説明

裏面照射型撮像素子及び距離測定装置

【課題】距離算出時間を短縮することが可能な裏面照射型撮像素子を提供
【解決手段】一定周期で強度変調された照射光による対象物8からの反射光をp基板24の裏面側から受光し、反射光に応じてp基板24内の複数の光電変換部で発生して蓄積された電荷をp基板24の表面側から読み出して撮像を行う裏面照射型撮像素子であって、1つの光電変換部に対応して4つ設けられ、対応する光電変換部で発生して蓄積された電荷を一時的に蓄積するための電荷蓄積部15a〜15dと、p基板24の表面上方に設けられ、1つの光電変換部に対応する電荷蓄積部15a〜15dの各々に、該光電変換部に蓄積される電荷のうち反射光の該各々に対応する位相における光に応じた電荷を蓄積させる制御を行う電極20と、p基板24の表面上方に設けられ裏面照射型撮像素子が形成されたチップとは別のチップと電荷蓄積部15a〜15dとを接続するためのチップ間接続用電極21とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一定周期で強度変調されて対象物に照射された照射光の前記対象物からの反射光を半導体基板の裏面側から受光し、前記反射光に応じて前記半導体基板内の複数の光電変換部で発生して蓄積された電荷を、前記半導体基板の表面側から読み出して撮像を行う裏面照射型撮像素子に関する。
【背景技術】
【0002】
強度変調した光を発光源から空間に照射し、この空間に存在する物体により反射された反射光を光電変換部で受光し、発光源から照射した光と光電変換部で受光した光との時間差関係に基づいて、空間にある物体の距離情報を検出する技術がある。このような技術は、光子の飛行時間を求めることになることからTime of Flight(TOF)法もしくは飛行時間法と呼ばれている。
【0003】
このための受光用撮像素子として、二次元撮像素子を用いた技術の研究が行われ、二次元状に配列された画素毎に距離情報を持つ距離画像を高速撮像することを可能にする技術が開発されている。強度変調の方式としては、パルス光をもちいるものと連続波光を用いるものとがある。前者はパルス光変調TOF方式と呼ばれ、後者は連続波変調TOF方式と呼ばれる。
【0004】
TOF法は、対象空間の物体距離を一括計測して距離画像を撮像し、高速で物体を認識することが必要な分野で利用される。例えば、駅改札の人の通行量計測やエレベータ内の人物認識や車両内のエアバック制御用の計測等である。その他にも、物体や人物を高速に識別する必要がある移動ロボットの視覚にも有望な技術である。
【0005】
特許文献1には、多数の画素毎に、1個の光電変換部と、ここで発生する電荷を異なるタイミングで蓄積する4つの電荷蓄積部とを設け、各画素の電荷蓄積部に蓄積された電荷に応じた信号を読み出した後、読み出した信号に基づいて照射光と反射光の位相差を求め、この位相差を用いて物体までの距離を算出する装置が開示されている。
【0006】
この装置では、画素をアレイ状に配列し、各画素において反射光の4点の異なる位相でそれぞれ蓄積された電荷量(a,a1,2,)から式(2)により照射光と反射光の位相差φを求め、更に、光速cと照射光変調周波数fとから、物体までの距離Dを下記式(1)にしたがって求めている。
【0007】


・・・(1)
ここで、


・・・(2)
【0008】
TOF法において距離算出までの時間を短縮するには、各画素の光電変換部の開口率を大きくして感度を向上させる、画素毎に位相差を演算する回路を独立して設け、各画素からの信号を並列に処理することで演算時間を短縮する等の方法が有効と考えられる。
【0009】
しかし、特許文献1に開示された装置では、各画素に4つの電荷蓄積部を設ける必要があるため、光電変換部の開口率を大きくすることができない。特許文献2には電荷蓄積部を減らした構成が開示されており、特許文献3には電荷蓄積部を新たに設けない構成が開示されており、これらの構成を採用すれば、開口率を上げることは可能である。しかし、いずれの構成においても、撮像素子1つに対して演算回路が1つしか設けられていないため、演算時間は依然として長くなってしまう。
【0010】
この演算時間を短縮するには、上述したように、画素毎に位相差を演算する回路を独立して設けることが有効となるが、画素毎に演算回路を独立して設けるには、撮像素子チップにそれだけのスペースが必要となり、結果、光電変換部の開口率を大きくすることが難しくなってしまう。
【0011】
演算回路を別チップとすれば、撮像素子チップの設計自由度を向上させることができるが、この場合でも、撮像素子チップ側に、演算回路を形成したチップと電気的接続を取るための電極を設けるスペースを確保する必要があり、光電変換部の開口率を大きくすることが難しい。
【0012】
【特許文献1】特表平10−508736号公報
【特許文献2】特表2003−532122号公報
【特許文献3】特開2006−84429号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、光電変換部の開口率を向上し且つ距離算出のための演算時間を短縮することが可能な距離測定装置とそれに用いる裏面照射型撮像素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の裏面照射型撮像素子は、一定周期で強度変調されて対象物に照射された照射光の前記対象物からの反射光を半導体基板の裏面側から受光し、前記反射光に応じて前記半導体基板内の複数の光電変換部で発生して蓄積された電荷を、前記半導体基板の表面側から読み出して撮像を行う裏面照射型撮像素子であって、前記複数の光電変換部の各々に対応してその近傍に少なくとも4つ設けられ、対応する前記光電変換部で発生して蓄積された電荷を一時的に蓄積するための電荷蓄積部と、前記半導体基板の表面上方に設けられ、1つの前記光電変換部に対応する前記少なくとも4つの電荷蓄積部の各々に、該光電変換部に蓄積される電荷のうち前記反射光の前記各々に対応する位相における光に応じた電荷を蓄積させる制御を行う制御手段と、前記半導体基板の表面上方に設けられ、前記裏面照射型撮像素子が形成された第一のチップとは別の第二のチップと前記電荷蓄積部とを電気的に接続するためのチップ間接続用電極とを備える。
【0015】
本発明の距離測定装置は、前記裏面照射型撮像素子と、前記照射光を対象空間に照射する光源と、前記第二のチップとを備え、前記第二のチップには、前記複数の光電変換部毎に、前記光電変換部に対応する前記少なくとも4つの電荷蓄積部に蓄積された電荷をそれぞれ信号電圧に変換する電圧変換手段と、前記信号電圧に基づいて前記照射光と前記反射光の位相差を演算する位相差演算手段とが形成されている。
【0016】
本発明の距離測定装置は、前記電圧変換手段が、前記光電変換部に対応する前記少なくとも4つの電荷蓄積部の各々に蓄積された電荷に応じた前記信号電圧を、同一の出力先にタイミングをずらして出力するものであり、前記位相差演算手段が、時間毎に変化する基準電圧の変化開始時点から、前記基準電圧が前記電圧変換手段から出力される信号電圧と同一になるまでの時間をカウントするカウント手段と、前記カウント手段によってカウントされた時間を用いて前記照射光と前記反射光の位相差を演算する演算手段とを含む。
【0017】
本発明の距離測定装置は、前記位相差演算手段によって演算された前記位相差を用いて前記対象物までの距離を算出する距離算出手段を備える。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、光電変換部の開口率を向上し且つ距離算出のための演算時間を短縮することが可能な距離測定装置とそれに用いる裏面照射型撮像素子を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施形態である距離測定装置の概略構成を示す図である。
図1に示す距離測定装置1は、変調光源部2と、光源制御部3と、復調受光部4と、駆動部5と、信号処理部6と、システム制御部7とを備える。
【0020】
変調光源部2は、一定周期(周波数f)で強度変調した光を対象物8に照射する光源で構成される。変調光源部2から照射される光を以下では照射光という。
【0021】
光源制御部3は、変調光源部2を制御して照射光の照射、非照射を切り替える。
【0022】
復調受光部4は、照射光によって対象物8で反射した反射光を受光し、この反射光のそれぞれ異なる4つの位相における光を検出する。
【0023】
信号処理部6は、復調受光部4で検出された各位相における光に基づいて照射光と反射光の位相差φを算出し、この位相差φと上記式(1)とから、距離測定装置1から対象物8までの距離Dを算出する。信号処理部6は、例えば所定のプログラムを実行するプロセッサにより構成される。
【0024】
駆動部5は、復調受光部4を駆動するドライバである。
【0025】
システム制御部7は、光源制御部3、駆動部5、及び信号処理部6を制御して、システム全体を統括制御する。
【0026】
図2は、照射光と反射光の位相差φから対象物8までの距離Dを求める原理を説明するための図である。
まず、反射光を照射光の変調周期の位相90°毎にサンプリングする。例えば図2(a)に示したような4つの位相(i1,i2,i3,i4)で光をサンプリングすると、照射光の周期T毎に4つの光量データ(a,a1,2,)を取得することができる。この4つの光量データの所定時間での累積値を求め、この累積値を式(2)に代入することで位相差φを求めることができ、式(1)に位相差φを代入することで距離Dを求めることができる。
【0027】
復調受光部4は、反射光を照射光の変調周期の位相90°毎にサンプリングするために、図3に示した構成の画素を二次元状に複数配列した裏面照射型撮像素子で構成されている。
【0028】
図3は、図1に示す復調受光部を構成する裏面照射型撮像素子の1画素の平面模式図である。図4は、図3に示すA−A線断面模式図である。
図3に示す裏面照射型撮像素子は、p型のシリコン層9(以下、p層9という)とp層9よりも不純物濃度の高いp型のシリコン層10(以下、p++層10という)とからなるp型の半導体基板24(以下、p基板24という)を備える。この裏面照射型撮像素子は、図4中の下方から上方に向かって光を入射させて撮像を行うものである。本明細書では、p基板24の光入射方向に対して垂直な2つの面のうち、光入射側の面を裏面といい、その反対面を表面という。又、裏面照射型撮像素子を構成する各構成要素を基準にしたときに、入射光が進む方向を、その構成要素の上方と定義し、入射光が進む方向の反対方向を、その構成要素の下方と定義する。又、p基板24の裏面及び表面に直交する方向を垂直方向、p基板24の裏面及び表面に平行な方向を水平方向と定義する。
【0029】
p層9内のp基板24表面近傍には、入射光に応じてp基板24内で発生した電荷を蓄積するためのn型の不純物拡散層22(以下、n層22という)が形成されている。n層22は、p基板24の表面側に形成されたn型の不純物拡散層22aと、n型の不純物拡散層22aの下に形成されたn型の不純物拡散層22aよりも不純物濃度の高いn型の不純物拡散層22bとの2層構造となっているが、これに限らない。n層22で発生した電荷と、このn層22に入射する光の経路上でp基板24内に発生した電荷とが、n層22に蓄積される。
【0030】
p層9の表面部には、p基板24表面に発生する暗電荷がn層22に蓄積されるのを防ぐための高濃度のp型の不純物拡散層13(以下、p層13という)が形成されている。p層13内部には、n層22の上に、p基板24の表面からその内側に向かってp層13よりも高濃度のp型の不純物拡散層16(以下、p+層16という)が形成されている。p+層16内には、その表面から内側に、n層22よりも高濃度のn型の不純物拡散層17(以下、n++層17という)が形成されている。n++層17は、n層22に蓄積される不要な電荷を排出するためのオーバーフロードレインとして機能し、p+層16が、このオーバーフロードレインのオーバーフローバリアとして機能する。n++層17は、p基板24の表面に露出する露出面を有している。
【0031】
n層22の周囲には、このn層22に対応させて4つの電荷蓄積部(15a,15b,15c,15d)が形成されている。なお、各電荷蓄積部の配置は任意である。電荷蓄積部15a,15b,15c,15dは、それぞれp層13内のn層22に近接する位置に形成されている。
【0032】
n層22と電荷蓄積部15a,15b,15c,15dの各々との間のp層13及びp層9には、n層22に蓄積された電荷を該各々の電荷蓄積部に転送するための電荷転送領域(図示せず)が形成されている。該電荷蓄積部とそこに隣接する電荷転送領域の上方には、該電荷転送領域に電圧を供給してn層22から該電荷蓄積部への電荷転送動作を制御するためのポリシリコン等からなる電極20が形成されている。電極20の周囲には酸化シリコン等の絶縁膜21が形成されている。
【0033】
電荷蓄積部15a,15b,15c,15dの各々の上にある電極20は駆動部5によって制御される。この電極20に駆動部5から電圧が印加されると、その電極20下方の電荷転送領域を介して、その電極20下方の電荷蓄積部にn層22に蓄積されていた電荷が転送される。駆動部5は、1画素内の4つの電極20に、それぞれ異なるタイミング(照射光の変調周期の位相90°毎のタイミング)で電圧を印加していくことで、各電荷蓄積部に、反射光を照射光の変調周期の位相90°毎にサンプリングした光に相当する電荷を蓄積させる。
【0034】
具体的には、駆動部5が、照射光の変調周波数によって決まる周期T(1/f)の1/4毎に、電圧を印加する電極20を変更する。この変更の順序は、電荷蓄積部15a上の電極20、電荷蓄積部15b上の電極20、電荷蓄積部15c上の電極20、電荷蓄積部15d上の電極20の順である。
【0035】
このような駆動により、電荷蓄積部15aには、図2(b)に示したサンプルデータaに対応する電荷A0が蓄積され、電荷蓄積部15bには、図2(b)に示したサンプルデータaに対応する電荷A1が蓄積され、電荷蓄積部15cには、図2(b)に示したサンプルデータaに対応する電荷A2が蓄積され、電荷蓄積部15dには、図2(b)に示したサンプルデータaに対応する電荷A3が蓄積される。
【0036】
隣接する画素間には、p層13の下にp型不純物拡散層からなる素子分離層14が形成されている。素子分離層14は、n層22に蓄積されるべき電荷が、その隣の画素のn層22に漏れてしまうのを防ぐためのものである。
【0037】
p基板24の表面上には絶縁膜21が形成され、この上には絶縁膜23が形成されている。絶縁膜21及び絶縁膜23には、n++層17の露出面上に、平面視においてその露出面と同じかそれよりも小さい面積のコンタクトホールが形成され、このコンタクトホール内に電極18が形成されている。
【0038】
電極18は、導電性材料であればよく、特に、W(タングステン)、Ti(チタン)、又はMo(モリブデン)等の金属材料、或いは、これらとのシリサイド等で構成されることが好ましい。
【0039】
絶縁膜23上には電極19が形成され、電極19は電極18と接続される。電極19は、導電性材料であれば良い。電極19には端子が接続され、この端子に、所定の電圧を印加できるようになっている。
【0040】
p+層16を越えてn++層17に移動した電荷は、n++層17の露出面に接続された電極18とこれに接続された電極19に移動するため、これにより、n++層17をオーバーフロードレインとして機能させることができる。
【0041】
p基板24の裏面から内側には、p基板24の裏面で発生する暗電荷がn層22に移動するのを防ぐために、p++層10が形成されている。p++層10には端子が接続され、この端子に所定の電圧が印加できるようになっている。p++層10の濃度は、例えば1×1017/cm〜1×1020/cmである。
【0042】
p++層10の下には、酸化シリコンや窒化シリコン等の入射光に対して透明な絶縁層11が形成されている。絶縁層11の下には、絶縁層11とp基板24との屈折率差に起因するp基板24の裏面での光の反射を防止するために、窒化シリコンやダイヤモンド構造炭素膜等の入射光に対して透明な反射防止膜12が形成されている。反射防止膜12としては、プラズマCVDや光CVD等の400℃以下の低温形成が可能なアモルファス窒化シリコン等のn=1.46を超える屈折率の層とすることが好ましい。
【0043】
p層13の下面からp基板裏面までの領域とn層22を含む領域のうち、平面視において素子分離層14で区画された領域が、撮像に寄与する光電変換を行う部分のため、この部分を以下では光電変換部という。光電変換部で発生した電荷はn層22に蓄積される。
【0044】
図3及び図4に示した構成要素は、全て同一チップ(以下、第一チップという)上に形成されている。本実施形態の距離測定装置には、第一チップの他に、第二チップも搭載されており、この第二チップが第一チップの電荷蓄積部15a,15b,15c,15dの各々と電気的に接続された構成となっている。第一チップには、図3に示すように、第二チップとの電気的接続をとるためのチップ間接続用電極21が設けられている。チップ間接続用電極21は、電荷蓄積部15a,15b,15c,15dの各々に対応してp基板24表面上に設けられ、対応する電荷蓄積部に電気的に接続されている。
【0045】
以下、第二チップの構成について説明する。
図5は、第二チップに形成された素子の概略構成を示す図である。
図5に示す第二チップ30には、画素毎に、電荷蓄積部15aに蓄積された電荷をその電荷量に応じた信号電圧に変換する変換トランジスタ31と、電荷蓄積部15bに蓄積された電荷をその電荷量に応じた信号電圧に変換する変換トランジスタ32と、電荷蓄積部15cに蓄積された電荷をその電荷量に応じた信号電圧に変換する変換トランジスタ33と、電荷蓄積部15dに蓄積された電荷をその電荷量に応じた信号電圧に変換する変換トランジスタ34と、比較器35と、アップ/ダウンカウンター36と、位相演算部37とが形成されている。更に、第二チップ30には、全画素共通に1つの距離算出部38が形成されている。
【0046】
変換トランジスタ31は、その入力端子がチップ間接続用電極21を介して電荷蓄積部15aに接続され、その出力端子が比較器35の第一の入力端子に接続されている。変換トランジスタ32は、その入力端子がチップ間接続用電極21を介して電荷蓄積部15bに接続され、その出力端子が比較器35の第一の入力端子に接続されている。変換トランジスタ33は、その入力端子がチップ間接続用電極21を介して電荷蓄積部15cに接続され、その出力端子が比較器35の第一の入力端子に接続されている。変換トランジスタ34は、その入力端子がチップ間接続用電極21を介して電荷蓄積部15dに接続され、その出力端子が比較器35の第一の入力端子に接続されている。
【0047】
変換トランジスタ31〜34の各々のゲートには選択信号線が接続されている。変換トランジスタ31〜34は、それぞれ、ゲートに選択信号が入力されると電荷電圧変換動作を実行して、信号電圧を出力する。選択信号はシステム制御部7によって制御されており、変換トランジスタ31、変換トランジスタ33、変換トランジスタ32、変換トランジスタ34の順番で選択信号の入力先が切り替わるようになっている。
【0048】
比較器35は、時間毎に変化する(基準値から所定レベルずつ減少する)基準電圧であるランプ電圧と、変換トランジスタ31〜34からの出力電圧とを比較し、双方が一致したときに、アップ/ダウンカウンター36にカウント停止信号を出力する。ランプ電圧は、システム制御部7の制御により、比較器35の第二の入力端子に入力される。
【0049】
アップ/ダウンカウンター36は、システム制御部7から供給されるカウンタークロックとアップ/ダウン切り替えクロックとカウント停止信号とによって動作する。アップ/ダウンカウンター36は、ランプ電圧の変化開始と共にカウントを開始し、比較器35からカウント停止信号が入力された時点でカウントを停止する。カウンタークロックの入力開始タイミングとランプ電圧の変化開始タイミングとは同期しているため、カウンタークロックの入力の開始タイミングを検出することにより、ランプ電圧の変化開始タイミングを判断することができる。
【0050】
アップ/ダウン切り替え信号は、変換トランジスタ31から信号電圧が出力されている期間(A0データ出力期間)と変換トランジスタ32から信号電圧が出力されている期間(A1データ出力期間)にはローレベルとなり、変換トランジスタ33から信号電圧が出力されている期間(A2データ出力期間)と変換トランジスタ34から信号電圧が出力されている期間(A3データ出力期間)にはハイレベルとなる信号である。アップ/ダウンカウンター36は、アップ/ダウン切り替え信号がローレベルになり且つカウンタークロックが入力されると、カウント数を0からマイナス方向にカウントし、アップ/ダウン切り替え信号がハイレベルになり且つカウンタークロックが入力されると、カウント数を、直前にカウントした値からプラス方向に増やしてカウントする。
【0051】
これにより、アップ/ダウンカウンター36からは、A2データ出力期間が終了した時点で、電荷A2に応じた信号電圧に対応するカウント数から、電荷A0に応じた信号電圧に対応するカウント数を減算した値、即ち、式(2)の(a−a)に相当するデータが出力されることになる。又、A3データ出力期間が終了した時点で、電荷A3に応じた信号電圧に対応するカウント数から、電荷A1に応じた信号電圧に対応するカウント数を減算した値、即ち、式(2)の(a−a)に相当するデータが出力されることになる。
【0052】
位相演算部37は、A2データ出力期間が終了した時点でアップ/ダウンカウンター36から出力されたデータを、式(2)の(a−a)の項に代入し、A3データ出力期間が終了した時点でアップ/ダウンカウンター36から出力されたデータを、式(2)の(a−a)の項に代入して、位相差φを算出する。
【0053】
距離算出部38は、位相演算部37で算出された位相差φと式(1)とから、距離Dを算出し、距離画像を生成する。
【0054】
以下では、上述した構成の距離測定装置の動作を説明する。
図6は、比較器とアップ/ダウンカウンターの動作を説明するためのタイミングチャートである。
まず、変換トランジスタ31が選択され、電荷蓄積部15aに蓄積されている電荷A0が信号電圧A0’に変換されてA0データ出力期間が開始される。A0データ出力期間が開始されると、アップ/ダウン切り替え信号がローレベルとなり、その後、ランプ電圧の変化が開始すると共に、カウンタークロックの入力が開始される。又、カウンタークロックの入力開始と共に、カウント値“0”からマイナス方向にカウントが開始される。ランプ電圧と信号電圧A0’とが一致すると、カウントが停止される。このときのカウント値を例えば“−m”とする。
【0055】
次に、変換トランジスタ33が選択され、電荷蓄積部15cに蓄積されている電荷A2が信号電圧A2’に変換されてA2データ出力期間が開始される。A2データ出力期間が開始されると、アップ/ダウン切り替え信号がハイレベルとなり、その後、ランプ電圧の変化が開始すると共に、カウンタークロックの入力が開始される。又、カウンタークロックの入力開始と共に、カウント値“−m”からプラス方向にカウントが開始される。ランプ電圧と信号電圧A2’とが一致すると、カウントが停止され、このときのカウント値が位相演算部37に出力される。
【0056】
次に、変換トランジスタ32が選択され、電荷蓄積部15bに蓄積されている電荷A1が信号電圧A1’に変換されてA1データ出力期間が開始される。A1データ出力期間が開始されると、アップ/ダウン切り替え信号がローレベルとなり、その後、ランプ電圧の変化が開始すると共に、カウンタークロックの入力が開始される。又、カウンタークロックの入力開始と共に、カウント値“0”からマイナス方向にカウントが開始される。ランプ電圧と信号電圧A1’とが一致すると、カウントが停止される。このときのカウント値を例えば“−n”とする
【0057】
次に、変換トランジスタ34が選択され、電荷蓄積部15dに蓄積されている電荷A3が信号電圧A3’に変換されてA3データ出力期間が開始される。A3データ出力期間が開始されると、アップ/ダウン切り替え信号がハイレベルとなり、その後、ランプ電圧の変化が開始すると共に、カウンタークロックの入力が開始される。又、カウンタークロックの入力開始と共に、カウント値“−n”からプラス方向にカウントが開始される。ランプ電圧と信号電圧A3’とが一致すると、カウントが停止され、このときのカウント値が位相演算部37に出力される。
【0058】
A3データ出力期間が終了すると、位相差φが算出され、これに基づいて距離Dが算出され、距離画像が生成される。
【0059】
以上のように、本実施形態の距離測定装置によれば、位相差φを演算するために必要なデータを出力する変換トランジスタ31〜34と、位相差φを演算するための手段(比較器35、アップ/ダウンカウンター36、及び位相演算部37)とが画素毎に設けられているため、位相差φの演算を全画素で並列に実施することができる。このため、位相差φの演算を行う手段を全画素で1つしか持たない構成に比べて、距離Dを算出して距離画像を生成するまでの時間を全画素数分の1まで短縮することが可能となる。距離画像生成までの演算時間の短縮により、高解像度化が容易となり、センサ採用分野を拡大することができる。位相差φを演算するための手段として、位相演算に最適なアナログ・デジタル変換回路を採用することで、高解像度化に対応可能となる。
【0060】
又、位相差φを演算するための手段を、復調受光部4を形成した第一チップとは別の第二チップに設けて、第一のチップと第二のチップを接続する構成を採用しているため、第一チップに形成する固体撮像素子の設計自由度を向上させることができる。ただし、第一のチップには、第二のチップと電気的に接続するためのチップ間接続用電極21を設けておく必要がある。このため、第一チップに形成する固体撮像素子として従来の単板式固体撮像素子を用いた場合には、チップ間接続用電極21を配置するためのスペースを確保することによってフォトダイオードの開口率が小さくなってしまい、感度が低下して、結果的に、距離Dの演算速度が落ちてしまう。
【0061】
本実施形態の距離測定装置では、第一チップに形成する固体撮像素子として裏面照射型撮像素子を採用しているため、p基板24の裏面側にチップ間接続用電極21を配置するスペースが十分に確保されており、光電変換部の開口が小さくなることはない。したがって、感度低下による演算時間の増大を防ぐことができる。
【0062】
又、本実施形態の距離測定装置によれば、簡素な二値比較器とアップ/ダウンカウンターで4つのデータのアナログ/デジタル変換と差分演算が可能となるため、第二チップに形成する素子の回路規模、回路サイズを縮小することができる。この結果、低消費電力と高速性といった特性を併せ持つ距離測定装置を実現することができる。
【0063】
尚、以上の説明では、n層22に対応させて4つの電荷蓄積部15a〜15dを設けるものとしているが、電荷蓄積部の数は最低4つあれば良く、5つ以上設けてあっても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の実施形態である距離測定装置の概略構成を示す図
【図2】照射光と反射光の位相差φから対象物8までの距離Dを求める方法を説明するための図
【図3】図1に示す復調受光部を構成する裏面照射型撮像素子の1画素の平面模式図
【図4】図3に示すA−A線断面模式図
【図5】第二チップに形成された素子の概略構成を示す図
【図6】比較器とアップ/ダウンカウンターの動作を説明するためのタイミングチャート
【符号の説明】
【0065】
8 対象物
15a〜15d 電荷蓄積部
20 電極
21 チップ間接続用電極
24 p基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一定周期で強度変調されて対象物に照射された照射光の前記対象物からの反射光を半導体基板の裏面側から受光し、前記反射光に応じて前記半導体基板内の複数の光電変換部で発生して蓄積された電荷を、前記半導体基板の表面側から読み出して撮像を行う裏面照射型撮像素子であって、
前記複数の光電変換部の各々に対応してその近傍に少なくとも4つ設けられ、対応する前記光電変換部で発生して蓄積された電荷を一時的に蓄積するための電荷蓄積部と、
前記半導体基板の表面上方に設けられ、1つの前記光電変換部に対応する前記少なくとも4つの電荷蓄積部の各々に、該光電変換部に蓄積される電荷のうち前記反射光の前記各々に対応する位相における光に応じた電荷を蓄積させる制御を行う制御手段と、
前記半導体基板の表面上方に設けられ、前記裏面照射型撮像素子が形成された第一のチップとは別の第二のチップと前記電荷蓄積部とを電気的に接続するためのチップ間接続用電極とを備える裏面照射型撮像素子。
【請求項2】
請求項1記載の裏面照射型撮像素子と、
前記照射光を対象空間に照射する光源と、
前記第二のチップとを備え、
前記第二のチップには、前記複数の光電変換部毎に、前記光電変換部に対応する前記少なくとも4つの電荷蓄積部に蓄積された電荷をそれぞれ信号電圧に変換する電圧変換手段と、前記信号電圧に基づいて前記照射光と前記反射光の位相差を演算する位相差演算手段とが形成されている距離測定装置。
【請求項3】
請求項2記載の距離測定装置であって、
前記電圧変換手段が、前記光電変換部に対応する前記少なくとも4つの電荷蓄積部の各々に蓄積された電荷に応じた前記信号電圧を、同一の出力先にタイミングをずらして出力するものであり、
前記位相差演算手段が、時間毎に変化する基準電圧の変化開始時点から、前記基準電圧が前記電圧変換手段から出力される信号電圧と同一になるまでの時間をカウントするカウント手段と、前記カウント手段によってカウントされた時間を用いて前記照射光と前記反射光の位相差を演算する演算手段とを含む距離測定装置。
【請求項4】
請求項2又は3記載の距離測定装置であって、
前記位相差演算手段によって演算された前記位相差を用いて前記対象物までの距離を算出する距離算出手段を備える距離測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−180659(P2009−180659A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−21201(P2008−21201)
【出願日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】