説明

表面平坦性絶縁膜形成用塗布溶液、表面平坦性絶縁膜被覆基材、及び表面平坦性絶縁膜被覆基材の製造方法

【課題】ポリ(ジオルガノ)シロキサンと金属アルコキシドから形成される有機修飾シリケートの1μm以上の厚膜で、相分離による凹凸が生じず、低いヤング率で基板の変形にも追従できる柔軟性を有し、電子デバイス等の微細部品を実装できる膜表面の平坦性の高い有機修飾シリケート絶縁膜を形成できる表面平坦性絶縁膜形成用塗布溶液を提供。
【解決手段】質量平均分子量が900以上10000以下であるポリ(ジオルガノ)シロキサンAと金属アルコキシドBを有機溶媒Cに溶解し、さらに水を添加してなる塗布溶液であって、金属アルコキシドB1モルに対するポリ(ジオルガノ)シロキサンAのモル比A/Bが0.05以上1.5以下であり、前記有機溶媒Cが水酸基を有し、有機溶媒C100gに対する水の溶解度が3〜20gで、ポリ(ジオルガノ)シロキサンA1モルに対する有機溶媒Cのモル比C/Aが0.05〜100である表面平坦性絶縁膜形成用塗布溶液。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面が平坦な有機修飾シリケートの電気絶縁膜に関し、特に、薄膜トランジスタ(TFT)、有機ELディスプレイ、電子ペーパー等電子デバイスの微細部品の実装に使用される表面平坦性絶縁膜被覆基材、前記表面平坦性絶縁膜用の塗布溶液、及び表面平坦性絶縁膜被覆基材の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
シリカ(SiO)膜は、無機酸化物であるため、耐熱性、電気絶縁性等に優れており、平坦な膜を得やすいことから種々の分野で電気絶縁膜として使用されている。また、シリカ膜は、PVD(Physical Vapor Deposition)やCVD(Chemical Vapor Deposition)等の気相法、及びゾル・ゲル法等の液相法で作製されている。電界強度が大きくなるようなデバイスや電子部品配置では、より高い絶縁性が必要になり、シリカ膜をさらに厚くする必要がある。しかしながら、何れの作製方法においても、厚膜を形成するのが難しく、通常、1μm以上の膜厚ではクラックが発生する。これは、シリカのヤング率が高いので(約105MPa)、成膜時に発生する基板材料との熱膨張率差による内部応力や膜自体の収縮によって発生する内部応力に対して膜が追従して応力を緩和できないからである。また、電子ペーパーに代表されるように、湾曲等に変形できるような電子デバイスにおいては、柔軟性の低い(ヤング率の高い)シリカ絶縁膜では前記変形に追従できず、不適である。
【0003】
このような問題の解決方法として、シリカのシロキサン骨格に有機基を導入した有機修飾シリケート膜があり、有機-無機ハイブリッド(無機-有機ハイブリッド)、オルモジル(Ormosils)、セラマー(Ceramers)等でも呼ばれる材料の膜である(非特許文献1、2)。シロキサン骨格にメチル基等の有機基を導入すると、シロキサン骨格の剛直性が緩和されてヤング率が低くなる。これによって、1μm以上の膜厚でもクラックを発生させることなく成膜できる。このような有機修飾シリケート膜は、一般に、ゾル・ゲル法で作製される。オルガノアルコキシシラン(RSi(OR’)4−x、Rは有機基、OR’は、アルコキシ基である。xは、1、2、又は3である。)を出発原料として、アルコキシ基の加水分解、加水分解後の縮合反応によって、シロキサン骨格に有機基(−R)が導入された構造を形成することができる。さらに、柔軟性の高い有機修飾シリケート膜を作製するには、ポリ(ジオルガノ)シロキサン(X−[−Si(R)−O]−Si(R)−X ここで、Xは、反応性官能基であり、mは、ジオルガノシロキサンのユニット数である)を出発原料として、オルガノアルコキシシランや金属アルコキシド(M(OR)、nは、アルコキシ基の数であり、通常、Mの価数となる。)の原料ととも反応させる。特に、質量平均分子量Mwが900以上になると、1μm以上の厚膜作製が容易になり、基板の変形にも追従できる柔軟性を有する絶縁膜となる。
【0004】
前記有機修飾シリケートに類似したものとしては、特許文献1で、耐熱絶縁電線の絶縁被覆層として、ポリジメチルシロキサン等の鎖状シリコーンオリゴマー、金属アルコキシド、及び無機充填剤から形成されるシリコーン樹脂組成物が開示されている。また、特許文献2では、薄膜太陽電池基板としてその集光効率を向上させる目的で表面に凹凸構造を形成した絶縁膜を形成する方法として、ポリジメチルシロキサンと金属アルコキシドから形成する膜で起こる疎水相と親水相の相分離を利用した表面凹凸構造の形成が開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開平5−239359号公報
【特許文献2】特開2005−79405号公報
【非特許文献1】作花済夫 著「ゾル−ゲル法の科学」アグネ承風社 (1990)p.115−153
【非特許文献2】作花済夫 著「ゾル−ゲル法の応用」アグネ承風社 (1997)p.57−115
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の特許文献1では、有機溶媒を使用せず、収縮率が小さく、耐熱性絶縁電線の絶縁被覆層を形成することを目的としているので、無機充填剤を添加して適度な硬度を付与することが必須条件であり、無機充填剤が使用できない電子デバイスの微細部品実装の表面平坦性絶縁膜に適用することは示唆されていない。仮に、適用しようとしても、無機充填剤が、膜表面に現れて凹凸が形成され、電子デバイスの微細部品実装可能な平坦な表面が形成できない。また、特許文献2では、そもそもゾルの段階で疎水相と親水相に相分離を起こしており、成膜過程でさらに相分離を顕著にして表面に凹凸構造を形成させるものであるので、平坦な表面を形成させるのは困難である。溶媒の蒸発を速くするような熱処理で、凹凸の程度が小さくなることが記載されているが、相分離による組織が微細になるだけで、疎水相と親水相の共溶媒によって一見透明であるがゾルの段階から相分離が生じており、根本的に、電子デバイスの微細部品実装に適用できるような平坦性の高い表面の絶縁膜とはならない。
【0007】
ポリ(ジオルガノ)シロキサンと金属アルコキシドから形成される有機修飾シリケート膜は、ポリ(ジオルガノ)シロキサンの質量平均分子量Mwが900以上になると、厚膜化が可能で、基板の変形にも追従できる柔軟性を有しているが、前述のように電子デバイス等で微細部品を実装するような場合には、従来のゾルを塗布溶液とすると膜表面の凹凸が問題となる。膜厚1μm未満の薄膜では、前記のような問題となる凹凸は発生しないが、1μm以上の厚膜にすると、特許文献2にも記載されているように膜表面の凹凸が顕著になる。したがって、従来の塗布溶液及び製造方法では、電子デバイスの微細部品実装に利用するための絶縁厚膜にするために、高い耐電圧に耐えられように1μm以上の膜厚にすると、基板が平滑でも膜表面に大きな凹凸が生じ、部品実装できないという問題が生じる。
【0008】
本発明は、前記問題を解決するものであり、質量平均分子量Mwが900以上のポリ(ジオルガノ)シロキサンと金属アルコキシドから形成される有機修飾シリケートの1μm以上の厚膜で、低いヤング率で基板の変形にも追従できる柔軟性を有し、電子デバイス等の微細部品を実装できる膜表面の平坦性の高い有機修飾シリケート絶縁膜を形成できる表面平坦性絶縁膜形成用塗布溶液、塗布溶液を使用した表面平坦性絶縁膜被覆基材の製造方法、及び表面平坦性絶縁膜被覆基材を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記の問題を解決すべく、ポリ(ジオルガノ)シロキサンと金属アルコキシドから形成される有機修飾シリケート膜の表面凹凸について鋭意検討し、次のような原因があることを見出した。
【0010】
ポリ(ジオルガノ)シロキサンと金属アルコキシドから形成された、膜厚1μm以上の有機修飾シリケート膜の表面形態を電子顕微鏡(SEM)で調べたところ、特許文献2に記載と類似する皺状のラメラ構造(図1)になって表面の平坦化が達成できてないことが分かる。図1は、質量平均分子量Mw4500のポリジメチルシロキサンとチタニウムイソプロポキシド(Ti(OC)の金属アルコキシドから形成された、膜厚12μmの膜表面である。このラメラ構造は、金属アルコキシドから形成される無機成分の含有量が膜表面で均一でなく、無機成分の含有量の多い領域と少ない領域があり、それらの領域がラメラ構造の模様と一致している。図2の(a)に示したように、塗布溶液とするゾルの有機溶媒(1)中に無機成分の多い相PI-rich(2)と(3)無機成分の少ない相PI-poor(3)が溶解しており、図2の(b)に示したように基材(6)に塗布後、無機成分の多い相PI-rich(4)と無機成分の少ない相PI-poor(5)が、混和しないで、溶媒の蒸発及び硬化する過程でそれぞれの相が別々に凝集しようとしてミクロ相分離を起こす。図2の(b)及び(c)に示したように、それぞれの相が硬化する際の収縮率が異なるので、収縮率の大きな相(一般には、無機成分の含有量の多い相)が凹(7)に、収縮率の小さな相(一般には、無機成分の含有量の少ない相)が凸(8)になり、膜表面に凹凸のあるラメラ構造が形成される。
【0011】
したがって、前述のような混和しない2つ以上の相を生成しないゾルを塗布溶液とすれば、膜表面が平坦になると考え、鋭意検討した。すなわち、無機成分の含有量の多い相Aと同含有量の少ない相Bを生成しないようにすることである。
【0012】
ポリ(ジオルガノ)シロキサンと金属アルコキシドによる有機修飾シリケートの形成では、金属アルコキシドのアルコキシ基が加水分解され、ポリ(ジオルガノ)シロキサンと化学結合や水素結合することによって、ポリ(ジオルガノ)シロキサンが無機架橋されるものである。しかしながら、ポリ(ジオルガノ)シロキサンの質量平均分子量Mwが900以上になってシロキサン直鎖が長くなると疎水性部位が溶液中で占める割合が多くなるので、加水分解で添加する水が、溶液全体に速やかに均一拡散されない。よって、金属アルコキシドの加水分解が溶液全体で同時に均一に起り難くなり、溶液中のポリ(ジオルガノ)シロキサン全てが同程度に無機架橋できなくなる。この結果、無機成分の含有量の多い相PI-richと同含有量の少ない相PI-poorが形成されることになって、相溶性に乏しいこれらが相分離を起こす原因であることを見出した。
【0013】
本発明者らは、この知見に基づいて、さらに検討・実験を重ねた結果、ポリ(ジオルガノ)シロキサンに対して金属アルコキシドの割合を多くし、水を適度に溶解する有機溶媒相を使用することで、表面のラメラ構造の形成を防止して、平坦な表面を有する有機修飾シリケートの厚膜を形成できる塗布溶液が得られることを見出し、本発明に到達した。
【0014】
すなわち、本発明は、以下の要旨とするものである。
(1)質量平均分子量が900以上10000以下であるポリ(ジオルガノ)シロキサンAと金属アルコキシドBを有機溶媒Cに溶解し、さらに水を添加してなる塗布溶液であって、金属アルコキシドB1モルに対するポリ(ジオルガノ)シロキサンAのモル比A/Bが0.05以上1.5以下であり、前記有機溶媒Cが水酸基を有し、有機溶媒C100gに対する水の溶解度が3〜20gで、ポリ(ジオルガノ)シロキサンA1モルに対する有機溶媒Cのモル比C/Aが0.05〜100であることを特徴とする表面平坦性絶縁膜形成用塗布溶液。
(2)前記有機溶媒Cの炭素数が、4〜9であることを特徴とする(1)に記載の表面平坦性絶縁膜形成用塗布溶液。
(3)前記金属アルコキシドBの金属元素が、3価又は4価の金属元素から選ばれる1種以上であることを特徴とする(1)又は(2)に記載の表面平坦性絶縁膜形成用塗布溶液。
(4)前記ポリ(ジオルガノ)シロキサンAに、ジメチルシロキサン構造単位(−[Si(CH−O]−)が、Siモル比で50%〜100%含まれることを特徴する(1)〜(3)のいずれかに記載の表面平坦性絶縁膜形成用塗布溶液。
(5)上記(1)〜(4)のいずれかに記載の表面平坦性絶縁膜形成用塗布溶液を基材に塗布し、60℃以上200℃以下で乾燥し、その後250℃以上400℃以下で熱処理することを特徴とする表面平坦性絶縁膜被覆基材の製造方法。
(6)質量平均分子量が900以上10000以下であるポリ(ジオルガノ)シロキサンAと金属アルコキシドBから形成さる有機修飾シリケート膜であって、金属アルコキシドB1モルに対するポリ(ジオルガノ)シロキサンAのモル比A/Bが0.05以上1.5以下であり、前記膜厚が1μm以上50μm以下で、前記膜のヤング率が10MPa以上10MPa以下で、前記膜表面の平坦性Rqが20nm以下である膜が被覆されてなることを特徴とする表面平坦性絶縁膜被覆基材。
(7)前記有機修飾シリケート膜に含まれるポリ(ジオルガノ)シロキサンが、ジメチルシロキサン構造単位(−[Si(CH−O]−)をSiモル比で50%〜100%含むことを特徴する(6)に記載の表面平坦性絶縁膜被覆基材。
【発明の効果】
【0015】
本発明の表面平坦性絶縁膜形成用塗布溶液は、有機修飾シリケートからなる絶縁膜が形成でき、塗布溶液とするゾル中に無機成分の多い相と無機成分の少ない相が存在しないので膜形成過程で生じる相分離による膜表面の凹凸が生じず、膜厚を厚くしても、平坦性の高い表面を形成できる。また、本発明の表面平坦性絶縁膜形成用塗布溶液を使用した製造方法によれば、柔軟性(低ヤング率)を有するのでフレキシブル基材の変形にも剥離やクラック無く追従でき、膜表面が平坦であるので微細部品の実装も支障なくできる表面平坦性絶縁膜が得られる。すなわち、前記表面平坦性絶縁膜を被覆した基材は、柔軟性、高耐電圧、耐熱性が要求される電気絶縁膜の被覆基材として、微細な電子デバイス部品を実装するために平坦性の極めて高い表面が必要な分野、例えば、薄膜トランジスタ(TFT)、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、電子ペーパー等の電子デバイスで使用される膜厚の厚い絶縁膜の被覆基材として好適に使用される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明のポリ(ジオルガノ)シロキサンAとは、Siに2つの有機基が結合して、直鎖状にSi−Oのシロキサンが連続的に結合したものであり、一般式 X−[−Si(−R)−O−]−Si(R)−X で表される。ここで、Xは、反応性官能基であり、−Rは、Siに直接結合した有機基である。mは、重合度であり、例えば、質量平均分子量Mw1000で、有機基がメチル基の時は、19〜20程度になる。有機基(オルガノ基、−R)は、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、フェニル基、ベンジル基等が挙げられる。すなわち、ポリ(ジメチル)シロキサン、ポリ(ジエチル)シロキサン、ポリ(ジプロピル)シロキサン、ポリ(ジフェニル)シロキサン、ポリ(ジベンジル)シロキサン、ポリ(ジメチル)(ジフェニル)シロキサン、ポリ(ジメチル)(ジベンジル)シロキサン等が挙げられる。特に、有機修飾シリケート膜のヤング率を効果的に下げるには、ポリ(ジオルガノ)シロキサンに、(−[Si(CH−O]−)が、Siモル比で50%〜100%含まれることがより好ましい。ジメチルシロキサン構造単位の反応性官能基(−X)は、例えば、シラノール基、カルビノール基、アミノ基、アルコキシ基、メルカプト基、エポキシ含有官能基等である。
【0017】
ポリ(ジオルガノ)シロキサンAの質量平均分子量Mwは、900以上である。900未満では、相分離を起こさず平坦な表面の膜が得られるが、1μm以上の厚膜を形成することができない。すなわち、膜厚が小さいので、高耐電圧を必要とする絶縁厚膜には使用できない。Mw900未満のポリ(ジオルガノ)シロキサンでは、親水部に対して疎水部の占める体積割合が少なくなるので、金属アルコキシドと反応させても、金属アルコキシドの加水分解が溶液全体で均一に起こり、ポリ(ジオルガノ)シロキサンを均一に無機架橋できる。その結果、相分離を起こさず、平坦な表面が形成される。しかしながら、ポリ(ジオルガノ)シロキサンの質量平均分子量Mwが小さいので、溶液粘度や膜形成時の粘度が低く、厚膜を形成できない。さらに、シロキサン鎖が短いために、膜の柔軟性に乏しく(ヤング率が高くなり)、厚膜としたときにはクラックが生じる。1μm以上の厚膜を作製するには、Mw900以上のポリ(ジオルガノ)シロキサンを使用すると可能になる。一方、Mw10000を越えると、ポリ(ジオルガノ)シロキサンが粘調で、溶媒に溶解しなくなり、金属アルコキシドと混合できず、塗布溶液を調製できない。より好ましくは、Mwが950〜3000である。
【0018】
Mw900以上のポリ(ジオルガノ)シロキサンを使用すると1μm以上の厚膜を作製できるが、前述のようにラメラ構造の形成により表面凹凸が著しくなり、平坦な表面が得られない。しかしながら、水酸基を有する有機溶媒Cであって、前記有機溶媒C100gに対する水の溶解度が3〜20gで、ポリ(ジオルガノ)シロキサンA1モルに対する有機溶媒Cのモル比C/Aが0.05〜100であるときには、相分離を起こさず成膜後にラメラ構造が生じない塗布溶液とすることができる。ここで、モル比C/Aは、ポリ(ジオルガノ)シロキサンAの質量平均分子量Mwと有機溶媒Cの分子量Msを用いて、モル比C/A=(X/Ms)/(X/Mw)で算出するものである(Xは、有機溶媒Cの質量で、Xは、ポリ(ジオルガノ)シロキサンAの質量である。)。
【0019】
前記有機溶媒C100gに対する水の溶解度が3g未満では、添加する水が溶液全体に速やかに均一に拡散せず、金属アルコキシドの加水分解が溶液全体で均一に起こらない。その結果、溶液中には、無機成分の含有量の多い相と無機成分の含有量の少ない相が形成され、前記溶液を塗布して成膜すると相分離を起こして凹凸の激しい表面になる。一方、前記有機溶媒C100gに対する水の溶解度が20gを越えると、ポリ(ジオルガノ)シロキサンを十分溶解できないので、加水分解された金属アルコキシドがポリ(ジオルガノ)シロキサンを均一に架橋できない。その結果、溶液中には、無機成分の含有量の多い相と無機成分の含有量の少ない相が形成され、前記溶液を塗布して成膜すると相分離を起こして凹凸の激しい表面になる。また、金属アルコキシドBが加水分解されてポリ(ジオルガノ)シロキサンAを架橋するまで、金属アルコキシド及び加水分解された金属アルコキシドと溶媒和するために、有機溶媒Cには水酸基が必要である。有機溶媒Cを例示すると、プロピルアルコール(CH3CH2CH2OH)、n-ブチルアルコール(CH3CH2CH2CH2OH)、イソブチルアルコール((CH3)2CHCH2OH)、s-ブチルアルコール(CH3CH2CH(CH3)OH)、n-ペンチルアルコール(CH3(CH2)4OH)、イソペンチルアルコール((CH3)2CHCH2CH2OH)、ネオペンチルアルコール((CH3)3CCH2OH)、n-ヘキシルアルコール(CH3(CH2)5OH)、n-ヘプチルアルコール(CH3(CH2)6OH)、n-オクチルアルコール(CH3(CH2)7OH)、n-ノニルアルコール(CH3(CH2)8OH)、イソノニルアルコール((CH3)2CH(CH2)6OH)、n-デシルアルコール(CH3(CH2)9OH)、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル(CH3(CH2)5O(CH2CH2O)2H)、エチレングリコールモノヘキシルエーテル(CH3(CH2)5OCH2CH2OH)、プロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル(CH3(CH2)3OCH2CH(CH3)OH)、3,5,5,-トリメチル-1-ヘキサノーる(CH3C(CH3)2CH2CH(CH3)CH2CH2OH)、2-エチル-1-ヘキサノール(CH3(CH2)3CH(CH2CH3)CH2OH)、イソデカノール((CH3)2CH(CH2)7OH)等が挙げられる。
【0020】
さらに、前記モル比C/Aが、0.05未満であると、溶液中に占めるポリ(ジオルガノ)シロキサンAが多くなりすぎるために、ポリ(ジオルガノ)シロキサンAの疎水性によって、添加する水が溶液全体に速やかに均一に拡散せず、金属アルコキシドBの加水分解が溶液全体で均一に起こらない。その結果、溶液中には、無機成分の含有量の多い相と無機成分の含有量の少ない相が形成され、前記溶液を塗布して成膜すると相分離を起こして凹凸の激しい表面になる。一方、モル比C/Aが、100を越えると、前記のような2相は形成されず、相分離は生じないが、塗布溶液として固形分濃度が低くなり、厚膜が形成できない。より好ましくは、モル比C/Aが0.1〜60の範囲である。有機溶媒の炭素数は、4〜9であることが更に好ましい。4未満であると、蒸気圧が高くなり、成膜し難い場合がある。9を越えると、蒸気圧が低くなり、成膜後の膜中に溶媒が残存する場合がある。
【0021】
本発明では、前記有機溶媒Cを使用し、金属アルコキシドB1モルに対してポリ(ジオルガノ)シロキサンAのモル比A/Bが0.05以上1.5以下にすることによって、相分離が起こらず、厚膜の表面にラメラ構造が形成されない平坦な表面を形成できる塗布溶液となる。ここで、モル比A/Bは、ポリ(ジオルガノ)シロキサンAの質量平均分子量Mwと金属アルコキシドBの分子量Maを用いて、モル比A/B=(X/Mw)/(X/Ma)で算出するものである(Xは、金属アルコキシドBの質量で、Xは、ポリ(ジオルガノ)シロキサンAの質量である。)。
【0022】
前記モル比A/Bが1.5を超えると、溶液中で占めるポリ(ジオルガノ)シロキサンAの疎水部の割合が多くなり、加水分解のために添加した水の均一拡散が不十分になり、金属アルコキシドBの加水分解が溶液全体で同時に均一に起り難く、無機成分の含有量の多い相と同含有量の少ない相が形成される。前記モル比が1.5以下になると、溶液中に占めるポリ(ジオルガノ)シロキサンの疎水部の割合が低くなり、金属アルコキシドBの加水分解ために添加した水が溶液全体に拡散し、前述のような相分離を起こすような無機成分の含有量の違う2種類の相が形成されない。その結果、厚膜を形成しても、ラメラ構造は生じず、平坦な表面が作製できる。一方、前記モル比A/Bが0.05未満になると、相分離は生じないが、無機成分が多くなり、膜の柔軟性に乏しく(ヤング率が高く)、厚膜作製時にクラックが発生する。より好ましくは、モル比A/Bが0.2〜0.8の範囲である。
【0023】
本発明で用いる金属アルコキシドBは、一般式でM(OR’)で表され、金属元素Mは、例えば、Mg、Ca、Y、Al、Si、Sn、Ti、Zr、Nb、Ta、W から選ばれる1種以上のものが挙げられ、アルコキシ基OR’は、メトシキ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基などが挙げられる。特に、金属アルコキシドBの金属元素が、ポリ(ジオルガノ)シロキサンAを効果的に架橋するためには、3価又は4価の金属元素から選ばれる1種以上であることが好ましい。すなわち、前記金属アルコキシドは、溶液中でポリ(ジオルガノ)シロキサンと均一に反応して相分離しない傾向が高い。Y、Al、Sn、Ti、Zr、Nb、Ta、Wの金属アルコキシドは、反応性が高いため、アルコキシ基の一部をβ-ジケトン、β-ケトエステル、アルカノールアミン、アルキルアルカノールアミン、有機酸等の化学改質剤で置換したアルコキシド誘導体を使用してもよい。
【0024】
本発明の有機修飾シリケートでなる表面平坦性絶縁膜の膜厚は、前述のように、高い耐電圧を得るために1μm以上が必要である。一方、50μmを越えると、膜厚では耐電圧は十分であるが、必要以上の膜厚となるので、経済的ではない。本発明の耐電圧とは、次のような測定から決定される。絶縁膜上に1cm×1cmの白金電極を蒸着によって付け、前記電極をプラスに、膜を付けた基板側をマイナスにして、電圧を可変して印加し、10秒間の間1mA以上の電流値が流れない電圧で判断する。良好な耐電圧は、1kV以上であり、特に好ましくは2.5kV以上である。
【0025】
前記耐電圧を得るためには、絶縁膜の絶縁抵抗は、少なくとも10Ωcm2以上が好適である。膜上に配線パターン回路を作製して積層される電子基板とする場合、10Ωcm2未満では、厚膜化しても膜上にパターニングされた回路に流れる電流が基板にリークして高い耐電圧を得られない場合がある。高い耐電圧を得るには、絶縁抵抗が高く、膜厚が大きく、欠陥の少ない膜とすることが重要である。
【0026】
本発明の有機修飾シリケートでなる表面平坦性絶縁膜は、1μm以上の厚膜化するために、かつ基板の変形に追従できるようにするために、低いヤング率でなくてはいけない。すなわち、ヤング率が10MPa以下であり、これを越えると1μm以上の厚膜にならない、あるいは膜形成過程でクラックが生じる。また、基板の変形に追従できず、僅かな変形でも膜が破損する。一方、ヤング率が10MPaより小さくなると、膜が柔らかくなりすぎてリソグラフィが困難になり、絶縁膜としてその上に電子デバイスを実装することができない。
【0027】
本発明では、ポリ(ジオルガノ)シロキサンAと金属アルコキシドBの組み合わせで、良好な例として、シラノール両端ポリジメチルシロキサン若しくはカルビノール両端ポリジメチルシロキサン、又は、シラノール両端ポリジメチルシロキサンとカルビノール両端ポリジメチルシロキサンの両方と、チタニウムアルコキシドの組み合わせである。例えば、前記ポリジメチルシロキサンはMw5000程度で、ポリジメチルシロキサン/チタニウムアルコキシドのモル比0.4程度でディップコートと熱処理によって4μm以上の膜厚で平坦な膜を得られ、かつ、クラックもない、2kV以上の高い耐電圧を持つ絶縁被膜となる。1kV以上の電気絶縁性を安定して得るためには1μm以上の膜厚の絶縁性膜が必要であり、更に高い絶縁性とするには膜厚は大きくなる。
【0028】
本発明の絶縁膜では、表面の平坦性(表面粗さ)Rqが20nm以下である。Rqが20nmを超えると、絶縁膜上に微細部品、配線を施すために障害となる。表面の平坦性を表す二乗平均粗さRq(Rms)は、高さ方向の振幅平均を表すもので、基準長さ(L)間の平均線から測定曲線までの偏差の二乗を平均した値の平方根であり、次の式(1)で求められる。
【0029】
【数1】

【0030】
例えば、膜の上15μm×15μm□内を測定して、上記式(1)からRqを求めることができる。高さ方向の振幅平均を表すパラメータである算術平均粗さRaに比べて、前記二乗平均粗さRqの方が表面の凹凸(山谷の起伏)の程度の違いがより顕著に表すことができる指標である。したがって、微細な電子デバイス部品を実装するために平坦性の極めて高い表面が必要な用途に適用するためには、Rqで表面の平坦性を判断して、上述のようにRqが20nm以下でないと使用できないことを見出した。
【0031】
本発明の絶縁膜では、600℃まで加熱した際の質量減が10%以下であることが好ましい。すなわち、TFT、電子ペーパー等の電子デバイスの基板とした場合、微細部品を実装する色々なプロセスで加熱されることがあり、加熱下で基板から揮発が少ない方が好ましい。600℃まで加熱した際の質量減が10%を越えると、揮発分が多くなり、揮発ガスが製造阻害因子となる場合がある。
【0032】
加水分解は、出発原料中の全アルコキシ基のモル数に対して0.5〜2倍の水を添加して行うのが好ましい。0.5倍未満では、加水分解の進行が遅く、ゲル化に時間がかかる。一方、2倍を越えると、金属アルコキシド同士の縮合割合が多く成り、シロキサンポリマーを有効に架橋するする寄与が低下する場合がある。
【0033】
本発明の絶縁膜は、ゾル・ゲル法で作製でき、ゾル塗布液を塗布し、乾燥及び熱処理にというプロセスで作製できる。前記乾燥は、塗膜中の溶媒を除去するのが主要な目的であり、60℃以上200℃以下が好ましい。60℃未満で乾燥すると、乾燥に時間がかかり、膜中に溶媒を多量に残す場合がある。一方、200℃を越えると、急激な溶媒蒸発により、乾燥膜が壊れる場合がある。また、前記熱処理は、塗膜の硬化を進行させるのが主要な目的であり、250℃以上600℃以下が好ましい。250℃未満では、絶縁膜として実用的な強度が得られない場合がある。一方、600℃を越えると、シロキサンに結合した有機基の熱分解が起こり、膜の柔軟性が損なわれる場合がある。
【0034】
前記ゾルを基板へのコーティングするには、バーコート法、ロールコート法、スプレーコート法、ディップコート法、スピンコート法、スリットコート法、カーテンコート法などで行うことができる。本発明の絶縁膜は、前述にようにウエットプロセスで成膜し、熱処理により膜硬化を行うと、成膜直後のウエットの状態では膜中に多数のシラノール(SiOH)基が存在しているが、熱処理により、金属アルコキシドBが加水分解・縮合反応して形成される無機成分が、化学結合や水素結合を介してポリ(ジオルガノ)シロキサンAを架橋する。
【0035】
本発明の表面平坦性絶縁膜の基材は、特に選ばないが、例えば、ステンレス鋼(SUS304、SUS430、SUS316等)、普通鋼、メッキ鋼、銅、アルミ、ニッケル、チタン、シリコンなど導電性基材が挙げられる。また、前記基材の形状は、特に選ばないが、例えば、板状、箔状等が挙げられる。
【実施例】
【0036】
次に、本願発明者等が実際に行った試験の内容及び結果について説明する。
(実施例1)
ポリ(ジオルガノ)シロキサンAとしては、ポリジメチルシロキサン(末端基はシラノールである)を使用し、金属アルコキシドBとしては、チタニウムテトライソプロポキシドを使用した。表1に、作製条件として、ポリジメチルシロキサンの質量平均分子量Mw、金属アルコキシドB1モルに対するポリ(ジオルガノ)シロキサンAのモル比A/B、有機溶媒Cの種類、有機溶媒Cに100gに対する水の溶解度、ポリ(ジオルガノ)シロキサンA1モルに対する有機溶媒Cのモル比C/Aを示している。塗布溶液は、金属アルコキシドの化学改質剤として3-オキソブタン酸エチルとチタニウムテトライソプロポキシドを2:1モル比で混合し、前記混合物にポリジメチルシロキサンを加える。更に、前記混合物に有機溶媒を加えた後、加水分解させるためのHOを添加して作製した。ここで、添加したHOは、金属アルコキシド1モルに対して1.9モルである。表1のNo.24の比較例では、出発原料として10モルのジメチルジメトキシシランと10モルのテトラエトキシシランの混合物から有機修飾シリケート膜を作製した。前記混合物に、20モルのエタノールを加えて良く撹拌し、その後、撹拌しながら、2モルの酢酸と100モルの水を混合した酢酸水溶液を滴下し加水分解を行った。この様にして得た溶液に200モルのエタノールを加えて最終的な塗布溶液とした。
【0037】
前記手順で作製した塗布溶液を、SUS430基板上に3mm/secの引き上げ速度でディップコーティングを行った。コーティング後に150℃と200℃でそれぞれ10min乾燥し、300℃で6hr熱処理を行って、絶縁膜を作製した。前記絶縁膜の表面を電子顕微鏡で観察し、相分離による凹凸の有無及び膜表面状態を確認した。膜のヤング率は、CSM社製Nano Hardness Testerにて測定した。膜表面の平坦性Rqについては、触針式表面粗さ測定器(東京精密 Surfcom 575A-3D)にて触針半径5μmで行った。膜厚の測定は走査型電子顕微鏡(JEOL製 JSM−6500F)にて断面方向から観察し基板上の膜厚を測定した。耐電圧測定は、1cm2の上部電極をつけて電流しきい値1mAで印加電圧を徐々に上げて測定し、1.2kVまで絶縁性で評価した。以上の結果を、表2に示している。実施例であるNo.1−2〜4、1−6〜7、1−11〜15、及び1−18〜21の塗布溶液では、ラメラ状相分離を生じることなく、平坦な表面の絶縁膜が形成でき、耐電圧も十分高いものとなった。比較例No.1−1は、ポリジメチルシロキサンのMwが小さすぎるので、膜厚が大きくならず、耐電圧が低くなった。比較例No.1−5は、モル比A/Bが小さく、無機成分となる金属アルコキシドの量が多くなりすぎ、ラメラ状相分離が起こらなかったが、膜にクラックが発生した。比較例No.1−8は、モル比A/Bが小さく、ポリジメチルシロキサンの量が多くなりすぎ、ラメラ状相分離が生じ、膜表面に図1の写真に示すような凹凸が生じた。このとき、平坦性Rqは測定レンジを超えるほどになり測定不可能となった。比較例No.1−9〜10は、水の溶解度が大きすぎる溶媒を使用しているので、均一な加水分解が起こらず、その結果、成膜後にラメラ状相分離が起こり、膜表面に凹凸が生じた。比較例No.1−16〜17は、水の溶解度が小さすぎる溶媒を使用しているので、均一な加水分解が起こらず、その結果、成膜後にラメラ状相分離が起こり、膜表面に凹凸が生じた。比較例No.1−18は、溶媒の量が多すぎるために、十分な膜厚とならず、耐電圧が低くなった。比較例No.1−22は、溶媒の量が少なすぎるために、均一な加水分解が起こらず、その結果、成膜後にラメラ状相分離が起こり、膜表面に凹凸が生じた。比較例No.1−23は、ポリジメチルシロキサンのMwが大きすぎるために、有機溶媒に溶解せず、塗布溶液を調製できなかった。比較例No.24は、相分離は生じず、一見平坦であったが、平坦性Rqが悪くなった。
【0038】
【表1】

【0039】
【表2】

【0040】
(実施例2)
表3に示したポリ(ジオルガノ)シロキサンA(末端基は、シラノールである)及び金属アルコキシドBを使用した。また、ポリ(ジオルガノ)シロキサンの質量平均分子量Mwも表3に示す。金属アルコキシドB1モルに対するポリ(ジオルガノ)シロキサンAのモル比A/Bは、0.25である。有機溶媒Cとして、n-ブタノール(C4H8OH、n-ブタノール100gに対する水の溶解度は、19.8g/100g)を使用し、ポリ(ジオルガノ)シロキサンA1モルに対する有機溶媒Cのモル比C/Aを20とした。塗布溶液は、金属アルコキシドBの化学改質剤として3-オキソブタン酸エチルと金属アルコキシドを2:1モル比で混合し、前記混合物にポリ(ジオルガノ)シロキサンAを加える。更に、前記混合物にn-ブタノール溶媒を加えた後、加水分解させるためのHOを添加して作製した。ここで、添加したHOは、金属アルコキシド1モルに対して2.0モルである。
【0041】
前記手順で作製した塗布溶液を、SUS430基板上に3mm/secの引き上げ速度でディップコーティングを行った。コーティング後に150℃と200℃でそれぞれ10min乾燥し、300℃で6hr熱処理を行って、絶縁膜を作製した。得られた絶縁膜は、実施例1と同様の方法で評価した。その結果を表4に示す。実施例No.2−1〜11のいずれの塗布溶液を使用しても、ラメラ状相分離が生じず、表面が平坦な絶縁膜となり、耐電圧も良好であった。
【0042】
【表3】

【0043】
【表4】

【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】ポリ(ジオルガノ)シロキサンと金属アルコキシドから形成された有機基修飾シリカ厚膜で、皺状凹凸のある表面の電子顕微鏡写真の一例である。
【図2】ポリ(ジオルガノ)シロキサンと金属アルコキシドから形成される有機基修飾シリカ厚膜で、皺状凹凸表面が形成される過程の概念図である。
【符号の説明】
【0045】
1 有機溶媒
2 ゾル中で分離した無機成分の含有量の多い相PI−rich(ゾルでは相分離状態は目視できない)
3 ゾル中で分離した無機成分の含有の少ない相PI−poor(ゾルでは相分離状態は目視できない)
4 成膜過程で相分離した無機成分の含有量の多い相PI−rich
5 成膜過程で相分離した無機成分の含有量の少ない相PI−poor
6 基材
7 無機成分の含有量の多い相PI−richから形成される凹部
8 無機成分の含有量の少ない相PI−poorから形成される凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
質量平均分子量が900以上10000以下であるポリ(ジオルガノ)シロキサンAと金属アルコキシドBを有機溶媒Cに溶解し、さらに水を添加してなる塗布溶液であって、金属アルコキシドB1モルに対するポリ(ジオルガノ)シロキサンAのモル比A/Bが0.05以上1.5以下であり、前記有機溶媒Cが水酸基を有し、有機溶媒C100gに対する水の溶解度が3〜20gで、ポリ(ジオルガノ)シロキサンA1モルに対する有機溶媒Cのモル比C/Aが0.05〜100であることを特徴とする表面平坦性絶縁膜形成用塗布溶液。
【請求項2】
前記有機溶媒Cの炭素数が、4〜9であることを特徴とする請求項1に記載の表面平坦性絶縁膜形成用塗布溶液。
【請求項3】
前記金属アルコキシドBの金属元素が、3価又は4価の金属元素から選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の表面平坦性絶縁膜形成用塗布溶液。
【請求項4】
前記ポリ(ジオルガノ)シロキサンAに、ジメチルシロキサン構造単位(−[Si(CH−O]−)が、Siモル比で50%〜100%含まれることを特徴する請求項1〜3のいずれか1項に記載の表面平坦性絶縁膜形成用塗布溶液。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の表面平坦性絶縁膜形成用塗布溶液を基材に塗布し、60℃以上200℃以下で乾燥し、その後250℃以上600℃以下で熱処理することを特徴とする表面平坦性絶縁膜被覆基材の製造方法。
【請求項6】
質量平均分子量が900以上10000以下であるポリ(ジオルガノ)シロキサンAと金属アルコキシドBから形成される有機修飾シリケート膜であって、金属アルコキシドA1モルに対するポリ(ジオルガノ)シロキサンBのモル比A/Bが0.05以上1.5以下であり、前記膜厚が1μm以上50μm以下で、前記膜のヤング率が10MPa以上10MPa以下で、前記膜表面の平坦性Rqが20nm以下である膜が被覆されてなることを特徴とする表面平坦性絶縁膜被覆基材。
【請求項7】
前記有機修飾シリケート膜に含まれるポリ(ジオルガノ)シロキサンが、ジメチルシロキサン構造単位(−[Si(CH−O]−)をSiモル比で50%〜100%含むことを特徴する請求項6に記載の表面平坦性絶縁膜被覆基材。

【図2】
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【図1】
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【公開番号】特開2008−255242(P2008−255242A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−99624(P2007−99624)
【出願日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【出願人】(306032316)新日鉄マテリアルズ株式会社 (196)
【Fターム(参考)】