説明

表面検査装置

【課題】不感領域の影響を小さくして検査精度を向上させた表面検査装置を提供する。
【解決手段】表面検査装置1は、ステージ10と、照明系20と、受光系30と、複数の受光部および受光部の周囲に設けられて受光しない不感部を有した撮像素子50と、撮像素子50を相対移動させる画素補完駆動部35と、撮像素子50が複数の受光部同士の間隔よりも小さい相対移動量で相対移動しながら複数の像を撮像するように画素補完駆動部35および撮像素子50の作動を制御する制御部40と、撮像素子50により撮像された複数の画像における各画素を画素補完駆動部35による相対移動に応じた順に並べて合成した合成画像を生成する画像処理部45とを備え、撮像素子50の撮像面50a上に、受光部の一部を遮蔽する遮蔽部材が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造工程において半導体ウェハ等の基板表面を検査する表面検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上述のような表面検査装置として、シリコンウェハの表面に照明光を照射して当該シリコンウェハの表面に形成された繰返しパターンからの回折光を撮像し、撮像面内における輝度変化からパターンの良否判断を行う表面検査装置が知られている(例えば、特許文献1を参照)。このような表面検査装置では、繰返しパターンのピッチが微細化するのに伴って、回折光を発生させるために照明光の波長が紫外線の領域まで短波長化している。そのため、回折光を撮像するカメラに搭載された撮像素子は、開口率が小さく、受光効率が低い。
【0003】
受光効率を上げるためには、撮像素子の受光部の開口をなるべく大きくすることが望ましいが、ノイズを減らすことや情報を転送すること等の機能を実現する周辺回路を配置する必要があるため、受光に寄与しない領域である不感領域を撮像素子の画素内に設けなければならない。すなわち、図12に示すように、撮像素子Cにおいて、受光のための有効領域(開口部)Aと不感領域Bとを合わせた部分が1画素の占める領域となる。そして、図13(a)に示すように、有効領域Aに結像した像(ウェハWの像)の情報は画像情報(輝度データ)として取得できるが、図13(b)に示すように、不感領域Bに結像した像の情報は画像情報(輝度データ)として取得することはできない。そのため、像を再生した画像には不感領域の情報は含まれない。
【0004】
そこで、より多くの光を撮像素子の開口部(有効領域)に導くため、多くの撮像素子の撮像面には、マイクロレンズやインナーレンズといった集光部が配設され、これによって開口率を向上させ、不感領域を低減している。しかしながら、短波長の光を撮像する撮像素子の場合、前述のマイクロレンズやインナーレンズは一般にPMMA等といった可視域での透明性の高い材料で作られるので紫外線等の短波長の光が吸収されるため、これらが使えない。そのため、短波長対応の撮像素子は開口率が小さい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−151663号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
短波長の光を使用するために開口率の小さい撮像素子を用いざるを得ない表面検査装置では、撮像素子の開口率が小さいため不感領域が広く、撮像面で結像した像の情報の欠落領域が大きくなり、像の再現性が低下して検査精度が低下する一因となっていた。
【0007】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、不感領域の影響を小さくして検査精度を向上させた表面検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的達成のため、本発明に係る表面検査装置は、基板の表面を検査するための表面検査装置であって、前記基板を支持するステージと、前記ステージに支持された前記基板の表面に紫外光を照射する照射部と、前記紫外光が照射された前記基板の表面からの光を所定の撮像面上に結像させる受光光学系と、前記受光光学系により前記撮像面上に結像した像を受光し光電変換する複数の受光部および前記受光部の周囲に設けられて光電変換しない不感部を有した撮像素子と、前記撮像素子と前記像とを前記撮像面上で相対移動させる相対移動部と、前記相対移動部が前記複数の受光部同士の間隔よりも小さい相対移動量で前記相対移動させながら、前記撮像素子が複数の前記像を撮像するように前記相対移動部および前記撮像素子の作動を制御する制御部と、前記撮像素子により撮像された前記複数の画像における各画素を前記相対移動に応じた順に並べて合成した合成画像を生成する画像処理部とを備え、前記撮像素子に到達する光の一部を入射させる入射部および前記入射部から入射する光以外を遮光する遮光部を有して前記相対移動部により前記撮像素子と一体に前記相対移動する遮蔽部材が設けられている。
【0009】
なお、上述の表面検査装置において、前記相対移動部は、前記相対移動の前に前記遮光部があった位置に前記入射部が位置するように、前記遮蔽部材と一体に前記撮像素子を移動させることが好ましい。
【0010】
また、上述の表面検査装置において、前記相対移動部がピエゾ素子を備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、検査精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1実施形態の表面検査装置を示す図である。
【図2】(a),(b)ともに、撮像素子の詳細を示す模式図である。
【図3】遮蔽部材および撮像素子の模式図である。
【図4】(a),(b)ともに、遮蔽部材によって受光領域の一部が遮蔽された状態を示す模式図である。
【図5】画素補完を行いながらウェハの表面の像を撮像する手順を示すフローチャートである。
【図6】(a)は1/2画素をずらして画素補完を行う順番の例を示す模式図であり、(b)は1/3画素をずらして画素補完を行う順番の例を示す模式図である。
【図7】1/3画素をずらした画素補完の画像合成の様子を示す模式図である。
【図8】画素補完を行わない画像と画素補完を行った画像とを比較した図である。
【図9】1/2画素をずらして微小欠陥を検出する様子を示す模式図である。
【図10】1/3画素をずらして微小欠陥を検出する様子を示す模式図である。
【図11】第2実施形態の表面検査装置を示す図である。
【図12】撮像素子の斜視図である。
【図13】ウェハの像が結像する様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施形態について説明する。第1実施形態の表面検査装置を図1に示しており、この装置により被検基板である半導体ウェハW(以下、ウェハWと称する)の表面を検査する。第1実施形態の表面検査装置1は、略円盤形のウェハWを支持するステージ10を備え、不図示の搬送装置によって搬送されてくるウェハWは、ステージ10の上に載置されるとともに真空吸着によって固定保持される。ステージ10は、ウェハWの回転対称軸(ステージ10の中心軸)を回転軸として、ウェハWを回転(ウェハWの表面内での回転)可能に支持する。また、ステージ10は、ウェハWの表面に沿った軸を中心に、ウェハWをチルト(傾動)させることが可能であり、照明光の入射角を調整できるようになっている。
【0014】
表面検査装置1はさらに、ステージ10に支持されたウェハWの表面に照明光(紫外光)を平行光として照射する照明系20と、照明光の照射を受けたときのウェハWからの回折光を集光する受光系30と、受光系30により集光された光を受けてウェハWの表面の像を撮像するDUVカメラ32と、制御部40および画像処理部45とを備えて構成される。照明系20は、照明光を射出する照明ユニット21と、照明ユニット21から射出された照明光をウェハWの表面に向けて反射させる照明側凹面鏡25とを有して構成される。照明ユニット21は、メタルハライドランプや水銀ランプ等の光源部22と、光源部22からの光を紫外領域の波長を有する光を抽出し強度を調節する調光部23と、調光部23からの光を照明光として照明側凹面鏡25へ導く導光ファイバ24とを有して構成される。
【0015】
そして、光源部22からの光は調光部23を通過し、紫外領域の波長(例えば、248nmの波長)を有する紫外光が照明光として導光ファイバ24から照明側凹面鏡25へ射出され、導光ファイバ24から照明側凹面鏡25へ射出された照明光は、導光ファイバ24の射出部が照明側凹面鏡25の焦点面に配置されているため、照明側凹面鏡25により平行光束となってステージ10に保持されたウェハWの表面に照射される。なお、ウェハWに対する照明光の入射角と出射角との関係は、ステージ10をチルト(傾動)させてウェハWの載置角度を変化させることにより調整可能である。
【0016】
ウェハWの表面からの出射光(回折光)は受光系30により集光される。受光系30は、ステージ10に対向して配設された受光側凹面鏡31を主体に構成され、受光側凹面鏡31により集光された出射光(回折光)は、DUVカメラ32の対物レンズ33を経てカメラ部34に形成された撮像面上に達し、ウェハWの像(回折像)が結像される。
【0017】
DUVカメラ32は、前述の対物レンズ33およびカメラ部34と、画素補完駆動部35とを有して構成される。対物レンズ33は、前述の受光側凹面鏡31と協働して、ウェハWの表面からの出射光(回折光)をカメラ部34の撮像面上に集光し、当該撮像面上にウェハWの表面の像(回折像)を結像させる。カメラ部34は、撮像素子50を有して構成されており、当該撮像素子50の表面に撮像面50aが形成される。そして、撮像素子50は、撮像面50a上に形成されたウェハWの表面の像を光電変換して画像信号を生成し、画像信号を画像処理部45に出力する。
【0018】
撮像素子50は、図2(a)に示すように、複数の画素領域51を有して構成され、各画素領域51が集まって撮像素子50の受光面(撮像面)を形成している。図2(b)に示すように、画素領域51には受光領域(有効領域)51aと不感領域51b〜51dが設けられており、本実施形態においては、便宜的に画素領域51における右下の領域を受光領域51aとする。
【0019】
また、このような撮像素子50の撮像面50a上には、図3に示すように、受光領域51aの一部を遮蔽するための遮蔽部材60が設けられている。遮蔽部材60は、例えばガラス材料を用いて、撮像素子50の形状に合わせた矩形の薄板状に形成され、撮像素子50と重なるように取り付けられる。遮蔽部材60において受光領域51aと重なる箇所には、受光領域51aよりも小さな開口部(入射部)61がそれぞれ受光領域51aと同様の形状に形成されている。また、遮蔽部材60の表面には、対物レンズ33からの光を遮光(マスキング)する遮光部がクロムメッキ等により設けられている。そのため、遮蔽部材60を撮像素子50に対して重ねるように取り付けると、図4(a)および図4(b)に示すように、撮像素子50の受光領域51aにおいて開口部61と重なる部分(露出部分)を除いた箇所が遮蔽部材60によって遮蔽され、受光領域51aによって受光可能な領域の大きさをそれよりも小さい開口部61(露出部分)の大きさに縮小することができる。なお、遮蔽部材60の薄さは、撮像面50a上での結像に悪影響を及ぼさない程度まで、極めて薄くなっている。
【0020】
画素補完駆動部35は、ピエゾ素子(圧電素子)を用いて構成され、撮像素子50および遮蔽部材60を有したカメラ部34を撮像面50aと平行で直交する方向(2軸方向)に移動させることができるようになっている。これにより、撮像素子50を遮蔽部材60と一体的に受光系30の光軸と交差する方向に移動させることができるため、撮像面50a上に結像したウェハWの像を撮像素子50および遮蔽部材60に対し当該撮像面50a上で相対移動させることが可能になり、ピエゾ駆動装置を備えた画素補完駆動部35により、撮像素子50を構成する画素の間隔よりも小さい移動量で撮像素子50および遮蔽部材60を移動させるようにすれば、画素補完によりウェハWの像を撮像することが可能となる。
【0021】
制御部40は、DUVカメラ32の画素補完駆動部35や撮像素子50、ステージ10等の作動を制御する。画像処理部45は、DUVカメラ32の撮像素子50から入力されたウェハWの画像信号に基づいて、ウェハWのデジタル画像を生成する。画像処理部45の内部メモリ(図示せず)には、良品ウェハの画像データが予め記憶されており、画像処理部45は、ウェハWの画像(デジタル画像)を生成すると、ウェハWの画像データと良品ウェハの画像データとを比較して、ウェハWの表面における欠陥(異常)の有無を検査する。そして、画像処理部45による検査結果およびそのときのウェハWの画像が図示しない画像表示装置で出力表示される。
【0022】
ところで、ウェハWは、最上層のレジスト膜への露光・現像後、不図示の搬送系により、不図示のウェハカセットまたは現像装置からステージ10上に搬送される。なおこのとき、ウェハWは、ウェハWのパターンもしくは外縁部(ノッチやオリエンテーションフラット等)を基準としてアライメントが行われた状態で、ステージ10上に搬送される。なお、詳細な図示を省略するが、ウェハWの表面には、複数のチップ領域(ショット)が縦横に配列され、各チップ領域の中には、ラインパターンまたはホールパターン等の繰り返しパターンが形成されている。
【0023】
以上のように構成される表面検査装置1を用いて、ウェハWの表面検査を行うには、まず、制御部40の制御によって、撮像素子50を構成する画素の間隔(すなわち、受光領域51a同士の間隔)よりも小さい移動量で画素補完駆動部35が撮像素子50(カメラ部34)を受光系30の撮像面50aと平行な方向に移動させながら、すなわち、画素補完を行いながら、撮像素子50がウェハWの表面の像を複数撮像する。そこで、画素補完を行いながらウェハWの表面の像を撮像する手順について、図5に示すフローチャートを参照しながら以下に説明する。
【0024】
まず、n=1とする(ステップS101)。次に、nがステップ数Sよりも小さいか否かを判定する(ステップS102)。ここで、ステップ数Sは、画素分割数をjとするとj×jとなるので、1/2画素をずらした画素補完の場合はS=4、1/3画素をずらした画素補完の場合はS=9となる。また、nは、画素補完を行いながらウェハWの表面の像を撮像する順番(番号)である。画素補完を行いながらウェハWの表面の像を撮像する順番の例を図6に示す。なお、図6(a)は1/2画素をずらす場合であり、この場合、撮像素子50を構成する画素の1/2ずつの移動量で画素補完駆動部35が撮像素子50を移動させることになる。また、図6(b)は1/3画素をずらす場合であり、この場合、撮像素子50を構成する画素の1/3ずつの移動量で画素補完駆動部35が撮像素子50を移動させることになる。このような順番でウェハWの表面の像を撮像するようにすれば、一筆書きのようにして撮像素子50が移動するため、ヒステリシスやバックラッシュの影響を受け難く位置制御性を向上でき、また効率よく撮像素子50を移動させて撮像に要する時間を短縮することができる。なお、画素補完を行いながらウェハWの表面の像を撮像する順番は、図6に示すような順番でなくてもよい。
【0025】
ステップS102において、判定がYesの場合、ステップS103へ進み、画素補完駆動部35によりn番目の画素補完位置に対応する座標へ撮像素子50を移動させる。そして、n番目の画素補完位置において撮像素子50がウェハWの表面の像を撮像し(ステップS104)、n=n+1とした後(ステップS105)、ステップS102へ戻る。なおこのとき、ウェハWの表面上における照明方向とパターンの繰り返し方向とが一致するようにステージ10を回転させるとともに、パターンのピッチをPとし、ウェハWの表面に照射する照明光の波長をλとし、照明光の入射角をθ1とし、n次回折光の出射角をθ2としたとき、ホイヘンスの原理より、次の(1)式を満足するように設定を行う(ステージ10をチルトさせる)。
【0026】
P=n×λ/{sin(θ1)−sin(θ2)} …(1)
【0027】
このような条件で照明光をウェハWの表面に照射する際、照明ユニット21における光源部22からの光は調光部23を通過し、紫外領域の波長(例えば、248nmの波長)を有する紫外光が照明光として導光ファイバ24から照明側凹面鏡25へ射出され、照明側凹面鏡25で反射した照明光が平行光束となってウェハWの表面に照射される。ウェハWの表面から出射された回折光は、受光側凹面鏡31により集光されてDUVカメラ32の対物レンズ33を経て撮像素子50の撮像面50a上に達し、回折光によるウェハWの表面の像が結像される。そして、撮像面50a上に形成されたウェハWの像を撮像素子50が撮像する。このとき、撮像素子50は、撮像面50a上に形成されたウェハWの像を光電変換して画像信号を生成し、画像信号を画像処理部45に出力する。画像処理部45に入力された画像信号は、撮像順番nと関連付けられて不図示の記憶部に記憶される。
【0028】
一方、ステップS102において、判定がNoの場合、すなわち、全ての画素補完位置において撮像素子50がウェハWの表面の像を撮像した場合、ステップS106へ進み、n=1とした後、次のステップS107において、画素補完駆動部35によりn番目(1番目)の画素補完位置に対応する座標へ撮像素子50を移動させる。
【0029】
そして、次のステップS108において、全ての画素補完位置において撮像素子50が撮像した複数のウェハWの画像に基づいて、画像処理部45がウェハWの合成画像を生成し、処理を終了する。このとき、画像処理部45は、全ての画素補完位置において撮像素子50が撮像した複数のウェハWの画像における各画素を、画素補完を行いながら撮像した順に並べて合成することで、ウェハWの合成画像を生成する。例えば、1/3画素をずらした画素補完の場合、図7に示すように、n番目(n=1〜9)のステップで取得したK×L画素の画像における任意の画素の座標を(k,l,n)とすると、画素を9つずつ(撮像の順番に)並べて合成することで、図8に示すように、撮像素子50の不感領域(撮像面)に結像していた像の輝度データが画像上に再現される。なお、図7に示した1/3画素をずらした画素補完の場合、合成画像の画素数は3K×3L(撮像時の画素数の9倍)となる。
【0030】
上述のように画素補完を行いながら撮像素子50が撮像した複数のウェハWの画像に基づいて、画像処理部45がウェハWの合成画像を生成すると、画像処理部45は、ウェハWの画像データと良品ウェハの画像データとを比較して、ウェハWの表面における欠陥(異常)の有無を検査する。そして、画像処理部45による検査結果およびそのときのウェハWの画像(合成画像)が図示しない画像表示装置で出力表示される。
【0031】
ところで、前述したように、短波長の光を使用するために開口率の小さい撮像素子を用いざるを得ない表面検査装置では、撮像素子の開口率が小さいため不感領域が広く、撮像面で結像した像の情報の欠落領域が大きくなり、像の再現性が低下して検査精度の低下を招いていた。また、撮像素子の受光部に到達する光が少ないために受光感度が低くなるのに加え、半導体のパターンピッチの微細化によってパターンから発生する回折光の光量が小さくなってきているため、検査信号の感度低下を二重に招いていた。これに対し、検査に使用できる程度の検査画像を取得するために撮像部の露光時間を長くすると、ノイズによる感度の低下とスループットの低下という悪影響が発生してしまう。また、受光感度を上げた撮像素子を製造しようとすると、莫大な開発、製造コストが避けられない。
【0032】
これに対し、第1実施形態の表面検査装置1によれば、画素補完を行いながら撮像素子50が撮像した複数のウェハWの画像に基づいて、画像処理部45がウェハWの合成画像を生成するため、撮像素子50の不感領域(撮像面)に結像していた像の輝度データを画像上に再現させることができることから、不感領域の影響を小さくして検査精度を向上させることが可能になる。
【0033】
なお、本実施形態のように画素領域51における右下の1/4の領域に受光領域51aが位置する場合、図9(a)〜(d)に示すように1/2画素をずらすと、不感領域(51d)に結像していた微小な欠陥Bを図9(b)の位置で検出することができる。しかしながら、図10(a)〜(d)に示すように1/3画素をずらすと、不感領域(51d)に結像していた微小な欠陥Bが二重に(例えば、図10(b)および(c)の位置で)検出される場合がある。そうすると、欠陥Bは画素をずらした画素領域51毎に検出されることになるため、微小な欠陥Bが実際よりも大きく検出されて像がぼやける原因となる。
【0034】
これに対し、本実施形態の表面検査装置1においては、受光領域51aの一部が遮蔽部材60によって遮蔽され、受光領域51aによって受光可能な領域(露出部分)の大きさが画素領域51の1/4よりも縮小されている。このように、画素をずらす量に応じて、遮蔽部材60により受光領域51aにおける露出部分の大きさを縮小するようにすれば、前述のように微小な欠陥Bの像がぼやけてしまうのを防止することができ、微小欠陥B等の検出精度を向上させることができる。例えば、1/3画素をずらす場合、受光領域51aによって受光可能な領域(露出部分)の大きさを画素領域51の1/9まで縮小するようにすればよい。なおこのとき、画素をずらす前に撮像素子50の不感領域51b〜51dもしくは受光領域51aで遮蔽された部分であった位置に受光領域51aによって受光可能な領域(露出部分)が位置するように、遮蔽部材60と一体に撮像素子50が相対移動することになる。またこのとき、受光領域51aによって受光可能な領域(露出部分)の大きさが縮小されるので、遮蔽部材60を用いない場合よりも露光時間を延ばすことが好ましい。
【0035】
次に、表面検査装置の第2実施形態について説明する。第2実施形態の表面検査装置101は、図11に示すように、ウェハWを支持するステージ部110と、ステージ部110に支持されたウェハWの表面に照明光(紫外光)を平行光として照射する照明系20と、照明光の照射を受けたときのウェハWからの回折光を集光する受光系130と、受光系130により集光された光を受けてウェハWの表面の像を撮像するDUVカメラ132と、制御部140および画像処理部145とを備えて構成される。
【0036】
ステージ部110は、θステージ111と、Xステージ112と、Yステージ113とを有して構成され、不図示の搬送装置によって搬送されてくるウェハWは、θステージ111の上に載置されるとともに真空吸着によって固定保持される。θステージ111は、ウェハWの回転対称軸(θステージ111の中心軸)を回転軸として、ウェハWを回転(ウェハWの表面内での回転)可能に支持する。また、θステージ111は、ウェハWの表面を通る軸を中心に、ウェハWをチルト(傾動)させることが可能であり、照明光の入射角を調整できるようになっている。Xステージ112は、θステージ111を図11における左右方向へ移動可能に支持する。Yステージ113は、θステージ111およびXステージ112を図11における前後方向へ移動可能に支持する。すなわち、Xステージ112およびYステージ113により、θステージ111に支持されたウェハWを略水平面内で前後左右方向に移動させることが可能になる。
【0037】
照明系20は、第1実施形態の照明系20と同様の構成であり、同一の番号を付して詳細な説明を省略する。受光系130は、ステージ部110(θステージ111)に対向して配設された受光側凹面鏡131を主体に構成され、受光側凹面鏡131により集光された出射光(回折光)は、DUVカメラ132の対物レンズ133を経てカメラ部134の撮像面50a上に達し、ウェハWの像が結像される。このように、受光側凹面鏡131がステージ部110(θステージ111)に対向して配設されるため、Xステージ112およびYステージ113により、θステージ111に支持されたウェハWを受光系130の光軸に対して直角な方向(2軸方向)に移動させることができ、撮像面50a上で結像したウェハWの像を撮像素子50に対し当該撮像面50a上で相対移動させることが可能になることから、撮像素子50を構成する画素の間隔よりも小さい移動量でウェハWの像を相対移動させるようにすれば、画素補完によりウェハWの像を撮像することが可能となる。
【0038】
DUVカメラ132は、前述の対物レンズ133およびカメラ部134を有して構成される。対物レンズ133は、前述の受光側凹面鏡131と協働して、ウェハWの表面からの出射光(回折光)をカメラ部134の撮像面50a上に集光し、当該撮像面50a上にウェハWの表面の像を結像させる。カメラ部134は、撮像素子50を有して構成されており、当該撮像素子50の表面に撮像面50aが形成される。なお、撮像素子50は、第1実施形態の撮像素子50と同様の構成であり、同一の番号を付して詳細な説明を省略する。すなわち、撮像素子50の撮像面50a上には、第1実施形態と同様に遮蔽部材60(図11では不図示)が設けられる。そして、撮像素子50は、撮像面50a上に形成されたウェハWの表面の像を光電変換して画像信号を生成し、画像信号を画像処理部145に出力する。
【0039】
制御部140は、DUVカメラ132の撮像素子50やステージ部110等の作動を制御する。画像処理部145は、DUVカメラ132の撮像素子50から入力されたウェハWの画像信号に基づいて、第1実施形態の場合と同様にしてウェハWの合成画像を生成するとともに、生成したウェハWの合成画像に基づいて、第1実施形態の場合と同様にしてウェハWの表面における欠陥(異常)の有無を検査する。
【0040】
以上のように構成される第2実施形態の表面検査装置101において、第1実施形態における画素補完駆動部35の代わりに、Xステージ112およびYステージ113を用いて、θステージ111に支持されたウェハWを受光系130の撮像面50aと共役な面と平行な方向(2軸方向)に移動させるようにすれば、撮像面50a上で結像したウェハWの像を撮像素子50に対して当該撮像面50a上で相対移動させることが可能になる。そこで、制御部140の制御によって、θステージ111に支持されたウェハWを受光系130の撮像面50aと共役な面と平行な方向(2軸方向)に移動させながら、すなわち、画素補完を行いながら、第1実施形態の場合と同様にして、撮像素子50がウェハWの表面の像を複数撮像する。そして、画像処理部145は、第1実施形態の場合と同様に、画素補完を行いながら撮像素子50が撮像した複数のウェハWの画像に基づいて、ウェハWの合成画像を生成するとともに、生成したウェハWの合成画像に基づいて、ウェハWの表面における欠陥(異常)の有無を検査する。そして、画像処理部145による検査結果およびそのときのウェハWの画像が図示しない画像表示装置で出力表示される。
【0041】
このように、第2実施形態の表面検査装置101によれば、第1実施形態の場合と同様の効果を得ることができる。なお、物体面であるウェハWの表面に対して撮像面50a上で結像されるウェハWの表面の像は受光系130によって変倍されるため、制御部140は、撮像素子50に対するウェハWの像の相対移動量(画素補完量)から受光系130の結像倍率に応じて換算したθステージ111の移動量が得られるように、Xステージ112およびYステージ113の作動を制御する。具体的には、受光系130の結像倍率をβとし、撮像素子50を構成する画素の大きさをLとし、画素分割数をjとすると、β×L/jずつの移動量でθステージ111を移動させる。このように、Xステージ112およびYステージ113を用いて、θステージ111に支持されたウェハWを受光系130の光軸に対して直角な方向に移動させるようにすれば、比較的簡便な構成でウェハWの像を撮像素子50に対して相対移動させることができる。
【0042】
なお、上述の各実施形態において、遮光部材60に入射部として開口部61を設けたが、これに限られるものではなく、例えば、石英ガラスのように高い紫外線透過率特性を有する板材にクロムメッキ等で遮光部を形成することもできる。また例えば、遮光部材60を液晶等で作製することもできる。また、上述の各実施形態において、ウェハWの表面で生じた回折光を利用してウェハWの表面を検査しているが、これに限られるものではなく、ウェハWの表面で生じた散乱光を利用してウェハWの表面を検査する表面検査装置においても、本発明を適用可能である。
【0043】
また、上述の各実施形態において、ウェハWの表面を検査しているが、これに限られるものではなく、例えば、ガラス基板の表面を検査することも可能である。
【符号の説明】
【0044】
W ウェハ
1 表面検査装置(第1実施形態)
10 ステージ 20 照明系(照射部)
30 受光系(受光光学系) 32 DUVカメラ
33 対物レンズ 34 カメラ部
35 画素補完駆動部(相対移動部)
40 制御部 45 画像処理部
50 撮像素子(50a 撮像面)
51a 受光領域(受光部) 51b 不感領域(不感部)
51c 不感領域(不感部) 51d 不感領域(不感部)
60 遮蔽部材 61 開口部(入射部)
101 表面検査装置(第2実施形態)
110 ステージ部 111 θステージ
112 Xステージ(相対移動部) 113 Yステージ(相対移動部)
130 受光系(受光光学系) 132 DUVカメラ
133 対物レンズ 134 カメラ部
140 制御部 145 画像処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の表面を検査するための表面検査装置であって、
前記基板を支持するステージと、
前記ステージに支持された前記基板の表面に紫外光を照射する照射部と、
前記紫外光が照射された前記基板の表面からの光を所定の撮像面上に結像させる受光光学系と、
前記受光光学系により前記撮像面上に結像した像を受光し光電変換する複数の受光部および前記受光部の周囲に設けられて光電変換しない不感部を有した撮像素子と、
前記撮像素子と前記像とを前記撮像面上で相対移動させる相対移動部と、
前記相対移動部が前記複数の受光部同士の間隔よりも小さい相対移動量で前記相対移動させながら、前記撮像素子が複数の前記像を撮像するように前記相対移動部および前記撮像素子の作動を制御する制御部と、
前記撮像素子により撮像された前記複数の画像における各画素を前記相対移動に応じた順に並べて合成した合成画像を生成する画像処理部とを備え、
前記撮像素子に到達する光の一部を入射させる入射部および前記入射部から入射する光以外を遮光する遮光部を有して前記相対移動部により前記撮像素子と一体に前記相対移動する遮蔽部材が設けられていることを特徴とする表面検査装置。
【請求項2】
前記相対移動部は、前記相対移動の前に前記遮光部があった位置に前記入射部が位置するように、前記遮蔽部材と一体に前記撮像素子を移動させることを特徴とする請求項1に記載の表面検査装置。
【請求項3】
前記相対移動部がピエゾ素子を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の表面検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−141138(P2011−141138A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−678(P2010−678)
【出願日】平成22年1月5日(2010.1.5)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】