表面パネルの製造方法
【課題】 樹脂層と加飾フィルムとが密着した表面パネルを製造する製造方法であって、加飾フィルムに皺などが生じることなく加飾部を高精度に位置決めできる製造方法を提供する。
【解決手段】 第1の型10の成形凹部12と第2の型20の成形凸部23との間に形成されたキャビティC内に未成形の加飾フィルム5を介在させ、ゲート13からキャビティCの内部の溶融樹脂4aを射出する。溶融樹脂4aの圧力によって、加飾フィルム5が成形凸部23の表面に密着させられる。第1の型10と第2の型20との間で、加飾フィルム5を拘束せず、延伸しやすくしておくことにより、加飾フィルム5が皺を発生することなく、成形凸部23に密着できるようになる。
【解決手段】 第1の型10の成形凹部12と第2の型20の成形凸部23との間に形成されたキャビティC内に未成形の加飾フィルム5を介在させ、ゲート13からキャビティCの内部の溶融樹脂4aを射出する。溶融樹脂4aの圧力によって、加飾フィルム5が成形凸部23の表面に密着させられる。第1の型10と第2の型20との間で、加飾フィルム5を拘束せず、延伸しやすくしておくことにより、加飾フィルム5が皺を発生することなく、成形凸部23に密着できるようになる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯機器やその他の電子機器に設置される加飾層を有する表面パネルを、最少の工程で製造できる表面パネルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯用機器やその他の電子機器に設けられた表面パネルは、中央部に液晶表示パネルなどの表示画面を透過させる透過領域が形成され、この透過領域の周囲に、枠状に着色した加飾部が設けられている。
【0003】
従来の表面パネルは、中央部に窓を有する枠状の加飾部が合成樹脂で形成されて、前記窓にガラス板が嵌め込まれ、このガラス板が透過領域となったものや、透光性の合成樹脂でパネルが形成され、枠状の加飾部を有する樹脂フィルムがパネルの表面や裏面に貼られたものが一般的である。
【0004】
透過領域がガラス板で形成されたものは、透過領域の透明度が良好で高級感のある表面パネルとすることが可能であるが、ガラス板を加飾部の窓に嵌める作業が必要になり組立作業が煩雑である。また、樹脂フィルムがパネルに貼り合わされたものは、樹脂フィルムを貼る作業が煩雑であり、また、パネルと樹脂フィルムとを貼り合わせる際の位置決め精度を高く維持するのが困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−130283号公報
【特許文献2】特公昭50−19132号公報
【特許文献3】特開平6−344377号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1ないし特許文献3には、表面パネルの製造方法が開示されている。
特許文献1に開示された製造方法は、透過領域や加飾部が形成された樹脂フィルムが金型のキャビティの内部に設置された状態で、キャビティ内に溶融樹脂が射出されて表面パネルの形状が決められる。この製造方法では、樹脂フィルムを予めパネル表面に倣う湾曲形状に成形した後に金型の内部に設置することが必要であり、工程が煩雑である。また、樹脂フィルムをキャビティの内部に位置決めする必要があるが、その位置決め精度を高めるのが難しい。
【0007】
特許文献2に記載された製造方法は、雌金型に印刷層を有する熱可塑性合成樹脂フィルムを設置し、フィルムを加熱して雌金型の吸引孔を真空状態とし、フィルムを雌金型の形状に倣うように真空成形する。その後に、雌金型と雄金型とを合わせてキャビティを形成し、キャビティ内に溶融樹脂を供給して樹脂層を形成し、真空成形後のフィルムと樹脂層とを密着させている。この製造方法は、雌金型によるフィルムの真空成形と、溶融樹脂をキャビティに供給する射出成形の2つの工程が必要となるため、製造工程が複雑である。
【0008】
特許文献3に記載された製造方法は、凹状の成形面と通気孔を有する雌型に、加飾シートを設置し、通気孔を吸引して加飾シートを雌型の表面に固定する。その後に、雌型と雄型を合わせて、加飾シートが内部に位置するキャビティを形成し、キャビティ内に溶融樹脂を供給して樹脂層を形成して、樹脂層と加飾シートとを密着させている。
【0009】
特許文献3に記載された製造方法は、雌型に形成された通気孔の吸引力で、雌型に加飾シートを固定した状態でキャビティ内に溶融樹脂を射出している。自由度が無く拘束された加飾シートに溶融樹脂からの圧力が作用すると、加飾シートに皺などが発生しやすく、皺が発生したままの状態で加飾シートと樹脂層とが密着する現象が発生しやすい。
【0010】
さらに、特許文献1,2,3に記載された製造方法は、いずれも樹脂層の突側となる表面に加飾フィルムを設置するものであり、携帯用機器などの表面パネルなどのように凹形状側である裏側に加飾フィルムを設置できるものではない。
【0011】
そのため、表面パネルの表面を指などで操作することで、加飾フィルムが損傷したり、破損するおそれがある。
【0012】
本発明は上記従来の課題を解決するものであり、最少の工程で、樹脂層の凹形状側である裏面側に加飾部を有するフィルムを設置することができる表面パネルの製造方法を提供することを目的としている。
【0013】
また、本発明は、加飾部を有するフィルムを皺などが生じにくい状態で、樹脂層と一体化できる表面パネルの製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、表側に向けて突形状とされた透光性の樹脂層と、前記樹脂層の裏側に設けられた加飾部とを有する表面パネルの製造方法において、
成形凹部を有する第1の型と成形凸部を有する第2の型とを使用し、
加飾部が形成された未成形のフィルムを第1の型と第2の型との間に設置する工程と、
第1の型と第2の型を合わせて、前記成形凹部と前記成形凸部との間に、前記フィルムが位置するキャビティを形成する工程と、
第1の型に形成されたゲートからキャビティ内に溶融樹脂を射出して、その圧力で前記フィルムを前記成形凸部に密着させるとともに、前記キャビティ内で成形された前記樹脂層と前記フィルムとを密着させる工程と、
を有することを特徴とするものである。
【0015】
本発明の表面パネルの製造方法は、未成形のフィルムを型に設置し、溶融樹脂を射出する工程のみで、樹脂層にフィルムを密着させることができる。製造後の表面パネルは、凹形状側である裏側に加飾部を有するフィルムが密着し、パネル表面に加飾部を有するフィルムが露出していないものとなる。したがって、パネル表面に指を触れても、加飾部が剥がれたり損傷することがない。
【0016】
本発明は、前記キャビティの外側で第1の型と第2の型との間に位置している前記フィルムの外周部が、前記キャビティに溶融樹脂が射出されるときの圧力と熱によって延伸可能である。
【0017】
本発明は、第1の型と第2の型との間でフィルムを完全に拘束しておらず、2つの型の間でフィルムが延伸できる状態である。そのため、キャビティ内に供給された溶融樹脂でフィルムが第2の型の形成凸部に押し付けられるときに、フィルムに皺などが発生しにくい。
【0018】
本発明は、前記キャビティから外れた外側領域に、前記フィルムを位置決めする複数の位置決めピンが設けられており、前記フィルムの外周部が延伸されるときに、前記位置決めピンが挿通されている穴が拡張されるものとして構成できる。
【0019】
上記位置決めピンを設けることにより、フィルムの加飾部と樹脂層とを高い精度で位置決めすることが可能である。また位置決めピンが挿通されている部分でフィルムが伸びることで、成形の際にフィルムに皺などが発生しにくい。
【0020】
本発明は、前記キャビティは、第1の型と第2の型とが対向する方向と直交する長さ方向が、重力方向に向けられて設置される。そして、前記ゲートは、前記キャビティの縦方向の中点よりも下側に設けられていることが好ましく、さらに、前記ゲートは、第2の型の前記成形凸部の下側の立ち上がり部の中点よりも第1の型の方向へ寄った位置に設けられていることが好ましい。
【0021】
本発明は、前記フィルムは、前記成形凸部に向く裏面に、枠形状の加飾部を形成する加飾塗膜と、この加飾塗膜を覆う微細なフィラーを含む離型塗膜が形成されているものとして構成することができる。
【0022】
上記離型塗膜が形成されていると、成型後の表面パネルを第2の型から離すときに、加飾部が成形凸部から剥がれやすくなる。その結果、前記成形凸部の表面に離型剤を塗布しなくても、表面パネルを第2の型から剥がしやすくなる。フィルムの透過領域に離型剤が付着しないために、透過領域の光学特性を良好に保つことができる。
【0023】
本発明は、前記樹脂層と前記フィルムが同じ樹脂材料であることが好ましい。
同じ樹脂材料を使用すると、樹脂層とフィルムとの境界部が互いに溶融し、一体化して分離しにくくなる。
【発明の効果】
【0024】
本発明は、主に型合わせの工程と溶融樹脂の射出工程の2つの工程によって、加飾部を有するフィルムを樹脂層に密着させることができる。また、フィルムが皺を発生しにくく、さらには、加飾部と樹脂層との位置合わせも容易である。
【0025】
製造された表面パネルは、凹形状である裏側にフィルムが位置し、指などが頻繁に触れる表面側に加飾部が現れていないので、指などによって加飾部が損傷したり、剥がれることがない。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の製造方法で製造された表面パネルの斜視図、
【図2】図1に示す表面パネルのII−II線の断面図、
【図3】図1に示す表面パネルのIII−III線の断面図、
【図4】加飾フィルムの平面図、
【図5】加飾フィルムの拡大断面図、
【図6】第1の型を成形面側から見た正面図、
【図7】図6に示す第1の型のVII−VII線の断面図、および第2の型の同じ場所の断面図、
【図8】キャビティに未成形の加飾フィルムを入れて型合わせした状態を示す断面図、
【図9】型合わせして、キャビティ内に溶融樹脂を射出した状態の断面図、
【図10】第2の型から離した直後の成形物を図9のX矢視方向から見た正面図、
【図11】本発明の実施例の製造方法において、ゲートからキャビティ内に溶融樹脂が射出される状態を拡大して示す説明図、
【図12】比較例の製造方法において、ゲートからキャビティ内に溶融樹脂が射出される状態を拡大して示す説明図、
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1ないし図3に示す表面パネル1は、携帯電話、携帯情報端末などの携帯機器のケースの一部として使用される。
【0028】
表面パネル1は、突形状が現れているのが表側2であり、凹形状が現れているのが裏側3である。表側2が携帯機器のケースの外側に向けられ、表側2が操作側または表示側となる。裏側3が携帯機器のケースの内部に向けられる。
【0029】
表面パネル1の表側2は、広い面積の前表面2aならびに長さ方向の上端(Y1側の端部)に位置する上部表面2bと、下端(Y2側の端部)に位置する下部表面2cとを有し、右横方向(X1方向)に位置する右側表面2dと、左横方向(X2方向)に位置する左側表面2eとを有している。表面パネル1の裏側3は、前裏面3aと上部裏面3bと下部裏面3cおよび右側裏面3dと左側裏面3eを有している。
【0030】
図2と図3に示すように、表面パネル1は、表側2に現れる樹脂層4と、裏側に現れる加飾フィルム5とが密着して構成されている。樹脂層4は透光性のアクリル系などの合成樹脂材料であり、例えばPMMA(ポリメタクリル酸メチル)である。図5に加飾フィルム5の断面が拡大して示されている。図5に示すように、加飾フィルム5は、透光性の基材フィルム5aと、その裏面に形成された加飾部6とを有している。基材フィルム5aは透光性の合成樹脂フィルムであり、例えば樹脂層4と同じPMMAで形成されている。
【0031】
本明細書において、透光性とは、全光線透過率が90%以上のいわゆる透明であることが好ましいが、全光線透過率がそれよりも低くても内部で光を透過できればよく、例えば、全光線透過率が60%以上であればよい。
【0032】
図1ないし図3に示すように、加飾部6は枠形状に形成されている。枠形状の加飾部6で囲まれた領域が透過領域7である。
【0033】
この表面パネル1が使用される携帯機器は、ケースの内部に液晶表示パネルなどの表示装置が設けられ、その表示画面が透過領域7の内側に位置する。携帯機器を使用するときには、透過領域7において、透光性の樹脂層4および基材フィルム5aを通して、表示画面を目視することができる。
【0034】
表面パネル1の表側2または裏側3にセンサを設けることで、前表面2aに触れた指などの接触位置を検知することが可能である。表側2には、対向する2つの抵抗層を有する押圧感知式の抵抗センサを設置することが可能である。裏側3には、前表面2aに指が触れたときに検知出力が変化する静電センサを設置することが可能である。なお、加飾フィルム5の基材フィルム5aに、静電センサを構成する透光性の電極層を形成して、加飾フィルム5とセンサとを一体化することも可能である。
【0035】
図1と図2に示すように、表面パネル1は、長さ方向(Y方向)の中点よりも下端側(Y2側)に位置する第1の開口部8と、前記中点よりも上端側(Y1側)に位置する第2の開口部9を有している。第1の開口部8と第2の開口部9は、樹脂層4と加飾フィルム5の基材フィルム5aとを貫通して形成されている。
【0036】
ケースの内部には、第1の開口部8と第2の開口部9に対向する位置に、マイクやスピーカが設置され、携帯電話としての通話動作や、表示画面に表示されている画像に対応する音響を出力できるようになっている。
【0037】
次に、上記表面パネル1の製造方法を説明する。
図6には第1の型(金型)10が示され、図7には第1の型10と第2の型(金型)20の双方が示されている。図6と図7に示すY1−Y2方向と図6に示すX1−X2方向は、成形される表面パネル1の長さ方向(Y1−Y2方向)と幅方向(X1−X2方向)に対応している。また、第1の型10と第2の型20は、Y2方向が重力方向(G方向)に向くように縦向きに設置されている。
【0038】
第1の型10は、Y1−Y2方向に延びる対向平面11を有し、その中央部に成形凹部12が設けられている。図6と図7に示すように、成形凹部12は、その底面が、表面パネル1の前表面2aを成形するための前表面成形部12aである。Y1側が上部表面2bを成形するための上部表面成形部12bであり、Y2側が下部表面2cを成形するための下部表面成形部12cである。X1側が右側表面2dを成形するための右側表面成形部12dであり、X2側が左側表面2eを成形するための左側表面成形部12eである。
【0039】
前表面成形部12aには、Y2側に、第1の開口部8に対応する矩形状の第1の段差部18が形成され、Y1側に、第2の開口部9に対応する矩形状の第2の段差部19が形成されている。
【0040】
第1の型10にゲート(湯口)13が形成されており、その開口端13aは、第1の段差部18の領域内において、成形凹部12の内部に開口している。図7には、成形凹部12のY1−Y2方向の中心Oが示されている。この中心Oは、上部表面成形部12bと下部表面成形部12cとの中点である。ゲート13は中心Oよりも下側(Y2側)に位置しており、ゲート13は、中心Oと下部表面成形部12cとの中点よりもさらにY2側に位置している。
【0041】
図6と図7に示すように、第1の型10には、成形凹部12よりもY1側に逃げ凹部14が形成されており、成形凹部12の上部表面成形部12bと逃げ凹部14との間に、複数の排気通路15が形成されている。この排気通路15は、対向平面11よりもわずかに窪む浅い溝である。
【0042】
図6に示すように、成形凹部12の外側の4箇所に、逃げ穴16が形成されている。
図7に示すように、第2の型20は、Y1−Y2方向に延びる対向平面21を有しており、その中央部に第1の型10に向けて突出する成形凸部23が一体に形成されている。成形凸部23の頂部は、表面パネル1の前裏面3aを成形する前裏面成形部23aである。成形凸部23のY1側が、上部裏面3bを成形する上部裏面成形部23bで、Y2側が、下部裏面3cを成形する下部裏面成形部23cである。また、図には現れていないが、成形凸部23には、右側裏面3dを成形する右側裏面成形部と、左側裏面3eを成形する左側裏面成形部が設けられている。
【0043】
図7に示すように、第2の型20に、第1の離型ピン24と第2の離型ピン25が、進退自在に設けられている。第1の離型ピン24は、第1の型10の第1の段差部18に対向する位置に配置され、第2の離型ピン25は、第2の段差部19に対向する位置に配置されている。
【0044】
第2の型20には、成形凸部23よりも外側の4箇所に位置決めピン26が固定されている。位置決めピン26は、対向平面21から垂直に突出している。第1の型10と第2の型20が型合わせされると、位置決めピン26が、それぞれ第1の型10の逃げ穴16の内部に挿入される。
【0045】
位置決めピン26の配置位置と逃げ穴16の配置位置は一致している。図6に示すように、4箇所の位置決めピン26は、成形凹部12の中心Oから等距離に位置している。前記中心Oは、成形凹部12を長さ方向(Y1−Y2方向)に二分し、且つ幅方向(X1−X2方向)に二分した点に位置している。それぞれの位置決めピン26は、中心Oを通過して長手方向に延びる中心線O1に対して等角度θの方向で、且つ中心Oから同じ距離だけ離れて位置している。
【0046】
なお、成形される表面パネル1の形状、すなわち成形凹部12と成形凸部23の形状によっては、位置決めピン26と逃げ穴16の位置が、全て中心Oから同じ距離である必要はない。例えば、Y1側の位置決めピン26が、Y2側の位置決めピン26よりも中心OからY方向へ離れていてもよい。ただし、Y1側の2つの位置決めピン26と、Y2側の2つの位置決めピン26のX方向の間隔が互いに同じであることが好ましい。
【0047】
図7に示すように、第2の型20の対向平面21の複数箇所に、隙間設定部27が突出している。図8に示すように、第1の型10と第2の型20が合わせられると、隙間設定部27が、第1の型の対向平面11に突き当たり、第1の型10の対向平面11と第2の型20の対向平面21との対向隙間Tが決められる。この対向隙間Tは、加飾フィルム5の厚さ寸法とほぼ一致している。または、加飾フィルム5の厚さ寸法よりもわずかに大きく設定されている。すなわち、対向隙間Tは、加飾フィルム5を強固に挟み込むのではなく、溶融樹脂からの圧力によって加飾フィルム5に応力が作用したときに、加飾フィルム5が対向隙間T内で延伸できるように設定されている。
【0048】
なお、隙間設定部27は、第1の型10の対向平面11に設けられていてもよいいし、対向平面11と対向平面21の双方に設けられていてもよい。
【0049】
図4は、未成形の加飾フィルム5を前方から見た平面図である。加飾フィルム5は、表面パネル1の透過領域7を形成するための窓部7aを除いてその周囲に加飾部6が枠状に形成されている。また加飾フィルム5には、角部に近い4箇所に位置決め穴5bが開口している。
【0050】
図5に加飾フィルム5の断面図が示されている。例えばPMMA樹脂で形成された基材フィルム5aは、厚さが0.05〜0.3mm程度である。加飾部6は基材フィルム5aの裏面に塗装により形成されている。加飾部6は、基材フィルム5aに密着する加飾塗膜6aを有している。加飾塗膜6aはポリエステル系樹脂を主体とした着色層である。図1に示すように、表面パネル1を前方から見たときに、加飾部6は加飾塗膜6aの色相として目視される。加飾塗膜6aの裏側には裏打ち塗膜6bが形成されている。裏打ち塗膜6bはポリエステル樹脂を主体とした着色層であり、加飾部6において、電子機器のケースの内部が透視されることなく、且つ加飾塗膜6aによる色相を鮮明にできるように形成されている。そのため、加飾塗膜6aの厚さは3〜15μm程度であり、裏打ち塗膜6bの厚さはそれよりも大きい20〜50μmである。
【0051】
加飾部6には、第2の型20に対面する離型塗膜6cが形成されている。離型塗膜6cは、ポリエステル系樹脂などの熱硬化型樹脂で内部に無機フィラーが混在しているいわゆる艶消し塗膜である。無機フィラーは、シリカ、酸化チタン、タルク、マイカ、ガラスなどの微細粒子であり、離型塗膜6cに対しておおむね1〜3質量%の範囲で含まれている。
【0052】
離型塗膜6cは、伸び力に対する追従性が高く、成形される表面パネル1の裏側3の形状に追従しやく、一方で、加飾塗装6aと裏打ち塗膜6bは、基材フィルム5aとの密着性が良好で塗膜どうしの密着性が高くなるように、それぞれ硬化剤の種類を選択することで調整されている。
【0053】
無機フィラーを含む離型塗膜6cが印刷工程で塗布され乾燥すると、樹脂層が収縮し、離型塗膜6cの表面に、無機フィラーが存在する部分と存在しない部分をトレースする形状の細かな凹凸が形成される。
【0054】
上記離型塗膜6cを形成することにより、表面パネル1が成形された後に、加飾部6が第2の型20から離れやすくなる。そのため、第2の型20の成形凸部23の表面に油剤などの離型剤を塗布する必要がなくなる。離型剤を使用しないで成形された表面パネル1は、加飾フィルム5の図4に示す窓部7aの表面に離型剤が付着しないので、透過領域7の光透過性が良好になり、透過領域7で目視される表示画面の表示品質を良好に保てるようになる。
【0055】
図7に示すように、第1の型10と第2の型20とが離れている状態で、第2の型20に加飾フィルム5が設置される。図4に示す位置決め穴5bを位置決めピン26に挿通することで、第2の型20に対して加飾フィルム5が位置決めされて設置される。このとき、第1の型10と第2の型20は予熱が与えられている。その温度は常温よりも高く、加飾フィルム5の基材フィルム5aのガラス転移点よりも低く、例えば60〜100℃程度である。
【0056】
図8に示すように、第1の型10と第2の型20とが合わされると、第2の型20から突出する位置決めピン26が、第1の型10の逃げ穴16の内部に入り込む。第2の型20の隙間設定部27が第1の型10の対向平面11に突き当たり、第1の型10の対向平面11と第2の型20の対向平面21との間に対向隙間Tが設定される。また、第1の型10の成形凹部12と第2の型20の成形凸部23との間にキャビティCが形成される。
【0057】
図8に示すように、型が合わせられると、位置決めピン26で位置決めされている加飾フィルム5が成形凸部23に押されてやや張力が与えられた状態でキャビティCの内部に設置される。また加飾フィルム5の外周部分は、第1の型10と第2の型20との対向隙間Tの内部に設置される。
【0058】
次に、図9に示すように、第1の型10のゲート13からキャビティC内に、PMMAなどの溶融樹脂4aが射出される。
【0059】
予熱されている加飾フィルム5は、溶融樹脂4aと接触することでガラス転移点に近い温度まで加熱されて軟化するとともに、溶融樹脂4aの射出圧力によって、成形凸部23の表面に押し付けられる。成形凸部23の表面に押し付けられた加飾フィルム5は面方向へ延伸しようとするが、加飾フィルム5が対向隙間Tの内部において拘束を受けないため、外周方向へ向けて延伸することができる。よって、成形凸部23の表面に押し付けられた加飾フィルム5がキャビティCの内部で比較的自由に延伸でき、皺などが発生しにくくなる。
【0060】
溶融樹脂4aがキャビティCの内部に射出されることによって、溶融樹脂4aと加飾フィルム5とで、表面パネル1の表側2の形状と裏側3の形状が成形される。さらに、図10に示すように、キャビティCからはみ出している加飾フィルム5の外周部分が、Y1方向とY2方向ならびにX1方向とX2方向へ延び出る。また、加飾フィルム5の基材フィルム5aが軟化しているため、位置決め穴5bが放射方向に拡張される。
【0061】
図10に示すように、加飾フィルム5の外周部がY1,Y2,X1,X2方向へ延びるときに、4箇所の位置決めピン26で各方向へ均等な力で支持されるために、加飾フィルム5に形成された窓部7aをキャビティCの中心部に位置決めした状態を継続でき、図1に示すように成型された表面パネル1では、透過領域7を前表面2aに対して均等な位置に形成しやすくなる。なお、溶融樹脂を射出するときに加飾フィルム5に生じる延伸を加味して、加飾フィルム5の窓部7aの形や大きさを予め設定しておくことが好ましい。
【0062】
第1の型10と第2の型20は、重力方向(G方向)に対して縦向きに設置され、ゲート13がキャビティCの中心Oよりも十分に低い位置にあることによっても、加飾フィルム5に皺が発生するのを防止しやすくなる。
【0063】
図11(A)に示すように、型が合わされた段階では、下部表面成形部12cと下部裏面成形部23cとの間で、キャビティC内を加飾フィルム5が横断している。図11(B)に示すように、ゲート13からキャビティC内に溶融樹脂4aが射出されると、溶融樹脂4aが重力によって、下部表面成形部12cと下部裏面成形部23cとの間に流れ込み、F1方向の流れによって、加飾フィルム5が下部裏面成形部23cの表面に沿って押し付けられる。ゲート13は低い位置にあるため、溶融樹脂のF1方向への流れに乱れが生じにくく、加飾フィルム5が皺を発生することなく下部裏面成形部23cに密着していく。
【0064】
図11(C)に示すように、キャビティCの下部が溶融樹脂で満たされ、加飾フィルム5が下部裏面成形部23cに密着させられると、溶融樹脂がY1方向へ徐々に上昇して行く。このとき、溶融樹脂4aのF2方向への流れの力によって、加飾フィルム5が成形凸部23の前裏面成形部23aに上向きに密着させられて行く。
【0065】
キャビティC内で溶融樹脂4aが上昇して行く間に、キャビティC内の空気が、第1の型10の成形凹部12の上端部に設けられた排気通路15から逃げ凹部14の内部に排出される。
【0066】
キャビティC内の上記の加飾フィルム5の挙動により、加飾フィルム5に皺が発生しにくく、加飾フィルム5が成形凸部23の表面に密着しやすくなる。
【0067】
図12は比較例として、第1の型10の下部表面成形部12cの縁部に近い位置にゲート13Aを設けたときの成形動作を示している。この場合、図12(B)に示すように、ゲート13AからキャビティCに射出される溶融樹脂4aに斜め上向きのF3方向の流れが発生するために、加飾フィルム5に皺が発生しやすくなる。図12(C)に示すように、その後に、F4方向へ流れていく溶融樹脂4aによって、加飾フィルム5の皺が上に押し上げられることになり、皺が解消されない確率が高くなる。
【0068】
したがって、第2の型20の対向平面21から下部裏面成形部23cの高さ寸法Hの半分(H/2)までの範囲に、ゲートを設けないことが好ましい。
【0069】
キャビティCに溶融樹脂が供給されて冷却された後に、第1の型10と第2の型20が離れる。第2の型20に設けられた第1の離型ピン24と第2の離型ピン25を突出させることで、成形物が第2の型20の成形凸部23から分離される。図5に示すように、加飾部6の裏側の最表面に無機フィラーを混入した剥離塗膜6cが形成されているため、塗膜が第2の型20の成形凸部23の表面から離れやすくなっている。そのため、成形凸部23に離型剤を塗布する必要がなくなり、成型後の表面パネル1の透過領域7が油膜などで汚れることが生じにくい。
【0070】
図10に示すように、成形物では、第1の型10の第1の段差部18で形成された薄肉部18aにゲート痕13bと、第1の離型ピン24の痕跡が残り、第2の段差部19で形成された薄肉部19aに、第2の離型ピン25の痕跡が残る。この薄肉部18aと19aの部分で樹脂層4と加飾フィルム5を打ち抜いて第1の開口部8と第2の開口部9を形成することで、ゲート痕13bなどを除去できる。またキャビティからはみ出した樹脂層や加飾フィルム5を切断することで、表面パネル1が形成される。
【0071】
上記製造方法で完成した表面パネル1は、図1に示すように、表側2の全面が樹脂層であり、表側2に加飾部6が露出していないため、表側2の前表面2aを指で操作するときに、加飾部6が損傷したり剥離することがない。
【0072】
本発明の表面パネルは、上記実施の形態の携帯機器用のケースに使用されるものに限られず、各種電気製品を操作するリモートコントローラやその他の電子機器のケースの一部として使用することが可能である。
【符号の説明】
【0073】
1 表面パネル
2 表側
3 裏側
4 樹脂層
4a 溶融樹脂
5 加飾フィルム
5a 基材フィルム
5b 位置決め穴
6 加飾部
6a 加飾塗膜
6b 裏打ち塗膜
6c 離型塗膜
7 透過領域
10 第1の型
11 対向平面
12 成形凹部
13 ゲート
15 排気通路
20 第2の型
21 対向平面
23 成形凸部
24,25 離型ピン
26 位置決めピン
27 隙間設定部
C キャビティ
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯機器やその他の電子機器に設置される加飾層を有する表面パネルを、最少の工程で製造できる表面パネルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯用機器やその他の電子機器に設けられた表面パネルは、中央部に液晶表示パネルなどの表示画面を透過させる透過領域が形成され、この透過領域の周囲に、枠状に着色した加飾部が設けられている。
【0003】
従来の表面パネルは、中央部に窓を有する枠状の加飾部が合成樹脂で形成されて、前記窓にガラス板が嵌め込まれ、このガラス板が透過領域となったものや、透光性の合成樹脂でパネルが形成され、枠状の加飾部を有する樹脂フィルムがパネルの表面や裏面に貼られたものが一般的である。
【0004】
透過領域がガラス板で形成されたものは、透過領域の透明度が良好で高級感のある表面パネルとすることが可能であるが、ガラス板を加飾部の窓に嵌める作業が必要になり組立作業が煩雑である。また、樹脂フィルムがパネルに貼り合わされたものは、樹脂フィルムを貼る作業が煩雑であり、また、パネルと樹脂フィルムとを貼り合わせる際の位置決め精度を高く維持するのが困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−130283号公報
【特許文献2】特公昭50−19132号公報
【特許文献3】特開平6−344377号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1ないし特許文献3には、表面パネルの製造方法が開示されている。
特許文献1に開示された製造方法は、透過領域や加飾部が形成された樹脂フィルムが金型のキャビティの内部に設置された状態で、キャビティ内に溶融樹脂が射出されて表面パネルの形状が決められる。この製造方法では、樹脂フィルムを予めパネル表面に倣う湾曲形状に成形した後に金型の内部に設置することが必要であり、工程が煩雑である。また、樹脂フィルムをキャビティの内部に位置決めする必要があるが、その位置決め精度を高めるのが難しい。
【0007】
特許文献2に記載された製造方法は、雌金型に印刷層を有する熱可塑性合成樹脂フィルムを設置し、フィルムを加熱して雌金型の吸引孔を真空状態とし、フィルムを雌金型の形状に倣うように真空成形する。その後に、雌金型と雄金型とを合わせてキャビティを形成し、キャビティ内に溶融樹脂を供給して樹脂層を形成し、真空成形後のフィルムと樹脂層とを密着させている。この製造方法は、雌金型によるフィルムの真空成形と、溶融樹脂をキャビティに供給する射出成形の2つの工程が必要となるため、製造工程が複雑である。
【0008】
特許文献3に記載された製造方法は、凹状の成形面と通気孔を有する雌型に、加飾シートを設置し、通気孔を吸引して加飾シートを雌型の表面に固定する。その後に、雌型と雄型を合わせて、加飾シートが内部に位置するキャビティを形成し、キャビティ内に溶融樹脂を供給して樹脂層を形成して、樹脂層と加飾シートとを密着させている。
【0009】
特許文献3に記載された製造方法は、雌型に形成された通気孔の吸引力で、雌型に加飾シートを固定した状態でキャビティ内に溶融樹脂を射出している。自由度が無く拘束された加飾シートに溶融樹脂からの圧力が作用すると、加飾シートに皺などが発生しやすく、皺が発生したままの状態で加飾シートと樹脂層とが密着する現象が発生しやすい。
【0010】
さらに、特許文献1,2,3に記載された製造方法は、いずれも樹脂層の突側となる表面に加飾フィルムを設置するものであり、携帯用機器などの表面パネルなどのように凹形状側である裏側に加飾フィルムを設置できるものではない。
【0011】
そのため、表面パネルの表面を指などで操作することで、加飾フィルムが損傷したり、破損するおそれがある。
【0012】
本発明は上記従来の課題を解決するものであり、最少の工程で、樹脂層の凹形状側である裏面側に加飾部を有するフィルムを設置することができる表面パネルの製造方法を提供することを目的としている。
【0013】
また、本発明は、加飾部を有するフィルムを皺などが生じにくい状態で、樹脂層と一体化できる表面パネルの製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、表側に向けて突形状とされた透光性の樹脂層と、前記樹脂層の裏側に設けられた加飾部とを有する表面パネルの製造方法において、
成形凹部を有する第1の型と成形凸部を有する第2の型とを使用し、
加飾部が形成された未成形のフィルムを第1の型と第2の型との間に設置する工程と、
第1の型と第2の型を合わせて、前記成形凹部と前記成形凸部との間に、前記フィルムが位置するキャビティを形成する工程と、
第1の型に形成されたゲートからキャビティ内に溶融樹脂を射出して、その圧力で前記フィルムを前記成形凸部に密着させるとともに、前記キャビティ内で成形された前記樹脂層と前記フィルムとを密着させる工程と、
を有することを特徴とするものである。
【0015】
本発明の表面パネルの製造方法は、未成形のフィルムを型に設置し、溶融樹脂を射出する工程のみで、樹脂層にフィルムを密着させることができる。製造後の表面パネルは、凹形状側である裏側に加飾部を有するフィルムが密着し、パネル表面に加飾部を有するフィルムが露出していないものとなる。したがって、パネル表面に指を触れても、加飾部が剥がれたり損傷することがない。
【0016】
本発明は、前記キャビティの外側で第1の型と第2の型との間に位置している前記フィルムの外周部が、前記キャビティに溶融樹脂が射出されるときの圧力と熱によって延伸可能である。
【0017】
本発明は、第1の型と第2の型との間でフィルムを完全に拘束しておらず、2つの型の間でフィルムが延伸できる状態である。そのため、キャビティ内に供給された溶融樹脂でフィルムが第2の型の形成凸部に押し付けられるときに、フィルムに皺などが発生しにくい。
【0018】
本発明は、前記キャビティから外れた外側領域に、前記フィルムを位置決めする複数の位置決めピンが設けられており、前記フィルムの外周部が延伸されるときに、前記位置決めピンが挿通されている穴が拡張されるものとして構成できる。
【0019】
上記位置決めピンを設けることにより、フィルムの加飾部と樹脂層とを高い精度で位置決めすることが可能である。また位置決めピンが挿通されている部分でフィルムが伸びることで、成形の際にフィルムに皺などが発生しにくい。
【0020】
本発明は、前記キャビティは、第1の型と第2の型とが対向する方向と直交する長さ方向が、重力方向に向けられて設置される。そして、前記ゲートは、前記キャビティの縦方向の中点よりも下側に設けられていることが好ましく、さらに、前記ゲートは、第2の型の前記成形凸部の下側の立ち上がり部の中点よりも第1の型の方向へ寄った位置に設けられていることが好ましい。
【0021】
本発明は、前記フィルムは、前記成形凸部に向く裏面に、枠形状の加飾部を形成する加飾塗膜と、この加飾塗膜を覆う微細なフィラーを含む離型塗膜が形成されているものとして構成することができる。
【0022】
上記離型塗膜が形成されていると、成型後の表面パネルを第2の型から離すときに、加飾部が成形凸部から剥がれやすくなる。その結果、前記成形凸部の表面に離型剤を塗布しなくても、表面パネルを第2の型から剥がしやすくなる。フィルムの透過領域に離型剤が付着しないために、透過領域の光学特性を良好に保つことができる。
【0023】
本発明は、前記樹脂層と前記フィルムが同じ樹脂材料であることが好ましい。
同じ樹脂材料を使用すると、樹脂層とフィルムとの境界部が互いに溶融し、一体化して分離しにくくなる。
【発明の効果】
【0024】
本発明は、主に型合わせの工程と溶融樹脂の射出工程の2つの工程によって、加飾部を有するフィルムを樹脂層に密着させることができる。また、フィルムが皺を発生しにくく、さらには、加飾部と樹脂層との位置合わせも容易である。
【0025】
製造された表面パネルは、凹形状である裏側にフィルムが位置し、指などが頻繁に触れる表面側に加飾部が現れていないので、指などによって加飾部が損傷したり、剥がれることがない。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の製造方法で製造された表面パネルの斜視図、
【図2】図1に示す表面パネルのII−II線の断面図、
【図3】図1に示す表面パネルのIII−III線の断面図、
【図4】加飾フィルムの平面図、
【図5】加飾フィルムの拡大断面図、
【図6】第1の型を成形面側から見た正面図、
【図7】図6に示す第1の型のVII−VII線の断面図、および第2の型の同じ場所の断面図、
【図8】キャビティに未成形の加飾フィルムを入れて型合わせした状態を示す断面図、
【図9】型合わせして、キャビティ内に溶融樹脂を射出した状態の断面図、
【図10】第2の型から離した直後の成形物を図9のX矢視方向から見た正面図、
【図11】本発明の実施例の製造方法において、ゲートからキャビティ内に溶融樹脂が射出される状態を拡大して示す説明図、
【図12】比較例の製造方法において、ゲートからキャビティ内に溶融樹脂が射出される状態を拡大して示す説明図、
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1ないし図3に示す表面パネル1は、携帯電話、携帯情報端末などの携帯機器のケースの一部として使用される。
【0028】
表面パネル1は、突形状が現れているのが表側2であり、凹形状が現れているのが裏側3である。表側2が携帯機器のケースの外側に向けられ、表側2が操作側または表示側となる。裏側3が携帯機器のケースの内部に向けられる。
【0029】
表面パネル1の表側2は、広い面積の前表面2aならびに長さ方向の上端(Y1側の端部)に位置する上部表面2bと、下端(Y2側の端部)に位置する下部表面2cとを有し、右横方向(X1方向)に位置する右側表面2dと、左横方向(X2方向)に位置する左側表面2eとを有している。表面パネル1の裏側3は、前裏面3aと上部裏面3bと下部裏面3cおよび右側裏面3dと左側裏面3eを有している。
【0030】
図2と図3に示すように、表面パネル1は、表側2に現れる樹脂層4と、裏側に現れる加飾フィルム5とが密着して構成されている。樹脂層4は透光性のアクリル系などの合成樹脂材料であり、例えばPMMA(ポリメタクリル酸メチル)である。図5に加飾フィルム5の断面が拡大して示されている。図5に示すように、加飾フィルム5は、透光性の基材フィルム5aと、その裏面に形成された加飾部6とを有している。基材フィルム5aは透光性の合成樹脂フィルムであり、例えば樹脂層4と同じPMMAで形成されている。
【0031】
本明細書において、透光性とは、全光線透過率が90%以上のいわゆる透明であることが好ましいが、全光線透過率がそれよりも低くても内部で光を透過できればよく、例えば、全光線透過率が60%以上であればよい。
【0032】
図1ないし図3に示すように、加飾部6は枠形状に形成されている。枠形状の加飾部6で囲まれた領域が透過領域7である。
【0033】
この表面パネル1が使用される携帯機器は、ケースの内部に液晶表示パネルなどの表示装置が設けられ、その表示画面が透過領域7の内側に位置する。携帯機器を使用するときには、透過領域7において、透光性の樹脂層4および基材フィルム5aを通して、表示画面を目視することができる。
【0034】
表面パネル1の表側2または裏側3にセンサを設けることで、前表面2aに触れた指などの接触位置を検知することが可能である。表側2には、対向する2つの抵抗層を有する押圧感知式の抵抗センサを設置することが可能である。裏側3には、前表面2aに指が触れたときに検知出力が変化する静電センサを設置することが可能である。なお、加飾フィルム5の基材フィルム5aに、静電センサを構成する透光性の電極層を形成して、加飾フィルム5とセンサとを一体化することも可能である。
【0035】
図1と図2に示すように、表面パネル1は、長さ方向(Y方向)の中点よりも下端側(Y2側)に位置する第1の開口部8と、前記中点よりも上端側(Y1側)に位置する第2の開口部9を有している。第1の開口部8と第2の開口部9は、樹脂層4と加飾フィルム5の基材フィルム5aとを貫通して形成されている。
【0036】
ケースの内部には、第1の開口部8と第2の開口部9に対向する位置に、マイクやスピーカが設置され、携帯電話としての通話動作や、表示画面に表示されている画像に対応する音響を出力できるようになっている。
【0037】
次に、上記表面パネル1の製造方法を説明する。
図6には第1の型(金型)10が示され、図7には第1の型10と第2の型(金型)20の双方が示されている。図6と図7に示すY1−Y2方向と図6に示すX1−X2方向は、成形される表面パネル1の長さ方向(Y1−Y2方向)と幅方向(X1−X2方向)に対応している。また、第1の型10と第2の型20は、Y2方向が重力方向(G方向)に向くように縦向きに設置されている。
【0038】
第1の型10は、Y1−Y2方向に延びる対向平面11を有し、その中央部に成形凹部12が設けられている。図6と図7に示すように、成形凹部12は、その底面が、表面パネル1の前表面2aを成形するための前表面成形部12aである。Y1側が上部表面2bを成形するための上部表面成形部12bであり、Y2側が下部表面2cを成形するための下部表面成形部12cである。X1側が右側表面2dを成形するための右側表面成形部12dであり、X2側が左側表面2eを成形するための左側表面成形部12eである。
【0039】
前表面成形部12aには、Y2側に、第1の開口部8に対応する矩形状の第1の段差部18が形成され、Y1側に、第2の開口部9に対応する矩形状の第2の段差部19が形成されている。
【0040】
第1の型10にゲート(湯口)13が形成されており、その開口端13aは、第1の段差部18の領域内において、成形凹部12の内部に開口している。図7には、成形凹部12のY1−Y2方向の中心Oが示されている。この中心Oは、上部表面成形部12bと下部表面成形部12cとの中点である。ゲート13は中心Oよりも下側(Y2側)に位置しており、ゲート13は、中心Oと下部表面成形部12cとの中点よりもさらにY2側に位置している。
【0041】
図6と図7に示すように、第1の型10には、成形凹部12よりもY1側に逃げ凹部14が形成されており、成形凹部12の上部表面成形部12bと逃げ凹部14との間に、複数の排気通路15が形成されている。この排気通路15は、対向平面11よりもわずかに窪む浅い溝である。
【0042】
図6に示すように、成形凹部12の外側の4箇所に、逃げ穴16が形成されている。
図7に示すように、第2の型20は、Y1−Y2方向に延びる対向平面21を有しており、その中央部に第1の型10に向けて突出する成形凸部23が一体に形成されている。成形凸部23の頂部は、表面パネル1の前裏面3aを成形する前裏面成形部23aである。成形凸部23のY1側が、上部裏面3bを成形する上部裏面成形部23bで、Y2側が、下部裏面3cを成形する下部裏面成形部23cである。また、図には現れていないが、成形凸部23には、右側裏面3dを成形する右側裏面成形部と、左側裏面3eを成形する左側裏面成形部が設けられている。
【0043】
図7に示すように、第2の型20に、第1の離型ピン24と第2の離型ピン25が、進退自在に設けられている。第1の離型ピン24は、第1の型10の第1の段差部18に対向する位置に配置され、第2の離型ピン25は、第2の段差部19に対向する位置に配置されている。
【0044】
第2の型20には、成形凸部23よりも外側の4箇所に位置決めピン26が固定されている。位置決めピン26は、対向平面21から垂直に突出している。第1の型10と第2の型20が型合わせされると、位置決めピン26が、それぞれ第1の型10の逃げ穴16の内部に挿入される。
【0045】
位置決めピン26の配置位置と逃げ穴16の配置位置は一致している。図6に示すように、4箇所の位置決めピン26は、成形凹部12の中心Oから等距離に位置している。前記中心Oは、成形凹部12を長さ方向(Y1−Y2方向)に二分し、且つ幅方向(X1−X2方向)に二分した点に位置している。それぞれの位置決めピン26は、中心Oを通過して長手方向に延びる中心線O1に対して等角度θの方向で、且つ中心Oから同じ距離だけ離れて位置している。
【0046】
なお、成形される表面パネル1の形状、すなわち成形凹部12と成形凸部23の形状によっては、位置決めピン26と逃げ穴16の位置が、全て中心Oから同じ距離である必要はない。例えば、Y1側の位置決めピン26が、Y2側の位置決めピン26よりも中心OからY方向へ離れていてもよい。ただし、Y1側の2つの位置決めピン26と、Y2側の2つの位置決めピン26のX方向の間隔が互いに同じであることが好ましい。
【0047】
図7に示すように、第2の型20の対向平面21の複数箇所に、隙間設定部27が突出している。図8に示すように、第1の型10と第2の型20が合わせられると、隙間設定部27が、第1の型の対向平面11に突き当たり、第1の型10の対向平面11と第2の型20の対向平面21との対向隙間Tが決められる。この対向隙間Tは、加飾フィルム5の厚さ寸法とほぼ一致している。または、加飾フィルム5の厚さ寸法よりもわずかに大きく設定されている。すなわち、対向隙間Tは、加飾フィルム5を強固に挟み込むのではなく、溶融樹脂からの圧力によって加飾フィルム5に応力が作用したときに、加飾フィルム5が対向隙間T内で延伸できるように設定されている。
【0048】
なお、隙間設定部27は、第1の型10の対向平面11に設けられていてもよいいし、対向平面11と対向平面21の双方に設けられていてもよい。
【0049】
図4は、未成形の加飾フィルム5を前方から見た平面図である。加飾フィルム5は、表面パネル1の透過領域7を形成するための窓部7aを除いてその周囲に加飾部6が枠状に形成されている。また加飾フィルム5には、角部に近い4箇所に位置決め穴5bが開口している。
【0050】
図5に加飾フィルム5の断面図が示されている。例えばPMMA樹脂で形成された基材フィルム5aは、厚さが0.05〜0.3mm程度である。加飾部6は基材フィルム5aの裏面に塗装により形成されている。加飾部6は、基材フィルム5aに密着する加飾塗膜6aを有している。加飾塗膜6aはポリエステル系樹脂を主体とした着色層である。図1に示すように、表面パネル1を前方から見たときに、加飾部6は加飾塗膜6aの色相として目視される。加飾塗膜6aの裏側には裏打ち塗膜6bが形成されている。裏打ち塗膜6bはポリエステル樹脂を主体とした着色層であり、加飾部6において、電子機器のケースの内部が透視されることなく、且つ加飾塗膜6aによる色相を鮮明にできるように形成されている。そのため、加飾塗膜6aの厚さは3〜15μm程度であり、裏打ち塗膜6bの厚さはそれよりも大きい20〜50μmである。
【0051】
加飾部6には、第2の型20に対面する離型塗膜6cが形成されている。離型塗膜6cは、ポリエステル系樹脂などの熱硬化型樹脂で内部に無機フィラーが混在しているいわゆる艶消し塗膜である。無機フィラーは、シリカ、酸化チタン、タルク、マイカ、ガラスなどの微細粒子であり、離型塗膜6cに対しておおむね1〜3質量%の範囲で含まれている。
【0052】
離型塗膜6cは、伸び力に対する追従性が高く、成形される表面パネル1の裏側3の形状に追従しやく、一方で、加飾塗装6aと裏打ち塗膜6bは、基材フィルム5aとの密着性が良好で塗膜どうしの密着性が高くなるように、それぞれ硬化剤の種類を選択することで調整されている。
【0053】
無機フィラーを含む離型塗膜6cが印刷工程で塗布され乾燥すると、樹脂層が収縮し、離型塗膜6cの表面に、無機フィラーが存在する部分と存在しない部分をトレースする形状の細かな凹凸が形成される。
【0054】
上記離型塗膜6cを形成することにより、表面パネル1が成形された後に、加飾部6が第2の型20から離れやすくなる。そのため、第2の型20の成形凸部23の表面に油剤などの離型剤を塗布する必要がなくなる。離型剤を使用しないで成形された表面パネル1は、加飾フィルム5の図4に示す窓部7aの表面に離型剤が付着しないので、透過領域7の光透過性が良好になり、透過領域7で目視される表示画面の表示品質を良好に保てるようになる。
【0055】
図7に示すように、第1の型10と第2の型20とが離れている状態で、第2の型20に加飾フィルム5が設置される。図4に示す位置決め穴5bを位置決めピン26に挿通することで、第2の型20に対して加飾フィルム5が位置決めされて設置される。このとき、第1の型10と第2の型20は予熱が与えられている。その温度は常温よりも高く、加飾フィルム5の基材フィルム5aのガラス転移点よりも低く、例えば60〜100℃程度である。
【0056】
図8に示すように、第1の型10と第2の型20とが合わされると、第2の型20から突出する位置決めピン26が、第1の型10の逃げ穴16の内部に入り込む。第2の型20の隙間設定部27が第1の型10の対向平面11に突き当たり、第1の型10の対向平面11と第2の型20の対向平面21との間に対向隙間Tが設定される。また、第1の型10の成形凹部12と第2の型20の成形凸部23との間にキャビティCが形成される。
【0057】
図8に示すように、型が合わせられると、位置決めピン26で位置決めされている加飾フィルム5が成形凸部23に押されてやや張力が与えられた状態でキャビティCの内部に設置される。また加飾フィルム5の外周部分は、第1の型10と第2の型20との対向隙間Tの内部に設置される。
【0058】
次に、図9に示すように、第1の型10のゲート13からキャビティC内に、PMMAなどの溶融樹脂4aが射出される。
【0059】
予熱されている加飾フィルム5は、溶融樹脂4aと接触することでガラス転移点に近い温度まで加熱されて軟化するとともに、溶融樹脂4aの射出圧力によって、成形凸部23の表面に押し付けられる。成形凸部23の表面に押し付けられた加飾フィルム5は面方向へ延伸しようとするが、加飾フィルム5が対向隙間Tの内部において拘束を受けないため、外周方向へ向けて延伸することができる。よって、成形凸部23の表面に押し付けられた加飾フィルム5がキャビティCの内部で比較的自由に延伸でき、皺などが発生しにくくなる。
【0060】
溶融樹脂4aがキャビティCの内部に射出されることによって、溶融樹脂4aと加飾フィルム5とで、表面パネル1の表側2の形状と裏側3の形状が成形される。さらに、図10に示すように、キャビティCからはみ出している加飾フィルム5の外周部分が、Y1方向とY2方向ならびにX1方向とX2方向へ延び出る。また、加飾フィルム5の基材フィルム5aが軟化しているため、位置決め穴5bが放射方向に拡張される。
【0061】
図10に示すように、加飾フィルム5の外周部がY1,Y2,X1,X2方向へ延びるときに、4箇所の位置決めピン26で各方向へ均等な力で支持されるために、加飾フィルム5に形成された窓部7aをキャビティCの中心部に位置決めした状態を継続でき、図1に示すように成型された表面パネル1では、透過領域7を前表面2aに対して均等な位置に形成しやすくなる。なお、溶融樹脂を射出するときに加飾フィルム5に生じる延伸を加味して、加飾フィルム5の窓部7aの形や大きさを予め設定しておくことが好ましい。
【0062】
第1の型10と第2の型20は、重力方向(G方向)に対して縦向きに設置され、ゲート13がキャビティCの中心Oよりも十分に低い位置にあることによっても、加飾フィルム5に皺が発生するのを防止しやすくなる。
【0063】
図11(A)に示すように、型が合わされた段階では、下部表面成形部12cと下部裏面成形部23cとの間で、キャビティC内を加飾フィルム5が横断している。図11(B)に示すように、ゲート13からキャビティC内に溶融樹脂4aが射出されると、溶融樹脂4aが重力によって、下部表面成形部12cと下部裏面成形部23cとの間に流れ込み、F1方向の流れによって、加飾フィルム5が下部裏面成形部23cの表面に沿って押し付けられる。ゲート13は低い位置にあるため、溶融樹脂のF1方向への流れに乱れが生じにくく、加飾フィルム5が皺を発生することなく下部裏面成形部23cに密着していく。
【0064】
図11(C)に示すように、キャビティCの下部が溶融樹脂で満たされ、加飾フィルム5が下部裏面成形部23cに密着させられると、溶融樹脂がY1方向へ徐々に上昇して行く。このとき、溶融樹脂4aのF2方向への流れの力によって、加飾フィルム5が成形凸部23の前裏面成形部23aに上向きに密着させられて行く。
【0065】
キャビティC内で溶融樹脂4aが上昇して行く間に、キャビティC内の空気が、第1の型10の成形凹部12の上端部に設けられた排気通路15から逃げ凹部14の内部に排出される。
【0066】
キャビティC内の上記の加飾フィルム5の挙動により、加飾フィルム5に皺が発生しにくく、加飾フィルム5が成形凸部23の表面に密着しやすくなる。
【0067】
図12は比較例として、第1の型10の下部表面成形部12cの縁部に近い位置にゲート13Aを設けたときの成形動作を示している。この場合、図12(B)に示すように、ゲート13AからキャビティCに射出される溶融樹脂4aに斜め上向きのF3方向の流れが発生するために、加飾フィルム5に皺が発生しやすくなる。図12(C)に示すように、その後に、F4方向へ流れていく溶融樹脂4aによって、加飾フィルム5の皺が上に押し上げられることになり、皺が解消されない確率が高くなる。
【0068】
したがって、第2の型20の対向平面21から下部裏面成形部23cの高さ寸法Hの半分(H/2)までの範囲に、ゲートを設けないことが好ましい。
【0069】
キャビティCに溶融樹脂が供給されて冷却された後に、第1の型10と第2の型20が離れる。第2の型20に設けられた第1の離型ピン24と第2の離型ピン25を突出させることで、成形物が第2の型20の成形凸部23から分離される。図5に示すように、加飾部6の裏側の最表面に無機フィラーを混入した剥離塗膜6cが形成されているため、塗膜が第2の型20の成形凸部23の表面から離れやすくなっている。そのため、成形凸部23に離型剤を塗布する必要がなくなり、成型後の表面パネル1の透過領域7が油膜などで汚れることが生じにくい。
【0070】
図10に示すように、成形物では、第1の型10の第1の段差部18で形成された薄肉部18aにゲート痕13bと、第1の離型ピン24の痕跡が残り、第2の段差部19で形成された薄肉部19aに、第2の離型ピン25の痕跡が残る。この薄肉部18aと19aの部分で樹脂層4と加飾フィルム5を打ち抜いて第1の開口部8と第2の開口部9を形成することで、ゲート痕13bなどを除去できる。またキャビティからはみ出した樹脂層や加飾フィルム5を切断することで、表面パネル1が形成される。
【0071】
上記製造方法で完成した表面パネル1は、図1に示すように、表側2の全面が樹脂層であり、表側2に加飾部6が露出していないため、表側2の前表面2aを指で操作するときに、加飾部6が損傷したり剥離することがない。
【0072】
本発明の表面パネルは、上記実施の形態の携帯機器用のケースに使用されるものに限られず、各種電気製品を操作するリモートコントローラやその他の電子機器のケースの一部として使用することが可能である。
【符号の説明】
【0073】
1 表面パネル
2 表側
3 裏側
4 樹脂層
4a 溶融樹脂
5 加飾フィルム
5a 基材フィルム
5b 位置決め穴
6 加飾部
6a 加飾塗膜
6b 裏打ち塗膜
6c 離型塗膜
7 透過領域
10 第1の型
11 対向平面
12 成形凹部
13 ゲート
15 排気通路
20 第2の型
21 対向平面
23 成形凸部
24,25 離型ピン
26 位置決めピン
27 隙間設定部
C キャビティ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表側に向けて突形状とされた透光性の樹脂層と、前記樹脂層の裏側に設けられた加飾部とを有する表面パネルの製造方法において、
成形凹部を有する第1の型と成形凸部を有する第2の型とを使用し、
加飾部が形成された未成形のフィルムを第1の型と第2の型との間に設置する工程と、
第1の型と第2の型を合わせて、前記成形凹部と前記成形凸部との間に、前記フィルムが位置するキャビティを形成する工程と、
第1の型に形成されたゲートからキャビティ内に溶融樹脂を射出して、その圧力で前記フィルムを前記成形凸部に密着させるとともに、前記キャビティ内で成形された前記樹脂層と前記フィルムとを密着させる工程と、
を有することを特徴とする表面パネルの製造方法。
【請求項2】
前記キャビティの外側で第1の型と第2の型との間に位置している前記フィルムの外周部が、前記キャビティに溶融樹脂が射出されるときの圧力と熱によって延伸可能である請求項1記載の表面パネルの製造方法。
【請求項3】
前記キャビティから外れた外側領域に、前記フィルムを位置決めする複数の位置決めピンが設けられており、前記フィルムの外周部が延伸されるときに、前記位置決めピンが挿通されている穴が拡張される請求項2記載の表面パネルの製造方法。
【請求項4】
前記キャビティは、第1の型と第2の型とが対向する方向と直交する長さ方向が、重力方向に向けられて設置される請求項1ないし3のいずれかに記載の表面パネルの製造方法。
【請求項5】
前記ゲートは、前記キャビティの縦方向の中点よりも下側に設けられている請求項4記載の表面パネルの製造方法。
【請求項6】
前記ゲートは、第2の型の前記成形凸部の下側の立ち上がり部の中点よりも第1の型の方向へ寄った位置に設けられている請求項5記載の表面パネルの製造方法。
【請求項7】
前記フィルムは、前記成形凸部に向く裏面に、枠形状の加飾部を形成する加飾塗膜と、この加飾塗膜を覆う微細なフィラーを含む離型塗膜が形成されている請求項1ないし6のいずれかに記載の表面パネルの製造方法。
【請求項8】
前記成形凸部の表面に離型剤が塗布されていない請求項7記載の表面パネルの製造方法。
【請求項9】
前記樹脂層と前記フィルムが同じ樹脂材料である請求項1ないし8のいずれかに記載の表面パネルの製造方法。
【請求項1】
表側に向けて突形状とされた透光性の樹脂層と、前記樹脂層の裏側に設けられた加飾部とを有する表面パネルの製造方法において、
成形凹部を有する第1の型と成形凸部を有する第2の型とを使用し、
加飾部が形成された未成形のフィルムを第1の型と第2の型との間に設置する工程と、
第1の型と第2の型を合わせて、前記成形凹部と前記成形凸部との間に、前記フィルムが位置するキャビティを形成する工程と、
第1の型に形成されたゲートからキャビティ内に溶融樹脂を射出して、その圧力で前記フィルムを前記成形凸部に密着させるとともに、前記キャビティ内で成形された前記樹脂層と前記フィルムとを密着させる工程と、
を有することを特徴とする表面パネルの製造方法。
【請求項2】
前記キャビティの外側で第1の型と第2の型との間に位置している前記フィルムの外周部が、前記キャビティに溶融樹脂が射出されるときの圧力と熱によって延伸可能である請求項1記載の表面パネルの製造方法。
【請求項3】
前記キャビティから外れた外側領域に、前記フィルムを位置決めする複数の位置決めピンが設けられており、前記フィルムの外周部が延伸されるときに、前記位置決めピンが挿通されている穴が拡張される請求項2記載の表面パネルの製造方法。
【請求項4】
前記キャビティは、第1の型と第2の型とが対向する方向と直交する長さ方向が、重力方向に向けられて設置される請求項1ないし3のいずれかに記載の表面パネルの製造方法。
【請求項5】
前記ゲートは、前記キャビティの縦方向の中点よりも下側に設けられている請求項4記載の表面パネルの製造方法。
【請求項6】
前記ゲートは、第2の型の前記成形凸部の下側の立ち上がり部の中点よりも第1の型の方向へ寄った位置に設けられている請求項5記載の表面パネルの製造方法。
【請求項7】
前記フィルムは、前記成形凸部に向く裏面に、枠形状の加飾部を形成する加飾塗膜と、この加飾塗膜を覆う微細なフィラーを含む離型塗膜が形成されている請求項1ないし6のいずれかに記載の表面パネルの製造方法。
【請求項8】
前記成形凸部の表面に離型剤が塗布されていない請求項7記載の表面パネルの製造方法。
【請求項9】
前記樹脂層と前記フィルムが同じ樹脂材料である請求項1ないし8のいずれかに記載の表面パネルの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−206465(P2012−206465A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−75450(P2011−75450)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】
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