説明

表面改質コランダム及び樹脂組成物

【課題】混練物の低粘度化、均一分散性、硬化性樹脂をマトリックス樹脂として使用する際に硬化速度を向上させることにより、マトリックス樹脂中へのコランダムの充填率、樹脂組成物の取り扱い性、成形性を向上させること。
【解決手段】シリコーンレジンを含むシリコーン化合物で被覆されていることを特徴とするコランダム。好ましくは、シリコーンレジンは、ポリジメチルシロキサンのメチル基の一部が他の置換基X(Xはアルコキシ基、エポキシ基、アミノ基、カルボキシル基、エーテル結合等を有する有機基)に置換された変性シリコーンおよび(1)式で表される変性シリコーンの少なくとも1種を含む。


(YはC2n+1(nは1〜8の整数)で表わされるアルキル基、mは1以上の整数を表す。)
そのコランダムを充填した樹脂組成物。その樹脂組成物を用いた電子部品や半導体装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプラスチック、ゴム、グリース等に充填して用いられる、主に高熱伝導性の樹脂充填用コランダム及び該コランダムを用いた樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、コランダムはゴム・プラスチックスに充填するフィラーとして幅広く用いられている。例えばシリコーン樹脂、シリコーンゴム、エポキシ樹脂には放熱フィラーとして、用いられている。特許文献1,2には、アルミナ粒子を用いた熱伝導性に優れた樹脂組成物が開示されている。特許文献3には、シランカップリン剤で処理したアルミナ粒子を含む熱伝導性シリコーンゲル組成物が開示されている。放熱フィラーとして用いられる場合、コランダムはより多くの充填を行った方が放熱性能は向上する。しかし、未処理のコランダムでは樹脂との馴染みが悪く、粘度が高く、成形に用いる場合に成形不能となったり、硬化性樹脂に分散させて使用する際に硬化を阻害したりする場合があるなどの問題点があった。
【0003】
【特許文献1】特開平5−132576号公報
【特許文献2】特開2001−348488号公報
【特許文献3】特開平11−209618号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、コランダムをシリコーン化合物で表面処理することにより樹脂とコランダムのなじみを良くすることで、混練物の低粘度化、均一分散性、硬化性樹脂をマトリックス樹脂として使用する際には硬化速度を向上させることにより、マトリックス樹脂中へのコランダムの充填率、樹脂組成物の取り扱い性、成形性を向上させることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意努力検討した結果、本発明に到達した。すなわち本発明は以下の各実施態様を含む。
(1)シリコーンレジンを含むシリコーン化合物で被覆されていることを特徴とするコランダム。
(2)上記シリコーンレジンがポリジメチルシロキサンのメチル基の少なくとも一部が他の置換基X(Xはアルコキシ基、エポキシ基、アミノ基、カルボキシル基、エーテル結合等を有する有機基)に置換された変性シリコーンおよび(1)式で表される変性シリコーンの少なくとも1種を含むことを特徴とする上記(1)に記載のコランダム。
【化1】

(YはC2n+1(nは1〜8の整数)で表わされるアルキル基、mは1以上の整数を表す。)
(3)500cSt以下の動粘度であるシリコーンレジンを含むシリコーン化合物で被覆されていることを特徴とする上記(1)または(2)に記載のコランダム。
(4)メチルメトキシシロキサンを含むシリコーン化合物で被覆されていることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれか1項に記載のコランダム。
(5)ポリエトキシジメチルシロキサンを含むシリコーン化合物で被覆されていることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれか1項に記載のコランダム。
(6)コランダムが、平均二次粒子径0.1〜200μm及びBET比表面積0.01〜100m2/gを有する上記(1)〜(5)のいずれか1項に記載のコランダム。
(7)シリコーン化合物が、コランダムに対して0.01質量%〜5質量%である上記(1)〜(6)のいずれか1項に記載のコランダム。
(8)上記(1)〜(7)のいずれか1項に記載されたコランダムを含む樹脂組成物。
(9)樹脂が、脂肪族系樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、メタアクリル樹脂、ビニルエステル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ゴム系エラストマーからなる群から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする上記(8)に記載の樹脂組成物。
(10)コランダムの含有量が30質量%〜95質量%であることを特徴とする上記(8)または(9)に記載の樹脂組成物。
(11)樹脂組成物がシート状であることを特徴する上記(8)〜(10)のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
(12)樹脂組成物がグリース状または固形状であることを特徴する上記(8)〜(10)のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
(13)上記(8)〜(12)の何れか1項に記載の樹脂組成物を介して熱を伝導する電子部品。
(14)上記(13)に記載の電子部品を使用した電子機器。
(15)上記(8)〜(12)の何れか1項に記載の樹脂組成物を介して熱を伝導する半導体装置。
(16)上記(15)に記載の半導体装置を使用した電子機器。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明のコランダムはその表面を、シリコーンレジンを含むシリコーン化合物で被覆されていることを特徴とする。本発明におけるシリコーンレジンとは、有機基を持つ珪素が酸素と交互に結合した結合を骨格にもった樹脂であり、ポリジメチルシロキサンのメチル基の一部が他の置換基X(Xはアルコキシ基、エポキシ基、アミノ基、カルボキシル基、エーテル結合等を有する有機基)に置換された変性シリコーンや(1)式で表される変性シリコーンが例示できる。本発明では、このようなシリコーンレジンをコランダム粒子に被覆する。R-Si(OR')(ここで、Rは官能基で、アミノプロピル基、グリシドキシ基、メタクリロキシ基、N-フェニルアミノプロピル基、メルカプト基、ビニル基、その他の官能基であり、R'はメチル基またはエチル基)で一般的に表されるいわゆるシランカップリン剤による表面処理とは異なる。本発明のシリコーンレジンで処理されたコランダムは、シランカップリング剤で処理されたコランダムより貯蔵安定性の点で有利である。
【化2】

(YはC2n+1(nは1〜8の整数)で表わされるアルキル基、mは1以上の整数)
表面をシリコーンレジンを含むシリコーン化合物で被覆する表面処理をしたコランダムを樹脂と混練すると、表面処理をしていない樹脂充填用コランダムを樹脂と混練するのに比較して、組成物中のコランダムの含有量を増やす、即ち充填率を上げることができる。また組成物中のコランダムの含有量を増やした場合でも比較的混練物の粘度が上昇せず、組成物の柔軟性が失われにくくなり、組成物の耐機械特性などが向上する。さらに、硬化性樹脂をマトリックス樹脂として使用する際表面処理を行わないコランダムを用いると硬化しなかったり、硬化が不十分であったり、または硬化する場合も硬化するまでに非常に時間を要する場合でも、本発明のコランダムを用いると短時間で硬化させることができる場合がある。
【0007】
シリコーンレジンを含むシリコーン化合物としては、500cSt以下の動粘度であるシリコーンレジンを含むシリコーン化合物を使用するのが好ましい。動粘度が500cStを超えるとコランダムの粒子表面への馴染みが悪化し均一に表面処理することが困難になることがある。
【0008】
使用可能なシリコーンレジンは特に限定されず、公知の化合物を使用できる。例えば前述の変性シリコーンが挙げられ、中でもメチルメトキシシロキサン、ポリエトキシジメチルシロキサン等のアルコキシ変性シリコーンを用いるのが好ましい。
好ましいシリコーン化合物として、具体的には、東レダウコーニング製AY42-163、日本ユニカー製FZ-3704を挙げることができる。これらのシリコーン化合物は単独でも、2種以上を組み合わせて使用することも可能である。
【0009】
本発明で使用するコランダムは、平均二次粒子径を好ましくは、0.1μm〜200μmの範囲内、より好ましくは、0.3μm〜100μmとする。平均粒子径がこのような範囲であると、このコランダムを含む樹脂組成物を、放熱シートのシート材料やMC(MetalCore)基板やプリント配線基板の基板材料に使用した場合に表面の平滑性が優れる。また、樹脂組成物中での分散性にも優れるため、樹脂組成物の機械的強度も良好となる。平均粒子径が0.1μm未満であると、ハンドリングしにくい場合があり、また、粒子間の凝集力が増加して、樹脂組成物中での分散性が低下する場合がある。また、200μmを超えると、このコランダムを含む樹脂組成物を放熱シートのシート材料やMC基板やプリント配線基板の基板材料に使用した場合に表面の平滑性が低下する。
さらに、本発明のコランダムは、BET法による比表面積を、好ましくは0.01m2/g〜100m2/gの範囲内、より好ましくは、0.05m2/g〜10m2/gの範囲内とする。このコランダムを使用した樹脂組成物は、表面が平滑で機械的強度が優れ、樹脂組成物中におけるコランダムの分散性が良好となる。
【0010】
コランダムにシリコーン化合物を被覆する方法としては特に限定はなく、公知の方法を使用できる。例えば、乾式処理法、湿式処理法等が挙げられる。
コランダムへのシリコーン化合物等の被覆量は、コランダムに対して0.01質量%〜5質量%の範囲内が好ましく、より好ましくは0.05質量%〜1質量%である。0.01質量%より低いと被覆効果が得にくく、5質量%より被覆量が高いと未反応のシリコーン化合物等の含有量が多くなり不純物として残る等のデメリットが生じることがある。
本発明のコランダムは、好ましくはオイルやゴムやプラスチック等の高分子化合物(これらを総称して広く「樹脂」ともいう。)に充填され、高熱伝導性グリース組成物、高熱伝導性ゴム組成物や高熱伝導性プラスチック組成物として好適に利用できる。特にコランダムの含有量を80質量%以上とするのが好ましい。
【0011】
このような樹脂としては、炭化水素系樹脂(例えば、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリレート共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、ポリ(エチレン−プロピレン)、ポリプロピレン、ポリイソプレン、ポリ(イソプレン−ブチレン)、ポリブタジエン、ポリ(スチレン−ブタジエン)、ポリ(ブタジエン−アクリロニトリル)、ポリクロロプレン、塩素化ポリプロピレン、ポリブテン、ポリイソブチレン、オレフィン樹脂、石油樹脂、スチロール樹脂、ABS樹脂、クマロン・インデン樹脂、テルペン樹脂、ロジン樹脂、ジエン樹脂等)、(メタ)アクリル樹脂(例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、グリシジル(メタ)アクリレート等のモノマーを単独で重合した樹脂、あるいは複数のモノマーを共重合した樹脂、ポリアクリロニトリル及び共重合体、ポリシアノアクリレート、ポリアクリルアミド、ポリ(メタ)アクリル酸塩など)、酢酸ビニルおよびビニルアルコール系樹脂(例えば、酢酸ビニル樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリビニルエーテルなど)、含ハロゲン系樹脂(例えば、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、フッ素系樹脂など)、含窒素ビニル樹脂(例えばポリビニルカルバゾール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピリジン、ポリビニルイミダゾールなど)、ジエン系重合物(例えば、ブタジエン系合成ゴム、クロロプレン系合成ゴム、イソプレン系合成ゴムなど)、ポリエーテル類(例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ヒドリンゴム、ペントン樹脂など)、ポリエチレンイミン類樹脂、フェノール系樹脂(例えば、フェノール・ホルマリン樹脂、クレゾール・ホルマリン樹脂、変性フェノール樹脂、フェノール・フルフラール樹脂、レゾルシン樹脂など)、アミノ樹脂(例えば、ユリア樹脂および変性ユリア樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂、アニリン樹脂、スルホンアミド樹脂など)、芳香族炭化水素系樹脂(例えば、キシレンホルムアルデヒド樹脂、トルエン・ホルマリン樹脂など)、ケトン樹脂(例えば、シクロヘキサノン樹脂、メチルエチルケトン樹脂など)、飽和アルキド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂(例えば、無水マレイン酸−エチレングリコール重縮合物、無水マレイン酸−無水フタル酸−エチレングリコール重縮合物等)、アリルフタレート樹脂(例えば、不飽和ポリエステル樹脂をジアリルフタレートで架橋した樹脂など)、ビニルエステル樹脂(例えば、末端に高反応性アクリル二重結合を持ち、主鎖がビスフェノールA系エーテル結合を有する一次ポリマーをスチレン、アクリルエステルなどで架橋した樹脂)、アリルエステル樹脂、ポリカーボネート、ポリリン酸エステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、シリコーン樹脂(例えば、ポリジメチルシロキサンなどのシリコーンオイル、シリコーンゴム、シリコーン樹脂、分子内にヒドロシロキサン、ヒドロキシシロキサン、アルコキシシロキサン、ビニルシロキサン構造を有し、触媒や熱によって硬化する反応性シリコーン樹脂など)、フラン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリウレタンゴム、エポキシ樹脂(例えばビスフェノールAとエピクロルヒドリンの縮合物、ノボラック型フェノール樹脂とエピクロルヒドリンの縮合物、ポリグリコール類とエピクロルヒドリンの縮合物等を用いたものなど)、フェノキシ型樹脂あるいはこれらの変性体等が挙げられる。これらは単独、あるいは複数で用いることができる。
【0012】
この中で特に、不飽和ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、メタアクリル樹脂、ビニルエステル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂を用いるのが好ましい。
これらの樹脂は、低分子量でも高分子量でもよい。あるいはゴム状、ガラス状、硬化物でもよい。使用する用途、環境によって任意に選択することができる。
更に樹脂がオイル状物質であることも好ましい。本発明のコランダムとオイルを混合したグリースは、発熱体と放熱体の凹凸に追従するとともに、その間隔を狭めることができ、放熱効果をより高めることができるので好適である。
この目的その他の目的で使用できるオイルについては特に限定はなく、公知のものが使用でき、例えばシリコーンオイル、石油系オイル、合成系オイル、フッ素系オイルなどが挙げられる。
本発明のシリコーン化合物で被覆されたコランダムは、被覆されていないコランダムと比較して、特に限定されず、広く樹脂に対して馴染みがよく、高充填できる等の効果を奏するものであるが、勿論、2成分室温硬化シリコーンポッティングゲル(GE東芝シリコーン株式会社製 TSE3070)などの硬化性シリコーンオイルなどのシリコーンに対しては親和性がより高いので、このようなシリコーンはとりわけ好ましい樹脂である。
本発明の組成物は、シート状などの固形状またはグリース状とすることができる。これらを、例えば電子部品や半導体装置の発熱する部分と放熱部品や放熱板などの間に挟むなどして、本発明の組成物を介して効率的に発生した熱を伝導し放出することができる。この様にすることにより、電子部品や半導体装置の熱劣化などを低減し、これら及びこれらを用いた電子機器の故障を減らしたり、寿命を延ばしたりすることができる。これらの具体例としては、例えば、コンピュータ及びそのCPU(中央演算素子)、PDP(プラズマディスプレイパネル)、電池(鉛蓄電池、二次電池、キャパシタなど)及びその周辺機器(ハイブリッド電気自動車などにおいて二次電池と放熱体の間に熱伝導性組成物を設け温度制御を行ない電池特性を安定化させる装置)、電動機の放熱器、ペルチェ素子、インバータ、(ハイ)パワートランジスタ、高輝度LEDなどが挙げられる。
図1に、本発明の組成物をシート状に加工した放熱シート1を電子部品や半導体装置(CPU等)の発熱する部分これを含むパッケージ2と放熱部品(ヒートシンク)や放熱板などを含むパッケージ3の間に挟んで、放熱シート1を介して効率的に発生した熱を伝導し放出する装置の例を示す。4は基板である。
【実施例】
【0013】
以下、実施例・比較例によって、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1〜9)
20Lヘンシェルミキサー(三井三池化工機株式会社製 HENSCHEL NP2 FM20B)に所定の平均粒子径、BET比表面積のコランダムを7kg投入し、混合しながら表1の各水準のシリコーン化合物を所定量(実施例1,2,4〜9;35g、実施例3;70g)添加した後、110℃にて1時間混合して表面処理コランダムを得た。
該表面処理コランダム各60gとシリコーンオイル(GE東芝シリコーン株式会社製 2成分系室温硬化性シリコーンポッティングゲルTSE3070 A液10g+B液10g、A液:ポリアルキルアルケニルシロキサン、白金化合物の混合物、B液:ポリアルキルアルケニルシロキサン、ポリアルキル水素シロキサン、反応調節剤の混合物)20gを脱泡混練機(株式会社 日本精機製作所 NO-BUBBLING NBK-2)にて750rpmで5分間混合し、樹脂組成物を得、これを大気中、100℃で1時間保持して硬化試験を行った。
硬化試験を行った結果、いずれも良好な硬化状態であった。
また、該表面処理コランダム各300gを、シリコーンオイル(GE東芝シリコーン株式会社製TSE3070 A液10g+B液10g)100gに充填し、BS型粘度計(東京計器製)で25℃にて粘度を測定した。
【0014】
(参考例1〜6)(比較例1)
実施例と同じ条件で表面処理・硬化試験を行った。表面処理時のシリコーン化合物の添加量は、参考例1〜4の場合35g、参考例5では0.035g、参考例6では420gであり、比較例1は表面処理を行っていないコランダムで硬化試験を行った。
シリコーン化合物で表面を被覆しない場合(比較例1)、樹脂組成物は硬化しなかった。
シリコーン化合物を表面に被覆しても、シリコーン化合物が適切でないと、樹脂組成物は硬化しない(参考例2,3)、硬化が不十分(参考例1)、硬化し過ぎてゴムとして使用不可(参考例4)の結果となった。なお、参考例5ではシリコーン化合物の量が少ないため若干硬化性が低かった。参考例6ではシリコーン化合物の量が多いため表面処理時に粉が凝集し、硬化させたとき均一でない傾向であった。
実施例1〜9では、適量のアルコキシ変性シリコーンをシリコーン化合物として用いており、無変性あるいは他の変性シリコーンを用いた参考例1〜4の場合に比べて硬化が良好であった。
粘度測定の結果、シリコーン化合物を一定量以上添加した場合(実施例1,3、参考例6)は、添加しない場合(比較例1)または添加量が少ない場合(参考例5)と比較して、大幅に粘度が低下した。このことによりコランダムをシリコーン化合物で表面処理することによりコランダムをより多く樹脂に充填できることが分かる。
上記実施例では、いずれもシリコーン化合物処理したコランダム粒子を硬化性のシリコーンオイルに添加した場合を例示したが、他の硬化性あるいは非硬化性(熱可塑性)のマトリックス樹脂に添加する場合にもその樹脂に応じて適宜シリコーン化合物を選択することにより良好な成形性を得ることができる。
【0015】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0016】
本発明のコランダムは樹脂中に高充填されることができ、そのコランダムを充填した樹脂組成物を例えば電子部品や半導体装置の発熱する部分と放熱部品や放熱板などの間に介在させてその熱伝導性および放熱性を高めることができるので、本発明のコランダムおよびそれを含む樹脂組成物は産業上有用である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、本発明の樹脂組成物を電子部品や半導体装置の発熱する部分と放熱部品や放熱板などの間に挟んで、本発明の樹脂組成物を介して効率的に発生した熱を伝導し放出する装置の例を示す。
【符号の説明】
【0018】
1 放熱シート
2 パッケージ
2a CPUなどの発熱する部分
3 放熱部品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコーンレジンを含むシリコーン化合物で被覆されていることを特徴とするコランダム。
【請求項2】
上記シリコーンレジンがポリジメチルシロキサンのメチル基の少なくとも一部が他の置換基X(Xはアルコキシ基、エポキシ基、アミノ基、カルボキシル基、エーテル結合等を有する有機基)に置換された変性シリコーンおよび(1)式で表される変性シリコーンの少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項1に記載のコランダム。
【化1】

(YはC2n+1(nは1〜8の整数)で表わされるアルキル基、mは1以上の整数を表す。)
【請求項3】
500cSt以下の動粘度であるシリコーンレジンを含むシリコーン化合物で被覆されていることを特徴とする請求項1または2に記載のコランダム。
【請求項4】
メチルメトキシシロキサンを含むシリコーン化合物で被覆されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のコランダム。
【請求項5】
ポリエトキシジメチルシロキサンを含むシリコーン化合物で被覆されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のコランダム。
【請求項6】
コランダムが、平均二次粒子径0.1〜200μm及びBET比表面積0.01〜100m2/gを有する請求項1〜5のいずれか1項に記載のコランダム。
【請求項7】
シリコーン化合物が、コランダムに対して0.01質量%〜5質量%である請求項1〜6のいずれか1項に記載のコランダム。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載されたコランダムを含む樹脂組成物。
【請求項9】
樹脂が、脂肪族系樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、メタアクリル樹脂、ビニルエステル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ゴム系エラストマーからなる群から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする請求項8に記載の樹脂組成物。
【請求項10】
コランダムの含有量が30質量%〜95質量%であることを特徴とする請求項8または9に記載の樹脂組成物。
【請求項11】
樹脂組成物がシート状であることを特徴する請求項8〜10のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項12】
樹脂組成物がグリース状または固形状であることを特徴する請求項8〜10のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項13】
請求項8〜12の何れか1項に記載の樹脂組成物を介して熱を伝導する電子部品。
【請求項14】
請求項13に記載の電子部品を使用した電子機器。
【請求項15】
請求項8〜12の何れか1項に記載の樹脂組成物を介して熱を伝導する半導体装置。
【請求項16】
請求項15に記載の半導体装置を使用した電子機器。

【図1】
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【公開番号】特開2006−188670(P2006−188670A)
【公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−351251(P2005−351251)
【出願日】平成17年12月5日(2005.12.5)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】