説明

複数電源供給装置

【課題】複数の負荷回路に対して、それぞれ所望の電源電圧を供給する複数電源供給装置において、短絡を検出し、負荷回路および電源回路を保護する。
【解決手段】負荷回路に対応して設けられ、出力オンオフ信号に基づいて、所望の電圧を出力する電源回路と、複数の電源回路のうち第1の電源回路を除く電源回路に対応して設けられ、対応する電源回路に対する出力オンオフ信号がオフの場合に当該電源回路の電圧出力端において基準値以上の電圧を検出するとFAIL信号を出力する短絡検出回路と、第1の電源回路から残りの電源回路に対して、所定の時間間隔をおいて出力オンオフ信号を順次オンにするとともに、FAIL信号が出力されたことを検出すると、すべての電源回路に対する出力オンオフ信号をオフにするシーケンス回路とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の負荷回路に対して、それぞれ所望の電源電圧を供給する複数電源供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の負荷回路に対して、それぞれ所望の電源電圧を供給する複数電源供給装置が知られている。図5は、負荷回路群と従来の複数電源供給装置の構成の1例を示すブロック図である。本図の例では、負荷回路群400は、電圧VoAを必要とする負荷回路A401aと、電圧VoBを必要とする負荷回路B401bとを含んでいる。
【0003】
複数電源供給装置300は、負荷回路A401aに対応した電源回路A310aと、負荷回路B401bに対応した電源回路B310bとを備えており、外部装置から入力電圧Vinと出力ON/OFF制御信号Cとが入力される。
【0004】
電源回路A310aは、入力電圧Vinを電圧VoAに変換し、電圧線360aを介して負荷回路A401aに出力する電圧変換回路A311aと、出力ON/OFF制御信号Cに基づいて、電圧変換回路A311aの電圧出力の出力/非出力を切り替える出力ON/OFF回路A312aとを備えている。
【0005】
また、電源回路B310bは、入力電圧Vinを電圧VoBに変換し、電圧線360bを介して負荷回路B401bに出力する電圧変換回路B311bと、出力ON/OFF制御信号Cに基づいて、電圧変換回路B311bの電圧出力の出力/非出力を切り替える出力ON/OFF回路B312bとを備えている。
【0006】
このような構成において、入力電圧Vinを複数電源供給装置300に入力し、出力ON/OFF制御信号CをHiにすると、負荷回路A401aに、電圧VoAが供給され、負荷回路B401bに、電圧VoBが供給されることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−96335号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
複数電源供給装置300を、例えば、負荷回路に電圧を供給して試験を行なう負荷回路試験装置に適用した場合には、試験対象となる負荷回路401を交換して配線するという作業が繰り返し行なわれる。この作業時に配線ミスが生じたり、負荷回路401に不具合が生じる等により、電源電圧を供給する電圧線360aと電圧線360bとが短絡する可能性がある。
【0009】
電源電圧を供給する電圧線360が短絡すると、正常な試験を行なうことができなくなるのみならず、負荷回路401に想定外の電圧が供給されたり、電源回路310に過電流が流れたりする場合があり、負荷回路401や電源回路310に対して悪影響を及ぼす可能性がある。
【0010】
そこで、本発明は、複数の負荷回路に対して、それぞれ所望の電源電圧を供給する複数電源供給装置において、電源供給路における短絡を検出し、負荷回路および電源回路を保護することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明によれば、複数の負荷回路に対して、それぞれ所望の電源電圧を供給する複数電源供給装置であって、前記複数の負荷回路に対応して設けられ、出力オンオフ信号に基づいて、所望の電圧を出力する複数の電源回路と、前記複数の電源回路のうち第1の電源回路を除く電源回路に対応して設けられ、対応する電源回路に対する出力オンオフ信号がオフの場合に当該電源回路の電圧出力端において基準値以上の電圧を検出するとFAIL信号を出力する短絡検出回路と、前記第1の電源回路から残りの電源回路に対して、所定の時間間隔をおいて出力オンオフ信号を順次オンにするとともに、前記FAIL信号が出力されたことを検出すると、すべての電源回路に対する出力オンオフ信号をオフにするシーケンス回路とを備えた複数電源供給装置が提供される。
【0012】
本発明において、対応する電源回路に対する出力オンオフ信号がオフの場合に当該電源回路の電圧出力端において基準値以上の電圧を検出することは、電源供給路において短絡が生じていることを意味する。そこで、電源回路に対する出力オンオフ信号を一斉にオフにすることで、負荷回路および電源回路を保護するようにしている。
【0013】
このとき、前記第1の電源回路は、複数の電源回路のうち出力する電圧が最も小さい電源回路とし、前記シーケンス回路は、出力する電圧の小さい順に電源回路に対する出力オンオフ信号を順次オンにすることが望ましい。
【0014】
また、前記所定の時間間隔は、直前に出力オンオフ信号をオンにする電源回路において、出力オンオフ信号がオンになってから出力電圧が安定するまでの時間以上の値とすることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、複数の負荷回路に対して、それぞれ所望の電源電圧を供給する複数電源供給装置において、電源供給路における短絡を検出し、負荷回路および電源回路を保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】負荷回路群と本実施形態に係る複数電源供給装置の構成を示すブロック図である。
【図2】ON/OFFシーケンス回路の動作について説明する図である。
【図3】短絡検出回路の動作を説明する真理値表である。
【図4】複数電源供給装置の動作について説明するフローチャートである。
【図5】負荷回路群と従来の複数電源供給装置の構成の1例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は、負荷回路群と本実施形態に係る複数電源供給装置の構成を示すブロック図である。本図に示すように、負荷回路群200は、電圧VoAを必要とする負荷回路A201aと、電圧VoBを必要とする負荷回路B201bとを含んでいる。
【0018】
複数電源供給装置100は、負荷回路A201aに対応した電源回路A110aと、負荷回路B201bに対応した電源回路B110bと、シーケンス回路として機能するON/OFFシーケンス回路120と、短絡検出回路130とを含んでいる。
【0019】
各電源回路110には、外部装置から電圧Vinが入力され、ON/OFFシーケンス回路120には、外部装置から出力ON/OFF制御信号Cが入力される。
【0020】
電源回路A110aは、電圧変換回路A111aと、出力ON/OFF回路A112aとを備えている。電圧変換回路A111aは、入力電圧Vinを電圧VoAに変換し、電圧線160aを介して負荷回路A201aに出力する。出力ON/OFF回路A112aは、ON/OFFシーケンス回路120が出力するONa信号に基づいて、電圧変換回路A111aの電圧出力の出力/非出力を切り替える。
【0021】
また、電源回路B110bは、電圧変換回路B111bと、出力ON/OFF回路B112bとを備えている。電圧変換回路B111bは、入力電圧Vinを電圧VoBに変換し、電圧線160bを介して負荷回路B201bに出力する。出力ON/OFF回路B112bは、ON/OFFシーケンス回路120が出力するONb信号に基づいて、電圧変換回路B111bの電圧出力の出力/非出力を切り替える。
【0022】
なお、負荷回路201および電源回路110の数は2個に限られず、3以上のn個であってもよい。
【0023】
短絡検出回路130は、電圧線160aと電圧線160bとの間で短絡が生じたことを検出する。短絡検出回路130は、短絡が生じたことを検出するとFAIL信号をON/OFFシーケンス回路120に出力する。
【0024】
ここで、ON/OFFシーケンス回路120の動作について図2を参照して説明する。なお、以下の説明では、いずれの信号線もアクティブHiであるものとする。
【0025】
本図に示すように、ON/OFFシーケンス回路120は、出力ON/OFF制御信号Cが時刻t0でHiになると、まず、時刻t1においてONa信号をHiにする。時刻t1は、例えば、出力ON/OFF制御信号CのHiを検出してからONa信号をHiにするのに必要な時間とすることができ、特に限定はされない。
【0026】
その後、Δt経過後の時刻t2において、ON/OFFシーケンス回路120はONb信号をHiにする。このように、ON/OFFシーケンス回路120は、n個のONn信号を出力する場合、時間差を設けて、ONn信号を順次Hiにしていく。ここで、Δtは、電圧変換回路A111aが電圧の出力を開始して、出力電圧が安定するまでの時間以上の値をあらかじめ設定しておくようにする。
【0027】
一方、ON/OFFシーケンス回路120は、短絡検出回路130が出力するFAIL信号を監視しており、FAIL信号がHiになると、その時の状態にかかわらず、即座にONa信号およびONb信号をLoにする。
【0028】
電源回路A110aの出力ON/OFF回路A312aは、ONa信号がHiの状態で、電圧変換回路A111aからの電圧を出力状態にし、ONa信号がLoの状態で、電圧変換回路A111aからの電圧を非出力状態にする。また、電源回路B110bの出力ON/OFF回路B312bは、ONb信号がHiの状態で、電圧変換回路B111bからの電圧を出力状態にし、ONb信号がLoの状態で、電圧変換回路B111bからの電圧を非出力状態にする。
【0029】
したがって、時刻t1において、負荷回路A201aに対する電源電圧VoA供給が開始され、時刻t2において、負荷回路B201bに対する電源電圧VoB供給が開始されることになる。一方、FAIL信号がHiになると、負荷回路A201aに対する電源電圧VoA供給および負荷回路B201bに対する電源電圧VoB供給が停止する。
【0030】
このようなON/OFFシーケンス回路120の動作により、時刻t1から時刻t2の間は、負荷回路B201bに対する電圧供給は行なわれないことになる。この間に、負荷回路B201bに対する電圧線160bにおいて電圧が検出されることは、電圧線160aと電圧線160bとの間で、短絡が生じていることを示すことになる。
【0031】
短絡検出回路130は、電源回路B110bに対応して設けられ、図3に示すような真理値表に基づいて動作する。本図に示すように、短絡検出回路130は、ONb信号がLoで、電圧変換回路B111bと負荷回路B201bとの間の電圧線160bの電圧VbがHiの場合のみHiを出力し、他の場合はLoを出力する。なお、ONb信号がHiで電圧VbがLoの場合は、電源回路B110bの不良の可能性があるが、ここでは取り扱わないものとする。
【0032】
この真理値表の動作を実現するため、短絡検出回路130は、例えば、本図に示すように、電圧線160bの電圧Vbを必要に応じて減衰するATT132と、電圧VbのHi状態の基準となるVrefと、電圧VbがHiになった場合にHiを出力する比較器131と、ONb信号がLoで比較器131の出力がHiの場合にFAIL信号をHiにするアンド回路133とを用いて構成することができる。もちろん、この構成は1例であり、ディスクリート、論理回路にかかわらず種々の構成で実現することができる。
【0033】
ここで、ONb信号がLoで、電圧VbがHiの場合とは、ONb信号がLo、すなわち、電圧変換回路B111bの電圧が非出力状態であるのにもかかわらず、負荷回路B201bの電圧入力側に電圧が生じている場合である。つまり、電圧線160aと電圧線160bとの間で短絡が生じている場合である。
【0034】
そこで、短絡が検出されると、即座に電圧変換回路A111aおよび電圧変換回路B111bの電源供給を停止することで、負荷回路201や電源回路110を保護するようにしている。
【0035】
本実施形態では、ON/OFFシーケンス回路120を用いて、電源回路110からの電圧を順次出力状態に切り替えていくため、確実に短絡状態を検出できるようにしている。なお、短絡が生じた場合の負荷回路201に対する悪影響をより少なくするため、供給電圧の小さい順に電源回路110を出力状態に切り替えるようにON/OFFシーケンス回路120を設定することが望ましい。
【0036】
次に、本実施形態における複数電源供給装置100の動作について図4のフローチャートを参照して説明する。複数電源供給装置100の動作を開始するために、外部装置から電圧Vinを入力した状態で、外部装置からの出力ON/OFF制御信号CをHiにする(S101)。これに応じて、ON/OFFシーケンス回路120が、ONaをHiにする(S102)。すると、電圧変換回路A111aから電圧VoAが負荷回路A201aに出力される(S103)。
【0037】
その後、ON/OFFシーケンス回路120は、時間Δtが経過するのを待ち(S104:No)、時間Δtが経過すると(S104:Yes)、ONbをHiにする(S105)。すると、電圧変換回路B111bから電圧VoBが負荷回路B201bに出力される(S106)。
【0038】
上記のシーケンスとは独立して、ON/OFFシーケンス回路120は、短絡検出回路130からのFAIL信号を監視する(S201)。そして、FAIL信号のHiを検出すると(S201:Yes)、ONaおよびONbをLoにする(S202)。これにより、電圧変換回路A111aおよび電圧変換回路B111bからの電圧が出力停止となり(S203)、負荷回路201および電源回路110が保護される。
【0039】
なお、3以上のn個の負荷回路201および電源回路110を用いる場合には、2番目以降の電源回路110に対応させたN−1個の短絡検出回路130を用いて、いずれかの短絡検出回路130が短絡を検出した場合にFAIL信号がHiになるようにしておく。
【0040】
また、ON/OFFシーケンス回路120は、各電源回路110に対して所定の時間間隔をおいて順次ONn信号がHiになるように制御する。このときの時間間隔Δtは、前段の電圧変換回路111が電圧を出力してから安定するまでの時間以上の値とすることができる。また、短絡が生じた場合の悪影響を少なくするために、供給電圧の小さい順に、ONn信号がHiになるように設定することが望ましい。
【0041】
以上説明したように、本実施形態によれば、複数の負荷回路に対して、それぞれ所望の電源電圧を供給する複数電源供給装置において、電源供給路における短絡を検出し、負荷回路および電源回路を保護することができる。
【符号の説明】
【0042】
100…複数電源供給装置
110…電源回路
111…電圧変換回路
112…出力ON/OFF回路
120…ON/OFFシーケンス回路
130…短絡検出回路
131…比較器
132…ATT
133…アンド回路
160…電圧線
200…負荷回路群
201…負荷回路
300…複数電源供給装置
310…電源回路
311…電圧変換回路
360…電圧線
400…負荷回路群
401…負荷回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の負荷回路に対して、それぞれ所望の電源電圧を供給する複数電源供給装置であって、
前記複数の負荷回路に対応して設けられ、出力オンオフ信号に基づいて、所望の電圧を出力する複数の電源回路と、
前記複数の電源回路のうち第1の電源回路を除く電源回路に対応して設けられ、対応する電源回路に対する出力オンオフ信号がオフの場合に当該電源回路の電圧出力端において基準値以上の電圧を検出するとFAIL信号を出力する短絡検出回路と、
前記第1の電源回路から残りの電源回路に対して、所定の時間間隔をおいて出力オンオフ信号を順次オンにするとともに、前記FAIL信号が出力されたことを検出すると、すべての電源回路に対する出力オンオフ信号をオフにするシーケンス回路とを備えたことを特徴とする複数電源供給装置。
【請求項2】
請求項1に記載の複数電源供給装置であって、
前記第1の電源回路は、複数の電源回路のうち出力する電圧が最も小さい電源回路であり、
前記シーケンス回路は、出力する電圧の小さい順に電源回路に対する出力オンオフ信号を順次オンにすることを特徴とする複数電源供給装置。
【請求項3】
請求項1に記載の複数電源供給装置であって、
前記所定の時間間隔は、直前に出力オンオフ信号をオンにする電源回路において、出力オンオフ信号がオンになってから出力電圧が安定するまでの時間以上の値であることを特徴とする複数電源供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−19349(P2011−19349A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−162568(P2009−162568)
【出願日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】