説明

複合材料の製造方法

【課題】本発明の目的は、第1面材と第2面材との間に硬質ポリウレタンを形成してなる複合材料において、その幅方向に対し均一な厚みとなるように構成した複合材料の製造方法を提供することにある。
【解決手段】第1面材の幅方向略中央部上に硬質ポリウレタンフォーム原液組成物500を供給する原液供給工程と、原液を供給した第1面材上400に所定の間隔を設けて第2面材401を供給する面材供給工程と、第1面材400と第2面材401の間で硬質ポリウレタンフォーム原液組成物が発泡・硬化する発泡硬化工程と、発泡硬化工程の少なくとも一部期間において、第1及び第2面材400、401の所定の間隔を保持する保持工程とを備え、保持工程において、上方に発泡膨張するポリウレタンフォームを面材の幅方向に平坦化させる平坦化手段100を少なくとも一部に設けることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は第1面材と第2面材との間に硬質ポリウレタンを形成してなる複合材料の製造方法に関する。さらに、詳しくは、第1面材の幅方向略中央部上に硬質ポリウレタンフォーム原液組成物を供給する原液供給工程と、前記原液を供給した第1面材上に所定の間隔を設けて第2面材を供給する面材供給工程と、前記第1面材と第2面材の間で前記硬質ポリウレタンフォーム原液組成物が発泡・硬化する発泡硬化工程と、前記発泡硬化工程の少なくとも一部期間において、第1及び第2面材の所定の間隔を保持する保持工程とを備える複合材料の製造方法である。
【背景技術】
【0002】
各種建築用あるいは冷蔵設備などの内外装に用いる断熱材として、中心部に位置する硬質ポリウレタンフォームを、樹脂製フィルムでラミネートしたクラフト紙などの表面材で貼着・挟持した硬質ポリウレタンボード(以下、ウレタンボードということがある)が多用されている。このウレタンボードは軽量であり、高い断熱性、防湿性などの特長を有する。
【0003】
ウレタンボードは、図5に示すように、スチールベルト60で搬送される下面材20上に硬質ポリウレタンフォーム原液組成物(以下、原液組成物ということがある)1を下面材20の略中央部に配置したミキシングヘッド30から吐出し、原液組成物1を発泡させつつその上面に更に上面材10を被覆し、スチールベルト50で上面材10を上から押さえるようにして発泡・硬化を行なわせて製造される。
【0004】
そして、生産性の高い連続生産法で行う場合、幅方向の両端部を開放し、原液組成物が発泡し硬化した後、両端部を切断・除去したり(例えば、特許文献1)、別に用意した帯状の紙材40を順次、両端部箇所に挿入し、両端部での液流れや発泡拡張を抑制したりしている。
【0005】
【特許文献1】特開2005−288746号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図6はポリウレタンの発泡・硬化の様子を説明しており、図6(a)は図5のA−A’位置での初期発泡状況を示し、ウレタン発泡方向は垂直上向きであることが分かる。図6(b)は図5のB−B’位置での発泡状況を示し、ウレタン発泡体が上面材10まで達すると上部への圧力と共に、発泡方向が面材の幅方向にも及ぶことが分かる。
【0007】
図6(c)は図5のC−C’位置での発泡状況を示し、製品幅方向に対し中央部が厚く両端がそれより薄いものとなっているのが分かる。これは、発泡体が上方向に膨張するため、上面材10を押し上げるように作用するため中央部が端部より厚くなるからである。また、上面材10を抑える作用のスチールベルト50に問題がある。すなわち、スチールベルト50は、使用環境によってベルトが伸長したり、又発泡圧等の負荷により蛇行現象を生じる。この蛇行修正のために、ベルト支持するローラを調整して蛇行を修正することが行なわれている。ところが、この蛇行調整によりスチールベルトの端部に伸びが生じベルト幅方向に対して弓状に形状変化する。このように弓状に変形したスチールベルト50で抑えられた場合、図6(c)に示すように、製品幅方向に対し中央部が厚く両端がそれより薄い製品となり均一な厚みとならないという問題がある。
【0008】
そこで、本発明の目的は、上記従来技術の有する問題点に鑑みて、第1面材と第2面材との間に硬質ポリウレタンを形成してなる複合材料において、その幅方向に対し均一な厚みとなるように構成した複合材料の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題は、各請求項記載の発明により達成される。すなわち、本発明に係る複合材料の製造方法は、第1面材と第2面材との間に硬質ポリウレタンを形成してなる複合材料の製造方法であって、
第1面材の幅方向略中央部上に硬質ポリウレタンフォーム原液組成物を供給する原液供給工程と、
前記原液を供給した第1面材上に所定の間隔を設けて第2面材を供給する面材供給工程と、
前記第1面材と第2面材の間で前記硬質ポリウレタンフォーム原液組成物が発泡・硬化する発泡硬化工程と、
前記発泡硬化工程の少なくとも一部期間において、第1及び第2面材の所定の間隔を保持する保持工程とを備え、
前記保持工程において、上方に発泡膨張するポリウレタンフォームを前記面材の幅方向に平坦化させる平坦化手段を少なくとも一部に設けることを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、平坦化手段により、上方に発泡膨張するポリウレタンフォームを面材の幅方向に平坦化させることができ、よって厚みの均一性が保持された複合材料を得ることができる。
【0011】
また、上記複合材料の製造方法において、前記平坦化手段が1以上のクラウンロールで構成され、当該クラウンロールが第2面材上方側に設置されることが好ましい実施態様である。
【0012】
この構成によれば、平坦化手段が1以上のクラウンロールで構成され、当該クラウンロールが第2面材上方側に設置されるので、クラウンロールが発泡膨張作用の上方側圧力を幅方向に分散させることができ、よって厚みの均一性が保持された複合材料を得ることができる。
【0013】
さらに、前記ポリウレタンフォームが硬化する前に前記平坦化手段を作用させることがより好ましい実施態様である。
【0014】
この構成によれば、ポリウレタンフォームが硬化する前に前記平坦化手段(又はクラウンロール)を作用させることができるので、効率良く発泡体を幅方向に分散させることができるので好ましい。
【0015】
また、上記複合材料の製造方法において、前記クラウンロールの膨張量が1.5〜2.5mmであることが好ましい。膨張量:Xは、以下式で算出される。
(式)X=(b−a)/2 ・・・(1)
式中、Xは膨張量、aはロール端部の直径、bはロール中央部の直径である(図3参照)。また、ロール端部から中央部までの曲率は膨張量1.5〜2.5mmの範囲で適宜設定できる。
【0016】
この構成によれば、クラウンロールの膨張量を1.5〜2.5mmの範囲に設定することで効率よく発泡体を幅方向に分散させることができるので好ましい。
【0017】
以上の構成によれば、第1面材と第2面材との間に硬質ポリウレタンを形成してなる複合材料において、その幅方向に対し均一な厚みとなるように構成した複合材料の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明に係る実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。図1〜4は、本実施形態に係る複合材料の製造方法及び製造装置の一例について説明する図である。
【0019】
(複合材料の構成)
本発明の複合材料は、第1面材と第2面材との間に硬質ポリウレタンを形成して構成される。第1及び第2面材は、硬質、軟質の表面材があり、硬質面材として例えば鋼板、ガルバリウム鋼板等が例示され、軟質面材として例えば耐水アルミ箔クラフト紙、ブラックポリコート紙等が例示される。また、上記軟質、硬質面材の組合せたもので構成されるものもある。面材の形状は、特に制限されないが、平面形状、波形状、角波形状、丸波形状等が例示される。
【0020】
硬質ポリウレタンは、独立気泡のフォームを形成して構成され、原材料等は公知のものが制限なく適用できる。複合材料の厚み寸法、形状等も適宜設計できる。また、第1及び第2面材の両方を硬質面材又は軟質面材で構成でき、いずれか一方を軟質面材で、他方を硬質面材で構成することもできる。
【0021】
(製造方法)
本発明の複合材料の製造方法は以下の工程を少なくとも備える。
(1)原料供給工程
第1面材の幅方向略中央部上に硬質ポリウレタンフォーム原液組成物を供給する。硬質ポリウレタンフォーム原液組成物は、従来公知のものが制限されず適用できる。原料供給手段は、公知の手段が適用でき、例えば、発泡装置が例示される。
(2)面材供給工程
硬質ポリウレタンフォーム原液組成物を供給した第1面材上に所定の間隔を設けて第2面材を供給する。第1面材上に所定の間隔を設けて第2面材を供給することで、所定の厚み(製品厚み)の複合材料を形成することができる。この所定の間隔は、製品仕上がり寸法に依存して設定される。所定の間隔を設ける手段は、公知の手段が適用でき、例えば、上下に設置され面材を挟みながら面材搬送可能なスチールベルトコンベア等が例示される。
(3)発泡硬化工程
第1面材と第2面材の間で硬質ポリウレタンフォーム原液組成物が発泡・硬化させる工程である。
(4)保持工程
発泡硬化工程の少なくとも一部期間において、第1及び第2面材の所定の間隔を保持する工程である。第1及び第2面材の所定の間隔を保持する手段は、例えば、上下に設置され面材を挟みながら面材搬送可能なスチールベルトコンベア等が例示される。
【0022】
この保持工程において、上方に発泡膨張するポリウレタンフォームを面材の幅方向に平坦化させる平坦化手段が少なくとも一部に設けられている。
【0023】
この平坦化手段は、平坦化手段が1以上のクラウンロールで構成され、当該クラウンロールが第2面材上方側に設置されるように構成されることが好ましい。さらに、ポリウレタンフォームが硬化する前に平坦化手段(又はクラウンロール)を作用させて、平坦化させることが好ましい。このクラウンロールは、例えばスチールベルトを介して第2面材上方側に設置され、上記所定の間隔を保持するように作用する。スチールベルトとクラウンロールの間隔は、硬質ポリウレタンフォームの発泡速度、硬化速度等物性等により適宜設定されるが、好ましくはクラウンロールの中央部(最大膨張部分)がスチールベルトを下方に押しあてるように設置させ、その押し当てられた部分が他の部分(例えば端部)より下方位置(端部を基準:0とすれば、−0.1mm〜−2.5mmの範囲、より好ましくは、−2.5mm)になるように構成する。このように構成することで、製品の設定厚みに対して製品の略中央部を強く押さえることができ、その結果、仕上がり製品の幅方向に対する厚みを均一にすることができる。
【0024】
本発明のクラウンロールは、その膨張量が1.5〜2.5mmであることが好ましい。膨張量:Xは、以下式で算出される。
(式)X=(b−a)/2 ・・・(1)
式中、Xは膨張量、aはロール端部の直径、bはロール中央部の直径である(図3参照)。また、ロール端部から中央部までの曲率は膨張量1.5〜2.0mmの範囲で適宜設定できる。
【0025】
(製造装置)
本発明の製造方法に使用できる製造装置の一例について図1を用いて説明する。符号200は発泡装置であり例えば、高圧発泡装置、低圧発泡装置が例示される。符号201は、原液を吐出するミキシングヘッドである。吐出量は、製品厚み、サイズ、原液の物性により適宜設定される。
【0026】
符号300、301は、面材を搬送する搬送機能を有するとともに、製品厚みを規制するスチールベルトラインである。下側スチールベルト300は、第1面材400を搬送する。上側スチールベルト301は、製品厚みを規制するために下側スチールベルト300と所定の間隔を置いて設置され、第2面材401を上方から下方に厚み規制する。
【0027】
符号100、101、102、103は、スチールベルト300、301を介して複合材料の厚み寸法を規制するために設けられるロール群である。ロール101、102、103は、フラット形状のロールである。ロール100は、中央部凸型のクラウン形状である(以下、クラウンロール100と称することがある)。
【0028】
クラウンロール100の群は、1本以上で構成され、フラット形状ロール101、102群の間に配置される。さらに、硬質ポリウレタンフォームの発泡が開始され、図1のD−D’位置を示す図2(a)において発泡体500が第2面材401に衝突し、スチールベルト301を介してクラウンロール100に抑えられて、図1のE−E’位置を示す図2(b)にこいて発泡体500が面材に対し幅方向に拡がる(平坦化される)。これにより、クラウンロール100がスチールベルト301を介して、上方に発泡膨張する発泡体500を面材に対して幅方向に拡げることができ、製品幅方向に対し中央部が他の部分よりも厚くなることがなく、幅方向での厚み寸法精度を向上できる。
【0029】
ロール103群は、ロール101、102、100の群に対向するように配置され、スチールベルト300に対する下部方向への圧力に対して抗するように作用する。これにより、上側のロール群と対を形成して構成され、製品厚み寸法精度をさらに精度よく実現できる。
【0030】
[実施例1]
発泡装置として、高圧発泡装置を用い、硬質ポリウレタン原料組成物を調製し、該装置に供給する。第1面材(被搬送対象物として下側面材)として鋼板、第2面材(上側面材)としてアルミ箔クラフト紙等を用いる。
【0031】
フラットロール101、102、103及びクラウンロール100群を図1に例示するように配置する。クラウンロール100群は、図2(a)、(b)に示すように、発泡体500が上面材に接する位置から、発泡体500が幅方向に広がり、発泡体500が硬化するまでの間に相当する位置に配置される。硬化してしまってからクラウンロールを作用させても厚み規制機能を発揮し難いからである。使用されたクラウンロール100の膨張量は2.5mmである。また、クラウンロール100とスチールベルトの配置構成として、クラウンロール両端部とスチールベルトを当接し、クラウンロール中央部がその両端部より2.5mm下方位置になるようにした(すなわち、クラウンロールの膨張量2.5mmの距離分スチールベルトを下方に押し下げている構成である)。
【0032】
[結果]
本実施例1で製造されたものは、製品幅方向中央部がその端部より厚くならず、幅方向での厚み寸法精度が高いものであった。
【0033】
<別実施例>
本発明の製造方法に用いられる製造装置は、上記の製造装置に限定されない。また、クラウンロール100に換えて、図4(a)、(b)に示すような中央部分の直径が端部の直径よりも大きい変形ロールを適用することもできる(平坦化手段の別例である)。また、クラウンロール群は、全て同一の膨張量である必要がなく、本願発明の作用効果を奏するように膨張量を個々に変えて、配置順番を設定することができる。また、クラウンロールと上記変形ロールを本願発明の作用効果を奏するように適宜組み合わせることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】複合材料の製造装置を説明するための図
【図2】複合材料の製造過程について説明する図
【図3】複合材料の製造過程について説明する図
【図4】クラウンロールを説明する図
【図5】従来のウレタンボードの製造装置を説明するための図
【図6】従来の製造装置で製造されるウレタンボードの製造過程について説明する図
【符号の説明】
【0035】
100 クラウンロール
101、102,103 ロール(フラットロール)
300、301 スチールベルト
400 第1面材
401 第2面材
200 発泡装置
201 ミキシングヘッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面材と第2面材との間に硬質ポリウレタンを形成してなる複合材料の製造方法であって、
第1面材の幅方向略中央部上に硬質ポリウレタンフォーム原液組成物を供給する原液供給工程と、
前記原液を供給した第1面材上に所定の間隔を設けて第2面材を供給する面材供給工程と、
前記第1面材と第2面材の間で前記硬質ポリウレタンフォーム原液組成物が発泡・硬化する発泡硬化工程と、
前記発泡硬化工程の少なくとも一部期間において、第1及び第2面材の所定の間隔を保持する保持工程とを備え、
前記保持工程において、上方に発泡膨張するポリウレタンフォームを前記面材の幅方向に平坦化させる平坦化手段を少なくとも一部に設ける
ことを特徴とする複合材料の製造方法。
【請求項2】
前記平坦化手段が1以上のクラウンロールで構成され、
当該クラウンロールが第2面材上方側に設置されることを特徴とする請求項1に記載の複合材料の製造方法。
【請求項3】
前記ポリウレタンフォームが硬化する前に前記平坦化手段を作用させることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の複合材料の製造方法。
【請求項4】
前記クラウンロールの膨張量が1.5〜2.5mmである請求項2又は請求項3に記載の複合材料の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−934(P2009−934A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−165133(P2007−165133)
【出願日】平成19年6月22日(2007.6.22)
【出願人】(000003148)東洋ゴム工業株式会社 (2,711)
【Fターム(参考)】