説明

表面金属膜材料の作製方法、表面金属膜材料、金属パターン材料の作製方法、金属パターン材料、及びポリマー層形成用組成物

【課題】基板との密着性に優れた金属膜、金属パターンを、低エネルギーで、且つ、簡易に形成しうる表面金属膜材料の作製方法、及び金属パターン材料の作製方法を提供すること。
【解決手段】(1)基板に、めっき触媒又はその前駆体と相互作用を形成する官能基、ラジカル重合性基、及び、ラジカル発生部位を有するポリマーを接触させた後、該ポリマーに対して露光を行い、該基板上にポリマー層を形成する工程と、(2)該ポリマー層にめっき触媒又はその前駆体を付与する工程と、(3)該めっき触媒又はその前駆体に対してめっきを行う工程と、を有することを特徴とする表面金属膜材料の作製方法、並びに、(4)該作製方法により得られた表面金属膜材料のめっき膜をパターン状にエッチングする工程を有することを特徴とする金属パターン材料の作製方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面金属膜材料の作製方法、表面金属膜材料、金属パターン材料の作製方法、金属パターン材料、及びポリマー層形成用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、絶縁性基板の表面に金属パターンによる配線を形成した金属配線基板が、電子部品や半導体素子に広く用いられている。
かかる金属パターン材料の作製方法としては、主に、「サブトラクティブ法」が使用される。このサブトラクティブ法とは、基板表面に形成された金属膜上に、活性光線の照射により感光する感光層を設け、この感光層を像様露光し、その後現像してレジスト像を形成し、次いで、金属膜をエッチングして金属パターンを形成し、最後にレジストを剥離する方法である。
【0003】
この方法により得られる金属パターンにおいては、基板表面に凹凸を設けることにより生じるアンカー効果により、基板と金属膜との間の密着性を発現させている。そのため、得られた金属パターンの基板界面部の凹凸に起因して、金属配線として使用する際の高周波特性が悪くなるという問題点があった。また、基板表面に凹凸化処理するためには、クロム酸などの強酸で基板表面を処理するが必要であるため、金属膜と基板との密着性に優れた金属パターンを得るためには、煩雑な工程が必要であるという問題点があった。
【0004】
この問題を解決するため、基板の表面にプラズマ処理を行い、基板表面に重合開始基を導入し、その重合開始基からモノマーを重合させて、基板表面に極性基を有する表面グラフトポリマーを生成させるという表面処理を行うことで、基板の表面を粗面化することなく、基板と金属膜との密着性を改良させる方法が提案されている(例えば、非特許文献1参照。)。
【0005】
また、基材との密着性に優れた導電性パターン(めっき膜)を得る方法として、基材上に、該基材に結合したグラフトポリマーをパターン状に生成させてグラフトパターンを形成し、このグラフトパターン上にめっきを施す方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
この方法では、基材表面上に、ラジカル重合可能な不飽和化合物を接触させ、360nm〜700nmの波長のレーザーにより像様露光して、基材上に基材と直接結合したグラフトポリマーをパターン状に生成させる。
この際、360nm〜700nmの波長のレーザーによる感光性を高めるため、基材には重合開始剤や増感色素を含有させるが、重合開始剤は基材内で会合体を作るなどして不均一に存在していることが多く、感光性の向上の点から不十分である可能性があった。
【非特許文献1】Advanced Materials 2000年 20号 1481−1494
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来の技術の欠点を考慮してなされたものであり、以下の目的を達成することを課題とする。
即ち、本発明の第1の目的は、基板との密着性に優れた金属膜を、低エネルギーで、且つ、簡易に形成しうる表面金属膜材料の作製方法、及びこれにより得られた表面金属膜材料を提供することにある。
また、本発明の第2の目的は、基板との密着性に優れた金属パターンを、低エネルギーで、且つ、簡易に形成しうる金属パターン材料の作製方法、及びこれにより得られた金属パターン材料を提供することにある。
更に、本発明の第3の目的は、めっき触媒又はその前駆体に対する吸着性に優れたポリマー層を形成し得るポリマー層形成用組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題に鑑みて鋭意検討した結果、以下に示す手段により上記目的を達成しうることを見出した。
即ち、表面金属膜材料の作製方法は、(1)基板に、めっき触媒又はその前駆体と相互作用を形成する官能基、ラジカル重合性基、及び、ラジカル発生部位を有するポリマーを接触させた後、該ポリマーに対して露光を行い、該基板上にポリマー層を形成する工程と、(2)該ポリマー層にめっき触媒又はその前駆体を付与する工程と、(3)該めっき触媒又はその前駆体に対してめっきを行う工程と、を有することを特徴とする。
【0008】
本発明において、ポリマー層中の、めっき触媒又はその前駆体と相互作用を形成する官能基、ラジカル重合性基、及び、ラジカル発生部位を有するポリマーが、分子内のラジカル重合性基により基板に結合していることが好ましい態様である。
また、基板が、露光によりラジカルを発生しうる基板であることも好ましい態様の一つである。
【0009】
また、(1)工程が、(1−1)基材上に密着補助層が形成された基板を作製する工程と、(1−2)該密着補助層に、めっき触媒又はその前駆体と相互作用を形成する官能基、ラジカル重合性基、及び、ラジカル発生部位を有するポリマーを接触させた後、該ポリマーに対して露光を行い、該基板上にポリマー層を形成する工程と、を含むことも好ましい態様である。
また、本発明においてめっき触媒又はその前駆体と相互作用を形成する官能基、ラジカル重合性基、及び、ラジカル発生部位を有するポリマーの重量平均分子量が20000以上であることが好ましい態様である。
【0010】
本発明において、(3)工程では、無電解めっきが行われることが好ましく、また、この無電解めっきの後に、更に電気めっきが行われることがより好ましい。
本発明における(1)〜(3)の各工程は、基材が樹脂フィルムのような場合、その両面に対して同様の処理を行い、基材に対して両面に金属膜を形成してもよい。
【0011】
本発明の表面金属膜材料は、本発明の表面金属膜材料の作製方法により得られたものである。
【0012】
本発明の金属パターン材料の作製方法は、本発明の表面金属膜材料(本発明の表面金属膜材料の作製方法により得られたもの)のめっき膜をパターン状にエッチングする工程を有することを特徴とする。
また、本発明の金属パターン材料は、本発明の金属パターン材料の作製方法により得られたものである。
【0013】
本発明の金属パターン材料の作製方法の他の態様として、本発明の表面金属膜材料の作製方法における(1)工程において、めっき触媒又はその前駆体と相互作用を形成する官能基、ラジカル重合性基、及び、ラジカル発生部位を有するポリマーに対しパターン状の露光を行い、該ポリマーを硬化、現像することでパターン状のポリマー層を形成する方法が挙げられる。この(1)工程後、(2)及び(3)工程を経ることで、エッチングを行うことなく、金属パターンを形成することができる。
【0014】
また、本発明のポリマー層形成用組成物は、めっき触媒又はその前駆体と相互作用を形成する官能基、ラジカル重合性基、及び、ラジカル発生部位を有するポリマーと、溶剤と、を含有し、めっき触媒又はその前駆体を受容するポリマー層の形成に用いられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、基板との密着性に優れた金属膜を、低エネルギーで、且つ、簡易に形成しうる表面金属膜材料の作製方法、及びこれにより得られた表面金属膜材料を提供することができる。
また、本発明によれば、基板との密着性に優れた金属パターンを、低エネルギーで、且つ、簡易に形成しうる金属パターン材料の作製方法、及びこれにより得られた金属パターン材料を提供することができる。
更に、本発明によれば、めっき触媒又はその前駆体に対する吸着性に優れたポリマー層を形成し得るポリマー層形成用組成物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を詳細に説明する。
<表面金属膜材料の作製方法、金属パターン材料の作製方法>
本発明の表面金属膜材料の作製方法は、(1)基板に、めっき触媒又はその前駆体と相互作用を形成する官能基、ラジカル重合性基、及び、ラジカル発生部位を有するポリマー(以下、特定ポリマーと称する。)を接触させた後、該ポリマーに対して露光を行い、該基板上にポリマー層を形成する工程と、(2)該ポリマー層にめっき触媒又はその前駆体を付与する工程と、(3)該めっき触媒又はその前駆体に対してめっきを行う工程と、を有することを特徴とする。
【0017】
本発明の金属パターン材料の作製方法は、(4)本発明の表面金属膜材料(本発明の表面金属膜材料の作製方法により得られた表面金属膜材料)のめっき膜をパターン状にエッチングする工程を有することを特徴とする。
つまり、金属パターン材料の作製方法は、前述の表面金属膜材料の作製方法における(1)、(2)、(3)工程を行った後、形成されためっき膜をパターン状にエッチングする工程〔(4)工程〕を行うものである。
【0018】
本発明の表面金属膜材料の作製方法、及び金属パターン材料の作製方法においては、特定ポリマーに対し露光を行うことで形成されたポリマー層を有する。このポリマー層は、特定ポリマー中のラジカル発生部位から発生したラジカルでラジカル重合性基が反応して得られた層となる。また、このポリマー層を構成する特定ポリマーは、めっき触媒又はその前駆体と相互作用を形成する官能基が存在することから、このポリマー層にめっき触媒等を付与した後、これを用いてめっきを行うことでポリマー層との密着性に優れた金属膜を得ることができる。
また、ラジカルを発生しうる基板を用い、基板から発生したラジカルと特定ポリマー中のラジカル重合性基とを反応させることで、得られた金属膜、金属パターンは、基板との密着性をより高めることができるため、好ましい。
このような表面金属膜材料は、後述の金属パターン材料の作製方法等に適用されて、電気配線用材料として用いられる他にも、電磁波防止膜、シールド材料等に用いることができる。
【0019】
まず、本発明の表面金属膜材料の作製方法における(1)〜(3)の各工程について説明する。
【0020】
〔(1)工程〕
本発明の表面金属膜材料の作製方法における(1)工程では、基板に、特定ポリマーを接触させた後、該ポリマーに対して露光を行い、該基板上にポリマー層を形成する。
本発明においては、ポリマー層中の、特定ポリマーが、分子内のラジカル重合性基により基板に結合していることが好ましい態様である。
【0021】
(特定ポリマー)
まず、本工程で用いる特定ポリマーについて説明する。
特定ポリマーは、その分子内に、めっき触媒又はその前駆体と相互作用を形成する官能基(以下、相互作用性基と称する。)、ラジカル重合性基、及び、ラジカル発生部位を有することを特徴としている。
特定ポリマー中の相互作用性基としては、極性基(親水性基)や、多座配位を形成可能な基、含窒素官能基、含硫黄官能基、含酸素官能基などの非解離性官能基(解離によりプロトンを生成しない官能基)が挙げられる。特に、本工程で得られるポリマー層の吸水性、吸湿性を低減するためには、相互作用性基としての非解離性官能基を用いることが好ましい。
【0022】
前記極性基としては、アンモニウム、ホスホニウムなどの正の荷電を有する官能基、若しくは、スルホン酸基、カルボキシル基、リン酸基、ホスホン酸基などの負の荷電を有するか負の荷電に解離しうる酸性基が挙げられる。これらは解離基の対イオンの形で金属イオンと吸着する。
また、例えば、水酸基、アミド基、スルホンアミド基、アルコキシ基、シアノ基などの非イオン性の極性基も用いることもできる。
その他、イミノ基、1〜2級のアミノ基、アミド基、ウレタン基、水酸基(フェノールも含む)、チオール基などを用いることもできる。
【0023】
また、前記非解離性官能基としては、具体的には、金属イオンと配位形成可能な基、含窒素官能基、含硫黄官能基、含酸素官能基などが好ましく、具体的には、イミド基、ピリジン基、3級のアミノ基、アンモニウム基、ピロリドン基、アミジノ基、トリアジン環構造を含む基、イソシアヌル構造を含む基、ニトロ基、ニトロソ基、アゾ基、ジアゾ基、アジド基、シアノ基、シアネート基(R−O−CN)などの含窒素官能基、エーテル基、カルボニル基、エステル基、N−オキシド構造を含む基、S−オキシド構造を含む基、N−ヒドロキシ構造を含む基などの含酸素官能基、チオエーテル基、チオキシ基、スルホキシド基、スルホン基、サルファイト基、スルホキシイミン構造を含む基、スルホキシニウム塩構造を含む基、スルホン酸エステル構造を含む基などの含硫黄官能基、フォスフィン基などの含リン官能基、塩素、臭素などのハロゲン原子を含む基、及び不飽和エチレン基等が挙げられる。また、隣接する原子又は原子団との関係により非解離性を示す態様であれば、イミダゾール基、ウレア基、チオウレア基を用いてもよい。
中でも、極性が高く、めっき触媒等への吸着能が高いことから、エーテル基(より具体的には、−O−(CH−O−(nは1〜5の整数)で表される構造)、又はシアノ基が特に好ましく、シアノ基が最も好ましいものとして挙げられる。
【0024】
一般的に、高極性になるほど吸水率が高くなる傾向であるが、シアノ基はポリマー層中にて互いに極性を打ち消しあうように相互作用しあうため、膜が緻密になり、且つ、ポリマー層全体としての極性が下がるため、吸水性が低くなる。また、ポリマー層の良溶剤にて触媒を吸着させることで、シアノ基が溶媒和されてシアノ基間の相互作用がなくなり、めっき触媒と相互作用できるようになる。以上のことから、シアノ基を有するポリマー層は低吸湿でありながら、めっき触媒とはよく相互作用をする、相反する性能を発揮する点で、好ましい。
また、本発明における相互作用性基としては、アルキルシアノ基であることが更に好ましい。これは、芳香族シアノ基は芳香環に電子を吸引されており、めっき触媒等への吸着性として重要な不対電子の供与性が低めになるが、アルキルシアノ基はこの芳香環が結合していないため、めっき触媒等への吸着性の点で好ましい。
【0025】
このような相互作用性基は、相互作用性基がペンダントされたモノマーを共重合することで特定ポリマー中に導入してもよいし、予め合成されたポリマー(例えば、ラジカル発生部位及びラジカル重合性基を有するポリマー)の一部に付加・置換させることで、特定ポリマー中に導入してもよい。
【0026】
また、特定ポリマー中のラジカル重合性基は、露光により、又はラジカル発生部位から発生したラジカルにより重合しうる官能基であれば特に制限されないが、具体的には、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、アクリロイルアミノ基、メタクリロイルアミノ基、アシル基、ビニル基、スチリル基などが挙げられる。中でも、ラジカル重合反応性、合成汎用性の点から、(メタ)アクロリロイルオキシ基、(メタ)アクリロイルアミノ基が好ましい。
【0027】
このようなラジカル重合性基は、ラジカル重合性基がペンダントされたモノマーを共重合することで特定ポリマー中に導入してもよいし、予め合成されたポリマー(例えば、ラジカル発生部位及び相互作用性基を有するポリマー)の一部に付加・置換させることで、特定ポリマー中に導入してもよい。
【0028】
特定ポリマー中のラジカル発生部位としては、本工程で用いられる露光によりラジカルを発生しうる部位であれば、特に制限はないが、光開裂によりラジカルを発生する部位であることが好ましい。
ここで、光開裂によりラジカルを発生しうる部位は、光により開裂しうる単結合を含む構造である。
この光により開裂する単結合としては、カルボニルのα開裂、β開裂反応、光フリー転位反応、フェナシルエステルの開裂反応、スルホンイミド開裂反応、スルホニルエステル開裂反応、N−ヒドロキシスルホニルエステル開裂反応、ベンジルイミド開裂反応、活性ハロゲン化合物の開裂反応、などを利用して開裂が可能な単結合が挙げられる。これらの反応により、光により開裂しうる単結合が切断される。この開裂しうる単結合としては、C−C結合、C−N結合、C−O結合、C−Cl結合、N−O結合、及びS−N結合等が挙げられる。
【0029】
本発明において、光開裂によりラジカルを発生する部位の構造としては、以下に挙げる基を含む構造が挙げられる。
即ち、芳香族ケトン基、フェナシルエステル基、スルホンイミド基、スルホニルエステル基、N−ヒドロキシスルホニルエステル基、ベンジルイミド基、トリクロロメチル基、ベンジルクロライド基などである。
【0030】
光開裂によりラジカルを発生する部位を、開裂部(矢印で示した箇所)と共に以下に示すが、本発明はこれらに制限されるものではない。
【0031】
【化1】

【0032】
このようなラジカル発生部位は、以下に説明する、相互作用性基とラジカル重合性基を有するポリマーの一部に付加・置換させることで、特定ポリマー中に導入していてもよいし、また、上記のようなラジカル発生部位がペンダントされたモノマーを共重合することで、特定ポリマー中に導入してもよい。
【0033】
以下、本発明における特定ポリマーを得る際に用いられる、相互作用性基及びラジカル重合性基を有するポリマーの具体例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0034】
【化2】

【0035】
【化3】

【0036】
【化4】

【0037】
(特定ポリマーの合成方法)
以下、本発明の特定ポリマーの合成方法について説明する。
本発明における特定ポリマーは、前述の相互作用性基、ラジカル重合性基、及びラジカル発生部位を有するポリマーであれば特に限定されないが、相互作用性基、ラジカル重合性基、及びラジカル発生部位のそれぞれを側鎖に有するポリマーであることが好ましい。本発明における特定ポリマーは、相互作用性基を有するユニット、ラジカル重合性基を有するユニット、及びラジカル発生部位を有するユニットを含む共重合体であることが好ましい。
以下、この相互作用性基を有するユニット、ラジカル重合性基を有するユニット、及びラジカル発生部位を有するユニットを含む共重合体の態様を有する特定ポリマー(以下、)と、その合成方法について説明する。
【0038】
上記のような共重合体の態様を有する特定ポリマーは、以下のように合成できる。
合成方法としては、下記のi)〜iii)が挙げられる。
i)相互作用性基を有するモノマーと、ラジカル重合性基を有するモノマーと、ラジカル発生部位を有するモノマーと、を共重合する方法、
ii)相互作用性基を有するモノマーと、二重結合前駆体を有するモノマーと、ラジカル発生部位を有するモノマーとを共重合させ、次に塩基などの処理により二重結合を導入する方法、
iii)相互作用性基を有するモノマー及びラジカル発生部位を有するモノマーを用いて合成され、且つ、反応性基を有するポリマーに、該ポリマー中の反応性基と反応しうるラジカル重合性基を有するモノマーを反応させ、二重結合を導入(重合性基を導入する)方法
これらの中でも、好ましいのは、合成適性の観点から、ii)の方法、及び、iii)の方法である。
【0039】
なお、合成方法i)〜iii)において特定ポリマーを合成する際には、得られる特定ポリマーの吸水性を低下させるため、また、疎水性を向上させるために、他のモノマーを共重合成分として用いてもよい。他のモノマーとしては、一般的な、ラジカル重合系のモノマーが用いられ、ジエン系モノマー、アクリル系モノマー等が挙げられる。中でも、無置換アルキルのアクリル系モノマーが好ましい。具体的には、ターシャリーブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ブチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ベンジルメタクリレートなどが好ましく使用できる。
【0040】
上記の合成方法i)〜iii)で用いられる相互作用性基を有するモノマーとしては、前記した極性基や、非解離性官能基を有するモノマーであればいかなるモノマーも使用可能であるが、例えば、具体的には、以下に示すものが挙げられる。
これらは1種を単独で使用してもよい、2種以上を併用してもよい。
【0041】
【化5】

【0042】
【化6】

【0043】
前記i)の合成方法で用いられるラジカル重合性基を有するモノマーとしては、アリル(メタ)アクリレートや、以下の化合物などが挙げられる。
【0044】
【化7】

【0045】
前記ii)の合成方法で用いられる二重結合前駆体を有するモノマーとしては、下記式(a)で表される化合物などが挙げられる。
【0046】
【化8】

【0047】
上記式(a)中、Aは重合性基を有する有機原子団、R〜Rは、夫々独立して、水素原子又は1価の有機基、B及びCは脱離反応により除去される脱離基であり、ここでいう脱離反応とは、塩基の作用によりCが引き抜かれ、Bが脱離するものである。Bはアニオンとして、Cはカチオンとして脱離するものが好ましい。
式(a)で表される化合物としては、具体的には以下の化合物を挙げることができる。
【0048】
【化9】

【0049】
【化10】

【0050】
また、前記ii)の合成方法において、二重結合前駆体を二重結合に変換するには、下記に示すように、B、Cで表される脱離基を脱離反応により除去する方法、つまり、塩基の作用によりCを引き抜き、Bが脱離する反応を使用する。
【0051】
【化11】

【0052】
上記の脱離反応において用いられる塩基としては、アルカリ金属類の水素化物、水酸化物又は炭酸塩、有機アミ化合物、金属アルコキシド化合物が好ましい例として挙げられる。アルカリ金属類の水素化物、水酸化物、又は炭酸塩の好ましい例としては、水素化ナトリウム、水素化カルシウム、水素化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウムなどが挙げられる。有機アミン化合物の好ましい例としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジエチルメチルアミン、トリブチルアミン、トリイソブチルアミン、トリヘキシルアミン、トリオクチルアミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N−ジエチルシクロヘキシルアミン、N−メチルジシクロヘキシルアミン、N−エチルジシクロヘキシルアミン、ピロリジン、1−メチルピロリジン、2,5−ジメチルピロリジン、ピペリジン、1−メチルピペリジン、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、ピペラジン、1,4−ジメチルピペラジン、キヌクリジン、1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]−オクタン、ヘキサメチレンテトラミン、モルホリン、4−メチルモルホリン、ピリジン、ピコリン、4−ジメチルアミノピリジン、ルチジン、1,8−ジアザビシクロ〔5,4,0〕−7−ウンデセン(DBU)、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、ジイソプロピルエチルアミン、Schiff塩基などが挙げられる。金属アルコキシド化合物の好ましい例としては、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムt−ブトキシドなどが挙げられる。これらの塩基は、1種或いは2種以上の混合であってもよい。
【0053】
また、前記脱離反応において、塩基を付与(添加)する際に用いられる溶媒としては、例えば、エチレンジクロリド、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、アセトン、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、2−メトキシエチルアセテート、1−メトキシ−2−プロパノール、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、トルエン、酢酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル、水などが挙げられる。これらの溶媒は単独或いは2種以上混合してもよい。
【0054】
使用される塩基の量は、化合物中の特定官能基(B、Cで表される脱離基)の量に対して、当量以下であってもよく、また、当量以上であってもよい。また、過剰の塩基を使用した場合、脱離反応後、余剰の塩基を除去する目的で酸などを添加することも好ましい形態である。
【0055】
前記iii)の合成方法において用いられるポリマーは、相互作用性基を有するモノマー、ラジカル発生部位を有するモノマー、二重結合導入のための反応性基を有するモノマーと、をラジカル重合することにより合成される。
二重結合導入のための反応性基を有するモノマーとしては、反応性基として、カルボキシル基、ヒドロキシ基、エポキシ基、又はイソシアネート基を有するモノマーが挙げられる。
【0056】
カルボキシル基含有のモノマーとしては、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、安息香酸ビニル、東亞合成製のアロニクスM−5300、M−5400、M−5600、三菱レーション製のアクリルエステルPA、HH、共栄社化学製のライトアクリレート HOA−HH、中村化学製のNKエステルSA、A−SAなどが挙げられる。
ヒドロキシ基含有のモノマーとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1−(メタ)アクリロイル−3−ヒドロキシ−アダマンタン、ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、2−(ヒドロキシメチル)−(メタ)アクリレート、2−(ヒドロキシメチル)−(メタ)アクリレートのメチルエステル、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3,5−ジヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、1−ヒドロキシメチル−4−(メタ)アクリロイルメチル−シクロヘキサン、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、1−メチル−2−アクリロイロキシプロピルフタル酸、2−アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタル酸、1−メチル−2−アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタル酸、2−アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシ−3−クロロプロピルフタル酸、東亞合成(株)製のアロニクスM−554、M−154、M−555、M−155、M−158、日本油脂(株)製のブレンマーPE−200、PE−350、PP−500、PP−800、PP−1000、70PEP−350B、55PET800、以下の構造を有するラクトン変性アクリレートが使用できる。
CH=CRCOOCHCH[OC(=O)C10OH
(R=H又はMe、n=1〜5)
【0057】
なお、ヒドロキシ基含有モノマーとしてヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートを用いる場合、高分子量体のポリマーを合成するといった観点から、ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートを合成する際に副生する2官能アクリレートを除去した原料を用いることができる。
精製の方法としては、蒸留、カラム精製が好ましい。更に好ましくは、下記(I)〜(IV)の工程を順次経ること精製される方法である。
(I)ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートと、該ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートを合成する際に副生する2官能アクリレートと、を含む混合物を、水に溶解する工程
(II)得られた水溶液に、水と分離する第1の有機溶剤を加えた後、該第1の有機溶剤と前記2官能アクリレートとを含む層を水層から分離する工程
(III)前記水層に、前記ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートよりも水溶解性の高い化合物を溶解する工程
(IV)前記水層に第2の有機溶剤を加えて、前記ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートを抽出した後、濃縮する工程
【0058】
また、エポキシ基を有するモノマーとしては、グリシジル(メタ)アクリレート、ダイセル化学製のサイクロマーA、Mなどが使用できる。
イソシアネート基を有するモノマーとしては、昭和電工製のカレンズAOI、MOIが使用できる。
なお、iii)の合成方法において用いられるポリマーは、更に他の共重合成分を含んでいてもよい。
【0059】
前記iii)の合成方法において、反応性基を有するポリマーと反応させる重合性基を有するモノマーとしては、ポリマー中の反応性基の種類によって異なるが、以下の組合せの官能基を有するモノマーを使用することができる。
即ち、(ポリマーの反応性基、モノマーの官能基)=(カルボキシル基、カルボキシル基)、(カルボキシル基、エポキシ基)、(カルボキシル基、イソシアネート基)、(カルボキシル基、ハロゲン化ベンジル)、(水酸基、カルボキシル基)、(水酸基、エポキシ基)、(水酸基、イソシアネート基)、(水酸基、ハロゲン化ベンジル)(イソシアネート基、水酸基)、(イソシアネート基、カルボキシル基)、(エポキシ基、カルボキシル基)等を挙げることができる。
具体的には以下のモノマーを使用することができる。
【0060】
【化12】

【0061】
以上のようにして合成された本発明における特定ポリマーは、共重合ユニット全体に対し、相互作用性基含有ユニット、重合性基含有ユニット、ラジカル発生部位含有ユニットの割合が以下の範囲であることが好ましい。
即ち、相互作用性基含有ユニットは、めっき触媒に対する吸着性の観点から、共重合ユニット全体に対し5mol%〜95mol%で含まれることが好ましく、更に好ましくは10mol%〜95mol%である。
また、ラジカル重合性基含有ユニットは、反応性(硬化性、重合性)及び合成の際のゲル化の抑制の点から、共重合ユニット全体に対し5mol%〜50mol%で含まれることが好ましく、更に好ましくは5mol%〜40mol%である。
ラジカル発生部位含有ユニットは、反応性(硬化性、重合性)の点から、共重合ユニット全体に対し1mol%〜30mol%で含まれることが好ましく、更に好ましくは1mol%〜20mol%である。
【0062】
本発明における特定ポリマーでは、相互作用性基含有ユニットの含有割合が50mol%〜90mol%で、且つ、ラジカル重合性ユニットの含有割合が5mol%〜40mol%で、且つ、ラジカル発生部位含有ユニットの含有割合が5mol%〜30mol%であることが、特に好ましい態様である。
また、特定ポリマーでは、相互作用性基含有ユニットの含有割合が60mol%〜80mol%で、且つ、ラジカル重合性ユニットの含有割合が10mol%〜30mol%で、且つ、ラジカル発生部位含有ユニットの含有割合が5mol%〜25mol%であることが、最も好ましい態様である。
【0063】
ただし、前述iii)の合成方法のように重合性基をポリマーに反応させて導入する場合は、100%導入することが困難な際には少量の反応性部分が残ってしまうことから、これが第4のユニットとなる可能性もある。
具体的には、ラジカル重合でポリマー主鎖を形成する場合は、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレートなどの無置換(メタ)アクリル酸エステル類、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、3,3,3−トリフルオロプロピル(メタ)アクリレート、2−クロロエチル(メタ)アクリレートなどのハロゲン置換(メタ)アクリル酸エステル類、2−(メタ)アクリルロイロキシエチルトリメチルアンモニウムクロライドなどのアンモニウム基置換(メタ)アクリル酸エステル類、ブチル(メタ)アクリルアミド、イソプロピル(メタ)アクリルアミド、オクチル(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミド類、スチレン、ビニル安息香酸、p−ビニルベンジルアンモニウムクロライドなどのスチレン類、N−ビニルカルバゾール、酢酸ビニル、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルカプロラクタムなどのビニル化合物類や、その他にジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−エチルチオ−エチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどが使用できる。
また、上記記載のモノマーを用いて得られたマクロモノマーも使用できる。
【0064】
本発明における特定ポリマーの重量平均分子量は、1000以上70万以下が好ましく、更に好ましくは2000以上20万以下である。特に、重合感度の観点から、本発明における特定ポリマーの重量平均分子量は、20000以上であることが好ましい。
また、本発明における特定の重合度としては、10量体以上のものを使用することが好ましく、更に好ましくは20量体以上のものである。また、7000量体以下が好ましく、3000量体以下がより好ましく、2000量体以下が更に好ましく、1000量体以下が特に好ましい。
【0065】
本発明における特定ポリマーの具体例を以下に示すが、これらに限定されるものではない。
なお、これらの具体例の重量平均分子量は、いずれも、3000〜100000の範囲である。
【0066】
【化13】

【0067】
【化14】

【0068】
【化15】

【0069】
【化16】

【0070】
【化17】

【0071】
【化18】

【0072】
【化19】

【0073】
【化20】

【0074】
【化21】

【0075】
前述のように、本発明におけるポリマー層を形成するためには、特定ポリマーを含有する液状組成物、即ち、特定ポリマーと溶剤とを含有する組成物(本発明のポリマー層形成用組成物)を用いることが好ましい。
なお、特定ポリマーの組成物中の含有量は、組成物全体に対して、2質量%〜50質量%であることが好ましい。
【0076】
上記組成物に使用する溶剤は、組成物の主成分である、特定ポリマーが溶解可能ならば特に制限はない。溶剤には、更に界面活性剤を添加してもよい。
使用できる溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールモノメチルエーテルの如きアルコール系溶剤、酢酸の如き酸、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンの如きケトン系溶剤、ホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンの如きアミド系溶剤、アセトニトリル、プロピロニトリルの如きニトリル系溶剤、酢酸メチル、酢酸エチルの如きエステル系溶剤、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートの如きカーボネート系溶剤などが挙げられる。
この中でも、相互作用性基としてシアノ基を有する特定ポリマーを用いた組成物とする場合には、アミド系、ケトン系、ニトリル系溶剤、カーボネート系溶剤が好ましく、具体的には、アセトン、ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、アセトニトリル、プロピオニトリル、N−メチルピロリドン、ジメチルカーボネートが好ましい。
また、相互作用性基としてシアノ基を有する特定ポリマーを含有する組成物を塗布する場合は、取り扱い安さから沸点が50〜150℃の溶剤が好ましい。なお、これらの溶剤は単一で使用してもよいし、混合して使用してもよい。
【0077】
また、本発明において、特定ポリマーを含有する組成物を、基板や密着補助層上に塗布する場合、基板や密着補助層の吸溶媒率が5〜25%となる溶剤を選択することができる。この吸溶媒率は、基板や、密着補助層を形成した基材を溶剤中に浸漬し、1000分後に引き上げた場合の質量の変化から求めることができる。
また、特定ポリマーを含有する組成物を、基板や密着補助層上に塗布する場合、基板や密着補助層の膨潤率が10〜45%となる溶剤を選択してもよい。この膨潤率は、基板や、密着補助層を形成した基材を溶剤中に浸漬し、1000分後に引き上げた場合の厚さの変化から求めることができる。
【0078】
本発明における特定ポリマーを含有する組成物には、より感度を高める目的で、増感剤を含有させることもできる。
増感剤は、活性エネルギー線により励起状態となり、特定ポリマー中のラジカル発生部位と相互作用(例えば、エネルギー移動、電子移動等)することにより、ラジカルの発生を促進することが可能である。
【0079】
本発明に使用しうる増感剤としては、特に制限はなく、公知の増感剤の中から前記露光波長に合わせて、適宜選択することができる。
具体的には、例えば、公知の多核芳香族類(例えば、ピレン、ペリレン、トリフェニレン)、キサンテン類(例えば、フルオレセイン、エオシン、エリスロシン、ローダミンB、ローズベンガル)、シアニン類(例えば、インドカルボシアニン、チアカルボシアニン、オキサカルボシアニン)、メロシアニン類(例えば、メロシアニン、カルボメロシアニン)、チアジン類(例えば、チオニン、メチレンブルー、トルイジンブルー)、アクリジン類(例えば、アクリジンオレンジ、クロロフラビン、アクリフラビン)、アントラキノン類(例えば、アントラキノン)、スクアリウム類(例えば、スクアリウム)、アクリドン類(例えば、アクリドン、クロロアクリドン、N−メチルアクリドン、N−ブチルアクリドン、N−ブチル−クロロアクリドン等)、クマリン類(例えば、3−(2−ベンゾフロイル)−7−ジエチルアミノクマリン、3−(2−ベンゾフロイル)−7−(1−ピロリジニル)クマリン、3−ベンゾイル−7−ジエチルアミノクマリン、3−(2−メトキシベンゾイル)−7−ジエチルアミノクマリン、3−(4−ジメチルアミノベンゾイル)−7−ジエチルアミノクマリン、3,3'−カルボニルビス(5,7−ジ−n−プロポキシクマリン)、3,3’−カルボニルビス(7−ジエチルアミノクマリン)、3−ベンゾイル−7−メトキシクマリン、3−(2−フロイル)−7−ジエチルアミノクマリン、3−(4−ジエチルアミノシンナモイル)−7−ジエチルアミノクマリン、7−メトキシ−3−(3−ピリジルカルボニル)クマリン、3−ベンゾイル−5,7−ジプロポキシクマリン等が挙げられ、他に、特開平5−19475号、特開平7−271028号、特開2002−363206号、特開2002−363207号、特開2002−363208号、特開2002−363209号等の各公報に記載のクマリン化合物など)が挙げられる。
【0080】
ラジカル発生部位(光重合開始剤)と増感剤との組合せとしては、例えば、特開2001−305734号公報に記載の電子移動型開始系[(1)電子供与型開始剤及び増感色素、(2)電子受容型開始剤及び増感色素、(3)電子供与型開始剤、増感色素及び電子受容型開始剤(三元開始系)]などの組合せが挙げられる。
本発明においては、トリアジン系のラジカル発生部位と、360nm〜700nmの波長に極大吸収を有する増感剤と、の組合せが好ましく挙げられる。
【0081】
その他の増感剤としては、塩基性核を有する増感剤、酸性核を有する増感剤、蛍光増白剤を有する増感剤などが挙げられる。これらについて順次説明する。
塩基性核を有する増感剤は、その分子内に塩基性核を有する色素であれば特に制限はなく、露光波長(例えば、可視光線、可視光レーザ等)に合わせて適宜選択することができる。
本発明における増感剤としては、露光波長に応じた極大吸収波長を有するものが好ましく、例えば、360nm〜700nmの波長の露光を行う場合には、増感剤の極大吸収波長は700nm以下であることが好ましく、500nm以下であることがより好ましく、450nm以下であることが特に好ましい。
【0082】
前記塩基性核を有する色素としては、例えば、シアニン系色素、ヘミシアニン系色素、スチリル色素系、ストレプトシアニン系色素、などが挙げられる。前記各色素には、ビス型、トリス型、ポリマー型の色素、なども含まれるものである。また、これらの中でも、シアニン系色素、ヘミシアニン系色素、スチリル系色素が好ましく、シアニン系色素、ヘミシアニン系色素がより好ましい。
前記塩基性核を有する色素がシアニン系色素の場合は、メチン基の数は1個が好ましく、ヘミシアニン系色素の場合は、メチン基の数は5個以下が好ましい。また、スチリル系色素の場合で、アニリン母核を有している場合には、メチン鎖の数は4個以下が好ましい。
【0083】
塩基性核とは、例えば、ジェイムス(James)編「ザ・セオリー・オブ・ザ・フォトグラフィック・プロセス(The Theory of the Photographic Process)」第4版、マクミラン出版社、1977年、第8章「増感色素と減感色素」により定義され、米国特許第3,567,719号、第3,575,869号、第3,804,634号、第3,837,862号、第4,002,480号、第4,925,777号、特開平3−167546号などに記載されているものが挙げられる。
【0084】
前記塩基性核としては、例えば、ベンゾオキサゾール核、ベンゾチアゾール核及びインドレニン核などが好ましい。
また、前記塩基性核は、芳香族基が置換した塩基性核、又は3環以上縮環した塩基性核である場合が好ましい。
ここで、塩基性核の縮環数は、例えば、ベンゾオキサゾール核は2であり、ナフトオキサゾール核は3である。また、ベンゾオキサゾール核がフェニル基で置換されても、縮環数は2である。3環以上縮環した塩基性核としては3環以上縮環した多環式縮環型複素環塩基性核であればいかなるものでも良いが、好ましくは3環式縮環型複素環、及び4環式縮環型複素環が挙げられる。
【0085】
3環式縮環型複素環としては、例えば、ナフト[2,3−d]オキサゾール、ナフト[1,2−d]オキサゾール、ナフト[2,1−d]オキサゾール、ナフト[2,3−d]チアゾール、ナフト[1,2−d]チアゾール、ナフト[2,1−d]チアゾール、ナフト[2,3−d]イミダゾール、ナフト[1,2−d]イミダゾール、ナフト[2,1−d]イミダゾール、ナフト[2,3−d]セレナゾール、ナフト[1,2−d]セレナゾール、ナフト[2,1−d]セレナゾール、インドロ[5,6−d]オキサゾール、インドロ[6,5−d]オキサゾール、インドロ[2,3−d]オキサゾール、インドロ[5,6−d]チアゾール、インドロ[6,5−d]チアゾール、インドロ[2,3−d]チアゾール、ベンゾフロ[5,6−d]オキサゾール、ベンゾフロ[6,5−d]オキサゾール、ベンゾフロ[2,3−d]オキサゾール、ベンゾフロ[5,6−d]チアゾール、ベンゾフロ[6,5−d]チアゾール、ベンゾフロ[2,3−d]チアゾール、ベンゾチエノ[5,6−d]オキサゾール、ベンゾチエノ[6,5−d]オキサゾール、ベンゾチエノ[2,3−d]オキサゾール等が挙げられる。
【0086】
また、4環式縮環型複素環としては、例えば、アントラ[2,3−d]オキサゾール、アントラ[1,2−d]オキサゾール、アントラ[2,1−d]オキサゾール、アントラ[2,3−d]チアゾール、アントラ[1,2−d]チアゾール、フェナントロ[2,1−d]チアゾール、フェナントロ[2,3−d]イミダゾール、アントラ[1,2−d]イミダゾール、アントラ[2,1−d]イミダゾール、アントラ[2,3−d]セレナゾール、フェナントロ[1,2−d]セレナゾール、フェナントロ[2,1−d]セレナゾール、カルバゾロ[2,3−d]オキサゾール、カルバゾロ[3,2−d]オキサゾール、ジベンゾフロ[2,3−d]オキサゾール、ジベンゾフロ[3,2−d]オキサゾール、カルバゾロ[2,3−d]チアゾール、カルバゾロ[3,2−d]チアゾール、ジベンゾフロ[2,3−d]チアゾール、ジベンゾフロ[3,2−d]チアゾール、ベンゾフロ[5,6−d]オキサゾール、ジベンゾチエノ[2,3−d]オキサゾール、ジベンゾチエノ[3,2−d]オキサゾール、テトラヒドロカルバゾロ[6,7−d]オキサゾール、テトラヒドロカルバゾロ[7,6−d]オキサゾール、ジベンゾチエノ[2,3−d]チアゾール、ジベンゾチエノ[3,2−d]チアゾール、テトラヒドロカルバゾロ[6,7−d]チアゾール等が挙げられる。
【0087】
3環以上縮環した塩基性核として更に好ましくは、ナフト[2,3−d]オキサゾール、ナフト[1,2−d]オキサゾール、ナフト[2,1−d]オキサゾール、ナフト[2,3−d]チアゾール、ナフト[1,2−d]チアゾール、ナフト[2,1−d]チアゾール、インドロ[5,6−d]オキサゾール、インドロ[6,5−d]オキサゾール、インドロ[2,3−d]オキサゾール、インドロ[5,6−d]チアゾール、インドロ[2,3−d]チアゾール、ベンゾフロ[5,6−d]オキサゾール、ベンゾフロ[6,5−d]オキサゾール、ベンゾフロ[2,3−d]オキサゾール、ベンゾフロ[5,6−d]チアゾール、ベンゾフロ[2,3−d]チアゾール、ベンゾチエノ[5,6−d]オキサゾール、アントラ[2,3−d]オキサゾール、アントラ[1,2−d]オキサゾール、アントラ[2,3−d]チアゾール、アントラ[1,2−d]チアゾール、カルバゾロ[2,3−d]オキサゾール、カルバゾロ[3,2−d]オキサゾール、ジベンゾフロ[2,3−d]オキサゾール、ジベンゾフロ[3,2−d]オキサゾール、カルバゾロ[2,3−d]チアゾール、カルバゾロ[3,2−d]チアゾール、ジベンゾフロ[2,3−d]チアゾール、ジベンゾフロ[3,2−d]チアゾール、ジベンゾチエノ[2,3−d]オキサゾール、ジベンゾチエノ[3,2−d]オキサゾール、が挙げられ、特に好ましくは、ナフト[2,3−d]オキサゾール、ナフト[1,2−d]オキサゾール、ナフト[2,3−d]チアゾール、インドロ[5,6−d]オキサゾール、インドロ[6,5−d]オキサゾール、インドロ[5,6−d]チアゾール、ベンゾフロ[5,6−d]オキサゾール、ベンゾフロ[5,6−d]チアゾール、ベンゾフロ[2,3−d]チアゾール、ベンゾチエノ[5,6−d]オキサゾール、カルバゾロ[2,3−d]オキサゾール、カルバゾロ[3,2−d]オキサゾール、ジベンゾフロ[2,3−d]オキサゾール、ジベンゾフロ[3,2−d]オキサゾール、カルバゾロ[2,3−d]チアゾール、カルバゾロ[3,2−d]チアゾール、ジベンゾフロ[2,3−d]チアゾール、ジベンゾフロ[3,2−d]チアゾール、ジベンゾチエノ[2,3−d]オキサゾール、ジベンゾチエノ[3,2−d]オキサゾールである。
【0088】
また、前記塩基性核としては、下記に示す塩基性複素環が挙げられる。
【0089】
【化22】

【0090】
ここで、Rは、水素原子、脂肪族基、又は、芳香族基を表す。
【0091】
次に、酸性核を有する増感剤について説明する。この増感剤は、酸性核を有する色素であれば特に制限はなく、露光波長に合わせて適宜選択することができる。
具体的には、例えば、メロシアニン色素、3核メロシアニン色素、4核メロシアニン色素、ロダシアニン色素、オキソノール色素などが挙げられ、これらの中でも、メロシアニン色素、ロダシアニン色素が好ましく、メロシアニン色素がより好ましい。
【0092】
前記酸性核とは、例えば、ジェイムス(James)編「ザ・セオリー・オブ・ザ・フォトグラフィック・プロセス(The Theory of the Photographic Process)」第4版、マクミラン出版社、1977年、第8章「増感色素と減感色素」により定義され、米国特許第3,567,719号、第3,575,869号、第3,804,634号、第3,837,862号、第4,002,480号、第4,925,777号、特開平3−167546号などに記載されているものが挙げられる。
前記酸性核が、非環式であるとき、メチン結合の末端は、マロノニトリル、アルカンスルフォニルアセトニトリル、シアノメチルベンゾフラニルケトン、シアノメチルフェニルケトン、マロン酸エステル、及びアシルアミノメチル置換したケトン類等の活性メチレン化合物などの基であることが好ましい。
【0093】
前記酸性核を形成するために必要な原子群が環式であるとき、炭素、窒素、及びカルコゲン(典型的には酸素、硫黄、セレン、及びテルル)原子からなる5員又は6員の含窒素複素環が形成されることが好ましく、前記含窒素複素環としては、例えば、2−ピラゾリン−5−オン、ピラゾリジン−3、5−ジオン、イミダゾリン−5−オン、ヒダントイン、2−チオヒダントイン、4−チオヒダントイン、2−イミノオキサゾリジン−4−オン、2−オキサゾリン−5−オン、2−チオオキサゾリン−2、4−ジオン、イソオキサゾリン−5−オン、2−チアゾリン−4−オン、チアゾリジン−4−オン、チアゾリジン−2,4−ジオン、ローダニン、チアゾリジン−2,4−ジチオン、イソローダニン、インダン−1,3−ジオン、チオフェン−3−オン、チオフェン−3−オン−1,1−ジオキシド、インドリン−2−オン、インドリン−3−オン、2−オキソインダゾリニウム、3−オキソインダゾリニウム、5,7−ジオキソ−6,7−ジヒドロチアゾロ[3,2−a]ピリミジン、シクロヘキサン−1,3−ジオン、3,4−ジヒドロイソキノリン−4−オン、1,3−ジオキサン−4,6−ジオン、バルビツール酸、2−チオバルビツール酸、クロマン−2,4−ジオン、インダゾリン−2−オン、ピリド[1,2−a]ピリミジン−1,3−ジオン、ピラゾロ[1,5−b]キナゾロン、ピラゾロ[1,5−a]ベンゾイミダゾール、ピラゾロピリドン、1,2,3,4−テトラヒドロキノリン−2,4−ジオン、3−オキソ−2,3−ジヒドロベンゾ[d]チオフェン−1,1−ジオキサイド、3−ジシアノメチン−2,3−ジヒドロベンゾ[d]チオフェン−1,1−ジオキサイドの核などが挙げられる。
【0094】
また、前記酸性核としては、下記に示す酸性複素環等が挙げられる。
【0095】
【化23】

【0096】
ここで、Rは、水素原子、脂肪族基、又は、芳香族基を表す。
【0097】
次に、蛍光増白剤を有する増感剤について説明する。
「蛍光性白化剤」("fluorescent whitening agent")としても知られる前記蛍光増白剤は、紫外〜短波可視である300〜450nm付近の波長を有する光を吸収可能であり、かつ400〜500nm付近の波長を有する蛍光を発光可能な無色ないし弱く着色した化合物である。蛍光増白剤の物理的原理及び化学性の記述は、Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry, Sixth Edition, Electronic Release, Wiley-VCH 1998 に示されている。基本的には、適する蛍光増白剤は炭素環式又は複素環式核を含んでなるπ−電子系を含有する。
【0098】
本態様の増感剤としては、蛍光増白剤であれば特に制限はなく、前記光照射手段(例えば、可視光線や紫外光・可視光レーザ等)に合わせて適宜選択することができる。
蛍光増白剤としては、非イオン性核を有する化合物が好ましい。前記非イオン性核としては、例えば、スチルベン核、ジスチリルベンゼン核、ジスチリルビフェニル核、及びジビニルスチルベン核から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
前記非イオン性核を有する化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選定することができるが、例えば、ピラゾリン類、トリアジン類、スチルベン類、ジスチリルベンゼン類、ジスチリルビフェニル類、ジビニルスチルベン類、トリアジニルアミノスチルベン類、スチルベニルトリアゾール類、スチルベニルナフトトリアゾール類、ビス−トリアゾールスチルベン類、ベンゾキサゾール類、ビスフェニルベンゾキサゾール類、スチルベニルベンゾキサゾール類、ビス−ベンゾキサゾール類、フラン類、ベンゾフラン類、ビス−ベンズイミダゾール類、ジフェニルピラゾリン類、ジフェニルオキサジアゾール類、ナフタルイミド類、キサンテン類、カルボスチリル類、ピレン類及び1,3,5−トリアジニル−誘導体などが挙げられる。これらの中でも、スチリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基から選択される少なくとも1種を有するものが好ましく、更にジスチリルベンゼン類、ジスチリルビフェニル類、又はエテニル基、芳香環基、複素環基からなる2価の連結基で連結されたビスベンゾオキサゾール類、ビスベンゾチアゾール類、などが特に好ましい。
【0099】
また、前記蛍光増白剤は、置換基を有していてもよい。この置換基としては、脂肪族基、芳香族基、複素環基、カルボキシル基、スルホ基、シアノ基、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子)、ヒドロキシ基、炭素数30以下のアルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基)、炭素数30以下のアルキルスルホニルアミノカルボニル基、アリールスルホニルアミノカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、炭素数30以下のアシルアミノスルホニル基、炭素数30以下のアルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、ベンジルオキシ基、フェノキシエトキシ基、フェネチルオキシ基等)、炭素数30以下のアルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、メチルチオエチルチオエチル基等)、炭素数30以下のアリールオキシ基(例えば、フェノキシ基、p−トリルオキシ基、1−ナフトキシ基、2−ナフトキシ基等)、ニトロ基、炭素数30以下のアルキル基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、炭素数30以下のアシルオキシ基(例えば、アセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基等)、炭素数30以下のアシル基(例えば、アセチル基、プロピオニル基、ベンゾイル基等)、カルバモイル基(例えば、カルバモイル基、N,N−ジメチルカルバモイル基、モルホリノカルボニル基、ピペリジノカルボニル基等)、スルファモイル基(例えば、スルファモイル基、N,N−ジメチルスルファモイル基、モルホリノスルホニル基、ピペリジノスルホニル基等)、炭素数30以下のアリール基(例えば、フェニル基、4−クロロフェニル基、4−メチルフェニル基、α−ナフチル基等)、置換アミノ基(例えば、アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アリールアミノ基、ジアリールアミノ基、アシルアミノ基等)、置換ウレイド基、置換ホスホノ基、などが挙げられる。
【0100】
前記のそれぞれの代表的な蛍光増白剤の例は、例えば大河原編「色素ハンドブック」、講談社、84〜145頁、432〜439頁に記載されているものを挙げることができる。
前記トリアジン類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選定することができるが、例えば、エチレンビスメラミン、プロピレン−1,3−ビスメラミン、N,N’−ジシクロヘキシルエチレンビスメラミン、N,N’−ジメチルエチレンビスメラミン、N,N’−ビス[4,6−ジ−(ジメチルアミノ)−1,3,5−トリアジニル]エチレンジアミン、N,N’−ビス(4,6−ジピペリジノ−1,3,5−トリアジニル)エチレンジアミン、N,N’−ビス[4,6−ジ−(ジメチルアミノ)−1,3,5−トリアジニル]−N,N’−ジメチルエチレンジアミン、などが挙げられる。代表的な蛍光増白剤の例を下記構造式(1)〜(7)に挙げる。
【0101】
【化24】

【0102】
【化25】

【0103】
これらの増感剤は、特定ポリマーの質量に対して、1質量%〜30質量%程度の量で含有させることが好ましい。
【0104】
必要に応じて溶剤に添加することのできる界面活性剤は、溶剤に溶解するものであればよく、そのような界面活性剤としては、例えば、n−ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムの如きアニオン性界面活性剤や、n−ドデシルトリメチルアンモニウムクロライドの如きカチオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンノニルフェノールエーテル(市販品としては、例えば、エマルゲン910、花王(株)製など)、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(市販品としては、例えば、商品名「ツイーン20」など)、ポリオキシエチレンラウリルエーテルの如き非イオン性界面活性剤等が挙げられる。
【0105】
また、必要に応じて可塑剤を添加することもできる。使用できる可塑剤としては、一般的な可塑剤が使用でき、フタル酸エステル類(ジメチルエステル、ジエチルエステル、ジブチルエステル、ジ−2−エチルヘキシルエステル、ジノルマルオクチルエステル、ジイソノニルエステル、ジノニルエステル、ジイソデシルエステル、ブチルベンジルエステル)、アジピン酸エステル類(ジオクチルエステル、ジイソノニルエステル)、アゼラインサンジオクチル、セバシンサンエステル類(ジブチルエステル、ジオクチルエステル)リン酸トリクレシル、アセチルクエン酸トリブチル、エポキシ化大豆油、トリメリット酸トリオクチル、塩素化パラフィンやジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンのような高沸点溶媒も使用することができる。
【0106】
特定ポリマーを含有する組成物には、必要に応じて、重合禁止剤を添加することもできる。使用できる重合禁止剤としては、ハイドロキノン、ジターシャリーブチルハイドロキノン、2,5−ビス(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ハイドロキノンなどのハイドロキノン類、p−メトキシフェノール、フェノールなどのフェノール類、ベンゾキノン類、TEMPO(2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニロキシ フリーラジカル)、4−ヒドロキシTEMPOなどのフリーラジカル類、フェノチアジン類、N−ニトロソフェニルヒドロキシアミン、そのアルミニウム塩などのニトロソアミン類、カテコール類を使用することができる。
【0107】
また、特定ポリマーを含有する組成物には、必要に応じて、密着補助層の硬化を進めるために、硬化剤及び/又は硬化促進剤を添加することができる。例えば、密着補助層にエポキシ化合物が含まれる場合の硬化剤及び/又は硬化促進剤として、重付加型では、脂肪族ポリアミン、脂環族ポリアミン、芳香族ポリアミン、ポリアミド、酸無水物、フェノール、フェノールノボラック、ポリメルカプタン、活性水素を2個以上持つ化合物等、触媒型としては、脂肪族第三アミン、芳香族第三アミン、イミダゾール化合物、ルイス酸錯体などが挙げられる。
また、熱、光、湿気、圧力、酸、塩基などにより硬化開始するものとしては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ポリアミドアミン、メンセンジアミン、イソホロンジアミン、N−アミノエチルピペラジン、3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラオキシスピロ(5,5)ウンデカンアダクト、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、m−キシレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、m−フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルスルホン、ジシアンジアミド、アジピン酸ジヒラジド、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ドデシル無水コハク酸、無水クロレンディック酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメート)、メチルシクロヘキセンテトラカルボン酸無水物、無水トリメリット酸、ポリアゼライン酸無水物、フェノールノボラック、キシリレンノボラック、ビスAノボラック、トリフェニルメタンノボラック、ビフェニルノボラック、ジシクロペンタジエンフェノールノボラック、テルペンフェノールノボラック、ポリメルカプタン、ポリサルファイド、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール−トリ−2−エチルヘキシル酸塩、ベンジルジメチルアミン、2−(ジメチルアミノメチル)フェノール2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、2,4−ジアミノ−6−(2−メチルイミダゾリル−(1))−エチルS−トリアジン、BFモノエチルアミン錯体、ルイス酸錯体、有機酸ヒドラジド、ジアミノマレオニトリル、メラミン誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアミン塩、アミンイミド化合物、芳香族ジアゾニウム塩、ジアリルヨードニウム塩、トリアリルスルホニウム塩、トリアリルセレニウム塩、ケチミン化合物などが挙げられる。
【0108】
これらの硬化剤及び/又は効果促進剤は、溶液の塗布性、基板やめっき膜との密着性などの観点から、溶剤を除去した残りの不揮発成分の0〜50質量%程度まで添加することが好ましい。また、硬化剤及び/又は硬化促進剤は密着補助層に添加してもよく、その場合は、密着補助層に添加した量とポリマー層形成用組成物中に添加した総和量で上記範囲を満たすことが好ましい。
【0109】
また、更に、ゴム成分(例えば、CTBN)、難燃化剤(例えば、りん系難燃化剤)、希釈剤やチキソトロピー化剤、顔料、消泡剤、レベリング剤、カップリング剤などを添加してもよい。また、これらの添加剤は必要に応じて密着補助層に添加してもよい。
【0110】
これらの特定ポリマーと各種の添加剤とを適宜混合した組成物を用いることで、形成されたポリマー層の物性、例えば、熱膨張係数、ガラス転移温度、ヤング率、ポアソン比、破断応力、降伏応力、熱分解温度などを最適に設定することができる。特に、破断応力、降伏応力、熱分解温度については、より高い方が好ましい。
得られたポリマー層は、温度サイクル試験や熱経時試験、リフロー試験などで熱耐久性を測定することができ、例えば、熱分解に関しては、200℃環境に1時間曝した場合の質量減少が20%以下であると、十分に熱耐久性を有していると評価できる。
【0111】
特定ポリマーを含有する組成物を基板に接触させる場合には、その塗布量は、めっき触媒又はその前駆体との充分な相互作用形成性の観点からは、固形分換算で、0.1〜10g/mが好ましく、特に0.5〜5g/mが好ましい。
なお、基板上に、特定ポリマーを含有する組成物を塗布し、乾燥させて、特定ポリマーを含有する層を形成する場合、塗布と乾燥との間に、20〜40℃で0.5〜2時間放置させて、残存する溶剤を除去してもよい。
【0112】
特定ポリマーを含有する組成物と基板との接触は、基板を、特定ポリマーを含有する液状の組成物(本発明のポリマー層形成用組成物)中に浸漬することで行ってもよいが、取り扱い性や製造効率の観点からは、後述するように、特定ポリマーを含有する組成物からなる層を基板表面(密着補助層表面)に、塗布法により形成することが好ましい。
なお、基板が樹脂フィルムであって、この樹脂フィルムの両面に対してポリマー層を形成する場合にも、ポリマー層を両面同時に形成し易いといった観点から、塗布法を用いることが好ましい。
【0113】
(露光)
本工程では、基板に特定ポリマーを接触させた後、この特定ポリマーに露光を行う。
この露光には、UVランプ、可視光線などによる光照射等が用いられる。光源としては、例えば、水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ケミカルランプ、カーボンアーク灯、等がある。放射線としては、電子線、X線、イオンビーム、遠赤外線などがある。また、g線、i線、Deep−UV光、高密度エネルギービーム(レーザービーム)も使用される。
一般的に用いられる具体的な態様としては、赤外線レーザーによる走査露光、キセノン放電灯などの高照度フラッシュ露光や、赤外線ランプ露光などが好適に挙げられる。
露光時間としては、特定ポリマーの反応性及び光源により異なるが、通常、10秒〜5時間の間である。
【0114】
以上説明した(1)工程により、基板上には、ポリマーからなるポリマー層を形成することができる。
【0115】
得られたポリマー層が、例えば、pH12のアルカリ性溶液に添加し、1時間攪拌したときのラジカル重合性基部位の分解が50%以下である場合は、該ポリマー層に対して高アルカリ性溶液による洗浄を行うことができる。
【0116】
〔基板〕
本発明における基板としては、形状保持性を有するものであればよく、その表面が、前述の特定ポリマーと化学結合しうる機能を有することが好ましい。具体的には、基板自体が露光によりラジカルを発生しうるものであるか、基材上に、露光によりラジカルを発生しうる中間層(例えば、後述する密着補助層)を設け、この基材と中間層とで基板が構成されていてもよい。
【0117】
(基材、基板)
本発明に使用される基材は、寸度的に安定な板状物であることが好ましく、例えば、紙、プラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等)がラミネートされた紙、金属板(例えば、アルミニウム、亜鉛、銅等)、プラスチックフィルム(例えば、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール、ポリイミド、エポキシ、ビスマレインイミド樹脂、ポリフェニレンオキサイド、液晶ポリマー、ポリテトラフルオロエチレン等)、上記の如き金属がラミネート若しくは蒸着された紙又はプラスチックフィルム等が含まれる。本発明に使用される基材としては、エポキシ樹脂、又はポリイミド樹脂が好ましい。
なお、これらの基材表面が、特定ポリマーが直接化学結合した状態を形成しうる機能を有している場合には、その基材そのものを基板として用いてもよい。
【0118】
本発明における基板として、特開2005−281350号公報の段落番号[0028]〜[0088]に記載の重合開始部位を骨格中に有するポリイミドを含む基材を用いることもできる。
【0119】
また、本発明の金属パターン材料の作製方法により得られた金属パターン材料は、半導体パッケージ、各種電気配線基板等に適用することができる。このような用途に用いる場合は、以下に示す、絶縁性樹脂を含んだ基板、具体的には、絶縁性樹脂からなる基板、又は、絶縁性樹脂からなる層を基材上に有する基板を用いることが好ましい。
【0120】
絶縁性樹脂からなる基板、絶縁性樹脂からなる層を得る場合には、公知の絶縁性樹脂組成物が用いられる。この絶縁性樹脂組成物には、主たる樹脂に加え、目的に応じて種々の添加物を併用することができる。例えば、絶縁層の強度を高める目的で、多官能のアクリレートモノマーを添加する、絶縁体層の強度を高め、電気特性を改良する目的で、無機、若しくは有機の粒子を添加する、などの手段をとることもできる。
なお、本発明における「絶縁性樹脂」とは、公知の絶縁膜や絶縁層に使用しうる程度の絶縁性を有する樹脂であることを意味するものであり、完全な絶縁体でないものであっても、目的に応じた絶縁性を有する樹脂であれば、本発明に適用しうる。
【0121】
絶縁性樹脂の具体例としては、例えば、熱硬化性樹脂でも熱可塑性樹脂でもまたそれらの混合物でもよく、例えば、熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、ビスマレイミド樹脂、ポリオレフィン系樹脂、イソシアネート系樹脂等が挙げられる。
エポキシ樹脂としては、例えば、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、アルキルフェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェノールF型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、フェノール類とフェノール性水酸基を有する芳香族アルデヒドとの縮合物のエポキシ化物、トリグリシジルイソシアヌレート、脂環式エポキシ樹脂等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。それにより、耐熱性等に優れるものとなる。
ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、ポリイソプレン、シクロオレフィン系樹脂、これらの樹脂の共重合体等が挙げられる。
【0122】
熱可塑性樹脂としては、例えば、フェノキシ樹脂、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリフェニレンスルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニルエーテル、ポリエーテルイミド等が挙げられる。
その他の熱可塑性樹脂としては、1,2−ビス(ビニルフェニレン)エタン樹脂(1,2−Bis(vinylphenyl)ethane)、若しくはこれとポリフェニレンエーテル樹脂との変性樹脂(天羽悟ら、Journal of Applied Polymer Science Vol.92,1252−1258(2004)に記載)、液晶性ポリマー(具体的には、クラレ製のベクスターなど)、フッ素樹脂(PTFE)などが挙げられる。
【0123】
熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂とは、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。これはそれぞれの欠点を補いより優れた効果を発現する目的で行われる。例えば、ポリフェニレンエーテル(PPE)などの熱可塑性樹脂は熱に対しての耐性が低いため、熱硬化性樹脂などとのアロイ化が行われている。たとえば、PPEとエポキシ、トリアリルイソシアネートとのアロイ化、或いは重合性官能基を導入したPPE樹脂とそのほかの熱硬化性樹脂とのアロイ化として使用される。またシアネートエステルは熱硬化性の中ではもっとも誘電特性の優れる樹脂であるが、それ単独で使用されることは少なく、エポキシ樹脂、マレイミド樹脂、熱可塑性樹脂などの変性樹脂として使用される。これらの詳細に関しては、“電子技術”2002/9号、P35に記載されている。また、熱硬化性樹脂として、エポキシ樹脂及び/又はフェノール樹脂を含み、熱可塑性樹脂としてフェノキシ樹脂及び/又はポリエーテルスルフォン(PES)を含むものも誘電特性を改善するために使用される。
【0124】
絶縁性樹脂組成物には、架橋を進めるために重合性の二重結合を有する化合物のようなもの、具体的には、アクリレート、メタクリレート化合物を含有していてもよく、特に多官能のものが好ましい。そのほか、重合性の二重結合を有する化合物として、熱硬化性樹脂、若しくは熱可塑性樹脂、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、フッ素樹脂等に、メタクリル酸やアクリル酸等を用い、樹脂の一部を(メタ)アクリル化反応させた樹脂を用いてもよい。
【0125】
本発明における絶縁性樹脂組成物には、樹脂被膜の機械強度、耐熱性、耐候性、難燃性、耐水性、電気特性などの特性を強化するために、樹脂と他の成分とのコンポジット(複合素材)も使用することができる。複合化するのに使用される材料としては、紙、ガラス繊維、シリカ粒子、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、フッ素樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂などを挙げることができる。
【0126】
更に、この絶縁性樹脂組成物には必要に応じて一般の配線板用樹脂材料に用いられる充填剤、例えば、シリカ、アルミナ、クレー、タルク、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウムなどの無機フィラー、硬化エポキシ樹脂、架橋ベンゾグアナミン樹脂、架橋アクリルポリマーなどの有機フィラーを一種又は二種以上配合してもよい。中でも、充填材としてはシリカを用いることが好ましい。
また、更に、この絶縁性樹脂組成物には、必要に応じて着色剤、難燃剤、接着性付与剤、シランカップリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、などの各種添加剤を一種又は二種以上添加してもよい。
【0127】
これらの材料を絶縁性樹脂組成物に添加する場合は、いずれも、樹脂に対して、1〜200質量%の範囲で添加されることが好ましく、より好ましくは10〜80質量%の範囲で添加される。この添加量が、1質量%未満である場合は、上記の特性を強化する効果がなく、また、200質量%を超えると場合には、樹脂特有の強度などの特性が低下する。
【0128】
このような用途に用いる場合の基板として、具体的には、1GHzにおける誘電率(比誘電率)が3.5以下である絶縁性樹脂からなる基板であるか、又は、該絶縁性樹脂からなる層を基材上に有する基板であることが好ましい。また、1GHzにおける誘電正接が0.01以下である絶縁性樹脂からなる基板であるか、又は、該絶縁性樹脂からなる層を基材上に有する基板であることが好ましい。
絶縁性樹脂の誘電率及び誘電正接は、常法により測定することができる。例えば、「第18回エレクトロニクス実装学会学術講演大会要旨集」、2004年、p189、に記載の方法に基づき、空洞共振器摂動法(例えば、極薄シート用εr、tanδ測定器、キーコム株式会社製)を用いて測定することができる。
このように、本発明においては誘電率や誘電正接の観点から絶縁樹脂材料を選択することも有用である。誘電率が3.5以下であり、誘電正接が0.01以下の絶縁性樹脂としては、液晶ポリマー、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、シアネートエステル樹脂、ビス(ビスフェニレン)エタン樹脂などが挙げられ、更にそれらの変性樹脂も含まれる。
【0129】
本発明に用いられる基板は、半導体パッケージ、各種電気配線基板等への用途を考慮すると、表面凹凸が500nm以下であることが好ましく、より好ましくは100nm以下、更に好ましくは50nm以下、最も好ましくは20nm以下である。この基板の表面凹凸(中間層や密着補助層が設けられている場合はその層の表面凹凸)が小さくなるほど、得られた金属パターン材料を配線等に適用した場合に、高周波送電時の電気損失が少なくなり好ましい。
【0130】
本発明においては、基板が板状物、例えば、樹脂フィルム(プラスチックフィルム)であれば、その両面に(1)工程を施すことで、樹脂フィルムの両面にポリマー層を形成することができる。
このように樹脂フィルム(基板)の両面にポリマー層が形成された場合には、更に、後述する(2)工程、及び(3)工程を行うことで、両面に金属膜が形成された表面金属膜材料を得ることができる。
【0131】
以下、本発明における密着補助層について説明する。なお、基材が板状物であれば、その両面に密着補助層を形成してもよい。
【0132】
(密着補助層)
本発明における密着補助層は、露光時にラジカルを発生させることで特定ポリマーと反応し、化学結合を形成する役割を果たすものである。
密着補助層としては、基材との密着性が良好な樹脂組成物、及び、露光によりラジカルを発生しうる化合物を用いて形成されることが好ましい。なお、樹脂組成物を構成する樹脂が、ラジカルを発生しうる部位を有する場合には、ラジカルを発生しうる化合物を別途添加する必要はない。
【0133】
本発明における密着補助層としては、例えば、基材が、多層積層板、ビルドアップ基板、若しくはフレキシブル基板の材料として用いられてきた公知の絶縁樹脂からなる場合には、該基材との密着性の観点から、密着補助層を形成する際に用いられる樹脂組成物としても、絶縁樹脂組成物が用いられることが好ましい。
以下、基材が絶縁樹脂からなり、密着補助層が絶縁樹脂組成物から形成される態様について説明する。
【0134】
密着補助層を形成する際に用いられる絶縁樹脂組成物は、基材を構成する電気的絶縁性の樹脂と同じものを含んでいてもよく、異なっていてもよいが、ガラス転移点や弾性率、線膨張係数といった熱物性的が近いものを使用することが好ましい。具体的には、例えば、基材を構成する絶縁樹脂と同じ種類の絶縁樹脂を使用することが密着の点で好ましい。
また、これ以外の成分として、密着補助層の強度を高める、また、電気特性を改良するために、無機若しくは有機の粒子を添加してもよい。
【0135】
なお、本発明において、密着補助層に使用される絶縁樹脂とは、公知の絶縁膜に使用しうる程度の絶縁性を有する樹脂を意味するものであり、完全な絶縁体でないものであっても、目的に応じた絶縁性を有する樹脂であれば、本発明に適用しうる。
絶縁樹脂の具体例としては、例えば、熱硬化性樹脂でも熱可塑性樹脂でもまたそれらの混合物でもよく、例えば、熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、ビスマレイミド樹脂、ポリオレフィン系樹脂、シソシアネート系樹脂等が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、例えば、フェノキシ樹脂、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリフェニレンスルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニルエーテル、ポリエーテルイミド等が挙げられる。
熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂とは、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
【0136】
また、密着補助層に用いられる絶縁樹脂としては、めっき触媒受容性の感光性樹脂組成物と相互作用を形成し得る活性点を発生させる骨格を有する樹脂を用いることもできる。例えば、特開2005−307140号公報の段落番号〔0018〕〜〔0078〕に記載の重合開始部位を骨格中に有するポリイミドが用いられる。
【0137】
更に、密着補助層には、層内での架橋を進めるために重合性の二重結合を有する化合物、具体的には、アクリレート、メタクリレート化合物を含有していてもよく、特に、多官能のものを用いることが好ましい。その他、重合性の二重結合を有する化合物として、熱硬化性樹脂、若しくは熱可塑性樹脂、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、フッ素樹脂等に対し、その一部を、メタクリル酸やアクリル酸等を用いて、(メタ)アクリル化反応させた樹脂を用いてもよい。
【0138】
本発明における密着補助層は、本発明の効果を損なわない限りにおいて、目的に応じて、種々の化合物を添加することができる。
具体的には、例えば、加熱時に応力を緩和させることができる、ゴム、SBRラテックスのような物質、膜性改良のためのバインダー、可塑剤、界面活性剤、粘度調整剤などが挙げられる。
【0139】
また、本発明における密着補助層には、樹脂被膜の機械強度、耐熱性、耐候性、難燃性、耐水性、電気特性などの特性を強化するために、樹脂と他の成分とのコンポジット(複合素材)も使用することができる。複合化するのに使用される材料としては、紙、ガラス繊維、シリカ粒子、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、フッ素樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂などを挙げることができる。
【0140】
更に、この密着補助層には、必要に応じて、一般の配線板用樹脂材料に用いられる充填剤、例えば、シリカ、アルミナ、クレー、タルク、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウムなどの無機フィラー、硬化エポキシ樹脂、架橋ベンゾグアナミン樹脂、架橋アクリルポリマーなどの有機フィラーを一種又は二種以上配合してもよい。
【0141】
また、更にこの密着補助層には、必要に応じて、着色剤、難燃剤、接着性付与剤、シランカップリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤などの各種添加剤を、一種又は二種以上添加してもよい。
【0142】
これらの材料を添加する場合は、いずれも、主成分となる樹脂に対して、0質量%〜200質量%の範囲で添加されることが好ましく、より好ましくは0質量%〜80質量%の範囲で添加される。密着補助層と隣接する基材とが、熱や電気に対して同じ若しくは近い物性値を示す場合には、これら添加物は必ずしも添加する必要はない。添加物を、樹脂に対して200質量%を超える範囲で用いる場合には、樹脂自体が本来有する強度などの特性が低下する懸念がある。
【0143】
密着補助層には、前述のように、樹脂組成物と露光によりラジカルを発生しうる化合物が用いられることが好ましい。
ここで、露光によりラジカルを発生しうる化合物としては、従来公知の光重合開始剤が用いられる。
この光重合開始剤としては、具体的には、例えば、p−tert−ブチルトリクロロアセトフェノン、2,2’−ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オンの如きアセトフェノン類;ベンゾフェノン(4,4’−ビスジメチルアミノベンゾフェノン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、の如きケトン類;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテルの如きベンゾインエーテル類;ベンジルジメチルケタール、ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンの如きベンジルケタール類;トリフェニルスルホニウムクロライド、トリフェニルスルホニウムペンタフルオロフォスフェートなどのスルホニウム塩、ジフェニルヨードニウムクロライド、ジフェニルヨードニウムサルフェートなどのヨードニウム塩などが挙げられる。
【0144】
密着補助層に含有させる光重合開始剤(露光によりラジカルを発生しうる化合物)の量は、固形分で0.1質量%〜50質量%であることが好ましく、1.0質量%〜30質量%であることがより好ましい。
【0145】
本発明における密着補助層の厚みは、一般に、0.1μm〜10μmの範囲であり、0.2μm〜5μmの範囲であることが好ましい。密着補助層を設ける場合、厚みが上記一般的な範囲であれば、隣接する基材や、ポリマー層との十分な密着強度が得られ、また、一般の接着剤を用いるのに比較して薄層でありながら、その接着剤による層と同様の密着性が達成される。
【0146】
また、本発明における密着補助層の表面は、形成されるめっき金属膜の物性を向上させる観点から、JIS B 0601(1994年)、10点平均高さ法で測定した表面粗さRzが3μm以下であるものが好ましく、Rzが1μm以下であることがより好ましい。密着補助層の表面平滑性が上記値の範囲内、即ち、平滑性が高い状態であれば、回路が極めて微細な(例えば、ライン/スペースの値が25/25μm以下の回路パターン)プリント配線板を製造する際に、好適に用いられる。
【0147】
密着補助層は基材表面に、塗布法、転写法、印刷法などの公知の層形成方法を適用して形成される。
【0148】
また、密着補助層は基材上に形成された後、何らかのエネルギーを与えて硬化処理を行ってもよい。与えるエネルギーとしては、光、熱、圧力、電子線などが挙げられるが、本実施形態においては熱又は光が一般的であり、熱の場合は、100℃〜300℃の熱を5分〜120分加えることが好ましい。また、加熱硬化の条件は、基材の材料の種類、密着補助層を構成する樹脂組成物の種類等で異なり、これらの素材の硬化温度にもよるが、120〜220℃で20分〜120分の範囲で選択されることが好ましい。
【0149】
この硬化処理は密着補助層の形成後すぐに行ってもよく、密着補助層形成後に5分〜10分程度の予備硬化処理を行っておけば、密着補助層形成後に行われる他のすべてのそれぞれの工程を行ったあとに実施してもよい。
【0150】
密着補助層の形成後、その表面に形成されるポリマー層に対する密着性向上の目的で、乾式及び/又は湿式法により表面を粗化してもよい。乾式粗化法としては、バフ、サンドブラスト、等の機械的研磨やプラズマエッチング等が挙げられる。一方、湿式粗化法としては、過マンガン酸塩、重クロム酸塩、オゾン、過酸化水素/硫酸、硝酸、等の酸化剤や、強塩基や樹脂膨潤溶剤を用いる方法等の化学薬品処理が挙げられる。
【0151】
本工程で得られる、硬化後のポリマー層は、以下の条件1〜条件4の少なくとも1つを満たすことが好ましい。
条件1:25℃−50%相対湿度環境下における飽和吸水率が0.01〜10質量%
条件2:25℃−95%相対湿度環境下における飽和吸水率が0.05〜20質量%
条件3:100℃煮沸水に1時間浸漬した後の吸水率が0.1〜30質量%
条件4:25℃−50%相対湿度環境下において、蒸留水5μLを滴下し、15秒静置後の表面接触角が50〜150度
【0152】
以下、条件1〜条件4の各条件について説明する。
条件1〜3における飽和吸水率及び吸水率は、以下の方法にて測定することができる。
まず、基板を減圧乾燥機内に放置し、基板内に含まれる水分を除去した後、条件1、2の場合は、所望の温度及び湿度に設定された恒温恒湿槽内に放置し、条件3の場合は、100℃煮沸水入りのウォーターバスに1時間浸漬し、質量変化の測定によって飽和吸水率及び吸水率を測定する。ここで、条件1、2における飽和吸水率は、質量が24時間経過後も変化しなくなった時の吸水率を示している。別途、予め質量変化が既知である前記基板上にポリマー層を形成した積層体についても、同様の操作により積層体の飽和吸水率及び吸水率を測定することにより、基板の吸水率と積層体の吸水率との差分によりポリマー層の吸水率を測定することができる。また、ポリマー層を基板上に付与せずに、シャーレなどを用いて、ポリマー層を構成するポリマーの単独膜を作製し、得られたポリマー単独膜を、上記の方法によって直接吸水率を測定してもよい。
【0153】
条件4における接触角は、以下の方法にて測定することができる。
まず、基板上にポリマー層を形成した積層体を準備し、25℃-50%相対湿度に設定された恒温恒湿槽内で保管する。保管されたサンプルを、25℃−50%相対湿度に調整された測定室内にて、表面接触角接触角測定装置(Dataphysics社製 OCA20)を用いて、基板(ポリマー層)上に5ulの蒸留水をシリンジから自動滴下し、基板断面方向の画像をCCDカメラによってパソコンに取り込み、画像解析により基板(ポリマー層)上の水滴の接触角度を数値計算する。
【0154】
また、本工程で得られる、硬化後のポリマー層が、下記条件1’〜 条件4’の少なくとも1つを満たすことがより好ましい。
条件1’:25℃−50%相対湿度環境下における飽和吸水率が0.01〜5質量%
条件2’:25℃−95%相対湿度環境下における飽和吸水率が0.05〜10質量%
条件3’:100℃煮沸水に1時間浸漬した後の吸水率が0.1〜20質量%
条件4’:25℃−50%相対湿度環境下において、蒸留水5μLを滴下し、15秒静置後の表面接触角が55〜150度
【0155】
ここで、上記条件1〜条件4(好ましくは条件1’〜 条件4’)を満たすポリマー層を得るためには、このポリマー層を構成する特定ポリマーとして、吸水性が低いものや、疎水性のもの(親水性が低いもの)を用いる方法や、ポリマー層中に、吸水性を低下させる物質や、疎水性を向上させるような物質を添加する方法、更には、ポリマー層を形成した後、該ポリマー層を形成するポリマー分子を疎水化する反応性物質を含む溶液などに浸漬させて、ポリマーとその反応性物質を反応させて疎水化するなど方法が挙げられるが、吸水性や疎水性の制御の容易性の観点から、ポリマー層を構成する特定ポリマーとして、吸水性が低いものや、疎水性のもの(親水性が低いもの)を用いる方法を用いることが好ましい。特に、相互作用性基として、非解離性官能基を有する特定ポリマーを用いることが好ましく、中でも、エーテル基(より具体的には、−O−(CH−O−(nは1〜5の整数)で表される構造)、又はシアノ基を有する特定ポリマーが特に好ましく、シアノ基を有する特定ポリマーが最も好ましい。
【0156】
〔(2)工程〕
(2)工程では、上記(1)工程において形成されたポリマー層に、めっき触媒又はその前駆体を付与する。本工程においては、ポリマー層を構成する特定ポリマーが有する相互作用性基が、その機能に応じて、付与されためっき触媒又はその前駆体を付着(吸着)する。
ここで、めっき触媒又はその前駆体としては、後述する(3)めっき工程における、めっきの触媒や電極として機能するものが挙げられる。そのため、めっき触媒又はその前駆体は、(3)めっき工程におけるめっきの種類により決定される。
なお、ここで、本工程において用いられるめっき触媒又はその前駆体は、無電解めっき触媒又はその前駆体であることが好ましい。
【0157】
(無電解めっき触媒)
本発明において用いられる無電解めっき触媒は、無電解めっき時の活性核となるものであれば、如何なるものも用いることができ、具体的には、ものであり、自己触媒還元反応の触媒能を有する金属(Niよりイオン化傾向の低い無電解めっきできる金属として知られるもの)などが挙げられ、具体的には、Pd、Ag、Cu、Ni、Al、Fe、Coなどが挙げられる。中でも、多座配位可能なものが好ましく、特に、配位可能な官能基の種類数、触媒能の高さから、Pdが特に好ましい。
この無電解めっき触媒は、金属コロイドとして用いてもよい。一般に、金属コロイドは、荷電を持った界面活性剤又は荷電を持った保護剤が存在する溶液中において、金属イオンを還元することにより作製することができる。金属コロイドの荷電は、ここで使用される界面活性剤又は保護剤により調節することができる。
【0158】
(無電解めっき触媒前駆体)
本工程において用いられる無電解めっき触媒前駆体とは、化学反応により無電解めっき触媒となりうるものであれば、特に制限なく使用することができる。主には、上記無電解めっき触媒として挙げた金属の金属イオンが用いられる。無電解めっき触媒前駆体である金属イオンは、還元反応により無電解めっき触媒である0価金属になる。無電解めっき触媒前駆体である金属イオンは、ポリマー層へ付与した後、無電解めっき浴への浸漬前に、別途還元反応により0価金属に変化させて無電解めっき触媒としてもよいし、無電解めっき触媒前駆体のまま無電解めっき浴に浸漬し、無電解めっき浴中の還元剤により金属(無電解めっき触媒)に変化させてもよい。
【0159】
実際には、無電解めっき前駆体である金属イオンは、金属塩を用いてポリマー層上に付与する。使用される金属塩としては、適切な溶媒に溶解して金属イオンと塩基(陰イオン)とに解離されるものであれば特に制限はなく、M(NO、MCln、M2/n(SO)、M3/n(PO)(Mは、n価の金属原子を表す)などが挙げられる。金属イオンとしては、上記の金属塩が解離したものを好適に用いることができる。具体例としては、例えば、Agイオン、Cuイオン、Alイオン、Niイオン、Coイオン、Feイオン、Pdイオンが挙げられ、中でも、多座配位可能なものが好ましく、特に、配位可能な官能基の種類数、及び触媒能の点で、Pdイオンが好ましい。
【0160】
無電解めっき触媒である金属、或いは、無電解めっき前駆体である金属塩をポリマー層に付与する方法としては、金属を適当な分散媒に分散した分散液、或いは、金属塩を適切な溶媒で溶解し、解離した金属イオンを含む溶液を調製し、その分散液又は溶液をポリマー層上に塗布するか、或いは、その分散液又は溶液中にポリマー層が形成された基板を浸漬すればよい。
【0161】
また、(1)工程において、基板上に、特定ポリマーを含有する組成物を接触させるが、この組成物中に、無電解めっき触媒又はその前駆体を添加する方法を用いてもよい。特定ポリマーと、無電解めっき触媒又はその前駆体と、を含有する組成物を、基板上に接触させて、露光を行うことにより、めっき触媒又はその前駆体を含有するポリマー層を形成することができる。なお、この方法を用いれば、本発明における(1)工程と(2)工程とが1工程で行えることになる。
【0162】
なお、基板として樹脂フィルムを用い、該樹脂フィルムの両面に対してポリマー層が形成されている場合には、その両面のポリマー層に対して同時に無電解めっき触媒又はその前駆体を接触させるために、上記の浸漬法を用いることが好ましい。
【0163】
上記のように無電解めっき触媒又はその前駆体を接触させることで、ポリマー層中の相互作用性基に、ファンデルワールス力のような分子間力による相互作用、又は、孤立電子対による配位結合による相互作用を利用して、無電解めっき触媒又はその前駆体を吸着させることができる。
このような吸着を充分に行なわせるという観点からは、分散液、溶液、組成物中の金属濃度、又は溶液中の金属イオン濃度は、0.001〜50質量%の範囲であることが好ましく、0.005〜30質量%の範囲であることが更に好ましい。また、接触時間としては、30秒〜24時間程度であることが好ましく、1分〜1時間程度であることがより好ましい。
【0164】
(その他の触媒)
本発明において、後述の(3)工程において、ポリマー層に対して、無電解めっきを行わず直接電気めっきを行うために用いられる触媒としては、0価金属を使用することができる。この0価金属としては、Pd、Ag、Cu、Ni、Al、Fe、Coなどが挙げられ、中でも、多座配位可能なものが好ましく、特に、特に、相互作用性基(シアノ基)に対する吸着(付着)性、触媒能の高さから、Pd、Ag、Cuが好ましい。
【0165】
(有機溶剤、及び水)
上記のようなめっき触媒又は前駆体は、前述のように、分散液や溶液(触媒液)としてポリマー層に付与される。
本発明における触媒液には、有機溶剤や水が用いられる。
この有機溶剤を含有することで、ポリマー層に対するめっき触媒又は前駆体の浸透性が向上し、相互作用性基に効率よくめっき触媒又はその前駆体を吸着させることができる。
【0166】
めっき触媒液の調製に用いられる有機溶剤としては、ポリマー層に浸透しうる溶剤であれば特に制限は無いが、具体的には、アセトン、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、エチレングリコールジアセテート、シクロヘキサノン、アセチルアセトン、アセトフェノン、2−(1−シクロヘキセニル)、プロピレングリコールジアセテート、トリアセチン、ジエチレングリコールジアセテート、ジオキサン、N−メチルピロリドン、ジメチルカーボネート、ジメチルセロソルブなどを用いることができる。
【0167】
また、その他の有機溶剤としては、ダイアセトンアルコール、γブチロラクトン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、エチレングリコールターシャリーブチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4ジオキサン、n−メチル−2−ピロリドンなどが挙げられる。
【0168】
特に、めっき触媒又はその前駆体との相溶性、及びポリマー層への浸透性の観点ではアセトン、ジメチルカーボネート、ジメチルセロソルブが好ましい。
【0169】
本発明における触媒液には、水を用いてもよい。この水としては、不純物を含まないことが好ましく、そのような観点からは、RO水や脱イオン水、蒸留水、精製水などを用いるのが好ましく、脱イオン水や蒸留水を用いるのが特に好ましい。
【0170】
更に、本発明における触媒液には、目的に応じて他の添加剤を含有することができる。
他の添加剤としては、例えば、膨潤剤(ケトン、アルデヒド、エーテル、エステル類等の有機化合物など)や、界面活性剤(アニオン性、カチオン性、双性、ノニオン性及び低分子性又は高分子性など)などが挙げられる。
【0171】
以上説明した(2)工程を経ることで、ポリマー層中の相互作用性基とめっき触媒又はその前駆体との間に相互作用を形成することができる。
【0172】
〔(3)工程〕
(3)工程では、無電解めっき触媒又はその前駆体が付与されたポリマー層に対し、めっきを行うことで、めっき膜が形成される。形成されためっき膜は、優れた導電性、密着性を有する。
本工程において行われるめっきの種類は、無電解めっき、電気めっき等が挙げられ、前記(2)工程において、ポリマー層との間に相互作用を形成しためっき触媒又はその前駆体の機能によって、選択することができる。
つまり、本工程では、めっき触媒又はその前駆体が付与されたポリマー層に対し、電気めっきを行ってもよいし、無電解めっきを行ってもよい。
中でも、本発明においては、ポリマー層中に発現するハイブリッド構造の形成性及び密着性向上の点から、無電解めっきを行うことが好ましい。また、所望の膜厚のめっき層を得るために、無電解めっきの後に、更に電気めっきを行うことがより好ましい態様である。
以下、本工程において好適に行われるめっきについて説明する。
【0173】
(無電解めっき)
無電解めっきとは、めっきとして析出させたい金属イオンを溶かした溶液を用いて、化学反応によって金属を析出させる操作のことをいう。
本工程における無電解めっきは、例えば、無電解めっき触媒が付与された基板を、水洗して余分な無電解めっき触媒(金属)を除去した後、無電解めっき浴に浸漬して行なう。使用される無電解めっき浴としては一般的に知られている無電解めっき浴を使用することができる。
また、無電解めっき触媒前駆体が付与された基板を、無電解めっき触媒前駆体がポリマー層に吸着又は含浸した状態で無電解めっき浴に浸漬する場合には、基板を水洗して余分な前駆体(金属塩など)を除去した後、無電解めっき浴中へ浸漬される。この場合には、無電解めっき浴中において、めっき触媒前駆体の還元とこれに引き続き無電解めっきが行われる。ここで使用される無電解めっき浴としても、上記同様、一般的に知られている無電解めっき浴を使用することができる。
なお、無電解めっき触媒前駆体の還元は、上記のような無電解めっき液を用いる態様とは別に、触媒活性化液(還元液)を準備し、無電解めっき前の別工程として行うことも可能である。触媒活性化液は、無電解めっき触媒前駆体(主に金属イオン)を0価金属に還元できる還元剤を溶解した液で、0.1%〜50%、好ましくは1%〜30%がよい。還元剤としては、水素化ホウ素ナトリウム、ヂメチルアミンボランのようなホウ素系還元剤、ホルムアルデヒド、次亜リン酸などの還元剤を使用することが可能である。
【0174】
一般的な無電解めっき浴の組成としては、溶剤の他に、1.めっき用の金属イオン、2.還元剤、3.金属イオンの安定性を向上させる添加剤(安定剤)が主に含まれている。このめっき浴には、これらに加えて、めっき浴の安定剤など公知の添加物が含まれていてもよい。
【0175】
このめっき浴に用いられる溶剤には、吸水性が低く、疎水性の高いポリマー層(前記1〜4の条件のうちいずれかを満たすポリマー層)に対して、親和性の高い有機溶剤を含有させることが好ましい。有機溶剤の種類の選択や、含有量は、ポリマー層の物性に応じて調製すればよい。特に、ポリマー層の条件1における飽和吸水率が大きければ大きいほど、有機溶剤の含有率を小さくすることが好ましい。具体的には、以下の通りである。
即ち、条件1における飽和吸水率が0.01〜0.5質量%の場合、めっき浴の全溶剤中の有機溶剤の含有量は20〜80%であることが好ましく、同飽和吸水率が0.5〜5質量%の場合、めっき浴の全溶剤中の有機溶剤の含有量は10〜80%であることが好ましく、同飽和吸水率が5〜10質量%の場合、めっき浴の全溶剤中の有機溶剤の含有量は0〜60%であることが好ましく、同飽和吸水率が10〜20質量%の場合、めっき浴の全溶剤中の有機溶剤の含有量は0〜45%であることが好ましい。
めっき浴に用いられる有機溶剤としては、水に可能な溶媒である必要があり、その点から、アセトンなどのケトン類、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類が好ましく用いられる。
【0176】
無電解めっき浴に用いられる金属の種類としては、銅、すず、鉛、ニッケル、金、パラジウム、ロジウムが知られており、中でも、導電性の観点からは、銅、金が特に好ましい。
また、上記金属に合わせて最適な還元剤、添加物がある。例えば、銅の無電解めっきの浴は、銅塩としてCuSO、還元剤としてHCOH、添加剤として銅イオンの安定剤であるEDTAやロッシェル塩などのキレート剤、トリアルカノールアミンなどが含まれている。また、CoNiPの無電解めっきに使用されるめっき浴には、その金属塩として硫酸コバルト、硫酸ニッケル、還元剤として次亜リン酸ナトリウム、錯化剤としてマロン酸ナトリウム、りんご酸ナトリウム、こはく酸ナトリウムが含まれている。また、パラジウムの無電解めっき浴は、金属イオンとして(Pd(NH)Cl、還元剤としてNH、HNNH、安定化剤としてEDTAが含まれている。これらのめっき浴には、上記成分以外の成分が入っていてもよい。
【0177】
このようにして形成される無電解めっきによるめっき膜の膜厚は、めっき浴の金属イオン濃度、めっき浴への浸漬時間、或いは、めっき浴の温度などにより制御することができるが、導電性の観点からは、0.5μm以上であることが好ましく、3μm以上であることがより好ましい。
また、めっき浴への浸漬時間としては、1分〜6時間程度であることが好ましく、1分〜3時間程度であることがより好ましい。
【0178】
以上のようにして得られた無電解めっきによるめっき膜は、SEMによる断面観察により、ポリマー層中に無電解めっき触媒やめっき金属からなる微粒子がぎっしりと分散しており、更にポリマー層上にめっき金属が析出していることが確認された。基板とめっき膜との界面は、ポリマーと微粒子とのハイブリッド状態であるため、基板(有機成分)と無機物(触媒金属又はめっき金属)との界面が平滑(例えば、凹凸差が500nm以下)であっても、密着性が良好となる。
【0179】
(電気めっき)
本工程おいては、(2)工程において付与されためっき触媒又はその前駆体が電極としての機能を有する場合、その触媒又はその前駆体が付与されたポリマー層に対して、電気めっきを行うことができる。
また、前述の無電解めっきの後、形成されためっき膜を電極とし、更に、電気めっきを行ってもよい。これにより基板との密着性に優れた無電解めっき膜をベースとして、そこに新たに任意の厚みをもつ金属膜を容易に形成することができる。このように、無電解めっきの後に、電気めっきを行うことで、金属膜を目的に応じた厚みに形成しうるため、本発明の金属膜を種々の応用に適用するのに好適である。
【0180】
本発明における電気めっきの方法としては、従来公知の方法を用いることができる。なお、本工程の電気めっきに用いられる金属としては、銅、クロム、鉛、ニッケル、金、銀、すず、亜鉛などが挙げられ、導電性の観点から、銅、金、銀が好ましく、銅がより好ましい。
【0181】
また、電気めっきにより得られる金属膜の膜厚については、用途に応じて異なるものであり、めっき浴中に含まれる金属濃度、或いは、電流密度などを調整することでコントロールすることができる。なお、一般的な電気配線などに用いる場合の膜厚は、導電性の観点から、0.5μm以上であることが好ましく、3μm以上であることがより好ましい。
【0182】
本発明において、前述のめっき触媒、めっき触媒前駆体に由来する金属や金属塩、及び/又は、無電解めっきにより、ポリマー層中に析出した金属が、該層中でフラクタル状の微細構造体として形成されていることによって、金属膜とポリマー層との密着性を更に向上させることができる。
ポリマー層中に存在する金属量は、基板断面を金属顕微鏡にて写真撮影したとき、ポリマー層の最表面から深さ0.5μmまでの領域に占める金属の割合が5〜50面積%であり、ポリマー層と金属界面の算術平均粗さRa(JIS B0633−2001)が0.05μm〜0.5μmである場合に、更に強い密着力が発現される。
【0183】
<表面金属膜材料>
本発明の表面金属膜材料の作製方法の各工程を経ることで、本発明の表面金属膜材料を得ることができる。なお、本発明の表面金属膜材料の作製方法において、基板として樹脂フィルム等を用いれば、その樹脂フィルムの両面に金属膜が形成された表面金属膜材料を得ることができる。
本発明の表面金属膜材料の作製方法により得られた表面金属膜材料は、基板に対する金属膜の密着力に優れる。
表面金属膜材料を構成するポリマー層が、前述の条件1〜条件4の少なくとも1つを満たすようなものである場合、そのポリマー層は吸水性が低く、また、疎水性が高いものであることになり、ポリマー層が湿度変化に応じて変化することがなくなる。その結果、ポリマー層が前述の条件1〜条件4の少なくとも1つを満たすようなものを有する表面金属膜材料は、湿度変化による密着力の変動が少ないといった効果をも有する。
この表面金属膜材料は、例えば、電磁波防止膜、コーティング膜、2層CCL材料、電気配線用材料等の種々の用途に適用することができる。
【0184】
本発明の金属パターン材料の作製方法は、(1)〜(3)の工程を経て得られた本発明の表面金属膜材料のめっき膜をパターン状にエッチングする工程を有する。
この(a4)エッチング工程について以下に説明する。
【0185】
〔(4)工程〕
(4)工程では、上記(3)工程で形成されためっき膜(金属膜)をパターン状にエッチングする。即ち、本工程では、基板表面全体に形成されためっき膜の不要部分をエッチングで取り除くことで、所望の金属パターンを形成することができる。
この金属パターンの形成には、如何なる手法も使用することができ、具体的には一般的に知られているサブトラクティブ法、セミアディティブ法が用いられる。
【0186】
サブトラクティブ法とは、形成されためっき膜上にドライフィルムレジスト層を設けパターン露光、現像により金属パターン部と同じパターンを形成し、ドライフィルムレジストパターンをマスクとしてエッチング液でめっき膜を除去し、金属パターンを形成する方法である。ドライフィルムレジストとしては如何なる材料も使用でき、ネガ型、ポジ型、液状、フィルム状のものが使用できる。また、エッチング方法としては、プリント配線基板の製造時に使用されている方法が何れも使用可能であり、湿式エッチング、ドライエッチング等が使用可能であり、任意に選択すればよい。作業の操作上、湿式エッチングが装置などが簡便で好ましい。エッチング液として、例えば、塩化第二銅、塩化第二鉄等の水溶液を使用することができる。
【0187】
また、セミアディティブ法とは、形成されためっき膜上にドライフィルムレジスト層を設け、パターン露光、現像により非金属パターン部と同じパターンを形成し、ドライフィルムレジソトパターンをマスクとして電気めっきを行い、ドライフィルムレジソトパターンを除去した後にクイックエッチングを実施し、めっき膜をパターン状に除去することで、金属パターンを形成する方法である。ドライフィルムレジソト、エッチング液等はサブトラクティブ法と同様な材料が使用できる。また、電気めっき手法としては前記記載の手法が使用できる。
【0188】
以上の(1)〜(4)工程を経ることにより、所望の金属パターンを有する金属パターン材料が作製される。
【0189】
一方、(1)の工程で得られるポリマー層をパターン状に形成し、パターン状のポリマー層に対し(2)、及び(3)工程を行うことで、金属パターン材料を作製することもできる(フルアディティブ工法)。
(1)の工程で得られるポリマー層をパターン状に形成する方法としては、具体的には、ポリマー層を形成する際の露光をパターン露光とすればよく、また、未露光部を現像で除去することでパターン状のポリマー層を形成することができる。
なお、現像方法としては、主として特定ポリマーなどのポリマー層を形成するために用いられる材料を溶解しうる溶剤に浸漬することで行われる。浸漬する時間は1分〜30分が好ましい。
また、(1)の工程において、パターン状のポリマー層は、グラビア印刷法、インクジェット法、マスクを用いたスプレーコート法など公知の塗布方法で直接パターニングした後、エネルギー付与し、その後、現像することで形成してもよい。
パターン形成したポリマー層上にめっき膜を形成するための(2)、及び(3)工程は、前述の方法と同じである。
【0190】
<金属パターン材料>
本発明の金属パターン材料は、前述の本発明の金属パターン材料の作製方法により得られたものである。
得られた金属パターン材料は、基板に対する密着性に優れる金属パターンを有するものである。
なお、金属パターン材料を構成するポリマー層が、前述の条件1〜条件4の少なくとも1つを満たすようなものである場合、該ポリマー層が、吸水性が低く、疎水性が高いため、このポリマー層の露出部(金属パターンの非形成領域)は吸水、吸湿などの変化が起こらず、これに起因する絶縁性の低下が生じない。その結果、本発明の金属パターン材料の作製方法において形成された金属パターン材料は、金属パターンの非形成領域の絶縁信頼性に優れたものとなる。
【0191】
本発明の金属パターン材料は、表面の凹凸が500nm以下(より好ましくは100nm以下)の基板上の全面又は局所的に、金属膜(めっき膜)を設けたものであることが好ましい。また、基板と金属パターンとの密着性が0.2kN/m以上であることが好ましい。即ち、基板表面が平滑でありながら、基板と金属パターンとの密着性に優れることを特徴とする。
【0192】
なお、基板表面の凹凸は、基板を基板表面に対して垂直に切断し、その断面をSEMにより観察することにより測定した値である。
より詳細には、JIS B 0601に準じて測定したRz、即ち、「指定面における、最大から5番目までの山頂のZデータの平均値と、最小から5番目までの谷底の平均値との差」で、500nm以下であることが好ましい。
また、基板と金属膜との密着性の値は、金属膜(金属パターン)の表面に、銅板(厚さ:0.1mm)をエポキシ系接着剤(アラルダイト、チバガイギー製)で接着し、140℃で4時間乾燥した後、JIS C 6481に基づき90度剥離実験を行うか、又は、金属膜自体の端部を直接剥ぎ取り、JIS C 6481に基づき90度剥離実験を行って得られた値である。
【0193】
本発明の金属パターン材料の作製方法により得られた金属パターン材料は、例えば、半導体チップ、各種電気配線板、FPC、COF、TAB、アンテナ、多層配線基板、マザーボード、等の種々の用途に適用することができる。
【実施例】
【0194】
以下、実施例により、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「%」「部」は質量基準である。
【0195】
〔実施例1〕
[合成例:特定ポリマー1の合成]
300mlの三口フラスコに、テトラヒドロフラン100gを入れ、4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン(Ciba Specialty Chemicals社製、IRG2959)30gを溶解させた。そこへ、2−アクリロイロキシエチルイソシアネート(昭和電工社製、カレンズAOI)6.7gを添加して均一な溶液とし、触媒としてU−600(日東化成社製)120mgを滴下しながら室温にて1時間反応を行い、50℃に加温して更に3時間反応を行った。最後に、エバポレーターにてテトラヒドロフランを除去し、得られた固形状の生成物を再結晶にて精製し、モノマーAを19g得た。
【0196】
続いて、300mlの三口フラスコに、ジメチルアセトアミド31gを入れ、窒素気流下、65℃まで加熱した。そこへ、モノマーA:5.85g、2−ヒドロキシエチルアクリレート7.43g、2−シアノエチルアクリレート30.02g、及びV−65(和光純薬製)0.79gのジメチルアセトアミド31gの溶液を、4時間かけて滴下した。滴下終了後、更に5時間撹拌した。
上記の反応溶液に、ジターシャリーブチルハイドロキノン0.30g、U−600(日東化成製)0.41g、カレンズAOI(昭和電工(株)製)12.4g、及びジエチレングリコールジアセテート12.4gを加え、55℃、6時間反応を行った。その後、反応液に水を1.58g加え、更に1.5時間反応を行った。反応終了後、水で再沈を行い、固形物を取り出し、本発明における特定ポリマー1を28g得た。
【0197】
特定ポリマー1の重量平均分子量は2.5万であった。
また、特定ポリマー1の構造を確認したところ、重合反応は仕込み比の通りに進行したことが判明した。
【0198】
[基板の作製]
ガラスエポキシ基板上に、電気的絶縁層として味の素ファインテクノ社製エポキシ系絶縁膜GX−13(膜厚45μm)を、加熱、加圧して、真空ラミネーターにより0.2MPaの圧力で100℃〜110℃の条件により接着して、基材を得た。
ついで、基材の上に、下記組成の光重合開始剤を含有する絶縁性組成物を厚さ3μmになるようにスピンコート法で塗布し、30℃にて1時間放置して溶剤を除去した後、140℃で30分乾燥して密着補助層(絶縁性の密着補助層)を形成した。
【0199】
(光重合開始剤を含有する絶縁性組成物)
液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量176、ジャパンエポキシレジン(株)製、エピコート825)5g、トリアジン構造含有フェノールノボラック樹脂のMEKワニス(大日本インキ化学工業(株)製、フェノライトLA−7052、不揮発分62%、不揮発分のフェノール性水酸基当量120)2g、フェノキシ樹脂MEKワニス(東都化成(株)製、YP−50EK35、不揮発分35%)10.7g、重合開始剤として2−ヒドロキシ−4’−(2−ヒドロキシエトキシ)−2−メチルプロピオフェノン2.3g、MEK5.3g、2−エチル−4−メチルイミダゾール0.053gを混合し、攪拌して完全に溶解させて重合開始剤を含有する絶縁性組成物を得た。
【0200】
上記のような重合開始層が形成された後、180℃で30分間硬化処理を実施した。これにより、基板A1を得た。この基板の表面凹凸(Rz)は0.1μmであった。
【0201】
[ポリマー層の形成]
(塗布溶液の調製)
前述の合成例で得られた特定ポリマー1:1gと、アセトン/アセトニトリル=1/1(質量比)と、からなる混合液10gを混合攪拌し、塗布溶液を調製した。
【0202】
(ポリマー層の形成)
調製された塗布溶液を、前記基板A1の重合開始層上に、厚さ1μmになるように、スピンコート法により塗布し、80℃にて5分乾燥した後、超高圧水銀灯(USHIO社製)を用いて、40秒間照射させて、基板A1の重合開始層の全面にポリマー層を形成した。
【0203】
その後、攪拌した状態のアセトン中にポリマー層が形成された基板を5分間浸漬し、続いて、蒸留水にて洗浄した。
これにより、ポリマー層を有する基板A2を得た。
【0204】
[めっき触媒の付与]
ポリマー層を有する基板A2を、硝酸パラジウムを1質量%含むアセトン溶液に、30分間浸漬した後、アセトンに浸漬して洗浄した。
【0205】
[無電解めっき]
上記のようにして、めっき触媒が付与されたポリマー層を有する基板A2に対し、下記組成の無電解めっき浴を用い、60℃で5分間、無電解めっきを行った。得られた無電解銅めっき膜の厚みは0.3μmであった。
【0206】
(無電解めっき浴の組成)
・蒸留水 859g
・メタノール 850g
・硫酸銅 18.1g
・エチレンジアミン四酢酸・2ナトリウム塩 54.0g
・ポリオキシエチレングリコール(分子量1000) 0.18g
・2,2’ビピリジル 1.8mg
・10%エチレンジアミン水溶液 7.1g
・37%ホルムアルデヒド水溶液 9.8g
以上の組成のめっき浴のpHを、水酸化ナトリウム及び硫酸で12.5(60℃)に調整した。
【0207】
[電気めっき]
続いて、無電解銅めっき膜を給電層として、下記組成の電気銅めっき浴を用い、3A/dmの条件で、電気めっきを20分間行った。得られた電気銅めっき膜の厚みは18μmであった。
【0208】
(電気めっき浴の組成)
・硫酸銅 38g
・硫酸 95g
・塩酸 1mL
・カッパーグリームPCM(メルテックス(株)製) 3mL
・水 500g
【0209】
(密着性評価)
得られためっき膜に対して、引張試験機((株)エー・アンド・デー製、RTM−100)を用いて、5mm幅について、引張強度10mm/minにて、90°ピール強度の測定を行ったところ、0.5kN/mであった。
【0210】
[金属パターンの形成、及び絶縁信頼性試験]
実施例1で得られためっき膜表面に、金属パターン(配線パターン)として残すべき領域にエッチングレジストを形成し、レジストのない領域のめっき膜を、FeCl/HClからなるエッチング液により除去した。その後、エッチングレジストを3%NaOH液からなるアルカリ剥離液にて除去し、ライン・アンド・スペース=100μm/100μmの線間絶縁信頼性を測定するための櫛形配線(金属パターン材料)を形成した。この櫛形配線を、ESPEC製HAST試験機(AMI−150S−25)にて、125℃−85%相対湿度(未飽和)、印加電圧10V、2気圧下で100時間放置させた所、配線間の絶縁不良は見られなかった。
【0211】
〔実施例2〕
[合成例:特定ポリマー2の合成]
300mlの三口フラスコに、ジエチレングリコールジアセテート31gを入れ、窒素気流下、65℃まで加熱した。そこへ、下記構造のモノマーB:34.2g、2−ヒドロキシエチルアクリレート7.43g、2−シアノエチルアクリレート24.02g、及びV−65(和光純薬製)0.79gのジメチルアセトアミド31gの溶液を、4時間かけて滴下した。滴下終了後、更に5時間撹拌した。
上記の反応溶液に、ジターシャリーブチルハイドロキノン0.30g、U−600(日東化成製)0.41g、カレンズAOI(昭和電工(株)製)12.4g、及びジメチルアセトアミド12.4gを加え、55℃、6時間反応を行った。その後、反応液に水を1.58g加え、更に1.5時間反応を行った。反応終了後、水で再沈を行い、固形物を取り出し、本発明における特定ポリマー2を31g得た。
【0212】
【化26】

【0213】
特定ポリマー2の重量平均分子量は3.1万であった。
また、特定ポリマー2の構造を確認したところ、重合反応は仕込み比の通りに進行したことが判明した。
【0214】
実施例1で作製した、重合開始層が形成された基板A1を用い、以下のようにして表面金属膜材料を作製した。
【0215】
[ポリマー層の形成]
(塗布溶液の調整)
前述の合成例で得られた特定ポリマー2:1gと、下記構造の増感剤0.1g、アセトン/アセトニトリル=1/1(質量比)と、からなる混合液10gを混合攪拌し、塗布溶液を調製した。
【0216】
【化27】

【0217】
(ポリマー層の形成)
調製された塗布溶液を、前記基板A1の重合開始層上に、厚さ1μmになるように、スピンコート法により塗布し、80℃にて5分乾燥した後、超高圧水銀灯(USIO社製)を用いて30秒間露光し、基板A1の重合開始層の全面にポリマー層を形成した。
【0218】
その後、攪拌した状態のメタノール中にポリマー層が形成された基板を5分間浸漬し、続いて、蒸留水にて洗浄した。
これにより、ポリマー層を有する基板A3を得た。
【0219】
(ポリマー層の物性測定)
得られたポリマー層の物性について前述の方法で測定した。結果は以下の通りである。
・25℃−50%相対湿度環境下における飽和吸水率:1.3質量%
・25℃−95%相対湿度環境下における飽和吸水率:3.5質量%
・100℃煮沸水に1時間浸漬した後の吸水率:8.1質量%
・25℃−50%相対湿度環境下において、蒸留水5μLを滴下し、15秒静置後の表面接触角:75度
【0220】
続いて、このポリマー層を有する基板A3に対して、実施例1と同様の方法で、[めっき触媒の付与]、[無電解めっき]、及び[電気めっき]を行った。
【0221】
(密着性評価)
得られためっき膜に対して、引張試験機((株)エー・アンド・デー製、RTM−100)を用いて、5mm幅について、引張強度10mm/minにて、90°ピール強度の測定を行ったところ、0.42kN/mであった。
【0222】
〔比較例1〕
実施例1で作製した、重合開始層が形成された基板A1を用い、以下のようにして表面金属膜材料を作製した。
【0223】
[ポリマー層の形成]
(塗布溶液の調整)
後述の合成例で得られたポリマー3:0.9gと、IRGACURE 2959(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)0.1gをアセトン/アセトニトリル=1/1(質量比)と、からなる混合液10gを混合攪拌し、塗布溶液を調製した。
【0224】
〔ポリマー3の合成〕
1000mlの三口フラスコに、N−メチルピロリドン35gを入れ、窒素気流下、75℃まで加熱した。そこへ、2−ヒドロキシエチルアクリレート(市販品、東京化成製)6.60g、2−シアノエチルアクリレート28.4g、及びV−601(和光純薬製)0.65gのN−メチルピロリドン35g溶液を、2.5時間かけて滴下した。滴下終了後、80℃まで加熱し、更に3時間撹拌した。その後、室温まで、反応溶液を冷却した。 上記の反応溶液に、ジターシャリーブチルハイドロキノン0.29g、ジブチルチンジラウレート0.29g、カレンズAOI(昭和電工(株)製)18.56g、及びN−メチルピロリドン19gを加え、55℃、6時間反応を行った。その後、反応液にメタノールを3.6g加え、更に1.5時間反応を行った。反応終了後、水で再沈を行い、固形物を取り出し、ポリマー3を25g得た。
【0225】
(ポリマー層の形成)
調製された塗布溶液を、前記基板A1の重合開始層上に、厚さ1μmになるように、スピンコート法により塗布し、80℃にて5分乾燥した後、超高圧水銀灯(USIO製)を用いて30秒間露光した。その後、この基板をアセトン中に浸漬したところ、塗布された成分が脱膜してしまった。
【0226】
このように、露光によりラジカルを発生しうる化合物(重合開始剤)を、ポリマーと別個に添加した塗布溶液を用いた比較例1では、実施例1、2と同じ露光量では、基板との密着性に優れたポリマー層が得られないことが分かる。
このことから、実施例1、2では、比較例1よりも少ない露光量であっても、硬化、重合反応が十分に進行し、基板との密着性に優れたポリマー層が得られることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)基板に、めっき触媒又はその前駆体と相互作用を形成する官能基、ラジカル重合性基、及び、ラジカル発生部位を有するポリマーを接触させた後、該ポリマーに対して露光を行い、該基板上にポリマー層を形成する工程と、
(2)該ポリマー層にめっき触媒又はその前駆体を付与する工程と、
(3)該めっき触媒又はその前駆体に対してめっきを行う工程と、
を有することを特徴とする表面金属膜材料の作製方法。
【請求項2】
前記ポリマー層中の、めっき触媒又はその前駆体と相互作用を形成する官能基、ラジカル重合性基、及び、ラジカル発生部位を有するポリマーが、分子内のラジカル重合性基により前記基板に結合していることを特徴とする請求項1に記載の表面金属膜材料の作製方法。
【請求項3】
前記基板が、露光によりラジカルを発生しうる基板であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の表面金属膜材料の作製方法。
【請求項4】
前記(3)工程では、無電解めっきが行われることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の表面金属膜材料の作製方法。
【請求項5】
前記無電解めっきの後に、更に電気めっきが行われることを特徴とする請求項4に記載の表面金属膜材料の作製方法。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の表面金属膜材料の作製方法により得られた表面金属膜材料。
【請求項7】
(4)請求項6に記載の表面金属膜材料のめっき膜をパターン状にエッチングする工程を有することを特徴とする金属パターン材料の作製方法。
【請求項8】
請求項7に記載の金属パターン材料の作製方法により得られた金属パターン材料。
【請求項9】
めっき触媒又はその前駆体と相互作用を形成する官能基、ラジカル重合性基、及び、ラジカル発生部位を有するポリマーと、溶剤と、を含有し、めっき触媒又はその前駆体を受容するポリマー層の形成に用いられるポリマー層形成用組成物。

【公開番号】特開2009−263703(P2009−263703A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−112902(P2008−112902)
【出願日】平成20年4月23日(2008.4.23)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】