説明

親水性部材及びその製造方法

【課題】各種の基材表面に親水性に優れ、良好な耐摩耗性を有するに親水性層を備えた親水性部材及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】少なくとも、(a)触媒、(b)親水性ポリマー、及び(c)金属アルコキシドを含有する親水性組成物を、基材表面に塗設し、乾燥温度10℃〜60℃で乾燥する工程を含む親水性部材の製造方法および、該製造方法により得られた親水性部材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種の基板表面に防汚性、防曇性、水などの速乾性に優れ、且つ、良好な耐久性を有する親水性層を備えた親水性部材の製造方法および該製造方法により得られた親水性部材に関する。
【背景技術】
【0002】
部材表面への油性汚れの付着を防止する技術は、種々提案されている。特に、反射防止膜、光学フィルター、光学レンズ、眼鏡レンズ、鏡等の光学部材は、人が使用することによって、指紋、皮脂、汗、化粧品等の汚れが付着し、その機能を低下させると共に、汚れの除去が煩雑であるため、効果的な汚れ防止処理を施すことが望まれている。
また、近年、モバイルの普及に伴い、ディスプレイが屋外で使用されることが多くなってきたが、外光が入射されるような環境下で使用されると、この入射光はディスプレイ表面において正反射され、反射光が表示光と混合して表示画像が見にくくなるなどの問題を引き起こす。このため、ディスプレイ表面に反射防止光学部材を配置することがよく行われている。
このような反射防止光学部材としては、例えば、透明基板の表面に金属酸化物などからなる高屈折率層と低屈折率層を積層したもの、透明基板の表面に無機や有機フッ化化合物などの低屈折率層を単層で形成したもの、或いは、透明プラスチックフィルム基板の表面に透明な微粒子を含むコーティング層を形成し、凹凸状の表面により外光を乱反射させるものなどが知られている。これら反射防止光学部材表面も、前述の光学部材と同様に、人が使用することによって、指紋や皮脂などの汚れが付着しやすいが、汚れが付着した部分だけ高反射となり、汚れがより目立つという問題に加え、反射防止膜の表面には通常、微細な凹凸があり、汚れの除去が困難であるという問題もあった。
【0003】
固体部材の表面に汚れを着き難くしたり、付着した汚れを取りやすくした性能を持つ汚れ防止機能を表面に形成する技術が種々提案されている。特に反射防止部材と防汚性部材との組合わせとしては、例えば、主として二酸化ケイ素からなる反射防止膜と、有機ケイ素置換基を含む化合物で処理してなる防汚性、耐摩擦性材料(例えば、特許文献1参照。)、基板表面に末端シラノール有機ポリシロキサンで被覆した防汚性、耐摩擦性のCRTフィルター(例えば、特許文献2参照。)が提案されている。また、ポリフルオロアルキル基を含むシラン化合物をはじめとするシラン化合物を含有する反射防止膜(例えば、特許文献3参照。)や、二酸化ケイ素を主とする光学薄膜とパーフルオロアルキルアクリレートとアルコキシシラン基を有する単量体との共重合体との組合せ(例えば、特許文献4参照。)が、それぞれ提案されている。
しかしながら、従来の方法で形成された防汚層は、防汚性が不十分であり、特に、指紋、皮脂、汗、化粧品等の汚れが拭き取りにくく、また、フッ素やケイ素などの表面エネルギーの低い材料による表面処理は経時的な防汚性能の低下が懸念され、このため、防汚性と耐久性の優れた防汚性部材の開発が望まれている。
【0004】
光学部材などの表面に汎用される樹脂フィルム、或いは、ガラスや金属等の無機材料は、その表面は疎水性であるか、弱い親水性を示すものが一般的である。樹脂フィルム、無機材料などを用いた基板の表面が親水化されると、付着水滴が基板表面に一様に拡がり均一な水膜を形成するようになるので、ガラス、レンズ、鏡の曇りを有効に防止でき、湿分による失透防止、雨天時の視界性確保等に役立つ。さらに、都市媒塵、自動車等の排気ガスに含有されるカーボンブラック等の燃焼生成物、油脂、シーラント溶出成分等の疎水性汚染物質が付着しにくく、付着しても降雨や水洗により簡単に落せるようになるので、種々の用途に有用である。
【0005】
従来提案されている親水化するための表面処理方法、例えば、エッチング処理、プラズマ処理等によれば、高度に親水化されるものの、その効果は一時的であり、親水化状態を長期間維持することができない。また、親水性樹脂の一つとして親水性グラフトポリマーを使用した表面親水性塗膜も提案されている(例えば、非特許文献1参照。)が、この塗膜はある程度の親水性を有するものの、基板との親和性が充分とはいえず、より高い耐久性が求められている。
【0006】
また、表面親水性に優れたフィルムとしては従来から酸化チタンを使用したフィルムが知られており、例えば、基板表面に光触媒含有層形成し、光触媒の光励起に応じて表面を高度に親水化する技術が開示されており、この技術をガラス、レンズ、鏡、外装材、水回り部材等の種々の複合材に適用すれば、これら複合材に優れた防汚性を付与できることが報告されている(例えば、特許文献5参照。)。しかしながら酸化チタンを用いた親水性フィルムは充分な膜強度を有さず、さらに光励起されないと親水化効果が発現されないことから使用部位に制限があるという問題があるため、持続性があり、且つ、良好な耐摩耗性を有する防汚性部材が求められている。
【0007】
上記課題を達成するために、ゾルゲル有機無機ハイブリッド膜の特性に着眼し、親水性ポリマーとアルコキシドとを加水分解、縮重合することにより架橋構造を備えた親水性表面が優れた防曇性、防汚性を示し、且つ、良好な耐摩耗性を有することを見出されている(特許文献6参照)。このような架橋構造を有する親水性表面層は反応性基を末端に有する特定の親水性ポリマーと、架橋剤とを組合せることにより容易に得られる。
【特許文献1】特開昭64−86101号公報
【特許文献2】特開平4−338901号公報
【特許文献3】特公平6−29332号公報
【特許文献4】特開平7−16940号公報
【特許文献5】国際公開第96/29375号パンフレット
【特許文献6】特開2002−361800号公報
【非特許文献1】新聞“化学工業日報”1995年1月30日付け記事
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、ゾルゲル有機無機ハイブリッド膜の研究をさらに進めることで、上記先行技術を発展させ、各種基材表面に防曇性、防汚性、水などの速乾性に優れた親水性層を備えた親水性部材及び耐久性に優れた親水性部材の製造方法および、該製造方法により得られる親水性部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、ゾルゲル有機無機ハイブリッド膜の研究をさらに発展させた結果、 少なくとも、(a)触媒、(b)親水性ポリマー、及び(c)金属アルコキシドを含有する親水性組成物を各種基材に塗布、加熱乾燥させて親水性膜を基材上に形成する製造工程において、加熱(乾燥)温度を先行技術よりも低い温度(具体的には10〜60℃)で処理することで上記課題を達成できることを見出した。低い温度で処理することで急激な乾燥、加水分解反応を抑制することができ、親水性膜に部分的なひび割れ等が発生する欠陥故障を起こしにくくできる。作用は十分解明できていないが体積収縮が小さく、応力緩和によりびび割れがおきにくいと考えられる。
親水性層表面にひび割れが発生した部分は防曇性や防汚性の効果が低下する欠点があるが本発明により改善できる。
特にスプレーコートなどによる比較的厚膜の親水層を有する部材においては高温で処理すると上記の欠陥を起こしやすいが本発明の製造方法により改善できる。
即ち、本発明は、以下のとおりである。
【0010】
(1)
少なくとも、(a)触媒、(b)親水性ポリマー、及び(c)金属アルコキシドを含有する親水性組成物を、基材表面に塗設し、乾燥温度10℃〜60℃で乾燥する工程を含む親水性部材の製造方法。
(2)
前記(c)金属アルコキシドがSi、Ti、Zr、Alから選択される金属アルコキシド化合物である(1)記載の親水性部材の製造方法。
(3)
前記(a)触媒、(c)金属アルコキシドの含有質量比(a)/(c)が、50/50〜20/80である(1)または(2)記載の親水性部材の製造方法。
(4)
前記基材がガラス、プラスチック、金属、またはタイルである(1)〜(3)のいずれかに記載の親水性部材の製造方法。
(5)
(1)〜(4)のいずれかに記載の製造方法により得られた親水性部材。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、各種の基板表面に防汚性、防曇性、且つ耐摩擦性に優れた親水膜を備えた親水性部材の製造方法、および該製造方法により得られた親水性部材を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の表面親水性部材は、適切な基材上に、親水性ポリマー鎖を有し、且つ、金属アルコキシドを加水分解、重縮合して形成された架橋構造を有する親水性被膜(親水性層または親水層ともいう)を備えるものであるが、このような架橋構造を有する親水性層は、後に詳述する金属アルコキシド化合物と、親水性グラフト鎖を形成しうる親水性の官能基を有する化合物と、適切な触媒とを用いて、適宜、形成することができる。金属アルコキシドのなかでも、反応性、入手の容易性からSiのアルコキシドが好ましく、具体的には、シランカップリング剤に用いる化合物を好適に使用することができる。
【0013】
前記したような金属アルコキシドの加水分解、縮重合により形成された架橋構造を、本発明では以下、適宜、ゾルゲル架橋構造と称する。このようなポリマー鎖の片末端が固定されずポリマー鎖の運動性が大きい親水性層は、例えば、(A)シランカップリング基等の反応性基を末端に有する一般式(I)で表される高分子化合物、または、該反応性基を幹ポリマーの側鎖として有する一般式(II)で表される高分子化合物と、(B)加水分解性の金属アルコキシド化合物と、該加水分解及び重縮合を生起する金属錯体触媒とを含有する親水性塗布液組成物を調製し、それを塗布、乾燥して表面親水性層を形成することにより容易に形成し得る。以下に、この好ましい態様である親水性層を形成するための親水性塗布液組成物に含まれる各成分について説明する。
【0014】
〔親水性ポリマー〕
本発明に使用される親水性ポリマーは、親水性基を有し、且つ金属アルコキシド化合物と、触媒の作用等により結合を生じる基を有するポリマーである。親水性基としては、好ましくはカルボキシ基、カルボキシ基のアルカリ金属塩、スルホン酸基、スルホン酸基のアルカリ金属塩、ヒドロキシ基、アミド基、カルバモイル基、スルホンアミド基、スルファモイル基等の官能基が挙げられる。これらの基は、ポリマー中のどの位置に存在しても良い。ポリマー主鎖より直接、または連結基を介し結合しているか、ポリマー側鎖やグラフト側鎖中に結合しており、複数個が存在するポリマー構造が好ましい。金属アルコキシド化合物と、触媒の作用により結合を生じる基としては、カルボキシル基、カルボキシ基のアルカリ金属塩、無水カルボン酸基、アミノ基、ヒドロキシ基、エポキシ基、メチロール基、メルカプト基、イソシアナート基、ブロックイソシアナート基、アルコキシシリル基、アルコキシチタネート基、アルコキシアルミネート基、アルコキシジルコネート基、エチレン性不飽和基、エステル基、テトラゾール基などの反応性基が挙げられる。また親水性基、および金属アルコキシド化合物と触媒の作用等により結合を生じる基を有するポリマー構造としては、エチレン性不飽和基(例えばアクリレート基、メタクリレート基、イタコン酸基、クロトン酸基、桂皮酸基、スチレン基、ビニル基、アリル基、ビニルエーテル基、ビニルエステル基など)がビニル重合したポリマー、ポリエステル、ポリアミド、ポリアミック酸などのような縮重合したポリマー、ポリウレタンなどのような付加重合したポリマーの他、セルロース、アミロース、キトサンなどの天然物環状ポリマー構造を好ましく挙げることができる。具体的には一般式(I)、(II)で表される構造を挙げられる。
【0015】
【化1】

【0016】
式(I)および(II)中、R1、R2、R3、R4、R5およびR6はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜8の炭化水素基を表し、Xは反応性基(カルボキシル基、その塩、無水カルボン酸基、アミノ、ヒドロキシル、エポキシ基、メチロール、メルカプト、イソシアナート、ブロックイソシアナート基、アルコキシシリル基、アルコキシチタネート基、アルコキシアルミネート基、アルコキシジルコネート基、エチレン性不飽和二重結合、エステル結合、テトラゾール基)を表し、AおよびL1、L2,L3は、それぞれ独立に単結合または連結基を示し、Yは−NHCOR7、−CONH2、−CON(R72、−COR7、−OH、−CO2M、−SO3M、−PO3M、−OPO3M又は−N(R731を表し、ここで、R7は炭素数1〜18のアルキル基、アリール基、アラルキル基を表し、Mは水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属又はオニウムを表し、Z1はハロゲンイオンを表し、Bは式(III)を表す。
【0017】
【化2】

【0018】
式(III)中、R1、R2、L1及びYは式(I)および(II)中のものと同じである。
【0019】
本発明で用いられる親水性ポリマーは、反応性基と親水性基を有することが好ましい。反応性基は、主鎖の一つの末端のみに有する場合や、主鎖に複数個有する場合などがある。
「反応性基」は、金属アルコキシドの加水分解、重縮合物に反応して化学結合を形成できる官能基を意味する。また、反応性基同士が化学結合を形成してもよい。親水性ポリマーは、水溶性であることが好ましく、金属アルコキシドの加水分解、重縮合物と反応することにより水不溶性になることが好ましい。
化学結合は、通常の意味と同様に、共有結合、イオン結合、配位結合、水素結合を含む。化学結合は、共有結合であることが好ましい。
反応性基は、一般には、ポリマーの架橋剤に含まれる反応性基と同様であり、熱または光により架橋を形成できる化合物である。架橋剤について、「架橋剤ハンドブック」山下晋三、金子東助著、大成社刊(1981)に記載がある。
【0020】
反応性基の例は、カルボキシル(HOOC−)、その塩(MOOC−、Mはカチオン)、無水カルボン酸基(例えば、無水コハク酸、無水フタル酸または無水マレイン酸から誘導される一価の基)、アミノ(H2N−)、ヒドロキシル(HO−)、エポキシ基(例、グリシジル基)、メチロール(HO−CH2−)、メルカプト(HS−)、イソシアナート(OCN−)、ブロックイソシアナート基、アルコキシシリル基、アルコキシチタネート基、アルコキシジルコネート基、エチレン性不飽和二重結合、エステル結合、テトラゾール基を含む。反応性基としては、アルコキシシリル基が最も好ましい。片末端には、2以上の反応性基を有していてもよい。2以上の反応性基は、互いに異なっていてもよい。
【0021】
親水性ポリマーの繰り返し単位と反応性基との間や、親水性ポリマーの繰り返し単位と主鎖に連結基が介在していることが好ましい。連結基AおよびL1、L2,L3は、それぞれ独立に単結合または、−O−、−S−、−CO−、−NH−、−N<、脂肪族基、芳香族基、複素環基、およびそれらの組合せから選ばれることが好ましい。連結基は、−O−、−S−、−CO−、−NH−、あるいは、−O−または−S−または−CO−または−NH−を含む組合せであることが好ましい。
【0022】
(末端に反応性基を有する親水性ポリマー(I))
片末端に反応性基を有する親水性ポリマーは、例えば、連鎖移動剤(ラジカル重合ハンドブック(エヌ・ティー・エス、蒲池幹治、遠藤剛)に記載)やIniferter (Macromolecules1986,19,p287−(Otsu)に記載)の存在下に、親水性モノマー(例、アクリルアミド、アクリル酸、メタクリル酸3−スルホプロピルのカリウム塩)をラジカル重合させることにより合成できる。連鎖移動剤の例は、3−メルカプトプロピオン酸、2−アミノエタンチオール塩酸塩、3−メルカプトプロパノール、2−ヒドロキシエチルジスルフィド、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランを含む。また、連鎖移動剤を使用せず、反応性基(例、カルボキシル)を有するラジカル重合開始剤を用いて、親水性モノマー(例、アクリルアミド)をラジカル重合させてもよい。
片末端に反応性基を有する親水性ポリマーの質量平均分子量は、100万以下が好ましく、1000乃至100万がさらに好ましく、2000乃至10万が最も好ましい。
【0023】
この一般式(I)で表される高分子化合物は、末端に反応性基を有する親水性ポリマーである。上記一般式(I)において、R1、R2はそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数8以下の炭化水素基を表す。炭化水素基としては、アルキル基、アリール基などが挙げられ、炭素数8以下の直鎖、分岐又は環状のアルキル基が好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、シクロペンチル基等が挙げられる。R1、R2は、効果及び入手容易性の観点から、好ましくは水素原子、メチル基又はエチル基である。
【0024】
これらの炭化水素基は更に置換基を有していてもよい。アルキル基が置換基を有するとき、置換アルキル基は置換基とアルキレン基との結合により構成され、ここで、置換基としては、水素を除く一価の非金属原子団が用いられる。好ましい例としては、ハロゲン原子(−F、−Br、−Cl、−I)、アルコキシ基、アリーロキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、N−アルキルアミノ基、N,N−ジアルキルアミノ基、アシルオキシ基、N−アルキルカルバモイルオキシ基、N−アリールカバモイルオキシ基、アシルアミノ基、ホルミル基、アシル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、カルバモイル基、N−アルキルカルバモイル基、N,N−ジアルキルカルバモイル基、N−アリールカルバモイル基、N−アルキル−N−アリールカルバモイル基、スルホ基、スルホナト基、スルファモイル基、N−アルキルスルファモイル基、N,N−ジアルキルスルファモイル基、N−アリールスルファモイル基、N−アルキル−N−アリールスルファモイル基、ホスフォノ基、ホスフォナト基、ジアルキルホスフォノ基、ジアリールホスフォノ基、モノアルキルホスフォノ基、アルキルホスフォナト基、モノアリールホスフォノ基、アリールホスフォナト基、ホスフォノオキシ基、ホスフォナトオキシ基、アリール基、アルケニル基が挙げられる。
【0025】
一方、置換アルキル基におけるアルキレン基としては前述の炭素数1から20までのアルキル基上の水素原子のいずれか1つを除し、2価の有機残基としたものを挙げることができ、好ましくは炭素原子数1から12までの直鎖状、炭素原子数3から12までの分岐状ならびに炭素原子数5から10までの環状のアルキレン基を挙げることができる。該置換基とアルキレン基を組み合わせる事により得られる置換アルキル基の、好ましい具体例としては、クロロメチル基、ブロモメチル基、2−クロロエチル基、トリフルオロメチル基、メトキシメチル基、メトキシエトキシエチル基、アリルオキシメチル基、フェノキシメチル基、メチルチオメチルと、トリルチオメチル基、エチルアミノエチル基、ジエチルアミノプロピル基、モルホリノプロピル基、アセチルオキシメチル基、ベンゾイルオキシメチル基、N−シクロヘキシルカルバモイルオキシエチル基、N−フェニルカルバモイルオキシエチルル基、アセチルアミノエチル基、N−メチルベンゾイルアミノプロピル基、2−オキシエチル基、2−オキシプロピル基、カルボキシプロピル基、メトキシカルボニルエチル基、アリルオキシカルボニルブチル基、
【0026】
クロロフェノキシカルボニルメチル基、カルバモイルメチル基、N−メチルカルバモイルエチル基、N,N−ジプロピルカルバモイルメチル基、N−(メトキシフェニル)カルバモイルエチル基、N−メチル−N−(スルホフェニル)カルアバモイルメチル基、スルホブチル基、スルホナトブチル基、スルファモイルブチル基、N−エチルスルファモイルメチル基、N,N−ジプロピルスルファモイルプロピル基、N−トリルスルファモイルプロ
ピル基、N−メチル−N−(ホスフォノフェニル)スルファモイルオクチル基、ホスフォノブチル基、ホスフォナトヘキシル基、ジエチルホスフォノブチル基、ジフェニルホスフォノプロピル基、メチルホスフォノブチル基、メチルホスフォナトブチル基、トリルホスフォノへキシル基、トリルホスフォナトヘキシル基、ホスフォノオキシプロピル基、ホスフォナトオキシブチル基、ベンジル基、フェネチル基、α−メチルベンジル基、1−メチル−1−フェニルエチル基、p−メチルベンジル基、シンナミル基、アリル基、1−プロペニルメチル基、2−ブテニル基、2−メチルアリル基、2−メチルプロペニルメチル基、2−プロピニル基、2−ブチニル基、3−ブチニル基等を挙げることができる。
【0027】
AおよびL1は単結合又は有機連結基を表す。ここで、AおよびL1が有機連結基を表す場合、AおよびL1は非金属原子からなる多価の連結基を示し、具体的には、1個から60個までの炭素原子、0個から10個までの窒素原子、0個から50個までの酸素原子、1個から100個までの水素原子、及び0個から20個までの硫黄原子から成り立つものである。より具体的な連結基としては下記の構造単位またはこれらが組合わされて構成されるものを挙げることができる。
【0028】
【化3】

【0029】
また、Yは−NHCOR7、−CONH2、−CON(R72、−COR7、−OH、−CO2M、−SO3M、−PO3M、−OPO3M又は−N(R731を表し、ここで、R7は、炭素数1〜18の直鎖、分岐又は環状のアルキル基、アリール基、アラルキル基を表し、Mは水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属又はオニウムを表し、Z1はハロゲンイオンを表す。また、−CON(R72のように複数のR7を有する場合、R7同士が結合して環を形成していてもよく、また、形成された環は酸素原子、硫黄原子、窒素原子な
どのヘテロ原子を含むヘテロ環であってもよい。R7はさらに置換基を有していてもよく、ここで導入可能な置換基としては、前記R1、R2がアルキル基の場合に導入可能な置換基として挙げたものを同様に挙げることができる。
【0030】
7としては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、シクロペンチル基等が好適に挙げられる。また、Mとしては、水素原子;リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属;カルシウム、バリウム等のアルカリ土類金属、又は、アンモニウム、ヨードニウム、スルホニウムなどのオニウムが挙げられる。Yとしては、具体的には、−NHCOCH3、−CONH2、−COOH、−SO3-NMe4+、モルホリル基等が好ましい。
【0031】
本発明に好適に用い得る親水性ポリマーの具体例(例示化合物1〜例示化合物38)を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0032】
【化4】

【0033】
【化5】

【0034】
【化6】

【0035】
【化7】

【0036】
上記に例示した親水性ポリマーは、下記一般式(i)で表されるラジカル重合可能なモノマーと、下記一般式(ii)で表されるラジカル重合において連鎖移動能を有するシランカップリング剤を用いてラジカル重合することにより合成することができる。シランカップリング剤(ii)が連鎖移動能を有するため、ラジカル重合においてポリマー主鎖末端にシランカップリング基が導入されたポリマーを合成することができる。
【0037】
【化8】

【0038】
上記式(i)及び(ii)において、A、R1〜R2、L1、Yは、上記式(I)と同義である。また、これらの化合物は、市販されおり、また容易に合成することもできる。
【0039】
(複数個反応性基を有する親水性ポリマー(II))
上記式(II)で表される反応性基を複数個有する親水性ポリマーは、金属アルコキシドと反応し得る官能基を有する幹ポリマーに親水性ポリマー側鎖を導入してなる親水性グラフトポリマーを用いることができる。
上記式(II)において、R3、R4、R5およびR6は、それぞれ独立に、上記式(I)のR1、R2と同様の置換基を表す。L2、L3は、上記式(I)のL1と同義である。Bは、上記式(III)で表され、式(III)中の、R1、R2、L1及びYは式(I)および(II)中のものと同じである。Xは上記式(I)と同義である。
この親水性グラフトポリマーは、一般的にグラフト重合体の合成法として公知の方法を用いて作成することができる。具体的には、一般的なグラフト重合体の合成方法は、“グラフト重合とその応用”井手文雄著、昭和52年発行、高分子刊行会、および“新高分子実験学2、高分子の合成・反応”高分子学会編、共立出版(株)1995、に記載されており、これらを適用することができる。
【0040】
グラフト重合体の合成方法としては、基本的に1.幹高分子から枝モノマーを重合させる、2.幹高分子に枝高分子を結合させる、3.幹高分子に枝高分子を共重合させる(マクロマー法)という3つの方法に分けられる。これらの3つの方法のうち、いずれを使用しても本発明に用いる親水性グラフトポリマーを作成することができるが、特に製造適性、膜構造の制御という観点からは「3.マクロマー法」が優れている。
【0041】
マクロモノマーを使用したグラフトポリマーの合成は前記の“新高分子実験学2、高分子の合成・反応”高分子学会編、共立出版(株)1995に記載されている。また山下雄他著“マクロモノマーの化学と工業”アイピーシー、1989にも詳しく記載されている。本発明に使用されるグラフトポリマーは、まず、前記の方法により合成した親水性のマクロモノマー(親水性ポリマー側鎖の前駆体に相当する)と架橋剤と反応し得る官能基を有するモノマーとを共重合することにより、合成することができる。
【0042】
(親水性マクロモノマー)
本発明で使用される親水性マクロモノマーのうち特に有用なものは、アクリル酸、メタクリル酸などのカルボキシル基含有のモノマーから誘導されるマクロモノマー、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ビニルスチレンスルホン酸、およびその塩のモノマーから誘導されるスルホン酸系マクロモノマー、アクリルアミド、メタクリルアミドなどのアミド系マクロモノマー、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルホルムアミドなどのN−ビニルカルボン酸アミドモノマーから誘導されるアミド系マクロモノマー、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、グリセロールモノメタ
クリレートなどの水酸基含有モノマーから誘導されるマクロモノマー、メトキシエチルアクリレート、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、ポリエチレングリコールアクリレートなどのアルコキシ基もしくはエチレンオキシド基含有モノマーから誘導されるマクロモノマーである。またポリエチレングリコール鎖もしくはポリプロピレングリコール鎖を有するモノマーも本発明のマクロモノマーとして有用に使用することができる。これらのマクロモノマーのうち有用な高分子の質量平均分子量(以下、単に分子量と称する)は400〜10万の範囲であり、好ましい範囲は1000〜5万、特に好ましい範囲は1500〜2万である。分子量が400以上であれば有効な親水性が得られ、また10万以下であれば主鎖を形成する共重合モノマーとの重合性が高くなる傾向があり、いずれも好ましい。
【0043】
親水性マクロモノマーと共重合可能でかつ架橋剤と反応し得る官能基(以下、適宜、反応性官能基と称する)を有するモノマーの反応性官能基としては、カルボキシル基あるいはその塩、アミノ基、水酸基、フェノール性水酸基、グリシジルなどのエポキシ基、メチル基、(ブロック)イソシアネート基、シランカップリング剤等が挙げられる。一般的なモノマーとしては、「架橋剤ハンドブック」山下晋三、金子東助著、大成社刊〔1981〕、「紫外線硬化システム」加藤清視著、総合技術センター刊〔1989〕、「UV・EB硬化ハンドブック(原料編)」加藤清視著、高分子刊行会〔1985〕、「新・感光性樹脂の実際技術」赤松清著、シーエムシー刊行(102−145頁)〔1987〕等に記載されているモノマーが挙げられる。具体的には、(メタ)アクリル酸若しくはそのアルカリ、アミン塩、イタコン酸若しくはそのアルカリ、アミン塩、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、下記式(1)で表される如きフェノール性水酸基含有モノマー、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル、N−メチロールメタクリルアミド、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、また、下記式(2)で例示されるようなブロックイソシアネートモノマー等のブロックイソシアネートモノマー、ビニルアルコキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリアルコキシシランなどが挙げられる。
【0044】
【化9】

【0045】
これらのグラフトポリマーとしては、質量平均分子量が100万以下のものが好ましく用いられ、分子量1000〜100万、さらに好ましくは2万〜10万の範囲のものである。分子量が100万以下であれば親水性被膜形成用塗布液を調製する際に溶媒への溶解性が悪化することなく、塗布液粘度が低くなり、均一な被膜を形成し易いなどハンドリング性に問題がなく、好ましい。
【0046】
上記、親水性ポリマーは、式中Yで表される親水性を発現する親水性官能基を有しており、この官能基の密度が高いほど表面親水性が高くなり好ましい。親水性官能基密度は、親水性ポリマー1g当たりの官能基モル数で表すことができ、1〜30meq/gが好まく、2〜20meq/gがより好ましく、3〜15meq/gが最も好ましい。
親水性ポリマー(II)の共重合比率は、親水性官能基Yの量が上記範囲内になるように任意に設定することができる。好ましくは、Bを含有するモノマーのモル比(m)とXを含有するモノマーのモル比(n)が、m/n=30/70〜99/1の範囲が好ましく、m/n=40/60〜98/2がより好ましく、m/n=50/50〜97/3が最も好ましい。mがm/n=30/70以上の比率であれば親水性が不足することなく、一方、nがm/n=99/1以上の比率であれば、反応性基量が十分量となり、十分な硬化が得られ、膜強度も十分なものとなる。
【0047】
上記、親水性ポリマーは、金属アルコキシドの加水分解、重縮合物と混合した状態で架橋皮膜を形成する。有機成分である親水性ポリマーは、皮膜強度や皮膜柔軟性に対して関与しており、特に、親水性ポリマーの粘度が0.1〜100cPs(5%水溶液、25℃測定)、好ましくは0.5〜70cPs、さらに好ましくは1〜50cPsの範囲にあると、良好な膜物性を与える。
【0048】
〔金属アルコキシド〕
本発明で用いられる金属アルコキシドは、その構造中に加水分解して重縮合可能な官能基を有し、架橋剤としての機能を果たす加水分解重合性化合物であり、金属アルコキシド同士が重縮合することにより架橋構造を有する強固な架橋皮膜を形成し、さらに、前記親水性ポリマーとも化学結合する。金属アルコキシドは、Si、Ti、Zr、Alから選択される金属アルコキシドであることが好ましい。これらの金属アルコキシドは一般式(IV-1)および一般式(IV-2)で表すことができ、式中、R8は水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、R9はアルキル基又はアリール基を表し、ZはSi、Ti又はZrを表し、mは0〜2の整数を表す。R8及びR9がアルキル基を表す場合の炭素数は好ましくは1から4である。アルキル基又はアリール基は置換基を有していてもよく、導入可能な置換基としては、ハロゲン原子、アミノ基、メルカプト基などが挙げられる。なお、この化合物は低分子化合物であり、分子量2000以下であることが好ましい。
【0049】
(R8m−Z−(OR94-m (IV-1)
Al−(OR93 (IV-2)
【0050】
以下に、一般式(IV-1)および一般式(IV-2)で表される加水分解性化合物の具体例を挙げるが、本発明はこれに限定されるものではない。ZがSiの場合、即ち、加水分解性化合物中にケイ素を含むものとしては、例えば、トリメトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシン、テトラプロポキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、γ−クロロプリピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、等を挙げることができる。これらのうち特に好ましいものとしては、トリメトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、等を挙げることができる。
【0051】
ZがTiである場合、即ち、チタンを含むものとしては、例えば、トリメトキシチタネート、テトラメトキシチタネート、トリエトキシチタネート、テトラエトキシチタネート、テトラプロポキシタネート、クロロトリメトキシチタネート、クロロトリエトキシチタネート、エチルトリメトキシチタネート、メチルトリエトキシチタネート、エチルトリエトキシチタネート、ジエチルジエトキシチタネート、フェニルトリメトキシチタネート、フェニルトリエトキシチタネート等を挙げることができる。ZがZrである場合、即ち、ジルコニウムを含むものとしては、例えば、前記チタンを含むものとして例示した化合物に対応するジルコネートを挙げることができる。
また、中心金属がAlである場合、即ち、加水分解性化合物中にアルミニウムを含むものとしては、例えば、トリメトキシアルミネート、トリエトキシアルミネート、トリプロポキシアルミネート、トリイソプロポキシアルミネート等を挙げることができる。
【0052】
〔触媒〕
触媒としては酸、あるいは塩基性化合物をそのまま用いるか、あるいは水またはアルコールなどの溶媒に溶解させた状態のものを用いることができる。また前記のほかに金属錯体触媒を用いることもできる。
酸性触媒、塩基性触媒の種類としては特に限定されないが下記のものを用いることができる。
酸性触媒としては、塩酸などのハロゲン化水素、硝酸、硫酸、亜硫酸、硫化水素、過塩素酸、過酸化水素、炭酸、蟻酸、酢酸などのカルボン酸、ベンゼンスルホン酸などが例として挙げられる。
塩基性触媒としては、アンモニア水などのアンモニア性塩基、エチルアミン、アニリンなどのアミン類などが例として挙げられる。
上記触媒を水溶液として用いる場合の濃度は、濃度が濃くなり、塗布液中で沈殿物が発生する故障がないという観点から、1N以下が好ましい。
本発明に用いる触媒として、特に好ましくは金属錯体触媒である。
本発明の親水性層の形成において使用できる金属錯体触媒は、金属アルコキシド化合物の加水分解、重縮合を促進し、親水性ポリマーとの結合を生起することができる。特に好ましい金属錯体触媒としては、周期律表の2A,3B,4A及び5A族から選ばれる金属元素とβ−ジケトン、ケトエステル、ヒドロキシカルボン酸又はそのエステル、アミノアルコール、エノール性活性水素化合物の中から選ばれるオキソ又はヒドロキシ酸素含有化合物から構成される金属錯体である。
構成金属元素の中では、Mg,Ca,St,Baなどの2A族元素、Al,Gaなどの3B族元素,Ti,Zrなどの4A族元素及びV,Nb及びTaなどの5A族元素が好ましく、それぞれ触媒効果の優れた錯体を形成する。その中でもZr、Al及びTiから得られる錯体が優れており、好ましい。
【0053】
上記金属錯体の配位子を構成するオキソ又はヒドロキシ酸素含有化合物は、本発明においては、アセチルアセトン、アセチルアセトン(2,4−ペンタンジオン)、2,4−ヘプタンジオンなどのβジケトン、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸ブチルなどのケトエステル類、乳酸、乳酸メチル、サリチル酸、サリチル酸エチル、サリチル酸フェニル、リンゴ酸,酒石酸、酒石酸メチルなどのヒドロキシカルボン酸及びそのエステル、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、4−ヒドロキシ−2−ペンタノン、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、4−ヒドロキシ−2−ヘプタノンなどのケトアルコール類、モノエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N−メチル−モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアミノアルコール類、メチロールメラミン、メチロール尿素、メチロールアクリルアミド、マロン酸ジエチルエステルなどのエノール性活性化合物、アセチルアセトン(2,4−ペンタンジオン)のメチル基、メチレン基またはカルボニル炭素に置換基を有する化合物が挙げられる。
【0054】
好ましい配位子はアセチルアセトン誘導体であり、アセチルアセトン誘導体は、本発明においては、アセチルアセトンのメチル基、メチレン基またはカルボニル炭素に置換基を有する化合物を指す。アセチルアセトンのメチル基に置換する置換基としては、いずれも炭素数が1〜3の直鎖又は分岐のアルキル基、アシル基、ヒドロキシアルキル基、カルボキシアルキル基、アルコキシ基、アルコキシアルキル基であり、アセチルアセトンのメチレン基に置換する置換基としてはカルボキシル基、いずれも炭素数が1〜3の直鎖又は分岐のカルボキシアルキル基及びヒドロキシアルキル基であり、アセチルアセトンのカルボニル炭素に置換する置換基としては炭素数が1〜3のアルキル基であってこの場合はカルボニル酸素には水素原子が付加して水酸基となる。
【0055】
好ましいアセチルアセトン誘導体の具体例としては、アセチルアセトン、エチルカルボニルアセトン、n−プロピルカルボニルアセトン、i−プロピルカルボニルアセトン、ジアセチルアセトン、1―アセチル−1−プロピオニル−アセチルアセトン、ヒドロキシエチルカルボニルアセトン、ヒドロキシプロピルカルボニルアセトン、アセト酢酸、アセトプロピオン酸、ジアセト酢酸、3,3−ジアセトプロピオン酸、4,4−ジアセト酪酸、カルボキシエチルカルボニルアセトン、カルボキシプロピルカルボニルアセトン、ジアセトンアルコールが挙げられる。中でも、アセチルアセトン及びジアセチルアセトンがとくに好ましい。上記のアセチルアセトン誘導体と上記金属元素の錯体は、金属元素1個当たりにアセチルアセトン誘導体が1〜4分子配位する単核錯体であり、金属元素の配位可能の手がアセチルアセトン誘導体の配位可能結合手の数の総和よりも多い場合には、水分子、ハロゲンイオン、ニトロ基、アンモニオ基など通常の錯体に汎用される配位子が配位してもよい。
【0056】
好ましい金属錯体の例としては、トリス(アセチルアセトナト)アルミニウム錯塩、ジ(アセチルアセトナト)アルミニウム・アコ錯塩、モノ(アセチルアセトナト)アルミニウム・クロロ錯塩、ジ(ジアセチルアセトナト)アルミニウム錯塩、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、環状アルミニウムオキサイドイソプロピレート、トリス(アセチルアセトナト)バリウム錯塩、ジ(アセチルアセトナト)チタニウム錯塩、トリス(アセチルアセトナト)チタニウム錯塩、ジ−i−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナト)チタニウム錯塩、ジルコニウムトリス(エチルアセトアセテート)、ジルコニウムトリス(安息香酸)錯塩、等が挙げられる。これらは水系塗布液での安定性及び、加熱乾燥時のゾルゲル反応でのゲル化促進効果に優れているが、中でも、特にエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、ジ(アセチルアセトナト)チタニウム錯塩、ジルコニウムトリス(エチルアセトアセテート)が好ましい。
【0057】
上記した金属錯体の対塩の記載を本明細書においては省略しているが、対塩の種類は、錯体化合物としての電荷の中性を保つ水溶性塩である限り任意であり、例えば硝酸塩、ハロゲン酸塩、硫酸塩、燐酸塩などの化学量論的中性が確保される塩の形が用いられる。金属錯体のシリカゾルゲル反応での挙動については、J.Sol−Gel.Sci.and
Tec.16.209(1999)に詳細な記載がある。反応メカニズムとしては以下のスキームを推定している。すなわち、塗布液中では、金属錯体は、配位構造を取って安定であり、塗布後の加熱乾燥過程に始まる脱水縮合反応では、酸触媒に似た機構で架橋を促進させるものと考えられる。いずれにしても、この金属錯体を用いたことにより塗布液経時安定性及び皮膜面質の改善と、高親水性、高耐久性の、いずれも満足させるに至った。
【0058】
また、上記の金属錯体触媒の他に、金属アルコキシド化合物の加水分解、重縮合を促進し、親水性ポリマーとの結合を生起することができるものを併用してもよい。このような触媒としては、塩酸などのハロゲン化水素、硝酸、硫酸、亜硫酸、硫化水素、過塩素酸、過酸化水素、炭酸、蟻酸や酢酸などのカルボン酸、そのRCOOHで表される構造式のRを他元素または置換基によって置換した置換カルボン酸、ベンゼンスルホン酸などのスルホン酸などの酸性を示す化合物、あるいは、アンモニア水などのアンモニア性塩基、エチルアミンやアニリンなどのアミン類などの塩基性化合物が挙げられる。
上記の金属錯体触媒は、市販品として容易に入手でき、また公知の合成方法、例えば各金属塩化物とアルコールとの反応によっても得られる。
架橋反応が充分進行し、塗膜強度が良好である点から、親水性組成物中の触媒と金属アルコキシドの含有比率は50/50wt%〜20/80wt%が好ましい。さらに好ましくは、45/55wt%〜30/70wt%である。
【0059】
〔抗菌剤〕
本発明の親水性部材に抗菌性、防カビ性、防藻性を付与するために、親水性塗布液組成物に抗菌剤を含有させることができる。親水性層の形成において、親水性、水溶性抗菌剤を含有させることが好ましい。親水性、水溶性抗菌剤を含有させることにより、表面親水性を損なうことなく抗菌性、防カビ性、防藻性に優れた表面親水性部材が得られる。
抗菌剤としては、親水性部材の親水性を低下させない化合物を添加することが好ましく、そのような抗菌剤としては、無機系抗菌剤または、水溶性の有機系抗菌剤が挙げられる。抗菌剤としては、黄色ブドウ球菌や大腸菌に代表される細菌類や、かび,酵母などの真菌類など、身の回りに存在する菌類に対して殺菌効果を発揮するものが用いられる。
【0060】
有機系の抗菌剤としては、フェノールエーテル誘導体,イミダゾール誘導体,スルホン誘導体,N・ハロアルキルチオ化合物,アニリド誘導体,ピロール誘導体,第4アンモニ
ウム塩、ピリジン系、トリアジン系、ベンゾイソチアゾリン系、イソチアゾリン系などが挙げられる。
例えば1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、N−フルオルジクロロメチルチオ−フタルイミド、2,3,5,6−テトラクロロイソフタロニトリル、N−トリクロロメチルチオ−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボキシイミド、8−キノリン酸銅、ビス(トリブチル錫)オキシド、2−(4−チアゾリル)ベンズイミダゾール〈以後、TBZと表示〉、2−ベンズイミダゾールカルバミン酸メチル〈以後、BCMと表示〉、10,10'−オキシビスフェノキシアルシン〈以後、OBPAと表示〉、2,3,5,6−テトラクロロ−4−(メチルスルフォン)ピリジン、ビス(2−ピリジルチオ−1−オキシド)亜鉛〈以後、ZPTと表示〉、N,N−ジメチル−N'−(フルオロジクロロメチルチオ)−N’−フェニルスルファミド〈ジクロルフルアニド〉、ポリ−(ヘキサメチレンビグアニド)ハイドロクロライド、ジチオ−2−2'−ビス(ベンズメチルアミド)、2−メチル−4,5−トリメチレン−4−イソチアゾリン−3−オン、2−ブロモ−2−ニトロ−1,3−プロパンジオール、ヘキサヒドロ−1,3−トリス−(2−ヒドロキシエチル)−S−トリアジン、p−クロロ−m−キシレノール、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン等が挙げられるが、これらに制限されるものではない。
これら有機系の抗菌剤は、親水性、耐水性、昇華性、安全性等を考慮し、適宜選択して使用することができる。有機系抗菌剤中では、親水性、抗菌効果、コストの点から2−ブロモ−2−ニトロ−1,3−プロパンジオール、TBZ、BCM、OBPA、ZPTが好ましい。
【0061】
無機系の抗菌剤としては、殺菌作用の高い順に、水銀,銀,銅,亜鉛,鉄,鉛,ビスマスなどが挙げられる。例えば、銀、銅、亜鉛、ニッケル等の金属や金属イオンをケイ酸塩系担体、リン酸塩系担体、酸化物、ガラスやチタン酸カリウム、アミノ酸等に担持させたものが挙げられる。たとえばゼオライト系抗菌剤、ケイ酸カルシウム系抗菌剤、リン酸ジルコニウム系抗菌剤、リン酸カルシウム抗菌剤、酸化亜鉛系抗菌剤、溶解性ガラス系抗菌剤、シリカゲル系抗菌剤、活性炭系抗菌剤、酸化チタン系抗菌剤、チタニア系抗菌剤、有機金属系抗菌剤、イオン交換体セラミックス系抗菌剤、層状リン酸塩−四級アンモニウム塩系抗菌剤、抗菌ステンレス等が挙げられるが、これらに制限されるものではない。
【0062】
天然系抗菌剤としては、カニやエビの甲殻等に含まれるキチンを加水分解して得られる塩基性多糖類のキトサンがある。
本発明には、アミノ酸の両側に金属を複合させたアミノメタルから成る日鉱の「商品名ホロンキラービースセラ」が好ましい。
これらは蒸散性ではなく、また、親水層のポリマーや架橋剤成分と相互作用しやすく、安定に分子分散あるいは固体分散可能であり、親水層表面に抗菌剤が効果的に露出しやすく、かつ、水がかかっても溶出することなく、効果を長期間持続させることができ、人体に影響を及ぼすこともない。また、親水層や塗布液に対して安定に分散することができ、親水層や塗布液の劣化もおこらない。
上記抗菌剤の中では、抗菌効果が大きいことから、銀系無機抗菌剤と水溶性有機抗菌剤が最も好ましい。特にケイ酸塩系担体であるゼオライトに銀を担持させた銀ゼオライトやシリカゲルに銀を担持させた抗菌剤や2−ブロモ−2−ニトロ−1,3−プロパンジオール、TPN、TBZ、BCM、OBPA、ZPTが好ましい。特に好ましい市販の銀ゼオライト系抗菌剤としては、品川燃料の「ゼオミック」や富士シリシア化学の「シルウェル」や日本電子材料の「バクテノン」等がある。その他、銀を無機イオン交換体セラミックスに担持させた東亜合成の「ノバロン」や触媒化成工業の「アトミーボール」やトリアジン系抗菌剤の「サンアイバックP」も好ましい。
【0063】
抗菌剤の含有量は、一般的には親水層の全固形分に対して、0.001〜10質量%であるが、0.005〜5質量%が好ましく、0.01〜3質量%がより好ましく、0.0
2〜1.5質量%が特に好ましく、0.05〜1質量%が最も好ましい。含有量が0.001質量%以上であれば効果的な抗菌効果を得ることができる。また、含有量が10質量%以下であれば親水性も低下せず、かつ経時性も悪化せず、防汚性、防曇性に悪影響を及ぼさない。
【0064】
〔無機微粒子〕
本発明の親水層は、親水性の向上や、皮膜のひび割れ防止、膜強度向上のために、無機微粒子を含有してもよい。無機微粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化チタン、炭酸マグネシウム、アルギン酸カルシウムまたはこれらの混合物が好適に挙げられる。
無機微粒子は、平均粒径が5nm〜10μmであるのが好ましく、0.5〜3μmであるのがより好ましい。上記範囲内であると、親水層中に安定に分散して、親水層の膜強度を十分に保持し、耐久性の高い親水性に優れる親水性部材を形成することができる。
上述したような無機微粒子の中で、特にコロイダルシリカ分散物が好ましく、市販品として容易に入手することができる。
無機微粒子の含有量は、親水層の全固形分に対して、80質量%以下であるのが好ましく、50質量%以下であるのがより好ましい。
【0065】
〔その他の成分〕
以下に、必要に応じて本発明の親水性部材の親水性層形成用塗布液に用いることのできる種々の添加剤について述べる。
1)界面活性剤
本発明の親水性部材の親水性層形成用塗布液には、界面活性剤を添加してもよい。
界面活性剤としては、特開昭62−173463号、同62−183457号の各公報に記載されたものが挙げられる。例えば、ジアルキルスルホコハク酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、脂肪酸塩類等のアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、アセチレングリコール類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類等のノニオン性界面活性剤、アルキルアミン塩類、第4級アンモニウム塩類等のカチオン性界面活性剤が挙げられる。なお、前記界面活性剤の代わりに有機フルオロ化合物を用いてもよい。前記有機フルオロ化合物は、疎水性であることが好ましい。前記有機フルオロ化合物としては、例えば、フッ素系界面活性剤、オイル状フッ素系化合物(例、フッ素油)及び固体状フッ素化合物樹脂(例、四フッ化エチレン樹脂)が含まれ、特公昭57−9053号(第8〜17欄)、特開昭62−135826号の各公報に記載されたものが挙げられる。
【0066】
2)紫外線吸収剤
本発明においては、親水性部材の耐候性向上、耐久性向上の観点から、紫外線吸収剤を用いることができる。
紫外線吸収剤としては、例えば、特開昭58−185677号公報、同61−190537号公報、特開平2−782号公報、同5−197075号公報、同9−34057号公報等に記載されたベゾトリアゾール系化合物、特開昭46−2784号公報、特開平5−194483号公報、米国特許第3214463号等に記載されたベンゾフェノン系化合物、特公昭48−30492号公報、同56−21141号公報、特開平10−88106号公報等に記載された桂皮酸系化合物、特開平4−298503号公報、同8−53427号公報、同8−239368号公報、同10−182621号公報、特表平8−501291号公報等に記載されたトリアジン系化合物、リサーチディスクロージャーNo.24239号に記載された化合物やスチルベン系、ベンズオキサゾール系化合物に代表される紫外線を吸収して蛍光を発する化合物、いわゆる蛍光増白剤、などが挙げられる。
添加量は目的に応じて適宜選択されるが、一般的には、固形分換算で0.5〜15質量%であることが好ましい。
【0067】
3)酸化防止剤
本発明の親水性部材の安定性向上のため、親水性層形成用塗布液に酸化防止剤を添加することができる。酸化防止剤としては、ヨーロッパ公開特許、同第223739号公報、同309401号公報、同第309402号公報、同第310551号公報、同第310552号公報、同第459416号公報、ドイツ公開特許第3435443号公報、特開昭54−262047号公報、同63−113536号公報、同63−163351号公報、特開平2−262654号公報、特開平2−71262号公報、特開平3−121449号公報、特開平5−61166号公報、特開平5−119449号公報、米国特許第4814262号明細書、米国特許第4980275号明細書等に記載のものを挙げることができる。
添加量は目的に応じて適宜選択されるが、固形分換算で0.1〜8質量%であることが好ましい。
【0068】
4)溶剤
本発明の親水性部材の親水性層形成時に、基板に対する均一な塗膜の形成性を確保するために、親水性層形成用塗布液に適度に有機溶剤を添加することも有効である。
溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン等のケトン系溶剤、メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−プロパノール、1−ブタノール、tert−ブタノール等のアルコール系溶剤、クロロホルム、塩化メチレン等の塩素系溶剤、ベンゼン、トルエン等の芳香族系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピルなどのエステル系溶剤、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶剤、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル等のグリコールエーテル系溶剤、などが挙げられる。
この場合、VOC(揮発性有機溶剤)の関連から問題が起こらない範囲での添加が有効であり、その量は親水性部材形成時の塗布液全体に対し0〜50質量%が好ましく、より好ましくは0〜30質量%の範囲である。
【0069】
5)高分子化合物
本発明の親水性部材の親水性層形成用塗布液には、親水性層の膜物性を調整するため、親水性を阻害しない範囲で各種高分子化合物を添加することができる。高分子化合物としては、アクリル系重合体、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、シェラック、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ゴム系樹脂、ワックス類、その他の天然樹脂等が使用できる。また、これらは2種以上併用してもかまわない。これらのうち、アクリル系のモノマーの共重合によって得られるビニル系共重合が好ましい。更に、高分子結合材の共重合組成として、「カルボキシル基含有モノマー」、「メタクリル酸アルキルエステル」、又は「アクリル酸アルキルエステル」を構造単位として含む共重合体も好ましく用いられる。
【0070】
この他にも、必要に応じて、例えば、レベリング添加剤、マット剤、膜物性を調整するためのワックス類、基板への密着性を改善するために、親水性を阻害しない範囲でタッキファイヤーなどを含有させることができる。
タッキファイヤーとしては、具体的には、特開2001−49200号公報の5〜6pに記載されている高分子量の粘着性ポリマー(例えば、(メタ)アクリル酸と炭素数1〜20のアルキル基を有するアルコールとのエステル、(メタ)アクリル酸と炭素数3〜14の脂環族アルコールとのエステル、(メタ)アクリル酸と炭素数6〜14の芳香族アルコールとのエステルからなる共重合物)や、重合性不飽和結合を有する低分子量粘着付与性樹脂などである。
【0071】
〔親水性組成物の調液〕
本発明にかかる親水性組成物の調製方法について記述する。親水性組成物は触媒、親水性ポリマー、金属アルコキシドを含有し、必要に応じて界面活性剤、シリカゾル等を含んでもよい。
触媒を基材に塗設する直前に混合することが好ましい。具体的には触媒混合直後〜1時間以内で塗設することが好ましい。触媒を混合し、長時間放置したのちに塗設すると親水性組成物の粘度があがり、塗布むら等の欠陥を生じることがある。
その他の成分も塗設直前に混合することが好ましいが混合後、長時間保存してもかまわない。
親水性組成物の調製は、親水性ポリマー、金属アルコキシド、触媒をエタノールなどの溶媒に溶解後、攪拌することで実施できる。反応温度は室温〜80℃であることが好ましく、反応時間、即ち攪拌を継続する時間は1〜72時間の範囲であることが好ましく、この攪拌により両成分の加水分解・重縮合を進行させて、有機無機複合体ゾル液を得ることができる。
【0072】
前記親水性ポリマー、金属アルコキシド、触媒を含有する親水性組成物を調製する際に用いる溶媒としては、これらを均一に、溶解、分散し得るものであれば特に制限はないが、例えば、メタノール、エタノール、水等の水系溶媒が好ましい。
【0073】
以上述べたように、本発明の親水性組成物により親水性膜を形成するための有機無機複合体ゾル液(親水性組成物)の調製は、ゾルゲル法を利用している。ゾルゲル法については、作花済夫「ゾル−ゲル法の科学」(株)アグネ承風社(刊)(1988年)、平島硯「最新ゾル−ゲル法による機能性薄膜作成技術」総合技術センター(刊)(1992年)等の成書等に詳細に記述され、それらに記載の方法を本発明において親水性組成物の調製に適用することができる。
このような本発明の親水性組成物を含む溶液を、適切な支持体上に被膜し、乾燥することで、本発明の親水性部材を得ることができる。即ち、本発明の親水性部材は、支持体上に、前記本発明の親水性組成物を被膜し、加熱、乾燥することにより形成された親水性膜を有するものである。
親水性膜の形成において、親水性組成物を含む溶液を被膜した後の乾燥温度は10℃〜60℃である。より好ましくは25℃〜50℃である。乾燥温度が10℃より低いと十分な架橋反応が進まず塗膜強度が低い。60℃より高いと塗膜のひび割れを生じやすく部分的に防曇性、防汚性が不十分になる。乾燥時間は5分〜1時間が好ましい。更に好ましくは10分〜30分間である。
乾燥時間が短すぎると乾燥不十分により塗膜強度が低下することがある。必要以上に乾燥時間を長くしすぎると基材が劣化したりする。 また、加熱手段としては、公知の手段、例えば、温度調整機能を有する乾燥機などを用いることが好ましい。
【0074】
〔基材〕
本発明に用いられる基材は、特に限定されないが、ガラス、プラスチック、金属、タイル、セラミックス、木、石、セメント、コンクリート、繊維、布帛、紙、皮革、それらの組合せ、それらの積層体が、いずれも好適に利用できる。特に好ましい基材は、ガラス基板またはでプラスチック基板である。
ガラス基板としては、ソーダガラス、鉛ガラス、硼珪酸ガラスなどの何れのガラスを使用しても良い。また目的に応じ、フロート板ガラス、型板ガラス、スリ板ガラス、網入ガラス、線入ガラス、強化ガラス、合わせガラス、複層ガラス、真空ガラス、防犯ガラス、高断熱Low−E複層ガラスを使用することができる。また素板ガラスのまま、前記親水層を塗設できるが、必要に応じ、親水層の密着性を向上させる目的で、片面又は両面に、酸化法や粗面化法等により表面親水化処理を施すことができる。上記酸化法としては、例えばコロナ放電処理、グロー放電処理、クロム酸処理(湿式)、火炎処理、熱風処理、オ
ゾン・紫外線照射処理等が挙げられる。粗面化法としては、サンドブラスト、ブラシ研磨等により機械的に粗面化することもできる。
【0075】
本発明に用いられるプラスチック基板としては、特に制限はないが、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、セロファン、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、アセチルセルロースブチレート、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコール、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリメチルペンテン、ポリスルフォン、ポリエーテルケトン、アクリル、ナイロン、フッ素樹脂、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルフォン等のフィルムもしくはシートを挙げることができる。その中でも特にポリエチレンテレフタレート,ポリエチレンナフタレート等のポリエステフィルムが好ましい。なお、光学的には、透明性に優れている方が好ましい場合が多いが、用途によっては半透明、あるいは、印刷されたものも用いられる。プラスチック基板の厚みは、積層する相手によってさまざまである。例えば曲面の多い部分では、薄いものが好まれ、6〜50μm程度のものが用いられる。また平面に用いられ、あるいは、強度を要求されるところでは50〜400μmが用いられる。
【0076】
基材と親水層の密着性を向上させる目的で、所望により基材の片面又は両面に、酸化法や粗面化法等により表面親水化処理を施すことができる。上記酸化法としては、例えばコロナ放電処理、グロー放電処理、クロム酸処理(湿式)、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線照射処理等が挙げられる。粗面化法としては、サンドブラスト、ブラシ研磨等により機械的に粗面化することもできる。
更に、一層以上の下塗り層を設けることができる。下塗り層の素材としては、親水性樹脂や水分散性ラテックスを用いることができる。
【0077】
親水性樹脂としては、たとえば、ポリビニルアルコール(PVA)、セルロース系樹脂〔メチルセルロース(MC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、等〕、キチン類、キトサン類、デンプン、エーテル結合を有する樹脂〔ポリエチレンオキサイド(PEO)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルエーテル(PVE)等〕、カルバモイル基を有する樹脂〔ポリアクリルアミド(PAAM)、ポリビニルピロリドン(PVP)、等〕等が挙げられる。また、カルボキシル基を有するポリアクリル酸塩、マレイン酸樹脂、アルギン酸塩、ゼラチン類等も挙げることができる。
上記の中でも、ポリビニルアルコール系樹脂、セルロース系樹脂、エーテル結合を有する樹脂、カルバモイル基を有する樹脂、カルボキシル基を有する樹脂、及びゼラチン類から選ばれる少なくとも1種が好ましく、特に、ポリビニルアルコール(PVA)系樹脂、ゼラチン類が好ましい。
【0078】
水分散性ラテックスとしては、アクリル系ラテックス、ポリエステル系ラテックス、NBR樹脂、ポリウレタン系ラテックス、ポリ酢酸ビニル系ラテックス、SBR樹脂、ポリアミド系ラテックス等が挙げられる。中でも、アクリル系ラテックスが好ましい。
上記の親水性樹脂及び水分散性ラテックスは、各々一種単独で用いるほか二種以上を併用してもよく、親水性樹脂と水分散性ラテックスとを併用してもよい。
また、上記親水性樹脂や水分散性ラテックスを架橋する架橋剤を用いても良い。
本発明に適応可能な架橋剤としては、公知の熱により架橋を形成する架橋剤を用いることができる。一般的な熱架橋剤としては、「架橋剤ハンドブック」山下晋三、金子東助著、大成社刊(1981)に記載されているものがある。本発明に用いられる架橋剤の官能基数は2個以上で、且つ、親水性樹脂や水分散性ラテックスと有効に架橋可能ならば特に制限はない。具体的な熱架橋剤としては、ポリアクリル酸等のポリカルボン酸、ポリエチレンイミン等のアミン化合物、エチレンまたはプロピレングリコールジグリシジルエーテル、テトラエチレングリコールジグリシジルエーテル、ノナエチレンチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレンまたはポリプロピレングリコールグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル等のポリエポキシ化合物、グリオキザル、テレフタルアルデヒドなどのポリアルデヒド化合物、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジフェニルメタンイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、シクロヘキシルジイソシアネート、シクロヘキサンフェニレンジイソシアネート、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート、イソプロピルベンゼン−2,4−ジイソシアネート、ポリプロピレングリコール/トリレンジイソシアネート付加反応物などのポリイソシアネート化合物、ブロックポリイソシアネート化合物、テトラアルコキンシランなどのシランカップリング剤、アルミニウム、銅、鉄(III)のアセチルアセトナートなどの金属架橋剤、トリメチロールメラミン、ペンタエリスリトールなどのポリメチロール化合物、などが挙げられる。これらの熱架橋剤のなかでも、塗布溶液の調液のしやすさ、作製した親水性層の親水性低下を防止するという観点から水溶性の架橋剤であることが好ましい。
前記親水性樹脂及び/又は水分散性ラテックスの、下塗り層中における総量としては、0.01〜20g/m2 が好ましく、0.1〜10g/m2 がより好ましい。
【0079】
〔親水性部材使用時の層構成〕
本発明の親水性部材を、防汚性及び/または防曇性効果の発現を期待して使用する場合、その目的、形態、使用場所に応じ、適宜別の層を付加して使用することができる。以下に必要に応じ付加される層構成について述べる。
1)接着層
本発明の親水性部材を、別の基材上に貼り付けて使用する場合、基材の裏面に、接着層として、感圧接着剤である粘着剤が好ましく用いられる。粘着剤としては、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ビニルエーテル系、スチレン系粘着剤などの一般的に粘着シートに用いられるものが使用できる。
光学的に透明なものが必要な場合は光学用途向けの粘着剤が選ばれる。着色、半透明、マット調などの模様が必要な場合は、基材における模様付けのほかに粘着剤に、染料、有機や無機の微粒子を添加して効果を出すことも行うことができる。
粘着付与剤が必要な場合、樹脂、例えば、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、石油系樹脂、スチレン系樹脂およびこれらの水素添加物などの接着付与樹脂を1種類または混合して用いることができる。
本発明で用いられる粘着剤の粘着力は一般に言われる強粘着であり、200g/25mm以上、好ましくは300g/25mm以上、さらに好ましくは400g/25mm以上である。なお、ここでいう粘着力はJIS Z 0237 に準拠し、180度剥離試験によって測定した値である。
【0080】
2)離型層
本発明の親水性部材が前記の接着層を有する場合には、さらに離型層を付加することができる。離型層には、離型性をもたせるために、離型剤を含有させることが好ましい。離型剤しては、一般的に、ポリオルガノシロキサンからなるシリコーン系離型剤、フッ素系化合物、ポリビニルアルコールの長鎖アルキル変性物、ポリエチレンイミンの長鎖アルキル変性物等が用いることができる。また、ホットメルト型離型剤、ラジカル重合、カチオン重合、重縮合反応等により離型性モノマーを硬化させるモノマー型離型剤などの各種の離型剤や、この他、アクリル−シリコーン系共重合樹脂、アクリル−フッ素系共重合樹脂、及びウレタン−シリコーン−フッ素系共重合樹脂などの共重合系樹脂、並びに、シリコーン系樹脂とアクリル系樹脂との樹脂ブレンド、フッ素系樹脂とアクリル系樹脂との樹脂ブレンドが用いられる。また、フッ素原子及び/又はケイ素原子のいずれかの原子と、活性エネルギー線重合性基含有化合物を含む硬化性組成物を、硬化して得られるハードコート離型層としてもよい。
【0081】
3)その他の層
親水性層の上に、保護層を設けてもよい。保護層は、ハンドリング時や輸送時、保管時などの親水性表面の傷つきや、汚れ物質の付着による親水性の低下を防止する機能を有する。保護層としては、上記離型層や、下塗り層に用いた親水性ポリマー層を使用することができる。保護層は、親水性部材を適切な基材へ貼り付けた後には剥がされる。
【0082】
〔構造体の形態〕
本発明の親水層を有する構造体は、シート状、ロール状あるいはリボン状の形態で供給されてもよく、適切な基材に貼り付けるために、あらかじめカットされたもとして供給することもできる。
【0083】
〔表面自由エネルギー〕
親水性層表面の親水性度は、汎用的に、水滴接触角で測定される。しかし、本発明のような非常に親水性の高い表面においては、水滴接触角が10°以下、さらには5°以下になることがあり、親水性度の相互比較を行うには、限界がある。一方、固体表面の親水性度をより詳細に評価する方法として、表面自由エネルギーの測定がある。種々の方法が提案されているが、本発明では、一例として、Zismanプロット法を用いて表面自由エネルギーを測定した。具体的には、塩化マグネシウムなどの無機電解質の水溶液が濃度とともに表面張力が大きくなる性質を利用し、その水溶液を用いて空中、室温条件で接触角を測定した後、横軸にその水溶液の表面張力、縦軸に接触角をcosθに換算した値をとり、種々の濃度の水溶液の点をプロットして直線関係を得、cosθ=1すなわち、接触角=0°になるときの表面張力を、固体の表面自由エネルギーと定義する測定方法である。水の表面張力は72mN/mであり、表面自由エネルギーの値が大きいほど親水性が高いといえる。
このような方法で測定した表面自由エネルギーが、70mN/m〜95mN/m、好ましくは72mN/m〜93mN/m、さらに好ましくは75mN/m〜90mN/mの範囲にある親水層が、親水性に優れ、良好な性能を示す。
【0084】
本発明の親水性被膜を塗設した親水性部材は、窓ガラス等に適用(使用、貼り付け)する場合、視界確保の観点から透明性が重要である。本発明の親水性部材にかかる親水性層は、透明性に優れ、膜厚が厚くても透明度が損なわれず、耐久性との両立が可能である。親水性層の厚さは、0.01μm〜10μmが好ましく、0.1μm〜1μmがより好ましい。0.01μm以上であれば、十分な親水性が得られるため好ましく、10μm以下であれば、乾燥むら等の欠陥を生じることがないため好ましい。
透明性は、分光光度計で可視光領域(400nm〜800nm)の光透過率を測定し評価する。光透過率が100%〜70%が好ましく、95%〜75%がより好ましく、95%〜80%の範囲にあることが最も好ましい。この範囲にあることによって、視界をさえぎることなく、親水性被膜を塗設した親水性部材を各種用途に適用することができる。
【0085】
本発明の親水性部材は、親水性層形成用塗布液組成物を、適切な基材上に塗布し、加熱、乾燥して表面親水性層を形成することで得ることができる。親水性層形成のための加熱温度と加熱時間は、ゾル液中の溶媒が除去され、強固な皮膜が形成できる温度と時間であれば特に制限はないが、製造適性などの点から加熱温度は150℃以下であることが好ましく、加熱時間は1時間以内が好ましい。
本発明の親水性部材は、公知の塗布方法で作成することが可能であり、特に限定がなく、例えばスプレーコーティング法、ディップコーティング法、フローコーティング法、スピンコーティング法、ロールコーティング法、フィルムアプリケーター法、スクリーン印刷法、バーコーター法、刷毛塗り、スポンジ塗り等の方法が適用できる。
【0086】
本発明を実施するに際し、スプレーを用いて塗布する場合、用いるスプレーに特に限定はなく公知のものを使用できる。たとえばエアーブラシやエアーガンを用いたり、エアーレスガンタイプを用いてもよい。またトリガータイプやディスペンサータイプのポンプ式スプレーを用いることもできる。ガス充填タイプのエアーゾルスプレーを用いてもかまわない。環境に配慮したガスを用いないタイプが好ましく、特に使いやすさの観点からトリガータイプを用いることが望ましい。
【0087】
本発明の親水性部材が適用可能なものとしては、例えば、防曇効果を期待する場合には透明なものであり、透明なガラス基板または透明なプラスチック基板、レンズ、プリズム、鏡等である。
ガラスとしては、ソーダガラス、鉛ガラス、硼珪酸ガラスなどの何れのガラスを使用しても良い。また目的に応じ、フロート板ガラス、型板ガラス、スリ板ガラス、網入ガラス、線入ガラス、強化ガラス、合わせガラス、複層ガラス、真空ガラス、防犯ガラス、高断熱Low−E複層ガラスを使用することができる。
防曇効果を有する部材が適用可能な用途としては、車両用バックミラー、浴室用鏡、洗面所用鏡、歯科用鏡、道路鏡のような鏡;眼鏡レンズ、光学レンズ、写真機レンズ、内視鏡レンズ、照明用レンズ、半導体用レンズ、複写機用レンズのようなレンズ;プリズム;建物や監視塔の窓ガラス;その他建材用ガラス;自動車、鉄道車両、航空機、船舶、潜水艇、雪上車、ロープウエイのゴンドラ、遊園地のゴンドラ、種々の乗物の窓ガラス;自動車、鉄道車両、航空機、船舶、潜水艇、雪上車、スノーモービル、オートバイ、ロープウエイのゴンドラ、遊園地のゴンドラ、種々の乗物の風防ガラス;防護用ゴーグル、スポーツ用ゴーグル、防護用マスクのシールド、スポーツ用マスクのシールド、ヘルメットのシールド、冷凍食品陳列ケースのガラス;計測機器のカバーガラス、及び上記物品表面に貼付させるためのフィルムを含む。最も好ましい用途は、自動車用及び建材用のガラスである。
【0088】
また、本発明の表面親水性部材に防汚効果を期待する場合には、その基材は、例えば、ガラス、プラスチック以外にも、金属、セラミックス、木、石、セメント、コンクリート、繊維、布帛、紙、それらの組合せ、それらの積層体が、いずれも好適に利用できる。
防汚効果を有する部材が適用可能な用途としては、建材、外壁や屋根のような建物外装、建物内装、窓枠、窓ガラス、構造部材、自動車、鉄道車両、航空機、船舶、自転車、オートバイのような乗物の外装及び塗装、機械装置や物品の外装、防塵カバー及び塗装、交通標識、各種表示装置、広告塔、道路用防音壁、鉄道用防音壁、橋梁、ガードレールの外装及び塗装、トンネル内装及び塗装、碍子、太陽電池カバー、太陽熱温水器集熱カバー、ビニールハウス、車両用照明灯のカバー、住宅設備、便器、浴槽、洗面台、照明器具、照明カバー、台所用品、食器、食器洗浄器、食器乾燥器、流し、調理レンジ、キッチンフード、換気扇、及び上記物品表面に貼付させるためのフィルムを含む。
看板、交通標識、防音壁、ビニールハウス、碍子、乗物用カバー、テント材、反射板、雨戸、網戸、太陽電池用カバー、太陽熱温水器等の集熱器用カバー、街灯、舗道、屋外照明、人工滝・人工噴水用石材・タイル、橋、温室、外壁材、壁間や硝子間のシーラー、ガードレール、ベランダ、自動販売機、エアコン室外機、屋外ベンチ、各種表示装置、シャッター、料金所、料金ボックス、屋根樋、車両用ランプ保護カバー、防塵カバー及び塗装、機械装置や物品の塗装、広告塔の外装及び塗装、構造部材、住宅設備、便器、浴槽、洗面台、照明器具、台所用品、食器、食器乾燥器、流し、調理レンジ、キッチンフード、換気扇、窓レール、窓枠、トンネル内壁、トンネル内照明、窓サッシ、熱交換器用放熱フィン、舗道、浴室用洗面所用鏡、ビニールハウス天井、洗面化粧台、自動車ボディ、及びそれら物品に貼着可能なフィルム、ワッペン等を含む。
雪国用屋根材、アンテナ、送電線等への適用も可能であり、その際は、着雪防止性にも優れた特性が得られる。
【0089】
また本発明の表面親水性部材に水等の速乾性を期待する場合にも、その基材は、例えば、ガラス、プラスチック以外にも、金属、セラミックス、木、石、セメント、コンクリート、繊維、布帛、紙、それらの組合せ、それらの積層体が、いずれも好適に利用できる。
水等の速乾性効果を有する部材が適用可能な用途としては、建材、外壁や屋根のような建物外装、建物内装、窓枠、窓ガラス、構造部材、自動車、鉄道車両、航空機、船舶、自転車、オートバイのような乗物の外装及び塗装、機械装置や物品の外装、防塵カバー及び塗装、交通標識、各種表示装置、広告塔、道路用防音壁、鉄道用防音壁、橋梁、ガードレールの外装及び塗装、トンネル内装及び塗装、碍子、太陽電池カバー、太陽熱温水器集熱カバー、ビニールハウス、車両用照明灯のカバー、住宅設備、便器、浴槽、洗面台、照明器具、照明カバー、台所用品、食器、食器洗浄器、食器乾燥器、流し、調理レンジ、キッチンフード、換気扇、及び上記物品表面に貼付させるためのフィルムを含む。
看板、交通標識、防音壁、ビニールハウス、碍子、乗物用カバー、テント材、反射板、雨戸、網戸、太陽電池用カバー、太陽熱温水器等の集熱器用カバー、街灯、舗道、屋外照明、人工滝・人工噴水用石材・タイル、橋、温室、外壁材、壁間や硝子間のシーラー、ガードレール、ベランダ、自動販売機、エアコン室外機、屋外ベンチ、各種表示装置、シャッター、料金所、料金ボックス、屋根樋、車両用ランプ保護カバー、防塵カバー及び塗装、機械装置や物品の塗装、広告塔の外装及び塗装、構造部材、住宅設備、便器、浴槽、洗面台、照明器具、台所用品、食器、食器乾燥器、流し、調理レンジ、キッチンフード、換気扇、窓レール、窓枠、トンネル内壁、トンネル内照明、窓サッシ、熱交換器用放熱フィン、舗道、浴室用洗面所用鏡、ビニールハウス天井、洗面化粧台、自動車ボディ、及びそれら物品に貼着可能なフィルム、ワッペン等を含む。またこれらの用途に使用される製品を製造する工程において乾燥工程を有する場合は乾燥時間が短縮でき生産性が向上する効果も期待できる。
【実施例】
【0090】
以下、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、部は質量部を表す。
[実施例1]
表1記載の触媒、親水ポリマー、金属アルコキシド、その他の原料に蒸留水400部、エタノール70部を加え25℃で30分間攪拌し親水性組成物を得た。
次いで表1記載のガラス板(150mm四方)に乾燥膜厚が1μmになるようにスピンコートを用いて塗布した。更に10℃で10分間乾燥処理し、親水性部材を作成し、下記方法で評価した。
【0091】
評価法
[表面自由エネルギー]
協和界面化学(株)製の接触角計DropMaster500を用い、水に対する接触角とヨウ素化メチレンに対する親水性塗布膜表面の接触角から求めた。表1における表面自由エネルギーの値の単位は、mN/mである。
[引っ掻き強度]
新東科学製引っ掻き試験機HEIDONを用い0.1mmφサファイヤ針に5gから100gまで100m/min、引っ掻きストローク100mmの条件で引っ掻きキズが目視観察された荷重を評価した。
[防曇性]
親水部材表面に40℃の水蒸気を1分間当て、水蒸気から離した後の曇具合を下記基準
により目視判定した。
10サンプル作成して評価し、
○:10サンプルともに曇が観察されない。
△:1〜2サンプルが部分的または全面に曇が観察される。
×:3枚以上のサンプルに部分的または全体に曇が観察される。
[防汚性]
親水性部材表面に油性インク(三菱鉛筆(株)製黒色油性マーカー)で長さ約5cmの線を書き、蒸留水を掛け続けインクが流れ落ちるかを下記基準で評価した。
10サンプル作成して評価し、
○:10サンプルともインクが全て1分間以内に消える。
△:1分間以内で部分的にインクが残存するサンプルが1〜3サンプルある。
×:1分間以内で部分的にインクが残存するサンプルが4枚以上ある。
[塗布欠陥観察]
親水部材表面に約30Å厚で白金蒸着し、微分干渉顕微鏡を用いて100mm四方面積を目視観察し下記基準で評価した。
10サンプル作成し、
優秀:10サンプルとも欠陥なし。
良好:部分的にひび割れた箇所が観察されたサンプルが1〜2枚ある。
不良:部分的にひび割れた箇所が観察されたサンプルが3サンプル以上ある。
[水の乾燥速度]
親水部材表面に約1ccの純水を滴下し、25℃50%RH環境下で静置させ、水滴が乾くまでの時間を5分おきに目視観察して測定した。
【0092】
[実施例2〜17、比較例1〜15]
触媒、親水ポリマー、金属アルコキシド、その他の原料、基材、膜厚及び乾燥温度を表1記載のものにした以外は実施例1と同様に調製した。
なお膜厚はスピンコートの回転数、液の滴下量、濃度により調整した。
【0093】
[実施例18]
実施例1で用いた親水性組成物をトリガースプレー容器(キャニオン製)に充填し、次いでガラス板(150mm四方)に乾燥膜厚が1μmになるようにスプレーしたのち、25℃で10分間乾燥処理し、親水性部材を作成し、実施例1と同様の評価方法で評価した。結果を表2に示す。
[比較例16]
乾燥温度を5℃とした以外は実施例18と同様の方法で作成し、評価した。結果を表2に示す。
【0094】
【表1】

【0095】
【表2】

【0096】
表1において、親水ポリマーの化合物A,Bは、それぞれ下記に示すものである。化合物AはMw23500、化合物BはMw25400である(いずれもGPC(標準ポリスチレン換算による)測定によるもの)。
【0097】
【化10】

【0098】
また、表1において、シリカゾルAは、平均粒径20nmのメタノールゾルを用い、界面活性剤Aは、オクタデカンスルホン酸Naを用い、ガラス板は、フロート板ガラス(厚み2mm)を用い、PETフィルムは、厚さ50μm、表面粗さRa10nmのものを用いた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、(a)触媒、(b)親水性ポリマー、及び(c)金属アルコキシドを含有する親水性組成物を基材表面に塗設し、乾燥する工程を含む親水性部材の製造方法であって、該乾燥する工程における乾燥温度が10℃〜60℃である親水性部材の製造方法。
【請求項2】
前記(c)金属アルコキシドがSi、Ti、Zr、Alから選択される元素のアルコキシドである請求項1記載の親水性部材の製造方法。
【請求項3】
前記親水性組成物における、(a)触媒、(c)金属アルコキシドの含有質量比(a)/(c)が、50/50〜20/80である請求項1または2記載の親水性部材の製造方法。
【請求項4】
前記基材がガラス、プラスチック、金属、またはタイルである請求項1〜3のいずれかに記載の親水性部材の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法により得られた親水性部材。

【公開番号】特開2008−221201(P2008−221201A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−256734(P2007−256734)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】