説明

表面処理方法及び処理された物品

(a)少なくとも1つの主表面を有する少なくとも1つの基材を用意する工程と、(b)(1)及び(2)を組み合わせる工程と、(1)少なくとも1つの化学的反応性部位を含む、少なくとも1つの硬化性オリゴマー又はポリマーポリシラザン、(2)(i)及び(ii)を含む、少なくとも1つのフルオロケミカル化合物、(i)少なくとも約6個の全フッ素化炭素原子を含む少なくとも1つの有機フッ素又はヘテロ有機フッ素部分、(ii)少なくとも1つの前記化学的反応性部位を通して前記ポリシラザンと反応することができる少なくとも1つの官能基、(c)前記ポリシラザンと前記フルオロケミカル化合物とを反応させて又は反応を誘導して、少なくとも1つの硬化性有機フッ素変性ポリシラザンを形成する工程と、(d)前記硬化性有機フッ素変性ポリシラザン又はその前駆体を前記基材の少なくとも1つの主表面の少なくとも一部に塗布する工程と、(e)前記硬化性有機フッ素変性ポリシラザンを硬化させて表面処理を形成する工程と、を含む、表面処理方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材(特に、例えば、セラミックス又はガラス等の硬質表面を有する基材)を処理して、その表面に撥水性、撥油性、撥染性(stain repellency)及び/又は撥汚性(dirt repellency)を付与する方法に関し、別の態様では、本発明は、上記方法によって処理された基材に関する。
【背景技術】
【0002】
基材に塗布して(例えば、硬質表面基材及び繊維質基材)、撥油性及び/又は撥水性(疎油性及び/又は疎水性)等の低表面エネルギー特性を付与するためのコーティング組成物として多くのフッ素化組成物が使用されている。しかし、コーティング又はフィルムで使用されるとき、多くのフッ素化物質は、コーティング又はフィルムの表面に拡散したり、(例えば、表面を繰り返し清浄化することにより)時間とともに消耗する傾向がある。
【0003】
これによって、反応基又は官能基を有するフッ素化誘導体(例えば、フッ素化ポリエーテルチオール)を使用して、コーティング、フィルム、又は基材表面に共有結合させるようになった。このような官能性誘導体の調製は、複雑な多段階プロセスの使用、調製が難しい中間体の使用を必要とする場合が多く、及び/又は実質的に純粋な所望の誘導体化合物ではなく生成物の混合物が生じる。
【0004】
耐久性を改善するための他のアプローチは、プライマー(例えば、ポリシラザン)を使用してフッ素化組成物を塗布する前に基材表面を前処理することを含んでいた。しかし、これは多段階プロセス工程の使用を必要とするので(また、高価な材料の使用を必要とすることが多いので)、余計に時間、費用がかかる、及び/又は既存の製造プロセスとの適合性が低くなる。
【0005】
最後に、様々なフッ素化表面処理は、(例えば、粘度及び/又は溶媒の溶解性の差により)基材への塗布容易性、必要な硬化条件(例えば、一部は、比較的高い硬化温度で比較的長時間硬化することを必要とする)、忌避性(repellency)のレベル、清浄化容易性、光学的透明度の程度、耐化学性、及び/又は溶媒耐性の点で異なっていた。また、多くは、少なくとも若干は基材特異的であったので、様々な基材に確実に接着させるには複数の組成物を生産することが必要であった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、様々な異なる表面処理用途の性能要件を満たすことができる表面処理方法(及びそこで使用するためのフッ素化組成物)に対する持続的な必要性が存在すると認識している。このような方法は、単純であり、コスト効率がよく、既存の製造方法に適合し、及び/又は様々な異なる基材に忌避性(好ましくは、耐久性のある特化した忌避性)を付与することができることが好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
簡潔に述べると、1つの態様では、本発明は、表面処理方法を提供する。方法は、
(a)少なくとも1つの主表面を有する少なくとも1つの基材を用意する工程と、
(b)(1)及び(2)を組み合わせる工程と、
(1)ケイ素−窒素結合、ケイ素−水素結合、炭素−炭素二重結合、窒素−水素結合、及びこれらの組み合わせから選択される少なくとも1つの化学的反応性部位を含む、少なくとも1つの硬化性オリゴマー又はポリマーポリシラザン、
(2)(i)及び(ii)を含む、少なくとも1つのフルオロケミカル化合物、
(i)少なくとも約6個の全フッ素化炭素原子を含む少なくとも1つの有機フッ素又はヘテロ有機フッ素部分、
(ii)少なくとも1つの化学的反応性部位を通して硬化性オリゴマー又はポリマーポリシラザンと反応することができる少なくとも1つの官能基、
(c)硬化性オリゴマー又はポリマーポリシラザンとフルオロケミカル化合物とを反応させて又は反応を誘導して、少なくとも1つの硬化性有機フッ素変性(すなわち、有機フッ素又はヘテロ有機フッ素部分によって共有結合的に変性された)ポリシラザンを形成する工程と、
(d)硬化性有機フッ素変性ポリシラザン又はその前駆体を基材の少なくとも1つの主表面の少なくとも一部に塗布する工程と、
(e)硬化性有機フッ素変性ポリシラザンを硬化させて表面処理を形成する工程と、を含む。
【0008】
好ましくは、フルオロケミカル化合物の有機フッ素又はヘテロ有機フッ素部分は、全フッ素化部分(より好ましくは、ペルフルオロアルキル、ペルフルオロアルキレン、ペルフルオロヘテロアルキル、又はペルフルオロヘテロアルキレン部分、最も好ましくは、ペルフルオロポリエーテル部分)である。
【0009】
ハイブリッド有機/無機ポリマーの汎用的新規分類は、例えば、無機又は有機ポリシラザンと官能基を含有するフルオロケミカル化合物との比較的単純な1段階反応によって生成できることが見出されている。得られる有機フッ素変性ポリシラザンは、驚くべきことに、出発ポリシラザンの硬化性を保持し、水分が存在しなくても比較的長い耐用寿命を有することができ、かつ硬化して架橋網目構造を形成することができる。
【0010】
架橋網目構造の特性は、出発ポリシラザンの性質及び相対量(例えば、有機含有量の程度を決定する置換基及び有効であり得る硬化剤の化学的性質)、並びに出発フルオロケミカル化合物の性質及び相対量(例えば、有機フッ素又はヘテロ有機フッ素部分の化学的性質及びフッ素含有量)を変化させることによって様々な異なる用途の要件に特化させることができる。特に、出発フルオロケミカル化合物の有機フッ素又はヘテロ有機フッ素含有量を使用して、フッ素の存在が有利になり得る用途(例えば、特定の低表面エネルギー特性を必要とする用途)で使用するための架橋網目構造の表面特性を変性又は調整することができる。
【0011】
(出発フルオロケミカル化合物と出発ポリシラザンとの総重量に基づいて)約0.1重量%もの低濃度のフルオロケミカル化合物を使用することによって、架橋網目構造に有用な低表面エネルギー特性をもたらすことができる。例えば、架橋網目構造は、水において約128°、ヘキサデカンにおいて約72°という高い前進接触角を示し得る。したがって、有機フッ素変性ポリシラザンは、(例えば、表面を保護するため、又は清浄化容易性を高めるために)様々な基材に比較的高度な疎水性及び/又は疎油性を付与するためのフッ素化表面処理として有用であり得る。
【0012】
硬化性有機フッ素変性ポリシラザンは、(比較的粘度が低いため)未希釈形態でコーティングされてもよく、任意の様々な溶媒に容易に溶解し、次いで所望の基材にコーティングされてもよい。コーティングされたポリマーは、(具体的な用途の要件によって)様々な異なる方法で硬化して、比較的高度に架橋され、比較的光学的に透明であるハードコートをもたらすことができる。ハードコートの低表面エネルギー特性(例えば、撥水性、撥油性、撥インク性、及び/又は撥染性、並びに落書き防止性)に加えて、ハードコートは、驚くべきことに、ポリシラザンに付随する特徴の多く(例えば、比較的高い硬度、紫外線透過性、腐食耐性、熱安定性、耐火性、耐化学性、耐摩耗性等)を維持することができる。
【0013】
ハードコートは、様々な異なる基材(例えば、木材、金属、セラミックス、及びポリマー)に対する接着性を呈することができる。驚くべきことに、比較的耐久性のある忌避性は、高価なプライマー又は複数の基材特異的な表面処理組成物を揃える必要なく、単純な1段階コーティングプロセスによって基材に付与され得る。
【0014】
したがって、本発明の方法の少なくとも幾つかの実施形態は、様々な異なる表面処理用途の性能要件を満たすことができると同時に、好ましくは、単純で、コスト効率がよく、既存の製造方法に適合し、及び/又は様々な異なる基材に忌避性(好ましくは、耐久性のある特化した忌避性)を付与することができる処理方法(及びそこで使用するためのフッ素化組成物)に対する上記持続的な必要性を満たす。ハードコート(顕著な耐久性、接着性、及び忌避性を有することが多い)は、耐久性のある低表面エネルギー特性(例えば、標識、建造物、運搬用車両等に対する落書き防止コーティング;金属、セラミックスタイル、電子装置等に対する容易に清浄化可能なコーティング;ポリマー又は複合材成形型に対する離型コーティング等)を必要とする用途に広く使用することができる。
【0015】
別の態様では、本発明は、また、少なくとも1つの主表面を有する少なくとも1つの基材を含む表面処理された物品であって、基材が、主表面のうちの少なくとも1つの少なくとも一部上に本発明の上記方法によって調製された表面処理を有する物品を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下の「発明を実施するための形態」では、種々の組の数値範囲(例えば、特定の部分における炭素原子の数、又は特定の成分の量など)が記載され、各組内では、範囲の任意の下限を範囲の任意の上限と対にすることができる。
【0017】
定義
本特許出願で使用するとき、
「カテネイトヘテロ原子」とは、(例えば、炭素−ヘテロ原子−炭素鎖又は炭素−ヘテロ原子−ヘテロ原子−炭素鎖を形成するために)炭素鎖中の1個以上の炭素原子に置き換わる炭素以外の原子(例えば、酸素、窒素、又は硫黄)を意味する。
「硬化」とは、(例えば、放射線照射又は触媒を通した)架橋ポリマー網目構造への変換を意味する。
「フルオロ−」(例えば、「フルオロアルキレン」若しくは「フルオロアルキル」、又は「フルオロカーボン」の場合のような基若しくは部分に関して)又は「フッ素化」とは、炭素に結合した水素原子が少なくとも1つは存在するように、部分的にフッ素化されていることを意味する。
「フルオロケミカル」とはフッ素化又は全フッ素化されていることを意味する。
「ヘテロ有機」とは、少なくとも1個のヘテロ原子(好ましくは、少なくとも1個のカテネイトヘテロ原子)を含有する有機基又は部分(例えば、アルキル又はアルキレン基)を意味する。
「メルカプト」は、式SHの一価の基又は部分を意味する。
「オリゴマー」とは、少なくとも2個の繰り返し単位を含み、かつエンタングルメント分子量未満の分子量を有する分子を意味し、このような分子は、ポリマーとは異なり、1個の繰り返し単位を除去又は付加しただけでも特性が著しく変化する。
「ペルフルオロ−」(例えば、「ペルフルオロアルキレン」又は「ペルフルオロアルキル」又は「ペルフルオロカーボン」の場合のような、基又は部分に関して)又は「全フッ素化」とは、特記しない限り、フッ素で置換可能な炭素に結合した水素原子が存在しないように完全にフッ素化されていることを意味する。
「ペルフルオロエーテル」は、酸素原子により連結された(すなわち、1個のカテネイト酸素原子が存在する)、2つの飽和又は不飽和のペルフルオロカーボン基(直鎖、分枝、環状(好ましくは、脂環式)、又はこれらの組み合わせ)を有する基又は部分を意味する。
「ペルフルオロポリエーテル基(又はセグメント若しくは部分)」は、酸素原子により連結された(すなわち、1個のカテネイト酸素原子が存在する)、3つ以上の飽和又は不飽和のペルフルオロカーボン基(直鎖、分枝、環状(好ましくは、脂環式)、又はこれらの組み合わせ)を有する基又は部分を意味する。
「ポリシラザン」は、複数のSi−N結合を含む少なくとも1つの直鎖、分枝、又は環状の主鎖又は骨格鎖を有する化合物を指す。
「ポリシロキサザン」は、Si−N結合及びSi−O結合の両方を含む少なくとも1つの直鎖、分枝、又は環状の主鎖又は骨格鎖を有する化合物を指し、簡潔にするために、本願では、「ポリシラザン」が「ポリシロキサザン」及び「ポリ尿素シラザン」も含む。
「ポリ尿素シラザン」は、複数のSi−N結合を含み、かつ2つの窒素原子のそれぞれに結合している少なくとも1つのカルボニル基を有する少なくとも1つの直鎖、分枝、又は環状の主鎖又は骨格鎖を有する化合物を指す。
「置換アリール」基とは、ハロゲン、アルキル基、及びヘテロアルキル基のうちの1つ以上等の(硬化に)干渉しない原子によって置換されたアリール基を意味する。
「スルホンアミド」は、R’が水素又はアルキル(例えば、1〜約4個の炭素原子を有するアルキル基から選択される)である、式−SON(R’)−の二価の基又は部分を意味する。
【0018】
ポリシラザン
本発明の方法で使用するのに好適なポリシラザンとしては、ケイ素−窒素結合(又は連結)、ケイ素−水素結合、炭素−炭素二重結合、及びこれらの組み合わせから選択される少なくとも1つの化学的反応性部位を含む硬化性オリゴマー又はポリマーポリシラザンが挙げられる。ポリシラザンは、以下の一般式を有する構造単位を含む主鎖又は骨格鎖を有する:
−[Si(R)(R)−N(R)]−
式I
式中、各R、各R、及び各Rは、独立して、水素、有機基、ヘテロ有機基、又はこれらの組み合わせである。好適な有機及びヘテロ有機基としては、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、アルキルシリル、アリールシリル、アルキルアミノ、アリールアミノ、アルコキシ、アリールオキシ、アラルキルオキシ等、及びこれらの組み合わせ(好ましくは、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アラルキルオキシ、及びこれらの組み合わせ)が挙げられ、基は、好ましくは1〜約18個の炭素原子(より好ましくは、1〜約12個の炭素原子、更により好ましくは1〜約8個の炭素原子、最も好ましくは1〜約2個の炭素原子(例えば、メチル又はビニル))を有する。基は、ハロゲン、アルコキシ、アミノ、カルボキシル、ヒドロキシル、アルコキシカルボニル、ニトロ等、及びこれらの組み合わせ等の1個以上の置換基で更に置換されてもよい。好ましくは、ポリシラザンは液体である。
【0019】
有用なポリシラザンとしては、直鎖、分枝、若しくは環状構造、又はこれらの組み合わせを有するものが挙げられ、及び/又は約100〜約50,000(好ましくは、約200〜約10,000)の数平均分子量を有するものが挙げられる。ポリメタロシラザン又はシラザンコポリマー等の変性ポリシラザンを利用してもよい。有用なポリシラザンとしては、ランダム、交互、若しくはブロックポリマー構造、又はこれらの組み合わせを有するものが挙げられる。
【0020】
ポリシラザンは、当該技術分野において既知の方法によって調製することができる。例えば、ポリ有機シラザン、及びペルヒドロポリシラザン(上記式IにおけるR、R、及びRが全て水素である)は、ジクロロシランのアンモノリシス、及び所望により、その後の塩基触媒脱水素カップリングを通して調製することができる。また、ポリ有機シラザン及びペルヒドロポリシラザンは、市販されている。ポリシラザンは、本発明の組成物において、単独で又は1つ以上のポリシラザン自体若しくは1つ以上の他の種のポリマーとの混合物の形態で使用することができる。
【0021】
有用なポリシラザンとしては、以下の一般式によって表すことができる直鎖ポリシラザンが挙げられる:
−[Si(R)(R)−N(R)]
式II
(式中、各R及び各Rは、独立して、水素、約9個未満の炭素原子を有する直鎖、分枝、若しくは環状アルキル基、約7個未満の炭素原子を有する直鎖、分枝、若しくは環状ヘテロアルキル基、約13個未満の炭素原子を有する置換若しくは非置換アリール基、エチレン性不飽和基、約8個未満の炭素原子を有するR及びRが一緒になって形成する環構造、又はこれらの組み合わせであり;各Rは、独立して、水素、約7個未満の炭素原子を有する直鎖若しくは分枝アルキル基、約7個未満の炭素原子を有する直鎖若しくは分枝ヘテロアルキル基、又はこれらの組み合わせであり;mは正の整数である)。好ましくは、各R及び各Rは、独立して、水素、メチル、フェニル、及びビニルから選択され、各Rは、好ましくは水素である。式IIのポリシラザンの数平均分子量は、約160グラム/モル〜約10,000グラム/モル(好ましくは、約300グラム/モル〜約7,000グラム/モル、より好ましくは、約500グラム/モル〜約3,000グラム/モル、最も好ましくは、約700グラム/モル〜約2,000グラム/モル)の範囲であり得る。
【0022】
有用な環状ポリシラザンとしては、以下の一般式によって表すことができるものが挙げられる:
シクロ−[Si(R)(R)−N(R)]
式III
(式中、R、R、R、及びmは、式IIのポリシラザンについて上に定義された通りである)。式IIIの環状ポリシラザンの数平均分子量は、約160グラム/モル〜約3,000グラム/モル(好ましくは、約300グラム/モル〜約2000グラム/モル、より好ましくは、約350グラム/モル〜約1500グラム/モル)の範囲であり得る。他の有用な環状ポリシラザンとしては、直鎖及び環状ポリシラザン部分を両方含むものが挙げられる。
【0023】
有用な分枝ポリシラザンとしては、一般的に、式II(分枝を有する直鎖ポリシラザン)又は式III(分枝を有する環状ポリシラザン)によって表されるものが挙げられ、この場合、ポリシラザンの繰り返し単位のうちの少なくとも1つにおけるR及びRのいずれか又は両方が、以下の一般式によって表すことができる構造を有する:
【化1】


(式中、各Rは、式IIについて上に定義された通りであり、各Rは、独立して、水素、約9個未満の炭素原子を有する直鎖、分枝、若しくは環状アルキル基、約7個未満の炭素原子を有する直鎖、分枝、若しくは環状ヘテロアルキル基、約13個未満の炭素原子を有する置換若しくは非置換アリール基、エチレン性不飽和基、又はこれらの組み合わせであり、pは、一般的にmよりも小さい正の整数である)。好ましくは、各Rは、独立して、水素、メチル、フェニル、及びビニルから選択され、各Rは、好ましくは水素である。分枝ポリシラザンの数平均分子量は、約160グラム/モル〜約3,000グラム/モル(好ましくは、約300グラム/モル〜約2000グラム/モル、より好ましくは、約350グラム/モル〜約1500グラム/モル)の範囲であり得る。他の有用な分枝ポリシラザンとしては、複数の分枝を含むもの及び環状ポリシラザン部分を含むものが挙げられる。
【0024】
有用なポリシラザンとしては、以下の一般式によって表すことができる直鎖ポリシロキサザンが挙げられる:
−[Si(R)(R)−N(R)]−[Si(R)(R)−O]
式V
(式中、R、R、及びRは、式IIについて上に定義された通りであり、r及びqは、正の整数である(好ましくは、rはqの少なくとも約4倍である))。このようなポリシロキサザンは、シラザン(Si−N)及びシロキサン(Si−O)単位によって形成されるランダム、交互、又はブロック構造(又はこれらの組み合わせ、好ましくは、ブロック構造)を呈し得る。式Vのポリシロキサザンの数平均分子量は、約160グラム/モル〜約10,000グラム/モル(好ましくは、約300グラム/モル〜約7,000グラム/モル、より好ましくは、約500グラム/モル〜約3,000グラム/モル、最も好ましくは、約700グラム/モル〜約2,000グラム/モル)の範囲であり得る。
【0025】
また、有用なポリシロキサザンとしては、環状又は分枝であるものが挙げられる。有用な環状ポリシロキサザンとしては、Si−O結合を含む環状部分を有するポリシロキサザン、及びSi−O結合が環状部分に存在しないポリシロキサザンが挙げられる。有用な分枝ポリシロキサザンとしては、Si−N及びSi−O結合のいずれか又は両方で分枝しているポリシロキサザンが挙げられる。
【0026】
特に有用な市販のポリシラザン、KION VL 20(KION Corp(Huntington Valley,PA)から入手可能)は、以下の構造を有する:
【化2】


(式中、nは1〜20の整数であり、R10は、水素又はビニル基である)。
【0027】
有用なポリシラザンとしては、更に、以下の一般式によって表すことができる直鎖ポリ尿素シラザンが挙げられる:
−[Si(R)(R)−N(R)]−[C(=O)−N(R)]−[Si(R)(R)−N(R)]
式VII
(式中、R、R、及びRは、式II及びVのポリシラザンについて上に定義された通りであり;各Rは、独立して、水素又は約7個未満の炭素原子を有する直鎖、分枝、若しくは環状アルキル基であり;s、t、及びuは正の整数である(好ましくは、s及びuの合計は、tの少なくとも10倍である))。式VIIのポリ尿素シラザンの数平均分子量は、約160グラム/モル〜約10,000グラム/モル(好ましくは、約300グラム/モル〜約7,000グラム/モル、より好ましくは、約500グラム/モル〜約3,000グラム/モル、最も好ましくは、約700グラム/モル〜約2,000グラム/モル)の範囲であり得る。
【0028】
また、有用なポリシラザンとしては、以下の一般式によって表すことができる環状ポリ尿素シラザンが挙げられる:
シクロ−[Si(R)(R)−N(R)]−[C(=O)−N(R)]−[Si(R)(R)−N(R)]
式VIII
(式中、R、R、R、R、s、t、及びuは、式VIIのポリシラザンについて上に定義された通りである)。式VIIIの環状ポリ尿素シラザンの数平均分子量は、約160グラム/モル〜約3,000グラム/モル(好ましくは、約300グラム/モル〜約2000グラム/モル、より好ましくは、約350グラム/モル〜約1500グラム/モル)の範囲であり得る。他の有用な環状ポリ尿素シラザンとしては、直鎖及び環状ポリ尿素シラザン部分を両方含むものが挙げられる。
【0029】
有用な分枝ポリ尿素シラザンとしては、一般的に、式VII(分枝を有する直鎖ポリ尿素シラザン)又は式VIII(分枝を有する環状ポリ尿素シラザン)によって表されるものが挙げられ、この場合、ポリ尿素シラザンの繰り返し単位のうちの少なくとも1つにおけるR及びRのいずれか又は両方は、上記式IVによって表される構造を有する。
【0030】
本発明の方法で使用するのに特に好適なポリシラザンとしては、上記一般式Iによって表すことができるものが挙げられる(式中、各R及び各Rは、独立して、水素、アルキル(好ましくは、メチル)、アルケニル(好ましくは、ビニル)、アリール(好ましくは、フェニル)、及びこれらの組み合わせから選択され(好ましくは、R及びRのうちの少なくとも1つは水素である);各Rは水素である)。このような好ましいポリシラザンとしては、以下の単位のうちの1つ以上:
【化3】


(式中、Meはメチルであり、Phはフェニルである)に加えて、ビニル−H単位(すなわち、メチルがビニルで置換されているMe−H単位)を含むホモポリマー又はコポリマーが挙げられる。このような各単位の性質及び量は、具体的な用途、所望の特性、及び好ましい硬化方法に依存して広く変化し得る(例えば、湿分硬化が望ましい場合、少なくとも幾つかのH−H含有量が必要となる場合がある)。例えば、有用なコポリマーは、Me−H及びビニル−H単位(例えば、約80部のMe−Hに対して約20部のビニル−H、又は約60部のMe−Hに対して約40部のビニル−Hのモル比で);Me−H、ビニル−H、及びH−H単位(例えば、約50部のMe−H対約30部のビニル−H対約20部のH−Hのモル比で);又はMe−H及びH−H単位(例えば、約30部のMe−Hに対して約70部のH−Hのモル比で)を含むことができる。
【0031】
フルオロケミカル化合物
本発明の方法で使用するのに好適なフルオロケミカル化合物としては、(a)少なくとも約6個の全フッ素化炭素原子を含む少なくとも1つの有機フッ素又はヘテロ有機フッ素部分と、(b)(ケイ素−窒素結合、ケイ素−水素結合、炭素−炭素二重結合、窒素−水素結合、及びこれらの組み合わせから選択される)化学的反応性部位のうちの少なくとも1つを通して上記硬化性オリゴマー又はポリマーポリシラザンと反応することができる少なくとも1つの官能基と、を含むものが挙げられる。好ましくは、フルオロケミカル化合物の有機フッ素又はヘテロ有機フッ素部分は、全フッ素化部分(より好ましくは、ペルフルオロアルキル、ペルフルオロアルキレン、ペルフルオロヘテロアルキル、又はペルフルオロヘテロアルキレン部分、最も好ましくは、ペルフルオロポリエーテル部分)である。
【0032】
フルオロケミカル化合物の分類としては、以下の一般式によって表すことができるものが挙げられる:
−(Y−X)
(式中、Rは、少なくとも約6個の全フッ素化炭素原子を含む一価若しくは多価(好ましくは、一価又は二価)の、直鎖、分枝、脂環式、若しくは芳香族の、フッ素化若しくは全フッ素化された、有機若しくはヘテロ有機基、又はこれらの組み合わせであり(好ましくは、少なくとも約6個の全フッ素化炭素原子を含む全フッ素化有機若しくはヘテロ有機基又はこれらの組み合わせ;より好ましくは、少なくとも約6個の全フッ素化炭素原子を含むペルフルオロアルキル(例えば、C13−又はC17−)、ペルフルオロアルキレン、ペルフルオロエーテル、若しくはペルフルオロポリエーテル基、又はこれらの組み合わせ;更により好ましくは、少なくとも約6個の全フッ素化炭素原子を含むペルフルオロアルキル、ペルフルオロアルキレン、若しくはペルフルオロポリエーテル基、又はこれらの組み合わせ;最も好ましくは、少なくとも約6個の全フッ素化炭素原子を含むペルフルオロポリエーテル基である);各Yは、独立して、共有結合、又は二価の直鎖、分枝、脂環式、若しくは芳香族の、有機若しくはヘテロ有機連結基、又はこれらの組み合わせであり(好ましくは、共有結合又はアルキレン若しくはヘテロアルキレン基、又はこれらの組み合わせ;より好ましくは、共有結合、所望により少なくとも1つのカテネイト酸素原子を含有するアルキレン基、スルホンアミド基、又はこれらの組み合わせである);各Xは、独立して、求電子基又は求核基であり(好ましくは、イソシアナト、イソチオシアナト、エポキシド、アミノ、オキサゾリノ、ヒドロキシル、メルカプト、ビニル、及び加水分解性シリル基(例えば、アルコキシ又はアシルオキシ等の少なくとも1つの加水分解性部分を含むシリル基)並びにこれらの組み合わせから選択され、より好ましくは、イソシアナト、エポキシド、アミノ、オキサゾリノ、ヒドロキシル、及び加水分解性シリル基、並びにこれらの組み合わせから選択され、最も好ましくは、イソシアナト、エポキシド、アミノ、オキサゾリノ、ヒドロキシル、及びこれらの組み合わせから選択される);vは、Rの価数に等しい正の整数である(好ましくは、1又は2)。好ましくは、R(飽和であっても不飽和であってもよい;好ましくは飽和)は、約6〜約35個の全フッ素化炭素原子(より好ましくは、約8又は9〜約25個の全フッ素化炭素原子、最も好ましくは、約10〜約17、18又は20個の全フッ素化炭素原子)を含有し、及び/又はY(飽和であっても不飽和であってもよい;好ましくは飽和)は、約0〜約12個の炭素原子(より好ましくは、約1〜約6個の炭素原子、最も好ましくは、約1〜約3個の炭素原子)を含有する。
【0033】
好ましい有機フッ素若しくはヘテロ有機フッ素部分又はR基は、直鎖、分枝、環状(好ましくは、脂環式)、又はこれらの組み合わせであってもよいペルフルオロポリエーテル基又はセグメントを含む。ペルフルオロポリエーテル基又はセグメントは、飽和であっても不飽和であってもよい(好ましくは飽和)。有用なペルフルオロポリエーテル基の代表的な例としては、−(C2p)−、−(C2pO)−、−(CF(Z))−、−(CF(Z)O)−、−(CF(Z)C2pO)−、−(C2pCF(Z)O)−、−(CFCF(Z)O)−(式中、pは1〜約10(好ましくは、1〜約8、より好ましくは、1〜約6、更により好ましくは、1〜約4、最も好ましくは、1〜約3)の整数であり、Zは、直鎖、分枝、環状、又はこれらの組み合わせであり、かつ約12個以下の炭素原子(好ましくは、約10個以下の炭素原子、より好ましくは、約8個以下の炭素原子、更により好ましくは、約6個以下の炭素原子、更により好ましくは、約4個以下の炭素原子、最も好ましくは、約3個以下の炭素原子)を有し、及び/又は約4個以下の酸素原子(好ましくは、約3個以下の酸素原子、より好ましくは、約2個以下の酸素原子、最も好ましくは、ゼロ又は1個の酸素原子)を有する、ペルフルオロアルキル、ペルフルオロエーテル、ペルフルオロポリエーテル、及びペルフルオロアルコキシ基から選択される)及びこれらの組み合わせから選択される全フッ素化繰り返し単位を有するものが挙げられるが、これらに限定されない。これらのペルフルオロポリエーテル構造においては、異なる繰り返し単位をブロック、交互、又はランダム配列で組み合わせて、ペルフルオロポリエーテル基を形成することができる。
【0034】
ペルフルオロポリエーテル基又はセグメントが一価であるとき、その末端基は、(C2p+1)−又は(C2p+1O)−(例えば、式中pは上に定義された通りである)であってもよい。有用な一価のペルフルオロポリエーテル基の代表的な例としては、CO(CF(CF)CFO)CF(CF)−、CO(CFCFCFO)CFCF−、CFO(CO)CF−、CFO(CFO)(CO)CF−及びF(CFO(CO)(CF−(式中、nは、0〜約50、約1〜約50、約3〜約30、約3〜約15、又は約3〜約10の平均値を有し、qは、0〜約50、約3〜約30、約3〜約15、又は約3〜約10平均値を有する)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0035】
有用な二価のペルフルオロポリエーテル基の代表的な例としては、−CFO(CFO)(CO)CF−、−CFO(CO)CF−、−(CFO(CO)(CF−、及び−CF(CF)(OCFCF(CF))OC2tO(CF(CF)CFO)CF(CF)−(式中、n及びqは、上記に定義した通りであり、sは、0〜約50、約1〜約50、約3〜約30、約3〜約15、又は約3〜約10の平均値を有し、q及びsの和(すなわち、q+s)は、0〜約50又は約4〜約40の平均値を有し、q及びnの和(すなわち、q+n)は、0よりも大きく、tは、約2〜約6の整数である)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0036】
好ましくは、ペルフルオロポリエーテルセグメントは、一価又は二価であり、及び/又はペルフルオロポリエーテルセグメントは、少なくとも1つの二価のヘキサフルオロプロピレンオキシ基(−CF(CF)−CFO−)を含む。好ましいペルフルオロポリエーテルセグメントとしては、F[CF(CF)CFO]CF(CF)−(又は、上記CO(CF(CF)CFO)CF(CF)、式中、n+1=a)(式中、aは、約4〜約20の平均値を有する)及び−CF(CF)(OCFCF(CF))OCFCFCFCFO(CF(CF)CFO)CF(CF)−(式中、b+cは約4〜約15の平均値を有する)が挙げられる。このようなペルフルオロポリエーテルセグメントは、ヘキサフルオロプロピレンオキシドのオリゴマー化により得ることができ、比較的環境に優しい性質のために好ましい場合がある。
【0037】
本発明の方法で使用されるフルオロケミカル化合物は、様々な異なる既知の方法によって調製することができる。例えば、メチル(ジ)エステル、(二)酸塩化物、又は(二)酸フッ化物等の、有機フッ素又はヘテロ有機フッ素部分含有誘導体(例えば、有機出発化合物の電気化学的フッ素化若しくは直接フッ素化を含む方法、又は全フッ素化モノマーのオリゴマー化を含む方法によって調製される)を、官能基含有化合物(例えば、アミノアルコール)と反応させるか又は還元させて、ジヒドロアルコールを形成することができる(例えば、ホウ化水素ナトリウムを用いて)。また、フルオロケミカル化合物(例えば、ペルフルオロポリエーテル(ジ)エステル、(二)酸、及び(ジ)オール、並びに特定のペルフルオロアルカノール)の一部は、市販されている。
【0038】
フルオロケミカル化合物として使用するのに好適なペルフルオロポリエーテル置換一級及び二級アミン化合物は、既知の方法により調製可能である。例えば、メチルエステルなどのペルフルオロポリエーテル(上述の)誘導体を、少なくとも1つの一級アミノ基を有するジアミン化合物(例えば、1,3−ジアミノプロパンなど、約2〜約6個の炭素原子を有するジアミノアルカン)と、窒素雰囲気下で反応させることができる。
【0039】
このようなジアミンとの反応に好ましいペルフルオロポリエーテル誘導体を、ヘキサフルオロプロピレンオキシド(HFPO)のオリゴマー化により得ることができる。このようなオリゴマー化は、カルボニルフッ化物誘導体をもたらし、これを、既知の反応(例えば、参照により本明細書に組み込まれている、米国特許第3,250,808号(Mooreら)に記載されている反応)によりメチルエステル又は他の誘導体に変換することができる。このようなオリゴマー化により調製されるカルボニルフッ化物誘導体は、様々なオリゴマー化度を有する、様々な分子量の化合物の混合物の形態である(すなわち、この誘導体は単一化合物として合成されず、異なるペルフルオロポリエーテル基を持つ化合物の混合物として合成される)。好ましくは、この混合物は、少なくとも約400g/モル(より好ましくは、少なくとも約800g/モル;最も好ましくは、少なくとも約1000g/モル)の数平均分子量を有する。例えば、この混合物の数平均分子量は、400〜10000g/モル、800〜4000g/モル、又は1000〜3000g/モルであることができる。
【0040】
ペルフルオロポリエーテルジアシルフルオライドは、ペルフルオロポリエーテルポリペルオキシド類を形成させる、テトラフルオロエチレン(TFE)の光酸化重合により作製可能である。ペルフルオロポリエーテルポリペルオキシドは、物理的手法(例えば、熱的又は光化学処理)により、又は化学的手法(例えば、白金又はパラジウムなどの貴金属触媒の存在下で水素で還元することにより)還元することができる。この還元は、過酸化性のペルフルオロポリエーテル結合を破断し、及び−COF末端基とランダムに分布したジフルオロメチレンオキシ及びテトラフルオロエチレンオキシ部分とを有する低分子量のペルフルオロポリエーテルを与えることができる。この合成方法は、例えば、参照により本明細書に組み込まれている、米国特許出願公開第2003/0013923(A1)号(Marchionniら)及び米国特許第5,354,922号(Marchionniら)に更に詳細に記述されている。
【0041】
1,1,2,2−テトラフルオロオキセタンのフッ化物で触媒されたオリゴマー化と、それに続く直接フッ素化により、ペルフルオロポリエーテルアシルフルオリドを作製することもできる(例えば、参照により本明細書に組み込まれている、米国特許第4,904,417号及び同第4,845,268号(Ohsakaら)で述べられているように)。上述の手順を使用することにより、これらのアシルフッ化物をメチルエステルに変換することができる。
【0042】
硬化性有機フッ素変性ポリシラザンを形成する方法
硬化性有機フッ素変性ポリシラザンは、(a)(1)及び(2)を組み合わせる工程と、(1)少なくとも1つの上記硬化性オリゴマー又はポリマーポリシラザン、(2)少なくとも1つの上記フルオロケミカル化合物;(b)硬化性オリゴマー又はポリマーポリシラザンとフルオロケミカル化合物とを反応させて又は反応を誘導して、少なくとも1つの硬化性有機フッ素変性ポリシラザンを形成する工程と;を含む方法によって調製することができる。例えば、少なくとも1つのポリシラザン、少なくとも1つのフルオロケミカル化合物、及び所望により、少なくとも1つの非プロトン性溶媒(例えば、キシレン)は、任意の好適な反応器(例えば、電磁撹拌棒、還流凝縮器、及び窒素送入口を備える丸底フラスコ)内で本質的に任意の順序で組み合わせることができ、次いで、これを撹拌し、乾燥(例えば、窒素)雰囲気下で所望の反応温度(例えば、約23℃〜約180℃)に加熱することができる。所望により、反応は、触媒の存在下で実施してもよい(例えば、米国特許第5,616,650号(Beckerら)に記載されている湿分硬化又は触媒に関わるセクションにおける下記のような酸性又は塩基性触媒、これらの触媒に関する記載は、参照することにより本明細書に組み込まれる)。反応が完了した後、反応器を冷却し、排気し、反応器の内容物を除去し、所望により更に精製してもよい。
【0043】
ポリシラザン及びフルオロケミカル化合物の相対量は、フルオロケミカル化合物の性質、並びに硬化性及び/又は硬化した有機フッ素変性ポリシラザンの所望の特性に依存して、広く変化し得る。例えば、1つ以上のフルオロケミカル化合物は、ポリシラザン及びフルオロケミカル化合物の総重量に基づいて、約0.1〜約50重量%(好ましくは、約0.1〜約40重量%、より好ましくは、約1〜約30重量%、最も好ましくは、約5〜約30重量%)の総量で組成物中に存在し得る。
【0044】
調製で使用するのに好適な溶媒としては、芳香族溶媒(例えば、キシレン、ベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン、1,3−ジクロロベンゼン、1,4−ジクロロベンゼン等、及びこれらの混合物)、ケトン(例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等、及びこれらの混合物)、アルキルエステル(例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル等、及びこれらの混合物)、アルカン(例えば、ヘプタン、イソパラフィン性炭化水素等、及びこれらの混合物)、エーテル(例えば、t−ブチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)等、及びこれらの混合物)等、及びこれらの混合物等の非プロトン性溶媒が挙げられる。好ましい溶媒としては、芳香族溶媒、アルカン、アルキルエステル、及びこれらの混合物が挙げられ、キシレン、ヘプタン、酢酸エチル、及びこれらの混合物がより好ましく、キシレン、ヘプタン、及びこれらの混合物が最も好ましい。
【0045】
硬化性有機フッ素変性ポリシラザンの塗布及び硬化
得られる硬化性有機フッ素変性ポリシラザンは、(ビニル基の場合)水分又は触媒の存在下で比較的長い耐用寿命を有することができる。硬化性有機フッ素変性ポリシラザンは、本発明の表面処理方法において、単独で、又は互いに混合して、又は一般的に使用されている他の溶媒(例えば、アルキルエステル、ケトン、アルカン、芳香族等、及びこれらの混合物)と混合して、使用してもよい比較的粘性の液体の形態であり得る。
【0046】
微量の任意成分を添加して、特定の硬化方法又は特定の表面処理用途に対する特定の望ましい特性を硬化性ポリシラザンに付与することができる。有用な組成物は、従来の添加剤、例えば、触媒、反応開始剤、界面活性剤、安定剤、酸化防止剤、難燃剤等、及びこれらの混合物を含むことができる。
【0047】
硬化性有機フッ素変性ポリシラザン(又はそれを含むか、それからなるか、若しくはそれから本質的になる組成物)は、様々な基材に、ある程度の疎水性及び/又は疎油性を付与するためのフッ素化表面処理として使用することができる。本発明のプロセスで使用するのに(及び本発明の表面処理された物品を調製するのに)好適な基材としては、固体であり、かつ好ましくは、使用される任意のコーティング溶媒に対して実質的に不活性である物質を含む少なくとも1つの表面を有するものが挙げられる。好ましくは、有機フッ素変性ポリシラザンは、化学的相互作用、物理的相互作用、又はこれらの組み合わせ(より好ましくは、これらの組み合わせ)を通して基材表面に接着することができる。
【0048】
好適な基材は、単一材料又は異なる材料の組み合わせを含んでもよく、事実上均質であっても不均質であってもよい。有用な不均質基材としては、物理的支持材(例えば、ポリマーフィルム)上に存在する材料(例えば、金属又はプライマー)のコーティングを含む、コーティングされた基材が挙げられる。
【0049】
有用な基材としては、木材、ガラス、鉱物(例えば、コンクリート等の人工セラミックス及び大理石等の天然石の両方)、ポリマー(例えば、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアクリレート等)、金属(例えば、銅、銀、金、アルミニウム、鉄、ステンレス鋼、ニッケル、亜鉛等)、金属合金、金属化合物(例えば、金属酸化物等)、皮革、羊皮紙、紙、織物、塗面、及びこれらの組み合わせを含むものが挙げられる。好ましい基材としては、ガラス、鉱物、木材、金属、金属合金、金属化合物、ポリマー、及びこれらの組み合わせ(より好ましくは、金属、金属合金、金属化合物、ポリマー、及びこれらの組み合わせ)が挙げられる。好ましくは、基材は、(例えば、約30ダイン/センチメートル以上の表面エネルギーを有する)極性基材である。
【0050】
硬化性有機フッ素変性ポリシラザン(あるいはその前駆体、好ましくは、硬化性有機フッ素変性ポリシラザン)は、有用なコーティングを形成することができる本質的に任意の方法で(かつ本質的に任意の厚さで)基材表面の少なくとも1つの主表面の少なくとも一部に塗布することができる。有用な塗布方法としては、ディップコーティング、スピンコーティング、スプレーコーティング、ワイピング、ロールコーティング等、及びこれらの組み合わせ等のコーティング方法が挙げられる。有機フッ素変性ポリシラザンは、未希釈形態、又は溶媒溶液(例えば、アルキルエステル、ケトン、アルカン、芳香族等、及びこれらの混合物等の溶媒)の形態で塗布されてもよい。溶媒を使用する場合、硬化性有機フッ素変性ポリシラザンの有用な濃度は、硬化性有機フッ素変性ポリシラザンの粘度、利用される塗布方法、基材の性質、及び所望の表面処理特性によって、広範囲にわたって変動してもよい(例えば、約1〜約90重量%)。
【0051】
基材に塗布した後、硬化性有機フッ素変性ポリシラザン(又はそれを含むか、それからなるか、若しくはそれから本質的になる組成物)は、水分に曝露することにより(例えば、上記のようにポリシラザンが少なくとも幾つかのH−H含量を有する場合)、フリーラジカル反応開始剤を使用することにより(例えば、上記のようにポリシラザンが少なくとも幾つかのMe−ビニル、Me−H、又はH−H含量を有する場合)、白金触媒等のヒドロシリル化触媒を使用することにより(例えば、上記のようにポリシラザンが少なくとも幾つかのMe−ビニル、Me−H、又はH−H含量を有する場合)硬化することができる。好ましい硬化方法は、具体的な表面処理用途並びにそれに付随する要件及び条件によって変化する。
【0052】
湿分硬化は、H−H含量の程度によって室温(例えば、約23℃)〜最高約80℃又はそれ以上の範囲の温度で作用し得る。湿分硬化時間は、数分間(例えば、高温において)〜数時間(例えば、低温において)に及ぶ場合がある。
【0053】
有用な湿分硬化触媒は、当該技術分野において周知であり、例えば、アンモニア、N−複素環式化合物(例えば、1−メチルピペラジン、1−メチルピペリジン、4,4’−トリメチレンジピペリジン、4,4’−トリメチレン−ビス(1−メチルピペリジン)、ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、シス−2,6−ジメチルピペラジン等、及びこれらの組み合わせ)、モノ−、ジ−、及びトリアルキルアミン(例えば、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、フェニルアミン、ジフェニルアミン、トリフェニルアミン、DBU(すなわち、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン)、DBN(すなわち、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン)、1,5,9−トリアザシクロドデカン、1,4,7−トリアザシクロノナン等、及びこれらの組み合わせ)、有機又は無機酸(例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、マレイン酸、ステアリン酸、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸、塩素酸、次亜塩素酸等、及びこれらの組み合わせ)、金属カルボキシレート、金属アセチルアセトネート錯体、金属粉末、ペルオキシド、金属塩化物、有機金属化合物等、及びこれらの組み合わせが挙げられる。好ましい湿分硬化触媒としては、アンモニア、DBU、4,4’−トリメチレン−ビス(1−メチルピペリジン)及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0054】
使用するとき、湿分硬化触媒は、触媒及び硬化性有機フッ素変性ポリシラザンの総重量に基づいて、約0.1〜約10重量%(好ましくは、約0.1〜約5重量%、より好ましくは、約0.1重量%〜約2重量%)の量で存在し得る。触媒は、ポリシラザンとフルオロケミカル化合物との反応前、反応中、又は反応後に添加して、有機フッ素変性ポリシラザン(硬化目的のためには、好ましくは反応後)を形成することができ、低温で活性化させることができる(例えば、上記のように室温で硬化させるために)。
【0055】
好適なフリーラジカル反応開始剤としては、有機及び無機ペルオキシド;アルカリ金属過硫酸塩;過硫酸アンモニウム;レドックス系;脂肪族アゾ化合物;活性化剤としての金属又はアミン化合物と組み合わせられる有機及び無機ペルオキシド等及びこれらの組み合わせが挙げられる。好ましいフリーラジカル反応開始剤としては、有機及び無機ペルオキシド(例えば、過酸化水素、並びにp−メンタンヒドロペルオキシド、エチルケトンペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、t−ブチルペルオキシベンゾエート、アセチルベンジルペルオキシド、p−クロロベンゾイルペルオキシド、アルコキシベンゾイルペルオキシド、ジカプロイルペルオキシド、クロトニルペルオキシド、ジ−t−アルキルペルオキシド、ジ−tブチルジホスフェートペルオキシド、過酢酸、シクロへキシルヒドロペルオキシド、ジクミルペルオキシド、及びこれらの組み合わせ等のアシル又はアリールペルオキシド)並びにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0056】
使用するとき、フリーラジカル反応開始剤は、反応開始剤及び硬化性有機フッ素変性ポリシラザンの総重量に基づいて、約0.1〜約10重量%(好ましくは、約1〜約5重量%)の量で存在し得る。フリーラジカル反応開始剤は、ポリシラザンとフルオロケミカル化合物との反応前、反応中、又は反応後(好ましくは、反応後)に添加して、有機フッ素変性ポリシラザンを形成することができ、その反応の熱によって(場合によっては)、又は外部源からの放射線照射若しくは熱エネルギー(例えば、対流加熱、誘導加熱、又は電子ビーム若しくはマイクロ波照射)によって活性化することができる。例えば、フリーラジカルによって開始される硬化は、数分間から数時間の間(例えば、約18時間)、約150℃の温度に加熱することによって作用し得る。
【0057】
好適なヒドロシリル化触媒としては、ケイ素結合水素基とケイ素結合エチレン基との間のヒドロシリル化反応を触媒するのに有効であり得る熱触媒(例えば、白金触媒)及び光触媒が挙げられる。有用な熱ヒドロシリル化触媒としては、例えば米国特許第2,823,218号(Speierら)、同第2,970,150号(Bailey)、同第3,159,601号及び同第3,159,662号(Ashby)、同第3,220,972号(Lamoreaux)、同第3,516,946号(Modic)、同第3,814,730号(Karstedt)、同第4,029,629号(Jeram)、同第4,533,575号及び同第4,504,645号(Melancon)、並びに同第5,741,552号(Takayamaら)に記載されているものが挙げられ、これらの触媒に関する記載を参照することによって本明細書に組み込む。有用な光触媒としては、例えば、米国特許第4,510,094号及び同第4,530,879号(Drahnak);並びに同第5,145,886号(Oxmanら)に記載されているものが挙げられ、これらの触媒に関する記載を参照することによって本明細書に組み込む。また、有用なヒドロシリル化触媒及び技術としては、例えば、米国特許第5,520,978号(Boardmanら)に記載されているものが挙げられ、これらのヒドロシリル化触媒及び技術に関する記載を参照することによって本明細書に組み込む。熱触媒と光触媒との組み合わせを使用してもよい。
【0058】
使用するとき、ヒドロシリル化触媒は、典型的に、触媒及び硬化性有機フッ素変性ポリシラザンの総重量に基づいて、ヒドロシリル化反応を触媒するのに有効な量(例えば、約1〜約1000百万分率(ppm)、好ましくは、約10〜約500ppm、より好ましくは、約50〜約250ppm)で存在し得る。触媒は、ポリシラザンとフルオロケミカル化合物との反応前、反応中、又は反応後(好ましくは、反応後)に添加して、有機フッ素変性ポリシラザンを形成することができ、その反応の熱によって(場合によっては)、又は外部源からの放射線照射(例えば、紫外線、ガンマ線、電子ビーム等)若しくは熱エネルギー(例えば、対流加熱、誘導加熱、照射等)によって活性化することができる。例えば、白金によって触媒される硬化は、約数秒間から数分間の間、約120℃の温度に加熱することによって作用し得る。
【0059】
硬化性有機フッ素変性ポリシラザンを硬化させて、架橋ハードコートの形態の表面処理を形成することができる。ハードコートは、架橋の程度を変化させることによって、並びに出発ポリシラザン及び出発フルオロケミカル化合物の性質及び相対量を変化させることによって特化させることができるハイブリッド特性を呈し得る。
【実施例1】
【0060】
本発明の目的及び利点は、以下の実施例によって更に例示されるが、これらの実施例において列挙された特定の材料及びその量は、他の諸条件及び詳細と同様に本発明を過度に制限するものと解釈されるべきではない。これらの実施例は、単にあくまで例示を目的としたものであり、添付した請求項の範囲を限定することを意味するものではない。
【0061】
材料
全ての溶媒は商用源から入手される標準の試薬グレードであり、特記しない限り更に精製せずに使用した。
【0062】
ポリシラザン(PS1)の調製
【化4】


機械的撹拌機、ドライアイス(すなわち、固体の二酸化炭素)/アセトン凝縮器、及びアンモニア送込管を備える2リットルの3つ口フラスコに、ヘキサン(800mL)、メチルジクロロシラン(57.7g、Alfa Aesar(Ward Hill,MA)から入手)、及びビニルメチルジクロロシラン(17.4g、Alfa Aesar(Ward Hill,MA)から入手)を入れた。次いで、得られた混合物にアンモニア(Matheson Tri Gas(Baking Ridge,NJ)から入手)をゆっくりバブリングし、混合物の温度を上昇させた。30gのアンモニアを消費した後、反応速度を下げ、一部のアンモニアを還流させた。35gのアンモニアが付加されるまで反応を続けた。得られた塩をフィルタ上に回収した。得られた濾液から溶媒を蒸発させて、28gの粘性ポリシラザンを得た。
【0063】
ポリシラザン(PS2)の調製
【化5】


機械的撹拌機、ドライアイス/アセトン凝縮器、及びアンモニア送込管を備える5リットルの3つ口フラスコに、ヘキサン(2000mL)、メチルジクロロシラン(172.5g、Alfa Aesar(Ward Hill,MA)から入手)、及びビニルメチルジクロロシラン(141g、Alfa Aesar(Ward Hill,MA)から入手)を入れた。次いで、得られた混合物にアンモニア(Matheson Tri Gas(Baking Ridge,NJ)から入手)をゆっくりバブリングし、混合物の温度を上昇させた。143gのアンモニアを添加した後、反応を停止させた。得られた塩をフィルタ上に回収した。得られた濾液から溶媒を蒸発させて、150gの粘性ポリシラザンを得た。
【0064】
ポリシラザン(PS3)の調製
【化6】


機械的撹拌機、ドライアイス/アセトン凝縮器、及びアンモニア送込管を備える2リットルの3つ口フラスコに、ヘキサン(1250mL)及びジクロロシラン(121.2g、0.3モル、25重量%キシレン溶液、Gelest(Morrisville,PA)から入手)を入れた。次いで、ピリジン(0.6モル、47.5g、Aldrich Chemical Company(Milwaukee,WI)から入手)をゆっくりフラスコに添加した。メチルジクロロシラン(0.5モル、57.5g、Alfa Aesar(Ward Hill,MA)から入手)及びビニルメチルジクロロシラン(0.2モル、28.2g、Alfa Aesar(Ward Hill MA)から入手)を、次にフラスコに添加した。次いで、得られた混合物にアンモニア(Matheson Tri Gas(Baking Ridge,NJ)から入手)をゆっくりバブリングし、混合物の温度を上昇させた。65gのアンモニアを添加した後、反応を停止させた。得られた塩をフィルタ上に回収した。得られた濾液から溶媒を蒸発させて、63gの粘性ポリシラザンを得た。
【0065】
ポリシラザン(PS4)の調製
【化7】


機械的撹拌機、ドライアイス/アセトン凝縮器、及びアンモニア送込管を備える2リットルの3つ口フラスコに、ヘキサン(1000mL)及びジクロロシラン(0.42モル、169.7g、25重量%キシレン溶液、Gelest(Morrisville,PA)から入手)を入れた。次いで、ピリジン(0.84モル、66.4g、Aldrich Chemical Company(Milwaukee,WI)から入手)をゆっくりフラスコに添加した。メチルジクロロシラン(0.18モル、20.7g、Alfa Aesar(Ward Hill,MA)から入手)を次にフラスコに添加した。次いで、得られた混合物にアンモニア(Matheson Tri Gas(Baking Ridge,NJ)から入手)をゆっくりバブリングし、混合物の温度を上昇させた。35gのアンモニアを添加した後、反応を停止させた。得られた塩をフィルタ上に回収した。得られた濾液から溶媒を蒸発させて、16.9gの粘性ポリシラザンを得た。
【0066】
F(CF(CF)CFO)CF(CF)C(=O)OCHの調製、式中平均して6.7
特記しない限り、「HFPO−」は、メチルエステルF(CF(CF)CFO)CF(CF)C(=O)OCHの一価の末端基F(CF(CF)CFO)CF(CF)−を指し、式中、「a」は平均約6.7であり、メチルエステルは約1,211g/モルの平均分子量を有する。参照により本明細書に組み込まれている、米国特許第3,250,808号(Mooreら)に述べられている方法により、このメチルエステルを作製し、分留により精製した。
【0067】
FC−4の手順に基づいて、本質的に米国特許出願公開第2005/0250921号(Qiuら)の6及び7ページに述べられている通り、モノエタノールアミンで処理することにより、このメチルエステルをアミドールHFPO−C(=O)NHCHCHOHに変換した。
【0068】
2−HFPO−オキサゾリンの調製
【化8】


114g(約0.1モル)のHFPO−C(=O)NHCHCHOH(上記の通り調製)を20mLのCOCH(3M Company(St.Paul,MN)からNOVEC(商標)Engineered Fluid HFE−7100として市販)に溶解させ、10mLのSOClで処理し、得られた混合物を18時間加熱還流させた。次いで、混合物から溶媒を揮散させ、得られた残渣を約100℃で10時間加熱して、HFPO−C(=O)NHCHCHClを得、そのうち20.0gを、CHOH中25重量%のNaOCHを4.0g含有するCHOH約25mL(Aldrich Chemical Company(Milwaukee,WI)から入手)に懸濁させた。23℃で20時間後、スラリーを水でクエンチし、COCHで抽出して、低粘度の液体として15.0gの2−HFPO−オキサゾリンを得た。核磁気共鳴(NMR)及び赤外(IR)分析によって構造が裏付けられた。
【0069】
HFPO−ジヒドロアルコールグリシジルエーテルの調製
【化9】


本質的に米国特許第7,294,731号(Flynnら)の実施例1に記載されている通り、HFPO−C(=O)OCH(上記の通り調製)を、水素化ホウ素ナトリウムを使用して還元し、HFPO−CHOHを調製して、次いで、これを臭化アリルでアルキル化して、HFPO−CHOCHCH=CHを形成した。
【0070】
13.0gのHFPO−CHOCHCH=CHを15mLのt−ブチルメチルエーテルに溶解させ、4gのメタ−クロロ過安息香酸(mCPBA)で処理した。5mLのペルフルオロ−N−メチルホルホリン(3M Company(St.Paul,MN)から商品名PF5052として市販)のアリコートをクエンチし、濾過し、濃縮することによって、処理された混合物のサンプルを核磁気共鳴(NMR)分析のために単離した。NMRによって、90%超のアリル基が残留していることが明らかになった。別の2.0gのmCPBAを混合物に添加し、混合物を2時間水蒸気浴で加熱した。NMRによって、28パーセントのアリル基が残留していることが示された。別の3.0gのmCPBAを混合物に添加し、混合物を20時間で還流させながら撹拌した。混合物をペルフルオロ−N−メチルホルホリンでクエンチし、濾過し、無色の油状物である所望のグリシジルエーテル(6.8g)に濃縮した。
【0071】
ペルフルオロポリ(メチレンオキシド−co−エチレンオキシド)ビス(ジヒドロアルコール)ビス(グリシジルエーテル)の調製
【化10】


本質的に米国特許第7,294,731号(Flynnら)の実施例3に記載されている通り、対応するジアリルエーテル(LTMは、構造−CFO(CFO)(CO)CF−を有する二価ペルフルオロポリエーテル基を表す、Solvay Solexis(Houston,Texas)から950当量を有するジオールとして市販)を調製し、HFPO−ジヒドロアルコールアリルエーテルについて上に記載されているのと本質的に同じ方法で過剰のメタ−クロロ過安息香酸(mCPBA)でエポキシド化して、無色の油状物を得た。
【0072】
N−3(トリメトキシシリル)プロピルHFPO−カルボキサミドの調製
【化11】


1リットルの丸底フラスコに500g(0.40255モル)のHFPO−C(=O)OCH(上記の通り調製)及び72.11g(0.040225モル)のアミノプロピルトリメトキシシランを添加した。フラスコを油浴中で一晩75℃の内部温度に加熱し、約1790cm−1におけるピークの消失及び約1710cm−1におけるピークの出現がフーリエ変換赤外分光法によってモニタされた。次いで、得られた混合物を、48時間室温で約0.0013気圧(131.7Pa)の真空下に置いた。
【0073】
ポリエチレングリコール750メチルエーテルグリシジルエーテルの調製
【化12】


4.3グラムの水素化ナトリウム(60重量%の鉱油分散液として入手)を30mLのヘキサンで洗浄し、次いで、無水テトラヒドロフラン(THF、70mL)に懸濁させた。750グラム/モルの分子量を有するメチルポリ(エチレングリコール)(MeO−PEG)75グラム(0.1モル)(Aldrich Chemical Company(Milwaukee,WI)から入手)の約50mLの無水THF溶液を懸濁液に滴下した。得られた粘性の黄色溶液を20mLの無水THF中37グラムのエピクロロヒドリンに滴下した。得られた混合物を加熱還流させると、曇った沈殿物が形成された。混合物を17時間加熱還流し、冷却し、濾過し、減圧下で濃縮して、71.9グラムの生成物混合物を得た。H核磁気共鳴分光法による分析で、70パーセントのメチルポリ(エチレングリコール)がそのグリシジルエーテルに変換されたことが示された。生成物混合物の一部(51.5グラム)を75mLの温ヘキサンで2回洗浄し、減圧下で濃縮した。
【0074】
試験方法
接触角の測定方法
以下の実施例に記載の通りサンプルを調製した。イソプロピルアルコール(IPA)中で手で撹拌することによって1分間サンプルをすすぎ、イソプロピルアルコールを蒸発させた後、水(HO)及びヘキサデカン(HD)接触角を測定した(それぞれ、湿潤液として水及びヘキサデカンを用いた)。ビデオ接触角分析機(AST Products(Billerica,MA)から製品番号VCA−2500XEとして入手可能)で、受け取ったままの試薬グレードのヘキサデカン及び濾過システム(Millipore Corporation(Billerica,MA)から入手)を通して濾過した脱イオン水を使用して測定を行った。報告する値は、液滴の右側と左側で測定した少なくとも3滴の測定値の平均である。液滴の体積は、静的接触角測定の場合5マイクロリットル、前進及び後退接触角測定の場合1〜3マイクロリットルであった。
【0075】
撥インク性試験方法
この試験を使用して、以下の実施例に記載の通り調製したコーティングの撥インク性を測定した。黒色のSharpie(商標)マーカー(Sanford(Bellwood,IL)から入手可能)を使用して各コーティングの表面に線を引いた。外観及びマーカーの印をはじく能力についてコーティングを格付けした。
【0076】
【表1】

【0077】
比較例A
0.625gのポリシラザンPS1(上記の通り調製)及び0.0136gのジクミルペルオキシドを5gの酢酸エチルに溶解させた。得られた溶液をアルミニウム板にコーティングし、150℃で18時間硬化させた。
【0078】
(実施例1)
【化13】


(0.2g;上記の通り調製)及びポリシラザンPS1(2g、上記の通り調製)のキシレン(2g)溶液を4時間130℃に加熱した。得られた均質な溶液を室温に冷却すると、2つの層が形成された。溶液を12gの酢酸エチルで希釈した。次いで、0.0136gのジクミルペルオキシドを5gの溶液に添加し、得られた溶液をアルミニウム板にコーティングし、150℃で18時間硬化させた。
【0079】
(実施例2)
【化14】


を0.2gの
【化15】


(上記の通り調製)に置換したことを除いて、実施例1と本質的に同様の方法で実施例2を実施した。
【0080】
(実施例3)
【化16】



【化17】


(0.2g、上記の通り調製)に置換し、均質な溶液の代わりに曇った溶液が得られたことを除いて、実施例1と本質的に同様の方法で実施例3を実施した。
【0081】
比較例B
【化18】


(2g;上記の通り調製)及びポリシラザンPS1(2g、上記の通り調製)の溶液を1時間130℃に加熱し、均質な溶液を得た。0.047gのジクミルペルオキシドを均質な溶液に添加し、得られた溶液をアルミニウム板にコーティングし、150℃で18時間硬化させた。
【0082】
比較例C
【化19】


(0.4g;Aldrich Chemical Company(Milwaukee,WI)から入手)及びポリシラザンPS1(2g;上記の通り調製)の溶液を45分間130℃に加熱して、均質な溶液を得た。均質な溶液に、0.017gのジクミルペルオキシドを添加した。得られた溶液をアルミニウム板にコーティングし、150℃で18時間硬化させた。
【0083】
(実施例4)
【化20】


(上記の通り調製;数平均分子量、Mは約1400;0.1g)及びポリシラザンPS1(上記の通り調製;1g)を合わせ、4時間130℃に加熱し、次いで、0.035gのジクミルペルオキシドを得られた溶液に添加した。溶液をアルミニウム板にコーティングし、150℃で8時間硬化させた。
【0084】
(実施例5)
【化21】


(0.1g、Aldrich Chemical Company(Milwaukee,WI)から市販)及びポリシラザンPS1(1g、上記の通り調製)を合わせ、4時間130℃に加熱し、次いで、0.035gのジクミルペルオキシドを組み合わせに添加した。得られた溶液をアルミニウム板にコーティングし、150℃で8時間硬化させた。
【0085】
比較例A、B、及びC、並びに実施例1〜5のコーティングされたサンプルを、上記手順に従って水及びヘキサデカン接触角、並びに撥インク性について試験した。結果を以下の表1に報告する。
【0086】
【表2】

【0087】
比較例D
ポリシラザンPS1(上記の通り調製)0.25g及び0.373重量%のPt(0)−MeSi(CH=CH 0.364gのトルエン溶液(Aldrich Chemical Company(Milwaukee,WI)から入手)を酢酸エチル2gに溶解させた。得られた溶液をアルミニウム板にコーティングし、120℃で5時間硬化させた。
【0088】
(実施例6)
【化22】


(0.2g;上記の通り調製)及びポリシラザンPS1(2g、上記の通り調製)のキシレン(2g)溶液を4時間130℃に加熱した。得られた均質な溶液を室温に冷却すると、2つの層が形成された。この溶液を酢酸エチル(12g)で希釈し、0.373重量%のPt(0)−MeSi(CH=CH 0.364gのトルエン溶液(Aldrich Chemical Company(Milwaukee,WI)から入手)を2gの溶液に添加した。得られた溶液をアルミニウム板にコーティングし、120℃で5時間硬化させた。
【0089】
(実施例7)
【化23】


を0.2gの
【化24】


(上記の通り調製)に置換したことを除いて、実施例6と本質的に同様の方法で実施例7を実施した。
【0090】
(実施例8)
【化25】


を0.2gの
【化26】


(上記の通り調製)に置換したことを除いて、実施例6と本質的に同様の方法で実施例8を実施した。
【0091】
(実施例9)
【化27】


(0.1g;上記の通り調製)、ポリシラザンPS1(1g;上記の通り調製)、0.373重量%のPt(0)−MeSi(CH=CH 0.22gのトルエン溶液(Aldrich Chemical Company(Milwaukee,WI)から入手)、及びt−ブチルメチルエーテル(2g)を混合して透明な溶液を形成した。溶液をアルミニウム板にコーティングし、120℃で5時間硬化させた。
【0092】
比較例D、及び実施例6〜9のコーティングされたサンプルを、上記手順に従って水及びヘキサデカン接触角、並びに撥インク性について試験した。結果を以下の表2に報告する。
【0093】
【表3】

【0094】
比較例E
ポリシラザンPS2(0.25g;上記の通り調製)、酢酸エチル(5g)、及び0.01gのジクミルペルオキシドの溶液をアルミニウム板にコーティングし、150℃で18時間硬化させた。
【0095】
(実施例10)
【化28】


(0.2g、上記の通り調製)及びポリシラザンPS2(2g、上記の通り調製)のキシレン(2g)溶液を4時間130℃に加熱したところ、曇った溶液が得られ、これを室温に冷却すると、2層が形成された。次いで、溶液を酢酸エチル(12g)で希釈し、0.036gのジクミルペルオキシドを希釈溶液5gに添加した。溶液をアルミニウム板にコーティングし、150℃で8時間硬化させた。
【0096】
比較例E及び実施例10のコーティングされたサンプルを、上記手順に従って水及びヘキサデカン接触角、並びに撥インク性について試験した。結果を以下の表3に報告する。
【0097】
【表4】

【0098】
比較例F
ポリシラザンPS2(0.25g;上記の通り調製)、酢酸エチル(5.75g)、及び0.373重量%のPt(0)−MeSi(CH=CH 0.364gのトルエン溶液(Aldrich Chemical Company(Milwaukee,WI)から入手)を調製した。溶液をアルミニウム板にコーティングし、120℃で5時間硬化させた。
【0099】
(実施例11)
【化29】


(0.2g、上記の通り調製)及びポリシラザンPS2(2g、上記の通り調製)のキシレン(2g)溶液を4時間130℃に加熱したところ、曇った溶液が得られ、これを室温に冷却すると、2層が形成された。溶液をt−ブチルメチルエーテル(12g)で希釈し、トルエン中0.373重量パーセントのPt(0)−MeSi(CH=CH 0.364gを希釈溶液2gに添加した。溶液をアルミニウム板にコーティングし、120℃で16時間硬化させた。
【0100】
比較例F及び実施例11のコーティングされたサンプルを、上記手順に従って水及びヘキサデカン接触角、並びに撥インク性について試験した。結果を以下の表4に報告する。
【0101】
【表5】

【0102】
(実施例12)
【化30】


(0.08g、上記の通り調製)及びポリシラザンPS3(2g、上記の通り調製)のキシレン(2g)溶液を10時間130℃に加熱したところ、曇った溶液が得られ、これを室温に冷却すると、2層が形成された。溶液をt−ブチルメチルエーテル(13.3g)で希釈して、透明な溶液を形成した。透明な溶液1g(固形分0.116g)を0.013gの1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン(DBU、ICI America(Portland,OR)から入手)と混合し、アルミニウム板にコーティングした。得られたコーティングを乾燥させて、溶媒を蒸発させた数分以内に触れた(DBUを含まない対応するコーティングと対照的に)。
【0103】
実施例12の乾燥コーティングサンプルの一部を室温で更に硬化させ、硬化時間の関数として(上記手順に従って)水及びヘキサデカン接触角、並びに撥インク性について試験した。結果を以下の表5に報告する。
【0104】
【表6】

【0105】
更に、実施例12の乾燥コーティングサンプルの一部を70℃で2日間更に硬化させ、次いで、上記手順に従って水及びヘキサデカン接触角、並びに撥インク性について試験した。結果を以下の表6に報告する。
【0106】
【表7】

【0107】
更に、実施例12の乾燥コーティングサンプルの一部を80℃で更に硬化させ、硬化時間の関数として(上記手順に従って)水及びヘキサデカン接触角、並びに撥インク性について試験した。結果を以下の表7に報告する。
【0108】
【表8】

【0109】
更に、実施例12の乾燥コーティングサンプルの一部を150℃で更に硬化させ、硬化時間の関数として(上記手順に従って)水及びヘキサデカン接触角、並びに撥インク性について試験した。結果を以下の表8に報告する。
【0110】
【表9】

【0111】
比較例G
ポリシラザンPS4(0.157g;上記の通り調製)、酢酸エチル(2g)、及び0.0147gの1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン(DBU、ICI America(Portland,OR)から入手)の溶液を調製した。溶液をアルミニウム板にコーティングし、70℃で60時間加熱した。得られたコーティングを、上記手順に従って水及びヘキサデカン接触角、並びに撥インク性について試験した。結果を以下の表9に報告する。
【0112】
【表10】

【0113】
(実施例13)
【化31】


(0.08g、上記の通り調製)及びポリシラザンPS4(2g、上記の通り調製)のキシレン(2g)溶液を10時間130℃に加熱したところ、曇った溶液が得られ、これを室温に冷却すると、2層が形成された。溶液を酢酸エチル(12g)で希釈して、透明な溶液を形成した。透明な溶液1g(固形分0.116g)を0.013gの1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン(DBU、ICI America(Portland,OR)から入手)と混合し、アルミニウム板にコーティングした。得られたコーティングは、70℃で非常に迅速に固化した(DBUを含まない対応するコーティングとは対照的に)。
【0114】
実施例13の乾燥コーティングを、硬化時間の関数として(上記手順に従って)水及びヘキサデカン接触角、並びに撥インク性について試験した。結果を以下の表10に報告する。
【0115】
【表11】

【0116】
本明細書で引用した特許、特許文献、及び公報に含有される参照された記述内容は、その全体が、それぞれ個別に組み込まれているかのように、参照として組み込まれる。本発明に対する様々な予見できない修正及び変更が、本発明の範囲及び趣旨から逸脱することなく当業者に明らかとなるであろう。本発明は、本明細書で述べる例示的な実施形態及び実施例によって不当に限定されるものではないこと、また、こうした実施例及び実施形態は、本明細書において以下に記述する「特許請求の範囲」によってのみ限定されると意図する本発明の範囲に関する例示のためにのみ提示されることを理解すべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)少なくとも1つの主表面を有する少なくとも1つの基材を用意する工程と、
(b)(1)及び(2)を組み合わせる工程と、
(1)ケイ素−窒素結合、ケイ素−水素結合、炭素−炭素二重結合、窒素−水素結合、及びこれらの組み合わせから選択される少なくとも1つの化学的反応性部位を含む、少なくとも1つの硬化性オリゴマー又はポリマーポリシラザン、
(2)(i)及び(ii)を含む、少なくとも1つのフルオロケミカル化合物、
(i)少なくとも6個の全フッ素化炭素原子を含む少なくとも1つの有機フッ素又はヘテロ有機フッ素部分、
(ii)少なくとも1つの前記化学的反応性部位を通して前記硬化性オリゴマー又はポリマーポリシラザンと反応することができる少なくとも1つの官能基、
(c)前記硬化性オリゴマー又はポリマーポリシラザンと前記フルオロケミカル化合物とを反応させて又は反応を誘導して、少なくとも1つの硬化性有機フッ素変性ポリシラザンを形成する工程と、
(d)前記硬化性有機フッ素変性ポリシラザン又は前記硬化性オリゴマー若しくはポリマーポリシラザンと、前記フルオロケミカル化合物とを前記基材の少なくとも1つの前記主表面の少なくとも一部に塗布する工程と、
(e)前記硬化性有機フッ素変性ポリシラザンを硬化させて表面処理を形成する工程と、を含む、方法。
【請求項2】
前記基材が、木材、ガラス、鉱物、ポリマー、金属、金属合金、金属化合物、皮革、羊皮紙、紙、織物、塗面、及びこれらの組み合わせから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ポリシラザンが、以下の一般式を有する構造単位を含む主鎖を有する、請求項1に記載の方法:
−[Si(R)(R)−N(R)]−
式I
(式中、各前記R、各前記R、及び各前記Rは、独立して、水素、有機基、ヘテロ有機基、又はこれらの組み合わせである)。
【請求項4】
前記有機及びヘテロ有機基が、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、アルキルシリル、アリールシリル、アルキルアミノ、アリールアミノ、アルコキシ、アリールオキシ、アラルキルオキシ、及びこれらの組み合わせから選択され、並びに/又は前記有機及びヘテロ有機基が、1〜18個の炭素原子を有する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
各前記R及び各前記Rが、水素、アルキル、アルケニル、アリール、及びこれらの組み合わせから選択され、かつ各前記Rが水素である、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記アルキルがメチルであり、前記アルケニルがビニルであり、かつ前記アリールがフェニルである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記ポリシラザンが、直鎖、分枝、若しくは環状構造、又はこれらの組み合わせを有し、及び/又は100〜50,000の数平均分子量を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記フルオロケミカル化合物の前記有機フッ素又はヘテロ有機フッ素部分が、全フッ素化部分である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記フルオロケミカル化合物の前記有機フッ素又はヘテロ有機フッ素部分が、ペルフルオロアルキル、ペルフルオロアルキレン、ペルフルオロヘテロアルキル、又はペルフルオロヘテロアルキレン部分である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記有機フッ素又はヘテロ有機フッ素部分が、ペルフルオロポリエーテル部分である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記フルオロケミカル化合物が、以下の一般式によって表される分類のうちの1つである、請求項1に記載の方法:
−(Y−X)
(式中、Rは、一価若しくは多価の直鎖、分枝、脂環式、若しくは芳香族の、フッ素化若しくは全フッ素化された有機若しくはヘテロ有機基、又はこれらの組み合わせであり、各Yは、独立して、共有結合、又は二価の直鎖、分枝、脂環式、若しくは芳香族の、有機若しくはヘテロ有機連結基、又はこれらの組み合わせであり、各Xは、独立して、求電子基又は求核基であり、vは、Rの価数に等しい正の整数である)。
【請求項12】
前記Rが、6〜35個の炭素原子を含有し、及び/又は前記Rが一価又は二価であり、かつ前記vが1又は2であり、及び/又は前記Rが全フッ素化有機若しくはヘテロ有機基又はこれらの組み合わせである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記全フッ素化有機又はヘテロ有機基が、ペルフルオロアルキル、ペルフルオロアルキレン、ペルフルオロエーテル、ペルフルオロポリエーテル、及びこれらの組み合わせから選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記R基が、ペルフルオロアルキル又はペルフルオロアルキレン基である、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記R基が、ペルフルオロポリエーテル基である、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記ペルフルオロポリエーテル基が、一価若しくは二価であり、並びに/又は前記ペルフルオロポリエーテル基が、少なくとも1つの二価ヘキサフルオロプロピレンオキシ基(−CF(CF)−CFO−)を含み、並びに/又は前記ペルフルオロポリエーテル基が、F[CF(CF)CFO]CF(CF)−(式中、aは約4〜約20の平均値を有する)、及び
−CF(CF)(OCFCF(CFOCFCFCFCFO(CF(CF)CFO)CF(CF)−、(式中、b+cは約4〜約15の平均値を有する)から選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記Yが、共有結合又はアルキレン若しくはヘテロアルキレン基又はこれらの組み合わせであり、並びに/又は前記Xが、イソシアナト、イソチオシアナト、エポキシド、アミノ、オキサゾリノ、ヒドロキシル、メルカプト、ビニル、及び加水分解性シリル基、及びこれらの組み合わせである、請求項11に記載の方法。
【請求項18】
前記塗布が、ディップコーティング、スピンコーティング、スプレーコーティング、ワイピング、ロールコーティング等、及びこれらの組み合わせから選択されるコーティング方法により実施され、並びに/又は前記硬化が、湿分硬化、フリーラジカル開始、ヒドロシリル化、若しくはこれらの組み合わせから選択される硬化方法によって実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
(a)少なくとも1つの主表面を有する少なくとも1つの基材を用意する工程と、
(b)(1)及び(2)を組み合わせる工程と、
(1)ケイ素−窒素結合、ケイ素−水素結合、炭素−炭素二重結合、窒素−水素結合、及びこれらの組み合わせから選択される少なくとも1つの化学的反応性部位を含む、少なくとも1つの硬化性オリゴマー又はポリマーポリシラザンであって、以下の一般式を有する構造単位を含む主鎖を有するポリシラザン、
−[Si(R)(R)−N(R)]−
式I
(式中、各前記R及び各前記Rは、水素、アルキル、アルケニル、アリール、及びこれらの組み合わせから選択され、各前記Rは水素である)、
(2)(i)及び(ii)を含む、少なくとも1つのフルオロケミカル化合物、
(i)少なくとも6個の全フッ素化炭素原子を含むペルフルオロアルキル、ペルフルオロアルキレン、ペルフルオロエーテル、及びペルフルオロポリエーテルから選択される少なくとも1つの有機フッ素又はヘテロ有機フッ素部分、
(ii)少なくとも1つの前記化学的反応性部位を通して前記硬化性オリゴマー又はポリマーポリシラザンと反応することができる少なくとも1つの官能基であって、イソシアナト、イソチオシアナト、エポキシド、アミノ、オキサゾリノ、ヒドロキシル、メルカプト、ビニル、及び加水分解性シリル基、及びこれらの組み合わせから選択される官能基、
(c)前記硬化性オリゴマー又はポリマーポリシラザンと前記フルオロケミカル化合物とを反応させて又は反応を誘導して、少なくとも1つの硬化性有機フッ素変性ポリシラザンを形成する工程と、
(d)前記硬化性有機フッ素変性ポリシラザン又は前記硬化性オリゴマー若しくはポリマーポリシラザンと、前記フルオロケミカル化合物とを前記基材の少なくとも1つの前記主表面の少なくとも一部に塗布する工程と、
(e)前記硬化性有機フッ素変性ポリシラザンを硬化させて表面処理を形成する工程と、を含む、方法。
【請求項20】
少なくとも1つの主表面を有する少なくとも1つの基材を含む物品であって、前記基材が、少なくとも1つの前記主表面の少なくとも一部に、請求項1に記載の方法によって調製された表面処理を有する物品。

【公表番号】特表2012−532208(P2012−532208A)
【公表日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−517755(P2012−517755)
【出願日】平成22年6月25日(2010.6.25)
【国際出願番号】PCT/US2010/039900
【国際公開番号】WO2011/002668
【国際公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】