説明

表面検査装置

【課題】
多数の最適候補条件の下でそれぞれ検査を行うと全体の処理時間が長くなる。そこで、多数の最適候補条件のうち、検査に適するものを選んで最適条件とすることが望まれている。そのために、まず、画像を順位つけした後分類を行うことが考えられているが、適切な分類方法はいまのところ提案されていない。
【解決手段】
請求項1に係る発明は、表面検査装置の装置条件を順次変更し、被検物体の画像データを順次、取り込み、複数の画像データを記憶し、前記複数の画像データに所定の処理を施して前記画像データの順位つけをすると共に、前記複数の画像データの特徴量をそれぞれ抽出して、その特徴量に基づいて前記複数の画像データを分類し、その結果、画像データのうち順位の高いものを、各分類毎の候補画像データとして、各分類毎の候補画像データを取得した際の装置条件を最終的な装置条件に設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検物体(例えば半導体回路素子や液晶表示素子の製造工程において基板)の表面を検査する表面検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体回路素子や液晶表示素子の製造工程では、半導体基板(ウエハやプレート)の表面に形成された繰り返しパターンの検査が表面検査装置により行われる。従来の表面検査装置は、基板の表面に検査用の照明光を照射し、そのとき基板上の繰り返しパターンから発生する回折光または反射光に基づいて基板の像を撮像し、得られた基板画像を自動的に画像処理して表面検査を行うものである。このような表面検査装置では、一般に、画像の明暗差(コントラスト差)により、繰り返しパターンの欠陥箇所が特定される。この表面検査装置にはユーザーが経験的、実験的に得られた装置条件を装置のオペレーションでレシピに登録する。
この装置条件は、例えば、基板のチルト角や基板に対する照明光量などである。
【特許文献1】特開2003−202302号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このように、ユーザーは経験的、実験的に得られた装置条件をレシピに登録するので、ユーザー個々に装置条件が異なり、同一の半導体基板であっても検査結果にばらつきが生じやすい。
【0004】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、表面検査において装置条件を自動的に最適化できる表面検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に係る発明は、表面検査装置の装置条件を順次変更し、被検物体の画像データを順次、取り込み、複数の画像データを記憶し、前記複数の画像データに所定の処理を施して前記画像データの順位つけをすると共に、前記複数の画像データの特徴量をそれぞれ抽出して、その特徴量に基づいて前記複数の画像データを分類し、その結果、画像データのうち順位の高いものを、各分類毎の候補画像データとして、各分類毎の候補画像データを取得した際の装置条件を最終的な装置条件に設定する。
【0006】
更に、請求項2に係る発明は、請求項1に記載の表面表面検査装置において、最高順位の画像データと、最高順位の画像データと各分類の最高順位の候補画像データとを相関演算処理し、前記最高順位の画像データの次点の画像データとを取得した際の最終的な装置条件を設定する。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に係る発明においては、取得した複数の画像データから所定の処理を施し候補画像データを求めることで、被検物体の検査に適した装置条件が自動的に設定され、検査精度が向上する。
【0008】
請求項2又は請求項5に係る発明においては、さらに請求項1で求めた候補画像データから絞り込みが行われるので、より適切な装置条件が設定されることになる。
請求項3又は請求項4に係る発明においては、半導体ウエハの各ショット画像から特徴量を抽出しており、半導体ウエハに最適な装置条件が自動的に設定される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を用いて本発明の実施形態を詳細に説明する。
図1は本実施形態の表面検査装置の概観図を示す。本実施形態の表面検査装置10は、図1に示すように、被検物体である半導体ウエハ11(以降、ウエハと称す)を保持するホルダ12と、ホルダ12上のウエハ11の表面に照明光L1を照射する照明光学系13と、照明光L1が照射されたウエハ11の表面からの回折光L2を受光する受光光学系14と、画像処理装置15とで構成されている。
【0010】
本実施形態の表面検査装置10は、半導体回路素子の製造工程において、ウエハ11の表面に形成された繰り返しパターンの欠陥検査を自動的に行うための装置である。繰り返しパターンとは、周期的に繰り返される線配列形状の回路パターンのことである。
【0011】
ウエハ11の表面には、図2に示すように、複数のショット20がxy方向に配置されていて、各々のショット20には、同様の繰り返しパターンが形成されている。
表面検査装置10のホルダ12には、チルト機構30が設けられる。このため、ホルダ12は、チルト機構30によって、ウエハ11の表面を通る軸Ax1のまわりに所定の角度範囲(例えば、20°〜75°)内でチルト可能である。
【0012】
なお、ホルダ12は、不図示の搬送装置によって搬送されてきたウエハ11を上面に載置し、真空吸着によって固定保持する。
ここで、ホルダ12(ウエハ11)の軸Ax1に平行な方向をX方向とする。また、ホルダ12(ウエハ11)が水平に保たれた状態での法線(基準法線Ax2)に平行な方向をZ方向とする。さらに、X方向およびZ方向に直交する方向をY方向とする。
【0013】
表面検査装置10の照明光学系13は、光源21とライトガイド22と凹面反射鏡23とで構成された偏心光学系であり、光源21は、放電ランプ24と波長選択フィルタ25とニュートラルデンシティ(ND)フィルタ26とで構成されている。
【0014】
このうち、放電ランプ24は、例えばメタルハライドランプや水銀ランプである。波長選択フィルタ25は、放電ランプ24から射出された光の波長選択を行う。この波長選択フィルタ25は、照明光L1の波長を調整する手段である。NDフィルタ26は、波長選択フィルタ25からの光の光量調整を行う。
【0015】
ライトガイド22は、光源21からの光を伝送して、端面22aから凹面反射鏡23に向けて射出する。ライトガイド22の端面22aは、凹面反射鏡23の前側焦点位置に配置されている。凹面反射鏡23は、球面の内側を反射面とした反射鏡であり、ホルダ12の斜め上方に配置される。つまり、凹面反射鏡23の中心とホルダ12の中心とを通る軸(光軸O1)は、Z方向に対して所定の角度だけ傾けられている。
【0016】
また、凹面反射鏡23は、光軸O1がホルダ12の軸Ax1(X方向)に対して直交するように配置されている。このため、光軸O1とウエハ11の法線(軸Ax2)とを含む面(入射面)は、YZ面に平行となる。 さらに、凹面反射鏡23は、後側焦点面がウエハ11面と略一致するように配置されている。このため、表面検査装置10の照明光学系13は、ウエハ11側に対してテレセントリックな光学系となっている。
【0017】
上記の照明光学系13において、光源21からの光は、ライトガイド22と凹面反射鏡23とを介して、ウエハ11の表面全体に照射される(照明光L1)。照明光L1は、ウエハ11上の任意の点に到達する光束の中心線が光軸O1に略平行な光束である。照明光L1の入射角(θi−T)は、ウエハ11の表面に垂直な軸Ax2と光軸O1との間の角度に相当する。
【0018】
このようにして照明光L1が照射されると、ウエハ11の表面に形成された繰り返しパターンからは、後述する回折の条件にしたがって、回折光L2が発生する。回折光L2の強度は、繰り返しパターンの欠陥箇所と正常箇所とで異なる。回折光L2の回折角(θr+T)は、ウエハ11の表面に垂直な軸Ax2と回折光L2の進行方向との間の角度に相当する。ちなみに、回折光L2を発生させる繰り返しパターンの直線方向は、ホルダ12の軸Ax1に略平行である。
【0019】
ここで、回折の条件は、照明光L1の波長λおよび入射角(θi−T)、回折光L2の回折角(θr+T)および回折次数n、繰り返しパターンのピッチpを用いると、次式(1)で表すことができる。
【0020】
【数1】

【0021】
式(1)において、入射角(θi−T)および回折角(θr+T)は、ウエハ11の表面に垂直な軸Ax2を基準として入射側に見込む角度方向をプラス、反射側に見込む角度方向をマイナスとする。回折次数nは、n=0の0次回折光(正反射光)を基準として入射側に見込む角度方向をプラス、反射側に見込む角度方向をマイナスとする。
【0022】
また、式(1)において、θiは基準法線(Z方向)と光軸O1との間の角度を表し、θrは基準法線(Z方向)と回折光L2の進行方向との間の角度を表し、Tはホルダ12のチルト角を表している。チルト角Tは、所定の角度範囲(20°〜75°)内において可変であり、ホルダ12が水平状態に保たれたときをT=0とし、入射側への角度方向をプラス、反対側への角度方向をマイナスとする。θiは、表面検査装置10における固定値であり、チルト角T=0のときの照明光L1の入射角に相当する。θrは、チルト角T=0のときの回折光L2の回折角に相当する。
【0023】
式(1)からも分かるように、チルト角Tを変化させることにより、照明光L1の入射角(θi−T)をチルト角Tに応じて変化させることができ、結果として、回折光L2の回折角(θr+T)も変化させることができる。
【0024】
表面検査装置10の受光光学系14は、回折光L2を受光する光学系であり、凹面反射鏡27と、CCDカメラ28とで構成された偏心光学系である。
凹面反射鏡27は、上記の凹面反射鏡23と同様の反射鏡であり、ホルダ12の斜め上方に配置される。つまり、凹面反射鏡27の中心とホルダ12の中心とを通る軸(光軸O2)が基準法線(Z方向)に対して所定の角度θdだけ傾くように配置されている。
【0025】
θdは、表面検査装置10における固定値である。以下、ウエハ11の表面に垂直な軸Ax2と光軸O2との間の角度(θd+T)を受光角という。この受光角(θd+T)も、上記の入射角(θi−T)と同様、チルト角Tに応じて変化する。 また、CCDカメラ28は、その撮像面が凹面反射鏡23の焦点面と略一致するように配置される。CCDカメラ28の撮像面には、複数の画素が2次元的に配列されている。
【0026】
上記の受光光学系14において、ウエハ11の表面の繰り返しパターンから発生した回折光L2は、凹面反射鏡27を介して集光され、CCDカメラ28の撮像面上に到達する。CCDカメラ28の撮像面上には、回折光L2によるウエハ11の像(ウエハ回折像)が形成される。CCDカメラ28は、ウエハ回折像を撮像して、画像信号を画像処理装置15に出力する。
【0027】
ここで、回折光L2の強度は、ウエハ11の表面の繰り返しパターンの欠陥箇所と正常箇所とで異なる。このため、CCDカメラ28の撮像面に形成されるウエハ回折像には、繰り返しパターンの欠陥箇所と正常箇所とに起因する明暗差(コントラスト差)が生じることになる。 表面検査装置10の画像処理装置15は、制御部16と、条件決定部17と、欠陥検出部18と、メモリ19とで構成されている。
【0028】
このうち制御部16は、ホルダ12(ウエハ11)の軸Ax1まわりのチルト制御、NDフィルタ26による光量の調整制御、波長選択フィルタ25による波長の選択制御を行う。つまり、制御部16は、CCDカメラ28がウエハ回折像を撮像する際の装置条件(後述するホルダ12のチルト角Tなど)を設定する手段である。
【0029】
また、制御部16は、CCDカメラ28から得られるウエハ回折像の画像信号を所定ビット(例えば8ビット)のディジタル画像に変換して、メモリ19に記憶させる。さらに、上記の装置条件(後述するホルダ12のチルト角Tなど)も併せてメモリ19に記憶させる。条件決定部17と制御部16とは、CCDカメラ28がウエハ回折像を撮像する際の最適な装置条件の候補(最適候補条件)の決定処理を行う。そして、制御部16は、決定処理により決定された最適候補条件の分類処理を行い(詳細は後述する)、欠陥検出部18は、分類処理により分類された最適候補条件に基づいて、ウエハ11の表面の繰り返しパターンの欠陥検出処理を行う。条件決定部17における条件決定についての詳細は後述する。また、欠陥検出部18における欠陥検出の具体的な方法は、公知技術と同様であるため、説明および図示を省略する。
【0030】
ところで、本実施形態の表面検査装置10では、上記の照明光学系13と受光光学系14とが固定されている(θi,θdは固定値)。このため、入射角(θi−T)および受光角(θd+T)の調整は、ホルダ12(ウエハ11)を軸Ax1のまわりにチルトさせることで行われる。ただし、入射角(θi−T)と受光角(θd+T)との和は常に一定である。
【0031】
この表面検査装置10では、回折光L2の回折角(θr+T)が受光角(θd+T)と一致するようにホルダ12(ウエハ11)をチルトさせれば、つまり、式(1)のθrにθd(固定値)を代入したときの解Tにしたがってホルダ12(ウエハ11)をチルトさせれば、ウエハ11の表面の繰り返しパターンから発生した回折光L2を受光光学系14の光軸O2に沿って進行させることができる。
【0032】
次に、本実施形態の表面検査装置10における最適候補条件決定処理について説明する。最適候補条件の決定は、画像処理装置15の制御部16と条件決定部17とが、図3〜図7に示すフローチャートの手順にしたがって行う。
【0033】
ウエハ11がホルダ12上に固定されると、制御部16は、ホルダ12の制御を行い、装置条件(ホルダ12のチルト角度T)を変化させながら(図3(以下同):ステップS1)、CCDカメラ28によりウエハ11の回折像を撮像して(ステップS2)、画像データを取り込み、ディジタル画像データに変換する。このとき、チルト角Tを所定の角度変化量に基づき変化させ、その変化毎に対応する装置条件を、画像データと共に関連付けされたデータとしてメモリ19に記憶する(ステップS3)。
【0034】
チルト角度を変化させる範囲は予めメモリ19に記憶されている。そして、このチルト角の全範囲について画像の取り込みが完了すると(ステップS4のYes)、条件決定部17は、メモリ19に記憶されている全ての画像データを取得する(ステップS5)。
【0035】
次に、条件決定部17では、取得した全ての画像データのそれぞれについて、ウエハ画像の順位付けを行い、第1位画像を決定する(ステップS6)。順位付けとは、ウエハの画像データを解析することで、下記したように「画像品質スコア、光量スコア、ピッチスコア、 検査面積スコア」の4種類を用いて順位付けを行います。
【0036】
ウエハの画像データの順位付けについては、図4のフローチャートに従い説明する。ウエハの画像データの順位付けはカウンタを設定し(図4:ステップS41、S42)、ショットの平均画像データを作成することから始める(ステップS43)。ショット平均画像データとは、ステップS5で取得した画像データ(ウエハ11の全体像)から、複数のショット20の画像データをそれぞれ抜き出し、それらのショット画像データの濃度(輝度レベル)を、画素ごとに平均した画像データである。図8に、ショット平均画像データの例を示す。図8に示すように、9つのショット平均画像データは、それぞれのウエハ11の全体像の特徴を示す画像であり、各々のショット平均画像データには、前述した最適候補条件決定処理によって決定された最適候補条件(ホルダ12のチルト角T)が対応付けられている。
【0037】
なお、各々のショット20には、同様の繰り返しパターンが形成されているため、それぞれのショット20の画像は類似している。そのため、画素ごとの濃度平均を求めることにより、ウエハ11の全体像の特徴を示す画像データとしてショット平均画像データを求める。次にショット平均画像データから順位付けに使用するスコアに関した統計量を計算する(ステップS44)。
【0038】
スコアには画像品質スコア、光量スコア、ピッチスコア、 検査面積スコアの4種類がある。画像品質スコアには次の4つの統計量を使う。
・ショットの明るさ(濃度平均)のショット間の平均
・ショットの明るさ(濃度平均)のショット間のばらつき(標準偏差)
・ショット内の画素値のばらつき(標準偏差)のショット間のばらつき(標準偏差)
・ショットの歪度のショット間のばらつき(標準偏差)
ショットの明るさ(濃度平均)のショット間の平均μmeanは図8に示すように1ウエハのショット数をN、i番目のショットの濃度平均をμiとして式2であらわされる。
【0039】
【数2】

【0040】
ショットの明るさ(濃度平均)のショット間のばらつき(標準偏差σmean)は図9に1ウエハのショット数をN、i番目のショットの濃度平均μiをとして式3であらわされる。
【0041】
【数3】

【0042】
ショット内の画素値のばらつき(標準偏差)のショット間のばらつき(標準偏差σStd)は1ウエハのショット数をN、ショット内の画素値のばらつきをσi 、ショット内の画素値のばらつきの平均をσaveとして式4であらわされる。
【0043】
【数4】

【0044】
ショットの歪度のショット間のばらつき(標準偏差σSk)は1ウエハのショット数をN、i番目の歪度をSki、歪度の平均をSkaveとして式5であらわされる。
【0045】
【数5】

【0046】
ここで歪度Sk(skewness)はショット内の画素数をn、ショット内のj番目の画素の濃度ヒストグラムをxj 、ヒストグラムの平均をxave、ヒストグラムの標準偏差をσとして式6であらわされる。
【0047】
【数6】

【0048】
以上の統計量を自身の標準偏差で割ることで正規化した値の平均値を画像品質スコアとする。
光量スコアは、正確には回折光量スコアと言うべきものであり、回折する割合の高いほどスコアが高く設定される。
【0049】
ピッチスコアは、対象パターンピッチのファインさを示すスコアであり、ピッチが小さいほど高スコアとなる。光量スコアとピッチスコアは本システム以外のシステムで算出されるため本システムはこれを読み込んで使用する。
【0050】
検査面積スコアは2値化された画像の明部のピクセル数をカウントし、ショット内の全ピクセル数で割ることによって求めることが出来る。明部が多いほど高スコアとなる。
総合スコアはW1、W2、W3、W4を0〜1の実数として、
総合スコア=W1×画像品質スコア+W2×光量スコア+W3×ピッチスコア+W4×検査面積スコア
であらわされる。
【0051】
総合スコアの値に基づいてショット平均画像の順位付けを行う(ステップS45)。画像データが最後か否かを判定し(ステップS46)画像がまだあればステップS42へ戻り、最後であれば終了し、最もスコアの高い画像データを1位とした後、制御は図3へ戻る。
【0052】
次に、ステップS7ではウエハ画像のクラスタリングを行う。
クラスタリングに使用する特徴量としてはショット平均画像の濃度平均、ショット平均画像の濃度標準偏差、ショット平均画像の画像中心周りの慣性モーメント、同X軸、Y軸まわりの各々慣性モーメント、および領域濃度差である。ここで領域濃度差とは図9に示すごとく中央領域の濃度平均から周辺領域の濃度平均を引いた値である。またこれら特徴量は自身の標準偏差で正規化した値を用いる(図5:ステップ51)。クラスタリングで分類するクラスタの数は式7により決定する(ステップS52)。この最適クラスタ数の算出は、画像品質スコア算出時に計算したウエハのショット画像群の統計量とウエハ画像数の対数値とロジスティック関数から最適なクラスタ数を算出する。以下に算出式7を示す。
【0053】
【数7】

【0054】
以上の特徴量、クラスタ数によりクラスタリングを行いウエハ画像を分類する。
クラスタリングとは、特徴量空間に類似性の尺度を導入して、標本を似たものどうしを集めてグループ(以下、「クラスター」と称する)に分類することをいう。本実施形態では、9つの最適候補条件(最適候補条件決定処理によって決定された複数の最適候補条件)に対応する画像に基づくチップ平均画像に対して、クラスタリングを行い、式7によりクラスター数が5と決定されてとすると5つのクラスターに分類する。
【0055】
また、特徴量空間とは、8つの特徴量を軸とする8次元の空間のことである。8つの特徴量は、ステップS51において正規化されているため、各軸は等価になっている。
制御部16は、まず、個々の最適候補条件を、全てクラスターとする。この時点でクラスター数は9であることになる。そして、群間平均でクラスター間の距離を全て求める。ただし、この時点では、各クラスターには1つずつの要素しか含まれていないため、クラスター間の距離は、それぞれの要素のあいだの(例えば)ユークリッド距離として求められる。そして、求めたクラスター間の距離のうち、距離最小の一対のクラスターを選び、併合する。併合された一対のクラスターは、1つのクラスターとなり、このクラスターには2つの要素が含まれることになる。このように、1つのクラスターに複数の要素が含まれる場合、クラスター間の距離は群間平均により求められる。
【0056】
以上説明した処理を繰り返し、クラスター数が5になると、制御部16は最適候補条件分類処理を終了する。
図10に、分類された最適候補条件に対応付けられたショット平均画像データの例を示す。図10に示すように、9つのチップ平均画像データは、5つのクラスター(クラスター1〜クラスター5)に分類される。それぞれのクラスターには、類似性が高いショット平均画像データが含まれる。したがって、それぞれのショット平均画像データに対応する最適候補条件も類似性が高いものに分類されることになる。
【0057】
処理の説明に戻る。既に全ての画像データは前記総合スコアにより順位付けされているため各クラスタの最も良い順位の画像データを各クラスター代表画像と決定する(ステップ53)。
【0058】
次に、図6及び図7を用いて、第2位以降の画像を決定する。図6及び図7は、候補画像データから最終的な画像データを絞り込む処理のフローチャート図を示す。
ステップS6で決定した順位1位の画像データと全てのクラスター代表画像データの相関演算計算を行う(図3ステップS8、図6ステップ61)。これはショット平均画像データの高輝度領域をなるべく重複しないように増加させるために行う。具体的に述べれば、1位画像と2位画像の合成画像で領域全体が白領域になるような画像を2位画像に選ぶ(下記3位画像も同様に1,2,3位の合成画像で領域全体が白領域になるような画像を3位画像に選ぶ。)
そのためには順位1位の画像と相関演算の結果がー1に近い(負の相関が高い)画像を順番に並べ順位付けを行い、その順位に順位付けで計算したスコア順位を加算し総合順位とする(ステップ63) 。そして総合順位の1番小さいものを順位2位の画像と決定する(ステップ64)。ここで、相関演算で負の結果が1つもなければ条件を満たす画像がないと判断され処理を終了する(ステップ62、図3ステップ9 )。
【0059】
次に順位3位の画像の選択は順位1位の画像と順位2位の画像を論理和した画像と全てのクラスター代表画像の相関演算計算を行う(図3ステップS10、図7ステップ71)。相関演算の結果が負の結果が1つもなければ条件を満たす画像がないと判断され処理を終了する(ステップ72)。負の結果があれば相関順位付けを行い、その順位にスコア順位を加算し総合順位とする(ステップ73) 。そして総合順位の1番小さいものを順位3位の画像と決定する(ステップ74)。
【0060】
以上でもっとも検査に適した画像が3つ選ばれ、その画像に付随する条件(チルト角度)が検査に適した角度として選択される。
実施例の説明ではチルト角度を例にしたが、照明光量や照明波長などの他の条件でも全く同様の処理が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】図1は、表面検査装置の概観図を示す。
【図2】図2は、ウエハのショット画像の図を示す。
【図3】図3は、表面検査装置のメインフローチャート図を示す。
【図4】図4は、ウエハの画像データの順位付け処理のフローチャート図を示す。
【図5】図5は、ウエハの画像データのクラスタ分類処理のフローチャート図を示す。
【図6】図6は、候補画像データから最終的な画像データを絞り込む処理のフローチャート図を示す。
【図7】図7は、候補画像データから最終的な画像データを絞り込む処理のフローチャート図を示す。
【図8】図8は、ショット平均画像データの図を示す。
【図9】図9は、ショット平均画像データの領域濃度差(中央領域の濃度平均から周辺領域の濃度平均を引いた濃度差)の図を示す。
【図10】図10は、分類された最適候補条件に対応付けられたショット平均画像データの図を示す。
【符号の説明】
【0062】
11:ウエハ
12:ステージ
13:照明光学系
14:受光光学系
15:画像処理装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の装置条件のもとに被検物体を撮像し、前記被検物体の画像データに基づき検査する表面検査装置において、
前記装置条件を順次変更し、そのもとに撮像された前記被検物体の画像データを順次、取り込み、複数の前記画像データを記憶する取込手段と、
前記取込手段から前記複数の画像データを入力し、前記複数の画像データに所定の処理を施して前記画像データの順位つけをする順位付け手段と、
前記取込手段から前記複数の画像データを入力し、前記複数の画像データの特徴量をそれぞれ抽出する抽出手段と、
前記抽出手段により抽出された前記特徴量に基づいて、前記複数の画像データを分類する分類手段と、
前記順位付け手段及び前記分類手段に接続され、前記分類手段にて分類された前記画像データのうち前記順位付け手段にて付けられた順位の高いものを、各分類毎の候補画像データとする候補画像選出手段と、
前記候補画像選出手段にて選出された前記各分類毎の候補画像データに基づき、前記候補画像データを取得した際の装置条件を最終的な装置条件に設定する装置条件設定手段と
を備えたことを特徴とする表面表面検査装置。
【請求項2】
請求項1に記載の表面表面検査装置において、
前記順位付け手段により順位付けられた最高順位の画像データを選出し、併せて、前記最高順位の画像データと前記候補画像選出手段から得られた前記各分類の最高順位の前記候補画像データとを相関演算処理し、その処理結果に基づき前記最高順位の画像データの次点の画像データをさらに選出する最終画像選出手段を備え、
前記装置条件設定手段は、前記最終画像選出手段により選出された前記画像データを取得した際の最終的な装置条件を設定することを特徴とする表面表面検査装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2のいずれか1つに記載の表面表面検査装置において、
前記被検物体は、半導体ウエハであり、
前記抽出手段は、前記画像データに含まれる複数のショット画像の濃度を平均して平均画像を生成し、該平均画像から、前記特徴量を抽出することを特徴とする表面表面検査装置。
【請求項4】
請求項1又は請求項2のいずれか1つに記載の表面表面検査装置において、
前記順位付け手段は、前記平均画像のショット間の統計量により順位付けされ決定されることを特徴とする表面表面検査装置。
【請求項5】
請求項2に記載の表面表面検査装置において、
前記装置条件設定手段は前記候補画像データ同士の相関計算によりつけられた順位に従い絞り込み処理を行う
ことを特徴とする表面表面検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−294684(P2006−294684A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−109770(P2005−109770)
【出願日】平成17年4月6日(2005.4.6)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】