドレイン電極Dを形成した後、有機半導体層OSを形成し、更にその上にゲート絶縁層I、ゲート電極Gを形成したものである。
これらいずれの電界効果型トランジスタであっても、メタルインクなどの塗布の順番を積層順に応じて変えた製造装置100を使って対応することができる。
【0053】
<アライメント>
次に有機EL素子用の製造装置100で使用されるアライメントについて説明する。
有機EL素子用の製造装置100は、図2に示した速度及びアライメント制御部90を有している。速度及びアライメント制御部90は、供給ロールRL及びローラRRの速度制御を行う。またローラRRは、Y軸方向に移動可能になっており、速度及びアライメント制御部90は、ローラRRのY軸方向の移動制御を行う。また、速度及びアライメント制御部90は、複数のアライメントカメラCAからアライメントマークAMの検出結果を受け取り、液滴塗布装置20のインクなどの塗布位置とタイミング、切断装置30の切断位置及びタイミングを制御する。
【0054】
図2に示したインプリントローラ10の微細インプリント用モールド11で、シート基板FBにアライメントマークAMが形成される。アライメントカメラCAは可視光照明下でCCD又はCMOSで撮像し、その撮像画像を処理してアライメントマークAMの位置を検出してもよいし、レーザー光をアライメントマークAMに照射して、その散乱光を受光してもアライメントマークAMの位置を検出しても良い。
【0055】
シート基板FBは、耐熱性の樹脂フィルムであり、具体的には、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂、エチレンビニル共重合体樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、セルロース樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、酢酸ビニル樹脂で光透過機能があるものを使うことができる。
【0056】
上述したように、シート基板FBは、隔壁形成工程91で熱転写の熱処理を受け、各種インクは熱処理装置BKで乾燥又は焼成(ベーキング)しなければならないため、200度C前後に加熱されることになる。シート基板FBは、熱を受けても寸法が変わらないように熱膨張係数が小さい方が好ましい。例えば、無機フィラーを樹脂フィルムに混合して熱膨張係数を小さくすることができる。無機フィラーの例としては、酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナ、酸化ケイ素などが挙げられる。
【0057】
しかし、熱転写ローラ15及び熱処理装置BKを経ることにより、シート基板FBがX軸方向及びY軸方向に伸縮する。有機EL素子用の製造装置100は、熱転写ローラ15の下流にはアライメントカメラCA1を配置し、熱処理装置BKの後にはアライメントカメラCA2からアライメントカメラCA8を配置する。そして、これらにより、液滴塗布装置20のインクなどの塗布位置とタイミング、切断装置30の切断位置及びタイミングを正確に把握する。
【0058】
図6(a)は、有機EL素子用の製造装置100の電極形成工程92を上方から見た図であり、シート基板FBが搬送方向FDに送られる。シート基板FBには、幅方向であるY軸方向の両側にアライメントマークAMが形成されている。図2に示したとおりインプリントローラ10の微細インプリント用モールド11はシート基板FBの中央部に所定の隔壁パターンを形成すると同時に、シート基板FBの幅方向(Y軸方向)の両端にアライメントマークAMを一定間隔で形成する。シート基板FBのY軸方向端部には一対のアライメントカメラCA1が設けられており、一対のアライメントカメラCA1はこのアライメントマークAMを撮像する。その撮像結果は、速度及びアライメント制御部90に送られる。
【0059】
ゲート用液滴塗布装置20Gは、図6(a)に示すとおりY軸方向に配置されており、多数のノズル22がY軸方向に沿って配置されている。また、X軸方向にも複数行のノズル22が配置されている。図6(a)ではY軸方向に配列された多数のノズル22がX軸方向に2段設けられている。ゲート用液滴塗布装置20Gは、速度及びアライメント制御部90から送られてくる位置信号に応じて、ノズル22からメタルインクを塗布するタイミング、メタルインクを塗布するノズル22を切り換える。
【0060】
図2で示した微細インプリント用モールド11は、アライメントマークAMと電界効果型トランジスタのゲートバスラインGBL及びソースバスラインSBLとの位置関係を規定している。つまり、図6(b)に示すように、Y軸方向には、アライメントマークAMとゲートバスラインGBLとの所定距離PYが規定されており、X軸方向には、アライメントマークAMとソースバスラインSBLとの所定距離PXが規定されている。また、シート基板FBの送り速度が把握されている。
【0061】
従って、速度及びアライメント制御部90は、一対のアライメントマークAMを撮像することで、シート基板FBのX軸方向のずれ、Y軸方向のずれ及びθ回転も検出される。図6では、アライメントマークAMが、X軸方向の数行の電界効果型トランジスタの隔壁BAに対して、一対設けられているが、1行の電界効果型トランジスタの隔壁BAに対して、一対のアライメントマークAMを設けても良い。また、スペースがあれば、シート基板FB両側だけでなく中央領域にアライメントマークAMを設けても良い。
なお、一対のアライメントマークAMは十字形状を示したが、円形マーク、斜めの直線マークなど他のマーク形状であってもよい。
【0062】
速度及びアライメント制御部90が、シート基板FBのY軸方向のずれを検出した場合には、X軸方向に並んだ前後のローラRR(上流側を上流ローラRR1、下流側を下流ローラRR2という)をともに同じ方向のY軸方向に移動させる。すると上流ローラRR1及び下流ローラRR2とシート基板FBとの摩擦力によって、シート基板FBがY軸方向に移動する。したがってシート基板FBのY軸方向のずれを解消することができる。
【0063】
また、速度及びアライメント制御部90が、シート基板FBのθ回転のずれを検出した場合には、シート基板FBがX軸方向に送られる状態で、上流ローラRR1を矢印方向AR(−)に、下流ローラRR2を逆方向の矢印方向AR(+)に移動させる。すると上流ローラRR1及び下流ローラRR2とシート基板FBとの摩擦力によって、シート基板FBが上流側では−Y軸方向に引っ張られ、下流側では+Y軸方向に引っ張られる。このように上流ローラRR1と下流ローラRR2とがY軸方向に逆に移動することでシート基板FBをθ回転させることができる。したがって上流ローラRR1及び下流ローラRR2の動作でシート基板FBのθ回転のずれを解消することができる。
【0064】
また、シート基板FBのθ回転のずれは、Z軸方向を回転中心としてゲート用液滴塗布装置20Gを回転させることで解消することも可能である。図6(a)において、ゲート用液滴塗布装置20GがZ軸方向を回転中心として回転した状態を点線で示している。シート基板FBがθ回転した場合には、シート基板FBの送り方向に直交するようにゲート用液滴塗布装置20Gを回転させてメタルインクの塗布位置を正確にすることができる。また、ゲート用液滴塗布装置20Gは多数のノズル22がX軸方向に2段に設けられているので、θ回転のずれが小さい場合には、メタルインクの塗布のタイミングをシート基板FBのθ回転のずれに対応して調整することで、シート基板FBのθ回転のずれを解消することも可能である。
【0065】
<有機EL素子の製造装置の動作>
図7は、有機EL素子50の製造工程のアライメント手法を中心とした概略フローチャートである。
ステップP1において、インプリントローラ10によりシート基板FBにアライメントマークが形成される。
ステップP2において、インプリントローラ10によりシート基板FBに薄膜トランジスタ及び発光層などの隔壁BAが熱転写で形成される。なお、アライメントマークAMと隔壁BAとは、相互の位置関係が重要であるため同時に形成される。
【0066】
ステップP3では、アライメントカメラCA1ないしCA3がアライメントマークAMを撮像し、速度及びアライメント制御部90が、シート基板FBの位置を把握する。
次に、ステップP4では、把握された位置情報に基づいて、液滴塗布装置20Gなどが各種電極用及び絶縁用のメタルインクを塗布する。
【0067】
ステップP5では、アライメントカメラCA4がアライメントマークAMを撮像し、速度及びアライメント制御部90が、シート基板FBの位置を把握する。
次に、ステップP6では、把握された位置情報に基づいて、レーザー光LLがソース電極Sとドレイン電極Dとの間隙を形成する。
【0068】
ステップP7では、アライメントカメラCA5がアライメントマークAMを撮像し、速度及びアライメント制御部90が、シート基板FBの位置を把握する。
次に、ステップP8では、把握された位置情報に基づいて、有機半導体液滴塗布装置20OSが有機半導体をソース電極Sとドレイン電極Dとの間隙に形成する。
【0069】
ステップP9では、アライメントカメラCA6がアライメントマークAMを撮像し、速度及びアライメント制御部90が、シート基板FBの位置を把握する。
次に、ステップP10では、把握された位置情報に基づいて、発光層を形成する。以下、同様に、絶縁層IとITO電極とが形成される。
【0070】
<ローラRRの動作>
図8は、ローラRRの動作フローチャートである。このローラRRの動作は、隔壁形成工程91から発光層形成工程93までのどの箇所でも適用できるが、特に図6(a)に示した電極形成工程92を参照して説明する。
ステップP11において、速度及びアライメント制御部90が、ローラRR(上流ローラRR1及び下流ローラRR2)に所定の回転速度で回転するように指令を出す。
【0071】
ステップP12において、アライメントカメラCAが検出するアライメントマークAMの撮像間隔から、シート基板FBの送り速度を検出する。そして、上流ローラRR1及び下流ローラRR2が所定速度で回転していないかを確認する。上流ローラRR1及び下流ローラRR2が所定速度で回転しているなら、ステップP14に進み、上流ローラRR1及び下流ローラRR2が所定速度で回転していないなら、ステップP13に進む。
ステップP13において、速度及びアライメント制御部90は、上流ローラRR1及び下流ローラRR2の回転速度の調整の指令を出しフィードバックをかける。
【0072】
ステップP14において、アライメントカメラCAが検出するアライメントマークAMのY軸方向の位置から、シート基板FBが所定時間の間Y軸方向にずれているかを確認する。短い間隔であれば、液滴塗布装置20の複数のノズル22(図6(a)を参照)から適切なノズル22を使ってインクなどを塗布して対応する。しかし、シート基板FBのY軸方向のずれが続くようであれば、ローラRRの移動によってシート基板FBのY軸方向の位置補正を行う。シート基板FBがY軸方向にずれているならステップP15に進み、シート基板FBがずれていないならステップP16に進む。
ステップP15において、速度及びアライメント制御部90は、シート基板FBのY軸方向のずれとは逆方向に、ずれ量に基づいた量だけ上流ローラRR1及び下流ローラRR2を移動させる。
【0073】
ステップP16において、アライメントカメラCAが検出するアライメントマークAMのX軸及びY軸方向の位置から、シート基板FBが所定時間のθ回転ずれているかを確認する。短い間隔であれば、液滴塗布装置20の複数のノズル22から適切なノズル22からインクなどを塗布して対応する。しかし、シート基板FBのθ回転のずれが続くようであれば、例えば−Y軸方向に上流ローラRR1を移動させ、+Y軸方向に下流ローラRR2を移動させることによってシート基板FBをθ回転させる。シート基板FBがθ回転ずれているならステップP17に進み、シート基板FBがずれていないなら引き続き上流ローラRR1及び下流ローラRR2の速度調整などを行う。
ステップP17において、速度及びアライメント制御部90は、ずれ量に基づいた量だけ上流ローラRR1及び下流ローラRR2を相互に逆方向に移動させる。
【0074】
<<実施例2:有機EL素子の製造装置>>
図9は、シート基板に、画素電極及び発光層など有する有機EL素子を製造する製造装置110の構成を示した概略図で、図2の製造装置100の別例である。但し、製造装置100が有する同等の機能を有する部材又は装置には同じ符号を付している。
【0075】
図9に示す製造装置110は、隔壁形成工程91を2箇所有する点で、図2に示した製造装置100と異なる。上流のインプリントローラ10は、薄膜トランジスタの配線用の隔壁BAを形成し、シート基板FBの幅方向であるY軸方向の両側にアライメントマークAMを形成する。また、下流の隔壁形成工程91では印刷ローラ40を使用する。
【0076】
印刷ローラ40は、その表面がスクリーン印刷できるようにメタルマスクが形成されている。また、印刷ローラ40内部に紫外線硬化樹脂を保有している。紫外線硬化樹脂は、スキージ41によりメタルマスクを介してシート基板FBに塗布される。これにより、紫外線硬化樹脂の隔壁BAが形成される。この隔壁の高さは10数μm以下である。シート基板FBに形成された紫外線硬化樹脂の隔壁BAは、水銀ランプなどの紫外線ランプ44によって硬化される。
【0077】
有機EL素子に、発光層、正孔輸送層及び電子輸送層を形成する場合には、隔壁BAを高くする必要がある。インプリントローラ10による熱転写では、シート基板FBから押し出した隔壁BAをあまり高くすることができない。そのため、インプリントローラ10とは別に印刷ローラ40を設けている。
【0078】
印刷ローラ40の上流側には、アライメントカメラCA6を配置して、速度及びアライメント制御部90は、印刷ローラ40手前のシート基板FBの位置を把握している。そして、速度及びアライメント制御部90は、印刷ローラ40の回転制御を行い、シート基板FBに形成された薄膜トランジスタの位置に合わせて紫外線硬化樹脂を印刷する。
【0079】
紫外線硬化樹脂層とは紫外線照射により架橋反応等を経て硬化する樹脂を主たる成分とする層をいう。紫外線硬化樹脂としては、エチレン性不飽和二重結合を有するモノマーを含む成分が好ましく用いられ、紫外線を照射することによって硬化させて紫外線硬化樹脂層が形成される。紫外線硬化性樹脂としては、例えば、紫外線硬化型ウレタンアクリレート系樹脂、紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂、紫外線硬化型エポキシアクリレート系樹脂、紫外線硬化型ポリオールアクリレート系樹脂、または紫外線硬化型エポキシ樹脂等が好ましく用いられる。中でも紫外線硬化型アクリレート系樹脂が好ましい。なお、発光層の隔壁BA用であれば、ブラックマトリックスであることが好ましい。このため、紫外線硬化型アクリレート系樹脂にクロム等の金属や酸化物を導入しても良い。
【0080】
紫外線硬化樹脂の隔壁BAは、インプリントローラ10によってシート基板に形成された隔壁BAの上に重ねて形成しても良いし、インプリントローラ10では隔壁BAが形成されなかった領域に形成しても良い。印刷ローラ40の下流の発光層形成工程93は、実施例1で説明した工程と同じような構成で足りる。
なお、図9において、印刷ローラ40による隔壁形成工程91と発光層形成工程93との間に「図11へ」と記載した矢印が描かれているが、これについては実施例3で説明する。
【0081】
<印刷ローラを使ったY軸方向のアライメント>
図6から図8で説明したように、アライメントカメラCAが検出するアライメントマークAMのX軸及びY軸方向の位置に基づいて、液滴塗布装置20はノズル22を切り替えてシート基板FBにインクを塗布した位置を修正した。印刷ローラ40は次のようにして位置を変更する。
【0082】
図10は、印刷ローラ40によるY軸方向のアライメントのための機構を説明した図である。印刷ローラの表面にメタルマスクが形成されている。速度及びアライメント制御部90からの信号により、X軸方向の位置合わせは、印刷ローラの回転速度で調整することができる。Y軸方向の位置合わせは、次の示す方法がある。
【0083】
図10(a)は、空圧又は油圧制御方式でローラ中央が膨らんだりへこんだりする印刷ローラ40pである。速度及びアライメント制御部90からの信号で、空気又は油が供給されることにより、ローラ中央部と周辺部とのY軸方向の位置を変えることができる。
【0084】
図10(b)は、熱変形制御方式でローラ全体が拡大したり縮小したりする印刷ローラ40qである。速度及びアライメント制御部90からの信号で、加熱又は冷却されることにより、ローラ全体のY軸方向の位置及びX軸方向の位置を変えることができる。
図10(c)は、曲げ変形制御方式でローラ全体が曲がる印刷ローラ40rである。印刷ローラ40rは、小さな力で曲がるように円周方向にスリットが入っていることが好ましい。
【0085】
<<実施例3:液晶表示素子の製造装置>>
次に、液晶表示素子の製造装置及び製造方法について説明する。液晶表示素子は、一般に偏向フィルタ、薄膜トランジスタを有するシート基板FB、液晶層、カラーフィルタ及び偏向フィルタから構成されている。このうち、薄膜トランジスタを有するシート基板FBは、図2の上段に描かれた製造装置100又は図9の上段に描かれた製造装置110で製造することができることを説明した。
【0086】
実施例3では、さらに、液晶の供給及びカラーフィルタCFの貼り合わせについて説明する。
液晶表示素子には、液晶を供給する必要があり、液晶の封止壁を形成する必要がある。このため、図9の下段に描かれた隔壁形成工程91の印刷ローラ40は、実施例3では発光層用の隔壁BAではなく液晶の封止壁用に使用される。
【0087】
図11は、液晶の供給兼カラーフィルタの貼り合わせ装置120を示したものである。
液晶の供給兼カラーフィルタの貼り合わせ装置120は、上流側低真空チャンバ82と下流側低真空チャンバ83とが設けられ、上流側低真空チャンバ82と下流側低真空チャンバ83との間に高真空チャンバ84が設けられている。これら低真空チャンバ82、83及び高真空チャンバ84は、ロータリーポンプ又はターボ分子ポンプ89で真空引きされる。
【0088】
上流側低真空チャンバ82には、上段からカラーフィルタCFが供給されるようになっており、また、図9で示した印刷ローラ40を経て液晶の封止壁が形成されたシート基盤FBが供給される。但し、このシート基盤FBには発光層IR及び透明電極ITOが形成されない。つまり図9に示した「図11へ」と記載した矢印部分のシート基板は、図11に示した「図9から」と記載した矢印部分のシート基板FBへとつながる。なお、カラーフィルタCFのY軸方向の両側にもアライメントマークが形成されている。
【0089】
液晶の封止壁が形成されたシート基盤FBは、まず、カラーフィルタCFと接着するための熱硬化性接着剤が接着剤ディスペンサー72から塗布される。そして、シート基盤FBは上流側低真空チャンバ82を経て高真空チャンバ84に送られる。高真空チャンバ84では、液晶ディスペンサー74から液晶が塗布される。そして、カラーフィルタCFとシート基盤FBとが熱転写ローラ76で接着される。
【0090】
シート基板FBのアライメントマークAMは、アライメントカメラCA11で撮像され、カラーフィルタCFのアライメントマークAMは、アライメントカメラCA12で撮像される。アライメントカメラCA11及びCA12で撮像された結果は、速度及びアライメント制御部90に送られ、X軸方向のずれ、Y軸方向のずれ及びθ回転が把握される。熱転写ローラ76は、速度及びアライメント制御部90から送られてくる位置信号に応じて回転速度を変えて、カラーフィルタCFとシート基板FBとの位置合わせを行いながら接着する。
【0091】
接着された液晶表示素子シートCFBは、下流低真空チャンバ83を経て、外部に送られる。
なお、接着剤は熱硬化性接着剤で説明したが、紫外線硬化性の接着剤を使用してもよい。この場合には熱転写ローラ76ではなく紫外線ランプなどを使用する。
【産業上の利用可能性】
【0092】
有機EL素子及び液晶表示素子の製造方法について説明してきたが、本発明の製造装置は、電界放出ディスプレイなどにも適用できる。
また、実施例の製造装置には熱処理装置BKを設けたが、メタルインク又は発光層溶液などの改良によって熱処理が必要でないインク又は溶液が提案されている。このため、本実施例においても熱処理装置BKを必ず設ける必要はない。
また、図2又は図9において最初にインプリントローラ10を配置したが、インプリントローラ10の代わりに印刷ローラ40で隔壁BAを形成してもよい。
【符号の説明】
【0093】
10 インプリントローラ
11 微細インプリント用モールド
15 熱転写ローラ
20 液滴塗布装置
20BL 青色発光層用の液滴塗布装置
20G ゲート用液滴塗布装置
20Gr 緑色発光層用の液滴塗布装置
20I 絶縁層用の液滴塗布装置
20Re 赤色発光層用の液滴塗布装置
20IT ITO電極用の液滴塗布装置
20OS 有機半導体液滴塗布装置
20SD ソース用及びドレイン用並びに画素電極用の液滴塗布装置
22 ノズル
30 切断装置
50 有機EL素子
40,40q,40r 印刷ローラ
82 上流側低真空チャンバ
83 下流側低真空チャンバ
84 高真空チャンバ
90 速度及びアライメント制御部
100,110 製造装置
120 液晶の供給兼カラーフィルタの貼り合わせ装置
AM アライメントマーク
BA 隔壁
BK 熱処理装置
CA アライメントカメラ
CF カラーフィルタ
CFB 液晶表示素子シート
D ドレイン電極
FB シート基板
G ゲート電極
GBL ゲートバスライン
I ゲート絶縁層
IR 発光層
ITO 透明電極
LL レーザー光
OS 有機半導体層
P 画素電極
RL 供給ロール
RR ローラ
S ソース電極
SBL ソースバスライン


【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性の基板を所定方向に搬送する搬送部と、
前記可撓性の基板に液滴を吐出する液滴塗布部と、を備え、
前記液滴塗布部は、前記液滴を吐出する複数のノズルを有し、
前記液滴塗布部は、前記基板の伸縮に応じて、前記液滴を吐出する前記ノズルを制御する、
ことを特徴とする表示素子の製造装置。
【請求項2】
前記液滴塗布部は、前記基板の伸縮に応じて、前記ノズルを切り替える、
ことを特徴とする請求項1に記載の表示素子の製造装置。
【請求項3】
前記液滴塗布部は、前記基板の伸縮に応じて、前記液滴を吐出するタイミングを変える、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の表示素子の製造装置。
【請求項4】
前記基板に基準マークを形成するマーク形成部を備え、
前記基準マークの位置に基づいて、前記基板の伸縮を算出する、
ことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の表示素子の製造装置。
【請求項5】
前記基板に隔壁を形成する隔壁形成部を備え、
前記液滴塗布部は、前記隔壁の位置に基づいて、前記液滴を吐出する、
ことを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の表示素子の製造装置。
【請求項6】
可撓性の基板を所定方向に搬送する搬送工程と、
複数のノズルを有する液滴塗布部によって、前記可撓性の基板に液滴を吐出する液滴塗布工程と、を有し、
前記液滴塗布工程は、前記基板の伸縮に応じて、前記液滴を吐出する前記ノズルを制御する工程を含む、
ことを特徴とする表示素子の製造方法。
【請求項7】
前記ノズルを制御する工程は、前記基板の伸縮に応じて、前記ノズルを切り替える、
ことを特徴とする請求項6に記載の表示素子の製造方法。
【請求項8】
前記ノズルを制御する工程は、前記基板の伸縮に応じて、前記液滴を吐出するタイミングを変える、
ことを特徴とする請求項6又は請求項7に記載の表示素子の製造方法。
【請求項9】
前記基板に基準マークを形成するマーク形成工程を有し、
前記基準マークの位置に基づいて、前記基板の伸縮を算出する、
ことを特徴とする請求項6ないし請求項8のいずれか一項に記載の表示素子の製造方法。
【請求項10】
算出された前記伸縮に基づく前記液滴の吐出位置のずれに応じて、前記ノズルを制御する、
ことを特徴とする請求項9に記載の表示素子の製造方法。
【請求項11】
前記基板に隔壁を形成する隔壁形成工程を有し、
前記液滴塗布部は、前記隔壁の位置に基づいて、前記液滴を吐出する、
ことを特徴とする請求項6ないし請求項10のいずれか一項に記載の表示素子の製造方法。
【請求項12】
可撓性の基板に液滴を吐出する複数のノズルを備え、
前記複数のノズルは、前記基板の伸縮に応じて、前記液滴を吐出する前記ノズルを制御される、
ことを特徴とするノズルユニット。
【請求項13】
前記基板の伸縮は、押圧によって前記基板に形成された基準マークの位置に基づいて算出される、 ことを特徴とする請求項12に記載のノズルユニット。
【請求項14】
前記複数のノズルは、押圧によって前記基板に形成された隔壁の位置に基づいて、前記液滴を吐出する、
ことを特徴とする請求項13に記載のノズルユニット。
【請求項15】
前記基準マークと前記隔壁とは、同時に形成されることを特徴とする請求項14に記載のノズルユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−33741(P2013−33741A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−201224(P2012−201224)
【出願日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【分割の表示】特願2009−510771(P2009−510771)の分割
【原出願日】平成20年3月24日(2008.3.24)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】