説明

複合体材料のための安定化させ得るプリフォーム前駆体および安定化されたプリフォーム、並びにプリフォームを安定化させ嵩減らしを行う方法

複合体のための安定化させ得るプリフォーム前駆体が提供される。このプリフォーム前駆体は補強材を含んで成る構造繊維布の少なくとも一つの層を有し、ここで構造繊維布の少なくとも一つの層はその中に組み込まれた一つまたはそれ以上の安定化用繊維を有し、この繊維は構造繊維布の中に浸入して複合体をつくるための樹脂に溶解温度において溶解する。この安定化用繊維は、安定化させ得るプリフォーム前駆体に高温をかけると該安定化させ得るプリフォーム前駆体を安定化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプリフォーム、並びに複合材料を製造するためのプリフォームの製造法に関し、特に安定化させ得るプリフォーム前駆体、安定化されたプリフォーム、およびプリフォームを安定化させ嵩減らしを行う方法に関する。
【背景技術】
【0002】
伝統的に複合体は、繊維の補強材またはマトリックス樹脂に含浸させた構造繊維布からつくられたプリプレグを用いて製造されてきた。或る与えられた複合製品をつくる際に重ね合わせて形を整え積層化を行う大きさにプリプレグのシートを切断することができる。プリプレグの性質および得られる部材の品質をコントロールして、例えば靭性、強度および可撓性のような得られる部材の性質を操作することができる。
【0003】
最近になって、複合体は樹脂移送成形法(RTM)、液体樹脂注入法(LRI)、真空支援式樹脂移送成形法(VARTM)、可撓性の工具を用いる液体樹脂注入法(RIFT)、真空支援式樹脂注入法(VARI)、樹脂フィルム注入法(RFI)、大気圧制御式樹脂注入法 CAPRI)、VAP(真空支援式加工法)および単一ライン射出法(SLI)を含む種々の液体成形加工法を用いてつくられている。最後の単一ライン射出法では、先ずプリフォームとしての型の中に繊維を並べ、次いでその場でマトリックス樹脂を直接射出または注入する。向きのそろった乾燥した繊維材料の一つまたはそれ以上の層または束から成る組み立てて積層状にしたプリフォームを成形型の中に入れる場合、貯蔵、輸送、取扱い、および成形型の中に入れる際に向きのそろった乾燥した繊維材料がほぐれたり引き抜けたりすることを防ぐために、典型的には縫合(stitching)、金具留め(stapling)、または接合剤による接合を行い繊維材料の配置を保ち繊維布を安定化させることにより、その層または束を適切な位置に保持し(「安定化し」)、緻密化する(「嵩減らしする」)。次にこの積層体を縫合または金具留めの外側で切断して所望の形にした後、このプリフォームを型の中に入れ、樹脂を射出して繊維布を含浸させ、次いで仕上げ製品をつくる通常の許容された方法により硬化させる。
【0004】
しかし典型的にはプリフォームを安定化させる縫合および金具留めの方法には限界がある。何故なら、縫合または金具留めを乱すことなくプリフォームを複雑な部材の輪郭に合わせることはできないからである。縫合糸は典型的には最高230℃の温度に達し得るまでその場所で元の状態に留まり且つ樹脂に不溶であって硬化後も変化しないような重合体からできている。またこれらの方法は非常に労力がかかり、成形部材をつくるためのコストを上昇させる。さらに縫合糸および留め金は部材の内部にポケットまたは穴をつくる傾向があり、これは樹脂の浸入を妨げ、部材の性質、特に強度を低下させる。これに加えて、縫合を行うには通常針で繊維を刺す必要があり、その結果部材の性質、特に面内の強度が減少する。繊維の縫合部分が水分を吸収した場合、部材の高温における性質が低下する可能性もある。縫合糸と樹脂のCTEの差、および不溶な糸の湿潤性の低さも微小な亀裂の原因になり得る。
【0005】
プリフォームを安定化させる他の方法は、例えばFlonc等に対する特許文献1に示されているように、層を一緒に保持するために高温熔融接着剤を被覆する方法を含んでいる。通常この種の方法では、液化した熱可塑性重合体の薄層を用いて乾いた繊維布の限られた区域を被覆するか、或いは別法として層の間に繊維性の熱可塑性重合体を置き、接着剤は溶解しないから、熱をかけて接着剤を熔融させる。次に高温のアイロンを選択的にかけたり脱したりして重合体を熔融させ再び凝固させることによりプリフォームの輪郭を複
雑な形に合わせる。勿論これは非常に労力のかかる方法であり、従ってコストも非常に高くなる。そのうえ、典型的には接着剤として使用する熱可塑性重合体は、形を整えた後その形を保つために隣接した層を一緒に保持できるほど繊維を十分に湿潤させることはできない。従って、プリフォームを例えば成形型の中に入れるような取扱いを行う場合に層がずれる可能性がある。また縫合糸および留め金の場合と同様に、接着剤は樹脂注入法によって部材をつくるのに典型的に使用される樹脂システムと相容性をもっていないから、熱可塑性の接着剤は部材の中にポケットを生じ、これは樹脂の浸入を妨げ、部材の品質を低下させる。
【0006】
また、プリフォームの製造を助けるのに効果があるものとして熱硬化性または熱可塑性接合剤樹脂が知られている。この接合剤はマトリックス樹脂の浸入または射出の際に繊維を適切な位置に保持するが、加圧して射出する必要があるほど比較的高い粘度をもっているので、その結果局部的な移動が起こるか、または安定化されないプリフォームを生じる可能性がある。
【0007】
工業的に得られる接合システムには熱硬化性のエポキシだけをベースにしたもの、またはこれとポリエステル熱可塑性樹脂成分を組み合わせたもののいずれかが含まれる。もっと最近になって市販されたシステムはエポキシ熱硬化性樹脂とポリエーテル熱可塑性樹脂の成分の組み合わせ、或いはビスマレイン酸イミド熱硬化性樹脂とポリエーテルイミド熱可塑性樹脂との成分の組み合わせを含んでいる。
【0008】
市販品の接合剤は噴霧法によりフィルムまたは粉末接合剤システムとして被覆される。これらの接合剤は繊維の形を整える前またはその途中で繊維または繊維布のシートに対して被覆されるか、或いは繊維のままの形に対して被覆される。接合剤は通常硬化剤または触媒を含む対応する樹脂マトリックスシステムであり、固体の粉末をつくるためにこれは既に反応を起こして(即ち部分的に硬化して)おり、また繊維のトウを部分的に含浸しその中に浸透することができる。或る量の硬化触媒または高度の反応性をもった樹脂を含むシステムは固有の問題を抱えている。硬化を起こし始めた接合剤樹脂には貯蔵の問題が生じ、この場合部分的に硬化した組成物が可撓性をもつことはあまりなく、貯蔵中に応力を生じ、そのためプリフォームの接合が切れる可能性がある。従って、これらの製品は典型的には製造後極めて短期間内でしか使用できない。さらに市販品のシステムは、接合剤の樹脂粉末を熔融させてプリフォームをつくる役目をする粘着性を得るためには加熱することが必要である。
【0009】
特許文献2および3には、それぞれ交叉結合剤を存在させない熱可塑性樹脂、および触媒を存在させない熱硬化性樹脂をベースにした他のシステムが記載されている。それぞれの場合、マトリックス樹脂の浸入を阻害して仕上げ製品の強度、ガラス転移温度および他の性質を低下させる接合剤のポケットの生成を避けるために、熱を用いて粘着させて繊維のプリフォームを製造する。それにも拘わらず、これらのシステムは劣悪な流動性および変形性、劣悪な流動制御性および変形に対する抵抗、マトリックスに対する劣悪な相容性、低い靭性等の欠点をもっている。構造材繊維、例えばナイロンまたはポリエステルを使用しない流動性を強化した繊維布の例もいくつか知られている。しかしこれらのすべての技術は、硬化した後に複合体の中に残留し従って複合体の機械的および熱的性質に悪影響を及ぼす不溶性の繊維に基礎を置いている。
【0010】
さらに、プリフォームを安定化するために市場に提供されている市販の接合剤システムは、加工助剤として作用する潜在的な可能性を提供するだけである。即ち、最悪の場合これらは悪影響を及ぼし、最良の場合でも仕上げられた複合体の性質に影響を与えない程度である。これらの公知の接合剤に典型的に見られる悪影響には、プリフォームに多孔性を与えその中に乾いた斑点を生じることが含まれ、これによって機械的性質、特に高温にお
ける湿潤特性が低下し、加工温度におけるプリフォームは熱的に不安定になる。Ko等に対する特許文献4にはこのような接合剤システムが記載されているが、このシステムでは、プリフォームに対するマトリックス樹脂システムと相容性があると思われる粉末にした接合剤樹脂を使用することにより、機械的性質の低下を回避できると言われている。しかし、この接合剤樹脂は粉末だから取扱いが極めて困難であり、また繊維布層の上および間に接合剤樹脂を均一に分散させることも極めて困難であるという欠点をもっている。
【0011】
従って、安定化させ得るプリフォーム前駆体、安定化されたプリフォーム、およびプリフォームを安定化させ嵩を減らして加工特性、例えば樹脂に対するプリプレグの透過性、安定性、ほつれ、ほぐれ等に対する抵抗性、および得られた複合体の性質、例えば靭性および火災時の発煙および毒性(FST)に関する性能の両方を強化し、これによって衝撃後の圧縮強度(CSAI)の値を増加させる方法が必要とされている。
【0012】
従来上記の要求は別々の技術によって充たされてきたが、これらの要求が組み合わされて一つに纏められた技術または製品になることはなかった。
【特許文献1】米国特許第5,217,766号明細書。
【特許文献2】米国特許第4,992,228号明細書。
【特許文献3】米国特許第5,080,857号明細書。
【特許文献4】米国特許第5,432,010号明細書。
【発明の開示】
【0013】
本発明の概要
本発明によれば、構造繊維と共に繊維性の基質補強材の中に組み込む、例えば織り込むことができ、これによって得られるプリフォームを安定化させ、それに加えて浸入する樹脂に対する補強材の浸透性を増加させ得る熱可塑性繊維のような安定化用繊維を含んで成る安定化させ得るプリフォーム前駆体および安定化されたプリフォームを提供することによって上記のおよび他の問題が解決される。本発明の安定化用繊維は液体の樹脂マトリックス中に完全に溶解するように選ばれているから、機械的性質の低下が避けられ、靭性のような機械的性質、火災時における発煙および毒性に関する性能、および衝撃耐性が改善される。
【0014】
これらの繊維は浸入した樹脂によって流し去られることはないから粒子とは異なっている。
【0015】
また本発明によれば、硬化させる前に所望の形にすることができ、同時にプリフォームの縁の品質、取扱い特性、および繊維補強材の並び方および向きの保持性が改善されたプリフォームおよびプリフォーム前駆体が提供される。
【0016】
これに加えて、複合体部材の製造の際の圧縮および加熱の段階の間で本発明を使用すれば、層の嵩を実質的に減らして部分的に層を固めることができる。嵩減らし(debulking)とは、層を成形型の中に充填するのを容易にするために、層を十分に圧縮して必要な厚さまで部分的に固めることを意味する。例えば、いくつかの繊維の層を積み重ねた場合、これらの繊維は硬化した部材の最終的な厚さの約150〜200%の容積を占めることができる。従って、このような「嵩の大きい」プリフォームを最終的な形の成形型の中に入れ、繊維の向きを乱すことなく成形型を閉めることは困難である。嵩減らしを行うと最終的に硬化した部材の厚さの100〜150%の間の容積が得られる。型成形を行う前にプリフォームを圧縮し固める本発明の方法を用いると、プリフォームの嵩減らしを行うことができる。
【0017】
本発明のさらに他の利点として、安定化用繊維が樹脂に対する通路として作用するから
、本発明の安定化させ得るプリフォーム前駆体および安定化されたプリフォームの構造用または補強用の繊維はマトリックス樹脂に対する浸透性が強化される。
【0018】
本発明の詳細な説明
一具体化例において、本発明は複合体を製造するための安定化させ得るプリフォーム前駆体に関する。本発明のプリフォーム前駆体は、補強用の繊維を含んで成る構造繊維布の層またはプライを少なくとも一つ含んで成り、ここで該構造繊維布の層またはプライの少なくとも一つはその中に組み込まれた一つまたはそれ以上の安定化用繊維を有している。安定化用繊維は、構造繊維布の中に浸入して複合体をつくる樹脂の中に溶解温度において溶解する。安定化させ得るプリフォーム前駆体に高温をかけると、安定化用繊維は安定化させ得るプリフォーム前駆体を安定化する。安定化させ得るプリフォーム前駆体は構造繊維布の二つ以上の層またはプライを含んで成ることができ、またその中に組み込まれた一つまたはそれ以上の安定化用繊維を有していることができる。
【0019】
本発明の目的に対して「安定化」と言う言葉は、(1)構造繊維布の単一のシート、層またはプライ、或いは多数のシート、層またはプライであって、ほつれ、ほぐれ、引き抜け、曲がり、皺寄り、または他の方法で構造繊維布または補強繊維布の一体性が損なわれることなく、典型的な方法で移動、切断、輸送、樹脂の浸入、または取扱いができるように安定化させること、(2)成形型または他の場所に入れることにより、得られるプリフォームが何らかの移動、輸送、または取扱いにより歪まないように、また補強用の即ち構造繊維布をつくっている繊維が樹脂の浸入の際に影響を受けないままでいるようにするため、切断、型成形、または形を整えるための補強材または構造繊維布の多数の層を安定化させ一緒に接合すること、および(3)プリフォームを所望の形に固定することを意味するものとする。
【0020】
本発明の目的に対し、射出および浸入、並びに浸入を行うという言葉は、相互に言い換えて使用され、同じ意味、即ち複合体の部材を製造するために樹脂を繊維の基質または構造繊維布の中に導入する方法を意味するものとする。
【0021】
好適な具体化例においては、安定化させ得るプリフォーム前駆体は、一つまたはそれ以上の安定化用繊維がその中に組み込まれた構造繊維布の層を少なくとも一つおきにもっている。好ましくは、構造繊維布の各層の内部において安定化用繊維対補強用繊維の比は約1:99〜約70:30、さらに好ましくは約10:90〜約30:70である。
【0022】
本発明の安定化させ得るプリフォーム前駆体においては、構造繊維布は、補強用の構造繊維布と浸入した液体樹脂とからつくられた複合体材料を製造する当業界に公知の任意のタイプの繊維布または織物構造物であることができる。適当な繊維布のタイプまたは形状の例には、これだけには限定されないが、すべての織物繊維布、例えばこれだけには限定されないがポーラー織り(polar weave)、螺旋織り、単一織り(uniweave);すべての多軸繊維布、例えばこれだけには限定されないが多重横糸編み繊維布、非クリンプ繊維布(NCF)および多方向繊維布;編物繊維布、組編み繊維布;仕立てられた繊維を配置した繊維布、例えば繊維を配置してそれを縫い取りしただけの繊維布、すべての不織布、例えばこれだけには限定されないがマット繊維布、フェルト、ベールおよび切断ストランド繊維布、およびこれらの組み合わせを含んで成る繊維布が含まれる。補強用の構造繊維布をつくっている繊維は複合体の業界に公知の任意の種類の繊維であることができ、その例にはこれだけには限定されないが、紡糸したストランド、押出したストランド、注型したストランド、連続繊維、不規則繊維、不連続繊維、切断繊維、ウイスカー、フィラメント、リボン、テープ、ベール、フリース、中空繊維、およびそれらの組み合わせが含まれる。繊維をつくることができる適当な材料には、これだけには限定されないが。炭素、アラミド、石英、硼素、ガラス、ポリエチレン、ポリベンザゾール、ポリ
(p−フェニレン−2.6−ベンゾビスオキサゾール)、ポリベンゾチアゾール、アルミナ、ジルコニア、炭化珪素、およびこれらの組み合わせが含まれる。
【0023】
本発明の安定化させ得るプリフォーム前駆体においては、安定化用繊維は補強用の繊維と同様に任意のタイプの繊維材料であることができる。その例にはこれだけには限定されないが、紡糸したストランド、押出したストランド、注型したストランド、連続繊維、不規則繊維、不連続繊維、切断繊維、ウイスカー、フィラメント、リボン、テープ、中空繊維、ベール、フリース、およびそれらの組み合わせの糸またはモノフィラメントが含まれる。本発明の目的に対しては、安定化用繊維は多数のモノフィラメントからつくられた糸、および単一および多数のモノフィラメントからつくられた糸の両方を指すものとする。好ましくは安定化用繊維(または糸)はそれぞれ約100μ以下の直径をもった繊維を含んで成っている。安定化用繊維は当業界に公知の任意の技術によって組み込むか、或いは構造繊維布の中に挿入することができる。その好適な例には、これだけには限定されないが、縫合、編み合わせ、タフト化、縦糸編み、クリンプ処理、打ち抜き、織り、単一織り、組編み、上面巻き付け(overwinding)、噛み合わせ、混ぜ合わせ、整列、撚り合せ、コイル巻き、結び合わせ、糸掛け、マット化、一緒の織込み、紡糸接合、噴霧、積層化、ベールの熱接合、ベールの縫合、およびこれらの組み合わせが含まれる。特に織物繊維布に対しては、図1に示すように繊維は縦糸および横糸の中で炭素繊維を一緒に織り込むことが好適である。
【0024】
安定化用繊維は、複合体を製造するためにプリフォームの中に浸入させる樹脂の中に、少なくとも部分的に、好ましくは完全に溶解(熔融ではない)する能力をもった任意の重合体を含んで成っていることができる。このような溶解は、樹脂の硬化温度よりも低い溶解温度で起こることが好ましい。好ましくは本発明の安定化用繊維はゴム、エラストマー重合体、熱可塑性重合体、およびこれらの組み合わせから成る群から選ばれる。好ましくは重合体は熱可塑性重合体であり、さらに好ましくは無定形の熱可塑性重合体であるか、比較的低い融点をもった結晶性の重合体である。
【0025】
さらに好ましくは、安定化用繊維は数平均分子量(Mn)が好ましくは約1000〜約60,000、さらに好ましくは約2,000〜20,000の範囲にある熱可塑性重合体を含んで成っている。適当な熱可塑性重合体の例は、これだけには限定されないが、セルロース誘導体、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリ(メタクリル酸メチル)、ポリスチレン、ポリ芳香族;ポリエステルアミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリアラミド、ポリアリーレート、ポリアクリレート、ポリ(エステル)カーボネート、ポリ(メタクリル酸メチル/アクリル酸ブチル)、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォン、ポリエーテルエーテルスルフォン、ポリエーテルスルフォン−エーテルケトン、およびこれらの共重合体および組み合わせから成る群から選ばれる。
【0026】
本発明において安定化用繊維として使用するのに特に好適なポリ芳香族は、エーテル連結反復単位またはチオエーテル連結反復単位を含んで成るポリ芳香族スルフォンであり、該単位は基、
−(PhAPh)
および
−(Ph)
から成る群から選ばれる。ここでAはCOまたはSO、Phはフェニレン、nは1または2であって分数であることもでき、aは1〜4であって分数であることもできるが、但しaが1より大きい場合、フェニレンは単結合か、または−CO−または−SO−以外の二重結合により直線的に連結しているか、或いは直接融合しているか、また或いは酸アルキル基、(ヘテロ)芳香族、環式ケトン、環式アミド、イミド、環式イミン、およびこ
れらの組み合わせから成る群から選ばれる環部分を介して融合している。好ましくはポリ芳香族スルフォンはポリエーテルスルフォン(PES)、さらに好ましくはポリエーテルスルフォン−エーテルケトンおよびポリエーテルエーテルスルフォン連結反復単位の組み合わせ(PES:PEES)を含んで成り、ここでフェニレン基はメタ位またはパラ位にあり、該フェニレンは単結合か、またはスルフォン以外の二重結合で直線的に連結しているか、或いは一緒に融合している。PEES:PES中のポリアリールスルフォンの反復単位の好適な相対的割合は(SOの重量)/(平均反復単位の重量)の100倍で定義することができる。好適なSO含量は少なくとも約35%、さらに好ましくは少なくとも約30%、最も好ましくは少なくとも約22%である。a=1の場合、これはPES/PEESの比が少なくとも20:80、好ましくは25:75〜75:25、最も好ましくは35:65〜65:35の範囲にあることに相当する。
【0027】
これとは別に、安定化用繊維に使用する熱可塑性重合体がポリウレタンである場合には、それはさらに好ましくは熱可塑性ポリウレタンゴムであり、安定化用繊維がポリアクリレートである場合には、ポリアクリレートは少なくとも85重量%のアクリロニトリルである。熱可塑性重合体がポリアミドである場合には、それは好ましくはナイロン材料、さらに好ましくは無定形のナイロンである。
【0028】
本発明の安定化させ得るプリフォーム前駆体において複合体の部材を製造するためにつくられるプリフォームの中に浸入させる樹脂は、当業界に使用されることが知られている任意の適当な樹脂であることができ、これは好ましくは周囲温度において液体またはペースト状であり、好ましくは樹脂の硬化温度以下の高温において安定化用繊維を完全に溶解するように、安定化用繊維として使用される材料の選択と組み合わせて選ばれる。熱硬化性樹脂が特に好適である。本発明に適した熱硬化性樹脂の例には、これだけには限定されないが、エポキシ樹脂、付加重合樹脂、ビス−マレイン酸イミド樹脂、フォルムアルデヒド縮合樹脂、フォルムアルデヒド−フェノール樹脂、シアネート樹脂、イソシアネート樹脂、フェノール樹脂、およびこれらの組み合わせから成る群から選ばれる樹脂である。
【0029】
好ましくはこの樹脂はエポキシ樹脂であり、複合体材料に対する補強用構造繊維布の中に浸入させるに適した任意のエポキシ樹脂から選ぶことができる。このような樹脂を製造する方法および工程は当業界に公知である。適当なエポキシ樹脂には、これだけには限定されないが、N,N,N’,N’−テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、N,N,N’,N−テトラグリシジル−ビス(4−アミノフェニル)−1,4−ジイソプロピルベンゼン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−ビス(4−アミノ−3,5−ジメチルフェニル)−1,4−ジイソプロピルベンゼン、p−アミノフェノールのトリグリシジルエーテル、2,2−ビス(4,4’−ジヒドロキシフェニル)プロパン、Novolak樹脂類、フェノールNovolak樹脂のグリシジルエーテル、ジグリシジル−1,2−フタレート、ジヒドロキシジフェニルメタンのジグリシジル誘導体、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、およびビスフェノールFのジグリシジルエーテルおよびこれらの組み合わせから成る群から選ばれるものが含まれる。
【0030】
好適具体化例における本発明の安定化させ得るプリフォーム前駆体はポリ芳香族熱可塑性樹脂である安定化用繊維およびエポキシ樹脂である1種の樹脂を含んで成っている。
【0031】
他の具体化例においては、本発明は安定化されたプリフォームを含んで成っている。本発明の安定化されたプリフォームは、すべての特性および特徴を含む本発明の安定化させ得るプリフォームを含んで成り、これは好ましくは安定化用繊維を軟化させるのに適した温度、最も好ましくは約100〜約250℃の安定化温度を約5〜約100分の間かけたものである。
【0032】
本発明の安定化されたプリフォームは典型的には二つ以上の構造繊維布の層を含んで成っている。構造繊維布の層またはプライは、積み重ね、切断し、形を整えた後に約100〜約250℃の安定化温度を約5分〜約100分間かけたものである。
【0033】
また本発明は、複合体材料を製造するために補強用の繊維を含んで成るプリフォーム前駆体を安定化する方法を含んでいる。この方法はその最も広い態様において、補強用繊維を含んで成る構造繊維布の少なくとも一つの層を与え、複合体をつくるために構造繊維布の中に浸入させる樹脂の中に溶解する少なくとも一つの安定化用繊維を構造繊維布の少なくとも一つの層の中に組み込み、その中に組み込まれた安定化用繊維を有する構造繊維布を約5〜約100分の間加熱する段階を含んでいる。
【0034】
本発明においては、任意の方法で任意の熱源から熱をかけることができるが、熱源の例には、これだけには限定されないが、赤外線、マイクロ波、対流、誘導、超音波、輻射、およびこれらの組み合わせが含まれる。熱は安定化用繊維を軟化させるのに十分な量でかけることが好ましく、最も好ましくは約80〜約250℃の温度をかけることが好ましい。さらに好ましくは約100〜約210℃の温度で約5〜約200分間加熱し、最も好ましくは約125〜約185℃の温度で約10〜約100分間加熱する。加熱段階は約500〜約999ミリバールの真空下か、またはプレス、ニップ・ローラ等を用いてかけられる圧力下で行うことができる。
【0035】
プリフォームを安定化させる本発明方法においては、随時二つ以上の構造繊維布を使用することができる。この場合この方法は、安定化用繊維を構造繊維布の中に組み込む段階の後、熱をかける段階の前において、構造繊維布の層またはプライを積み重ね切断する段階をさらに含んでいることができる。さらに本発明は随時層を積み重ね切断を行う段階の後、熱をかける段階の前に、構造繊維布の層を形を整える段階を含んでいることができる。
【0036】
本発明方法においては、安定化用繊維を構造繊維布の中に組み込む段階は、繊維を構造繊維布の中に組み込む或いは導入する任意公知の方法で行うことができる。このような好適な方法には、縫合、編み合わせ、クリンプ処理、タフト化、打ち抜き、織り、均一織り、組編み、上面巻き付け、噛み合わせ、混ぜ合わせ、整列、撚り合せ、コイル巻き、結び合わせ、糸掛け、マット化、一緒の織込み、紡糸接合、噴霧、積層化、ベールの熱接合、ベールの縫合、およびこれらの組み合わせが含まれる。
【0037】
また本発明は複合体材料を製造するために補強用繊維を含んで成るプリフォーム前駆体の嵩減らしを行う方法を含んで成っている。この方法は、補強用繊維を含んで成る二つ以上の構造繊維布を与え、複合体の製造のために構造繊維布の中に浸入させる樹脂の中に溶解する少なくとも一つの可溶性の繊維を構造繊維布の少なくとも一つの層の中に組み込み、少なくとも一つの可溶性の繊維が組み込まれた構造繊維布を積み重ねて厚さaの積層体にし、構造繊維布の積み重ねた層を約1〜約100分間加熱して積層体の厚さをaよりも小さい値に減少させる段階を含んで成っている。熱は任意の公知の熱源を用いてかけられ、熱源は好ましくは赤外線、マイクロ波、対流、誘導、超音波、輻射およびこれらの組み合わせから選ばれる。熱は好ましくは約60〜約250℃の温度、さらに好ましくは約100〜約250℃の温度で、約1〜約200分の間、最も好ましくは約120〜約180℃の温度で、約10〜約100分の間かけられる。熱をかける段階は約50〜約999ミリバールの真空下か、またはプレス、ニップ・ローラ等を用いてかけられる圧力下で行うことができる。
【0038】
本発明の嵩減らし工程は、熱をかける段階の前にその中に組み込まれた可溶性の繊維を有する構造繊維布の積層体を切断する段階をさらに含んでいることができる。またこの方
法はさらに、切断の段階の後、加熱段階の前で構造繊維布の積層体を成形する段階を含んで成っていることができる。構造繊維布の中に可溶性の繊維を組み込むか挿入する段階は公知方法で行うことができ、このような好適な方法には、これだけには限定されないが、縫合、編み合わせ、タフト化、クリンプ処理、打ち抜き、均一織り、組編み、過剰巻き付け、噛み合わせ、混ぜ合わせ、整列、撚り合せ、コイル巻き、結び合わせ、糸掛け、マット化、一緒の織込み、紡糸接合、噴霧、積層化、ベールの熱接合、ベールの縫合、およびこれらの組み合わせの中から選ばれる。
【0039】
下記実施例により本発明を例示する。これらの実施例は本発明の範囲をいかなる方法でも限定するものではない。
【実施例1】
【0040】
HTA 6K炭素繊維(Tenax Corp.製,Mishima,日本)およびST54熱可塑性繊維(Cytec Engineered Materials製,Tempe,米国、アリゾナ州)をベースにし、織りスタイル5HS、坪量370gsm(g/m)、幅1270mmのハイブリッド繊維布HTA 6K/ST54 5HS 370gsmをDornier社のラピア織機を用い、Cytec Engineered Materials(Greenville,米国テキサス州)社で製造する。この繊維布は縦糸および横糸の方向にHTA 6k繊維(400tex)を含み、縦糸および横糸の方向に熱可塑性繊維ST54(54tex)を含んでいる。製造すべき炭素繊維の15重量%の量で炭素繊維1本当たり熱可塑性繊維を1本を挿入し、図2に示したようなハイブリッド繊維布をつくる。
【実施例2】
【0041】
実施例1でつくられたファイブリッド繊維布、および5HSの織りスタイル、および坪量370gsm、幅1270mmのHTA 6K炭素繊維(Tenax Corp製、Mishima、日本)をベースにした標準的な炭素繊維布HTA 6k 5HS 370gsmから400x400mmの正方形の区域を切り取った。
【0042】
【表1】

これらの試料を炉の中に入れ、下記の条件を課した。
【0043】
【表2】

この過程の後で、Zwick引張り試験機を用い図3a〜3dに示すようにして+/−45の方向における繊維布の強度を測定する。その結果を下記表に示す。
【0044】
【表3】

【実施例3】
【0045】
実施例1で得たHTA 6K/ST54 5HS 370gsmの繊維布から切断した400×400mmの試料を用いて二つのプリフォーム・パネルをつくった。両方とも900ミリバールの真空の袋の中に入れ、一つのパネルは160℃で10分間加熱し、他のパネルは180℃で10分間加熱した。
【0046】
両方のプリフォーム・パネルから採取した4層のプリフォームの幅25mmの細片5個に対し、確立した粘着試験によりモードIのタイプの剥離試験を行った。結果を下記表に示す。
【0047】
【表4】

【実施例4】
【0048】
実施例1のハイブリッド繊維布HTA 6K/ST54 5HS 370gsmから210×150mmの大きさの12個の矩形の層を切り取った。この層を疑似的な等方性をもたせて並べて一緒に積み重ねた。[−45,0,45,90]
【0049】
プリフォームをつくるために12層から成る積層体をL字型の工具の上に置き、袋の中に入れて真空にし、180℃に加熱し、この温度に20分間保つ。袋から出した後、これらの層はL字形を保ち、著しい跳ね反りは観測されなかった。
【0050】
図4aおよび4bに上記方法を用いてつくられたL字形のプリフォームを示す。
【実施例5】
【0051】
図5に示されているような平らにした「ブック」ドローイング(“book” drawing)を原料にして複雑なプリフォームをつくる。
【0052】
三つのブックは疑似等方的な配列[−45,0,45,90]をもつ四つの層から成り、これは図6に示すようなHTA 6K/ST54 5HS 370gsmの繊維布の平らな積層体から切り出されたものである。
【0053】
成形工具を用いてブックをつくる。この工具を180℃に加熱し、この温度で20分間保つ。図7aおよび7bに示す得られたプリフォームは優れた固さおよび安定性をもっていることが示され、実質的に跳ね反りの効果は見られない。
【実施例6】
【0054】
標準的な繊維布、および横糸の方向だけに安定化用繊維を含む繊維布を用いて二つのプリフォームをつくる。このプリフォームは6層からつくられ、得られた炭素繊維の容積比は約59%と測定された。圧力ポットおよびセンサーが埋め込まれた成形型から成る浸透計を用いて補強材の浸透度を測定する。
【0055】
6バールの締付け圧力を用いセンサーの付いた成形型の上半分を下半分の上に締付ける。射出圧力を0.4kPaに上昇させ、試験の間一定に保つ。浸透圧の値を下記表に示す。
【0056】
【表5】

この結果は標準の繊維布に比べ安定化用繊維を含む繊維布の方が浸透度が高いことを示している。
【実施例7】
【0057】
実施例1で得られた6K/ST54 5HS 370の6層を170℃で10分間真空下において加熱してプリフォームをつくる。頂部にガラスが付いたPlastechの高温工具を取り付けたPlastech TTの射出装置を用い射出試験を行う。直接比較できるようにプリフォームをつくらなかったハイブリッド繊維布に対するものと同様な射出パラメータを使用する。充填速度に関しては加工の容易さはプリフォームをつくらなかったハイブリッド繊維布と同様である。すべての射出パラメータを図8のグラフに示す。
【0058】
積層体の光学顕微鏡写真は、内部の多孔性または表面の空洞化の証拠が存在しない均一なマトリックスを示している。機械的なデータの詳細を直ぐ下の表に掲げるが、これはプリフォームをつくらなかった積層体を用いて得られる場合に比べて性能の低下がないことを示している。
【0059】
【表6】

このデータは、安定化させる方法が機械的性能を著しく低下させないことを示している。
【実施例8】
【0060】
実施例1から得たHTA 6K/ST54 5HS 370を用いCSAIパネルをつくる。25Jの衝撃を与えた後圧縮強さを測定する。同等の繊維布を使用し樹脂システムRTM6(Hexcel Composites製、Duxford、英国)とデータを比較する。
【0061】
【表7】

このデータは安定化されたシステムでは衝撃後の圧縮強さが著しく改善されていることを示している。
【実施例9】
【0062】
米国アリゾナ州、TempeのCytec Engineered Materials社のために、G40−800 24K炭素繊維(Tenax Corp.製、Mishima、日本)、およびST54熱可塑性繊維(Cytec Engineered Materials製、Tempe、アリゾナ州、米国)をベースにした、二軸配向(0/90)し軸方向の層一つ当たりの坪量が275gsm、全坪量が550gsm、幅が1270mmのクリンプしないハイブリッド織物繊維布G40−800 24k/ST54 550gsmをつくる。この繊維布は縦糸方向にG40−800 24k繊維(820tex)を、縦糸および横糸方向に熱可塑性繊維ST54(54tex)を含んでいる。それぞれの1本の炭素繊維に対し炭素繊維の量が15重量%になるように2本の熱可塑性繊維を挿入してハイブリッド繊維布をつくる。
【0063】
縦糸では織機の棹により、横糸では杼の挿入比により熱可塑性繊維の挿入を制御する。この熱可塑性の糸は炭素の層を一緒に保持して五つの通糸をもつサテン織り(5 Har
ness Satin weaving)をつくっている。
【実施例10】
【0064】
実施例1に示したクリンプをしないハイブリッド織物繊維布G40−800 24k/ST54 550gsmを400×300mmの矩形に切断し、二重の曲率を示すゴムの工具の上に覆い掛ける。覆った層を800ミリバールの真空の袋の中で30分間160℃に加熱する。
【0065】
袋から取り出した後、得られた安定化された掛け覆い層は縁および幾何学的な安定性を示し、また皺または繊維の不具合な並び方はなかった。
【実施例11】
【0066】
実施例1に示したクリンプをしないハイブリッド織物繊維布G40−800 24k/ST54 550gsmを200×150mmの矩形に切断し、40mmの幅に亙って互いに部分的に重ね合わせる。部分的に重なった層を800ミリバールの圧力の真空の袋の中で30分間160℃に加熱する。
【0067】
袋から出した後、得られた層は安定化し、緻密化した重なり合った部分は最適の取扱強度を示す二つの層の間の接合部を与える。
【実施例12】
【0068】
実施例1で得られたハイブリッド繊維布G40−800 24k/ST54 550gsmを15分間160℃で安定化させる。次にこの繊維布の縁を振動ナイフで切断したが、得られた縁はほどけたり或いは近傍の繊維がゆるい配列を示したりすることはない。
【0069】
標準的な繊維布HTA 6k 5Hに対して同じ方法を行ったが、縁の品質は非常に悪かった。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】縦糸および横糸の方向に一緒に織り込んだ可溶性の繊維を有する炭素繊維補強材の織物繊維布の模式図。
【図2】本発明に従って安定化させ得る繊維を有する繊維布構造物の写真。
【図3a−3d】Zwick引張り試験機で試験した繊維布の引張り強さを示す写真。
【図4a−4b】本発明方法を用いてつくられた「L」字形のプリフォーム。
【図5】安定化させ得るプリフォーム前駆体の平らにした「ブック」。
【図6】本発明の安定化させ得るプリフォーム前駆体の平らな積層体から切り出した3個の「ブック」。
【図7a−7b】成形工具を用いて図6のブックをつくった場合に得られるプリフォーム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
安定化させ得る複合体のプリフォーム前駆体であって、該プリフォーム前駆体は補強用の繊維を含んで成る構造繊維布の少なくとも一つの層を含んで成り、構造繊維布の該少なくとも一つの層の少なくとも一つはその中に組み込まれた一つまたはそれ以上の安定化用繊維を有し、該安定化用繊維は該構造繊維布の中に浸入して複合体をつくるための樹脂に溶解温度において溶解し、該安定化させ得るプリフォーム前駆体に高温がかけられた場合該安定化させ得るプリフォーム前駆体を安定化させることを特徴とする安定化させ得るプリフォーム前駆体。
【請求項2】
その中に一つまたはそれ以上の安定化用繊維が組み込まれた構造繊維布の一つまたはそれ以上の層を含んで成ることを特徴とする請求項1記載の安定化させ得るプリフォーム前駆体。
【請求項3】
該安定化用繊維はゴム、エラストマー重合体、熱可塑性重合体、およびそれらの組み合わせから成る群から選ばれることを特徴とする請求項1記載の安定化させ得るプリフォーム前駆体。
【請求項4】
該安定化用繊維はセルロース誘導体、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリ(メタクリル酸メチル)、ポリスチレン、ポリ芳香族;ポリエステルアミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリアラミド、ポリアリーレート、ポリアクリレート、ポリ(エステル)カーボネート、ポリ(メタクリル酸メチル/アクリル酸ブチル)、ポリエーテルスルフォン、ポリエーテルエーテルスルフォン、ポリエーテルスルフォン−エーテルケトン、およびこれらの共重合体および組み合わせから成る群から選ばれる熱可塑性重合体を含んで成ることを特徴とする請求項1記載の安定化させ得るプリフォーム前駆体。
【請求項5】
ポリ芳香族はエーテル連結反復単位またはチオエーテル連結反復単位を含んで成るポリ芳香族スルフォンであり、該単位は基、
−(PhAPh)
および
−(Ph)−、
ここでAはCOまたはSO、Phはフェニレン、nは1または2であって分数であることもでき、aは1〜4であって分数であることもできるが、但しaが1より大きい場合、フェニレンは単結合か、または−CO−または−SO−以外の二重結合により直線的に連結しているか、或いは直接融合しているか、また或いは酸アルキル基、(ヘテロ)芳香族、環式ケトン、環式アミド、イミド、環式イミン、およびこれらの組み合わせから成る群から選ばれる環部分を介して融合しているものとする、
から成る群から選ばれることを特徴とする請求項4記載の安定化させ得るプリフォーム前駆体。
【請求項6】
該樹脂はエポキシ樹脂、付加重合樹脂、ビス−マレイン酸イミド樹脂、フォルムアルデヒド縮合樹脂、フォルムアルデヒド−フェノール樹脂、シアネート樹脂、イソシアネート樹脂、フェノール樹脂およびこれらの組み合わせから成る群から選ばれることを特徴とする請求項4記載の安定化させ得るプリフォーム前駆体。
【請求項7】
補強用の繊維を含んで成る構造繊維布の少なくとも一つの層を含むプリフォーム前駆体を含んで成り、構造繊維布の該少なくとも一つの層はその中に組み込まれた少なくとも一つの安定化用繊維を有し、該安定化用繊維は該構造繊維布の中に浸入して複合体をつくるための樹脂に溶解温度において溶解し、該プリフォーム前駆体は約1〜約200分の間約
60〜約250℃の安定化温度がかけられたものであることを特徴とする安定化されたプリフォーム。
【請求項8】
該安定化用繊維はゴム、エラストマー重合体、熱可塑性重合体、およびそれらの組み合わせから成る群から選ばれることを特徴とする請求項7記載の安定化されたプリフォーム。
【請求項9】
複合体材料を製造するための補強用繊維を含んで成るプリフォーム前駆体を安定化させる方法であって、該方法は
補強用繊維を含んで成る構造繊維布の少なくとも一つの層を与える段階、
該構造繊維布の中に浸入して複合体を製造するための樹脂に溶解する少なくとも一つの安定化用繊維を構造繊維布の該少なくとも一つの層の中に組み込む段階、および
少なくとも一つの安定化用繊維を組み込まれた該構造繊維布を約1〜約200分の間加熱する少なくとも一つの段階を含むことを特徴とする方法。
【請求項10】
複合体材料を製造するための補強用繊維を含んで成るプリフォーム前駆体の嵩減らしを行う方法であって、該方法は
補強用繊維を含んで成る構造繊維布の少なくとも一つの層を与え、
該構造繊維布の中に浸入して複合体を製造するための樹脂に溶解する少なくとも一つの可溶性の繊維を構造繊維布の該少なくとも一つの層の中に組み込み、
少なくとも一つの可溶性の繊維が組み込まれた構造繊維布の該層を積み重ねて厚さaの積層体をつくり、
少なくとも一つの可溶性の繊維が組み込まれた構造繊維布の該積み重ねられた層に圧力をかけまたはかけずに約1〜約200分の間熱をかけ、積層体の厚さをaよりも小さくする段階を含むことを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3a−3d】
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【図4a】
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【図4b】
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【図5】
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【図6】
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【図7a】
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【図7b】
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【公表番号】特表2007−518608(P2007−518608A)
【公表日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−551096(P2006−551096)
【出願日】平成16年12月28日(2004.12.28)
【国際出願番号】PCT/US2004/043933
【国際公開番号】WO2005/075543
【国際公開日】平成17年8月18日(2005.8.18)
【出願人】(502159011)サイテク・テクノロジー・コーポレーシヨン (8)
【Fターム(参考)】