説明

補強ホース

エラストマー材料及び織物補強材を包含し、その際、該織物補強材が、本質的に、脂肪族ポリアミドの群から選択された繊維から成るホースにおいて、該繊維の熱風収縮率が2.5%より小さいことを特徴とするホース。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の詳細な説明:
本発明は、エラストマー材料と織物補強材とからのホースに関し、且つ殊にポリアミド繊維を基礎とする織物補強材を扱う。
【0002】
そのようなホースは、特に冷却システムにおける使用のために適している。最新の水冷−又は液冷エンジンにおいて、冷却システムは可撓性材料からの補強ホースを有し、該ホースによって液体が冷却器にも冷却器からも循環される。
【0003】
文献DE2063641は、好ましくは、処理されたポリエステル−又はナイロン織布からの唯一の層によって補強されている補強ホースを開示している。
【0004】
今日、アラミド繊維がこの適用のために使用される。しかしながら、ポリエステル繊維からの又はアラミド繊維からのホース補強材は、高められたクーラント運転温度での加水分解に対して僅かな耐性しか有さない。
【0005】
しかしながら、織物補強材の良好な耐加水分解性は、比較的壁が薄いホースを製造するための前提条件である。なぜなら、そのようなホースの場合、水は補強材料にまでより拡散し易く、且つ補強材の安定性が減少することがあり得るからである。
【0006】
脂肪族ポリアミドからの繊維を基礎とする織物補強材を有するホースは、アラミド又はポリエステルと比べて加水分解に対するより良好な耐性を供与する。しかし、脂肪族ポリアミドからの繊維を基礎とする織物補強材を有するこれらのホースは、斑のある、もしくは不均一な表面を有する。
【0007】
脂肪族ポリアミドの群には、例えば、当業者にナイロンの名称で公知であるポリマーが属しており、該ポリマーには、殊にポリアミド6、ポリアミド6.6又はポリアミド4.6も含まれる。
【0008】
それゆえ本発明の課題は、従来技術の欠点を少なくとも軽減している、織物補強材を有するホースを提供することである。殊にホースは、良好な耐加水分解性と、同時に、より平滑な、より均一な表面を有しているべきである。
【0009】
この課題は、エラストマー材料及び織物補強材を包含し、その際、該織物補強材が、本質的に、脂肪族ポリアミドの群から選択された繊維から本質的に成るホースにおいて、使用される繊維の熱風収縮率(Heissluftschrumpf)が、DIN53866に従って180℃、2分間及び5mN/texの予張力にて測定して、2.5%より小さいことを特徴とするホースによって解決される。
【0010】
繊維との用語は、1本以上のフィラメントからの線状の形成物を包含し、その際、該フィラメントは、連続フィラメントとして又は短繊維として存在してよい。複数の連続フィラメントからの線状の形成物は、マルチフィラメント糸及びモノフィラメント糸としての1本の連続フィラメントからの線状の形成物とも称される。
【0011】
本質的に、脂肪族ポリアミドの群から選択された繊維から成る織物補強材とは、少なくとも大部分が、脂肪族ポリアミドの群から選択された繊維から成る織物補強材と解される。有利には、織物補強材は、少なくとも60質量%が脂肪族ポリアミドの群から選択された繊維から成る。更に有利なのは、少なくとも70質量%が、少なくとも80質量%が、及び特に有利には少なくとも90質量%が、脂肪族ポリアミドの群から選択された繊維から成る織物補強材である。当然の事ながら、該織物補強材は100質量%が脂肪族ポリアミドの群から選択された繊維から成っていてもよい。
【0012】
エラストマー材料の群は、合成ポリマー及び天然ポリマーを包含し、それらは僅かな力の作用ですでに伸展及び屈曲され得、且つ力の作用がなければ再び元に戻り、つまり、その本来の形状をとるということによって優れている。本発明による補強ホースのための適したエラストマー材料はゴムである。本発明の意味における材料のゴムとは、加硫されている天然ゴム又は合成ゴムと解される。合成ゴムは、たいていの場合、スチレン及びブタジエンとから成り:その他の原料ベースは、スチレンアクリレート、純粋なアクリレート、ビニルアセテートである。適したエラストマー材料のための例は、スチレン−ブタジエンゴム、ネオプレン、EPDM(エチレン−プロピレン−ジエンゴム)、エチレン−プロピレン−ターポリマーゴム、ニトリルブタジエンゴム又は水素化ニトリルブタジエンゴムである。
【0013】
本発明によるホースの製造に際して、ホース内管への繊維の食い込み及びホース外管の斑のある、オレンジピール様の表面の形成が明らかに減らされる。
【0014】
これは、選択されたポリエステル−又はアラミド糸を用いて達成されることができるのにひきかえ、これ自体、通常の低収縮ナイロン糸を用いては実現できない。当業者に公知の低収縮ナイロン糸、殊にナイロン6.6マルチフィラメント糸は、DIN53866に従って180℃、2分間及び5mN/texの予張力にて測定して、少なくとも2.5%〜約3.5%の熱風収縮率を有する。そのような低収縮糸では、ホース管の外側の、斑のある、オレンジピール様の表面の形成を回避することはできない。本発明によるホースの織物補強材の繊維は、必要とされる特性を、すでにホース製造前、すなわち加硫前に有する。
【0015】
本発明によるホースの場合、本質的に脂肪族ポリアミドから成る織物補強材の繊維は、有利には、DIN53866に従って180℃、2分間及び5mN/texの予張力にて測定して、2.3%より小さい熱風収縮率を有する。
【0016】
特に有利には、脂肪族ポリアミドの群から選択された繊維は、DIN53866に従って180℃、2分間及び5mN/texの予張力にて測定して、2.1%より小さい熱風収縮率を有する。
【0017】
織物補強材の繊維を本質的に構成している脂肪族ポリアミドは、有利にはポリアミド6、ポリアミド6.6、ポリアミド4.6又はこれらのポリマーの混合物である。
【0018】
織物補強材の繊維は、有利にはマルチフィラメント糸として存在する。マルチフィラメント糸のタイター範囲は、有利には350dtexから2500dtexの間に、特に有利には700dtexから2100dtexの間にある。マルチフィラメント糸のフィラメント数は、有利には70から280本のフィラメント数の間にある。
【0019】
複数のマルチフィラメント糸からの、有利には1〜3本のマルチフィラメント糸からの、3000dtexまでの、例えば940dtex×3、700dtex×3、940dtex×2、1880×1、2100×1及び1400×1のようなタイター数を有する構造体も使用されることができる。これらの糸構造体には、1メートル当たり40から200回転数の間の撚り数が備え付けられることができる。それによって、糸の結合力のみならず、耐疲労性も高められる。
【0020】
織物補強材のための糸の製造は、例えば、加熱され、且つ溶融されたポリマー材料の紡糸によって行われる。
【0021】
引き続き、紡績糸はAvivageで湿らされ、且つ適切に延伸されることができ、そうして、その間に660mN/tex〜970mN/texの糸強度及び16%〜28%の破断伸び率が達成される。次いで、そのようにして延伸された糸は、引き続く熱及び場合により湿度の影響によって弛緩される。
湿度範囲は、その際、高温水蒸気中で60〜100%である。代替的に、糸は完全に熱水により湿らされていてもよい。熱水による処理に際して、糸は、有利には初期に70℃の熱水と反応器中で環流される。次いで、水は恒常的に80℃〜140℃の最終温度に加熱され(加熱率 1℃/分)、且つそこで10〜40分間維持される。引き続き、糸は室温ほどの低温水で洗浄することによって冷やされ、且つ乾燥される。蒸気での処理に際して、糸は、周囲圧力にて蒸気で満たされている容器に導通される。蒸気温度は、有利には240〜285℃の間にある。高温蒸気は収縮を引き起こす。蒸気処理後、次いで、糸は周囲空気中で再び巻き取られる。これらの有利な処理によって、熱風収縮率は、DIN53866に従って180℃、2分間及び5mN/texの予張力にて測定して、1.3%から2.5%の間に、好ましくは1.3%から2.3%の間で得られる。
【0022】
紡績糸の延伸及び引き続く熱水による処理の代わりに、該紡績糸を、紡績後に直接、蒸気による処理及び同時の延伸に供してもよい。
【0023】
引き続く弛緩化後に、必要とされる熱風収縮率は、DIN53866に従って180℃、2分間及び5mN/texの予張力にて測定して、1.3%から2.5%の間で得られる。
【0024】
織物補強材の繊維は、同様にコードの形で存在してもよい。
【0025】
本発明によるホースの更なる有利な一実施態様において、織物補強材は唯一の層で、エラストマー材料中に埋め込まれで存在する。織物補強材は、この場合、エラストマー材料の内層とエラストマー材料の外層との間に存在し、すなわち本発明によるホースは、この有利な実施態様においてエラストマー材料からの内管を有し、この内管の上方には織物補強材が存在し、且つ該織物補強材の上方には、好ましくは内管と同じエラストマー材料から成る外管が存在する。エラストマー材料は、有利には織物補強材の繊維間にも存在する。
【0026】
織物補強材の繊維は、接着向上剤、例えば有機ポリイソシアネート溶液で処理されることができる。織物補強材の繊維が接着向上剤で処理される場合において、該繊維は処理前に、それが接着向上剤での処理後に本発明により必要とされる2.5%より小さい熱風収縮率を有するという前提のもとに、2.5%より大きい熱風収縮率も有してよい。有利には、織物補強材の繊維は、すでに接着向上剤による処理前に本発明により必要とされる2.5%より小さい熱風収縮率を有する。しかしながら、特に有利には、本発明によるホースは、織物補強材の繊維が未処理であること、すなわち接着向上剤を含まないことを特徴とする。
【0027】
織物補強材は、螺旋状にホース内管の周囲に巻き取られている編物の形で又は繊維の形で存在してよい。有利には、織物補強材は、織布、殊に円形織布、編布、殊に円形編布の形で又はメリヤス、殊に円形メリヤスの形で存在する。
【0028】
織物補強材により、高い破裂強さがもたらされ、且つ高められた圧力でのホースの目立った伸びを減らす。同時に、織物補強材により、ホースは真空の発生に際して崩壊に耐えることができる。
【0029】
本発明によるホースは、高温の液体、特に水性液又は水溶液を取り扱うのに特に適している。それゆえ本発明は、冷却水ホースとしての使用に特に適している。本発明による冷却水ホースは、加水分解に対する改善された耐性を有する。
【0030】
本発明は、同様に、織物補強材を有するホースの製造方法を包含する。この方法は、次の工程、エラストマー材料からのホースの押出、押出されたホースの周囲領域への織物補強材の施与、その際、該織物補強材は、本質的に、脂肪族ポリアミドの群から選択されている繊維から成り、エラストマー材料からの被覆の押出及び得られたホースの引き続く加硫を包含し、該工程は、織物補強材として、2.5%より小さい、有利には2.3%より小さい、特に有利には2.1%より小さい熱風収縮率を有する繊維が選択され、その際、該熱風収縮率は、DIN53866に従って180℃、2分間及び5mN/texの予張力にて測定されることを特徴とする。
【0031】
加硫のために、ホースを硬化マンドレルに取り付けてよく、それによって結果生じるホースは、該硬化マンドレルの形状に相応した形状をとる。加硫は、例えば飽和蒸気においてオートクレーブ中で行ってよい。完成したホースは、有利には、その長さにおいて湾曲した部分又は屈撓部を有する。
【0032】
本発明による方法の有利な一実施態様において、織物補強材の繊維は、接着向上剤で処理されない。それゆえ織物補強材の繊維は、有利には接着向上剤を含んでいない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エラストマー材料及び織物補強材を包含し、その際、該織物補強材が、本質的に、脂肪族ポリアミドの群から選択された繊維から成るホースにおいて、使用される該繊維の熱風収縮率が、DIN53866に従って180℃、2分間及び5mN/texの予張力にて測定して、2.5%より小さいことを特徴とする、エラストマー材料及び織物補強材を包含するホース。
【請求項2】
前記繊維の熱風収縮率が2.3%より小さいことを特徴とする、請求項1記載のホース。
【請求項3】
前記繊維の熱風収縮率が2.1%より小さいことを特徴とする、請求項1又は2記載のホース。
【請求項4】
前記織物補強材の繊維が接着向上剤で処理されており、且つ前記繊維が接着向上剤による処理前に請求項1から3までのいずれか1項記載のものに相当する熱風収縮率を有することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載のホース。
【請求項5】
前記織物補強材の繊維が接着向上剤を含んでいないことを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載のホース。
【請求項6】
クーラントホースとしての請求項1から5までのいずれか1項記載のホースの使用。
【請求項7】
エラストマー材料からのホースの押出工程、押出されたホースの周囲領域への織物補強材の施与工程、その際、該織物補強材が、本質的に、脂肪族ポリアミドの群から選択されている繊維から成り、エラストマー材料からの被覆の押出工程及び得られたホースの引き続く加硫工程を包含する、織物補強材を有するホースの製造方法において、織物補強材として2.5%より小さい熱風収縮率を有する繊維を選択し、その際、熱風収縮率が、DIN53866に従って180℃、2分間及び5mN/texの予張力にて測定されることを特徴とする、織物補強材を有するホースの製造方法。
【請求項8】
織物補強材として2.3%より小さい熱風収縮率を有する繊維を選択し、その際、該熱風収縮率が、DIN53866に従って180℃、2分間及び5mN/texの予張力にて測定されることを特徴とする請求項7記載の方法。
【請求項9】
織物補強材として2.1%より小さい熱風収縮率を有する繊維を選択し、その際、該熱風収縮率が、DIN53866に従って180℃、2分間及び5mN/texの予張力にて測定されることを特徴とする請求項7又は8記載の方法。

【公表番号】特表2011−511908(P2011−511908A)
【公表日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−543405(P2010−543405)
【出願日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際出願番号】PCT/EP2008/067835
【国際公開番号】WO2009/092502
【国際公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【出願人】(501314190)ポリアマイド ハイ パフォーマンス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (3)
【氏名又は名称原語表記】Polyamide High Performance GmbH
【住所又は居所原語表記】Kasinostrasse 19−21,D−42103 Wuppertal,Germany
【Fターム(参考)】