説明

被加工物のクリーニング方法及びクリーニング装置、並びにプリント配線板の製造方法及び製造装置

【課題】 被加工物の表面及び加工孔の内部の物質を確実に除去することができる被加工物のクリーニング方法及びクリーニング装置、並びにプリント配線板の信頼性を向上させることができるプリント配線板の製造方法及び製造装置を提供する。
【解決手段】 クリーニング装置100においては、貫通孔3が形成されたプリプレグシート1が搬送機構17で搬送されている。このとき、圧縮空気発生装置12で圧縮された空気が、空気清浄用フィルタ18及び空気イオン化装置20を介して、渦流発生装置を有するブロー噴射部7の吹出し口7bから、イオン化された清浄な渦流空気流として噴射され、吹出し口7bを形成する壁部7aの内壁面7c上を経由して外端部7dからプリプレグシート1に吹き付けられる。これにより、プリプレグシート1の表面及び貫通孔3の内部の物質を確実に除去することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工物のクリーニング方法及びクリーニング装置、並びにプリント配線板の製造方法及び製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の小型化及び高密度化に伴い、産業用に止まらず民生用の分野においても、プリント配線板の高密度化及び多層化が強く要望されている。また、特許文献1に示されるように、プリント配線板の多層化に伴い、層間接続のための導通孔であるインナービアホールの小径化も要望されている。
【0003】
このような多層のプリント配線基板(以下、「多層プリント配線板」と称す。)を製造するに際しては、複数層の回路パターンの間をインナービアホールで接続する方法、信頼度の高い構造を有する材料及びその製造方法の新規開発が不可欠である。その一例として、特許文献2に示されるように、導電性ペーストを貫通孔に充填することによりインナービアホールを形成した「新規な接続用の導通孔」を有する構成の高密度の回路基板の製造方法が提案されている。
【0004】
以下、従来の両面のプリント配線板(以下、「両面プリント配線板」と称す。)及び多層プリント配線板(ここでは、4層の多層プリント配線板)の製造方法について説明する。
【0005】
初めに、多層プリント配線板のベースとなる両面回路基板の製造方法について説明する。図5は、従来の両面回路基板の製造方法の製造工程を示す概略図である。
【0006】
図5において、21は、外形340mm×340mm、厚さ約100μmの正方形シート状のプリプレグシートであり、プリプレグシートとしては、例えば、絶縁基材を構成するガラスの織布又は不織布に熱硬化性エポキシ樹脂を含浸させた複合材からなる樹脂含浸基材が用いられる(以下、「エポキシシート」と称する。)。22a,22bは、片面にSi系の離型剤を塗布した厚さ約10μmの剥離可能なプラスチック製フィルムであり、プラスチック製フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレートからなるシート(以下、「PETシート」と称する。)が用いられる。23は、エポキシシート21の両面に貼り付けられる厚さ約35μmの金属箔25a,25bと電気的に接続される導電性ペースト24が充填される貫通孔である。
【0007】
まず、図5(a)に示されるように、両面にPETシート22a,22bが接着されたエポキシシート21を準備し、図5(b)に示されるように、エポキシシート21の所定の箇所に、レーザ加工方法等を利用して貫通孔23を形成する。その後、両面にPETシート22a,22bが接着されたエポキシシート21の表面や貫通孔の内部に付着した加工粉26のクリーニングを回転ブラシや吸引装置によって行う。
【0008】
続いて、図5(c)に示されるように、貫通孔23に導電性ペースト24を充填する。導電性ペースト24を充填する方法としては、貫通孔23を有するエポキシシート21を印刷機(図示せず)のテーブル上に設置し、直接導電性ペースト24がPETシート22aの上から印刷される。このとき、上面のPETシート22aは、印刷マスクの役割、及びエポキシシート21の表面の汚染防止の役割を果たしている。
【0009】
続いて、図5(d)に示されるように、エポキシシート21の両面からPETシート22a,22bを剥離する。そして、図5(e)に示されるように、Cu等からなる金属箔25a,25bをエポキシシート21の両面に重ね、この状態で熱プレスを用いて加熱加圧する。これにより、図5(f)に示されるように、エポキシシート21の厚さがt1=約100μmからt2=約80μmに圧縮される。このとき、エポキシシート21と金属箔25a,25bとが接着され、両面の金属箔25a,25bが、所定の位置の貫通孔23に充填された導電性ペースト24によって電気的に接続される。
【0010】
そして、両面の金属箔25a,25bを選択的にエッチングして、回路パターン(図示せず)を形成し、両面回路基板を得る。
【0011】
次に、多層プリント配線板の製造方法について説明する。図6は、従来の多層プリント配線板の製造方法の製造工程を示す概略図であり、4層の多層プリント配線板を例として示している。
【0012】
まず、図6(a)に示されるように、図5(a)〜(d)に示される製造工程を経て製造されたエポキシシート21a,21b(貫通孔23に導電性ペースト24が充填されたもの)と、図6(b)に示されるように、図5(a)〜(f)に示される製造工程を経て製造された両面回路基板30(両面に回路パターン31a,31bが形成されたもの)とを準備する。
【0013】
続いて、図6(c)に示されるように、積層プレート29bに、金属箔25b、エポキシシート21b、両面回路基板30、エポキシシート21a、金属箔25a、積層プレート29aの順で位置決めして重ねる。位置決めは、例えば、積層プレート29aに位置決めピン(図示せず)を設けると共に、金属箔25a,25b、エポキシシート21a,21b、両面回路基板30及び積層プレート29bに位置決め孔(図示せず)を設けて、積層金型の位置決めピンを位置決め孔に通すことによって行うことができる。
【0014】
なお、積層金型に位置決めピンを設けずに、金属箔25a,25bと積層プレート29bとの位置決めを、外形のコーナーを合わせることによって行い、エポキシシート21a,21bと両面回路基板30との位置決めを、双方に設けた位置決め孔等を用いた画像認識等を利用することによって行ってもよい。
【0015】
続いて、図6(c)に示される状態で熱プレスを用いて加熱加圧する。これにより、図6(d)に示されるように、エポキシシート21a,21bの厚さがt1=約100μmからt2=約80μmに圧縮される。このとき、両面回路基板30とエポキシシート21a,21bと金属箔25a,25bとが接着され、両面の金属箔25a,25bが、所定の位置の貫通孔23に充填された導電性ペースト24によって電気的に接続される。
【0016】
そして、図6(e)に示されるように、両面の金属箔25a,25bを選択的にエッチングして、回路パターン32a,32bを形成し、多層プリント配線板を得る。ここでは、4層の多層プリント配線板について説明したが、4層以上の多層プリント配線板、例えば、6層の多層プリント配線板については、上述した製造方法で得られた4層の多層プリント配線板を両面回路基板の代わりに用いて、多層プリント配線基板の製造方法(図6(a)〜(e))を繰り返せばよい。
【0017】
上述したエポキシシートは、ガラスの織布又は不織布にエポキシ樹脂を含浸させエポキシ樹脂を半硬化させた樹脂含浸の絶縁複合材料であり、更に、その表面には、PETシートが接着されている。このような状態のエポキシシートに対し、レーザ光線によって穴開け加工すると、PETやエポキシが混合した加工粉が発生し、PETシートの表面や貫通孔の内部に付着する。この加工粉は、非常に粘性が強く、PETシートの表面や貫通孔の内部に付着すると非常に取れ難い。
【0018】
そして、PETシートの表面や貫通孔の内部に加工粉が付着した状態で導電性ペーストの充填を行うと、PETシートの表面に付着した加工粉は導電性ペーストに混入し、貫通孔の内部に付着した加工粉は導電性ペーストの充填を阻害し、どちらも電気特性を損ねさせる要因となる。
【0019】
上述した多層プリント配線板の製造方法は、インナービア(以下、「IVH」と称する。)接続であり、層間の接続は、各層に設けられた貫通孔に導電性ペーストが充填されたビアホールで実現されている。よって、多層プリント配線板の完成後、内層のIVHに接続の不具合が存在しても、修正することができない。
【0020】
そのため、導電性ペーストを充填する際に、エポキシシート表面や貫通孔の内部に異物が存在しない状態でなければ安定した導電性ペーストの充填が行えず、電気特性が不安定になる可能性が高い。従って、層間接続を確実に行うために、導電性ペーストを充填する工程までの間に、加工した貫通孔の内部や絶縁基材の表面が確実にクリーニングされた信頼性の高いエポキシシートを用意することが望まれている。
【0021】
上述した多層プリント配線板の製造方法においては、安定した導電性ペーストの充填を行い、安定した電気特性を得るために、レーザ加工によって発生した加工粉や、その他の異物が、エポキシシートの表面や貫通孔の内部に残ったまま、導電性ペーストの充填工程に至らないように、確実にエポキシシートの表面や貫通孔の内部がクリーニングされることが要求されている。
【特許文献1】特開2003−080498号公報
【特許文献2】特開2001−308462号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
しかしながら、上述した多層プリント配線板の製造方法においては、ブラシで擦ると表面の加工粉は除去することができるが、エポキシシートに開けた貫通孔の径よりもブラシの毛の方が太いと、貫通孔の中までブラシが入らないため、貫通孔内の穴詰まりについては殆ど効果がない。
【0023】
また、現行の吸引方法では、穴詰まりを除去するのに1〜3m/分の流速で吸引を行っている。この場合、吸引効果を得るために、エポキシシートは、吸引孔に密着した状態で摩擦摺動しながら搬送されているので、吸引孔に付着した汚れが再転写することがある。
【0024】
更に、強固な穴詰まりの場合、10m/分以上の流速で圧縮空気流を当てないと完全に除去することができないことが判っている。ところが、現行の吸引方式には、4m/分以上の流速になるとエポキシシートが装置に吸着され搬送することができなくなるという課題を有している。
【0025】
そこで、本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、被加工物の表面及び加工孔の内部の物質を確実に除去することができる被加工物のクリーニング方法及びクリーニング装置、並びにプリント配線板の信頼性を向上させることができるプリント配線板の製造方法及び製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0026】
上記目的を達成するために、本発明に係る被加工物のクリーニング方法は、加工孔が形成された被加工物に渦流空気流を吹き付けることで、被加工物の表面及び加工孔の内部の物質を除去することを特徴とする。
【0027】
この被加工物のクリーニング方法によれば、渦流空気流を吹き付けることで被加工物の表面及び加工孔の内部の物質を確実に除去することができる。
【0028】
本発明に係る被加工物のクリーニング方法においては、被加工物の表面に対して30°〜150°の角度で渦流空気流を吹き付けることが好ましい。これによれば、吹付け方向では、渦流空気流によってクリーニングされると共に、吹付け方向の後側には瞬間的に低空圧部が発生するため、吹付け方向の後側では、低空圧部の吸引作用で低空圧部に流れ込む空気流によって加工孔の内部がクリーニングされる。従って、加工孔の内部に空気が流入する機会が増加し、クリーニングの信頼性を向上させることができる。
【0029】
本発明に係る被加工物のクリーニング方法においては、渦流空気流に対して被加工物を相対的に移動させることが好ましい。これによれば、直接吹き付けられる渦流空気流によって加工孔の内部がクリーニングされる効果、及び低空圧部の吸引作用で低空圧部に流れ込む空気流によって加工孔の内部がクリーニングされる効果の両方の効果が奏されるため、クリーニングの生産性を向上させることができる。
【0030】
本発明に係る被加工物のクリーニング方法においては、加工孔は貫通孔であることが好ましい。この場合、渦流ブロー吹付けのスクリュー効果によるクリーニング効果、及び低空圧部の吸引作用にクリーニング効果がより効率的となる。
【0031】
本発明に係る被加工物のクリーニング方法においては、被加工物の表面との距離が10mm以下の位置から渦流空気流を吹き付けることが好ましい。これによれば、スクリュー効果による負圧を確実に発生させることができるため、加工孔の内部のクリーニングの信頼性が向上する。
【0032】
本発明に係る被加工物のクリーニング方法においては、物質は固体の異物である場合がある。この場合、スクリュー効果を用いた空気流での固体異物の除去が可能となるため、貫通孔の仕上がり品質を向上させ、例えば導電性ペーストを充填するための貫通導通孔の形成における信頼性を向上させることができる。
【0033】
本発明に係る被加工物のクリーニング方法においては、物質は液体の異物である場合がある。この場合、貫通孔の内部に詰まった物質が液体や貫通孔が吸湿した水分であっても、液体の除去及び水分を除去乾燥することができる。
【0034】
本発明に係る被加工物のクリーニング方法においては、渦流空気流は圧縮空気であることが好ましい。これによれば、圧縮空気を用いることでスクリュー効果を高めることができる共に、被加工物のクリーニングの生産性を向上させるために、吹き付ける空気流の形状を容易に設定することができる。
【0035】
本発明に係る被加工物のクリーニング方法においては、渦流空気流はイオン化されたものであることが好ましい。これによれば、帯電した被加工物やその加工孔の内部に付着した帯電ダストの静電気を取り除き、付着したダストを、スクリュー効果を有する空気流で確実に除去することができる。
【0036】
また、上記目的を達成するために、本発明に係るプリント配線板の製造方法は、上述した本発明に係る被加工物のクリーニング方法を使用してプリント配線板を製造するプリント配線板の製造方法であって、被加工物は、プリント配線板に用いられる絶縁基材であり、加工孔は、層間導通用貫通孔であることを特徴とする。
【0037】
このプリント配線板の製造方法によれば、加工孔の形成の際に発生するおそれがある貫通孔の内部の加工クズや異物を除去して、導電性ペーストの充填や金属めっき等、導通孔を形成する上での信頼性を向上させることができるため、その結果として、プリント配線板の信頼性を向上させることができる。
【0038】
本発明に係るプリント配線板の製造方法においては、絶縁基材は、接着性を有する樹脂含浸基材である場合がある。この場合、接着性を有する樹脂含浸基材に対する貫通孔の形成の際に、粘着性を有する加工クズが貫通孔の内部に発生しても、有効なクリーニングを行うことができる。
【0039】
本発明に係るプリント配線板の製造方法においては、樹脂含浸基材は、ガラスを含む織布若しくは不織布に熱硬化型樹脂を含浸させたもの、又はポリエチレンテレフタレートフィルム上に熱硬化型樹脂を塗布したものである場合がある。この場合、樹脂含浸基材がレーザ加工による貫通孔の加工性に劣ることから、レーザ加工時の熱によって溶融した熱硬化型樹脂が粘着性を有する加工クズとして貫通孔の内部に残存しても、有効なクリーニングを行うことができる。
【0040】
本発明に係るプリント配線板の製造方法においては、層間導通用貫通孔は、導電性ペーストを充填するためのものであることが好ましい。これによれば、回路基板に対する貫通孔の形成の際に発生するおそれがある貫通孔の内部の加工クズや異物を確実に除去することができるため、導電性ペーストの貫通孔への充填不具合を解消し、安定した導通抵抗を有する導通孔を形成することができる。
【0041】
本発明に係るプリント配線板の製造方法においては、層間導通用貫通孔は、絶縁基材にレーザ光線又は超硬ドリルによって形成されたものであることが好ましい。これによれば、小径の貫通孔の形成に有効なレーザ光線を用いた場合においても、レーザ光線の熱によって溶融した加工クズを確実に除去することができ、小径且つ信頼性の高い導通孔を形成することができる。
【0042】
本発明に係るプリント配線板の製造方法においては、絶縁基材の両面には、略一定の厚さを有する剥離可能な樹脂製フィルムがラミネートされている場合がある。この場合、貫通孔への導電性ペーストの印刷充填の際に印刷マスク及び絶縁基材の表面の汚染防止の役割を有する剥離可能な樹脂製フィルムをラミネートした絶縁基材のレーザ加工による貫通孔の形成において、レーザ光線の熱によって溶融した加工クズや異物が樹脂製フィルム及び絶縁基材から発生しても、溶融した加工クズや異物を確実に除去することができ、信頼性の高い導電性ペーストによる導通孔の形成を行うことができる。
【0043】
本発明に係るプリント配線板の製造方法においては、30m/分以上の流速で渦流空気流を吹き付けることが好ましい。これによれば、剥離可能な樹脂製フィルムをラミネートした絶縁基材に対するレーザ加工による貫通孔の形成において、スクリュー効果を有する渦流高速空気を30m/分以上の流速で樹脂製フィルムの表面や貫通孔の内部に吹き付けることで、レーザ光線の熱によって樹脂製フィルムの表面や貫通孔の内部に発生した加工クズや異物を吹き飛ばし、樹脂製フィルムの表面や貫通孔の内部のクリーニングを確実に行うことができる。
【0044】
本発明に係るプリント配線板の製造方法においては、接着性を有する絶縁基材にレーザ光線又は超硬ドリルによって形成された層間導通用貫通孔に導電性ペーストを充填し、回路パターンが形成された内層用回路基板の両側に絶縁基材及び金属箔を積層して加熱加圧することが好ましい。これによれば、接着性を有し且つ層間導通孔を有する絶縁基材の貫通孔の内部のクリーニングを確実に行うことで、層間導通における空気的信頼性の高い多層プリント配線板を製造することができる。
【0045】
本発明に係るプリント配線板の製造方法においては、内層用回路基板は、別の絶縁基材にレーザ光線又は超硬ドリルによって形成された別の層間導通用貫通孔に導電性ペーストを充填した後、別の絶縁基材の両面に金属箔を積層して加熱加圧し、回路パターンを形成したものであることが好ましい。これによれば、内層回路用基板における導通孔用貫通孔の内部、及び層間導通孔を有する接着性の絶縁基材の貫通孔の内部のクリーニングを確実に行うことで、全層の層間導通における電気的信頼性の高い多層プリント配線板を製造することができる。
【0046】
本発明に係るプリント配線板の製造方法においては、絶縁基材にレーザ光線又は超硬ドリルによって形成された層間導通用貫通孔に導電性ペーストを充填した後、絶縁基材の両面に金属箔を積層して加熱加圧し、回路パターンを形成することで内層用回路基板を作製し、少なくとも2枚の内層用回路基板と、接着性を有する別の絶縁基材とを交互に積層し、最外層に金属箔を積層して加熱加圧することが好ましい。これによれば、少なくとも2枚の内層回路用基板における導通孔用の貫通孔内のクリーニングを確実に行うことで、内層間導通における電気的信頼性の高い6層以上の多層プリント配線板を製造することができる。
【0047】
本発明に係るプリント配線板の製造方法においては、別の絶縁基材は、別の絶縁基材にレーザ光線又は超硬ドリルによって形成された別の層間導通用貫通孔に導電性ペーストを充填したものであることが好ましい。これによれば、少なくとも2枚の内層回路用基板における導通孔用貫通孔の内部、及び層間導通孔を有する接着性の絶縁基材の貫通孔の内部のクリーニングを確実に行うことで、全層の層間導通における電気的信頼性の高い6層以上の多層プリント配線板を製造することができる。
【0048】
また、上記目的を達成するために、本発明に係る被加工物のクリーニング装置は、加工孔が形成された被加工物を搬送する搬送機構と、搬送機構によって搬送される被加工物に渦流空気流を吹き付けるブロー噴射部と、を備え、ブロー噴射部は、渦流空気流の吹出し口を形成する壁部、及び搬送機構の搬送方向における吹出し口の端部を包囲するように壁部に立設された外端部を有することを特徴とする。
【0049】
この被加工物のクリーニング装置によれば、ブロー噴射部の壁部の内壁面上から外端部方向への渦流空気流の噴射によって、スクリュー効果による噴流近傍での除去作用を生じるため、加工孔が形成された被加工物のクリーニング効果を向上させることができる。
【0050】
本発明に係る被加工物のクリーニング装置においては、吹出し口は、搬送方向と略直交する方向に延在するスリット形状であることが好ましい。これによれば、渦流空気流の吹出し速度を増加させ、スクリュー効果を高めると共に、平板上の被加工物の加工孔のクリーニングにおける生産性を高めることができる。
【0051】
本発明に係る被加工物のクリーニング装置においては、ブロー噴射部の上流側には、空気清浄用フィルタが設けられていることが好ましい。これによれば、空気流中の油分や異物が濾過されるため、加工孔が形成された被加工物の汚染を防止することができる。
【0052】
また、上記目的を達成するために、本発明に係るプリント配線板の製造装置は、上述した被加工物のクリーニング装置を具備するプリント配線板の製造装置であって、被加工物は、プリント配線板に用いられる絶縁基材であり、加工孔は、層間導通用貫通孔であって、ブロー噴射部は、搬送機構によるプリント配線板の搬送方向に対して所定の角度で、且つ外端部とプリント配線板とが所定の間隔で渦流空気流を吹き付けることを特徴とする。
【0053】
このプリント配線板の製造装置によれば、多数の貫通孔を有するプリント配線板のクリーニングの生産性を高め、更に、吹き付けた渦流空気流による貫通孔のクリーニング、及びスクリュー効果の除去作用によるクリーニングによって、プリント配線板の生産性を向上させることができる。
【0054】
本発明に係るプリント配線板の製造装置は、渦流空気流をイオン化する空気イオン化装置を備えることが好ましい。これによれば、帯電したプリント配線板やその貫通孔に付着した帯電ダストの静電気を取り除き、付着したダストを、スクリュー効果を有する空気流で確実に除去することができる。
【0055】
本発明に係るプリント配線板の製造装置においては、所定の角度は30°〜150°であることが好ましい。これによれば、吹付け方向に位置する貫通孔は、吹き付けられた渦流空気流によってクリーニングされ、吹付け方向の後側に位置する貫通孔は、スクリュー効果で瞬間的に発生した低空圧部の吸引作用により低空圧部に流れ込む空気流によってクリーニングされる。そのため、貫通孔に空気が流入する機会が増加し、クリーニングの信頼性を向上させることができる。
【0056】
本発明に係るプリント配線板の製造装置においては、所定の間隔は1.0mm〜10.0mmであることが好ましい。これによれば、吹き付けられる空気流の流速が増し、スクリュー効果による低空圧部が確実に発生するため、貫通孔のクリーニングの信頼性を向上させることができる。
【0057】
本発明に係るプリント配線板の製造装置においては、壁部の内壁面は平面且つ鏡面仕上げであることが好ましい。これによれば、吹き付けられる空気流と内壁面との摩擦を最小限にすることで損失を減らし、空気流の吹付け方向に位置する貫通孔のクリーニング効果を高めることができる。
【0058】
本発明に係るプリント配線板の製造装置においては、壁部の内壁面は曲面であることが好ましい。これによれば、スクリュー効果による低空圧部を効率的に発生させ、空気流の吹付け方向の後側に位置する貫通孔のクリーニング効果を高めることができる。
【0059】
本発明に係るプリント配線板の製造装置においては、外端部は、搬送機構の搬送方向における吹出し口の端部を所定の曲率で包囲していることが好ましい。これによれば、空気流の吹付け方向に位置する貫通孔のクリーニング効果を高めることができると共に、空気流の吹付け方向の後側に位置する貫通孔のクリーニング効果を高めることができる。
【0060】
本発明に係るプリント配線板の製造装置においては、搬送機構は、プリント配線板が載置される搬送コンベア、プリント配線板を搬送コンベアに抑える搬送ローラを有することが好ましい。これによれば、スクリュー効果による低空圧部の発生に起因する被加工物の搬送中の浮きや搬送の不具合を防止することができる。
【0061】
本発明に係るプリント配線板の製造装置においては、搬送コンベアは、所定の厚さを有するメッシュベルトであることが好ましい。これによれば、吹出し口から貫通孔へ噴出された空気の流れを円滑にすると共に、スクリュー効果による低空圧部への貫通孔を介した空気の流れを円滑にし、クリーニングの効率を高めることができる。
【発明の効果】
【0062】
本発明によれば、被加工物の表面及び加工孔の内部の物質を確実に除去することができ、更に、プリント配線板の信頼性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0063】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0064】
初めに、被加工物の表面及び加工孔の内部の物質を確実に除去することができる被加工物のクリーニング方法及びクリーニング装置について説明する。図1は、本発明に係る被加工物のクリーニング装置の一実施形態を示す概略図である。
【0065】
図1に示されるように、クリーニング装置100においては、圧縮空気発生装置12で圧縮された空気が、空気清浄用フィルタ18及び空気イオン化装置20を介して、渦流発生装置を有するブロー噴射部7の吹出し口7bから、イオン化された清浄な渦流空気流として噴射され、吹出し口7bを形成する壁部7aの内壁面7c上を経由して外端部7dからプリプレグシート1に吹き付けられる。
【0066】
空気清浄用フィルタ18では空気流中の油分や異物が濾過されるため、プリプレグシート1に形成された貫通孔3の汚染を防止することができる。更に、空気イオン化装置20で空気流がイオン化されるため、プリプレグシート1やその貫通孔3に付着した帯電ダストの静電気を取り除き、付着したダストを除去することができる。
【0067】
渦流発生装置を有するブロー噴射部7aは、水平に搬送されるプリプレグシート1の表面に対して30°〜150°の範囲内の一定の角度で渦流空気流を吹き付けることが可能である。ここでは、プリプレグシート1の表面に対して90°に設定されている。また、ブロー噴射部7aは、外端部7dとプリプレグシート1の表面との間隔が1.0mm〜10.0mmの範囲内の一定の間隔で渦流空気流を吹き付けることが可能である。ここでは、外端部7dとプリプレグシート1の表面との間隔が5.0mmに設定されている。
【0068】
壁部7aの内壁面7cは、所定の長さ及び面積を有している。また、外端部7dは、プリプレグシート1の搬送方向における吹出し口7bの後側端部を包囲するように壁部7aに立設されている。なお、吹出し口7b、内壁面7c及び外端部7dは、同一面上で構成されていてもよい。
【0069】
内壁面7cを平面且つ鏡面仕上げとすれば、渦流空気流と内壁面7cとの流体摩擦の損失を最小限にすることができる。また、外端部7dに一定の曲率を設ければ、渦流空気流の吹付け方向に位置する貫通孔3及び吹付け方向の後側に位置する貫通孔3のクリーニング効果を高めることができる。なお、同様の効果を得るために、壁部7a及び外端部7dを形成する平面を曲面としてもよい。更に、吹出し口7bを、プリプレグシート1の搬送方向と略直交する方向に延在するスリット形状とすれば、渦流空気流の吹出し速度を増加させてスクリュー効果を高め、プリプレグシート1の貫通孔3のクリーニングの生産性を向上させることができる。
【0070】
プリプレグシート1を搬送する搬送機構17には、一定の厚さを有するメッシュベルト17aが用いられている。メッシュベルト17aは、吹出し口7bから貫通孔3に噴出される渦流空気の流れを円滑にすると共に、スクリュー効果による低空圧部への貫通孔を介した空気の流れを円滑にし、クリーニングの効率を高めるためのものである。
【0071】
更に、搬送機構17には、プリプレグシート1をメッシュベルト17aに抑える搬送ローラ16が用いられている。搬送ローラ16は、スクリュー効果による低空圧部の発生に起因する搬送中のプリプレグシート1の浮きや搬送機構17からの脱落を防止するためのものである。
【0072】
以上のように構成されたクリーニング装置100の作用について説明する。図2は、図1に示された被加工物のクリーニング装置の作用を説明するための概略図である。
【0073】
図2(a)に示されるように、被加工物としてのプリプレグシート1が、渦流発生装置を有するブロー噴射部7に対して相対的に移動しており、外端部7dの下方に達する。この時点で、図2(b)に示されるように、圧縮された30m/分以上の流速の渦流空気流13が90°の角度で吹出し口7bからプリプレグシート1の表面及び貫通孔3に噴射される。このとき、外端部7dとプリプレグシート1との間隔を上述した設定とすることで渦流空気流の流速が増す。
【0074】
渦流空気流13がプリプレグシート1の表面及び貫通孔3に噴射されると、吹出し口7bや空気流の方向が変化する外端部7dを通過する空気流の噴流の周りで吸引作用が発生し、相対的に移動するプリプレグシート1の吹付け方向の後側の部分に低空圧部14が発生する。そのため、貫通孔3から低空圧部14に向かって高速の空気流15が生じる。
【0075】
これにより、クリーニング装置100は、直接吹き付けられる渦流空気流13の効果、及びスクリュー効果で発生する低空圧部14の吸引作用により生じる空気流15の効果の2つの効果を有する。この2つの効果は、貫通孔3の内部の異物の除去に対して有効に作用し、更に、クリーニングの生産性を向上することができるものである。
【0076】
次に、プリント配線板の信頼性を向上させることができるプリント配線板の製造方法及び製造装置について説明する。ここでは、両面回路基板の製造と、多層プリント配線板の製造とについて順次説明する。なお、以下に説明するプリント配線板の製造方法及び製造装置は、上述した被加工物のクリーニング方法及びクリーニング装置を使用するものである。
【0077】
初めに、両面回路基板の製造について説明する。図3は、本発明に係るプリント配線板の製造方法の一実施形態である両面回路基板の製造方法の製造工程を示す概略図である。
【0078】
図3において、1は、外形340mm×340mm、厚さ約100μmの絶縁基材としてのプリプレグシートであり、プリプレグシートとしては、例えば、ガラス繊維で構成された織布又は不織布に熱硬化性エポキシ樹脂を含浸させた複合材からなる樹脂含浸基材が用いられる(以下、「エポキシシート」と称する。)。2a,2bは、片面にSi系の離型剤を塗布した厚さ約10μmの剥離可能なプラスチック製フィルムであり、プラスチック製フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレートからなるシート(以下、「PETシート」と称する。)が用いられる。
【0079】
3は、エポキシシート1の両面に貼り付けられる厚さ約35μmの金属箔5a,5bと電気的に接続される導電性ペースト4が充填される貫通孔である。ここで使用した導電性ペースト4は、導電性のフィラーとしての平均粒径2μmのAg粉末、樹脂としての熱硬化型エポキシ樹脂(無溶剤型)、硬化剤としての酸無水物系の硬化剤を、それぞれ85重量%、12.5重量%、2.5重量%の割合で3本ロールにより十分に混練したものであるが、Ag粉末の代わりにAu合金、Cu、Cu合金の粉末を用いてもよい。6は、レーザ加工時に発生した加工粉である。
【0080】
まず、図3(a)に示されるように、両面にPETシート2a,2bが接着されたエポキシシート1を準備する。そして、図3(b)に示されるように、エポキシシート1の所定の箇所に、レーザ加工法等を利用して貫通孔3を形成する。このとき、レーザ加工時に発生した加工粉6がPETシート2a,2bの表面や貫通孔3の内部に付着する。
【0081】
続いて、PETシート2a,2bの表面や貫通孔3の内部に付着した加工粉6を除去するために、図1に示されるクリーニング装置100を用い、渦流発生装置を有するブロー噴射部7の下方を通過するように搬送機構17によってエポキシシート1を搬送する。これにより、図3(c)に示されるように、PETシート2aの表面及び貫通孔3の内部に30m/分以上の流速で渦流空気流13が吹き付けられ、加工粉6が吹き飛ばされてPETシート2a,2bの表面や貫通孔3の内部のクリーニングが確実に行われる。なお、吹き飛ばされた加工粉6はダクト(図示せず)で回収される。
【0082】
より具体的には、図2(b)に示されるように、搬送中に渦流空気流13が直接吹き付けられる吹付け方向の前側では、渦流空気流13がPETシート2aの表面及び貫通孔3の内部を通過し、この作用によって加工粉6等の異物が除去される。一方、吹付け方向の後側では、スクリュー効果によって吹出し口7b周辺の空気を巻き込んで空気流が増幅されて、前側に大量の空気が流れるため、吹出し口7bの後側に低空圧部14が発生して、吹出し口7bの後側に空気流が流れ込む。
【0083】
これらの作用によって、PETシート2a,2bの表面や貫通孔3の内部のクリーニングの効果が得られる。更に、エポキシシート1は、スクリュー効果を用いたブロー噴射部7に吸引されるが、吹き出された空気流層によってブロー噴射部7に常に接触することなく、ブロー噴射部7との距離が保持されるため、汚れのブロー噴射部7への転写がなく、その結果、汚れのエポキシシート1への再転写もなくなり、穴詰まりの発生が抑制される。
【0084】
ここで、渦流空気流の吹付け角度について検討した結果(故意に形成した穴詰まりの穴の確認穴数、クリーニング装置にかけた後の穴詰まりの穴の残存数及び残存率)を表1に示す。なお、表1において、比較例1は、従来のクリーニング装置にかけた場合であり、実施例1,2は、上述したクリーニング装置100にかけた場合である。
【0085】
【表1】

【0086】
表1に示されるように、従来のクリーニング装置にかけた場合に比べ、上述したクリーニング装置100にかけた場合に優位性があり、しかも、吹付け角度を適正化することで更に効果が高くなることが明らかである。また、穴詰まりを故意に形成しない通常の場合、従来のクリーニング装置にかけた場合の貫通孔の穴詰まり発生率は100ppm以下程度であるので、クリーニング装置100にかけた場合において吹付け角度が90°のときは、穴詰まり除去効果が従来のクリーニング装置にかけた場合の100倍得られることから、発生率は1ppm以下になることが予測され、大幅な改善が可能となる。
【0087】
上述したクリーニングの後、図3(d)に示されるように、貫通孔3に導電性ペースト4を充填する。導電性ペースト4を充填する方法としては、貫通孔3を有するアラミド−エポキシシート1を印刷機(図示せず)のテーブル上に設置し、導電性ペースト4をPETシート2aの上から直接印刷する。このとき、上面のPETシート2aは、印刷マスクの役割、及びエポキシシート1の表面の汚染防止の役割を果たしている。
【0088】
続いて、図3(e)に示されるように、エポキシシート1の両面からPETシート2a,2bを剥離する。そして、貫通孔3に導電性ペースト4が充填されたエポキシシート1を乾燥炉で80℃、15分間の条件で乾燥し、プリプレグ内の水分を取り除く。ここではPETシート2a,2bの剥離後に乾燥したが、剥離前に乾燥しても同様に水分を取り除くことができる。
【0089】
続いて、図3(f)に示されるように、Cu等からなる金属箔5a,5bをエポキシシート1の両面に重ね、この状態で熱プレスを用いて加熱加圧する。
これにより、図3(g)に示されるように、エポキシシート1の厚さがt1=約100μmからt2=約80μmに圧縮される。このとき、エポキシシート1と金属箔5a,5bとが接着され、両面の金属箔5a,5bが、所定の位置の貫通孔3に充填された導電性ペースト4によって電気的に接続される。
【0090】
そして、両面の金属箔5a,5bを選択的にエッチングして、回路パターン(図示せず)を形成し、両面回路基板を得る。
【0091】
次に、多層プリント配線板の製造について説明する。図4は、本発明に係るプリント配線板の製造方法の他の実施形態である多層プリント配線板の製造方法の製造工程を示す概略図である。
【0092】
まず、図4(a)に示されるように、図3(a)〜(e)に示される製造工程を経て製造されたエポキシシート1a,1b(貫通孔3に導電性ペースト4が充填されたもの)と、図4(b)に示されるように、図3(a)〜(g)に示される製造工程を経て製造された両面回路基板10(両面に回路パターン11a,11bが形成されたもの)とを準備する。
【0093】
続いて、図4(c)に示されるように、積層プレート9bに、金属箔5b、エポキシシート1b、両面回路基板10、エポキシシート1a、金属箔5a、積層プレート9aの順で位置決めして重ねる。位置決めは、例えば、積層プレート9aに位置決めピン(図示せず)を設けると共に、金属箔5a,5b、エポキシシート1a,1b、両面回路基板10及び積層プレート9bに位置決め孔(図示せず)を設けて、積層金型の位置決めピンを位置決め孔に通すことによって行うことができる。
【0094】
なお、積層金型に位置決めピンを設けずに、金属箔5a,5bと積層プレート9bとの位置決めを、外形のコーナーを合わせることによって行い、エポキシシート1a,1bと両面回路基板10との位置決めを、双方に設けた位置決め孔等を用いた画像認識等を利用することによって行ってもよい。
【0095】
続いて、図4(c)に示される状態で熱プレスを用いて加熱加圧する。これにより、図4(d)に示されるように、アラミド−エポキシシート1a,1bの厚さがt1=約100μmからt2=約80μmに圧縮される。このとき、両面回路基板10とエポキシシート1a,1bと金属箔5a,5bとが接着され、両面の金属箔5a,5bが、所定の位置の貫通孔3に充填された導電性ペースト4によって電気的に接続される。
【0096】
そして、図4(e)に示されるように、両面の金属箔5a,5bを選択的にエッチングして、回路パターン12a,12bを形成し、多層プリント配線板を得る。
【0097】
ここでは、4層の多層プリント配線板について説明したが、4層以上の多層プリント配線板、例えば、6層の多層プリント配線板については、上述した製造方法で得られた4層の多層プリント配線板を両面回路基板の代わりに用いて、多層プリント配線基板の製造方法(図4(a)〜(e))を繰り返せばよい。更に、両面回路基板10を2枚以上用いて、両面回路基板10と、導通孔が形成された接着性を有するエポキシシート1a,1bとを交互に積層し、最外層に金属箔5a,5bを積層した後、加熱圧着することで、6層以上の多層プリント配線板を製造することもできる。
【0098】
以上のように製造された多層プリント配線板においては、導電性ペースト4の充填前に、印刷マスクとなるPETシート2aの表面及び貫通孔3の内部を清浄化することができるため、導電性ペースト4の充填が安定化すると共に、電気特性が安定化する。
【0099】
なお、上記実施形態では、多数の貫通孔を有するプリント配線板の製造方法、及びその製造装置について説明したが、他の被加工物の加工孔に対するクリーニングにおいても、スクリュー効果を有する製造装置を用いて同様の効果が得られることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】本発明に係る被加工物のクリーニング装置の一実施形態を示す概略図である。
【図2】図1に示された被加工物のクリーニング装置の作用を説明するための概略図である。
【図3】本発明に係るプリント配線板の製造方法の一実施形態である両面回路基板の製造方法の製造工程を示す概略図である。
【図4】本発明に係るプリント配線板の製造方法の他の実施形態である多層プリント配線板の製造方法の製造工程を示す概略図である。
【図5】従来の両面回路基板の製造方法の製造工程を示す概略図である。
【図6】従来の多層プリント配線板の製造方法の製造工程を示す概略図である。
【符号の説明】
【0101】
1,1a,1b…プリプレグシート(エポキシシート)、2a,2b…プラスチックフィルム(PETシート)、3…貫通孔、4…導電性ペースト、5a,5b…金属箔、6…加工粉、7…ブロー噴射部、7a…壁部、7b…吹出し口、7c…内壁面、7d…外端部、9a,9b…積層プレート、10…両面回路基板、11a,11b,12a,12b…回路パターン、12…圧縮空気発生装置、13…渦流空気流、14…低空圧部、15…空気流、17…搬送機構、17a…メッシュベルト。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工孔が形成された被加工物に渦流空気流を吹き付けることで、前記被加工物の表面及び前記加工孔の内部の物質を除去することを特徴とする被加工物のクリーニング方法。
【請求項2】
前記被加工物の表面に対して30°〜150°の角度で前記渦流空気流を吹き付けることを特徴とする請求項1記載の被加工物のクリーニング方法。
【請求項3】
前記渦流空気流に対して前記被加工物を相対的に移動させることを特徴とする請求項1又は2記載の被加工物のクリーニング方法。
【請求項4】
前記加工孔は貫通孔であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項記載の被加工物のクリーニング方法。
【請求項5】
前記被加工物の表面との距離が10mm以下の位置から前記渦流空気流を吹き付けることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項記載の被加工物のクリーニング方法。
【請求項6】
前記物質は固体の異物であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項記載の被加工物のクリーニング方法。
【請求項7】
前記物質は液体の異物であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項記載の被加工物のクリーニング方法。
【請求項8】
前記渦流空気流は圧縮空気であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項記載の被加工物のクリーニング方法。
【請求項9】
前記渦流空気流はイオン化されたものであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項記載の被加工物のクリーニング方法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項記載の被加工物のクリーニング方法を使用してプリント配線板を製造するプリント配線板の製造方法であって、
前記被加工物は、前記プリント配線板に用いられる絶縁基材であり、前記加工孔は、層間導通用貫通孔であることを特徴とするプリント配線板の製造方法。
【請求項11】
前記絶縁基材は、接着性を有する樹脂含浸基材であることを特徴とする請求項10記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項12】
前記樹脂含浸基材は、ガラスを含む織布若しくは不織布に熱硬化型樹脂を含浸させたもの、又はポリエチレンテレフタレートフィルム上に熱硬化型樹脂を塗布したものであることを特徴とする請求項11記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項13】
前記層間導通用貫通孔は、導電性ペーストを充填するためのものであることを特徴とする請求項10〜12のいずれか一項記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項14】
前記層間導通用貫通孔は、前記絶縁基材にレーザ光線又は超硬ドリルによって形成されたものであることを特徴とする請求項10〜13のいずれか一項記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項15】
前記絶縁基材の両面には、略一定の厚さを有する剥離可能な樹脂製フィルムがラミネートされていることを特徴とする請求項10〜14のいずれか一項記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項16】
30m/分以上の流速で前記渦流空気流を吹き付けることを特徴とする請求項10〜15のいずれか一項記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項17】
接着性を有する前記絶縁基材にレーザ光線又は超硬ドリルによって形成された前記層間導通用貫通孔に導電性ペーストを充填し、
回路パターンが形成された内層用回路基板の両側に前記絶縁基材及び金属箔を積層して加熱加圧することを特徴とする請求項10〜16のいずれか一項記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項18】
前記内層用回路基板は、別の前記絶縁基材にレーザ光線又は超硬ドリルによって形成された別の前記層間導通用貫通孔に導電性ペーストを充填した後、別の前記絶縁基材の両面に金属箔を積層して加熱加圧し、前記回路パターンを形成したものであることを特徴とする請求項17記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項19】
前記絶縁基材にレーザ光線又は超硬ドリルによって形成された前記層間導通用貫通孔に導電性ペーストを充填した後、前記絶縁基材の両面に金属箔を積層して加熱加圧し、回路パターンを形成することで内層用回路基板を作製し、
少なくとも2枚の前記内層用回路基板と、接着性を有する別の前記絶縁基材とを交互に積層し、最外層に金属箔を積層して加熱加圧することを特徴とする請求項10〜16のいずれか一項記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項20】
別の前記絶縁基材は、別の前記絶縁基材にレーザ光線又は超硬ドリルによって形成された別の前記層間導通用貫通孔に導電性ペーストを充填したものであることを特徴とする請求項19記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項21】
加工孔が形成された被加工物を搬送する搬送機構と、
前記搬送機構によって搬送される前記被加工物に渦流空気流を吹き付けるブロー噴射部と、を備え、
前記ブロー噴射部は、前記渦流空気流の吹出し口を形成する壁部、及び前記搬送機構の搬送方向における前記吹出し口の端部を包囲するように前記壁部に立設された外端部を有することを特徴とする被加工物のクリーニング装置。
【請求項22】
前記吹出し口は、前記搬送方向と略直交する方向に延在するスリット形状であることを特徴とする請求項21記載の被加工物のクリーニング装置。
【請求項23】
前記ブロー噴射部の上流側には、空気清浄用フィルタが設けられていることを特徴とする請求項21又は22記載の被加工物のクリーニング装置。
【請求項24】
請求項21〜23のいずれか一項記載の被加工物のクリーニング装置を具備するプリント配線板の製造装置であって、
前記被加工物は、プリント配線板に用いられる絶縁基材であり、前記加工孔は、層間導通用貫通孔であって、
前記ブロー噴射部は、前記搬送機構による前記プリント配線板の搬送方向に対して所定の角度で、且つ前記外端部と前記プリント配線板とが所定の間隔で前記渦流空気流を吹き付けることを特徴とするプリント配線板の製造装置。
【請求項25】
前記渦流空気流をイオン化する空気イオン化装置を備えることを特徴とする請求項24記載のプリント配線板の製造装置。
【請求項26】
前記所定の角度は30°〜150°であることを特徴とする請求項24又は25記載のプリント配線板の製造装置。
【請求項27】
前記所定の間隔は1.0mm〜10.0mmであることを特徴とする請求項24〜26のいずれか一項記載のプリント配線板の製造装置。
【請求項28】
前記壁部の内壁面は平面且つ鏡面仕上げであることを特徴とする請求項24〜27のいずれか一項記載のプリント配線板の製造装置。
【請求項29】
前記壁部の内壁面は曲面であることを特徴とする請求項24〜27のいずれか一項記載のプリント配線板の製造装置。
【請求項30】
前記外端部は、前記搬送機構の搬送方向における前記吹出し口の端部を所定の曲率で包囲していることを特徴とする請求項24〜29のいずれか一項記載のプリント配線板の製造装置。
【請求項31】
前記搬送機構は、前記プリント配線板が載置される搬送コンベア、前記プリント配線板を搬送コンベアに抑える搬送ローラを有することを特徴とする請求項24〜30のいずれか一項記載のプリント配線板の製造装置。
【請求項32】
前記搬送コンベアは、所定の厚さを有するメッシュベルトであることを特徴とする請求項31記載のプリント配線板の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−294938(P2007−294938A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−88578(P2007−88578)
【出願日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】