説明

表面実装基板等の外観検査装置

【課題】撮像のゆがみが表面実装基板等の半田付けなどの検査に際して無視できるとともに、焦点深度を深くし、且つ、検査装置を高速移動しても装置振れや振動の影響が撮像に現れないようにし、同時に、検査装置自体をコンパクトで安価なものにする。
【解決手段】第1ミラー4を、長焦点レンズを備えたビデオカメラ3の下方に当該ビデオカメラ3の光軸に対し45゜の傾斜角をなして配置し、第2ミラー5を、第1ミラー4から所定間隔を空けて当該第1ミラー4に対向する態様で配置し、第3ミラー6を、第2ミラー5から上方に所定間隔を空けて当該第2ミラー5に対向する態様で配置し、第4ミラー7を、第3ミラー6に対向するとともに、被検査対象Wに対向する態様で、且つ、第1ミラー6と第2ミラー7との間隔の略1/2に相当する距離を隔てて配置する。これにより、本外観検査装置1と被検査対象Wとの外見上の対物距離は短縮される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面実装基板等の実装や半田付けなどの良否を判定する外観検査に用いる検査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ICチップ等の電子部品が実装された表面実装基板等の実装や半田付けなどの被検査対象の良否を判定する外観検査は、最近では目視検査に代わってビデオカメラ及びコンピュータを用いて行われている(非特許文献1〜3)。図3(A)は、その構成例を図示したものであり、被検査対象Wをビデオカメラ100で撮影し、その撮像信号をコンピュータ101に供給し、コンピュータ101で上記撮像信号に基づき画像処理し、当該画像処理された入力パターンと予め記憶されている基準パターンとを比較照合などして検査結果を判定している。この場合、ビデオカメラ100と検査対象Wとの距離(対物距離)は比較的近く、およそ50mmが一般的であり、この理由は、上記距離を長くするとビデオカメラ100が大型化してしまうことに加え、ビデオカメラ100を高速移動する場合にカメラ振れや振動の影響が撮像に大きく現れて検査自体が不能になるからである。
図3(B)は、対物距離50mmのビデオカメラを用いて被検査対象としての実装基板(同図中の直線Aで表す)を撮影している状態図であるが、その撮像対象範囲を、実装基板A上に直径16mm円をなす円錐S内としている。尚、同図中、直線Aから上方に5mmのところに示す直線Bは、実装基板Aに半田付けされたICチップの高さを表し、直線Aから上方に15mmのところに示す直線Cは、実装基板Aに半田付けされた電解コンデンサの高さを表している。
【0003】
しかしながら、対物距離50mmのビデオカメラを用いて、ICチップを図3 (B)のように撮影すると、カメラの中心に位置する撮像にはゆがみが生じないが、カメラの中心から離れるに従ってゆがみが大きくなり、上記円錐Sを形成する母線付近では、ICチップの高さに相当するおよそ0.8mmのゆがみが生じてしまう。実際に、図4(A)のような端子Pを多数有するICチップWcを上記カメラで真上から撮影すると、図4(B)のような撮像が得られ、ICチップWcの端子Pは、当該ICチップWcの中心付近の撮像にはゆがみが生じていないが、中心から離れるに従ってゆがみが大きくなっていることがわかる。このような撮像からでは、端子間の短絡などの判別が困難であり、上述したような0.8mmのゆがみが生じてしまうカメラでは、例えば端子間のビッチが0.5mmのもの(現在では一般的なもの)の撮像は、不可能となる。
更に、ICチップの近くに電解コンデンサのような高さの高いものが配置されていると、特に、上記円錐Sを形成する母線付近では、高さの高いものの陰になり撮像が得られない問題がある。
このような不具合を解消するために、例えば対物距離700mmのようなカメラ(したがって、焦点距離の極めて長いカメラ)を用いれば上述したゆがみは解消されるが、カメラ振れや振動の影響を受け易く、そもそも装置自体が大型化して実用的ではない。また、テレセントリックレンズを介してゆがみを抑えるようにして撮像している装置があるが、テレセントリックレンズ自体が高価なために一般的ではない。
【非特許文献1】VISION TESTER ESV-304 M2 カタログ 新電子株式会社2003年12月発行
【非特許文献2】VISION TESTER ESV-304 HS カタログ 新電子株式会社2004年3月発行
【非特許文献3】22XCL series カタログ マランツエレクトロニクス株式会社 2004年1月発行
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
解決しようとする問題点は、撮像のゆがみが表面実装基板等の実装や半田付けなどの検査に際して無視できるとともに、焦点深度を深くし、且つ、検査装置を高速移動しても装置振れや振動の影響が撮像に現れないようにする点であり、同時に、検査装置自体をコンパクトで安価なものにする点である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の請求項1に係る表面実装基板等の外観検査装置は、ICチップ等の電子部品が実装される表面実装基板等の実装や半田付けなどの被検査対象の良否を判定する外観検査に際し、前記被検査対象を撮影して得られた当該被検査対象の撮像信号を、当該撮像信号に基づき前記検査結果を判定するコンピュータに供給するための検査装置で、焦点距離を極めて長くしたビデオカメラと複数のミラーとをコンパクトな筐体内に配置し、当該筐体の、前記被検査対象を臨む開口部と当該被検査対象との間隔を外見上の対物距離とするものであり、装置自体はコンパクトで安価な構成に係る検査装置であるが、実質的には焦点距離が極めて長い検査装置であるので、撮像のゆがみを表面実装基板等の検査に際して無視することができ、焦点深度が深く鮮鋭な撮像を得やすくでき、更に、検査装置と被検査対象との対物距離が外見上短縮されているので、検査装置を高速移動しても装置振れや振動の影響が撮像に現れないようにできる。
【0006】
本発明の請求項2に係る表面実装基板等の外観検査装置は、前記複数のミラーのうちの第1ミラーは、前記ビデオカメラの下方に当該ビデオカメラの光軸に対し45゜の傾斜角をなして配置され、第2ミラーは、前記第1ミラーから所定間隔を空けてこれに対向する態様で配置され、第3ミラーは、前記第2ミラーから上方に所定間隔を空けてこれに対向する態様で配置され、第4ミラーは、前記第3ミラーに対向するとともに、被検査対象に対向する態様で、且つ、前記第1ミラーと第2ミラーとの間隔の略1/2に相当する距離を隔てて配置されようにしたもので、検査装置のより具体的な構成である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の表面実装基板等の外観検査装置は、複数のミラーと組み合わせて構成される検査装置であるため、装置自体をコンパクトで安価なものにできる一方、実質的には焦点距離が極めて長い検査装置であるため、表面実装基板等の検査に際して撮像のゆがみが無視でき、焦点深度が深くなって鮮鋭な撮像が得やすくなり、更に、検査装置と被検査対象との対物距離が外見上短縮されているので、検査装置を高速移動しても装置振れや振動の影響が撮像に現れないようにできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の実施形態に係る表面実装基板等の外観検査装置を図1,2を参照して説明する。
本外観検査装置1は、図1に示すような検査システムに組み入れられ、被検査対象Wの撮影に用いられるものであり、本外観検査装置1で撮影して得られた被検査対象Wの画像は、撮像信号に変換されてコンピュータ2に供給される。コンピュータ2では、上記撮像信号を取り込み、かかる撮像信号に基づき画像処理し、当該画像処理された入力パターンと予め記憶されている基準パターンとを比較照合などして被検査対象Wの良否の判定を行う。尚、この検査システムでは、本外観検査装置1及び/又は被検査対象Wは移動可能になっている。
しかるに、本外観検査装置1の具体的構成を、図2(A)を参照して説明すると、本外観検査装置1は、長焦点レンズを備えたビデオカメラ3と、本実施の形態では4つのミラー4〜7とがコンパクトな筐体8内に配置された構成となっており、このうちの第1ミラー4は、ビデオカメラ3の下方に当該ビデオカメラ3の光軸に対し45゜の傾斜角をなして配置され、第2ミラー5は、第1ミラー4から所定間隔を空けて当該第1ミラー4に対向する態様で配置され、第3ミラー6は、第2ミラー5から上方に所定間隔を空けて当該第2ミラー5に対向する態様で配置され、第4ミラー7は、第3ミラー6に対向するとともに、被検査対象Wに対向する態様で、且つ、第1ミラー4と第2ミラー5との間隔の略1/2に相当する距離を隔てて配置されている。そして、本外観検査装置1の筐体8の、被検査対象Wを臨む開口部8aと被検査対象Wとの間隔は、上述した従来の対物距離とほぼ変わらず、本外観検査装置1と被検査対象Wとの外見上の対物距離は短縮されている。しかるに、本外観検査装置1は、実質的には焦点距離が極めて長く、これに対応する対物距離は、ビデオカメラ3と第1ミラー4間の距離+第1ミラー4と第2ミラー5間の距離+第2ミラー5と第3ミラー6間の距離+第3ミラー6と第4ミラー7間の距離+第4ミラー7と被検査対象W間の距離に相当する長距離であり、本実施の形態では700mmである。
【0009】
次に、本外観検査装置1を用いて撮影したときに得られる撮像について図2(B)を参照して説明する。図2(B)は、本外観検査装置1を用いて被検査対象の実装基板Aを撮影している状態図であり、その撮像対象範囲を、実装基板A上に直径16mm円をなす円錐S内としている。尚、図2(B)において、図3(B)の構成部材と同一の部材には同一番号を付し、その説明は割愛する。
本外観検査装置1を用いて、ICチップを図2(B)のように撮影すると、カメラの中心に位置する撮像にはゆがみが生じないもちろんであるが、実装基板A上に直径16mm円をなす円錐Sの母線付近で、ICチップの高さに相当するゆがみはおよそ0.06mmしか生じていない。したがって、端子間のビッチが0.5mmのICチップ、更には0.15mmのICチップについてもゆがみの無視できる撮像が可能であり、端子間の短絡などの判別が可能になる。これは、焦点距離が極めて長いので、したがって、対物距離が長くなるので、撮像のゆがみを撮像に際して無視することができるほどに小さくできるからであり、また、焦点深度が深く鮮鋭な撮像が得られる。
ところで、本外観検査装置1では、ICチップの近くに電解コンデンサのような高さの高いものが配置されていても、上記円錐を形成する母線付近で、高さの高いものの陰になって撮像が得難いという問題も生じることはない。
【産業上の利用可能性】
【0010】
本発明は、撮像のゆがみが表面実装基板等の実装や半田付けなどの検査に際して無視できるほどに小さくすべく長焦点レンズを用いたために焦点距離が極めて長くなり、したがって対物距離が長くなるところを、筐体内に配置した複数のミラーとの組み合わせにより、検査装置自体をコンパクト化し、検査装置と被検査対象との対物距離を外見上短縮させたもので、テレセントリックレンズを備えた装置などより安価で実用的であり、この種の検査に広く利用され得るものと言える。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態に係る外観検査装置が組み入れられた検査システム図である。
【図2】図1の外観検査装置の構成図である。
【図3】従来のビデオカメラが組み入れられた検査システム図である。
【図4】図3のビデオカメラで撮影された被検査対象の撮像図である。
【符号の説明】
【0012】
1 外観検査装置
2 被検査対象
3 ビデオカメラ
4〜7 第1ミラー〜第4ミラー
8 筐体
8a 開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ICチップ等の電子部品が実装される表面実装基板等の実装や半田付けなどの被検査対象の良否を判定する外観検査に際し、前記被検査対象を撮影して得られた当該被検査対象の撮像信号を、当該撮像信号に基づき前記検査結果を判定するコンピュータに供給するための外観検査装置において、焦点距離を極めて長くしたビデオカメラと複数のミラーとをコンパクトな筐体内に配置し、当該筐体の、前記被検査対象を臨む開口部と当該被検査対象との間隔を外見上の対物距離としてなることを特徴とする表面実装基板等の外観検査装置。
【請求項2】
前記複数のミラーのうちの第1ミラーは、前記ビデオカメラの下方に当該ビデオカメラの光軸に対し45゜の傾斜角をなして配置され、第2ミラーは、前記第1ミラーから所定間隔を空けてこれに対向する態様で配置され、第3ミラーは、前記第2ミラーから上方に所定間隔を空けてこれに対向する態様で配置され、第4ミラーは、前記第3ミラーに対向するとともに、被検査対象に対向する態様で、且つ、前記第1ミラーと第2ミラーとの間隔の略1/2に相当する距離を隔てて配置されてなることを特徴とする請求項1に記載の表面実装基板等の外観検査装置。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−105749(P2006−105749A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−292044(P2004−292044)
【出願日】平成16年10月5日(2004.10.5)
【出願人】(593210293)新電子株式会社 (8)
【Fターム(参考)】