説明

表面実装用の水晶デバイス

【課題】セット基板との熱膨張係数差による半田のクラック発生を防止した表面実装用の水晶デバイスを提供する。
【解決手段】セット基板7の回路端子8と半田9によって接合される実装電極5を外底面の少なくとも両側に有したセラミックからなる矩形状の容器本体3と、前記容器本体3内に少なくとも水晶片2を収容してなる表面実装用の水晶デバイスにおいて、前記容器本体3の外底面に前記実装電極5よりも厚みの大きい突出部11を設け、前記実装電極5と前記回路端子8との間の半田9の厚みを大きく維持した構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は表面実装用の水晶デバイス(以下、表面実装デバイスとする)を技術分野とし、特にセット基板との膨張係数差による半田のひび、割れ等のクラック発生を防止した表面実装デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
表面実装デバイスは小型・軽量であることから、例えば実装密度の高いセット基板に搭載される。このようなものの一つに、車載等のエンジン制御用とした表面実装振動子があり、これが搭載されるセット基板との間の熱膨張差による半田のクラック発生の問題がある。
【0003】
(従来技術の一例)
第5図は一従来例を説明する図で、同図(a)は表面実装振動子のセット基板に対する装着断面図、同図(b)は表面実装振動子の外底面図である。
【0004】
表面実装振動子は密閉容器1内に水晶片2を収容してなる。密閉容器1は例えば積層セラミックからなる凹状とした容器本体3と、セラミックからなる平板状のカバー4とからなる。容器本体3は内底面の例えば一端側に対をなす図示しない水晶保持端子を有し、外底面の両端側中央部に外部端子5を有する。外部端子5は積層面を経て水晶保持端子と電気的に接続する。
【0005】
水晶片2は両主面に図示しない励振電極を有し、一端部両側となる外周部に引出電極を延出する。そして、引出電極の延出した一端部両側を水晶保持端子に導電性接着剤6によって固着する。カバー4は例えば低融点のガラスを用いて容器本体3の開口端面に接合され、水晶片2を密閉封入する。
【0006】
そして、表面実装振動子の外部端子5は、セット基板7の回路端子8と高熱炉を搬送しての、印刷によるクリーム半田9の溶融によって接続され(所謂半田リフロー)、他の電子部品とともに表面実装される。セット基板7は一般にガラスエポキシからなる。
【特許文献1】特許第3905804号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
(従来技術の問題点)
しかしながら、上記構成の表面実装振動子では、容器本体3(セラミック)とセット基板7(ガラスエポキシ)と膨張係数が異なる。ちなみに、膨張係数はセラミックが7.8×10-6/℃、ガラスエポキシは14×10-6/℃であり、セラミックの方がガラスエポキシよりも大きい。
【0008】
このことから、例えば自動車のエンジンルーム内での駆動時における温度上昇や停止による温度下降のヒートサイクルによって、セット基板7及び表面実装振動子は伸縮を繰り返す(第5図(a)の矢印)。この場合、表面実装振動子とセト基板7との膨張係数差によって伸縮量も異なることから、それぞれに歪(機械的変形)を生じる。
【0009】
これらの歪は、表面実装振動子をセット基板7に接合する半田9に波及し、半田9に応力を生ずる。そして、半田9の柔軟性では応力を吸収しきれず、第6図(第5図のP部の拡大図)に示したように半田9にクラック10を生ずる。その結果、外部端子5と回路端子8との接続不良(電気的導通不良)やセット基板7からの剥離を引き起こす問題があった。
【0010】
(発明の目的)
本発明は熱膨張係数差による半田のクラック発生を防止した表面実装デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(着目技術)
本発明は特許文献1で示される実装電極の厚みを大きくすることによって歪が吸収される点に着目した。
【0012】
本発明は、特許請求の範囲(請求項1)に示したように、セット基板の回路端子と半田によって接合される実装電極を外底面の少なくとも両側に有したセラミックからなる矩形状の容器本体と、前記容器本体内に少なくとも水晶片を収容してなる表面実装用の水晶デバイスにおいて、前記容器本体の外底面に前記実装電極よりも厚みの大きい突出部を設け、前記実装電極と前記回路端子との間の半田の厚みを大きく維持した構成とする。
【発明の効果】
【0013】
このような構成であれば、実装電極よりも厚みの大きい突出部11によって半田の厚みを大きくできる。したがって、熱膨張係数差による応力を半田の高さによって吸収できる。これにより、クラック発生を防止する。
【0014】
(実施態様項)
本発明の請求項2では、請求項1において、前記実装電極は前記容器本体の外底面における長辺方向の両端側に設けられる。これは例えば水晶片のみを容器本体に収容し、外底面の実装電極が水晶片の一対の引出電極と電気的に接続した表面実装振動子の場合である。
【0015】
同請求項3では、請求項1において、前記実装電極は前記容器本体の外底面における4角部に設けられる。これは、例えば水晶片のみを容器本体に収容して金属カバーを被せ、外底面の実装電極が水晶片の一対の引出電極及び金属カバーと電気的に接続した表面実装振動子の場合である。あるいは、発振回路を構成するICチップとを水晶片とを容器本体に収容し、外底面の実装電極がICチップと電気的に接続した表面実装発振器の場合である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
第1図は本発明の一実施形態を説明する表面実装デバイスとしての表面実装振動子の図で、同図(a)はセット基板に対する装着断面図、同図(b)は外底面の図である。なお、前従来例と同一部分には同番号を付与してその説明は簡略又は省略する。
【0017】
表面実装振動子は、前述したように積層セラミックからなる容器本体3とカバー4とをガラスによって封止した密閉容器1内に水晶片2を収容してなる。密閉容器1(容器本体3)における外底面の両端側中央部には、水晶片2の引出電極と電気的に接続した外部端子5を有する。
【0018】
そして、ここでは、例えば容器本体3における外底面の両端側の実装電極5の間となる中央領域に、幅方向を横断する二列の突出部11を設ける。二列の突出部11は中央から両側の領域に形成されて、突出部11は実装電極5の厚みよりも高さを大きくする。この場合、表面実装振動子は突出部11によって傾斜することなく自立する。
【0019】
これらは、例えば容器本体3の外底面に印刷によってセラミックが塗付され、容器本体とともに一体的な焼成によって形成される(通称IPコート)。但し、セラミックに限らず樹脂等であってもよい。
【0020】
このようなものでは、セット基板7の回路端子上に印刷によって塗付されたクリーム半田9上に実装電極5を当接する。そして、高熱炉を搬送してのクリーム半田9の溶融によって、回路端子8と実装電極5とが接続される。この場合、突出部11によって、クリーム半田9の高さは大きく維持される。
【0021】
突出部11のない従来例の場合では、クリーム半田9の溶融時におけるフラックスの飛散や半田フィレットの形成によって半田9の高さが低くなる。これに対し、本実施形態では、突出部11によって半田9の高さを大きく維持する。
【0022】
したがって、表面実装振動子のセット基板7への実装後、熱衝撃(ヒートサイクル)によって生じる回路基板7と表面実装振動子との歪を半田9の高さによって吸収する。すなわち、半田9の高さを大きくしたことによって、第2図に示したようにセット基板7の伸張とともにセット基板側の半田9が外側に引っ張られる。これにより、回路基板7と表面実装振動子との歪を吸収できて、前述した半田クラックの発生を防止する。
【0023】
(他の事項)
上記実施形態で突出部11は二列の突出部11としたが、例えば一列としてその幅を大きくしてもよい「第3図(a)」。また、突出部11は中央部と外周4角部の計5箇所に点的に設けてもよい「第3図(b)」。要は、表面実装振動子が実装電極5よりも高さの大きい突出部11によって傾斜することなく自立できればよい。
【0024】
また、表面実装振動子は2端子としたが、例えばシーム溶接等による金属カバーとして封止し、金属カバーをアース端子に電気的に接続した4端子の場合であっても、例えば十字状とした突出部11を設けて同様に適用できる。この場合、例えば一組の対角部の実装電極5を水晶端子として他組の対角部の実装電極5をアース端子とする(第4図)。
【0025】
また、表面実装デバイスは表面実装振動子として説明したが、例えば図示しない発振回路を集積化したICチップと水晶片とを密閉封入した表面実装発振器の場合でも同様に適用できる。この場合、実装電極は出力、電源、アース及びその他の端子からなる4端子となり、前第4図と同様に外底面の4角部に形成される。これらの場合でも、突出部11は任意に形成できる。
【0026】
さらに、密閉容器1は凹状の容器本体3と平板状のカバー4からなるとしたが、例えば容器本体3を平板状としてカバー4を凹状として接合してもよく、ここでの容器本体3は外底面に実装電極5を有するものを指す。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施形態を説明する表面実装デバイスとしての表面実装振動子の図で、同図(a)はセット基板に対する装着断面図、同図(b)は外底面の図である。
【図2】本発明の作用効果を説明する表面実装振動子のセット基板に対する装着断面図である。
【図3】本発明の一実施形態の他の例を説明する表面実装振動子の外底面の図である。
【図4】本発明の一実施形態のさらに他の例を説明する水晶デバイスの外底面の図である。
【図5】従来例を説明する図で、同図(a)は表面実装振動子のセット基板に対する装着断面図、同図(b)は外底面の図である。
【図6】従来例の問題点を説明する表面実装振動子のセット基板に対する装着断面図の一部拡大図である。
【符号の説明】
【0028】
1 密閉容器、2 水晶片、3 容器本体、4 カバー、5 実装電極、6 導電性接着剤、7 セット基板、8 回路端子、9 半田、10 クラック、11 突出部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セット基板の回路端子と半田によって接合される実装電極を外底面の少なくとも両側に有したセラミックからなる矩形状の容器本体と、前記容器本体内に少なくとも水晶片を収容してなる表面実装用の水晶デバイスにおいて、前記容器本体の外底面に前記実装電極よりも厚みの大きい突出部を設け、前記実装電極と前記回路端子との間の半田の厚みを大きく維持したことを特徴とする表面実装用の水晶デバイス。
【請求項2】
請求項1において、前記実装電極は前記容器本体の外底面における長辺方向の両端側に設けられた表面実装用の水晶デバイス。
【請求項3】
請求項1において、前記実装電極は前記容器本体の外底面における4角部に設けられた表面実装用の水晶デバイス。

【図3】
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【図4】
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【図1】
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【図2】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−4915(P2009−4915A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−161847(P2007−161847)
【出願日】平成19年6月19日(2007.6.19)
【出願人】(000232483)日本電波工業株式会社 (1,148)
【Fターム(参考)】