説明

表面実装型の水晶デバイス及び水晶デバイスの製造方法

【課題】 本発明は、熱膨張による影響を低減させた表面実装型の水晶デバイス及び水晶デバイスの製造方法を提供する。
【解決手段】 水晶デバイス(200)は、電圧の印加により振動する励振部(32)を有する水晶片(230)と、水晶片が載置され、水晶片側の底面(23)と底面の反対側の下面(22)とを有しガラス材又は結晶方向を有する水晶材からなるベース(47)と、ベースに接合されて水晶片を密封し、水晶片側の天井面(12)と天井面の反対側の上面(11)とを有しガラス材又は結晶方向を有する水晶材からなるリッド(10)と、を備え、上面、下面、底面、天井面の少なくとも2面は励振部の表面粗さよりも粗い粗面を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱膨張による影響を低減させた表面実装型(Surface Mount Device: SMD)の水晶デバイス及び水晶デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
表面実装型の水晶デバイスは一般に水晶振動片を固定するベースとリッドとから構成される。たとえば特許文献1にはコスト低減又は量産性の観点からベースとリッドとに、ガラス材又は水晶材が用いられている。また特許文献1では、水晶振動片をベースとリッドとで挟み込んでいるので、ベースの材料とリッドの材料との熱膨張係数が、水晶振動片の熱膨張係数にできるだけ近づける技術を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−109886号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、水晶材とガラス材とは必ずしも熱膨張係数が同じではない。またベースおよびリッドが水晶材であっても、振動片としての水晶材の結晶方向とベース等の水晶材の結晶方向とが異なると厳密には熱膨張係数が同じではない。したがって、水晶デバイスに与えられる温度差が大きいと水晶デバイスが破損するおそれがある。また、表面実装型の圧電デバイスの小型化に伴い、水晶材料又はガラス材料は薄く形成しなければならず、破損を防ぐためにベースおよびリッドの厚みを厚くすることは好ましくない。
【0005】
本発明は、熱膨張による影響を低減することができる水晶デバイス及び水晶デバイスの製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1観点の水晶デバイスは、電圧の印加により振動する励振部を有する水晶片と、水晶片が載置され水晶片側の底面と底面の反対側の下面とを有しガラス材又は結晶方向を有する水晶材からなるベースと、ベースに接合されて水晶片を密封し水晶片側の天井面と天井面の反対側の上面とを有しガラス材又は結晶方向を有する水晶材からなるリッドと、を備え、上面、下面、底面、天井面の少なくとも2面は励振部の表面粗さよりも粗い粗面を有する。
【0007】
第2観点の水晶デバイスは、第1観点において、ベースとリッドとが異なる材料又は異なる結晶方向の組合せで接合され、ベースとリッドとが接合される箇所を除いた部分はベースとリッドとが接合される箇所の表面粗さよりも粗い粗面である。
【0008】
第3観点の水晶デバイスは、電圧の印加により振動する励振部と励振部の周囲を囲む枠体とを有する水晶片と、水晶片側の底面と底面の反対側の下面とを有し枠体の一面に接合されガラス材又は水晶材からなるベースと、水晶片側の天井面と天井面の反対側の上面とを有し枠体の他面に接合されガラス材又は水晶材からなるリッドと、を備え、上面、下面、底面、天井面の少なくとも2面は励振部の表面粗さよりも粗い粗面を有する。
【0009】
第4観点の水晶デバイスは、第3観点において、リッド及びベースが、異なる材料又は異なる結晶方向の組合せで接合される。
【0010】
第5観点の水晶デバイスは、第4観点において、リッド及びベースがX軸、Y軸、Z軸により規定されるZカット水晶材を含み、水晶片が、X軸、Y’軸、Z’軸により規定されるATカット水晶材を含む。
【0011】
第6観点の水晶デバイスは、第3観点から第5観点において、水晶片、ベース及びリッドがそれぞれ異なる表面粗さを有する。
【0012】
第7観点の水晶デバイスは、第1観点から第6観点において、水晶片は、厚みすべりモードで振動する水晶振動片、又は一対の振動腕を有する音叉型水晶振動片を含む。
【0013】
第8観点の水晶デバイスの製造方法は、人工水晶原石から所定角度且つ所定厚さで、電圧の印加により振動する励振部と励振部の周囲を囲む枠体とを有する複数の水晶片が形成される水晶片用水晶ウエハを切り出す工程と、水晶片用水晶ウエハの表面をラッピング及びポリッシュを行うことにより鏡面状にする工程と、底面と底面の反対側の下面とを有し枠体の一面が底面の一部に接合される複数のベースが形成されるベース用水晶ウエハを切り出す工程と、天井面と天井面の反対側の上面とを有し枠体の他面が天井面の一部に接合される複数のリッドが形成されるリッド用水晶ウエハを切り出す工程と、水晶片用水晶ウエハとベース用水晶ウエハとリッド用水晶ウエハとを接合する工程と、を備え、上面、下面、底面、天井面の少なくとも2面は励振部の表面粗さよりも粗い粗面を有する。
【0014】
第9観点の水晶デバイスの製造方法は、第8観点において、切り出し工程の後に、ベース及びリッドの少なくとも一方をウエットエッチングする工程を備える。
【0015】
第10観点の水晶デバイスの製造方法は、第8観点において、切り出し工程の後に、ベース用水晶ウエハ又はリッド用水晶ウエハの少なくとも一方を3000メッシュ以下の研磨材でラッピングする工程と、ラッピングする工程の後に、ベース用水晶ウエハ及びリッド用水晶ウエハの少なくとも一方をエッチング量が10μm以下のウエットエッチングを行うウエットエッチングをする工程と、を備える。
【0016】
第11観点の水晶デバイスの製造方法は、第10観点において、切り出し工程でベース用水晶ウエハ及びリッド用水晶ウエハの表面粗さが1000メッシュの研磨材で切り出され、ラッピングする工程でベース用水晶ウエハが2000メッシュ以下の研磨材でラッピングされてベース用水晶ウエハの厚さが調節され、ウエットエッチングする工程でベース用水晶ウエハがエッチングされ、エッチング量が5μmである。
【0017】
第12観点の水晶デバイスの製造方法は、第11観点において、ウエットエッチングする工程では、ベース用水晶ウエハと並行して切り出し工程後のリッド用水晶ウエハもエッチング量が5μmとなるようにウエットエッチングされる。
【0018】
第13観点の水晶デバイスの製造方法は、第8観点から第12観点において、ベース用水晶ウエハ及びリッド用水晶ウエハがX軸、Y’軸、Z’軸により規定されるATカットで切り出されている。
【0019】
第14観点の水晶デバイスの製造方法は、第8観点において、ベース用水晶ウエハ及びリッド用水晶ウエハの表面をラッピング及びポリッシュを行うことにより鏡面状にする工程と、上面、下面、底面、天井面の少なくとも2面にサンドブラスト又はエッチングにより粗面を形成する工程と、を備える。
【0020】
第15観点の水晶デバイスの製造方法は、第8観点において、接合する工程で接合されるベース用水晶ウエハ及びリッド用水晶ウエハが、切り出す工程で切り出された直後の表面粗さを有している。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、熱膨張による影響を低減させた水晶デバイス及び水晶デバイスの製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】(a)は、表面実装型の水晶デバイスである水晶振動子100の斜視図である。 (b)は、水晶振動子100の断面図である。
【図2】(a)は、リッド10の平面図である。 (b)は、水晶片30の平面図である。 (c)は、ベース20の平面図である。
【図3】(a)は、リッド用水晶ウエハW10の平面図である。 (b)は、図3(a)の点線の枠60を拡大した図である。
【図4】(a)は、リッド用水晶ウエハW10の切断工程のフローチャートである。 (b)は、ランバード加工された人工水晶原石50の斜視図である。
【図5】リッド用水晶ウエハW10上へのリッド10の形成工程のフローチャート及びその説明のための図である。
【図6】リッド用水晶ウエハW10と、水晶片用水晶ウエハW30と、ベース用水晶ウエハW20とを重ね合わせる前の図である。
【図7】(a)は、シロキサン結合を説明するための図である。 (b)は、陽極接合を説明するための図である。
【図8】(a)は、水晶振動子110の断面図である。 (b)は、水晶振動子120の断面図である。
【図9】(a)は、リッド10を取り除いた水晶振動子200の平面図である。 (b)は、図9(a)のC−C断面図である。 (c)は、水晶振動子210の断面図である。
【図10】(a)は、水晶発振器300の断面図である。 (b)は、水晶発振器310の断面図である。
【図11】(a)は、水晶振動子400の断面図である。 (b)は、水晶片530の平面図である。 (c)は、リッド410及びベース420の平面図である。
【図12】リッド用水晶ウエハW10のラッピング及びエッチング工程が示されたフローチャートである。
【図13】(a)は、ランバード加工された人工水晶原石50から切断されたウエットエッチング前のリッド用水晶ウエハW10の概略断面図である。 (b)は、ウエットエッチング後のリッド用水晶ウエハW10の断面図である。
【図14】(a)は、ウエットエッチング前のウエハ表面の写真である。 (b)は、ウエットエッチング後のATカットウエハの表面の写真である。 (c)は、ウエットエッチング後のZカットウエハの表面の写真である。
【図15】(a)は、水晶振動子600の断面図である。 (b)は、水晶片630の平面図である。 (c)は、ベース620の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の好適な実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、本発明の範囲は以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られるものではない。
【0024】
(第1実施形態)
<水晶振動子100の構成>
本発明の表面実装型の水晶デバイスの構成を、図1を参照しながら説明する。
図1(a)は、表面実装型の水晶デバイスである水晶振動子100の斜視図である。水晶振動子100は、リッド10と、ベース20と、水晶材を基材とした水晶片30とにより構成されている。水晶振動子100は、上部にリッド10が配置され、下部にベース20が配置され、水晶片30はリッド10とベース20とに挟まれた位置に配置されている。また、ベース20の下面には外部電極21が形成されている。水晶片30に用いられる水晶材には例えばATカットの水晶材が用いられる。ATカットの水晶材は、主面(YZ面)が結晶軸(XYZ)のY軸に対して、X軸を中心としてZ軸からY軸方向に35度15分傾斜されている。以下の説明では、ATカットの水晶材の軸方向を基準とし、傾斜された新たな軸をY’軸及びZ’軸として用いる。すなわち、水晶振動子100において水晶振動子100の長手方向をX軸方向、水晶振動子100の高さ方向をY’軸方向、X及びY’軸方向に垂直な方向をZ’軸方向として説明する。
【0025】
図1(b)は、水晶振動子100の断面図である。また、図1(b)は後述される図2(b)のA−A断面図である。水晶片30は、励振電極31が形成されている励振部32と励振部32の周囲を取り囲む枠体33とを有している。リッド10は、水晶振動子100の外部に面している上面11と、水晶片30に面する天井面12との2つの主面を有している。リッド10には、水晶片30の枠体33と接合するための接合面40が形成されている。天井面12は接合面40から凹んで形成されている。上面11と天井面12とは粗面加工されている。
【0026】
ベース20は、水晶振動子100の外部に面している下面22と、内部に面している底面23との2つの主面を有している。ベース20には、水晶片30の枠体33と接合するための接合面40が形成されている。ベース20の底面23は接合面40から凹んで形成されている。ベース20の接合面40には接続電極24が形成され、下面22には外部電極21が形成されている。接続電極24はベース20内に形成された導通部(不図示)を通して外部電極21と電気的に接続されている。また、下面22と底面23とには粗面加工がされることにより、表面に凹凸が形成されている。さらに、外部電極21の表面にも下面22の凹凸が反映されて凹凸が形成されている。リッド10の天井面12とベース20の底面23とに挟まれたキャビティ70に、水晶片30の励振部32が配置される。
【0027】
水晶片30の励振部32には励振電極31が形成されており、枠体33に引出電極35が形成されている。励振電極31と引出電極35とは電気的に接続されている。引出電極35は接続電極24に接続されることで、外部電極21と電気的に接続されている。水晶片30に形成されている電極は、水晶上に形成されている第1電極層80と、第1金属層80上に形成されている第2金属層81とにより形成されている。水晶振動子100では、第1金属層80はクロム(Cr)により形成され、第2金属層81は金(Au)により形成されている。
【0028】
図2(a)は、リッド10の平面図である。リッド10は、X軸方向に長辺、Z’軸方向に短辺が伸びる長方形の主面を有している。リッド10の+Y’軸側の主面である上面11および−Y’軸側の主面である天井面12には、粗面加工が施されている。−Y’軸側の面の外周部には水晶片30と接合する面である接合面40(図1(b)参照)があり、接合面40には粗面加工は施されていない。
【0029】
図2(b)は、水晶片30の平面図である。励振部32と枠体33とは接続部34によって接続されている。励振電極31から引き出されている引出電極35は、接続部34を通り、枠体33の−Y’軸側の角まで形成されている。引出電極35は、枠体33の角の接続点41においてベース20に形成されている接続電極24と接続される。
【0030】
図2(c)は、矩形状のベース20の平面図である。−Y’軸側の主面である下面22及び+Y’軸側の主面である底面23(図2(c)の斜線でハッチングされた領域)に粗面加工が施されている。+Y’軸側の面の外周部には水晶片30と接合する面である接合面40(図1(b)参照)があり、その接合面40には粗面加工が施されていない。また、ベース20の+Y’軸側の面の外周部の一部の角には水晶片30の引出電極35の接続点41と電気的に接続する接続電極24が形成されている。
【0031】
<リッドまたはベースの材料について>
水晶振動子100を構成するリッド10、水晶片30、ベース20は、様々な材料により構成される。水晶片30にATカットウエハが用いられる場合には、熱膨張による水晶振動子100の破損を考慮すると、リッド10及びベース20にも水晶片30と同じATカットウエハを用いて熱膨張率が等しくされることが望ましい。一方、リッド10及びベース20にはなるべく安価な材料を用いたいという要望もあるため、リッド10及びベース20にATカット水晶とは異なる材料が用いられることもある。以下に、水晶片30にATカット水晶が用いられ、リッド10及びベース20にATカット水晶以外の材料が用いられた2例について説明する。
【0032】
<<リッド/ベース:Zカット水晶、水晶片:ATカット水晶(矩形)>>
1例目は、リッド10及びベース20にZカットの水晶材を用い、水晶片30にATカットの水晶材を用いた矩形水晶振動片の例である。Zカットの水晶材は、結晶軸がX軸(電気軸)、Y軸(機械軸)、Z軸(光軸)により定義される。また、ATカットの水晶材の結晶軸は、X軸を中心として回転したX軸、Y’軸、Z’軸により定義される。Zカットの水晶材とATカットの水晶材とは、カット方向が異なることにより同じ水晶であっても、熱膨張係数が異なる。
【0033】
<<リッド/ベース:ガラス材、水晶片:ATカット水晶(矩形)>>
2例目は、リッド10及びベース20にガラス材を用い、水晶片30にATカットの水晶材を用いた矩形水晶振動片の例である。ガラス材には、パイレックス(登録商標)ガラス、ホウ珪酸ガラス、又はソーダガラス等の金属イオンを含有するものを使用すると、後に説明する陽極接合を用いることができるので好ましい。
【0034】
上記の2つの例では、リッド10及びベース20に比較的安価な材料を使用しており、製品の価格を下げることができる。しかし、同じ材料でも異なった結晶方向の材料を接合した場合、材料の熱膨張係数の違いからリッド10、水晶片30、ベース20のいずれかが破損するおそれがある。また異なった材料を接合した場合も同様に、材料の熱膨張係数の違いからリッド10、水晶片30、ベース20のいずれかが破損するおそれがある。
【0035】
水晶振動子100は、粗面加工によってリッド10及びベース20に粗面を形成することで表面積を大きくし、リッド10及びベース20にかかる応力を緩和させている。すなわち、上面11、下面22、底面23、天井面12の少なくとも2面は励振部32の表面粗さよりも粗い粗面を有していることが望ましい。また、下面22の表面が粗面に形成されている場合には、外部電極21の表面にも凹凸が形成されるため、アンカー効果により半田と外部電極21との密着性が高まるため望ましい。
【0036】
<水晶振動子100の作製方法>
水晶振動子100は、リッド10及びベース20の表面を粗面加工する。この粗面加工もリッド10及びベース20の外形形成と同時に行うことにより、工程を簡略化することができる。図3から図6を参照してリッド10及びベース20にZカットの水晶材を用い、水晶片30にATカットの水晶材を用いた場合の水晶振動子100の製造方法について説明する。また、以下のリッド10及びベース20に関する説明では、Zカットの水晶材の結晶軸(XYZ)を用いて説明する。
【0037】
図3(a)は、リッド用水晶ウエハW10の平面図である。リッド用水晶ウエハW10のY軸方向の長さは、3インチまたは4インチ等に形成される。リッド用水晶ウエハW10上には複数のリッド10が形成される。点線の枠60内には、1つのリッド10が形成されている。
【0038】
図3(b)は、図3(a)の点線の枠60を拡大した図である。リッド用水晶ウエハW10にはリッド10の天井面12が形成され、また、表裏面の主面である上面11及び天井面12に粗面加工がなされる。水晶片30に関して水晶片用水晶ウエハW30上に水晶片30の外形が形成され、電極が形成される。ベース20に関しても同様にベース用水晶ウエハW20上にベース20の外形が形成され、下面22及び底面23に粗面加工がなされる。各ウエハを重ね合わせて接合し、1つ1つの水晶振動子100の大きさにダイシングすることにより、一度に大量の水晶振動子100を作製することができる。
【0039】
図4(a)は、リッド用水晶ウエハW10の切断工程のフローチャートである。
ステップS001では、人工水晶原石がランバード加工される。ランバード加工は、人工水晶原石を使いやすい大きさにし、水晶の結晶軸を明確にするために行われる加工である。
【0040】
ステップS002では、ランバード加工された人工水晶原石50からリッド用水晶ウエハW10が所定の角度、厚みに切断される。このウエハの切断では、ウエハの表面の粗さは1000メッシュ以下である。
【0041】
図4(b)は、ランバード加工された人工水晶原石50の斜視図である。また、図4(b)には、リッド用水晶ウエハW10及び水晶片用水晶ウエハW30のカット例が示されている。リッド用水晶ウエハW10がZカットされる場合は、図4(b)に示されるように、リッド用水晶ウエハW10は人工水晶原石50のZ軸に垂直な面であるZ面に平行になるように切断される。また、水晶片用水晶ウエハW30がATカットされる場合は、図4(b)に示されるように、水晶片用水晶ウエハW30は結晶軸のX軸を回転軸としてY軸からZ軸方向に35度15分回転した方向に切断される。図4(b)では説明のためにリッド用水晶ウエハW10と水晶片用水晶ウエハW30とを同じ人工水晶原石50に示したが、実際は異なる人工水晶原石50で切断される。
【0042】
ステップS003では、リッド用水晶ウエハW10のラッピング及びポリッシュ加工が行われる。ポリッシュはウエハの表面を鏡面状にするための研磨である。また、ラッピングはポリッシュの前に行われる研磨で、ウエハの厚さ調整及びポリッシュ前の表面の粗さ調整等を目的として行われる。水晶振動子100では、ラッピングに粒度が3000メッシュ程度の研磨材が用いられウエハの表面粗さが1000メッシュから3000メッシュ程度までにされる。ラッピングの後に行われるポリッシュでは、ラッピングで用いられた研磨材よりもさらに粒度の大きさが小さい研磨材等が用いられる。
【0043】
図5は、リッド用水晶ウエハW10上へのリッド10の形成工程のフローチャート及びその説明のための図である。図5(a)から図5(f)は図3(b)のB−B断面におけるリッド10の形成過程を示しており、図の上方を−Z軸方向に取っている。
【0044】
ステップS101では、リッド用水晶ウエハW10の全面に金属膜が蒸着又はスパッタリングで形成され、金属膜の上からフォトレジストが塗布される。金属膜は、第1金属層80と、第1金属層80上に形成されている第2金属層81とにより構成されており、第1金属層80はクロム(Cr)、第2金属層81は金(Au)により形成されている。最初に第1金属層80がリッド用水晶ウエハW10上に形成され、次に第1金属層80の上に第2金属層81が形成される。さらに、第2金属層81上にはスピンコート等によりフォトレジストが塗布され、フォトレジスト膜45が形成される(図5(a)参照)。
【0045】
ステップS102では、フォトレジスト膜45が露光される(図5(b)参照)。露光は、リッド10の天井面12のパターンが形成されたフォトマスク(不図示)を用いて行われ、フォトレジスト膜45に露光部46が形成される。
【0046】
ステップS103では、フォトレジスト膜45が現像され、露光部46が除去される。さらに、金属膜(第1金属層80、第2金属層81)をエッチングして天井面12が形成される部分のリッド用水晶ウエハW10を露出させる(図5(c)参照)。Au膜はたとえばヨウ素とヨウ化カリウムとの水溶液でエッチングされ、Cr膜はたとえば硝酸第2セリウムアンモニウムと酢酸との水溶液でエッチングされる。
【0047】
ステップS104では、リッド用水晶ウエハW10がエッチングされ天井面12が形成される。そして、+Z軸側の面のフォトレジスト膜45が露光されて露光部46が形成される(図5(d)参照)。リッド用水晶ウエハW10のエッチングは、55%フッ酸又はフッ酸にフッ化アンモニウムを混合した液であるバッファードフッ酸等を用いたウエットエッチングにより行うことができる。
【0048】
ステップS105では、フォトレジスト膜45を現像して露光部46を除去する。さらに、上面11に形成されている金属膜(第1金属層80、第2金属層81)を除去してリッド10の上面11を露出させる(図5(e)参照)。
【0049】
ステップS106では、リッド10の天井面12と上面11とを粗面エッチングする。そして、フォトレジスト膜45と金属膜(第1金属層80、第2金属層81)とを除去する(図5(f)参照)。粗面エッチングでは、エッチング剤にフッ化カリウムKFを用いることにより、鏡面状にポリッシュされているリッド10の天井面12と上面11とを、鏡面よりも表面粗さが粗い粗面にすることができる。
【0050】
以上に示したリッド10の形成では、リッド10の天井面12の形成工程の流れの中で上面11と天井面12とを粗面加工することにより、一度の金属膜の形成で粗面加工することができる。ベース20も同様にベース20の外形の形成工程中に粗面加工をすることができる。
【0051】
ステップS106のリッド用水晶ウエハW10上に粗面を形成する方法には、フッ化カリウムKFを使用したウエットエッチング以外の方法もある。例えば、ウエットエッチングでは、高温(例えば90℃)高濃度(例えば50%)のフッ酸を用いても粗面加工を行うことができる。また、CF、C、CHF等を用いたドライエッチングを行ってもリッド用水晶ウエハW10上に粗面加工を行うことができる。さらに細かい粒子をリッド用水晶ウエハW10上に衝突させて凹凸を形成するサンドブラストによる方法、フォトマスクを使用して露光及びエッチングを行うことによりリッド用水晶ウエハW10上に細かい凹凸のパターンを形成する方法等がある。
【0052】
<リッド10、ベース20、水晶片30の接合>
図6は、リッド用水晶ウエハW10と、水晶片用水晶ウエハW30と、ベース用水晶ウエハW20とを重ね合わせる前の図である。説明の都合上、仮想線でリッド用ウエハW10にはリッド10が示され、水晶片用ウエハW30には水晶片30が示され、ベース用ウエハW20にはベース20が示されている。水晶片用ウエハW30はATカットの水晶ウエハであり、リッド用水晶ウエハW10およびベース用水晶ウエハW20は、Zカットの水晶ウエハである。なお、説明の都合上、リッド用水晶ウエハW10には15個のリッド10が描かれているが、実際の製造においては、1枚のウエハに数百から数千のリッド10が形成される。
【0053】
各ウエハを重ね合わせる際には、リッド用水晶ウエハW10には、天井面12が形成され、天井面12と上面11とは粗面エッチングにより粗面加工を施されている。また、水晶片用水晶ウエハW30は、励振部32が形成され、励振部32の上に励振電極31が形成され、励振電極31から枠体33までは引出電極35が形成されている。さらに、ベース用水晶ウエハW20には、底面23が形成され、外部電極21及び接続電極24が形成され、底面23と下面22とには粗面加工がなされている。
【0054】
重ね合わされた3枚の水晶ウエハは、後述するシロキサン結合により互いに接合される。水晶片30の引出電極35の接続点41(図2(b)参照)とベース20の接続電極24(図2(c)参照)とはシロキサン結合の際に、しっかりと接合する。
【0055】
ウエハに固定された状態の水晶振動子100は、ダイシングソー又はレーザーソーにより切断され、個々の水晶振動子100に形成される。このように、パッケージングと電極の接合とを同時に行うこと、また水晶ウエハ単位で製造することにより、生産性を向上させることができる。
【0056】
ウエハの接合にはいくつかの方法がある。以下にその方法について説明する。
【0057】
<シロキサン結合>
図7(a)は、シロキサン結合を説明するための図である。水晶片30にATカットの水晶を用い、リッド10およびベース20がZカット水晶材で構成されている場合を考える。リッド10、水晶片30およびベース20はシロキサン結合(Si−O−Si結合)により接合される。なお、ZカットのウエハとATカットのウエハとは、結晶方向が異なる水晶であるがシロキサン結合により接合される。
【0058】
シロキサン結合では、前処理として、ベース20と、水晶片30と、リッド10との接合面40を鏡面状態にし、酸素含有雰囲気中で短波長の紫外線を照射して接合面40を活性化し、清浄な状態にしておく。その後、真空中又は不活性ガス雰囲気中で、接合面40が活性化した状態のウエハを位置合わせして重ね合わせ、100℃から200℃程度の比較的低温に加熱した状態で加圧することによりシロキサン結合で強固に接合する。前処理の方法は、紫外線照射による方法の他に、プラズマ処理による方法、イオンビームを接合面に照射する方法等が知られている。
【0059】
<陽極接合>
図7(b)は、陽極接合を説明するための図である。陽極接合は、リッド10、ベース20にガラス材を使用している場合に使用できる方法である。陽極接合は、ガラス材が、パイレックス(登録商標)ガラス、ホウ珪酸ガラス、及びソーダガラス等の金属イオンを含有するガラスで構成されている時に用いられる方法である。
【0060】
例えば、リッド10及びベース20がガラス材で、水晶片30にATカットの水晶を用いる場合を考える。水晶片30の表裏面の外枠には金属層48がスパッタリングまたは真空蒸着などの方法により形成される。金属層48は例えばアルミニウム(Al)層より成り、その厚みは1000Å〜1500Å程度である。金属層48は、水晶片上にクロム層を形成し、クロム層の上に金層を形成しても良い。
【0061】
リッド10、ベース20、水晶片30は重ね合わされ、真空中または不活性ガス中で200℃から400℃に加熱されながら加圧される。その際に、ベース20及びリッド10の上面11及び下面22をマイナス電位にし、金属層48をプラス電位として500〜1kVの直流電圧が10分間印加される。リッド10、ベース20、水晶片30はウエハ上に形成されているため、実際の製造における陽極接合は、リッド用水晶ウエハW10およびベース用水晶ウエハW20をマイナス電位にし、金属層48をプラス電位にして形成される。
【0062】
陽極接合は、接合界面にある金属が酸化されるという化学反応により成立する。陽極接合させるときには、金属層48を陽極としてガラス材の接合面40に対向する面に陰極を配置し、これらの間に電界を印加する。このことにより、ガラス材に含まれているナトリウムなどの金属イオンが陰極側に移動し、この結果接合界面においてガラス部材に接触している金属膜が酸化され、両者が接続した状態が得られる。
【0063】
<封止材による接着>
リッド10及びベース20が、セラミックス、金属イオンを含まないガラス材である場合には、ポリイミド系の接着剤などの封止材によりリッド10と水晶片30と、及びベース20と水晶片30とを接合する。
【0064】
<水晶振動子110:変形例1>
図8(a)は、水晶振動子110の分解断面図である。水晶振動子110は、リッド10の天井面12及びベース20の底面23が粗面に加工されている。粗面の加工は、天井面12及び底面23の加工のみでも応力の緩和ということに関して効果がある。また、上面11を粗面加工しないことで、図5のステップS104のフォトレジストの除去及び塗布と、フォトレジスト膜の露光と、ステップS105の工程を削除することができる。下面22を粗面加工しないことに関しても、ベース20の加工工程において同様の工程を削除できる。
【0065】
<水晶振動子120:変形例2>
図8(b)は、水晶振動子120の分解断面図である。水晶振動子120は、リッド10の上面11及びベース20の下面22が粗面に加工されている。粗面の加工は、上面11及び下面22の加工のみでも応力の緩和ということに関して効果がある。また、天井面12を粗面加工しないことで、図5のステップS101の前の段階で、リッド用水晶ウエハW10の+Z軸側の面(図3(a)参照)のみを粗面加工しておくことにより、図5のステップS104のフォトレジストの除去及び塗布と、フォトレジスト膜の露光と、ステップS105と、ステップS106の粗面加工とを削除することができる。底面23を粗面加工しないことに関しても、ベース20の加工工程において同様の工程を削除できる。
【0066】
(第2実施形態)
<水晶振動子200>
図9を参照して、枠体を有していない水晶片230を用いた水晶振動子200について説明する。また以下の説明では、ATカット水晶の座標軸を用いて説明する。
【0067】
図9(a)は、リッド10を取り除いた水晶振動子200の平面図である。水晶振動子200は、凹型の箱であるベース47と、ベース47により形成されたキャビティ70内に配置された水晶片230と、ベース47を封止するリッド10(図9(b)参照)と、を備えている。水晶片230は、例えば振動周波数が4MHzであり、X軸方向に厚みすべり振動をするATカットの水晶片である。
【0068】
水晶片230は、表裏の主面の中央部付近に励振電極31が形成される励振部32を有している。また、水晶片230には、水晶片230の外周部付近である周囲部49に励振電極31から引き出された引出電極35が形成されている。引出電極35を通して表裏の主面に形成された励振電極31に交番電圧が印加されることにより、水晶片230は厚みすべり振動する。
【0069】
ベース47は内面に接続電極24が形成されており、接続電極24はベース47の外面に形成されている外部電極21(図9(b)参照)と導通部(不図示)を通して電気的に繋がっている。水晶片230は、引出電極35と接続電極24とを導電性接着材43を通して接着することによりキャビティ70内に固定され、引出電極35と接続電極24とが電気的に接続される。すなわち、水晶片230の励振電極31は、引出電極35と、接続電極24とを通して外部電極21と接続される。
【0070】
図9(b)は、図9(a)のC−C断面図である。キャビティ70は、ベース47の一部である底面23と壁90とにより構成されており、キャビティ70内には接続電極24が形成され、接続電極24には水晶片230の引出電極35が接続されている。また、ベース47は壁90の上部において、リッド10と接続される。ベース47の−Z軸側の面である下面22と、+Y’軸側の面である底面23と、リッド10の−Y’軸側の面である天井面12と、+Y’軸側の面である上面11とには、リッド10とベース47との接合面40以外の領域に粗面加工がなされている。
【0071】
リッド10及びベース47の材質は、例えば、リッド10がZカットの水晶材で、ベース47がガラス材である。ガラス材が、パイレックス(登録商標)ガラス、ホウ珪酸ガラス、及びソーダガラス等の金属イオンを含有するガラスであれば、図7(b)に示した陽極接合によりリッド10とベース47とを接合することができる。陽極接合では、まず、水晶材で構成されているリッド10の−Y’軸側の面の外周部に、アルミニウム膜またはクロム層と金層との金属膜等の金属層48を蒸着又はスパッタリングにより形成する。そして、金属層48とベース47との間に電位差をつくり陽極接合を行う。
【0072】
図9(c)は、水晶振動子210の断面図である。水晶振動子210は、リッド10の上面11とベース47の下面22とに粗面加工を施してある。粗面の加工は、上面11及び下面22の加工のみでも応力の緩和ということに関して効果がある。また、ベース47がセラミックス材で、リッド10が水晶片である場合等は、リッド10のみに粗面加工を施しても良い。粗面加工を行う面は、上面11のみ、または天井面12のみ、または天井面12と上面11との両方等が考えられる。
【0073】
(第3実施形態)
<水晶発振器300>
図10を参照して、集積回路を有する水晶デバイスである水晶発振器300について説明する。また以下の説明では、ATカット水晶の座標軸を用いて説明する。
【0074】
図10(a)は、水晶発振器300の断面図である。水晶発振器300は、発振回路が形成された集積回路91と、枠体33付き水晶片330と、リッド10と、ベース47とを備えている。ベース47は、水晶発振器300の側面の一部を構成する壁90と、2枚のベース120及び220とにより形成されている。水晶片330はリッド10とベース47とに挟まれた場所に配置され、集積回路91はベース47の底面23上に配置されている。また、集積回路91はベース47の底面23に配置された接続電極24とバンプ92を通して電気的に接続されている。
【0075】
水晶片330は、例えばATカットの水晶材により形成され、リッド10はZカットの水晶片、もしくはガラス材により形成されている。ベース47はセラミックス材等により形成されている。ベース47の壁90の上部には、接続電極24があり、水晶片330の枠体33に形成されている引出電極35と電気的に接続される。また、枠体33とベース47とは封止材44によって接続されている。リッド10がガラス材により形成される場合は、リッド10と枠体33とは図7(b)に示した陽極接合により接合することができる。
【0076】
水晶発振器300は、ベース47にはベース120及び220の2枚が積層されており、強度的には強くなっている。しかしリッド10は水晶片330の熱収縮による応力に耐えられない可能性がある。そのため、リッド10の上面11及び天井面12またはそのいずれか一方を粗面加工することによりリッド10にかかる応力を緩和させることができる。
【0077】
図10(b)は、水晶発振器310の断面図である。水晶発振器310は、水晶片430と、リッド10と、第1ベース147と、第2ベース247と、集積回路91とにより構成されている。水晶片430は、第1ベース147内に配置され、集積回路91は、第2ベース247内に配置されている。
【0078】
水晶材430は、例えばATカットの水晶材である。また、リッド10は、Zカットの水晶片、第1ベース147はガラス材により構成されている。また、第2ベース247はセラミックス材により構成されている。リッド10の上面11及び天井面12と、第1ベース147の底面23及び下面22には、粗面加工がなされている。リッド10と、第1ベース147とは陽極接合により接合することができる。接合の方法は図9と同様である。また、第1ベース147と、第2ベース247との接続は、封止材44により行われる。
【0079】
水晶片430は、第1ベース147内に形成された接続電極24に導電性接着材43を通して固定され、電気的にも接続される。接続電極24は、第2ベース247の壁90上に形成されている第2接続電極224に接続される。第2接続電極224は、集積回路91に接続され、水晶片430の動作が制御される。また、集積回路91は、外部電極21に接続される。
【0080】
水晶発振器310においても水晶発振器300と同様に水晶又はガラスを基材としたリッド10及び第1ベース147に粗面加工を施すことにより、リッド10及び第1ベース147にかかる応力を緩和させ、製品の不良率を下げることができる。
【0081】
(第4実施形態)
<水晶振動子400>
図11を参照して、水晶片530を用いた水晶振動子400について説明する。また以下の説明では、ATカット水晶の座標軸を用いて説明する。
【0082】
図11(a)は、水晶振動子400の断面図である。水晶振動子400は、リッド410と、ベース420と、水晶片530とにより構成されている。また図11(a)は、図11(b)及び図11(c)の水晶片530、リッド410、ベース420のD−D及びE−Eにおける断面を示している。水晶振動子400は、上部にリッド410が配置され、下部にベース420が配置され、水晶片530はリッド410とベース420とに挟まれている。リッド410及びベース420の外周部にある接合面40が、ポリイミド又は低融点ガラス等の封止材44によりそれぞれ水晶片530の枠体33に接合する。また、リッド410の上面11、天井面12及びベース420の下面22、底面23は、励振部32の表面よりも粗く形成されている。励振部32の表裏面には励振電極31が形成されており、各励振電極31は枠体33に形成されている引出電極35にそれぞれ接続されている。また、リッド410及びベース420にはそれぞれ一対の外部電極21が形成されている。さらに水晶片530、リッド410及びベース420の+X軸側及び−X軸側の辺にはキャスタレーション540が形成されており、引出電極35及び外部電極21はキャスタレーション540に形成されるキャスタレーション電極541を介して互いに電気的に接続されている。
【0083】
図11(b)は、水晶片530の平面図である。水晶片530は、表裏の主面の中央部付近に励振電極31が形成される励振部32と、励振部32の周囲を取り囲む枠体33とを有している。また、枠体33の+X軸側の辺及び−X軸側の辺にはキャスタレーション540が形成されている。枠体33には、励振部32の+Y’軸側の面に形成される励振電極31から+X軸側の辺のキャスタレーション540までと、励振部32の−Y’軸側の面に形成される励振電極31から−X軸側の辺のキャスタレーション540までとに、引出電極35が形成されている。
【0084】
図11(c)は、リッド410及びベース420の平面図である。リッド410及びベース420の+X軸側の辺及び−X軸側の辺にはキャスタレーション540が形成されている。また、リッド410及びベース420はランバード加工された人工水晶原石50から所定の角度、厚みに切断された後、ラッピング加工及びポリッシュ加工がされていない。つまりリッド410及びベース420は、ランバード加工された人工水晶原石50から所定の角度、厚みに切断された平面のまま形成されている。また、図11(c)の点線の枠の外側であるリッド410及びベース420の外周部は接合面40となっており、水晶片530の枠体33と封止材44により接合される。リッド及びベースの両主面は、通常であれば粒度が大きめの研磨材による加工であるラッピング加工、及びラッピング加工よりも表面粗さを小さくするための研磨であり固定砥粒等を用いるポリッシュ加工が行われる。しかし、リッド410及びベース420は両主面ともラッピング加工及びポリッシュ加工が行われていない。そのため、ラッピング加工及びポリッシュ加工を行って形成された水晶片530の励振部32の表面粗さよりも表面が粗い。また、リッド410及びベース420に形成される外部電極21は、マスク(不図示)を介して金属膜を蒸着又はスパッタリングすることにより形成することができる。
【0085】
水晶振動子400では、水晶片530、リッド410及びベース420を互いに接合した後に、キャスタレーション540に金属膜が形成されてキャスタレーション電極541が形成される。リッド410及びベース420に形成される外部電極21は、キャスタレーション電極541と共に形成されてもよいし、リッド410及びベース420が水晶片530に接合される前にリッド410及びベース420に形成されていてもよい。
【0086】
水晶振動子400では、リッド410及びベース420の主面にラッピング加工及びポリッシュ加工を行わず粗面の状態のまま使用するため、特別に粗面加工の工程を行う必要が無い。また水晶振動子400では、リッド410とベース420とを同形状に形成することができ、リッド410とベース420との作製工程を共有化できる。これらのことにより、水晶振動子400の作製工程を簡略化することができる。
【0087】
水晶振動子400は、リッド410及びベース420の両主面が粗面のまま作製されたが、一方の主面のみが粗面で、他方の主面が鏡面加工された状態でもよい。また、主面に対してラッピング加工のみを行い、ポリッシュ加工が行われない状態の粗面でも、応力を緩和することができる。
【0088】
以上のように、水晶振動子は、複数の部材が使用され、その熱膨張係数の違いにより強い応力のかかる部材、又は強度の弱い部材が破損し不良品が発生することがあるが、これらの部材の表面に粗面加工を施すことにより、その部材にかかる応力を逃がし、破損を防ぐことで製品の不良率を抑えることができる。また、リッド410及びベース420にはガラス材又はZカット水晶のみではなく、ATカット水晶が用いられた場合にも粗面加工を施すことは製品の破損を防ぐことに対して有効である。水晶振動子の水晶片、ベース及びリッドの全てにATカット水晶を用いて熱膨張係数を同じくしたとしても、水晶振動子には半田付け等で局所的に熱がかかり、熱がかかった部分と熱がかからなかった部分のとの間で応力が発生する場合もあるためである。
【0089】
(第5実施形態)
水晶振動子400は、リッド410及びベース420にラッピング加工及びポリッシュ加工を行わずに形成された。しかし、ラッピング加工及びポリッシュ加工が行われない場合、電極形成のための露光時にウエハの表面の凹凸で乱反射が起こり、ウエハに電極が形成されにくくなる場合がある。そのため、ウエハの表面の凹凸で乱反射が起こらないようにウエットエッチングが行われてもよい。以下、ウエハがランバード加工された人工水晶原石50から所定の角度、厚みに切断され、ウエットエッチングが行われることにより作製された水晶振動子500の作製方法について説明する。
【0090】
<水晶振動子500の作製方法>
図12は、リッド用水晶ウエハW10のラッピング及びエッチング工程が示されたフローチャートである。図12では、リッド用水晶ウエハW10を例として説明するがベース用水晶ウエハW20に関しても同様の工程で作製される。
まず、ステップS001において人工水晶原石50がランバート加工される。さらにステップS002においてランバード加工された人工水晶原石50からリッド用水晶ウエハW10が所定の角度、厚みに切断される。ステップS001及びステップS002は図4(a)と同様であるのでここでは説明を省略する。図12では、ステップS002の後にステップS003をスキップしてステップS004が行われる。
【0091】
ステップS004では、リッド用水晶ウエハW10がATカットウエハであるかどうかが判断される。ATカットウエハである場合にはステップS005に向かい、ATカットウエハではない場合はステップS007に向かう。ステップS004でリッド用水晶ウエハW10がATカットウエハであるかどうかが判断されるのは、カット角度によってエッチング特性が異なるためである。表1を参照して、ATカットウエハ及びZカットウエハのエッチングのされる傾向について説明する。
【表1】

【0092】
表1は、ATカットウエハ及びZカットウエハのエッチング量と表面粗さの平均値Raとが示された表である。表には、人工水晶原石50から切断した後のATカットウエハと、切断後にラッピング加工が行われたATカットウエハと、切断後のZカットウエハとがウエットエッチングされた場合のエッチング量(μm)とその表面粗さの平均値Ra(μm)とが示されている。切断後のATカットウエハでは、エッチングを行わない時のRaが2.24μmであり、5μmのエッチングを行った時のRaは4.31μmであり、10μmのエッチングを行った時のRaは3.24μmであり、35μmのエッチングを行った時のRaは0.41μmである。切断後に3000メッシュの研磨材を用いてラッピング加工が行われたATカットウエハでは、エッチングを行わない時のRaが1.74μmであり、5μmのエッチングを行った時のRaは2.63μmであり、10μmのエッチングを行った時のRaは1.98μmであり、20μmのエッチングを行った時のRaは0.43μmである。切断後のZカットウエハでは、エッチングを行わない時のRaが1.49μmであり、5μmのエッチングを行った時のRaは2.81μmであり、10μmのエッチングを行った時のRaは2.42μmであり、20μmのエッチングを行った時のRaは1.95μmである。
【0093】
表1からは、3つのウエハとも5μmのエッチングを行った時が最もRaが高くなり、さらにエッチングを行うとRaが低くなる傾向がある。Zカットウエハでは、5μmのエッチングでRaが大きくなった後に更にエッチングを行うと、Raはエッチングを行う前のRaに近付く。それに比べて、ATカットウエハでは、エッチングを行うほど表面粗さの平均値Raが低くなり、ウエハの表面が平坦化する傾向にある。また、表1からは、ラッピング加工後のATカットウエハでも、10μmに近い量又は10μm以下のエッチングを行うことにより切断後のATカットウエハのRa以上の表面粗さを得ることが可能であることが分かる。
【0094】
図12に戻って、ステップS005では、ATカットウエハの厚さが仕様値よりも厚い(大きい)かどうかが判断される。仕様値よりも厚い場合はステップS006に向かい、仕様値と同等であればステップS007に向かう。仕様値よりも薄い(小さい)場合は、そのウエハは規格外品となるが、ウエハの切断では規格外品を出さないように僅かに仕様値よりも厚く切断する。このため仕様値よりも厚さが薄い場合は殆ど生じないため、図12のフローチャートでは仕様値よりも厚さが薄い場合に関して記載していない。ステップS005でのATカットウエハの厚さの仕様値は、製品完成時の仕様値より10μmほど厚く設定される。これは、例えば、製品完成時のウエハの厚さが50μmであった場合、後のステップで片面につき5μmのウエットエッチングを行うためステップS005でのウエハの厚さの仕様値は60μmということになる。
【0095】
ステップS006では、ATカットウエハが3000メッシュ以下の研磨材でラッピングされる。このステップでは、ウエハのラッピング加工を行うことによりウエハの厚さをステップS005の仕様値に調整する。ウエハのラッピング加工に使用する研磨材はメッシュの数値が小さいほど粗くなる。したがって、メッシュの数値が小さい研磨材が用いられればラッピング加工後のウエハの表面粗さ(Ra)が大きくなる。ステップS006で3000メッシュ以下の研磨材が用いられるのは、粒度の粗い研磨材を用いてウエハの表面粗さを大きい状態で保つことが望ましいためである。Zカットウエハでもラッピングによる厚さ調整を行ってもよいが、Zカットウエハは切断後の表面粗さがATカットウエハよりも小さく(表1参照)、ラッピングにより表面粗さがさらに小さくなるため、ラッピングは行わない方が好ましい。
【0096】
ステップS007では、ウエハが、フォトリソグラフィ加工が行われるウエハかどうかが判断される。フォトリソグラフィ加工が行われるウエハはステップS008に向かい、ウエハにフォトリソグラフィ加工が行われない場合は、フローチャートの工程が終了し、その状態のウエハがリッド用水晶ウエハW10として使用される。
【0097】
リッドは、例えば図11(a)に示された水晶振動子400のリッド410の外部電極21のように、マスクをして金属膜を蒸着又はスパッタリングすることによって電極を形成することによりフォトリソグラフィ加工を行わなくてもよい場合がある。第5実施形態で行われるウエットエッチングは、ウエハに電極形成等のためのフォトリソグラフィ加工を行いやすくする目的で行われる。そのため、ウエハにフォトリソグラフィ加工が行われないウエハにはウエットエッチングは行わなくても良く、次のステップS008を飛ばしても良い。
【0098】
ステップS008では、リッド用水晶ウエハW10がウエットエッチングされる。水晶は硬いため、人工水晶原石50からリッド用水晶ウエハW10が切り出された場合には、リッド用水晶ウエハW10は1000メッシュ以下の粗い表面粗さを有する。この状態でリッド用水晶ウエハW10をウエットエッチングする。ウエットエッチングにより、表面粗さが粗い状態のままリッド用水晶ウエハW10が完成し、このウエハは露光にも適している。
【0099】
図12のフローチャートでは、ステップS007において、ウエハにフォトリソグラフィ加工が行われるか行われないかを判断するステップが設けられているが、このステップS007は設けられなくても良い。これは、リッドに電極が形成されずフォトリソグラフィ加工が行われない場合でも、ウエットエッチングを行っても良いためである。ステップS007を設けない場合の利点としては、ベースには電極が形成されるためフォトリソグラフィ加工が行われるため、ベースとリッドとのウエハ作製工程を分ける必要が無いことがある。
【0100】
図13(a)は、ランバード加工された人工水晶原石50から切断されたウエットエッチング前のリッド用水晶ウエハW10の概略断面図である。ウエットエッチング前のリッド用水晶ウエハW10の表面は1000メッシュ以下の粗さで凹凸が形成されている。そのため、ウエットエッチング前のリッド用水晶ウエハW10の表面の凹凸の高さh1は例えば25.4μm以上である。また、切断直後のウエハの表面の凹凸は、図13(a)に示すように、全体的に尖った形に形成される。そのため、露光を行う場合、基板表面の凹凸の影響により乱反射が起こり露光パターンの形成が困難になる場合がある。
【0101】
図13(b)は、ウエットエッチング後のリッド用水晶ウエハW10の断面図である。表1に示したように、Zカットウエハで20μmのエッチングを行った場合は、ウエハのウエットエッチングを行った後の表面の凹凸の高さh2は、高さh1に近い値になる。ATカットウエハがステップS006でラッピング加工された場合でも、約10μmまたはそれ以下のエッチングを行うことにより凹凸の高さh2を高さh1に近い値に調整することが可能である。また、切断後のATカットウエハでも10μm以下でエッチング量を調整することにより凹凸の高さh2を高さh1に近い値に調整することが可能である。凹凸の高さh2は高さh1に近い値又はそれ以上の値で調整される。しかし、ウエハの表面は全体的に凹凸の形状がなだらかになるため、露光のパターン形成を行いやすくなる。実際にZカットウエハの20μmのエッチングを行ったところ、電極形成等のための露光が可能であることが確認できた。
【0102】
図14(a)は、ランバード加工された人工水晶原石50から切断されたウエットエッチング前のウエハ表面の写真である。ウエットエッチング前のウエハの表面の凹凸はウエハのカット方向に依らずに表面の状態は図13(a)のように一様な状態になる。
【0103】
図14(b)は、ウエットエッチング後のATカットウエハの表面の写真である。図14(b)の写真の縮尺は、図14(a)と同様である。またウエットエッチングは、ウエハ表面が20μmエッチングされるように行われた。図14(b)では、ATカットされたウエハの表面が水晶の結晶構造に従ってエッチングされることにより、ATカットウエハに独自の模様が現れている。
【0104】
図14(c)は、ウエットエッチング後のZカットウエハの表面の写真である。図14(c)の写真の縮尺は、図14(a)と同様である。またウエットエッチングは、ウエハ表面が20μmエッチングされるように行われた。図14(c)では、Zカットされたウエハの表面が水晶の結晶構造に従ってエッチングされることにより、Zカットウエハに独自の模様が現れている。
【0105】
図14(b)及び図14(c)では同様のウエットエッチングが行われたが、ウエハの表面は水晶の結晶構造に従ってエッチングされ、それぞれ異なる模様が現れている。しかし、ウエハ表面の凹凸の高低差は表1に示されたようにエッチング量によって調整されることができるため、ウエハがどの面に切り出されたとしてもウエットエッチングによって粗面を形成することができる。
【0106】
水晶振動子500では、リッド及びベースにZカットウエハが用いられる場合は20μmエッチングされるようにウエットエッチングが行われることが望ましいが、エッチング量はさらに小さいことが望ましい。エッチング量が少なくなれば、1個の人工水晶原石50から取れるウエハの量が多くなり、ウエットエッチングを行う時間が短縮され、ウエハの作製時間が短くなるためである。ウエハが露光されやすくなるエッチング量とこれらの事とを考慮した場合、エッチング量は1〜20μmの間で調整されることが好ましい。
【0107】
水晶振動子500では、ベースウエハ及びリッドウエハのポリッシュ加工を行わない又はラッピング及びポリッシュ加工の両方を行わないため時間及びコストを大幅に削減することができるとともに、ウエットエッチングによってウエハの表面をエッチングすることにより露光を容易に行えるようになる。また、ウエハの鏡面加工を行わないため、ウエハを安価に作製することができる。さらに水晶振動子500では外部電極21の表面にも凹凸が残るため、アンカー効果により半田と外部電極21との密着性が高まる。ただし水晶振動子500では、接合面40が粗面になっているため、シロキサン結合等により水晶材同士を直接接合することが困難となる。水晶振動子500ではウエハの接合は封止材により行われ、封止材はウエハの表面の凹凸の影響を除去できるだけの厚みを形成できる材料を用いることが望まれる。また、水晶振動子500はリッド及びベースの水晶材を凹ませて、水晶振動子100と同様の形状に形成することもできる。
【0108】
(第6実施形態)
水晶振動子は、水晶片、リッド及びベースのそれぞれに適切な表面の凹凸を形成することにより水晶振動子の作製工程を簡略化できる場合がある。このとき水晶片、リッド及びベースの表面の表面粗さはそれぞれ異なる。以下、水晶片、リッド及びベースのそれぞれの表面粗さが異なる水晶振動子600について説明する。
【0109】
<水晶振動子600>
図15(a)は、水晶振動子600の断面図である。図15(a)は、後述する図15(b)及び図15(c)のF−F断面図である。水晶振動子600は、水晶片630と、リッド610と、ベース620とにより構成されており、水晶片630、リッド610及びベース620はそれぞれATカット水晶材により形成されている。また、水晶片630、リッド610及びベース620はそれぞれ封止材44を介して互いに接合されている。封止材44には例えば低融点ガラスが用いられる。
【0110】
水晶片630は主に、励振部632と、励振部632を囲む枠体633とにより構成されている。励振部632の表裏面には励振電極631が形成されており、枠体633の−Y’軸側の面には引出電極635が形成されている。励振部632の+Y’軸側の面に形成されている励振電極631には枠体633の+X軸側の端まで形成されている引出電極635が電気的に接続され、−Y’軸側の面に形成されている励振電極631には枠体633の−X軸側の端まで形成されている引出電極635が電気的に接続されている。励振電極631が形成される励振部632の表面粗さは振動部632の振動特性に影響を与える。励振部632の表面粗さは小さい方が振動特性が良いため、鏡面状にポリッシュされていることが望ましい。
【0111】
リッド610は平板状に形成されており、水晶片630の+Y’軸側に配置されている。また、リッド610は図4(a)のステップS002でリッド610用のウエハが切断された後の表面粗さを有した状態のままで水晶片630が形成されているウエハに接合される。そのため、リッド610の表面粗さは1000メッシュの研磨材でラッピングしたときの表面粗さと同程度の表面粗さを有している。リッド610はATカットの水晶材が用いられており、また切断直後のウエハが用いられている。そのため、リッド610の表裏面の凹凸の高低差をh3とすると、h3は表1より2.24μmである。また、リッド610の厚さは例えば100μmから140μmの間で形成される。
【0112】
ベース620は平板状に形成されており、水晶片630の−Y’軸側に配置されている。また、ベース620の−Y’軸側の面には、一対の外部電極621が形成されている。さらに、ベース620の+X軸側と−X軸側との側面にはキャスタレーション640が形成されている。ベース620は水晶片630と接合された後にキャスタレーション640に金属膜641を蒸着又はスパッタリング等により形成することで外部電極621と引出電極635とが電気的に接続される。また、ベース620の厚さは例えば80μmから120μmの間で形成される。
【0113】
ベース620には外部電極621が形成されるときに、フォトリソグラフィ加工がなされる。そのため、第5実施形態で述べられたようにベース620の表面がウエットエッチングされることが望ましい。またベース620は、水晶振動子600の全体の高さを調節するためにベース620をラッピングして厚さが調整される。つまりベース620は、例えば図12のステップS002で1000メッシュに切り出され、ステップS006で2000メッシュのラッピングが行われることにより厚さが調整され、その後、ステップS008で5μm程度のウエットエッチングが行われることにより形成される。2000メッシュのラッピング後のRaは、表1のATカット切断後とATカットラッピング後とのエッチング量0μmの場合の値の中間値をとると予想されることから約2μmとなることが予想される。さらに5μmのエッチングを行った場合を考えると、表1のATカット切断後ではRaが約2μm増加し、ATカットラッピング後ではRaが約1μm増加していることから、2000メッシュのラッピング後ではRaが約1.5μm増加することが予想される。つまりh4は約3.5μmとなることが予想される。2000メッシュの研磨材によるラッピングは、ラッピングにかかる時間及びベース620の厚さの精度調節の行い易さを考慮した場合に好ましい条件である。
【0114】
図15(b)は、水晶片630の平面図である。水晶片630は、励振部632と励振部632を囲む枠体633と有し、励振部632と枠体633とは一対の連結部636により接続されている。励振部632の+Y’軸側の面に形成される励振電極631は、一方の連結部636で+Y’軸側から−Y’軸側に引き出され、+X軸側の端まで形成されている引出電極635に接続されている。また、励振部632の−Y’軸側の面に形成される励振電極631は、他方の連結部636を通り、枠体633の−X軸側の端まで形成されている引出電極635に接続されている。
【0115】
図15(c)は、ベース620の平面図である。ベース620の−Y’軸側の面には一対の外部電極621が形成されている。また、+X軸側の辺と−X軸側の辺とにはキャスタレーション640が形成されている。ベース620の+Y’軸側の面では、図15(c)の点線で示された枠の外側に示される接合面40で水晶片630の枠体633と接合される。
【0116】
水晶振動子600作製過程ではリッド610及びベース620に対して過剰なラッピング及びポリッシュ等の研磨を行わないことにより全体の工程を簡略化することができ、水晶振動子600の製造コストを削減することができる。また、水晶片630、リッド610及びベース620をそれぞれ適した表面粗さに加工しているため、水晶片630、リッド610及びベース620の表面粗さはそれぞれ異なっている。
【0117】
水晶振動子600のリッド610は、ベース620と同様の5μm程度のウエットエッチングが行われてもよい。このときh3は表1より4.31μmとなり、リッド610の表面粗さはベース620の表面粗さよりも大きくなる。リッド610にウエットエッチングを行う場合は、エッチング量をベース620と同程度としてベース620とリッド610とのエッチング工程の共通化を図ることにより製造コストを削減することができる。
【0118】
以上、本発明の最適な実施形態について詳細に説明したが、当業者に明らかなように、本発明はその技術的範囲内において実施形態に様々な変更・変形を加えて実施することができる。たとえば、本実施形態では水晶片は、ATカットの水晶材であったが同じように厚みすべりモードで振動するBTカットなどであっても同様に適用できる。
【0119】
また、厚みすべりモードの水晶片だけでなく、Zカットの水晶材から形成される音叉型水晶振動片にも適用できる。音叉型水晶振動片は矩形形状の基部とその基部の一辺から伸びる一対の振動腕とからなる。そして、音叉型水晶振動片の周りを取り囲む枠体を有している。この枠体がガラス材からなるリッド10とベース20(図1を参照)に接合される。このように音叉型水晶振動片にも本発明は適用できる。
【符号の説明】
【0120】
10、410、610 リッド
11 上面
12 天井面
20、47、120、147、220、247、420、620 ベース
21、621 外部電極
22 下面
23 底面
24、224 接続電極
30、230、330、430、530、630 水晶片
31、631 励振電極
32、632 励振部
33、633 枠体
34 接続部
35、635 引出電極
40 接合面
41 接続点
43 導電性接着材
44 封止材
45 フォトレジスト膜
46 露光部
48 金属層
49 周囲部
50 人工水晶原石
70 キャビティ
80 第1金属層
81 第2金属層
90 壁
91 集積回路
92 バンプ
100、110、120、200、210、400、600 水晶振動子
300、310 水晶発振器
540、640 キャスタレーション
541 キャスタレーション電極
636 連結部
W10 リッド用水晶ウエハ
W20 ベース用水晶ウエハ
W30 水晶片用水晶ウエハ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電圧の印加により振動する励振部を有する水晶片と、
前記水晶片が載置され、前記水晶片側の底面と前記底面の反対側の下面とを有しガラス材又は結晶方向を有する水晶材からなるベースと、
前記ベースに接合されて前記水晶片を密封し、前記水晶片側の天井面と前記天井面の反対側の上面とを有しガラス材又は結晶方向を有する水晶材からなるリッドと、を備え、
前記上面、前記下面、前記底面、前記天井面の少なくとも2面は前記励振部の表面粗さよりも粗い粗面を有する水晶デバイス。
【請求項2】
前記ベースと前記リッドとが異なる材料又は異なる結晶方向の組合せで接合され、前記ベースと前記リッドとが接合される箇所を除いた部分は前記ベースと前記リッドとが接合される箇所の表面粗さよりも粗い粗面である請求項1に記載の水晶デバイス。
【請求項3】
電圧の印加により振動する励振部と前記励振部の周囲を囲む枠体とを有する水晶片と、
前記水晶片側の底面と前記底面の反対側の下面とを有し、前記枠体の一面に接合され、ガラス材又は水晶材からなるベースと、
前記水晶片側の天井面と前記天井面の反対側の上面とを有し、前記枠体の他面に接合され、ガラス材又は水晶材からなるリッドと、を備え、
前記上面、前記下面、前記底面、前記天井面の少なくとも2面は前記励振部の表面粗さよりも粗い粗面を有する水晶デバイス。
【請求項4】
前記リッド及び前記ベースは、異なる材料又は異なる結晶方向の組合せで接合される請求項3に記載の水晶デバイス。
【請求項5】
前記リッド及び前記ベースは、X軸、Y軸、Z軸により規定されるZカット水晶材を含み、
前記水晶片は、X軸、Y’軸、Z’軸により規定されるATカット水晶材を含む請求項4に記載の水晶デバイス。
【請求項6】
前記水晶片、前記ベース及び前記リッドは、それぞれ異なる表面粗さを有する請求項3から請求項5のいずれか一項に記載の水晶デバイス。
【請求項7】
前記水晶片は、厚みすべりモードで振動する水晶振動片、又は一対の振動腕を有する音叉型水晶振動片を含む請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の水晶デバイス。
【請求項8】
人工水晶原石から所定角度且つ所定厚さで、電圧の印加により振動する励振部と前記励振部の周囲を囲む枠体とを有する複数の水晶片が形成される水晶片用水晶ウエハを切り出す工程と、
前記水晶片用水晶ウエハの表面をラッピング及びポリッシュを行うことにより鏡面状にする工程と、
底面と前記底面の反対側の下面とを有し前記枠体の一面が前記底面の一部に接合される複数のベースが形成されるベース用水晶ウエハを切り出す工程と、
天井面と前記天井面の反対側の上面とを有し前記枠体の他面が前記天井面の一部に接合される複数のリッドが形成されるリッド用水晶ウエハを切り出す工程と、
前記水晶片用水晶ウエハと前記ベース用水晶ウエハと前記リッド用水晶ウエハとを接合する工程と、を備え、
前記上面、前記下面、前記底面、前記天井面の少なくとも2面は前記励振部の表面粗さよりも粗い粗面を有する水晶デバイスの製造方法。
【請求項9】
前記切り出し工程の後に、前記ベース及び前記リッドの少なくとも一方をウエットエッチングする工程を備える請求項8に記載の水晶デバイスの製造方法。
【請求項10】
前記切り出し工程の後に、前記ベース用水晶ウエハ又は前記リッド用水晶ウエハの少なくとも一方を3000メッシュ以下の研磨材でラッピングする工程と、
前記ラッピングする工程の後に、前記ベース用水晶ウエハ及び前記リッド用水晶ウエハの少なくとも一方をエッチング量が10μm以下のウエットエッチングを行うウエットエッチングをする工程と、を備える請求項8に記載の水晶デバイスの製造方法。
【請求項11】
前記切り出し工程では、前記ベース用水晶ウエハ及び前記リッド用水晶ウエハの表面粗さが1000メッシュの研磨材で切り出され、
前記ラッピングする工程では、前記ベース用水晶ウエハが2000メッシュ以下の研磨材でラッピングされて前記ベース用水晶ウエハの厚さが調節され、
前記ウエットエッチングする工程では、前記ベース用水晶ウエハがエッチングされ、エッチング量が5μmである請求項10に記載の水晶デバイスの製造方法。
【請求項12】
前記ウエットエッチングする工程では、前記ベース用水晶ウエハと並行して前記切り出し工程後の前記リッド用水晶ウエハもエッチング量が5μmとなるようにウエットエッチングされる請求項11に記載の水晶デバイスの製造方法。
【請求項13】
前記ベース用水晶ウエハ及び前記リッド用水晶ウエハがX軸、Y’軸、Z’軸により規定されるATカットで切り出されている請求項8から請求項12のいずれか一項に記載の水晶デバイスの製造方法。
【請求項14】
前記ベース用水晶ウエハ及び前記リッド用水晶ウエハの表面をラッピング及びポリッシュを行うことにより鏡面状にする工程と、
前記上面、前記下面、前記底面、前記天井面の少なくとも2面にサンドブラスト又はエッチングにより粗面を形成する工程と、を備える請求項8に記載の水晶デバイスの製造方法。
【請求項15】
前記接合する工程で接合される前記ベース用水晶ウエハ及び前記リッド用水晶ウエハは、前記切り出す工程で切り出された直後の表面粗さを有している請求項8に記載の水晶デバイスの製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−85253(P2012−85253A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−14173(P2011−14173)
【出願日】平成23年1月26日(2011.1.26)
【出願人】(000232483)日本電波工業株式会社 (1,148)
【Fターム(参考)】