表面形状測定装置および該方法
【課題】本発明は、比較的短時間であってnmオーダで、より高精度に、測定対象物の表面形状を測定し得る表面形状測定装置および該方法を提供する。
【解決手段】本発明の表面形状測定装置SAは、1つの測定箇所MPに対し測定対象物Obの3つ以上、例えば3つの測定点P1〜P3に測定光MLをそれぞれ照射するべく、測定光生成部1Aで生成された測定光MLを測定部2Aで3つに分け、この分けられた3つの測定光ML1〜ML3を測定対象物Obの前記3つの測定点P1〜P3にそれぞれ照射し、それら3つの測定光ML1、ML2、ML3に対応する3つの反射光RL1、RL2、RLにおいて、互いに共通な反射光RL2を用いるように、一対の反射光RL1、RL2および一対の反射光RL2、RL3を光干渉させ、この光干渉によって得られた第1および第2干渉光IL1、IL2に基づいて測定対象物Obの表面形状を求めるものである。
【解決手段】本発明の表面形状測定装置SAは、1つの測定箇所MPに対し測定対象物Obの3つ以上、例えば3つの測定点P1〜P3に測定光MLをそれぞれ照射するべく、測定光生成部1Aで生成された測定光MLを測定部2Aで3つに分け、この分けられた3つの測定光ML1〜ML3を測定対象物Obの前記3つの測定点P1〜P3にそれぞれ照射し、それら3つの測定光ML1、ML2、ML3に対応する3つの反射光RL1、RL2、RLにおいて、互いに共通な反射光RL2を用いるように、一対の反射光RL1、RL2および一対の反射光RL2、RL3を光干渉させ、この光干渉によって得られた第1および第2干渉光IL1、IL2に基づいて測定対象物Obの表面形状を求めるものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高さ方向の変化である測定対象物の表面形状を測定する表面形状測定装置および表面形状測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の測定方法には、例えば、原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscope、AFM)による方法と、干渉計による方法と、レーザ変位計による方法と、光切断法による方法とが知られている。
【0003】
このAFMによる方法は、例えば、非特許文献1に開示されており、カンチレバの先端に取り付けられた探針を測定対象物の表面に接触させてトレースし、または、前記探針を前記測定対象物の表面と一定間隔に保ってトレースし、その際の前記カンチレバの上下方向の変位を測定することで、前記測定対象物の表面形状を求めるものである。
【0004】
また、この干渉計による方法は、例えば、特許文献1や非特許文献2に開示されており、光源から射出された光を分割手段によって例えば2つの光に分割し、それぞれ別々の光路を通った後に、これら2つの光を合波手段によって再び重ね合わせ、光路差によって発生する干渉縞を検出手段によって検出し、これを解析手段によって解析することで、測定対象物の表面形状を求めるものである。このような干渉計による方法には、フィゾー干渉計、マイケルソン干渉計および斜入射干渉計等を用いた方法が知られている。
【0005】
また、このレーザ変位計による方法は、例えば、非特許文献3に開示されており、発光素子によって測定対象物へ光を照射し、その反射光を光位置検出素子(SPD)で検出し、測定対象物の上下方向の変位に応じて光位置検出素子で検出される反射光の検出位置も変位することから、前記反射光の検出位置を解析手段によって解析することで、測定対象物の表面形状を求めるものである。
【0006】
また、この光切断法による方法は、例えば、非特許文献4に開示されており、光源から射出された扇形のシート光を測定対象物に照射し、このシート光を撮影手段によって撮影し、この得られた画像中におけるシート光による輝線を解析手段によって解析することで、測定対象物の表面形状を求めるものである。
【0007】
前記AFMによる方法は、100μm以下の測定範囲で基本的にどのような表面でも測定することが可能であるが、測定に時間がかかってしまう。この点、前記干渉計による方法、レーザ変位計による方法および光切断法による方法は、数msで測定でき、比較的短時間で測定可能である。しかしながら、前記レーザ変位計による方法は、1〜10μm程度の測定範囲であり、また、前記光切断法による方法は、数μm以上の測定範囲であり、これらの測定範囲は、比較的大きく、nmオーダでの表面形状の測定に向いていない。
【0008】
この点、前記干渉計による方法は、数msで測定でき、比較的短時間で測定可能であって、その原理から測定範囲が波長の長さ程度、すなわち数百nmの範囲であり、nmオーダで測定可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−232667号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社、“原子間力顕微鏡(AFM/コンタクトモードAFM)”、[online]、平成22年5月6日検索、インターネット、<http://www.siint.com/products/spm/tec_mode/b_2_afm.htm>
【非特許文献2】フジノン株式会社、“レーザー干渉計活用ガイド”、[online]、平成22年2月19日検索、インターネット、<http://www.fujinon.co.jp/jp/products/laser/kisotisiki2.htm>
【非特許文献3】株式会社キーエンス“変位センサ・変位計”、[online]、平成22年5月6日検索、インターネット、<http://www.sensor.co.jp/henni/jiten/laser02.htm>
【非特許文献4】オプトウエア株式会社、“高速光切断法プロファイル計測システム”、[online]、平成22年2月19日検索、インターネット、<http://www.optoware.co.jp/densen.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、前記干渉計による方法は、前記AFMによる方法や前記レーザ変位計による方法も含めて、センシング部と測定対象物との間の距離を1点で測定し、前記測定対象物の面方向で走査することで、高さ方向(厚さ方向)の変化である前記測定対象物の表面形状(凹凸形状)を測定するものである。このため、前記測定対象物を載置するステージにおける上下動による振動、センシング部等における保持ゆらぎによる振動および測定対象物自体の振動等の振動が測定結果に含まれてしまい、正確に測定することが難しい。前記特許文献1には、検査精度の向上を目的とする光へテロダイン干渉測定方法およびその測定装置が提案されているが、測定光学系と検査テーブルとの間の距離が完全に一定であることが必要であり、前記特許文献1に開示の光へテロダイン干渉測定方法およびその測定装置は、上述の問題点を解消していない。
【0012】
本発明は、上述の事情に鑑みて為された発明であり、その目的は、比較的短時間であってnmオーダで、より高精度に、測定対象物の表面形状を測定することができる表面形状測定装置および表面形状測定方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、種々検討した結果、上記目的は、以下の本発明により達成されることを見出した。すなわち、本発明の一態様にかかる表面形状測定装置は、光を放射する光源部と、測定対象物における3つ以上の複数の測定点に測定光をそれぞれ照射するべく、前記光源部から放射された光を3つ以上の複数の測定光に分ける光分割部と、前記光分割部で分けられた前記複数の測定光を前記測定対象物における前記複数の測定点にそれぞれ照射させ前記複数の測定点でそれぞれ反射された複数の反射光における一対の反射光を光干渉させる複数の光干渉部と、前記複数の光干渉部から出力される複数の干渉光に基づいて前記測定対象物の表面形状を求める検出部とを備え、前記複数の光干渉部における少なくとも1組の光干渉部は、互いに共通な反射光を用いて前記光干渉させることを特徴とする。そして、本発明の他の一態様にかかる表面形状測定方法は、測定対象物における3つ以上の複数の測定点に測定光をそれぞれ照射するべく、光源部で放射された光を3つ以上の複数の測定光に分ける光分割工程と、前記光分割工程で分けられた前記複数の測定光を前記測定対象物における前記複数の測定点にそれぞれ照射させ前記複数の測定点でそれぞれ反射された複数の反射光における一対の反射光を光干渉させる複数の光干渉工程と、前記複数の光干渉工程で得られた複数の干渉光に基づいて前記測定対象物の表面形状を求める検出工程とを備え、前記複数の光干渉工程における少なくとも1組の光干渉工程は、互いに共通な反射光を用いて前記光干渉させることを特徴とする。
【0014】
このような構成の表面形状測定装置および表面形状測定方法は、光干渉計による方法であるので、比較的短時間であってnmオーダで、測定対象物の表面形状を測定することができる。そして、このような構成の表面形状測定装置および表面形状測定方法では、測定対象物における3つ以上の複数の測定点で反射された複数の反射光を光干渉させる際に、互いに共通な反射光を用いて光干渉させる場合を含むので、測定対象物の表面における勾配情報を表す位相情報を持った干渉光が得られる。このため、例えば、測定対象物を載置するステージにおける上下動による振動、測定光学系における保持ゆらぎによる振動および測定対象物自体の振動等の振動が測定結果に及ぼす影響を相殺して略消去することができる。したがって、このような構成の表面形状測定装置および表面形状測定方法は、比較的短時間であってnmオーダで、より高精度に、測定対象物の表面形状を測定することができる。
【0015】
また、他の一態様では、上述の表面形状測定装置において、前記光源部、前記光分割部および前記光干渉部は、光ホモダイン干渉計を構成し、前記検出部は、前記互いに共通な反射光を用いて前記光干渉させた複数の光干渉部から出力される複数の干渉光に基づいて前記複数の干渉光における各位相間の位相差を検出する位相差検出部と、前記位相差検出部で検出された前記位相差に基づいて前記測定対象物の表面形状を演算する演算部とを備えることを特徴とする。
【0016】
このような構成の表面形状測定装置は、光ホモダイン干渉計を備えるので、より簡素に当該表面形状測定装置を製作することができる。
【0017】
また、他の一態様では、上述の表面形状測定装置において、前記光分割部は、前記光源部から放射された光を3つに分ける光分岐部を備え、前記1組の光干渉部は、前記光分岐部で分けられた第1の光における反射光と前記光分岐部で分けられた第2の光における反射光とを光干渉させる第1光干渉部と、前記光分岐部で分けられた第2の光における反射光と前記光分岐部で分けられた第3の光における反射光とを光干渉させる第2光干渉部とを備えることを特徴とする。
【0018】
このような構成の表面形状測定装置は、1個の光分岐部で前記光源部から放射された光を3つに分けるので、より簡素に当該表面形状測定装置を製作することができる。
【0019】
また、他の一態様では、上述の表面形状測定装置において、前記1組の光干渉部は、基材に屈折率の異なる光導波路を形成した光導波路型光学素子であることを特徴とする。
【0020】
このような構成の表面形状測定装置は、光導波路型光学素子で前記1組の光干渉部を構成するので、空気のゆらぎを除去できて温度のゆらぎも低減することができ、干渉光をより安定的に得ることができる。また、このような構成の表面形状測定装置は、光導波路型光学素子で前記1組の光干渉部を構成するので、前記1組の光干渉部を複数の光学素子を組み合わせて構成する場合に較べて、光路をより厳密に製作することができ、組立後の光路調整が不要となり、また小型化が可能となる。
【0021】
また、他の一態様では、これら上述の表面形状測定装置において、前記光分割部の光分岐部は、回折格子であることを特徴とする。また、他の一態様では、これら上述の表面形状測定装置において、前記光分割部の光分岐部は、光導波路型光分岐器であることを特徴とする。
【0022】
このような構成の表面形状測定装置は、回折格子や光導波路型光分岐器で前記光分割部の光分岐部を構成するので、前記光分割部の光分岐部を複数の光学素子を組み合わせて構成する場合に較べて、光路をより厳密に製作することができ、組立後の光路調整が不要となり、また小型化が可能となる。
【0023】
また、他の一態様では、上述の表面形状測定装置において、前記光源部、前記光分割部および前記光干渉部は、光ヘテロダイン干渉計を構成し、前記検出部は、前記互いに共通な反射光を用いて前記光干渉させた複数の光干渉部から出力される複数の干渉光をそれぞれ位相検波し、前記複数の干渉光における各位相間の位相差を検出する検波部と、前記検波部で検出された前記位相差に基づいて前記測定対象物の表面形状を演算する演算部とを備えることを特徴とする。
【0024】
このような構成の表面形状測定装置は、光ヘテロダイン干渉計を備えるので、より高精度に、測定対象物の表面形状を測定することができる。
【0025】
また、他の一態様では、上述の表面形状測定装置において、前記光源部から放射された光を2つに分ける第1光分岐部と、前記第1光分岐部で分けられた2つの光の周波数を互いに異なる周波数に変調する光変調部とをさらに備え、前記光分割部は、前記光変調部で変調された2つの光の一方をさらに2つに分ける第2光分岐部を備え、前記1組の光干渉部は、前記光変調部で変調された他方の光における反射光と前記第2分岐部で分けられた一方の光における反射光とを光ヘテロダイン干渉させる第1光干渉部と、前記光変調部で変調された他方の光における反射光と前記第2分岐部で分けられた他方の光における反射光とを光ヘテロダイン干渉させる第2光干渉部とを備え、前記検出部の検波部は、前記第1および第2光干渉部から出力される第1および第2干渉光をそれぞれ位相検波し、前記第1および第2干渉光における各位相間の位相差を検出することを特徴とする。
【0026】
このような構成では、1つの測定箇所における測定点が3つの光へテロダイン干渉計型の表面形状測定装置が提供される。
【0027】
また、他の一態様では、上述の表面形状測定装置において、前記光変調部で変調された他方の光と前記第2分岐部で分けられた一方の光とを光ヘテロダイン干渉させる第1参照光干渉部と、前記光変調部で変調された他方の光と前記第2分岐部で分けられた他方の光とを光ヘテロダイン干渉させる第2参照光干渉部とをさらに備え、前記検出部の検波部は、前記第1および第2参照光干渉部から出力される第1および第2参照干渉光をそれぞれ位相検波し、前記第1および第2参照干渉光における各位相間の位相差を補正値として検出し、前記第1および第2干渉光における各位相間の位相差を前記補正値で補正し、前記検出部の演算部は、前記検波部で検出され補正された前記位相差に基づいて前記測定対象物の表面形状を演算することを特徴とする。
【0028】
光源部から放射された光を測定対象物の表面まで導光する間において生じる位相ゆらぎが測定結果に大きく影響を及ぼす。このような構成の表面形状測定装置では、第1および第2参照光干渉部によって測定対象物の表面に作用しない干渉光が得られ、この得られた干渉光を用いて補正しつつ測定対象物の表面形状が演算される。このため、このような構成の表面形状測定装置は、前記位相ゆらぎが測定結果に及ぼす影響を消去することができ、さらにより高精度に、測定対象物の表面形状を測定することができる。
【0029】
また、他の一態様では、これら上述の表面形状測定装置において、前記1組の光干渉部は、基材に屈折率の異なる光導波路を形成した光導波路型光学素子であることを特徴とする。
【0030】
このような構成の表面形状測定装置は、光導波路型光学素子で前記1組の光干渉部を構成するので、空気のゆらぎを除去できて温度のゆらぎも低減することができ、干渉光をより安定的に得ることができる。また、このような構成の表面形状測定装置は、光導波路型光学素子で前記1組の光干渉部を構成するので、前記1組の光干渉部を複数の光学素子を組み合わせて構成する場合に較べて、光路をより厳密に製作することができ、組立後の光路調整が不要となり、また小型化が可能となる。
【0031】
また、他の一態様では、上述の表面形状測定装置は、前記光分割部で分けられた各測定光を案内して前記複数の測定点にそれぞれ照射する3つ以上の複数の導光部を備え、前記光源部、前記光分割部、前記導光部、及び、前記検出部は、光ヘテロダイン干渉計を構成すべく、前記光源部が、周期的に周波数が変化する光を放射し、前記一組の光干渉部において光干渉させる各反射光を得るための一組の導光部は、これら一組の導光部のうちの前記一組の光干渉部における互いに共通な反射光が得られる測定点に測定光を照射する特定の導光部と、前記一組の導光部のうちの前記一組の光干渉部における互いに共通な反射光以外の反射光が得られる測定点に測定光を照射する少なくとも2つの他の導光部との間の光路差がそれぞれ所定の光路差となる光路長をそれぞれ有し、前記検出部が、前記互いに共通な反射光を用いて前記光干渉させた複数の光干渉部から出力される複数の干渉光をそれぞれ位相検波し、前記複数の干渉光における各位相間の位相差を検出する検波部と、前記検波部で検出された前記位相差に基づいて前記測定対象物の表面形状を演算する演算部とを有することを特徴とする。そして、本発明の他の一態様にかかる表面形状測定方法は、光ヘテロダイン干渉法を利用して測定対象物の表面形状を測定する方法であって、測定対象物における3つ以上の複数の測定点に測定光をそれぞれ照射するべく、光源部で放射された周期的に周波数が変化する光を3つ以上の複数の測定光に分ける光分割工程と、前記光分割工程で分けられた前記複数の測定光をそれぞれ案内して、前記測定対象物における前記複数の測定点にそれぞれ測定光を同時に照射する3つ以上の導光・照射工程と、前記複数の測定点でそれぞれ反射された複数の反射光における一対の反射光を光干渉させる複数の光干渉工程と、前記複数の光干渉工程で得られる複数の干渉光に基づいて前記測定対象物の表面形状を求める検出工程とを備え、前記複数の光干渉工程における少なくとも1組の光干渉工程は、互いに共通な反射光を用いて前記光干渉させ、前記一組の光干渉工程において光干渉させる各反射光を得るための一組の導光・照射工程 は、これら一組の導光・照射工程のうちの前記一組の光干渉工程における互いに共通な反射光が得られる測定点に測定光を照射する特定の導光・照射工程と、前記一組の導光・照射工程のうちの前記一組の光干渉工程における互いに共通な反射光以外の反射光が得られる測定点に測定光を照射する少なくとも2つの他の導光・照射工程との間の光路差がそれぞれ所定の光路差となるように測定光をそれぞれ案内することを特徴とする。
【0032】
このような構成の表面形状測定装置及び表面形状測定方法は、光へテロダイン法を用いた光干渉計による方法であるので、比較的短時間であってnmオーダで、測定対象物の表面形状を測定することができる。そして、このような構成の表面形状測定装置および表面形状測定方法では、測定対象物における3つ以上の複数の測定点で反射された複数の反射光を光干渉させる際に、互いに共通な反射光を用いて光干渉させる場合を含むので、測定対象物の表面における勾配情報を表す位相情報を持った干渉光が得られる。このため、例えば、測定対象物を載置するステージにおける上下動による振動、測定光学系における保持ゆらぎによる振動および測定対象物自体の振動等の振動が測定結果に及ぼす影響を相殺して略消去することができる。従って、このような構成の表面形状測定装置および表面形状測定方法は、比較的短時間であってnmオーダで、より高精度に、測定対象物の表面形状を測定することができる。
【0033】
しかも、周期的に周波数が変化する光を複数の測定光に分け、これら測定光間に光路差を設けて複数の測定点にそれぞれ照射することにより照射時において各測定光間に周波数差を生じさせ、その反射光同士を光干渉させるいわゆる自己遅延型の光ヘテロダイン干渉方式を用いているため、光源の小型化等を図ると共に光源の選択の自由度を向上させることが可能となる。即ち、通常の光ヘテロダイン干渉方式(周波数が一定の光を2つの測定光に分け、一方の測定光を周波数変調して2つの測定光間に僅かな周波数差を設ける方式)では、光源として例えば、ガスレーザー等の発振周波数が極めて安定したレーザー発振器と光変調素子とを用いなければならないため、光源の選択の自由度が小さく且つ小型化が困難であるが、本発明のようないわゆる自己遅延型の光へテロダイン干渉方式では、例えば、半導体レーザ等を用いることが可能となるため、光源の小型化、光源寿命の向上等を図ることが可能となる。
【0034】
尚、前記所定の光路差は、具体的には、前記特定の導光部から得られた反射光と前記他の導光部から得られた反射光とを光干渉させるためにこれら一対の反射光と対応する測定光間に設けられる周波数の差に基づくものである。これにより、反射光同士を光干渉させて生じたビートから測定対象物の表面形状に関する情報を好適に抽出することができる。
【0035】
また、他の一態様では、前記測定点が測定対象物の表面において一列に3つ以上並び、上述の表面形状測定装置では、前記複数の光干渉部が、前記一列に並ぶ各測定点でそれぞれ反射される複数の反射光における一対の反射光を光干渉させ、前記各導光部では、前記一列の一端に位置する測定点に前記測定光を照射する導光部から前記一列の他端側に位置する測定点に前記測定光を照射する導光部に向けて光路長が順に前記所定の光路差だけ長くなることを特徴とする。尚、測定点が並ぶ列は直線に沿って並ぶ列に限定されず、曲線等に沿って並ぶ列であってもよい。
【0036】
このような構成の表面形状測定装置では、前記列方向に並ぶ測定点間の勾配をそれぞれ一度に測定することができるため、測定点の並ぶ方向に沿った表面形状を一度に測定することができる。その結果、測定対象物の表面形状の測定時間を短縮することが可能となる。
【0037】
また、他の一態様では、前記測定点が測定対象物の表面において一列に3つ以上並び、上述の表面形状測定装置では、前記複数の光干渉部が、前記一列に並ぶ各測定点でそれぞれ反射される複数の反射光における一対の反射光を光干渉させ、前記各導光部では、前記一列の一端に位置する測定点に前記測定光を照射する導光部から前記一列の他端側に位置する測定点に前記測定光を照射する導光部に向けて奇数番目又は偶数番目の導光部の光路長がそれぞれ同じであることを特徴とする。
【0038】
このような構成の表面形状測定装置では、光へテロダイン干渉させる光同士の周波数差を測定対象物における測定点の並ぶ方向において変化させることが可能となる。例えば、奇数番目の導光部の光路長が全て同じである場合に、偶数番目の導光部の光路長を全て同じにすれば、互いに隣り合う測定点に測定光を照射する導光部間の光路差を全て同じにすることができ、これにより、互いに隣り合う測定点に照射される測定光間の周波数差が一定となる。一方、特定の偶数番目の導光部の光路長だけを、これを除く他の偶数番目の導光部の光路長と異なる大きさとすれば、この特定の偶数番目の導光部が測定光を照射する測定点とその隣の測定点とに照射される測定光間の周波数差を、他の隣り合う測定点に照射される測定光間の周波数差と異なる値にすることができる。
【0039】
また、他の一態様の上述の表面形状測定装置では、前記他の導光部は、前記一組の導光部のうちの特定の導光部以外の全ての導光部であることを特徴とする。
【0040】
このような構成の表面形状測定装置では、特定の導光部からの測定光が照射される測定点を基準にして、この測定点と他の導光部からの測定光が照射される各測定点との間の勾配を一度に測定することができる。これにより、例えば、特定の導光部からの測定光が照射される測定点を中心にしてそれを囲むように他の導光部からの測定光が照射されるようにすれば、中心の測定点とその周りを囲む各測定点との間の勾配をそれぞれ一度に測定することができ、これにより、測定対象物の表面方向における所定範囲の表面形状を一度に測定することが可能となる。
【0041】
また、他の一態様では、上述の表面形状測定装置において、前記光分割部と前記複数の導光部とは、基材に屈折率の異なる光導波路を形成した光導波路型光学素子であることを特徴とする。
【0042】
このような構成の表面形状測定装置は、共通の基材に光導波路部材を配設したいわゆる光導波路型光学素子によって前記1組の光干渉部を構成するので、空気のゆらぎを除去できて温度のゆらぎも低減することができ、干渉光をより安定的に得ることができる。しかも、分割後の測定光を複数の光ファイバで導光する場合に比べて、表面形状の測定結果が振動等によるノイズの影響を受け難くなる。
【0043】
また、このような構成の表面形状測定装置は、光導波路型光学素子で前記1組の光干渉部を構成するので、前記1組の光干渉部を複数の光学素子を組み合わせて構成する場合に較べて、光路をより厳密に製作することができ、組立後の光路調整が不要となり、また小型化が可能となる。
【0044】
また、他の一態様では、上述の表面形状測定装置において、前記光分割部の上流で前記光源部から放射された光の一部を参照光として分岐する参照光分岐部と、前記1組の光干渉部から出力される各干渉光と前記参照光とをそれぞれ混合させる参照光混合部とをさらに備え、前記検出部は、前記参照光混合部から出力される複数の参照光混合信号を位相検波して各位相間の位相差を検出する検波部と、前記検波部で検出された前記位相差に基づいて前記測定対象物の表面形状を演算する演算部とを有することを特徴とする。
【0045】
光源部から放射される光には、周期的に周波数を変更することに起因する出力強度変化が含まれ、この出力強度変化は、測定結果に大きく影響を及ぼす。このような構成の表面形状測定装置では、参照光混合部によって干渉光と参照光とを混合することにより光源が放射する光に含まれる出力強度変化が検出され、これを用いて干渉光を補正しつつ測定対象物の表面形状が演算される。このため、このような構成の表面形状測定装置は、前記出力強度変化が測定結果に及ぼす影響を消去することができ、より高精度に測定対象物の表面形状を測定することができる。
【発明の効果】
【0046】
本発明にかかる表面形状測定装置および表面形状測定方法は、比較的短時間であってnmオーダで、より高精度に、測定対象物の表面形状を測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】第1実施形態における表面形状測定装置の構成を示す図である。
【図2】図1に示す表面形状測定装置における測定部の構成を示す図である。
【図3】図1に示す表面形状測定装置における測定部の他の構成を示す図である。
【図4】第2実施形態における表面形状測定装置の構成を示す図である。
【図5】図4に示す表面形状測定装置における測定光生成部の構成を示す図である。
【図6】図4に示す表面形状測定装置における測定部の構成を示す図である。
【図7】1つの測定箇所における複数の測定点の態様を説明するための図である。
【図8】第3実施形態における表面形状測定装置の構成を示す図である。
【図9】図8に示す表面形状測定装置における測定部の構成を示す図である。
【図10】(A)は光源への注入電流の時間変化を示し、(B)は図10(A)の注入電流に対する光源の発振周波数の時間変化を示す図である。
【図11】自己遅延型光ヘテロダイン干渉において光干渉する2つの光の周波数差を説明するための図である。
【図12】図8に示す表面形状測定装置における測定部の他の構成を示す図である。
【図13】第4実施形態における表面形状測定装置の構成を示す図である。
【図14】図13に示す表面形状測定装置における測定部の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
以下、本発明にかかる実施の一形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において同一の符号を付した構成は、同一の構成であることを示し、適宜、その説明を省略する。また、本明細書において、総称する場合には添え字を省略した参照符号で示し、個別の構成を指す場合には添え字を付した参照符号で示す。
【0049】
実施形態にかかる表面形状測定装置は、光を放射する光源部と、測定対象物における3つ以上の複数の測定点に測定光をそれぞれ照射するべく、前記光源部から放射された光を3つ以上の複数の測定光に分ける光分割部と、前記光分割部で分けられた前記複数の測定光を前記測定対象物における前記複数の測定点にそれぞれ照射させ前記複数の測定点でそれぞれ反射された複数の反射光における一対の反射光を光干渉させる複数の光干渉部と、前記複数の光干渉部から出力される複数の干渉光に基づいて前記測定対象物の表面形状を求める検出部とを備え、前記複数の光干渉部における少なくとも1組の光干渉部は、互いに共通な反射光を用いて前記光干渉させるものである。そして、この表面形状測定装置に実装される表面形状測定方法は、測定対象物における3つ以上の複数の測定点に測定光をそれぞれ照射するべく、光源部で放射された光を3つ以上の複数の測定光に分ける光分割工程と、前記光分割工程で分けられた前記複数の測定光を前記測定対象物における前記複数の測定点にそれぞれ照射させ前記複数の測定点でそれぞれ反射された複数の反射光における一対の反射光を光干渉させる複数の光干渉工程と、前記複数の光干渉工程で得られた複数の干渉光に基づいて前記測定対象物の表面形状を求める検出工程とを備え、前記複数の光干渉工程における少なくとも1組の光干渉工程は、互いに共通な反射光を用いて前記光干渉させるものである。以下、このような表面形状測定装置および該方法をより具体的に説明する。
【0050】
(第1実施形態)
第1実施形態における表面形状測定装置は、前記光源部、前記光分割部および前記光干渉部が光ホモダイン干渉計を構成しているものである。
【0051】
図1は、第1実施形態における表面形状測定装置の構成を示す図である。図2は、図1に示す表面形状測定装置における測定部の構成を示す図である。図3は、図1に示す表面形状測定装置における測定部の他の構成を示す図である。
【0052】
第1実施形態の表面形状測定装置SAは、測定対象物Obにおける高さ方向(厚さ方向)の変化である表面形状を測定する装置であり、例えば、図1に示すように、測定光生成部1Aと、測定部2Aと、位相差検出部3Aと、ステージ(載置台)4と、演算制御部5と、入力部6と、出力部7とを備えて構成され、ステージ4によって測定対象物Obを水平方向に移動させることによって測定対象物Obの表面を走査し、所定範囲に亘る測定対象物Obの表面形状を測定するものである。
【0053】
測定光生成部1Aは、所定の可干渉光であって、測定対象物Obの表面形状を光ホモダイン干渉法によって測定するための測定光MLを生成する装置である。測定光MLは、予め設定された所定の波長λ(周波数f)を持つ単波長光であって、予め設定された所定の偏光面を持つ偏光である。このような測定光生成部1Aは、例えば、図1に示すように、光源部1Aaと、光アイソレータ1Abと、偏光子1Acと、出力端子1Adとを備えて構成される。
【0054】
光源部1Aaは、光Lを放射する装置であり、例えば、単波長レーザを備えて構成される。この単波長レーザは、予め設定された所定の波長λ0(周波数f0)を持つ単波長レーザ光Lを発生する装置であり、種々のレーザ装置を用いることができるが、例えば、所定の光パワーで波長約632.8nmのレーザ光Lを出力することができるヘリウムネオンレーザ装置(He−Neレーザ装置)等である。単波長レーザは、波長ロッカ等を備えた周波数安定化レーザ装置が好ましい。光アイソレータ1Abは、その入力端子からその出力端子へ一方向のみに光を透過させる光部品である。光アイソレータ1Abは、光源部1Aaにおける前記単波長レーザのレーザ発振を安定させるために、表面形状測定装置SA内における各光部品(光学素子)の接続部等で生じる反射光(戻り光)が前記単波長レーザに入射することを防止するものである。偏光子(polarizer)1Acは、入射光から所定の偏光面を持つ直線偏光を取り出して射出する光部品(光学素子)であり、例えば、偏光フィルタである。出力端子1Adは、光部品から光を射出するための端子である。これに対し、後述の入力端子2Aa(2Ba)は、光部品へ光を入射するための端子である。各部間の接続には、例えばミラーやレンズ等の個別の光部品(光学素子)から構成される導光手段が用いられてもよいが、本実施形態では、各部間の接続には、後述するように、偏波保持光ファイバ、シングルモード光ファイバおよびマルチモード光ファイバ等の光ファイバが用いられることから、これら入力端子および出力端子には、光ファイバを接続するためのコネクタが用いられる。
【0055】
このような構成の測定光生成部1Aでは、光源部1Aaの単波長レーザから射出されたレーザ光Lは、光アイソレータ1Abを介して偏光子1Acに入射され、所定の偏光面を持つレーザ光(s偏光のレーザ光またはp偏光のレーザ光)の測定光MLとなって、出力端子1Adから射出される。この測定光MLは、測定部2Aに入射される。
【0056】
測定光生成部1Aと測定部2Aとの接続には、本実施形態では、光をその偏波面を保持しながら導光する偏波保持光ファイバや単一モードで光を導光するシングルモード光ファイバ等の光ファイバが用いられる。偏波保持光ファイバは、例えば、PANDAファイバや楕円コア光ファイバ等である。測定光生成部1Aの出力端子1Adから射出した測定光MLは、この光ファイバによって導光され、測定部2Aへ入射する。
【0057】
測定部2Aは、測定光生成部1Aからの測定光MLが入射され、測定光MLを用いた光ホモダイン干渉法によって測定対象物Obにおける表面形状の情報を含む光信号を得る装置である。このような測定部2Aは、1つの測定箇所MPに対する1回の測定光MLの照射による測定において、測定対象物Obにおける3つ以上の複数の測定点P(P1、P2、P3、・・・、Pn)に測定光ML(ML1、ML2、ML3、・・・、MLn)をそれぞれ照射するべく、測定光生成部1Aからの測定光MLを3つ以上の複数の測定光ML1、ML2、ML3、・・・、MLnに分ける光分割部と、この光分割部で分けられた複数の測定光ML1、ML2、ML3、・・・、MLnを測定対象物Obにおける複数の測定点P1、P2、P3、・・・、Pnにそれぞれ照射させこれら複数の測定点P1、P2、P3、・・・、Pnでそれぞれ反射された複数の反射光RL(RL1、RL2、RL3、・・・、RLn)における一対の反射光RLを光干渉させる複数の光干渉部とを備え、これら複数の光干渉部における少なくとも1組の光干渉部は、互いに共通な反射光RLを用いて光干渉させるように構成されている。
【0058】
より具体的には、測定部2Aは、例えば、図2に示すように、入力端子2Aaと、入力側導波路2Abと、回折格子2Acと、対物レンズ2Adと、ハーフミラ2Aeと、集光レンズ2Afと、出力側導波路2Agと、出力端子2Ahとを備えて構成され、これら入力側導波路2Abおよび出力側導波路2Agは、基材2Aiに屈折率の異なる光導波路を形成することによって設けられている。
【0059】
基材2Aiは、所定の屈折率を持つ材料から形成された板状の部材(基板)であり、外周面の所定の各位置に入力端子2Aaおよび出力端子2Ahが配設されている。図2に示す例では、基材2Aiは、略直方体形状であり、その上面上に入力端子2Aaおよび出力端子2Ahが配設されている。この入力端子2Aaには、測定光生成部1Aから延びる前記光ファイバが接続される。
【0060】
そして、基材2Aiには、基材2Aiにおける入力端子2Aaが配設されている位置から延びる入力側導波路2Abが、基材2Aiにおける前記所定の屈折率よりも極僅かだけ(例えば0.3〜3%程度)に大きくすることによって形成されている。この入力側導波路2Abは、入力端子2Aaを介してその一方端(入射端)から入射された、測定光生成部1Aからの測定光MLを導光するものであり、その他方端(射出端)には、回折格子2Acが配設されている。入力側導波路2Abは、図2に示す例では、基材2Aiの上面における入力端子2Aaが配設されている位置から、基材2Aiの一方側面に沿って下面に向い、所定の位置で略弧によって約90度曲がって前記下面に沿うように延びる略L字形状である。
【0061】
回折格子2Acは、入射光を回折する光部品であり、その射出側には、順に、対物レンズ2Adおよびハーフミラ2Aeが配設されている。回折格子2Acは、本実施形態では、入射光が格子に入射されるとこの格子を透過して回折光が射出される透過型の回折格子である。ハーフミラ2Aeは、入射光を光パワーの点で2つの光に分配してそれぞれ射出する光部品であり、この分配された一方の光は、ハーフミラ2Aeを通過してそのままの方向で射出され、この分配された他方の光は、ハーフミラ2Aeで反射されて前記方向と垂直な方向(直交する方向)で射出される。
【0062】
これら入力側導波路2Ab、回折格子2Acおよび対物レンズ2Adは、互いにその光軸が一致するように配置されており、ハーフミラ2Aeは、この光軸に対し鏡面が45度の角度で交差するように配設されている。
【0063】
このような構成の入力端子2Aa、入力側導波路2Ab、回折格子2Ac、対物レンズ2Adおよびハーフミラ2Aeでは、測定光生成部1Aからの測定光MLは、前記光ファイバから入力端子2Aaを介して入力側導波路2Abに入射される。この入力側導波路2Abに入射された測定光MLは、入力側導波路2Ab内を伝播し、入力側導波路2Abによって導光され、回折格子2Acに入射される。この回折格子2Acに入射された測定光は、回折格子2Acによって回折され、複数の回折光(測定光ML)に分けられ、対物レンズ2Adに入射される。本実施形態では、1つの測定箇所MPに対する1回の測定光MLの照射による測定において、測定対象物Obにおける3つの測定点P(P1、P2、P3)に測定光MLをそれぞれ照射するべく、これら複数の回折光のうちの3つの回折光が測定光ML(ML1、ML2、ML3)として利用される。このように用いられる3つの回折光ML1、ML2、ML3には、光パワーの点で相対的により強くまた対称性を有することから、例えば、0次回折光、+1次回折光および−1次回折光が用いられる。対物レンズ2Adに入射した3つの測定光ML1、ML2、ML3は、そのレンズ作用を受け、ハーフミラ2Aeに入射し、このハーフミラ2Aeで反射され、その光路が90度折り曲げられて射出される。ここで、対物レンズ2Adは、ハーフミラ2Aeで光路が90度折り曲げられて射出された3つの測定光ML1、ML2、ML3が互いに平行な平行光となるようなレンズ作用を持つように構成される。
【0064】
そして、ハーフミラ2Aeから射出された3つの平行な測定光ML1、ML2、ML3は、測定部2Aから射出され、測定対象物Obの表面での1つの測定箇所MPにおける3つの測定点P1、P2、P3にそれぞれ照射され、反射される。この測定対象物Obの表面における3つの測定点P1、P2、P3でそれぞれ反射された3つの反射光(反射光の正反射成分)RL(RL1、RL2、RL3)は、測定部2Aに入射され、ハーフミラ2Aeを介して集光レンズ2Afに入射される。
【0065】
集光レンズ2Afは、その光軸が前記入力側導波路2Ab、回折格子2Acおよび対物レンズの光軸と直交するように、かつ、ハーフミラ2Aeの鏡面と−45度(135度、鏡面を基準に反時計回り方向を正方向とした場合)の角度で交差するように配設されている。集光レンズ2Afは、前記3つの反射光RL1、RL2、RL3のそれぞれにレンズ作用を与えるべく、反射光RL(RL1、RL2、RL3)の個数に対応した個数のレンズを備えて構成され、その射出側には、出力側導波路2Agが、基材2Aiの前記所定の屈折率よりも極僅かだけ(例えば0.3〜3%程度)に大きくすることによって形成されている。
【0066】
出力側導波路2Agは、集光レンズ2Afから入射された各反射光RL(図2に示す例では、RL1、RL2、RL3)をそれぞれ導光し、複数の反射光RLにおける一対の反射光RLを光干渉させ、複数の干渉光ILを導光するものである。ここで、本実施形態では、複数の干渉光ILのうちの少なくとも1組の干渉光ILは、互いに共通な反射光RLを用いて光干渉させることによって生成されている。より具体的には、出力側導波路2Agは、大略、基材2Aiの他方側面に沿って形成されており、集光レンズ2Afにおける、3つの反射光RL1、RL2、RL3に対応した3つレンズの射出側からそれぞれ延びる3つの導波路部2Ag−1、2Ag−2、2Ag−3と、中央の導波路部2Ag−2を2つに分岐する分岐部2Ag−4と、分岐部2Ag−4で分岐した一方の導波路部と前記導波路部2Ag−1とを合流する合流部2Ag−5と、分岐部2Ag−4で分岐した他方の導波路部と前記導波路部2Ag−3とを合流する合流部2Ag−6と、合流部2Ag−5から延びて出力端子2Ahに至る導波路部2Ag−7と、合流部2Ag−6から延びて出力端子2Ahに至る導波路部2Ag−8とを備えて構成されている。
【0067】
このような構成のハーフミラ2Ae、集光レンズ2Af、出力側導波路2Agおよび出力端子2Ahでは、図2に示す例では、測定対象物Obの表面における3つの測定点P1、P2、P3でそれぞれ反射された3つの反射光(反射光の正反射成分)RL(RL1、RL2、RL3)は、測定部2Aに入射され、ハーフミラ2Aeを介して集光レンズ2Afの前記各レンズにそれぞれ入射される。集光レンズ2Afの前記各レンズは、各反射光RL1、RL2、RL3をそれぞれ導波路部2Agにおける3つの導波路部2Ag−1、2Ag−2、2Ag−3へ入射させる。すなわち、集光レンズ2Afの前記各レンズは、出力側導波路2Agにおける3つの導波路部2Ag−1、2Ag−2、2Ag−3に対する導波路カップリング用である。中央の導波路部2Ag−2に入射された反射光RL2は、導波路部2Ag−2内を伝播し、導波路部2Ag−2によって導光され、分岐部2Ag−4で分配される。分岐部2Ag−4で分配された一方の反射光RL2(RL2−1)は、合流部2Ag−5に導光され、その他方の反射光RL2(RL2−2)は、合流部2Ag−6に導光される。また、導波路部2Ag−1に入射された反射光RL1は、導波路部2Ag−1内を伝播し、導波路部2Ag−1によって導光され、合流部2Ag−5に導光される。そして、導波路部2Ag−3に入射された反射光RL3は、導波路部2Ag−3内を伝播し、導波路部2Ag−3によって導光され、合流部2Ag−6に導光される。合流部2Ag−5では、上述のように導光された反射光RL2と反射光RL1とが合波され、光ホモダイン干渉されて第1干渉光IL1(=RL1+RL2)が生成される。この第1干渉光IL1は、合流部2Ag−5から導波路部2Ag−7に導光され、導波路部2Ag−7内を伝播し、導波路部2Ag−7によって導光され、出力端子2Ahに入射される。そして、合流部2Ag−6では、上述のように導光された反射光RL2と反射光RL3とが合波され、光ホモダイン干渉されて第2干渉光IL2(=RL2+RL3)が生成される。この第2干渉光IL2は、合流部2Ag−6から導波路部2Ag−8に導光され、導波路部2Ag−8内を伝播し、導波路部2Ag−8によって導光され、出力端子2Ahに入射される。これら第1および第2干渉光IL1、IL2は、測定対象物Obにおける表面形状の情報を含む光信号である。そして、これら第1および第2干渉光IL1、IL2は、出力端子2Ahを介して測定部2Aから位相検波部3Aへ入射される。
【0068】
また、測定部2Aに代え、測定光生成部1Aからの測定光MLが入射され、測定光MLを用いた光ホモダイン干渉法によって測定対象物Obにおける表面形状の情報を含む光信号を得る装置である測定部2Bが用いられてもよい。
【0069】
より具体的には、測定部2Bは、例えば、図3に示すように、入力端子2Baと、入力側導波路2Bbと、対物レンズ2Bcと、ハーフミラ2Aeと、集光レンズ2Beと、出力側導波路2Bfと、出力端子2Bgとを備えて構成され、これら入力側導波路2Bbおよび出力側導波路2Bfは、基材2Bhに屈折率の異なる光導波路を形成することによって設けられている。
【0070】
基材2Bhは、基材2Aiと同様であり、所定の屈折率を持つ材料から形成された略直方体形状の板状の部材(基板)であり、外周面、例えばその上面上の所定の各位置に入力端子2Baおよび出力端子2Agが配設されている。この入力端子2Baには、測定光生成部1Aから延びる前記光ファイバが接続される。
【0071】
そして、基材2Bhには、基材2Bhにおける入力端子2Baが配設されている位置から延びる入力側導波路2Bbが、基材2Bhにおける前記所定の屈折率よりも極僅かだけ(例えば0.3〜3%程度)に大きくすることによって形成されている。この入力側導波路2Bhは、入力端子2Baを介してその一方端から入射された、測定光生成部1Aからの測定光MLを導光するとともに、1つの測定箇所MPにおける複数の測定点Pのそれぞれに測定光MLをそれぞれ照射するべく、測定光生成部1Aからの測定光MLを複数の測定光MLに分岐するものであり、その他方端には、集光レンズ2Bcが配設されている。より具体的には、入力側導波路2Bbは、図3に示す例では、基材2Bhの上面における入力端子2Baが配設されている位置から、基材2Bhの一方側面に沿って下面に向い、所定の位置で略弧によって約90度曲がるように延びる形状である導波路部2Bb−1と、導波路部2Bb−1を3つに分岐する分岐部2Bb−2と、分岐部2Bb−2で分岐した3つの導波路部2Bb−3、2Bb−4、2Bb−5とを備えて構成されている。これら3つの導波路部2Bb−3、2Bb−4、2Bb−5は、射出端で各光軸が互いに平行となるように、かつ、前記下面に沿って分岐部2Bb−2から集光レンズ2Bcに至るように延びる形状である。分岐部2Bb−2で両側にそれぞれ分岐した導波路部2Bb−3および導波路部2Bb−5は、導波路部2Bb−3および導波路部2Bb−5の延びる方向(基材2Bhの面)に対して直交する方向(基材2Bhの面の法線方向)から平面視した場合に、中央の導波路部2Bb−4を対称軸とした線対称となるように形成されている。そして、その中央の導波路部2Bb−4は、分岐部2Bb−2から集光レンズ2Bcに至るまでの光学的距離(光路長)がこれら導波路部2Bb−3〜2Bb−5において互いに等しくなるように、基材2Bhの面内において導波路部2Bb−3および導波路部2Bb−5の延びる方向に対して直交する方向に湾曲(屈曲)する光路冗長部CV1を有している。
【0072】
対物レンズ2Bcは、入力側導波路2Bbで導光され分岐された複数の測定光MLのそれぞれにレンズ作用を与えるべく、複数の測定光MLの個数に対応した個数のレンズを備えて構成され、その射出側には、ハーフミラ2Bdが配設されている。図3に示す例では、対物レンズ2Bcは、入力側導波路2Bbの分岐部2Bb−2で分岐され、前記3つの導波路部2Bb−3〜2Bb−5から射出された各測定光ML1、ML2、RL3のそれぞれにレンズ作用を与えるべく、3つのレンズを備えて構成されている。対物レンズ2Bcの各レンズは、入力側導波路2Bbから射出された各測定光MLを集光し、これら集光した各測定光MLをハーフミラ2Bdに入射させる。
【0073】
ハーフミラ2Bdは、ハーブミラ2Aeと同様であり、分配された一方の光は、ハーフミラ2Bdを通過してそのままの方向で射出され、分配された他方の光は、ハーフミラ2Bdで反射されて前記方向と垂直な方向(直交する方向)で射出される。
【0074】
これら入力側導波路2Bbおよび対物レンズ2Bcは、互いにその光軸が一致するように配置されている。すなわち、入力側導波路2Bbにおける各導波路部2Bb−3〜2Bb−5の各光軸は、それぞれ、対物レンズ2Bcにおける各レンズの各光軸と一致している。そして、ハーフミラ2Bdは、この光軸に対し鏡面が45度の角度で交差するように配設されている。
【0075】
このような構成の入力端子2Ba、入力側導波路2Bb、対物レンズ2Bcおよびハーフミラ2Bdでは、測定光生成部1Aからの測定光MLは、前記光ファイバから入力端子2Baを介して入力側導波路2Bbに入射される。この入力側導波路2Bbに入射された測定光MLは、入力側導波路2Bb内を伝播し、入力側導波路2Abによって導光されるとともに複数に分割され、対物レンズ2Bcに入射される。より具体的には、この入力側導波路2Bbに入射された測定光MLは、導波路部2Bb−1によって導光され、分岐部2Bb−2で複数に、図3に示す例では、1つの測定箇所MPに対する1回の測定光MLの照射による測定において、測定対象物Obにおける3つの測定点P(P1、P2、P3)に測定光MLをそれぞれ照射するべく、3つに分岐され、これら3つに分岐された各測定光は、導波路部2Bb−3〜2Bb−5のそれぞれによって導光され、対物レンズ2Bcの前記各レンズにそれぞれ入射される。ここで、上述したように、両側に位置する導波路部2Bb−3と導波路部2Bb−5とは、中央に位置する導波路部2Bb−4を対象中心として互いに線対称であって、この中央の導波路部2Bb−4は、光路冗長部CVIを有し、これら導波路部2Bb−3〜2Bb−5のそれぞれは、互いに光路長が等しいので、これら導波路部2Bb−3〜2Bb−5のそれぞれを伝播した3つの測定光ML1、ML2、ML3は、互いに同位相で対物レンズ2Bcの各レンズに入射される。対物レンズ2Bcに入射した3つの測定光ML1、ML2、ML3は、そのレンズ作用を受けて集光し、互いに平行光となってハーフミラ2Bdに入射し、このハーフミラ2Bdで反射され、その光路が90度折り曲げられて射出される。
【0076】
そして、ハーフミラ2Bdから射出された3つの平行な測定光ML1、ML2、ML3は、測定部2Bから射出され、測定対象物Obの表面での1つの測定箇所MPにおける3つの測定点P1、P2、P3にそれぞれ照射され、反射される。この測定対象物Obの表面における3つの測定点P1、P2、P3でそれぞれ反射された3つの反射光(反射光の正反射成分)RL(RL1、RL2、RL3)は、測定部2Bに入射され、ハーフミラ2Bdを介して集光レンズ2Beに入射される。
【0077】
集光レンズ2Beは、集光レンズ2Afと同様に構成されており、そして、出力側導波路2Bfも出力側導波路2Agと同様に構成されている。
【0078】
したがって、このような構成のハーフミラ2Bd、集光レンズ2Be、出力側導波路2Bfおよび出力端子2Bgでは、図3に示す例では、測定対象物Obの表面における3つの測定点P1、P2、P3でそれぞれ反射された3つの反射光(反射光の正反射成分)RL(RL1、RL2、RL3)は、測定部2Bに入射され、ハーフミラ2Bdを介して集光レンズ2Beの前記各レンズにそれぞれ入射される。集光レンズ2Beの前記各レンズは、導波路カップリング用であり、各反射光RL1、RL2、RL3をそれぞれ導波路部2Bfにおける3つの導波路部2Bf−1、2Bf−2、2Bf−3へ入射させる。中央の導波路部2Bf−2に入射された反射光RL2は、導波路部2Bf−2内を伝播し、導波路部2Bf−2によって導光され、分岐部2Bf−4で分配される。分岐部2Bf−4で分配された一方の反射光RL2(RL2−1)は、合流部2Bf−5に導光され、その他方の反射光RL2(RL2−2)は、合流部2Bf−6に導光される。また、導波路部2Bf−1に入射された反射光RL1は、導波路部2Bf−1内を伝播し、導波路部2Bf−1によって導光され、合流部2Bf−5に導光される。そして、導波路部2Bf−3に入射された反射光RL3は、導波路部2Bf−3内を伝播し、導波路部2Bf−3によって導光され、合流部2Bf−6に導光される。合流部2Bf−5では、上述のように導光された反射光RL2と反射光RL1とが合波され、光ホモダイン干渉されて第1干渉光IL1(=RL1+RL2)が生成される。この第1干渉光IL1は、合流部2Bf−5から導波路部2Bf−7に導光され、導波路部2Bf−7内を伝播し、導波路部2Bf−7によって導光され、出力端子2Bgに入射される。そして、合流部2Bf−6では、上述のように導光された反射光RL2と反射光RL3とが合波され、光ホモダイン干渉されて第2干渉光IL2(=RL2+RL3)が生成される。この第2干渉光IL2は、合流部2Bf−6から導波路部2Bf−8に導光され、導波路部2Bf−8内を伝播し、導波路部2Bf−8によって導光され、出力端子2Bgに入射される。これら第1および第2干渉光IL1、IL2は、測定対象物Obにおける表面形状の情報を含む光信号である。そして、これら第1および第2干渉光IL1、IL2は、出力端子2Bgを介して測定部2Bから位相検波部3Aへ入射される。
【0079】
図1に戻って、本実施形態では、測定部2A(2B)と位相差検出部3Aとは、シングルモード光ファイバであってもよいが、光軸調整および伝播光の光量における優位性の観点から、複数の伝搬モードを持つマルチモード光ファイバによって接続されている。すなわち、本実施形態では、測定部2A(2B)から射出された複数の干渉光IL、図2および図3に示す例では第1および第2干渉光IL1、IL2は、マルチモード光ファイバによって導光され、位相差検出部3Aへ入射する。
【0080】
位相差検出部3Aは、測定部2A(2B)から射出した複数の干渉光ILであって、互いに共通な反射光RLを用いて光ホモダイン干渉することによって得られた組の干渉光ILに基づいて、これら組における複数の干渉光IL間における位相差△Φを検出するものである。そして、位相差検出部3Aは、この検出した位相差△Φを演算制御部5へ出力する。より具体的には、位相差検出部3Aは、図1に示すように、光電変換部3Aa(3Aa1、3Aa2)と、位相差検出器3Abとを備えて構成される。
【0081】
光電変換部3Aaは、例えばホトダイオード等の、入射光の光量に応じた信号レベルの電気信号に変換して該電気信号を出力する光電変換素子を備えて構成される。光電変換部3Aaは、測定部2A(2B)によって得られる干渉光ILの個数に応じて用意され、測定部2A(2B)からの複数の干渉光ILをそれぞれ受光して、その各光量に応じた信号レベルの各電気信号を各干渉信号Sigとして出力するものである。本実施形態では、前記干渉光ILは、2つであることから、2個の光電変換部3Aa1、3Aa2が用意される。各光電変換部3Aa1、3Aa2のそれぞれは、測定部2A(2B)の出力端子2Ah(2Bg)から射出された2つの第1および第2干渉光IL1、IL2を各マルチモード光ファイバおよび図略の各入力端子を介してそれぞれ受光し、これら各干渉光IL1、IL2の各光量に応じて第1および第2干渉信号Sig1、Sig2をそれぞれ位相差検出器3Abへ出力する。
【0082】
位相差検出器3Abは、光電変換部3Aaから複数の干渉信号Sigが入力され、互いに共通な反射光RLを用いて光ホモダイン干渉することによって得られた組の干渉光ILに関し、複数の干渉信号Sig間の位相差△Φを検出する装置である。図1に示す例では、位相差検出器3Abは、光電変換部3Aa1、3Aa2から第1および第2干渉信号Sig1、Sig2が入力され、これら第1干渉信号Sig1と第2干渉信号Sig2との間における位相差△Φを検出する。そして、位相差検出器3Abは、この検出した位相差△Φを演算制御部5へ出力する。
【0083】
ステージ4は、演算制御部5の制御に従って、測定対象物Obの厚さ方向(高さ方向)に直交する水平方向に測定対象物Obを移動する装置である。ステージ4は、いわゆるX軸方向およびY軸方向に測定対象物Obを移動することができるXYステージであってもよく、また、ステージ4は、測定対象物Obを回転移動することができるとともに、前記回転における径方向にも移動することができる回転ステージであってもよい。測定対象物Obは、表面を有する任意の部材であってよく、例えば、アルミ板材、鉄材および鋼材等の金属材料や半導体ウェハ等である。前記XYステージは、例えば、矩形形状の板状部材の測定に好適であり、前記回転ステージは、例えば、円形形状の板状部材に好適である。
【0084】
演算制御部5は、表面形状測定装置SAの各部を当該機能に応じて制御する回路であり、例えば、表面形状測定装置SAの各部を当該機能に応じて制御するための制御プログラムや測定対象物Obの表面形状を位相差検出部3Aの出力に基づいて求める演算プログラム等の各種の所定のプログラム、および、前記所定のプログラムの実行に必要なデータ等の各種の所定のデータ等を記憶する、不揮発性の記憶素子であるROM(Read Only Memory)や書き換え可能な不揮発性の記憶素子であるEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)、前記所定のプログラムを読み出して実行することによって所定の演算処理や制御処理を行うCPU(Central Processing Unit)、前記所定のプログラムの実行中に生じるデータ等を記憶するいわゆる前記CPUのワーキングメモリとなるRAM(Random Access Memory)、ならびに、これらの周辺回路を備えたマイクロコンピュータ等によって構成される。演算制御部5は、機能的に、形状算出部51と、ステージ制御部52と、光源制御部53とを備えている。
【0085】
ステージ制御部52は、測定対象物Obの表面を走査するべく、測定対象物Obにおける複数の測定箇所MP(1つの測定箇所MPに対し少なくとも3つ以上の測定点Pn)を測定するために、測定対象物Obが厚さ方向に直交する水平方向に移動するように、ステージ4の動作を制御するものである。ここで、測定対象物Obの水平方向の移動は、後述するように、各測定箇所MPの各測定結果を順次に連結することによって測定対象物Obの表面形状を求めていることから、一の測定箇所MPtempにおける測定点Pと、走査によってこの一の測定箇所MPtempの次に測定される測定箇所MPnextにおける測定点Pとは、少なくとも1つの測定点Pで重複するように、ステージ制御部52は、ステージ4の動作を制御する。例えば、ステージ制御部52は、一の測定箇所MPtempにおける測定点P3と、走査によってこの一の測定箇所MPtempの次に測定される測定箇所MPnextにおける測定点P1とが互いに重複するように、ステージ4の動作を制御する。光源制御部53は、光源部1Aの動作を制御するものである。
【0086】
形状算出部51は、測定部2A(2B)によって生成された複数の干渉光ILを位相差検出部3Aで検出した位相差△Φに基づいて、測定対象物Obの表面形状を求めるものである。干渉光ILは、2つの測定点P間における高さ方向(厚さ方向)の差の情報を含む。すなわち、2つの測定点P間における高さ方向に差があると、測定部2A(2B)と測定対象物Obとの間における距離(光路長)がそれぞれ異なることとなり、同一位相の各測定光がこのような互いに距離の異なる光路をそれぞれ伝播して再び干渉すると、その干渉光ILには、各光路間の距離の差(2×(高さ方向の差))に応じた各測定光の位相差に関する成分が含まれる。したがって、この干渉光ILを光電変換することによって得られた干渉信号Sigは、2つの測定点P間における高さ方向(厚さ方向)の差の情報を含んでいる。このため、互いに共通な反射光RLを用いて光ホモダイン干渉することによって得られた組の各干渉光に対応する各干渉信号Sigは、互いに共通な反射光RLに対応する測定点P、および、これと光ホモダイン干渉させられた各反射光RLに対応する各測定点における勾配情報を含む。図1に示す例では、第1干渉光IL1は、測定点P1と測定点P2との間における高さ方向の差H1の情報を含み、第2干渉光IL2は、測定点P2と測定点P3との間における高さ方向の差H2の情報を含む。そして、互いに共通な反射光RL2を用いて光ホモダイン干渉することによって得られた組の第1および第2干渉光IL1、IL2に対応する第1および第2干渉信号Sig1、Sig2は、互いに共通な反射光RL2に対応する測定点P2、および、これと光ホモダイン干渉させられた各反射光RL1、RL3に対応する各測定点P1、P3における勾配情報を含む。このように本実施形態では、1つの測定箇所MPにおける3つの各測定点P1、P2、P3について、その勾配情報が得られる。このため、より具体的には、形状算出部51は、測定箇所MP(図1に示す例では3つの測定点P1、P2、P3)における勾配Grを、Gr=(△Φ×(λ/2)/(2π))/(2つの測定点P間の距離)によって求める。そして、形状算出部51は、走査することによって得られた各測定箇所MPnの各勾配Grを走査順に従って順次に連結することによって、測定対象物Obの表面形状を求める。
【0087】
入力部6は、例えば、測定開始等を指示するコマンドや測定対象物Obの属性情報等のデータを入力するための装置であり、例えば、複数の入力スイッチを備えた操作パネルやキーボード等である。出力部7は、入力部6で受け付けたコマンドやデータおよび測定結果等を出力するための装置であり、例えば、CRTディスプレイ、LCD(液晶ディスプレイ)、有機ELディスプレイおよびプラズマディスプレイ等の表示装置やプリンタ等の印刷装置等である。これら入力部6および出力部7は、演算制御部5に接続される。
【0088】
次に、本実施形態における表面形状測定装置SAの動作について説明する。なお、以下の説明において、各測定箇所MPにおける複数の測定点Pnは、説明の便宜上、図1に示す場合を例として、3個である場合について説明を行う。
【0089】
図略の電源スイッチがオンされると、表面形状測定装置SAが起動され、演算制御部5によって必要な各部の初期化が行われる。そして、例えば半導体ウェハ等の板状体の測定対象物Obがステージ4に載置され、入力部6から測定開始を指示するコマンドを受け付けると、演算制御部5は、測定対象物Obの表面形状の測定を開始する。
【0090】
まず、演算制御部5の光源制御部53は、測定光生成部1Aを駆動し、単波長レーザ光源1Aaに所定のレーザ光を発光させる。この単波長レーザ光源1Aaによる所定のレーザ光の発光により、上述した光学系の作用によって、測定光MLが測定光生成部1Aの出力端子1Adから射出される。
【0091】
続いて、この測定光生成部1Aの出力端子1Adから射出された測定光MLは、前記光ファイバを伝播し、測定部2A(2B)に入射される。この測定部2A(2B)では、この入射された測定光MLから上述した光学系の作用によって第1および第2干渉光IL1、IL2が生成され、出力端子2Ah(2Bg)から射出される。続いて、この測定部2A(2B)の出力端子2Ah(2Bg)から射出された第1および第2干渉光IL1、IL2は、前記マルチモード光ファイバを伝播し、位相差検出部3Aに入射される。この位相差検出部3Aでは、互いに共通な反射光RL2を用いて光ホモダイン干渉することによって得られた組について、これら第1および第2干渉光IL1、IL2に基づいて第1および第2干渉光IL1、IL2間の位相差△Φが検出される。
【0092】
そして、この測定部2A(2B)および位相差検出部3Aがこのような動作を行っている際に、演算制御部5のステージ制御部52は、ステージ4を制御することによって、測定対象物Obをその高さ方向に直交する水平方向に移動させる。例えば、演算制御部5のステージ制御部52は、測定箇所MPにおける複数の測定点Pnが移動方向に沿って並び、この移動方向に沿って互いに隣接する2つの測定点Pn−1、Pnの間隔が等しくなるように、かつ、上述したように、一の測定箇所MPtempにおける測定点P3と、走査(移動)によってこの一の測定箇所MPtempの次に測定される測定箇所MPnextにおける測定点P1とが重複するように、ステージ4を移動させる。
【0093】
続いて、これら各測定箇所MPmの各位相差△Φmが取得されると、演算制御部5の形状算出部51は、上述したように、各測定箇所MPmにおける勾配Grmを求め、走査順に従ってこれら各測定箇所MPmにおける勾配Grmを連結することによって、測定対象物Obの表面形状を求める。
【0094】
続いて、演算制御部5は、この求めた測定対象物Obの表面形状を出力部7に出力し、出力部7は、測定対象物Obの表面形状を表示する。
【0095】
このように動作することによって本実施形態における表面形状測定装置SAおよびこれに実装された表面形状測定方法では、光ホモダイン干渉計による方法であるので、比較的短時間であってnmオーダで、測定対象物Obの表面形状を測定することができる。そして、このような構成の表面形状測定装置SAおよび表面形状測定方法では、測定対象物Obにおける3つ以上の複数の測定点P、図1に示す例では1つの測定箇所MPにおける3つの測定点P1、P2、P3で反射された3つの反射光RL1、RL2、RL3を光ホモダイン干渉させる際に、互いに共通な反射光RL2を用いて光干渉させる場合を含むので、測定対象物Obの表面における勾配情報を表す位相情報を持った第1および第2干渉光IL1、IL2が得られる。このため、例えば、測定対象物Obを載置するステージ4における上下動による振動、測定光学系における保持ゆらぎによる振動および測定対象物Ob自体の振動等の振動が測定結果に及ぼす影響を相殺して略消去することができる。したがって、このような構成の表面形状測定装置SAおよび表面形状測定方法は、比較的短時間であってnmオーダで、より高精度に、測定対象物Obの表面形状を測定することができる。
【0096】
また、上述の本実施形態における表面形状測定装置SAは、測定光生成部1Aおよび測定部2A(2B)は、光ホモダイン干渉計を構成し、互いに共通な反射光RL2を用いて光ホモダイン干渉させることで得られた第1および第2干渉光IL1、IL2に基づいてこれら第1および第2干渉光IL1、IL2間の位相差△Φを検出する位相差検出部3Aと、位相差検出部3Aから出力される第1および第2干渉光IL1、IL2間の位相差△Φに基づいて測定対象物Obの表面形状を演算する演算制御部5とを備えている。このため、このような本実施形態の表面形状測定装置SAは、光ホモダイン干渉計を備えるので、より簡素に当該表面形状測定装置SAを製作することができる。
【0097】
また、上述の本実施形態における表面形状測定装置SAでは、測定部2A(2B)は、光源部1Aから射出された測定光MLを例えば回折格子2Acや分岐部2Bb−2の1つの光分岐手段で3つに分け、この分けられた第1の測定光ML1における反射光RL1とこの分けられた第2の測定光ML2における反射光RL2とを光ホモダイン干渉させ、この分けられた第2の測定光ML2における反射光RL2とこの分けられた第3の測定光ML3における反射光RL3とを光ホモダイン干渉させる。このため、このような本実施形態の表面形状測定装置SAは、測定部2A(2B)における1つの光分岐手段で光源部1Aから放射された光を3つに分けるので、より簡素に当該表面形状測定装置SAを製作することができる。そして、このような本実施形態の表面形状測定装置SAは、前記光分岐手段を回折格子2Acや光導波路型光分岐器である光分岐部2Bb−2で構成するので、前記光分岐手段を複数の光部品(光学素子)を組み合わせて構成する場合に較べて、光路をより厳密に製作することができ、組立後の光路調整が不要となり、また小型化が可能となる。このため、本実施形態における表面形状測定装置SAでは、携帯型とすることも可能となる。
【0098】
また、上述の本実施形態における表面形状測定装置SAでは、測定部2A(2B)は、基材2Ai(2Bh)に屈折率の異なる光導波路を形成した光導波路型光学素子を含む。このため、このような本実施形態の表面形状測定装置SAは、光導波路型光学素子を備えて測定部2A(2B)を構成するので、空気のゆらぎを除去できて温度のゆらぎも低減することができ、干渉光ILをより安定的に得ることができる。また、このような本実施形態の表面形状測定装置SAは、光導波路型光学素子を備えて測定部2A(2B)を構成するので、複数の光部品(光学素子)を組み合わせて構成する場合に較べて、光路をより厳密に製作することができ、組立後の光路調整が不要となり、また小型化が可能となる。このため、この点からも本実施形態における表面形状測定装置SAでは、携帯型とすることも可能となる。
【0099】
次に、別の実施形態について説明する。
【0100】
(第2実施形態)
第1実施形態における表面形状測定装置SAは、光ホモダイン干渉によって干渉光ILを生成し、この干渉光ILに基づいて測定対象物Obの表面形状を測定する装置であるが、第2実施形態における表面形状測定装置SBは、光ヘテロダイン干渉によって干渉光ILを生成し、この干渉光ILに基づいて測定対象物Obの表面形状を測定する装置である。
【0101】
図4は、第2実施形態における表面形状測定装置の構成を示す図である。図5は、図4に示す表面形状測定装置における測定光生成部の構成を示す図である。図6は、図4に示す表面形状測定装置における測定部の構成を示す図である。
【0102】
第2実施形態の表面形状測定装置SBは、測定対象物Obにおける高さ方向(厚さ方向)の変化である表面形状を測定する装置であり、例えば、図4に示すように、測定光生成部1Bと、測定部2Cと、位相検波部3Bと、ステージ(載置台)4と、演算制御部5と、入力部6と、出力部7とを備えて構成され、ステージ4によって測定対象物Obを水平方向に移動させることによって測定対象物Obの表面を走査し、所定範囲に亘る測定対象物Obの表面形状を測定するものである。
【0103】
測定光生成部1Bは、所定の可干渉光であって、測定対象物Obの表面形状を光ヘテロダイン干渉法によって測定するための測定光MLを生成する装置である。測定光MLは、予め設定された所定の波長λ(周波数f)を持つ単波長光であって、予め設定された所定の偏光面を持つ偏光である。測定光MLは、測定対象物Obを両面から光ヘテロダイン干渉法によって測定するために、互いに波長(周波数)の異なる2つの第1および第2測定光MLf1、MLf2を備えている。このような測定光生成部1Bは、例えば、図5に示すように、光源部1Baと、光アイソレータ1Bbと、光分岐部1Bcと、偏光子1Bd、1Bgと、光波長シフタ1Be、1Bh、2出力端子1Bf、1Biとを備えて構成される。
【0104】
光源部1Baは、光Lを放射する装置であり、例えば、第1実施形態の光源部1Aaと同様な単波長レーザを備えて構成される。光アイソレータ1Bbは、第1実施形態の光アイソレータ1Abと同様な光部品である。光分岐部1Bcは、入射光を光パワーの点で2つの光に分配してそれぞれ射出する光部品であり、例えば、ハーフミラ(半透鏡)等の微少光学素子形光分岐結合器や、溶融ファイバの光ファイバ形光分岐結合器や、光導波路形光分岐結合器等を利用することができる。光分岐部1Bcは、本実施形態では、ハーフミラが用いられている。偏光子1Bd、1Bgは、第1実施形態の偏光子1Acと同様な光部品である。光波長シフタ1Be、1Bhは、入射光の波長をシフトして(入射光の周波数を変化させて)入射光の波長(周波数)と異なる波長(周波数)の光を生成する光部品であり、例えば、音響光学効果を利用することによって入射光の波長をシフトする音響光学変調器(acoustoopticmodulator)等が用いられる。出力端子1Bf、1Biは、光部品から光を射出するための端子であり、例えば、第1実施形態の出力端子1Adと同様な、光ファイバを接続するためのコネクタである。
【0105】
光分岐部1Bcで分岐される一方の光に関し、これら光源部1Ba、光アイソレータ1Bb、光分岐部1Bc、偏光子1Bd、波長シフタ1Beおよび出力端子1Bfは、互いに光軸を一致させて、光の伝播方向に従ってこの順で配設されるとともに、光分岐部1Bcで分岐される他方の光に関し、これら光源部1Ba、光アイソレータ1Bb、光分岐部1Bc、偏光子1Bg、波長シフタ1Bhおよび出力端子1Biは、互いに光軸を一致させて、光の伝播方向に従ってこの順で配設される。
【0106】
このような測定光生成部1Bでは、光源部1Baの単波長レーザから射出されたレーザ光Lは、光アイソレータ1Bbを介して光分岐部1Bcに入射され、第1および第2レーザ光L1、L2の2つに分配される。第1レーザ光L1は、偏光子1Bdに入射され、所定の偏光面を持つレーザ光(s偏光のレーザ光またはp偏光のレーザ光)となって、波長シフタ1Beに入射される。この所定の偏光面を持つレーザ光は、光波長シフタ1Beによってその波長(周波数)がシフト(変更)され、所定の周波数f1を持つ測定光MLf1となって出力端子1Beから射出される。この測定光MLf1は、測定部2Cに入射される。一方、第2レーザ光Lは、偏光子1Bgに入射され、所定の偏光面を持つレーザ光(s偏光のレーザ光またはp偏光のレーザ光)となって、波長シフタ1Bhに入射される。この所定の偏光面を持つレーザ光は、光波長シフタ1Bhによってその波長(周波数)がシフト(変更)され、所定の周波数f2(≠f1)を持つ測定光MLf2となって出力端子1Biから射出される。この測定光MLf2は、測定部2Cに入射される。周波数変更後(波長シフト後)における測定光MLf1の周波数f1と測定光MLf2の周波数f2との周波数差△fは、特に限定されないが、光ヘテロダイン干渉法によって干渉させる観点から、例えば、数十kHz〜数MHz程度の値である。
【0107】
なお、本実施形態では、第1レーザ光L1から生成された所定の偏光面を持つ前記レーザ光および第2レーザ光L2から生成された所定の偏光面を持つ前記レーザ光のそれぞれを波長シフタ1Be、1Bhによってそれぞれ波長シフトしたが、光ヘテロダインによって干渉させるために、測定光MLf1の周波数f1と測定光MLf2の周波数f2との間に、所定の周波数差△fが有ればよいので、測定光生成部1Bは、一方の前記レーザ光のみを波長シフトする構成であってもよい。
【0108】
測定光生成部1Bと測定部2Cとの接続には、第1実施形態における測定光生成部1Aと測定部2Aとの接続と同様に、光ファイバが用いられる。測定光生成部1Bの各出力端子1Bf、1Biから射出した測定光MLf1、MLf2は、2本の光ファイバによってそれぞれ導光され、測定部2Cへ入射する。
【0109】
測定部2Cは、測定光生成部1Bからの各測定光ML(MLf1、MLf2)が入射され、これら測定光MLf1、MLf2を用いた光ヘテロダイン干渉法によって測定対象物Obにおける表面形状の情報を含む光信号を得る装置である。このような測定部2Cは、1つの測定箇所MPに対する1回の測定光ML(MLf1、MLf2)の照射による測定において、測定対象物Obにおける3つ以上の複数の測定点P(P1、P2、P3、・・・、Pn)に測定光ML(ML1、ML2、ML3、・・・、MLn)をそれぞれ照射するべく、測定光生成部1Bからの測定光MLを3つ以上の複数の測定光ML1、ML2、ML3、・・・、MLnに分ける光分割部と、この光分割部で分けられた複数の測定光ML1、ML2、ML3、・・・、MLnを測定対象物Obにおける複数の測定点P1、P2、P3、・・・、Pnにそれぞれ照射させこれら複数の測定点P1、P2、P3、・・・、Pnでそれぞれ反射された複数の反射光RL1、RL2、RL3、・・・、RLn)における一対の反射光RLを光干渉させる複数の光干渉部とを備え、これら複数の光干渉部における少なくとも1組の光干渉部は、互いに共通な反射光RLを用いて光干渉させるように構成されている。
【0110】
ここで、本実施形態では、光干渉は、光ヘテロダイン干渉であるので、前記一対の反射光RLは、互いに周波数の異なる2つの測定光MLf1、MLf2が測定対象物Obの表面で反射した光である必要があり、さらに、本実施形態では、前記組の中では、互いに共通な反射光RLが用いられる。したがって、この互いに共通な反射光RLを測定光MLf1が測定対象物Obの表面で反射した光とすると、これと光ヘテロダイン干渉する反射光RLは、測定光MLf2が測定対象物Obの表面で反射した光となる。このため、光分割部は、前記互いに共通な反射光RLを得るための測定光MLf1ではなく、測定光MLf2を複数の測定光MLf2に分割することになる。また、この互いに共通な反射光RLを測定光MLf2が測定対象物Obの表面で反射した光とすると、これと光ヘテロダイン干渉する反射光RLは、測定光MLf1が測定対象物Obの表面で反射した光となる。このため、光分割部は、前記互いに共通な反射光RLを得るための測定光MLf2ではなく、測定光MLf1を複数の測定光MLf1に分割することになる。
【0111】
より具体的には、測定部2Cは、例えば、図6に示すように、光分岐部2Caと、入力端子2Cbと、入力側導波路2Ccと、対物レンズ2Cdと、ハーフミラ2Cfと、集光レンズ2Cg、2Cjと、出力側導波路2Chと、出力端子2Ciと、参照側導波路2Ckと、参照出力端子2Clとを備えて構成され、これら入力側導波路2Cc、出力側導波路2Chおよび参照側導波路2Ckは、基材2Cmに屈折率の異なる光導波路を形成することによって設けられている。
【0112】
光分岐部2Caは、1つの測定箇所MPに対する1回の測定光ML(MLf1、MLf2)の照射による測定において、測定対象物Obにおける3つ以上の複数の測定点P(P1、P2、P3、・・・、Pn)に測定光ML(ML1、ML2、ML3、・・・、MLn)をそれぞれ照射するべく、測定光生成部1Bからの測定光MLを3つ以上の複数の測定光ML1、ML2、ML3、・・・、MLnに分配する光学素子である。そして、本実施形態では、上述したように、光干渉が光へテロダイン干渉であることから、光分岐部2Caは、前記互いに共通な反射光RLを得るための測定光MLf2(または測定光MLf1)ではなく、測定光MLf1(または測定光MLf2)を複数の測定光MLf1に分配するものである。光分岐部2Caは、光導波路を形成することで基材2Cmに設けられてもよいが、本実施形態では、個別の光学素子、例えば、溶融ファイバの光ファイバ形光分岐結合器が用いられている。図6に示す例では、光分岐部2Caは、測定光MLf1を導光する光ファイバにおける射出端部分に設けられた、前記光ファイバを溶融ファイバによって2つに分ける光ファイバ分岐部2Ca−1と、光ファイバ分岐部2Ca−1で分岐した2つの光ファイバ2Ca−2、2Ca−3aと、測定光MLf1を導光する光ファイバにおける射出端部分に設けられた光ファイバ2Ca−4とを備えて構成され、これら光ファイバ2Ca−2〜2Ca−4では、前記互いに共通な反射光RLを得るための測定光MLf2を導光する光ファイバ2Ca−4が中央に位置し、測定光MLf1を導光する2つの光ファイバ2Ca−2、2Ca−3が光ファイバ2Ca−4の両側に位置するように、入力端子2Cbに接続される。なお、光ファイバ分岐部2Ca−1と光ファイバ2Ca−2、2Ca−3とは、例えば、測定光MLf2を導光する光ファイバにおける射出端部分に接続される光ファイバ形光分岐結合器であってもよく、また例えば、測定光MLf2を導光する光ファイバにおける前記射出端部分そのものを光ファイバ形光分岐結合器に加工したものであってもよい。そして、光ファイバ2Ca−4は、例えば、測定光MLf2を導光する光ファイバにおける射出端部分に接続される光ファイバであってもよく、また例えば、測定光MLf2を導光する光ファイバにおける射出端部分そのものであってもよい。
【0113】
基材2Cmは、所定の屈折率を持つ材料から形成された板状の部材(基板)であり、外周面の所定の各位置に入力端子2Cb、出力端子2Ciおよび参照出力端子2Clが配設されている。図6に示す例では、基材2Cmは、略直方体形状であり、その上面上に入力端子2Cb、出力端子2Ciおよび参照出力端子2Clが配設されている。この入力端子2Cbには、上述のように、光分岐部2Caにおける各光ファイバ2Ca−2〜2Ca−4がそれぞれ接続される。
【0114】
そして、基材2Cmには、基材2Cmにおける入力端子2Cbが配設されている位置から延びる入力側導波路2Ccが、基材2Cmにおける前記所定の屈折率よりも極僅かだけ(例えば0.3〜3%程度)に大きくすることによって形成されている。この入力側導波路2Ccは、入力端子2Cbを介してその一方端から入射された、測定光生成部1Bからの測定光ML(MLf1、MLf2)を導光するものであり、その他方端には、対物レンズ2Cdが配設されている。入力側導波路2Ccは、図6に示す例では、基材2Cmの上面における入力端子2Cbが配設されている位置から、基材2Cmの一方側面に沿って下面に向い、所定の位置で略弧によって約90度曲がって前記下面に沿うように延びる略L字形状である。そして、入力側導波路2Ccは、光分岐部2Caから射出される測定光MLf1、MLf2の個数に応じた個数を備えている。図6に示す例では、配列順に、光分岐部2Caの光ファイバ2Ca−2で導光される測定光MLf1、光分岐部2Caの光ファイバ2Ca−4で導光される測定光MLf2および光分岐部2Caの光ファイバ2Ca−3で導光される測定光MLf1の3つであることから、入力側導波路2Ccは、3つの導波路部2Cc−1〜2Cc−3を備えて構成されている。光分岐部2Caの光ファイバ2Ca−2は、入力端子2Cbを介して導波路部2Cc−1に接続され、光分岐部2Caの光ファイバ2Ca−4は、入力端子2Cbを介して導波路部2Cc−2に接続され、そして、光分岐部2Caの光ファイバ2Ca−3は、入力端子2Cbを介して導波路部2Cc−3に接続される。これら入力側導波路2Ccにおける3つの導波路部2Cc−1〜2Cc−3は、前記約90度曲がる部分では平行ではないが、大略、互いに平行に並設されている。そして、これら3つの導波路部2Cc−1〜2Cc−3は、入力端子2Cbに接続される入射端から対物レンズ2Cdに接続される射出端に至るまでの光学的距離(光路長)が互いに等しくなるように、前記約90度に曲がる部分において内側に位置する導波路部2Cc−1および導波路部2Cc−2には、基材2Cmの面内において入力側導波路2Ccの延びる方向に対して直交する方向に湾曲(屈曲)する光路冗長部CV2−1、CV2−2がそれぞれ設けられている。そして、最内側の導波路部2Cc−1に設けられる光路冗長部CV2−1は、中央の導波路部2Cc−2に設けられる光路冗長部CV−1よりも光学的距離(光路長)が長い。
【0115】
対物レンズ2Cdは、入力側導波路2Ccで導光された複数の測定光MLf1、MLf2のそれぞれにレンズ作用を与えるべく、複数の測定光MLf1、MLf2の個数に対応した個数のレンズを備えて構成され、その射出側には、ハーフミラ2Cfが配設されている。図6に示す例では、対物レンズ2Cdは、入力側導波路2Ccにおける3つの導波路部2Cc−1〜2Cc−3から射出された各測定光MLf1、MLf2、MLf1のそれぞれにレンズ作用を与えるべく、3つのレンズを備えて構成されている。対物レンズ2Cdの各レンズは、入力側導波路2Ccにおける3つの導波路部2Cc−1〜2Cc−3から射出された各測定光MLf1、MLf2、MLf12を集光し、これら集光した各測定光MLf1、MLf2、MLf1をハーフミラ2Cfに入射させる。
【0116】
ハーフミラ2Cfは、入射光を光パワーの点で2つの光に分配してそれぞれ射出する光部品であり、この分配された一方の光は、ハーフミラ2Cfを通過してそのままの方向で射出され、この分配された他方の光は、ハーフミラ2Cfで反射されて前記方向と垂直な方向(直交する方向)で射出される。
【0117】
これら入力側導波路2Ccおよび対物レンズ2Cdは、互いにその光軸が一致するように配置されており、ハーフミラ2Cfは、この光軸に対し鏡面が45度の角度で交差するように配設されている。
【0118】
このような構成の光分岐部2Ca、入力端子2Cb、入力側導波路2Cc、対物レンズ2Cdおよびハーフミラ2Cfでは、測定光生成部1Bからの測定光ML(MLf1、MLf2)は、光分岐部2Caの光ファイバ分岐部2Ca−1で一方の測定光MLf1が分配され、光分岐部2Caにおける3つの光ファイバ2Ca−2〜2Ca−4から入力端子2Cbを介して入力側導波路2Ccにおける3つの導波路部2Cc−1〜2Cc−3にそれぞれ入射される。この入力側導波路2Ccにおける各導波路部2Cc−1〜2Cc−3に入射された測定光ML1(MLf1)、ML2(MLf2)、ML3(MLf1)は、各導波路部2Cc−1〜2Cc−3内をそれぞれ伝播し、各導波路部2Cc−1〜2Cc−3によってそれぞれ導光され、対物レンズ2Cdの各レンズにそれぞれ入射される。対物レンズ2Cdに入射した3つの測定光ML1、ML2、ML3は、そのレンズ作用を受け、ハーフミラ2Cfに入射される。このハーフミラ2Cfでは、これら3つの測定光ML1、ML2、ML3は、2つに分配され、この分配された一方の光は、ハーフミラ2Cfを通過してそのままの方向で射出され、この分配された他方の光は、ハーフミラ2Cfで反射され、その光路が90度折り曲げられて射出される。ここで、対物レンズ2Cdは、ハーフミラ2Cfを通過してそのままの方向で射出された3つの測定光ML1、ML2、ML3が互いに平行な平行光となるとともに、ハーフミラ2Cfで光路が90度折り曲げられて射出された3つの測定光ML1、ML2、ML3が互いに平行な平行光となるようなレンズ作用を持つように構成される。
【0119】
ハーフミラ2Cfを通過してそのままの方向で射出された、3つの平行な測定光ML1、ML2、ML3は、集光レンズ2Cjに入射される。
【0120】
そして、ハーフミラ2Cfで反射されハーフミラ2Cfから射出された3つの平行な測定光ML1、ML2、ML3は、測定部2Cから射出され、測定対象物Obの表面での1つの測定箇所MPにおける3つの測定点P1、P2、P3にそれぞれ照射され、反射される。この測定対象物Obの表面における3つの測定点P1、P2、P3でそれぞれ反射された3つの反射光(反射光の正反射成分)RL(RL1、RL2、RL3)は、測定部2Cに入射され、ハーフミラ2Cfを介して集光レンズ2Cgに入射される。反射光RL1は、測定光MLf1が測定点P1で反射した光であり、周波数f1である。反射光RL2は、測定光MLf2が測定点P2で反射した光であり、周波数f2である。そして、反射光RL3は、測定光MLf1が測定点P3で反射した光であり、周波数f1である。
【0121】
集光レンズ2Cgは、第1実施形態における集光レンズ2Afや集光レンズ2Beと同様であり、その光軸が前記入力側導波路2Ccおよび対物レンズCdの光軸と直交するように、かつ、ハーフミラ2Cfの鏡面と−45度(135度)の角度で交差するように配設されている。集光レンズ2Cgは、複数の反射光RL(図6に示す例では3つの反射光RL1、RL2、RL3)のそれぞれにレンズ作用を与えるべく、反射光RL(RL1、RL2、RL3)の個数に対応した個数のレンズ(この例では3つのレンズ)を備えて構成され、その射出側には、出力側導波路2Chが、基材2Cmの前記所定の屈折率よりも極僅かだけ(例えば0.3〜3%程度)に大きくすることによって形成されている。
【0122】
出力側導波路2Chは、第1実施形態における出力側導波路2Agや出力側導波路2Bfと同様であり、集光レンズ2Cgから入射された各反射光RL(図6に示す例では、RL1、RL2、RL3)をそれぞれ導光し、複数の反射光RLにおける一対の反射光RLを光干渉させ、複数の干渉光ILを導光するものである。ここで、本実施形態では、複数の干渉光ILのうちの少なくとも1組の干渉光ILは、互いに共通な反射光RLを用いて光干渉させることによって生成されている。より具体的には、出力側導波路2Chは、第1実施形態における出力側導波路2Agや出力側導波路2Bfと同様であり、3つの導波路部2Ch−1、2Ch−2、2Ch−3と、分岐部2Ch−4と、合流部2Ch−5、2Ch−6と、導波路部2Ch−7、導波路部2Ch−8とを備えて構成されている。
【0123】
このような構成のハーフミラ2Cf、集光レンズ2Cg、出力側導波路2Chおよび出力端子2Ciでは、図6に示す例では、測定対象物Obの表面における3つの測定点P1、P2、P3でそれぞれ反射された3つの反射光(反射光の正反射成分)RL(RL1、RL2、RL3)は、測定部2Cに入射され、ハーフミラ2Cfを介して集光レンズ2Cgの前記各レンズにそれぞれ入射される。集光レンズ2Cgの前記各レンズは、各反射光RL1、RL2、RL3をそれぞれ導波路部2Chにおける3つの導波路部2Ch−1、2Ch−2、2Ch−3へ入射させる。すなわち、集光レンズ2Cgの前記各レンズは、出力側導波路2Chにおける3つの導波路部2Ch−1、2Ch−2、2Ch−3に対する導波路カップリング用である。中央の導波路部2Ch−2に入射された反射光RL2は、導波路部2Ch−2内を伝播し、導波路部2Ch−2によって導光され、分岐部2Ch−4で分配される。分岐部2Ch−4で分配された一方の反射光RL2(RL2−1)は、合流部2Ch−5に導光され、その他方の反射光RL2(RL2−2)は、合流部2Ch−6に導光される。また、導波路部2Ch−1に入射された反射光RL1は、導波路部2Ch−1内を伝播し、導波路部2Ch−1によって導光され、合流部2Ch−5に導光される。そして、導波路部2Ch−3に入射された反射光RL3は、導波路部2Ch−3内を伝播し、導波路部2Ch−3によって導光され、合流部2Ch−6に導光される。合流部2Ch−5では、上述のように導光された反射光RL2(周波数f2)と反射光RL1(周波数f1)とが合波され、光ヘテロダイン干渉されて第1干渉光IL1(=RL1+RL2)が生成される。この第1干渉光IL1は、合流部2Ch−5から導波路部2Ch−7に導光され、導波路部2Ch−7内を伝播し、導波路部2Ch−7によって導光され、出力端子2Ciに入射される。そして、合流部2Ch−6では、上述のように導光された反射光RL2(周波数f2)と反射光RL3(周波数f1)とが合波され、光ヘテロダイン干渉されて第2干渉光IL2(=RL2+RL3)が生成される。この第2干渉光IL2は、合流部2Ch−6から導波路部2Ch−8に導光され、導波路部2Ch−8内を伝播し、導波路部2Ch−8によって導光され、出力端子2Ciに入射される。これら第1および第2干渉光IL1、IL2は、測定対象物Obにおける表面形状の情報を含む光信号である。そして、これら第1および第2干渉光IL1、IL2は、出力端子2Ciを介して測定部2Cから位相検波部3Bへ入射される。
【0124】
集光レンズ2Cjは、その光軸が前記入力側導波路2Ccおよび対物レンズCdの光軸と一致するように配設されている。集光レンズ2Cjは、ハーフミラ2Cfをそのまま通過した複数の測定光ML(図6に示す例では、3つの測定光ML1、ML2、ML3)のそれぞれにレンズ作用を与えるべく、測定光ML(ML1、RL2、RL3)の個数に対応した個数のレンズ(この例では3つのレンズ)を備えて構成され、その射出側には、参照側導波路2Ckが、基材2Cmの前記所定の屈折率よりも極僅かだけ(例えば0.3〜3%程度)に大きくすることによって形成されている。ハーフミラ2Cfをそのまま通過した前記3つの測定光ML1、ML2、ML3は、参照光MLref1、MLref2、MLref3とされる。
【0125】
参照側導波路2Ckは、集光レンズ2Cjから入射された各参照光MLref(図6に示す例では、MLref1、MLref2、MLref3)をそれぞれ導光し、前記複数の干渉光ILに対応するように、複数の参照光MLrefにおける一対の参照光MLrefを光干渉させ、複数の参照干渉光ILrefを導光するものである。ここで、本実施形態では、複数の干渉光ILのうちの少なくとも1組の干渉光ILは、互いに共通な反射光RLを用いて光干渉させることによって生成されているので、これに対応するように、複数の参照干渉光ILrefのうちの少なくとも1組の参照干渉光ILrefは、互いに共通な参照光RLrefを用いて光干渉させることによって生成されている。より具体的には、参照側導波路2Ckは、大略、基材2Cmの前記下面に沿うように延び、所定の位置で略弧によって約90度曲がって他方側面に沿って前記上面にまで延びる略L字形状であり、集光レンズ2Cjにおける、3つの参照光MLref1、MLref2、MLref3に対応した3つレンズの射出側からそれぞれ延びる3つの導波路部2Ck−1、2Ck−2、2Ck−3と、中央の導波路部2Ck−2を2つに分岐する分岐部2Ck−4と、分岐部2Ck−4で分岐した一方の導波路部と前記導波路部2Ck−1とを合流する合流部2Ck−5と、分岐部2Ck−4で分岐した他方の導波路部と前記導波路部2Ck−3とを合流する合流部2Ck−6と、合流部2Ck−5から延びて参照出力端子2Clに至る導波路部2Ck−7と、合流部2Ck−6から延びて出力端子2Clに至る導波路部2Ck−8とを備えて構成されている。
【0126】
このような構成のハーフミラ2Cf、集光レンズ2Cj、参照側導波路2Ckおよび参照出力端子2Clでは、ハーフミラ2Cfをそのまま通過した複数の参照光MLref(図6に示す例ではMLref1、MLref2、MLref3)は、集光レンズ2Cjの前記各レンズにそれぞれ入射される。図6に示す例では、集光レンズ2Cjの前記各レンズは、各参照光MLref1、MLref2、MLref3をそれぞれ導波路部2Ckにおける3つの導波路部2Ck−1、2Ck−2、2Ck−3へ入射させる。すなわち、集光レンズ2Cjの前記各レンズは、参照側導波路2Ckにおける3つの導波路部2Ck−1、2Ck−2、2Ck−3に対する導波路カップリング用である。中央の導波路部2Ck−2に入射された参照光MLref2は、導波路部2Ck−2内を伝播し、導波路部2Ck−2によって導光され、分岐部2Ck−4で分配される。分岐部2Ck−4で分配された一方の参照光MLref2(MLref2−1)は、合流部2Ck−5に導光され、その他方の参照光MLref2(MLref2−2)は、合流部2Ck−6に導光される。また、導波路部2Ck−1に入射された参照光MLref1は、導波路部2Ck−1内を伝播し、導波路部2Ck−1によって導光され、合流部2Ck−5に導光される。そして、導波路部2Ck−3に入射された参照光MLref3は、導波路部2Ck−3内を伝播し、導波路部2Ck−3によって導光され、合流部2Ck−6に導光される。合流部2Ck−5では、上述のように導光された参照光MLref2(周波数f2)と参照光MLref1(周波数f1)とが合波され、光ヘテロダイン干渉されて第1参照干渉光ILref1(=MLref1+MLref2)が生成される。この第1参照干渉光ILref1は、合流部2Ck−5から導波路部2Ck−7に導光され、導波路部2Ck−7内を伝播し、導波路部2Ck−7によって導光され、参照出力端子2Clに入射される。そして、合流部2Ck−6では、上述のように導光された参照光MLref2(周波数f2)と参照光MLref3(周波数f1)とが合波され、光ヘテロダイン干渉されて第2参照干渉光ILref2(=MLref2+MLref3)が生成される。この第2参照干渉光ILref2は、合流部2Ck−6から導波路部2Ck−8に導光され、導波路部2Ck−8内を伝播し、導波路部2Ck−8によって導光され、参照出力端子2Clに入射される。これら第1および第2参照干渉光ILref1、ILref2は、前記第1および第2干渉光IL1、IL2からノイズを除去するべく、前記第1および第2干渉光IL1、IL2を補正するための光信号である。そして、これら第1および第2参照干渉光ILref1、ILref2は、参照出力端子2Clを介して測定部2Cから位相検波部3Bへ入射される。
【0127】
図4に戻って、第1実施形態と同様に、測定部2Cと位相検波部3Bとは、シングルモード光ファイバであってもよいが、光軸調整および伝播光の光量における優位性の観点から、マルチモード光ファイバによって接続されている。すなわち、本実施形態では、測定部2Cから射出された複数の干渉光ILおよびこれに対応する複数の参照干渉光ILref、図4および図6に示す例では第1および第2干渉光IL1、IL2ならびに第1および第2参照干渉光ILref1、ILref2は、マルチモード光ファイバによって導光され、位相検波部3Bへ入射する。
【0128】
位相検波部3Bは、測定部2Cから射出した複数の干渉光ILおよび複数の参照干渉光ILrefを位相検波し、複数の参照干渉光ILrefを用いることによってノイズを除去しつつ、互いに共通な反射光RLを用いて光ヘテロダイン干渉することによって得られた組の干渉光間における位相差△Φを検出するものである。そして、位相検波器3Bは、この検出した位相差△Φを演算制御部5へ出力する。より具体的には、位相検波部3Bは、図4に示すように、干渉光用の光電変換部3Ba(3Ba1、3Ba2)と、参照干渉光用の光電変換部3Bb(3Bb1、3Bb2)と、干渉光用の位相検波器3Bcと、参照干渉光用の位相検波器3Bdと、補正部3Beとを備えて構成される。
【0129】
光電変換部3Ba、3Bbは、例えばホトダイオード等の、入射光の光量に応じた信号レベルの電気信号に変換して該電気信号を出力する光電変換素子を備えて構成される。光電変換部3Baは、測定部2Cによって得られる干渉光ILの個数に応じて用意され、測定部2Cからの複数の干渉光ILをそれぞれ受光して、その各光量に応じた信号レベルの各電気信号を各干渉信号Sigとして出力するものである。本実施形態では、前記干渉光ILは、2つであることから、2個の光電変換部3Ba1、3Ba2が用意される。各光電変換部3Ba1、3Ba2のそれぞれは、測定部2Cの出力端子2Ciから射出された2つの第1および第2干渉光IL1、IL2を各マルチモード光ファイバおよび図略の各入力端子を介してそれぞれ受光し、これら各干渉光IL1、IL2の各光量に応じて第1および第2干渉信号Sig1、Sig2をそれぞれ位相検波器3Bcへ出力する。同様に、光電変換部3Bbは、測定部2Cによって得られる参照干渉光ILrefの個数に応じて用意され、測定部2Cからの複数の参照干渉光ILrefをそれぞれ受光して、その各光量に応じた信号レベルの各電気信号を各参照干渉信号Refとして出力するものである。本実施形態では、前記参照干渉光ILrefは、2つであることから、2個の光電変換部3Bb1、3Bb2が用意される。各光電変換部3Bb1、3Bb2のそれぞれは、測定部2Cの参照出力端子2Clから射出された2つの第1および第2参照干渉光ILref1、ILref2を各マルチモード光ファイバおよび図略の各入力端子を介してそれぞれ受光し、これら各参照干渉光ILref1、ILref2の各光量に応じて第1および第2参照干渉信号Ref1、Ref2をそれぞれ位相検波器3Bdへ出力する。
【0130】
位相検波器3Bcは、光電変換部3Baから複数の干渉信号Sigが入力され、互いに共通な反射光RLを用いて光ヘテロダイン干渉することによって得られた組の干渉光ILに関し、複数の干渉信号Sig間の位相差△Φsを検出する装置である。図4に示す例では、位相検波器3Bcは、光電変換部3Ba1、3Ba2から第1および第2干渉信号Sig1、Sig2が入力され、これら第1干渉信号Sig1と第2干渉信号Sig2との間における位相差△Φsを検出する。そして、位相検波器3Bcは、この検出した位相差△Φsを補正部3Beへ出力する。
【0131】
位相検波器3Bdは、光電変換部3Bbから複数の参照干渉信号Refが入力され、前記互いに共通な参照光MLrefを用いて光ヘテロダイン干渉することによって得られた組の参照干渉光ILrefに関し、複数の参照干渉信号Ref間の位相差△Φrを検出する装置である。この前記互いに共通な参照光MLrefは、前記互いに共通な反射光RLを得るために用いられた測定光MLに対応する参照光MLrefである。図4に示す例では、位相検波器3Bdは、光電変換部3Bb1、3Bb2から第1および第2参照干渉信号Ref1、Ref2が入力され、これら第1参照干渉信号Ref1と第2参照干渉信号Ref2との間における位相差△Φrを検出する。そして、位相検波器3Bdは、この検出した位相差△Φrを補正部3Beへ出力する。
【0132】
補正部3Beは、前記互いに共通な反射光RLを用いて光ヘテロダイン干渉することによって得られた組の干渉光間における位相差△Φsにおけるノイズを除去するべく、前記組の干渉光に対応する複数の参照干渉光の間における位相差△Φrを用いることによって、前記組の干渉光における位相差△Φsを補正するものである。補正部3Beは、例えば、前記組の干渉光間における位相差△Φsと、前記組の干渉光に対応する複数の参照干渉光の間における位相差△Φrとの差を求めることによって、前記補正を行う。
【0133】
そして、ステージ4、演算制御部5、入力部6および出力部7は、それぞれ、第1実施形態の表面形状測定装置SAにおけるステージ4、演算制御部5、入力部6および出力部7と同様であるので、その説明を省略する。
【0134】
次に、本実施形態における表面形状測定装置SBの動作について説明する。なお、以下の説明において、各測定箇所MPにおける複数の測定点Pnは、説明の便宜上、図4に示す場合を例として、3個である場合について説明を行う。
【0135】
図略の電源スイッチがオンされると、表面形状測定装置SBが起動され、演算制御部5によって必要な各部の初期化が行われる。そして、例えば半導体ウェハ等の板状体の測定対象物Obがステージ4に載置され、入力部6から測定開始を指示するコマンドを受け付けると、演算制御部5は、測定対象物Obの表面形状の測定を開始する。
【0136】
まず、演算制御部5の光源制御部53は、測定光生成部1Bを駆動し、単波長レーザ光源1Baに所定のレーザ光を発光させる。この単波長レーザ光源1Aaによる所定のレーザ光の発光により、上述した光学系の作用によって、各測定光MLf1、MLf2が測定光生成部1Bの各出力端子1Bf、1Biからそれぞれ射出される。
【0137】
続いて、この測定光生成部1Bの各出力端子1Bf、1Biからそれぞれ射出された各測定光MLf1、MLf2は、前記各光ファイバをそれぞれ伝播し、測定部2Cに入射される。この測定部2Cでは、この入射された各測定光MLf1、MLf2から上述した光学系の作用によって第1および第2干渉光IL1、IL2ならびに第1および第2参照干渉光ILref1、ILref2がそれぞれ生成され、第1および第2干渉光IL1、IL2は、出力端子2Ciから射出され、第1および第2参照干渉光ILref1、ILref2は、出力端子2Clから射出される。続いて、この測定部2Cの出力端子2Ciから射出された第1および第2干渉光IL1、IL2は、前記マルチモード光ファイバを伝播し、位相検波部3Bに入射される。そして、この測定部2Cの出力端子2Clから射出された第1および第2参照干渉光ILref1、ILref2は、前記マルチモード光ファイバを伝播し、位相検波部3Bに入射される。この位相検波部3Bでは、互いに共通な反射光RL2を用いて光ヘテロダイン干渉することによって得られた組について、これら第1および第2干渉光IL1、IL2の位相検波によって、第1および第2干渉光IL1、IL2間の位相差△Φsが検出されるとともに、これら第1および第2参照干渉光ILref1、ILref2の位相検波によって、第1および第2参照干渉光ILref1、ILref2間の位相差△Φrが検出される。そして、位相検波部3Bは、これら位相差△Φsと位相差△Φrとの差が求められる。例えば、位相検波部3Bは、位相差△Φsから位相差△Φrを減算する。
【0138】
そして、この測定部2Cおよび位相検波部3Bがこのような動作を行っている際に、演算制御部5のステージ制御部52は、ステージ4を制御することによって、測定対象物Obをその高さ方向に直交する水平方向に移動させる。例えば、演算制御部5のステージ制御部52は、測定箇所MPにおける複数の測定点Pnが移動方向に沿って並び、この移動方向に沿って互いに隣接する2つの測定点Pn−1、Pnの間隔が等しくなるように、かつ、上述したように、一の測定箇所MPtempにおける測定点P3と、走査(移動)によってこの一の測定箇所MPtempの次に測定される測定箇所MPnextにおける測定点P1とが重複するように、ステージ4を移動させる。
【0139】
続いて、これら各測定箇所MPmの各位相差△Φmが取得されると、演算制御部5の形状算出部51は、上述したように、各測定箇所MPmにおける勾配Grmを求め、走査順に従ってこれら各測定箇所MPmにおける勾配Grmを連結することによって、測定対象物Obの表面形状を求める。
【0140】
続いて、演算制御部5は、この求めた測定対象物Obの表面形状を出力部7に出力し、出力部7は、測定対象物Obの表面形状を表示する。
【0141】
このように動作することによって本実施形態における表面形状測定装置SBおよびこれに実装された表面形状測定方法では、光ヘテロダイン干渉計による方法であるので、比較的短時間であってnmオーダで、測定対象物Obの表面形状を測定することができる。そして、このような構成の表面形状測定装置SBおよび表面形状測定方法では、測定対象物Obにおける3つ以上の複数の測定点P、図4に示す例では1つの測定箇所MPにおける3つの測定点P1、P2、P3で反射された3つの反射光RL1、RL2、RL3を光ヘテロダイン干渉させる際に、互いに共通な反射光RL2を用いて光干渉させる場合を含むので、測定対象物Obの表面における勾配情報を表す位相情報を持った第1および第2干渉光IL1、IL2が得られる。このため、例えば、測定対象物Obを載置するステージ4における上下動による振動、測定光学系における保持ゆらぎによる振動および測定対象物Ob自体の振動等の振動が測定結果に及ぼす影響を相殺して略消去することができる。したがって、このような構成の表面形状測定装置SBおよび表面形状測定方法は、比較的短時間であってnmオーダで、より高精度に、測定対象物Obの表面形状を測定することができる。
【0142】
また、上述の本実施形態における表面形状測定装置SBでは、測定光生成部1Bおよび測定部2Cは、光ヘテロダイン干渉計を構成し、互いに共通な反射光RL2を用いて光ヘテロダイン干渉させることで得られた第1および第2干渉光IL1、IL2をそれぞれ位相検波し、これら第1および第2干渉光IL1、IL2間の位相差△Φsを検出する位相検波部3Bと、位相検波部3Bから出力される第1および第2干渉光IL1、IL2間の位相差△Φsに基づいて測定対象物Obの表面形状を演算する演算制御部5とを備えている。このため、このような本実施形態の表面形状測定装置SBは、光ヘテロダイン干渉計を備えるので、より高精度に、測定対象物の表面形状を測定することができる。
【0143】
そして、上述の本実施形態における表面形状測定装置SBでは、測定部2Cは、さらに、前記第1および第2干渉光IL1、IL2に対応する第1および第2参照干渉光ILref1、ILref2を生成し、位相検波部3Bは、さらに、第1および第2参照干渉光ILref1、ILref2をそれぞれ位相検波し、これら第1および第2参照干渉光ILref1、ILref2間の位相差△Φrを補正値として検出し、そして、第1および第2干渉光IL1、IL2における各位相間の位相差△Φsを前記補正値△Φrで補正している。そして、演算制御部5の形状算出部51は、この位相検波部3Bで検出され補正された位相差(|△Φs−△Φr|)に基づいて測定対象物Obの表面形状を求めている。光源部1Baから放射された光Lを測定対象物Obの表面まで導光する間において生じる位相ゆらぎが測定結果に大きく影響を及ぼすが、このような本実施形態の表面形状測定装置SBは、前記位相ゆらぎが測定結果に及ぼす影響を消去することができ、さらにより高精度に、測定対象物の表面形状を測定することができる。
【0144】
また、上述の本実施形態のおける表面形状測定装置SBでは、測定部2Cは、基材2Cmに屈折率の異なる光導波路を形成した光導波路型光学素子を含む。このため、このような本実施形態の表面形状測定装置SBは、光導波路型光学素子を備えて測定部2Cを構成するので、空気のゆらぎを除去できて温度のゆらぎも低減することができ、干渉光をより安定的に得ることができる。また、このような本実施形態の表面形状測定装置SBは、複数の光学素子を組み合わせて構成する場合に較べて、光路をより厳密に製作することができ、組立後の光路調整が不要となり、また小型化が可能となる。このため、本実施形態における表面形状測定装置SAでは、携帯型とすることも可能となる。
【0145】
図7は、1つの測定箇所における複数の測定点の態様を説明するための図である。図7(A)は、その第1態様を説明するための図であり、図7(B)は、その第2態様を説明するための図であり、そして、図7(C)は、その第3態様を説明するための図である。
【0146】
なお、上述の第1および第2実施形態では、1つの測定箇所MPにおける複数の測定点が3つである場合について説明したが、1つの測定箇所MPにおける複数の測定点は、3つ以上であれば、任意の個数でよく、例えば、図7(A)および図7(B)に示すように、5つであってもよく、また例えば、図7(C)に示すように、9つであってもよい。
【0147】
図7(A)に示す第1態様では、1つの測定箇所MPにおいて、5つの測定点P1〜P5は、直線状に並び、このような5つの測定点P1〜P5は、例えば、回折格子を用いることによって実現することが可能である。このような場合では、例えば、測定点P1、P2、P3を1組として位置的に互いに隣接する測定点P1、P2の反射光RL1、RL2および位置的に互いに隣接する測定点P2、P3の反射光RL2、RL3をそれぞれ一対とし、測定点P3、P4、P5を1組として位置的に互いに隣接する測定点P3、P4の反射光RL3、RL4および位置的に互いに隣接する測定点P4、P5の反射光RL4、RL5をそれぞれ一対として光干渉が行われる。このように中央に位置する測定点Pの反射光を互いに共通な反射光とし、この共通な反射光とこの測定点Pに隣接して一方側に位置する測定点Pの反射光とで光干渉が行われるとともに、この共通な反射光とこの測定点Pに隣接して他方側に位置する測定点Pの反射光とで光干渉が行われる。
【0148】
図7(B)に示す第2態様では、1つの測定箇所MPにおいて、5つの測定点P1〜P5は、測定点P3を中心に+字状に並び(直線状に並ぶ測定点P1、P3、P5と直線状に並ぶ測定点P2、P3、P4とを直交させて並び)、このような5つの測定点P1〜P5は、例えば、互いに回折方向を直交させて順に配置された2つの回折格子を用いることによって実現することが可能である。このような場合では、例えば、測定点P1、P3、P5を1組として位置的に互いに隣接する測定点P1、P3の反射光RL1、RL3および位置的に互いに隣接する測定点P3、P5の反射光RL3、RL5をそれぞれ一対とし、測定点P2、P3、P4を1組として位置的に互いに隣接する測定点P2、P3の反射光RL2、RL3および位置的に互いに隣接する測定点P3、P4の反射光RL3、RL5をそれぞれ一対として上述と同様に光干渉が行われる。
【0149】
図7(C)に示す第3態様では、1つの測定箇所MPにおいて、9つの測定点P1〜P9は、測定点P5を中心に2次元アレイ状に並び(直線状に並ぶ測定点P1〜P3と直線状に並ぶP4〜P6と直線状に並ぶ測定点P7〜P9とを順に並列させて並び)、このような9つの測定点P1〜P9は、例えば、互いに回折方向を直交させて順に配置された2つの回折格子を用いることによって実現することが可能である。このような場合では、例えば、測定点P1〜P3を1組として位置的に互いに隣接する測定点P1、P2の反射光RL1、RL2および位置的に互いに隣接する測定点P2、P3の反射光RL2、RL3をそれぞれ一対とし、測定点P4〜P6を1組として位置的に互いに隣接する測定点P4、P5の反射光RL4、RL5および位置的に互いに隣接する測定点P5、P6の反射光RL5、RL6をそれぞれ一対とし、測定点P7〜P9を1組として位置的に互いに隣接する測定点P7、P8の反射光RL7、RL8および位置的に互いに隣接する測定点P8、P9の反射光RL8、RL9をそれぞれ一対とし、そして、測定点P2、P5、P8を1組として位置的に互いに隣接する測定点P2、P5の反射光RL2、RL5および位置的に互いに隣接する測定点P5、P8の反射光RL5、RL8をそれぞれ一対として上述と同様に光干渉が行われる。
【0150】
(第3実施形態)
第2実施形態における表面形状測定装置SBは、光へテロダイン干渉によって干渉光ILを生成し、この干渉光ILに基づいて測定対象物Obの表面形状を測定する装置であるが、第3実施形態における表面形状測定装置SCは、いわゆる自己遅延型光ヘテロダイン干渉によって干渉光ILを生成し、この干渉光ILに基づいて測定対象物Obの表面形状を測定する装置である。即ち、第2実施形態における表面形状測定装置SBでは、光源部1Baから射出されたレーザ光Lを第1レーザ光L1と第2レーザ光L2とに分配し、一方のレーザ光(第2レーザ光L2)の波長(周波数)をシフトすることにより第1レーザ光L1と第2レーザ光L2との間に周波数差Δfを生じさせて光干渉させるのに対し、第3実施形態における表面形状測定装置SCでは、光源部1Caから射出された周波数が周期的にシフト(変調)するレーザ光Lsを複数のレーザ光Ls1、Ls2、Ls3、…、Lsnに分配し、これら分配されたレーザ光Ls1、Ls2、Ls3、…、Lsnを互いに異なる光路長を有する導波路部によって案内することにより、レーザ光Ls間に所定の周波数差Δfsを生じさせて光干渉させる。
【0151】
図8は、第3実施形態における表面形状測定装置SCの構成を示す図である。図9は、図8に示す表面形状測定装置SCにおける測定部2Dの構成を示す図である。
【0152】
第3実施形態の表面形状測定装置SCは、測定対象物Obにおける高さ方向(厚さ方向)の変化である表面形状を測定する装置であり、例えば、図8に示すように、測定光生成部1Cと、測定部2Dと、位相検波部3Cと、ステージ(載置台)4と、演算制御部5と、入力部6と、出力部7とを備えて構成され、ステージ4によって測定対象物Obを水平方向に移動させることによって測定対象物Obの表面を走査し、所定範囲に亘る測定対象物Obの表面形状を測定するものである。
【0153】
測定光生成部1Cは、所定の可干渉光であって、測定対象物Obの表面形状を光ヘテロダイン干渉法によって測定するための測定光MLを生成する装置である。測定光MLは、周期的に周波数がシフトする光(図10(B)参照)であって、予め設定された所定の偏光面を持つ偏光である。このような測定光生成部1Cは、例えば、図8に示すように、光源部1Caと、光アイソレータ1Cbと、偏光子1Ccと、出力端子1Cdとを備えて構成される。
【0154】
光源部1Caは、光Lsを放射する装置であり、例えば、半導体レーザを備えて構成される。この半導体レーザは、発振周波数が注入電流に僅かに依存し、局所的な部分においてはこの間に線形性を持つ。この光源部1Caには、注入電流用電源(図示省略)が接続されている。本実施形態の光源部1Caでは、注入電流用電源を制御することにより、発振周波数の時間変化がグラフにおいて鋸刃状となるような発振周波数の変調を行う(図10(A)及び図10(B)参照)。このとき、半導体レーザにおいて注入電流に対して発振周波数が線形依存する領域(変調振幅Δi[A])を用い、この領域における半導体レーザの注入電流に対する発振周波数の変化率をβ[Hz/A]とし、変調周波数をfm[Hz]とする。光アイソレータ1Cbは、第1実施形態の光アイソレータ1Abと同様な光部品である。偏光子1Ccは、第1実施形態の偏光子1Acと同様な光部品である。出力端子1Cdは、光部品から光を射出するための端子であり、例えば、第1実施形態の出力端子1Adと同様な、光ファイバを接続するためのコネクタである。
【0155】
これら光源部1Ca、光アイソレータ1Cb、偏光子1Cc、および出力端子1Cdは、互いに光軸を一致させて、光の伝播方向に従ってこの順で配設される。
【0156】
このような測定光生成部1Cでは、光源部1Caの半導体レーザから射出された周期的に周波数がシフトする(発振周波数の時間変化がグラフにおいて鋸刃状となる(図10(B)参照))レーザ光Lsは、光アイソレータ1Cbを介して偏光子1Ccに入射され、所定の偏光面を持つレーザ光(s偏光のレーザ光またはp偏光のレーザ光)の測定光MLsとなって、出力端子1Cdから射出される。この測定光MLsは、測定部2Dに入射される。
【0157】
測定光生成部1Cと測定部2Dとの接続には、第1実施形態における測定光生成部1Aと測定部2Aとの接続と同様に、光ファイバが用いられる。
【0158】
測定部2Dは、測定光生成部1Cからの測定光MLsが入射され、測定光MLsを用いた自己遅延型光ヘテロダイン干渉法によって測定対象物Obにおける表面形状の情報を含む光信号を得る装置である。このような測定部2Dは、1つの測定箇所MPに対する1回の測定光MLs(MLs1、MLs2、MLs3、・・・、MLsn)の照射による測定において、測定対象物Obの表面において3つ以上の複数の測定点P(P1、P2、P3、・・・、Pn)に測定光ML(MLs1、MLs2、MLs3、・・・、MLsn)をそれぞれ照射するべく、測定光生成部1Cからの測定光MLsを3つ以上の複数の測定光MLs1、MLs2、MLs3、・・・、MLsnに分ける光分割部と、この光分割部で分けられた複数の測定光MLs1、MLs2、MLs3、・・・、MLsnをそれぞれ案内して、測定対象物Obにおける複数の測定点P1、P2、P3、・・・、Pnに測定光をそれぞれ照射する3つ以上の複数の導光部と、測定対象物Obにおける複数の測定点P1、P2、P3、・・・、Pnでそれぞれ反射された複数の反射光RLs(RLs1、RLs2、RLs3、・・・、RLsn)における一対の反射光RLsを光干渉させる複数の光干渉部とを備え、これら複数の光干渉部における少なくとも1組の光干渉部は、互いに共通な反射光RLsを用いて光干渉させるように構成されている。また、前記の1組の光干渉部において干渉させる各反射光RLsを得るための1組の導光部は、これら1組の導光部のうちの前記1組の光干渉部における互いに共通な反射光RLsが得られる測定点Pに測定光MLsを照射する特定の導光部と、前記1組の導光部のうちの前記1組の光干渉部における互いに共通な反射光RLs以外の反射光RLsが得られる測定点Pに測定光MLsを照射する少なくとも2つの他の導光部との間の光路差Δdがそれぞれ所定の光路差となる光路長をそれぞれ有する。
【0159】
より具体的に、測定部2Dは、例えば、図9に示すように、入力端子2Daと、入力側導波路2Dbと、対物レンズ2Dcと、ハーフミラ2Ddと、集光レンズ2Deと、出力側導波路2Dfと、出力端子2Dgとを備えて構成され、これら入力側導波路2Dbおよび出力側導波路2Dfは、基材2Dhに当該基材2Dhと屈折率の異なる光導波路を形成することによって設けられている。
【0160】
基材2Dhは、所定の屈折率を持つ材料から形成された板状の部材(基板)であり、外周面の所定の各位置に入力端子2Daおよび出力端子2Dgが配設されている。図9に示す例では、基材2Dhは、略直方体形状であり、その上面上に入力端子2Daおよび出力端子2Dgが配設されている。この入力端子2Daには、上述のように、測定光生成部1Cから延びる前記光ファイバが接続される。
【0161】
そして、基材2Dhには、基材2Dhにおける入力端子2Daが配設されている位置から延びる入力側導波路2Dbが、基材2Dhにおける前記所定の屈折率よりも極僅かだけ(例えば0.3〜3%程度)大きくすることによって形成されている。この入力側導波路2Dbは、入力端子2Daを介してその一方端から入射された測定光生成部1Cからの測定光MLsを分岐させ、その他方端に配設されている対物レンズ2Dcまで案内する。
【0162】
詳しくは、入力側導波路2Dbは、光分岐部2Db−1、2Db−2と、導波路部2Db−3、2Db−4、2Db−5とを備えて構成されている。
【0163】
光分岐部2Db−1、2Db−2は、入力端子2Daを介して入力側導波路2Db内に入射した測定光生成部1Cからの測定光MLsを複数の測定光MLs(図9に示す例では、MLs1、MLs2、MLs3)に分配し、分配した複数の測定光MLs1、MLs2、MLs3をそれぞれ複数の導波路部2Db−3、2Db−4、2Db−5に入射させる。図9に示す例では、2つの光分岐部2Db−1、2Db−2が測定光MLsを3つの測定光MLs1、MLs2、MLs3に分岐し、これら3つの測定光MLs1、MLs2、MLs3をそれぞれ3つの導波路部2Db−3、2Db−4、2Db−5に入射させる。各導波路部2Db−3、2Db−4、2Db−5は、各光分岐部2Db−1、2Db−2の上流側の入力側導波路2Dbの部位と共同して、入力側導波路部(導光部)2Db−13、2Db−14、2Db−15を構成する。各入力側導波路部2Db−13、2Db−14、2Db−15は、隣り合う測定点Pn、Pn+1に測定光MLsを照射する一対の入力側導波路部間の光路差が所定の光路差Δdとなる光路長をそれぞれ有している。本実施形態の各入力側導波路部2Db−13、2Db−14、2Db−15では、測定対象物Obの表面において一列に並ぶ測定点P1、P2、P3、…、Pnの一端に位置する測定点P1に向けて測定光MLs1を導波する入力側導波路部2Db−13から前記一列の他端側に位置する測定点Pnに測定光MLsを照射する入力側導波路部に向けて光路長が順に長くなっている。このように、複数の入力側導波路部の光路長が順に長くなるように構成されることで、列方向に並ぶ測定点Pn、Pn+1間の勾配をそれぞれ一度に測定することができるため、測定点P1、P2、P3、…、Pnの並ぶ方向に沿った測定対象物Obの表面形状を一度に測定することができる。図9に示す例では、測定光MLs1を導波する入力側導波路部2Db−13よりも測定光MLs2を導波する入力側導波路部2Db−14の法が光路長がΔdだけ長く、測定光MLs2を導波する入力側導波路部2Db−14よりも測定光MLs3を導波する入力側導波路部2Db−15の法が光路長がΔdだけ長くなるように構成されている。即ち、互いに隣り合う測定点P1、P2に照射される測定光MLs1、MLs2を導波する入射側導波路部2Db−13、2Db−14が、これら入射側導波路部2Db−13、2Db−14間の光路差が所定の光路差Δdとなる光路長をそれぞれ有し、且つ、互いに隣り合う測定点P2、P3に照射される測定光MLs2、MLs3を導波する入射側導波路部2Db−14、2Db−15が、これら入射側導波路部2Db−14、2Db−15間の光路差が前記所定の光路差Δdとなる光路長をそれぞれ有する。具体的には、各入力側導波路部2Db−13、2Db−14、2Db−15は、基材2Dhにおいて、共通の面(図9においては紙面)に沿って配設されている。そして、入力側導波路2Db−14は、前記共通の面に沿って湾曲するように延びる光路冗長部DV−1が形成されることで入力側導波路2Db−13よりも光路長がΔdだけ長くなり、入力側導波路2Db−15は、前記共通の面に沿って光路冗長部DV−1よりもさらに大きく湾曲するように延びる光路冗長部DV−2が形成されることで入力側導波路2Db−14よりも光路長がΔdだけ長くなっている。
【0164】
入力側導波路部2Db−13、2Db−14間、及び、入力側導波路部2Db−14、2Db−15間の光路差は、隣り合う測定点P1、P2又はP2、P3で反射された反射光RLs1、RLs2又はRLs2、RLs3同士を出力側導波路2Dfで光干渉させるためにこれら一対の反射光RLs1、RLs2又はRLs2、RLs3と対応する測定光MLs1、MLs2又はMLs2、MLs3間に設けられる周波数の差Δfsに基づくものである。具体的に、光路差Δdは、以下の式(1)によって規定される。
【0165】
Δfs=α・(Δd/C)=β・Δi・fm・(Δd/C) [Hz] ・・・(1)
ここで、Cは測定光MLの進行速度であり、半導体レーザが線形依存する領域におけるΔiは変調振幅(図10(A)参照)であり、βは半導体レーザの注入電流Δiに対する発振周波数の変化率(図10(B)参照)であり、αは時間あたりの測定光周波数の変化率であって、
α=β・Δi・fm [Hz/秒] ・・・(2)
を満たす値である。また、測定光MLsの周波数差Δfsは、後述する位相検波部3Cや演算制御部5における演算等で扱い易い値に設定される。
【0166】
一対の入力側導波路部2Db−13、2Db−14、又は、2Db−14、2Db−15間にこのような光路差Δdを設けることで、各入射側導波路部2Db−13、2Db−14、2Db−15に導波された測定光MLs1、MLs2、又はMLs2、MLs3間には僅かな周波数差Δfsが生じ(例えば、図11参照)、これにより、測定対象物Obの測定箇所MPで反射された反射光RLs1、RLs2、又はRLs2、RLs3同士を光へテロダイン干渉(自己遅延型光へテロダイン干渉)させることが可能となる。
【0167】
尚、各入力側導波路部2Db−13、2Db−14、2Db−15は、前記一列に並ぶ測定点P1、P2、P3、…、Pnの一端に位置する測定点P1に向けて測定光MLs1を導波する入力側導波路部2Db−13から前記一列の他端側に位置する測定点Pnに向けて測定光MLsを導波する入力側導波路部に向けて光路長が順に長くなる構成に限定されない。例えば、各入力側導波路部は、特定の入力側導波路部の光路長を基準として、この特定の入力側導波路部の光路長とこれ以外の他の入力側導波路部の光路長との光路差がそれぞれ上記の周波数の差Δfsとなるように構成されてもよい。図12に示す例では、測定部2Eに3つの入力側導波路部2Eb−13、2Eb−14、2Eb−15が設けられ、2番目(中央)の入力側導波路部(特定の入力側導波路部)2Eb−14に光路冗長部EVを設けることによって、隣り合う測定点Pn、Pn+1に向けて測定光MLsを導波する一対の入力側導波路部2Eb−13、2Eb−14、又は2Eb−14、2Eb−15間に所定の光路差Δdを生じさせている。このように構成することで、測定点P1と測定点P2とに測定光MLs1、MLs2を照射する入力側導波路部2Eb−13、2Eb−14間の光路差Δdと、測定点P2と測定点P3とに測定光MLs2、MLs3を照射する入力側導波路部2Eb−14、2Eb−15間の光路差Δdとを容易且つ確実に一致させることができ、これにより、測定対象物Obの表面形状をより精度よく測定することができる。
【0168】
また、各入力側導波路部は、一列に並ぶ測定点の一端に位置する測定点に向けて測定光を導波する導光部から前記一列の他端側に位置する測定点に向けて測定光を導波する入力側導波部に向けて奇数番目(又は偶数番目)の入力側導波部の光路長がそれぞれ同じになるように構成されてもよい。図7(A)に示す例において、測定点P1、P2、P3に照射する測定光MLs1、MLs2、MLs3を導光する入力側導波路部を1組とし、測定点P3、P4、P5に照射する測定光MLs3、MLs4、MLs5を導光する入力側導波路部を別の1組とする。そして、前記1組の入力側導波路部の測定光MLs2を導光する入力側導波路部(特定の入力側導波路部)の光路長と、測定光MLs1、MLs3を導光する入力側導波路部(他の入力側導波路部)の光路長との光路差がそれぞれ上述の光路差Δdとなるように構成すると共に、前記別の1組の入力側導波路部の測定光MLs4を導光する入力側導波路部(特定の入力側導波路部)の光路長と、測定光MLs3、MLs5を導光する入力側導波路部(他の入力側導波路部)の光路長との光路差がそれぞれ上述の光路差Δdとなるように構成してもよい。
【0169】
この場合、測定点Pの数をさらに増やし、奇数番目の測定点P(2n+1)に照射する測定光MLs(2n+1)を導光する入力側導波路部の光路長を全て同じ第1光路長にし、例えば特定の偶数番目の測定点P6を除く偶数番目の測定点P(2(n+1))に照射する測定光MLs(2(n+1))を導光する入力側導波路部の光路長を第1光路長と異なる第2光路長とし、測定点P6に測定光MLs6を照射する入力側導波路部の光路長だけを第1光路長及び第2光路長と異なる第3光路長とすれば、測定点P6に照射する測定光MLs6を導光する入力側導波路部とその隣の測定点P5、P7に照射する測定光MLs5、MLs7を導光する入力側導波路部との間の光路差Δd1を、他の隣り合う測定点Pn、Pn+1に照射する測定光MLsn、MLsn+1を導光する入力側導波路部間の各光路差Δd2と異なる値にすることができる。即ち、このような構成の表面形状測定装置では、光へテロダイン干渉させる光同士の周波数差を測定対象物Obにおける測定点Pの並ぶ方向において変化させることが可能となる。
【0170】
また、図7(B)に示す例において、測定点P1、P2、P3、P4、P5に照射する測定光MLs1、MLs2、MLs3、MLs4、MLs5を導光する入力側導波路部を1組とし、測定光MLs3を導光する入力側導波路部(特定の入力側導波路部)の光路長と、測定光MLs1、MLs2、MLs4、MLs5を導光する入力側導波路部(他の入力側導波路部)の光路長との光路差がそれぞれ上述の光路差Δdとなるように構成してもよい。このように、特定の入力側導波路部からの測定光MLs3が照射される測定点P3を中心にしてそれを囲むように他の入力側導波路部からの測定光MLs1、MLs2、MLs4、MLs5が照射されるようにすれば、中心の測定点P3とその周りを囲む各測定点P1、P2、P4、P5との間の勾配をそれぞれ一度に測定することができ、これにより、測定対象物Obの表面方向における所定範囲の表面形状を一度に測定することが可能となる。
【0171】
対物レンズ2Dcは、入力側導波路2Dbで導光された複数の測定光MLs1、MLs2、MLs3のそれぞれにレンズ作用を与えるべく、複数の測定光MLs1、MLs2、MLs3の個数に対応した個数のレンズを備えて構成され、その射出側には、ハーフミラ2Ddが配設されている。図9に示す例では、対物レンズ2Dcは、入力側導波路2Dbにおける3つの導波路部2Db−3〜2Db−5から射出された各測定光MLs1、MLs2、MLs3のそれぞれにレンズ作用を与えるべく、3つのレンズを備えて構成されている。対物レンズ2Dcの各レンズは、入力側導波路2Dbにおける3つの導波路部2Db−3〜2Db−5から射出された各測定光MLs1、MLs2、MLs3を集光し、これら集光した各測定光MLs1、MLs2、MLs3をハーフミラ2Ddに入射させる。
【0172】
ハーフミラ2Ddは、入射光を光パワーの点で2つの光に分配してそれぞれ射出する光部品であり、この分配された一方の光は、ハーフミラ2Ddを通過してそのままの方向で射出され、この分配された他方の光は、ハーフミラ2Ddで反射されて前記方向と垂直な方向(直交する方向)で射出される。
【0173】
これら入力側導波路2Dbおよび対物レンズ2Dcは、互いにその光軸が一致するように配置されており、ハーフミラ2Ddは、この光軸に対し鏡面が45度の角度で交差するように配設されている。
【0174】
このような構成の入力端子2Da、入力側導波路2Db、対物レンズ2Dcおよびハーフミラ2Ddでは、測定光生成部1Cからの測定光MLsは、入力端子2Daを介して入力側導波路2Dbに入射し、光分岐部2Db−1で分配され、一方の測定光MLs3は、導波路部2Db−5内を伝播し、当該導波路部2Db−5によって導光され、対物レンズ2Dcの対応するレンズに入射される。また、光分岐部2Db−1で分配された他方の測定光MLsは、光分岐部2Db−2で分配され、一方の測定光MLs2は、導波路部2Db−4内を伝播し、当該導波路部2Db−4によって導光され、対物レンズ2Dcの対応するレンズに入射される。また、光分岐部2Db−2で分配された他方の測定光MLs1は、導波路部2Db−3内を伝播し、当該導波路部2Db−3によって導光され、対物レンズ2Dcの対応するレンズに入射される。
【0175】
このとき、各導波路部2Db−3〜2Db−5では、互いに光路長が異なるため、対物レンズ2Dcに入射した各測定光MLs1、MLs2、又は、MLs2、MLs3間には所定の周波数差Δfsが生じている。
【0176】
ハーフミラ2Ddを通過してそのままの方向で射出された、3つの平行な測定光MLs1、MLs2、MLs3は、集光レンズ2Deに入射される。
【0177】
そして、ハーフミラ2Ddで反射されハーフミラ2Ddから射出された3つの平行な測定光MLs1、MLs2、MLs3は、測定部2Dから射出され、測定対象物Obの表面での1つの測定箇所MPにおける3つの測定点P1、P2、P3にそれぞれ照射され、反射される。この測定対象物Obの表面における3つの測定点P1、P2、P3でそれぞれ反射された3つの反射光(反射光の正反射成分)RLs(RLs1、RLs2、RLs3)は、測定部2Dに入射され、ハーフミラ2Ddを介して集光レンズ2Deに入射される。反射光RLs1は、測定光MLs1が測定点P1で反射した光である。反射光RLs2は、測定光MLs2が測定点P2で反射した光である。そして、反射光RLs3は、測定光MLs3が測定点P3で反射した光である。
【0178】
集光レンズ2Deは、第1実施形態における集光レンズ2Afや集光レンズ2Beと同様であり、その光軸が前記入力側導波路2Dbおよび対物レンズ2Dcの光軸と直交するように、かつ、ハーフミラ2Ddの鏡面と−45度(135度)の角度で交差するように配設されている。集光レンズ2Deは、複数の反射光RLs(図9に示す例では3つの反射光RLs1、RLs2、RLs3)のそれぞれにレンズ作用を与えるべく、反射光RLs(RLs1、RLs2、RLs3)の個数に対応した個数のレンズ(この例では3つのレンズ)を備えて構成され、その射出側には、出力側導波路2Dfが、基材2Dhの前記所定の屈折率よりも極僅かだけ(例えば0.3〜3%程度)大きくすることによって形成されている。
【0179】
出力側導波路2Dfは、第1実施形態における出力側導波路2Agや出力側導波路2Bfと同様であり、集光レンズ2Deから入射された各反射光RLs(図9に示す例では、RLs1、RLs2、RLs3)をそれぞれ導光し、複数の反射光RLsにおける一対の反射光RLsを光干渉させ、複数の干渉光ILsを導光するものである。ここで、本実施形態では、複数の干渉光ILsのうちの少なくとも1組の干渉光ILsは、互いに共通な反射光RLsを用いて光干渉させることによって生成されている。より具体的には、出力側導波路2Dfは、第1実施形態における出力側導波路2Agや出力側導波路2Bfと同様であり、3つの導波路部2Df−1、2Df−2、2Df−3と、1つの分岐部2Df−4と、2つの合流部2Df−5、2Df−6と、2つの導波路部2Df−7、2Df−8とを備えて構成されている。
【0180】
このような構成のハーフミラ2Dd、集光レンズ2De、出力側導波路2Dfおよび出力端子2Dgでは、図9に示す例では、測定対象物Obの表面における3つの測定点P1、P2、P3でそれぞれ反射された3つの反射光(反射光の正反射成分)RLs(RLs1、RLs2、RLs3)は、測定部2Dに入射され、ハーフミラ2Ddを介して集光レンズ2Deの前記各レンズにそれぞれ入射される。集光レンズ2Deの前記各レンズは、各反射光RLs1、RLs2、RLs3をそれぞれ出力側導波路2Dfにおける3つの導波路部2Df−1、2Df−2、2Df−3へ入射させる。すなわち、集光レンズ2Deの前記各レンズは、出力側導波路2Dfにおける3つの導波路部2Df−1、2Df−2、2Df−3に対する導波路カップリング用である。中央の導波路部2Df−2に入射された反射光RLs2は、導波路部2Df−2内を伝播し、導波路部2Df−2によって導光され、分岐部2Df−4で分配される。分岐部2Df−4で分配された一方の反射光RLs2(RLs2−1)は、合流部2Df−5に導光され、その他方の反射光RLs2(RLs2−2)は、合流部2Df−6に導光される。また、導波路部2Df−1に入射された反射光RLs1は、導波路部2Df−1内を伝播し、導波路部2Df−1によって導光され、合流部2Df−5に導光される。そして、導波路部2Df−3に入射された反射光RLs3は、導波路部2Df−3内を伝播し、導波路部2Df−3によって導光され、合流部2Df−6に導光される。合流部2Df−5では、上述のように導光された反射光RLs2と反射光RL1とが合波され、光ヘテロダイン干渉されて第1干渉光ILs1(=RLs1+RLs2)が生成される。この第1干渉光ILs1は、合流部2Df−5から導波路部2Df−7に導光され、導波路部2Df−7内を伝播し、導波路部2Df−7によって導光され、出力端子2Dgに入射される。そして、合流部2Df−6では、上述のように導光された反射光RLs2と反射光RLs3とが合波され、光ヘテロダイン干渉されて第2干渉光ILs2(=RLs2+RLs3)が生成される。この第2干渉光ILs2は、合流部2Df−6から導波路部2Df−8に導光され、導波路部2Df−8内を伝播し、導波路部2Df−8によって導光され、出力端子2Dgに入射される。これら第1および第2干渉光ILs1、ILs2は、測定対象物Obにおける表面形状の情報を含む光信号である。そして、これら第1および第2干渉光ILs1、ILs2は、出力端子2Dgを介して測定部2Dから位相検波部3Cへ入射される。
【0181】
図8に戻って、第1実施形態と同様に、測定部2Dと位相検波部3Cとは、シングルモード光ファイバであってもよいが、光軸調整および伝播光の光量における優位性の観点から、マルチモード光ファイバによって接続されている。すなわち、本実施形態では、測定部2Dから射出された複数の干渉光ILs、図8および図9に示す例では第1および第2干渉光ILs1、ILs2は、マルチモード光ファイバによって導光され、位相検波部3Cへ入射する。
【0182】
位相検波部3Cは、測定部2Dから射出した複数の干渉光ILsを位相検波し、互いに共通な反射光RLsを用いて光ヘテロダイン干渉することによって得られた組の干渉光間における位相差△Φを検出するものである。そして、位相検波部3Cは、この検出した位相差△Φを演算制御部5へ出力する。より具体的には、位相検波部3Cは、図8に示すように、干渉光用の光電変換部3Ca(3Ca1、3Ca2)と、干渉信号用の位相検波器3Cbと、を備えて構成される。
【0183】
光電変換部3Caは、例えばホトダイオード等の、入射光の光量に応じた信号レベルの電気信号に変換して該電気信号を出力する光電変換素子を備えて構成される。光電変換部3Caは、測定部2Dによって得られる干渉光ILsの個数に応じて用意され、測定部2Dからの複数の干渉光ILsをそれぞれ受光して、その各光量に応じた信号レベルの各電気信号を各干渉信号Sigとして出力するものである。本実施形態では、前記干渉光ILsは、2つであることから、2個の光電変換部3Ca1、3Ca2が用意される。各光電変換部3Ca1、3Ca2のそれぞれは、測定部2Dの出力端子2Dgから射出された2つの第1および第2干渉光ILs1、ILs2を各マルチモード光ファイバおよび図略の各入力端子を介してそれぞれ受光し、これら各干渉光ILs1、ILs2の各光量に応じて第1および第2干渉信号Sig1、Sig2をそれぞれ位相検波器3Cbへ出力する。
【0184】
位相検波器3Cbは、光電変換部3Caから複数の干渉信号Sigが入力され、互いに共通な反射光RLsを用いて光ヘテロダイン干渉することによって得られた組の干渉光ILsに関し、複数の干渉信号Sig間の位相差△Φsを検出する装置である。図8に示す例では、位相検波器3Cbは、光電変換部3Ca1、3Ca2から第1および第2干渉信号Sig1、Sig2が入力され、これら第1干渉信号Sig1と第2干渉信号Sig2との間における位相差△Φsを検出する。そして、位相検波器3Cbは、この検出した位相差△Φsを演算部制御部5へ出力する。
【0185】
そして、ステージ4、演算制御部5、入力部6および出力部7は、それぞれ、第1実施形態の表面形状測定装置SAにおけるステージ4、演算制御部5、入力部6および出力部7と同様であるので、その説明を省略する。
【0186】
次に、本実施形態における表面形状測定装置SCの動作について説明する。なお、以下の説明において、各測定箇所MPにおける複数の測定点Pnは、説明の便宜上、図8に示す場合を例として、3個である場合について説明を行う。
【0187】
図略の電源スイッチがオンされると、表面形状測定装置SCが起動され、演算制御部5によって必要な各部の初期化が行われる。そして、例えば半導体ウェハ等の板状体の測定対象物Obがステージ4に載置され、入力部6から測定開始を指示するコマンドを受け付けると、演算制御部5は、測定対象物Obの表面形状の測定を開始する。
【0188】
このとき、演算制御部5の光源制御部53は、測定光生成部1Cを駆動し、半導体レーザ光源1Caに周期的に周波数がシフトするレーザ光を発光させる。この半導体レーザ光源1Caによる所定のレーザ光の発光により、上述した光学系の作用によって、測定光MLsが測定光生成部1Cの出力端子1Cdから射出される。
【0189】
続いて、この測定光生成部1Cの出力端子1Cdから射出された測定光MLsは、前記光ファイバを伝播し、測定部2Dに入射される。この測定部2Dでは、入力側導波路2Dbにおいて、この入射された測定光MLsを光分岐部2Db−1、2Db−2で複数の測定光MLs1、MLs2、MLs3に分岐し、この分岐した各測定光MLs1、MLs2、MLs3を互いに光路長の異なる導波路部2Db−3、2Db−4、2Db−5でそれぞれ伝播させ、導波路部2Db−3、2Db−4、2Db−5によって対物レンズ2Dcに入射させ、各測定点P1、P2、P3に照射する。各測定光MLs1、MLs2、MLs3から上述した光学系の作用によって第1および第2干渉光ILs1、ILs2がそれぞれ生成され、第1および第2干渉光ILs1、ILs2は、出力端子2Dgから射出される。続いて、この測定部2Dの出力端子2Dgから射出された第1および第2干渉光ILs1、ILs2は、前記マルチモード光ファイバを伝播し、位相検波部3Cに入射される。この位相検波部3Cでは、互いに共通な反射光RLs2を用いて自己遅延型光ヘテロダイン干渉することによって得られた組について、これら第1および第2干渉光ILs1、ILs2の位相検波によって、第1および第2干渉光ILs1、ILs2間の位相差△Φsが検出される。
【0190】
そして、この測定部2Dおよび位相検波部3Cがこのような動作を行っている際に、演算制御部5のステージ制御部52は、ステージ4を制御することによって、測定対象物Obをその高さ方向に直交する水平方向に移動させる。例えば、演算制御部5のステージ制御部52は、測定箇所MPにおける複数の測定点Pnが移動方向に沿って一列に並び、この移動方向に沿って互いに隣接する2つの測定点Pn−1、Pnの間隔が等しくなるように、かつ、上述したように、一の測定箇所MPtempにおける測定点P3と、走査(移動)によってこの一の測定箇所MPtempの次に測定される測定箇所MPnextにおける測定点P1とが重複するように、ステージ4を移動させる。
【0191】
続いて、これら各測定箇所MPmの各位相差△Φmが取得されると、演算制御部5の形状算出部51は、上述したように、各測定箇所MPmにおける勾配Grmを求め、走査順に従ってこれら各測定箇所MPmにおける勾配Grmを連結することによって、測定対象物Obの表面形状を求める。
【0192】
続いて、演算制御部5は、この求めた測定対象物Obの表面形状を出力部7に出力し、出力部7は、測定対象物Obの表面形状を表示する。
【0193】
このように動作することによって本実施形態における表面形状測定装置SCおよびこれに実装された表面形状測定方法では、光へテロダイン法を用いた光干渉計による方法であるので、比較的短時間であってnmオーダで、測定対象物Obの表面形状を測定することができる。そして、このような構成の表面形状測定装置SCおよび表面形状測定方法では、測定対象物Obにおける3つ以上の複数の測定点P1、P2、P3、…、Pnで反射された複数の反射光RLs1、RLs2、RLs3を光干渉させる際に、互いに共通な反射光RLs2を用いて光干渉させる場合を含むので、測定対象物Obの表面における勾配情報を表す位相情報を持った干渉光が得られる。このため、例えば、測定対象物Obを載置するステージ4における上下動による振動、測定光学系における保持ゆらぎによる振動および測定対象物自体の振動等の振動が測定結果に及ぼす影響を相殺して略消去することができる。従って、このような構成の表面形状測定装置SCおよび表面形状測定方法は、比較的短時間であってnmオーダで、より高精度に、測定対象物Obの表面形状を測定することができる。
【0194】
しかも、周期的に周波数が変化する測定光MLsを複数の測定光MLs1、MLs2、MLs3、…、MLsnに分け、これら測定光MLs間に光路差Δdを設けて複数の測定点P1、P2、P3、…、Pnにそれぞれ照射することにより照射時において各測定光MLs間に周波数差Δfsを生じさせ、その反射光RLs同士を光干渉させるいわゆる自己遅延型の光ヘテロダイン干渉方式を用いているため、光源部1Caの小型化等を図ると共に光源部1Caの選択の自由度を向上させることが可能となる。即ち、第2実施形態のような通常の光ヘテロダイン干渉方式(周波数が一定の光を2つの測定光に分け、一方の測定光を周波数変調して2つの測定光間に僅かな周波数差を設ける方式)では、光源として例えば、ガスレーザー等の発振周波数が極めて安定したレーザー発振器と光変調素子とを用いなければならないため、光源の選択の自由度が小さく且つ小型化が困難であるが、本発明のようないわゆる自己遅延型の光へテロダイン干渉方式では、例えば、半導体レーザ等を用いることが可能となるため、光源部1Caの小型化、安定性、光源寿命の向上等を図ることが可能となる。
【0195】
(第4実施形態)
第4実施形態における表面形状測定装置SDは、第3実施形態における表面形状測定装置SCと同様に、自己遅延型光ヘテロダイン干渉によって干渉光ILを生成し、この干渉光ILに基づいて測定対象物Obの表面形状を測定する装置であるが、光源から出射された測定光MLsの一部を参照光として干渉光と混合することにより測定精度をより向上させた装置である。
【0196】
図13は、第4実施形態における表面形状測定装置SDの構成を示す図である。図14は、図13に示す表面形状測定装置SDにおける測定部2Dの構成を示す図である。
【0197】
第4実施形態の表面形状測定装置SDは、測定対象物Obにおける高さ方向(厚さ方向)の変化である表面形状を測定する装置であり、例えば、図13に示すように、測定光生成部1Dと、測定部2Fと、位相検波部3Dと、ステージ(載置台)4と、演算制御部5と、入力部6と、出力部7とを備えて構成され、ステージ4によって測定対象物Obを水平方向に移動させることによって測定対象物Obの表面を走査し、所定範囲に亘る測定対象物Obの表面形状を測定するものである。
【0198】
測定光生成部1Dは、第3実施形態の測定光生成部1Cと同様に、光源部1Daと、光アイソレータ1Dbと、偏光子1Dcと、出力端子1Ddとを備えて構成される。光源部1Daは、第3実施形態の光源部1Caと同様な周期的に周波数がシフトする光を発する部品である。光アイソレータ1Dbは、第3実施形態の光アイソレータ1Cbと同様な光部品である。偏光子1Dcは、第3実施形態の偏光子1Ccと同様な光部品である。出力端子1Ddは、第3実施形態の出力端子1Cdと同様な、光ファイバを接続するためのコネクタである。
【0199】
測定光生成部1Dと測定部2Fとの接続には、第3実施形態における測定光生成部1Cと測定部2Dとの接続と同様に、光ファイバが用いられる。この光ファイバの測定部2Fとの接続部位の上流側には、参照光分岐部Crefが設けられている。この参照光分岐部Crefは、光ファイバによって測定部2Fに入射される測定光MLs1の一部を参照光として分岐し、マルチモード光ファイバを通じて位相検波部3Dに入射させる。本実施形態の参照光分岐部Crefには、溶融ファイバの光ファイバ形光分岐結合器が用いられている。図14に示す例では、参照光分岐部Crefは、測定光MLsを導光する光ファイバにおける射出端部分に前記光ファイバを溶融ファイバによって2つに分ける光ファイバ分岐部Cref−1を設け、この光ファイバ分岐部Cref−1に2つの光ファイバCref−2、Cref−3が接続されている。この一方の光ファイバCref−2の他端は測定部2Fに接続され、他方の光ファイバCref−3の他端は位相検波部3Dに接続されている。尚、光ファイバ分岐部Cref−1は、例えば、測定光MLsを導光する光ファイバにおける射出端部分に接続される光ファイバ形光分岐結合器であってもよく、また例えば、測定光MLsを導光する光ファイバにおける前記射出端部分そのものを光ファイバ形光分岐結合器に加工したものであってもよい。
【0200】
測定部2Fは、第3実施形態の測定部2Dと同様の光部品である。図14に示す例では、測定部2Fは、入力端子2Faと、入力側導波路2Fbと、対物レンズ2Fcと、ハーフミラ2Fdと、集光レンズ2Feと、出力側導波路2Ffと、出力端子2Fgとを備えて構成され、これら入力側導波路2Fbおよび出力側導波路2Ffは、基材2Fhに当該基材2Fhと屈折率の異なる光導波路を形成することによって設けられている。
【0201】
そして、入力側導波路2Fbは、第3実施形態の入力側導波路部2Db−13、2Db−14、2Db−15と同様の光導波路である入力側導波路部2Fb−13、2Fb−14、2Fb−15を構成している。また、各入力側導波路部2Fb−13、2Fb−14、2Fb−15は、第3実施形態の入力側導波路部2Db−13、2Db−14、2Db−15と同様に、各導波路部2Fb−3、2Fb−4、2Fb−5と、これら各導波路部2Fb−3、2Fb−4、2Fb−5の上流側の入力側導波路2Fbの部位とにより構成される。
【0202】
また、出力側導波路2Ffは、第3実施形態における出力側導波路2Dfと同様であり、集光レンズ2Feから入射された各反射光RLs(図14に示す例では、RLs1、RLs2、RLs3)をそれぞれ導光し、複数の反射光RLsにおける一対の反射光RLsを光干渉させ、複数の干渉光ILsを導光するものである。ここで、本実施形態では、複数の干渉光ILsのうちの少なくとも1組の干渉光ILsは、互いに共通な反射光RLsを用いて光干渉させることによって生成されている。より具体的には、出力側導波路2Ffは、第3実施形態における出力側導波路2Dfと同様であり、3つの導波路部2Ff−1、2Ff−2、2Ff−3と、1つの分岐部2Ff−4と、2つの合流部2Ff−5、2Ff−6と、2つの導波路部2Ff−7、2Ff−8とを備えて構成されている。
【0203】
位相検波部3Dは、測定部2Fから射出した複数の干渉光ILsを参照光MLsrefを用いて補正しつつ位相検波し、互いに共通な反射光RLsを用いて光ヘテロダイン干渉することによって得られた組の干渉光間における位相差△Φを検出するものである。そして、位相検波部3Dは、この検出した位相差△Φを演算制御部5へ出力する。より具体的には、位相検波部3Dは、図13に示すように、干渉光用の光電変換部3Da(3Da1、3Da2)と、参照光用の光電変換部3Da3と、干渉信号と参照信号とをミキシング(混合)するミキシング部3Db(3Db1、3Db2)と、ミキシング後の干渉信号用の位相検波器3Dcと、を備えて構成される。
【0204】
光電変換部3Daは、第3実施形態の光電変換部3Caと同様に、入射光の光量に応じた信号レベルの電気信号に変換して該電気信号を出力する光電変換素子を備えて構成される。具体的に、光電変換部3Da3は、測定光生成部1Dから測定部2Fへ導光される測定光MLsから分岐された参照光MLsrefを受光して、その光量に応じた信号レベルの電気信号を参照信号Ref3として出力するものである。また、各光電変換部3Da1、3Da2のそれぞれは、測定部2Fの出力端子2Fgから射出された2つの第1および第2干渉光ILs1、ILs2を各マルチモード光ファイバおよび図略の各入力端子を介してそれぞれ受光し、これら各干渉光ILs1、ILs2の各光量に応じて第1および第2干渉信号Sig1、Sig2をそれぞれ位相検波器3Dcへ向けて出力する。
【0205】
ミキシング部3Db(3Db1、3Db2)は、参照信号Ref3と各干渉信号Sig1、Sig2とを混合する。具体的に、ミキシング部3Db1は、第1干渉信号Sig1と参照信号Ref3とを混合(除算)し、この混合後の第1干渉信号Sig1を出力する。また、ミキシング部3Db2は、第2干渉信号Sig2と参照信号Ref3とを混合(除算)し、この混合後の第2干渉信号Sig2を出力する。
【0206】
位相検波器3Dcは、光電変換部3Daからの複数の干渉信号Sigであって、参照信号と混合された後の複数の干渉信号Sigが入力され、互いに共通な反射光RLsを用いて光ヘテロダイン干渉することによって得られた組の干渉光ILsに関し、複数の干渉信号Sig間の位相差△Φsを検出する装置である。図13に示す例では、位相検波器3Dcは、各ミキシング部3Db1、3Db2で参照信号が混合された後の第1および第2干渉信号Sig1、Sig2が入力され、これら第1干渉信号Sig1と第2干渉信号Sig2との間における位相差△Φsを検出する。そして、位相検波器3Dcは、この検出した位相差△Φsを演算部制御部5へ出力する。
【0207】
そして、ステージ4、演算制御部5、入力部6および出力部7は、それぞれ、第1実施形態の表面形状測定装置SAにおけるステージ4、演算制御部5、入力部6および出力部7と同様であるので、その説明を省略する。
【0208】
次に、本実施形態における表面形状測定装置SDの動作について説明する。なお、以下の説明において、各測定箇所MPにおける複数の測定点Pnは、説明の便宜上、図13に示す場合を例として、3個である場合について説明を行う。
【0209】
図略の電源スイッチがオンされると、表面形状測定装置SDが起動され、演算制御部5によって必要な各部の初期化が行われる。そして、例えば半導体ウェハ等の板状体の測定対象物Obがステージ4に載置され、入力部6から測定開始を指示するコマンドを受け付けると、演算制御部5は、測定対象物Obの表面形状の測定を開始する。
【0210】
このとき、演算制御部5の光源制御部53は、測定光生成部1Dを駆動し、半導体レーザ光源1Daに周期的に周波数がシフトするレーザ光を発光させる。この半導体レーザ光源1Daによる所定のレーザ光の発光により、上述した光学系の作用によって、測定光MLsが測定光生成部1Dの出力端子1Ddから射出される。
【0211】
続いて、この測定光生成部1Dの出力端子1Ddから射出された測定光MLsは、前記光ファイバを伝播し、測定部2Dに入射される。このとき、測定光MLsの一部が参照光MLsrefとして参照光分岐部Crefで分岐され、位相検波部3Dに入射される。この測定部2Fでは、第3実施形態同様に、入射された測定光MLsを複数の測定光MLs1、MLs2、MLs3に分岐して各測定点P1、P2、P3に照射する。続いて、測定部2Fは、各測定光MLs1、MLs2、MLs3から上述した光学系の作用によって第1および第2干渉光ILs1、ILs2がそれぞれ生成され、第1および第2干渉光ILs1、ILs2は、出力端子2Fgから射出される。この測定部2Fの出力端子2Fgから射出された第1および第2干渉光ILs1、ILs2は、前記マルチモード光ファイバを伝播し、位相検波部3Dに入射される。
【0212】
位相検波部3Dでは、互いに共通な反射光RLs2を用いて自己遅延型光ヘテロダイン干渉することによって得られた組について、ミキシング部3Dbにおいて参照信号Ref3がそれぞれ混合され、これら混合後の第1および第2干渉光ILs1、ILs2の位相検波によって、第1および第2干渉光ILs1、ILs2間の位相差△Φsが検出される。
【0213】
そして、この測定部2Fおよび位相検波部3Dがこのような動作を行っている際に、演算制御部5のステージ制御部52は、ステージ4を制御することによって、測定対象物Obをその高さ方向に直交する水平方向に移動させる。
【0214】
続いて、これら各測定箇所MPmの各位相差△Φmが取得されると、演算制御部5の形状算出部51は、上述したように、各測定箇所MPmにおける勾配Grmを求め、走査順に従ってこれら各測定箇所MPmにおける勾配Grmを連結することによって、測定対象物Obの表面形状を求める。
【0215】
続いて、演算制御部5は、この求めた測定対象物Obの表面形状を出力部7に出力し、出力部7は、測定対象物Obの表面形状を表示する。
【0216】
このように動作することによって本実施形態における表面形状測定装置SDおよびこれに実装された表面形状測定方法では、第3実施形態同様に、比較的短時間であってnmオーダで、より高精度に、測定対象物Obの表面形状を測定することができる。また、このような構成の表面形状測定装置SDおよび表面形状測定方法では、自己遅延型の光ヘテロダイン干渉方式を用いているため、第3実施形態同様に、光源部1Daの小型化、安定性、光源寿命の向上等を図ると共に光源部1Daの選択の自由度を向上させることが可能となる。
【0217】
さらに、このような構成の表面形状測定装置SDおよび表面形状測定方法では、参照光MLsrefを干渉光ILsと混合することで、測定光生成部1Dが射出する測定光MLsに含まれる光源部1Daの出力強度変化を検出することができ、これを用いて干渉光ILsを補正しつつ測定対象物Obの表面形状を演算することにより、前記出力強度変化が測定結果に及ぼす影響を消去することができる。その結果、このような構成の表面形状測定装置SDは、参照光MLsrefを用いない表面形状測定装置に比べて、より高精度に測定対象物Obの表面形状を測定することが可能となる。
【0218】
本発明を表現するために、上述において図面を参照しながら実施形態を通して本発明を適切且つ十分に説明したが、当業者であれば上述の実施形態を変更および/または改良することは容易に為し得ることであると認識すべきである。したがって、当業者が実施する変更形態または改良形態が、請求の範囲に記載された請求項の権利範囲を離脱するレベルのものでない限り、当該変更形態または当該改良形態は、当該請求項の権利範囲に包括されると解釈される。
【符号の説明】
【0219】
SA、SB 表面形状測定装置
1A、1B 測定光生成部
2A、2B、2C 測定部
3A 位相差検出部
3B 位相検波部
4 ステージ
5 演算制御部
51 形状算出部
【技術分野】
【0001】
本発明は、高さ方向の変化である測定対象物の表面形状を測定する表面形状測定装置および表面形状測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の測定方法には、例えば、原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscope、AFM)による方法と、干渉計による方法と、レーザ変位計による方法と、光切断法による方法とが知られている。
【0003】
このAFMによる方法は、例えば、非特許文献1に開示されており、カンチレバの先端に取り付けられた探針を測定対象物の表面に接触させてトレースし、または、前記探針を前記測定対象物の表面と一定間隔に保ってトレースし、その際の前記カンチレバの上下方向の変位を測定することで、前記測定対象物の表面形状を求めるものである。
【0004】
また、この干渉計による方法は、例えば、特許文献1や非特許文献2に開示されており、光源から射出された光を分割手段によって例えば2つの光に分割し、それぞれ別々の光路を通った後に、これら2つの光を合波手段によって再び重ね合わせ、光路差によって発生する干渉縞を検出手段によって検出し、これを解析手段によって解析することで、測定対象物の表面形状を求めるものである。このような干渉計による方法には、フィゾー干渉計、マイケルソン干渉計および斜入射干渉計等を用いた方法が知られている。
【0005】
また、このレーザ変位計による方法は、例えば、非特許文献3に開示されており、発光素子によって測定対象物へ光を照射し、その反射光を光位置検出素子(SPD)で検出し、測定対象物の上下方向の変位に応じて光位置検出素子で検出される反射光の検出位置も変位することから、前記反射光の検出位置を解析手段によって解析することで、測定対象物の表面形状を求めるものである。
【0006】
また、この光切断法による方法は、例えば、非特許文献4に開示されており、光源から射出された扇形のシート光を測定対象物に照射し、このシート光を撮影手段によって撮影し、この得られた画像中におけるシート光による輝線を解析手段によって解析することで、測定対象物の表面形状を求めるものである。
【0007】
前記AFMによる方法は、100μm以下の測定範囲で基本的にどのような表面でも測定することが可能であるが、測定に時間がかかってしまう。この点、前記干渉計による方法、レーザ変位計による方法および光切断法による方法は、数msで測定でき、比較的短時間で測定可能である。しかしながら、前記レーザ変位計による方法は、1〜10μm程度の測定範囲であり、また、前記光切断法による方法は、数μm以上の測定範囲であり、これらの測定範囲は、比較的大きく、nmオーダでの表面形状の測定に向いていない。
【0008】
この点、前記干渉計による方法は、数msで測定でき、比較的短時間で測定可能であって、その原理から測定範囲が波長の長さ程度、すなわち数百nmの範囲であり、nmオーダで測定可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−232667号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社、“原子間力顕微鏡(AFM/コンタクトモードAFM)”、[online]、平成22年5月6日検索、インターネット、<http://www.siint.com/products/spm/tec_mode/b_2_afm.htm>
【非特許文献2】フジノン株式会社、“レーザー干渉計活用ガイド”、[online]、平成22年2月19日検索、インターネット、<http://www.fujinon.co.jp/jp/products/laser/kisotisiki2.htm>
【非特許文献3】株式会社キーエンス“変位センサ・変位計”、[online]、平成22年5月6日検索、インターネット、<http://www.sensor.co.jp/henni/jiten/laser02.htm>
【非特許文献4】オプトウエア株式会社、“高速光切断法プロファイル計測システム”、[online]、平成22年2月19日検索、インターネット、<http://www.optoware.co.jp/densen.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、前記干渉計による方法は、前記AFMによる方法や前記レーザ変位計による方法も含めて、センシング部と測定対象物との間の距離を1点で測定し、前記測定対象物の面方向で走査することで、高さ方向(厚さ方向)の変化である前記測定対象物の表面形状(凹凸形状)を測定するものである。このため、前記測定対象物を載置するステージにおける上下動による振動、センシング部等における保持ゆらぎによる振動および測定対象物自体の振動等の振動が測定結果に含まれてしまい、正確に測定することが難しい。前記特許文献1には、検査精度の向上を目的とする光へテロダイン干渉測定方法およびその測定装置が提案されているが、測定光学系と検査テーブルとの間の距離が完全に一定であることが必要であり、前記特許文献1に開示の光へテロダイン干渉測定方法およびその測定装置は、上述の問題点を解消していない。
【0012】
本発明は、上述の事情に鑑みて為された発明であり、その目的は、比較的短時間であってnmオーダで、より高精度に、測定対象物の表面形状を測定することができる表面形状測定装置および表面形状測定方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、種々検討した結果、上記目的は、以下の本発明により達成されることを見出した。すなわち、本発明の一態様にかかる表面形状測定装置は、光を放射する光源部と、測定対象物における3つ以上の複数の測定点に測定光をそれぞれ照射するべく、前記光源部から放射された光を3つ以上の複数の測定光に分ける光分割部と、前記光分割部で分けられた前記複数の測定光を前記測定対象物における前記複数の測定点にそれぞれ照射させ前記複数の測定点でそれぞれ反射された複数の反射光における一対の反射光を光干渉させる複数の光干渉部と、前記複数の光干渉部から出力される複数の干渉光に基づいて前記測定対象物の表面形状を求める検出部とを備え、前記複数の光干渉部における少なくとも1組の光干渉部は、互いに共通な反射光を用いて前記光干渉させることを特徴とする。そして、本発明の他の一態様にかかる表面形状測定方法は、測定対象物における3つ以上の複数の測定点に測定光をそれぞれ照射するべく、光源部で放射された光を3つ以上の複数の測定光に分ける光分割工程と、前記光分割工程で分けられた前記複数の測定光を前記測定対象物における前記複数の測定点にそれぞれ照射させ前記複数の測定点でそれぞれ反射された複数の反射光における一対の反射光を光干渉させる複数の光干渉工程と、前記複数の光干渉工程で得られた複数の干渉光に基づいて前記測定対象物の表面形状を求める検出工程とを備え、前記複数の光干渉工程における少なくとも1組の光干渉工程は、互いに共通な反射光を用いて前記光干渉させることを特徴とする。
【0014】
このような構成の表面形状測定装置および表面形状測定方法は、光干渉計による方法であるので、比較的短時間であってnmオーダで、測定対象物の表面形状を測定することができる。そして、このような構成の表面形状測定装置および表面形状測定方法では、測定対象物における3つ以上の複数の測定点で反射された複数の反射光を光干渉させる際に、互いに共通な反射光を用いて光干渉させる場合を含むので、測定対象物の表面における勾配情報を表す位相情報を持った干渉光が得られる。このため、例えば、測定対象物を載置するステージにおける上下動による振動、測定光学系における保持ゆらぎによる振動および測定対象物自体の振動等の振動が測定結果に及ぼす影響を相殺して略消去することができる。したがって、このような構成の表面形状測定装置および表面形状測定方法は、比較的短時間であってnmオーダで、より高精度に、測定対象物の表面形状を測定することができる。
【0015】
また、他の一態様では、上述の表面形状測定装置において、前記光源部、前記光分割部および前記光干渉部は、光ホモダイン干渉計を構成し、前記検出部は、前記互いに共通な反射光を用いて前記光干渉させた複数の光干渉部から出力される複数の干渉光に基づいて前記複数の干渉光における各位相間の位相差を検出する位相差検出部と、前記位相差検出部で検出された前記位相差に基づいて前記測定対象物の表面形状を演算する演算部とを備えることを特徴とする。
【0016】
このような構成の表面形状測定装置は、光ホモダイン干渉計を備えるので、より簡素に当該表面形状測定装置を製作することができる。
【0017】
また、他の一態様では、上述の表面形状測定装置において、前記光分割部は、前記光源部から放射された光を3つに分ける光分岐部を備え、前記1組の光干渉部は、前記光分岐部で分けられた第1の光における反射光と前記光分岐部で分けられた第2の光における反射光とを光干渉させる第1光干渉部と、前記光分岐部で分けられた第2の光における反射光と前記光分岐部で分けられた第3の光における反射光とを光干渉させる第2光干渉部とを備えることを特徴とする。
【0018】
このような構成の表面形状測定装置は、1個の光分岐部で前記光源部から放射された光を3つに分けるので、より簡素に当該表面形状測定装置を製作することができる。
【0019】
また、他の一態様では、上述の表面形状測定装置において、前記1組の光干渉部は、基材に屈折率の異なる光導波路を形成した光導波路型光学素子であることを特徴とする。
【0020】
このような構成の表面形状測定装置は、光導波路型光学素子で前記1組の光干渉部を構成するので、空気のゆらぎを除去できて温度のゆらぎも低減することができ、干渉光をより安定的に得ることができる。また、このような構成の表面形状測定装置は、光導波路型光学素子で前記1組の光干渉部を構成するので、前記1組の光干渉部を複数の光学素子を組み合わせて構成する場合に較べて、光路をより厳密に製作することができ、組立後の光路調整が不要となり、また小型化が可能となる。
【0021】
また、他の一態様では、これら上述の表面形状測定装置において、前記光分割部の光分岐部は、回折格子であることを特徴とする。また、他の一態様では、これら上述の表面形状測定装置において、前記光分割部の光分岐部は、光導波路型光分岐器であることを特徴とする。
【0022】
このような構成の表面形状測定装置は、回折格子や光導波路型光分岐器で前記光分割部の光分岐部を構成するので、前記光分割部の光分岐部を複数の光学素子を組み合わせて構成する場合に較べて、光路をより厳密に製作することができ、組立後の光路調整が不要となり、また小型化が可能となる。
【0023】
また、他の一態様では、上述の表面形状測定装置において、前記光源部、前記光分割部および前記光干渉部は、光ヘテロダイン干渉計を構成し、前記検出部は、前記互いに共通な反射光を用いて前記光干渉させた複数の光干渉部から出力される複数の干渉光をそれぞれ位相検波し、前記複数の干渉光における各位相間の位相差を検出する検波部と、前記検波部で検出された前記位相差に基づいて前記測定対象物の表面形状を演算する演算部とを備えることを特徴とする。
【0024】
このような構成の表面形状測定装置は、光ヘテロダイン干渉計を備えるので、より高精度に、測定対象物の表面形状を測定することができる。
【0025】
また、他の一態様では、上述の表面形状測定装置において、前記光源部から放射された光を2つに分ける第1光分岐部と、前記第1光分岐部で分けられた2つの光の周波数を互いに異なる周波数に変調する光変調部とをさらに備え、前記光分割部は、前記光変調部で変調された2つの光の一方をさらに2つに分ける第2光分岐部を備え、前記1組の光干渉部は、前記光変調部で変調された他方の光における反射光と前記第2分岐部で分けられた一方の光における反射光とを光ヘテロダイン干渉させる第1光干渉部と、前記光変調部で変調された他方の光における反射光と前記第2分岐部で分けられた他方の光における反射光とを光ヘテロダイン干渉させる第2光干渉部とを備え、前記検出部の検波部は、前記第1および第2光干渉部から出力される第1および第2干渉光をそれぞれ位相検波し、前記第1および第2干渉光における各位相間の位相差を検出することを特徴とする。
【0026】
このような構成では、1つの測定箇所における測定点が3つの光へテロダイン干渉計型の表面形状測定装置が提供される。
【0027】
また、他の一態様では、上述の表面形状測定装置において、前記光変調部で変調された他方の光と前記第2分岐部で分けられた一方の光とを光ヘテロダイン干渉させる第1参照光干渉部と、前記光変調部で変調された他方の光と前記第2分岐部で分けられた他方の光とを光ヘテロダイン干渉させる第2参照光干渉部とをさらに備え、前記検出部の検波部は、前記第1および第2参照光干渉部から出力される第1および第2参照干渉光をそれぞれ位相検波し、前記第1および第2参照干渉光における各位相間の位相差を補正値として検出し、前記第1および第2干渉光における各位相間の位相差を前記補正値で補正し、前記検出部の演算部は、前記検波部で検出され補正された前記位相差に基づいて前記測定対象物の表面形状を演算することを特徴とする。
【0028】
光源部から放射された光を測定対象物の表面まで導光する間において生じる位相ゆらぎが測定結果に大きく影響を及ぼす。このような構成の表面形状測定装置では、第1および第2参照光干渉部によって測定対象物の表面に作用しない干渉光が得られ、この得られた干渉光を用いて補正しつつ測定対象物の表面形状が演算される。このため、このような構成の表面形状測定装置は、前記位相ゆらぎが測定結果に及ぼす影響を消去することができ、さらにより高精度に、測定対象物の表面形状を測定することができる。
【0029】
また、他の一態様では、これら上述の表面形状測定装置において、前記1組の光干渉部は、基材に屈折率の異なる光導波路を形成した光導波路型光学素子であることを特徴とする。
【0030】
このような構成の表面形状測定装置は、光導波路型光学素子で前記1組の光干渉部を構成するので、空気のゆらぎを除去できて温度のゆらぎも低減することができ、干渉光をより安定的に得ることができる。また、このような構成の表面形状測定装置は、光導波路型光学素子で前記1組の光干渉部を構成するので、前記1組の光干渉部を複数の光学素子を組み合わせて構成する場合に較べて、光路をより厳密に製作することができ、組立後の光路調整が不要となり、また小型化が可能となる。
【0031】
また、他の一態様では、上述の表面形状測定装置は、前記光分割部で分けられた各測定光を案内して前記複数の測定点にそれぞれ照射する3つ以上の複数の導光部を備え、前記光源部、前記光分割部、前記導光部、及び、前記検出部は、光ヘテロダイン干渉計を構成すべく、前記光源部が、周期的に周波数が変化する光を放射し、前記一組の光干渉部において光干渉させる各反射光を得るための一組の導光部は、これら一組の導光部のうちの前記一組の光干渉部における互いに共通な反射光が得られる測定点に測定光を照射する特定の導光部と、前記一組の導光部のうちの前記一組の光干渉部における互いに共通な反射光以外の反射光が得られる測定点に測定光を照射する少なくとも2つの他の導光部との間の光路差がそれぞれ所定の光路差となる光路長をそれぞれ有し、前記検出部が、前記互いに共通な反射光を用いて前記光干渉させた複数の光干渉部から出力される複数の干渉光をそれぞれ位相検波し、前記複数の干渉光における各位相間の位相差を検出する検波部と、前記検波部で検出された前記位相差に基づいて前記測定対象物の表面形状を演算する演算部とを有することを特徴とする。そして、本発明の他の一態様にかかる表面形状測定方法は、光ヘテロダイン干渉法を利用して測定対象物の表面形状を測定する方法であって、測定対象物における3つ以上の複数の測定点に測定光をそれぞれ照射するべく、光源部で放射された周期的に周波数が変化する光を3つ以上の複数の測定光に分ける光分割工程と、前記光分割工程で分けられた前記複数の測定光をそれぞれ案内して、前記測定対象物における前記複数の測定点にそれぞれ測定光を同時に照射する3つ以上の導光・照射工程と、前記複数の測定点でそれぞれ反射された複数の反射光における一対の反射光を光干渉させる複数の光干渉工程と、前記複数の光干渉工程で得られる複数の干渉光に基づいて前記測定対象物の表面形状を求める検出工程とを備え、前記複数の光干渉工程における少なくとも1組の光干渉工程は、互いに共通な反射光を用いて前記光干渉させ、前記一組の光干渉工程において光干渉させる各反射光を得るための一組の導光・照射工程 は、これら一組の導光・照射工程のうちの前記一組の光干渉工程における互いに共通な反射光が得られる測定点に測定光を照射する特定の導光・照射工程と、前記一組の導光・照射工程のうちの前記一組の光干渉工程における互いに共通な反射光以外の反射光が得られる測定点に測定光を照射する少なくとも2つの他の導光・照射工程との間の光路差がそれぞれ所定の光路差となるように測定光をそれぞれ案内することを特徴とする。
【0032】
このような構成の表面形状測定装置及び表面形状測定方法は、光へテロダイン法を用いた光干渉計による方法であるので、比較的短時間であってnmオーダで、測定対象物の表面形状を測定することができる。そして、このような構成の表面形状測定装置および表面形状測定方法では、測定対象物における3つ以上の複数の測定点で反射された複数の反射光を光干渉させる際に、互いに共通な反射光を用いて光干渉させる場合を含むので、測定対象物の表面における勾配情報を表す位相情報を持った干渉光が得られる。このため、例えば、測定対象物を載置するステージにおける上下動による振動、測定光学系における保持ゆらぎによる振動および測定対象物自体の振動等の振動が測定結果に及ぼす影響を相殺して略消去することができる。従って、このような構成の表面形状測定装置および表面形状測定方法は、比較的短時間であってnmオーダで、より高精度に、測定対象物の表面形状を測定することができる。
【0033】
しかも、周期的に周波数が変化する光を複数の測定光に分け、これら測定光間に光路差を設けて複数の測定点にそれぞれ照射することにより照射時において各測定光間に周波数差を生じさせ、その反射光同士を光干渉させるいわゆる自己遅延型の光ヘテロダイン干渉方式を用いているため、光源の小型化等を図ると共に光源の選択の自由度を向上させることが可能となる。即ち、通常の光ヘテロダイン干渉方式(周波数が一定の光を2つの測定光に分け、一方の測定光を周波数変調して2つの測定光間に僅かな周波数差を設ける方式)では、光源として例えば、ガスレーザー等の発振周波数が極めて安定したレーザー発振器と光変調素子とを用いなければならないため、光源の選択の自由度が小さく且つ小型化が困難であるが、本発明のようないわゆる自己遅延型の光へテロダイン干渉方式では、例えば、半導体レーザ等を用いることが可能となるため、光源の小型化、光源寿命の向上等を図ることが可能となる。
【0034】
尚、前記所定の光路差は、具体的には、前記特定の導光部から得られた反射光と前記他の導光部から得られた反射光とを光干渉させるためにこれら一対の反射光と対応する測定光間に設けられる周波数の差に基づくものである。これにより、反射光同士を光干渉させて生じたビートから測定対象物の表面形状に関する情報を好適に抽出することができる。
【0035】
また、他の一態様では、前記測定点が測定対象物の表面において一列に3つ以上並び、上述の表面形状測定装置では、前記複数の光干渉部が、前記一列に並ぶ各測定点でそれぞれ反射される複数の反射光における一対の反射光を光干渉させ、前記各導光部では、前記一列の一端に位置する測定点に前記測定光を照射する導光部から前記一列の他端側に位置する測定点に前記測定光を照射する導光部に向けて光路長が順に前記所定の光路差だけ長くなることを特徴とする。尚、測定点が並ぶ列は直線に沿って並ぶ列に限定されず、曲線等に沿って並ぶ列であってもよい。
【0036】
このような構成の表面形状測定装置では、前記列方向に並ぶ測定点間の勾配をそれぞれ一度に測定することができるため、測定点の並ぶ方向に沿った表面形状を一度に測定することができる。その結果、測定対象物の表面形状の測定時間を短縮することが可能となる。
【0037】
また、他の一態様では、前記測定点が測定対象物の表面において一列に3つ以上並び、上述の表面形状測定装置では、前記複数の光干渉部が、前記一列に並ぶ各測定点でそれぞれ反射される複数の反射光における一対の反射光を光干渉させ、前記各導光部では、前記一列の一端に位置する測定点に前記測定光を照射する導光部から前記一列の他端側に位置する測定点に前記測定光を照射する導光部に向けて奇数番目又は偶数番目の導光部の光路長がそれぞれ同じであることを特徴とする。
【0038】
このような構成の表面形状測定装置では、光へテロダイン干渉させる光同士の周波数差を測定対象物における測定点の並ぶ方向において変化させることが可能となる。例えば、奇数番目の導光部の光路長が全て同じである場合に、偶数番目の導光部の光路長を全て同じにすれば、互いに隣り合う測定点に測定光を照射する導光部間の光路差を全て同じにすることができ、これにより、互いに隣り合う測定点に照射される測定光間の周波数差が一定となる。一方、特定の偶数番目の導光部の光路長だけを、これを除く他の偶数番目の導光部の光路長と異なる大きさとすれば、この特定の偶数番目の導光部が測定光を照射する測定点とその隣の測定点とに照射される測定光間の周波数差を、他の隣り合う測定点に照射される測定光間の周波数差と異なる値にすることができる。
【0039】
また、他の一態様の上述の表面形状測定装置では、前記他の導光部は、前記一組の導光部のうちの特定の導光部以外の全ての導光部であることを特徴とする。
【0040】
このような構成の表面形状測定装置では、特定の導光部からの測定光が照射される測定点を基準にして、この測定点と他の導光部からの測定光が照射される各測定点との間の勾配を一度に測定することができる。これにより、例えば、特定の導光部からの測定光が照射される測定点を中心にしてそれを囲むように他の導光部からの測定光が照射されるようにすれば、中心の測定点とその周りを囲む各測定点との間の勾配をそれぞれ一度に測定することができ、これにより、測定対象物の表面方向における所定範囲の表面形状を一度に測定することが可能となる。
【0041】
また、他の一態様では、上述の表面形状測定装置において、前記光分割部と前記複数の導光部とは、基材に屈折率の異なる光導波路を形成した光導波路型光学素子であることを特徴とする。
【0042】
このような構成の表面形状測定装置は、共通の基材に光導波路部材を配設したいわゆる光導波路型光学素子によって前記1組の光干渉部を構成するので、空気のゆらぎを除去できて温度のゆらぎも低減することができ、干渉光をより安定的に得ることができる。しかも、分割後の測定光を複数の光ファイバで導光する場合に比べて、表面形状の測定結果が振動等によるノイズの影響を受け難くなる。
【0043】
また、このような構成の表面形状測定装置は、光導波路型光学素子で前記1組の光干渉部を構成するので、前記1組の光干渉部を複数の光学素子を組み合わせて構成する場合に較べて、光路をより厳密に製作することができ、組立後の光路調整が不要となり、また小型化が可能となる。
【0044】
また、他の一態様では、上述の表面形状測定装置において、前記光分割部の上流で前記光源部から放射された光の一部を参照光として分岐する参照光分岐部と、前記1組の光干渉部から出力される各干渉光と前記参照光とをそれぞれ混合させる参照光混合部とをさらに備え、前記検出部は、前記参照光混合部から出力される複数の参照光混合信号を位相検波して各位相間の位相差を検出する検波部と、前記検波部で検出された前記位相差に基づいて前記測定対象物の表面形状を演算する演算部とを有することを特徴とする。
【0045】
光源部から放射される光には、周期的に周波数を変更することに起因する出力強度変化が含まれ、この出力強度変化は、測定結果に大きく影響を及ぼす。このような構成の表面形状測定装置では、参照光混合部によって干渉光と参照光とを混合することにより光源が放射する光に含まれる出力強度変化が検出され、これを用いて干渉光を補正しつつ測定対象物の表面形状が演算される。このため、このような構成の表面形状測定装置は、前記出力強度変化が測定結果に及ぼす影響を消去することができ、より高精度に測定対象物の表面形状を測定することができる。
【発明の効果】
【0046】
本発明にかかる表面形状測定装置および表面形状測定方法は、比較的短時間であってnmオーダで、より高精度に、測定対象物の表面形状を測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】第1実施形態における表面形状測定装置の構成を示す図である。
【図2】図1に示す表面形状測定装置における測定部の構成を示す図である。
【図3】図1に示す表面形状測定装置における測定部の他の構成を示す図である。
【図4】第2実施形態における表面形状測定装置の構成を示す図である。
【図5】図4に示す表面形状測定装置における測定光生成部の構成を示す図である。
【図6】図4に示す表面形状測定装置における測定部の構成を示す図である。
【図7】1つの測定箇所における複数の測定点の態様を説明するための図である。
【図8】第3実施形態における表面形状測定装置の構成を示す図である。
【図9】図8に示す表面形状測定装置における測定部の構成を示す図である。
【図10】(A)は光源への注入電流の時間変化を示し、(B)は図10(A)の注入電流に対する光源の発振周波数の時間変化を示す図である。
【図11】自己遅延型光ヘテロダイン干渉において光干渉する2つの光の周波数差を説明するための図である。
【図12】図8に示す表面形状測定装置における測定部の他の構成を示す図である。
【図13】第4実施形態における表面形状測定装置の構成を示す図である。
【図14】図13に示す表面形状測定装置における測定部の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
以下、本発明にかかる実施の一形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において同一の符号を付した構成は、同一の構成であることを示し、適宜、その説明を省略する。また、本明細書において、総称する場合には添え字を省略した参照符号で示し、個別の構成を指す場合には添え字を付した参照符号で示す。
【0049】
実施形態にかかる表面形状測定装置は、光を放射する光源部と、測定対象物における3つ以上の複数の測定点に測定光をそれぞれ照射するべく、前記光源部から放射された光を3つ以上の複数の測定光に分ける光分割部と、前記光分割部で分けられた前記複数の測定光を前記測定対象物における前記複数の測定点にそれぞれ照射させ前記複数の測定点でそれぞれ反射された複数の反射光における一対の反射光を光干渉させる複数の光干渉部と、前記複数の光干渉部から出力される複数の干渉光に基づいて前記測定対象物の表面形状を求める検出部とを備え、前記複数の光干渉部における少なくとも1組の光干渉部は、互いに共通な反射光を用いて前記光干渉させるものである。そして、この表面形状測定装置に実装される表面形状測定方法は、測定対象物における3つ以上の複数の測定点に測定光をそれぞれ照射するべく、光源部で放射された光を3つ以上の複数の測定光に分ける光分割工程と、前記光分割工程で分けられた前記複数の測定光を前記測定対象物における前記複数の測定点にそれぞれ照射させ前記複数の測定点でそれぞれ反射された複数の反射光における一対の反射光を光干渉させる複数の光干渉工程と、前記複数の光干渉工程で得られた複数の干渉光に基づいて前記測定対象物の表面形状を求める検出工程とを備え、前記複数の光干渉工程における少なくとも1組の光干渉工程は、互いに共通な反射光を用いて前記光干渉させるものである。以下、このような表面形状測定装置および該方法をより具体的に説明する。
【0050】
(第1実施形態)
第1実施形態における表面形状測定装置は、前記光源部、前記光分割部および前記光干渉部が光ホモダイン干渉計を構成しているものである。
【0051】
図1は、第1実施形態における表面形状測定装置の構成を示す図である。図2は、図1に示す表面形状測定装置における測定部の構成を示す図である。図3は、図1に示す表面形状測定装置における測定部の他の構成を示す図である。
【0052】
第1実施形態の表面形状測定装置SAは、測定対象物Obにおける高さ方向(厚さ方向)の変化である表面形状を測定する装置であり、例えば、図1に示すように、測定光生成部1Aと、測定部2Aと、位相差検出部3Aと、ステージ(載置台)4と、演算制御部5と、入力部6と、出力部7とを備えて構成され、ステージ4によって測定対象物Obを水平方向に移動させることによって測定対象物Obの表面を走査し、所定範囲に亘る測定対象物Obの表面形状を測定するものである。
【0053】
測定光生成部1Aは、所定の可干渉光であって、測定対象物Obの表面形状を光ホモダイン干渉法によって測定するための測定光MLを生成する装置である。測定光MLは、予め設定された所定の波長λ(周波数f)を持つ単波長光であって、予め設定された所定の偏光面を持つ偏光である。このような測定光生成部1Aは、例えば、図1に示すように、光源部1Aaと、光アイソレータ1Abと、偏光子1Acと、出力端子1Adとを備えて構成される。
【0054】
光源部1Aaは、光Lを放射する装置であり、例えば、単波長レーザを備えて構成される。この単波長レーザは、予め設定された所定の波長λ0(周波数f0)を持つ単波長レーザ光Lを発生する装置であり、種々のレーザ装置を用いることができるが、例えば、所定の光パワーで波長約632.8nmのレーザ光Lを出力することができるヘリウムネオンレーザ装置(He−Neレーザ装置)等である。単波長レーザは、波長ロッカ等を備えた周波数安定化レーザ装置が好ましい。光アイソレータ1Abは、その入力端子からその出力端子へ一方向のみに光を透過させる光部品である。光アイソレータ1Abは、光源部1Aaにおける前記単波長レーザのレーザ発振を安定させるために、表面形状測定装置SA内における各光部品(光学素子)の接続部等で生じる反射光(戻り光)が前記単波長レーザに入射することを防止するものである。偏光子(polarizer)1Acは、入射光から所定の偏光面を持つ直線偏光を取り出して射出する光部品(光学素子)であり、例えば、偏光フィルタである。出力端子1Adは、光部品から光を射出するための端子である。これに対し、後述の入力端子2Aa(2Ba)は、光部品へ光を入射するための端子である。各部間の接続には、例えばミラーやレンズ等の個別の光部品(光学素子)から構成される導光手段が用いられてもよいが、本実施形態では、各部間の接続には、後述するように、偏波保持光ファイバ、シングルモード光ファイバおよびマルチモード光ファイバ等の光ファイバが用いられることから、これら入力端子および出力端子には、光ファイバを接続するためのコネクタが用いられる。
【0055】
このような構成の測定光生成部1Aでは、光源部1Aaの単波長レーザから射出されたレーザ光Lは、光アイソレータ1Abを介して偏光子1Acに入射され、所定の偏光面を持つレーザ光(s偏光のレーザ光またはp偏光のレーザ光)の測定光MLとなって、出力端子1Adから射出される。この測定光MLは、測定部2Aに入射される。
【0056】
測定光生成部1Aと測定部2Aとの接続には、本実施形態では、光をその偏波面を保持しながら導光する偏波保持光ファイバや単一モードで光を導光するシングルモード光ファイバ等の光ファイバが用いられる。偏波保持光ファイバは、例えば、PANDAファイバや楕円コア光ファイバ等である。測定光生成部1Aの出力端子1Adから射出した測定光MLは、この光ファイバによって導光され、測定部2Aへ入射する。
【0057】
測定部2Aは、測定光生成部1Aからの測定光MLが入射され、測定光MLを用いた光ホモダイン干渉法によって測定対象物Obにおける表面形状の情報を含む光信号を得る装置である。このような測定部2Aは、1つの測定箇所MPに対する1回の測定光MLの照射による測定において、測定対象物Obにおける3つ以上の複数の測定点P(P1、P2、P3、・・・、Pn)に測定光ML(ML1、ML2、ML3、・・・、MLn)をそれぞれ照射するべく、測定光生成部1Aからの測定光MLを3つ以上の複数の測定光ML1、ML2、ML3、・・・、MLnに分ける光分割部と、この光分割部で分けられた複数の測定光ML1、ML2、ML3、・・・、MLnを測定対象物Obにおける複数の測定点P1、P2、P3、・・・、Pnにそれぞれ照射させこれら複数の測定点P1、P2、P3、・・・、Pnでそれぞれ反射された複数の反射光RL(RL1、RL2、RL3、・・・、RLn)における一対の反射光RLを光干渉させる複数の光干渉部とを備え、これら複数の光干渉部における少なくとも1組の光干渉部は、互いに共通な反射光RLを用いて光干渉させるように構成されている。
【0058】
より具体的には、測定部2Aは、例えば、図2に示すように、入力端子2Aaと、入力側導波路2Abと、回折格子2Acと、対物レンズ2Adと、ハーフミラ2Aeと、集光レンズ2Afと、出力側導波路2Agと、出力端子2Ahとを備えて構成され、これら入力側導波路2Abおよび出力側導波路2Agは、基材2Aiに屈折率の異なる光導波路を形成することによって設けられている。
【0059】
基材2Aiは、所定の屈折率を持つ材料から形成された板状の部材(基板)であり、外周面の所定の各位置に入力端子2Aaおよび出力端子2Ahが配設されている。図2に示す例では、基材2Aiは、略直方体形状であり、その上面上に入力端子2Aaおよび出力端子2Ahが配設されている。この入力端子2Aaには、測定光生成部1Aから延びる前記光ファイバが接続される。
【0060】
そして、基材2Aiには、基材2Aiにおける入力端子2Aaが配設されている位置から延びる入力側導波路2Abが、基材2Aiにおける前記所定の屈折率よりも極僅かだけ(例えば0.3〜3%程度)に大きくすることによって形成されている。この入力側導波路2Abは、入力端子2Aaを介してその一方端(入射端)から入射された、測定光生成部1Aからの測定光MLを導光するものであり、その他方端(射出端)には、回折格子2Acが配設されている。入力側導波路2Abは、図2に示す例では、基材2Aiの上面における入力端子2Aaが配設されている位置から、基材2Aiの一方側面に沿って下面に向い、所定の位置で略弧によって約90度曲がって前記下面に沿うように延びる略L字形状である。
【0061】
回折格子2Acは、入射光を回折する光部品であり、その射出側には、順に、対物レンズ2Adおよびハーフミラ2Aeが配設されている。回折格子2Acは、本実施形態では、入射光が格子に入射されるとこの格子を透過して回折光が射出される透過型の回折格子である。ハーフミラ2Aeは、入射光を光パワーの点で2つの光に分配してそれぞれ射出する光部品であり、この分配された一方の光は、ハーフミラ2Aeを通過してそのままの方向で射出され、この分配された他方の光は、ハーフミラ2Aeで反射されて前記方向と垂直な方向(直交する方向)で射出される。
【0062】
これら入力側導波路2Ab、回折格子2Acおよび対物レンズ2Adは、互いにその光軸が一致するように配置されており、ハーフミラ2Aeは、この光軸に対し鏡面が45度の角度で交差するように配設されている。
【0063】
このような構成の入力端子2Aa、入力側導波路2Ab、回折格子2Ac、対物レンズ2Adおよびハーフミラ2Aeでは、測定光生成部1Aからの測定光MLは、前記光ファイバから入力端子2Aaを介して入力側導波路2Abに入射される。この入力側導波路2Abに入射された測定光MLは、入力側導波路2Ab内を伝播し、入力側導波路2Abによって導光され、回折格子2Acに入射される。この回折格子2Acに入射された測定光は、回折格子2Acによって回折され、複数の回折光(測定光ML)に分けられ、対物レンズ2Adに入射される。本実施形態では、1つの測定箇所MPに対する1回の測定光MLの照射による測定において、測定対象物Obにおける3つの測定点P(P1、P2、P3)に測定光MLをそれぞれ照射するべく、これら複数の回折光のうちの3つの回折光が測定光ML(ML1、ML2、ML3)として利用される。このように用いられる3つの回折光ML1、ML2、ML3には、光パワーの点で相対的により強くまた対称性を有することから、例えば、0次回折光、+1次回折光および−1次回折光が用いられる。対物レンズ2Adに入射した3つの測定光ML1、ML2、ML3は、そのレンズ作用を受け、ハーフミラ2Aeに入射し、このハーフミラ2Aeで反射され、その光路が90度折り曲げられて射出される。ここで、対物レンズ2Adは、ハーフミラ2Aeで光路が90度折り曲げられて射出された3つの測定光ML1、ML2、ML3が互いに平行な平行光となるようなレンズ作用を持つように構成される。
【0064】
そして、ハーフミラ2Aeから射出された3つの平行な測定光ML1、ML2、ML3は、測定部2Aから射出され、測定対象物Obの表面での1つの測定箇所MPにおける3つの測定点P1、P2、P3にそれぞれ照射され、反射される。この測定対象物Obの表面における3つの測定点P1、P2、P3でそれぞれ反射された3つの反射光(反射光の正反射成分)RL(RL1、RL2、RL3)は、測定部2Aに入射され、ハーフミラ2Aeを介して集光レンズ2Afに入射される。
【0065】
集光レンズ2Afは、その光軸が前記入力側導波路2Ab、回折格子2Acおよび対物レンズの光軸と直交するように、かつ、ハーフミラ2Aeの鏡面と−45度(135度、鏡面を基準に反時計回り方向を正方向とした場合)の角度で交差するように配設されている。集光レンズ2Afは、前記3つの反射光RL1、RL2、RL3のそれぞれにレンズ作用を与えるべく、反射光RL(RL1、RL2、RL3)の個数に対応した個数のレンズを備えて構成され、その射出側には、出力側導波路2Agが、基材2Aiの前記所定の屈折率よりも極僅かだけ(例えば0.3〜3%程度)に大きくすることによって形成されている。
【0066】
出力側導波路2Agは、集光レンズ2Afから入射された各反射光RL(図2に示す例では、RL1、RL2、RL3)をそれぞれ導光し、複数の反射光RLにおける一対の反射光RLを光干渉させ、複数の干渉光ILを導光するものである。ここで、本実施形態では、複数の干渉光ILのうちの少なくとも1組の干渉光ILは、互いに共通な反射光RLを用いて光干渉させることによって生成されている。より具体的には、出力側導波路2Agは、大略、基材2Aiの他方側面に沿って形成されており、集光レンズ2Afにおける、3つの反射光RL1、RL2、RL3に対応した3つレンズの射出側からそれぞれ延びる3つの導波路部2Ag−1、2Ag−2、2Ag−3と、中央の導波路部2Ag−2を2つに分岐する分岐部2Ag−4と、分岐部2Ag−4で分岐した一方の導波路部と前記導波路部2Ag−1とを合流する合流部2Ag−5と、分岐部2Ag−4で分岐した他方の導波路部と前記導波路部2Ag−3とを合流する合流部2Ag−6と、合流部2Ag−5から延びて出力端子2Ahに至る導波路部2Ag−7と、合流部2Ag−6から延びて出力端子2Ahに至る導波路部2Ag−8とを備えて構成されている。
【0067】
このような構成のハーフミラ2Ae、集光レンズ2Af、出力側導波路2Agおよび出力端子2Ahでは、図2に示す例では、測定対象物Obの表面における3つの測定点P1、P2、P3でそれぞれ反射された3つの反射光(反射光の正反射成分)RL(RL1、RL2、RL3)は、測定部2Aに入射され、ハーフミラ2Aeを介して集光レンズ2Afの前記各レンズにそれぞれ入射される。集光レンズ2Afの前記各レンズは、各反射光RL1、RL2、RL3をそれぞれ導波路部2Agにおける3つの導波路部2Ag−1、2Ag−2、2Ag−3へ入射させる。すなわち、集光レンズ2Afの前記各レンズは、出力側導波路2Agにおける3つの導波路部2Ag−1、2Ag−2、2Ag−3に対する導波路カップリング用である。中央の導波路部2Ag−2に入射された反射光RL2は、導波路部2Ag−2内を伝播し、導波路部2Ag−2によって導光され、分岐部2Ag−4で分配される。分岐部2Ag−4で分配された一方の反射光RL2(RL2−1)は、合流部2Ag−5に導光され、その他方の反射光RL2(RL2−2)は、合流部2Ag−6に導光される。また、導波路部2Ag−1に入射された反射光RL1は、導波路部2Ag−1内を伝播し、導波路部2Ag−1によって導光され、合流部2Ag−5に導光される。そして、導波路部2Ag−3に入射された反射光RL3は、導波路部2Ag−3内を伝播し、導波路部2Ag−3によって導光され、合流部2Ag−6に導光される。合流部2Ag−5では、上述のように導光された反射光RL2と反射光RL1とが合波され、光ホモダイン干渉されて第1干渉光IL1(=RL1+RL2)が生成される。この第1干渉光IL1は、合流部2Ag−5から導波路部2Ag−7に導光され、導波路部2Ag−7内を伝播し、導波路部2Ag−7によって導光され、出力端子2Ahに入射される。そして、合流部2Ag−6では、上述のように導光された反射光RL2と反射光RL3とが合波され、光ホモダイン干渉されて第2干渉光IL2(=RL2+RL3)が生成される。この第2干渉光IL2は、合流部2Ag−6から導波路部2Ag−8に導光され、導波路部2Ag−8内を伝播し、導波路部2Ag−8によって導光され、出力端子2Ahに入射される。これら第1および第2干渉光IL1、IL2は、測定対象物Obにおける表面形状の情報を含む光信号である。そして、これら第1および第2干渉光IL1、IL2は、出力端子2Ahを介して測定部2Aから位相検波部3Aへ入射される。
【0068】
また、測定部2Aに代え、測定光生成部1Aからの測定光MLが入射され、測定光MLを用いた光ホモダイン干渉法によって測定対象物Obにおける表面形状の情報を含む光信号を得る装置である測定部2Bが用いられてもよい。
【0069】
より具体的には、測定部2Bは、例えば、図3に示すように、入力端子2Baと、入力側導波路2Bbと、対物レンズ2Bcと、ハーフミラ2Aeと、集光レンズ2Beと、出力側導波路2Bfと、出力端子2Bgとを備えて構成され、これら入力側導波路2Bbおよび出力側導波路2Bfは、基材2Bhに屈折率の異なる光導波路を形成することによって設けられている。
【0070】
基材2Bhは、基材2Aiと同様であり、所定の屈折率を持つ材料から形成された略直方体形状の板状の部材(基板)であり、外周面、例えばその上面上の所定の各位置に入力端子2Baおよび出力端子2Agが配設されている。この入力端子2Baには、測定光生成部1Aから延びる前記光ファイバが接続される。
【0071】
そして、基材2Bhには、基材2Bhにおける入力端子2Baが配設されている位置から延びる入力側導波路2Bbが、基材2Bhにおける前記所定の屈折率よりも極僅かだけ(例えば0.3〜3%程度)に大きくすることによって形成されている。この入力側導波路2Bhは、入力端子2Baを介してその一方端から入射された、測定光生成部1Aからの測定光MLを導光するとともに、1つの測定箇所MPにおける複数の測定点Pのそれぞれに測定光MLをそれぞれ照射するべく、測定光生成部1Aからの測定光MLを複数の測定光MLに分岐するものであり、その他方端には、集光レンズ2Bcが配設されている。より具体的には、入力側導波路2Bbは、図3に示す例では、基材2Bhの上面における入力端子2Baが配設されている位置から、基材2Bhの一方側面に沿って下面に向い、所定の位置で略弧によって約90度曲がるように延びる形状である導波路部2Bb−1と、導波路部2Bb−1を3つに分岐する分岐部2Bb−2と、分岐部2Bb−2で分岐した3つの導波路部2Bb−3、2Bb−4、2Bb−5とを備えて構成されている。これら3つの導波路部2Bb−3、2Bb−4、2Bb−5は、射出端で各光軸が互いに平行となるように、かつ、前記下面に沿って分岐部2Bb−2から集光レンズ2Bcに至るように延びる形状である。分岐部2Bb−2で両側にそれぞれ分岐した導波路部2Bb−3および導波路部2Bb−5は、導波路部2Bb−3および導波路部2Bb−5の延びる方向(基材2Bhの面)に対して直交する方向(基材2Bhの面の法線方向)から平面視した場合に、中央の導波路部2Bb−4を対称軸とした線対称となるように形成されている。そして、その中央の導波路部2Bb−4は、分岐部2Bb−2から集光レンズ2Bcに至るまでの光学的距離(光路長)がこれら導波路部2Bb−3〜2Bb−5において互いに等しくなるように、基材2Bhの面内において導波路部2Bb−3および導波路部2Bb−5の延びる方向に対して直交する方向に湾曲(屈曲)する光路冗長部CV1を有している。
【0072】
対物レンズ2Bcは、入力側導波路2Bbで導光され分岐された複数の測定光MLのそれぞれにレンズ作用を与えるべく、複数の測定光MLの個数に対応した個数のレンズを備えて構成され、その射出側には、ハーフミラ2Bdが配設されている。図3に示す例では、対物レンズ2Bcは、入力側導波路2Bbの分岐部2Bb−2で分岐され、前記3つの導波路部2Bb−3〜2Bb−5から射出された各測定光ML1、ML2、RL3のそれぞれにレンズ作用を与えるべく、3つのレンズを備えて構成されている。対物レンズ2Bcの各レンズは、入力側導波路2Bbから射出された各測定光MLを集光し、これら集光した各測定光MLをハーフミラ2Bdに入射させる。
【0073】
ハーフミラ2Bdは、ハーブミラ2Aeと同様であり、分配された一方の光は、ハーフミラ2Bdを通過してそのままの方向で射出され、分配された他方の光は、ハーフミラ2Bdで反射されて前記方向と垂直な方向(直交する方向)で射出される。
【0074】
これら入力側導波路2Bbおよび対物レンズ2Bcは、互いにその光軸が一致するように配置されている。すなわち、入力側導波路2Bbにおける各導波路部2Bb−3〜2Bb−5の各光軸は、それぞれ、対物レンズ2Bcにおける各レンズの各光軸と一致している。そして、ハーフミラ2Bdは、この光軸に対し鏡面が45度の角度で交差するように配設されている。
【0075】
このような構成の入力端子2Ba、入力側導波路2Bb、対物レンズ2Bcおよびハーフミラ2Bdでは、測定光生成部1Aからの測定光MLは、前記光ファイバから入力端子2Baを介して入力側導波路2Bbに入射される。この入力側導波路2Bbに入射された測定光MLは、入力側導波路2Bb内を伝播し、入力側導波路2Abによって導光されるとともに複数に分割され、対物レンズ2Bcに入射される。より具体的には、この入力側導波路2Bbに入射された測定光MLは、導波路部2Bb−1によって導光され、分岐部2Bb−2で複数に、図3に示す例では、1つの測定箇所MPに対する1回の測定光MLの照射による測定において、測定対象物Obにおける3つの測定点P(P1、P2、P3)に測定光MLをそれぞれ照射するべく、3つに分岐され、これら3つに分岐された各測定光は、導波路部2Bb−3〜2Bb−5のそれぞれによって導光され、対物レンズ2Bcの前記各レンズにそれぞれ入射される。ここで、上述したように、両側に位置する導波路部2Bb−3と導波路部2Bb−5とは、中央に位置する導波路部2Bb−4を対象中心として互いに線対称であって、この中央の導波路部2Bb−4は、光路冗長部CVIを有し、これら導波路部2Bb−3〜2Bb−5のそれぞれは、互いに光路長が等しいので、これら導波路部2Bb−3〜2Bb−5のそれぞれを伝播した3つの測定光ML1、ML2、ML3は、互いに同位相で対物レンズ2Bcの各レンズに入射される。対物レンズ2Bcに入射した3つの測定光ML1、ML2、ML3は、そのレンズ作用を受けて集光し、互いに平行光となってハーフミラ2Bdに入射し、このハーフミラ2Bdで反射され、その光路が90度折り曲げられて射出される。
【0076】
そして、ハーフミラ2Bdから射出された3つの平行な測定光ML1、ML2、ML3は、測定部2Bから射出され、測定対象物Obの表面での1つの測定箇所MPにおける3つの測定点P1、P2、P3にそれぞれ照射され、反射される。この測定対象物Obの表面における3つの測定点P1、P2、P3でそれぞれ反射された3つの反射光(反射光の正反射成分)RL(RL1、RL2、RL3)は、測定部2Bに入射され、ハーフミラ2Bdを介して集光レンズ2Beに入射される。
【0077】
集光レンズ2Beは、集光レンズ2Afと同様に構成されており、そして、出力側導波路2Bfも出力側導波路2Agと同様に構成されている。
【0078】
したがって、このような構成のハーフミラ2Bd、集光レンズ2Be、出力側導波路2Bfおよび出力端子2Bgでは、図3に示す例では、測定対象物Obの表面における3つの測定点P1、P2、P3でそれぞれ反射された3つの反射光(反射光の正反射成分)RL(RL1、RL2、RL3)は、測定部2Bに入射され、ハーフミラ2Bdを介して集光レンズ2Beの前記各レンズにそれぞれ入射される。集光レンズ2Beの前記各レンズは、導波路カップリング用であり、各反射光RL1、RL2、RL3をそれぞれ導波路部2Bfにおける3つの導波路部2Bf−1、2Bf−2、2Bf−3へ入射させる。中央の導波路部2Bf−2に入射された反射光RL2は、導波路部2Bf−2内を伝播し、導波路部2Bf−2によって導光され、分岐部2Bf−4で分配される。分岐部2Bf−4で分配された一方の反射光RL2(RL2−1)は、合流部2Bf−5に導光され、その他方の反射光RL2(RL2−2)は、合流部2Bf−6に導光される。また、導波路部2Bf−1に入射された反射光RL1は、導波路部2Bf−1内を伝播し、導波路部2Bf−1によって導光され、合流部2Bf−5に導光される。そして、導波路部2Bf−3に入射された反射光RL3は、導波路部2Bf−3内を伝播し、導波路部2Bf−3によって導光され、合流部2Bf−6に導光される。合流部2Bf−5では、上述のように導光された反射光RL2と反射光RL1とが合波され、光ホモダイン干渉されて第1干渉光IL1(=RL1+RL2)が生成される。この第1干渉光IL1は、合流部2Bf−5から導波路部2Bf−7に導光され、導波路部2Bf−7内を伝播し、導波路部2Bf−7によって導光され、出力端子2Bgに入射される。そして、合流部2Bf−6では、上述のように導光された反射光RL2と反射光RL3とが合波され、光ホモダイン干渉されて第2干渉光IL2(=RL2+RL3)が生成される。この第2干渉光IL2は、合流部2Bf−6から導波路部2Bf−8に導光され、導波路部2Bf−8内を伝播し、導波路部2Bf−8によって導光され、出力端子2Bgに入射される。これら第1および第2干渉光IL1、IL2は、測定対象物Obにおける表面形状の情報を含む光信号である。そして、これら第1および第2干渉光IL1、IL2は、出力端子2Bgを介して測定部2Bから位相検波部3Aへ入射される。
【0079】
図1に戻って、本実施形態では、測定部2A(2B)と位相差検出部3Aとは、シングルモード光ファイバであってもよいが、光軸調整および伝播光の光量における優位性の観点から、複数の伝搬モードを持つマルチモード光ファイバによって接続されている。すなわち、本実施形態では、測定部2A(2B)から射出された複数の干渉光IL、図2および図3に示す例では第1および第2干渉光IL1、IL2は、マルチモード光ファイバによって導光され、位相差検出部3Aへ入射する。
【0080】
位相差検出部3Aは、測定部2A(2B)から射出した複数の干渉光ILであって、互いに共通な反射光RLを用いて光ホモダイン干渉することによって得られた組の干渉光ILに基づいて、これら組における複数の干渉光IL間における位相差△Φを検出するものである。そして、位相差検出部3Aは、この検出した位相差△Φを演算制御部5へ出力する。より具体的には、位相差検出部3Aは、図1に示すように、光電変換部3Aa(3Aa1、3Aa2)と、位相差検出器3Abとを備えて構成される。
【0081】
光電変換部3Aaは、例えばホトダイオード等の、入射光の光量に応じた信号レベルの電気信号に変換して該電気信号を出力する光電変換素子を備えて構成される。光電変換部3Aaは、測定部2A(2B)によって得られる干渉光ILの個数に応じて用意され、測定部2A(2B)からの複数の干渉光ILをそれぞれ受光して、その各光量に応じた信号レベルの各電気信号を各干渉信号Sigとして出力するものである。本実施形態では、前記干渉光ILは、2つであることから、2個の光電変換部3Aa1、3Aa2が用意される。各光電変換部3Aa1、3Aa2のそれぞれは、測定部2A(2B)の出力端子2Ah(2Bg)から射出された2つの第1および第2干渉光IL1、IL2を各マルチモード光ファイバおよび図略の各入力端子を介してそれぞれ受光し、これら各干渉光IL1、IL2の各光量に応じて第1および第2干渉信号Sig1、Sig2をそれぞれ位相差検出器3Abへ出力する。
【0082】
位相差検出器3Abは、光電変換部3Aaから複数の干渉信号Sigが入力され、互いに共通な反射光RLを用いて光ホモダイン干渉することによって得られた組の干渉光ILに関し、複数の干渉信号Sig間の位相差△Φを検出する装置である。図1に示す例では、位相差検出器3Abは、光電変換部3Aa1、3Aa2から第1および第2干渉信号Sig1、Sig2が入力され、これら第1干渉信号Sig1と第2干渉信号Sig2との間における位相差△Φを検出する。そして、位相差検出器3Abは、この検出した位相差△Φを演算制御部5へ出力する。
【0083】
ステージ4は、演算制御部5の制御に従って、測定対象物Obの厚さ方向(高さ方向)に直交する水平方向に測定対象物Obを移動する装置である。ステージ4は、いわゆるX軸方向およびY軸方向に測定対象物Obを移動することができるXYステージであってもよく、また、ステージ4は、測定対象物Obを回転移動することができるとともに、前記回転における径方向にも移動することができる回転ステージであってもよい。測定対象物Obは、表面を有する任意の部材であってよく、例えば、アルミ板材、鉄材および鋼材等の金属材料や半導体ウェハ等である。前記XYステージは、例えば、矩形形状の板状部材の測定に好適であり、前記回転ステージは、例えば、円形形状の板状部材に好適である。
【0084】
演算制御部5は、表面形状測定装置SAの各部を当該機能に応じて制御する回路であり、例えば、表面形状測定装置SAの各部を当該機能に応じて制御するための制御プログラムや測定対象物Obの表面形状を位相差検出部3Aの出力に基づいて求める演算プログラム等の各種の所定のプログラム、および、前記所定のプログラムの実行に必要なデータ等の各種の所定のデータ等を記憶する、不揮発性の記憶素子であるROM(Read Only Memory)や書き換え可能な不揮発性の記憶素子であるEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)、前記所定のプログラムを読み出して実行することによって所定の演算処理や制御処理を行うCPU(Central Processing Unit)、前記所定のプログラムの実行中に生じるデータ等を記憶するいわゆる前記CPUのワーキングメモリとなるRAM(Random Access Memory)、ならびに、これらの周辺回路を備えたマイクロコンピュータ等によって構成される。演算制御部5は、機能的に、形状算出部51と、ステージ制御部52と、光源制御部53とを備えている。
【0085】
ステージ制御部52は、測定対象物Obの表面を走査するべく、測定対象物Obにおける複数の測定箇所MP(1つの測定箇所MPに対し少なくとも3つ以上の測定点Pn)を測定するために、測定対象物Obが厚さ方向に直交する水平方向に移動するように、ステージ4の動作を制御するものである。ここで、測定対象物Obの水平方向の移動は、後述するように、各測定箇所MPの各測定結果を順次に連結することによって測定対象物Obの表面形状を求めていることから、一の測定箇所MPtempにおける測定点Pと、走査によってこの一の測定箇所MPtempの次に測定される測定箇所MPnextにおける測定点Pとは、少なくとも1つの測定点Pで重複するように、ステージ制御部52は、ステージ4の動作を制御する。例えば、ステージ制御部52は、一の測定箇所MPtempにおける測定点P3と、走査によってこの一の測定箇所MPtempの次に測定される測定箇所MPnextにおける測定点P1とが互いに重複するように、ステージ4の動作を制御する。光源制御部53は、光源部1Aの動作を制御するものである。
【0086】
形状算出部51は、測定部2A(2B)によって生成された複数の干渉光ILを位相差検出部3Aで検出した位相差△Φに基づいて、測定対象物Obの表面形状を求めるものである。干渉光ILは、2つの測定点P間における高さ方向(厚さ方向)の差の情報を含む。すなわち、2つの測定点P間における高さ方向に差があると、測定部2A(2B)と測定対象物Obとの間における距離(光路長)がそれぞれ異なることとなり、同一位相の各測定光がこのような互いに距離の異なる光路をそれぞれ伝播して再び干渉すると、その干渉光ILには、各光路間の距離の差(2×(高さ方向の差))に応じた各測定光の位相差に関する成分が含まれる。したがって、この干渉光ILを光電変換することによって得られた干渉信号Sigは、2つの測定点P間における高さ方向(厚さ方向)の差の情報を含んでいる。このため、互いに共通な反射光RLを用いて光ホモダイン干渉することによって得られた組の各干渉光に対応する各干渉信号Sigは、互いに共通な反射光RLに対応する測定点P、および、これと光ホモダイン干渉させられた各反射光RLに対応する各測定点における勾配情報を含む。図1に示す例では、第1干渉光IL1は、測定点P1と測定点P2との間における高さ方向の差H1の情報を含み、第2干渉光IL2は、測定点P2と測定点P3との間における高さ方向の差H2の情報を含む。そして、互いに共通な反射光RL2を用いて光ホモダイン干渉することによって得られた組の第1および第2干渉光IL1、IL2に対応する第1および第2干渉信号Sig1、Sig2は、互いに共通な反射光RL2に対応する測定点P2、および、これと光ホモダイン干渉させられた各反射光RL1、RL3に対応する各測定点P1、P3における勾配情報を含む。このように本実施形態では、1つの測定箇所MPにおける3つの各測定点P1、P2、P3について、その勾配情報が得られる。このため、より具体的には、形状算出部51は、測定箇所MP(図1に示す例では3つの測定点P1、P2、P3)における勾配Grを、Gr=(△Φ×(λ/2)/(2π))/(2つの測定点P間の距離)によって求める。そして、形状算出部51は、走査することによって得られた各測定箇所MPnの各勾配Grを走査順に従って順次に連結することによって、測定対象物Obの表面形状を求める。
【0087】
入力部6は、例えば、測定開始等を指示するコマンドや測定対象物Obの属性情報等のデータを入力するための装置であり、例えば、複数の入力スイッチを備えた操作パネルやキーボード等である。出力部7は、入力部6で受け付けたコマンドやデータおよび測定結果等を出力するための装置であり、例えば、CRTディスプレイ、LCD(液晶ディスプレイ)、有機ELディスプレイおよびプラズマディスプレイ等の表示装置やプリンタ等の印刷装置等である。これら入力部6および出力部7は、演算制御部5に接続される。
【0088】
次に、本実施形態における表面形状測定装置SAの動作について説明する。なお、以下の説明において、各測定箇所MPにおける複数の測定点Pnは、説明の便宜上、図1に示す場合を例として、3個である場合について説明を行う。
【0089】
図略の電源スイッチがオンされると、表面形状測定装置SAが起動され、演算制御部5によって必要な各部の初期化が行われる。そして、例えば半導体ウェハ等の板状体の測定対象物Obがステージ4に載置され、入力部6から測定開始を指示するコマンドを受け付けると、演算制御部5は、測定対象物Obの表面形状の測定を開始する。
【0090】
まず、演算制御部5の光源制御部53は、測定光生成部1Aを駆動し、単波長レーザ光源1Aaに所定のレーザ光を発光させる。この単波長レーザ光源1Aaによる所定のレーザ光の発光により、上述した光学系の作用によって、測定光MLが測定光生成部1Aの出力端子1Adから射出される。
【0091】
続いて、この測定光生成部1Aの出力端子1Adから射出された測定光MLは、前記光ファイバを伝播し、測定部2A(2B)に入射される。この測定部2A(2B)では、この入射された測定光MLから上述した光学系の作用によって第1および第2干渉光IL1、IL2が生成され、出力端子2Ah(2Bg)から射出される。続いて、この測定部2A(2B)の出力端子2Ah(2Bg)から射出された第1および第2干渉光IL1、IL2は、前記マルチモード光ファイバを伝播し、位相差検出部3Aに入射される。この位相差検出部3Aでは、互いに共通な反射光RL2を用いて光ホモダイン干渉することによって得られた組について、これら第1および第2干渉光IL1、IL2に基づいて第1および第2干渉光IL1、IL2間の位相差△Φが検出される。
【0092】
そして、この測定部2A(2B)および位相差検出部3Aがこのような動作を行っている際に、演算制御部5のステージ制御部52は、ステージ4を制御することによって、測定対象物Obをその高さ方向に直交する水平方向に移動させる。例えば、演算制御部5のステージ制御部52は、測定箇所MPにおける複数の測定点Pnが移動方向に沿って並び、この移動方向に沿って互いに隣接する2つの測定点Pn−1、Pnの間隔が等しくなるように、かつ、上述したように、一の測定箇所MPtempにおける測定点P3と、走査(移動)によってこの一の測定箇所MPtempの次に測定される測定箇所MPnextにおける測定点P1とが重複するように、ステージ4を移動させる。
【0093】
続いて、これら各測定箇所MPmの各位相差△Φmが取得されると、演算制御部5の形状算出部51は、上述したように、各測定箇所MPmにおける勾配Grmを求め、走査順に従ってこれら各測定箇所MPmにおける勾配Grmを連結することによって、測定対象物Obの表面形状を求める。
【0094】
続いて、演算制御部5は、この求めた測定対象物Obの表面形状を出力部7に出力し、出力部7は、測定対象物Obの表面形状を表示する。
【0095】
このように動作することによって本実施形態における表面形状測定装置SAおよびこれに実装された表面形状測定方法では、光ホモダイン干渉計による方法であるので、比較的短時間であってnmオーダで、測定対象物Obの表面形状を測定することができる。そして、このような構成の表面形状測定装置SAおよび表面形状測定方法では、測定対象物Obにおける3つ以上の複数の測定点P、図1に示す例では1つの測定箇所MPにおける3つの測定点P1、P2、P3で反射された3つの反射光RL1、RL2、RL3を光ホモダイン干渉させる際に、互いに共通な反射光RL2を用いて光干渉させる場合を含むので、測定対象物Obの表面における勾配情報を表す位相情報を持った第1および第2干渉光IL1、IL2が得られる。このため、例えば、測定対象物Obを載置するステージ4における上下動による振動、測定光学系における保持ゆらぎによる振動および測定対象物Ob自体の振動等の振動が測定結果に及ぼす影響を相殺して略消去することができる。したがって、このような構成の表面形状測定装置SAおよび表面形状測定方法は、比較的短時間であってnmオーダで、より高精度に、測定対象物Obの表面形状を測定することができる。
【0096】
また、上述の本実施形態における表面形状測定装置SAは、測定光生成部1Aおよび測定部2A(2B)は、光ホモダイン干渉計を構成し、互いに共通な反射光RL2を用いて光ホモダイン干渉させることで得られた第1および第2干渉光IL1、IL2に基づいてこれら第1および第2干渉光IL1、IL2間の位相差△Φを検出する位相差検出部3Aと、位相差検出部3Aから出力される第1および第2干渉光IL1、IL2間の位相差△Φに基づいて測定対象物Obの表面形状を演算する演算制御部5とを備えている。このため、このような本実施形態の表面形状測定装置SAは、光ホモダイン干渉計を備えるので、より簡素に当該表面形状測定装置SAを製作することができる。
【0097】
また、上述の本実施形態における表面形状測定装置SAでは、測定部2A(2B)は、光源部1Aから射出された測定光MLを例えば回折格子2Acや分岐部2Bb−2の1つの光分岐手段で3つに分け、この分けられた第1の測定光ML1における反射光RL1とこの分けられた第2の測定光ML2における反射光RL2とを光ホモダイン干渉させ、この分けられた第2の測定光ML2における反射光RL2とこの分けられた第3の測定光ML3における反射光RL3とを光ホモダイン干渉させる。このため、このような本実施形態の表面形状測定装置SAは、測定部2A(2B)における1つの光分岐手段で光源部1Aから放射された光を3つに分けるので、より簡素に当該表面形状測定装置SAを製作することができる。そして、このような本実施形態の表面形状測定装置SAは、前記光分岐手段を回折格子2Acや光導波路型光分岐器である光分岐部2Bb−2で構成するので、前記光分岐手段を複数の光部品(光学素子)を組み合わせて構成する場合に較べて、光路をより厳密に製作することができ、組立後の光路調整が不要となり、また小型化が可能となる。このため、本実施形態における表面形状測定装置SAでは、携帯型とすることも可能となる。
【0098】
また、上述の本実施形態における表面形状測定装置SAでは、測定部2A(2B)は、基材2Ai(2Bh)に屈折率の異なる光導波路を形成した光導波路型光学素子を含む。このため、このような本実施形態の表面形状測定装置SAは、光導波路型光学素子を備えて測定部2A(2B)を構成するので、空気のゆらぎを除去できて温度のゆらぎも低減することができ、干渉光ILをより安定的に得ることができる。また、このような本実施形態の表面形状測定装置SAは、光導波路型光学素子を備えて測定部2A(2B)を構成するので、複数の光部品(光学素子)を組み合わせて構成する場合に較べて、光路をより厳密に製作することができ、組立後の光路調整が不要となり、また小型化が可能となる。このため、この点からも本実施形態における表面形状測定装置SAでは、携帯型とすることも可能となる。
【0099】
次に、別の実施形態について説明する。
【0100】
(第2実施形態)
第1実施形態における表面形状測定装置SAは、光ホモダイン干渉によって干渉光ILを生成し、この干渉光ILに基づいて測定対象物Obの表面形状を測定する装置であるが、第2実施形態における表面形状測定装置SBは、光ヘテロダイン干渉によって干渉光ILを生成し、この干渉光ILに基づいて測定対象物Obの表面形状を測定する装置である。
【0101】
図4は、第2実施形態における表面形状測定装置の構成を示す図である。図5は、図4に示す表面形状測定装置における測定光生成部の構成を示す図である。図6は、図4に示す表面形状測定装置における測定部の構成を示す図である。
【0102】
第2実施形態の表面形状測定装置SBは、測定対象物Obにおける高さ方向(厚さ方向)の変化である表面形状を測定する装置であり、例えば、図4に示すように、測定光生成部1Bと、測定部2Cと、位相検波部3Bと、ステージ(載置台)4と、演算制御部5と、入力部6と、出力部7とを備えて構成され、ステージ4によって測定対象物Obを水平方向に移動させることによって測定対象物Obの表面を走査し、所定範囲に亘る測定対象物Obの表面形状を測定するものである。
【0103】
測定光生成部1Bは、所定の可干渉光であって、測定対象物Obの表面形状を光ヘテロダイン干渉法によって測定するための測定光MLを生成する装置である。測定光MLは、予め設定された所定の波長λ(周波数f)を持つ単波長光であって、予め設定された所定の偏光面を持つ偏光である。測定光MLは、測定対象物Obを両面から光ヘテロダイン干渉法によって測定するために、互いに波長(周波数)の異なる2つの第1および第2測定光MLf1、MLf2を備えている。このような測定光生成部1Bは、例えば、図5に示すように、光源部1Baと、光アイソレータ1Bbと、光分岐部1Bcと、偏光子1Bd、1Bgと、光波長シフタ1Be、1Bh、2出力端子1Bf、1Biとを備えて構成される。
【0104】
光源部1Baは、光Lを放射する装置であり、例えば、第1実施形態の光源部1Aaと同様な単波長レーザを備えて構成される。光アイソレータ1Bbは、第1実施形態の光アイソレータ1Abと同様な光部品である。光分岐部1Bcは、入射光を光パワーの点で2つの光に分配してそれぞれ射出する光部品であり、例えば、ハーフミラ(半透鏡)等の微少光学素子形光分岐結合器や、溶融ファイバの光ファイバ形光分岐結合器や、光導波路形光分岐結合器等を利用することができる。光分岐部1Bcは、本実施形態では、ハーフミラが用いられている。偏光子1Bd、1Bgは、第1実施形態の偏光子1Acと同様な光部品である。光波長シフタ1Be、1Bhは、入射光の波長をシフトして(入射光の周波数を変化させて)入射光の波長(周波数)と異なる波長(周波数)の光を生成する光部品であり、例えば、音響光学効果を利用することによって入射光の波長をシフトする音響光学変調器(acoustoopticmodulator)等が用いられる。出力端子1Bf、1Biは、光部品から光を射出するための端子であり、例えば、第1実施形態の出力端子1Adと同様な、光ファイバを接続するためのコネクタである。
【0105】
光分岐部1Bcで分岐される一方の光に関し、これら光源部1Ba、光アイソレータ1Bb、光分岐部1Bc、偏光子1Bd、波長シフタ1Beおよび出力端子1Bfは、互いに光軸を一致させて、光の伝播方向に従ってこの順で配設されるとともに、光分岐部1Bcで分岐される他方の光に関し、これら光源部1Ba、光アイソレータ1Bb、光分岐部1Bc、偏光子1Bg、波長シフタ1Bhおよび出力端子1Biは、互いに光軸を一致させて、光の伝播方向に従ってこの順で配設される。
【0106】
このような測定光生成部1Bでは、光源部1Baの単波長レーザから射出されたレーザ光Lは、光アイソレータ1Bbを介して光分岐部1Bcに入射され、第1および第2レーザ光L1、L2の2つに分配される。第1レーザ光L1は、偏光子1Bdに入射され、所定の偏光面を持つレーザ光(s偏光のレーザ光またはp偏光のレーザ光)となって、波長シフタ1Beに入射される。この所定の偏光面を持つレーザ光は、光波長シフタ1Beによってその波長(周波数)がシフト(変更)され、所定の周波数f1を持つ測定光MLf1となって出力端子1Beから射出される。この測定光MLf1は、測定部2Cに入射される。一方、第2レーザ光Lは、偏光子1Bgに入射され、所定の偏光面を持つレーザ光(s偏光のレーザ光またはp偏光のレーザ光)となって、波長シフタ1Bhに入射される。この所定の偏光面を持つレーザ光は、光波長シフタ1Bhによってその波長(周波数)がシフト(変更)され、所定の周波数f2(≠f1)を持つ測定光MLf2となって出力端子1Biから射出される。この測定光MLf2は、測定部2Cに入射される。周波数変更後(波長シフト後)における測定光MLf1の周波数f1と測定光MLf2の周波数f2との周波数差△fは、特に限定されないが、光ヘテロダイン干渉法によって干渉させる観点から、例えば、数十kHz〜数MHz程度の値である。
【0107】
なお、本実施形態では、第1レーザ光L1から生成された所定の偏光面を持つ前記レーザ光および第2レーザ光L2から生成された所定の偏光面を持つ前記レーザ光のそれぞれを波長シフタ1Be、1Bhによってそれぞれ波長シフトしたが、光ヘテロダインによって干渉させるために、測定光MLf1の周波数f1と測定光MLf2の周波数f2との間に、所定の周波数差△fが有ればよいので、測定光生成部1Bは、一方の前記レーザ光のみを波長シフトする構成であってもよい。
【0108】
測定光生成部1Bと測定部2Cとの接続には、第1実施形態における測定光生成部1Aと測定部2Aとの接続と同様に、光ファイバが用いられる。測定光生成部1Bの各出力端子1Bf、1Biから射出した測定光MLf1、MLf2は、2本の光ファイバによってそれぞれ導光され、測定部2Cへ入射する。
【0109】
測定部2Cは、測定光生成部1Bからの各測定光ML(MLf1、MLf2)が入射され、これら測定光MLf1、MLf2を用いた光ヘテロダイン干渉法によって測定対象物Obにおける表面形状の情報を含む光信号を得る装置である。このような測定部2Cは、1つの測定箇所MPに対する1回の測定光ML(MLf1、MLf2)の照射による測定において、測定対象物Obにおける3つ以上の複数の測定点P(P1、P2、P3、・・・、Pn)に測定光ML(ML1、ML2、ML3、・・・、MLn)をそれぞれ照射するべく、測定光生成部1Bからの測定光MLを3つ以上の複数の測定光ML1、ML2、ML3、・・・、MLnに分ける光分割部と、この光分割部で分けられた複数の測定光ML1、ML2、ML3、・・・、MLnを測定対象物Obにおける複数の測定点P1、P2、P3、・・・、Pnにそれぞれ照射させこれら複数の測定点P1、P2、P3、・・・、Pnでそれぞれ反射された複数の反射光RL1、RL2、RL3、・・・、RLn)における一対の反射光RLを光干渉させる複数の光干渉部とを備え、これら複数の光干渉部における少なくとも1組の光干渉部は、互いに共通な反射光RLを用いて光干渉させるように構成されている。
【0110】
ここで、本実施形態では、光干渉は、光ヘテロダイン干渉であるので、前記一対の反射光RLは、互いに周波数の異なる2つの測定光MLf1、MLf2が測定対象物Obの表面で反射した光である必要があり、さらに、本実施形態では、前記組の中では、互いに共通な反射光RLが用いられる。したがって、この互いに共通な反射光RLを測定光MLf1が測定対象物Obの表面で反射した光とすると、これと光ヘテロダイン干渉する反射光RLは、測定光MLf2が測定対象物Obの表面で反射した光となる。このため、光分割部は、前記互いに共通な反射光RLを得るための測定光MLf1ではなく、測定光MLf2を複数の測定光MLf2に分割することになる。また、この互いに共通な反射光RLを測定光MLf2が測定対象物Obの表面で反射した光とすると、これと光ヘテロダイン干渉する反射光RLは、測定光MLf1が測定対象物Obの表面で反射した光となる。このため、光分割部は、前記互いに共通な反射光RLを得るための測定光MLf2ではなく、測定光MLf1を複数の測定光MLf1に分割することになる。
【0111】
より具体的には、測定部2Cは、例えば、図6に示すように、光分岐部2Caと、入力端子2Cbと、入力側導波路2Ccと、対物レンズ2Cdと、ハーフミラ2Cfと、集光レンズ2Cg、2Cjと、出力側導波路2Chと、出力端子2Ciと、参照側導波路2Ckと、参照出力端子2Clとを備えて構成され、これら入力側導波路2Cc、出力側導波路2Chおよび参照側導波路2Ckは、基材2Cmに屈折率の異なる光導波路を形成することによって設けられている。
【0112】
光分岐部2Caは、1つの測定箇所MPに対する1回の測定光ML(MLf1、MLf2)の照射による測定において、測定対象物Obにおける3つ以上の複数の測定点P(P1、P2、P3、・・・、Pn)に測定光ML(ML1、ML2、ML3、・・・、MLn)をそれぞれ照射するべく、測定光生成部1Bからの測定光MLを3つ以上の複数の測定光ML1、ML2、ML3、・・・、MLnに分配する光学素子である。そして、本実施形態では、上述したように、光干渉が光へテロダイン干渉であることから、光分岐部2Caは、前記互いに共通な反射光RLを得るための測定光MLf2(または測定光MLf1)ではなく、測定光MLf1(または測定光MLf2)を複数の測定光MLf1に分配するものである。光分岐部2Caは、光導波路を形成することで基材2Cmに設けられてもよいが、本実施形態では、個別の光学素子、例えば、溶融ファイバの光ファイバ形光分岐結合器が用いられている。図6に示す例では、光分岐部2Caは、測定光MLf1を導光する光ファイバにおける射出端部分に設けられた、前記光ファイバを溶融ファイバによって2つに分ける光ファイバ分岐部2Ca−1と、光ファイバ分岐部2Ca−1で分岐した2つの光ファイバ2Ca−2、2Ca−3aと、測定光MLf1を導光する光ファイバにおける射出端部分に設けられた光ファイバ2Ca−4とを備えて構成され、これら光ファイバ2Ca−2〜2Ca−4では、前記互いに共通な反射光RLを得るための測定光MLf2を導光する光ファイバ2Ca−4が中央に位置し、測定光MLf1を導光する2つの光ファイバ2Ca−2、2Ca−3が光ファイバ2Ca−4の両側に位置するように、入力端子2Cbに接続される。なお、光ファイバ分岐部2Ca−1と光ファイバ2Ca−2、2Ca−3とは、例えば、測定光MLf2を導光する光ファイバにおける射出端部分に接続される光ファイバ形光分岐結合器であってもよく、また例えば、測定光MLf2を導光する光ファイバにおける前記射出端部分そのものを光ファイバ形光分岐結合器に加工したものであってもよい。そして、光ファイバ2Ca−4は、例えば、測定光MLf2を導光する光ファイバにおける射出端部分に接続される光ファイバであってもよく、また例えば、測定光MLf2を導光する光ファイバにおける射出端部分そのものであってもよい。
【0113】
基材2Cmは、所定の屈折率を持つ材料から形成された板状の部材(基板)であり、外周面の所定の各位置に入力端子2Cb、出力端子2Ciおよび参照出力端子2Clが配設されている。図6に示す例では、基材2Cmは、略直方体形状であり、その上面上に入力端子2Cb、出力端子2Ciおよび参照出力端子2Clが配設されている。この入力端子2Cbには、上述のように、光分岐部2Caにおける各光ファイバ2Ca−2〜2Ca−4がそれぞれ接続される。
【0114】
そして、基材2Cmには、基材2Cmにおける入力端子2Cbが配設されている位置から延びる入力側導波路2Ccが、基材2Cmにおける前記所定の屈折率よりも極僅かだけ(例えば0.3〜3%程度)に大きくすることによって形成されている。この入力側導波路2Ccは、入力端子2Cbを介してその一方端から入射された、測定光生成部1Bからの測定光ML(MLf1、MLf2)を導光するものであり、その他方端には、対物レンズ2Cdが配設されている。入力側導波路2Ccは、図6に示す例では、基材2Cmの上面における入力端子2Cbが配設されている位置から、基材2Cmの一方側面に沿って下面に向い、所定の位置で略弧によって約90度曲がって前記下面に沿うように延びる略L字形状である。そして、入力側導波路2Ccは、光分岐部2Caから射出される測定光MLf1、MLf2の個数に応じた個数を備えている。図6に示す例では、配列順に、光分岐部2Caの光ファイバ2Ca−2で導光される測定光MLf1、光分岐部2Caの光ファイバ2Ca−4で導光される測定光MLf2および光分岐部2Caの光ファイバ2Ca−3で導光される測定光MLf1の3つであることから、入力側導波路2Ccは、3つの導波路部2Cc−1〜2Cc−3を備えて構成されている。光分岐部2Caの光ファイバ2Ca−2は、入力端子2Cbを介して導波路部2Cc−1に接続され、光分岐部2Caの光ファイバ2Ca−4は、入力端子2Cbを介して導波路部2Cc−2に接続され、そして、光分岐部2Caの光ファイバ2Ca−3は、入力端子2Cbを介して導波路部2Cc−3に接続される。これら入力側導波路2Ccにおける3つの導波路部2Cc−1〜2Cc−3は、前記約90度曲がる部分では平行ではないが、大略、互いに平行に並設されている。そして、これら3つの導波路部2Cc−1〜2Cc−3は、入力端子2Cbに接続される入射端から対物レンズ2Cdに接続される射出端に至るまでの光学的距離(光路長)が互いに等しくなるように、前記約90度に曲がる部分において内側に位置する導波路部2Cc−1および導波路部2Cc−2には、基材2Cmの面内において入力側導波路2Ccの延びる方向に対して直交する方向に湾曲(屈曲)する光路冗長部CV2−1、CV2−2がそれぞれ設けられている。そして、最内側の導波路部2Cc−1に設けられる光路冗長部CV2−1は、中央の導波路部2Cc−2に設けられる光路冗長部CV−1よりも光学的距離(光路長)が長い。
【0115】
対物レンズ2Cdは、入力側導波路2Ccで導光された複数の測定光MLf1、MLf2のそれぞれにレンズ作用を与えるべく、複数の測定光MLf1、MLf2の個数に対応した個数のレンズを備えて構成され、その射出側には、ハーフミラ2Cfが配設されている。図6に示す例では、対物レンズ2Cdは、入力側導波路2Ccにおける3つの導波路部2Cc−1〜2Cc−3から射出された各測定光MLf1、MLf2、MLf1のそれぞれにレンズ作用を与えるべく、3つのレンズを備えて構成されている。対物レンズ2Cdの各レンズは、入力側導波路2Ccにおける3つの導波路部2Cc−1〜2Cc−3から射出された各測定光MLf1、MLf2、MLf12を集光し、これら集光した各測定光MLf1、MLf2、MLf1をハーフミラ2Cfに入射させる。
【0116】
ハーフミラ2Cfは、入射光を光パワーの点で2つの光に分配してそれぞれ射出する光部品であり、この分配された一方の光は、ハーフミラ2Cfを通過してそのままの方向で射出され、この分配された他方の光は、ハーフミラ2Cfで反射されて前記方向と垂直な方向(直交する方向)で射出される。
【0117】
これら入力側導波路2Ccおよび対物レンズ2Cdは、互いにその光軸が一致するように配置されており、ハーフミラ2Cfは、この光軸に対し鏡面が45度の角度で交差するように配設されている。
【0118】
このような構成の光分岐部2Ca、入力端子2Cb、入力側導波路2Cc、対物レンズ2Cdおよびハーフミラ2Cfでは、測定光生成部1Bからの測定光ML(MLf1、MLf2)は、光分岐部2Caの光ファイバ分岐部2Ca−1で一方の測定光MLf1が分配され、光分岐部2Caにおける3つの光ファイバ2Ca−2〜2Ca−4から入力端子2Cbを介して入力側導波路2Ccにおける3つの導波路部2Cc−1〜2Cc−3にそれぞれ入射される。この入力側導波路2Ccにおける各導波路部2Cc−1〜2Cc−3に入射された測定光ML1(MLf1)、ML2(MLf2)、ML3(MLf1)は、各導波路部2Cc−1〜2Cc−3内をそれぞれ伝播し、各導波路部2Cc−1〜2Cc−3によってそれぞれ導光され、対物レンズ2Cdの各レンズにそれぞれ入射される。対物レンズ2Cdに入射した3つの測定光ML1、ML2、ML3は、そのレンズ作用を受け、ハーフミラ2Cfに入射される。このハーフミラ2Cfでは、これら3つの測定光ML1、ML2、ML3は、2つに分配され、この分配された一方の光は、ハーフミラ2Cfを通過してそのままの方向で射出され、この分配された他方の光は、ハーフミラ2Cfで反射され、その光路が90度折り曲げられて射出される。ここで、対物レンズ2Cdは、ハーフミラ2Cfを通過してそのままの方向で射出された3つの測定光ML1、ML2、ML3が互いに平行な平行光となるとともに、ハーフミラ2Cfで光路が90度折り曲げられて射出された3つの測定光ML1、ML2、ML3が互いに平行な平行光となるようなレンズ作用を持つように構成される。
【0119】
ハーフミラ2Cfを通過してそのままの方向で射出された、3つの平行な測定光ML1、ML2、ML3は、集光レンズ2Cjに入射される。
【0120】
そして、ハーフミラ2Cfで反射されハーフミラ2Cfから射出された3つの平行な測定光ML1、ML2、ML3は、測定部2Cから射出され、測定対象物Obの表面での1つの測定箇所MPにおける3つの測定点P1、P2、P3にそれぞれ照射され、反射される。この測定対象物Obの表面における3つの測定点P1、P2、P3でそれぞれ反射された3つの反射光(反射光の正反射成分)RL(RL1、RL2、RL3)は、測定部2Cに入射され、ハーフミラ2Cfを介して集光レンズ2Cgに入射される。反射光RL1は、測定光MLf1が測定点P1で反射した光であり、周波数f1である。反射光RL2は、測定光MLf2が測定点P2で反射した光であり、周波数f2である。そして、反射光RL3は、測定光MLf1が測定点P3で反射した光であり、周波数f1である。
【0121】
集光レンズ2Cgは、第1実施形態における集光レンズ2Afや集光レンズ2Beと同様であり、その光軸が前記入力側導波路2Ccおよび対物レンズCdの光軸と直交するように、かつ、ハーフミラ2Cfの鏡面と−45度(135度)の角度で交差するように配設されている。集光レンズ2Cgは、複数の反射光RL(図6に示す例では3つの反射光RL1、RL2、RL3)のそれぞれにレンズ作用を与えるべく、反射光RL(RL1、RL2、RL3)の個数に対応した個数のレンズ(この例では3つのレンズ)を備えて構成され、その射出側には、出力側導波路2Chが、基材2Cmの前記所定の屈折率よりも極僅かだけ(例えば0.3〜3%程度)に大きくすることによって形成されている。
【0122】
出力側導波路2Chは、第1実施形態における出力側導波路2Agや出力側導波路2Bfと同様であり、集光レンズ2Cgから入射された各反射光RL(図6に示す例では、RL1、RL2、RL3)をそれぞれ導光し、複数の反射光RLにおける一対の反射光RLを光干渉させ、複数の干渉光ILを導光するものである。ここで、本実施形態では、複数の干渉光ILのうちの少なくとも1組の干渉光ILは、互いに共通な反射光RLを用いて光干渉させることによって生成されている。より具体的には、出力側導波路2Chは、第1実施形態における出力側導波路2Agや出力側導波路2Bfと同様であり、3つの導波路部2Ch−1、2Ch−2、2Ch−3と、分岐部2Ch−4と、合流部2Ch−5、2Ch−6と、導波路部2Ch−7、導波路部2Ch−8とを備えて構成されている。
【0123】
このような構成のハーフミラ2Cf、集光レンズ2Cg、出力側導波路2Chおよび出力端子2Ciでは、図6に示す例では、測定対象物Obの表面における3つの測定点P1、P2、P3でそれぞれ反射された3つの反射光(反射光の正反射成分)RL(RL1、RL2、RL3)は、測定部2Cに入射され、ハーフミラ2Cfを介して集光レンズ2Cgの前記各レンズにそれぞれ入射される。集光レンズ2Cgの前記各レンズは、各反射光RL1、RL2、RL3をそれぞれ導波路部2Chにおける3つの導波路部2Ch−1、2Ch−2、2Ch−3へ入射させる。すなわち、集光レンズ2Cgの前記各レンズは、出力側導波路2Chにおける3つの導波路部2Ch−1、2Ch−2、2Ch−3に対する導波路カップリング用である。中央の導波路部2Ch−2に入射された反射光RL2は、導波路部2Ch−2内を伝播し、導波路部2Ch−2によって導光され、分岐部2Ch−4で分配される。分岐部2Ch−4で分配された一方の反射光RL2(RL2−1)は、合流部2Ch−5に導光され、その他方の反射光RL2(RL2−2)は、合流部2Ch−6に導光される。また、導波路部2Ch−1に入射された反射光RL1は、導波路部2Ch−1内を伝播し、導波路部2Ch−1によって導光され、合流部2Ch−5に導光される。そして、導波路部2Ch−3に入射された反射光RL3は、導波路部2Ch−3内を伝播し、導波路部2Ch−3によって導光され、合流部2Ch−6に導光される。合流部2Ch−5では、上述のように導光された反射光RL2(周波数f2)と反射光RL1(周波数f1)とが合波され、光ヘテロダイン干渉されて第1干渉光IL1(=RL1+RL2)が生成される。この第1干渉光IL1は、合流部2Ch−5から導波路部2Ch−7に導光され、導波路部2Ch−7内を伝播し、導波路部2Ch−7によって導光され、出力端子2Ciに入射される。そして、合流部2Ch−6では、上述のように導光された反射光RL2(周波数f2)と反射光RL3(周波数f1)とが合波され、光ヘテロダイン干渉されて第2干渉光IL2(=RL2+RL3)が生成される。この第2干渉光IL2は、合流部2Ch−6から導波路部2Ch−8に導光され、導波路部2Ch−8内を伝播し、導波路部2Ch−8によって導光され、出力端子2Ciに入射される。これら第1および第2干渉光IL1、IL2は、測定対象物Obにおける表面形状の情報を含む光信号である。そして、これら第1および第2干渉光IL1、IL2は、出力端子2Ciを介して測定部2Cから位相検波部3Bへ入射される。
【0124】
集光レンズ2Cjは、その光軸が前記入力側導波路2Ccおよび対物レンズCdの光軸と一致するように配設されている。集光レンズ2Cjは、ハーフミラ2Cfをそのまま通過した複数の測定光ML(図6に示す例では、3つの測定光ML1、ML2、ML3)のそれぞれにレンズ作用を与えるべく、測定光ML(ML1、RL2、RL3)の個数に対応した個数のレンズ(この例では3つのレンズ)を備えて構成され、その射出側には、参照側導波路2Ckが、基材2Cmの前記所定の屈折率よりも極僅かだけ(例えば0.3〜3%程度)に大きくすることによって形成されている。ハーフミラ2Cfをそのまま通過した前記3つの測定光ML1、ML2、ML3は、参照光MLref1、MLref2、MLref3とされる。
【0125】
参照側導波路2Ckは、集光レンズ2Cjから入射された各参照光MLref(図6に示す例では、MLref1、MLref2、MLref3)をそれぞれ導光し、前記複数の干渉光ILに対応するように、複数の参照光MLrefにおける一対の参照光MLrefを光干渉させ、複数の参照干渉光ILrefを導光するものである。ここで、本実施形態では、複数の干渉光ILのうちの少なくとも1組の干渉光ILは、互いに共通な反射光RLを用いて光干渉させることによって生成されているので、これに対応するように、複数の参照干渉光ILrefのうちの少なくとも1組の参照干渉光ILrefは、互いに共通な参照光RLrefを用いて光干渉させることによって生成されている。より具体的には、参照側導波路2Ckは、大略、基材2Cmの前記下面に沿うように延び、所定の位置で略弧によって約90度曲がって他方側面に沿って前記上面にまで延びる略L字形状であり、集光レンズ2Cjにおける、3つの参照光MLref1、MLref2、MLref3に対応した3つレンズの射出側からそれぞれ延びる3つの導波路部2Ck−1、2Ck−2、2Ck−3と、中央の導波路部2Ck−2を2つに分岐する分岐部2Ck−4と、分岐部2Ck−4で分岐した一方の導波路部と前記導波路部2Ck−1とを合流する合流部2Ck−5と、分岐部2Ck−4で分岐した他方の導波路部と前記導波路部2Ck−3とを合流する合流部2Ck−6と、合流部2Ck−5から延びて参照出力端子2Clに至る導波路部2Ck−7と、合流部2Ck−6から延びて出力端子2Clに至る導波路部2Ck−8とを備えて構成されている。
【0126】
このような構成のハーフミラ2Cf、集光レンズ2Cj、参照側導波路2Ckおよび参照出力端子2Clでは、ハーフミラ2Cfをそのまま通過した複数の参照光MLref(図6に示す例ではMLref1、MLref2、MLref3)は、集光レンズ2Cjの前記各レンズにそれぞれ入射される。図6に示す例では、集光レンズ2Cjの前記各レンズは、各参照光MLref1、MLref2、MLref3をそれぞれ導波路部2Ckにおける3つの導波路部2Ck−1、2Ck−2、2Ck−3へ入射させる。すなわち、集光レンズ2Cjの前記各レンズは、参照側導波路2Ckにおける3つの導波路部2Ck−1、2Ck−2、2Ck−3に対する導波路カップリング用である。中央の導波路部2Ck−2に入射された参照光MLref2は、導波路部2Ck−2内を伝播し、導波路部2Ck−2によって導光され、分岐部2Ck−4で分配される。分岐部2Ck−4で分配された一方の参照光MLref2(MLref2−1)は、合流部2Ck−5に導光され、その他方の参照光MLref2(MLref2−2)は、合流部2Ck−6に導光される。また、導波路部2Ck−1に入射された参照光MLref1は、導波路部2Ck−1内を伝播し、導波路部2Ck−1によって導光され、合流部2Ck−5に導光される。そして、導波路部2Ck−3に入射された参照光MLref3は、導波路部2Ck−3内を伝播し、導波路部2Ck−3によって導光され、合流部2Ck−6に導光される。合流部2Ck−5では、上述のように導光された参照光MLref2(周波数f2)と参照光MLref1(周波数f1)とが合波され、光ヘテロダイン干渉されて第1参照干渉光ILref1(=MLref1+MLref2)が生成される。この第1参照干渉光ILref1は、合流部2Ck−5から導波路部2Ck−7に導光され、導波路部2Ck−7内を伝播し、導波路部2Ck−7によって導光され、参照出力端子2Clに入射される。そして、合流部2Ck−6では、上述のように導光された参照光MLref2(周波数f2)と参照光MLref3(周波数f1)とが合波され、光ヘテロダイン干渉されて第2参照干渉光ILref2(=MLref2+MLref3)が生成される。この第2参照干渉光ILref2は、合流部2Ck−6から導波路部2Ck−8に導光され、導波路部2Ck−8内を伝播し、導波路部2Ck−8によって導光され、参照出力端子2Clに入射される。これら第1および第2参照干渉光ILref1、ILref2は、前記第1および第2干渉光IL1、IL2からノイズを除去するべく、前記第1および第2干渉光IL1、IL2を補正するための光信号である。そして、これら第1および第2参照干渉光ILref1、ILref2は、参照出力端子2Clを介して測定部2Cから位相検波部3Bへ入射される。
【0127】
図4に戻って、第1実施形態と同様に、測定部2Cと位相検波部3Bとは、シングルモード光ファイバであってもよいが、光軸調整および伝播光の光量における優位性の観点から、マルチモード光ファイバによって接続されている。すなわち、本実施形態では、測定部2Cから射出された複数の干渉光ILおよびこれに対応する複数の参照干渉光ILref、図4および図6に示す例では第1および第2干渉光IL1、IL2ならびに第1および第2参照干渉光ILref1、ILref2は、マルチモード光ファイバによって導光され、位相検波部3Bへ入射する。
【0128】
位相検波部3Bは、測定部2Cから射出した複数の干渉光ILおよび複数の参照干渉光ILrefを位相検波し、複数の参照干渉光ILrefを用いることによってノイズを除去しつつ、互いに共通な反射光RLを用いて光ヘテロダイン干渉することによって得られた組の干渉光間における位相差△Φを検出するものである。そして、位相検波器3Bは、この検出した位相差△Φを演算制御部5へ出力する。より具体的には、位相検波部3Bは、図4に示すように、干渉光用の光電変換部3Ba(3Ba1、3Ba2)と、参照干渉光用の光電変換部3Bb(3Bb1、3Bb2)と、干渉光用の位相検波器3Bcと、参照干渉光用の位相検波器3Bdと、補正部3Beとを備えて構成される。
【0129】
光電変換部3Ba、3Bbは、例えばホトダイオード等の、入射光の光量に応じた信号レベルの電気信号に変換して該電気信号を出力する光電変換素子を備えて構成される。光電変換部3Baは、測定部2Cによって得られる干渉光ILの個数に応じて用意され、測定部2Cからの複数の干渉光ILをそれぞれ受光して、その各光量に応じた信号レベルの各電気信号を各干渉信号Sigとして出力するものである。本実施形態では、前記干渉光ILは、2つであることから、2個の光電変換部3Ba1、3Ba2が用意される。各光電変換部3Ba1、3Ba2のそれぞれは、測定部2Cの出力端子2Ciから射出された2つの第1および第2干渉光IL1、IL2を各マルチモード光ファイバおよび図略の各入力端子を介してそれぞれ受光し、これら各干渉光IL1、IL2の各光量に応じて第1および第2干渉信号Sig1、Sig2をそれぞれ位相検波器3Bcへ出力する。同様に、光電変換部3Bbは、測定部2Cによって得られる参照干渉光ILrefの個数に応じて用意され、測定部2Cからの複数の参照干渉光ILrefをそれぞれ受光して、その各光量に応じた信号レベルの各電気信号を各参照干渉信号Refとして出力するものである。本実施形態では、前記参照干渉光ILrefは、2つであることから、2個の光電変換部3Bb1、3Bb2が用意される。各光電変換部3Bb1、3Bb2のそれぞれは、測定部2Cの参照出力端子2Clから射出された2つの第1および第2参照干渉光ILref1、ILref2を各マルチモード光ファイバおよび図略の各入力端子を介してそれぞれ受光し、これら各参照干渉光ILref1、ILref2の各光量に応じて第1および第2参照干渉信号Ref1、Ref2をそれぞれ位相検波器3Bdへ出力する。
【0130】
位相検波器3Bcは、光電変換部3Baから複数の干渉信号Sigが入力され、互いに共通な反射光RLを用いて光ヘテロダイン干渉することによって得られた組の干渉光ILに関し、複数の干渉信号Sig間の位相差△Φsを検出する装置である。図4に示す例では、位相検波器3Bcは、光電変換部3Ba1、3Ba2から第1および第2干渉信号Sig1、Sig2が入力され、これら第1干渉信号Sig1と第2干渉信号Sig2との間における位相差△Φsを検出する。そして、位相検波器3Bcは、この検出した位相差△Φsを補正部3Beへ出力する。
【0131】
位相検波器3Bdは、光電変換部3Bbから複数の参照干渉信号Refが入力され、前記互いに共通な参照光MLrefを用いて光ヘテロダイン干渉することによって得られた組の参照干渉光ILrefに関し、複数の参照干渉信号Ref間の位相差△Φrを検出する装置である。この前記互いに共通な参照光MLrefは、前記互いに共通な反射光RLを得るために用いられた測定光MLに対応する参照光MLrefである。図4に示す例では、位相検波器3Bdは、光電変換部3Bb1、3Bb2から第1および第2参照干渉信号Ref1、Ref2が入力され、これら第1参照干渉信号Ref1と第2参照干渉信号Ref2との間における位相差△Φrを検出する。そして、位相検波器3Bdは、この検出した位相差△Φrを補正部3Beへ出力する。
【0132】
補正部3Beは、前記互いに共通な反射光RLを用いて光ヘテロダイン干渉することによって得られた組の干渉光間における位相差△Φsにおけるノイズを除去するべく、前記組の干渉光に対応する複数の参照干渉光の間における位相差△Φrを用いることによって、前記組の干渉光における位相差△Φsを補正するものである。補正部3Beは、例えば、前記組の干渉光間における位相差△Φsと、前記組の干渉光に対応する複数の参照干渉光の間における位相差△Φrとの差を求めることによって、前記補正を行う。
【0133】
そして、ステージ4、演算制御部5、入力部6および出力部7は、それぞれ、第1実施形態の表面形状測定装置SAにおけるステージ4、演算制御部5、入力部6および出力部7と同様であるので、その説明を省略する。
【0134】
次に、本実施形態における表面形状測定装置SBの動作について説明する。なお、以下の説明において、各測定箇所MPにおける複数の測定点Pnは、説明の便宜上、図4に示す場合を例として、3個である場合について説明を行う。
【0135】
図略の電源スイッチがオンされると、表面形状測定装置SBが起動され、演算制御部5によって必要な各部の初期化が行われる。そして、例えば半導体ウェハ等の板状体の測定対象物Obがステージ4に載置され、入力部6から測定開始を指示するコマンドを受け付けると、演算制御部5は、測定対象物Obの表面形状の測定を開始する。
【0136】
まず、演算制御部5の光源制御部53は、測定光生成部1Bを駆動し、単波長レーザ光源1Baに所定のレーザ光を発光させる。この単波長レーザ光源1Aaによる所定のレーザ光の発光により、上述した光学系の作用によって、各測定光MLf1、MLf2が測定光生成部1Bの各出力端子1Bf、1Biからそれぞれ射出される。
【0137】
続いて、この測定光生成部1Bの各出力端子1Bf、1Biからそれぞれ射出された各測定光MLf1、MLf2は、前記各光ファイバをそれぞれ伝播し、測定部2Cに入射される。この測定部2Cでは、この入射された各測定光MLf1、MLf2から上述した光学系の作用によって第1および第2干渉光IL1、IL2ならびに第1および第2参照干渉光ILref1、ILref2がそれぞれ生成され、第1および第2干渉光IL1、IL2は、出力端子2Ciから射出され、第1および第2参照干渉光ILref1、ILref2は、出力端子2Clから射出される。続いて、この測定部2Cの出力端子2Ciから射出された第1および第2干渉光IL1、IL2は、前記マルチモード光ファイバを伝播し、位相検波部3Bに入射される。そして、この測定部2Cの出力端子2Clから射出された第1および第2参照干渉光ILref1、ILref2は、前記マルチモード光ファイバを伝播し、位相検波部3Bに入射される。この位相検波部3Bでは、互いに共通な反射光RL2を用いて光ヘテロダイン干渉することによって得られた組について、これら第1および第2干渉光IL1、IL2の位相検波によって、第1および第2干渉光IL1、IL2間の位相差△Φsが検出されるとともに、これら第1および第2参照干渉光ILref1、ILref2の位相検波によって、第1および第2参照干渉光ILref1、ILref2間の位相差△Φrが検出される。そして、位相検波部3Bは、これら位相差△Φsと位相差△Φrとの差が求められる。例えば、位相検波部3Bは、位相差△Φsから位相差△Φrを減算する。
【0138】
そして、この測定部2Cおよび位相検波部3Bがこのような動作を行っている際に、演算制御部5のステージ制御部52は、ステージ4を制御することによって、測定対象物Obをその高さ方向に直交する水平方向に移動させる。例えば、演算制御部5のステージ制御部52は、測定箇所MPにおける複数の測定点Pnが移動方向に沿って並び、この移動方向に沿って互いに隣接する2つの測定点Pn−1、Pnの間隔が等しくなるように、かつ、上述したように、一の測定箇所MPtempにおける測定点P3と、走査(移動)によってこの一の測定箇所MPtempの次に測定される測定箇所MPnextにおける測定点P1とが重複するように、ステージ4を移動させる。
【0139】
続いて、これら各測定箇所MPmの各位相差△Φmが取得されると、演算制御部5の形状算出部51は、上述したように、各測定箇所MPmにおける勾配Grmを求め、走査順に従ってこれら各測定箇所MPmにおける勾配Grmを連結することによって、測定対象物Obの表面形状を求める。
【0140】
続いて、演算制御部5は、この求めた測定対象物Obの表面形状を出力部7に出力し、出力部7は、測定対象物Obの表面形状を表示する。
【0141】
このように動作することによって本実施形態における表面形状測定装置SBおよびこれに実装された表面形状測定方法では、光ヘテロダイン干渉計による方法であるので、比較的短時間であってnmオーダで、測定対象物Obの表面形状を測定することができる。そして、このような構成の表面形状測定装置SBおよび表面形状測定方法では、測定対象物Obにおける3つ以上の複数の測定点P、図4に示す例では1つの測定箇所MPにおける3つの測定点P1、P2、P3で反射された3つの反射光RL1、RL2、RL3を光ヘテロダイン干渉させる際に、互いに共通な反射光RL2を用いて光干渉させる場合を含むので、測定対象物Obの表面における勾配情報を表す位相情報を持った第1および第2干渉光IL1、IL2が得られる。このため、例えば、測定対象物Obを載置するステージ4における上下動による振動、測定光学系における保持ゆらぎによる振動および測定対象物Ob自体の振動等の振動が測定結果に及ぼす影響を相殺して略消去することができる。したがって、このような構成の表面形状測定装置SBおよび表面形状測定方法は、比較的短時間であってnmオーダで、より高精度に、測定対象物Obの表面形状を測定することができる。
【0142】
また、上述の本実施形態における表面形状測定装置SBでは、測定光生成部1Bおよび測定部2Cは、光ヘテロダイン干渉計を構成し、互いに共通な反射光RL2を用いて光ヘテロダイン干渉させることで得られた第1および第2干渉光IL1、IL2をそれぞれ位相検波し、これら第1および第2干渉光IL1、IL2間の位相差△Φsを検出する位相検波部3Bと、位相検波部3Bから出力される第1および第2干渉光IL1、IL2間の位相差△Φsに基づいて測定対象物Obの表面形状を演算する演算制御部5とを備えている。このため、このような本実施形態の表面形状測定装置SBは、光ヘテロダイン干渉計を備えるので、より高精度に、測定対象物の表面形状を測定することができる。
【0143】
そして、上述の本実施形態における表面形状測定装置SBでは、測定部2Cは、さらに、前記第1および第2干渉光IL1、IL2に対応する第1および第2参照干渉光ILref1、ILref2を生成し、位相検波部3Bは、さらに、第1および第2参照干渉光ILref1、ILref2をそれぞれ位相検波し、これら第1および第2参照干渉光ILref1、ILref2間の位相差△Φrを補正値として検出し、そして、第1および第2干渉光IL1、IL2における各位相間の位相差△Φsを前記補正値△Φrで補正している。そして、演算制御部5の形状算出部51は、この位相検波部3Bで検出され補正された位相差(|△Φs−△Φr|)に基づいて測定対象物Obの表面形状を求めている。光源部1Baから放射された光Lを測定対象物Obの表面まで導光する間において生じる位相ゆらぎが測定結果に大きく影響を及ぼすが、このような本実施形態の表面形状測定装置SBは、前記位相ゆらぎが測定結果に及ぼす影響を消去することができ、さらにより高精度に、測定対象物の表面形状を測定することができる。
【0144】
また、上述の本実施形態のおける表面形状測定装置SBでは、測定部2Cは、基材2Cmに屈折率の異なる光導波路を形成した光導波路型光学素子を含む。このため、このような本実施形態の表面形状測定装置SBは、光導波路型光学素子を備えて測定部2Cを構成するので、空気のゆらぎを除去できて温度のゆらぎも低減することができ、干渉光をより安定的に得ることができる。また、このような本実施形態の表面形状測定装置SBは、複数の光学素子を組み合わせて構成する場合に較べて、光路をより厳密に製作することができ、組立後の光路調整が不要となり、また小型化が可能となる。このため、本実施形態における表面形状測定装置SAでは、携帯型とすることも可能となる。
【0145】
図7は、1つの測定箇所における複数の測定点の態様を説明するための図である。図7(A)は、その第1態様を説明するための図であり、図7(B)は、その第2態様を説明するための図であり、そして、図7(C)は、その第3態様を説明するための図である。
【0146】
なお、上述の第1および第2実施形態では、1つの測定箇所MPにおける複数の測定点が3つである場合について説明したが、1つの測定箇所MPにおける複数の測定点は、3つ以上であれば、任意の個数でよく、例えば、図7(A)および図7(B)に示すように、5つであってもよく、また例えば、図7(C)に示すように、9つであってもよい。
【0147】
図7(A)に示す第1態様では、1つの測定箇所MPにおいて、5つの測定点P1〜P5は、直線状に並び、このような5つの測定点P1〜P5は、例えば、回折格子を用いることによって実現することが可能である。このような場合では、例えば、測定点P1、P2、P3を1組として位置的に互いに隣接する測定点P1、P2の反射光RL1、RL2および位置的に互いに隣接する測定点P2、P3の反射光RL2、RL3をそれぞれ一対とし、測定点P3、P4、P5を1組として位置的に互いに隣接する測定点P3、P4の反射光RL3、RL4および位置的に互いに隣接する測定点P4、P5の反射光RL4、RL5をそれぞれ一対として光干渉が行われる。このように中央に位置する測定点Pの反射光を互いに共通な反射光とし、この共通な反射光とこの測定点Pに隣接して一方側に位置する測定点Pの反射光とで光干渉が行われるとともに、この共通な反射光とこの測定点Pに隣接して他方側に位置する測定点Pの反射光とで光干渉が行われる。
【0148】
図7(B)に示す第2態様では、1つの測定箇所MPにおいて、5つの測定点P1〜P5は、測定点P3を中心に+字状に並び(直線状に並ぶ測定点P1、P3、P5と直線状に並ぶ測定点P2、P3、P4とを直交させて並び)、このような5つの測定点P1〜P5は、例えば、互いに回折方向を直交させて順に配置された2つの回折格子を用いることによって実現することが可能である。このような場合では、例えば、測定点P1、P3、P5を1組として位置的に互いに隣接する測定点P1、P3の反射光RL1、RL3および位置的に互いに隣接する測定点P3、P5の反射光RL3、RL5をそれぞれ一対とし、測定点P2、P3、P4を1組として位置的に互いに隣接する測定点P2、P3の反射光RL2、RL3および位置的に互いに隣接する測定点P3、P4の反射光RL3、RL5をそれぞれ一対として上述と同様に光干渉が行われる。
【0149】
図7(C)に示す第3態様では、1つの測定箇所MPにおいて、9つの測定点P1〜P9は、測定点P5を中心に2次元アレイ状に並び(直線状に並ぶ測定点P1〜P3と直線状に並ぶP4〜P6と直線状に並ぶ測定点P7〜P9とを順に並列させて並び)、このような9つの測定点P1〜P9は、例えば、互いに回折方向を直交させて順に配置された2つの回折格子を用いることによって実現することが可能である。このような場合では、例えば、測定点P1〜P3を1組として位置的に互いに隣接する測定点P1、P2の反射光RL1、RL2および位置的に互いに隣接する測定点P2、P3の反射光RL2、RL3をそれぞれ一対とし、測定点P4〜P6を1組として位置的に互いに隣接する測定点P4、P5の反射光RL4、RL5および位置的に互いに隣接する測定点P5、P6の反射光RL5、RL6をそれぞれ一対とし、測定点P7〜P9を1組として位置的に互いに隣接する測定点P7、P8の反射光RL7、RL8および位置的に互いに隣接する測定点P8、P9の反射光RL8、RL9をそれぞれ一対とし、そして、測定点P2、P5、P8を1組として位置的に互いに隣接する測定点P2、P5の反射光RL2、RL5および位置的に互いに隣接する測定点P5、P8の反射光RL5、RL8をそれぞれ一対として上述と同様に光干渉が行われる。
【0150】
(第3実施形態)
第2実施形態における表面形状測定装置SBは、光へテロダイン干渉によって干渉光ILを生成し、この干渉光ILに基づいて測定対象物Obの表面形状を測定する装置であるが、第3実施形態における表面形状測定装置SCは、いわゆる自己遅延型光ヘテロダイン干渉によって干渉光ILを生成し、この干渉光ILに基づいて測定対象物Obの表面形状を測定する装置である。即ち、第2実施形態における表面形状測定装置SBでは、光源部1Baから射出されたレーザ光Lを第1レーザ光L1と第2レーザ光L2とに分配し、一方のレーザ光(第2レーザ光L2)の波長(周波数)をシフトすることにより第1レーザ光L1と第2レーザ光L2との間に周波数差Δfを生じさせて光干渉させるのに対し、第3実施形態における表面形状測定装置SCでは、光源部1Caから射出された周波数が周期的にシフト(変調)するレーザ光Lsを複数のレーザ光Ls1、Ls2、Ls3、…、Lsnに分配し、これら分配されたレーザ光Ls1、Ls2、Ls3、…、Lsnを互いに異なる光路長を有する導波路部によって案内することにより、レーザ光Ls間に所定の周波数差Δfsを生じさせて光干渉させる。
【0151】
図8は、第3実施形態における表面形状測定装置SCの構成を示す図である。図9は、図8に示す表面形状測定装置SCにおける測定部2Dの構成を示す図である。
【0152】
第3実施形態の表面形状測定装置SCは、測定対象物Obにおける高さ方向(厚さ方向)の変化である表面形状を測定する装置であり、例えば、図8に示すように、測定光生成部1Cと、測定部2Dと、位相検波部3Cと、ステージ(載置台)4と、演算制御部5と、入力部6と、出力部7とを備えて構成され、ステージ4によって測定対象物Obを水平方向に移動させることによって測定対象物Obの表面を走査し、所定範囲に亘る測定対象物Obの表面形状を測定するものである。
【0153】
測定光生成部1Cは、所定の可干渉光であって、測定対象物Obの表面形状を光ヘテロダイン干渉法によって測定するための測定光MLを生成する装置である。測定光MLは、周期的に周波数がシフトする光(図10(B)参照)であって、予め設定された所定の偏光面を持つ偏光である。このような測定光生成部1Cは、例えば、図8に示すように、光源部1Caと、光アイソレータ1Cbと、偏光子1Ccと、出力端子1Cdとを備えて構成される。
【0154】
光源部1Caは、光Lsを放射する装置であり、例えば、半導体レーザを備えて構成される。この半導体レーザは、発振周波数が注入電流に僅かに依存し、局所的な部分においてはこの間に線形性を持つ。この光源部1Caには、注入電流用電源(図示省略)が接続されている。本実施形態の光源部1Caでは、注入電流用電源を制御することにより、発振周波数の時間変化がグラフにおいて鋸刃状となるような発振周波数の変調を行う(図10(A)及び図10(B)参照)。このとき、半導体レーザにおいて注入電流に対して発振周波数が線形依存する領域(変調振幅Δi[A])を用い、この領域における半導体レーザの注入電流に対する発振周波数の変化率をβ[Hz/A]とし、変調周波数をfm[Hz]とする。光アイソレータ1Cbは、第1実施形態の光アイソレータ1Abと同様な光部品である。偏光子1Ccは、第1実施形態の偏光子1Acと同様な光部品である。出力端子1Cdは、光部品から光を射出するための端子であり、例えば、第1実施形態の出力端子1Adと同様な、光ファイバを接続するためのコネクタである。
【0155】
これら光源部1Ca、光アイソレータ1Cb、偏光子1Cc、および出力端子1Cdは、互いに光軸を一致させて、光の伝播方向に従ってこの順で配設される。
【0156】
このような測定光生成部1Cでは、光源部1Caの半導体レーザから射出された周期的に周波数がシフトする(発振周波数の時間変化がグラフにおいて鋸刃状となる(図10(B)参照))レーザ光Lsは、光アイソレータ1Cbを介して偏光子1Ccに入射され、所定の偏光面を持つレーザ光(s偏光のレーザ光またはp偏光のレーザ光)の測定光MLsとなって、出力端子1Cdから射出される。この測定光MLsは、測定部2Dに入射される。
【0157】
測定光生成部1Cと測定部2Dとの接続には、第1実施形態における測定光生成部1Aと測定部2Aとの接続と同様に、光ファイバが用いられる。
【0158】
測定部2Dは、測定光生成部1Cからの測定光MLsが入射され、測定光MLsを用いた自己遅延型光ヘテロダイン干渉法によって測定対象物Obにおける表面形状の情報を含む光信号を得る装置である。このような測定部2Dは、1つの測定箇所MPに対する1回の測定光MLs(MLs1、MLs2、MLs3、・・・、MLsn)の照射による測定において、測定対象物Obの表面において3つ以上の複数の測定点P(P1、P2、P3、・・・、Pn)に測定光ML(MLs1、MLs2、MLs3、・・・、MLsn)をそれぞれ照射するべく、測定光生成部1Cからの測定光MLsを3つ以上の複数の測定光MLs1、MLs2、MLs3、・・・、MLsnに分ける光分割部と、この光分割部で分けられた複数の測定光MLs1、MLs2、MLs3、・・・、MLsnをそれぞれ案内して、測定対象物Obにおける複数の測定点P1、P2、P3、・・・、Pnに測定光をそれぞれ照射する3つ以上の複数の導光部と、測定対象物Obにおける複数の測定点P1、P2、P3、・・・、Pnでそれぞれ反射された複数の反射光RLs(RLs1、RLs2、RLs3、・・・、RLsn)における一対の反射光RLsを光干渉させる複数の光干渉部とを備え、これら複数の光干渉部における少なくとも1組の光干渉部は、互いに共通な反射光RLsを用いて光干渉させるように構成されている。また、前記の1組の光干渉部において干渉させる各反射光RLsを得るための1組の導光部は、これら1組の導光部のうちの前記1組の光干渉部における互いに共通な反射光RLsが得られる測定点Pに測定光MLsを照射する特定の導光部と、前記1組の導光部のうちの前記1組の光干渉部における互いに共通な反射光RLs以外の反射光RLsが得られる測定点Pに測定光MLsを照射する少なくとも2つの他の導光部との間の光路差Δdがそれぞれ所定の光路差となる光路長をそれぞれ有する。
【0159】
より具体的に、測定部2Dは、例えば、図9に示すように、入力端子2Daと、入力側導波路2Dbと、対物レンズ2Dcと、ハーフミラ2Ddと、集光レンズ2Deと、出力側導波路2Dfと、出力端子2Dgとを備えて構成され、これら入力側導波路2Dbおよび出力側導波路2Dfは、基材2Dhに当該基材2Dhと屈折率の異なる光導波路を形成することによって設けられている。
【0160】
基材2Dhは、所定の屈折率を持つ材料から形成された板状の部材(基板)であり、外周面の所定の各位置に入力端子2Daおよび出力端子2Dgが配設されている。図9に示す例では、基材2Dhは、略直方体形状であり、その上面上に入力端子2Daおよび出力端子2Dgが配設されている。この入力端子2Daには、上述のように、測定光生成部1Cから延びる前記光ファイバが接続される。
【0161】
そして、基材2Dhには、基材2Dhにおける入力端子2Daが配設されている位置から延びる入力側導波路2Dbが、基材2Dhにおける前記所定の屈折率よりも極僅かだけ(例えば0.3〜3%程度)大きくすることによって形成されている。この入力側導波路2Dbは、入力端子2Daを介してその一方端から入射された測定光生成部1Cからの測定光MLsを分岐させ、その他方端に配設されている対物レンズ2Dcまで案内する。
【0162】
詳しくは、入力側導波路2Dbは、光分岐部2Db−1、2Db−2と、導波路部2Db−3、2Db−4、2Db−5とを備えて構成されている。
【0163】
光分岐部2Db−1、2Db−2は、入力端子2Daを介して入力側導波路2Db内に入射した測定光生成部1Cからの測定光MLsを複数の測定光MLs(図9に示す例では、MLs1、MLs2、MLs3)に分配し、分配した複数の測定光MLs1、MLs2、MLs3をそれぞれ複数の導波路部2Db−3、2Db−4、2Db−5に入射させる。図9に示す例では、2つの光分岐部2Db−1、2Db−2が測定光MLsを3つの測定光MLs1、MLs2、MLs3に分岐し、これら3つの測定光MLs1、MLs2、MLs3をそれぞれ3つの導波路部2Db−3、2Db−4、2Db−5に入射させる。各導波路部2Db−3、2Db−4、2Db−5は、各光分岐部2Db−1、2Db−2の上流側の入力側導波路2Dbの部位と共同して、入力側導波路部(導光部)2Db−13、2Db−14、2Db−15を構成する。各入力側導波路部2Db−13、2Db−14、2Db−15は、隣り合う測定点Pn、Pn+1に測定光MLsを照射する一対の入力側導波路部間の光路差が所定の光路差Δdとなる光路長をそれぞれ有している。本実施形態の各入力側導波路部2Db−13、2Db−14、2Db−15では、測定対象物Obの表面において一列に並ぶ測定点P1、P2、P3、…、Pnの一端に位置する測定点P1に向けて測定光MLs1を導波する入力側導波路部2Db−13から前記一列の他端側に位置する測定点Pnに測定光MLsを照射する入力側導波路部に向けて光路長が順に長くなっている。このように、複数の入力側導波路部の光路長が順に長くなるように構成されることで、列方向に並ぶ測定点Pn、Pn+1間の勾配をそれぞれ一度に測定することができるため、測定点P1、P2、P3、…、Pnの並ぶ方向に沿った測定対象物Obの表面形状を一度に測定することができる。図9に示す例では、測定光MLs1を導波する入力側導波路部2Db−13よりも測定光MLs2を導波する入力側導波路部2Db−14の法が光路長がΔdだけ長く、測定光MLs2を導波する入力側導波路部2Db−14よりも測定光MLs3を導波する入力側導波路部2Db−15の法が光路長がΔdだけ長くなるように構成されている。即ち、互いに隣り合う測定点P1、P2に照射される測定光MLs1、MLs2を導波する入射側導波路部2Db−13、2Db−14が、これら入射側導波路部2Db−13、2Db−14間の光路差が所定の光路差Δdとなる光路長をそれぞれ有し、且つ、互いに隣り合う測定点P2、P3に照射される測定光MLs2、MLs3を導波する入射側導波路部2Db−14、2Db−15が、これら入射側導波路部2Db−14、2Db−15間の光路差が前記所定の光路差Δdとなる光路長をそれぞれ有する。具体的には、各入力側導波路部2Db−13、2Db−14、2Db−15は、基材2Dhにおいて、共通の面(図9においては紙面)に沿って配設されている。そして、入力側導波路2Db−14は、前記共通の面に沿って湾曲するように延びる光路冗長部DV−1が形成されることで入力側導波路2Db−13よりも光路長がΔdだけ長くなり、入力側導波路2Db−15は、前記共通の面に沿って光路冗長部DV−1よりもさらに大きく湾曲するように延びる光路冗長部DV−2が形成されることで入力側導波路2Db−14よりも光路長がΔdだけ長くなっている。
【0164】
入力側導波路部2Db−13、2Db−14間、及び、入力側導波路部2Db−14、2Db−15間の光路差は、隣り合う測定点P1、P2又はP2、P3で反射された反射光RLs1、RLs2又はRLs2、RLs3同士を出力側導波路2Dfで光干渉させるためにこれら一対の反射光RLs1、RLs2又はRLs2、RLs3と対応する測定光MLs1、MLs2又はMLs2、MLs3間に設けられる周波数の差Δfsに基づくものである。具体的に、光路差Δdは、以下の式(1)によって規定される。
【0165】
Δfs=α・(Δd/C)=β・Δi・fm・(Δd/C) [Hz] ・・・(1)
ここで、Cは測定光MLの進行速度であり、半導体レーザが線形依存する領域におけるΔiは変調振幅(図10(A)参照)であり、βは半導体レーザの注入電流Δiに対する発振周波数の変化率(図10(B)参照)であり、αは時間あたりの測定光周波数の変化率であって、
α=β・Δi・fm [Hz/秒] ・・・(2)
を満たす値である。また、測定光MLsの周波数差Δfsは、後述する位相検波部3Cや演算制御部5における演算等で扱い易い値に設定される。
【0166】
一対の入力側導波路部2Db−13、2Db−14、又は、2Db−14、2Db−15間にこのような光路差Δdを設けることで、各入射側導波路部2Db−13、2Db−14、2Db−15に導波された測定光MLs1、MLs2、又はMLs2、MLs3間には僅かな周波数差Δfsが生じ(例えば、図11参照)、これにより、測定対象物Obの測定箇所MPで反射された反射光RLs1、RLs2、又はRLs2、RLs3同士を光へテロダイン干渉(自己遅延型光へテロダイン干渉)させることが可能となる。
【0167】
尚、各入力側導波路部2Db−13、2Db−14、2Db−15は、前記一列に並ぶ測定点P1、P2、P3、…、Pnの一端に位置する測定点P1に向けて測定光MLs1を導波する入力側導波路部2Db−13から前記一列の他端側に位置する測定点Pnに向けて測定光MLsを導波する入力側導波路部に向けて光路長が順に長くなる構成に限定されない。例えば、各入力側導波路部は、特定の入力側導波路部の光路長を基準として、この特定の入力側導波路部の光路長とこれ以外の他の入力側導波路部の光路長との光路差がそれぞれ上記の周波数の差Δfsとなるように構成されてもよい。図12に示す例では、測定部2Eに3つの入力側導波路部2Eb−13、2Eb−14、2Eb−15が設けられ、2番目(中央)の入力側導波路部(特定の入力側導波路部)2Eb−14に光路冗長部EVを設けることによって、隣り合う測定点Pn、Pn+1に向けて測定光MLsを導波する一対の入力側導波路部2Eb−13、2Eb−14、又は2Eb−14、2Eb−15間に所定の光路差Δdを生じさせている。このように構成することで、測定点P1と測定点P2とに測定光MLs1、MLs2を照射する入力側導波路部2Eb−13、2Eb−14間の光路差Δdと、測定点P2と測定点P3とに測定光MLs2、MLs3を照射する入力側導波路部2Eb−14、2Eb−15間の光路差Δdとを容易且つ確実に一致させることができ、これにより、測定対象物Obの表面形状をより精度よく測定することができる。
【0168】
また、各入力側導波路部は、一列に並ぶ測定点の一端に位置する測定点に向けて測定光を導波する導光部から前記一列の他端側に位置する測定点に向けて測定光を導波する入力側導波部に向けて奇数番目(又は偶数番目)の入力側導波部の光路長がそれぞれ同じになるように構成されてもよい。図7(A)に示す例において、測定点P1、P2、P3に照射する測定光MLs1、MLs2、MLs3を導光する入力側導波路部を1組とし、測定点P3、P4、P5に照射する測定光MLs3、MLs4、MLs5を導光する入力側導波路部を別の1組とする。そして、前記1組の入力側導波路部の測定光MLs2を導光する入力側導波路部(特定の入力側導波路部)の光路長と、測定光MLs1、MLs3を導光する入力側導波路部(他の入力側導波路部)の光路長との光路差がそれぞれ上述の光路差Δdとなるように構成すると共に、前記別の1組の入力側導波路部の測定光MLs4を導光する入力側導波路部(特定の入力側導波路部)の光路長と、測定光MLs3、MLs5を導光する入力側導波路部(他の入力側導波路部)の光路長との光路差がそれぞれ上述の光路差Δdとなるように構成してもよい。
【0169】
この場合、測定点Pの数をさらに増やし、奇数番目の測定点P(2n+1)に照射する測定光MLs(2n+1)を導光する入力側導波路部の光路長を全て同じ第1光路長にし、例えば特定の偶数番目の測定点P6を除く偶数番目の測定点P(2(n+1))に照射する測定光MLs(2(n+1))を導光する入力側導波路部の光路長を第1光路長と異なる第2光路長とし、測定点P6に測定光MLs6を照射する入力側導波路部の光路長だけを第1光路長及び第2光路長と異なる第3光路長とすれば、測定点P6に照射する測定光MLs6を導光する入力側導波路部とその隣の測定点P5、P7に照射する測定光MLs5、MLs7を導光する入力側導波路部との間の光路差Δd1を、他の隣り合う測定点Pn、Pn+1に照射する測定光MLsn、MLsn+1を導光する入力側導波路部間の各光路差Δd2と異なる値にすることができる。即ち、このような構成の表面形状測定装置では、光へテロダイン干渉させる光同士の周波数差を測定対象物Obにおける測定点Pの並ぶ方向において変化させることが可能となる。
【0170】
また、図7(B)に示す例において、測定点P1、P2、P3、P4、P5に照射する測定光MLs1、MLs2、MLs3、MLs4、MLs5を導光する入力側導波路部を1組とし、測定光MLs3を導光する入力側導波路部(特定の入力側導波路部)の光路長と、測定光MLs1、MLs2、MLs4、MLs5を導光する入力側導波路部(他の入力側導波路部)の光路長との光路差がそれぞれ上述の光路差Δdとなるように構成してもよい。このように、特定の入力側導波路部からの測定光MLs3が照射される測定点P3を中心にしてそれを囲むように他の入力側導波路部からの測定光MLs1、MLs2、MLs4、MLs5が照射されるようにすれば、中心の測定点P3とその周りを囲む各測定点P1、P2、P4、P5との間の勾配をそれぞれ一度に測定することができ、これにより、測定対象物Obの表面方向における所定範囲の表面形状を一度に測定することが可能となる。
【0171】
対物レンズ2Dcは、入力側導波路2Dbで導光された複数の測定光MLs1、MLs2、MLs3のそれぞれにレンズ作用を与えるべく、複数の測定光MLs1、MLs2、MLs3の個数に対応した個数のレンズを備えて構成され、その射出側には、ハーフミラ2Ddが配設されている。図9に示す例では、対物レンズ2Dcは、入力側導波路2Dbにおける3つの導波路部2Db−3〜2Db−5から射出された各測定光MLs1、MLs2、MLs3のそれぞれにレンズ作用を与えるべく、3つのレンズを備えて構成されている。対物レンズ2Dcの各レンズは、入力側導波路2Dbにおける3つの導波路部2Db−3〜2Db−5から射出された各測定光MLs1、MLs2、MLs3を集光し、これら集光した各測定光MLs1、MLs2、MLs3をハーフミラ2Ddに入射させる。
【0172】
ハーフミラ2Ddは、入射光を光パワーの点で2つの光に分配してそれぞれ射出する光部品であり、この分配された一方の光は、ハーフミラ2Ddを通過してそのままの方向で射出され、この分配された他方の光は、ハーフミラ2Ddで反射されて前記方向と垂直な方向(直交する方向)で射出される。
【0173】
これら入力側導波路2Dbおよび対物レンズ2Dcは、互いにその光軸が一致するように配置されており、ハーフミラ2Ddは、この光軸に対し鏡面が45度の角度で交差するように配設されている。
【0174】
このような構成の入力端子2Da、入力側導波路2Db、対物レンズ2Dcおよびハーフミラ2Ddでは、測定光生成部1Cからの測定光MLsは、入力端子2Daを介して入力側導波路2Dbに入射し、光分岐部2Db−1で分配され、一方の測定光MLs3は、導波路部2Db−5内を伝播し、当該導波路部2Db−5によって導光され、対物レンズ2Dcの対応するレンズに入射される。また、光分岐部2Db−1で分配された他方の測定光MLsは、光分岐部2Db−2で分配され、一方の測定光MLs2は、導波路部2Db−4内を伝播し、当該導波路部2Db−4によって導光され、対物レンズ2Dcの対応するレンズに入射される。また、光分岐部2Db−2で分配された他方の測定光MLs1は、導波路部2Db−3内を伝播し、当該導波路部2Db−3によって導光され、対物レンズ2Dcの対応するレンズに入射される。
【0175】
このとき、各導波路部2Db−3〜2Db−5では、互いに光路長が異なるため、対物レンズ2Dcに入射した各測定光MLs1、MLs2、又は、MLs2、MLs3間には所定の周波数差Δfsが生じている。
【0176】
ハーフミラ2Ddを通過してそのままの方向で射出された、3つの平行な測定光MLs1、MLs2、MLs3は、集光レンズ2Deに入射される。
【0177】
そして、ハーフミラ2Ddで反射されハーフミラ2Ddから射出された3つの平行な測定光MLs1、MLs2、MLs3は、測定部2Dから射出され、測定対象物Obの表面での1つの測定箇所MPにおける3つの測定点P1、P2、P3にそれぞれ照射され、反射される。この測定対象物Obの表面における3つの測定点P1、P2、P3でそれぞれ反射された3つの反射光(反射光の正反射成分)RLs(RLs1、RLs2、RLs3)は、測定部2Dに入射され、ハーフミラ2Ddを介して集光レンズ2Deに入射される。反射光RLs1は、測定光MLs1が測定点P1で反射した光である。反射光RLs2は、測定光MLs2が測定点P2で反射した光である。そして、反射光RLs3は、測定光MLs3が測定点P3で反射した光である。
【0178】
集光レンズ2Deは、第1実施形態における集光レンズ2Afや集光レンズ2Beと同様であり、その光軸が前記入力側導波路2Dbおよび対物レンズ2Dcの光軸と直交するように、かつ、ハーフミラ2Ddの鏡面と−45度(135度)の角度で交差するように配設されている。集光レンズ2Deは、複数の反射光RLs(図9に示す例では3つの反射光RLs1、RLs2、RLs3)のそれぞれにレンズ作用を与えるべく、反射光RLs(RLs1、RLs2、RLs3)の個数に対応した個数のレンズ(この例では3つのレンズ)を備えて構成され、その射出側には、出力側導波路2Dfが、基材2Dhの前記所定の屈折率よりも極僅かだけ(例えば0.3〜3%程度)大きくすることによって形成されている。
【0179】
出力側導波路2Dfは、第1実施形態における出力側導波路2Agや出力側導波路2Bfと同様であり、集光レンズ2Deから入射された各反射光RLs(図9に示す例では、RLs1、RLs2、RLs3)をそれぞれ導光し、複数の反射光RLsにおける一対の反射光RLsを光干渉させ、複数の干渉光ILsを導光するものである。ここで、本実施形態では、複数の干渉光ILsのうちの少なくとも1組の干渉光ILsは、互いに共通な反射光RLsを用いて光干渉させることによって生成されている。より具体的には、出力側導波路2Dfは、第1実施形態における出力側導波路2Agや出力側導波路2Bfと同様であり、3つの導波路部2Df−1、2Df−2、2Df−3と、1つの分岐部2Df−4と、2つの合流部2Df−5、2Df−6と、2つの導波路部2Df−7、2Df−8とを備えて構成されている。
【0180】
このような構成のハーフミラ2Dd、集光レンズ2De、出力側導波路2Dfおよび出力端子2Dgでは、図9に示す例では、測定対象物Obの表面における3つの測定点P1、P2、P3でそれぞれ反射された3つの反射光(反射光の正反射成分)RLs(RLs1、RLs2、RLs3)は、測定部2Dに入射され、ハーフミラ2Ddを介して集光レンズ2Deの前記各レンズにそれぞれ入射される。集光レンズ2Deの前記各レンズは、各反射光RLs1、RLs2、RLs3をそれぞれ出力側導波路2Dfにおける3つの導波路部2Df−1、2Df−2、2Df−3へ入射させる。すなわち、集光レンズ2Deの前記各レンズは、出力側導波路2Dfにおける3つの導波路部2Df−1、2Df−2、2Df−3に対する導波路カップリング用である。中央の導波路部2Df−2に入射された反射光RLs2は、導波路部2Df−2内を伝播し、導波路部2Df−2によって導光され、分岐部2Df−4で分配される。分岐部2Df−4で分配された一方の反射光RLs2(RLs2−1)は、合流部2Df−5に導光され、その他方の反射光RLs2(RLs2−2)は、合流部2Df−6に導光される。また、導波路部2Df−1に入射された反射光RLs1は、導波路部2Df−1内を伝播し、導波路部2Df−1によって導光され、合流部2Df−5に導光される。そして、導波路部2Df−3に入射された反射光RLs3は、導波路部2Df−3内を伝播し、導波路部2Df−3によって導光され、合流部2Df−6に導光される。合流部2Df−5では、上述のように導光された反射光RLs2と反射光RL1とが合波され、光ヘテロダイン干渉されて第1干渉光ILs1(=RLs1+RLs2)が生成される。この第1干渉光ILs1は、合流部2Df−5から導波路部2Df−7に導光され、導波路部2Df−7内を伝播し、導波路部2Df−7によって導光され、出力端子2Dgに入射される。そして、合流部2Df−6では、上述のように導光された反射光RLs2と反射光RLs3とが合波され、光ヘテロダイン干渉されて第2干渉光ILs2(=RLs2+RLs3)が生成される。この第2干渉光ILs2は、合流部2Df−6から導波路部2Df−8に導光され、導波路部2Df−8内を伝播し、導波路部2Df−8によって導光され、出力端子2Dgに入射される。これら第1および第2干渉光ILs1、ILs2は、測定対象物Obにおける表面形状の情報を含む光信号である。そして、これら第1および第2干渉光ILs1、ILs2は、出力端子2Dgを介して測定部2Dから位相検波部3Cへ入射される。
【0181】
図8に戻って、第1実施形態と同様に、測定部2Dと位相検波部3Cとは、シングルモード光ファイバであってもよいが、光軸調整および伝播光の光量における優位性の観点から、マルチモード光ファイバによって接続されている。すなわち、本実施形態では、測定部2Dから射出された複数の干渉光ILs、図8および図9に示す例では第1および第2干渉光ILs1、ILs2は、マルチモード光ファイバによって導光され、位相検波部3Cへ入射する。
【0182】
位相検波部3Cは、測定部2Dから射出した複数の干渉光ILsを位相検波し、互いに共通な反射光RLsを用いて光ヘテロダイン干渉することによって得られた組の干渉光間における位相差△Φを検出するものである。そして、位相検波部3Cは、この検出した位相差△Φを演算制御部5へ出力する。より具体的には、位相検波部3Cは、図8に示すように、干渉光用の光電変換部3Ca(3Ca1、3Ca2)と、干渉信号用の位相検波器3Cbと、を備えて構成される。
【0183】
光電変換部3Caは、例えばホトダイオード等の、入射光の光量に応じた信号レベルの電気信号に変換して該電気信号を出力する光電変換素子を備えて構成される。光電変換部3Caは、測定部2Dによって得られる干渉光ILsの個数に応じて用意され、測定部2Dからの複数の干渉光ILsをそれぞれ受光して、その各光量に応じた信号レベルの各電気信号を各干渉信号Sigとして出力するものである。本実施形態では、前記干渉光ILsは、2つであることから、2個の光電変換部3Ca1、3Ca2が用意される。各光電変換部3Ca1、3Ca2のそれぞれは、測定部2Dの出力端子2Dgから射出された2つの第1および第2干渉光ILs1、ILs2を各マルチモード光ファイバおよび図略の各入力端子を介してそれぞれ受光し、これら各干渉光ILs1、ILs2の各光量に応じて第1および第2干渉信号Sig1、Sig2をそれぞれ位相検波器3Cbへ出力する。
【0184】
位相検波器3Cbは、光電変換部3Caから複数の干渉信号Sigが入力され、互いに共通な反射光RLsを用いて光ヘテロダイン干渉することによって得られた組の干渉光ILsに関し、複数の干渉信号Sig間の位相差△Φsを検出する装置である。図8に示す例では、位相検波器3Cbは、光電変換部3Ca1、3Ca2から第1および第2干渉信号Sig1、Sig2が入力され、これら第1干渉信号Sig1と第2干渉信号Sig2との間における位相差△Φsを検出する。そして、位相検波器3Cbは、この検出した位相差△Φsを演算部制御部5へ出力する。
【0185】
そして、ステージ4、演算制御部5、入力部6および出力部7は、それぞれ、第1実施形態の表面形状測定装置SAにおけるステージ4、演算制御部5、入力部6および出力部7と同様であるので、その説明を省略する。
【0186】
次に、本実施形態における表面形状測定装置SCの動作について説明する。なお、以下の説明において、各測定箇所MPにおける複数の測定点Pnは、説明の便宜上、図8に示す場合を例として、3個である場合について説明を行う。
【0187】
図略の電源スイッチがオンされると、表面形状測定装置SCが起動され、演算制御部5によって必要な各部の初期化が行われる。そして、例えば半導体ウェハ等の板状体の測定対象物Obがステージ4に載置され、入力部6から測定開始を指示するコマンドを受け付けると、演算制御部5は、測定対象物Obの表面形状の測定を開始する。
【0188】
このとき、演算制御部5の光源制御部53は、測定光生成部1Cを駆動し、半導体レーザ光源1Caに周期的に周波数がシフトするレーザ光を発光させる。この半導体レーザ光源1Caによる所定のレーザ光の発光により、上述した光学系の作用によって、測定光MLsが測定光生成部1Cの出力端子1Cdから射出される。
【0189】
続いて、この測定光生成部1Cの出力端子1Cdから射出された測定光MLsは、前記光ファイバを伝播し、測定部2Dに入射される。この測定部2Dでは、入力側導波路2Dbにおいて、この入射された測定光MLsを光分岐部2Db−1、2Db−2で複数の測定光MLs1、MLs2、MLs3に分岐し、この分岐した各測定光MLs1、MLs2、MLs3を互いに光路長の異なる導波路部2Db−3、2Db−4、2Db−5でそれぞれ伝播させ、導波路部2Db−3、2Db−4、2Db−5によって対物レンズ2Dcに入射させ、各測定点P1、P2、P3に照射する。各測定光MLs1、MLs2、MLs3から上述した光学系の作用によって第1および第2干渉光ILs1、ILs2がそれぞれ生成され、第1および第2干渉光ILs1、ILs2は、出力端子2Dgから射出される。続いて、この測定部2Dの出力端子2Dgから射出された第1および第2干渉光ILs1、ILs2は、前記マルチモード光ファイバを伝播し、位相検波部3Cに入射される。この位相検波部3Cでは、互いに共通な反射光RLs2を用いて自己遅延型光ヘテロダイン干渉することによって得られた組について、これら第1および第2干渉光ILs1、ILs2の位相検波によって、第1および第2干渉光ILs1、ILs2間の位相差△Φsが検出される。
【0190】
そして、この測定部2Dおよび位相検波部3Cがこのような動作を行っている際に、演算制御部5のステージ制御部52は、ステージ4を制御することによって、測定対象物Obをその高さ方向に直交する水平方向に移動させる。例えば、演算制御部5のステージ制御部52は、測定箇所MPにおける複数の測定点Pnが移動方向に沿って一列に並び、この移動方向に沿って互いに隣接する2つの測定点Pn−1、Pnの間隔が等しくなるように、かつ、上述したように、一の測定箇所MPtempにおける測定点P3と、走査(移動)によってこの一の測定箇所MPtempの次に測定される測定箇所MPnextにおける測定点P1とが重複するように、ステージ4を移動させる。
【0191】
続いて、これら各測定箇所MPmの各位相差△Φmが取得されると、演算制御部5の形状算出部51は、上述したように、各測定箇所MPmにおける勾配Grmを求め、走査順に従ってこれら各測定箇所MPmにおける勾配Grmを連結することによって、測定対象物Obの表面形状を求める。
【0192】
続いて、演算制御部5は、この求めた測定対象物Obの表面形状を出力部7に出力し、出力部7は、測定対象物Obの表面形状を表示する。
【0193】
このように動作することによって本実施形態における表面形状測定装置SCおよびこれに実装された表面形状測定方法では、光へテロダイン法を用いた光干渉計による方法であるので、比較的短時間であってnmオーダで、測定対象物Obの表面形状を測定することができる。そして、このような構成の表面形状測定装置SCおよび表面形状測定方法では、測定対象物Obにおける3つ以上の複数の測定点P1、P2、P3、…、Pnで反射された複数の反射光RLs1、RLs2、RLs3を光干渉させる際に、互いに共通な反射光RLs2を用いて光干渉させる場合を含むので、測定対象物Obの表面における勾配情報を表す位相情報を持った干渉光が得られる。このため、例えば、測定対象物Obを載置するステージ4における上下動による振動、測定光学系における保持ゆらぎによる振動および測定対象物自体の振動等の振動が測定結果に及ぼす影響を相殺して略消去することができる。従って、このような構成の表面形状測定装置SCおよび表面形状測定方法は、比較的短時間であってnmオーダで、より高精度に、測定対象物Obの表面形状を測定することができる。
【0194】
しかも、周期的に周波数が変化する測定光MLsを複数の測定光MLs1、MLs2、MLs3、…、MLsnに分け、これら測定光MLs間に光路差Δdを設けて複数の測定点P1、P2、P3、…、Pnにそれぞれ照射することにより照射時において各測定光MLs間に周波数差Δfsを生じさせ、その反射光RLs同士を光干渉させるいわゆる自己遅延型の光ヘテロダイン干渉方式を用いているため、光源部1Caの小型化等を図ると共に光源部1Caの選択の自由度を向上させることが可能となる。即ち、第2実施形態のような通常の光ヘテロダイン干渉方式(周波数が一定の光を2つの測定光に分け、一方の測定光を周波数変調して2つの測定光間に僅かな周波数差を設ける方式)では、光源として例えば、ガスレーザー等の発振周波数が極めて安定したレーザー発振器と光変調素子とを用いなければならないため、光源の選択の自由度が小さく且つ小型化が困難であるが、本発明のようないわゆる自己遅延型の光へテロダイン干渉方式では、例えば、半導体レーザ等を用いることが可能となるため、光源部1Caの小型化、安定性、光源寿命の向上等を図ることが可能となる。
【0195】
(第4実施形態)
第4実施形態における表面形状測定装置SDは、第3実施形態における表面形状測定装置SCと同様に、自己遅延型光ヘテロダイン干渉によって干渉光ILを生成し、この干渉光ILに基づいて測定対象物Obの表面形状を測定する装置であるが、光源から出射された測定光MLsの一部を参照光として干渉光と混合することにより測定精度をより向上させた装置である。
【0196】
図13は、第4実施形態における表面形状測定装置SDの構成を示す図である。図14は、図13に示す表面形状測定装置SDにおける測定部2Dの構成を示す図である。
【0197】
第4実施形態の表面形状測定装置SDは、測定対象物Obにおける高さ方向(厚さ方向)の変化である表面形状を測定する装置であり、例えば、図13に示すように、測定光生成部1Dと、測定部2Fと、位相検波部3Dと、ステージ(載置台)4と、演算制御部5と、入力部6と、出力部7とを備えて構成され、ステージ4によって測定対象物Obを水平方向に移動させることによって測定対象物Obの表面を走査し、所定範囲に亘る測定対象物Obの表面形状を測定するものである。
【0198】
測定光生成部1Dは、第3実施形態の測定光生成部1Cと同様に、光源部1Daと、光アイソレータ1Dbと、偏光子1Dcと、出力端子1Ddとを備えて構成される。光源部1Daは、第3実施形態の光源部1Caと同様な周期的に周波数がシフトする光を発する部品である。光アイソレータ1Dbは、第3実施形態の光アイソレータ1Cbと同様な光部品である。偏光子1Dcは、第3実施形態の偏光子1Ccと同様な光部品である。出力端子1Ddは、第3実施形態の出力端子1Cdと同様な、光ファイバを接続するためのコネクタである。
【0199】
測定光生成部1Dと測定部2Fとの接続には、第3実施形態における測定光生成部1Cと測定部2Dとの接続と同様に、光ファイバが用いられる。この光ファイバの測定部2Fとの接続部位の上流側には、参照光分岐部Crefが設けられている。この参照光分岐部Crefは、光ファイバによって測定部2Fに入射される測定光MLs1の一部を参照光として分岐し、マルチモード光ファイバを通じて位相検波部3Dに入射させる。本実施形態の参照光分岐部Crefには、溶融ファイバの光ファイバ形光分岐結合器が用いられている。図14に示す例では、参照光分岐部Crefは、測定光MLsを導光する光ファイバにおける射出端部分に前記光ファイバを溶融ファイバによって2つに分ける光ファイバ分岐部Cref−1を設け、この光ファイバ分岐部Cref−1に2つの光ファイバCref−2、Cref−3が接続されている。この一方の光ファイバCref−2の他端は測定部2Fに接続され、他方の光ファイバCref−3の他端は位相検波部3Dに接続されている。尚、光ファイバ分岐部Cref−1は、例えば、測定光MLsを導光する光ファイバにおける射出端部分に接続される光ファイバ形光分岐結合器であってもよく、また例えば、測定光MLsを導光する光ファイバにおける前記射出端部分そのものを光ファイバ形光分岐結合器に加工したものであってもよい。
【0200】
測定部2Fは、第3実施形態の測定部2Dと同様の光部品である。図14に示す例では、測定部2Fは、入力端子2Faと、入力側導波路2Fbと、対物レンズ2Fcと、ハーフミラ2Fdと、集光レンズ2Feと、出力側導波路2Ffと、出力端子2Fgとを備えて構成され、これら入力側導波路2Fbおよび出力側導波路2Ffは、基材2Fhに当該基材2Fhと屈折率の異なる光導波路を形成することによって設けられている。
【0201】
そして、入力側導波路2Fbは、第3実施形態の入力側導波路部2Db−13、2Db−14、2Db−15と同様の光導波路である入力側導波路部2Fb−13、2Fb−14、2Fb−15を構成している。また、各入力側導波路部2Fb−13、2Fb−14、2Fb−15は、第3実施形態の入力側導波路部2Db−13、2Db−14、2Db−15と同様に、各導波路部2Fb−3、2Fb−4、2Fb−5と、これら各導波路部2Fb−3、2Fb−4、2Fb−5の上流側の入力側導波路2Fbの部位とにより構成される。
【0202】
また、出力側導波路2Ffは、第3実施形態における出力側導波路2Dfと同様であり、集光レンズ2Feから入射された各反射光RLs(図14に示す例では、RLs1、RLs2、RLs3)をそれぞれ導光し、複数の反射光RLsにおける一対の反射光RLsを光干渉させ、複数の干渉光ILsを導光するものである。ここで、本実施形態では、複数の干渉光ILsのうちの少なくとも1組の干渉光ILsは、互いに共通な反射光RLsを用いて光干渉させることによって生成されている。より具体的には、出力側導波路2Ffは、第3実施形態における出力側導波路2Dfと同様であり、3つの導波路部2Ff−1、2Ff−2、2Ff−3と、1つの分岐部2Ff−4と、2つの合流部2Ff−5、2Ff−6と、2つの導波路部2Ff−7、2Ff−8とを備えて構成されている。
【0203】
位相検波部3Dは、測定部2Fから射出した複数の干渉光ILsを参照光MLsrefを用いて補正しつつ位相検波し、互いに共通な反射光RLsを用いて光ヘテロダイン干渉することによって得られた組の干渉光間における位相差△Φを検出するものである。そして、位相検波部3Dは、この検出した位相差△Φを演算制御部5へ出力する。より具体的には、位相検波部3Dは、図13に示すように、干渉光用の光電変換部3Da(3Da1、3Da2)と、参照光用の光電変換部3Da3と、干渉信号と参照信号とをミキシング(混合)するミキシング部3Db(3Db1、3Db2)と、ミキシング後の干渉信号用の位相検波器3Dcと、を備えて構成される。
【0204】
光電変換部3Daは、第3実施形態の光電変換部3Caと同様に、入射光の光量に応じた信号レベルの電気信号に変換して該電気信号を出力する光電変換素子を備えて構成される。具体的に、光電変換部3Da3は、測定光生成部1Dから測定部2Fへ導光される測定光MLsから分岐された参照光MLsrefを受光して、その光量に応じた信号レベルの電気信号を参照信号Ref3として出力するものである。また、各光電変換部3Da1、3Da2のそれぞれは、測定部2Fの出力端子2Fgから射出された2つの第1および第2干渉光ILs1、ILs2を各マルチモード光ファイバおよび図略の各入力端子を介してそれぞれ受光し、これら各干渉光ILs1、ILs2の各光量に応じて第1および第2干渉信号Sig1、Sig2をそれぞれ位相検波器3Dcへ向けて出力する。
【0205】
ミキシング部3Db(3Db1、3Db2)は、参照信号Ref3と各干渉信号Sig1、Sig2とを混合する。具体的に、ミキシング部3Db1は、第1干渉信号Sig1と参照信号Ref3とを混合(除算)し、この混合後の第1干渉信号Sig1を出力する。また、ミキシング部3Db2は、第2干渉信号Sig2と参照信号Ref3とを混合(除算)し、この混合後の第2干渉信号Sig2を出力する。
【0206】
位相検波器3Dcは、光電変換部3Daからの複数の干渉信号Sigであって、参照信号と混合された後の複数の干渉信号Sigが入力され、互いに共通な反射光RLsを用いて光ヘテロダイン干渉することによって得られた組の干渉光ILsに関し、複数の干渉信号Sig間の位相差△Φsを検出する装置である。図13に示す例では、位相検波器3Dcは、各ミキシング部3Db1、3Db2で参照信号が混合された後の第1および第2干渉信号Sig1、Sig2が入力され、これら第1干渉信号Sig1と第2干渉信号Sig2との間における位相差△Φsを検出する。そして、位相検波器3Dcは、この検出した位相差△Φsを演算部制御部5へ出力する。
【0207】
そして、ステージ4、演算制御部5、入力部6および出力部7は、それぞれ、第1実施形態の表面形状測定装置SAにおけるステージ4、演算制御部5、入力部6および出力部7と同様であるので、その説明を省略する。
【0208】
次に、本実施形態における表面形状測定装置SDの動作について説明する。なお、以下の説明において、各測定箇所MPにおける複数の測定点Pnは、説明の便宜上、図13に示す場合を例として、3個である場合について説明を行う。
【0209】
図略の電源スイッチがオンされると、表面形状測定装置SDが起動され、演算制御部5によって必要な各部の初期化が行われる。そして、例えば半導体ウェハ等の板状体の測定対象物Obがステージ4に載置され、入力部6から測定開始を指示するコマンドを受け付けると、演算制御部5は、測定対象物Obの表面形状の測定を開始する。
【0210】
このとき、演算制御部5の光源制御部53は、測定光生成部1Dを駆動し、半導体レーザ光源1Daに周期的に周波数がシフトするレーザ光を発光させる。この半導体レーザ光源1Daによる所定のレーザ光の発光により、上述した光学系の作用によって、測定光MLsが測定光生成部1Dの出力端子1Ddから射出される。
【0211】
続いて、この測定光生成部1Dの出力端子1Ddから射出された測定光MLsは、前記光ファイバを伝播し、測定部2Dに入射される。このとき、測定光MLsの一部が参照光MLsrefとして参照光分岐部Crefで分岐され、位相検波部3Dに入射される。この測定部2Fでは、第3実施形態同様に、入射された測定光MLsを複数の測定光MLs1、MLs2、MLs3に分岐して各測定点P1、P2、P3に照射する。続いて、測定部2Fは、各測定光MLs1、MLs2、MLs3から上述した光学系の作用によって第1および第2干渉光ILs1、ILs2がそれぞれ生成され、第1および第2干渉光ILs1、ILs2は、出力端子2Fgから射出される。この測定部2Fの出力端子2Fgから射出された第1および第2干渉光ILs1、ILs2は、前記マルチモード光ファイバを伝播し、位相検波部3Dに入射される。
【0212】
位相検波部3Dでは、互いに共通な反射光RLs2を用いて自己遅延型光ヘテロダイン干渉することによって得られた組について、ミキシング部3Dbにおいて参照信号Ref3がそれぞれ混合され、これら混合後の第1および第2干渉光ILs1、ILs2の位相検波によって、第1および第2干渉光ILs1、ILs2間の位相差△Φsが検出される。
【0213】
そして、この測定部2Fおよび位相検波部3Dがこのような動作を行っている際に、演算制御部5のステージ制御部52は、ステージ4を制御することによって、測定対象物Obをその高さ方向に直交する水平方向に移動させる。
【0214】
続いて、これら各測定箇所MPmの各位相差△Φmが取得されると、演算制御部5の形状算出部51は、上述したように、各測定箇所MPmにおける勾配Grmを求め、走査順に従ってこれら各測定箇所MPmにおける勾配Grmを連結することによって、測定対象物Obの表面形状を求める。
【0215】
続いて、演算制御部5は、この求めた測定対象物Obの表面形状を出力部7に出力し、出力部7は、測定対象物Obの表面形状を表示する。
【0216】
このように動作することによって本実施形態における表面形状測定装置SDおよびこれに実装された表面形状測定方法では、第3実施形態同様に、比較的短時間であってnmオーダで、より高精度に、測定対象物Obの表面形状を測定することができる。また、このような構成の表面形状測定装置SDおよび表面形状測定方法では、自己遅延型の光ヘテロダイン干渉方式を用いているため、第3実施形態同様に、光源部1Daの小型化、安定性、光源寿命の向上等を図ると共に光源部1Daの選択の自由度を向上させることが可能となる。
【0217】
さらに、このような構成の表面形状測定装置SDおよび表面形状測定方法では、参照光MLsrefを干渉光ILsと混合することで、測定光生成部1Dが射出する測定光MLsに含まれる光源部1Daの出力強度変化を検出することができ、これを用いて干渉光ILsを補正しつつ測定対象物Obの表面形状を演算することにより、前記出力強度変化が測定結果に及ぼす影響を消去することができる。その結果、このような構成の表面形状測定装置SDは、参照光MLsrefを用いない表面形状測定装置に比べて、より高精度に測定対象物Obの表面形状を測定することが可能となる。
【0218】
本発明を表現するために、上述において図面を参照しながら実施形態を通して本発明を適切且つ十分に説明したが、当業者であれば上述の実施形態を変更および/または改良することは容易に為し得ることであると認識すべきである。したがって、当業者が実施する変更形態または改良形態が、請求の範囲に記載された請求項の権利範囲を離脱するレベルのものでない限り、当該変更形態または当該改良形態は、当該請求項の権利範囲に包括されると解釈される。
【符号の説明】
【0219】
SA、SB 表面形状測定装置
1A、1B 測定光生成部
2A、2B、2C 測定部
3A 位相差検出部
3B 位相検波部
4 ステージ
5 演算制御部
51 形状算出部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を放射する光源部と、
測定対象物における3つ以上の複数の測定点に測定光をそれぞれ照射するべく、前記光源部から放射された光を3つ以上の複数の測定光に分ける光分割部と、
前記光分割部で分けられた前記複数の測定光を前記測定対象物における前記複数の測定点にそれぞれ照射させ前記複数の測定点でそれぞれ反射された複数の反射光における一対の反射光を光干渉させる複数の光干渉部と、
前記複数の光干渉部から出力される複数の干渉光に基づいて前記測定対象物の表面形状を求める検出部とを備え、
前記複数の光干渉部における少なくとも1組の光干渉部は、互いに共通な反射光を用いて前記光干渉させること
を特徴とする表面形状測定装置。
【請求項2】
前記光源部、前記光分割部および前記光干渉部は、光ホモダイン干渉計を構成し、
前記検出部は、前記互いに共通な反射光を用いて前記光干渉させた複数の光干渉部から出力される複数の干渉光に基づいて前記複数の干渉光における各位相間の位相差を検出する位相差検出部と、前記位相差検出部で検出された前記位相差に基づいて前記測定対象物の表面形状を演算する演算部とを備えること
を特徴とする請求項1に記載の表面形状測定装置。
【請求項3】
前記光分割部は、前記光源部から放射された光を3つに分ける光分岐部を備え、
前記1組の光干渉部は、前記光分岐部で分けられた第1の光における反射光と前記光分岐部で分けられた第2の光における反射光とを光干渉させる第1光干渉部と、前記光分岐部で分けられた第2の光における反射光と前記光分岐部で分けられた第3の光における反射光とを光干渉させる第2光干渉部とを備えること
を特徴とする請求項2に記載の表面形状測定装置。
【請求項4】
前記1組の光干渉部は、基材に屈折率の異なる光導波路を形成した光導波路型光学素子であること
を特徴とする請求項3に記載の表面形状測定装置。
【請求項5】
前記光分割部の光分岐部は、回折格子であること
を特徴とする請求項3または請求項4に記載の表面形状測定装置。
【請求項6】
前記光分割部の光分岐部は、光導波路型光分岐器であること
を特徴とする請求項3または請求項4に記載の表面形状測定装置。
【請求項7】
前記光源部、前記光分割部および前記光干渉部は、光ヘテロダイン干渉計を構成し、
前記検出部は、前記互いに共通な反射光を用いて前記光干渉させた複数の光干渉部から出力される複数の干渉光をそれぞれ位相検波し、前記複数の干渉光における各位相間の位相差を検出する検波部と、前記検波部で検出された前記位相差に基づいて前記測定対象物の表面形状を演算する演算部とを備えること
を特徴とする請求項1に記載の表面形状測定装置。
【請求項8】
前記光源部から放射された光を2つに分ける第1光分岐部と、
前記第1光分岐部で分けられた2つの光の周波数を互いに異なる周波数に変調する光変調部とをさらに備え、
前記光分割部は、前記光変調部で変調された2つの光の一方をさらに2つに分ける第2光分岐部を備え、
前記1組の光干渉部は、前記光変調部で変調された他方の光における反射光と前記第2分岐部で分けられた一方の光における反射光とを光ヘテロダイン干渉させる第1光干渉部と、前記光変調部で変調された他方の光における反射光と前記第2分岐部で分けられた他方の光における反射光とを光ヘテロダイン干渉させる第2光干渉部とを備え、
前記検出部の検波部は、前記第1および第2光干渉部から出力される第1および第2干渉光をそれぞれ位相検波し、前記第1および第2干渉光における各位相間の位相差を検出すること
を特徴とする請求項7に記載の表面形状測定装置。
【請求項9】
前記光変調部で変調された他方の光と前記第2分岐部で分けられた一方の光とを光ヘテロダイン干渉させる第1参照光干渉部と、
前記光変調部で変調された他方の光と前記第2分岐部で分けられた他方の光とを光ヘテロダイン干渉させる第2参照光干渉部とをさらに備え、
前記検出部の検波部は、前記第1および第2参照光干渉部から出力される第1および第2参照干渉光をそれぞれ位相検波し、前記第1および第2参照干渉光における各位相間の位相差を補正値として検出し、前記第1および第2干渉光における各位相間の位相差を前記補正値で補正し、
前記検出部の演算部は、前記検波部で検出され補正された前記位相差に基づいて前記測定対象物の表面形状を演算すること
を特徴とする請求項8に記載の表面形状測定装置。
【請求項10】
前記1組の光干渉部は、基材に屈折率の異なる光導波路を形成した光導波路型光学素子であること
を特徴とする請求項8または請求項9に記載の表面形状測定装置。
【請求項11】
前記光分割部で分けられた各測定光を案内して前記複数の測定点にそれぞれ照射する3つ以上の複数の導光部を備え、
前記光源部、前記光分割部、前記導光部、及び、前記検出部は、光ヘテロダイン干渉計を構成すべく、
前記光源部が、周期的に周波数が変化する光を放射し、
前記一組の光干渉部において光干渉させる各反射光を得るための一組の導光部は、これら一組の導光部のうちの前記一組の光干渉部における互いに共通な反射光が得られる測定点に測定光を照射する特定の導光部と、前記一組の導光部のうちの前記一組の光干渉部における互いに共通な反射光以外の反射光が得られる測定点に測定光を照射する少なくとも2つの他の導光部との間の光路差がそれぞれ所定の光路差となる光路長をそれぞれ有し、
前記検出部が、前記互いに共通な反射光を用いて前記光干渉させた複数の光干渉部から出力される複数の干渉光をそれぞれ位相検波し、前記複数の干渉光における各位相間の位相差を検出する検波部と、前記検波部で検出された前記位相差に基づいて前記測定対象物の表面形状を演算する演算部とを有すること
を特徴とする請求項1に記載の表面形状測定装置。
【請求項12】
前記所定の光路差は、前記特定の導光部から得られた反射光と前記他の導光部から得られた反射光とを光干渉させるためにこれら一対の反射光と対応する測定光間に設けられる周波数の差に基づくものであること
を特徴とする請求項11に記載の表面形状測定装置。
【請求項13】
前記測定点は、測定対象物の表面において一列に3つ以上並び、
前記複数の光干渉部が、前記一列に並ぶ各測定点でそれぞれ反射される複数の反射光における一対の反射光を光干渉させ、
前記各導光部では、前記一列の一端に位置する測定点に前記測定光を照射する導光部から前記一列の他端側に位置する測定点に前記測定光を照射する導光部に向けて光路長が順に前記所定の光路差だけ長くなること
を特徴とする請求項11又は12に記載の表面形状測定装置。
【請求項14】
前記測定点は、測定対象物の表面において一列に3つ以上並び、
前記複数の光干渉部が、前記一列に並ぶ各測定点でそれぞれ反射される複数の反射光における一対の反射光を光干渉させ、
前記各導光部では、前記一列の一端に位置する測定点に前記測定光を照射する導光部から前記一列の他端側に位置する測定点に前記測定光を照射する導光部に向けて奇数番目又は偶数番目の導光部の光路長がそれぞれ同じであること
を特徴とする請求項11又は12に記載の表面形状測定装置。
【請求項15】
前記他の導光部は、前記一組の導光部のうちの特定の導光部以外の全ての導光部であること
を特徴とする請求項11又は12に記載の表面形状測定装置。
【請求項16】
前記光分割部と前記複数の導光部とは、基材に屈折率の異なる光導波路を形成した光導波路型光学素子であること
を特徴とする請求項11乃至15のいずれか1項に記載の表面形状測定装置。
【請求項17】
前記光分割部の上流で前記光源部から放射された光の一部を参照光として分岐する参照光分岐部と、
前記1組の光干渉部から出力される各干渉光と前記参照光とをそれぞれ混合させる参照光混合部とをさらに備え、
前記検出部は、前記参照光混合部から出力される複数の参照光混合信号を位相検波して各位相間の位相差を検出する検波部と、
前記検波部で検出された前記位相差に基づいて前記測定対象物の表面形状を演算する演算部とを有すること
を特徴とする請求項11乃至16のいずれか1項に記載の表面形状測定装置。
【請求項18】
測定対象物における3つ以上の複数の測定点に測定光をそれぞれ照射するべく、光源部で放射された光を3つ以上の複数の測定光に分ける光分割工程と、
前記光分割工程で分けられた前記複数の測定光を前記測定対象物における前記複数の測定点にそれぞれ照射させ前記複数の測定点でそれぞれ反射された複数の反射光における一対の反射光を光干渉させる複数の光干渉工程と、
前記複数の光干渉工程で得られた複数の干渉光に基づいて前記測定対象物の表面形状を求める検出工程とを備え、
前記複数の光干渉工程における少なくとも1組の光干渉工程は、互いに共通な反射光を用いて前記光干渉させること
を特徴とする表面形状測定方法。
【請求項19】
光ヘテロダイン干渉法を利用して測定対象物の表面形状を測定する方法であって、
測定対象物における3つ以上の複数の測定点に測定光をそれぞれ照射するべく、光源部で放射された周期的に周波数が変化する光を3つ以上の複数の測定光に分ける光分割工程と、
前記光分割工程で分けられた前記複数の測定光をそれぞれ案内して、前記測定対象物における前記複数の測定点にそれぞれ測定光を同時に照射する3つ以上の導光・照射工程と、
前記複数の測定点でそれぞれ反射された複数の反射光における一対の反射光を光干渉させる複数の光干渉工程と、
前記複数の光干渉工程で得られる複数の干渉光に基づいて前記測定対象物の表面形状を求める検出工程とを備え、
前記複数の光干渉工程における少なくとも1組の光干渉工程は、互いに共通な反射光を用いて前記光干渉させ、
前記一組の光干渉工程において光干渉させる各反射光を得るための一組の導光・照射工程 は、これら一組の導光・照射工程のうちの前記一組の光干渉工程における互いに共通な反射光が得られる測定点に測定光を照射する特定の導光・照射工程と、前記一組の導光・照射工程のうちの前記一組の光干渉工程における互いに共通な反射光以外の反射光が得られる測定点に測定光を照射する少なくとも2つの他の導光・照射工程との間の光路差がそれぞれ所定の光路差となるように測定光をそれぞれ案内すること
を特徴とする表面形状測定装置。
【請求項1】
光を放射する光源部と、
測定対象物における3つ以上の複数の測定点に測定光をそれぞれ照射するべく、前記光源部から放射された光を3つ以上の複数の測定光に分ける光分割部と、
前記光分割部で分けられた前記複数の測定光を前記測定対象物における前記複数の測定点にそれぞれ照射させ前記複数の測定点でそれぞれ反射された複数の反射光における一対の反射光を光干渉させる複数の光干渉部と、
前記複数の光干渉部から出力される複数の干渉光に基づいて前記測定対象物の表面形状を求める検出部とを備え、
前記複数の光干渉部における少なくとも1組の光干渉部は、互いに共通な反射光を用いて前記光干渉させること
を特徴とする表面形状測定装置。
【請求項2】
前記光源部、前記光分割部および前記光干渉部は、光ホモダイン干渉計を構成し、
前記検出部は、前記互いに共通な反射光を用いて前記光干渉させた複数の光干渉部から出力される複数の干渉光に基づいて前記複数の干渉光における各位相間の位相差を検出する位相差検出部と、前記位相差検出部で検出された前記位相差に基づいて前記測定対象物の表面形状を演算する演算部とを備えること
を特徴とする請求項1に記載の表面形状測定装置。
【請求項3】
前記光分割部は、前記光源部から放射された光を3つに分ける光分岐部を備え、
前記1組の光干渉部は、前記光分岐部で分けられた第1の光における反射光と前記光分岐部で分けられた第2の光における反射光とを光干渉させる第1光干渉部と、前記光分岐部で分けられた第2の光における反射光と前記光分岐部で分けられた第3の光における反射光とを光干渉させる第2光干渉部とを備えること
を特徴とする請求項2に記載の表面形状測定装置。
【請求項4】
前記1組の光干渉部は、基材に屈折率の異なる光導波路を形成した光導波路型光学素子であること
を特徴とする請求項3に記載の表面形状測定装置。
【請求項5】
前記光分割部の光分岐部は、回折格子であること
を特徴とする請求項3または請求項4に記載の表面形状測定装置。
【請求項6】
前記光分割部の光分岐部は、光導波路型光分岐器であること
を特徴とする請求項3または請求項4に記載の表面形状測定装置。
【請求項7】
前記光源部、前記光分割部および前記光干渉部は、光ヘテロダイン干渉計を構成し、
前記検出部は、前記互いに共通な反射光を用いて前記光干渉させた複数の光干渉部から出力される複数の干渉光をそれぞれ位相検波し、前記複数の干渉光における各位相間の位相差を検出する検波部と、前記検波部で検出された前記位相差に基づいて前記測定対象物の表面形状を演算する演算部とを備えること
を特徴とする請求項1に記載の表面形状測定装置。
【請求項8】
前記光源部から放射された光を2つに分ける第1光分岐部と、
前記第1光分岐部で分けられた2つの光の周波数を互いに異なる周波数に変調する光変調部とをさらに備え、
前記光分割部は、前記光変調部で変調された2つの光の一方をさらに2つに分ける第2光分岐部を備え、
前記1組の光干渉部は、前記光変調部で変調された他方の光における反射光と前記第2分岐部で分けられた一方の光における反射光とを光ヘテロダイン干渉させる第1光干渉部と、前記光変調部で変調された他方の光における反射光と前記第2分岐部で分けられた他方の光における反射光とを光ヘテロダイン干渉させる第2光干渉部とを備え、
前記検出部の検波部は、前記第1および第2光干渉部から出力される第1および第2干渉光をそれぞれ位相検波し、前記第1および第2干渉光における各位相間の位相差を検出すること
を特徴とする請求項7に記載の表面形状測定装置。
【請求項9】
前記光変調部で変調された他方の光と前記第2分岐部で分けられた一方の光とを光ヘテロダイン干渉させる第1参照光干渉部と、
前記光変調部で変調された他方の光と前記第2分岐部で分けられた他方の光とを光ヘテロダイン干渉させる第2参照光干渉部とをさらに備え、
前記検出部の検波部は、前記第1および第2参照光干渉部から出力される第1および第2参照干渉光をそれぞれ位相検波し、前記第1および第2参照干渉光における各位相間の位相差を補正値として検出し、前記第1および第2干渉光における各位相間の位相差を前記補正値で補正し、
前記検出部の演算部は、前記検波部で検出され補正された前記位相差に基づいて前記測定対象物の表面形状を演算すること
を特徴とする請求項8に記載の表面形状測定装置。
【請求項10】
前記1組の光干渉部は、基材に屈折率の異なる光導波路を形成した光導波路型光学素子であること
を特徴とする請求項8または請求項9に記載の表面形状測定装置。
【請求項11】
前記光分割部で分けられた各測定光を案内して前記複数の測定点にそれぞれ照射する3つ以上の複数の導光部を備え、
前記光源部、前記光分割部、前記導光部、及び、前記検出部は、光ヘテロダイン干渉計を構成すべく、
前記光源部が、周期的に周波数が変化する光を放射し、
前記一組の光干渉部において光干渉させる各反射光を得るための一組の導光部は、これら一組の導光部のうちの前記一組の光干渉部における互いに共通な反射光が得られる測定点に測定光を照射する特定の導光部と、前記一組の導光部のうちの前記一組の光干渉部における互いに共通な反射光以外の反射光が得られる測定点に測定光を照射する少なくとも2つの他の導光部との間の光路差がそれぞれ所定の光路差となる光路長をそれぞれ有し、
前記検出部が、前記互いに共通な反射光を用いて前記光干渉させた複数の光干渉部から出力される複数の干渉光をそれぞれ位相検波し、前記複数の干渉光における各位相間の位相差を検出する検波部と、前記検波部で検出された前記位相差に基づいて前記測定対象物の表面形状を演算する演算部とを有すること
を特徴とする請求項1に記載の表面形状測定装置。
【請求項12】
前記所定の光路差は、前記特定の導光部から得られた反射光と前記他の導光部から得られた反射光とを光干渉させるためにこれら一対の反射光と対応する測定光間に設けられる周波数の差に基づくものであること
を特徴とする請求項11に記載の表面形状測定装置。
【請求項13】
前記測定点は、測定対象物の表面において一列に3つ以上並び、
前記複数の光干渉部が、前記一列に並ぶ各測定点でそれぞれ反射される複数の反射光における一対の反射光を光干渉させ、
前記各導光部では、前記一列の一端に位置する測定点に前記測定光を照射する導光部から前記一列の他端側に位置する測定点に前記測定光を照射する導光部に向けて光路長が順に前記所定の光路差だけ長くなること
を特徴とする請求項11又は12に記載の表面形状測定装置。
【請求項14】
前記測定点は、測定対象物の表面において一列に3つ以上並び、
前記複数の光干渉部が、前記一列に並ぶ各測定点でそれぞれ反射される複数の反射光における一対の反射光を光干渉させ、
前記各導光部では、前記一列の一端に位置する測定点に前記測定光を照射する導光部から前記一列の他端側に位置する測定点に前記測定光を照射する導光部に向けて奇数番目又は偶数番目の導光部の光路長がそれぞれ同じであること
を特徴とする請求項11又は12に記載の表面形状測定装置。
【請求項15】
前記他の導光部は、前記一組の導光部のうちの特定の導光部以外の全ての導光部であること
を特徴とする請求項11又は12に記載の表面形状測定装置。
【請求項16】
前記光分割部と前記複数の導光部とは、基材に屈折率の異なる光導波路を形成した光導波路型光学素子であること
を特徴とする請求項11乃至15のいずれか1項に記載の表面形状測定装置。
【請求項17】
前記光分割部の上流で前記光源部から放射された光の一部を参照光として分岐する参照光分岐部と、
前記1組の光干渉部から出力される各干渉光と前記参照光とをそれぞれ混合させる参照光混合部とをさらに備え、
前記検出部は、前記参照光混合部から出力される複数の参照光混合信号を位相検波して各位相間の位相差を検出する検波部と、
前記検波部で検出された前記位相差に基づいて前記測定対象物の表面形状を演算する演算部とを有すること
を特徴とする請求項11乃至16のいずれか1項に記載の表面形状測定装置。
【請求項18】
測定対象物における3つ以上の複数の測定点に測定光をそれぞれ照射するべく、光源部で放射された光を3つ以上の複数の測定光に分ける光分割工程と、
前記光分割工程で分けられた前記複数の測定光を前記測定対象物における前記複数の測定点にそれぞれ照射させ前記複数の測定点でそれぞれ反射された複数の反射光における一対の反射光を光干渉させる複数の光干渉工程と、
前記複数の光干渉工程で得られた複数の干渉光に基づいて前記測定対象物の表面形状を求める検出工程とを備え、
前記複数の光干渉工程における少なくとも1組の光干渉工程は、互いに共通な反射光を用いて前記光干渉させること
を特徴とする表面形状測定方法。
【請求項19】
光ヘテロダイン干渉法を利用して測定対象物の表面形状を測定する方法であって、
測定対象物における3つ以上の複数の測定点に測定光をそれぞれ照射するべく、光源部で放射された周期的に周波数が変化する光を3つ以上の複数の測定光に分ける光分割工程と、
前記光分割工程で分けられた前記複数の測定光をそれぞれ案内して、前記測定対象物における前記複数の測定点にそれぞれ測定光を同時に照射する3つ以上の導光・照射工程と、
前記複数の測定点でそれぞれ反射された複数の反射光における一対の反射光を光干渉させる複数の光干渉工程と、
前記複数の光干渉工程で得られる複数の干渉光に基づいて前記測定対象物の表面形状を求める検出工程とを備え、
前記複数の光干渉工程における少なくとも1組の光干渉工程は、互いに共通な反射光を用いて前記光干渉させ、
前記一組の光干渉工程において光干渉させる各反射光を得るための一組の導光・照射工程 は、これら一組の導光・照射工程のうちの前記一組の光干渉工程における互いに共通な反射光が得られる測定点に測定光を照射する特定の導光・照射工程と、前記一組の導光・照射工程のうちの前記一組の光干渉工程における互いに共通な反射光以外の反射光が得られる測定点に測定光を照射する少なくとも2つの他の導光・照射工程との間の光路差がそれぞれ所定の光路差となるように測定光をそれぞれ案内すること
を特徴とする表面形状測定装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−18156(P2012−18156A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−4815(P2011−4815)
【出願日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】
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